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明細書 :カテコール含有接着性ハイドロゲル、接着性ハイドロゲル作製用組成物、及び該接着性ハイドロゲルを応用した組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6663150号 (P6663150)
登録日 令和2年2月18日(2020.2.18)
発行日 令和2年3月11日(2020.3.11)
発明の名称または考案の名称 カテコール含有接着性ハイドロゲル、接着性ハイドロゲル作製用組成物、及び該接着性ハイドロゲルを応用した組成物
国際特許分類 C09J 201/06        (2006.01)
C09J 133/26        (2006.01)
C09J  11/06        (2006.01)
C09D   5/16        (2006.01)
C09D 201/06        (2006.01)
C09D 133/26        (2006.01)
A61L  24/00        (2006.01)
A61L  24/04        (2006.01)
C08J   3/075       (2006.01)
C08F 246/00        (2006.01)
C08F   2/10        (2006.01)
C10M 107/12        (2006.01)
C10M 107/22        (2006.01)
FI C09J 201/06
C09J 133/26
C09J 11/06
C09D 5/16
C09D 201/06
C09D 133/26
A61L 24/00 240
A61L 24/04 200
A61L 24/00 200
C08J 3/075 CER
C08F 246/00
C08F 2/10
C10M 107/12
C10M 107/22
請求項の数または発明の数 20
全頁数 19
出願番号 特願2017-520807 (P2017-520807)
出願日 平成28年5月26日(2016.5.26)
国際出願番号 PCT/JP2016/065634
国際公開番号 WO2016/190400
国際公開日 平成28年12月1日(2016.12.1)
優先権出願番号 2015106809
優先日 平成27年5月26日(2015.5.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年11月21日(2017.11.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藪 浩
【氏名】西澤 松彦
【氏名】長峯 邦明
【氏名】齊藤 祐太
【氏名】亀井 潤
【氏名】島崎 立彬
【氏名】千原 駿
個別代理人の代理人 【識別番号】100167689、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 征二
審査官 【審査官】仁科 努
参考文献・文献 特表2010-501027(JP,A)
特開2014-177636(JP,A)
特表2013-500072(JP,A)
特表2007-527871(JP,A)
特表2007-517776(JP,A)
特表2002-509171(JP,A)
特表2013-503688(JP,A)
調査した分野 C09J 201/06
C09J 133/26
C09D 201/06
C09D 133/26
C09D 5/16
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)水と、
(2)(a)水溶性ビニル基含有モノマーである水溶性主鎖モノマーからなる主鎖を形成する構造単位と、(b)側鎖にカテコール基を有する接着性モノマーからなる構造単位と、(c)重合性二重結合によって三次元架橋構造の全部または一部を導入し得る多官能のビニル系モノマーであるハイドロゲル形成のための架橋剤からなる架橋部を形成する構造単位とを有する重合体と、
を含む、接着性ハイドロゲル。
【請求項2】
前記カテコール基が、ドーパ又はその誘導体に由来する、請求項1記載の接着性ハイドロゲル。
【請求項3】
前記カテコール基が、
水溶性主鎖モノマーが主鎖を形成するために有する官能基と反応せず、主鎖との連結に関与しない、請求項1又は2記載の接着性ハイドロゲル。
【請求項4】
前記接着性モノマーの全部または一部は、一般式(3)で示される接着性モノマー
【化1】
JP0006663150B2_000006t.gif
である、請求項1~3いずれか1項記載の接着性ハイドロゲル。
(ここで、Yはアミド、又はエステルを表すが、含まれていなくてもよい。R3は、水素、炭素数1~20のアルキル基を表し、直鎖状、分岐状、あるいは環状のいずれでもよく、pは0又は1~10の整数を表し、当該接着性モノマーに導入されていてもよい1つ以上の置換基であるR4~R6は、同一または異なり、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、及びカルボニル基から選択される置換基で置換されている基である。)
【請求項5】
さらに電解質及び/又は極性溶媒を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の接着性ハイドロゲル。
【請求項6】
請求項5に記載の接着性ハイドロゲルを含む、生体用粘着剤。
【請求項7】
水、
水溶性ビニル基含有モノマーからなる水溶性主鎖モノマー、
重合性二重結合によって三次元架橋構造の全部または一部を導入し得る多官能のビニル系モノマーであるハイドロゲル形成のための架橋剤、
及び側鎖にカテコール基を有する接着性モノマーを含む接着性ハイドロゲル作製用組成物。
【請求項8】
さらに重合開始剤を含む請求項7記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
【請求項9】
前記カテコール基が、ドーパ又はその誘導体に由来する請求項7、又は8記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
【請求項10】
前記カテコール基が、
