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明細書 :ポリジメチルシロキサン親和性ペプチド及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年11月24日(2017.11.24)
発明の名称または考案の名称 ポリジメチルシロキサン親和性ペプチド及びその利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  17/08        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C12P  21/00        (2006.01)
C07K   7/08        (2006.01)
C07K  14/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
C07K 17/08 ZNA
C07K 19/00
C12P 21/00 C
C07K 7/08
C07K 14/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 33
出願番号 特願2016-574874 (P2016-574874)
国際出願番号 PCT/JP2016/054195
国際公開番号 WO2016/129695
国際出願日 平成28年2月12日(2016.2.12)
国際公開日 平成28年8月18日(2016.8.18)
優先権出願番号 2015026489
優先日 平成27年2月13日(2015.2.13)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】熊田 陽一
【氏名】大槻 領子
【氏名】赤井 亮太
【氏名】片山 淳子
【氏名】的場 一隆
出願人 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
4H045
Fターム 4B064AG01
4B064BJ20
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE09
4B064DA16
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA20
4H045BA40
4H045BA41
4H045BA60
4H045BA62
4H045EA50
4H045FA10
4H045FA72
4H045FA74
要約 本発明は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に親和性を有するペプチドが結合したポリジメチルシロキサン基材を提供すること、目的タンパク質のポリジメチルシロキサン基材への固定化方法を提供すること、PDMSに親和性を有するペプチドを提供すること、PDMSに親和性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供すること、また、これを用いたベクター等を提供することを目的とする。
以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドが結合されてなる、ポリジメチルシロキサン基材;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドが結合されてなる、ポリジメチルシロキサン基材;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
【請求項2】
前記断片が15~58のアミノ酸残基からなるペプチドである、請求項1に記載のポリジメチルシロキサン基材。
【請求項3】
前記ポリジメチルシロキサン親和性ペプチドを介して目的タンパク質がポリジメチルシロキサン基材に固定化されてなる、請求項1または2に記載のポリジメチルシロキサン基材。
【請求項4】
目的タンパク質に導入された以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドとポリジメチルシロキサン基材とを接触させる工程を含有する、目的タンパク質のポリジメチルシロキサン基材への固定化方法;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリジメチルシロキサン基材に結合したポリジメチルシロキサン親和性ペプチドと目的タンパク質とを結合させる工程を含有する、目的タンパク質のポリジメチルシロキサン基材への固定化方法。
【請求項6】
以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドを含有する、ポリジメチルシロキサン基材への目的タンパク質固定化用組成物;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
【請求項7】
目的タンパク質をポリジメチルシロキサン基材へ固定させるための、以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドの使用;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
【請求項8】
以下の(1c)もしくは(1d)のペプチドまたはその断片からなる、ポリジメチルシロキサン親和性ペプチド;
(1c)配列番号2~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1d)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
【請求項9】
前記断片が15~58のアミノ酸残基からなるペプチドである、請求項8に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチド。
【請求項10】
請求項8または9に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチドが配列番号10~18からなる群より選択される少なくとも1種で表されるポリヌクレオチドである、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項10または11に記載のポリヌクレオチドを含有する、ポリジメチルシロキサン親和性ペプチド発現ベクター。
【請求項13】
請求項10または11に記載のポリヌクレオチドと目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドとが連結されてなる、請求項8または9に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチドと目的タンパク質とのペプチド融合タンパク質発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを宿主細胞に導入して形質転換させることにより得られる形質転換体。
【請求項15】
請求項14に記載の形質転換体から得られる、請求項8または9に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチドと目的タンパク質とのペプチド融合タンパク質。
【請求項16】
請求項8または9に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチドからなる、ポリジメチルシロキサン基材への目的タンパク質の固定化用リンカー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリジメチルシロキサンに親和性を有するペプチド及び該ペプチドの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床検査、創薬研究、環境モニタリング、生化学をはじめとする様々な分野において、タンパク質、核酸、細胞等を基材に固定し、これを用いて所望の物質を検出、定量、分析等する手法が広く利用されている。一例として、酵素や抗体等のタンパク質を基材に固定し、固定されたタンパク質との酵素反応や抗原抗体反応を利用して所望の物質を検出する方法が知られている。
【0003】
このような手法においては、より高精度且つ高効率な検出、定量、分析等を可能にすべく今日も盛んに研究が行われており、例えば目的に応じて基材表面に化学処理やプラズマ処理等を施す方法が報告されている。また、例えばポリスチレン製の基材にタンパク質を固定できるペプチド(特許文献1)や、ポリカーボネート製の基材やポリメタクリル酸メチル製の基材にタンパク質を特異的且つ強固に固定できるペプチドが報告されている(特許文献2)。
【0004】
一方、ポリジメチルシロキサンはシリコーンゴムの1種であり、微細加工が可能であることから、マイクロ流体流路を代表とするマイクロチップの基材の一つとして知られている。ポリジメチルシロキサンにタンパク質を望ましく固定できれば所望の物質をより高精度且つ高効率に検出等でき、ポリジメチルシロキサン製の基材を用いた手法の更なる発展が期待できる。しかしながら、これまでにポリジメチルシロキサン製の基材に対する親和性ペプチドは知られていない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】WO2009/101807 A1
【特許文献2】特開2011-168505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このことから、本発明は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に親和性を有するペプチドが結合したPDMS基材を提供することを目的とする。また、本発明は、目的タンパク質のPDMS基材への固定化方法を提供する。また、本発明は、PDMSに親和性を有するペプチドを提供することを目的とする。また、本発明は、PDMSに親和性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することを目的とする。また、本発明はこれを用いたベクター等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、PDMSに親和性を有するペプチドを見出した。本発明はかかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成されたものである。すなわち、本発明は、下記に掲げる発明を提供する。
項1.以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドが結合されてなる、ポリジメチルシロキサン基材;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
項2.前記断片が15~58のアミノ酸残基からなるペプチドである、項1に記載のポリジメチルシロキサン基材。
項3.前記ポリジメチルシロキサン親和性ペプチドを介して目的タンパク質がポリジメチルシロキサン基材に固定化されてなる、項1または2に記載のポリジメチルシロキサン基材。
項4.目的タンパク質に導入された以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドとポリジメチルシロキサン基材とを接触させる工程を含有する、目的タンパク質のポリジメチルシロキサン基材への固定化方法;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
項5.項1または2に記載のポリジメチルシロキサン基材に結合したポリジメチルシロキサン親和性ペプチドと目的タンパク質とを結合させる工程を含有する、目的タンパク質のポリジメチルシロキサン基材への固定化方法。
項6.以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドを含有する、ポリジメチルシロキサン基材への目的タンパク質固定化用組成物;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
項7.目的タンパク質をポリジメチルシロキサン基材へ固定させるための、以下の(1a)もしくは(1b)のペプチドまたはその断片からなるポリジメチルシロキサン親和性ペプチドの使用;
(1a)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1b)前記(1a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
項8.以下の(1c)もしくは(1d)のペプチドまたはその断片からなる、ポリジメチルシロキサン親和性ペプチド;
(1c)配列番号2~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1d)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。
項9.前記断片が15~58のアミノ酸残基からなるペプチドである、項8に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチド。
項10.項8または9に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチド。
項11.前記ポリヌクレオチドが配列番号10~18からなる群より選択される少なくとも1種で表されるポリヌクレオチドである、項10に記載のポリヌクレオチド。
項12.項10または11に記載のポリヌクレオチドを含有する、ポリジメチルシロキサン親和性ペプチド発現ベクター。
項13.項10または11に記載のポリヌクレオチドと目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドとが連結されてなる、項8または9に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチドと目的タンパク質とのペプチド融合タンパク質発現ベクター。
項14.項13に記載のベクターを宿主細胞に導入して形質転換させることにより得られる形質転換体。
項15.項14に記載の形質転換体から得られる、項8または9に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチドと目的タンパク質とのペプチド融合タンパク質。
項16.項8または9に記載のポリジメチルシロキサン親和性ペプチドからなる、ポリジメチルシロキサン基材への目的タンパク質の固定化用リンカー。
【発明の効果】
【0008】
本発明のペプチドはPDMSに親和性を有する。このため、本発明のPDMS親和性ペプチドによれば、該PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質をPDMS基材に容易に固定できる。このことから、本発明によれば、PDMS親和性ペプチドを介して、目的タンパク質をPDMS基材に高精度且つ高効率で固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ペプチド融合タンパク質のPDMS基材に対する吸着密度を示す。
【図2】図2は、ペプチドを融合させたタンパク質の、PDMS基材上での残存活性を示す。
【図3】図3は、実施例3で用いたHPLCにおけるプログラムを示す。
【図4】図4は、ペプチド融合タンパク質のPDMS基材に対する吸着密度を示す。
【図5】図5は、ペプチド融合タンパク質の抗原結合活性を示す。
【図6】図6は、ペプチド融合タンパク質の抗原結合活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、PDMSに親和性を有するペプチドが結合したPDMS基材等を提供する。以下、本発明について説明する。
1.ポリジメチルシロキサン(PDMS)親和性ペプチド
本発明においてPDMS親和性ペプチドは、以下の(1-1)もしくは(1-2)のペプチドまたはその断片からなる;
(1-1)配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(1-2)前記(1-1)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド。

