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明細書 :分光測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6732339号 (P6732339)
登録日 令和2年7月10日(2020.7.10)
発行日 令和2年7月29日(2020.7.29)
発明の名称または考案の名称 分光測定装置
国際特許分類 G01J   3/45        (2006.01)
G01N  21/359       (2014.01)
FI G01J 3/45
G01N 21/359
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2017-527514 (P2017-527514)
出願日 平成28年7月8日(2016.7.8)
国際出願番号 PCT/JP2016/070287
国際公開番号 WO2017/007024
国際公開日 平成29年1月12日(2017.1.12)
優先権出願番号 2015137321
優先日 平成27年7月8日(2015.7.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成31年4月18日(2019.4.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】石丸 伊知郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】横尾 雅一
参考文献・文献 国際公開第2014/054708(WO,A1)
実開昭59-146707(JP,U)
特開2001-141566(JP,A)
特開平03-015727(JP,A)
特開2006-038490(JP,A)
米国特許第08922783(US,B2)
国際公開第2008/148237(WO,A1)
調査した分野 G01J 3/00- 3/52
G01B 9/00- 9/10
G01B 11/00-11/30
G01N 21/00-21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
a) 被測定物の測定領域内に位置する複数の測定点からそれぞれ発せられた測定光を所定の第1軸方向に2つに分割して第1測定光及び第2測定光を形成する分割光学系と、
b) 前記第1測定光及び前記第2測定光の間に、前記第1軸方向と直交する方向である第2軸方向に沿って連続的に変化する光路長差を付与する光路長差付与手段と、
c) 連続的に変化する光路長差が付与された前記第1測定光及び前記第2測定光を前記第1軸方向に集光させて結像面上に直線状の干渉光を形成する結像光学系と、
d) 前記結像面上に前記第2軸方向に所定の周期で配置された複数の画素を有する、前記干渉光の強度を検出する干渉光検出部と、
e) 前記干渉光検出部で検出された前記干渉光の光強度に基づき、前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
f) 前記被測定物と前記分割光学系の間に配置された、該分割光学系と共通の共役面を有するとともに、該共役面に前記測定点からの測定光を結像する共役面結像光学系と、
g) 前記共役面に配置された、前記第1軸方向に周期的に並ぶ透光部と遮光部とを有する振幅型回折格子と、
h) 前記測定光が前記振幅型回折格子を通過した後の光を前記第2軸方向にのみ拡散させる拡散光学系と
を備えることを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
前記拡散光学系が、その円筒面の中心軸が前記第1軸と平行になるように配置された平凹面シリンドリカルレンズから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の分光測定装置。
【請求項3】
前記拡散光学系が、1組の凸面シリンドリカルレンズから構成されており、該1組の凸面シリンドリカルレンズは、いずれもその円筒面の中心軸が前記第1軸と平行になるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の分光測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料を透過した光や測定試料面で反射した光の分光特性を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液に含まれるグルコース(血糖)やコレステロール等の生体成分の量は糖尿病や高脂血症等、様々な病気の指標となることから、従来より病気の予防及び治療のために血液中の生体成分の量の管理が行われている。血液中の生体成分の量の測定には、通常、身体から採取した血液が用いられるが、血液の採取には苦痛を伴う。また、採血部位の消毒や採血に用いた消耗品の処理などの煩わしい作業が必要であるため、病気の予防目的で生体成分の量を測定するための採血を日常的に行うことは敬遠される。
【0003】
そこで、血液を採取せずに生体成分の量を測定する非侵襲の測定方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、生体の被検部位に光を照射し、それにより該被検部位の内部の生体成分から発せられる光(物体光)の分光特性から生体成分を定性的、定量的に測定する。具体的には、生体成分を光学的に構成する各輝点から発する透過光や拡散・散乱光等の物体光を、対物レンズを介して位相シフタである固定ミラー部と可動ミラー部に導き、これら2つのミラー部から反射される物体光束を結像光学系により集光し、その結像面において干渉させる。可動ミラー部はピエゾ素子などにより移動されるようになっており、該可動ミラー部の移動量に応じた位相差が固定ミラー部で反射される物体光束と可動ミラー部から反射される物体光束の間に生じ、それに伴い両光束による干渉光の強度が変化して、いわゆるインターフェログラムを形成する。このインターフェログラムをフーリエ変換することにより物体光の分光特性(スペクトル)が取得される。
【0004】
ところが、上記測定方法では、結像面における干渉光の光量分布が被検部位のテクスチャー(表面状況)による回折角の違い等の影響を受ける。つまり、被検部位の屈折率分布等や物体光が通過する箇所の光学的なテクスチャーの違いにより結像面における物体光の光量分布が異なるため、このような光量分布が、生体成分の濃度に依存する干渉光の光量分布に重畳してしまい、生体成分の濃度を正確に測定することができない。
【0005】
また、空間的にコヒーレントな光の場合、テクスチャーがほとんど無い試料からは高次回折光を生じることが無く、0次光のみとなる。例えばケラー照明で試料を照射した場合、試料からの0次光は平行光束として対物レンズに到達し、光学的フーリエ変換面で集光してしまう。このような場合は物体光を分割することができないため、分光特性を取得することができない。
【0006】
これに対して、特許文献2には、物体面の像を共役結像光学系により一旦、物体面と光学的に共役な像面上に形成し、この共役像面上に設置した振幅型回折格子により物体光束に空間的な周期変化を付与する手法が開示されている。空間的な周期変化が付与された物体光束は対物レンズを介して位相シフタに導かれる。
この手法によれば、テクスチャーがほとんどない試料からの光であっても鮮明なインターフェログラムを取得することができるため、該光の分光特性を取得できる(特許文献2、非特許文献1参照)。
振幅型回折格子は、集光軸方向(結像ライン方向)に透光部と遮光部を交互に配列したもので、透光部の間隔(周期)や透光部の集光軸方向及び干渉軸方向(集光軸方向と直交する方向)の長さ(透光部の縦横の長さ)は数十μm~数百μmと非常に小さく、多重スリットとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2008-309707号公報
【特許文献2】国際公開WO2014/054708
【0008】

