TOP > 国内特許検索 > 医療用デバイス、歯科用、頭頸部外科用及び整形外科用デバイス構造、並びに骨への医療用デバイスの接合方法 > 明細書

明細書 :医療用デバイス、歯科用、頭頸部外科用及び整形外科用デバイス構造、並びに骨への医療用デバイスの接合方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年11月30日(2017.11.30)
発明の名称または考案の名称 医療用デバイス、歯科用、頭頸部外科用及び整形外科用デバイス構造、並びに骨への医療用デバイスの接合方法
国際特許分類 A61C   8/00        (2006.01)
FI A61C 8/00 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 25
出願番号 特願2017-502490 (P2017-502490)
国際出願番号 PCT/JP2016/055713
国際公開番号 WO2016/136913
国際出願日 平成28年2月25日(2016.2.25)
国際公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
優先権出願番号 2015035844
優先日 平成27年2月25日(2015.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】上園 将慶
【氏名】高久田 和夫
【氏名】森山 啓司
【氏名】鈴木 聖一
出願人 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求 未請求
テーマコード 4C159
Fターム 4C159AA03
4C159AA17
4C159AA24
4C159AA27
要約 患者への侵襲が小さく、骨との強固な接合を実現することができる医療用デバイス、歯科用、頭頸部外科用及び整形外科用デバイス構造、並びに骨への医療用デバイスの接合方法を得る。
医療用デバイスは、骨を構成する皮質骨の内部に差し込まれる、又は前記皮質骨を貫通し、前記皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで差し込まれる中空形状の軸部と、前記軸部の軸方向の一端部から半径方向外側に屈曲され、前記皮質骨の表面に露出する屈曲部、又は、前記軸部の軸方向の一端部から半径方向外側に延在される部分を有し、前記皮質骨の表面に露出する露出部と、を有する。
特許請求の範囲 【請求項1】
骨を構成する皮質骨の内部に差し込まれる、又は前記皮質骨を貫通し、前記皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで差し込まれる中空形状の軸部と、
前記軸部の軸方向の一端部から半径方向外側に屈曲され、前記皮質骨の表面に露出する屈曲部と、
を有する医療用デバイス。
【請求項2】
前記軸部には、軸方向に沿って1又は2以上のスリットが設けられている請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記屈曲部は、前記軸部の周方向に複数設けられている請求項1又は請求項2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記屈曲部における前記軸部と隣接する位置に、前記スリットと連続する開口部が設けられている請求項2又は請求項3に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
骨を構成する皮質骨の内部に差し込まれる、又は前記皮質骨を貫通し、前記皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで差し込まれる中空形状の軸部と、
前記軸部の軸方向の一端部から半径方向外側に延在される部分を有し、前記皮質骨の表面に露出する露出部と、
を有する医療用デバイス。
【請求項6】
前記軸部の一端部は、前記露出部の一部によって閉止されており、
前記露出部における前記軸部とは反対側の面の少なくとも一部は、前記皮質骨を覆う上皮から露出される請求項5記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記軸部には、軸方向に沿って1又は2以上のスリットが設けられている請求項5又は請求項6に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記露出部の底面における前記軸部と隣接する位置に、前記スリットとつながる又は前記軸部の内面に開口する溝が設けられている請求項6又は請求項7に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記軸部には、貫通孔が形成されている請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記軸部は、軸方向の長さの70%以上が前記皮質骨に位置する長さに設定されている請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
前記軸部の外周面には、雄ねじ部が設けられている請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
前記軸部及び前記屈曲部が、チタン又はチタン合金により形成されている請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
前記軸部の表面及び前記屈曲部又は前記露出部の少なくとも一部が、生体機能材料でコーティングされている請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の医療用デバイスを備え、前記医療用デバイスを骨への固定に利用する、歯科用、頭頸部外科用又は整形外科用デバイス構造。
【請求項15】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の医療用デバイスを骨に接合する接合方法であって、
骨を構成する皮質骨の内部に前記軸部を差し込み、又は前記皮質骨を貫通し、前記皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで前記軸部を差し込み、前記屈曲部又は前記露出部を前記皮質骨の表面に露出した状態で前記軸部を前記骨に固定する工程と、
前記軸部の中空形状及び前記スリットを通じて、前記骨の内部から骨形成能を有する細胞を遊走させ、前記細胞により前記軸部の内面側に新生骨を形成させて前記医療用デバイスの前記骨への接合を促進する機能と、
前記屈曲部における前記軸部と隣接する位置に設けられた前記スリットと連続する開口部、又は、前記露出部の底面における前記軸部と隣接する位置に設けられた前記スリットとつながる又は前記軸部の内面に開口する溝、によって前記骨の内部から骨形成能を有する細胞を皮質骨表面に遊走させ、前記細胞により前記屈曲部又は前記露出部の底面及び周囲に新生骨を形成させて前記医療用デバイスの前記皮質骨表面への接合を促進する機能と、
を有する骨への医療用デバイスの接合方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用デバイス、歯科用、頭頸部外科用及び整形外科用デバイス構造、並びに骨への医療用デバイスの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯科矯正のためのインプラントデバイスが提案されている。
【0003】
特開2004-57729号公報には、外周にねじ山が形成されたインプラントボディと、インプラントボディの軸方向の端部側にスクリューを螺合することによって固定されたアンカーヘッドと、を備えた歯列矯正インプラント(インプラントデバイス)が開示されている。この歯列矯正インプラントでは、インプラントボディの端面とアンカーヘッドとの間に溝が設けられており、2本の小ねじがアンカーヘッドのねじ孔に螺合され、小ねじの先端が溝の中に突出している。そして、歯列矯正インプラントの溝の中にワイヤーを配置し、小ねじの先端の突出量を調整することで、ワイヤーを小ねじの先端で押さえてインプラントボディの端面との間に固定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2004-57729号公報に記載された構成では、歯列矯正インプラントの軸方向の長さが長く設定されており、より具体的には、スクリューの長さ(10.9mm)よりも長い寸法とされている。このため、例えば、歯列矯正インプラントを骨にねじ入れて固定する際に、歯根や歯胚を損傷させる可能性があり、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、患者への侵襲が小さく、骨との強固な接合を実現することができる医療用デバイス、歯科用、頭頸部外科用及び整形外科用デバイス構造、並びに骨への医療用デバイスの接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る医療用デバイスは、骨を構成する皮質骨の内部に差し込まれる、又は前記皮質骨を貫通し、前記皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで差し込まれる中空形状の軸部と、前記軸部の軸方向の一端部から半径方向外側に屈曲され、前記皮質骨の表面に露出する屈曲部と、を有する。