【0011】
本発明においてペプチドとは、ペプチド結合によって結合している2以上のアミノ酸残基を含有するものを指し、アミノ酸残基の数によってはオリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質と称されるものも含む。

【0012】
前記(1-1)においてペプチドは、配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなる限り制限されず、例えば配列番号1~9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドであってもよく、配列番号1~9のいずれかで表されるアミノ酸配列を2以上有しており、且つ、PDMS親和性を有するペプチドであってもよい。

【0013】
前記(1-2)のペプチドにおいて、「1または複数」の範囲は、該ペプチドがPDMS親和性を有することを限度として特に制限されないが、例えば1~15個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、更に好ましくは1~4個、特に好ましくは1~3個、更に特に好ましくは1又は2個が挙げられる。特定のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸を欠失、置換及び/または付加させる技術は公知である。

【0014】
なお、このように欠失、置換及び/または付加されたペプチドとして、配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列に対して50%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ、PDMS親和性を有するペプチドが例示される。また、該ぺプチドとして、好ましくは配列番号1~9のいずれかで表されるアミノ酸配列に対して50%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ、PDMS親和性を有するペプチドが例示される。これらにおいてより好ましくは、アミノ酸配列の同一性は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、更に特に好ましくは98%以上である。

【0015】
また、前記(1-1)または(1-2)のペプチドの断片も、前記(1-1)または(1-2)のペプチドの断片であって、該断片がPDMS親和性を有することを限度として特に制限されない。例えば、該断片として、アミノ酸残基数15~58、好ましくは15~45、より好ましくは15~30であり、且つ、PDMS親和性を有する断片が挙げられる。

【0016】
本発明を制限するものではないが、一例として、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの断片ともいえる。また、本発明を制限するものではないが、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、17個のアミノ酸残基中15個のアミノ酸残基が、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと共通する。

【0017】
なお、いうまでもないが本明細書において「配列番号2~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド」や「配列番号1~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリジメチルシロキサン親和性を有するペプチド」と記載されている場合も、これは実質的に前述と同様に説明され、また、後述の説明についても実質的に同様である。すなわち、例えば「配列番号2~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチド」は、配列番号2~9からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなる限り制限されず、例えば配列番号2~9のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドであってもよく、配列番号2~9のいずれかで表されるアミノ酸配列を2以上有しており、且つ、PDMS親和性を有するペプチドであってもよい。この他も同様に説明される。

【0018】
ここで、「PDMS親和性を有する」とは、前記ペプチドと表面が修飾されていないPDMS基材が直接結合できる限り制限されず、その結合条件は、使用するペプチドの種類に応じて、あるいは、PDMS基材に前記ペプチドを介して固定させたい目的タンパク質、または、該目的タンパク質と相互作用を有する所望の物質の特性に応じて、適宜決定すればよい。一例として、後述の実施例に示される結合(インキュベート)条件を採用してもよく、該実施例に示される条件を参考にして当業者が適宜決定すればよい。例えば、前記ペプチドを含有する緩衝液といった任意の溶液、例えばPBS溶液を、PDMS基材と一定時間接触させることによって、前記ペプチドとPDMS基材とを結合させることができる。なお、後述の実施例で使用したPBSは、10×PBS(NaCl 1.38M(80.8g)、KCl 27mM(2g)、NaHPO・12HO 80mM(29g)、KHPO 15mM(2g))をイオン交換水で1Lにメスアップしたもの(pH7.4)である。また、該PBSを適宜希釈したりpH等を変更した場合にも前記ペプチドとPDMS基材とを結合させることができる。

【0019】
また、「PDMS基材」とは、表面が修飾されていないPDMSを基材表面の一部及び/または全面に有し、且つ、前記PDMS親和性ペプチドがPDMS表面に結合できる限り制限されない。例えば、PDMS基材とは、PDMSからなる基材、他の成分で構成されたものの一部または全面にPDMSが積層及び/または被覆されてなる基材などが挙げられる。

【0020】
本発明のPDMS親和性ペプチドは、従来公知の遺伝子工学的手法や化学合成法などによって作製できる。例えば、配列番号1~9のいずれかで表されるペプチドをコードするポリヌクレオチドをベクター等に挿入し、次いで、該ベクターが組み込まれた形質転換体を培養したのち、所望のペプチドを取得すればよい。また、本発明のPDMS親和性ペプチドは、該ペプチドの産生能を有する微生物から単離、精製することによって取得してもよい。また、本発明のPDMS親和性ペプチドは、配列番号1~9のいずれかで表されるアミノ酸配列またはこれをコードするヌクレオチド配列の情報に従って従来公知の化学合成法により合成して取得してもよい。なお、化学合成法には、液相法や固相法によるペプチド合成法が包含される。より詳細な一例として後述の実施例の手順が挙げられる。取得したペプチドがPDMSに親和性を有するかどうかは、前述と同様に、取得したペプチドと表面が修飾されていないPDMS基材が直接結合できるかどうかに基づき判断すればよく、直接結合すれば親和性を有するといえる。結合条件は前述と同様に適宜決定すればよい。

【0021】
本発明のPDMS親和性ペプチドはPDMSに親和性を有することから、該PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質をPDMS基材に容易に固定できる。このことから、本発明のPDMS親和性ペプチドは目的タンパク質のPDMS基材への固定化に非常に有用である。また、このような本発明によれば、PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質をPDMS基材に高密度に固定可能となる。また、本発明によれば、目的タンパク質をその活性が保持された状態でPDMS基材に固定可能となる。また、本発明によれば、その配向が均一になるよう制御して目的タンパク質をPDMS基材に固定可能となる。このように、本発明によれば、PDMS基材における目的タンパク質の高密度化、高活性化及び/または高配向制御が可能となる。このような本発明によれば、目的タンパク質を、PDMS親和性ペプチドを介してPDMS基材に高精度、高効率で固定することが可能となり、更に、該目的タンパク質と相互作用を有する所望の物質をも、前記PDMS親和性ペプチドを介してPDMS基材に高精度且つ高効率で結合させることが可能となる。このことから、本発明のPDMS親和性ペプチドは、PDMS基材への目的タンパク質の固定化用リンカーに有用である。

【0022】
このことから、本発明は、前記PDMS親和性ペプチドからなる、PDMS基材への目的タンパク質の固定化用リンカー、前記PDMS親和性ペプチドを含有するPDMS基材への目的タンパク質固定化用組成物、また、目的タンパク質をPDMS基材へ固定させるための、PDMS親和性ペプチドの使用、更に、該固定化用組成物とPDMS基材を含むキットを提供しているといえる。該固定化用リンカー、固定化用組成物、使用及びキットにおいて、PDMS親和性ペプチド、PDMS基材、目的タンパク質、固定化(結合)条件等、また、これらによって得られる効果は前述と同様に説明される。

【0023】
更に該固定化用リンカー、該固定化用組成物及び該キットにおいて、前記目的タンパク質は1種でもよいし、2種以上含んでいてもよい。

【0024】
また、該使用において、前記目的タンパク質は1種でもよいし、2種以上含んでいてもよい。

【0025】
該固定化用リンカーは、前述するようにPDMS親和性ペプチドを介してPDMS基材に目的タンパク質を固定できるものである。

【0026】
該固定化用組成物は、少なくとも前記PDMS親和性ペプチドを含有していればよく、また、本発明を制限するものではないが、前記PDMS親和性ペプチドをPDMS基材に簡易な操作で結合させるために、イオン交換水、蒸留水、超純水、RO水といった純水やPBSといった緩衝液などの任意の溶媒、目的タンパク質、更にはPDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質がPDMS基材へ固定されるために必要なものを含んでいてもよい。前記溶媒として好ましくは緩衝液が例示され、より好ましくはPBSが例示される。また、該固定化用組成物に含有されるPDMS親和性ペプチドは前述の通りであり、本発明を制限するものではないが、例えば該ペプチドが所望の発現ベクターを備える形質転換体(例えば大腸菌)を培養して製造される場合、該ペプチドとして、培養後に得られたペプチドをそのまま用いてもよく、好ましくは更に透析法等の従来公知の精製処理を経て得たペプチドを用いることが例示される。このような組成物を用いれば前記PDMS親和性ペプチドをPDMS基材により簡便に結合させることができ、従って、PDMS親和性ペプチドを介して、目的タンパク質をPDMS基材により簡便に固定できる。