【非特許文献1】石丸伊知郎「共役面超解像格子によるフーリエ分光断層イメージングの高鮮明度化」、日本光学会年次学術講演会2012(Optics & Photonics Japan 2012)講演要旨集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に空間解像度(分光精度)や検出感度は多重スリットの透光部の大きさに依存する。多重スリットの透光部を大きくすると通過する光量が増加するため検出感度が向上するが、様々な方向に向かう物体光が透光部を通過するため空間解像度が低下する。
一方、多重スリットの透光部の集光軸方向の周期や長さはインターフェログラムの鮮明度の向上に寄与するものの、本発明者の研究によると、鮮明度を向上させるためには、これらの値を、干渉光の強度を検出する検出器の画素ピッチや結像光学系の光学倍率に応じた適切な値に設定しなければならない。以上より、多重スリットの透光部の集光軸方向の長さはインターフェログラムの鮮明度に関する条件を満たすように設計され、干渉軸方向の長さは物体面の空間解像度や検出感度に関する条件を満たすように設計される。
【0010】
従って、多重スリットの透光部の集光軸方向の長さと干渉軸方向の長さはそれぞれ異なる条件に依存し、互いに独立に設計することになり、条件によっては透光部の両方向の長さが異なる。透光部の集光軸方向の長さよりも干渉軸方向の長さの方が大きい場合、透光部を通過する物体光の干渉軸方向の回折角が集光軸方向の回折角よりも小さくなる。従って、物体光が多重スリットに入射する角度(入射角)や物体光の波長、透光部の干渉軸方向の長さと集光軸方向の長さの差にもよるが、場合によっては、対物レンズに入射する光の断面が集光軸方向に長い楕円形状となる。対物レンズは円形状であるため、断面が集光軸方向に長い楕円形状の物体光が入射した場合に、結像面において該物体光が干渉することにより形成される干渉光の干渉軸方向の長さは、断面が円形状の物体光が対物レンズに入射した場合に形成される干渉光の干渉軸方向の長さよりも短くなる。干渉光の強度は、結像面に干渉軸方向に沿って所定のピッチで配置された複数の画素を備えた検出器によって検出されるが、干渉光の干渉軸方向の長さが短いと、該干渉光の強度の検出に利用される画素の数が少なくなるため、波長分解能の低下を招き、高精度な分光特性を得ることができない。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、鮮明なインターフェログラムと高精度な分光特性を取得することができる分光測定技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明の第1態様に係る分光測定装置は、
a) 被測定物の測定領域内に位置する複数の測定点からそれぞれ発せられた測定光を所定の第1軸方向に2つに分割して第1測定光及び第2測定光を形成する分割光学系と、
b) 前記第1測定光及び前記第2測定光の間に、前記第1軸方向と直交する方向である第2軸方向に沿って連続的に変化する光路長差を付与する光路長差付与手段と、
c) 連続的に変化する光路長差が付与された前記第1測定光及び前記第2測定光を前記第1軸方向に集光させて結像面上に直線状の干渉光を形成する結像光学系と、
d) 前記結像面上に前記第2軸方向に所定の周期で配置された複数の画素を有する、前記干渉光の強度を検出する干渉光検出部と、
e) 前記干渉光検出部で検出された前記干渉光の光強度に基づき、前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
f) 前記被測定物と前記分割光学系の間に配置された、該分割光学系と共通の共役面を有するとともに、該共役面に前記測定点からの測定光を結像する共役面結像光学系と、
g) 前記共役面に配置された、前記第1軸方向に周期的に並ぶ透光部と遮光部とを有する振幅型回折格子と、
h) 前記測定光が前記振幅型回折格子を通過した後の光を前記第2軸方向にのみ拡散させる拡散光学系と
を備えることを特徴とする。

