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明細書 :ターゲット分析チップおよびターゲット分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6383015号 (P6383015)
登録日 平成30年8月10日(2018.8.10)
発行日 平成30年8月29日(2018.8.29)
発明の名称または考案の名称 ターゲット分析チップおよびターゲット分析方法
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
C12Q   1/6816      (2018.01)
G01N  35/00        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/07        (2006.01)
FI C12M 1/00 ZNAA
C12Q 1/6816 Z
G01N 35/00 D
G01N 21/64 F
G01N 21/07
請求項の数または発明の数 21
全頁数 28
出願番号 特願2016-570733 (P2016-570733)
出願日 平成28年1月22日(2016.1.22)
国際出願番号 PCT/JP2016/051925
国際公開番号 WO2016/117700
国際公開日 平成28年7月28日(2016.7.28)
優先権出願番号 2015010639
優先日 平成27年1月22日(2015.1.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年7月21日(2017.7.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】村上 章
【氏名】小堀 哲生
【氏名】山吉 麻子
【氏名】野田 雄一郎
【氏名】近藤 正幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】鳥居 敬司
参考文献・文献 特開平2-232563(JP,A)
特開2011-128019(JP,A)
特開2005-137295(JP,A)
米国特許第5639428(US,A)
国際公開第02/097084(WO,A1)
国際公開第99/58245(WO,A1)
国際公開第99/51773(WO,A1)
米国特許出願公開第2005/0014154(US,A1)
国際公開第2014/012077(WO,A1)
Colloid Polym. Sci., 1990, Vol.268, pp.45-54
調査した分野 C12M 1/00-1/42
G01N 21/00-21/958
G01N 35/00-10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板を有し、
前記基板が、ターゲットを含む試料と試薬とを反応させる反応部、標識検出の対象領域である検出部、および前記反応部と前記検出部とを連通する流路を有し、
前記試薬は、担体を有し、
前記担体は、比重が1より大きく、前記ターゲットに結合する標識プローブが固定化されており、且つ前記ターゲットとの結合体を形成するものであり、
前記流路が、前記担体の前記反応部から前記検出部への移動を制御する移動制御手段を有し、
前記移動制御手段が、前記流路における疎水性の内壁を有し、
前記移動制御手段により、前記結合体は、前記流路の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)を負荷された場合、前記流路を介して前記検出部に移動できることを特徴とする、ターゲット分析チップ。
【請求項2】
前記流路が、前記反応部側から前記検出部側に向かって、狭窄する構造である、請求項1記載のターゲット分析チップ。
【請求項3】
前記検出部の高さが、1~500μmである、請求項1または2記載のターゲット分析チップ。
【請求項4】
前記検出部の内部空間の容積が、前記反応部の内部空間の容積よりも小さい、請求項1から3のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項5】
前記担体が、ビーズである、請求項1からのいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項6】
前記ビーズの直径が、100nm~4μmである、請求項5記載のターゲット分析チップ。
【請求項7】
前記担体が、シリカ製である、請求項1から6のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項8】
前記流路の側面が、前記反応部から前記検出部側に向かってテーパー状に狭まる曲面である、請求項1から7のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項9】
前記標識プローブの標識が、前記標識プローブが前記ターゲットに結合することにより、シグナル変化する物質である、請求項1から8のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項10】
前記標識が、ピレンを含む物質である、請求項9記載のターゲット分析チップ。
【請求項11】
前記標識プローブが、さらにソラレンで修飾されたプローブである、請求項10記載のターゲット分析チップ。
【請求項12】
前記ターゲットが、マイクロRNAである、請求項1から11のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項13】
前記標識プローブの量が、1zmol~1nmolである、請求項1から12のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項14】
前記試薬が、さらに界面活性剤を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項15】
前記反応部が、前記試料が導入される試料導入部を兼ねる、請求項1から14のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項16】
前記基板が、さらに前記試料が導入される試料導入部および前記試料導入部と前記反応部とを連通する流路を含み、
前記試料導入部における前記試料は、前記遠心力(C2)未満の遠心力(C1)によって、前記反応部に移動できる、請求項1から14のいずれか一項に記載のターゲット分析チップ。
【請求項17】
前記試料導入部と前記反応部とを連通する流路が、さらにフィルタを有する、請求項16記載のターゲット分析チップ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のターゲット分析チップを用い、
前記反応部に、試料および試薬を導入する工程、
前記反応部において、前記試料と、前記標識プローブが固定化された担体とを接触させ、前記試料中のターゲットと前記標識プローブとを結合反応させることにより、前記ターゲットと前記標識プローブとの結合体を形成する工程、
前記反応部における結合体を、前記流路の内壁の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)によって、前記検出部に移動させる工程、および、
前記検出部において、前記ターゲットが結合した前記標識プローブの標識を検出することにより、前記試料中のターゲットを分析する工程を含むことを特徴とする、ターゲット分析方法。
【請求項19】
前記反応部において、前記試料と前記担体とを含む混合物を撹拌する、請求項18記載のターゲット分析方法。
【請求項20】
前記標識プローブの標識が、前記標識プローブが前記ターゲットに結合することにより、シグナル変化する物質であり、
前記検出部において、前記標識のシグナル変化を検出する、請求項18記載のターゲット分析方法。
【請求項21】
前記標識が、ピレンを含む物質であり、
前記検出部に紫外光を照射し、波長450~510nmの蛍光シグナルを検出する、請求項20記載のターゲット分析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット分析チップおよびターゲット分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血中マイクロRNA等のRNAと疾患との関連性が注目されており、前記RNAの検出を、疾患の早期発見等のため医療に利用することが試みられている。
【0003】
マイクロRNAの定量方法としては、例えば、ターゲットのマイクロRNAをポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)により特異的に増幅して検出する方法が報告されている(特許文献1)。しかしながら、PCRが必須であるため、温度コントールを行う装置、DNAへの逆転写等が必要であり、操作が煩雑となる。また、前記方法では、少量の試料に含まれるRNAから、逆転写によりDNAを得て、さらにPCRを行うことで増幅させている。しかし、このような逆転写PCRは、前記試料中のRNAの間接的な検出であって、直接的な検出ではないため、定量分析の場合、精度が十分ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許5192229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、例えば、PCRを必須とすることなく、マイクロRNAをはじめとするターゲットを直接的に検出するための新たなターゲット分析チップおよび分析方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記本発明の課題を解決するために、本発明のターゲット分析チップ(以下、「分析チップ」ともいう。)は、基板を有し、
前記基板が、ターゲットを含む試料と試薬とを反応させる反応部、標識検出の対象領域である検出部、および前記反応部と前記検出部とを連通する流路を有し、
前記試薬は、担体を有し、
前記担体は、前記ターゲットに結合する標識プローブが固定化されており、且つ前記ターゲットとの結合体を形成するものであり、
前記流路が、前記担体の前記反応部から前記検出部への移動を制御する移動制御手段を有し、
前記移動制御手段が、前記流路における疎水性の内壁を有し、
前記移動制御手段により、前記結合体は、前記流路の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)を負荷された場合、前記流路を介して前記検出部に移動できることを特徴とする。
【0007】
本発明のターゲット分析方法(以下、「分析方法」ともいう。)は、前記本発明のターゲット分析チップを用い、
前記反応部に、試料および試薬を導入する工程、
前記反応部において、前記試料と、前記標識プローブが固定化された担体とを接触させ、前記試料中のターゲットと前記標識プローブとを結合反応させることにより、前記ターゲットと前記標識プローブとの結合体を形成する工程、
前記反応部における結合体を、前記流路の内壁の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)によって、前記検出部に移動させる工程、および、
前記検出部において、前記ターゲットが結合した前記標識プローブの標識を検出することにより、前記試料中のターゲットを分析する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、PCRを使用することなく、試料中のターゲットを直接的に分析できる。また、前記標識プローブが固定化された担体を使用する本発明は、前記流路が、前記移動制御手段として前記疎水性の内壁を有することで、前記反応部から前記検出部への前記担体の移動を制御でき、前記ターゲットと前記標識プローブとの結合体に、前記流路の内壁の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)を負荷することによって、例えば、前記検出部に高濃度の状態で回収できる。このため、試料中のターゲットの分析において、優れた感度および精度を実現でき、例えば、前記ターゲット分析チップに供する試料が微量であっても、分析可能である。したがって、本発明は、例えば、マイクロRNAをはじめとするターゲットの分析が行われる医療分野等において有用といえる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のターゲット分析チップの一例を示す概略図であり、(A)は、斜視図、(B)は、上面図、(C)は、(A)のI-I方向の断面図である。
【図2】図2は、遠心装置の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、遠心装置にターゲット分析チップを配置した状態の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明のターゲット分析チップの一例を示す概略図であり、(A)は、斜視図、(B)は、上面図、(C)は、(A)のI-I方向の断面図である。
【図5】図5は、実施例2における平均蛍光強度を示すグラフである。
【図6】図6において、(A)は、実施例3における平均蛍光強度を示すグラフであり、(B)は、実施例3における吸光度を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例4において使用した分析チップの内部の端面図である。
【図8】図8は、実施例4における補正後の総蛍光量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の分析チップは、例えば、前記流路が、前記反応部側から前記検出部側に向かう前記担体の移動を促進する移動促進手段を有する。