【0007】
第1の態様に係る発明によれば、医療用デバイスには、中空形状の軸部が設けられており、軸部が骨を構成する皮質骨の内部に差し込まれる、又は軸部が皮質骨を貫通し、皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで差し込まれる。また、医療用デバイスには、軸部の軸方向の一端部から半径方向外側に屈曲された屈曲部が設けられており、軸部が皮質骨の内部に又は皮質骨を貫通して海綿骨に達する位置まで差し込まれた状態で、屈曲部が皮質骨の表面に露出している。このため、屈曲部が皮質骨の表面に接触することにより、軸部が骨内に落ち込むことが抑制される。この状態で、医療用デバイスの中空形状の軸部を通じて、骨の内部から骨形成能を有する細胞が遊走し、該細胞により軸部の内面側に新生骨が形成される。さらには、医療用デバイスの中空形状の軸部を通じて皮質骨表面まで骨形成能を有する細胞が遊走し、屈曲部にも新生骨が形成され、医療用デバイスと骨との接合がより強固になる。これにより、短い軸部でも、医療用デバイスを強固に骨に接合することが可能となる。
【0008】
第2の態様に係る発明は、第1の態様に係る医療用デバイスにおいて、前記軸部には、軸方向に沿って1又は2以上のスリットが設けられている。
【0009】
第2の態様に係る発明によれば、医療用デバイスの軸部には、軸方向に沿って1又は2以上のスリットが設けられているため、軸部の外径が拡大又は縮小する方向に変形しやすくなり、骨に軸部をより確実に固定させることができる。さらに、骨の内部から骨形成能を有する細胞が軸部のスリットを通じて遊走するため、該細胞により軸部の内面側及び屈曲部に速やかに新生骨を形成することが可能となる。
【0010】
第3の態様に係る発明は、第1の態様又は第2の態様に係る医療用デバイスにおいて、前記屈曲部は、前記軸部の周方向に複数設けられている。
【0011】
第3の態様に係る発明によれば、屈曲部は、軸部の周方向に複数設けられているので、屈曲部の少なくとも一部が皮質骨の表面に接触することにより、軸部が骨内に落ち込むことをより確実に抑制することができる。
【0012】
第4の態様に係る発明は、第2の態様又は第3の態様に係る医療用デバイスにおいて、前記屈曲部における前記軸部と隣接する位置に、前記スリットと連続する開口部が設けられている。
【0013】
第4の態様に係る発明によれば、屈曲部における軸部と隣接する位置に、スリットと連続する開口部が設けられているので、軸部の外径が拡大又は縮小する方向に変形しやすくなり、骨に軸部をより確実に固定させることができる。さらに、骨の内部から骨形成能を有する細胞が開口部を通じて皮質骨表面まで遊走するため、該細胞により軸部の内面側に加えて屈曲部にも速やかに新生骨を形成することが可能となる。
【0014】
第5の態様に係る発明は、骨を構成する皮質骨の内部に差し込まれる、又は前記皮質骨を貫通し、前記皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで差し込まれる中空形状の軸部と、前記軸部の軸方向の一端部から半径方向外側に延在される部分を有し、前記皮質骨の表面に露出する露出部と、を有する。
【0015】
第5の態様に係る発明によれば、医療用デバイスには、中空形状の軸部が設けられており、軸部が骨を構成する皮質骨の内部に差し込まれる、又は軸部が皮質骨を貫通し、皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで差し込まれる。また、医療用デバイスには、軸部の軸方向の一端部から半径方向外側に延在される部分を有する露出部が設けられており、軸部が皮質骨の内部に又は皮質骨を貫通して海綿骨に達する位置まで差し込まれた状態で、露出部が皮質骨の表面に露出している。このため、露出部が皮質骨の表面に接触することにより、軸部が骨内に落ち込むことが抑制される。この状態で、医療用デバイスの中空形状の軸部を通じて、骨の内部から骨形成能を有する細胞が遊走し、該細胞により軸部の内面側に新生骨が形成される。これにより、患者への侵襲が小さく、医療用デバイスを強固に骨に接合することができる。
【0016】
第6の態様に係る発明は、第5の態様に係る記載の医療用デバイスにおいて、前記軸部の一端部は、前記露出部の一部によって閉止されており、前記露出部における前記軸部とは反対側の面の少なくとも一部は、前記皮質骨を覆う上皮から露出される。
【0017】
第6の態様に係る発明によれば、軸部の一端部が露出部によって閉止された構成とされている。これにより、露出部における軸部とは反対側の面の面積を広くすることが可能となる。また、軸部が皮質骨の内部に又は皮質骨を貫通して海綿骨に達する位置まで差し込まれた状態では、露出部における軸部とは反対側の面の少なくとも一部が皮質骨を覆う上皮から露出する。これにより、露出部における軸部とは反対側の面において上皮から露出している部分に他の医療用デバイス等を接合することができる。
【0018】
第7の態様に係る発明は、第5の態様又は第6の態様に係る医療用デバイスにおいて、前記軸部には、軸方向に沿って1又は2以上のスリットが設けられている。
【0019】
第7の態様に係る発明によれば、医療用デバイスの軸部には、軸方向に沿って1又は2以上のスリットが設けられているため、軸部の外径が拡大又は縮小する方向に変形しやすくなり、骨に軸部をより確実に固定させることができる。さらに、骨の内部から骨形成能を有する細胞が軸部のスリットを通じて遊走するため、該細胞により軸部の内面側に速やかに新生骨を形成することが可能となる。
【0020】
第8の態様に係る発明は、第6の態様又は第7の態様に係る医療用デバイスにおいて、前記露出部の底面における前記軸部と隣接する位置に、前記スリットとつながる又は前記軸部の内面に開口する溝が設けられている。
【0021】
第8の態様に係る発明によれば、露出部の底面における軸部と隣接する位置に、スリットとつながる又は軸部の内面に開口する溝が設けられているので、骨の内部から骨形成能を有する細胞が溝を通じて皮質骨表面まで遊走するため、該細胞により軸部の内面側に加えて露出部の底面及び周囲にも速やかに新生骨が形成され、医療用デバイスと骨との接合がより強固になる。これにより、短い軸部でも、医療用デバイスを強固に骨に接合することが可能となる。
【0022】
第9の態様に係る発明は、第1の態様から第8の態様までのいずれかの態様の医療用デバイスにおいて、前記軸部には、貫通孔が形成されている。
【0023】
第9の態様に係る発明によれば、軸部に貫通孔が形成されている。そのため、この貫通孔を通じて骨形成能を有する細胞が遊走した場合は、貫通孔の周縁部にも新生骨が形成され、医療用デバイスと骨との接合がより強固になると共に医療用デバイスの回転を抑制することができる。
【0024】
第10の態様に係る発明は、第1の態様から第9の態様までのいずれかの態様の医療用デバイスにおいて、前記軸部は、軸方向の長さの70%以上が前記皮質骨に位置する長さに設定されている。
【0025】
第10の態様に係る発明によれば軸部は、軸方向の長さの70%以上が皮質骨に位置するように長さが設定されているので、軸部が海綿骨により深く差し込まれる場合に比べて、骨の損傷を抑制することができる。例えば、医療用デバイスを歯科矯正に用いた場合、約10mmの長さの軸部のうち約5mm以上が海綿骨に差し込まれる従来の歯列矯正インプラント等に比べて、歯根や歯胚を損傷させることをより効果的に抑制することができる。
【0026】
第11の態様に係る発明は、第1の態様から第10の態様までのいずれかの態様の医療用デバイスにおいて、前記軸部の外周面には、雄ねじ部が設けられている。
【0027】
第11の態様に係る発明によれば、軸部の外周面には、雄ねじ部が設けられており、軸部の雄ねじ部を骨にねじ込むことにより、軸部が骨に固定される。このため、骨に軸部をより確実に固定することができる。
【0028】
第12の態様に係る発明は、第1の態様から第11の態様までのいずれかの態様の医療用デバイスにおいて、前記軸部及び前記屈曲部又は前記露出部が、チタン又はチタン合金により形成されている。
【0029】
第12の態様に係る発明によれば、軸部及び屈曲部又は露出部が、チタン又はチタン合金により形成されているので、生体適合性に優れる。
【0030】
第13の態様に係る発明は、第1の態様から第12の態様までのいずれかの態様の医療用デバイスにおいて、前記軸部の表面及び前記屈曲部又は前記露出部の少なくとも一部が、生体機能材料でコーティングされている。
