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明細書 :中空糸凍結保存用具及び細胞凍結保存方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6667903号 (P6667903)
登録日 令和2年2月28日(2020.2.28)
発行日 令和2年3月18日(2020.3.18)
発明の名称または考案の名称 中空糸凍結保存用具及び細胞凍結保存方法
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
C12N   1/04        (2006.01)
C12N   5/071       (2010.01)
FI C12M 1/00 A
C12N 1/04
C12N 5/071
請求項の数または発明の数 13
全頁数 16
出願番号 特願2016-568344 (P2016-568344)
出願日 平成27年12月28日(2015.12.28)
国際出願番号 PCT/JP2015/086462
国際公開番号 WO2016/111217
国際公開日 平成28年7月14日(2016.7.14)
優先権出願番号 2015003070
優先日 平成27年1月9日(2015.1.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年11月7日(2018.11.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
発明者または考案者 【氏名】長嶋 比呂志
【氏名】松成 ひとみ
【氏名】内倉 鮎子
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
審査官 【審査官】小金井 悟
参考文献・文献 国際公開第2010/046949(WO,A1)
特開2010-213692(JP,A)
特許第5278978(JP,B2)
国際公開第2006/059626(WO,A1)
特開2009-148221(JP,A)
水野仁二ら,ARTのための低毒性・完全無血清ガラス化保存システムの開発:クライオナノホールガラス化コンテナを用いた,日本受精着床学会雑誌,2009年 3月20日,Vol.26, No.1,p.32-40
調査した分野 C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
内部空間に細胞を包含する中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は、耐低温性材料からなり、
前記支持具は、中空糸を載置するための底部と、前記支持具の長手方向に沿って前記底部から立ち上がる側壁部とを有し、
前記支持具には、前記中空糸が載置される中空糸側と、該中空糸側の反対側と、を貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔が前記支持具の長手方向における両端側には形成されていない、中空糸凍結保存用具。
【請求項2】
前記貫通孔が、前記支持具の長手方向における略中央に形成されている請求項1に記載の中空糸凍結保存用具。
【請求項3】
前記支持具が樹脂製又は金属製である、請求項1又は2に記載の中空糸凍結保存用具。
【請求項4】
中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は、耐低温性材料からなる中空糸凍結保存用具の前記支持具に、内部空間に細胞を包含する中空糸を載置する工程と、
該中空糸が該支持具に載置された状態で、該細胞を凍結保存する工程と、
を有する細胞凍結保存方法。
【請求項5】
前記支持具に前記中空糸を載置する工程の後に、前記中空糸が載置された前記支持具を保護容器に収容する工程を有する請求項に記載の細胞凍結保存方法。
【請求項6】
前記支持具に前記中空糸を載置する工程の後に、前記中空糸を冷却して前記細胞を凍結する工程を有する、請求項又はに記載の細胞凍結保存方法。
【請求項7】
前記細胞が生殖細胞及び/又は幹細胞である請求項のいずれか一項に記載の細胞凍結保存方法。
【請求項8】
前記支持具には、前記中空糸が載置される中空糸側と、該中空糸側の反対側と、を貫通する貫通孔が形成されている請求項のいずれか一項に記載の細胞凍結保存方法。
【請求項9】
前記貫通孔が、前記支持具の長手方向における略中央に形成されている請求項に記載の細胞凍結保存方法。
【請求項10】
前記支持具は、中空糸を載置するための底部と、前記支持具の長手方向に沿って前記底部から立ち上がる側壁部とを有する請求項のいずれか一項に記載の細胞凍結保存方法。
【請求項11】
前記支持具が樹脂製又は金属製である、請求項10のいずれか一項に記載の細胞凍結保存方法。
【請求項12】
前記支持具には、前記中空糸が載置される中空糸側と、該中空糸側の反対側と、を貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔が前記支持具の長手方向における両端側には形成されていない請求項に記載の細胞凍結保存方法。
【請求項13】
前記支持具には、前記中空糸が載置される中空糸側と、該中空糸側の反対側と、を貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔の短径が載置される中空糸の内径よりも大きい請求項に記載の細胞凍結保存方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸を凍結保存するのに用いられる中空糸凍結保存用具、及び内部空間に細胞を包含する中空糸を凍結して細胞を保存する細胞凍結保存方法に関する。
本願は、2015年1月9日に、日本に出願された特願2015-003070号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
細胞の保存方法として、低温保存法や超低温保存法など、細胞を凍結して保存する方法が一般的に行われており、凍結法としては、緩慢凍結法とガラス化凍結法の二つがよく知られている。緩慢凍結法は、緩慢な冷却速度で長時間かけて細胞を冷却し、細胞内での氷晶の形成を抑えることによって、凍結による細胞の損傷(凍害)を避けることができるとされている。しかし、緩慢凍結法は、凍結が完了するまでに長い時間を必要とし、冷却速度を制御する特殊な機能を備えた高価なフリーザーなどを使用する必要があった。緩慢凍結法における欠点を克服する代替方法として、近年、ガラス化凍結法が広く用いられている。ガラス化凍結法は、ガラス化溶液で処理した細胞を液体窒素で素早く凍結させることで、細胞内外に氷晶を形成させずに凍結する方法である。これは、ガラス化と呼ばれる現象、即ち、溶液を急速に冷却させると、本来の凝固点を素早く通過して過冷却が生じ、氷晶が形成されずに水分子の動きが止まるという現象を利用したものである。この方法は、氷晶の形成による細胞の損傷が生じない点、処理にかかる時間が短い点、及び特別な機器が不要な点において、緩慢凍結法より優れているとされている。細胞のガラス化凍結の具体的方法は多数開発されており、一例として、細胞を耐凍性の保存液に浸して液体窒素中や超低温の冷凍庫内で急速に凍結させる方法がある。
【0003】
なかでも、卵子の凍結保存には、専用器具を用いた凍結保存が行われている。例えば現在、卵子の凍結保存方法で用いられている専用器具として、クライオトップ(登録商標)がある。クライオトップとは、柄の先端に非常に薄い短冊状のシートが取り付けられた専用器具(クライオトップ)であり、一般的にクライオトップを用いる凍結保存方法は、クライオトップ法と呼ばれている。クライオトップ法は、例えば、クライオトップのシートの上に、耐凍剤を含む凍結用の液と卵子とを載せ、卵子が載せられたシートを液体窒素に漬けてガラス化凍結させた後、シート部分を保護する鞘状の容器に収めてシートを保護し、液体窒素やフリーザーに入れて保存する。
