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明細書 :表面増強ラマン分光用基板の作製方法及びこの方法で作製された基板

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年12月7日(2017.12.7)
発明の名称または考案の名称 表面増強ラマン分光用基板の作製方法及びこの方法で作製された基板
国際特許分類 G01N  21/65        (2006.01)
B82Y  15/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI G01N 21/65
B82Y 15/00
B82Y 40/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 14
出願番号 特願2017-502453 (P2017-502453)
国際出願番号 PCT/JP2016/055542
国際公開番号 WO2016/136851
国際出願日 平成28年2月25日(2016.2.25)
国際公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
優先権出願番号 2015035503
優先日 平成27年2月25日(2015.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】武安 伸幸
【氏名】香川 龍恭
【氏名】金田 隆
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002206、【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G043
Fターム 2G043AA01
2G043BA14
2G043CA03
2G043DA06
2G043EA03
2G043GA07
2G043GB16
2G043GB21
2G043JA01
2G043KA02
2G043KA05
2G043KA09
2G043LA01
2G043MA04
要約 基板の表面に金属膜を形成した表面増強ラマン分光用基板の作製方法であって、金属ナノ粒子を含有した金属ナノ粒子溶液と水中油滴エマルション液とを混合した混合液に基板の少なくとも一部分を浸漬させる工程と、混合液に油性液を注ぎ入れることで油水界面を形成する工程と、この油水界面に金属ナノ粒子が集積した状態となったところで基板を引き抜くことで、基板の表面に金属ナノ粒子で構成される金属膜を堆積させる工程とを有することを特徴とする。これにより、低コストで作製可能であって、均一な凹凸構造を有する表面増強ラマン分光用基板が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
基板の表面に金属膜を形成した表面増強ラマン分光用基板の作製方法において、
金属ナノ粒子を含有した金属ナノ粒子溶液と水中油滴エマルション液とを混合した混合液に前記基板の少なくとも一部分を浸漬させる工程と、
前記混合液に油性液を注ぎ入れることで油水界面を形成する工程と、
前記油水界面に前記金属ナノ粒子が集積した状態となったところで前記基板を引き抜くことで、前記基板の表面に前記金属ナノ粒子で構成される金属膜を堆積させる工程と
を有する表面増強ラマン分光用基板の作製方法。
【請求項2】
前記水中油滴エマルション液は、前記油性液と同じ油性液と、水と、界面活性剤とを混合して超音波処理した溶液であって、前記界面活性剤としてアルキルアミンを用いている請求項1に記載の表面増強ラマン分光用基板の作製方法。
【請求項3】
表面増強ラマン分光に用いるレーザー光の波長に応じて、前記アルキルアミンの炭素鎖の炭素数を調整している請求項2に記載の表面増強ラマン分光用基板の作製方法。
【請求項4】
表面に金属膜が形成された基板において、
前記金属膜は、この金属膜を構成する金属ナノ粒子を含有した金属ナノ粒子溶液と水中油滴エマルション液とを混合した混合液に油性液を注ぎ入れて形成した油水界面に前記金属ナノ粒子を集積させて形成することで、前記金属ナノ粒子の最密充填単層膜とした基板。
【請求項5】
