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明細書 :高分子錯体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年2月15日(2018.2.15)
発明の名称または考案の名称 高分子錯体及びその製造方法
国際特許分類 C07F  19/00        (2006.01)
C07F   9/53        (2006.01)
C07F   5/00        (2006.01)
FI C07F 19/00 CSP
C07F 9/53
C07F 5/00 D
国際予備審査の請求
全頁数 44
出願番号 特願2017-504980 (P2017-504980)
国際出願番号 PCT/JP2016/055906
国際公開番号 WO2016/143561
国際出願日 平成28年2月26日(2016.2.26)
国際公開日 平成28年9月15日(2016.9.15)
優先権出願番号 2015045416
優先日 平成27年3月9日(2015.3.9)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】中島 綾子
【氏名】中西 貴之
【氏名】北川 裕一
【氏名】伏見 公志
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査請求 未請求
テーマコード 4H048
4H050
Fターム 4H048VA70
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB92
4H050BB14
4H050BC10
4H050BC19
4H050WA14
4H050WB13
4H050WB22
4H050WB23
要約 本発明は、希土類元素イオンによる3次元ネットワーク構造有する錯体を提供できる新たな有機配位子の提供、及びこの有機配位子を用いた新しい機能を有する希土類元素イオンを含有する新たな高分子錯体を提供する。上記高分子錯体の製造方法及び用途を提供する。本発明は、一般式(10)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体に関する。
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Ar11、Ar12及びAr13は、アリール基、ヘテロアリール基、又はアラルキル基を示す。M1は、希土類元素イオンである。LGは、M1で示される希土類元素イオンに配位する多座配位子である。Ar11及びAr13の一方又は両方は、少なくとも1個のカルボキシル基を有することができ、一般式(11)及び(12)で示される構造を有する。
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特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(10)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体。
【化1】
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一般式(10)中、
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示し、
1は、希土類元素イオンであり、
LGは、前記M1で示される希土類元素イオンに配位する多座配位子であり、m及びn2は、任意の整数であり、
1(LG)m ・・の・・で示される末端側は、他の繰り返し単位中のホスフィンオキシド基と結合をし、
Ar11及びAr13の一方又は両方は、無置換であるか、又はそれぞれ少なくとも1個のカルボキシル基を有し、下記一般式(11)及び(12)で示される構造を有し、n1及びn3は、任意の整数であり、
一般式(10)中のM1(LG)m・・・O=Pの・・・は、M1とO=Pの間の結合を示し、-COO-・・・M1(LG)n2の・・・は、-COO-とM1の間の結合を示し、
一般式(10)~(12)中のM1(LG)n13の・・で示される末端側は、他の繰り返し単位中のカルボキシル基との結合を示す。
【化2】
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【請求項2】
Ar11及びAr13の両方が、無置換である請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
Ar11及びAr13の両方が、それぞれ1個のカルボキシル基を有する、請求項1に記載の錯体。
【請求項4】
多座配位子LGがジケト化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項5】
ジケト化合物が一般式(3)で示される化合物である、請求項4に記載の錯体。
【化3】
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式中、Aは独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子、Zは水素原子又は重水素原子を示す。
【請求項6】
ジケト化合物が、アセチルアセトン(acac)、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(TMHD)、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン(TFA)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)、及び1-(2-ナフチル)-4,4,4-トリフルオロ-1,3-ブタンジオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項4又は5に記載の高分子錯体。
【請求項7】
1は、少なくとも2種類の希土類元素イオンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の高分子錯体。
【請求項8】
下記一般式(1)で示されるホスフィンオキシド化合物からなる、高分子希土類錯体用配位子。
【化4】
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一般式(1)中、
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ少なくとも1個のカルボキシル基を有する。
【請求項9】
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、置換若しくは無置換アリール基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ1個のカルボキシル基を有する請求項8に記載の配位子。
【請求項10】
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、フェニル基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ1個のカルボキシル基を有する請求項8に記載の配位子。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の一般式(1)で示される化合物、希土類化合物(但し、希土類化合物に含まれる希土類のイオンはM1である)、及び多座配位子LGを反応させて、請求項1~6のいずれか1項に記載の一般式(10)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体を調製する工程を含む高分子錯体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子錯体、高分子錯体形成用配位子及び高分子錯体の製造方法に関する。高分子錯体は、希土類元素イオンを含有し、かつ希土類元素イオンに有機配位子が配位する錯体である。さらに本発明は、上記本発明の高分子錯体の用途に関する。
関連出願の相互参照
本出願は、2015年3月9日出願の日本特願2015-045416号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
【背景技術】
【0002】
希土類錯体は4f-4f電子遷移に基づくシャープな発光を示すことから、新しい発光材料として近年注目を集め、かつ錯体を構成する配位子が有機物である場合にはポリマー等に相溶性を示すことからポリマー材料に混合して発光素子や蛍光インクなどに用いることが提案されている。さらにこれらの希土類錯体は、高い耐熱性を示すことも知られている(特許文献1、2、非特許文献1)。
【0003】
さらに、配位部位を多数持った錯体によって高分子化した錯体ポリマーが新しい光物質として注目されている。Eu(III)イオンとアリールユニットを組み合わせて配位高分子を形成することで、熱耐久性の向上、および高い発光量子収率を達成できることが報告されている(非特許文献2)。
【0004】
特許文献1:WO2012/15072
特許文献2:日本特許3668966号公報
特許文献1~2の全記載は、ここに特に開示として援用される。
【0005】
非特許文献1:K.Miyama,Y.Hasegawa et al,hem.Eur.J.,2011,17,521-528
非特許文献2:K.Miyata,T.Ohba et al, ChemPlusChem.,2012, 77, 277
非特許文献1~2の全記載は、ここに特に開示として援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、希土類錯体は、ポリマー等に相溶性を示すこと及び耐熱性に優れる発光体であることに主眼が置かれて開発され、ある程度の成果を挙げている。しかし、ディスプレイや発光印刷などの分野において実用されるためには、さらなる改良が必要であり、300℃を超える耐熱性を有し、かつ発光特性にも優れた新たな希土類錯体の提供が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、ポリマー等に相溶性を示す有機配位子であって、希土類元素イオンによる3次元ネットワーク構造有する錯体を提供できる新たな有機配位子の提供、及びこの有機配位子を用いた新しい機能(例えば、光機能、熱耐久性機能、電気特性機能)を有する希土類元素イオンを含有する新たな高分子錯体を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記高分子錯体の製造方法、さらには、上記高分子錯体の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
[1]
下記一般式(10)で示される繰り返し単位を有する錯体。
【化1】
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一般式(10)中、
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示し、
1は、希土類元素イオンであり、
LGは、前記M1で示される希土類元素イオンに配位する多座配位子であり、m及びn2は、任意の整数であり、
1(LG)m ・・の・・で示される末端側は、他の繰り返し単位中のホスフィンオキシド基と結合をし、
Ar11及びAr13の一方又は両方は、無置換であるか、又はそれぞれ少なくとも1個のカルボキシル基を有し、下記一般式(11)及び(12)で示される構造を有し、n1及びn3は、任意の整数であり、
一般式(10)中のM1(LG)m・・・O=Pの・・・は、M1とO=Pの間の結合を示し、-COO-・・・M1(LG)n2の・・・は、-COO-とM1の間の結合を示し、
一般式(10)~(12)中のM1(LG)n13の・・で示される末端側は、他の繰り返し単位中のカルボキシル基との結合を示す。
【化2】
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[2]
Ar11及びAr13の両方が、無置換である[1]に記載の錯体。
[3]
Ar11及びAr13の両方が、それぞれ1個のカルボキシル基を有する、[1]に記載の錯体。
[4]
多座配位子LGがジケト化合物である[1]~[3]のいずれか1項に記載の錯体。
[5]
ジケト化合物が一般式(3)で示される化合物である、[4]に記載の錯体。
【化3】
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式中、Aは独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子、Zは水素原子又は重水素原子を示す。
[6]
ジケト化合物が、アセチルアセトン(acac)、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(TMHD)、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン(TFA)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)、及び1-(2-ナフチル)-4,4,4-トリフルオロ-1,3-ブタンジオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、[4]又は[5]に記載の高分子錯体。
[7]
1は、少なくとも2種類の希土類元素イオンである、[1]~[6]のいずれか1項に記載の高分子錯体。
[8]
下記一般式(1)で示されるホスフィンオキシド化合物からなる、高分子希土類錯体用配位子。
【化4】
JP2016143561A1_000006t.gif
一般式(1)中、
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ少なくとも1個のカルボキシル基を有する。
[9]
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、置換若しくは無置換アリール基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ1個のカルボキシル基を有する[8]に記載の配位子。
[10]
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、フェニル基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ1個のカルボキシル基を有する[8]に記載の配位子。
[11]
[8]~[10]のいずれか1項に記載の一般式(1)で示される化合物、希土類化合物(但し、希土類化合物に含まれる希土類のイオンはM1である)、及び多座配位子LGを反応させて、[1]~[6]のいずれか1項に記載の一般式(10)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体を調製する工程を含む高分子錯体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリマー等に相溶性を示す有機配位子であって、耐熱性を有する新たな希土類元素イオンを含有する錯体を提供できる新たな有機配位子を提供することができる。さらに本発明は、この有機配位子を用いた耐熱性を有する希土類元素イオンを含有する新たな高分子錯体を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記高分子錯体の製造方法、上記高分子錯体の製造中間体、さらには、上記高分子錯体の用途を提供するができる。上記高分子錯体の製造中間体は、それ自体も光機能を有し、高分子錯体と同様の用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】加熱発光測定の測定装置(様子)を示す。
【図2】配位子CPOと錯体1を比較したIR測定の結果を示す。
【図3】配位子TCPOと錯体2を比較したIR測定の結果を示す。
【図4A】錯体1のSEM像(×200)を示す。
【図4B】錯体1のSEM像(×2500)を示す。
【図4C】錯体1のSEM像(×5000)を示す。
【図5】錯体1のXRD測定結果を示す。
【図6】錯体2(加熱前)のXRD測定結果を示す。
【図7】錯体2(加熱後)のXRD測定結果を示す。
【図8】錯体1及び2のTG測定結果を示す。
【図9】錯体1の発光スペクトルを示す。
【図10】錯体2(加熱前)の発光スペクトルを示す。
【図11】錯体2(加熱前後)の発光スペクトルの比較を示す。
【図12】錯体1及び2(加熱前)の発光寿命測定結果を示す。
【図13】錯体2(加熱前後)の発光寿命測定結果を示す。
【図14】滴定吸光測定結果(挿入図は拡大図)を示す。
【図15】増加ピーク273.8nmでの吸光強度の変化を示す。
【図16】減少ピーク303.0nmでの吸光強度の変化を示す。
【図17】加熱発光の様子(昇温時)を示す。上:錯体1、中:錯体2、下:Eu(hfa)3(TPPO)2
【図18】加熱発光の様子(冷却時)を示す。上:錯体1、中:錯体2、下:Eu(hfa)3(TPPO)2
【図19】カルボン酸が3つ付いた熱耐久性のEu錯体ポリマー(分解温度450℃)の励起スペクトルを示す。325nmのバンドは、光増感配位子hfaに起因するものであり、効果的に光増感エネルギー移動が行われていることを示している。
【図20】錯体3のXRDを、錯体2のXRDと共に示す。
【図21】左側に錯体3を27℃から177℃まで温度を変えながら窒素雰囲気で測定した発光スペクトルを示す。右側に、各温度でのTbの発光強度に対するEuの発光強度のプロットを示す。
【図22】錯体3の励起スペクトルを示す。
【図23】錯体3について推定されるエネルギーダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<一般式(1)で示される化合物>
本発明は、本発明の希土類元素イオンを含有する高分子錯体における配位子として用いることかできる下記一般式(1)で示されるホスフィンオキシド化合物を包含する。
【化5】
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【0012】
一般式(1)中、Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ少なくとも1個のカルボキシル基を有する。