【0004】
一方で、本発明者らは、近年、細胞の凍結保存方法である中空糸凍結保存法を開発した(非特許文献1)。これは、卵細胞などの細胞をセルロースアセテート膜でできた中空糸内部に導入して、中空糸の内部に卵細胞が包含された状態で凍結保存する方法である。中空糸凍結保存法は、細胞の生存率を向上可能な非常に優れた方法であり、中空糸凍結保存法の普及が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】H. Matsunari, M. Maehara, K. Nakano, Y. Ikezawa, Y. Hagiwara, N. Sasayama, A. Shirasu, H. Ohta, M. Takahashi, H. Nagashima. Journal of Reproduction and Development, Vol. 58 (2012) 599-608.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細胞の凍結保存では、細胞を液体窒素中で凍結保存することが行われているが、細胞をそのまま液体窒素に入れると細菌汚染などの可能性がある。細菌汚染としては、例えば、細菌に感染している細胞が液体窒素に投入されると、この細胞から放出された細菌が液体窒素を汚染し、汚染された液体窒素を介して細菌が別の細胞に付着することが挙げられる。卵子のような希少性の高いサンプルを凍結保存するためには、このような汚染を可能な限り避ける必要があるため、卵子を鞘状の容器の中に収めて密閉状態とし、この状態で凍結保存することが好まれている。クライオトップ法で、シート部分を鞘状の容器に収めてから液体窒素に入れるのは、そのためである。
しかし、中空糸は比較的もろい素材のため、中空糸をピンセットなどでつまんでそのまま凍結保存用の容器に収めようとすると、凍結保存用の容器と中空糸が接触して中空糸が折れてしまうおそれがある。中空糸凍結保存法の利点は既に報告されているが、中空糸が折れやすいなど取扱いに難があり、熟練した研究者に使用者が限られている。
また、本発明者らは、細菌汚染などをさらに効果的に抑制するため、液体窒素に一部を浸漬させた凍結保存用の容器中に、中空糸をピンセットで保持しながら導入し、凍結させる手法も考案したが、本手法においても、中空糸が軽く、比較的もろい素材であることから、上記と同様の理由により、熟練した研究者に使用者が限られている。
このように、中空糸を凍結保存するための適切な器具が存在しないことも、中空糸凍結保存法の普及の妨げとなっている。
そこで、本発明者らは中空糸を保持し、中空糸を容易に扱うことを可能とする中空糸凍結保存用の支持器具が必要であることに思い至った。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、中空糸を簡易に凍結保存させることが可能な、中空糸凍結保存用具、及び内部空間に生殖細胞などの細胞を包含する中空糸を簡易に凍結保存させることが可能な、細胞凍結保存方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の特徴を有する中空糸凍結保存用具及び細胞凍結保存方法を提供するものである。
【0009】
(1)内部空間に細胞を包含する中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は、耐低温性材料からなり、
前記支持具は、中空糸を載置するための底部と、前記支持具の長手方向に沿って前記底部から立ち上がる側壁部とを有し、
前記支持具には、前記中空糸が載置される中空糸側と、該中空糸側の反対側と、を貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔が前記支持具の長手方向における両端側には形成されていない、中空糸凍結保存用具。
)前記貫通孔が、前記支持具の長手方向における略中央に形成されている前記(1)に記載の中空糸凍結保存用具。
)前記支持具が樹脂製又は金属製である、前記(1)又は(2)に記載の中空糸凍結保存用具。
)中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は、耐低温性材料からなる中空糸凍結保存用具の前記支持具に、内部空間に細胞を包含する中空糸を載置する工程と、
該中空糸が該支持具に載置された状態で、該細胞を凍結保存する工程と、
を有する細胞凍結保存方法。
)前記支持具に前記中空糸を載置する工程の後に、前記中空糸が載置された前記支持具を保護容器に収容する工程を有する前記()に記載の細胞凍結保存方法。
)前記支持具に前記中空糸を載置する工程の後に、前記中空糸を冷却して前記細胞を凍結する工程を有する、前記()又は()に記載の細胞凍結保存方法。
)前記細胞が生殖細胞及び/又は幹細胞である前記()~()のいずれか一つに記載の細胞凍結保存方法。
)前記支持具には、前記中空糸が載置される中空糸側と、該中空糸側の反対側と、を貫通する貫通孔が形成されている前記()~()のいずれか一つに記載の細胞凍結保存方法。
)前記貫通孔が、前記支持具の長手方向における略中央に形成されている前記()に記載の細胞凍結保存方法。
10)前記支持具は、中空糸を載置するための底部と、前記支持具の長手方向に沿って前記底部から立ち上がる側壁部とを有する前記()~()のいずれか一つに記載の細胞凍結保存方法。
11)前記支持具が樹脂製又は金属製である、前記()~(10)のいずれか一つに記載の細胞凍結保存方法。
12)前記支持具には、前記中空糸が載置される中空糸側と、該中空糸側の反対側と、を貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔が前記支持具の長手方向における両端側には形成されていない前記()に記載の細胞凍結保存方法。
13)前記支持具には、前記中空糸が載置される中空糸側と、該中空糸側の反対側と、を貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔の短径が載置される中空糸の内径よりも大きい前記()に記載の細胞凍結保存方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空糸を簡易に凍結保存させることが可能な、中空糸凍結保存用具及び細胞凍結保存方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る細胞凍結保存方法の一実施形態の手順を説明する模式図である。
【図7】本発明に係る細胞凍結保存方法の一実施形態の手順を説明する模式図である。
【図8】本発明に係る細胞凍結保存方法の一実施形態の手順を説明する模式図である。
【図9】本発明に係る細胞凍結保存方法の一実施形態の手順を説明する模式図である。
【図10】本発明に係る細胞凍結保存方法の一実施形態の手順を説明する模式図である。
【図11】本発明に係る細胞凍結保存方法の一実施形態の手順を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪細胞培養基材≫
本発明の中空糸凍結保存用具は、中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は、耐低温性材料からなるものである。以下、本実施形態の中空糸凍結保存用具について、図面を参照しつつ、例を挙げて説明するが、本発明の中空糸凍結保存用具は以下の実施形態に限定されない。