【0027】
これらは、プロテインチップをはじめとするバイオチップ、カラムの充填剤、ELISA法におけるマイクロプレート、固定化酵素等の作製において好適に使用され得る。

【0028】
なお、本発明において「含む」は、「実質的にからなる」、「からなる」という意味をも更に包含する。
2.ポリヌクレオチド
本発明は、前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明においてポリヌクレオチドは、前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り制限されず、以下のポリヌクレオチドが例示される;
(2-1)前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(2-2)配列番号10~18のいずれかで表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(2-3)前記(2-1)及び(2-2)のいずれかのポリヌクレオチドの相補鎖に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチド。

【0029】
ここで、前記(2-1)のポリヌクレオチドは、当業者であれば前記PDMS親和性ペプチドのアミノ酸配列に基づいて、従来公知の手法に基づき容易に解析、入手することができる。

【0030】
前記(2-2)のポリヌクレオチドがコードするアミノ酸配列は、それぞれ前記配列番号1~9で表されるアミノ酸配列に相当する。

【0031】
前記(2-3)において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ」するとは、標準的なハイブリダイゼーション条件下に、2つのポリヌクレオチド断片が互いにハイブリダイズできることを意味し、本条件は、Sambrook et al., Molecular Cloning : A laboratory manual (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USAに記載されている。より具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、6.0xSSC中、約45℃にてハイブリダイゼーションを行い、そして2.0xSSCによって50℃にて洗浄することを意味する。

【0032】
前記相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、通常、前記(2-1)及び(2-2)のいずれかのヌクレオチド配列と一定以上の同一性を有し、その同一性は70%以上が例示され、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、更に特に好ましくは99%以上である。ヌクレオチド配列の同一性は、市販またはインターネット等の電気通信回線を通じて利用可能な解析ツールを用いて知ることができ、例えば、FASTA、BLAST、PSI-BLAST、SSEARCH等のソフトウェアを用いて計算できる。

【0033】
「PDMS親和性を有する」とは前述と同様であり、前記ポリヌクレオチドを用いて作製されるペプチドと表面が修飾されていないPDMS基材とが直接結合できる限り制限されず、その結合条件も前述のように適宜決定すればよい。前記ポリヌクレオチドからのペプチドの作製は、該分野において従来公知の遺伝子工学的手法や化学合成法などを用いて行えばよく、これは当業者にとって容易である。例えば、後述する発現ベクターを用いてペプチドを作製することができる。

【0034】
また、本発明のポリヌクレオチドも、従来公知の遺伝子工学的手法や化学合成法などを用いて作製できる(Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 78, 6613 (1981);Science, 222, 778 (1983);Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring Harbor Lab. Press(1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)等参照)。例えば、所望のポリヌクレオチドを有する微生物をはじめ適当な起源から定法に従ってcDNAライブラリーを作製し、該ライブラリーから、適切なプローブ等を用いて、所望のポリヌクレオチドを取得すればよい。また、例えば、配列番号1~9のいずれかで表されるアミノ酸の配列情報や、配列番号10~18のいずれかで表されるヌクレオチドの配列情報に基づいて、従来公知の化学的DNA合成法により所望のポリヌクレオチドを作製、取得すればよい。

【0035】
3.発現ベクター
本発明は、前記ポリヌクレオチドを含有するPDMS親和性ペプチド発現ベクターを提供する。本発明のPDMS親和性ペプチド発現ベクターは、前記ポリヌクレオチドを含んでおり、且つ、その宿主細胞において該ポリヌクレオチドの塩基配列に基づき前記PDMS親和性ペプチド、あるいは、前記固定化用リンカーを発現できるものであれば特に制限されない。ベクターは、従来公知のように一般に宿主細胞との関係から適宜選択される。

【0036】
より具体的には、本発明において使用されるベクターは、遺伝子工学分野において一般的に使用されている発現ベクターであれば制限されず、pBR、pUC、pCD、pET、pGEX、pCMV、pMSG、pSVLをはじめとする、大腸菌等の細菌や酵母由来のプラスミドベクターや、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクチニアウイルス、バキュロウイルス、更にファージ等由来のウイルスベクターが例示される。

【0037】
これらのベクターには、必要に応じてプロモーターが接続され、プロモーターは宿主細胞に適したプロモーターであれば制限されず、従来公知のプロモーターを使用できる。例えばプロモーターとしてlacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、racAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーター等が挙げられ、これらは例えば宿主細胞として大腸菌を用いる場合に使用される。また、例えばプロモーターとしてSV40プロモーター、CMVプロモーター、RSVプロモーター、HSV-TKプロモーター、LTRプロモーター、SRαプロモーター、EF-1αプロモーター等が挙げられ、これらは例えば宿主細胞として動物細胞を用いる場合に使用される。プロモーターとして、宿主細胞との関係等を考慮して、酵母細胞用プロモーター、昆虫細胞用プロモーター、ウイルスプロモーター等も使用することができる。プロモーターが内在しているベクターにおいては、内在のプロモーターを使用してもよい。

【0038】
本発明のPDMS親和性ペプチド発現ベクターにおけるプロモーターの接続位置は、その宿主細胞において前記PDMS親和性ペプチドが発現される限り制限されない。一般に、プロモーターは、前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドの上流に接続される。すなわち、本発明のPDMS親和性ペプチド発現ベクターにおいて、前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドは該プロモーターの制御下にある。

【0039】
宿主細胞としては、従来公知の原核細胞や真核細胞の各種細胞が使用でき、大腸菌、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、放線菌、糸状菌等の細菌、酵母、アスペルギルス、ドロソフィラS2、スポドプテラSf9等の昆虫などの細胞、また、L細胞、CHO細胞、COS細胞、Art-20細胞、HeLa細胞、C127細胞、ミエローマ細胞、GH3細胞、FL細胞、VERO細胞、CV-1細胞、Bowesメラノーマ細胞、アフリカツメガエルなどの卵母細胞等の動植物などの細胞が例示される。

【0040】
これらのベクター、プロモーター及び宿主細胞は、本分野の技術常識に基づき適宜組み合わせて使用すればよい。組み合わせとしてpET(T7プロモーター)/大腸菌BL21(DE3)、pGEX(Tacプロモーター)/大腸菌BL21が例示される。

【0041】
このほか、本発明のPDMS親和性ペプチド発現ベクターには、更にエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、薬剤耐性遺伝子、Green Fluorescent Protein(GFP)等のマーカー遺伝等の塩基配列が接続されていてもよい。これらの塩基配列は、目的に応じて前記発現ベクターの任意の位置に接続される。

【0042】
また、本発明のPDMS親和性ペプチド発現ベクターには、後述する目的タンパク質にPDMS親和性ペプチド導入するためのリンカーを構成する塩基配列が更に接続されていてもよい。例えば、該リンカーを構成する塩基配列は、PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’末端部及び/または3’末端部に接続させることができる。該リンカーを構成する塩基配列は、本発明の効果が得られる限り制限されず、従来公知の技術を用いて当業者が通常の検討範囲内で適宜決定すればよい。このようなリンカーとして、一般にフレキシブルリンカーと称されるリンカーが例示され、フレキシブルリンカーのアミノ酸配列としては(GS)n(例えばn=1~4)が例示される。該リンカーを使用する場合には、該リンカーを発現可能なヌクレオチド配列を、該リンカーに適宜接続すればよい。

【0043】
更に、本発明のPDMS親和性ペプチド発現ベクターには、前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドに、目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが連結されていてもよい。これによって、PDMS親和性ペプチドが導入された目的タンパク質を発現させることが可能となり、また、前記固定化用リンカーが導入された目的タンパク質を発現させることが可能となる。このように、前記発現ベクターに、目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが更に連結された発現ベクターは、PDMS親和性ペプチドと目的タンパク質とのペプチド融合タンパク質発現ベクターと称することができる。

【0044】
ここで、目的タンパク質とは任意のタンパク質をいい、本発明を制限するものではないが、抗原、抗体、酵素、基質、受容体タンパク質、レクチン等のタンパク質が例示される。より具体的には、これらに制限されないが、グルタチオン転移酵素(GST:Glutathione S-Transferase)、GFP(green fluorescent protein)、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、トリプシン、キモトリプシン、トロンビン、Factor Xa、アンジオテンシン変換酵素、チロシンキナーゼ、インスリンレセプター、EGFレセプター、マルトース結合タンパク質、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、1本鎖抗体、多価性1本鎖抗体(例えば2価性1本鎖抗体)、定常部融合1本鎖抗体、Fab断片及びF(ab’)2断片(抗原結合部位を含む抗体の断片)、補体系タンパク質C1q、コンカナバリンA、レンチルレクチン、抗体結合タンパク質(Protein A、ZZ、Protein G、Protein L等)、ビオチン、ストレプトアビジン(アビジン)等が例示される。

