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明細書 :シンチレータ及びこれを用いた放射線線量計

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年11月30日(2017.11.30)
発明の名称または考案の名称 シンチレータ及びこれを用いた放射線線量計
国際特許分類 G01T   1/20        (2006.01)
G01T   1/203       (2006.01)
C09K  11/00        (2006.01)
C09K  11/02        (2006.01)
C09K  11/59        (2006.01)
C09K  11/64        (2006.01)
FI G01T 1/20 B
G01T 1/20 A
G01T 1/203
C09K 11/00 E
C09K 11/02 Z
C09K 11/59 CPR
C09K 11/64 CPM
国際予備審査の請求
全頁数 17
出願番号 特願2016-574844 (P2016-574844)
国際出願番号 PCT/JP2016/054016
国際公開番号 WO2016/129651
国際出願日 平成28年2月10日(2016.2.10)
国際公開日 平成28年8月18日(2016.8.18)
優先権出願番号 2015025382
優先日 平成27年2月12日(2015.2.12)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】石川 正純
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001210、【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G188
4H001
Fターム 2G188BB02
2G188BB19
2G188CC10
2G188CC13
2G188CC21
2G188EE01
2G188FF11
4H001CA02
4H001XA08
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA30
4H001XA56
要約 診断用X線のエネルギ範囲、より特定的には40kV~150kVの範囲内においてエネルギ感度依存性が改善されたシンチレータ及びこれを用いた放射線線量計を提供する。重合性モノマー、フィラー、及び光重合開始剤を含有する光重合レジンからシンチレータを構成することで、40kV~150kVの範囲内においてエネルギ感度依存性が改善される。さらに、ZnSiO等の無機蛍光物質を含有することで、同エネルギ範囲における相対感度変化が3%以下に低減される。
特許請求の範囲 【請求項1】
重合性モノマーと、
フィラーと、
光重合開始剤と、
を含有する光重合レジンからなることを特徴とするシンチレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のシンチレータにおいて、
前記光重合レジンは、無機蛍光物質をさらに含有することを特徴とするシンチレータ。
【請求項3】
請求項2に記載のシンチレータにおいて、
前記無機蛍光物質は、その40kV~150kVのX線エネルギ範囲の相対感度特性が、前記光重合レジンの相対感度特性と相補的関係にあることを特徴とするシンチレータ。
【請求項4】
請求項2に記載のシンチレータにおいて、
前記無機蛍光物質は、ZnSiOであることを特徴とするシンチレータ。
【請求項5】
請求項4に記載のシンチレータにおいて、
前記無機蛍光物質の含有量は、0.01重量%~1重量%であることを特徴とするシンチレータ。
【請求項6】
請求項1に記載のシンチレータにおいて、
前記重合性モノマーは、多官能メタクリレートを含有することを特徴とするシンチレータ。
【請求項7】
請求項1に記載のシンチレータにおいて、
前記光重合開始剤は、カンファーキノンとアミン類を含有することを特徴とするシンチレータ。
【請求項8】
請求項1に記載のシンチレータにおいて、
前記重合性モノマーは、多官能メタクリレートを含有し、
前記光重合開始剤は、カンファーキノンとアミン類を含有し、
前記光重合レジンは、無機蛍光物質を含有するとともに、前記無機蛍光物質は、その40kV~150kVのX線エネルギ範囲の相対感度特性が、前記光重合レジンの相対感度特性と相補的関係にある
ことを特徴とするシンチレータ。
【請求項9】
請求項8に記載のシンチレータにおいて、
前記無機蛍光物質は、ZnSiO、BaAl1219、BaMgAl1423の少なくともいずれかを含有する
ことを特徴とするシンチレータ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のシンチレータと、
前記シンチレータからの光を電気信号に変換する光電変換器と、
前記光電変換器からの出力について、その強度が所定の閾値以上のイベント数をカウントするカウンタと、
前記カウンタのカウント値を放射線の線量に変換して出力する算出部と、
を備えることを特徴とする放射線線量計。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータ及びこれを用いた放射線線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
体内挿入可能かつリアルタイム応答性に優れた線量計として、シンチレータと光ファイバを組み合わせた極微小線量計(SOF線量計)が開発されている。かかるSOFは、Ir-192を用いた密封小線源治療時の線量測定装置として開発されたものであるが、X線線量測定への応用もまた可能である。
【0003】
但し、診断用X線は治療用のγ線に比べて相対的にエネルギが低く、管電圧が40kV~150kVの範囲におけるエネルギ感度依存性は考慮されていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第4766407号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、シンチレータとしてプラスチックシンチレータが用いられているが、診断用X線の線量測定としての応用を考えると、40kV~150kVの範囲において±20%以上の感度変化が認められ、エネルギ感度依存性が顕著である。
【0006】
本発明の目的は、診断用X線のエネルギ範囲、より特定的には40kV~150kVの範囲内においてエネルギ感度依存性が改善されたシンチレータ及びこれを用いた放射線線量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシンチレータは、重合性モノマーと、フィラーと、光重合開始剤とを含有する光重合レジンからなることを特徴とする。
【0008】
本願発明者等は、歯科用コンポジットレジン等の光重合レジン、特に光重合開始剤がX線を吸収して蛍光する性質があることに着目し、しかも当該蛍光の発生に関して診断用X線のエネルギ範囲においてほぼ均一な相対感度を有していることを見出したものであり、かかる光重合レジンをシンチレータに用いることで、エネルギ感度依存性を向上させたものである。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記光重合レジンは、無機蛍光物質をさらに含有することを特徴とし、前記無機蛍光物質は、その40kV~150kVのX線エネルギ範囲の相対感度特性が、前記光重合レジンの相対感度特性と相補的関係にあることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態では、前記無機蛍光物質は、ZnSiOであることを特徴とし、その含有量は0.01重量%~1重量%とすることが好ましい。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態では、前記重合性モノマーは、多官能メタクリレートを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、前記光重合開始剤は、カンファーキノンとアミン類を含有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の放射線線量計は、上記のシンチレータと、前記シンチレータからの光を電気信号に変換する光電変換器と、前記光電変換器からの出力について、その強度が所定の閾値以上のイベント数をカウントするカウンタと、前記カウンタのカウント値を放射線の線量に変換して出力する算出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、診断用X線のエネルギ範囲、より特定的には40kV~150kVの範囲内においてエネルギ感度依存性が改善されたシンチレータ及びこれを用いた放射線線量計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】放射線線量計の構成図である。
【図2】実施例の管電圧と相対感度との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。