前記水中油滴エマルション液は、前記油性液と同じ油性液と、水と、界面活性剤とを混合して超音波処理した溶液であって、前記界面活性剤としてアルキルアミンを用いた請求項4に記載の基板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、表面増強ラマン分光用基板の作製方法及びこの方法で作製された基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光法では、測定対象の物質に所定波長の光を照射した際に、ごくわずかではあるが入射光とは異なる波長の光が散乱光に含まれ、この入射光と異なる波長の光の振動数が、測定対象の物質に含まれる分子の固有振動数となっていることを利用している。
【0003】
ただし、入射光と異なる波長の光は、極めて微弱である。そこで、現在では表面増強ラマン分光法が用いられている。この表面増強ラマン分光法では、測定対象の物質が滴下される基板の表面に貴金属製のナノスケールの凹凸構造を形成しておくことで、凹凸構造の近傍に貴金属に起因した近接場を生じさせており、この近接場によって入射光と異なる波長の光が増幅されることを利用している。
【0004】
凹凸構造の形成方法としては、トップダウン的加工法、真空蒸着法、貴金属ナノ粒子の凝集利用法、あるいはプラスチック微小球利用法等が知られている。
【0005】
トップダウン的加工法では、電子ビームやイオンビーム等を用いて、ガラス板等の絶縁基板の表面に、貴金属を蒸着・リフトオフすることで、あるいは蒸着している貴金属を削り取ることで微細構造を形成して凹凸構造としている。
【0006】
真空蒸着法では、ガラス板等の絶縁基板の表面に金属を蒸着することで凹凸構造としている。
【0007】
貴金属ナノ粒子の凝集利用法では、コロイド状とした貴金属ナノ粒子をガラス板等の絶縁基板の表面で凝集させて凹凸構造としている。
【0008】
プラスチック微小球利用法では、ガラス板等の絶縁基板の表面にサブミクロンからミクロンサイズのプラスチック球を自己組織的に並べて、このプラスチック球の上面に金属を蒸着することで、プラスチック球の大きさによって均一化された凹凸構造としている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2012-088222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、必要とされる凹凸構造は、均一なナノ構造となっていることが望ましく、真空蒸着法や貴金属ナノ粒子の凝集利用法では、均一性が十分ではなく、一方、プラスチック微小球利用法では、プラスチック微小球のサイズでの均一性は有しているが、凹凸構造のさらなる微細化が困難であった。また、トップダウン的加工法では、均一性は有しているが、凹凸構造の形成が高コスト化しやすいという問題があった。
【0011】
しかも、いずれの方法であっても、作製ロットごとのバラツキを抑制することが困難であり、表面増強ラマン分光法による測定の再現性が得られにくいという問題も有していた。
【0012】
本発明者らは、このような現状に鑑み、より均一な凹凸構造を有する表面増強ラマン分光用基板を低コストで作製することに関して研究を行い、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の表面増強ラマン分光用基板の作製方法は、基板の表面に金属膜を形成した表面増強ラマン分光用基板の作製方法であって、金属ナノ粒子を含有した金属ナノ粒子溶液と水中油滴エマルション液とを混合した混合液に基板の少なくとも一部分を浸漬させる工程と、混合液に油性液を注ぎ入れることで油水界面を形成する工程と、この油水界面に金属ナノ粒子が集積した状態となったところで基板を引き抜くことで、基板の表面に金属ナノ粒子で構成される金属膜を堆積させる工程とを有するものである。
【0014】
さらに、本発明の表面増強ラマン分光用基板の作製方法では、水中油滴エマルション液が、水中油滴エマルション液に後から加える油性液と同じ油性液と、水と、界面活性剤とを混合して超音波処理した溶液であって、界面活性剤としてアルキルアミンを用いていること、さらには、表面増強ラマン分光に用いるレーザー光の波長に応じて、アルキルアミンの炭素鎖の炭素数を調整していることにも特徴を有するものである。
【0015】
