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明細書 :合金接合材による接合層構造及びその形成方法、並びに該接合層構造を有する半導体装置及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年2月15日(2018.2.15)
発明の名称または考案の名称 合金接合材による接合層構造及びその形成方法、並びに該接合層構造を有する半導体装置及びその製造方法
国際特許分類 B23K   1/00        (2006.01)
B23K  35/28        (2006.01)
C22C  18/04        (2006.01)
C22C  21/00        (2006.01)
H01L  25/07        (2006.01)
H01L  25/18        (2006.01)
H01L  21/52        (2006.01)
FI B23K 1/00 330E
B23K 35/28 310D
B23K 1/00 K
B23K 35/28 310A
C22C 18/04
C22C 21/00 D
H01L 25/04 C
H01L 21/52 B
H01L 21/52 D
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2016-552162 (P2016-552162)
国際出願番号 PCT/JP2015/077938
国際公開番号 WO2016/052700
国際出願日 平成27年10月1日(2015.10.1)
国際公開日 平成28年4月7日(2016.4.7)
優先権出願番号 2014203676
2014248826
優先日 平成26年10月2日(2014.10.2)
平成26年12月9日(2014.12.9)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】大貫 仁
【氏名】玉橋 邦裕
【氏名】千葉 秋雄
【氏名】菅原 良孝
【氏名】本橋 嘉信
【氏名】佐久間 隆昭
出願人 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100176164、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 州志
審査請求 未請求
テーマコード 5F047
Fターム 5F047AA02
5F047AA17
5F047BA16
5F047BB03
5F047BB16
要約 本発明の接合層構造は、被接合材AとBとを合金接合材によって接合し形成される接合層の構造であって、前記合金接合材がZn-Al共析系合金であり、且つ、前記被接合材A及びBと前記合金接合材とのそれぞれの接合面において、どちらか小さな面積を有する方の被接合材の接合面内、又はどちらとも同じ面積を有する被接合材の接合面内に存在する接合層に含まれるAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満とすることで、濡れ性を十分に確保しつつ、且つ、高温の接合強度が高く、応力緩和効果によって接続信頼性の向上を図ることができる合金接合材による接合層構造及びその形成方法、並びに該接合層構造を有する半導体装置及びその製造方法。
特許請求の範囲 【請求項1】
被接合材AとBとを合金接合材によって接合し形成される接合層の構造であって、
前記合金接合材がZn-Al共析系合金であり、且つ
前記被接合材A及びBと前記合金接合材とのそれぞれの接合面において、どちらか小さな面積を有する方の被接合材の接合面内、又はどちらとも同じ面積を有する被接合材の接合面内に存在する接合層に含まれるAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満であることを特徴とする合金接合材による接合層構造。
【請求項2】
前記被接合材A及びBと前記合金接合材とのそれぞれの接合面において、どちらか小さな面積を有する方の被接合材の接合面内、又はどちらとも同じ面積を有する被接合材の接合面内に存在する接合層は、30質量%を超え97質量%以下のAl-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなる組成を有することを特徴とする請求項1に記載の合金接合材による接合層構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接合層の構造を形成するための方法であって、
前記被接合材AとBとの間に、17質量%~30質量%Al-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を介在し、加圧しながら前記接合材を半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作を1回又は2回以上繰り返した後に徐冷することを特徴とする接合層構造の形成方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の接合層の構造を形成するための方法であって、
前記被接合材AとBとの間に、30質量%を超え97質量%以下のAl-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を介在し、加圧又は無圧の状態で前記接合材を半溶融温度領域に加熱し、所望の時間保持した後に徐冷することを特徴とする接合層構造の形成方法。
【請求項5】
前記接合材を半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作の前に、超塑性現象を発現する温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の接合層構造の形成方法。
【請求項6】
前記接合材を半溶融温度領域に加熱し、加圧した状態で所望の時間保持し、30質量%を超え97質量%以下のAl-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなる組成を有する接合層構造を形成した後、そのまま加圧した状態で冷却し、変態超塑性点を通過させる操作を行うことを特徴とする請求項3~5の何れかに記載の接合層構造の形成方法。
【請求項7】
半導体基体、該半導体基体に直接又はセラミック基板を介して接合層によって接合された金属基板を備え、前記接合層が請求項1又は2に記載の構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基体がワイドギャップ半導体であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体基体、該半導体基体に直接又はセラミック基板を介して接合層によって接合された金属基板を備え、前記接合層の構造が請求項3~6の何れかに記載の形成方法によって形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記半導体基体がワイドギャップ半導体であることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の接合強度が高く、応力緩和効果によって接続信頼性の向上を図ることができる合金接合材による接合層構造及びその形成方法、並びに該接合層構造を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子のダイボンディングやパワーモジュールに搭載される半導体素子の実装基板への接合及び実装基板への放熱板の接合には従来からはんだ接合が使用されている。はんだ材としては、Sn-Pb系等の鉛を含むはんだは周知であるが、近年の環境問題への対応からSn-Si型はんだやSn-In型はんだ等の低温はんだ、Sn-Ag-Cu系はんだやSn-Cu系はんだ等中温はんだの鉛レスはんだが開発・実用化されている。しかしながら、250℃以上で使用する高温はんだについては適当な鉛レスはんだ材がなく、高鉛はんだが使用されている。この高鉛はんだは、構成成分として85質量%以上の鉛を含有しており、前記Sn-Pb共晶はんだに比べて環境への負荷が大きい。
【0003】
一方、パワーモジュールやパワーエレクトロニクス製品に使用されるパワー半導体素子としては、近年、従来のSiに代わり、耐熱性に優れ、150~200℃の高温下で性能を安定して発揮できる炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイアモンド(C)及び酸化ガリウム(Ga)等のワイドギャップ半導体への適用が検討されている。製品化が先行するSiC又はGaNの半導体素子は耐熱性に優れるが、それらのワイドギャップ半導体を実装基板等に接合した場合に、耐熱性は半導体素子だけでなく接合材料にも要求される。前記の高鉛はんだ材は高融点を有するものの、環境への負荷が大きく今後の使用が制限されるため、鉛レス代替はんだの検討が進められている。
【0004】
鉛レスの代替高温はんだとしては、Au-Sn、Au-Si、Ai-Ge等のAu系はんだ、Bi、Bi-Cu、Bi-Ag等のBi系はんだ、Zn、Zn-Al系はんだ等が報告されている。それらの中で、Zn、Zn-Al系はんだは、より高い融点を有するため、SiC又はGaN等のパワー用ワイドギャップ半導体素子の接合材としての期待が大きい。
【0005】
Zn-Al系はんだとしては、例えば、特許文献1においてAl:2~9重量%、Ge及び/又はMg:0.05~1重量%、残部をZn及び不可避不純物からなる高温はんだ付用Zn合金が開示されている。前記特許文献1に記載のZn-Al系はんだは、380℃付近の共晶温度を有するZn-Al系共晶合金の融点を適当にさらに下げるために、Ge及び/又はMg、又は更にSn及び/又はInが添加されている。
【0006】
また、特許文献2には、Alを1.0質量%以上及び15.0質量%以下を含有するZn-Al系はんだにおいて、塑性変形を伴う圧延機を用いて作製したシート状のPbフリーはんだ合金が開示されている。このシート状はんだ合金は、高い伸び率と引張強度を有するため、濡れ性及び信頼性に優れ、特に加工性及び応力緩和性に優れる。本発明者等も、Alを17~30質量%含有するZn-Al共析系合金接合材が所定の温度領域で超塑性現象を発現することに着目し、この超塑性現象を利用することによって加工性や応力緩和性に優れる接合材を特許文献3において提案している。
【0007】
一方、特許文献4には、Zn/Al/Znクラッド材を用いた接合材料が提案されている。この接合材料は、接続時の加熱によりAl酸化物が溶融部表面に膜を生成することによって起こる濡れ性の低下を抑制するため、Al系合金層がZn系合金層の間に挟まれた構造を有する。前記特許文献4に記載の接合材料は、Zn/Al/Znクラッド材によって良好な濡れ性を確保することができ、接続後にAl系合金層が応力緩衝材として機能するため、高い接続信頼性を得ることができる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平11-288955号公報
【特許文献2】特開2013-123741号公報
【特許文献3】特許第4803834号公報
【特許文献4】特開2008-126272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パワーモジュールやパワーエレクトロニクス製品に使用される接合材料は、融点が高く、被接合材との濡れ性、接合時の加工性、及び接続信頼性の観点から応力緩和性に優れることが必要条件である。また、接合時の温度は、室温まで冷却されるときの大きな温度差から生じる熱膨張係数による応力の影響を低減するために比較的低い方が好ましいが、仮に接合温度が高くなっても応力緩和性に優れる接合材料であれば、接続信頼性を十分に確保することができる。したがって、従来のはんだ材料と比べて接合温度が比較的高いZn-Al系はんだでは、応力緩衝性を有する構造を形成することが不可欠である。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載のZn-Al系はんだは、AlがZnよりも還元性が強く酸化されやすく濡れ性を低下させるため、その組成の範囲内では合金の濡れ性が十分でない。この濡れ性の低下という問題に加え、はんだ接合における加工性や応力緩和性の点でも問題がある。ZnとAlは共晶合金を造ることによってある程度の柔軟性を持った軟らかい金属となるものの、Znの含有量が多いため、良好な加工性を有するには硬さの点で改良が必要である。また、接合後のZn-Al系はんだ中に応力緩衝材として機能するAl相の存在量が少ないため、応力緩衝性の点で不十分である。