【0013】
本発明において、前記第1軸方向がいわゆる集光軸方向に相当し、第2軸方向が干渉軸方向に相当する。
【0014】
前記拡散光学系は、第1軸と平行な軸を中心とする円筒状の凹面を有する平凹面シリンドリカルレンズ、または2個の凸面シリンドリカルレンズを含んで構成される。具体的には、平凹面シリンドリカルレンズは、振幅型回折格子側の面が第1軸と平行な軸を中心とする円筒状の凹面であり、その反対側の面が前記共役面と平行な平面結像面と平行な平面であるシリンドリカルレンズから成る。また、2個の凸面シリンドリカルレンズはいずれも、振幅型回折格子側の面及びその反対側の面が第1軸方向に延びる軸を中心とする円筒状の凸面からなる凸面シリンドリカルレンズから成る。
【0015】
上記構成の分光測定装置では、振幅型回折格子を通過した測定光は拡散光学系によって第2軸方向に拡散された後、分割光学系によって第1測定光と第2測定光に分割される。従って、振幅型回折格子を通過する測定光の量を増やすために透光部の第2軸方向の幅を広げたことにより測定光の第2軸方向の回折角が小さくなったとしても、干渉光検出器によって検出される干渉光の光強度の波長分解能の低下を抑えることができる。
【0016】
また、上記課題を解決するために成された本発明の第2態様に係る分光測定装置は、
a) 被測定物の測定領域内に位置する複数の測定点からそれぞれ発せられた測定光を所定の第1軸方向に2つに分割して第1測定光及び第2測定光を形成する分割光学系と、
b) 前記第1測定光及び前記第2測定光の間に、前記第1軸方向と直交する方向である第2軸方向に沿って連続的に変化する光路長差を付与する光路長差付与手段と、
c) 連続的に変化する光路長差が付与された前記第1測定光及び前記第2測定光を前記第1軸方向に集光させて結像面上に直線状の干渉光を形成する結像光学系と、
d) 前記結像面上に前記第2軸方向に所定の周期で配置された複数の画素を有する、前記干渉光の強度を検出する干渉光検出部と、
e) 前記干渉光検出部で検出された前記干渉光の光強度に基づき、前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
f) 前記被測定物と前記分割光学系の間に配置された、該分割光学系と共通の共役面を有するとともに、該共役面に前記測定点からの測定光を結像する共役面結像光学系と、
g) 前記共役面に配置された、前記第1軸方向に周期的に並ぶ透光部と遮光部とを有する振幅型回折格子とを備え、
前記干渉光検出器が、前記第2軸方向に所定の周期で配置されたm個の画素からなる画素列を第1軸方向にn個並べたm×n個の画素を備え、各画素列を構成する画素の位置が、隣接する画素列を構成する画素の位置とずれるように互い違いに配置されており、
前記結像光学系が、第1測定光と第2測定光の干渉光を、前記干渉光検出器の複数の画素列に跨るように形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1態様に係る分光測定装置では、テクスチャのほとんどない試料からの光の干渉光を得るために、共役面結像光学系と分割光学系の共役面上に振幅型回折格子を配置した場合において、検出感度の向上のために振幅型回折格子の透光部の第2軸方向の長さを大きくしたことに起因して分割光学系に向かう測定光の断面形状に異方性が生じても、拡散光学系によって測定光を第2軸方向に拡散させるようにしたため、測定光の断面形状の異方性を解消することができる。
【0018】
また、本発明の第2態様に係る分光測定装置では、結像面に形成される第1測定光と第2測定光の干渉光を、各画素が互い違いに配置された複数列の画素列で検出するため、連続的な光路長差によって生じる干渉光の強度の変化の測定に寄与する画素の数を増やすと共に実質的な画素間隔を小さくすることができる。
以上より、発明の第1及び第2態様に係る分光測定装置によれば、鮮明なインターフェログラムと高精度な分光特性の両方を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の第1実施形態に係る分光測定装置の全体構成を示す斜視図。
【図1B】分光測定装置の上面図。
【図1C】分光測定装置の側面図。
【図2】多重スリットの正面図。
【図3】2次元受光アレイデバイスの正面図。
【図4】実験結果を示す図。
【図5】実験結果を示す図。
【図6A】本発明の第1態様に係る分光測定装置の別の例を示す上面図。
【図6B】拡散光学系の拡大図。
【図6C】同態様に係る分光測定装置の別の例を示す側面図。
【図7A】本発明の第2実施形態に係る分光測定装置の上面図。
【図7B】同形態に係る分光測定装置の側面図。
【図7C】同形態に係る分光測定装置に用いられる2次元受光アレイデバイスの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の分光測定装置のいくつかの具体的な実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1A~図1Cはそれぞれ本発明の第1実施形態に係る分光測定装置の構成を示す斜視図、上面図、側面図である。分光測定装置1は、共役面結像光学系100と透過結像型1次元フーリエ分光光学系200(以下、「ワンショット光学系200」とよぶ。により構成されている。共役面結像光学系100では、測定対象(物体面)の像を、観察条件である視野範囲や倍率に応じたレンズ11(結像レンズ、広角レンズ、顕微対物レンズ等)を用いて物体面と光学的に共役な面を形成する。この共役面はワンショット光学系200の物体面となる。この共役面には多重スリット13が配置されている。多重スリット13は本発明の振幅型回折格子に相当する。詳しくは後述する。