【0013】
<第1の実施形態>
本実施形態の中空糸凍結保存用具は、中空糸を載置するための長尺状の支持具を備える。

【0014】
中空糸とは、内部空間に細胞を包含することができ、対象となる細胞を通過させないが、水や電解質、タンパク質などを通過させうる径の孔を複数有する膜がストロー形状に成形されたものをいう。中空糸を形成する膜として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースアセテート、再生セルロールなどが挙げられる。この膜が有する細孔径は、ナノメートルオーダーのものが好ましい。また、膜の厚みは、前述の生殖細胞を観察できる程度の透明性を中空糸が有するためには、好ましくは0.5~30μmであり、さらに好ましくは1~10μmである。

【0015】
中空糸の内径は、対象となる細胞を内包することができる程度が選択され、好ましくは20~1000μmであり、さらに好ましくは50~500μmである。

【0016】
中空糸の長さは、好ましくは、数個の細胞を内包することが可能であり、例えば特許第5051716号公報に記載される気泡の形成に適した長さが選択され、好ましくは1~100mmであり、さらに好ましくは10~40mmである。中空糸の長さがこの範囲内であれば、卵母細胞、卵子及び初期胚であれば1~数十個程度を内包することができる。また、例えば特許第5051716号公報に記載の方法に沿って、始原生殖細胞、精子及び精子細胞であれば数十~数万個程度を内包することができ、かつ、その内包された複数個の生殖細胞に対して中空糸の両開口側に気泡を形成することができる。

【0017】
図1は、本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す斜視図である。中空糸凍結保存用具1は、中空糸を載置するための長尺状の支持具10を備え、支持具10の一端には持ち手となる棒状の柄20が形成されている。

【0018】
支持具10は矩形の板状に形成されている。支持具10の長さは、内部空間に細胞を包含する中空糸の長さよりも長いことが好ましく、一例として、0.5cm~5cmとすることが好ましい。支持具10の幅は、内部空間に細胞を包含する中空糸よりも広く形成されることが好ましく、0.1~1cmに形成されることが好ましい。

【0019】
中空糸凍結保存用具の使用にあたっては、内部空間に細胞を包含する中空糸を支持具10に載置した後に、中空糸を支持具10ごと冷却する作業を行うことが想定される(後述の図7など参照)。この際に、通常、中空糸は凍結保存用の溶液でコーティングされるので、中空糸及び支持具を冷却処理すると、凍結保存用の溶液と中空糸とが一体となって、中空糸が支持具10に固定される。したがって、支持具10のたわみが中空糸のたわみを生じさせる。そのため、支持具10が若干の荷重によって容易に変形して中空糸を破損させてしまわない程度に、支持具10が剛性を示すことが好ましい。
また、中空糸凍結保存用具の使用にあたっては、内部空間に細胞を包含する中空糸が支持具10に載置された後、前記中空糸が載置された支持具を筒状の保護容器に収容する作業を行うことも想定される(後述の図10など参照)。このような作業を行う際、例えば支持具10と保護容器40が接触して支持具10に若干の荷重がかかった場合でも、支持具10が変形して中空糸を破損させてしまわない程度に、支持具10が剛性を示すことが好ましい。