【0045】
これらの目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が公知である場合には、公知の配列情報に基づいて、従来公知の方法に従って、前記発現ベクターに所望のヌクレオチド配列を配置すればよい。また、目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が知られていない場合には、該目的タンパク質のアミノ酸配列に基づき、従来公知の遺伝子工学的手法や化学合成法などを用いて、目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを解析、作製して前記発現ベクターに配置すればよい。

【0046】
前記ペプチド融合タンパク質を発現させる観点から、目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドも、前記プロモーターの制御下に配置される。この限りにおいて、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドの上流に連結されるか下流に連結されるか、また、目的タンパク質の分子内部にPDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドが連結されるかについては、当業者が適宜決定すればよい。いずれにおいても、目的タンパク質の生理活性や立体構造を損なわない位置に連結することが好ましい。例えば、目的タンパク質が抗原である場合には抗原決定を阻害しない部位、抗体である場合には抗原結合を阻害しない部位、酵素である場合には酵素活性を阻害しない部位など、抗原、抗体、酵素、基質、受容体タンパク質、レクチン等の目的タンパク質の特性や構造に応じて当業者が適宜決定すればよい。また、PDMS親和性ペプチドまたは前記固定化用リンカーをコードするポリヌクレオチドは、PDMS親和性ペプチドの基材に対する親和性などの特性に影響を与えず、発明の効果を妨げない部位に連結される。

【0047】
また、本発明のペプチド融合タンパク質発現ベクターでは前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと前記目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとが連結されてなり、宿主細胞において所望のペプチド融合タンパク質が発現される限り、その連結態様も制限されない。例えば、本発明のペプチド融合タンパク質発現ベクターにおいて、前記PDMS親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと前記目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとが連続した塩基配列で存在していてもよく、すなわち、これらのポリヌクレオチドがリンカーを介することなく直接連結されていてもよく、あるいは、これらのポリヌクレオチドが何らかの配列、例えば前述のフレキシブルリンカー等のリンカーを構成する塩基配列を介して連結されていてもよく、本発明の効果が得られる限り制限されない。本発明において目的タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、本発明の効果を妨げない限り、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0048】
本発明の発現ベクターは、該分野で従来公知の方法を用いて作製すればよく、制限酵素等を用いてポリヌクレオチドをはじめとする必要な塩基配列を、前記ベクター上の適切な位置に配置して作製すればよい。

【0049】
4.形質転換体
本発明は、前記ペプチド融合タンパク質発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換させることにより得られる形質転換体を提供する。

【0050】
本発明において宿主細胞は、前述の宿主細胞が例示される。

【0051】
ペプチド融合タンパク質発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を得る方法は特に制限されず、従来公知の一般的な方法に従い行えばよい。例えば、多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法に従って行うことができ、その具体的手法としては塩化カルシウム法、塩化ルビジウム法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、リポソーム等のカチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、ファージ等による感染等が例示される。

【0052】
5.ペプチド融合タンパク質
本発明は、前記PDMS素親和性ペプチドと前記目的タンパク質とのペプチド融合タンパク質を提供する。ここで、PDMS親和性ペプチド及び目的タンパク質は前述の通りであり、ペプチド融合タンパク質は、前記PDMS親和性ペプチドと前記目的タンパク質とを連結することによって一体化させた融合タンパク質である。

【0053】
本発明を制限するものではないが、一例として該ペプチド融合タンパク質は前記形質転換体を適切な培地で培養し、該形質転換体及び/又は培養物から所望のペプチド融合タンパク質を回収することにより製造することができる。培養、回収の方法は特に制限されず、従来公知の一般的な方法に従い行えばよい。例えば、培養は、宿主細胞を慣用される任意の培地を用いて継代培養またはバッチ培養を行えばよく、また、形質転換体の内外に産生されたタンパク質量を指標にして、ペプチド融合タンパク質が適当量得られるまで行いえばよく、温度、時間等の培養条件も宿主細胞に適した従来公知の条件で実施すればよい。

【0054】
このようにして得られるペプチド融合タンパク質は、更に必要に応じて、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種の分離操作、例えば溶媒抽出、蒸留、各種クロマトグラフィー等の操作によって分離、精製してもよい(「生化学データーブックII」、1175-1259 頁、第1版第1刷、1980年、株式会社東京化学同人発行;Biochemistry, 25(25), 8274 (1986); Eur. J. Biochem., 163, 313 (1987)等参照)。また、本発明のペプチド融合タンパク質はPDMSに対して親和性を備えていることから、得られた培養液や形質転換体からの産物等をPDMS基材と接触させることによりPDMS親和性ペプチドをPDMS基材と結合させて分離、精製してもよい。また、形質転換体を用いて発現させる場合には、ペプチド融合タンパク質が封入体として存在していることがあるが、この場合には、封入体を適宜可溶化し、これをPDMS基材と接触させることによりPDMS親和性ペプチドをPDMS基材と結合させて、ペプチド融合タンパク質を分離、精製してもよい。また、本発明のペプチド融合タンパク質の立体構造が変化している場合、立体構造が変化した状態でPDMS基材と結合させることも可能であり、必要に応じて結合させた状態で立体構造のリフォールディグを行って、ペプチド融合タンパク質を分離、精製してもよい。

【0055】
6.PDMS親和性ペプチドが結合されてなるPDMS基材
本発明は、前記PDMS親和性ペプチドが結合されてなるPDMS基材を提供する。これは、前記PDMS親和性ペプチドがPDMS基材に結合されてなるものである。PDMS親和性ペプチド、PDMS基材は前述の通りである。

【0056】
PDMS基材の形状も、PDMS親和性ペプチドを結合できる限り制限されず、例えば板状、フィルム状(シート状)、球状、粒状(ビーズ状)、繊維状、マイクロプレート状、筒状など任意の形状が挙げられる。本発明のPDMS基材をプロテインチップなどのバイオチップとして使用する場合には、その形状は板状、フィルム状(シート状)等が好ましく例示される。

【0057】
前記PDMS親和性ペプチドが結合されてなるPDMS基材は、前記PDMS親和性ペプチド、あるいは、前記固定化用リンカーをPDMS基材と接触させて、PDMS親和性ペプチドをPDMS基材に結合させることによって製造できる。その接触条件は、前述と同様に使用するPDMS親和性ペプチドの種類に応じて、また、PDMS基材に前記PDMS親和性ペプチドを介して固定化させたい目的タンパク質や該目的タンパク質と相互作用を有する所望の物質の特性に応じて適宜決定すればよい。例えば、PDMS親和性ペプチドを任意の溶媒と混合して得た溶液を、あるいは、前述のPDMS親和性ペプチドを含有するPDMS基材への目的タンパク質固定化用組成物をPDMS基材に滴下等して、あるいは、該溶液等にPDMS基材を浸漬等して、一定時間放置すればよい。PDMS基材に結合されていない不要な成分の除去は、例えば緩衝液や水などの任意の溶媒を用いてPDMS基材上の不要な成分を洗い流すなどすればよい。一例として後述の実施例に示される結合条件を採用してもよく、実施例に示される結合条件を参考にして当業者が適宜決定すればよい。

【0058】
前記PDMS親和性ペプチドはPDMSに親和性を有していることから、本発明においてPDMS親和性ペプチドはPDMS基材に直接結合できる。

【0059】
また、本発明のPDMS親和性ペプチドが結合されてなるPDMS基材には、更に、該PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質が固定されていてもよい。目的タンパク質は前述の通りである。また、該目的タンパク質は1種でもよいし、2種以上であってもよい。

【0060】
該固定は、PDMS親和性ペプチドを介して、PDMS基材に目的タンパク質が固定されている限り制限されない。目的タンパク質にPDMS親和性ペプチを導入した後に、これをPDMS基材と接触させることによって、目的タンパク質を固定させてもよく、PDMS基材に結合したPDMS親和性ペプチを目的タンパク質に導入することによって、目的タンパク質を固定させてもよい。これによって、PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質が固定されたPDMS基材を製造できる。なお、PDMS基材との接触条件は前述と同様である。

【0061】
目的タンパク質へのPDMS親和性ペプチドの導入は、本発明の効果を妨げない限り、また、PDMS親和性ペプチドが導入される限り制限されないが、直接またはリンカーを介して導入されていればよい。該リンカーは、前述と同様に当業者が適宜決定すればよい。