【0021】
ワンショット光学系200は、対物レンズ15と結像レンズ17による無限遠補正結像光学系であり、光学的なフーリエ変換面の近傍に位相シフタ19が配置されている。また、結像レンズ17の結像面には2次元受光アレイデバイス21が、多重スリット13と対物レンズ15の間には平凹面シリンドリカルレンズ23がそれぞれ設置されている。2次元受光アレイデバイス21が本発明の干渉光検出部に相当する。

【0022】
位相シフタ19は、半円状の透過型光学部材である第1透過部191と第2透過部192からなり、全体としてほぼ円板状の構成を有している。第1透過部191は、入射面及び出射面が平行な厚さ一定の光学部材から成る。一方、第2透過部192は、第1透過部191の入射面に対して傾斜する入射面と、第1透過部191の出射面と同一面上にある出射面を有するくさび形の光学部材から成る。本実施形態では、第2透過部192は、その厚さが一方側から他方側(図1Aでは手前側から奥側)に向かって徐々に小さくなっており、これにより入射面が、一方側から他方側に向かって結像レンズ17側に傾斜している。なお、位相シフタ19を構成する第1透過部191と第2透過部192は必ずしも半円状とする必要はなく、四角形状としてもよい。
結像レンズ17は平凸面シリンドリカルレンズから成る。結像レンズ17は、位相シフタ19側の面が該位相シフタ19に向かって突出する、円筒状の凸面から成り、2次元受光アレイデバイス21側の面が位相シフタ19の出射面と平行な平面から成る。

