TOP > 国内特許検索 > 多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法 > 明細書

明細書 :多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6773268号 (P6773268)
登録日 令和2年10月5日(2020.10.5)
発行日 令和2年10月21日(2020.10.21)
発明の名称または考案の名称 多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法
国際特許分類 C12N   5/071       (2010.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N  15/12        (2006.01)
FI C12N 5/071 ZNA
C12N 5/10
C12N 15/12
請求項の数または発明の数 8
全頁数 40
出願番号 特願2017-505381 (P2017-505381)
出願日 平成28年3月9日(2016.3.9)
国際出願番号 PCT/JP2016/057420
国際公開番号 WO2016/143826
国際公開日 平成28年9月15日(2016.9.15)
優先権出願番号 2015046318
優先日 平成27年3月9日(2015.3.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成31年3月4日(2019.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】洪 実
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
審査官 【審査官】星 功介
参考文献・文献 特表2013-523183(JP,A)
特開2013-252081(JP,A)
山水康平他,転写因子を用いた多能性幹細胞から任意細胞への分化誘導法の開発,実験医学,2015年 1月,Vol.33, No.2(増刊),p.87-94
中武悠樹他,ヒトES細胞における転写因子誘導の網羅的解析,再生医療,2015年 2月,Vol.14, Suppl.,p.231, O-31-3
調査した分野 C12N 5/00-5/28,15/00-15/90

JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1のいずれか1以上の転写因子をヒト由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、該多能性幹細胞を肝芽細胞及び/又は肝細胞に分化する方法。
【請求項2】
前記転写因子がTGIFである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転写因子がTCF4である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記転写因子がSALL4である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記転写因子がMEIS1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1のいずれか1以上の転写因子を含むヒト由来の多能性幹細胞を肝芽細胞及び/又は肝細胞に分化可能な肝芽細胞及び/又は肝細胞分化誘導剤。
【請求項7】
前記転写因子は、mRNA、合成mRNA、核酸又はタンパク質である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記転写因子は、mRNA、合成mRNA、核酸又はタンパク質である請求項6に記載の分化誘導剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法及び該分化する方法に用いる分化誘導剤に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本特願2015-046318号優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
(転写因子のネットワーク)
転写因子(TF)のネットワークは、細胞識別情報を決定し、複数の転写因子を組み合わせて過剰発現させることによって、改変可能となる。特定の細胞分化をもたらす転写因子の組み合わせを選択し、証明することは、転写因子の可能な組み合わせが約2,000種と多数にわたるために困難となっている。
再生医療の目的の1つは胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞などの多能性幹細胞から所望の型の分化細胞を生成することである{非特許文献1:Nature 292, 154-156 (1981)、非特許文献2:Proc Natl Acad Sci U S A 78, 7634-7638 (1981)、非特許文献3:Science 282, 1145-1147 (1998)、非特許文献4:Cell 126, 663-676 (2006)}。
しかし、膨大かつ多種多様で複雑な転写因子の調節メカニズムは、転写因子の正しい組み合わせを探し出すことに大きな課題となっている。
【0003】
転写因子ネットワーク分析を容易にしようと、機能喪失、即ちマウスES細胞の転写因子のノックアウトまたは抑制{非特許文献5:Nat Genet 36, 543-544 (2004)、非特許文献6:Nature 442, 533-538 (2006)、非特許文献7:Cell 128, 9-13 (2007)、非特許文献8:Sci Rep 3, 1390 (2013)}に対してシステム生物学的アプローチが応用されており{非特許文献9:Annu Rev Cell Dev Biol 26, 721-744 (2010)}、その後に、表現型解析または広範囲なトランスクリプトーム解析を行うことになる。
しかし、転写因子の組み合わせを強制的に誘導することによって、細胞識別情報の改変がこの様にかなり達成できていることから、機能の獲得、即ち転写因子過剰発現のアプローチがより好ましい{非特許文献10:Cell 51, 987-1000 (1987)、非特許文献4:Cell 126, 663-676 (2006)、非特許文献11:Proc Natl Acad Sci U S A 105, 6057-6062 (2008)、非特許文献12:Nature 468, 521-526 (2010)、非特許文献13:Nature 463, 1035-1041 (2010)、非特許文献14:Nature 476, 224-227 (2011)、非特許文献15:Cell Stem Cell 9, 205-218 (2011)、非特許文献16:Nature 475, 390-393 (2011)、非特許文献17:Nature 475, 386-389 (2011)}。従って、NIA Mouse ES Cell Bank{非特許文献18:Cell Stem Cell 5, 420-433 (2009)、非特許文献19:Sci Rep 1, 167 (2011)}が設立され、ここでは、それぞれ137種の転写因子、即ちマウスゲノムにコードされた全転写因子(1500~2000種の転写因子)の7~10%{非特許文献20:Biochem Biophys Res Commun 322, 787-793 (2004)}がテトラサイクリン調節可能な方法で誘導され得る。各転写因子を強制的に誘導発現させてから48時間後に、これらのES細胞株のそれぞれにおいて広範囲な遺伝子発現プロファイル(即ちトランスクリプトーム)を測定した{非特許文献19:Sci Rep 1, 167 (2011)}。一方、様々な細胞種、組織、臓器で発現している全遺伝子の発現量のプロファイルが、パブリックドメインのデータベースとして利用可能である。その一つにGenomics Institute of the Novartis Research Foundation(GNF)による多様な細胞型の発現プロファイルがある{非特許文献21:Genome Biol 10, R130 (2009)、非特許文献22:Proc Natl Acad Sci U S A 99, 4465-4470 (2002)}。前述の実験で得られた転写因子誘導遺伝子発現プロファイルとGNFの遺伝子発現プロファイルとを比較することによって、遺伝子発現レベルの相関を示すマトリックス(遺伝子発現相関マトリックス)を作成した。