【0062】
目的タンパク質へのPDMS親和性ペプチドの導入部位は、目的タンパク質の活性や配向、PDMS親和性ペプチドの基材に対する親和性等の特性に影響を与えず、発明の効果を妨げない限り、任意の部位に導入できる。例えば、目的タンパク質が抗原である場合には抗原決定を阻害しない部位、抗体である場合には抗原結合を阻害しない部位、酵素である場合には酵素活性を阻害しない部位など、抗原、抗体、酵素、基質、受容体タンパク質、レクチン等の目的タンパク質の特性や構造に応じて当業者が適宜決定すればよい。特に、本発明においてはこのようにPDMS親和性ペプチドの導入部位を適宜決定できることから、その活性が保持された状態で、また、その配向が均一になるよう制御して、目的タンパク質をPDMSに固定することが可能となる。

【0063】
また、目的タンパク質へのPDMS親和性ペプチドの導入方法も特に制限されず、従来公知の遺伝子工学的手法や化学合成法を用いて適宜導入させてもよく、例えば、前述のような発現ベクターを利用して導入すればよい。また、例えば、グルタルアルデヒドや、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミド/1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)をはじめとする架橋剤を使用してPDMS親和性ペプチドを目的タンパク質に導入してもよく、ビオチン化したPDMS親和性ペプチドとストレプトアビジン(アビジン)標識した目的タンパク質とのビオチン-ストレプトアビジン(アビジン)を介した特異的結合によってPDMS親和性ペプチドを目的タンパク質に導入してもよく、更に、ビオチン化したPDMS親和性ペプチドとビオチン化した目的タンパク質とのストレプトアビジン(アビジン)を介した特異的結合によってPDMS親和性ペプチドを目的タンパク質に導入してもよく、このように従来公知の手法を用いて導入すればよい。

【0064】
目的タンパク質にPDMS親和性ペプチドが導入される好適な例としては、前記ペプチド融合タンパク質が挙げられ、これを前述のようにPDMS基材と接触させることによって、PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質をPDMS基材に固定できる。また、前記架橋剤や特異的結合を利用して目的タンパク質にPDMS親和性ペプチドを導入し、これを前述のようにPDMS基材と接触させることによって、PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質をPDMS基材に固定できる。このことから、本発明は、更に、前記PDMS親和性ペプチドを目的タンパク質に導入させる工程を含有する、PDMS基材に結合する目的タンパク質の製造方法、また、前記PDMS親和性ペプチドが導入された目的タンパク質を提供するといえる。

【0065】
また、前記架橋剤や特異的結合等を同様に利用して、PDMS基材に結合しているPDMS親和性ペプチドを目的タンパク質に導入することによって、PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質をPDMS基材に固定できる。

【0066】
このようなPDMS親和性ペプチドが結合されてなるPDMS基材によれば、目的タンパク質を、高い密度で、その活性を十分に保持させたまま及び/またはその配向が均一になるよう制御して固定可能となる。このことから、本発明のPDMS親和性ペプチドが結合されてなるPDMS基材によれば、高精度且つ高効率に、目的タンパク質や、該目的タンパク質と相互作用を有する所望の物質を検出、測定、分析等することが可能になる。

【0067】
従って、本発明のPDMS親和性ペプチドが結合されてなるPDMS基材は、例えば前述するように板状、フィルム状(シート状)等の形状である場合にはバイオチップ、特にプロテインチップとして利用できる。また、該PDMS基材は、このほか、抗原抗体反応や酵素反応等を利用するカラムの充填剤、ELISA法などにおけるマイクロプレート、また、固定化酵素などとしても好適に使用され、臨床検査、創薬研究、環境モニタリング、生化学などのあらゆる分野において利用できる。

【0068】
7.目的タンパク質のPDMS基材への固定化方法
本発明は、目的タンパク質に導入された前記PDMS親和性ペプチドとPDMS基材とを接触させる工程を含有する、目的タンパク質のPDMS基材への固定化方法を提供する。

【0069】
ここで、目的タンパク質、PDMS親和性ペプチド、PDMS基材、また、目的タンパク質へのPDMS親和性ペプチドへの導入、目的タンパク質に導入されたPDMS親和性ペプチドとPDMS基材との接触については、前述の通りである。

【0070】
本発明の固定化方法によれば、前記PDMS親和性ペプチドがPDMS基材に対する親和性を備えていることから、目的タンパク質に導入されたPDMS親和性ペプチドをPDMS基材に接触させるだけで、PDMS親和性ペプチドをPDMS基材に結合させることができる。このため、本発明の固定化方法によれば、PDMS親和性ペプチドを介して前記目的タンパク質をPDMS基材に容易に固定することができる。

【0071】
本発明の固定化方法は、更に目的タンパク質に前記PDMS親和性ペプチドを導入する工程を組み合わせて実施してもよく、すなわち、目的タンパク質に前記PDMS親和性ペプチドを導入する工程を経た後に実施してもよい。該導入等も前述と同様に説明される。

【0072】
また、更に、本発明は、PDMS基材に結合したPDMS親和性ペプチドと目的タンパク質とを結合させる工程を含有する、目的タンパク質のPDMS基材への固定化方法を提供する。

【0073】
ここで、目的タンパク質、PDMS親和性ペプチド、PDMS基材、PDMS親和性ペプチドのPDMS基材への結合は前述の通りである。また、PDMS基材に結合しているPDMS親和性ペプチドと目的タンパク質との結合も、本発明の効果を妨げない限り制限されず、従来公知の技術常識に基づいて当業者が適宜実施すればよく、例えば前述の導入方法が挙げられる。

【0074】
また、本発明の固定化方法は、更に、前記PDMS親和性ペプチドをPDMS基材に接触させる工程と組み合わせて実施してもよく、すなわち、前記PDMS親和性ペプチドをPDMS基材に接触させて結合させる工程を経た後に実施してもよい。前記PDMS親和性ペプチドのPDMS基材への接触は、前述と同様に実施すればよい。