水溶性主鎖モノマーが主鎖を形成するために有する官能基と反応せず、主鎖との連結に関与しない請求項7~9のいずれか1項記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
【請求項11】
前記接着性モノマーの全部または一部は、一般式(3)で示される接着性モノマー
【化2】
JP0006663150B2_000007t.gif
である、請求項7~10いずれか1項記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
(ここで、Yはアミド、又はエステルを表すが、含まれていなくてもよい。R3は、水素、炭素数1~20のアルキル基を表し、直鎖状、分岐状、あるいは環状のいずれでもよく、pは0又は1~10の整数を表し、当該接着性モノマーに導入されていてもよい1つ以上の置換基であるR4~R6は、同一または異なり、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、及びカルボニル基から選択される置換基で置換されている基である。)
【請求項12】
さらに電解質及び/又は極性溶媒を含む、請求項7~11のいずれか1項記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか1項記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物を含む接着剤。
【請求項14】
請求項13記載の接着剤が、
前記水溶性主鎖モノマー、前記架橋剤、前記重合開始剤、及び前記接着性モノマーを一液中に含む一液型接着剤、
又は前記水溶性主鎖モノマー、前記架橋剤、及び前記接着性モノマーを第一液に含み、前記重合開始剤とを第二液に含む二液型接着剤として使用される、ハイドロゲルを含有する接着剤。
【請求項15】
請求項13又は14記載の前記接着剤が、
骨、歯、若しくは軟組織の接着、又は骨、歯、若しくは軟組織と医療用部材との接着に使用される、医療用接着剤。
【請求項16】
前記医療用部材が、
検知電極、刺激電極、インプラントである、請求項15記載の医療用接着剤。
【請求項17】
請求項7~12いずれか1項記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物を含有する、船底防汚塗料。
【請求項18】
請求項7~12いずれか1項記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物を含有する、水系潤滑剤。
【請求項19】
請求項7~12いずれか1項記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物を含有する、防汚用被覆材。
【請求項20】
水溶性ビニル基含有モノマーからなる水溶性主鎖モノマー水溶液、重合性二重結合によって三次元架橋構造の全部または一部を導入し得る多官能のビニルモノマーであるハイドロゲル形成のための架橋剤、重合開始剤、及び側鎖にカテコール基を有する接着性モノマー水溶液を含む接着性ハイドロゲル作製用組成物を含有するプレポリマー水溶液を調製する工程と、
前記プレポリマー水溶液に重合開始反応を行う重合開始工程を含む接着性ハイドロゲル合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
カテコール基を含有した接着性ハイドロゲル、接着性ハイドロゲル用組成物、ハイドロゲルを含む接着剤、生体用粘着剤、医療用接着剤、船底防汚塗料、水系潤滑剤、防汚用被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは高分子が架橋して形成される3次元網目構造体である。ハイドロゲルは含水性、柔軟性を備え、吸収性に富み、体積相転移を示すことなどから医療材料、工業製品等、様々な分野で利用されている。例えば、医療材料としては、組織を接着する創傷治癒材、インプラントの接着、薬物送達システム(DDS)用マトリックス等、様々な応用が検討されている。
【0003】
近年では、その目的に応じて種々の機能をハイドロゲルに付与し、所望の目的に応用することが検討されている。また、熱、電気、光、pH等、外界からの刺激を感知してゲルが自律的に機能する「スマートゲル」の開発も盛んに行われている。このように、種々の機能が付与されたハイドロゲルが開発されているものの、ハイドロゲルが金属等、他の材料表面との接着性をほとんど備えていないことが応用を限られたものとする原因となっている。
【0004】
ハイドロゲルが他の材料表面への接着性を備えていない理由としては、ハイドロゲルの架橋高分子の3次元網目に水が担持されており含水率が高いこと、容易に構造変形することが主な原因となっている。そこで、ハイドロゲルに接着性を付与する種々の試みがなされている。今までに基板にフェニルアジド基などの光開始基を導入しハイドロゲルを固定したり、エキシマレーザーでゲルの一部を分解させた後に付着させる方法が開示されている(非特許文献1、2)。
【0005】
また、高分子主鎖を化学修飾して、接着性を有する基を導入する方法が開示されている。特許文献1には、ドーパ(3,4-dihydroxyphenylalanine、DOPA)、又はドーパ誘導体との結合を通じて組織接着力を有する生体注入型組織接着性ハイドロゲルが開示されている。ドーパ誘導体は、ムール貝などに代表されるイガイ類が、湿った環境や激しい潮にさらされる環境下でも、岩、木、金属、コンクリート構造物等、様々な材料表面に付着することから見出された接着物質である。イガイが、足糸腺から分泌するドーパに含まれるカテコール基は水中であっても多様な材料に強固に接着することができる。特許文献1は、ドーパ誘導体をハイドロゲルの主鎖に持つ化合物を連結させることによって、接着性を備えたハイドロゲルを作製するものである。
【0006】
特許文献2には、主鎖にポリアクリレート構造等を有し側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを基材多孔質膜に含浸させることによって、接着性を備えた高分子ゲルの作製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特表2013-503688号公報
【特許文献2】特開2003-100349号公報
【0008】