【0023】
位相シフタ19は対物レンズ15と結像レンズ17の間に配置されている。対物レンズ15を透過した光は位相シフタ19の第1透過部191及び第2透過部192に分かれて入射し、これら第1透過部191及び第2透過部192を透過する間に光路長差が付与される。従って、本実施例では、対物レンズ15と位相シフタ19が本発明の分割光学系を構成し、位相シフタ19が本発明の光路長差付与手段を構成する。また、第1透過部191と第2透過部192が並ぶ方向が本発明の第1軸方向に相当し、第2透過部192の厚さが変化する方向が本発明の第2軸方向に相当する。また、結像レンズ17の円筒状の凸面は、第2軸と平行な軸を中心とする。従って、第1軸が集光軸となり、第2軸が干渉軸となり、両者は直交する。図面では、第1軸を垂直軸、第2軸を水平軸として表しているが、逆でも良く、水平軸や垂直軸以外の軸でも良い。要は、第1軸方向と第2軸方向が直交する関係にあればよい。

【0024】
図3に示すように、2次元受光アレイデバイス21は、第1軸方向及び第2軸方向にそれぞれ所定のピッチで配列された複数の画素211を有する2次元CCDカメラから構成されている。なお、本発明においては、2次元受光アレイデバイス21は必ずしもCCDカメラに限定されるものではなく、例えばMOS型イメージセンサなど種々の構成のカメラを用いることができる。
また、第2透過部192の入射面の傾斜角度は、波数分解能により決まる位相シフト量と、2次元受光アレイデバイス21の画素毎のサンプリング間隔により決まるが、多少ずれても問題はない。

【0025】
図2に示すように、多重スリット13は、所定方向に周期的に配列された複数の開口部を有する。開口部は本発明の透光部に相当し、開口部と開口部の間の部分は本発明の遮光部に相当する。以下の説明では、多重スリット13の開口部を透光部131と呼び、開口部と開口部の間の部分を遮光部132と呼ぶ。多重スリット13の透光部131は第1軸方向に並んでいる。
多重スリット13の透光部131の垂直方向(第1軸方向)の長さ、隣り合う透光部131の中心間距離はそれぞれ、ワンショット光学系200の光学倍率及び2次元受光アレイデバイス21の画素ピッチにより決まる。また、ワンショット光学系200は任意の光学倍率で設計可能である。例えば多重スリット13の透光部131の垂直方向長さをWp、隣り合う透光部131の中心間距離をD、2次元受光アレイデバイス21の垂直方向の画素ピッチをP、ワンショット光学系200の光学倍率をmとすると、Wp及びDがそれぞれ次の式を満たすとき、鮮明なインターフェログラムを得ることができる。
垂直方向長さWp =P×2/(m+1)
中心間距離D =P×2/m

【0026】
例えば光学倍率mが1倍、2次元受光アレイデバイス21の画素ピッチPが11μmのとき、垂直方向長さWp及び中心間距離Dは以下の式より、それぞれ11μm、22μmと算出される。
垂直方向長さWp = 画素ピッチ×2/(光学倍率+1)
=11μm×2/(1+1)=11μm
中心間距離D = 画素ピッチ×2/光学倍率
=11μm×2/1=22μm
以上より、上記条件のときは、多重スリット13の透光部131の垂直方向長さを11μm、遮光部132の垂直方向長さを11μmにすれば良いことが分かる。

【0027】
この場合に、実効的なN.A.(Numerical Aperture)が、レンズのN.A.よりも小さいことが要求される。例えば、測定波長帯域0.4μm~0.8μm、対物レンズ15の焦点距離が100mm、N.A.が0.24、結像レンズ17の焦点距離が100mm、N.A.が0.24のとき、実効的なN.A.は以下の式より、約0.073となる。
実効的なN.A.=sinθ=最長波長/開口幅=0.8μm/11μm≒0.073
このような場合に用いられる対物レンズ15と結像レンズ17のN.A.は双方とも0.24であることから、これらレンズのN.A.に比べて実効的なN.A.は十分に小さく、要求を満たしている。