【0011】
本発明の分析チップは、例えば、前記流路が、前記反応部側から前記検出部側に向かって、断面積が小さくなる構造である。

【0012】
本発明の分析チップは、例えば、前記流路が、前記反応部側から前記検出部側に向かって、狭窄する構造である。

【0013】
本発明の分析チップは、例えば、さらに前記検出部の内壁が、疎水性である。

【0014】
本発明の分析チップは、例えば、前記検出部の内部空間の容積が、前記試料の体積よりも小さい。

【0015】
本発明の分析チップは、例えば、前記検出部の高さが、1~500μmである。

【0016】
本発明の分析チップは、例えば、前記検出部の内部空間の容積が、前記反応部の内部空間の容積よりも小さい。

【0017】
本発明の分析チップは、例えば、前記担体が、ビーズである。前記ビーズの直径が、例えば、100マイクロメートル未満、100nm~4μmである。

【0018】
本発明の分析チップは、例えば、前記担体が、シリカ製である。

【0019】
本発明の分析チップは、例えば、前記流路の側面が、前記反応部から前記検出部側に向かってテーパー状に狭まる曲面である。

【0020】
本発明の分析チップは、例えば、前記標識プローブの標識が、前記標識プローブが前記ターゲットに結合することにより、シグナル変化する物質である。

【0021】
本発明の分析チップは、例えば、前記標識が、ピレンを含む物質である。

【0022】
本発明の分析チップは、例えば、前記標識プローブが、さらにソラレンで修飾されたプローブである。

【0023】
本発明の分析チップは、例えば、ターゲットが、マイクロRNAである。

【0024】
本発明の分析チップは、例えば、前記標識プローブの量が、1zmol~1nmolである。

【0025】
本発明の分析チップは、例えば、前記検出部が、光透過性部材で形成されている。

【0026】
本発明の分析チップは、例えば、前記試薬が、さらに界面活性剤を含む。

【0027】
本発明の分析チップは、例えば、前記反応部が、前記試料が導入される試料導入部を兼ねる。

【0028】
本発明の分析チップは、例えば、前記基板が、さらに前記試料が導入される試料導入部および前記試料導入部と前記反応部とを連通する流路を含み、
前記試料導入部における前記試料は、前記遠心力(C2)未満の遠心力(C1)によって、前記反応部に移動できる。

【0029】
本発明の分析チップは、例えば、前記試料導入部と前記反応部とを連通する流路が、さらにフィルタを有する。

【0030】
本発明の分析方法は、例えば、前記反応部において、前記試料と前記担体との混合物を撹拌する。

【0031】
本発明の分析方法は、例えば、前記標識プローブの標識が、前記標識プローブが前記ターゲットに結合することにより、シグナル変化する物質であり、
前記検出部において、前記標識のシグナル変化を検出する。

【0032】
本発明の分析方法は、例えば、前記標識が、ピレンを含む物質であり、
前記検出部に紫外光を照射し、波長450~510nmの蛍光シグナルを検出する。

【0033】
本発明の分析方法は、例えば、分析対象のターゲットが、マイクロRNAである。

【0034】
[1]ターゲット分析チップ
本発明のターゲット分析チップは、基板を有し、
前記基板が、ターゲットを含む試料と試薬とを反応させる反応部、標識検出の対象領域である検出部、および前記反応部と前記検出部とを連通する流路を有し、
前記試薬は、担体を有し、
前記担体は、前記ターゲットに結合する標識プローブが固定化されており、且つ前記ターゲットとの結合体を形成するものであり、
前記流路が、前記担体の前記反応部から前記検出部への移動を制御する移動制御手段を有し、
前記移動制御手段が、前記流路における疎水性の内壁を有し、
前記移動制御手段により、前記結合体は、前記流路の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)を負荷された場合、前記流路を介して前記検出部に移動できることを特徴とする。

【0035】
本発明の分析チップは、前記流路が、前記移動制御手段として前記疎水性の内壁を有することで、前記反応部から前記検出部への前記担体の移動を制御できることにより、例えば、前記反応部から前記検出部への自発的な毛管現象が発生せず、所定の遠心力によって、毛管現象が発生する。このため、本発明の分析チップは、例えば、前記反応部から前記検出部方向への自発的な毛管現象が発生せず、所定の遠心力によって、毛管現象が発生するチップということもできる。本発明の分析チップにおいて、前記反応部から前記検出部への移動を制御される担体は、例えば、前記結合体を形成している担体および前記結合体を形成していない担体の一方であってもよいし、両者であってもよく、好ましくは、両者である。

【0036】
本発明の分析チップは、前記本発明の分析方法に使用するチップであり、後述する本発明の分析方法における説明を援用できる。本発明において分析とは、例えば、定性分析および定量分析のいずれの意味も含む。

【0037】
本発明の分析チップにおいて、前記反応部および前記検出部は、例えば、一方向に向いて順に配置されている。本発明の分析チップにおいて、面方向上であって、前記反応部から前記検出部に向かう方向を、「長手方向」、または前記試料および前記担体の「移動方向」ともいい、面方向上であって、前記長手方向に対する垂直方向を、「幅方向」ともいい、また、前記面方向に対して垂直方向(前記長手方向および前記幅方向に対して垂直方向)を、「厚み方向」または「深さ方向」ともいう。また、後述するように、本発明の分析チップが試料導入部を含む場合、本発明の分析チップにおいて、前記試料導入部、前記反応部および前記検出部は、例えば、一方向に向いて順に配置されていることが好ましい。この場合、本発明の分析チップにおいて、面方向上であって、前記試料導入部から前記反応部を経て前記検出部に向かう方向を、「長手方向」または前記試料および前記担体の「移動方向」ともいう。本発明において、前記標識プローブが固定化された担体を、以下、「分析用担体」ともいう。また、本発明において、前記反応部と前記検出部とを連通する流路を、「第2流路」ともいい、前記試料導入部と前記反応部とを連通する流路を、「第1流路」ともいう。

【0038】
(実施形態1)
本実施形態の分析チップは、前記反応部が、試料が導入される試料導入部を兼ねる形態である。前記試料導入部は、例えば、前記反応部の上面の開口として形成できる。本実施形態の分析チップは、例えば、前記試料導入部を別途設ける必要がなく、前記分析チップをコンパクトにできる。

【0039】
本実施形態の分析チップにおいて、前記基板は、例えば、下基板と上基板とを含んでもよい。この場合、例えば、前記下基板と前記上基板とを積層することで、前記反応部、前記第2流路および前記検出部が形成されることが好ましい。

【0040】
第1の具体例として、例えば、前記下基板の上表面(前記上基板との積層表面)が、平らであり、前記上基板が、前記反応部へ試料を導入する開口となる貫通孔を有し、前記上基板の下表面(前記下基板との積層表面)が、前記反応部、前記第2流路および前記検出部となる凹部を有し、前記貫通孔と前記凹部とがつながっている形態があげられる。この場合、前記下基板と前記上基板とを積層することで、前記上基板の貫通孔と前記下基板の上表面とにより、前記開口が形成され、前記上基板の凹部と前記下基板の上表面とにより、前記反応部、前記第2流路および前記検出部が連通して形成される。

【0041】
第2の具体例として、例えば、前記上基板の下表面(前記下基板との積層表面)が、平らであり、前記下基板が、前記反応部へ試料を導入する開口となる貫通孔を有し、前記下基板の上表面(前記上基板との積層表面)が、前記反応部、前記第2流路および前記検出部となる凹部を有し、前記貫通孔と前記凹部とがつながっている形態があげられる。この場合、前記下基板と前記上基板とを積層することで、前記下基板の貫通孔と前記上基板の下表面とにより、前記開口が形成され、前記下基板の凹部と前記上基板の下表面とにより、前記反応部、前記第2流路および前記検出部が連通して形成される。

【0042】
本実施形態の分析チップにおいて、前記反応部の大きさおよび形状は、特に制限されない。

【0043】
前記反応部は、例えば、その底面が、前記下基板の上表面によって形成され、その上面が、前記上基板の下表面により形成された形態である。前記反応部は、例えば、中空の柱状(筒状ともいう)であり、具体的には、前記分析チップの厚み方向を軸方向とする柱状が好ましい。前記柱状は、例えば、円柱状、角柱状等である。前記反応部は、例えば、空気孔を有してもよく、前記空気孔は、例えば、前記反応部の上面側において、前記上基板に貫通孔として形成できる。

【0044】
本実施形態の分析チップにおいて、前記第2流路は、例えば、その底面が、前記下基板の上表面によって形成され、その上面が、前記上基板の下表面により形成された形態である。前記第2流路は、中空であり、具体的には、前記分析チップの長手方向を軸方向とする中空である。前記第2流路は、前記軸方向に垂直な断面(中空の断面)が、例えば、真円、楕円等の円形;正方形、長方形等の多角形である。

【0045】
前記第2流路は、例えば、前記反応部側から前記検出部側に向かう前記分析用担体の移動を促進する移動促進手段を有することが好ましい。前記移動促進手段を有することで、例えば、効率良く前記分析用担体を移動させ、前記検出部において前記分析用担体を回収することができる。前記第2流路における前記移動促進手段は、特に制限されず、例えば、後述するように、前記反応部側から前記検出部側に向かって、断面積が小さくなる構造でもよい。

【0046】
前記第2流路は、例えば、前記反応部側から前記検出部側に向かって、断面積が小さくなる構造があげられる。前記構造は、例えば、前記反応部側から前記検出部側に向かって、狭窄する構造ということもできる。前記第2流路の断面積は、例えば、前記分析チップの長手方向に垂直な断面の面積であり、前記第2流路における中空の断面の面積である。

【0047】
前記断面積は、前記反応部側から前記検出部側に向かって、例えば、連続的に断面積が小さくなってもよいし、非連続的に(段階的に)断面積が小さくなってもよい。具体例として、前記第2流路は、例えば、軸方向に平行な断面の形状が、前記反応部側から前記検出部側に向かって、テーパー状に狭まっている形状でもよい。具体的には、前記第2流路は、例えば、前記分析チップの側面から見た断面の形状が、反応部側から前記検出部側に向かって、テーパー状に狭まっている形状でもよいし、前記分析チップの上表面(もしくは下表面)から見た断面の形状が、反応部側から前記検出部側に向かって、テーパー状に狭まっている形状でもよいし、両方であってもよい。