【0011】
前記特許文献2に記載のZn-Al系はんだは塑性変形によってシート状のものが作製されるが、Al含有量が9.0質量%を超えるに伴い、強度は高くなるものの、伸び率が低くなる傾向にある。また、応力緩衝材として機能するAl相が十分な比率で存在するとは言えず、接合温度が高くなる点を考慮すると応力緩和性の一層の向上が求められる。このことは、前記特許文献2において、「Alの含有量は、2.0質量%以上9.0質量%であるとさらに好ましい」と記載されていることからも容易に推察される。
【0012】
前記特許文献3に記載のZn-Al共析系合金接合材は、微細結晶粒の形成による超塑性現象を利用して比較的低い温度で接合を行うことができ加工性及び応力緩和性に優れる。しかしながら、被接合材の接合面とZn-Al共析系合金接合材とを十分に接合させるため、接合界面層及び接合層の構造を最適化する点については十分に検討されておらず、高温の接合強度の向上が必要であるとともに、接合温度を上げた時に必要な応力緩和性についても、前記特許文献2に記載のZn-Al系はんだと同様に、一層の向上が求められる。
【0013】
また、前記特許文献4に記載のZn/Al/Znクラッド材を用いた接合材料は、接続後に応力緩衝材として機能するAl系合金層が形成されるため、応力緩和性に優れる。しかしながら、接合層に微小な亀裂が発生した場合には、その亀裂がAl系合金属層と溶融して形成されるZn-Al合金層との界面で進展しやすく、接合信頼性の点で所望の効果が得られていないのが実情である。前記Zn/Al/Znクラッド材は、Al層を薄くして接合加熱時にAl系合金属層を消失することも検討されているが、Al合金組成部分が接合層内で大きな塊として残存しやすく、亀裂進展の抑制効果を十分に得ることが難しい。また、Zn/Al/Znクラッド材の作製工程において、Zn系合金層とAl合金層との厚さを精度良く加工し、両者の接合面を最適な状態とするための熟練と細かな調整が必要となる。さらに、十分な応力緩和性を得るためには、Zn系合金層とAl合金層の両者の厚さを、適用するデバイスごとに最適化して変える必要があり、汎用性のある接続材料として前記Zn/Al/Znクラッド材が適当であるとは必ずしも言えなかった。
【0014】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、接合材としての濡れ性を十分に確保しつつ、且つ、高温の接合強度が高く、応力緩和効果によって接続信頼性の向上を図ることができる合金接合材による接合層構造及びその形成方法、並びに該接合層構造を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、接合材としてAlの含有量が従来よりも比較的多いZn-Al共析系合金を適用するとともに、接合後に得られるZn-Al共析系合金の接合層において、Alが有する応力緩衝機能を十分に発現できるように前記接合層に含まれるAl(α相)の結晶組織の緻密度を高くした構造を形成することによって、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0016】
本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、被接合材AとBとを合金接合材によって接合し形成される接合層の構造であって、前記合金接合材がZn-Al共析系合金であり、且つ、前記被接合材A及びBと前記合金接合材とのそれぞれの接合面において、どちらか小さな面積を有する方の被接合材の接合面内、又はどちらとも同じ面積を有する被接合材の接合面内に存在する接合層に含まれるAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満であることを特徴とする合金接合材による接合層構造を提供する。
[2]本発明は、前記被接合材A及びBと前記合金接合材とのそれぞれの接合面において、どちらか小さな面積を有する方の被接合材の接合面内、又はどちらとも同じ面積を有する被接合材の接合面内に存在する接合層が、30質量%を超え97質量%以下のAl-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなる組成を有することを特徴とする前記[1]に記載の合金接合材による接合層構造を提供する。
[3]本発明は、前記[1]又は[2]に記載の接合層の構造を形成するための方法であって、前記被接合材AとBとの間に、17質量%~30質量%Al-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を介在し、加圧しながら前記接合材を半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作を1回又は2回以上繰り返した後に徐冷することを特徴とする接合層構造の形成方法を提供する。
[4]本発明は、前記[1]又は[2]に記載の接合層の構造を形成するための方法であって、前記被接合材AとBとの間に、30質量%を超え97質量%以下のAl-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を介在し、加圧又は無圧の状態で前記接合材を半溶融温度領域に加熱し、所望の時間保持した後に徐冷することを特徴とする接合層構造の形成方法を提供する。
[5]本発明は、前記接合材を半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作の前に、超塑性現象を発現する温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作を行うことを特徴とする前記[3]又は[4]に記載の接合層構造の形成方法を提供する。
[6]本発明は、前記接合材を半溶融温度領域に加熱し、加圧した状態で所望の時間保持し、30質量%を超え97質量%以下のAl-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなる組成を有する接合層構造を形成した後、そのまま加圧した状態で冷却し、変態超塑性点を通過させる操作を行うことを特徴とする前記[3]~[5]の何れかに記載の接合層構造の形成方法を提供する。
[7]本発明は、半導体基体、該半導体基体に直接又はセラミック基板を介して接合層によって接合された金属基板を備え、前記接合層が前記[1]又は[2]に記載の構造を有することを特徴とする半導体装置を提供する。
[8]本発明は、前記半導体基体がワイドギャップ半導体であることを特徴とする前記[7]に記載の半導体装置を提供する。
[9]本発明は、半導体基体、該半導体基体に直接又はセラミック基板を介して接合層によって接合された金属基板を備え、前記接合層の構造が前記[3]~[6]の何れかに記載の形成方法によって形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
[10]本発明は、前記半導体基体がワイドギャップ半導体であることを特徴とする前記[9]に記載の半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接合層構造は、接合材料としてAlの結晶構造が均一に分布したZn-Al共析系合金を使用するため、接合後にAlのα結晶相が微細に分布した接合層が形成されるとともに、応力緩衝機能を有するAlの存在量が増えるため、接合層において応力緩和効果が高くなり、接合信頼性の向上を図ることができる。さらに、Alは熱伝導性の高い金属であるため、本発明の接合層構造は熱伝導性にも優れる。濡れ性に関しても、Zn-Al共析合金中のZn及びZn-Al共晶の溶融によって十分に確保することができる。
【0018】
本発明のように、従来よりもAl含有量が比較的多い、Zn-Al共析系合金で発現する超塑性現象を利用することによって、被接合材との接合界面の酸化膜層の破壊除去等による清浄化を行うことができ、ボイドの発生が少ない接合界面を形成することができる。したがって、前記Zn-Al共析系合金からなる接合材を、超塑性現象が発現する温度領域に加熱した状態で所望の時間保持した後、半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作を行う工程を行うことによって、接合界面の濡れ性が確保されるともに応力緩和効果が得られるため、高温の接合強度及び接合信頼性が大幅に向上し、高信頼性で、長寿命の接合部形成を実現できる。さらに、Zn-Al共析系合金からなる接合材を半溶融温度領域から加圧した状態で冷却し、変態超塑性点を通過させるによって得られる超塑性現象を利用することによって、より高い応力緩和機能を有する接合層構造を形成することができる。
【0019】
本発明の接合層構造によってSiC、GaN、C(ダイヤモンド)及びGa等のワイドギャップ半導体素子を実装した半導体装置は、パワーデバイス又はパワーエレクトロニクス製品等で求められる耐熱性の要求に答えることができ、200℃以上、特に250℃以上の高温使用環境において長期間の使用に耐えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】Zn-Al共析系合金の平衡状態図である。
【図2】Zn-Al共析系合金からなる接合層において、Al含有比率とDASとの関係を示す図である。
【図3】半溶融温度領域に加熱した共析Al-Znはんだの加圧接合時における微細構造変化の組織図を示す図である。
【図4】超組成現象を利用した本発明の接合方法の一例を示す工程模式図である。
【図5】SiC高温パワー半導体の構成例とその接合層構造を示す図である。
【図6】本発明の実施例1において測定した接合部せん断強度の加熱温度依存性の結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例3によるSiC半導体装置の接合プロセスと接合信頼性の結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例6によるSiC半導体装置の接合プロセスの模式図を示す図である。
【図9】本発明の実施例6によるSiC半導体装置の接合後の外観写真を示す図である。
【図10】本発明の実施例6によるSiC半導体装置の接合信頼性結果を断面写真で示す図である。
【図11】本発明の接合層構造を有するダイオードの概略断面図である。
【図12】本発明の接合層構造を有するIGBTモジュールの概略平面図である。
【図13】第9図のA-A線に沿う概略断面図である。
【図14】第9図のB-B線に沿う概略断面図である。
【図15】本発明の接合層構造を有する電力用MOSトランジスタの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の接合層は、被接合材AとBとをZn-Al共析系合金によって接合し形成される接合層において、前記被接合材A及びBのどちらか小さな面積を有する方の被接合材の接合面内、又はどちらとも同じ面積を有する被接合材の接合面内に存在する接合層に含まれるAlリッチ相(α相)の結晶組織が従来よりも緻密な状態で含まれる構造を有することを特徴とする。本発明の接合層においてAlリッチ相(α相)はZnリッチ相とは明確に区別して観測されるため、Alリッチ相(α相)の結晶組織を接合層内で同定することが容易である。この接合層構造は、応力緩衝材として機能するAl結晶が接合層内部で高密度に存在することを意味し、接合層の応力緩和性を高める効果を得ることができる。