【0028】
一方、多重スリット13の透光部131の水平方向(第2軸方向)長さWhは垂直方向長さWpと独立して設定することができ、検出感度及び空間解像度に応じて設計される。即ち、水平方向長さWhが大きいほど光の利用効率が向上するため、検出感度が向上する反面、空間解像度が悪化する。従って、検出感度を優先する場合は透光部131の水平方向長さWhを大きく、空間解像度を優先する場合は透光部131の水平方向長さWhを小さくする。

【0029】
平凹面シリンドリカルレンズ23は本発明の拡散光学系に相当し、多重スリット13と対向する面が第1軸に平行な軸を中心とする円筒状の凹面からなる。平凹面シリンドリカルレンズ23は、多重スリット13の透光部131を通過した光を第2軸方向に拡散して対物レンズ15に向かわせる。

【0030】
次に、本実施形態に係る分光測定装置1の光学的作用について図1B及び図1Cを参照して説明する。
試料Sの一測定点から発せられた測定光は結像レンズ11によってワンショット光学系200と共通の共役面に集光し、該共役面に配置された多重スリット13の透光部131を通過した後、平凹面シリンドリカルレンズ23、分割光学系、平凸面シリンドリカルレンズ17を経て2次元受光アレイデバイス21に入射する。

【0031】
多重スリット13の透光部131を測定光が通過する際、該測定光は、その波長、透光部131に対する測定光の入射角、透光部131の垂直方向及び水平方向の長さに応じた回折角で垂直方向及び水平方向に回折する。上述したように、透光部131の垂直方向の長さWpは2次元受光アレイデバイス21の画素ピッチや光学倍率によって決まり、それに応じた回折角で測定光は垂直方向に回折する。一方、透光部131の水平方向長さWhは検出感度や空間解像度によって決まり、通常、垂直方向長さWpよりも大きい。このため、透光部131を通過する測定光は、垂直方向の回折角よりも小さい角度で水平方向に回折する。

【0032】
続いて、透光部131を通過した測定光は、その後、平凹面シリンドリカルレンズ23に入射し、平凹面シリンドリカルレンズ23によって第2軸方向にのみ拡散された後、対物レンズ15に入射する。対物レンズ15に入射した光は、位相シフタ19によって第1軸方向に2つに分割され、第1測定光と第2測定光として出射する。これら第1測定光及び第2測定光は平凸面シリンドリカルレンズ17によってそれぞれ第1軸方向に集光され、結像面において干渉光を形成する。結像面には2次元受光アレイデバイス21を構成する多数の画素211が配置されているため、これら画素211によって干渉光の強度が検出される。2次元受光アレイデバイス21の検出信号はパーソナルコンピュータ等から成る制御装置25に入力され、所定の演算処理によって試料Sの測定点毎のインターフェログラムが求められ、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトル(分光特性)が得られる。従って、本実施形態では制御装置25が本発明の処理部に相当する。図示しないが、制御装置25は表示部やプリンター等を備えており、得られたインターフェログラムやスペクトルは、表示部に表示したり、プリンターを介して印刷したりすることができる。

【0033】
次に、本実施形態に係る分光測定装置1を用い、透光部131の水平方向長さWhが異なる2種類の多重スリット13について行った実験について説明する。
実験では、光源からの光をケラー照明で多重スリット13に入射させ、そのときの2次元受光アレイデバイス21の検出結果からインターフェログラム及び分光特性を求めた。なお、実験環境は次の通りである。
(1)2次元受光アレイデバイス:ソニー株式会社製デジタルビデオカメラXCD-MV6
画素数=752×480、画素サイズ= 6.0μm×6.0μm、画素ピッチ=12μm
(2)光源:白色LED(637ルクス)
(3)ワンショット光学系の光学倍率:1倍
(4)多重スリットの透光部の水平方向長さWh:多重スリットA=54μm、多重スリットB=210μm
なお、インターフェログラムの鮮明度を考慮した段落[0025]に示す2つの式に、上述の画素ピッチ(12μm)、光学倍率(1倍)を代入すると、多重スリットの透光部の垂直方向長さWp及び中心間距離Dは、それぞれ12μm、24μmとなるが、装置の都合上、本実験で用いた多重スリットA、Bの垂直方向長さWpは6μm、中心間距離Dは12μmであった。