【0048】
前記第2流路の側面が、例えば、前記反応部から前記検出部側に向かってテーパー状に狭まる曲面であることが好ましい。前記第2流路の側面をこのようなこのような形状とすることで、効率良く前記分析用担体を移動させ、前記検出部において前記分析用担体を回収することができる。前記曲面の曲率半径Rは、より効率良く前記分析用担体を前記検出部に回収できることから、例えば、1~5mm、1.5~4.5mm、3mm前後(例えば、2.5~3.5mm)である。前記曲面の曲率半径Rは、例えば、前記テーパー状に狭まる曲面の曲率半径である。

【0049】
前記第2流路は、前述のように、前記分析用担体の前記反応部から前記検出部への移動を制御する移動制御手段を有する。前記移動制御手段により、前記反応部における結合体(結合体を形成している担体)は、前記流路の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)を負荷された場合、前記第2流路を介して前記検出部に移動できる。具体的に、前記第2流路が、前記移動制御手段として、疎水性の内壁を有することで、前記結合体に、前記流路の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)が負荷されない場合、例えば、前記反応部から前記検出部への自発的な毛管現象が発生しないため、前記分析用担体を前記反応部に維持でき、前記結合体に、前記抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)が負荷された場合、前記反応部から前記検出部への毛管現象が発生するため、前記結合体を前記反応部から前記検出部に移動させることができる。このため、本発明の分析チップにおいて、疎水性とは、例えば、自発的な毛管現象による前記反応部から前記検出部への液体画分の移動が発生しない程度の疎水性を意味する。本発明において、前記結合体に加え、前記結合体を形成していない分析用担体が、例えば、前記遠心力(C2)が負荷された場合、前記流路を介して前記検出部に移動できてもよい。前記第2流路の疎水性の内壁は、例えば、後述するように前記第2流路を疎水性部材により形成することにより、疎水性を付与することができる。前記第2流路において、例えば、上下面および側面の全ての内壁が、疎水性でもよいし、一部の内壁が、疎水性でもよい。具体例として、前記分析チップが上基板と下基板とによって形成される場合、例えば、前記上基板により形成される第2流路の内壁が、疎水性であってもよいし、前記下基板により形成される第2流路の内壁が、疎水性であってもよいし、前記上基板および前記下基板により形成される第2流路の内壁が、疎水性であってもよい。本実施形態の分析チップにおいて、さらに、前記検出部の内壁を疎水性とし、前記移動制御手段が、前記検出部の疎水性の内壁を含んでもよい。前記抵抗力(R)および遠心力(C2)については、後述する。

【0050】
前記第2流路の内部空間の大きさは、特に制限されない。前記第2流路の高さ(深さ)は、例えば、1~3000μm、100~500μmである。前記第2流路の幅は、例えば、1~3000μm、100~500μmである。前記第2流路の高さおよび幅は、例えば、それぞれ、前記第2流路の内部空間における高さおよび幅である。

【0051】
本実施形態の分析チップにおいて、前記検出部の形状は、特に制限されない。前記検出部は、例えば、中空であり、前記第2流路の延長であってもよい。すなわち、本発明の分析チップにおいて、前記検出部は、例えば、前記反応部に連通する前記第2流路において、前記反応部と反対側の末端領域であってもよい。前記検出部の形状は、特に制限されず、前記軸方向に垂直な断面(例えば、中空の断面)が、例えば、真円、楕円等の円形;正方形、長方形等の多角形である。

【0052】
前記検出部の内部空間の容積は、例えば、前記試料の体積よりも小さいことが好ましい。このように、前記検出部の容積を、例えば、前記試料と比較して相対的に小さく設計することで、前記検出部における前記分析用担体の濃度を相対的に高く設定することができる。前記検出部の内部空間の容積は、前記試料の体積に対して、例えば、1×10分の1~1×10分の1である(例えば、1×10分の1)。また、前記検出部の容積は、下限が、例えば、前記反応部に配置されている前記分析用担体全量の体積を超えることが好ましい。前記検出部の内部空間の容積は、例えば、前記反応部の内部空間の容積よりも小さいことが好ましい。このように、前記検出部の容積を、例えば、前記反応部の内部空間の容積と比較して相対的に小さく設計することで、前記検出部における前記分析用担体の濃度を相対的に高く設定することができる。前記検出部の内部空間の容積は、前記反応部の内部空間の容積に対して、例えば、1×10分の1~1×10分の1、1×10分の1~1×10分の1である(例えば、1×10分の1)。前記検出部の高さ(深さ)は、特に制限されず、例えば、1~3000μm、10~300μm、100μm前後(例えば、50~150μm)等があげられる。前記検出部をこのような高さにすることで、例えば、前記検出部に移動した担体において、検出できる標識の割合がより増加する。前記検出部の幅は、特に制限されず、例えば、1~3000μm、10~300μmである。前記検出部の高さおよび幅は、例えば、それぞれ、前記検出部の内部空間における高さおよび幅である。

【0053】
本実施形態の分析チップにおいて、前記反応部は、前述のように、前記ターゲットに結合する標識プローブが固定化された担体(前記分析用担体)を有する。また、前記分析用担体は、後述するターゲットとの結合体を形成する担体である。前記標識プローブは、標識物質により修飾(以下、「標識」ともいう。)されたプローブである。前記プローブは、例えば、RNA、DNA、RNA/DNA等があげられ、好ましくは、RNAである。前記RNAは、例えば、非修飾RNAでもよいし、修飾RNAでもよいし、両者を含んでもよい。前記修飾RNAは、例えば、2’-O-メチルRNA等があげられる。また、前記DNAは、例えば、修飾DNAでもよいし、非修飾DNAでもよいし、両者を含んでもよい。前記プローブは、例えば、人工核酸モノマーを含んでもよい。前記人工核酸モノマーは、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’-O,4’-C-Ethylenebridged Nucleic Acids)等があげられる。前記標識物質による前記プローブの修飾方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。前記プローブは、例えば、分析対象のターゲットに基づいて、適宜設計できる。前記ターゲットが前記ターゲット核酸の場合、前記標識プローブの配列は、例えば、前記ターゲット核酸に部分的または完全に相補的な配列があげられる。前記標識プローブの標識位置は、特に制限されず、例えば、前記標識プローブの3’末端の塩基でもよいし、5’末端の塩基でもよいし、それ以外の塩基でもよい。

【0054】
前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光標識物質、放射性標識物質等があげられる。前記蛍光標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光団等の蛍光物質等があげられる。前記蛍光標識物質は、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光標識物質は、例えば、Pacific Blue(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)、BODIPY FL(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)、FluorePrime(商品名、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商品名、ミリポア社製)、FAM(登録商標、ABI社製)、Cy3およびCy5(商品名、アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)等があげられる。

【0055】
前記標識プローブが前記蛍光標識物質で標識された蛍光標識プローブの場合、前記蛍光標識プローブの蛍光標識物質は、例えば、前記蛍光標識プローブが前記ターゲット(例えば、ターゲット核酸、ターゲットRNA)に結合することにより、シグナル変化する物質であることが好ましい。前記シグナルは、例えば、蛍光シグナルである。このような蛍光標識であれば、例えば、前記ターゲットが結合した前記蛍光標識プローブと、前記ターゲットが未結合の前記蛍光標識プローブとを分離する必要がなく、分析精度をさらに向上でき、また、さらに簡便である。

【0056】
前記蛍光標識物質の具体例としては、例えば、ピレンを含む物質(以下、「ピレン含有物質」ともいう)があげられる。前記蛍光標識物質は、例えば、ピレンを含むものでもよいし、ピレンそのものでもよい。前記蛍光標識物質がピレン含有物質の場合、前記蛍光標識プローブの設計は、例えば、特許第4238381号の記載を援用できる。前記ピレン含有物質は、例えば、ウリジン残基および/またはシチジン残基を修飾することが好ましく、具体的には、ウリジン残基の2’位の水酸基および/またはシチジン残基の2’位の水酸基に共有結合していることが好ましい。前記蛍光標識プローブは、例えば、前記ピレン含有物質が共有結合したウリジンを含むRNA、または前記ピレン含有物質が共有結合したウリジンおよび/またはシチジンを含むDNAもしくはDNA/RNAであることが好ましい。前記ピレン含有物質で修飾した前記蛍光標識プローブは、例えば、前記ターゲット核酸(例えば、ターゲットRNA)と結合し、二重鎖構造を形成することで蛍光を発する。このため、前記蛍光のシグナルを検出することで、前記ターゲット核酸の分析が可能である。前記蛍光は、例えば、紫外光照射で励起することで、発光させることができる。前記照射光の波長は、例えば、325~350nm(例えば、340nm)であり、蛍光の検出波長は、例えば、450~510nm(例えば、480nm)である。

【0057】
前記蛍光標識プローブは、例えば、さらにソラレンで修飾されていることが好ましい。前記蛍光標識プローブがソラレンを有する場合、例えば、前記蛍光標識プローブと前記ターゲット核酸との二重鎖に紫外光を照射すると、前記二重鎖において、前記蛍光標識プローブのソラレンが、前記ターゲット核酸におけるウラシル残基と共有結合する。このため、前記ターゲット核酸と前記蛍光標識プローブとの二重鎖結合を、より安定化でき、例えば、前記分析チップに対して、後述するような様々な処理を施している間においても、前記蛍光標識プローブから前記ターゲット核酸が解離することを十分に防止でき、また、感度もより向上できる。