【0022】
前記被接合材AとBとの組合せは、例えば、半導体素子と金属フレーム、半導体素子とプリント基板、セラミック基板又は金属基板等の実装基板、及び前記実装基板と放熱板等であるが、前記被接合材AとBを個別に特定する必要はない。本発明において接合層構造として着目するのは、前記被接合材A及びBの両者がZn-Al共析系合金を介して接合して形成される接合面である。それに対して、前記被接合材A及びBのどちらか一方だけが前記Zn-Al共析系合金接合材と接触する接合面は、他方の接合面が拘束されていないため発生応力が相対的に小さくなる。したがって、前記被接合材A及びBのどちらか小さな面積を有する方の被接合材の接合面内、又はどちらとも同じ面積を有する被接合材の接合面内に存在する接合層に含まれるAlリッチ相(α相)の結晶組織の緻密さを規定することが本発明において重要な因子となる。

【0023】
本発明において、Alリッチ相(α相)の結晶組織の緻密さはデンドライドアームスペーシング(DAS)の値によって規定することができる。デンドライドアームスペーシング(DAS)の値は、軽金属協会指定の二次技法により測定した値である。測定方法は、前記被接合材A及びBの両者がZn-Al共析系合金を介して接合して形成される接合面を、接合面に対して垂直方向に切り出し、接合面全体を樹脂に埋め込んだ後、観察可能な状態までエメリー紙及びバフ研磨によって鏡面仕上げを行い、エッチングの後、200~400倍程度の光学顕微鏡を用いて組織観察を行う。顕微鏡組織観察して、α-Al晶[Alリッチ相(α相)]の樹枝状晶(デンドライド)の実質的に平行に成長している2次アームの複数本(n本とする、ただしnは5本以上)を視野に選び、それらのデンドライドアームとほぼ直交するように直線Pを引き、n本のデンドライドアームが直線Pを横切る距離Liを、それらのデンドライドアームの本数nより1本少ない数、すなわち(n-1)で除し、これをDASとする。つまり二次デンドライドアームスペーシング(DAS)=Li/(n-1)とする。この測定を数視野繰り返した後、平均値をDASとして求める。

【0024】
本発明の接合層構造は、前記デンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満であることが必要である。本発明者等の検討によると、前記特許文献3に記載の22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を430~480℃の温度範囲で1~30分加熱して半溶融状態の後に徐冷して得られる接合層は、測定したデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.3μmである。この組成のZn-Al共析系合金接合材は、200℃のせん断強度が高鉛はんだ(Pb-Sn-Ag)よりもやや高いものの、十分な強度とは言えず、温度サイクル試験によって評価した接合信頼性も所望の結果を得ることが困難であった。本発明者等はさらに検討を進め、Zn-Al共析系合金接合材により形成される接合層のAlリッチ相(α相)結晶組織の緻密度を高めれば接合信頼性の一層の向上を図れることが分かった。本発明においては、Alリッチ相(α相)結晶組織の緻密度を把握できる物理量としてデンドライドアームスペーシング(DAS)に着目し、このDASを0.3μm未満と規定することによって所望の効果を奏することができる。

【0025】
本発明者等は、次に、本発明の接合層についてZn-Alの含有比率を変えたときのデンドライドアームスペーシング(DAS)の変化を測定した。図1はZn-Al共析系合金の平衡状態図であり、図中には、各Al含有比率において測定したデンドライドアームスペーシング(DAS)の一部を四角で囲んだ枠内に示している。四角で囲んだ枠内のデンドライドアームスペーシング(DAS)の値は、点線矢印で示す各Al含有比率に対応するものである。図1の結果に基づいて、Zn-Alの含有比率とデンドライドアームスペーシング(DAS)の関係をプロットしたのが図2である。

【0026】
図2から、デンドライドアームスペーシング(DAS)はAl含有比率が大きくなるほど小さな値を示し、Al含有率が100%に近づくにつれて0.06μmに収束することが分かる。Al含有率が100%、すなわち純アルミの場合は融点が660℃と非常に高いだけでなく、単独組成では固液相を形成することができず、接合加熱による溶融が非常に困難である。半導体素子として耐熱性を有するSiC、GaN、C(ダイヤモンド)及びGa等のワイドギャップ半導体を使用したとしても、短時間に加熱できる温度は600℃未満、好ましくは500℃以下であるため、Al単独組成を接合材として使用することはできない。したがって、本発明の接合層構造は、デンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超えるAlリッチ相(α相)結晶構造を有する必要がある。

【0027】
本発明の接合層構造は、少なくともデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満であることが必要であるが、応力緩和性の効果を十分に得るためには、Zn-Al共析系合金からなる接合層においてAlの含有比率が30質量%を超え、97質量%以下であることが好ましい。Alの含有比率が30質量%を超え、97質量%以下であるときに、Alが有する応力緩衝機能を十分に発現することができる。Alの含有率増大に伴う応力緩衝機能は、Alの含有比率が22~30質量%の範囲で発現するようになり、30質量%を超えたときに接合信頼性に対して顕著な効果を示すようになる。また、Alの含有比率が97質量%を超えると、接合材中のZn含有比率が非常に小さいため、濡れ性の点で接合材としての使用が困難になる。さらに、図1に示すように、Alの含有比率の増大に伴い固液溶融状態を示す温度が高くなるため、半導体素子の耐熱限界温度を超えた加熱温度で接合を行うことが必要になる場合がある。SiC、GaN、C(ダイヤモンド)又はGaの半導体素子の短時間耐熱温度等を考慮すると、接合時の加熱温度は少なくとも600℃未満がより好ましく、500℃以下が特に好ましい。したがって、Zn-Al共析系合金からなる接合層に含まれるAlの含有比率の上限は97質量%以下にあることが好ましく、80質量%未満がより好ましく、さらに60質量%未満が特に好ましい。