【非特許文献1】中山 泰秀、松田 武久、人工臓器、1993年、Vol.22(2)、pp.394-397.
【非特許文献2】中山 泰秀、松田 武久、人工臓器、1995年、Vol.24(1)、pp.74-78.
【非特許文献3】Saito, Y. et al., Macromol. Rapid Commun., 2013年, Vol.34, pp.630-634.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に開示されている方法は、基板表面の化学修飾が必要であり、煩雑な工程を必要とする。非特許文献2に開示されている方法は、強力な光源を必要とする。いずれの方法を用いても、簡便にハイドロゲルを基板表面に固定化することはできなかった。
【0010】
特許文献1に記載の方法は、接着性の強いカテコール基をポリマー主鎖に導入することにより、ハイドロゲルに接着性を付与するものである。しかしながら、主鎖に導入したカテコール基は高分子間の連結にも用いられることから、導入したすべてのカテコール基が接着に利用可能なわけではない。そのため、強固な接着力が得られてはいなかった。さらに、遊離のカテコールの存在によりハイドロゲルとしての形状が保てなくなる可能性があり実用化に疑問が残されていた。また、特許文献2の方法は、実施例において引き剥がし粘着力で解析しているように、強固な接着を目的としているわけではなく、接着性は不十分であった。本発明は接着剤としても機能できるほどの強固な接着力を備えたハイドロゲルを提供することを課題とする。
【0011】
接着分子であるカテコール基を主鎖ではなく側鎖に含有させることにより、導入したカテコール基がすべて接着可能基として有効に機能するようになる。また、側鎖に含まれるカテコール基の量を自在に調節することができるため、接着力を調節することも可能となる。しかしながら、側鎖にカテコール基を含有するモノマーと重合し、かつハイドロゲルとしての機能を有する主鎖モノマーの選定や、重合基を付与することによりカテコールモノマーの極性が下がるため重合しなくなるという問題があり側鎖にカテコール基を含有させたハイドロゲルの実現は困難であった。
【0012】
本発明は、多様な材料表面に強固に結合するハイドロゲルを提供すること、また、接着性ハイドロゲルを利用した種々の用途を提供することを課題とする。側鎖にカテコール基を含有させることによって、従来の接着性ハイドロゲルと比較して強固に接着可能なハイドロゲルを提供するだけではなく、接着力を調節可能なハイドロゲルを提供することを可能とし、種々の用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下に示すカテコール含有接着性ハイドロゲル、接着性ハイドロゲル作製用組成物、接着剤、医療用接着剤、生体用粘着剤、船底防汚塗料、水系潤滑剤、防汚用被覆材に関する。
(1)水溶性主鎖モノマー、架橋剤、重合開始剤、及び側鎖にカテコール基を有する接着性モノマーを構成要素とする接着性ハイドロゲル。
(2)前記カテコール基が、ドーパ又はその誘導体に由来する、(1)記載の接着性ハイドロゲル。
(3)前記水溶性主鎖モノマーがビニル基含有モノマーである、(1)又は(2)記載の接着性ハイドロゲル。
(4)水溶性主鎖モノマー、架橋剤、重合開始剤、及び側鎖にカテコール基を有する接着性モノマーから合成された接着性ハイドロゲル。
(5)前記カテコール基が、ドーパ又はその誘導体に由来する、(4)記載の接着性ハイドロゲル。
(6)前記水溶性主鎖モノマーがビニル基含有モノマーである(4)又は(5)記載の接着性ハイドロゲル。
(7)前記カテコール基の少なくとも1つの水素が、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、及びカルボニル基から選択される置換基で置換されている、(1)~(6)いずれか1つ記載の接着性ハイドロゲル。
(8)さらに電解質を含む、(1)~(7)のいずれか1つ記載の接着性ハイドロゲル。
(9)(8)に記載の接着性ハイドロゲルを含む、生体用粘着剤。
(10)水溶性主鎖モノマー、架橋剤、重合開始剤、及び側鎖にカテコール基を有する接着性モノマーを含む接着性ハイドロゲル作製用組成物。
(11)前記カテコール基が、ドーパ又はその誘導体に由来する(10)記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
(12)前記水溶性主鎖モノマーがビニル基含有モノマーである(10)又は(11)記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
(13)前記カテコール基の少なくとも1つの水素が、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、及びカルボニル基から選択される置換基で置換されている、(10)~(12)いずれか1つ記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
(14)さらに電解質を含む、(10)~(13)のいずれか1つ記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物。
(15)(10)~(14)のいずれか1つ記載の接着性ハイドロゲル作成用組成物からなる接着剤。
(16)(15)記載の接着剤が、前記水溶性主鎖モノマー、前記架橋剤、前記重合開始剤及び前記接着性モノマーを一液中に含む一液型接着剤、又は前記水溶性主鎖モノマー、前記架橋剤、及び前記接着性モノマーを第一液に含み、前記重合開始剤とを第二液に含む二液型接着剤として使用される、ハイドロゲルを含有する接着剤。
(17)(15)又は(16)記載の前記接着剤が、骨、歯、若しくは軟組織の接着、又は骨、歯、若しくは軟組織と医療用部材との接着に使用される、医療用接着剤。
(18)前記医療用部材が、検知電極、刺激電極、インプラントである、(17)記載のハイドロゲルを含有する医療用接着剤。
(19)(10)~(14)いずれか1つ記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物を含有する、船底防汚塗料。
(20)(10)~(14)いずれか1つ記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物を含有する、水系潤滑剤。
(21)(10)~(14)いずれか1つ記載の接着性ハイドロゲル作製用組成物を含有する、防汚用被覆材。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】DMAモノマーのFT-IRスペクトルとDMA含有ハイドロゲルのFT-IR ATRスペクトを示す図。
【図2】ダブルネットワークゲルのFT-IR ATRスペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における接着性モノマーは、主鎖との連結が側鎖のカテコール基を介せずに連結する。そのため、接着性モノマーのカテコール基はすべて基材等との接着に関与し得る。よって、強固な接着性を備えたハイドロゲルを作製することが可能となる。