【0058】
前記標識プローブを固定化する前記担体は、特に制限されず、例えば、比重が1より大きく、且つ光透過性を有する素材で形成された担体があげられる。具体例として、前記担体は、例えば、シリカゲル製担体、シリカ製担体、アガロース製担体、ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、ライムガラス)製担体、ポリスチレン製担体、アクリル樹脂担体、ポリビニルアルコール樹脂製担体、ポリカーボネート製担体等があげられる。また、前記担体は、例えば、磁性担体でもよい。前記磁性担体の場合、例えば、磁力によって、前記反応部において前記磁性担体を動かすことができるため、後述するように、前記反応部において、前記試料と前記分析用担体との混合物を撹拌できる。前記担体の大きさは、特に制限されない。前記担体の形状は、特に制限されず、例えば、楕円、真円等の球状があげられ、具体例として、球状ビーズ等のビーズがあげられる。前記担体が前記ビーズの場合、その直径は、下限が、例えば、0.1μm(100nm)、200nm、250nm、300nmであり、上限が、例えば、100μm未満であり、10μm以下、5μm以下、4μm以下、1μm以下、800nm以下、400nm以下であり、その範囲は、例えば、100nm~4μm、100~800nm、0.2μm~0.8μm、250~400nmである。前記検出部の高さが1~500μmの場合、前記検出部に移動する前記担体の割合が向上し、且つ検出できる標識の割合がより増加することから、前記担体の直径は、例えば、100nm~4μm、100~800nm、250~400nmであることが好ましい。

【0059】
前記分析用担体において、前記担体に固定化する前記標識プローブの量は、特に制限されず、例えば、前記担体の表面積あたりの量として、適宜設定できる。前記分析用チップに配置される標識プローブの量は、特に制限されず、例えば、試料中に含まれるターゲットの量に応じて適宜決定できる。前記標識プローブの量は、例えば、1zmol~1nmol、1amol~100pmol、10amol~10pmolである。また、前記反応部に配置される前記分析用担体の量は、特に制限されず、例えば、前記反応部の底部の面積あたりの量として、適宜決定できる。

【0060】
本発明の分析チップは、例えば、前記試薬として、前記分析用担体を有してもよい。本発明の分析チップは、例えば、前記分析用担体を前記分析チップと別個に有してもよいし、前記分析チップ内に有してもよい。前者の場合、本発明の分析チップは、例えば、ターゲット分析キットということもできる。後者の場合、前記反応部が、例えば、前記分析用担体を有す。この場合、前記分析用担体は、例えば、前記反応部において遊離状態でもよい。また、前記分析用担体は、例えば、前記反応部(前記反応部の内壁)において、遊離可能なように固定化された状態でもよい。後者の場合、前記分析用担体は、例えば、水溶性材料によって、前記反応部に固定化されていることが好ましい。この場合、例えば、前記反応部の開口から導入された試料により、前記反応部(前記反応部の内壁)から、前記分析用担体が遊離される。前記水溶性材料は、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、デンプン、ゼラチン等の水溶性ポリマー、スクロース、トレハロース、マンニトール、ラクトース等の少糖類等があげられる。

【0061】
本実施形態の分析チップは、例えば、前記試薬として、前記分析用担体の他に、さらにその他の物質を含んでもよい。前記その他の物質は、特に制限されず、例えば、界面活性剤、緩衝剤、塩類、水溶性高分子、糖類等があげられる。前記界面活性剤は、例えば、非イオン系界面活性剤、イオン系界面活性剤等があげられ、前記ターゲットと前記標識プローブとの反応を促進することから、好ましくは、非イオン系界面活性剤である。前記非イオン系界面活性剤は、例えば、Tween20(登録商標)、Triton(商標)X-100、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等があげられる。

【0062】
本発明の分析チップにおいて、前記反応部は、さらに、撹拌素子を有してもよい。この場合、前記撹拌素子によって、前記反応部において、前記試料と前記反応部に配置された前記分析用担体との混合液を撹拌し、前記試料中のターゲットと前記分析用担体に固定化された標識プローブとを、効率よく接触させることができる。前記撹拌素子は、例えば、磁性撹拌素子が使用でき、具体例として、例えば、磁性ビーズ等のスターラー等があげられる。前記撹拌素子の材料は、特に制限されず、例えば、SUS等の磁性体が好ましい。前記撹拌素子の形状は、例えば、球形であり、その大きさは、例えば、直径0.1~5mm(例えば、1mm)である。

【0063】
本発明の分析チップにおいて、前記基板の材質は、特に制限されず、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス;PDMS(ポリジメチルシロキサン)、ポリスチレン、アクリル樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂等が使用でき、後述する疎水性部材を使用することが好ましい。また、前記基板が、前述のように、前記下基板と前記上基板とを有する場合、前記両基板は、例えば、同じ部材でもよいし、異なる部材でもよい。

【0064】
本実施形態の分析チップにおいて、前記検出部は、例えば、光透過性部材で形成されており、好ましくは、紫外光透過性部材である。前記光透過性部材は、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス、PDMS等の樹脂等があげられる。

【0065】
本実施形態の分析チップにおいて、前記第2流路の内壁は、前述のように、疎水性である。前記疎水性の内壁は、例えば、前記基板として疎水性部材を使用することにより構成してもよいし、前記基板の表面に、疎水性部材を積層することにより構成してもよいし、前記基板の表面を疎水性に改変することにより構成してもよい。前記疎水性部材としては、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、ポリスチレン、アクリル樹脂、シクロオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂等の疎水性樹脂等があげられる。また、疎水性への改変方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。

【0066】
(実施形態2)
本実施形態の分析チップは、前記反応部と独立して、試料が導入される試料導入部を有する形態である。前記本実施形態の分析チップにおいて、前記試料導入部は、例えば、前記試料導入部と前記反応部との間が、第1流路で連通され、下記条件(3)を満たす。本実施形態の分析チップによれば、例えば、2回の遠心で簡便にターゲットの分析ができる。本実施形態の分析チップは、例えば、前記基板が、さらに前記試料が導入される試料導入部および前記試料導入部と前記反応部とを連通する流路を含み、前記試料導入部における前記試料は、前記遠心力(C2)未満の遠心力(C1)によって、前記反応部に移動できる分析チップということもできる。また、本実施形態の分析チップによれば、前記第1流路にフィルタを配置することで、夾雑物を含む試料等についても、前処理による夾雑物の除去を経ずに分析することができる。
(3)前記試料導入部に導入された試料は、遠心力(C1)によって、前記反応部に移動し、前記反応部の前記担体は、前記遠心力(C1)によって、前記検出部に実質的に移動しない

【0067】
本実施形態の分析チップは、前記反応部が開口を有さず、前記試料導入部および前記第1流路を有する点を除き、前記実施形態1の分析チップと同様であり、特に言及しない限り、その説明を援用できる。

【0068】
本実施形態の分析チップにおいて、前記基板は、例えば、下基板と上基板とを含んでもよい。この場合、例えば、前記下基板と前記上基板とを積層することで、前記試料導入部、前記第1流路、前記反応部、前記第2流路および前記検出部が形成されることが好ましい。

【0069】
第1の具体例として、例えば、前記下基板の上表面(前記上基板との積層表面)が、平らであり、前記上基板が、前記試料導入部となる貫通孔を有し、前記上基板の下表面(前記下基板との積層表面)が、前記第1流路、前記反応部、前記第2流路および前記検出部となる凹部を有し、前記貫通孔と前記凹部とがつながっている形態があげられる。この場合、前記下基板と前記上基板とを積層することで、前記上基板の貫通孔と前記下基板の上表面とにより、前記試料導入部が形成され、前記上基板の凹部と前記下基板の上表面とにより、前記第1流路、前記反応部、前記第2流路および前記検出部が連通して形成される。

【0070】
第2の具体例として、例えば、前記上基板の下表面(前記下基板との積層表面)が、平らであり、前記下基板が、前記試料導入部となる貫通孔を有し、前記下基板の上表面(前記上基板との積層表面)が、前記第1流路、前記反応部、前記第2流路および前記検出部となる凹部を有し、前記貫通孔と前記凹部とがつながっている形態があげられる。この場合、前記下基板と前記上基板とを積層することで、前記下基板の貫通孔と前記上基板の下表面とにより、前記試料導入部が形成され、前記下基板の凹部と前記上基板の下表面とにより、前記第1流路、前記反応部、前記第2流路および前記検出部が連通して形成される。

【0071】
本発明の分析チップにおいて、前記試料導入部、前記反応部および前記第1流路の大きさおよび形状は、特に制限されない。

【0072】
前記試料導入部は、例えば、その底面が、前記下基板の上表面によって形成され、上部は、前記上基板の貫通孔により開口した形態があげられる。前記試料導入部は、例えば、有底且つ中空の柱状(筒状ともいう)であり、具体的には、前記分析チップの厚み方向を軸方向とする柱状が好ましい。前記柱状は、例えば、円柱状、角柱状等である。

【0073】
前記反応部は、例えば、その底面が、前記下基板の上表面によって形成され、その上面が、前記上基板の下表面により形成された形態である。前記反応部は、例えば、中空の柱状(筒状ともいう)であり、具体的には、前記分析チップの厚み方向を軸方向とする柱状が好ましい。前記柱状は、例えば、円柱状、角柱状等である。前記反応部は、例えば、空気孔を有してもよく、前記空気孔は、例えば、前記反応部の上面側において、前記上基板に貫通孔として形成できる。