【0028】
本発明のAlの含有比率が30質量%を超え、且つ、97質量%以下、より好ましくは80質量%未満、特に好ましくは70質量%未満の範囲を有するZn-Al共析系合金接合層は、図2に示す曲線から概算されるデンドライドアームスペーシング(DAS)によって規定しても良い。その場合は、デンドライドアームスペーシング(DAS)として0.22μm未満で、且つ、0.068μm、より好ましくは0.08μm、特に好ましくは0.09μmを超える範囲を有する接合層構造に規定することができる。

【0029】
本発明で使用するZn-Al共析系合金は、構成成分としてAl及びZnを含むことが必須であるが、融点を下げたり、加工性、高温強度、疲労強度(耐クリープ性)又は応力緩和性を向上させる目的で、それら以外にもCu、Mg、Ge、Sn、In、Ag、Ni、P等を微量成分として添加しても良い。本発明においては、後述するように、超塑性現象を利用し、且つ、高温強度や疲労強度(耐クリープ性)を向上させる点を特に着目し、それらの効果に対して最も有効な微量成分としてCu及びMgの少なくとも何れかの元素を含有することが好ましい。Cu及びMgの含有量は、共析系合金の全重量100質量部に対してそれぞれ0~1.5質量%及び0~0.05質量%の範囲が好ましい。Cu及びMgの含有量がそれぞれ1.5質量%及び0.05質量%を超えると、Zn-Al共析系合金が脆くなり、本発明の特徴である応力緩和効果が失われる。

【0030】
前記Zn-Al共析系合金は、Cu及びMgの少なくとも何れかの元素を、微量成分として含有する場合も含めて、所定の合金比率になるように秤量配合し、融点以上の温度で均一に溶解した後、所望の形状を有する鋳型に流し込んだ母合金(インゴット)から得られる。インゴットの製造方法としては、例えば、99.9質量%以上のZnとAl、場合によっては微量添加成分として99.9質量%以上のCu、Mgを準備し、それらを組成のバラツキがなく、できるだけ均一に混合できるように切断及び粉砕等により細かにしたものを、所定の合金比率になるように秤量し黒鉛製るつぼに入れる。次いで、黒鉛製るつぼに入った各合金成分の混合物を高周波溶解炉等の溶解炉に入れ、酸化を防止するために窒素、アルゴン等の不活性気体を流しながら加熱溶解させ、溶融状態で均一に混合する。十分に溶解したことを確認した後、高周波電源を切り、溶湯を溶解炉から取り出して鋳型に流しこんで、Zn-Al共析系合金のインゴットを製造することができる。必要に応じて、表面傷を除去するために、インゴットの表面部分をスライス盤などで面削しても良い。また、微量添加成分であるCu又はMgを高純度のAl及びZnと混合させるときに、Cu又はMgの代わりに、Al-Cu又はAl-Mgの母合金の形で、所定の合金比率になるように秤量配合してから溶解する方法を使用しても良い。

【0031】
本発明のZn-Al共析系合金は、溶解によって各合金組成の結晶が均一に近い状態で分布した組織を有するインゴットを接合材として適用しているため、前記特許文献4に開示されているZn/Al/Znクラッド材とは異なり、Al系合金だけからなる層又は大きな塊がZn-Al合金層と分離して形成されることを抑制することができる。したがって、Al系合金層とZn-Al合金層との間で形成される広範囲な界面の存在によって亀裂(クラック)が進展しやすくなるというZn/Al/Znクラッド材が有する技術課題を解決することが可能になる。均一溶解によってクラック進展を抑制するという効果は、Zn-Al共析系合金に含まれるAlの含有比率が高くなるにつれて徐々に小さくなる傾向にあるが、本発明においてAlの含有比率が80質量%を超える場合であっても、ある程度の効果が得られることが分かった。

【0032】
本発明においては、デンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満である接合層構造を、次の2つの形成方法によって形成することができる。第1の形成方法は、前記被接合材AとBとの間に、17質量%~30質量%Al-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を介在し、加圧しながら前記接合材を半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作を1回又は2回以上繰り返した後に徐冷する方法である。第2の形成方法は、前記被接合材AとBとの間に、30質量%を超え97質量%以下のAl-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を介在し、加圧又は無圧の状態で前記接合材を半溶融温度領域に加熱し、所望の時間保持した後に徐冷する方法である。

【0033】
まず、第1の形成方法について説明する。第1の形成方法は、デンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満である接合層構造を形成するために、前記特許文献3に記載の17質量%~30質量%Al-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を用いて、被接合材間に介在させた前記Zn-Al共析系合金接合材を半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作を行うときに、同時に加圧を行う必要がある。接合材を加圧することによって半溶融温度領域に加熱したZn-Al共析系合金接合材が変形し、比較的融点の低いラメラ構造のZnが溶解しながら被接合材との接合面から外部へ押し出され、他方、Alリッチ相(α相)はその半溶融温度領域では溶解しないで前記接合面の内側に留まる。Zn-Al共晶は融点がやや低いため、一部が前記接合面の外部へ押し出される場合もあるが、Alリッチ相(α相)との相互作用により前記接合面の内部に留まるものも存在する。ここで、半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作は1回だけに限定されず、必要に応じて2回以上繰り返しても良い。

【0034】
このようにして、図3の模式図に示すように、共析Al-Znはんだの加圧接合時における微細構造の組織図が変化し、半溶融接合後においてAlリッチ相(α相)の樹枝状晶(図3の黒線部分)がより緻密な状態で形成される。それにより、Alリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満となる接合層構造を得ることができる。半溶融温度領域で一定時間保持して形成された後の接合層の厚さは、Alリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)に応じて調整を行うが、最初の接合材の厚さに対して4/5~2/5の範囲に加圧変形させることが実用的である。接合後に形成される接合層の具体的な厚さは、ボイドレス接合、接合信頼性及び熱伝導性の観点から20μm~200μmが実用的である。接合後の整合層の厚さが20μm未満ではボイドレス接合が困難であるだけでなく、接合信頼性の低下が顕著になる。また、接合層の厚さが200μmを超えると、熱伝導性を向上させるという効果が十分に得られない。本発明の接合層構造は、Alリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が小さく、接合面の垂直方向において熱伝導性がZnより優れるAlの含有量が多くなっているため、従来技術のZn-Al共析系合金と比べて高い熱伝導性を有するという特徴を有するものであるが、この特徴を十分に活かせる接合層の厚さは200μm以下、好ましくは150μm以下である。

【0035】
前記第1の形成方法においては、接合時に接合材を半溶融温度領域に加熱した状態で加圧する工程の前に、被接合材との接合界面の酸化膜層の破壊除去等による清浄化を行い、ボイドの発生が少ない接合界面を形成するため、超塑性流動を利用する工程を採用することができる。17質量%~30質量%Al-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材は、Alの含有量が従来よりも比較的多く、280~410℃(α’領域)又は200~275℃(α+β領域)の温度領域で1~30分加熱し接合材に、微細結晶粒の形成による超塑性現象を発現させることによって優れた加工性を有することが知られている(前記特許文献3を参照)。しかしながら、この超塑性現象が接合界面の清浄化及び高密着化によるボイドレス接合に対して効果があることは従来の接合技術においてほとんど認識されておらず、本発明において前記第1の形成方法を採用する上で鍵となる技術である。