【0075】
これらの固定化方法によれば、目的タンパク質が固定化されたPDMS基材を簡便に製造することができる。また、これらの固定化方法によれば、PDMS親和性ペプチドを介して目的タンパク質がPDMS基材に固定されていることから、目的タンパク質を、高密度で、その活性を十分に維持させたまま及び/またはその配向が均一になるよう制御して、固定化することができる。従って、本発明によれれば、プロテインチップ等のバイオチップをはじめ、抗原抗体反応や酵素反応等を利用するカラムの充填剤、ELISA法などにおけるマイクロプレート、また、固定化酵素などの製造も容易にする。このことから、本発明の固定化方法は、臨床検査、創薬研究、環境モニタリング、生化学などのあらゆる分野において有用である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
以下の手順に従い、配列番号1で表されるペプチド(ELV1ペプチド)、配列番号2で表されるペプチド(TPV1ペプチド)、配列番号3で表されるペプチド(OCV1ペプチド)のポリジメチルシロキサン(PDMS)に対する親和性について検討した。
【実施例】
【0077】
1.手順
1-1.Elongation factor Tu(ELN)発現ベクター、Tryptophanase(TPA)発現ベクター、Outer membrane protein C(OMC)発現ベクターの構築
1)DNA Purification Kit (プロメガ社製)を用いて大腸菌BL21(DE3)(Novagen社製)の染色体DNAの抽出を行った。
2)染色体DNAを鋳型とし、KOD plus ver.2 PCR kit(東洋紡社製)を用いてPCRを行い、ELNの遺伝子を増幅した。
3)増幅したELNの遺伝子とpET-22ベクター(Novagen社製)のモル比が3:1になるように混合し、混合溶液と等量のLigation High(東洋紡社製)を加え、NdeIサイトとNotIサイトの間に増幅したELNの遺伝子を挿入し、クローニングした。
4)上記のベクターで大腸菌HST08 Premium(タカラバイオ社製)を形質転換し、LB-Amp寒天培地中で一晩静置培養をした。
5)Amp.含有LB培地(ナカライテスク社製)を15mlチューブに2mlとり、寒天プレートからシングルコロニーを植菌し、37℃、200rpmで一晩培養した。
6)培養後、アルカリSDS法によってベクターを回収・精製した。
7)アガロース電気泳動によって遺伝子の挿入を確認し、さらに、DNAシーケンス解析(greiner社)によって挿入されたELN遺伝子のヌクレオチド配列を確認した。
8)上記工程6)で得られたベクターで大腸菌Rosetta (DE3)を形質転換し、培養後、ELN発現大腸菌を調製した。
【実施例】
【0078】
OMC発現ベクターは、ELNの遺伝子に代えてOMCの遺伝子を用いた以外はELN発現ベクターと同様にして、作製した。TPA発現ベクターは、TPAの全遺伝子を委託合成(FASMAC社)し、KODplus ver.2 PCRkit(東洋紡社製)を用いてPCRを行い増幅した遺伝子を用いた以外は、ELN発現ベクターと同様にして作製した。
【実施例】
【0079】
1-2.GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)発現ベクターpGEX-3Xの構築
1)大腸菌HST08 Premium Competent cells(タカラバイオ社製)50μlに、GST発現ベクター(pGEX-3X)(GEヘルスケア社製)を1μl加え、氷上で10分間インキュベートした。
2)42℃で45秒間インキュベートし、再び氷上で冷却した。
3)形質転換した上記大腸菌を、Amp.含有LB寒天プレートに植菌し、37℃で一晩培養した。
4)Amp.含有LB培地を15mlチューブに2mlとり、寒天プレートからシングルコロニーを植菌し、37℃、200rpmで一晩培養した。
5)10,000gで10分間遠心分離し、上清を除去した。
6)アルカリSDS法によってpGEX-3Xを回収した。
7)回収したベクター溶液20μlに、Cut Smart Buffer(ナカライテスク社製)10μl、CIAP(Calf intestine Alkaline Phosphatase、東洋紡社製)2μl、Eco RI-HF(New England Biolabs社製)2μl、Bam HI-HF(New England Biolabs社製)2μlを加え、37℃で一晩インキュベートし、ベクターの切断・脱リン酸化処理を行った。pGEX-3Xの切断状況はアガロース電気泳動により確認した。
8)酵素処理を行ったベクターをillustraTMGFXTM PCR DNA and Gel Band Purification Kit (GE Healthcare社製)を用いて精製した。
【実施例】
【0080】
1-3.ELV1ペプチド、TPV1ペプチド、OCV1ペプチドとの融合GSTの作製
1)ELV1ペプチドのアミノ酸配列からこの遺伝子をコードするヌクレオチド配列を決定し、委託合成にてオリゴDNAを合成した。ELV1ペプチドをコードするヌクレオチド配列は配列番号10で表される。
2)前記1)で得られたヌクレオチド配列を、前述のように構築したGST発現ベクターpGEX-3XのBam HIサイトとEco RIサイトの間にクローニングし、DNAシーケンス解析によって、ベクター中に挿入されたELV1ペプチドをコードするヌクレオチド配列を確認した。
3)構築した発現ベクターで大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、アンピシリン(Amp.ナカライテスク社製)含有2×YT培地(Novagen社製)10ml中で一晩前培養した。
4)前記3)と同様の培地50mlに、前培養液をOD600=0.1になるように加え、37℃、200rpmでOD600=1.0になるまで(約1.5時間)培養した。
5)1M IPTG(Isopropyl-β-D(-)-thiogalactopyranoside、和光純薬社製)を5μl加え、30℃、200rpmでさらに7時間培養した。
6)培養後、4500rpmで20分間遠心分離し、上清を除去した。
7)菌体にBug buster(BugButer Protein Extraction Reagent、Novagen社製)3ml、Benzonase Nuclease(Novagen社製)1.5μl、Lysozyme(生化学工業社製)3mgを加えよく撹拌し、37℃で1時間インキュベートすることにより、菌体を溶菌した。
8)10000rpmで20分間遠心分離し、上清を可溶性画分として回収した。
9)可溶性画分をGSTrap HPカラム(GEヘルスケア社製)中にアプライし、1mM DTT(Dithiothreitol、ナカライテスク社製)を含むPBSでカラム内を洗浄した。
10)20mM 還元型グルタチオンを含む100mM Tris-HCl(pH 8.0)のグラジェント溶出によってELV1ペプチド融合GSTを回収した。
11)溶離液をPBSで一晩透析し、DC Protein Assay Kit(バイオラッドラボラトリーズ社製)によって濃度を定量した。
【実施例】
【0081】
なお、実施例1において使用したPBSは、あらかじめ作製した10×PBS(NaCl(80.8g) 1.38M、KCl(2g) 27mM、Na2HPO4・12H2O(29g) 80mM、KH2PO4(2g) 15mM)を、使用時にイオン交換水で1Lにメスアップしたものである。
【実施例】
【0082】
TPV1ペプチド、OCV1ペプチドについても同様にして、それぞれTPV1ペプチド融合GST、OCV1ペプチド融合GSTを作製した。TPV1ペプチドをコードするヌクレオチド配列は配列番号11で表され、OCV1ペプチドをコードするヌクレオチド配列は配列番号12で表される。
【実施例】
【0083】
また、前記3)以降の手順を、前記構築した発現ベクターに代えて、前記「1-2.」で構築したGST発現ベクターpGEX-3Xを用いて行う以外は同様にして、野生型GSTを作製した。
【実施例】
【0084】
1-4.野生型GST(wt-GST)、ELV1ペプチド融合GST、TPV1ペプチド融合GST、OCV1ペプチド融合GSTの、PDMS基材への吸着
1)PDMS(Sylgard(登録商標)184 Silicone Elastomer、DOW CORNING社製)をクロロホルムで溶解し、2.5w/v%のPDMS溶液を調製した。
2)QCM(水晶振動子マイクロバランス)センサーチップ(QCMST27C、イニシアム社製)上に1)のPDMS溶液を60μl添加し、スピンコーティング(6000rpm、1分間)によりPDMS薄膜を形成し、これをPDMS基材(概算表面積81cm2、面積/体積比27cm-1)とした。
3)得られたPDMS基材をQCM本体(AFFINIX QN、イニシアム社製)にセットし、PBS中でベースラインが安定するまでインキュベートした。
4)終濃度が0.1、0.4、1.3、3.4、9.7μg/mlとなるように逐次的に前述のwt-GST又は各ペプチド融合GST溶液(以下、GST溶液)を加え、それぞれ1時間ずつモニタリングした。GST溶液は、前述のwt-GST又は各ペプチド融合GSTをPBS中に添加することにより作製した。
5)測定データから吸着密度を算出した(-1Hz=0.62ng/cm2)。また、吸着密度とモル濃度から以下の式を用いて吸着密度(μg/cm2)を算出した。
【実施例】
【0085】
【数1】
JP2016129695A1_000002t.gif
【実施例】
【0086】
2.結果
結果を図1に示す。
【実施例】
【0087】
図1は、PDMS基材に対する吸着密度を示す。図1から明らかなように、wt-GSTに対して、ELV1ペプチド融合GST、TPV1ペプチド融合GST、OCV1ペプチド融合GSTにおいてPDMS基材に対する吸着密度の顕著な向上が認められた。これは、配列番号1~3で表されるペプチドを導入することによって、GSTをPDMS基材に容易且つ高密度に固定できたことを示す。また、ここには示さないが、ELV1ペプチド融合GSTに代えて、OAT1ペプチド融合GSTを用いた場合も、wt-GSTに対して、PDMS基材に対する吸着密度の顕著な向上が認められた。OAT1ペプチドは配列番号4で表されるペプチドであり、OAT1ペプチドをコードするヌクレオチド配列は配列番号13で表される。OAT1ペプチド融合GSTも前述と同様にして作製した。