【0074】
前記試料導入部と前記反応部とを連結する前記第1流路は、例えば、その底面が、前記下基板の上表面によって形成され、その上面が、前記上基板の下表面により形成された形態である。前記第1流路は、中空であり、具体的には、前記分析チップの長手方向を軸方向とする中空である。前記第1流路は、前記軸方向に垂直な断面(中空の断面)が、例えば、真円、楕円等の円形;正方形、長方形等の多角形である。

【0075】
前記第1流路には、例えば、さらにフィルタを有してもよい。前記フィルタを有することで、例えば、夾雑物を含む試料等についても、前処理による夾雑物の除去を経ずに分析することができる。前記フィルタの種類は、特に制限されず、例えば、ろ紙、不織布、ガラス繊維等の繊維構造を有するもの、スポンジ状の多孔性構造を有するもの、多孔性の膜構造を有するもの等があげられる。前記第1流路における前記フィルタの配置位置は、特に制限されず、任意の位置とできる。

【0076】
本発明の分析チップは、前述のように、例えば、遠心装置にセットして、遠心力をかけることから、さらに、前記遠心装置への配置部位を有することが好ましい。

【0077】
本発明の分析チップに導入する試料は、ターゲットを含む試料であるが、本発明はこれに限定されず、前記試料は、例えば、ターゲットを含まない試料、ターゲットを含むか不明の試料等であってもよい。前記試料の形態は、特に制限されず、例えば、液体試料である。前記液体試料は、例えば、生体由来の検体があげられ、また、前記検体の希釈液、懸濁液等でもよい。前記検体は、例えば、血液、尿、胃液、喀痰、羊水、腹膜液等の体液、大腸、肺等の組織、口腔内細胞、生殖細胞、爪、毛等の細胞等があげられる。前記血液は、例えば、全血、血漿、血清、溶血液等があげられる。前記液体試料は、例えば、前処理したものを使用してもよい。前記前処理は、特に制限されず、例えば、前記検体に含まれる細胞からターゲット(例えば、RNA、DNA等の核酸等)を放出させる処理等があげられる。

【0078】
本発明の分析チップに導入する試料の量は、特に制限されず、前記分析チップ1個あたり、例えば、1~100μL(例えば、50μL)である。

【0079】
本発明の分析チップにより分析するターゲットの種類は、特に制限されず、例えば、ターゲット核酸等があげられる。前記ターゲット核酸は、例えば、ターゲットRNA、ターゲットDNA等があげられる。前記ターゲットRNAは、例えば、マイクロRNA、ウィルス由来RNA、メッセンジャーRNA等があげられる。前記ターゲットDNAは、例えば、ゲノムDNAまたはその断片、cDNA、血中遊離DNA、血中循環腫瘍細胞等の血液に含まれる細胞由来のDNA等があげられる。

【0080】
[2]ターゲット分析方法
本発明のターゲット分析方法は、前述のように、前記本発明のターゲット分析チップを用い、
前記反応部に、試料および試薬を導入する工程(導入工程)、
前記反応部において、前記試料と、前記標識プローブが固定化された担体とを接触させ、前記試料中のターゲットと前記標識プローブとを結合反応させることにより、前記ターゲットと前記標識プローブとの結合体を形成する工程(反応工程)、
前記反応部における結合体を、前記流路の内壁の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)によって、前記検出部に移動させる工程(担体移動工程)、および、
前記検出部において、前記ターゲットが結合した前記標識プローブの標識を検出することにより、前記試料中のターゲットを分析する工程(分析工程)を含むことを特徴とする。

【0081】
本発明のターゲット分析方法は、前記本発明のターゲット分析チップを使用する方法であり、前記本発明のターゲット分析チップにおける説明を援用できる。本発明のターゲット分析方法は、例えば、PCR工程を含まない。

【0082】
前記導入工程は、前述のように、前記反応部に、試料および試薬を導入する。前記導入工程において、前記試料および前記試薬は、例えば、前記分析チップの前記反応部の開口から導入する。前記試料および前記試薬の導入順序は、特に制限されず、例えば、前記試料の導入の前または後に前記試薬を導入してもよいし、両者を同時に導入してもよい。また、前述のように、前記反応部が前記分析用担体を有す場合、前記導入工程は、例えば、前記試料および前記試薬に代えて、前記試料を導入する。そして、前記反応部において、前述のように、前記分析用担体が固定化されている場合、前記試料が導入されることによって、例えば、前記分析用担体の固定化が解除され遊離する。

【0083】
前記分析チップとして、前記反応部と独立して、前記試料導入部を有する場合、前記分析方法は、例えば、前記導入工程に代えて、前記試料導入部に、試料を導入する工程(試料導入工程)、および前記試料導入部に導入された試料を、前記遠心力(C2)未満の遠心力(C1)によって、前記反応部に移動させる工程(試料移動工程)を含んでもよい。前記試料導入工程において、前記試料は、例えば、前記分析チップの前記試料導入部の開口から導入する。

【0084】
前記試料移動工程は、例えば、前述のように、遠心力(C1)によって、前記試料導入部に導入された試料を、前記反応部に移動させる。前記遠心力(C1)は、例えば、後の担体移動工程における遠心力(C2)未満の遠心力である。前記遠心力(C2)未満の遠心力(C1)とすることで、例えば、前記反応部の前記分析用担体が、前記検出部に実質的に移動しない。前記遠心力(C1)の下限は、特に制限されない。前記反応部において、前述のように、前記分析用担体が固定化されている場合、前記試料が導入されることによって、例えば、前記分析用担体の固定化が解除され遊離する。

【0085】
本発明において、前記分析チップへの遠心力は、例えば、遠心装置を使用することにより付与できる。この場合、前記分析チップは、例えば、さらに、前記遠心装置への配置部位を有することが好ましい。そして、例えば、前記配置部位において、前記分析チップを前記遠心装置に配置し、前記遠心装置により、前記分析チップに遠心力をかけることができる。

【0086】
前記反応工程では、前述のように、前記反応部において、前記試料と、前記標識プローブが固定化された担体とを接触させ、前記試料中のターゲットと前記標識プローブとを結合反応させることにより、前記ターゲットと前記標識プローブとの結合体を形成する。この際、前記反応部において、例えば、前記反応部に導入した試料または前記試料導入部から移動した試料と前記担体との混合物を、撹拌することが好ましい。前記撹拌の方法は、特に制限されない。

【0087】
前記撹拌方法としては、例えば、前記撹拌素子を用いた方法があげられる。この場合、前記分析チップの前記反応部が、さらに、前記撹拌素子を有し、前記撹拌素子によって、前記反応部において前記混合物を撹拌することが好ましい。前記撹拌素子を用いた撹拌は、例えば、前記分析チップの外部に磁石を配置し、前記磁石により前記撹拌素子を動かすことで行える。前記撹拌素子は、例えば、自転させてもよいし、公転させてもよいし、ランダムに動かしても良い。

【0088】
前記撹拌方法としては、例えば、前記標識プローブを固定化する担体として、前述のような磁性担体を用いる方法があげられる。この場合、前記標識プローブを固定化した磁性担体を、前記撹拌素子として同様に使用することができる。具体的には、前記分析チップの外部に磁石を配置し、前記磁石により、前記磁性担体を動かすことで行える。前記磁性担体は、例えば、自転させてもよいし、公転させてもよいし、ランダムに動かしてもよい。

【0089】
また、前記撹拌方法としては、例えば、遠心装置を利用する方法があげられる。前記分析チップは、例えば、前述のように、前記試料導入部から前記反応部への試料の移動または前記反応部から前記検出部への前記担体の移動に遠心力を利用することから、例えば、遠心装置にセットして使用できる。このため、前記反応工程において、前記分析チップを遠心することで撹拌することもできる。前記遠心は、例えば、同一方向の遠心でもよいし、交互に逆回転させる遠心でもよい。

【0090】
前記反応工程において、前記試料と前記分析用担体との接触条件(例えば、温度、時間等)は、特に制限されない。

【0091】
つぎに、前記担体移動工程は、前述のように、前記反応部における前記結合体を、前記流路の内壁の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)によって、前記検出部に移動させる工程である。また、前述のように、前記遠心力(C2)は、前記遠心力(C1)より大きいことから、前記担体移動工程は、例えば、前記遠心力(C1)よりも大きい遠心力(C2)によって、前記反応部における前記結合体を前記検出部に移動させる工程ということもできる。

【0092】
前記抵抗力(R)は、例えば、前記第2流路の内壁の疎水性の程度に応じて、適宜算出できる。具体例として、前記抵抗力(R)は、例えば、前記試料および前記試薬の混合物の表面張力、前記第2流路の内壁と前記試料および前記試薬の混合物との接触角、前記分析チップの第2流路の幅および高さ等から算出することができ、具体的には、下記式(1)で表される。前記第2流路の内壁と前記試料および前記試薬の混合物との接触角(θ)が90°以上の場合、前記抵抗力(R)は、例えば、下記式(1)により好適に算出できる。

【0093】
R=-2whγcosθ(1/w+1/h) ・・・(1)
R:抵抗力(N)
γ:試料および試薬の混合物の表面張力(N/m)
θ:第2流路の内壁と試料および試薬の混合物との接触角
w:第2流路の幅(m)
h:第2流路の高さ(m)