【0016】
本発明のハイドロゲルは、その主鎖モノマーとしては、水溶性モノマーであればどのような化合物でも構わないが、水溶性ビニル基含有モノマー、ポリエチレングリコール、メタクリル酸2-ヒドロキシメチル(HEMA)を好適に用いることができる。好ましくは水溶性ビニル基含有モノマーであれば、例えば、下記一般式(1)で表される構造の水溶性ビニル基含有モノマーを使用することができる。

【0017】
【化1】
JP0006663150B2_000002t.gif

【0018】
前記一般式(1)中、Rは、水素、炭素数1~20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアラルキル基を表し、好ましくは水素、炭素数1~5の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基であり、より好ましくは水素又は炭素数3以下の直鎖状アルキル基であり、更に好ましくはH又はCH3を示す。

【0019】
2は、炭素数1~20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアラルキル基を表し、好ましくは炭素数1~8の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、炭素数6~8のアリール基、又は炭素数7又は8のアラルキル基であり、より好ましくは炭素数3以下の直鎖状アルキル基である。

【0020】
Xは、アミド基又はエステル基を表すが、含まれていなくてもよいが、アミド基又はエステル基を含むほうが好ましい。

【0021】
上記式(1)で表されるモノマーは、Xがアミド又はエステルでRが炭素数1~20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基の場合、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、n-プロピル(メタ)アクリルアミド、2-プロピル(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリルアミド、1-メチルプロピル(メタ)アクリルアミド、2-メチルプロピル(メタ)アクリルアミド、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、1-メチルブチル(メタ)アクリルアミド、1-エチルプロピル(メタ)アクリルアミド、tert-ペンチル(メタ)アクリルアミド、2-メチルブチル(メタ)アクリルアミド、3-メチルブチル(メタ)アクリルアミド、2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、n-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、1-メチルペンチル(メタ)アクリルアミド、1-エチルブチル(メタ)アクリルアミド、2-メチルペンチル(メタ)アクリルアミド、3-メチルペンチル(メタ)アクリルアミド、4-メチルペンチル(メタ)アクリルアミド、2-メチルペンタン-3-イル(メタ)アクリルアミド、3,3-ジメチルブチル(メタ)アクリルアミド、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリルアミド、1,1-ジメチルブチル(メタ)アクリルアミド、1,2-ジメチルブチル(メタ)アクリルアミド、1,3-ジメチルブチル(メタ)アクリルアミド、2,3-ジメチルブチル(メタ)アクリルアミド、1-エチルブチル(メタ)アクリルアミド、2-エチルブチル(メタ)アクリルアミド、ヘプチル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ノニル(メタ)アクリルアミド、デシル(メタ)アクリルアミド、ウンデシル(メタ)アクリルアミド、ドデシル(メタ)アクリルアミド、トリデシル(メタ)アクリルアミド、テトラデシル(メタ)アクリルアミド、ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、ヘキサデシル(メタ)アクリルアミド、ヘプタデシル(メタ)アクリルアミド、オクタデシル(メタ)アクリルアミド、ノナデシル(メタ)アクリルアミド、イコシル(メタ)アクリルアミド、シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、シクロブチル(メタ)アクリルアミド、シクロペンチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド類、及びメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、2-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、1-メチルブチル(メタ)アクリレート、1-エチルプロピル(メタ)アクリレート、tert-ペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、1-メチルペンチル(メタ)アクリレート、1-エチルブチル(メタ)アクリレート、2-メチルペンチル(メタ)アクリレート、3-メチルペンチル(メタ)アクリレート、4-メチルペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルペンタン-3-イル(メタ)アクリレート、3,3-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、1,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、2,3-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、1-エチルブチル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。

【0022】
Xがアミド又はエステルでRが炭素数6~20のアリール基の場合、フェニル(メタ)アクリルアミド、インデニル(メタ)アクリルアミド、ペンタレニル(メタ)アクリルアミド、ナフチル(メタ)アクリルアミド、アズレニル(メタ)アクリルアミド、フルオレニル(メタ)アクリルアミド等のアリール(メタ)アクリレート類が挙げられる。

【0023】
また、Xがアミド又はエステルでRが炭素数7~20のアラルキル基の場合、ベンジル(メタ)アクリルアミド等のアラルキル(メタ)アクリルアミド類、及びベンジル(メタ)アクリレート、等のアラルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。

【0024】
一方、上記式(1)でXが含まれないモノマーとしては、Rが炭素数1~20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基の場合、プロピレン、2-メチル-1-プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-tert-ブチル-3,3-ジメチル-1-ブテン、シクロプロピレン、シクロブテン、シクロペンテン又はシクロヘキセン等が挙げられる。

【0025】
上記式(1)でXが含まれないモノマーとしては、Rが炭素数6~20のアリール基の場合、ビニルベンゼン(スチレン)、等のビニルアリール類が挙げられる。

【0026】
上記式(1)でXが含まれないモノマーとしては、Rが炭素数7~20のアラルキル基の場合、3-フェニル-1-プロピレン、2-フェニル-1-プロピレン、4-フェニル-1-ブテン、3-フェニル-1-ブテン、2-フェニル-1-ブテン、5-フェニル-1-ペンテン、4-フェニル-1-ペンテン、3-フェニル-1-ペンテン、2-フェニル-1-ペンテン、6-フェニル-1-ヘキセン、5-フェニル-1-ヘキセン、4-フェニル-1-ヘキセン、3-フェニル-1-ヘキセン、2-フェニル-1-ヘキセン、7-フェニル-1-ヘプテン、6-フェニル-1-ヘプテン、5-フェニル-1-ヘプテン、4-フェニル-1-ヘプテン、3-フェニル-1-ヘプテン、2-フェニル-1-ヘプテン、8-フェニル-1-オクテン、7-フェニル-1-オクテン、6-フェニル-1-オクテン、5-フェニル-1-オクテン、4-フェニル-1-オクテン、3-フェニル-1-オクテン、2-フェニル-1-オクテン、9-フェニル-1-ノネン、8-フェニル-1-ノネン、7-フェニル-1-ノネン、6-フェニル-1-ノネン、5-フェニル-1-ノネン、4-フェニル-1-ノネン、3-フェニル-1-ノネン、2-フェニル-1-ノネン、10-フェニル-1-デセン、9-フェニル-1-デセン、8-フェニル-1-デセン、7-フェニル-1-デセン、6-フェニル-1-デセン、5-フェニル-1-デセン、4-フェニル-1-デセン、3-フェニル-1-デセン、2-フェニル-1-デセン、11-フェニル-1-ウンデセン、10-フェニル-1-ウンデセン、9-フェニル-1-ウンデセン、8-フェニル-1-ウンデセン、7-フェニル-1-ウンデセン、6-フェニル-1-ウンデセン、5-フェニル-1-ウンデセン、4-フェニル-1-ウンデセン、3-フェニル-1-ウンデセン、2-フェニル-1-ウンデセン、12-フェニル-1-ドデセン、11-フェニル-1-ドデセン、10-フェニル-1-ドデセン、9-フェニル-1-ドデセン、8-フェニル-1-ドデセン、7-フェニル-1-ドデセン、6-フェニル-1-ドデセン、5-フェニル-1-ドデセン、4-フェニル-1-ドデセン、3-フェニル-1-ドデセン、2-フェニル-1-ドデセン、13-フェニル-1-トリデセン、12-フェニル-1-トリデセン、11-フェニル-1-トリデセン、10-フェニル-1-トリデセン、9-フェニル-1-トリデセン、8-フェニル-1-トリデセン、7-フェニル-1-トリデセン、6-フェニル-1-トリデセン、5-フェニル-1-トリデセン、4-フェニル-1-トリデセン、3-フェニル-1-トリデセン、2-フェニル-1-トリデセン、14-フェニル-1-テトラデセン、13-フェニル-1-テトラデセン、12-フェニル-1-テトラデセン、11-フェニル-1-テトラデセン、10-フェニル-1-テトラデセン、9-フェニル-1-テトラデセン、8-フェニル-1-テトラデセン、7-フェニル-1-テトラデセン、6-フェニル-1-テトラデセン、5-フェニル-1-テトラデセン、4-フェニル-1-テトラデセン、3-フェニル-1-テトラデセン、2-フェニル-1-テトラデセン等が挙げられる。また、これらモノマーにその他の有機モノマーをあわせて用いてもよい。