【0013】
置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、特に限定されず、例えば、C6~20アリール基が挙げられる。C6~20アリール基としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、アンスリル等を例示できる。

【0014】
置換されていてもよいアリール基の置換基としては、特に限定されず、例えばC1-6アルキル基、C1-6ぺルフルオロアルキル基、C6-14アリール基、5~10員芳香族複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。

【0015】
C1-6アルキル基、C1-6ぺルフルオロアルキル基、アルコキシ基、シロキシ基及びジアルキルアミノ基については、以下の通りである。
C1-6アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
C1-6ぺルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、トリデカフルオロヘキシル等が挙げられる。
シロキシ基としては、トリメチルシロキシ、トリエチルシロキシ、トリイソプロピルシロキシ、tert-ブチルジメチルシロキシ等を例示できる。
アルコキシ基としては、例えば、C1-6アルコキシ基が挙げられる。C1-6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基等を例示できる。ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等を例示できる。

【0016】
C6-14アリール基としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル等が挙げられる。5~10員芳香族複素環基としては、例えば、2-又は3-チエニル、2-,3-又は4-ピリジル、2-,3-,4-,5-又は8-キノリル、1-,3-,4-又は5-イソキノリル、1-,2-又は3-インドリル、2-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フラニル等が挙げられる。

【0017】
アリールオキシ基としては、例えば、C6-12アリールオキシ基が挙げられる。C6-12アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を例示できる。

【0018】
置換されていてもよいアリール基の置換基の置換位置及び置換基の数は、特に限定されない。

【0019】
置換若しくは無置換ヘテロアリール基のヘテロアリール基としては、特に限定されず、例えば、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれる原子を1~3個含む、縮環していてもよい5~14員芳香族複素環基が挙げられる。

【0020】
前記芳香族複素環基としては、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、カリボリニル、フェナンスリジニル、アクリジニル等を例示できる。

【0021】
置換されていてもよいヘテロアリール基の置換基としては、前記置換されていてもよいアリール基で述べた置換基と同じである。

【0022】
前記置換されていてもよいヘテロアリール基の置換基の位置及び置換基の数は、特に限定されない。

【0023】
置換されていてもよいアラルキル基のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。

【0024】
置換されていてもよいアラルキル基の置換基としては、前記置換されていてもよいアリール基で述べた置換基と同じである。

【0025】
前記置換されていてもよいアラルキル基の置換基の位置及び置換基の数は、特に限定されない。

【0026】
Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、置換若しくは無置換アリール基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ1個のカルボキシル基を有することができる。さらに、Ar11、Ar12及びAr13は、独立に、フェニル基を示し、Ar11、Ar12及びAr13の少なくとも1個は、それぞれ1個のカルボキシル基を有することができる。カルボキシル基の位置及び置換基の数は、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基が1個の場合には、2、3、4位の何れであってもよく、錯体形成時の立体障害等を考慮すると、例えば、4位であることが好ましい。カルボキシル基が2個の場合には、2、4位、2、5位、2、6位、3、4位、3、5位の何れであってもよく、錯体形成時の立体障害等を考慮すると、例えば、3、5位であることが好ましい。但し、これらの限定される意図ではない。

【0027】
<化合物の製造方法>
一般式(1)で示される化合物は、実施例に例示されているように、P(Ar11、Ar12及びAr13)で示されるリン化合物であって、カルボキシル基を導入したいArにアルキル基を有する原料化合物を用い、これを酸化条件下において前記アルキル基をカルボキシル基に酸化することで得られる。Arが有するアルキル基としては、容易に酸化されてカルボキシル基を与えることからメチル基であることが好ましい。酸化反応は、例えば、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を用いて実施できる。合成した化合物は公知の方法で適宜精製することができる。

【0028】
<高分子錯体>
本発明は、上記本発明の化合物と希土類元素イオンを含む高分子錯体を包含する。
本発明の高分子錯体は、下記一般式(10)で示される繰り返し単位を有する。
【化6】
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【0029】
一般式(10)中、Ar11、Ar12及びAr13は、一般式(1)中と同様に、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示す。これらは、一般式(1)における定義と同義である。