【0031】
第13の態様に係る発明によれば、軸部の表面及び屈曲部又は露出部の少なくとも一部が生体機能材料でコーティングされているので、医療用デバイスと骨との接合が促進される。
【0032】
本発明の歯科用、頭頸部外科用又は整形外科用デバイス構造は、第1の態様から第13の態様までのいずれかの態様の医療用デバイスを備え、医療用デバイスを骨への固定に利用する。
【0033】
本発明の歯科用、頭頸部外科用又は整形外科用デバイス構造によれば、軸部のスリット、及び屈曲部の開口部又は露出部の底面に設けられた溝を通じて、中空形状の軸部の内面側、及び皮質骨表面に露出する屈曲部又は露出部へ骨形成能を有する細胞が速やかに遊走するため、該細胞により軸部の内面側に加えて屈曲部、又は露出部の底面及び周囲にも速やかに新生骨が形成され、医療用デバイスと骨との接合がより強固になる。これにより、短い軸部でも、医療用デバイスを強固に骨に接合することが可能となり、患者への侵襲が小さく、医療用デバイスを強固に骨に接合することができる。また、例えば、医療用デバイスを歯科矯正用の骨への固定に利用した場合、約10mmの長さの軸部のうち約5mm以上が海綿骨に差し込まれる従来の歯列矯正インプラント等に比べて、歯根や歯胚を損傷させることをより効果的に抑制することができる。
【0034】
本発明の医療用デバイスの接合方法は、第1の態様から第13の態様までのいずれかの態様の医療用デバイスを骨に接合する接合方法であって、骨を構成する皮質骨の内部に前記軸部を差し込み、又は前記皮質骨を貫通し、前記皮質骨の奥側の海綿骨に達する位置まで前記軸部を差し込み、前記屈曲部又は前記露出部を前記皮質骨の表面に露出した状態で前記軸部を前記骨に固定することにより、前記軸部の中空形状及び前記スリットを通じて、前記骨の内部から骨形成能を有する細胞を遊走させ、前記細胞により前記軸部の内面側に新生骨を形成させて前記医療用デバイスの前記骨への接合を促進する機能、及び、前記屈曲部における前記軸部と隣接する位置に設けられた前記スリットと連続する開口部、又は、前記露出部の底面における前記軸部と隣接する位置に設けられた前記スリットとつながる又は前記軸部の内面に開口する溝、によって前記骨の内部から骨形成能を有する細胞を皮質骨表面に遊走させ、前記細胞により前記屈曲部又は前記露出部の底面及び周囲に新生骨を形成させて前記医療用デバイスの前記皮質骨表面への接合を促進する機能、を有する。
【0035】
本発明の医療用デバイスの接合方法によれば、骨に医療用デバイスの軸部を差し込み、医療用デバイスの屈曲部又は露出部が皮質骨の表面に露出した状態で軸部を固定する。さらに、軸部のスリット、及び屈曲部の開口部又は露出部の底面に設けられた溝を通じて、中空形状の軸部の内面側、及び皮質骨表面に露出する屈曲部又は露出部へ骨形成能を有する細胞を遊走させ、該細胞により軸部の内面側、及び皮質骨表面の屈曲部又は露出部の周囲に新生骨を形成させて医療用デバイスを骨に接合する。これにより、短い軸部でも、医療用デバイスを強固に骨に接合することが可能となり、患者への侵襲が小さく、医療用デバイスを強固に骨に接合することができる。
【0036】
本発明の医療用デバイスは、例えば、管状の金属基材に塑性加工や切削加工を施して製造することができる。また、本発明の医療用デバイスは、完成品の形に鋳造して製造することができる。さらに、本発明の医療用デバイスは、3Dプリンターによる積層造形で完成品の形に製造することができる。
【0037】
本発明の医療用デバイスを構成する金属は、特に限定されず、用途などに応じて公知の金属材料を適宜選択してよい。生体適合性の観点からは、チタン又はチタン合金が好ましい。チタン合金としては、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-4V ELI、Ti-6Al-7Nb、Ti-3Al-2.5V、Ti-5Al-2.5Fe等などを用いることができる。
【0038】
本発明の医療用デバイスは、その表面に、エッチング、サンドブラスト、粒子の焼付けなどの処理が施されたものであってもよい。
【0039】
本発明の医療用デバイスは、骨との接合を促進する目的で、その表面が生体機能材料でコーティングされていてもよい。本発明の医療用デバイスをコーティングする生体機能材料としては、ハイドロキシアパタイト(HAp)、コラーゲン(Col)、HApとColとを含むHAp/Col複合体が挙げられる。上記の生体機能材料の製造および金属表面のコーティング方法に関しては、特開2006-314760号公報、特開平7-101708号公報、特開平11-199209号公報、特開2000-5298号公報、特開2003-190271号公報、国際公開第2013/157638号などに開示されている材料および製造方法を適用することができる。
【0040】
本発明の医療用デバイスは、軸部の内面側に、生体機能材料(例えば、Col、HAp/Col複合体)からなるスポンジ状組成物を備えていてもよい。この場合、スポンジ状組成物に組織液や血液が浸み込み、骨形成能を有する細胞(骨原性細胞)が遊走されやすくなる。また、スポンジ状の組成物を足場として骨原性細胞が増殖・分化し骨形成が促進される。したがって、本発明の医療用デバイスと骨との接合がより強固になる。生体機能材料からなるスポンジ状組成物は、金属表面のコーティング方法の条件を調整することにより、本発明の軸部の内面側に設けることが可能である。
【0041】
本発明の骨への医療用デバイスの接合方法は、本発明の医療用デバイスを骨に設置した後、生体機能材料(例えば、Col、HAp/Col複合体)からなるスポンジ状組成物を、本発明の医療用デバイスの軸部の内面側に挿入してもよく、屈曲部の露出面上に載置してもよい。
【発明の効果】
【0042】
本願発明によれば、軸部のスリット、及び屈曲部の開口部又は露出部の底面に設けられた溝を通じて、中空形状の軸部の内面側、及び皮質骨表面に露出する屈曲部又は露出部へ骨形成能を有する細胞を遊走させ、該細胞により軸部の内面側に加えて皮質骨表面の屈曲部又は露出部の周囲にも新生骨を形成させて医療用デバイスを骨に接合する。
【0043】
本願発明によれば、短い軸部でも、医療用デバイスを強固に骨に接合することが可能となり、患者への侵襲が小さく、医療用デバイスを強固に骨に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係る医療用デバイスとしてのデバイスを示す斜視図である。
【図2A】図1に示すデバイスを示す平面図である。
【図2B】図1に示すデバイスを示す底面図である。
【図3A】図1に示すデバイスを骨に接合する骨へのデバイスの接合方法において、骨に穴部を空ける前の状態を示す断面図である。
【図3B】図1に示すデバイスを骨に接合する骨へのデバイスの接合方法において、骨の穴部にデバイスを固定する工程を示す断面図である。
【図3C】図1に示すデバイスを骨に接合する骨へのデバイスの接合方法において、デバイスの中空形状の軸部を通じて骨形成能を有する細胞(骨原性細胞)が遊走する状態を示す断面図である。
【図3D】図1に示すデバイスを骨に接合する骨へのデバイスの接合方法において、骨形成能を有する細胞(骨原性細胞)によりデバイスの軸部及び屈曲部に新生骨が形成される状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る医療用デバイスとしてのデバイスを示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る歯科用デバイス構造であって、図1に示すデバイスを歯科矯正に使用した例を示す正面図である。
【図6】実施例のデバイスをラットの脛骨の皮質骨に設置する前後の状態を示す写真である。
【図7】図6に示すデバイスの骨との接合強度を確認する力学実験の概要を示す写真である。
【図8】比較例に係る歯科矯正用アンカースクリューを骨に固定した状態を示す断面図である。
【図9】図8に示す歯科矯正用アンカースクリューと骨との接合強度を確認する力学実験の概要を示す写真である。
【図10A】実施例のデバイスの周囲の骨組織の画像(マイクロCTの再構築画像)である。
【図10B】実施例のデバイスの屈曲部の周囲の骨組織の画像(マイクロCTの再構築画像)である。
【図11】実施例のデバイス及び比較例の歯科矯正用アンカースクリューの骨との接合強度を確認する力学実験の結果を示すグラフである。
【図12A】本発明の第4実施形態に係る医療用デバイスとしてのデバイスを示す斜視図である。
【図12B】図12Aに示すデバイスの底面図である。
【図12C】図12Aに示すデバイスが骨に接合された状態を示す断面図である。
【図13A】本発明の第5実施形態に係る医療用デバイスとしてのデバイスを示す斜視図である。
【図13B】図13Aに示すデバイスの底面図である。
【図13C】図13Aに示すデバイスが骨に接合された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。