【0020】
支持具10は耐低温性材料からなっていてよい。耐低温性材料とは、凍結保存したときに低温破壊が生じにくい材料をいう。耐低温性材料は、低温又は超低温の気相雰囲気中や、液体窒素に浸漬させても脆化して破損しにくい程度の耐低温性を有する材料であってもよく、例えば、樹脂又は金属である。
なお、ここで、低温の気相雰囲気中とは-20℃~-269℃の気相雰囲気を指し、超低温の気相雰囲気中とは-80℃~絶対零度の気相雰囲気を指し、例えば低温又は超低温の窒素蒸気雰囲気やフリーザー内などが挙げられる。
また、中空糸凍結保存用具の使用にあたっては、内部空間に細胞を包含する中空糸を支持具10と共に加熱する作業を行うことが想定される。この時、中空糸の温度を瞬時に上昇させて、中空糸に包含される細胞を瞬時に加熱することが、細胞の状態にとって好ましい場合がある。
金属としては、例えば、チタン、アルミ、ステンレスなどが挙げられ、これらに制限されない。樹脂としては、合成樹脂であっても天然樹脂であってもよく、合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂などが挙げられるが、これらに制限されない。上記に挙げた合成樹脂のなかでは、ポリカーボネートが好ましい。

【0021】
支持具10の厚みは特に制限されないが、支持具10が樹脂製又は金属製の場合、中空糸が破損しない程度に支持具10に剛性をもたせることを考慮し、支持具10の厚みは0.01mm以上に形成されることが好ましく、0.1mm以上に形成されることが好ましく、0.3mm以上に形成されることがより好ましい。

【0022】
上述のように、中空糸凍結保存用具の使用にあたっては、内部空間に細胞を包含する中空糸を支持具10と共に加熱する作業を行うことが想定される。この時、中空糸の温度を瞬時に上昇させて、中空糸に包含される細胞を瞬時に加熱することが、細胞の状態にとって好ましい場合がある。このような作業を行う際、支持具10の熱容量が大きいと、支持具10の冷たさを中空糸にまで伝えてしまい、中空糸及び細胞を瞬時に加熱することが妨げられてしまうおそれがある。
したがって、支持具10の厚みは特に制限されないが、支持具10が樹脂製又は金属製の場合、支持具10の厚みは0.01mm以上1mm以下に形成されること好ましく、0.1mm以上0.7mm以下に形成されることがより好ましく、0.3mm以上0.5mm以下に形成されることがさらに好ましい。
同一の体積当たりの熱容量を比較すると、通常、樹脂より金属の方が大きくなり、樹脂と金属を比較するならば、樹脂のほうがより好ましい。

【0023】
中空糸を凍結保存するための支持器具として、市販の専用器具は存在しない。しかし、細胞を凍結保存するための市販の専用器具に中空糸を載せようとすると、中空糸を載せることが考慮されていないことから、シート部分の長さが短く、中空糸をうまく載せることができない。また、シート部分が非常に薄く作られているため、シート部分を容器に入れる際などにシートがたわんでしまい、中空糸が折れやすいという問題がある。

【0024】
対して、本実施形態の中空糸凍結保存用具1によれば、支持具10が中空糸を載せるのに適した形状を有し、また支持具10に中空糸を載置して使用しても支持具10が大きくたわむことが無いため、中空糸に包含される細胞にダメージを与えるおそれが少なく、簡易に細胞を凍結保存することができる。

【0025】
<第2の実施形態>
本実施形態の中空糸凍結保存用具は、中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は、耐低温性材料からなり、前記支持具は、中空糸を載置するための底部と、前記支持具の長手方向に沿って前記底部から立ち上がる側壁部とを有するものである。前記第1の実施形態の中空糸凍結保存用具と共通する点については説明を省略する。

【0026】
図2は、本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す斜視図である。中空糸凍結保存用具2は、中空糸を載置するための長尺状の支持具10を備え、支持具10の一端には持ち手となる棒状の柄20が形成されている。支持具10は、底部11と、前記支持具の長手方向に沿って前記底部から立ち上がる側壁部12,13とを有する。

【0027】
図2に示すように、側壁部12,13は支持具10の短手方向における両端部の双方に形成されていることが好ましい。支持具10の底部11に中空糸を載置すると、底部の11の両端に形成された側壁部12,13が中空糸のガイドとなって、中空糸が支持具からはみ出すことを防止する。また、内部空間に細胞を包含する中空糸が支持具10に載置された後、前記中空糸が載置された支持具を筒状の保護容器に収容する場合には、中空糸と保護容器材との接触を防止するので、より良好に中空糸を保護容器に収容することができる。