【0004】
(細胞の分化)
細胞の分化状態は、その細胞に発現する特定の転写因子のセットとそれらの発現レベルによって規定されていると考えられている。転写因子は、遺伝子発現を直接的に制御する因子であり、プロモーターやエンハンサーといった転写を制御する領域に結合し、DNAの遺伝情報をRNAに転写する過程を促進、あるいは抑制し、細胞特異的な遺伝子ネットワークを形成する重要な役割を果たす。
近年、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた任意細胞への分化誘導技術の開発が盛んに研究されているが、分化効率の低さや異なる細胞系譜の混在が問題となっている。そのため、細胞分化の決定や最終分化を統制できる転写因子の同定が極めて重要な課題である。
【0005】
(マウス転写因子のネットワーク)
本発明者らは、細胞の分化系譜を決定するマウス転写因子ネットワークの構造を解明するために、マウス転写因子遺伝子を自在に発現誘導できるNIAマウスES細胞バンク(137転写因子遺伝子分の細胞株)を樹立している{非特許文献18:Cell Stem Cell 5, 420-433 (2009)、非特許文献19:Sci Rep 1, 167 (2011)}。
これらの細胞株では、Tet-offシステムを用いて、培養液中からドキシサイクリンを除くことによって単一の転写因子を、速やかかつ強力に強制発現することができる。本発明者らは、これらの細胞株を用いて、遺伝子発現誘導48時間後の転写産物量の変化をマイクロアレイにより網羅的に解析した。得られた遺伝子発現プロファイルを、それぞれのマウス臓器・組織の遺伝子発現パターンと比較(遺伝子発現相関マトリックス)することにより、単一の転写因子の発現誘導により引き起こされる遺伝子発現パターンの変化が、どの細胞系譜を規定する傾向にあるのかを明瞭に観察することができた。これにより、転写因子の発現誘導によって起こる細胞分化の方向性をかなりの正確性で予測できることを確認している。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Nature 292, 154-156 (1981)
【非特許文献2】Proc Natl Acad Sci U S A 78, 7634-7638 (1981)
【非特許文献3】Science 282, 1145-1147 (1998)
【非特許文献4】Cell 126, 663-676 (2006)
【非特許文献5】Nat Genet 36, 543-544 (2004)
【非特許文献6】Nature 442, 533-538 (2006)
【非特許文献7】Cell 128, 9-13 (2007)
【非特許文献8】Sci Rep 3, 1390 (2013)
【非特許文献9】Annu Rev Cell Dev Biol 26, 721-744 (2010)
【非特許文献10】Cell 51, 987-1000 (1987)
【非特許文献11】Proc Natl Acad Sci U S A 105, 6057-6062 (2008)
【非特許文献12】Nature 468, 521-526 (2010)
【非特許文献13】Nature 463, 1035-1041 (2010)
【非特許文献14】Nature 476, 224-227 (2011)
【非特許文献15】Cell Stem Cell 9, 205-218 (2011)
【非特許文献16】Nature 475, 390-393 (2011)
【非特許文献17】Nature 475, 386-389 (2011)
【非特許文献18】Cell Stem Cell 5, 420-433 (2009)
【非特許文献19】Sci Rep 1, 167 (2011)
【非特許文献20】Biochem Biophys Res Commun 322, 787-793 (2004)
【非特許文献21】Genome Biol 10, R130 (2009)
【非特許文献22】Proc Natl Acad Sci U S A 99, 4465-4470 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが開発・作成したマウスES細胞を使用して作成した遺伝子発現相関マトリックスを使用すれば、転写因子の発現誘導によって起こる細胞分化の方向性をかなりの正確性で予測できることを確認している。しかし、ヒトとマウスの細胞の分化は、同じ哺乳類であるが、大きく異なる点があることが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ヒト細胞を使用したヒト遺伝子発現相関マトリックスを新たに作成し、さらに該マトリックスから選択した転写因子カクテルをヒト多能性幹細胞に導入することにより、所望の細胞型に分化することができることを確認し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下からなる。
1.以下の(1)~(5)のいずれか1以上の転写因子を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を神経系細胞に分化する方法。
(1)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される5の転写因子
(2)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される4の転写因子
(3)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される3の転写因子
(4)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される2の転写因子
(5)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される1の転写因子
2.前記神経系細胞は、運動神経を含む前項1に記載の分化する方法。
3.前記運動神経は、運動神経に存在する細胞である前項1又は2に記載の分化する方法。
4.以下の(1)~(5)のいずれか1以上の転写因子を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を神経系細胞に分化可能な神経系細胞分化誘導剤。
(1)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される5の転写因子
(2)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される4の転写因子
(3)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される3の転写因子
(4)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される2の転写因子
(5)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される1の転写因子
5.前記運動神経は、末梢性の運動神経である前項4に記載の分化誘導剤。
6.前記運動神経は、運動神経に存在する細胞である前項4又は5に記載の分化誘導剤。
7.前記転写因子は、mRNA、合成mRNA、核酸又はタンパク質である前項4~6のいずれか1に記載の分化誘導剤。
8.以下の(1)~(5)のいずれか1以上の転写因子を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を肝芽細胞及び/又は肝細胞に分化する方法。
(1)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される1の転写因子