【0027】
架橋剤としては、重合性二重結合によって三次元架橋構造を導入し得るものを広く含む。具体的な例としては、例えば、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)-ビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのジビニル化合物;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエ-テル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、トリメチロールプロパンジ(メタ)アリルエーテル、テトラアリロキシエタン、またはグリセロールプロポキシトリアクリレートなどが挙げられる。これら架橋剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。

【0028】
本発明におけるカテコール基を有する接着性ポリマーは、非特許文献3に記載の方法によって製造することができる。ここでは、無水メタクリル酸、及びドーパミン塩酸塩からカテコール基を含有する接着性モノマーを作製したが、無水メタクリル酸に代えて、主鎖モノマーと同様の水溶性ビニル基含有モノマーを使用して、接着性モノマーを作製することが可能である。接着性モノマーとしては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。

【0029】
【化2】
JP0006663150B2_000003t.gif

【0030】
前記一般式(2)中、Rは、水素、炭素数1~20のアルキル基を表し、直鎖状、分岐状あるいは環状のいずれでもよく、好ましくは水素又は炭素数1~5のアルキル基であり、より好ましくは水素又は炭素数3以下の直鎖状アルキル基であり、更に好ましくはH又はCH3を示す。Yは、アミド又はエステルを表すが、含まれていなくてもよい。pは0又は1~10の整数を表し、好ましくは0又は1~5の整数であり、より好ましくは0又は1~3の整数であり、さらに好ましくは2である。

【0031】
このようなモノマーとしては、Yがアミドの場合、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチル](メタ)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル](メタ)アクリルアミド(以下で「ドーパミン(メタ)アクリルアミド」ということがあり、単にDMAと略記することがある。)、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピル](メタ)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ブチル](メタ)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ペンチル](メタ)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ヘキシル](メタ)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ヘプチル](メタ)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)オクチル](メタ)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ノニル](メタ)アクリルアミド、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)デシル](メタ)アクリルアミドが挙げられる。

【0032】
また、Yがエステルの場合、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチル](メタ)アクリレート、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル](メタ)アクリレート(「ドーパミン(メタ)アクリレート)(「ドーパミン(メタ)アクリレート)」ということがある。)、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピル](メタ)アクリレート、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ブチル](メタ)アクリレート、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ペンチル](メタ)アクリレート、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ヘキシル](メタ)アクリレート、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ヘプチル](メタ)アクリレート、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)オクチル](メタ)アクリレート、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)ノニル](メタ)アクリレート、N-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)デシル](メタ)アクリレート、が挙げられる。

【0033】
また、Yが含まれない場合は、3,4-ジヒドロキシスチレン、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-プロペン、4-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-ブテン、5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-ペンテン、6-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-ヘキセン、7-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-ヘプテン、8-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-オクテン、9-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-ノネン、10-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-1-デセン、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-メチル-1-プロペン、4-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-メチル-1-ブテン、5-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-メチル-1-ペンテン、6-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-メチル-1-ヘキセン、7-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2メチル-1-ヘプテン、8-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2メチル-1-オクテン、9-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2メチル-1-ノネン、10-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2メチル-1-デセン等が挙げられる。

【0034】
ハイドロゲルの接着性は、ハイドロゲルに含有されるカテコール基の数に比例する。したがって、強固な接着性を要する場合には、側鎖にカテコール基を含む接着性モノマーの量を増加させればよい。すなわち接着性モノマーの量を調節することによって、所望の接着強度を得ることができる。

【0035】
また、本発明において接着性を付与するための接着性モノマーとしては、下記一般式(3)のR~Rに1つ以上の置換基を導入してもよい。すなわち、カテコール基の水素が置換基によって置換された基を側鎖に含むものであってもよい。置換基としては、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、カルボニル基などを含有させることができる。置換基を導入する場合には、同一の基を導入してもよいし、異なる基を導入してもよい。R~Rに置換基を導入することにより、側鎖をカテコール基とした場合に比べて接着性を弱めることが可能である。強固な接着性を必要としない場合には、接着性モノマーの量を調節するだけではなく、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、カルボニル基などの置換基を導入した接着性モノマーを使用することにより接着性の強度を調節することが可能である。

【0036】
【化3】
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【0037】
本発明で用いられるカテコール基を有する接着性モノマーとしては、ドーパ又はその誘導体に由来するものが、性能や製造の容易さの点で好ましく、容易に入手可能な点で、ドーパに由来するものがより好ましい。ここでいうドーパ又はその誘導体に由来するものとは、上記一般式(2)又は(3)で表わされるもののうち、p=2で表わされるものをいい、好ましくは製造のしやすさからドーパに由来するものであり、具体的にはドーパ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)から合成することができるものをいい、より好ましくはドーパミン(メタ)アクリルアミド、ドーパミン(メタ)アクリレートであり、製造のしやすさからドーパミン(メタ)アクリルアミドが更に好ましい。