【0030】
1は、希土類元素イオンであり、ホスフィンオキシド基及び/又はカルボキシル基が希土類元素イオンM1に配位結合する。本発明の錯体において、希土類元素は、希土類元素イオンとして含有されているものと推察される。希土類元素は、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから成る群から選ばれる1種又は2種以上の元素であることかできる。希土類元素イオンは、各元素に固有の価数のイオンであり、例えば、+2価又は+3価である陽イオンが挙げられる。希土類元素イオンとしては、発光体を得るという観点からは、例えば、Eu3+、Tb3+、Gd3+、Tm3+又はEr3+が好ましく、例えば、前記希土類元素がEu3+の場合、赤色発光を示し、前記希土類元素がTb3+の場合、緑色発光を示す。本発明の錯体において、希土類元素は、単独で存在するもの、または2種以上が存在する錯体も包含する。

【0031】
LGは、希土類元素イオンM1に配位する多座配位子であり、m及びn2は、任意の整数である。

【0032】
LGで示される多座配位子は、多座配位化合物からなり、多座配位化合物は、例えば、2座配位化合物、3座配位化合物、又は4座配位化合物であることができる。多座配位化合物の中でも2座配位化合物の例としては、ジケト化合物を挙げることができ、ジケト化合物としては一般式(3)で示される化合物を例示できる。一般式(3)中、Aは、独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Zは水素原子又は重水素原子を示す。炭素数1~6のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-及びiso)、ブチル基(n-及びtert-)、ペンチル基、ヘキシル基である。

【0033】
【化7】
JP2016143561A1_000009t.gif

【0034】
一般式(3)で示されるジケト化合物は、より具体的には、例えば、アセチルアセトン(acac)、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(TMHD)、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン(TFA)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)、及び1-(2-ナフチル)-4,4,4-トリフルオロ-1,3-ブタンジオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらの化合物は公知化合物である。

【0035】
m及びn2は、LGの希土類元素イオンM1に配位する配位数であり、LGの種類(配位座の種類と数)及び希土類元素イオンM1の価数により決定される任意の整数である。例えば、1~10の範囲いずれかの整数、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であることができる。

【0036】
1(LG)m ・・の末端側の・・は、他の一般式(10)で示される繰り返し単位中のホスフィンオキシド基と結合することを意味する。他の一般式(10)で示される繰り返し単位は、同一の構造を有する物であっても、異なる構造を有する物であっても良い。一般式(10)中のM1(LG)m・・・O=Pの・・・は、M1とO=Pの間の結合を示し、-COO-・・・M1(LG)n2の・・・は、-COO-とM1の間の結合を示す。何れの結合も、限定する意図ではないが配位結合である。

【0037】
Ar11及びAr13の一方又は両方は、無置換であるか、又はそれぞれ少なくとも1個のカルボキシル基を有し、下記一般式(11)及び(12)で示される構造を有する。M1及びLGは上記一般式(10)と同義である。n1及びn3は、n2と同様にLGの希土類元素イオンM1に配位する配位数であり、LGの種類(配位座の種類と数)及び希土類元素イオンM1の価数により決定される任意の整数である。例えば、1~10の範囲いずれかの整数、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であることができる。

【0038】
【化8】
JP2016143561A1_000010t.gif

【0039】
(10)~(12)中のM1(LG)n13・・の末端側の・・は、他の一般式(10)で示される繰り返し単位中のカルボキシル基と結合することを意味する。

【0040】
Ar11及びAr13の両方が、無置換であるか、Ar11及びAr13の両方が、それぞれ1個のカルボキシル基を有することができる。

【0041】
Ar11、Ar12及びAr13が何れもフェニル基であり、Ar11及びAr13の両方が無置換であり(一般式(1)の化合物は1個のカルボキシル基を有する)、M1がEuであり、LGが1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)である場合の高分子錯体の想定される構造式を以下に示す。以下の構造式は、一般式(1)の化合物が3つ含まれる状態であり、左側のEuに、2つの一般式(1)の化合物のホスフィンオキシド基と3つのHFAが配位し、右側のEuには、2つの一般式(1)の化合物のカルボキシル基と1つのHFAと2つの水分子が配位している。左端のカルボキシル基及び右端のホスフィンオキシド基はフリーの状態であるが、示してはいないが、それぞれEuに配位している。実際の高分子錯体は、この構造式で示されるユニットを複数繰り返して有する線状の高分子錯体であり、末端においては、カルボキシル基及びホスフィンオキシド基はフリーの状態であり得る。

【0042】
【化9】
JP2016143561A1_000011t.gif

【0043】
Ar11、Ar12及びAr13が何れもフェニル基であり、Ar11及びAr13の両方がカルボキシル基を有し(一般式(1)の化合物は3個のカルボキシル基を有する)、M1がEuであり、LGが1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)である場合の高分子錯体の想定される構造式を以下に示す。以下の構造式は、一般式(1)の化合物が4つ含まれる状態であり、左側のEuに、2つの一般式(1)の化合物のホスフィンオキシド基と3つのHFAが配位している。右上側のEuには、3つの一般式(1)の化合物のカルボキシル基と2つの水分子が配位している。右下側のEuには、2つの一般式(1)の化合物のカルボキシル基が配位している。このEuには、示していないが、さらにもう1つの一般式(1)の化合物のカルボキシル基と2つの水分子が配位するか、または、1つのHFAと2つの水分子が配位する。フリーの状態に記載されているカルボキシル基及びホスフィンオキシド基も、示してはいないが、それぞれEuに配位している。実際の高分子錯体は、この構造式で示されるユニットを複数繰り返して有する3次元架橋の高分子錯体である。尚、末端においては、カルボキシル基及びホスフィンオキシド基はフリーの状態であり得る。3次元架橋の高分子錯体の方が、線状の高分子錯体より、構成要素が同等であれば、耐熱性は高い傾向にある。

【0044】
【化10】
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【0045】
Ar11、Ar12及びAr13が何れもフェニル基であり、Ar11及びAr13の両方がカルボキシル基を有し(一般式(1)の化合物は3個のカルボキシル基を有する)、M1がEuおよびTbであり、LGが1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)である場合の高分子錯体の想定される構造式を以下に示す。以下の構造式は、一般式(1)の化合物が4つ含まれる状態であり、左側のEuに、2つの一般式(1)の化合物のホスフィンオキシド基と3つのHFAが配位している。右上側のTbには、3つの一般式(1)の化合物のカルボキシル基と2つの水分子が配位している。右下側のEuには、2つの一般式(1)の化合物のカルボキシル基が配位している。このEuには、示していないが、さらにもう1つの一般式(1)の化合物のカルボキシル基と2つの水分子が配位するか、または、1つのHFAと2つの水分子が配位する。フリーの状態に記載されているカルボキシル基及びホスフィンオキシド基も、示してはいないが、それぞれEuに配位している。

【0046】
EuおよびTbの位置は任意であり、左側のEuの位置にTbが入ることもあり、右上側のTbの位置にEuが入ることもあり、右下側のEuの位置にTbが入ることもある。EuとTbの比率により、この構造式で示されるユニット内に存在するEuおよびTbの数は変動し、EuおよびTbの一方が存在しないユニット(M1がEuのみ、またはTbのみのユニット)とEuおよびTbが共存するユニットとがランダムに併存することがあり得る。実際の高分子錯体は、このような複数種類のユニットをランダムに有する3次元架橋の高分子錯体である。尚、末端においては、カルボキシル基及びホスフィンオキシド基はフリーの状態であり得る。3次元架橋の高分子錯体は、線状の高分子錯体より、構成要素が同等であれば、耐熱性は高い傾向にある。このようにM1が複数の希土類元素イオンである錯体では、例えば、EuとTbのように温度への応答が異なる場合には、温度に依存した発光色の変化を得ることができる。

【0047】
【化11】
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【0048】
本発明の高分子錯体における一般式(10)で示される繰り返し単位の繰り返し数は、例えば、2~500,000の範囲であることができる。本発明の高分子錯体に求められる物性を考慮して、上記繰返数は、この範囲で適宜決定できる。上記繰返数は、製造方法及び条件、希土類金属イオンの種類やAr11、Ar12及びAr13の種類を調整することにより適宜調整できる。但し、分子量が大きいほど耐熱性に優れる傾向があり、一方で、分子量が大きくなると、他の材料との混合や分散がしにくくなる傾向があることから、これらの点を踏まえ、かつ構成成分の種類等も踏まえ、適宜決定できる。上記繰返数は、実用的には、用途や構成する配位子、希土類元素イオンの種類に応じて、例えば、2~100,000の範囲、2~10,000の範囲、2~1,000の範囲、2~500の範囲、3~300の範囲であることができる。また、本発明の高分子錯体は、通常は、上記繰返数の異なる複数の錯体が共存する混合物であり、混合物の場合には、上記繰返数はそれら混合物中の各錯体の繰返数の平均値を意味する。