【0028】
更には、支持具10が側壁部12,13を有することで、支持具全体の剛性を向上させることができる。図2に示すように、側壁部12,13が支持具10に形成されていることで、支持具全体の剛性を向上させるので、側壁部を有していない支持具10と比較して、中空糸が載置され得る底部11の厚みをより薄く設定することが可能となる。底部11の厚みが薄くされることにより、中空糸に包含される細胞を、より迅速に冷却又は加熱することが可能となる。

【0029】
図3(a)は、図2のA-A線断面図である。なお、本実施形態では、図3(a)に示すように、底部と側壁部が垂直に交わるよう接続され、断面形状がコの字状である支持具を例示したが、他の支持具形状としては、図3(b)~(c)に示すように、支持具断面の形状がU字状や、V字状、台形の脚と上底からなる図形の形状などの凹状の断面形状を有する支持具を例示できる。なお、前記凹状の断面形状には、支持具断面の中央部にくぼみ部があるもの及びくぼみ部が支持具断面の中央部より端部に寄ったものが含まれる。支持具断面の形状における、底部と側壁部との長さの比率、底部と側壁部とのなす角度に制限はない。支持具断面の形状における、底部及び側壁部の形状(例えば、直線か又は曲線か、二つの側壁部が同一形状か否か)にも制限はない。
中空糸の取扱いの容易さの観点から、支持具断面の底部と側壁部のなす角度(以下「立ち上がり角度」という。)は、0度超であり90度以下であることが好ましく、20度以上90度以下であることがより好ましい。図3(b)~(c)に示すような、支持具断面の底部が点である支持具の場合の立ち上がり角度は、二つの側壁部が形成する角度の二等分線に対して垂直であって、底部を通る直線に対する側壁部の角度をいう。なお、側壁部が曲線の場合の立ち上がり角度は、側壁部の端部と底部の中央部を結ぶ直線が底部となす角度をいう。
支持具の形状は、その断面形状がコの字状、U字状又はV字状が好ましい。断面形状がU字状や、V字状の場合には、支持具がほぼ側壁部から構成されるため、中空糸を載置した際に、中空糸が支持具10の底部ではなく側壁部のみに接触することとなってもよい。

【0030】
本実施形態の中空糸凍結保存用具2によれば、支持具10が側壁部12,13を有することにより中空糸の取り扱い性が向上することに加え、より良好な状態で細胞の冷却又は加熱を行うことが可能となる。

【0031】
<第3の実施形態>
本実施形態の中空糸凍結保存用具は、中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は、耐低温性材料からなり、前記支持具は、中空糸を載置するための底部と、前記支持具の長手方向に沿って前記底部から立ち上がる側壁部とを有し、前記支持具に貫通孔が形成されているものである。前記第1及び第2の実施形態の中空糸凍結保存用具と共通する点については説明を省略する。

【0032】
図4は、本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す斜視図である。中空糸凍結保存用具3は、中空糸を載置するための長尺状の支持具10を備え、支持具10の一端には持ち手となる棒状の柄20が形成されている。支持具10は、底部11と、前記支持具の長手方向に沿って前記底部から立ち上がる側壁部12,13とを有し、支持具10の底部11に貫通孔Hが形成されている。支持具に形成されている貫通孔Hは、中空糸が載置される中空糸側と該中空糸側の反対側とを貫通している。本実施形態においては、前記支持具に載置される中空糸に対して対向する向きに、前記支持具に貫通孔Hが形成されている。

【0033】
細胞を凍結保存するための市販の専用器具の場合、中空糸を載置することを想定していないため、中空糸を効果的に気体に接触させ、中空糸内の細胞を速やかに冷却することについても考慮されていないという問題があるが、本発明のように前記支持具10の底部11に貫通孔Hが形成されていることにより、外部からの冷気又は熱が中空糸に当たりやすくなるため、中空糸に包含される細胞をより迅速に冷却又は加熱することが可能となる。
ここで、支持具に形成されている貫通孔Hが、中空糸が載置される中空糸側と該中空糸側の反対側とを貫通するように形成されていることにより、外部からの冷気又は熱が中空糸に直接伝わりやすくなるため、中空糸に包含される細胞をより迅速に冷却又は加熱することが可能となる。
本実施形態の中空糸凍結保存用具3に中空糸を載置する場合、支持具10の長手方向と中空糸の長手方向とがほぼ同じ方向となるよう、中空糸を支持具10に載置可能である。
図4に示されるように板状の支持具の板の厚み方向に貫通孔が形成されていることは、支持具に載置される中空糸に対して対向する向きに貫通孔が形成されていることが理解される。

【0034】
中空糸凍結保存法では、中空糸内に細胞を確実に包含するとの観点から、中空糸の長手方向の略中央に細胞が包含されることが好ましい。例えば、中空糸の内部空間には中空糸の端部側から順に、細胞の培養液のみの層、気体層、細胞及び培養液を含む液体層、気体層、培養液のみの層が形成されることが好ましい。したがって、貫通孔Hは、図4に示すように、支持具10の長手方向の略中央に形成されていることが好ましい。貫通孔Hは、支持具10の長手方向の略中央に形成されていることにより、外部からの冷気又は熱が中空糸に直接伝わりやすくなる。また、図4に示すように支持具10の長手方向の両端側には、貫通孔が形成されていないので、支持具全体の剛性を高めることにつながる。また、支持具へと中空糸を載置する際の作業性も良好である。