【0046】
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の第1実施形態の医療用デバイス(以下、「デバイス」という)が斜視図にて示されている。図2Aには、図1に示すデバイスが平面図(上面図)にて示されており、図2Bには、図1に示すデバイスが底面図(下面図)にて示されている。図1~図2Bに示されるように、デバイス10は、中空形状の軸部10Aと、軸部10Aの軸方向の一端部から半径方向外側に屈曲された露出部としての翼状の屈曲部(外翼)10B、10Cと、を備えている。すなわち、デバイス10は、軸部10Aと複数の屈曲部10B、10Cとを備えたピン形状のデバイス(以下、「ピンデバイス」と称する場合がある)とされている。

【0047】
本実施形態では、軸部10Aは、略円筒状に形成されており、内側に中心部を貫通する貫通孔12が設けられている。軸部10Aには、軸方向に沿って複数のスリット14が設けられている。スリット14は、軸部10Aの軸方向のほぼ全長に亘って形成されており、スリット14の長手方向の一端が軸部10Aの先端に開口している。スリット14は、軸部10Aの周方向にほぼ等間隔で配置されている。本実施形態では、スリット14は、軸部10Aの周方向における約90°の位置に4本設けられている。軸部10Aは、軸方向に沿って4本のスリット14を設けることで、軸部10Aの外径が拡大又は縮小する方向に変形可能となっている。