【0036】
図4に、超塑性現象を利用した本発明の接合方法の一例として、200~275℃の温度領域の加熱で発現する超塑性現象を利用したときの接合法の工程模式図を示す。図4に示すように、固相状態のZn-Al共析系合金接合材1を半導体素子2(被接合材Aに相当するもの)のメタライズした部分3の面とCu基板/Ni/Cuめっき膜の構成を有する基板4(被接合材Bに相当するもの)のCuめっき膜5が形成された面との間に介し、上下両面から加圧しながら200~275℃で加熱することによって超塑性現象が発現し、前記接合材の変形が容易となる。接合材1は非接合材の接合面に強く押し付けられスクラブされる状態が発生するため、被接合材との接合界面に存在する酸化膜層の破壊除去等による清浄化を行うことができる。加えて、超塑性現象による加工性の付与により、固相状態のZn-Al共析系合金接合材は被加工材によって押しつけられるため、清浄面同士の密着性が十分に向上し、ボイドの発生が少ない接合界面を形成することができる。引き続き加圧を保持しながら、半溶融状態を示す温度域まで温度を上げて加熱した状態で所定の時間保持することによって、接合材の半溶融だけでなく、被接合材と接合材の間で相互拡散が促進される。Zn-Al共析系合金接合材は、被接合材との相互拡散の促進が通常350℃付近の温度から起こるため、前記の半溶融状態を示す温度域では相互拡散層6の形成によって強固な接合界面を形成することができる。本発明において半溶融状態を示す温度域、すなわち半溶融温度域としてはZn-Al合金の共晶温度より高い380℃を超え、600℃未満の範囲で接合工程が行われるが、半溶融状態を十分に維持できる温度として410℃を超える温度が好ましい。

【0037】
前記第1の形成方法において、加圧するときの圧力は1~50MPaが好ましく、5~30Mpaがより好ましい。圧力が1MPa未満では前記の清浄化及び密着性の向上がほとんど得られない。また、圧力が50MPaを超えると、接合材の半溶融温度における加圧によって接合層が薄くなりすぎるため、接合信頼性の向上を図ることが困難になる。加圧するときの圧力を1~50MPa、より好ましくは5~30MPaに設定することによって、Alリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満となる接合層構造を形成することが容易になる。

【0038】
前記第1の形成方法は超塑性現象を利用して接合界面の清浄化と密着性向上を図ることができるため、加熱しながら昇温した後に保持するときの温度を、半溶融状態を示す温度域の600℃近くの高温にまで上げる必要がなくなる。したがって、半溶融状態を示す温度を比較的低温に設定することが可能となり、接合時の被接合材へのダメージ及び高温加熱によって発生する応力を低減できるという効果が得られる。

【0039】
次に、第2の形成方法について説明する。第2の形成方法は、前記第1の形成方法と比べて、Al含有量が多いZn-Al共析系合金接合材を接合材として適用する方法である。具体的には、30質量%を超え97質量%以下のAl-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金接合材を使用する。このZn-Al共析系合金接合材は、インゴットの状態でAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満であるため、被接合材の間に介在させて半溶融温度領域に加熱するときに、必ずしも加圧する必要は無く、無圧の状態で所望の時間保持した後に徐冷しても本発明の接合層構造を得ることができる。Al含有量の多いZn-Al共析系合金接合材は、Alの熱伝導性がZnに比べて約2倍あり、熱伝導性に優れるという特徴を有するため、無圧に近い状態でも短時間で接合材全体を半溶融温度領域に加熱することができる。それによって、相対的に融点が低いZn及びZn-Al共晶の溶融が促進され、接合材の濡れ性を十分に確保できるという効果が得られる。

【0040】
一方、Al含有量が30質量%に近い組成の合金インゴットを接合材として適用する場合は、Alリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)を小さくするため、半溶融温度領域に加熱するときに加圧しても良い。

【0041】
このように、第2の形成方法は、前記第1の形成方法と比べて無圧又は低圧で接合を行うことができるため、接合装置の簡略化を図る上で好適な接合方法である。前記第2の方法において、加圧を行う場合、そのときの圧力は30MPa以下が好ましく、20Mpa以下がより好ましい。30MPaを超えると、半溶融温度における加圧によって接合層が薄くなりすぎるため、接合信頼性の向上を図ることが困難になる。

【0042】
なお、前記第2の形成方法において、Al含有量が30質量%に近い組成の合金インゴットを接合材として適用する場合は、本発明で使用するZn-Al共析系合金接合材で発現する超塑性現象を利用することができる。接合材を,超塑性現象を示す温度域で加圧しながら一定時間保持すれば、接合界面の清浄化と密着性の向上を図ることができる。超塑性現象は30MPa以下の圧力で十分に発現させることができるが、圧力の下限値としては0.5MPa以上であることが好ましい。圧力が0.5MPa未満であると、超塑性現象を利用しても接合界面の清浄化及び接合材の変形が十分でなく、Alリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.06μmを超え、0.3μm未満となる接合層構造を形成することが困難になるためである。

【0043】
本発明は、上記で説明したように、接合時に接合材を半溶融温度領域に加熱した状態で加圧する工程の前に、超塑性流動による超塑性変形を利用することによって応力緩和機能を有する接合層構造を形成できるが、それ以外にも、超塑性変形を発現する別の方法を利用することができる。超塑性変形は、結晶粒を非常に微細化すると現れる微細結晶粒超塑性(前記特許文献3を参照)とは異なり、応力を加えながら、変態点を通過するような加熱冷却を繰り返すことによって超塑性加工を行う変態超塑性を利用しても発現することが知られている。そこで、本発明者等が詳細に検討した結果、低応力の効果を有する接合層構造は、変態超塑性を利用することでも本発明の応力緩和機能を有する接合層構造が得られることが分かった。この変態超塑性を利用することによって具体的に応力緩和機能を有する接合層を形成した従来例はほとんど見当たらず、Alの含有量の多い接合層構造の形成において特に有効な方法であることは全く認識されていなかった。本発明において変態超塑性を利用して接合層構造を形成する場合、前記第1の形成方法だけでなく、前記第2の形成方法においても適用することが可能である。

【0044】
本発明の接合層を、変態超塑性を利用して形成する方法を図1に示すZn-Al共析系合金の平衡状態図を用いて説明する。図1において、固液共存領域を温度であればいずれの温度でも変態超塑性の効果は同じように得られるが、例として、前記第1の方法に従って、Zn-22%Al合金を用いて450℃に加熱した場合を説明する。

【0045】
図1において、加熱温度を450℃とした場合、この温度においてはAlは固相であるがZnは液相であるため、加圧により、液相Znは接合部の外部へ押し出され、その結果、Alの組成は固相線の22質量%から増加し、30質量%をやや超える。図1においてはa→bに相当する。このまま冷却することによって、Alの組成が30質量%を超える接合層は、図1においてc1で示す変態超塑性点を通過する(図においてb→c1)。さらに、冷却が進むと、図1においてd1で示す別の変態超塑性点を通過する(図においてc1→d1)。このように、変態超塑性点で加熱冷却が繰り返されるため、応力緩和機能を有する接合層が形成される。

【0046】
また、図1においてb→eのように加熱温度を450℃から液相線の温度まで加熱し、同時に加圧することにより、さらにZnが接合層の外部に押し出されて排出され、Alの組成が60質量%である接合層が形成される(図においてe→f)。その後、加圧した状態で冷却すれば、前記と同様に、c2で示す変態超塑性点及びd2で示す変態超塑性点を通過するため(図においてf→c2→d2)、Alが60質量%の接合層、すなわち、より高い応力緩和機構を有する接合部を形成することができる。

【0047】
図1から分かるように、固液共存領域を有する温度範囲であれば、いずれの温度でも同じ効果が得られる。また、接合材に含まれるAlの含有量も任意に選択することができ、例えば、接合材としてあらかじめAlの組成が30質量%を超えるものを使用しても、Znが接合層から押し出されて排出される加熱温度を選べば、その加熱温度で加圧することによって、同じように応力緩和機能を有する接合層を形成することができる。このとき、応力緩和機能を発現する程度は、形成された接合層に含まれるAlの含有量に応じて決まる。このように、変態超塑性を利用して形成する方法は、前記第1の形成方法に限定されず、前記第2の形成方法にも加圧することによって適用できる。

【0048】
本発明の接合層構造を変態超塑性の利用によって形成する方法は、図4に示す200~275℃の温度領域の加熱で発現する超塑性現象と組み合わせることによって、低応力機能を一層高めた接合層を形成することができる。その場合は、図4に示す半溶融・拡散接合の温度として、接合材に含まれるZnが液相となり接合層の外部へ排出されるような温度に加熱すればよい。