【0017】
図1は、本実施形態における放射線線量計の一構成図である。基本構成は、特許第4766407号に記載された放射線線量計と同様である。放射線線量計は、シンチレータ10、光ファイバ12、光電子増倍管14、信号増幅器16、ディスクリミネータ18、カウンタ20、コンピュータ22及びディスプレイ24を備えて構成され、診断用X線のX線線量等を測定する。

【0018】
シンチレータ10は、後に詳述するように、光重合レジンを含み、あるいは光重合レジンと無機蛍光物質の混合物を含んだシンチレータであり、X線等の電離放射線を光に変換する。シンチレータ10は、例えば1mmφ程度の半球型に形成される。

【0019】
光ファイバ12は、シンチレータ10に接続され、シンチレータ10において電離放射線から変換された光を伝達する。光ファイバ12は、途中にコネクタを設け、適宜着脱可能に構成してもよい。

【0020】
光電子増倍管14は、光ファイバ12に接続され、光ファイバ12から伝達される光をその強度に応じた電気信号に変換する。

【0021】
信号増幅器16は、光電子増倍管14からの電気信号を増幅して出力する。

【0022】
ディスクリミネータ18は、入力された電気信号と所定の閾値とを比較し、信号レベルが閾値以上のものをイベントとして弁別することでノイズを除去する。

【0023】
カウンタ20は、ディスクリミネータ18により弁別されたイベントをカウントして出力する。

【0024】
コンピュータ22は、カウンタ20によるカウント値をX線の吸収線量に変換し、ディスプレイ24に表示する。

【0025】
次に、本実施形態において用いられるシンチレータ10について詳細に説明する。

【0026】
本願発明者等は、診断用X線のエネルギ範囲40kV~150kVの範囲において、鋭意、種々の材料についてエネルギ感度依存性を検討した結果、光重合レジン、特に歯科用光重合レジンが好適な特性を備えていることを見出した。