【0048】
軸部10Aの軸方向の一端部には、軸部10Aの周方向における約180°の位置に配置されると共に互いに反対方向に延びた一対の屈曲部10Bと、一対の屈曲部10Bの間に配置されると共に互いに反対方向に延びた他の一対の屈曲部10Cとが設けられている。すなわち、屈曲部10Bと屈曲部10Cは、全部で4つ設けられており、軸部10Aの周方向における約90°の位置に屈曲部10Bと屈曲部10Cが交互に配置されている。

【0049】
屈曲部10Bの幅(軸部10Aの周方向の幅)は、屈曲部10Cの幅(軸部10Aの周方向の幅)よりも大きく設定されている。屈曲部10Bにおける軸部10Aと隣接する位置には、スリット14と連続する開口部16が設けられている。開口部16は、平面視にて略円形状の部位に連続して矩形状の部位を備えた形状であり、矩形状の部位がスリット14の長手方向の一端につながっている。本実施形態では、開口部16の半径方向の長さは、屈曲部10Bの半径方向の長さの半分よりも長く設定されている。また、開口部16は、2つの屈曲部10Bにのみ設けられており、他の2つの屈曲部10Cには設けられていない。屈曲部10Bにおける軸部10Aと隣接する位置に、スリット14と連続する開口部16が設けられていることで、軸部10Aは、外径が拡大又は縮小する方向に変形しやすくなる。

【0050】
軸部10Aの軸方向の長さは、後述する骨20を構成する皮質骨22(図3B参照)の内部に差し込まれる長さ、又は皮質骨22を貫通してその奥側の海綿骨24(図3B参照)に達する位置まで差し込まれる長さに設定されている。屈曲部10Bと屈曲部10Cは、軸部10Aから半径方向外側に突出しており、軸部10Aが皮質骨22の内部に差し込まれた状態で、又は軸部10Aが皮質骨22を貫通して海綿骨24に達する位置まで差し込まれた状態で、屈曲部10Bと屈曲部10Cが皮質骨22の表面に露出する構成とされている(図3C参照)。

【0051】
例えば、デバイス10を歯科矯正のために使用する場合、軸部10Aの軸方向の長さは、約2.0mmに設定されている。本実施形態では、デバイス10の軸部10Aの外径は約2.4mmに設定され、軸部10A及び屈曲部10Bの厚み(肉厚)は約0.25mmに設定され、軸部10Aの内径は約1.9mmに設定されている。なお、デバイス10の上記の寸法は、本実施形態の寸法に限定されるものではなく、変更が可能である。例えば、デバイス10の軸部10Aが皮質骨22の内部のみに差し込まれる場合は、軸部10Aの軸方向の長さを、皮質骨22とほぼ同じ厚さの約1.5mm程度に設定してもよい。

【0052】
また、デバイス10の軸部10Aのスリット14の数は、本実施形態の本数に限定されるものではなく、変更が可能である。例えば、軸部10Aのスリット14の数は、1本でもよいし、2本以上でもよい。また、屈曲部10B及び屈曲部10Cの数や軸部10Aの周方向における屈曲部10B及び屈曲部10Cの位置も、本実施形態に限定されるものではなく、変更が可能である。

【0053】
本実施形態では、デバイス10(軸部10A及び屈曲部10B、10C)は、チタン又はチタン合金により形成されている。チタン合金としては、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-4V ELI、Ti-6Al-7Nb、Ti-3Al-2.5V、Ti-5Al-2.5Fe等などを用いることができる。

【0054】
なお、デバイス10を構成する金属は、チタン又はチタン合金に限定されず、他の金属材料を適宜選択してもよい。

【0055】
また、デバイス10の表面に、エッチング、サンドブラスト、粒子の焼付けなどの処理を施してもよい。

【0056】
また、骨との接合を促進する目的で、デバイス10(軸部10A及び屈曲部10B、10C)の表面は、生体機能材料でコーティングされていてもよい。デバイス10をコーティングする生体機能材料としては、ハイドロキシアパタイト(HAp)、コラーゲン(Col)、HApとColとを含むHAp/Col複合体が挙げられる。

【0057】
本実施形態のデバイス10は、軸部10Aの内面側に、生体機能材料(例えば、Col、HAp/Col複合体)からなるスポンジ状組成物を備えていてもよい。この場合、スポンジ状組成物に組織液や血液が浸み込み、骨形成能を有する細胞(骨原性細胞)が遊走されやすくなる。また、スポンジ状の組成物を足場として骨原性細胞が増殖・分化し骨形成が促進される。

【0058】
本実施形態のデバイス10は、例えば、管状の金属基材に塑性加工や切削加工を施して製造することができる。また、本実施形態のデバイス10は、完成品の形に鋳造して製造することができる。また、本実施形態のデバイス10は、3Dプリンターによる積層造形で完成品の形に製造することができる。

【0059】
次に、デバイス10の作用並びに効果であって、骨へのデバイス10の接合方法について説明する。

【0060】
図3Aに示されるように、骨20は、表面側の皮質骨22と、皮質骨22の奥側の海綿骨24とを備えている。皮質骨22の表面は、粘膜26で覆われている。図示を省略するが、デバイス10を骨20に固定する際には、粘膜26を切開する。そして、切開された粘膜26を持ち上げた状態で、図3Aに示されるように、ドリル42を用いて骨20を削ることにより、骨20に皮質骨22を貫通して海綿骨24に僅かに達する長さの穴部(下穴)28を穿設(形成)する(図3B参照)。その際、穴部28の内径は、デバイス10の軸部10Aの外径よりも若干小さくすることが望ましい。穴部28を海綿骨24に僅かに達する長さに形成することで、後述する骨形成能を有する細胞(骨原性細胞)30の遊走(動員)を促進させることができる(図3C参照)。なお、本実施形態の構成に限定されず、穴部28は、皮質骨22のみに設ける(海綿骨24に達しない)構成としてもよい。この場合でも、骨20の内部から骨形成能を有する細胞(骨原性細胞)30を遊走させることができる。

【0061】
その後、図3Cに示されるように、デバイス10の軸部10Aを骨20の穴部28に差し込む。その際、軸部10Aの軸方向に沿って4本のスリット14が設けられていることで、軸部10Aは、外径が縮小する方向に変形し、穴部28の内部に差し込まれる。そして、デバイス10の屈曲部10B及び屈曲部10C(図1参照)が皮質骨22の表面に接触するまで軸部10Aを穴部28に押し込む。これにより、屈曲部10B及び屈曲部10Cが皮質骨22の表面に露出した状態で、軸部10Aが骨20の穴部28に固定される。このデバイス10では、屈曲部10B及び屈曲部10Cが皮質骨22の表面に接触することにより、軸部10Aが骨20内に落ち込むことを抑制することができる。