【0049】
<高分子錯体の製造方法>
上記本発明の高分子錯体は、例えば、前記一般式(1)で示される化合物、希土類化合物(但し、希土類化合物に含まれる希土類のイオンはM1である)、多座配位子LGを反応させて一般式(10)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体を調製する工程を含む方法により製造することができる。

【0050】
一般式(1)で示される化合物と希土類元素含有化合物と多座配位子LGとを溶媒中で混合して、前記化合物と前記希土類元素と多座配位子LGとの錯体を得る。一般式(1)で示される化合物と希土類元素含有化合物と多座配位子LGとの混合比は、一般式(1)で示される化合物、希土類元素イオン、多座配位子LGの種類に応じて適宜決定できる。特に、一般式(1)で示される化合物が有するカルボキシル基の数を考慮して、一般式(1)で示される化合物のモル数/希土類元素のモル数)は、例えば、0.5~10の範囲とすることができ、好ましくは0.5~5の範囲とすることができ、より好ましくは1~3の範囲とすることができる。(多座配位子LGのモル数/希土類元素のモル数)は、例えば、0.5~10の範囲とすることができ、好ましくは0.5~8の範囲とすることができ、より好ましくは1~5の範囲とすることができる。

【0051】
溶媒としては、本発明の化合物及び希土類元素含有化合物の両者を溶解する溶媒を用いる。例えば、限定する意図ではないが、メタノール、エタノール、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ピリジン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)等を用いることができる。溶媒中での混合は、例えば、室温(例えば、20℃)~120℃の範囲で、使用する溶媒の沸点も考慮して適宜選択できる。反応促進とうい観点からは加熱下で行うことが好ましく、例えば、40℃以上、または50℃以上で溶媒の沸点以下の温度とすることができる。反応時間は、原料及び反応条件と生成物の収量等を考慮して適宜決定できる。例えば、1分~100時間の範囲とすることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。

【0052】
上記反応に用いる希土類元素含有化合物は、希土類元素を含有する化合物であれば、特に限定はない。希土類元素含有化合物は、例えば、配位化合物及び希土類元素イオン含有化合物であることができ、配位化合物及び希土類元素イオン含有化合物は、例えば、配位化合物を配位子の少なくとも一部として有する希土類元素イオン錯体化合物であることができる。好ましくは、配位化合物を配位子の一部として有し、かつ残りの配位子が、一般式(1)で示される化合物の希土類元素イオンに対する配位力より弱い配位力を有する配位子である希土類元素イオン錯体化合物であることが、一般式(10)の希土類錯体の合成を容易にするという観点から好ましい。一般式(1)で示される化合物の希土類元素イオンに対する配位力より弱い配位力を有する配位子の例としては、例えば、水(H20)、メタノール、エタノール等を挙げることができる。生成した本発明の高分子錯体は、常法により精製することができる。

【0053】
<発光素子>
本発明は、上記本発明の一般式(10)で示される繰り返し単位を含む高分子錯体を発光材料として用いた発光素子を包含する。本発明の発光素子は本発明の錯体の薄膜を有するものであることができる。より具体的には、本発明の高分子錯体は、例えば、白色LED素子の発光層(発光媒体)及び有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に用いることができる。本発明の発光素子はディスプレイまたは照明であることもできる。さらに、本発明の高分子錯体は、例えば、発光性インキ組成物に用いることもできる。

【0054】
前記高分子錯体をこれらの用途に用いる場合、前記高分子錯体を一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。

【0055】
また、前記高分子錯体を必須成分として含有し、さらに該錯体以外のイオン、化合物等をさらに含有する混合物として用いることもできる。前記混合物には、前記高分子錯体が含まれていればよく、本発明の効果を阻害しない範囲内で、希土類金属イオン、前記本発明の化合物が配位していない希土類錯体等をさらに含んでいてもよい。

【0056】
(1)白色LED素子
本発明の白色LED素子は、発光層を構成する発光媒体(例えば、蛍光体)中に前記高分子錯体を含有させる以外は、公知のLED素子と同様の構成を採用できる。例えば、LEDチップと発光媒体とからなる発光層を有するLED素子が挙げられる。

【0057】
LEDチップは、電極より電気エネルギーを受けて、発光し光を放射する。LEDチップから放射される光を吸収した発光媒体は、吸収した光とは異なる波長の光を放射する。この時、LEDチップから放射される光と発光体から放射される光とが組み合わさることにより、新たな光の色が形成される。本発明では、発光体中に前記高分子錯体を含有させることにより、白色の光を発することができる。また、前記高分子錯体は、有機媒体に好適に溶解し、有機媒体中で析出することが基本的にないため、効率よく(高い光取り出し効率で)、白色光を放射できる。

【0058】
LEDチップとしては、紫外~近紫外~可視~近赤外領域の光を放出する素子であればよく特に限定されない。例えば、青色LED、近紫外LED等が挙げられる。

【0059】
発光媒体は、前記高分子錯体が有機媒体に溶解してなるものである。本発明では、前記高分子錯体中の希土類元素イオン(中心元素イオン)を適宜選択することにより、発光媒体から放射される光の色を制御できる。例えば、中心元素イオンが全てEu3+である高分子錯体を含む発光媒体は、赤色の光を放射できる。また、中心元素イオンが全てTb3+である高分子錯体を含む発光媒体は、緑色の光を放射できる。さらに、中心元素イオンがEu3+及びTb3+以外の希土類元素イオン(例えば中心元素イオンが全てTm3+)である高分子錯体を含む発光媒体は、青色の光を放射できる。

【0060】
発光媒体には、2種類以上の前記高分子錯体を含有させてもよい。発光媒体には、光取り出し効率が低下する等の観点から、公知の発光性無機化合物粒子を含有させないほうがよいが、本発明の効果を妨げない範囲であれば、必要に応じて前記粒子を含有させてもよい。

【0061】
前記粒子としては、Y3Al5O12(YAG)にCeを付活してなる粒子等の黄色光を放射する無機化合物粒子;Sr10(PO46Cl2にEuを付活してなる粒子、Ca10(PO46l2にEuを付活してなる粒子、Ba10(PO46l2にEuを付活してなる粒子、BaMgAl1017にEuを付活してなる粒子、Ba3MgSi28にEuを付活してなる粒子等の青色光を放射する無機化合物粒子;SrGa24にEuを付活してなる粒子、CaAl24にEuを付活してなる粒子、BaAl24にEuを付活してなる粒子、SrAl24にEuを付活してなる粒子等の緑色光を放射する無機化合物粒子;SrSにEuを付活してなる粒子、CaSにEuを付活してなる粒子、CaAlSiN3にEuを付活してなる粒子、Ba3MgSi28にEu、Mnを付活してなる粒子等の赤色光を放射する無機化合物粒子等が挙げられる。これらの粒子は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0062】
例えば、下記LEDチップと発光媒体との組み合わせの場合、好適に白色光を得ることができる。
(1)LEDチップ:青色LED(例えばInGaN)、発光媒体:赤色光を放射する高分子錯体+黄色光を放射する無機化合物粒子(例えば、Y3Al5O12(YAG)結晶にCeを付活してなる粒子)
(2)LEDチップ:青色LED(例えばInGaN)、発光媒体:赤色光を放射する高分子錯体+緑色光を放射する高分子錯体
(3)LEDチップ:近紫外LED(例えばInGaN)、発光媒体:青色光を放射する無機化合物粒子(例えば、Sr10(PO46Cl2にEuを付活してなる粒子、Ca10(PO46Cl2にEuを付活してなる粒子、Ba10(PO46l2にEuを付活してなる粒子等)+赤色光を放射する高分子錯体+緑色光を放射する高分子錯体
(4)LEDチップ:近紫外LED(例えばInGaN)、発光媒体:赤色光を放射する高分子錯体+緑色光を放射する高分子錯体+青色光を放射する高分子錯体
前記有機媒体としては、例えば、有機溶媒、液状ポリマー等が挙げられる。