また、表面に金属膜が形成された本発明の基板は、金属膜を構成する金属ナノ粒子を含有した金属ナノ粒子溶液と水中油滴エマルション液とを混合した混合液に油性液を注ぎ入れて形成した油水界面に金属ナノ粒子を集積させて金属膜を形成することで、この金属膜を金属ナノ粒子の最密充填単層膜としている基板である。
【0016】
さらには、本発明の基板は、金属膜を形成するための水中油滴エマルション液が、水中油滴エマルションに後から加える油性液と同じ油性液と、水と、界面活性剤とを混合して超音波処理した溶液であって、界面活性剤としてアルキルアミンを用いているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面に金属ナノ粒子を捕獲した油滴を油水界面に集積させることで、この油水界面で油滴が最密充填構造をとり、最密充填単層膜となった金属膜を極めて容易に形成できる。そして、金属膜を堆積させた基板とすることで、基板表面には、金属による凹凸構造を極めて均一に、かつ微細に形成でき、ラマン分光でのラマン信号強度を著しく向上させることができる。しかも、最密充填単層膜の再現性が極めて高く、表面増強ラマン分光法による測定の再現性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】金膜が形成された基板の吸収スペクトル(左側)と、基板の写真(右側)である。
【図2】銀膜が形成された基板の吸収スペクトル(左側)と、基板の写真(右側)である。
【図3】銀膜の有無でYAGレーザーの第2高調波による表面増強ラマン分光を行った結果のグラフである。
【図4】基板中の4カ所で測定されたp-アミノチオフェノールのラマンスペクトルのグラフである。
【図5】基板中の3カ所で測定されたトルエンのラマンスペクトルのグラフである。
【図6】アルキルアミンが、ラウリルアミン(C12H25)の場合と、デシルアミン(C10H21)の場合と、オクチルアミン(C8H17)の場合での、金膜が形成された基板の吸収スペクトルのグラフ(左側)と、炭素数ごとのピーク波長を比較したグラフ(右側)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の表面増強ラマン分光用基板の作製方法、及びこの方法で作製された基板では、金属ナノ粒子を自己組織化させることで、均一で、かつ再現性の高い金属膜を形成し、表面増強ラマン分光において有益な基板、すなわち、表面増強ラマン分光用基板を提供可能としているものである。

【0020】
特に、自己組織化を生じさせるために油水界面を利用しており、まず、表面に金属ナノ粒子を捕獲させた油滴を形成した混合液を作製し、この混合液に油性液を注ぎ入れることで油水界面を形成している。なお、混合液は、水中油滴エマルション液に、金属ナノ粒子を含有した金属ナノ粒子溶液を混合することで作製できる。本発明で用いられる金属ナノ粒子の粒子径としては特に限定されないが、10~50nmであることが好ましい。

【0021】
混合液に油性液を注ぎ入れると、混合液の上側に油性液による油層が形成され、しばらくすると、この油層の下面に混合液中の油滴の集積が生じ、かつ自己組織化の作用によって油滴が最密充填構造の配置となる。本発明で用いられる油性液としては、水と相分離する有機溶媒であれば特に限定されない。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系炭化水素溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒等の有機溶媒が好適に採用される。中でも、飽和脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、及びハロゲン系炭化水素溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒がより好適に使用され、飽和脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、及びエーテル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒が更に好適に使用され、飽和脂肪族炭化水素系溶媒が特に好適に使用される。

【0022】
この状態となったところで、油水界面に集積された金属ナノ粒子を基板で掬い取る、あるいはあらかじめ混合液に浸漬させていた基板を引き抜くことで、基板の表面に金属ナノ粒子で構成される金属膜を堆積させることができる。中でも、より均一な表面を有する基板が得られる観点から、ディップコーター等の装置を用いて基板を引き抜く方法が好適に採用される。