【0027】
歯科用光重合レジン等の光重合レジンは、重合性モノマーと、フィラーと、光重合開始剤を含有する。

【0028】
光重合開始剤は、紫外線等を受けて、ほぼ当初の分子の大きさを保持したまま、あるいは2つまたはそれ以上の分子に分裂した状態で、ポリマーの末端に結合し、この末端に結合した分子が蛍光発光することが知られている。光重合開始剤は、紫外線等を受けてラジカル状態となり、主剤のモノマーやオリゴマーを引き寄せ結合する。すると、そのラジカルの開始剤と結合したモノマー・オリゴマーがラジカル状態に変化する。このような反応が連鎖して進み、やがて小さな分子だったモノマー・オリゴマーは互いに結合し大きな分子の高分子ポリマーに変化する。硬化した後のポリマーの先頭にはかつて光重合開始剤だった物質が結合しており、非常に光エネルギを吸収し易いその性質は硬化後も残っている。しかし、反応が終了し物質が安定した状態になると、吸収した光エネルギを蛍光のエネルギに変換して放出する。放射線線量計に関するものではないが、特開2007-248244号公報あるいは米国特許第7,785,524号には、モノマーまたはオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と、光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂の状態を推定する方法において、光重合開始剤が紫外線を受けて蛍光を放射することが記載されている。また、「蛍光センサーによるUV硬化樹脂評価技術読本」,長岡由起,財団法人大阪科学技術センター,2010年2月18日にも、光重合開始剤がUV光を吸収して蛍光を発することを利用して、UV硬化の度合いを評価することが記載されている。

【0029】
このように、光重合開始剤がUV光を吸収して蛍光を発することが知られているが、本実施形態では、このような光重合開始剤が光エネルギを吸収して蛍光を放出する性質をシンチレータ10として利用し、この蛍光を光電子増倍管14,信号増幅器16,ディスクリミネータ18で検出し、カウンタ20でイベントとしてカウントすることでX線の線量を測定するものである。光重合開始剤がX線を吸収して蛍光を発した場合において、その蛍光の発光回数とX線の線量値とはほぼ比例関係にあるが、予め蛍光の発光回数とX線の線量値との関係を実験等により求めてコンピュータ22でX線線量に換算すればよい。

【0030】
次に、シンチレータ10として用いられる光重合レジンの各成分について説明する。

【0031】
<重合性モノマー(単量体)>
重合性モノマーとしては、分子中に少なくとも一つの重合性不飽和基を持つものであれば使用できる。モノマー分子中に存在する重合性不飽和基としては、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、アリル基、エチニル基、スチリル基等を挙げることができる。化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-シアノメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート系モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’-ビス{4-[3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系モノマー等を挙げることができる。

【0032】
また、上記(メタ)アクリレート系モノマー以外の重合性モノマーを混合して重合することも可能である。これらの他の重合性モノマーを例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー等のスチレン、α-メチルスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これらの重合性モノマーは単独で又は二種以上を混合して用いることができ、さらにこれらが含まれるオリゴマーを用いても良い。

【0033】
以下に、メタクリレート系モノマー、特に硬化後架橋構造を形成し得る多官能メタクリレートとして、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3—メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(Bis-GMA)、Bis-EMA(2.6)、Bis-EMA(6)、ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン(UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)の化学式をそれぞれ例示する。
【化1】
JP2016129651A1_000003t.gif
【化2】
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【化3】
JP2016129651A1_000005t.gif
【化4】
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【0034】
<フィラー>
光重合レジンの機械的性質は、重合性モノマーに添加されるフィラーの種類、量により決定される。重合性モノマーに配合されるフィラーとしては、有機フィラー、無機フィラー、あるいは有機フィラーと無機フィラーの複合が用いられる。なお、歯科用コンポジットレジンには、マクロフィラー、マイクロフィラー、有機複合フィラーを配合したハイブリッド型フィラーや、マクロフィラーを0.1~数μm程度に細かく粉砕し、充填率を高めるように粒度分布を調整したセミハイブリッド型フィラーが用いられており、これらを使用してもよい。