【0063】
前記有機溶媒としては、例えばフッ素系溶媒等が挙げられる。これら有機溶媒は、一種単独で又は二種以上からなる混合溶媒として使用できる。

【0064】
前記液状ポリマーとしては、例えばフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。前記フッ素系樹脂、前記シリコーン系樹脂等としては、市販品を好適に用いることができる。フッ素系樹脂の市販品としては、例えば、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製)、サイトップ(旭ガラス製)等が挙げられる。シリコーン樹脂の市販品としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。

【0065】
特に、前記有機媒体としては、液状ポリマーが好ましく、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂は、高ガラス転移点、高防湿性、低気体透過性等の特性を有するため、前記有機媒体としてフッ素系樹脂を用いることにより、発光媒体3の発光特性、発光寿命、耐久性等を向上させることができる。

【0066】
発光媒体中における前記高分子錯体の含有量は、特に限定されないが、5~90質量%程度が好ましい。

【0067】
発光媒体中における前記発光性無機化合物粒子の含有量は、本発明を妨げない範囲である限り特に限定されない。

【0068】
本発明の白色LED素子は、砲弾型LED、表面実装型LED等の種々のLEDに用いることができる。前記LEDの具体的構成は、前記白色LED素子が配置される以外は公知のLEDと同様の構成を採用できる。

【0069】
(2)有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子
本発明の有機EL素子は、前記高分子錯体を含む発光層を有する。

【0070】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常、基板、陽極、電荷(正孔)輸送層、前記発光層、電荷(電子)輸送層及び陰極が順に積層された構造を有する。前記発光層中における前記高分子錯体の含有量は、例えば、5~100質量%程度であることができる。

【0071】
前記発光層は本発明の高分子錯体単独で形成されていてもよいし、本発明の高分子錯体以外の化合物をさらに含有していてもよい。例えば下記に示す電荷(正孔)輸送層の材料もしくは電荷(電子)輸送層の材料等をホスト化合物として含有していても良い。

【0072】
前記発光層の膜厚は、少なくともピンホールが発生しないような厚みが必要であるが、厚すぎると素子の抵抗が増し、高い駆動電圧が必要となるためあまり好ましくない。従って前記発光層の膜厚は、0.0005~10μm程度、好ましくは0.001~1μm程度、より好ましくは、0.005~0.2μm程度である。

【0073】
前記発光層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、前記高分子錯体を正孔輸送層上に蒸着する方法、或いは、後述する発光性インキ組成物をスピンコート法、インクジェット法等の印刷方法により塗布する方法が挙げられる。

【0074】
前記基板は、透明のものであればよく、例えば、ガラス、石英、光透過性プラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート(PC)等)等が挙げられる。前記基板の厚みは、本発明の効果を妨げない範囲であればよく特に限定されない。

【0075】
前記陽極の材料として、例えば、仕事関数の大きな導電性材料であるITO(インジウム錫酸化物)等を用いることができる。前記陽極の厚みは、0.1~0.3μm程度とすることができる。

【0076】
前記電荷(正孔)輸送層の材料としては、例えば、トリアリールアミン等のアリールアミン系化合物等が用いられる。前記材料は一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0077】
前記電荷(電子)輸送層の材料としては、例えば、トリス(8-ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、トリアゾール類、フェナントロリン類、オキサジアゾール類等が用いられる。前記材料は一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0078】
これら電荷輸送層の厚みは、それぞれ通常0.0005μm~10μm程度であり、好ましくは0.001~1μm程度である。

【0079】
前記陰極の材料としては、仕事関数が小さな金属であるアルミニウム、マグネシウム、インジウム、アルミ-リチウム合金、マグネシウム-銀合金等が使用される。前記陰極の厚みは、0.01~0.5μm程度が好ましい。

【0080】
前記陽極、前記正孔輸送層、前記電子輸送層及び前記陰極は、前記各種材料を用いて抵抗加熱蒸着、真空蒸着、スパッタリング法等の公知の方法に従って形成できる。

【0081】
本発明の有機EL素子は、カラー液晶表示器のバックライト等の照明器、ディスプレイ等に用いることができる。

【0082】
(3)発光性インキ組成物
本発明の発光性インキ組成物は、前記高分子錯体を含有する。前記高分子錯体は、天然光の下では放射する光の色は実質的に無色である。

【0083】
一方、前記高分子錯体に紫外光を照射する場合、該錯体は有色の光を放射するので、その放射光を観察することができる。従って、前記高分子錯体を溶解させたインキ組成物を種々の基材上に印刷することにより、ブラックライト等を使用した紫外線照射下でのみ印刷内容の視認が可能になる。例えば、紙幣、文書、書類、カード等の基材に前記インキ組成物を印刷することにより、偽造、不正複写等を防止できるセキュリティー機能を持たせることができる。

【0084】
前記放射光の色は、前記高分子錯体の中心元素イオンの種類に応じて異なる。例えば、中心元素イオンがEu3+の場合、前記錯体は強い赤色の光を放射し、中心元素イオンがTb3+の場合、前記錯体は強い緑色の光を放射する。なお、前記高分子錯体が中心元素イオンを複数個有する場合、複数の希土類元素イオンは全て同一であることが好ましい。

【0085】
前記インキ組成物中には2種類以上の前記高分子錯体組成物を含有させてもよい。

【0086】
例えば、第1の発光体に、波長365nm及び254nmの紫外線を放射するブラックライトランプ照射で強い緑色発光を示す中心元素イオンがTb3+からなる本発明の高分子錯体を、第2の発光体に波長365nmの紫外線を放射するブラックライトランプ照射で強い赤色発光を示し、波長254nmの紫外線を放射するブラックライトランプ照射ではほとんど赤色発光を示さない中心元素イオンがEu3+からなる本発明の高分子錯体を混ぜ合わせた、2色混合型のインキを作成することができる。

【0087】
前記インキ組成物は、波長365nmの紫外線を放射するブラックライトランプを照射した場合、第1の発光体と第2の発光体が、それぞれ緑と赤の混色である黄色に近い色を発光する。一方、波長254nmの紫外線を放射するブラックライトランプを照射した場合、第2の発光体はほとんど発光せず、第1の発光体の緑色のみが発光する。

【0088】
この様に、前記2つの波長領域を使用して異なる色相を判別することになるため、真偽判別性をより高めることができる。

【0089】
本発明の発光性インキ組成物中における前記高分子錯体の含有量は、前記基材の種類等に応じて適宜設定すればよいが、0.001~30質量%程度が好ましく、0.05~3質量%程度がより好ましい。

【0090】
本発明の発光性インキ組成物には、必要に応じて、溶媒、樹脂(バインダー)、浸透剤、消泡剤、分散剤、着色剤等の添加物を含有させてもよい。特に、本発明のインキ組成物は、前記高分子錯体が溶媒中に溶解したものが好ましい。

【0091】
前記溶媒としては、前記高分子錯体を溶解することができるものであればよく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒は発光性インキ組成物の用途等に応じて適宜選択すればよく、一種単独で又は二種以上の混合溶媒として使用できる。

【0092】
前記樹脂(バインダー)は、前記高分子錯体を前記基材上に良好に定着でき、且つ、上記溶媒に良好に溶解するものが好ましい。前記樹脂は、光学的に透明であってもよいし、不透明であってもよい。例えば、ポリビニル系樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は発光性インキ組成物の用途等に応じて適宜選択すればよく、一種単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。

【0093】
浸透剤は、紙等へのインク組成物の浸透を早め、見かけの乾燥性を早くする目的で加える。前記浸透剤としては、例えば、グリコールエーテル、アルキレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。これらの浸透剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0094】
消泡剤は、インク組成物の移動やインク組成物製造時の泡の発生を防止する目的で添加する。前記消泡剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性及び両イオン性界面活性剤を使用できる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。両イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、ホスファチジルコリン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0095】
前記分散剤としては、例えば、ステアリン酸石鹸、オレイン酸石鹸、ロジン酸石鹸、Na-ジ-β-ナフチルメタンジサルフェート、Na-ラウリルサルフェート、Na-ジエチルヘキシルスルホサクシネート、Na-ジオクチルスルホサクシネート等の界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0096】
前記着色剤としては、公知の顔料や染料を使用できる。例えば、アゾ系、アゾメチン系、キナクドリン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、キノリン系、ペリレン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の有機染顔料を使用できる。これらの着色剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0097】
本発明の発光性インキ組成物中における上記各種添加剤の含有量は特に限定されず、前記基材の種類、用途等に応じて適宜設定すればよいが、本発明の発光性インキ組成物中における前記樹脂(バインダー)の含有量は0.5~30質量%程度が好ましく、1~10質量%程度がより好ましい。前記樹脂の含有量が0.5質量%未満の場合、非浸透性の基材に対して前記高分子錯体を十分に定着できない。また前記樹脂の含有量が30質量%を超える場合、発光性インキ組成物中において前記高分子錯体の周囲を前記樹脂(バインダー)が厚く覆うこととなるため前記高分子錯体の発光の低下を招く恐れがある。