【0049】
本発明の接合層構造は、耐熱性、接続信頼性及び熱伝導性の要求が強いパワー半導体素子のダイボンディングやパワーモジュールに搭載される半導体素子の実装基板への接合及び実装基板への放熱板の接合において形成される接合層として適用することができる。例えば、図5に示すように、Cu/SiN/Cu構造の金属フレーム上に、接合材としてZn-Al共析系合金を介して、Al配線/SiC/メタライズの構造を有するSiC半導体素子を上記の第1又は第2の形成方法によってダイボンディングして形成される本発明の接合層構造を有するSiC高温パワー半導体等が挙げられる。

【0050】
それら以外にも、通常の半導体装置のダイボンディング用の接続材料、気密封止を必要とする半導体装置の金属キャップとモジュール基板との接続材料、又はフリップチップを必要とする半導体装置のバンプとして適用したときに形成される接続層としても適用が可能である。例えば、通常の半導体装置としては、半導体素子と該半導体素子を接続するフレームと、一端が外部端子となるリードと、該リードの半導体素子の電極とを接続するワイヤと、前記半導体素子及び前記ワイヤを樹脂封止する封止用レジンとを有し、前記半導体素子と前記フレームがZn-Al共析系合金接合材を介して上記の第1又は第2の形成方法によって接合して形成される本発明の接合層構造を構成するものである。
【実施例】
【0051】
以下において、本発明に基づく実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。ここでは、本発明の接合層構造を有するパワーデバイスとして、SiC高温パワー半導体を搭載した金属フレーム、ダイオード、IGBTモジュール及び電力用MOSトランジスタの例を説明する。
【実施例】
【0052】
<実施例1>
本発明の接合層構造によって得られる接合部のせん断強度について基礎的な実験を行った。接合材として溶解鋳造して得られた22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金を用い、図4に示す方法に従って接合部せん断強度測定用の試料を作製した。この実験では、図4に示す半導体素子2を使用する代わりにCu基板/Ni/Cuめっき膜からなる被接合材4を2枚使用した。厚さ60μmのZn-Al共析系合金接合材を前記Cu基板/Ni/Cuめっき膜からなる2枚の被接合材の間に介して、窒素ガス雰囲気中(本実施例においては非酸化性雰囲気であれば良く、窒素の他にも、アルゴン、ヘリウムあるいは水素を含む非酸化性混合ガスを使用することができる。)で加圧しながら250℃10分間保持した後、その状態で390℃まで昇温し、同じ390℃の温度で5分間保持してから室温まで徐冷した。加圧は、5MPa、10MPa及び24MPaの3条件でそれぞれ条件を変えて行った。
【実施例】
【0053】
Zn-Al共析系合金接合材は、加圧しながら390℃で5分間保持することによって400℃以下の融点を有するZn-Al合金等が接合面から押し出されて変形し、加圧条件5MPa、10MPa及び24MPaにおいて厚さが60μmから、それぞれ55μm、54μm及び52μmと薄くなった。接合後の接合層についてAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)を測定した結果、加圧条件5MPa、10MPa及び24MPaにおいて、DASの値はそれぞれ0.22μm、0.21μm及び0.20μmであった。これらDASの値から図2に示す曲線を用いて接合層に含まれるAl含有量を求めると、Al含有量は30~34質量%となる。
【実施例】
【0054】
本実施例においては、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金を用いて、超塑性現象が起きない条件でも接合実験を行った。すなわち、前記Cu基板/Ni/Cuめっき膜からなる2枚の被接合材の間に介した前記Zn-Al共析系合金を、室温から250℃10分間の加熱工程を経由しないで、そのまま390℃まで昇温し、24MPaで加圧しながら390℃の温度で5分間保持した後、室温まで徐冷した。接合後の接合層の厚さは60μから53μmに薄くなり、DASの値は0.21μmであった。
【実施例】
【0055】
<比較例1>
比較例1として、本実施例のZn-Al共析系合金接合材の代わりに、従来の高温鉛はんだ(Pb-Sn-Ag)を用いて従来の接合方法にしたがって接合層を形成した。
【実施例】
【0056】
このようにして得られた実施例1及び比較例1の接合部について測定したせん断強度の加熱温度依存性の結果を図6に示す。図中のせん断強度は、測定個数n=4としたときの平均値である。図6に示すように、本発明のZn-Al共析系合金接合材は、従来の高温鉛はんだと比べて接合強度が非常に高い接合層を形成することができ、250℃以上の高温においても大きなせん断強度を有し、優れた高温接合強度を有することが分かった。一方、本発明のZn-Al共析系合金接合材による接合層であっても超塑性現象を利用しない場合は、せん断強度が従来の高温鉛はんだと比べてやや向上するものの、その効果は小さい。このように、接合材として17質量%~30質量%Al-0~1.5質量%Cu-0~0.05質量%Mg-Zn系からなるZn-Al共析系合金を接合材として使用する場合は、接合面の表面洗浄化及び密着化の効果を得るために、超塑性現象を利用することが好ましい。
【実施例】
【0057】
なお、本実施例において、加圧条件を5MPa、10MPa及び24MPaと変えても接合層厚さ及びDASの変化が小さかった理由は、半溶融温度が390℃とやや低く、半溶融状態を維持するために十分な温度ではなかったためと考えられる。そこで、半溶融状態になる温度を390℃から430~480℃まで高めたときの接合層構造及びせん断強度を測定した。
【実施例】
【0058】
<実施例2>
実施例1で使用したものと同じ接合材(厚さ60μm)及び被接合材を用いて、10~20MPaの範囲で加圧しながら250℃10分間保持した後、その状態で430~480℃まで昇温し、同じ430~480℃の温度で5分間保持してから室温まで徐冷した。
【実施例】
【0059】
接合後のZn-Al共析系合金接合材は、加圧しながら430~480℃の温度で5分間保持することによってZn及びZn-Al合金の一部が優先的に接合面から押し出されて変形するため、厚さを初期の60μmから30~25μと半分以下に薄くすることができた。接合後の接合層についてAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)を測定した結果、加圧条件10~20Mにおいて、DASの値は0.14~0.12μmの範囲であった。図2に示す曲線から分かるように、Al含有量は50質量%以上にまで高めることができる。
【実施例】
【0060】
このようにして得られた各接合層構造を有する接合部について測定したせん断強度は、実施例1において同じ加圧条件で超塑性現象を利用して接合を行ったZn-Al共析系合金接合材と比べて同じか、又はやや低い値を示した。この理由として、本実施例の接合層は応力緩和機構に大きな効果を有するAl含有量が増えるものの、Alリッチ相(α相)の樹枝状結晶がやや大きくなったり、互いに接近するため、接合層内に形成されるZn-Al合金層との界面で破断が起きやすくなることが考えられる。
【実施例】
【0061】
<実施例3>
本実施例において、SiC半導体素子とCu/SiN/Cu絶縁基板とを、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金の接合材(厚さ60μm)を介して接合して得られる実半導体装置の接合部微細構造及び接合信頼性を評価した。本実施例の実半導体装置は図5に示す構成と構造を有し、SiC半導体素子のサイズは4.7mm×4.7mmである。本実施例によるSiC半導体装置の接合信頼性の結果を、接合プロセスと合わせて図7に示す。
【実施例】
【0062】
図7の(a)に示すように、接合プロセスは、窒素ガス雰囲気中、18MPaで加圧しながら240℃約20分間保持した後、加圧した状態で390℃まで昇温し、その温度で約20分間保持してから徐冷を行う。240℃の加熱は、Zn-Al共析系合金の超塑性現象を利用することによって接合面の表面清浄化および密着化を促進させるために採用したプロセスである。図7の(a)に示す接合プロセスによって形成された接合層は、測定したAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.20μmであり、図2に示す曲線から求めたAl含有量は32質量%である。
【実施例】
【0063】