【0034】
図4及び図5に実験結果を示す。
図4は比較のために行った実験結果であり、平凹面シリンドリカルレンズ23を用いなかった場合のインターフェログラム及び分光特性を示す。一方、図5は本実施形態に係る分光測定装置1を用いて行った実験結果、つまり、平凹面シリンドリカルレンズ23を用いた場合のインターフェログラム及び分光特性を示す。
図4及び図5において、左側の図がインターフェログラムを、右側の図が分光特性を示す。また、上段の図は多重スリットA、下段の図は多重スリットBを用いた場合を示す。いずれの図も横軸は波長を、縦軸は信号強度を示す。
図4と図5の比較から分かるように、透光部131の水平方向長さWhが小さい多重スリットAを用いた場合は、平凹面シリンドリカルレンズ23を用いなかった場合、用いた場合の分光特性に大きな違いはなかった。一方、透光部131の水平方向長さWhが大きい多重スリットBを用いた場合は、平凹面シリンドリカルレンズ23を用いなかった場合に比べて平凹面シリンドリカルレンズ23を用いた場合の方が高精度な分光特性が得られた。

【0035】
[第1実施形態の変形例]
図6A~図6Cは本発明の第1実施形態に係る分光測定装置の別の例を示す。この分光測定装置1Aと上述した分光測定装置1との違いは、拡散光学系323が対物レンズ15と位相シフタ19の間に配置されていること、及び拡散光学系323が2個の凸面シリンドリカルレンズ3231、3232から構成されていることである。凸面シリンドリカルレンズ3231、3232は、対物レンズ15側の面及び位相シフタ19側の面がそれぞれ垂直軸と平行な軸を中心とする円筒状の凸面から成り、図6Bに示すように、両凸面シリンドリカルレンズ3231、3232の焦点面が合致するように設置されている。このような構成により、多重スリット13及び対物レンズ15をこの順に通過した光は拡散光学系323によって水平軸方向に拡散された後、位相シフタ19に向かう。その他の構成及び作用効果は図1A~図1Cに示した分光測定装置1と同じである。

【0036】
[第2実施形態]
図7A~図7Cは本発明の第2実施形態に係る分光測定装置1Bの構成を示す。第2実施形態と第1実施形態との違いは、拡散光学系がないこと、及び2次元受光アレイデバイスの画素の配置が異なることである。その他の部分は第1実施形態に係る分光測定装置1と同じであるため、第1実施形態に係る分光測定装置1と対応する構成要素について下2桁の数字が同じ符号を付して説明を省略する。

【0037】
図7A及び図7Bに示す分光測定装置1Bでも、2次元受光アレイデバイス121は、第2軸方向に所定の間隔で配置された複数の画素1211からなる画素列を複数備えているが、本実施形態では、図7Cに示すように、隣接する画素列の画素1211の位置が半ピッチずつずれている。
また、本実施形態に係る分光測定装置1Bでは、第1測定光と第2測定光が結像レンズ117によって集光され、結像面に形成される干渉光が、2個の画素列に跨るように、結像レンズ117や2次元受光アレイデバイス121の配置が設定されている。このような構成により、本実施形態において干渉光の強度の変化の測定に寄与する画素の数が第1実施形態の2倍になるため実質的な画素間隔を小さくすることができ、波長分解能を向上することができる。
【符号の説明】
【0038】
1、1A、1B…分光測定装置
11…レンズ
13…多重スリット
131…透光部
132…遮光部
15…対物レンズ
17…結像レンズ(平凸面シリンドリカルレンズ)
19…位相シフタ
191…第1透過部
192…第2透過部
21、121…2次元受光アレイデバイス
211、1211…画素
23…平凹面シリンドリカルレンズ
25…制御装置
100…共役面結像光学系
200…透過結像型1次元フーリエ分光光学系(ワンショット光学系)
323…拡散光学系
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6A】
7
【図6B】
8
【図6C】
9
【図7A】
10
【図7B】
11
【図7C】
12