【0038】
カテコール基を含む接着性モノマーは、主鎖モノマーと接着性モノマーの合計のモル数に対して、通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは8%以上であり、通常50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下の割合で加えればよい。

【0039】
重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤等、どのようなものを用いてもよいが、光重合開始剤が好適に用いられる。光重合開始剤としては、紫外線又は可視光線で開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビス-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミドや2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジハイドロクロリド等のアゾ系重合開始剤、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられ、より具体的には、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン(製品名:IRGACURE(登録商標)2959、BASFジャパン株式会社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(製品名:Darocur(登録商標)1173、BASFジャパン株式会社製)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(製品名:IRGACURE(登録商標)184、BASFジャパン株式会社製)、2-メチル-1-[(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(製品名:IRGACURE(登録商標)907、BASFジャパン株式会社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン(製品名:IRGACURE(登録商標)369、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。

【0040】
本発明の接着性ハイドロゲルは、前記の構成要素を重合することにより、得ることができる。すなわち、水溶性主鎖モノマー、架橋剤及び側鎖にカテコール基を含有する接着性モノマーを含む組成物(以下、ハイドロゲル作製用組成物)を調製し、重合することができる。

【0041】
重合方法としては特に限定はされず、前記水溶性主鎖モノマーに対し、側鎖として、前記のカテコール基を含む接着性モノマーを有する構造が得られればよい。

【0042】
重合の方法は特に限定はされず、通常用いられる重合方法が用いられるが、好ましくは溶液重合が好ましい。本発明の接着性ハイドロゲルは、通常、水を含む溶液中に、構成要素を溶解させて重合させる。このとき接着性ハイドロゲルの性能や、重合反応を阻害しない限りにおいて、他の極性溶媒を併用することができる。他の極性溶媒を用いることにより、水溶性主鎖モノマーや前記接着性モノマーの溶解性を向上させることができ、これらのモノマー成分を溶解させた際の反応液の濃度が、特に限定はされないが、0.1M以上となることが好ましい。

【0043】
前記極性溶媒としては特に限定はされないが、具体的にはジメチルスルフォシキド(DMSO)、メタノール、N-メチルピロリドン(NMP)、イオン性液体等を用いることができるが、十分な量の接着性モノマーを共重合させる点でDMSOが好ましい。

【0044】
重合反応により得られたハイドロゲルは、強い接着性を有する。その構造としては、特に限定はされないが、主鎖として前記の水溶性モノマーが重合した構造を有し、前記カテコール基を有する接着性モノマーが側鎖として重合した構造を有する。重合の態様は特に限定はされないが、通常はランダム共重合体である。そして、接着性モノマーが有する構造のうち、具体的に接着性モノマーがビニル基含有モノマーである場合はそのビニル基が架橋点となり、架橋剤と結合を形成する。一方、カテコール基はフリーの状態でポリマー中に存在する構造を有している。そしてカテコール基は、接着可能点として機能し、接着性ハイドロゲルの機能を発現することになる。

【0045】
本発明のハイドロゲルのpHは、特に限定されないが、通常10以下であり、好ましくは9以下である。pHが前記範囲内であることにより、水素結合能が阻害されないため、十分な接着性を有することができるためである。

【0046】
本発明のハイドロゲルは、一液型接着剤、二液型接着剤として使用することができる。一液型接着剤として使用する場合には、上述の水溶性主鎖モノマー、架橋剤、重合開始剤、接着性モノマー(ハイドロゲル作製用組成物)を一液に含有させればよい。また、二液型接着剤として用いる場合には、水溶性主鎖モノマー、架橋剤、及び接着性モノマーを第一液に含み、重合開始剤を第二液とすればよい。

【0047】
さらに、これら接着剤の加工適正や接着性を向上させるため、必要に応じて、増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤、耐光安定剤、消泡剤、可塑剤、顔料等の着色剤を添加してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の水分散液、例えば、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系、アクリルスチレン系等のエマルジョン、スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等のラテックス、ポリエチレン系、ポリオレフィン系等のアイオノマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ系樹脂等を混合してもよい。

【0048】
本発明の接着剤は、ハイドロゲルを多様な材料面に強固に接着することができる。例えば、ハイドロキシアパタイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、ガラスのような無機物、鉄、金、銀、チタンのような金属、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミドのような樹脂に接着性を有する。また、これら材料面への接着性を利用して、基板に組成の異なるハイドロゲルを接着することも可能である。したがって、下記に示すような様々な応用が可能である。

【0049】
本発明のハイドロゲル組成物からなる接着剤は、骨、歯、若しくは軟組織の接着、又は骨、歯、若しくは軟組織と医療用部材とを接着する医療用接着剤として使用することができる。例えば、骨や歯などの硬組織を接着する硬組織用接着剤としては、外科手術において骨や人工骨の接着に、歯科分野においては、折れた歯の接着修復、接着ブリッジに用いることができる。また、皮膚、消化管、血管、気管等、軟組織の接着剤としては、創傷の接着、手術時の吻合に用いることができる。

【0050】
さらに、これら組織と検知電極、刺激電極、インプラント等の医療用部材との接着に用いることができる。本発明の接着性を備えたハイドロゲルは強固な接着性を備えていることから、検知電極や、刺激電極を健康管理や診断、治療のために身体に貼り付けるウェアラブルデバイスとして使用する場合に好適である。また、歯科用、骨用インプラントを固定する際にも好適な接着剤として使用することができる。これら医療用接着剤として使用する際には、必要に応じて、顔料、薬剤等、任意の添加剤を加えてもよい。