【0094】
前記遠心力(C2)は、特に制限されず、例えば、前記結合体を前記検出部に移動できればよい。本発明の分析方法において、前記試料および前記試薬の混合物は、例えば、前記遠心力(C2)によって、前記第2流路に導入される。さらに、前記遠心力(C2)によって、前記混合物における前記分析用担体(例えば、結合体)が、例えば、前記分析チップの検出部における前記第2流路の反対端側に集積する。このとき、前記分析用担体が前記検出部に集積するのに要する時間(Δt)は、例えば、前記混合物の粘度、密度、前記分析用担体の密度、前記分析用担体の半径、遠心時の回転速度、回転半径の始点および終点等から算出することができ、具体的には、下記式(2)で表される。下記式(2)によれば、例えば、所望の遠心時間内に前記分析用担体を前記検出部に集積をする場合の分析用担体の密度および半径、遠心力(C2)、すなわち、回転半径および回転速度(回転の角速度)を算出(推定)することができる。

【0095】
Δt=[18μ/(4ω(ρs-ρl))]ln(r2/r1) ・・・(2)
Δt:回転半径の始点r1から回転半径の終点r2に分析用担体が移動するのに要する時間(sec)
μ:試料および試薬の混合物の粘度(Pa×s)
ρl:試料および試薬の混合物の密度(kg/m
ρs:分析用担体の密度(kg/m
R:分析用担体の半径(m)
ω:回転の角速度(rad/sec)
r1:回転半径の始点(遠心時の軸から反応部までの最短距離)(m)
r2:回転半径の終点(軸から検出部までの最長距離)(m)

【0096】
つぎに、前記分析工程は、前記検出部において、前記ターゲットが結合した前記標識プローブの標識を検出することにより、前記試料中のターゲットを分析する工程である。前記標識の検出は、特に制限されず、例えば、前記標識の種類に応じて、適宜決定できる。

【0097】
前記標識プローブの前記標識は、例えば、前述のように、前記標識プローブが前記ターゲットに結合することにより、シグナル変化する物質であることが好ましい。この場合、前記分析工程では、例えば、前記検出部において、前記標識のシグナル変化を検出する。具体例として、前記標識が、前記ピレン含有物質の場合、前記検出部に紫外光を照射して、ピレンに起因する蛍光シグナルを検出する。前記蛍光シグナルの検出条件は、例えば、前述の通りである。

【0098】
以下に、本発明の実施形態として、本発明の分析チップおよびこれを用いた本発明の分析方法の具体例について、図面を用いて説明する。なお、前記分析チップとして、前記実施形態1の分析チップまたは前記実施形態2の分析チップを用い、前記標識プローブとして、前記蛍光標識プローブを用い、前記ターゲットとして、ターゲットRNAを分析する場合の分析方法を例にあげて説明するが、本発明は、これらの例示には限定されない。

【0099】
(実施形態3)
本実施形態は、前記実施形態1の分析チップを用い、前記標識プローブとして、前記蛍光標識プローブを用い、前記反応部に前記試薬が配置され、前記ターゲットとしてターゲットRNAを分析する場合の分析方法の一例である。なお、以下の図1から図4において、同一部分には、同一符号を付している。

【0100】
図1は、本発明の分析チップの一例を示す概略図であり、(A)は、斜視図、(B)は、上面図、(C)は、前記(A)のI-I方向断面図である。

【0101】
図1に示すように、分析チップ1’は、下基板10aと上基板10bとからなる基板10を有する。上基板10bは、貫通孔と、下表面における凹部13、14、15とを有し、これらは、上基板10bと下基板10aとの積層により、それぞれ、反応部の開口、反応部13、第2流路14、検出部15を構成している。反応部13と検出部15は、第2流路14で連通する。図1(C)において、矢印Xは、分析チップ1’における試料の流れ方向(分析チップ1’の長手方向)を示す。

【0102】
分析チップ1’の大きさは、特に制限されず、以下の条件が例示できる。
反応部13
直径1~30mm(例えば、8mm)
導入する試料の体積1~1000μL(例えば、50μL)
第2流路14
長さ10~5000μm(例えば、2500μm)
反応部13端の幅 100~5000μm(例えば、1000μm)
反応部13端の深さ100~5000μm(例えば、2000μm)
検出部15端の幅 10~1000μm(例えば、150μm)
検出部15端の深さ10~1000μm(例えば、150μm)
検出部15
長さ10~1000μm(例えば、220μm)
幅 10~1000μm(例えば、150μm)
深さ10~1000μm(例えば、150μm)
容積0.001~1000nL(例えば、5nL)

【0103】
第2流路14は、図1に示すように、反応部13側から検出部15側に向かって、狭まっていく狭窄形状である。具体的には、分析チップ1’の上表面から見た場合、図1(B)に示すように、反応部13側から検出部15側に向かって、両側からテーパー状に狭まっており、また、分析チップ1’の側面から見た場合、図1(C)に示すように、反応部13側から検出部15側に向かって、上面がテーパー状に狭まっていく形状である。

【0104】
分析チップ1’の反応部13には、前記分析用担体が配置されている(図示せず)。前記分析用担体は、前述のように、前記水溶性材料により固定化されていることが好ましい。

【0105】
分析チップ1’を用いた試料中のRNAの分析は、例えば、以下のようにして行うことができる。以下の実施形態では、前記蛍光標識プローブの蛍光標識がピレン含有物質であり、前記蛍光標識プローブが固定化された担体が磁性担体である場合の一例とする。

【0106】
まず、分析チップ1’の反応部13に、前記開口から試料を導入する。そして、分析チップ1’の外部に配置された磁石により、反応部13における前記分析用担体(分析用磁性担体)を自転させることにより、反応部13において、試料と前記分析用担体とを接触させる。これによって、前記試料中のターゲットRNAと前記分析用担体における前記蛍光標識プローブとが結合する。

【0107】
つぎに、分析チップ1’を遠心し、遠心力(C2)により、反応部13から、第2流路14を介して検出部15に、前記分析用担体を移動させる。そして、検出部15に、分析チップ1’の上方向から紫外光(例えば、340nm)を照射し、ターゲットRNAと前記蛍光標識プローブとの結合により発するピレン由来の蛍光を、所定の波長(例えば、480nm)で光検出器により検出する。ピレンで修飾された前記蛍光標識プローブは、ターゲットRNAと結合した状態でのみ蛍光を発するため、ピレンに由来する蛍光の有無および量は、ターゲットRNAの有無および量と相関関係を示す。このため、前記蛍光の検出により、ターゲットRNAを定性分析または定量分析できる。

【0108】
本発明において、前記分析チップに対する遠心力は、前述のように、例えば、遠心装置を使用することができる。図2および図3に、遠心装置の一例の概略図を示す。

【0109】
図2は、遠心装置の断面図であり、遠心装置2は、基板20と、モーター21と、軸22と、ステージ23とを有する。ステージ23には、配置した前記分析チップを固定化するための固定部24a、24bを有する。図3は、遠心装置2のステージ23の上面の平面図である。

【0110】
遠心装置2への前記分析チップの配置は、例えば、以下のように行える。まず、ステージ23上に分析チップ1’を配置する。この際、分析チップ1’の反応部側が、軸22側となるように配置する。そして、分析チップ1’を固定部24a、24bでステージ23に固定する。つぎに、モーター21を駆動させ、軸22を中心として、ステージ23を回転させる。これによって、分析チップ1’の反応部側から検出部側に向かって矢印Y方向の遠心力がかかり、分析チップ1’において矢印X方向に前記試料の移動または前記分析用担体の移動を行うことができる。

【0111】
(実施形態4)
本実施形態は、前記実施形態2の分析チップを用い、前記ターゲットとしてターゲットRNAを分析する場合の分析方法の一例である。本実施形態の分析方法は、前記実施形態1の分析チップに代えて、前記実施形態2のチップを用いた以外は、前記実施形態3の分析方法と同様であり、特に言及しない限り、その説明を援用できる。

【0112】
図4は、本発明の分析チップの一例を示す概略図であり、(A)は、斜視図、(B)は、上面図、(C)は、前記(A)のI-I方向断面図である。

【0113】
図4に示すように、分析チップ1は、下基板10aと上基板10bとからなる基板10を有する。上基板10bは、貫通孔11と、下表面における凹部12、13、14、15とを有し、これらは、上基板10bと下基板10aとの積層により、それぞれ、試料導入部11、ならびに、第1流路12、反応部13、第2流路14、検出部15を構成している。試料導入部11と反応部13とは、第1流路12で連通し、反応部13と検出部15は、第2流路14で連通する。図4(C)において、矢印Xは、分析チップ1における試料の流れ方向(分析チップ1の長手方向)を示す。

【0114】
分析チップ1の大きさは、特に制限されず、以下の条件が例示できる。
試料導入部11
直径1~10mm(例えば、5mm)
導入する試料の体積1~1000μL(例えば、50μL)
反応部13
直径1~30mm(例えば、8mm)
第2流路14
長さ10~5000μm(例えば、2500μm)
反応部13端の幅 100~5000μm(例えば、1000μm)
反応部13端の深さ100~5000μm(例えば、2000μm)
検出部15端の幅 10~1000μm(例えば、150μm)
検出部15端の深さ10~1000μm(例えば、150μm)
検出部15
長さ10~1000μm(例えば、220μm)
幅 10~1000μm(例えば、150μm)
深さ10~1000μm(例えば、150μm)
容積0.001~1000nL(例えば、5nL)

【0115】
第2流路14は、図4に示すように、反応部13側から検出部15側に向かって、狭まっていく狭窄形状である。具体的には、分析チップ1の上表面から見た場合、図4(B)に示すように、反応部13側から検出部15側に向かって、両側からテーパー状に狭まっており、また、分析チップ1の側面から見た場合、図4(C)に示すように、反応部13側から検出部15側に向かって、上面がテーパー状に狭まっていく形状である。

【0116】
分析チップ1の反応部13には、前記分析用担体が配置されている(図示せず)。前記分析用担体は、前述のように、前記水溶性材料により固定化されていることが好ましい。