【0035】
なお、本実施形態では、支持具10の底部11の一部分に貫通孔Hが複数形成されている場合を例示したが、中空糸を載置する機能が損なわれない範囲内で貫通孔Hは支持具に1つ形成されていてもよいし、支持具全体に複数形成されていてもよい。支持具が底部と側壁部を有する場合には、上記の中空糸凍結保存用具3に示すように、貫通孔Hが底部にのみ形成されていてもよく、それとは逆に、側壁部にのみ形成されていてもよい。貫通孔Hの形状は特に制限されず、貫通孔Hの形成された支持具10の形状が、例えば、メッシュ状や、編目状、はしご状となるよう形成されていてもよい。

【0036】
本実施形態の中空糸凍結保存用具3によれば、支持具10に貫通孔Hが形成されていることにより、より良好に細胞の冷却又は加熱を行うことができる。

【0037】
<第4の実施形態>
本実施形態の中空糸凍結保存用具は、中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は、耐低温性材料からなり、前記支持具は、中空糸を載置するための底部を有する。前記支持具には、載置される中空糸側と該中空糸側の反対側とを貫通する貫通孔が形成されている。前記第1~第3の実施形態の中空糸凍結保存用具と共通する点については説明を省略する。

【0038】
図5は、本発明に係る中空糸凍結保存用具の一実施形態を示す斜視図である。中空糸凍結保存用具4は、中空糸を載置するための長尺状の支持具10を備え、支持具10の底部11に貫通孔Hが形成されている。支持具10の底部11の端には、持ち手となる板状の突起21が形成されている。突起21はピンセットなどで容易に把持できる。図5に示されるように、突起21が支持具の長手方向に沿って底部から立ち上がる側壁を構成する場合には、突起21は持ち手を兼ねる側壁部を構成するものとする。

【0039】
本実施形態の中空糸凍結保存用具4によれば、支持具10の長さと中空糸凍結保存用具全体の長さが同長であるので、中空糸保存用具全体の収容性に優れる。

【0040】
≪細胞凍結保存方法≫
本発明の細胞凍結保存方法は、本発明の中空糸凍結保存用具の前記支持具に、内部空間に細胞を包含する中空糸を載置する工程(工程A)と、該中空糸が該支持具に載置された状態で、該細胞を凍結保存する工程(工程D)と、を有する。以下、本実施形態の細胞凍結保存方法について説明するが、本発明の細胞凍結保存方法は以下の実施形態に限定されない。

【0041】
<第1の実施形態>
本実施形態の細胞凍結保存方法は、中空糸凍結保存用具の支持具に、内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を載置する工程(工程A)と、前記工程Aの後に、前記中空糸が載置された支持具を保護容器に収容し(工程B)、前記内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を冷却して前記細胞を凍結する工程(工程C)と、前記工程A、B及びCの後に、該中空糸が該支持具に載置された状態で、該細胞を凍結保存する工程(工程D)とを有する。なお、本発明の細胞凍結保存方法において、前記工程B及び工程Cは必須の工程ではない。

【0042】
本実施形態において、中空糸の内部空間に包含される細胞は生殖細胞及び/又は幹細胞である。生殖細胞とは、始原生殖細胞、精子、精子細胞、卵子、卵母細胞、初期胚を含む包括的な概念である。ここで、精子細胞とは、精子となる過程における前駆細胞をいう。
卵母細胞とは、卵子となる過程における前駆細胞をいう。初期胚とは、着床前の受精卵をいう。幹細胞としては、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞などが挙げられる。
細胞は、細胞塊や細胞組織の状態で中空糸の内部空間に包含されていてもよく、例えば、スフェロイドやオルガノイド、初期胚の状態であってもよい。スフェロイドとは、細胞が多数凝集して3次元状態になったものをいう。オルガノイドとは、細胞を制御された空間内に高密度に集積することにより自己組織化した細胞組織体をいう。

【0043】
中空糸を形成する膜として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースアセテート、再生セルロールなどが挙げられる。生殖細胞を内包させて凍結保存させるためには、なかでもセルロースアセテートが好ましく、セルロースジアセテートがより好ましい。

【0044】
図6~8は、本実施形態の細胞凍結保存方法の手順を説明する模式図である。
内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を得る方法は公知であり、例えば、特許第5051716号公報に記載の方法に沿って、内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を得ることができる。

【0045】
中空糸30は、支持具10に載置される前に、予め凍結保存溶液に浸漬されていてもよい。これにより、生殖細胞を中空糸の内部空間に導入する際に生殖細胞とともに導入された培養液などの第1液体や、生殖細胞の細胞内液などが、凍結保存溶液に置換される。凍結保存溶液は、凍結保存に適した液体である。生殖細胞の凍結保存方法として、高濃度の凍害保護液中での急速冷凍と、低濃度の凍害保護液での通常冷凍と、緩慢な冷却速度で長時間かけて細胞を冷却する緩慢凍結とが挙げられ、本発明の細胞凍結保存方法は、いずれの冷凍法にも適応可能である。高濃度の凍害保護液中での急速冷凍は、ガラス化とも称され、また、凍害保護液はガラス化溶液とも称される。ガラス化凍結は、細胞生存率の観点から好ましい凍結法である。細胞内保護タイプのガラス化溶液として、ジメチルスルホキシド(DMSO)含有液、エチレングリコール含有液、プロパンジオール含有液などが挙げられる。細胞外保護タイプのガラス化溶液として、シュークロース含有液、トレハロース含有液、フィルコールコンレイ溶液、ε-ポリ-L-リジン(PLL)含有液、ε-ポリ-D-リジン含有液、α-ポリ-L-リジン含有液、α-ポリ-D-リジン含有液などが挙げられる。