【0062】
デバイス10は、軸部10Aの軸方向の長さの70%以上が皮質骨22に位置し、好ましくは80%以上が皮質骨22に位置し、更に好ましくは85%以上が皮質骨22に位置していることが望ましい。軸部10Aの軸方向の長さの70%以上が皮質骨22に位置していることで、骨20への軸部10Aの差し込み量が小さくなり、患者への侵襲をより小さくすることができる。また、デバイス10は、一例では、軸部10Aの軸方向の長さの100%が皮質骨22に位置し、別の一例では、軸部10Aの軸方向の長さの100%以下又は95%以下が皮質骨22に位置する。

【0063】
本実施形態では、軸部10Aの軸方向の長さが約2.0mmに設定されており、軸部10Aの軸方向の長さが従来の歯列矯正インプラント等に比べて短いため、軸部10Aが皮質骨22を貫通して海綿骨24に僅かに達する位置まで差し込まれた状態となっている(図3C参照)。このため、デバイス10を例えば歯科矯正に用いた場合に、約10mmの長さの軸部のうち約5mm以上が海綿骨に差し込まれる従来の歯列矯正インプラント等に比べて、歯根や歯胚を損傷させることをより効果的に抑制することができる。

【0064】
なお、本実施形態では、軸部10Aが皮質骨22を貫通して海綿骨24に僅かに達する位置まで差し込まれた状態となっているが、この構成に限定されるものではなく、軸部10Aが皮質骨22の内部のみに差し込まれる構成としてもよい。

【0065】
その後、粘膜26を切開前の位置に戻してデバイス10を被覆する。この状態で所定の時間が経過すると、図3Cに示されるように、デバイス10の中空形状の軸部10A、スリット14及び開口部16(図1参照)を通じて、骨20の内部から骨形成能を有する細胞(骨原性細胞)30が血液32中を矢印に示す軸部10Aの屈曲部10B、10C側に遊走する。そして、図3Dに示されるように、遊走した(動員された)細胞30により、軸部10Aの内面側及び屈曲部10B、10Cの表面に新生骨34が形成される。すなわち、デバイス10の屈曲部10B、10Cは、遊走した細胞30に新生骨34を形成させて骨20と固定するための足掛かりとなる。これにより、デバイス10を強固に骨20に接合することができる。その際、デバイス10の屈曲部10Bの開口部16(図1参照)の中にも新生骨34が形成されることで、デバイス10の回転を抑制することができる。

【0066】
このようなデバイス10では、骨20に皮質骨22を貫通して海綿骨24に僅かに達する長さの穴部28を形成し、穴部28にデバイス10の軸部10Aを差し込むため、患者への侵襲が小さく、デバイス10と骨20との強固な接合を実現することができる。

【0067】
また、デバイス10の軸部10Aには、軸方向に沿って複数のスリット14が設けられると共に、屈曲部10Bにスリット14と連続する開口部16が設けられているため、軸部10Aの外径が拡大又は縮小する方向に変形しやすくなる。このため、骨20に軸部10Aをより確実に固定させることができる。さらに、骨20の内部から骨形成能を有する細胞30が軸部10Aのスリット14や屈曲部10Bの開口部16を通じて遊走するため、遊走した細胞30により軸部10Aの内面側及び屈曲部10B、10Cの表面に速やかに新生骨34を形成することができる。

【0068】
なお、本実施形態では、骨20の穴部28の内径が、デバイス10の軸部10Aの外径よりも若干小さく形成されており、軸部10Aを外径が縮小する方向に変形させて穴部28に固定しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、骨20の穴部28の内径を、デバイス10の軸部10Aの外径よりも若干大きく形成した場合、軸部10Aを外径が拡大する方向に変形させて穴部28に固定するようにしてもよい。

【0069】
また、穴部は、皮質骨22のみにとどまる長さ(海綿骨24に達しない長さ)に形成し、その穴部にデバイス10の軸部10Aを差し込んでもよい。デバイス10の軸部10Aが皮質骨22の内部のみに差し込まれる構成とした場合は、患者への侵襲がさらに小さくなる。また、この構成でも、骨20の内部から骨形成能を有する細胞(骨原性細胞)30が遊走し、遊走した細胞30により軸部10Aの内面側及び屈曲部10B、10Cの表面に新生骨34を形成することができる。

【0070】
〔第2実施形態〕
次に、図4を用いて、本発明に係る医療用デバイスの第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。

【0071】
図4に示されるように、デバイス(医療用デバイス)50は、中空形状の軸部10Aを備えており、軸部10Aの外周面には、雄ねじ部52が設けられている。デバイス50のその他の構成は、第1実施形態のデバイス10と同じである。このデバイス50では、軸部10Aの長手方向に沿って4本のスリット14が設けられているが、例えば、円筒状の軸部10Aの外周面に雄ねじ部52を形成した後に、スリット14を形成することで、デバイス50を製作することができる。なお、デバイス50の作製方法は、この方法に限定されず、他の方法でもよい。

【0072】
このデバイス50では、骨20(図3B参照)に軸部10Aの雄ねじ部52の外径よりも小さい穴部28(図3B参照)を形成した後に、軸部10Aの雄ねじ部52を骨20の穴部28にねじ入れる。これにより、骨20の穴部28の周縁部にねじ溝が刻まれ、軸部10Aが骨20に固定される。この状態で、デバイス50の中空形状の軸部10A、スリット14及び開口部16を通じて、骨20の内部から骨形成能を有する細胞30が遊走し、遊走した細胞30により軸部10A及び屈曲部10B、10Cの表面に新生骨34が形成される(図3D参照)。

【0073】
このようなデバイス50では、患者への侵襲が小さく、デバイス50と骨20(図3D参照)との強固な初期固定を実現することができる。また、軸部10Aの雄ねじ部52を骨20の穴部28にねじ入れることで、軸部10Aが骨20に固定されるため、軸部10Aをより確実に骨20に固定することができる。

【0074】
〔第3実施形態〕
次に、図5を用いて、本発明に係る医療用デバイスの第3実施形態である歯科用デバイス構造について説明する。なお、第3実施形態において、第1及び第2実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。