【実施例】
【0088】
このことから、配列番号1~4で表されるペプチドはPDMS基材に対して良好な親和性を有し、目的タンパク質のPDMS基材への固定化に有用であることが分かった。また、このように該ペプチドはGSTの所望の位置に導入することができ、これにより得られたペプチド融合GSTにおいて吸着密度の向上が認められたことから、該ペプチドによれば目的タンパク質の活性の維持や配向制御も可能であることが分かった。
【実施例】
【0089】
また、解離定数Kd(nM)について検討したところ、ELV1ペプチド融合GSTのPDMS基材への解離定数は5.7nMであった。また、ELV1ペプチド融合GSTのPDMS以外の基材(例えば窒化ケイ素基材)への解離定数についても確認したところ、この場合には82nMであった。解離定数が小さいほど、ペプチドが基材から解離しにくいことを示しており、このことから、ELV1ペプチドのPDMS基材への親和力は、窒化ケイ素基材への親和力の約14倍であり、ELV1ペプチドは、窒化ケイ素基材と比較してPDMS基材に対してより高い親和性を備えていることが分かった。
【実施例】
【0090】
実施例2
以下の手順に従い、PDMS基材に固定させたペプチド融合GSTが、GST本来の活性を維持しているかどうかについて検討した。
1.手順
1-1.ペプチド融合GSTの構築
本実施例では、前記実施例1で作製したELV1ペプチド融合GST、TPV1ペプチド融合GST、OCV1ペプチド融合GST、OAT1ペプチド融合GST、wt-GSTを用いた。
【実施例】
【0091】
1-2.GST残存活性の測定
1.手順
1)前述のwt-GST、ELV1ペプチド融合GST、TPV1ペプチド融合GST、OCV1ペプチド融合GST、OAT1ペプチド融合GSTの各GST溶液をPPBで希釈し、100mM CDNB、100mM GSHを30μlずつ添加した際、GST濃度が0.5μg/mlになるように各GST溶液を2940μl調製した。
2)100mM CDNB、100mM GSHを30μlずつ添加し、25℃において分光光度計(V-630BIO、日本分光社製)によって340nmの吸光度を3分間測定し、吸光度の変化率(min-1・cm-1)を算出した。
3)以下の式より吸着前の各GSTの比活性の値を算出した。生成物CDNB-GSHのモル吸光係数ε=9.6 mM-1・cm-1を基に1分間に生じた生成物量を算出し、酵素活性とした。
【実施例】
【0092】
【数2】
JP2016129695A1_000003t.gif
【実施例】
【0093】
4)一方、wt-GST、ELV1ペプチド融合GST、TPV1ペプチド融合GST、OCV1ペプチド融合GST、OAT1ペプチド融合GSTの各GST溶液をPBSで希釈し、100μg/mlとなるように2ml調製した。PDMS基材(概算表面積54cm2、面積/体積比27cm-1)と混合し、25℃で2時間吸着させた。
5)上清を除去し、PDMS基材をPBSで3回、PPBで1回洗浄した。
6)洗浄したPDMS基材にPPB 2940μl、100mM CDNB、100mM GSHを30μlずつ添加した。37℃、300rpmで攪拌しながら30分間ごとに340nmの吸光度の変化をnano drop(Thermo社製)で測定し、吸光度の変化率(min-1・cm-1)を算出した。
7)前記の式より吸着後の各GSTの比活性の値を算出し、吸着前後の比活性の値から残存活性を算出した。
【実施例】
【0094】
【数3】
JP2016129695A1_000004t.gif
【実施例】
【0095】
PPBは0.1M KH2PO4をイオン交換水で1Lにメスアップし、KOHでpH 6.5に調整したものを用いた。
2.結果
結果を図2に示す。図2から明らかなようにペプチド融合GSTを構成するGSTは、PDMS基材に固定させた後であってもGST本来の活性を維持していた。このことから、PDMS親和性ペプチドが連結した目的タンパク質は、PDMS基材に固定された状態であっても、目的タンパク質の高い活性を発揮できることが確認できた。
【実施例】
【0096】
実施例3
以下の手順に従い、配列番号1~9で表されるペプチドのPDMS基材に対する親和性について検討した。
1.手順
1)配列番号1~9で表されるペプチド含むPBS溶液に、実施例1と同じPDMS基材(概算表面積 81cm2面積/体積比 27cm-1)を混合し、25℃、200rpmで2時間振盪した。ここで、なお、配列番号1~4で表されるペプチドは前述と同様であり、配列番号5で表されるペプチドをTPV2ペプチド、配列番号6で表されるペプチドをTPT1ペプチド、配列番号7で表されるペプチドをOCT2ペプチド、配列番号8で表されるペプチドをOCV2ペプチド、配列番号9で表されるペプチドをOCT3ペプチドとした。
2)当該溶液の上清の一部をHPLCで分析し、残りの溶液を更にPDMS基材と混合した。その際、1ml当たりの基材面積/体積比が27cm-1となるように設定した。
3)2)を合計3回繰り返した。
4)吸着後のピーク面積の減少が著しいペプチドがPDMS基材に対して親和性を有すると判断できることから、吸着前後のクロマトグラムを比較した。
【実施例】
【0097】
なお、前記工程2)においてHPLCでの分析は次のように行った。まず、HPLCシステムを起動後、Line A、BをHPLC用A液、B液で置換した。その後、当該A液を流速1ml/minでカラムに供給し、カラム内を平衡化した。次いで、実験に供する前の前記PBS溶液と、前記工程2)で回収した上清の一部をそれぞれ前処理フィルターでろ過し、500μlをカラムに供給した。以下の図3に示すプログラムでB液の濃度を直線的に増加させ、カラムからペプチドを溶出した。その後、吸着前後のクロマトグラムを比較した。
【実施例】
【0098】
前記HPLCシステム、A液、B液、前処理フィルター、プログラムは以下の通りである。
HPLCシステム
PU-2089 Quaternary Gradient Pump(ジャスコインターナショナル社製)
LC-NetII/ADC(ジャスコインターナショナル社製)
MD-2018Plus Photodiode Array Detector(ジャスコインターナショナル社製)
UV-1575 Intelligent UV/VIS Detector(ジャスコインターナショナル社製)
TSKgel ODS-100Z 3μm (カラムサイズ4.6mmI.D.x15cm)(東ソー社製)
A液
超純水(1L)
TFA(Trifluoroacetic acid、高速液体グラフ用、和光純薬社製)(1ml) 0.1v/v%
B液
Acetonitrile [Chromasolv, for HPLC, gradient grade, ≧99.9%](シグマアルドリッチ ジャパン社製)(1L)
TFA(高速液体グラフ用)(1ml) 0.1v/v%
前処理フィルター
Non-Sterile 4mm Millex(登録商標)HV syringe Driven Filter Unit (450nm)(ミリポア社製)
プログラム
プログラムは図3に示す。
【実施例】
【0099】
2.結果
結果を表1に示す。
【実施例】
【0100】
【表1】
JP2016129695A1_000005t.gif
【実施例】
【0101】
表1から分かるように、いずれの溶液を用いた場合であっても、吸着後のピーク面積が減少しており、このことから、配列番号1~9で表されるペプチドはいずれもPDMS基材に対する親和性を有することが確認された。従って、これらのアミノ酸配列を有するペプチドによれば、これらのペプチドを介した、PDMS基材における目的タンパク質の高密度化、高活性化、高配向制御が可能であることが分かった。
【実施例】
【0102】
実施例4
以下の手順に従い、配列番号1で表されるペプチド(ELV1ペプチド)、配列番号2で表されるペプチド(TPV1ペプチド)または配列番号3で表されるペプチド(OCV1ペプチド)と、C反応性蛋白(CRP、C-reactive protein)に対する一本鎖抗体とを連結し、得られたペプチド融合タンパク質のPDMS基材への親和性及び活性について評価した。
【実施例】
【0103】
1.手順
1-1.ペプチド融合scFvの作製
1-1-1.ELV1ペプチド、TPV1ペプチド、OCV1ペプチドを有するベクターの構築
1)配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(配列番号10)を有するセンス鎖と、該配列に対して相補的な配列を有するアンチセンス鎖を委託合成した。
2)該センス鎖と該アンチセンス鎖それぞれを10pmol/μlとなるように滅菌水で希釈し、各1μlに10×High buffer(東洋紡社製)を2μl、滅菌水を16μl混合した。混合液を90℃で5分間インキュベートした後、インキュベータの電源を切り室温まで冷まし、ELV1ペプチド用の2本鎖DNAとした。
2)pET-22ベクター保有大腸菌(pET-22-XL1 Blue、Novagen社製)をAmp.含有LB培地10mlに植菌し、37℃、回転数200rpmで一晩培養し、ミニプレップによりプラスミドを回収し、NotIとXhoIの制限酵素で消化した。
3)前記1)で調製した2本鎖DNA(インサート)とpET-22ベクター(制限酵素処理済)を、インサート:ベクター=3:1のモル比となるように混合し、50℃で10分間インキュベートした後、温度を16℃に下げて混合液と同量のLigation high ver.2(東洋紡社製)を添加し、3時間インキュベートした。
4)大腸菌HST08 Premium Competent cellsに対してライゲーション後のサンプルを加え、42℃で45秒間インキュベートして、大腸菌を形質転換した。
5)形質転換した大腸菌をAmp.含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一晩インキュベートした。Amp.含有LB培地2mlに、該寒天培地上で発現したコロニーを6つピックアップして植菌し、37℃、回転数200rpmで一晩培養した。