(2)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される2の転写因子
(3)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される3の転写因子
(4)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される4の転写因子
(5)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される5の転写因子
9.以下の(1)~(5)のいずれか1以上の転写因子を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を肝芽細胞及び/又は肝細胞に分化可能な肝芽細胞及び/又は肝細胞分化誘導剤。
(1)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される1の転写因子
(2)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される2の転写因子
(3)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される3の転写因子
(4)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される4の転写因子
(5)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される5の転写因子
10.以下の(1)~(7)のいずれか1以上の転写因子を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を造血幹細胞及び/又は血液細胞に分化する方法。
(1)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される1の転写因子
(2)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される2の転写因子
(3)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される3の転写因子
(4)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される4の転写因子
(5)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される5の転写因子
(6)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される6の転写因子
(7)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される7の転写因子
11.以下の(1)~(7)のいずれか1以上の転写因子を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を造血幹細胞及び/又は血液細胞に分化可能な造血幹細胞及び/又は血液細胞分化誘導剤。
(1)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される1の転写因子
(2)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される2の転写因子
(3)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される3の転写因子
(4)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される4の転写因子
(5)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される5の転写因子
(6)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される6の転写因子
(7)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される7の転写因子
12.転写因子であるSOX9を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を軟骨細胞に分化する方法。
13.転写因子であるSOX9を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を軟骨細胞に分化可能な軟骨細胞分化誘導剤。
14.以下の(1)~(11)のいずれか1以上の転写因子を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を神経系細胞に分化する方法。
(1)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1の転写因子
(2)NEUROG2、並びに、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(3)NEUROG2、NEUROG3、並びに、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(4)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、並びに、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(5)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、並びに、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(6)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、並びに、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(7)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、並びに、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(8)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、並びに、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(9)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、並びに、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(10)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、並びに、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(11)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBの転写因子
15.さらに、TCF4、PDX1、SMAD7、SOX11、RNF2、MXI1及びYY1から選択される1以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入することを特徴とする前項14に記載の多能性幹細胞を神経系細胞に分化する方法。
16.前記神経系細胞は、神経系細胞に存在する細胞である前項14又は15に記載の分化する方法。
17.以下の(1)~(11)のいずれか1以上の転写因子を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を神経系細胞に分化可能な神経系細胞分化誘導剤。
(1)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1の転写因子