【0075】
図5には、図1に示すデバイス10を歯科矯正治療用に応用した例である歯科用デバイス構造60が示されている。図5に示されるように、歯科用デバイス構造60では、歯槽粘膜62の内側の骨20(図3C参照、本実施形態では歯の間)にデバイス10の軸部10A(図1参照)が差し込まれている。デバイス10の軸部10Aは、骨20の皮質骨22の内部に差し込まれている、又は、骨20の皮質骨22を貫通して海綿骨24に達する位置まで差し込まれている(図3D等参照)。本実施形態では、デバイス10の本体は歯槽粘膜62で覆われ、一方の屈曲部10Bは歯槽粘膜62と付着歯肉63の境界部において外側に出るように延長されている。延長された屈曲部10Bの端部には開口部16とは独立した孔40が設けられており、この孔40に歯科矯正治療用に開発された種々のデバイスを設置することができる。本実施形態では、デバイス10と歯列矯正用アーチワイヤー64に連結したフック66とをスプリング68で連結することによって、デバイス10は歯を移動させるための固定源として用いられている。

【0076】
このような歯科用デバイス構造60では、デバイス10の軸部10Aの軸方向の長さが約2.0mmに設定されており、従来の歯列矯正インプラント等の軸方向の長さ(例えば、約10mm以上)に比べて短い。このため、歯科用デバイス構造60では、デバイス10を歯を移動させるための固定源として用いることで、軸部の約5mm以上が海綿骨に差し込まれる従来の歯列矯正インプラント等に比べて、歯根や歯胚を損傷させることをより効果的に抑制することができる。したがって、歯科用デバイス構造60は、患者への侵襲が小さい。また、歯科用デバイス構造60は、デバイス10の中空形状の軸部10Aを通じて、骨の内部から骨形成能を有する細胞が遊走し、該細胞により軸部10Aの内面側に新生骨が形成される。これにより、デバイス10と骨20との強固な接合を実現することができる。

【0077】
なお、本実施形態の歯科用デバイス構造60において、骨20にデバイス10の軸部10Aを差し込む位置は、図5に示される位置に限定されず、変更が可能である。