【0117】
分析チップ1を用いた試料中のRNAの分析は、例えば、以下のようにして行うことができる。以下の実施形態では、前記蛍光標識プローブの蛍光標識がピレン含有物質であり、前記蛍光標識プローブが固定化された担体が磁性担体である場合の一例とする。

【0118】
まず、分析チップ1の試料導入部11に、試料を導入する。そして、分析チップ1を遠心し、遠心力(C1)により、試料導入部11から、第1流路12を介して反応部13に、試料を移動させる。そして、遠心終了後、分析チップ1の外部に配置された磁石により、反応部13における前記分析用担体(分析用磁性担体)を自転させることにより、反応部13において、前記試料と前記分析用担体とを接触させる。これによって、前記試料中のターゲットRNAと前記分析用担体における前記蛍光標識プローブとが結合する。

【0119】
つぎに、分析チップ1を遠心し、遠心力(C2)により、反応部13から、第2流路14を介して検出部15に、前記分析用担体を移動させる。そして、検出部15に、分析チップ1の上方向から紫外光(例えば、340nm)を照射し、ターゲットRNAと前記蛍光標識プローブとの結合により発するピレン由来の蛍光を、所定の波長(例えば、480nm)で光検出器により検出する。ピレンで修飾された前記蛍光標識プローブは、ターゲットRNAと結合した状態でのみ蛍光を発するため、ピレンに由来する蛍光の有無および量は、ターゲットRNAの有無および量と相関関係を示す。このため、前記蛍光の検出により、ターゲットRNAを定性分析または定量分析できる。