(2)NEUROG2、並びに、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(3)NEUROG2、NEUROG3、並びに、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(4)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、並びに、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(5)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、並びに、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(6)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、並びに、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(7)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、並びに、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(8)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、並びに、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(9)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、並びに、NEUROD2、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(10)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、並びに、PRDM1及びNFIBから選択される1以上の転写因子
(11)NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1及びNFIBの転写因子
18.さらに、TCF4、PDX1、SMAD7、SOX11、RNF2、MXI1及びYY1から選択される1以上の転写因子を含む前項17に記載の神経系細胞分化誘導剤。
19.前記神経系細胞は、神経系細胞に存在する細胞である前項17又は18に記載の神経系細胞分化誘導剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法は、多能性幹細胞を所望の細胞型に分化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】特定の転写因子遺伝子を発現するヒトES細胞株。
【図2】所望細胞型分化誘導方法。
【図3-1】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス。
【図3-2】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス。
【図3-3】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス。
【図3-4】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス。
【図4-1】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-2】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-3】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-4】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-5】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-6】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-7】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-8】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-9】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-10】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-11】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-12】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-13】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-14】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-15】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-16】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-17】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-18】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-19】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図4-20】実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(Z値記入)。
【図5】本実施例で使用した所望細胞型分化誘導方法。
【図6】A:多能性幹細胞を神経細胞へ分化する工程、B:多能性幹細胞が神経細胞へ分化できたことを示す結果。
【図7】ヒト胚性幹細胞が運動神経に分化できたことを示す結果。
【図8】ヒト人工多能性幹細胞が運動神経に分化できたことを示す結果。
【図9】多能性幹細胞が肝芽細胞・肝細胞に分化できたことを示す結果。
【図10】多能性幹細胞が造血幹細胞・血液細胞に分化できたことを示す結果。
【図11】多能性幹細胞が軟骨細胞に分化できたことを示す結果。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法)
本発明の多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法(以後、「本発明の方法」と称する場合がある)は、本実施例1で作成したヒトの遺伝子発現相関マトリックス(相関行列)に記載の組織・器官・細胞(横軸)のいずれか1以上の細胞型に分化させるために、所望の細胞型への分化に必要な転写因子又は転写因子カクテルを多能性幹細胞に導入することを特徴とする。以下に説明する。
なお、本明細書の「遺伝子」とは、二本鎖の核酸だけでなく、それを構成する正鎖(又はセンス鎖)又は相補鎖(又はアンチセンス鎖)などの各一本鎖、線状、環状を含み、さらに、特に言及しない限り、DNA、RNA 、mRNA、cDNA等を含む。

【0013】
本発明の方法では、特定の細胞型に関して3以上のz値を有する図3に示すマトリックスから少なくとも1種の正の転写因子を選択する工程;および、前記少なくとも1種の正の転写因子をコードする核酸、mRNA又はタンパク質、またはそれらすべてを多能性幹細胞に導入し形質転換細胞又は特定の細胞型を形成する工程を含む。
なお、形質転換細胞から特定の細胞型に分化させるために必要な工程は、さらに、別の転写因子を導入するだけでなく、特定の処理{例、特定の環境下(培養条件下)での培養等}を含んでも良い。