【0098】
<高分子錯体含有プラスチック>
本発明は、本発明の高分子錯体を含有する発光性のプラスチック組成物を包含する。発光性のプラスチック組成物に用いるプラスチック材料としては、特に制限されず、種々の材料を適用することができる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。高分子錯体を配合して成形加工する方法としては、特に限定されないが、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、押出成形、反応成形、中空成形、熱成形、FRP成形等が挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
【実施例】
【0100】
参考例1-1. Eu(hfa)3(H2O)2 の調製
Europium acetate tetrahydrate (5.0 g, 13.6 mmol) を蒸留水(20 mL)に溶解した。この水溶液にhexafluoroacetylacetone (7.0 g, 33.6 mmol)の溶液を滴下した。得られた反応溶液は室温で3時間攪拌し、黄白色の沈澱を生成した。反応溶液を濾過して沈澱を得た。得られた沈澱はさらなる精製をすることなしに、次の工程に用いた。
Yield: 95%; IR (KBr): 1650, 1258—1145 cm-1; Elemental analysis calcd (%) for C15H7EuF18O8: C 22.27, H 0.87; found: C 22.12, H 1.01.(1)
(1). Y. Hasegawa, T. Ohkubo, T. Nakanishi, A. Kobayashi, M. Kato, T. Seki, H. Ito and K. Fushimi: Eur. J. Inorg. Chem. 2013 (2013) 5911.
【実施例】
【0101】
参考例1-2. Tb(hfa)3(H2O)2の調製
Terbium acetate tetrahydrate (5.0 g, 12.3 mmol) を蒸留水(20 mL)に溶解した。この水溶液にhexafluoroacetylacetone (7.0 g, 33.6 mmol) の溶液を滴下した。得られた反応溶液は室温で3時間攪拌し、黄白色の沈澱を生成した。反応溶液を濾過して沈澱を得た。得られた沈澱はさらなる精製をすることなしに、次の工程に用いた。
Yield: 70%; IR(KBr): 1650, 1255—1141 cm-1; Elemental analysis calcd (%) for [C15H7F18O8Tb + H2O]: C 21.60, H 1.09; found: C 21.47, H 1.34.(2)
(2). S. Katagiri, Y. Tsukahara, Y. Hasegawa, and Y. Wada: Bull. Chem. Soc. Jpn. 80 (2007) 1492.
【実施例】
【0102】
実施例1. mono-carboxy配位子を用いた錯体の合成
(1) 配位子[4-carboxyphenyl] diphenyl phosphine oxide(以下、CPO)
【化12】
JP2016143561A1_000014t.gif
【実施例】
【0103】
既報(C.M. Friesen et al, Journal of Fluorine Chemistry 2012, 144, 24-32)の10分の1スケールで実施した。50 mLナスフラスコにdiphenyl[(4-methyl)phenyl]phosphine (1.01 g, 3.2 mmol) とNaOH(0.22 g, 5.6 mmol) を入れ、蒸留水 (30 mL) に分散させた。分散溶液にKMnO4 (2.22 g, 14 mmol) を4回にわけて添加し、100℃で12時間加熱還流した。12時間後、沈殿物が茶色になっていることを確認した後、ろ紙を用いてろ過し、温水により沈殿物を洗浄した。得たろ液に10 MのH2SO4を添加すると、白色の沈殿物が得られた。沈殿物を10 %のNaOHに溶解し、水溶液をEt2Oで抽出した。得られた水層に再び、10 MのH2SO4を添加し、生じた白色の沈殿物をろ紙で回収した。得た沈殿物をろ紙ごと、75℃で真空乾燥させた。4時間後、紙状の白色の固体を得た。
Yield: 0.555 g (54%). 1H NMR (400 MHz, DMSO, TMS): δ8.10-8.06 (dd, 2H),
δ7.78-7.72 (dd, 2H), δ7.67-7.61 (m, 6H), δ7.60-7.54 (td, 4H).
IR(ATR): 1701, 1434, 1250, 1154, 1122, 1104, 1086, 933 cm-1.
【実施例】
【0104】
(2) 錯体1の合成
50 mLナスフラスコに配位子CPO (207 mg, 0.64 mmol) とEu(hfa)3(H2O)2 (720 mg, 0.89 mmol) を入れ、MeOH 30 mLに分散させた。その分散溶液を60℃で5時間加熱還流した。得られた沈殿物をMeOHで洗い、吸引ろ過した。得られたものを真空乾燥させて白色の粉体を得た。
Yield: 45.3 mg. IR(ATR): 1658, 1592, 1540, 1498, 1411, 1254, 1144, 1118 cm-1.
【実施例】
【0105】
実施例2. tri-carboxy配位子を用いた錯体の合成
(1) 配位子[4,4',4''-tricarboxyphenyl] phosphine oxide(以下、TCPO)
【化13】
JP2016143561A1_000015t.gif
【実施例】
【0106】
既報(J. Vaclavik, M Servalli et al, ChemCatChem 2013, 5, 692-696)の2分の1スケールで実施した。100 mLナスフラスコにtri(p-toryl)phosphine (1 g, 3.2 mmol) を、pyridine (12 mL) / 蒸留水 (24 mL) に分散させた。分散液を加温させた状態でKMnO4 (10 g, 63.3 mmol)を4回に分けて添加し、100℃で48時間加熱還流した。48時間後、ろ紙を用いてろ過し、温水により沈殿物を洗浄した。得たろ液に10 MのH2SO4を添加すると、白色の沈殿物が得られた。沈殿物を2 MのNaOHに溶解し、水溶液をTHFとEtOAcで抽出した。得られた水層に再び、10 MのH2SO4を添加し、生じた白色の沈殿物を吸引ろ過によって回収した。得た沈殿物を真空乾燥させ、白色粉末を得た。
Yield: 0.433 g (34%). 1H NMR (400 MHz, DMSO, TMS): δ8.12-8.08 (dd, 6H),
δ7.88-7.75 (dd, 6H).
IR(ATR): 1692, 1395, 1246, 1162, 1102, 1016, 857 cm-1.
【実施例】
【0107】
(2) 錯体2の合成
50 mLナスフラスコに配位子TCPO (260 mg, 0.63 mmol) とEu(hfa)3(H2O)2 (720 mg, 0.89 mmol) を入れ、MeOH 30 mLに分散させた。その分散溶液を60℃で9時間加熱還流した。得られた沈殿物をMeOHで洗い、吸引ろ過した。得られたものを真空乾燥させて白色の粉体を得た。
Yield: 294.7 mg
IR(ATR): 1624, 1548, 1398, 1382, 1185, 1145, 1116, 1050, 1018, 866 cm-1.
【実施例】
【0108】
実施例3. 物性測定
(1) XRD測定
XRD測定にはRIGAKU RINT 2000 Ultimaを使用し、測定範囲10-40°、スキャンスピード0.500 rad/minで測定した。
【実施例】
【0109】
(2) SEM測定
SEM測定にはJEOL JSM-6500Fを使用した。
【実施例】
【0110】
(3) 熱重量(TG)測定
サンプルとして錯体1および錯体2、リファレンスとしてAl2O3を各7 mgずつ用いた。測定装置にはEXSTAR 6000(TG DTA 6300)を使用した。錯体1は、測定範囲30-500℃、昇温速度1℃/minで1回目の昇温過程のみ測定した。錯体2は、100℃以下での重量減少が大きかったため、一度100℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、再び冷やした後、測定範囲50-500℃、昇温速度1℃/minで測定を行った。