【0035】
無機フィラーとしては、シリカ;カオリン、クレー、雲母、マイカ等のシリカを基材とする鉱物;シリカを基材とし、Al23、B23、TiO2、ZrO2、BaO、La23、SrO2、CaO、P25などを含有する、セラミックスおよびガラス類が例示される。ガラス類としては、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラスが好ましい。これらの外、結晶石英、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化イッテルビウムも好ましい。

【0036】
有機フィラーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴムが例示される。

【0037】
無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で疎水化することにより重合性モノマーとのなじみを良くし、機械的強度や耐水性を向上させることができる。疎水化の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等が用いられる。

【0038】
無機フィラーと有機フィラーとの複合フィラーとしては、有機フィラーに無機フィラーを分散させたもの、無機フィラーを種々の重合性モノマーの重合体からなる有機フィラーにてコーティングしたものが例示される。

【0039】
<光重合開始剤>
上記のように、本実施形態では、光重合開始剤がX線を吸収することで蛍光を発する性質を利用してX線の線量を測定するものであり、その吸収波長が少なくとも診断用X線の波長領域にあることが必要である。光重合開始剤としては、具体的にはカンファーキノン等のα-ジケトンとアミン類の組み合わせ等が挙げられる。これらの重合開始機構では、光照射により励起したα-ジケトンがアミン類から水素を引き抜くことによりラジカル種が発生する。光励起したα-ジケトンは電子受容体としても機能するがその能力は低く、アミンのような水素供与体が存在する場合、電子引き抜きよりも水素引き抜きが優先して起こる。水素引き抜き反応によりラジカル種を生成する化合物としては、カンファーキノン、ベンジル、α-ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、1,4-フェナントレンキノン、3,4-フェナントレンキノン、9,10-フェナントレンキノン等のα-ジケトン類;2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類;2-ベンジル-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ベンジル-ジエチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ベンジル-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-プロパノン-1、2-ベンジル-ジエチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-プロパノン-1、2-ベンジル-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ペンタノン-1、2-ベンジル-ジエチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ペンタノン等のα-アミノアセトフェノン類等を挙げることができる。その中でもカンファーキノン、ベンジル、α-ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、1,4-フェナントレンキノン、3,4-フェナントレンキノン、9,10-フェナントレンキノン等のα-ジケトン類がより好ましく、活性の点からカンファーキノンが好ましい。

【0040】
また、水素引き抜き型重合開始剤と組み合わせたときに水素供与体として作用する重合促進剤としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ-n-ブチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、m-クロロ-N,N-ジメチルアニリン、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N-ジメチルアンスラニックアシッドメチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、p-ジメチルアミノフェネチルアルコール、p-ジメチルアミノスチルベン、N,N-ジメチル-3,5-キシリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチル-α-ナフチルアミン、N,N-ジメチル-β-ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2’-(n-ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類;5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類;ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等のメルカプト化合物を挙げることができる。これらの中でも第三級アミン類が好ましい。

【0041】
また、光重合開始剤として、分子内開裂によりラジカル種を生成させるものを使用できる。このような光重合開始剤としては、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシド誘導体等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、自身が光励起により解裂することによりラジカルを生成させ、このラジカルが重合性モノマーと反応することにより重合が開始する。