【0046】
中空糸の内部空間に、包含された第1液体をガラス化溶液に置換するには、第2液体として、ガラス化溶液と培養液などの第1液体とを、適度な濃度勾配となる比率で混合したものが複数用いられてもよい。つまり、ガラス化溶液の濃度が次第に高くなる複数種の第2液体が用いられてもよい。濃度勾配を有する第2液体の種類が多いほど、緩慢な条件で中空糸の内部空間に包含された第1液体や生殖細胞の細胞内液などをガラス化溶液に置換することができるが、あまりに多いと作業が煩雑になるので、2~5種類の第2液体を用いることが通常である。

【0047】
複数種の第2液体を用いる場合には、ガラス化溶液の濃度が低い第2液体へ中空糸を浸す。そして、必要に応じて撹拌しながら置換を所定時間行う。前述のように、中空糸の孔は、生殖細胞を通過させないが、第1液体及び第2液体を通過させる。したがって、中空糸の内部空間や生殖細胞の細胞内液などが第1液体から第2液体に置換される。その際に、生殖細胞は中空糸の内部空間に包含された状態に維持される。これをガラス化溶液の濃度が低い第2液体から順に行うことにより、中空糸の内部空間の第1液体や生殖細胞の細胞内液などがガラス化溶液に置換される。

【0048】
(工程A)
図6に示すように、中空糸凍結保存用具4の支持具10に、内部空間に生殖細胞31を包含し、凍結保存溶液に浸漬された中空糸30を載置する(工程A)。中空糸30は目視によりピンセットなどを用いて操作することができる。

【0049】
(工程B・工程C)
前記工程Aの後に、前記内部空間に生殖細胞31を包含する中空糸30を冷却する(工程C)。図7に示すように、中空糸の冷却は、支持具10とその上に載置された中空糸30とを、予め冷却されている筒状の保護容器40内に導入する(工程B)ことで行う。筒状の保護容器40は、予め筒状の保護容器40の一部を液体窒素60が溜められた容器61に投入して、筒状の保護容器40内の気体を冷却して超低温の気相雰囲気としておく。
筒状の保護容器40内の超低温の気相雰囲気により、中空糸30内にガラス化溶液と共に包含されている生殖細胞31が凍結される。例えば、ヒトの細胞のように、容易に取得できず、細菌汚染の防止を抑制する観点からは、本実施形態に示すように、低温又は超低温の気相雰囲気中で中空糸を凍結させるか、中空糸を液体窒素蒸気に暴露させて凍結させることが好ましい。

【0050】
図8に示すように、中空糸30が載置された支持具10を筒状の保護容器40に完全に収容し、その後、保護容器の蓋40aを取り付ける。これにより中空糸30が密閉される。

【0051】
(工程D)
保護容器40と支持具10とが一体となり、密閉状態とされた中空糸30は、フリーザー、液体窒素中又は液体ヘリウム中に凍結保存する(工程D)。

【0052】
なお、前述のように中空糸の内部空間に包含されて凍結保存された生殖細胞は、中空糸と共に加温液に浸すことにより解凍される。その後、中空糸の一端から内部空間へ排出圧を付与すると、中空糸の内部空間から生殖細胞が外部へ排出される。また、中空糸の内部空間に生殖細胞を包含させた状態で培養を行うのであれば、解凍後に、生殖細胞を包含する中空糸を所望の培地中に投入すればよい。

【0053】
本実施形態の細胞凍結保存方法によれば、中空糸30が載置された支持具10を、予め冷却されている筒状の保護容器40に導入し、支持具10とその上に載置された中空糸30とを冷却するので、細菌汚染などを効果的に抑制可能である。なお、本発明の細胞凍結保存方法は上記実施形態に限られるものではない。

【0054】
以下、本発明の細胞凍結保存方法に係る他の実施形態を説明する。前記第1の実施形態の細胞凍結保存方法と共通する点については説明を省略する。

【0055】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の細胞凍結保存方法は、本発明の中空糸凍結保存用具の前記支持具に、内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を載置する工程(工程A)と、前記工程Aの後に、前記中空糸が載置された支持具を筒状の保護容器に収容する工程(工程B)と、前記工程Bの後に、前記内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を冷却して前記細胞を凍結する工程(工程C)と、前記工程A、B及びCの後に、該中空糸が該支持具に載置された状態で、該細胞を凍結保存する工程(工程D)とを有する。
たとえば、前記支持具10に中空糸30を載置し、中空糸30が載置された支持具10を保護容器に収容した後に、支持具10とその上に載置された中空糸30とを収めた保護容器40ごと、液体窒素に投入して中空糸30を冷却し、その後、細胞を凍結保存してもよい。