6)得られた培養液2mlをエッペンドルフチューブに移し、遠心分離(4℃、10000rpm、15分間)し、上清を除去した。さらにアルカリSDS法によりプラスミドDNAを回収した。回収したプラスミドDNAの一部に制限酵素XhoIを加え、切断されるかどうかをアガロースゲル電気泳動により確認した。切断されなかったサンプルをDNA受託解析に出し配列を確認した。
【実施例】
【0104】
1-1-2.ペプチド融合scFvベクターの構築
1)CRPに対する1本鎖抗体をモデルscFvとしてPCRを行い、scFv遺伝子の増幅を行った。
2)前記1-1-1で得た、ELV1ペプチドをコードするDNAを有するpET-22ベクターと、PCRで増幅させたscFvとを、NdeIとNotIの制限酵素で消化した。
3)次いで、前記1-1-1の3)~6)と同様に、ライゲーション、形質転換、培養を行い、ミニプレップによりプラスミドを回収し、アガロースゲル電気泳動によるバンドの確認後、DNA受託解析に出し配列を確認した。
【実施例】
【0105】
1-1-3.ペプチド融合scFvの生産、精製及び発現確認
1)前記1-1-2で得たペプチド融合scFvベクターを大腸菌Rosetta(DE3)に加えて形質転換し、Amp.含有2×YT培地10mlに植菌し、37℃、200rpmで一晩前培養した。
2)Amp.及びクロラムフェニコール(Cm.)含有Overnight Express TB medium (OE培地、ナカライテスク社製)50mlの入ったバッフル付き500ml三角フラスコに、前記1)の培養液をOD600=0.1になるように加えて37℃、200rpmで一晩培養した後、50ml遠沈管に培養液を移して10000rpmで20分間遠心分離し、上清を取り除いた。
3)ペレット状の菌体に1×PBSを10ml、Triton X-100を100μl、Protease inhibitor Cocktail(ナカライテスク社製)を100μl添加し、ボルテックスで懸濁し、超音波ホモジナイザーのチップを溶液に浸し、4分間×3回超音波破砕を行った(output 50W、DUTY 30%)。
3)次いで、遠心分離(4℃、10000rpm、15分間)し、上清を除去した後、イオン交換水を5 ml添加後、ボルテックスで撹拌して再度遠心分離(4℃、10000rpm、15分間)した。この操作を2回繰り返し、上清を除去後、イオン交換水を3ml添加し、ボルテックスで懸濁した後、-80℃で凍結し、さらに一晩凍結乾燥させた。
4)次いで、6M 塩酸グアニジンを含む可溶化バッファー(6Mグアニジン塩酸、2xPBS、pH7.5)を5 mlを凍結乾燥物に加え、封入体を可溶化し、遠心分離(4℃、10000rpm、15分間)を行い、上清を回収した。
5)次の条件下での金属キレートアフィニティクロマトグラフィにより、ELV1ペプチド融合scFvを精製した。
カラム:His-Trap HP
Binding buffer(1リットルあたり):尿素8 M(480g)、イミダゾール20mM (1.36g)、10×PBS 200ml(HClでpH7.5に調整後、脱イオン水で1リットルにメスアップした。)
Elution buffer(1リットルあたり):尿素8M(480g)、イミダゾール400 mM(27.2g)、10×PBS 200ml(HClでpH7.5に調整後、脱イオン水で1リットルにメスアップした。)
TPV1ペプチド、OCV1ペプチドについても同様にして、TPV1ペプチド融合scFv、OCV1ペプチド融合scFvを作製した。また、コントロールとして、ELV1ペプチドに代えてD10ペプチド(アスパラギン酸残基が10個連続するペプチド)を用いた以外は同様にして、D10ペプチド融合scFvを作製した。なお、各ペプチド融合scFvは、その3’末端にヒスチジン残基が6個連続するペプチド配列を有する。
【実施例】
【0106】
1-2.ペプチド融合scFvのリフォールディング及び回収
1)精製後のscFvの終濃度が1mg/ml、DTTが100mM、総体積が2mlとなるように、8M尿素-PBSで希釈し、4℃で2時間インキュベートした。
2)前記1)の溶液を透析膜内に入れて、8 M尿素、50mM Tris-HCl(pH8.5)1lを外液として、4℃で65時間透析を行い、DTT除去と空気酸化を行った(外液を途中で交換した)。
3)外液を50mM Tris-HCl(pH8.5)1lに交換して透析を行い、残存する尿素を除去した(外液を途中で交換した)。
4)透析後の内液を4℃、20000rpm、5分で遠心分離して上清を回収し、DC Protein Assay Kitにより回収したペプチド融合scFvの濃度を算出した。
5)また、回収率は、回収したペプチド融合scFvの濃度を透析前のペプチド融合scFv濃度で除し、これに100を乗じることにより算出した。
【実施例】
【0107】
1-3.ペプチド融合scFvのPDMS基材への吸着
1)前記実施例1の1-4と同様に、PDMSをクロロホルムで溶解し、2.5w/v%のPDMS溶液を調製し、スピンコーティング(6000rpm、1min)によりQCMセンサーチップ上にPDMS薄膜を形成した。これをPDMS基材とした。
2)得られたQCM基材をQCM本体にセットし、PBS中でベースラインが安定化するまでインキュベートした後、各ペプチド融合scFv溶液を終濃度0.5、1.8、4.9、12.7、32.3μg/mlとなるように加えて、25℃、回転数1000rpmにおける吸着挙動を各濃度で1時間モニタリングした。溶液は、ペプチド融合scFvをPBSに添加することにより作製した。
3)前記2)で得た測定データ(ΔF:-1Hz=0.62ng/cm2)に基づいて吸着密度を算出した。
【実施例】
【0108】
1-4.ペプチド融合scFvの抗原結合活性
1)CRP(抗原)1μg/ml(1×PBSで希釈)をMaxisorpマイクロプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に固定化した (4℃、overnight) 。
2)プレートを0.1% PBST(PBS-0.1%Tween20)で洗浄後、2%BSA-PBSTを加えて25℃で1時間ブロッキングした。
3)プレートを0.1%PBSTで洗浄後、0.2%BSA-PBSTで0~100μg/mlに4倍段階希釈したペプチド融合scFvを添加し、25℃で1時間インキュベートした。
4)プレートを0.1%PBSTで洗浄後、0.2%BSA-PBSTで5000倍希釈したHRP(horseradish peroxidase)標識Anti 6×His抗体を添加し25℃で1時間インキュベートした。
5)プレートを0.1%PBSTで洗浄後、TMB基質溶液を加えて発色させ(25℃、15分)、0.3M H2SO4を添加し、主波長450nm、副波長650nmの吸光度を測定した。
【実施例】
【0109】
1-5.ペプチド融合scFvのPDMS基材への固定化状態における抗原結合活性
1)前述と同様にしてPDMS基材を作製した。
2)QCM基材をQCM本体にセットし、PBS中でベースラインが安定化するまでインキュベートした後、各ペプチド融合scFv溶液を15μg/ml添加し、25℃、回転数1000rpmにおいて固定化した。溶液は、ペプチド融合scFvをPBSに添加することにより作製した。
3)次いで、PBSを0.2%BSA-PBSTに変えて、CRPを終濃度0.1、1.1、6.1μg/mlとなるように添加し、各濃度で平衡到達するまでの吸着挙動を前述と同様にしてモニタリングし、測定データ(ΔF:-1Hz=0.62ng/cm2)に基づいて抗原結合量(ng/cm2)を算出した。
【実施例】
【0110】
2.結果
2-1.ペプチド融合scFvの回収濃度及び回収効率
表2に、前記1-2の結果、すなわちペプチド融合scFvの回収濃度及び回収効率を示す。
【実施例】
【0111】
【表2】
JP2016129695A1_000006t.gif
【実施例】
【0112】
表2から明らかなように、いずれのペプチド融合scFvも高濃度で回収でき、その回収率は96%以上と高い値であった。このことから、ペプチド融合scFvによれば高い割合でリフォールディングを達成でき、高効率でペプチド融合scFvを回収できることが分かった。
【実施例】
【0113】
2-2.ペプチド融合scFvのPDMSへの吸着
図4に前記1-3の結果を示す。図4から明らかなように、D10ペプチド融合scFv(D10-scFv)ではPDMS基材表面への吸着はほとんど認められなかった。これに対して、ELV1ペプチド、TPV1ペプチド、OCV1ペプチドとの融合scFvでは、濃度依存的にPDMS基材への吸着量が増加した。特にELV1ペプチド融合scFvを用いた場合に、吸着量が著しく高まった。このこととから、PDMSへの親和性を有するペプチドを用いることにより、所望のタンパク質をPDMS基材により効率良く固定できることが分かった。
【実施例】
【0114】
2-3.ペプチド融合scFvの抗原結合活性
図5に前記1-4の結果を示す。図5から明らかなように、リフォールディング後のペプチド融合scFvの抗原結合活性を間接ELISA法により評価したところ、いずれにおいても良好な抗原結合活性が認められた。また、ペプチド融合scFv濃度依存的にシグナルが高まっていることから、ペプチド融合scFvが抗原抗体反応に有用な抗原結合活性を有することが分かった。
【実施例】
【0115】
2-4.ペプチド融合scFvのPDMS基材への固定化状態における抗原結合活性
図6に前記1-5の結果を示す。図6から明らかなように、D10ペプチド融合scFvでは抗原結合量が非常に少なかった。このことから、D10ペプチド融合scFvは、基材上にほとんど吸着していないことが分かった。これに対して、ELV1ペプチド、TPV1ペプチド、OCV1ペプチドの各融合scFv では抗原濃度依存的に抗原結合量が増加しており、これらの融合scFvは、PDMS基材へ固定化された状態で十分な抗原結合活性を有していることが分かった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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