【0023】
ここで、水中油滴エマルション液は、水中油滴エマルション液に後から加える油性液と同じ油性液と、水と、界面活性剤とを混合して超音波処理した溶液とすることが望ましく、特に、界面活性剤としてアルキルアミンを用いることが望ましい。アルキルアミンを用いることで、混合液の溶液中に分散する金属ナノ粒子を効率的にエマルション油水界面に捕獲することができる。水中油滴エマルション液(アルキルアミンを含む油性液、水)と金属ナノ粒子溶液とを混合する際の体積比率としては特に限定されないが、金属ナノ粒子溶液1に対して、アルキルアミンを含む油性液が0.04~0.06であることが好ましく、金属ナノ粒子溶液1に対して、水が1.5~4であることが好ましい。なお、アルキルアミンを含む油性液の濃度としては、5~30mMが好ましい。また、金属ナノ粒子溶液の濃度としては、0.4×1011個/mL~3×1012個/mLであることが好ましい。

【0024】
さらに、アルキルアミンの炭素鎖の炭素数を調整することで、油滴によって出来上がる膜を構成している金属ナノ粒子同士の間隔であるナノギャップの広さが変わるため、レーザー光の波長に対する最適化が可能となる。すなわち、用いられるアルキルアミンを変更することにより測定レーザー光の波長に応じた表面増強ラマン分光用基板を作製することができる。本発明で用いられるアルキルアミンにおけるアルキル鎖としては特に限定されず、直鎖であっても分岐鎖であっても構わない。例えば、炭素数4~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好適に使用され、炭素数6~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好適に使用される。

【0025】
本発明の表面増強ラマン分光用基板の作製方法により、表面増強ラマン分光による所定の測定前に、混合液と油性液とを用いて基板を作製してもよいし、あらかじめ作製した基板を適宜の封止ガスととともに密封容器に封入しておき、使用時に開封して使用してもよい。
【実施例】
【0026】
以下において、本発明の実施例を詳説する。なお、本発明は、以下の説明の実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例】
【0027】
本実施例では、基板の表面に形成する金属膜は、金ナノ粒子で構成される金膜、または銀ナノ粒子で構成される銀膜である。
【実施例】
【0028】
<金ナノ粒子溶液の作成>
金ナノ粒子溶液は、100mLの超純水に、50mMのNaAuCl4・2H2O水溶液を500μLと、3wt%のクエン酸ナトリウムを3.5mLとを混合して、80℃で3時間反応させて作成した。特に、赤色に変色したところで室温まで冷却し、冷蔵庫で保存した。このとき、金ナノ粒子溶液の濃度は約6×1011個/mLであった。
【実施例】
【0029】
<銀ナノ粒子溶液の作成>
銀ナノ粒子溶液は、30mLの超純水の入ったサンプル瓶の中に20mMのAgNO3水溶液を250μL加えて硝酸銀水溶液とし、この硝酸銀水溶液を沸騰させた後に100mMのクエン酸ナトリウム水溶液を500mL得て、さらに30分間加熱して作成した。特に、溶液の色がゆっくりと淡い灰色がかった黄色に変化したところで室温まで冷却した。このとき、銀ナノ粒子溶液の濃度は約2×1011個/mLであった。
【実施例】
【0030】
<水中油滴エマルション液の作成>
水中油滴エマルション液は、ビーカー(容量:約50mL、水平方向の断面積:1.02x10-3m2)に超純水を加え、さらに20mMのアルキルアミン-ヘキサン溶液を加えて、超音波処理して作成した。ここで、アルキルアミンが界面活性剤であり、ヘキサンが油性液である。超純水とアルキルアミン-ヘキサン溶液の配合比率については、後述する。水中油滴エマルション液では、文字通り油滴が形成されており、この油滴の大きさは、アルキルアミンの炭素鎖における炭素数によって調整できる。以下の説明において、特に言及しない場合には、アルキルアミンとして、ラウリルアミン(C12H25)を用いていた。
【実施例】
【0031】
<混合液の作成>