このようにして接合が行われたSiC半導体装置を用いて温度サイクル試験を行い、試験後の接合部を垂直方向に切断し研磨した後の断面を左端部、中央部及び右端部の3箇所で観察した断面写真を図7の(b)に示す。図7の(b)の結果は、室温⇔300℃の条件で100サイクルの温度サイクル試験を行った後のものである。図7の(b)には、断面の他にも、SiC/はんだ接合材との界面、及びはんだ接合材/Cu界面の両者について、それぞれ500倍及び2000倍に拡大して撮影した写真を合わせて示している。
【実施例】
【0064】
図7の(b)に示すように、本実施例の接合層はボイドレスであり、室温⇔300℃の厳しい条件で行った温度サイクル試験後でもSiC/はんだ接合材及びはんだ接合材/Cu界面の両界面には亀裂が観測されず、優れた接続信頼性を有することが確認された。また、接合面の濡れ性についても十分に確保されていることが分かる。
【実施例】
【0065】
<実施例4>
実施例3に示す接合プロセスにおいて、半溶融温度として設定した390℃に代え、450℃にしたときの実半導体装置の接合部微細構造と接合信頼性を実施例3と同じ方法で評価した。本実施例の接合プロセスは、窒素雰囲気中で18MPaに加圧しながら240℃約20分間保持した後、加圧した状態で450℃まで昇温し、その温度で5~10分間保持してから徐冷を行う方法である。本実施例では、接合面の表面清浄化及び密着化を促進させるため、実施例3と同様に240℃の加熱によってZn-Al共析系合金の超塑性現象を利用した。
【実施例】
【0066】
このようにして形成された接合層はボイドレスであり、測定したAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.13μmであり、図2に示す曲線から求めたAl含有量は50質量%である。また、接合後の実半導体装置の温度サイ.クル試験を室温⇔300℃の条件で行い、100サイクル、300サイクル及び500サイクルの各サイクル終了後の接合部について断面観察して接合信頼性を評価した。その結果、500サイクル後でも、SiC/はんだ接合材及びはんだ接合材/Cu界面の両界面には亀裂が観測されず、優れた接続信頼性を有することが確認された。
【実施例】
【0067】
一方、実施例3で形成した接合部においても、室温⇔300℃の条件でサイクル数を300及び500と増やして温度サイクル試験を行った結果、300サイクル後ではSiC/はんだ接合材及びはんだ接合材/Cu界面の両界面には亀裂が観測されなかったものの、500サイクル後においてSiC/はんだ接合材の接合界面に両端縁から進展した微小な亀裂の存在が観測された。
【実施例】
【0068】
<比較例2>
実施例3に示す接合プロセスにおいて、半溶融状態を示す390℃の加熱温度に代えて、半溶融状態を示さない温度である300℃を採用して接合したときの実半導体装置の接合部微細構造と接合信頼性を、実施例3と同じ接合材(厚さ60μm)を用いて、同じ方法で評価した。本比較例の接合プロセスは、窒素雰囲気中、18MPaで加圧しながら240℃約20分間保持した後、加圧した状態で300℃まで昇温し、その温度で約20分間保持してから徐冷を行う方法である。この接合プロセスでは、300℃の再加熱時に接合層の変形はほとんど見られず、接合材の厚さも初期の60μmとほとんど同じであった。
【実施例】
【0069】
このようにして形成された接合層は、測定したAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.30μmであり、図2に示す曲線から求めたAl含有量は22質量%と組成の変化はなかった。また、接合後の実半導体装置の温度サイクル試験を室温⇔300℃の条件で行い、100サイクル、300サイクル及び500サイクルの各サイクル終了後の接合部について断面観察して接合信頼性を評価した。その結果、300サイクル後で、すでにSiC/はんだ接合材及びはんだ接合材/Cuの両接合界面に両端縁から微小な亀裂の存在が観測され、500サイクルでは大きな亀裂に進展することが分かった。
【実施例】
【0070】
<実施例5>
本実施例において、Zn-Al共析系合金の接合材を加圧しながら半溶融温度領域に加熱した状態で所望の時間保持する操作を2回以上繰り返すことによって形成される接合構造の例を示す。
実施例3の温度サイクル評価試験において使用したものと同じSiC半導体素子とCu/SiN/Cu絶縁基板を用い、接合材として、22質量%Al-78質量%Zn系を用いて、まず1回目の操作として、実施例4で示すものと同じ条件に従って半溶融温度域の450℃で加圧後、固相温度域の400℃まで冷却した。本操作で接合部の組成は実施例4で示したように50質量%Al-50質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金になる。前記組成の接合材は半溶融温度域が470℃から500℃以上に変わることが図1から分かる。そこで2回目の操作として再度窒素ガス雰囲気中、加圧しながら、半溶融温度域の500℃まで昇温し、その温度で20分間保持した後、徐冷した。
【実施例】
【0071】
このようにして形成された接合層はボイドレスであり、測定したAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.11μmであり、図2に示す曲線から求めたAl含有量は55質量%である。接合後の実半導体装置の温度サイクル試験を室温⇔300℃の条件で行い、100サイクル、300サイクル及び500サイクルの各サイクル終了後の接合部について断面観察して接合信頼性を評価した。その結果、500サイクル後でも、SiC/はんだ接合材及びはんだ接合材/Cu界面の両界面には亀裂が観測されず、実施例4と同じように優れた接続信頼性を有することが確認された。
【実施例】
【0072】
以上のように、SiC半導体素子を有する実半導体装置は、Alリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)を小さくし、接合層に含まれるAl含有量を多くした本発明の接合層構造を形成することによって、大きな応力緩衝効果を得ることができる。上記の実施例では半導体素子としてSiCを使用した例を示したが、GaN、C(ダイヤモンド)及びGaの何れかによる実半導体装置においても上記実施例と同じ効果を得ることができる。
【実施例】
【0073】
<実施例6>
本実施例において、SiC半導体素子とCu/SiN/Cu絶縁基板とを、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金の接合材(厚さ200μm)を介して接合して得られる実半導体装置の接合部微細構造及び接合信頼性を評価した。本実施例の実半導体装置は、実施例4と同じように、図5に示すものと同じ構成と構造を有する。本実施例によるSiC半導体装置の接合は、実施例4と同じように、図7の(a)に示す温度プロファイルにおいて、超塑性時の温度として240℃に代えて250℃を、拡散接合時の半溶融状態となる温度として390℃に代えて450℃を採用する以外は、図7に示すものと同じプロセスで行った。450℃で接合後、図1に示すgの点から冷却を行い、c3(約350℃)及びd3(277℃)の各変態超塑性点を通過させることによって、本実施例による接合層構造を得た。図8に本実施例による接合プロセスの模式図を示す。
【実施例】
【0074】
図8に示すように、本実施例で形成した接合層は、測定したAlリッチ相(α相)のデンドライドアームスペーシング(DAS)が0.16μmであり、図2に示す曲線から求めたAl含有量は42質量%(63原子%)である。図9に接合後の外観写真を示す。図9から分かるように、接合後はAl-ZnハンダがSiC半導体素子から押し出されて、周辺に溶出していることが分かる。溶出したAl-ZnハンダのZn含有量は、初期のAl-Zn接合材よりも多く含まれていた。
【実施例】
【0075】
このようにして接合が行われたSiC半導体デバイスを用いて温度サイクル試験を行い、試験後の接合部を垂直方向に切断し研磨した後の断面をほぼ中央部で観察した断面写真を図10に示す。図10の結果は、-40⇔200℃の条件で500サイクルの後、さらに50⇔300℃の条件で1000サイクルを追加して温度サイクル試験を行った後のものである。図10において、(a)及び(b)は、それぞれ拡大率を変えて示した断面写真である。
【実施例】
【0076】
図10に示すように、本実施例の接合層はボイドレスであり、-40⇔200℃×500サイクル+50⇔300℃×1000サイクルの非常に厳しい条件で行った温度サイクル試験後でもSiC/Al-Znハンダ接合材及びAl-Znハンダ接合材/Cu界面の両界面には亀裂が観測されず、変態超塑性を利用したより高い応力緩和機能の発現によって非常に優れた接続信頼性を有することが確認された。また、接合面の濡れ性についても十分に確保されていることが分かる。
【実施例】
【0077】
<実施例7>