【0078】
また、第1実施形態、第2実施形態のデバイスは、歯科矯正の用途に限定されるものではなく、例えば、整形外科や耳鼻咽喉科の種々のデバイスもしくは顎顔面外科のエピテーゼ(Epithese)などの用途に使用することができる。エピテーゼとは、医療用具として身体の表面に取り付ける人工物のことをいう。例えば、第1実施形態、第2実施形態のデバイスを整形外科の用途に使用する場合、歯科矯正に比べて、骨を構成する皮質骨の厚さが厚くなるため、皮質骨の厚さに合わせてデバイスの軸部の軸方向の長さを長くすることが好ましい。
また、第3実施形態では、デバイスを歯科矯正治療用に応用した歯科用デバイス構造60が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明は、デバイスを、その他の歯科、頭頸部外科、整形外科の各領域で骨への固定に利用するデバイス構造に適用することができる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるものではない。
【実施例】
【0080】
<1>デバイス(ピンデバイス)の作製
金属基材として純チタン製の管を使用した。具体的には外径2.4mm、肉厚0.25mmの純チタン製の管を長さ10mmに切断し用いた。チタン管はダイヤモンドホイールソー、ラウンドバー及びペンチを用いて図1に示すデバイス(ピンデバイス)10に成型した。図1に示されるように、デバイス10は、中空形状の軸部10Aと、軸部10Aの軸方向の一端部から半径方向外側に屈曲された複数の屈曲部(外翼)10B、10Cと、を備えている。軸部10Aには、軸方向に沿って4つのスリット14が形成されている。一対の屈曲部10Bには、開口部16が設けられており、他の一対の屈曲部10Cには、開口部は設けられていない。このデバイス(ピンデバイス)を中性洗剤、純水、アセトン、エタノール、純水の順に、各30分間超音波洗浄し、オートクレーブで滅菌して動物実験に用いた。
【実施例】
【0081】
<2>動物実験
12週齢SD系雄ラットの脛骨膝関節部内側にラウンドバーにて径2.2mm~2.3mm、深さ3mmの下穴をあけ、デバイスを設置した。その際、開口部16のある一対の屈曲部10Bが脛骨の長軸方向になるようにした(図6)。デバイスは、皮質骨を貫通し先端が海綿骨に達する設置とした(mono-corticalな固定とした)。
【実施例】
【0082】
デバイスの設置から4週間後、デバイスを脛骨とともに回収し、組織観察および力学試験を行った。
【実施例】
【0083】
デバイス周囲の骨組織を観察する組織観察はマイクロCTにより行った。マイクロCTの撮影は島津製作所製SMX100CTを用いて行い、ラトック社製画像解析ソフトウェア3D-BONで画像の再構築を行った。
【実施例】
【0084】
デバイスの骨接合強度を確認する力学試験は、島津製作所製万能試験機AG-Xを用いて行った。デバイスを脛骨と一塊に採材した後、4℃の生理食塩水に保存して、1時間以内に試験を行った。脛骨の膝関節側にあるデバイスの屈曲部10Bの開口部16(図1参照)にワイヤーを通して脛骨の長軸方向と平行に引張力をかけた。その際、ワイヤーをかけたデバイスの屈曲部10B(図1参照)の周囲の骨はラウンドバーで除去した(図7) 。
【実施例】
【0085】
骨接合強度の比較対照として、図8に示す既存の歯科矯正用アンカースクリューを用いて同様の力学試験を行った。図8に示されるように、歯科矯正用アンカースクリュー100は、外周面にネジ山を備えた中実状の軸部100Aと、軸部100Aの軸方向の一端部に外径が軸部100Aの外径よりも大きく形成された頭部100Bと、を備えている。歯科矯正用アンカースクリューは径2.0mm、長さ8.0mmのものを用いた。歯科矯正用アンカースクリューの埋入部位は膝関節の位置を参考にデバイスと同じ位置になるよう工夫した。また、歯科矯正用アンカースクリューを埋入する際には脛骨の破損を防ぐため、径1.2mmのラウンドバーで皮質骨に下穴をあけ、脛骨を貫通するように埋入した(bi-corticalな固定とした)(図9参照)。歯科矯正用アンカースクリューの頭部に設けられた孔にワイヤーを通し、デバイスと同様に力学試験を行った(図9)。
【実施例】
【0086】
<3>結果
デバイス周囲の骨組織の画像(マイクロCTの再構築画像)を図10A、図10Bに示す。図10Aに示すように、デバイスの軸部の内面側に新生骨の形成が確認された(矢頭)。新生骨の形成はデバイスの軸部の内面側全体で認められたわけではなく、深さ方向において周囲の皮質骨と同程度の範囲にのみ認められた。図10Bでは、中央の画像は、左の画像の横線の部位の断面に相当する。中央の画像に示すように、屈曲部の開口部に新生骨の形成が確認された(中央の画像の矢印)。右の画像は、左の画像の斜め線の部位の断面に相当する。右の画像に示すように、屈曲部と屈曲部との間に新生骨の形成が確認された(右の画像の矢頭)。
【実施例】
【0087】
力学試験の結果を図11に示す。力学試験で求められた最大強度(図中の矢印位置)は、デバイスでは48.7N、歯科矯正用アンカースクリューでは37.8Nであった。本実験ではデバイスはmono-corticalな固定で、歯科矯正用アンカースクリューはbi-corticalな固定であるためアンカースクリューに有利な条件であるにもかかわらず、デバイスの方が10N程大きな接合強度を示した。
【実施例】
【0088】
以上の結果から、本発明に係るデバイスは、骨に設置して4週間でデバイスの軸部の内面側に新生骨が形成され、既存の歯科矯正用アンカースクリューよりも強い骨接合強度が得られることが示された。
【実施例】
【0089】
〔第4実施形態〕
次に、図12Aから図12Cを用いて、本発明に係る医療用デバイスの第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態において、第1及び第2実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略することがある。
【実施例】
【0090】
図12A及び図12Bに示されるように、デバイス70(医療用デバイス)は、中空形状の軸部10Aを備えており、軸部10Aの外周面には、円筒面状に形成されている。また、また軸部10Aには、2つのスリット14が形成されており、この2つのスリット14は、軸部10Aの周方向に沿って180°間隔をあけて配置されている。
【実施例】
【0091】
軸部10Aの軸方向の一端部には、当該軸部10Aの軸方向視で六角形状に形成された露出部としての頭部70Aが設けられている。この頭部70Aは、軸部10Aの開放端を閉止する閉止部70A1と、閉止部70A1から軸部10Aの半径方向外側に延在された外周側延在部70A2と、を備えている。また、閉止部70A1及び外周側延在部70A2における閉止部70A1側の部位における軸部10Aとは反対側の面は、軸部10Aの半径方向へ延在された平坦面S1とされている。また、平坦面S1には、機械加工等が施されることにより、平坦面S1の表面粗さが所定の粗さとなるように調節されている。詳述すると、平坦面S1への接着剤の付着性が良好となるように、当該平坦面S1の表面粗さが調節されている。なお、平坦面S1の表面粗さは、ヤスリ加工やショットブラスト加工等を施すことにより調節すればよい。
【実施例】
【0092】
また、外周側延在部70A2における軸部10Aとは反対側の面は、軸部10Aの半径方向外側に向かうにつれて軸部10A側へ傾斜された傾斜面S2とされている。
【実施例】
【0093】
また、頭部70Aにおける軸部10A側の端部には、当該軸部10A側が開放された凹溝部70A3が形成されている。この凹溝部70A3は、当該頭部70Aを貫通し軸部10Aに形成された2つのスリット14とつながっている。
【実施例】
【0094】
図12Cに示されるように、このデバイス70は、第1実施形態に係るデバイス10(図3B参照)と同様に、骨20に軸部10Aの外径よりも小さい穴部28を形成した後に、軸部10Aを骨20の穴部28に挿入する。この時、本実施形態では、頭部70Aの形状(六角形状)に対応する工具を当該頭部70Aに係合させることにより、軸部10Aのを骨20の穴部28に挿入することができる。これにより、軸部10Aが骨20に固定される。
【実施例】
【0095】
また、本実施形態のデバイス70が骨20に固定された状態では、 当該デバイス70の頭部70Aにおける平坦面S1が、骨20(皮質骨22(図3C参照))を覆う上皮である粘膜26から露出されるように当該頭部70Aの厚み等が設定されている。これにより、他の医療デバイス等を頭部70Aの平坦面S1に接着剤等を介して接合することができる。なお、他の医療用デバイスとは、一例として、第3実施形態で説明したスプリング68やフック66(図5参照)である。
【実施例】
【0096】
さらに、本実施形態では、デバイス70の中空形状の軸部10Aの内部から凹溝部70A3まで骨形成能を有する細胞が遊走し、凹溝部70A3の内部にも新生骨が形成される。これにより、デバイス70と骨20との接合をより強固にすることができる。これにより、短い軸部10Aでも、デバイス70を強固に骨20に接合することが可能となる。
【実施例】
【0097】
〔第5実施形態〕
次に、図13A~図13Cを用いて、本発明に係る医療用デバイスの第5実施形態について説明する。なお、第5実施形態において、第1~第3実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略することがある。
【実施例】
【0098】
図13A及び図13Bに示されるように、本実施形態のデバイス72(医療用デバイス)は、第4実施形態のデバイス70の軸部10Aに形成されたスリット14(図12A参照)に代えて、軸部10Aの軸方向と直交する方向へ貫通された円形の貫通孔72Aが当該軸部10Aに形成されていると共に、軸部10Aの径方向内側の空間と連通された凹溝部70A3が形成されていることに特徴がある。図13Cに示されるように、このデバイス72によれば、貫通孔72A及び凹溝部70A3を通じて骨形成能を有する細胞を遊走させることができる。これにより、軸部10Aの外側の骨20と軸部10Aの内部に形成された新生骨をつなぐ部分(新生骨)を貫通孔72Aの周縁部に形成することが可能となる。これにより、デバイス72と骨20との接合がより強固になると共にデバイス72の回転を抑制することができる。なお、本実施形態では、スリット14に代えて貫通孔72Aを形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スリット14及び貫通孔72Aの両方を軸部10Aに形成した構成としてもよい。
【実施例】
【0099】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図3A】
3
【図3B】
4
【図3C】
5
【図3D】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図6】
9
【図7】
10
【図8】
11
【図9】
12
【図10A】
13
【図10B】
14
【図11】
15
【図12A】
16
【図12B】
17
【図12C】
18
【図13A】
19
【図13B】
20
【図13C】
21