【0051】
また、本発明の接着性ハイドロゲルはカテーテルや、ステント、心臓ペースメーカーのような植込み型医療機器にタンパク質や細胞が付着するのを防止する防汚用被覆材として用いることができる。例えば、カテーテルに微生物がコロニーを形成することによって引き起こされる尿路感染は、頻度の高い院内感染として問題となっている。ハイドロゲルによって被覆すれば、これら医療用機器の微生物の付着を防ぐことができる。本発明の接着性ハイドロゲルを防汚用被覆材として使用する際には、必要に応じて、公知の顔料、抗菌剤等、任意の添加剤を加えてもよい。

【0052】
さらに、本発明の接着性ハイドロゲルは、カテコール基の含有量を少なくする、あるいはニトロ基や水酸基などの置換基によって接着性を弱めたものを使用することにより、剥離可能な粘着剤として使用することもできる。接着性を弱めることにより剥離可能となり、繰り返し用いることができるので生体用粘着剤として好適に使用することができる。また、ハイドロゲル中に電解質を加えることにより、例えば、EMS(Electrical Muscle Stimulation)などの健康器具用電極、心電図測定用電極、低周波治療用器具電極などの皮膚に粘着させて用いる電極として使用することが可能である。生体用粘着剤を電極として使用する場合には、ハイドロゲルを作製する際の水溶液中に以下の電解質を含有すればよい。

【0053】
電解質としては、水溶液中で陽イオンと陰イオンとを生じればどのような化合物を用いてもよいが、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、リン酸イオンなどの電解質イオンを生成するものを好ましく用いることができる。具体的には、塩化ナトリウムなどのハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属等を水溶液中に含有させればよい。また、次亜塩素酸、硫酸、リン酸等の無機酸と各種金属との塩、又はこれら無機酸のアンモニウム塩、さらに酢酸、安息香酸、乳酸等の一価カルボン酸との各種金属塩やアンモニウム塩、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸、酒石酸等の多価カルボン酸と1種又は2種以上の各種金属やアンモニアとの塩などを用いることができる。これら電解質は一種類を用いてもよいし、2種以上をハイドロゲルを作製する際の水溶液中に含有させても構わない。また、ハイドロゲル作製後、電解質を含有する水溶液中にハイドロゲルを浸漬し、ハイドロゲル中の水と電解質溶液を置換して用いてもよい。

【0054】
また、本発明のハイドロゲルは電解質を含ませ、建築物等に電極を貼付するために使用することもできる。例えば、橋梁等に電極を接着する場合に本発明のハイドロゲルを用いることができる。電解質が含まれていることから、橋梁等の構造物に電極を貼り付けて通電することも可能である。錆が生じているような場合であっても、ハイドロゲルは密着性がよいことから接着性がよく、簡単に接着することができる。建築物に電極を貼り付ける場合には、電解質としては上記の電解質と同等のものを加えればよい。

【0055】
また、本発明の接着性ハイドロゲルは船底防汚塗料としても用いることができる。生物付着を防ぐ一般的な方法は、表面に防汚性のポリマーを固定することである。本発明のハイドロゲルは、鉄等の金属に対しても強固に接着することができるので、船底をハイドロゲルで被覆することができる。ハイドロゲルで船底を被覆することによって、フジツボなどの海洋生物の船底への付着を防止することができる。本発明の接着性ハイドロゲルを船底防汚塗料として用いる場合には、必要に応じて、有機防汚剤成分、可塑剤、無機脱水剤(安定剤)、タレ止め、沈降防止剤、着色顔料、防錆剤等を加えてもよい。

【0056】
本発明の接着性ハイドロゲル作製用組成物は水系潤滑剤としても好適に使用することができる。生体親和性の高いハイドロゲルを使用すれば、インプラントと骨との間の潤滑剤として用いることが可能であるし、切削加工等、水系潤滑剤を用いる機械部品の潤滑剤としても使用することができる。本発明の水系潤滑剤には、必要に応じて、防錆剤、バインダー、消泡剤、気泡剤、乳化剤、防腐剤等、潤滑剤組成物の構成成分として公知の成分を含有させてもよい。