上述した方法で作成したビーカー中の水中油滴エマルション液に、上述した方法で作成した金ナノ粒子溶液または銀ナノ粒子溶液を加えて混合させることで、混合液を作成した。ここで、水中油滴エマルション液に対する金ナノ粒子溶液または銀ナノ粒子溶液の添加量は、水中油滴エマルション液における超純水とアルキルアミン-ヘキサン溶液との体積比率として、超純水:アルキルアミン-ヘキサン溶液:金ナノ粒子溶液(銀ナノ粒子溶液)=3:0.05:1(18mL:0.3mL:6mL)とした。なお、超純水とアルキルアミンヘキサン溶液の比率は、上記の比率に限定されるものではなく、水中油滴エマルションが生成されればよい。
【実施例】
【0032】
混合液では、水中油滴エマルション液に金ナノ粒子溶液または銀ナノ粒子溶液を加えたことで、金ナノ粒子または銀ナノ粒子に結合している官能基の作用によって、水中油滴エマルション液中の油滴の周りに金ナノ粒子または銀ナノ粒子が集積され、液滴を核とした粒子集合体が形成されている。すなわち、混合液は粒子集合体の分散液となっている。
【実施例】
【0033】
ここで、水中油滴エマルション液に加える金ナノ粒子溶液または銀ナノ粒子溶液の量であるが、これは、使用するビーカーの大きさも考慮する必要がある。すなわち、本発明では、基板に形成する金属膜を金属ナノ粒子の最密充填単層膜としているが、この金属ナノ粒子の最密充填単層膜が形成される条件とする必要があるためである。
【実施例】
【0034】
具体的には、
「ビーカーの面積(m2)」=「金属ナノ粒子の最密充填単層膜の面積(m2)」
とすることが望ましく、ここで、
「金属ナノ粒子の最密充填単層膜の面積(m2)」
=「最密充填単層膜を構成する金属ナノ粒子溶液中の金属ナノ粒子の個数」
×(「1個の金属ナノ粒子の面積(m2)」+「アルキルアミンの炭素鎖断面積(m2)」)
であり、
「最密充填単層膜を構成する金属ナノ粒子溶液中の金属ナノ粒子の個数」
=「金属ナノ粒子溶液の濃度(mol/L)」×「添加量(mL)」/1000×6.0×1023
である。また、
「1個の金属ナノ粒子の面積(m2)」+「アルキルアミンの炭素鎖断面積(m2)」
=(「金属ナノ粒子の半径(nm)」+「アルキルアミンの炭素鎖長(nm)」)2×π
と考えることができる。
【実施例】
【0035】
<基板の前処理>
金属膜を堆積させる基板には、ガラス基板、より具体的にはスライドガラスを用いた。基板は、極めて清浄である必要がある。そこで、先ず、基板を家庭用洗剤でよく洗い、表面の付着物を取り除き、次いで、濃硫酸:過酸化水素水=3:1に調整した溶液に基板を約2時間浸漬させることで、表面の油脂成分などをきれいに取り除いた。その後、基板を超純水でよく洗浄し、乾燥させた。
【実施例】
【0036】
<基板の設置>
前処理されることで十分に洗浄された基板は、混合液が貯留されているビーカーに立てかけた状態として、基板の先端部分を混合液に浸漬させた。このように基板をビーカー内に立てかけ状態に設置可能とするために、ビーカーは50mLや100mLの小容量のビーカーを用いることが望ましい。
【実施例】
【0037】
<最密充填単層膜の形成>
基板の先端部分が混合液に浸漬されているビーカー内に、油性液としてヘキサンを注ぎ入れて、油水界面を形成した。ここで、ビーカーに加えるヘキサンの量は、混合液の液面の上側に数mm程度の厚さの油性液による液層、すなわち油層が形成できる量であればよい。
【実施例】
【0038】
ヘキサンの注入による油層の形成後、しばらくすると、混合液中で、液滴を核とした粒子集合体が油層の下面への集積が生じ、油水界面に金属ナノ粒子が集積した状態となり、混合液は透明となる。
【実施例】
【0039】
ここで、油層の下面に集積した液滴は、自己組織化の作用によって油滴が最密充填構造の配置となり、最密充填単層膜が形成されることとなる。本発明における「最密充填単層膜」とは、このように油水界面と油滴を利用して形成される膜のことである。このように自己組織化の作用を利用して最密充填単層膜を形成することにより、一定の状態の最密充填単層膜を作製しやすく、作製ロットごとにバラツキが生じることを抑制できる。
【実施例】
【0040】
<最密充填単層膜の取り出し>
混合液が透明となったところで、基板をビーカーから引き抜くと、基板の引き抜きにともなって最密充填単層膜、すなわち金ナノ粒子で構成される金膜または銀ナノ粒子で構成される銀膜が基板の表面に堆積して金膜または銀膜となる。