【0056】
<第3の実施形態>
第3の実施形態の細胞凍結保存方法は、本発明の中空糸凍結保存用具の前記支持具に、内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を載置する工程(工程A)と、前記工程Aの後に、前記内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を冷却して前記細胞を凍結する工程(工程C)と、前記工程Cの後に前記中空糸が載置された支持具を筒状の保護容器に収容する工程(工程B)と、前記工程A、B及びCの後に、該中空糸が該支持具に載置された状態で、該細胞を凍結保存する工程(工程D)とを有する。
たとえば、中空糸凍結保存用具2を用いた場合を例示すると、前記支持具10に中空糸30を載置し、中空糸30が載置された支持具10を直接液体窒素に投入して中空糸を冷却して細胞を凍結させ(図9)、凍結後に中空糸30を筒状の保護容器50に収容し(図10)、その後、細胞を凍結保存してもよい。又は、中空糸30が載置された支持具10を液体窒素蒸気に暴露させて中空糸を冷却して細胞を凍結させ、凍結後に中空糸30を筒状の保護容器50に収容し、その後、細胞を凍結保存してもよい。

【0057】
<第4の実施形態>
第4の実施形態の細胞凍結保存方法は、内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を冷却して前記細胞を凍結する工程(工程C)と、前記工程Cの後に、本発明の中空糸凍結保存用具の前記支持具に、内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を載置する工程(工程A)と、前記工程C及びAの後に、前記中空糸が載置された支持具を筒状の保護容器に収容する工程(工程B)と、前記工程A、B及びCの後に、該中空糸が該支持具に載置された状態で、該細胞を凍結保存する工程(工程D)とを有する。
たとえば、内部空間に生殖細胞を包含する中空糸を予め冷却して生殖細胞を凍結させた後、該中空糸を支持具に載置し、該中空糸が該支持具に載置された状態で、該細胞を凍結保存しても構わない。

【0058】
なお、第2~第4の実施形態の細胞凍結保存方法として、工程Bを有する場合を例示したが、本発明の細胞凍結保存方法において、工程Bは必須ではない。例えば、工程Aの後に、工程Cを行い、その後工程Dを行ってもよい。又は、工程Cの後に工程Aを行い、その後工程Dを行ってもよい。
なお、第1~第4の実施形態の細胞凍結保存方法の説明において図7~11を参照し、中空糸凍結保存用具4又は中空糸凍結保存用具2を用いる場合を例示したが、本発明の細胞凍結保存方法において、中空糸凍結保存用具は、本発明の中空糸凍結保存用具であればよく、例えば、上記実施形態の中空糸凍結保存用具1や、中空糸凍結保存用具3を用いてもよい。
また、本発明の一実施形態として、本発明の中空糸凍結保存用具の、前記中空糸凍結のための使用を提供する。即ち、本発明の一実施形態として、中空糸を載置するための長尺状の支持具を備え、前記支持具は耐低温性材料からなる保存用具の、前記中空糸凍結のための使用を提供する。

【0059】
<保護容器>
保護容器の形状としては特に限定されず、丸筒状や角筒状などの筒状や、袋状などの形状が挙げられる。筒状の場合、先に例示した保護容器40,50のように、筒の一方の端が開口した開口部が形成され、他方の端が閉じられた試験管状の形状であることが、密閉性の観点から好ましい。袋状の場合も同様に、袋の一部に開口部が形成され、該開口部以外は閉じた形状であることが好ましい。特にヒトの細胞を凍結保存するような場合には、密閉性の観点から、保護容器の形状は、丸筒状や角筒状などの試験管状が好ましい。多数の中空糸を一度に密閉するような場合には、袋状が好ましい。
保護容器の開口部は、図8に例示したように、蓋体によって閉じられてもよく、図10に例示したように、中空糸凍結保存用具の挿嵌によって閉じられてもよい。また、図8に例示したように中空糸凍結保存用具全体が密閉されることで中空糸が密閉されてもよく、図10に例示したように中空糸凍結保存用具の一部が密閉されることで中空糸が密閉されてもよく、更には、支持具の一部が密閉されることで中空糸が密閉されてもよい。密閉性の観点から、中空糸凍結保存用具全体が密閉されることが好ましい。
また、柄20と支持具10および中空糸30全体を内包した状態でより容易に密閉するため、保護容器を柄20の外周縁の径よりも大きな内径を有する試験管状とし、柄20と支持具10および中空糸30を収容した後に、試験管状の保護容器51の開口部をヒートシールなどの手法により閉じることで、中空糸凍結保存用具全体を密閉してもよい(図11)。

【0060】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、中空糸を簡易に凍結保存させることが可能な、中空糸凍結保存用具、及び内部空間に生殖細胞などの細胞を包含する中空糸を簡易に凍結保存させることが可能な、細胞凍結保存方法を提供することができ、生物学関連分野、医学関連分野、特に生殖医療分野などで、広く利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,2,3,4…中空糸凍結保存用具、10…支持具、11…底部、12,13…側壁部、20…柄、21…突起、30…中空糸、31…生殖細胞、40,50,51…保護容器、40a…蓋、60…液体窒素、61…容器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10