【実施例】
【0111】
(4) 発光スペクトル測定
それぞれの錯体(粉体)で測定した。測定にはFluorolog-3 Spectrofluorometerおよび粉体用石英セルを使用し、測定範囲550-720 nm、走査速度0.05 nm/min、励起波長365 nmで測定した。
【実施例】
【0112】
(5) 発光寿命測定
それぞれの錯体(粉体)で測定した。測定にはFluorolog-3 Spectrofluorometerおよび粉体用石英セルを使用し、検出波長610 nmで測定した。
【実施例】
【0113】
(6) 発光量子収率測定および計算
それぞれの錯体(粉体)で測定した。測定にはJASCO FP-6600及び粉体用石英セルを使用し、励起波長365 nmの場合には測定範囲300-700 nm、励起波長465 nmの場合には測定範囲400-700 nmで、20 nm/ minの走査速度で測定した。
計算は、Igorを用いて行った。それぞれの測定結果を用いて、差スペクトル(バックグラウンド測定-サンプル測定)をつくり、励起光側および検出側のスペクトルをそれぞれ積分した。以下の式1を用いて発光量子収率を求めた。
発光量子収率Φ[%]=(発光面積)÷(吸収面積)×100 (1)
また、以下の式2を用いてエネルギー変換効率を求めた。
【実施例】
【0114】
【数1】
JP2016143561A1_000016t.gif
【実施例】
【0115】
(7) 滴定吸光測定
錯体1に必要な配位子の割合を求めるため、配位子を一定量滴下するごとに吸光測定を行い、滴定曲線を得た。溶媒をMeOHとし、4.0×10-5 MのEu(hfa)3(H2O)2溶液(I液)、6.0×10-4 MのCPO溶液(II液)をそれぞれ調製した。分光用セルにI液を3 mLとり、これを配位子が0当量のものとした。ここにII液を20μLずつ、すなわち0.1当量ずつ
加えていき、合計の配位子量が2.0当量となるまでそれぞれ測定を行った。測定にはJASCO V-550(UV / VIS Spectrophotometer)及び1 cm×1 cmの四面石英セルを使用し、測定範囲200-500 nm、100 nm / minの走査速度で測定した。
【実施例】
【0116】
(8) 加熱発光測定
発光に関する耐熱性を調べるために、加熱しながら発光測定を行った。
錯体1、錯体2、比較のための単核錯体としてEu(hfa)3(TPPO)2を、それぞれスライドガラスに乗せ、スライドガラスでカバーしてホットプレート上で加熱しながら発光を確認した(図1)。錯体2については、一定温度ごとに発光スペクトルを記録しながら観察を行った。観察にはOceanOptics USB4000を用いた。
【実施例】
【0117】
測定結果
(1) 錯体の構造
それぞれの錯体は、原料となる配位子CPOおよびTCPOがMeOHに完全には溶けなかったため分散させた状態で合成を行った。得られた錯体はいずれも、MeOH、水に不溶となった。そのため、ホスフィンオキシド部位およびカルボキシル基の両パーツが配位部位として働き、配位高分子となっていると推定した。単結晶X線構造解析などの構造解析手法を用いることができなかったため、IRやFAB-MSを用いて構造を推測した。以下にそれぞれの配位子と錯体を比較したIR測定の結果を図2及び3に示す。
【実施例】
【0118】
いずれの錯体においても、配位子のIR測定結果には表れている2500~3000 cm-1の範囲のブロードな吸収が、錯体ではなくなっている。この吸収はカルボン酸の-OH基に起因するものであるので、錯化することでこの-OH基がつぶれていることが示唆される。この考えに基づくと、錯体2においてもカルボン酸は-COOHの形では残っていないと予想される。また、カルボン酸の-C=O部分に起因する1700 cm-1付近の吸収が低周波数側にシフトしていることから、カルボン酸に別の物質が配位することで振動が抑制されていることが考えられる。この結果は、ホスフィンオキシド部位だけでなく、カルボキシ基も配位部位となっていることを示す。
以上のことも踏まえて、予想した錯体1および錯体2の部分構造を以下に示す。
【実施例】
【0119】
【化14】
JP2016143561A1_000017t.gif
【実施例】
【0120】
錯体1のFAB-MSの結果、上記化学構造式中の囲んだ構造(Eu(III)×2+配位子×2+hfa×3)のm/z=1569が観測された。このことから、ホスフィンオキシド部位およびカルボキシル基の両パーツがEu(III)への配位部位として働いていることが確認できる。
錯体2はカルボキシル基が配位子中に三つあるため、考えられる構造パターンが多く存在し、FAB-MSの結果と完全に一致する構造を導くに至っていない。しかし、m/z=2000-3500にmatrixではないピークが数多く観測されていることから、錯体2も配位高分子であることが示唆される。
【実施例】
【0121】
(2) 物性評価
2.1. SEM測定
錯体1のSEM測定によって得られた画像を図4A~4Cに示す。
【実施例】
【0122】
紙状の片鱗が重なったような形になっていることが確認できる。さらに高倍率でみてみると、毛羽立ったような構造が見える。錯体1は扱っている際、とても静電気を帯びやすかった。このSEM像からわかるように、ティッシュのようなこの構造もその理由となり得るだろう。
【実施例】
【0123】
2.2. XRD測定
錯体1および2のXRD測定の結果を図5~7に示す。
図5に示す錯体1では目立ったピークが見られず、結晶性は低いと見積もられた。
図6に示す錯体2(加熱前)は、合成直後の熱を加えていない状態のXRD測定では比較的強くピークが検出されたため、結晶性が良いことが示唆される。しかし、90℃の真空オーブンで2時間乾燥させたサンプル(図7)を同じ条件で測定すると多くのピークが消失した。これは、90℃の真空オーブンで2時間乾燥により、配位水が脱離して結晶構造が変化したことを意味する。
【実施例】
【0124】
2.3. 熱重量(TG)測定
錯体1および錯体2のTG測定の結果を図8に示す。
【実施例】
【0125】
錯体2は2回目の測定範囲50-500℃の昇温過程の測定結果のみ示してある。比較のため錯体1も50-500℃の範囲の結果のみを示す。図は、50℃のときの重量を0μgとして作図している。
図より錯体1では264℃および399℃に分解点が観測でき、これより錯体1は2段階で分解が進行することがわかった。錯体2では450℃にのみ分解点が観測され、高い熱耐久性を持つことが明らかとなった。それぞれの錯体の500 ℃時点での0℃からの重量減少は、錯体1が46%、錯体2が37%であった。この点からも錯体2が高い熱耐久性を持つことがわかる。
また100℃以下での重量減少は、錯体1では2%、錯体2では10%であった。このことから、錯体2の方が、有機溶媒もしくは水を含みやすい構造であることが示唆される。
【実施例】
【0126】
(3) 光物性評価
3.1. 発光スペクトル測定
各錯体の発光スペクトルを以下に示す。それぞれのスペクトルの強度は5D0 7F1の磁気双極子遷移で規格化した。
【実施例】
【0127】
いずれの錯体もEu(hfa)3(H2O)2とは、異なるスペクトルの形になっていることから新規のEu錯体の合成に成功したと言える。5D0 7F2の電気双極子遷移に基づくスペクトルに注目すると、錯体1ではEu(hfa)3(H2O)2よりもかなりブロード化している。これは後の発光寿命測定の項で詳しく述べるが、発光サイトが二種存在していることによるものだと考えられる。また、5D0 7F4の電気双極子遷移に基づくスペクトルは、強度が2倍近く大きくなり、さらに長波長側へシフトした。
【実施例】
【0128】
錯体2において加熱前と加熱後でスペクトルに大きな変化が見られ、ピークトップ位置がシフトしていることから、XRD測定の結果と合わせてみても構造が変化していることが明らかである。加熱によって錯体内の配位水が脱離し、構造が変化したのだと考えている。すると、加熱後の方が規格化強度が大きいのは、配位水がとれることによって配位水による振動失活が減少することによるものであると考える。
【実施例】
【0129】
3.2. 発光寿命測定
得られたデータを片対数グラフにプロットしたものを図12及び13に示す。
【実施例】
【0130】
得られたデータはOriginPro 7を用いて解析を行った。関数のフィッティングを試みたところ、いずれの錯体も2成分系で良いフィットを示した。以下に用いたフィッティングおよび計算によって求めた発光寿命を示す。
【実施例】
【0131】