【0120】
本発明において、前記分析チップに対する遠心力は、前述のように、例えば、遠心装置を使用することができる。

【0121】
遠心装置2への前記分析チップの配置は、例えば、以下のように行える。まず、ステージ23上に分析チップ1を配置する。この際、分析チップ1の試料導入部側が、軸22側となるように配置する。そして、分析チップ1を固定部24a、24bでステージ23に固定する。つぎに、モーター21を駆動させ、軸22を中心として、ステージ23を回転させる。これによって、分析チップ1の試料導入部側から検出部側に向かって矢印Y方向の遠心力がかかり、分析チップ1において矢印X方向に前記試料の移動または前記分析用担体の移動を行うことができる。
【実施例】
【0122】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により制限されない。
【実施例】
【0123】
(実施例1)
図4に示す分析チップを作製し、サンプル中のmiRNAの分析を行った。
【実施例】
【0124】
(1)流路構造体の製造
以下に示す方法により、図4の分析チップの上基板10bを作製した。なお、前記分析チップについて、各部位の大きさおよび材質は、以下の通りとした。
試料導入部11:直径6mmの円形貫通孔
反応部13:深さ2mm、直径8mm、円形
第1流路12:長さ2mm、幅1mm、深さ1mm
検出部15:幅0.15mm、深さ0.15mm、長さ0.3mm、直方体形状
第2流路14:長さ3.3mm、幅0.5mm、上流側から下流側に向かって、深さが1mmから0.15mmにスロープ状に変化
材質:ポリジメチルシロキサン(PDMS)製
【実施例】
【0125】
まず、前記構造の流路構造体を製造するために、鋳型となるアルミ製の流路金型を切削加工により作製した。そして、PDMSプレポリマー溶液を、前記流路金型に流し入れ、70℃のオーブンに1時間入れて熱硬化させた。熱硬化後、硬化したPDMS成型体を、静かに前記流路金型から引き剥がし、前記流路構造体を得た。前記PDMSプレポリマー混合液は、PDMSのプレポリマーと硬化剤(商品名シルポット(東レダウコーニング製)の主剤と硬化剤)を、重量比10:1で均一になるまで混合した後、その混合液をデシケータに入れて減圧処理し、混合時に発生した気泡を除去して調製した。
【実施例】
【0126】
(2)ピレンRNAプローブの固定化
蛍光標識プローブとして、ピレンで標識化したプローブ(ピレンRNAプローブ)を以下のようにして作製した。miRNAであるlet-7aに対して相補的な配列(AAC AU ACA ACC UAC UAC CUC A(配列番号1))からなるポリリボヌクレオチドを合成した。そして、前記RNA中の2箇所のシトシン(前記配列における下線部の塩基)をピレンで修飾し、5’末端の塩基をソラレンで修飾した。これをピレンRNAプローブとした。
【実施例】
【0127】
つぎに、前記ピレンRNAプローブを、以下のようにしてビーズに固定化した。ビーズとして、直径が1μmであり、表面がカルボキシル基で修飾されているシリカ製ビーズ(商品名sicastar、Fischer Science製)を使用した。前記ビーズを、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩とヒドロキシスクシンイミドとを含む水溶液中で混合することにより、前記ビーズのカルボキシル基を活性化した。前記水溶液において前記ビーズの量は、10mgとし、前記1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の量は38mg、前記ヒドロキシスクシンイミドの量は3mgとした。そして、活性化後、前記ビーズのカルボキシル基と反応しなかった前記1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩と前記ヒドロキシスクシンイミドとを除去するため、前記水溶液の遠心、上清の除去、および蒸留水の添加という一連の洗浄操作を、3回繰り返した。その後、前記ピレンRNAプローブと前記ビーズとを、10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)中で混合することにより、前記ピレンRNAプローブと前記ビーズ表面の活性化カルボキシル基とを反応させ、前記ビーズ表面に前記ピレンRNAプローブを固定化した。前記リン酸緩衝液中において、前記ピレンRNAプローブの量は、0.1nmolとした。そして、前記ビーズ表面に固定化されなかった前記ピレンRNAプローブを除去するため、前記ビーズと前記ピレンRNAプローブとを含む前記リン酸緩衝液を遠心し、上清を除去した後、さらに蒸留水を加えるという洗浄操作を3回繰り返した。このようにして、ピレンRNAプローブが固定化されたビーズを作製した。
【実施例】
【0128】
(3)反応試薬液の調製
前記ビーズ、マンニトール、ウシ血清アルブミンを、それぞれ、蒸留水に、0.05w/v%、2w/v%、1w/v%となるように混合して、反応試薬液を調製した。
【実施例】
【0129】
(4)前記反応試薬の固定化
厚み0.17mmのホウケイ酸ガラス板の表面に、前記反応試薬液5μLを滴下し、さらに、滴下した前記反応試薬液の上に、直径0.5mmのステンレス球を載せた後、前記ガラス板を、温度25℃、湿度0%の恒温恒湿器内で24時間インキュベートし、前記反応試薬液を乾燥させるとともに、前記ステンレス球を前記ガラス板上に固定した。
【実施例】
【0130】
(5)分析チップ
前記(1)の前記流路構造体について、流路の形成面(前記ガラス板との貼り合わせ面)を酸素プラズマ処理した。そして、処理後の前記流路構造体と前記ガラス板とを貼り合せ、分析チップを作製した。前記両者の貼り合わせは、前記流路構造体の反応部と前記ガラス基板上の前記反応試薬との位置が対向するようにして、行った。
【実施例】
【0131】
(6)分析
Let-7a 1pgを、10mmol/L リン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLに混合して、miRNAサンプルを調製した。そして、前記miRNAサンプル50μLを、前記分析チップの試料導入部11に滴下した後、前記分析チップを図2に示す遠心装置2のステージ23に固定化した。前記分析チップを、1500rpm(回転半径50mm)で10秒間回転させ、図3に示すように矢印Y方向に遠心力を発生させ、前記分析チップにおいて、前記miRNAサンプルを、試料導入部11から反応部13(矢印X方向)に移動させた。この際、前記分析チップにおいて、反応部13と検出部15とを連通する第2流路14は、その断面積が第1流路12の断面積よりも小さく、また、前記分析チップの素材PDMSが疎水性(蒸留水に対する接触角が110°)であることから、第2流路14の管抵抗(抵抗力(R))が第1流路12の管抵抗よりも大きいため、前記遠心力では、前記miRNAサンプルは、第1流路12を通過するものの、第2流路14を通過できない。このため、前記miRNAサンプルは、試料導入部11から反応部13へと移動するものの、第2流路14へは進入せず、反応部13に留まる。
【実施例】
【0132】
つぎに、前記分析チップの反応部13に、波長365nmのLEDを照射しながら、反応部13内の前記ステンレス球を、磁力で回転(200rpm)させ、前記miRNAサンプルにより前記反応試薬を溶解し、前記miRNAと前記反応試薬とを混合させた。この操作を、10分間行った。前記混合により、前記miRNAサンプル中のlet-7aと前記反応試薬(前記ピレンRNAプローブが固定化されたビーズ)とを結合させ、波長365nmのLED照射によって、前記ピレンRNAプローブのソラレンとlet-7aとを共有結合させた。これによって、前記両者の結合を安定化して、前記両者の乖離を防止できるため、前記miRNAサンプル中のlet-7aを、効率よく前記反応試薬のビーズ表面に捕捉できる。
【実施例】
【0133】
つぎに、前記分析チップを、4000rpm(回転半径50mm)で60秒間回転させ、反応部13内の前記ビーズを検出部15に移動させた。前記ビーズは、比重が2程度であり、前記miRNAサンプルよりも大きな比重を有するため、検出部15に集積される。前記反応試薬中のビーズの総容積は、5nLであるため、一辺0.15mmの正方形の断面を有する検出部15において、下流の先端から長さ0.2~0.3mmの領域に、前記ビーズが集積する。
【実施例】
【0134】
そして、蛍光顕微鏡を用い、前記分析チップの検出部15の先端に集積した前記ビーズに、波長340nmの励起光を照射し、波長480nmの蛍光強度を測定した。
【実施例】
【0135】
(実施例2)
図1に示す分析チップを作製し、サンプル中のmiRNAの分析を行った。
【実施例】
【0136】
(1)分析チップ
以下に示す方法により、図1の分析チップの上基板10bを作製した。なお、前記分析チップについて、各部位の大きさおよび材質は、以下の通りとした以外は、実施例1(1)~(5)と同様にして、分析チップを作製した。
反応部13:深さ2mm、直径8mm、円形、直径6mmの円形貫通孔
検出部15:幅0.15mm、深さ0.15mm、長さ0.3mm、直方体形状
第2流路14:長さ3.3mm、幅0.5mm、上流側から下流側に向かって、深さが1mmから0.15mmにスロープ状に変化
材質:ポリジメチルシロキサン(PDMS)製
【実施例】
【0137】
(2)分析
Let-7aを所定濃度(0mol/L、50もしくは200fmol/L、または2、20もしくは200pmol/L)となるように、10mmol/L リン酸緩衝液(pH7.4)に混合して、miRNAサンプルを調製した。そして、前記miRNAサンプル50μLを、前記分析チップの反応部13に滴下した後、前記分析チップを図2に示す遠心装置2のステージ23に固定化した。
【実施例】
【0138】
前記分析チップの反応部13に、波長365nmのLEDを照射しながら、反応部13内の前記ステンレス球を、磁力で回転(200rpm)させ、前記miRNAサンプルにより前記反応試薬を溶解し、前記miRNAと前記反応試薬とを混合させた。この操作を、10分間行った。前記混合により、前記miRNAサンプル中のlet-7aと前記反応試薬(前記ピレンRNAプローブが固定化されたビーズ)とを結合させ、波長365nmのLED照射によって、前記ピレンRNAプローブのソラレンとlet-7aとを共有結合させた。これによって、前記両者の結合を安定化して、前記両者の乖離を防止できるため、前記miRNAサンプル中のlet-7aを、効率よく前記反応試薬のビーズ表面に捕捉できる。
【実施例】
【0139】
つぎに、前記分析チップを、4000rpm(回転半径50mm)で60秒間回転させ、反応部13内の前記ビーズを検出部15に移動させた。前記ビーズは、比重が2程度であり、前記miRNAサンプルよりも大きな比重を有するため、検出部15に集積される。前記反応試薬中のビーズの総容積は、5nLであるため、一辺0.15mmの正方形の断面を有する検出部15において、下流の先端から長さ0.2~0.3mmの領域に、前記ビーズが集積する。
【実施例】
【0140】
そして、蛍光顕微鏡を用い、前記分析チップの検出部15の先端に集積した前記ビーズに、波長340nmの励起光を照射し、波長480nmの平均蛍光強度を測定した。
【実施例】
【0141】
この結果を図5に示す。図5は、平均蛍光強度を示すグラフである。図5において、(A)は、全てのmiRNAサンプルの結果を示し、(B)は、0~2pmol/LのmiRNAサンプルの結果を示す。また、図5において、横軸は、miRNAの濃度を示し、縦軸は、平均蛍光強度を示す。図5(A)および(B)に示すように、miRNAの濃度依存的に平均蛍光強度が増加した。また、前記分析チップによれば、PCRを使用することなく、50fmol/Lという極めて低濃度のmiRNAを検出できることが分かった。これらの結果から、本発明の分析チップおよび分析方法によれば、試料中のターゲットの分析において、優れた感度および精度を実現できることが分かった。
【実施例】
【0142】
(実施例3)
異なる深さの検出部を有する分析チップと異なる直径を有するビーズを使用し、前記ビーズを前記検出部に回収できることを確認した。
【実施例】
【0143】
(1)分析チップ
検出部15の深さを40、70、100または150μmとし、前記ピレンRNAプローブを固定化したビーズに代えて、直径300もしくは800nm、または5もしくは10μmのローダミン蛍光標識シリカ製ビーズ(micromod Partikeltechnologie GmbH社製)を用いた以外は、前記実施例2(1)と同様に、分析チップを作製した。
【実施例】
【0144】
(2)分析
前記リン酸緩衝液50μLを、前記分析チップの反応部13に滴下した後、前記分析チップを図2に示す遠心装置2のステージ23に固定化した。
【実施例】
【0145】
前記分析チップの反応部13内の前記ステンレス球を、磁力で回転(200rpm)させ、前記miRNAサンプルにより前記反応試薬を溶解した。この操作を、10分間行った。つぎに、前記分析チップを、4000rpm(回転半径50mm)で60秒間回転させ、反応部13内の前記ビーズを検出部15に移動させた。
【実施例】
【0146】
そして、蛍光顕微鏡を用い、前記分析チップの検出部15の先端に集積した前記ビーズに、波長510-560nmの励起光を照射し、波長490nm以上の平均蛍光強度および吸光度を測定した。
【実施例】
【0147】
これらの結果を図6に示す。図6は、平均蛍光強度または吸光度を示すグラフである。図6において、(A)は、平均蛍光強度の結果を示し、(B)は吸光度の結果を示し、図中の三角(△)は、300nmビーズの結果を示し、菱形(◇)は、800nmのビーズの結果を示し、丸(○)は、5μmのビーズの結果を示し、バツ(×)は、10μmのビーズの結果を示す。また、図6(A)において、横軸は、検出部15の深さを示し、縦軸は、平均蛍光強度を示し、(B)において、横軸は、検出部15の深さを示し、縦軸は、吸光度を示す。図6(A)に示すように、いずれの直径のビーズにおいても、検出部15の深さが増加するについて、平均蛍光強度が増加した。また、各ビーズの中でも、300nmのビーズは、検出部15の深さが増加する際の平均蛍光強度の増加割合が高く、且つ増加割合が一定であり、前記担体として特に好適に使用できることが分かった。また、図6(B)に示すように、いずれの直径のビーズにおいても、検出部15の深さが増加するにつれて、吸光度が増加した。また、300nm、5μm、および10μmのビーズは、検出部15の深さがいずれの深さの場合においても、吸光度が低減されており、例えば、光学的な方法により標識を検出する際に、検出漏れが低減できることが分かった。
【実施例】
【0148】
(実施例4)
第2流路14の側面が、反応部13から検出部側15に向かってテーパー状に狭まる曲面であり、前記曲面の曲率半径が異なる分析チップと異なる濃度の界面活性剤を使用し、前記ビーズを前記検出部に回収できることを確認した。
【実施例】
【0149】
(1)分析チップ
図7(A)~(C)に示すように、第2流路14の側面を、反応部13から検出部15側に向かってテーパー状に狭まる曲面とし、検出部15の深さを100μmとし、前記ピレンRNAプローブを固定化したビーズに代えて、300μmまたは5μmのローダミン標識シリカ製ビーズを用いた以外は、前記実施例2(1)と同様に、分析チップを作製した。なお、図7(A)~(C)の分析チップにおいて、テーパー状に狭まる曲面における各曲面の曲率半径Rは、それぞれ、1.5、3、および4.5mmとした。
【実施例】
【0150】
(2)分析
0.5%Tween20(登録商標)またはTriton(商標)X-100を含む10mmol/L リン酸緩衝液(pH7.4)50μLを前記分析チップの反応部13に滴下後、前記実施例3(2)と同様にして、検出部15に前記ビーズを集積させた。そして、蛍光顕微鏡を用い、前記分析チップの検出部15の先端に集積した前記ビーズに、波長510-560nmの励起光を照射し、前記ビーズの集積部分の波長490nm以上の蛍光強度の総和(総蛍光量)を算出した。また、前記ビーズ添加前に、同様にして、総蛍光量を算出し、前記ビーズ添加後に算出された総蛍光量から前記ビーズ添加前に算出された総蛍光量を除くことで、総蛍光量を補正した(補正後の総蛍光量)。
【実施例】
【0151】
この結果を図8に示す。図8は、補正後の総蛍光量を示すグラフであり、(A)は、5μmのビーズを用いた場合の結果であり、(B)は、300nmのビーズを用いた場合の結果である。図8において、横軸は、界面活性剤の種類を示し、縦軸は、補正後の総蛍光量を示す。図8に示すように、第2流路14の側面がいずれの曲率半径を有する曲面であっても、補正後の総蛍光量が高く、効率良く前記ビーズが回収できることが分かった。また、図8に示すように、界面活性剤を含む場合、界面活性剤を含まない場合に対して、補正後の総蛍光量が有意に増加した。すなわち、前記試薬として界面活性剤を用いることで、効率良く前記ビーズが回収できることが分かった。
【実施例】
【0152】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【実施例】
【0153】
この出願は、2015年1月22日に出願された日本出願特願2015-010639を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明によれば、PCRを使用することなく、試料中のターゲットを直接的に分析できる。また、前記標識プローブが固定化された担体を使用する本発明は、前記流路が、前記移動制御手段として前記疎水性の内壁を有することで、前記反応部から前記検出部への前記担体の移動を制御でき、前記ターゲットと前記標識プローブとの結合体に、前記流路の内壁の疎水性により生じる抵抗力(R)より大きい遠心力(C2)を負荷することによって、例えば、前記検出部に高濃度の状態で回収できる。このため、試料中のターゲットの分析において、優れた感度および精度を実現でき、例えば、前記ターゲット分析チップに供する試料が微量であっても、分析可能である。したがって、本発明は、例えば、マイクロRNAをはじめとするターゲットの分析が行われる医療分野等において有用といえる。
【符号の説明】
【0155】
1、1’ 分析チップ
2 遠心装置
10a 下基板
10b 上基板
10、20 基板
11 試料導入部
12 第1流路
13 反応部
14 第2流路
15 検出部
21 モーター
22 軸
23 ステージ
24a、24b 固定部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7