【0057】
本発明の接着性ハイドロゲルは、基材に被覆することによって、そのまま上記防汚用被覆材、船底防汚塗料、水系潤滑剤として用いることができる。また、基材に接着性ハイドロゲルを被覆し、その上にさらに接着性のないハイドロゲルを被覆し、防汚用被覆材等として用いることもできる。
【実施例1】
【0058】
≪接着性ハイドロゲルの作製≫
水溶性主鎖モノマーとして950mM アクリルアミド、架橋剤として13.0mM N,N-メチレンビスアクリルアミド、重合開始剤として65.6mM 2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロピオフェノン、接着性モノマーとして50mM ドーパミンメタクリルアミド(Dopamine methacrilamide、DMA)を用い、プレポリマー水溶液を調整した。溶媒としては、6.7ml PBS(2.68mM KCl、136.9mM NaCl、8.05mM NaHPO、1.47mM KHPO)に、3.3mlになるようにDMSOを添加した水溶液を用いた。調整したプレポリマー水溶液は重合阻害となる酸素を除くために窒素バブリングを2分間行った。DMSOを水溶液に添加することにより、重合基を付与したカテコール基の極性が低下しても、重合させることができる。
【実施例1】
【0059】
プレポリマー水溶液をUV透過性アクリル板にキャストして、窒素雰囲気下において波長300nm、1mW/cmの光を6時間照射し、重合したハイドロゲルを合成した。得られたハイドロゲルの組成を全反射フーリエ変換赤外吸収分光(FT-IR ATR)により、FT/IR6100(JASCO社製)を用いて確認を行った。
【実施例1】
【0060】
図1にDMAモノマー及びDMAを含むハイドロゲルのFT-IR ATR解析の結果を示す。アクリルアミドのアミドに由来する伸縮振動(図中、点線の矢印で示す。)とカテコール基(図中、実線の矢印で示す。)に由来するピークが観察される。DMAを混合したゲルでは、側鎖としてDMAが導入され、ゲル表面にDMAが存在していることを確認した。
【実施例2】
【0061】
≪ハイドロゲルの接着性の検討≫
DMA濃度を0~200mMまで変え、アクリルアミドとの和が1000mMになるように調整してプレポリマー水溶液を調整した。水溶液の組成を表1に示す。調製した溶液30μlを接着面積が20mm×26mmになるように2枚のスライドガラスに挟み込み、窒素雰囲気下において波長300nm、1mW/cmの光を6時間照射し、重合を行った。
【実施例2】
【0062】
【表1】
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【実施例2】
【0063】
作製した試料を用いて重ね剪断試験を行った。得られたハイドロゲルを引っ張り試験機(株式会社イマダ製、DPU)にセットし、10mm/minの速度で引っ張り、重ね剪断試験によりハイドロゲルの剥離応力を測定した。重ね剪断試験は各3回行い剥離応力はその平均値を算出した。
【実施例2】
【0064】
DMAを含まないハイドロゲル試料1、及び表1に示す濃度でDMAを含むハイドロゲル試料2、3,4の重ね剪断試験を行った。試料1の剥離応力は0.93kPaであったのに対し、試料2(DMA濃度50mM)は14.9kPa、試料3(DMA濃度100mM)は31.8kPa、試料4(DMA濃度200mM)は13.9kPaであった。
【実施例2】
【0065】
試料3はDMAを含まない試料1と比較して、30倍以上の強度を得ることができた。試料4は、DMA含有量が200mMと最大であるにもかかわらず、試料3よりも接着力が得られなかった。これは、DMA含有量が多くなるとpHが急激に低下し(pH5以下)、水素結合能が阻害されたためであると考えられる。pHを調整することによって、より接着性の高いハイドロゲルを作製することも可能であるが、カテコール基の水溶性を考慮すると接着性モノマーの含有量は、主鎖モノマーと接着性モノマーの合計のモル数に対して50%以下が望ましい。
【実施例3】
【0066】
≪異なる基材に対するハイドロゲルの接着性の検討≫
アクリルアミド(60mg/ml)、DMA(20mg/ml)、N,N-メチレンビスアクリルアミド(20mg/ml)、Irgacure2959(10μg/ml)をPBSバッファ(pH7)6.7ml、DMSO 3.3ml中に溶解させ、酸素プラズマ(100W、1分間)により表面を洗浄したガラス及び金基板、コラーゲンゲル、ソフトコンタクトレンズ、テフロン(登録商標)基板上にキャストし、実施例1と同様の条件で光重合を行った。
【実施例3】
【0067】
ピンセットで引っ張る事により、ハイドロゲルが剥離できるか確認したところ、テフロン基板以外のどの場合もハイドロゲルは剥離せず安定に接着していた。この結果からDMA含有ハイドロゲルはテフロン基板上から剥離可能で、その他の基板には強固に接着する事を確認した。ここでは、結果を示さないが同様の表面特性を備えた銀、チタン、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の基材にも接着することが可能である。
【実施例4】
【0068】
≪ハイドロゲル表面へのDMA含有ハイドロゲル形成≫
ダブルネットワーク(以下、DNと記載することもある。)ゲルの表面にDMA含有ハイドロゲルの形成を試みた。DNゲルは以下の手法により合成した。2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、2-オキソグルタル酸をそれぞれ1M、40mM、1mMの濃度で調製した。ガラス板の間に溶液を挟み、UV光を1mW/cmの強度で照射しながら6時間、窒素雰囲気下で重合を行うことで最初のゲルを合成した。その後、ジメチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、2-オキソグルタル酸をそれぞれ3M、3mM、3mMの濃度で調製し、ゲルを2晩浸漬した後、同様に重合を行いDNゲルを合成した。
【実施例4】
【0069】
実施例2の試料4に示したDMAのプレポリマー溶液をテフロン基板上に50μlキャストし、15mm角で0.5mm厚みの合成したDNゲルを載せた。その後、実施例2と同様の条件で20分間光重合を行い、ゲル化させた。得られたハイドロゲルをテフロン基板から剥離し、ゲルの空気側とテフロン基板側の組成をFT-IR ATRにより測定した。
【実施例4】
【0070】
図2に基板であるテフロンに面した側(テフロン側)、空気に面した側(空気側)、夫々のFT-IR ATRスペクトルを示す。空気側はアクリルアミドのアミドに由来する強いピークのみが観察されたのに対し、テフロン側ではDMAに由来する吸収ピーク(図中矢印で示す。)が観察された。図2に示すように、ハイドロゲルの特定の面にDMA含有ハイドロゲルを形成できる事が示された。すなわち、基板の側には接着性のあるDMA含有ハイドロゲルを形成し、表面には接着性のないハイドロゲルを配置することが可能となる。潤滑性を必要とするインプラントや人工関節の表面をハイドロゲルで被覆する、船底にハイドロゲルをコートする事によりフジツボなどの生物付着を阻害するといった応用が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の接着性ハイドロゲルは強固な接着性を備え、種々の基材に結合することができるため、接着剤やハイドロゲルの被覆に利用することができる。具体的には、医療用接着剤、防汚用被覆材、船底防汚塗料、水系潤滑剤として利用することができる。本発明の接着性ハイドロゲルを防汚用被覆材、船底防汚塗料、水系潤滑剤として使用する場合には、接着性ハイドロゲルで基材をそのまま被覆してもよいし、基材に接着性ハイドロゲルを被覆し、さらにハイドロゲルを被覆して用いてもよい。
図面
【図1】
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【図2】
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