図11は本発明のZn-Al共析系合金接合材を使用したダイオードを示す。図において、7は底部が閉鎖され上端が開放された例えば銅製の円筒状ヒートシンク、8はダイオード機能を備えたシリコンチップ、9は銅-インバー(鉄ニッケル合金)-銅からなる緩衝板、10は円板部10aと円板部から垂直に伸びるリード10bとからなるリード電極で、円筒状ヒートシンク7の底部上にZn-Al共析系合金接合材11を介して緩衝板9が、その上にZn-Al系合金接合材12を介してシリコンチップ8が、その上にZn-Al共析系合金接合材13を介してリード電極4の円板部4aが、それぞれ接合されている。シリコンチップ8、緩衝板9及び円板部10aのZn-Al共析系合金接合材と接する面にはNi-Pめっき膜を形成している。Zn-Al共析系合金接合材11、12,13としては、22質量%Al-78質量%Zn系からなる合金を用い、前記実施例4又は6に示す接合プロセスに従って、円筒状ヒートシンク1と、緩衝板9と、シリコンチップ8と、リード電極10の円板部10aとの接合を行う。また、図11に示す14は円筒状ヒートシンク1内に充填したシリコンゴムである。かかる構成のダイオードは所定数の貫通孔を有する冷却フィンの貫通孔に圧入されて自動車用整流装置に使用される。この種整流装置はエンジンルームに配置され、熱的及び機械的に過酷な環境で使用されることから、高温でかつ機械的強度の高い接合材が要求されている。本発明のZn-Al共析系合金接合材による接合層構造を有することにより、250℃以上の高温に耐え、延性と強度を有する接合部を実現できる。この実施例ではシリコンチップを使用した場合を説明したが、シリコンチップの代わりに炭化珪素(SiC)チップを使用することが出来る。炭化珪素チップは500℃でも安定した特性を保持できることから、接合材が固液共有状態に相変態する温度近くまで使用可能な高温ダイオードを実現できる。
【実施例】
【0078】
<実施例8>
図12、図13及び図14は本発明Zn-Al共析系合金接合材を用いた300A級IGBTモジュールの平面図及び断面図を示したものである。
図12は本発明の一実施例であり、1個の300A級モジュール単位の平面図を示したものである。また、図13は図12のA-Aに沿う断面図、図14は図12のB-B線に沿う断面図である。図において、101は放熱板及び支持板として機能する金属基板、102は金属基板101上に2枚並べて、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金接合層103を介して、前記実施例4又は6に示す接合プロセスに従って接合固着された例えばAlNからなるセラミックス基板、104は各セラミックス基板102上に形成した例えばNi/Cuからなる回路層で、回路層104は分離された異なる形状を有する3個の部分、即ち、T字型のコレクタ共通電極となる第1の部分104a、エミッタ電極となる片状の第2の部分104b、ゲート電極となる片状の第3の部分104cからなり、第1の部分104aが中央部に、第1の部分104aの脚部一側に第2の部分104bが、他方側に第3の部分104cが配置されている。第2の部分104b及び第3の部分104cはNi層上にAl層105が形成されている。106はそのアノード側が回路層104の第1の部分104aの脚部上に3個並べて、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金接合層107を介して、前記実施例4又は6に示す接合プロセスに従って接合されたIGBTチップ、108はそのカソード側が第1の部分104aの上辺部上に、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金接合層109を介して、前記実施例4又は6に示す接合プロセスに従って接合されたダイオードチップ、110はIGBTチップ106のエミッタ層上に形成したAlを主成分とする金属層111と第2の部分104b上のAl層105とを超音波ボンディングによって接続した直径500μmAl-0.1~1質量%X(Cu、Fe、Mn、Mg、Co、Li、Pd、Ag、Hfから選ばれた少なくとも一種類の金属)ボンディングワイヤ、112はIGBTチップ105のゲート層上に形成したAlを主成分とする金属層113と第3の部分104c上のAl層105とを超音波ボンディングによって接続した直径500μmAl-0.1~1質量%X(同上)ボンディングワイヤ、114はダイオードチップ108のアノード層上に形成したAlを主成分とする金属層115と第2の部分104b上のAl層105とを超音波ボンディングによって接続したAl-0.1~1質量%X(同上)ボンディングワイヤである。これによって、1枚のセラミックス基板102上に3個の並列接続されたIGBTチップ106と1個のダイオードチップ108とが逆並列接続された回路要素が形成され、1枚の金属基板101上に2個の回路要素が形成される。インバータを構成する場合には、1枚の金属基板101上の2個の回路要素を直列接続し、これを3個並列接続して、各回路要素の接続点を交流出力端子に、並列接続点を直流入力端子にすればよい。電流容量を増やすときはIGBTチップ106及びダイオードチップ108の並列接続数を増やし、高電圧化するときはIGBTチップ106及びダイオードチップ108の直列接続数を増やせばよい。
【実施例】
【0079】
<実施例9>
図15は本発明のZn-Al共析系合金接合材から形成される接合層構造を有する電力用MOSトランジスタを示す概略断面図である。図において、21は放熱板及び支持板として機能する金属基板、22は金属基板21上に、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金接合層23により、前記実施例4に示す接合プロセスに従って接合固着された例えばAlNからなるセラミックス基板、24はセラミックス基板22上に、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金接合層25により、前記実施例4又は6に示す接合プロセスに従って接合固着された電力用MOSトランジスタ基体、26、27及び28は電力用MOSトランジスタ基体のアノード領域、カソード領域及びゲート領域に設けられたアルミニウムからなるアノード電極、カソード電極及びゲート電極である。ゲート電極28は当然のことながら絶縁層29を介してゲート領域上に設けられている。30及び31はカソード電極27及びゲート電極28に、22質量%Al-78質量%Zn系からなるZn-Al共析系合金接合層32及び33により、前記実施例4又は6に示す接合プロセスに従って接合固着されたカソード外部電極及びゲート外部電極である。これらカソード外部電極30及びゲート外部電極31は間に、例えば樹脂を充填して一体構造にしてもよい。この実施例の特徴は、カソード電極27及びゲート電極28とカソード外部電極30及びゲート外部電極31をボンディングワイヤを使用せずに直接接合している点にある。この実施例におけるMOSトランジスタ基体24はシリコン及び炭化珪素を使用することが出来る。炭化珪素基体を使用する場合には炭化珪素が500℃でも安定した特性を保持できることから、接合材が固液共有状態に相変態する温度近くまで使用可能な高温MOSトランジスタを実現できる。
【実施例】
【0080】
本発明のZn-Al共析系合金接合材から形成される接合層構造はIGBTモジュールに限らず一般のパワーモジュール、ダイオードモジュールなどにも適用することができる。
【実施例】
【0081】
本発明の接合層構造は応力緩衝機能を有するAlの存在量が増えるため、接合層において応力緩和の効果が高くなり、接合信頼性の向上を図ることができ、熱伝導性も向上できる。本発明で使用するZn-Al共析系合金が有する超塑性現象を利用することによって、接合界面の濡れ性が確保されるとともに応力緩和効果が得られるため、高温の接合強度及び接合信頼性が大幅に向上し、長寿命の接合部形成を実現できる。 したがって、本発明の接合層構造によってSiC又はGaN、C(ダイヤモンド)及びGa等のワイドギャップ半導体素子を実装した半導体装置は、パワーデバイス又はパワーエレクトロニクス製品等で求められる耐熱性の要求に答えることができ、200℃以上、特に250℃以上の高温使用環境において長期間の使用に耐えることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の接続構造は、一般のパワーモジュール、ダイオードモジュールなどの他の半導体装置にも適用することができ、産業上の有用性は極めて高い。
【符号の説明】
【0083】
1 Zn-Al共析系合金接合材
2 半導体素子
3 メタライズ部分
4 Cu基板
5 Cuめっき膜
6 相互拡散層
7 円筒状ヒートシンク
8 シリコンチップ
9 緩衝板
10 リード電極
11 Zn-Al共析系合金接合材
12 Zn-Al共析系合金接合材
13 Zn-Al共析系合金接合材
14 シリコーンゴム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14