【0042】
なお、歯科用レジンには、審美性等のために蛍光性色素、例えばクマリン系色素が含有される場合があるが、本実施形態の光重合レジンにこれらの蛍光性色素が含有されていてもよい。
【実施例】
【0043】
<実施例1>
光重合レジンとして、市販の歯科充填用コンポジットレジンを用いた。当該コンポジットレジンには、重合モノマーとして、Bis-MPEPP/Bis-GMA/TEGDMAが含有され、フィラーとしてシリカジルコニアフィラー/シリカチタニアフィラーが含有され、光開始重合剤としてカンファーキノンが含有されている。フィラーの粒径分布は0.2~80μm、フィラーの充填率は82重量%、無機フィラーの充填率は69重量%である。これをシンチレータ10としてX線管電圧を40kV~150kVの範囲で変化させ、そのエネルギ感度を測定した。管電圧=80kVのエネルギ感度を基準とし、これに対する相対的感度を測定した。
【実施例】
【0044】
<実施例2>
実施例1と同様の光重合レジンを用い、これにさらに無機蛍光物質としてZnSiOを0.08重量%含有してシンチレータ10として、実施例1と同様にエネルギ感度を測定した。
【実施例】
【0045】
<比較例1>
従来のプラスチックシンチレータ10を用いて実施例1と同様にエネルギ感度を測定した。プラスチックシンチレータ10として、プラスチックシンチレータBC490(サンゴバンCDJ社)を使用した。
【実施例】
【0046】
図2は、これらの結果を示す。図2において、「光重合レジン」のグラフ100は実施例1の相対感度、「混合」のグラフ200は実施例2の相対感度、「プラスチックシンチレータ」のグラフ300は比較例1の相対感度を示す。なお、参考のため、実施例2で添加した蛍光物質ZnSiOの相対感度をグラフ400として示す。
【実施例】
【0047】
これらのグラフから分かるように、従来のプラスチックシンチレータに比べて、実施例1の光重合レジンシンチレータでは相対感度が大きく改善されていた。さらに、実施例1の光重合レジンにZnSiOを少量添加した実施例2のシンチレータでは相対感度がさらに改善されており、40kV~150kVの範囲において相対感度変化が3%以下まで改善されていた。
【実施例】
【0048】
実施例2において、実施例1よりもさらに相対感度が改善されているのは、図2のグラフ400に示すように、添加した蛍光物質ZnSiOの相対感度が、低エネルギ領域で高く、高エネルギ領域で低い特性を有しており、他方、実施例1の光重合レジンの相対感度が、低エネルギ領域で低く、高エネルギ領域で高い特性を有しており、いわばZnSiOは、その40kV~150kVのX線エネルギ範囲の相対感度特性が光重合レジンの相対感度特性と相補的関係にあるため、ZnSiOの相対感度により、光重合レジンの相対感度を補償した、すなわち、光重合レジンの低エネルギ領域の感度を増大させ、高エネルギ領域の感度を低下させることで、結果として良好な相対感度変化が得られたものと理解できる。
【実施例】
【0049】
なお、本願発明者等は、ZnSiOの添加量を0.01%、0.05%、1%とした場合にも光重合レジンの相対感度を改善させることができ、添加量を0.08%とした場合(実施例2)にはさらに改善させることができることを確認している。勿論、ZnSiOの添加量が少ないと相対感度を改善させる効果が十分得られず、逆にZnSiOの添加量が多すぎると、ZnSiOの相対感度が支配的となるため、むしろ光重合レジンの相対感度を劣化させることになる。従って、ZnSiO4の添加量としては、光重合レジンに対して0.01重量%~1重量%が好ましい。
【実施例】
【0050】
以上のように、歯科用レジン等の光重合レジンをシンチレータ10に用いることで、診断用X線のエネルギ範囲である40kV~150kVの範囲において相対感度依存性を顕著に改善することができ、さらに、その相対感度特性が光重合レジンの相対感度特性と相補的な関係にある蛍光物質を含有することで、相対感度特性を一層改善することができる。
【実施例】
【0051】
なお、歯科用レジンをシンチレータ10に用いた場合、診断を行う患者に直接触れたり、あるいは体内で被爆線量測定を行う際の生体親和性が良いという特徴もある。
【実施例】
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【実施例】
【0053】
例えば、本実施形態では、光重合レジンに添加する無機蛍光物質の一例としてZnSiOを例示したが、その相対感度特性が光重合レジンの相対感度特性と相補的な関係にある他の無機蛍光物質(例えば、BaAl1219、BaMgAl1423等)を用いることも可能であり、添加する無機蛍光物質は必ずしも1種類に限定されず、2種類以上であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 シンチレータ、12 光ファイバ、14 光電子増倍管、16 信号増幅器、18 ディスクリミネータ、20 カウンタ、22 コンピュータ、24 ディスプレイ。
図面
【図1】
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【図2】
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