【数2】
JP2016143561A1_000018t.gif
【実施例】
【0132】
【表1】
JP2016143561A1_000019t.gif
【実施例】
【0133】
錯体1と加熱前の錯体2を比較すると、τ1の割合が錯体2で10%以上増えているため、こちらの寿命成分がカルボキシ基由来のものであると予測する。しかし加熱すると、このτ1の割合が小さくなり、また長寿命成分であるτ2の長さが短くなる。これより、配位幾何学構造が大きく変わっていることが予想される。
【実施例】
【0134】
3.3. 発光量子収率
得られたデータから計算した値を表3にまとめる。
【実施例】
【0135】
【表2】
JP2016143561A1_000020t.gif
【実施例】
【0136】
錯体1の
【数3】
JP2016143561A1_000021t.gif
はサンプルの量が少なすぎて励起光が完全にサンプルにあたっていなかったためか、現実的ではない値がでたため、空欄にしてある。
先の発光スペクトルの項の結果を振り返る。5D0 7F1の磁気双極子遷移による発光強度で規格化したスペクトルでの比較では、加熱前よりも加熱後の方が5D0 7F2の電気双極子遷移による発光強度が大きくなっていた。5D0 7F4の電気双極子遷移による発光強度は加熱後の方が小さくなっているが、発光強度を面積で比較すると、加熱後の方が大きくなっていると見ることができる。
【実施例】
【0137】
3.4. 滴定吸光測定
滴定吸光測定実験の結果を図14に示す。配位子が0当量から2.0当量まで0.1当量刻みで含まれているEu(hfa)3(H2O)2溶液の吸光スペクトル、および配位子であるCPOだけが含まれる溶液の吸光スペクトルを同じ図中に示し、拡大図をinsetに示した。なお、波長200 nmにおいて最も吸光強度が小さいものが配位子量0当量のスペクトル、最も吸光強度が大きいものが配位子量2.0当量のスペクトルである。
【実施例】
【0138】
波長288 nmを境として、短波長側では、配位子量が増えるほど吸光強度が大きくなり、逆に長波長側では、配位子量が増えるほど吸光強度が小さくなるという傾向が見られた。288 nm以下の領域では配位子量が増えるにつれて、配位子の吸収ピーク形に起因する凸型が強く表れてきている。吸光強度の変化を見やすくするために、増加のピークである273.8 nmおよび減少のピークである303.0 nmについて、配位子量に対する吸光強度の大きさをプロットしたものをそれぞれ図15及び16に示す。
【実施例】
【0139】
それぞれ傾きが同じくらいの2本の直線上にプロットが分布している。0.7-0.8当量の間では近傍と明らかに違うプロット挙動を示した。この領域においてなにかしら化学反応が起こっている可能性がある。1.9-2.0当量の領域にも同様の変化を示しそうな1点だけずれたプロットが見られる。そのため、この錯化反応は何段階かのプロセスを経た反応であるのかもしれない。
【実施例】
【0140】
3.5. 加熱発光測定
昇温時・冷却時に、各温度で撮影した発光の様子を図17及び18に示す。
【実施例】
【0141】
図17より昇温時の発光の様子を見てみると、比較対象としておいた単核錯体のEu(hfa)3(TPPO)2は200℃で発光しなくなってしまい、250℃で焦げてしまった。これは有機物として焦げてしまっているため、温度を下げてももう発光材料としての機能は元に戻らなかった。
【実施例】
【0142】
一方、新規に合成した二つの錯体を見てみる。錯体1は第一分解温度が260℃であることがTG測定よりわかっている。その少し前の250℃まで光り、分解点以上の温度では光らなくなった。しかし、350℃まで上げた後に温度を室温まで戻すと、発光の機能を取り戻した。ここが従来のEu(hfa)3(TPPO)2より優れている点である。
【実施例】
【0143】
さらに錯体2はTG測定より分解温度が450℃とわかっている。錯体1と同様であれば450℃近くまで光ることが予想される。今回は温度計の計測上限が350℃であったため、上記実験では、少なくとも350℃まで光ることは核にできた。さらに高い温度においても光る可能性はある。
【実施例】
【0144】
また、実験後にそれぞれの錯体の粉末をみると、Eu(hfa)3(TPPO)2が黒焦げ、錯体1がすこし焦げて少し茶ばんでいたのに対し、錯体2は実験前とほぼ変化がなく白い粉体のままであった。このことからも錯体2の熱に対する耐久性の高さがわかる。
【実施例】
【0145】
錯体2(カルボン酸が3つ付いた熱耐久性のEu錯体ポリマー(分解温度450℃))の励起スペクトルを図19に示す。図中、325nmのバンドは、光増感配位子hfaに起因するものである。この図から、錯体2においては、効果的に光増感エネルギー移動が行われていることが分かる。
【実施例】
【0146】
実施例4
(1)Eu/Tb(hfa)x(TCPO)yの合成
TCPO (0.2 mmol, 82 mg) を323 Kでメタノール(2 ml)に溶解し、Eu(hfa)3(H2O)2 (0.1905 mmol, 155.5 mg) およびTb(hfa)3(H2O)2 (0.0095 mmol, 7.7 mg)のメタノール (2 ml)溶液を添加した。精製した沈澱を濾取してメタノールで数回洗浄し、真空乾燥してEuTb混合錯体ポリマーであるEu/Tb(hfa)x(TCPO)y(錯体3)を得た。
Yield: 294.7mg
ICP-AES: Eu:Tb = 1.0:18.4.
【実施例】
【0147】
(2)物性
(i)XRD
錯体3のXRDを図20に示す。測定方法は実施例3に準じた。
XRDよりEu100%の錯体2と同一構造であることが分かる。
以下に錯体3の予想部分構造を示す。但し、EuイオンおよびTbイオンの位置は不特定であり、EuイオンおよびTbイオンの実際の数はEu:Tb = 1.0:18.4である。
【実施例】
【0148】
【化15】
JP2016143561A1_000022t.gif
錯体3の予想部分構造
【実施例】
【0149】
(ii)発光の温度依存性
錯体3を27℃から177℃まで温度を変えながら窒素雰囲気で測定した発光スペクトルを図21の左側に示す。発光スペクトルの測定方法は実施例3に準じた。ここに示すこれらのピークはTbによる発光とEuによる発光に起因し、Tbの発光のピークが543nm付近、Euの発光ピークは613nm付近に見える。図21の右側に、各温度でのTbの発光強度に対するEuの発光強度のプロットを示す。発光スペクトルよりTbは温度上昇に伴い著しく発光強度が減少しているのに対し、Euは温度上昇に伴う強度の減少が小さいことに加え、27℃から77℃に温度を上げる際、強度があがっている様子が見られる。TbとEuで温度への応答が異なることから温度に依存した発光色の変化が確認された。
【実施例】
【0150】
(iii) 励起スペクトル
錯体3の励起スペクトルを図22に示す。測定方法は実施例3に準じた。錯体3の最大の特徴は励起スペクトル測定において検出波長を変えて測定すると、スペクトルの立ち上がりに差が見られることである。図中ではTbからの発光である545nmで検出したものを緑色、主にEuからの発光である610nmで検出したものを赤色で示す。Eu発光を検出しているものの方が長波長側まで観測されていることからEuのみにエネルギーを移動することのできる配位子の存在が示唆される。そこで考えられるエネルギーダイアグラムを図23に示す。
【実施例】
【0151】
(iv) エネルギーダイアグラム
hfaの三重項およびTbとEuの発光始準位のエネルギーはそれぞれ公表されている論文データより引用し、この結晶中におけるTCPOの三重項のエネルギーについては低温でGd錯体のリン光を測定することにより求めた。得られたそれぞれのエネルギー準位に考えられるエネルギー移動の矢印を書き加えた。hfa分子は十分にエネルギー的に高いためTbEuどちらにもエネルギーを受け渡すことができる。TCPOはTbとEuの間に準位が存在するためEuのみにエネルギー移動が起こる。その結果、励起スペクトルの差が生じたのだと推察される。
このようにEuとTbの発光始準位の間に配位子の三重項状態の準位が存在する系は、さらなるサーモセンシング能の向上に期待ができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、発光体や発光体に関連する分野に有用である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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