【実施例】
【0041】
<洗浄・乾燥>
ビーカーから引き抜いた基板は、エタノールで洗浄することでヘキサンを洗い流し、さらに超純水で洗浄し、乾燥させた。乾燥後、金膜または銀膜が形成された基板は、表面増強ラマン分光に用いることができる。
【実施例】
【0042】
<吸収スペクトルによる確認>
図1は、上記の方法で作製した金膜が形成された基板の吸収スペクトル(図1左側)と、基板の写真(図1右側)である。表面増強ラマン分光で使用されるHe-Neレーザー(632nm)の領域で高い光吸収を示し、He-Neレーザーによる表面増強ラマン分光に使用可能であることがわかる。このときの金ナノ粒子の粒子径は約20nmであった。なお、金ナノ粒子又は銀ナノ粒子の粒子径は電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【実施例】
【0043】
図2は、上記の方法で作製した銀膜が形成された基板の吸収スペクトル(図2左側)と、基板の写真(図2右側)である。表面増強ラマン分光で使用されるYAGレーザーの第2高調波(532nm)の領域で高い光吸収を示し、YAGレーザーの第2高調波による表面増強ラマン分光に使用可能であることがわかる。このときの銀ナノ粒子の粒子径は約20nmであった。
【実施例】
【0044】
<ラマン信号の確認>
銀膜による増強効果を確認するために、銀膜の有無でYAGレーザーの第2高調波による表面増強ラマン分光を行った結果を図3に示す。ここで、1mMのp-アミノチオフェノール(p-ATP)/EtOH溶液をそのまま測定し、エタノールのラマン信号を得た。図3において、左側縦軸は、銀膜の有の場合で、右側縦軸は、銀膜の無の場合であり、増強効果が極めて大きいことが確認できた。このときの銀ナノ粒子の粒子径は約40nmであった。
【実施例】
【0045】
<金属膜の一様性>
作製した金属膜が一様性を有していることを確認した。上記の方法により銀膜を作製した基板に対し、図4右側の写真に示すように、4カ所でそれぞれ1mMのp-アミノチオフェノール(p-ATP)/EtOH溶液のラマン信号を測定し、結果を図4左側のグラフに示す。図4左側のグラフより、作製した銀膜のどこで測定しても同様のラマンスペクトルが得られることが確認できた。このときの銀ナノ粒子の粒子径は約40nmであった。
【実施例】
【0046】
上記の方法で作製した銀膜が形成された基板上に、直径約5mmの穴が形成されたシリコンゴムをスペーサーとして載せた。次いで、前記穴の中に5mmol/Lトルエン水溶液を40μL入れて上からカバーガラスで蓋をした。3カ所でラマン信号の測定(レーザー出力:0.6mW、測定時間:10秒)を行った結果、ほぼ同じ形のスペクトルが得られ、ラマン信号強度もほぼ同じであった。得られた結果を図5に示す。このときの銀ナノ粒子の粒子径は約20nmであった。
【実施例】
【0047】
<アルキルアミンの炭素鎖の炭素数の影響>
油滴の形成に用いたアルキルアミンは、その炭素鎖の炭素数を調整することで油滴の大きさを調整することができ、その影響を確認した。すなわち、アルキルアミンが、ラウリルアミン(C12H25)の場合と、デシルアミン(C10H21)の場合と、オクチルアミン(C8H17)の場合での、金膜が形成された基板の吸収スペクトルを比較した。図6に示すように、炭素数によってピーク波長が異なり、必要に応じてアルキルアミンの炭素鎖の炭素数を調整することで、表面増強ラマン分光に用いるレーザー光の波長に対する最適化をはかることができる。
【実施例】
【0048】
<ディップコーターを用いた最密充填単層膜の取り出し>
上記<最密充填単層膜の取り出し>において、ディップコーター(株式会社SDI製「ナノディップコーターND-0407-S4」を用い、引き上げ速度20μm/secで基板をビーカーから引き抜いた以外は同様にして、基板の表面に金膜が形成された最密充填単層膜を取り出した。次いで、エタノールで洗浄してヘキサンを洗い流し、さらに超純水で洗浄して乾燥することにより、金膜が形成された基板を得た。このときの金ナノ粒子の粒子径は約20nmであった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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