さらに、本発明の方法は、付加的又は代替的に、図3に示すマトリックスから少なくとも1種の負の転写因子(寒色)を選択する工程;および、前記少なくとも1種の負の転写因子をコードする核酸、mRNA又はタンパク質、またはその両方を多能性幹細胞に導入し形質転換細胞又は特定の細胞型を形成する工程を含んでも良い。さらに、本発明の方法は、転写因子の発現を減少させることも可能であり、転写因子遺伝子をノックアウトさせることもできる。転写因子の発現を減少させるか、あるいはノックアウトするために任意の望ましい方法が利用可能であり、例えば、RNAi干渉、標的リボザイム、相同的組み換え、部位特異的突然変異誘発、メチル化、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。

【0014】
(z値)
本発明の図4に記載したz値は、例えば、文献「Sci Rep 1, 167 (2011)」に記載の下記式(1)によって決定することができる。

【0015】
z=(xset-xall) × √nset/SDall (1)
式中、xsetは遺伝子の特定のサブセットの平均発現変化であり、xallは全遺伝子の平均発現変化であり、nsetは遺伝子セットのサイズであり、SDallは全遺伝子における発現変化の標準偏差である。xallは、最も上方制御された遺伝子の数、最も下方制御された遺伝子の数、または最も上方制御された遺伝子と下方制御された遺伝子との総和とすることも可能である。この総和は約100、約500、約1,000、約2,500、約4,000、約5,000、約6,000、約7,500、約10,000に等しいか、またはそれ以上もしくはそれ以下の総数とすることも可能である。nsetは10、25、40、50、60、75、100、250、500または1,000遺伝子以上になり得る。

【0016】
正および/または負の転写因子の望ましい数はマトリックスから選択可能であり、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、またはそれ以上の転写因子を選択して使用することも可能である。少なくとも1種の正の転写因子は、特定の細胞型に関して3以上のz値を有することが好ましい。なお、その他の正の転写因子は、3以上又は3未満のz値を有することが可能である。正の転写因子、またはそれらの群の平均では、z値は0以上、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50以上とすることができる。

【0017】
少なくとも1種の負の転写因子は、特定の細胞型に関して-3以下のz値を有することが好ましい。その他の負の転写因子は-3以下又は以上のz値を有することが可能である。負の転写因子、またはそれらの群の平均のz値は0未満、または-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-20、-25、-30、-40、-50以下とすることも可能である。

【0018】
(転写因子)
本発明の方法で使用する転写因子の形態は、特に限定されないが、例えば、核酸、合成mRNAs、タンパク質等を例示することができるか特に限定されない。
さらに、転写因子を多能性幹細胞に導入するためのベクターは、特に限定されないが、例えば、ウイルスベクター、例えばセンダイウイルスベクターとすることもできる。また、合成mRNAsやタンパク質を含むナノ粒子カプセル、リポソーム、exosome等も使用して転写因子を多能性幹細胞に導入することができる。
加えて、本明細書で使用する転写因子は、以下を例示することができる。
DLX3(distal-less homeobox 3)、NEUROG3(neurogenin 3)、NEUROG2(neurogenin 2)、NEUROG1(neurogenin 1)、ASCL1(achaete-scute family bHLH transcription factor 1)、NEUROD1(neurogenic differentiation 1)、YY1(YY1 transcription factor)、SOX11(SRY (sex determining region Y)-box 11)、GLIS2(GLIS family zinc finger 2)、PDX1(pancreatic and duodenal homeobox 1)、E2F6(E2F transcription factor 6)、SOX2(SRY (sex determining region Y)-box 2)、CDX2(caudal type homeobox 2)、DLX4(distal-less homeobox 4)、NANOG(Nanog homeobox)、MXI1(MAX interactor 1, dimerization protein)、RNF2(ring finger protein 2)、NEUROD2(neurogenic differentiation 2)、ASCL2(achaete-scute family bHLH transcription factor 2)、SREBF2(sterol regulatory element binding transcription factor 2)、SOX15(SRY (sex determining region Y)-box 15)、FOXA2(forkhead box A2)、FOXA1(forkhead box A1)、TBX3(T-box 3)、ARNT2(aryl-hydrocarbon receptor nuclear translocator 2)、PITX2(paired-like homeodomain 2)、PRDM1(PR domain containing 1, with ZNF domain)、TCF4(transcription factor 4)、NFIB(nuclear factor I/B)、ZNF281(zinc finger protein 281)、TBX2(T-box 2)、NR2F2(nuclear receptor subfamily 2, group F, member 2)、NFIC{nuclear factor I/C (CCAAT-binding transcription factor)}、NRF1(nuclear respiratory factor 1)、HOXA2(homeobox A2)、TBX5(T-box 5)、ZIC1(Zic family member 1)、HEY1(hes-related family bHLH transcription factor with YRPW motif 1)、CTCF{CCCTC-binding factor (zinc finger protein)}、HES1(hes family bHLH transcription factor 1)、TFAP2C{transcription factor AP-2 gamma (activating enhancer binding protein 2 gamma)}、MYOD1(myogenic differentiation 1)、SALL4(spalt-like transcription factor 4)、TP73(tumor protein p73)、TFE3(transcription factor binding to IGHM enhancer 3)、FOXP1(forkhead box P1)、FOS(FBJ murine osteosarcoma viral oncogene homolog)、IRF4(interferon regulatory factor 4)、GATA3(GATA binding protein 3)、JUNB(jun B proto-oncogene)、ESX1(ESX homeobox 1)、TGIF1(TGFB-induced factor homeobox 1)、MAB21L3(mab-21-like 3)、DLX6(distal-less homeobox 6)、IRF5(interferon regulatory factor 5)、HSF1(heat shock transcription factor 1)、JUN(jun proto-oncogene)、FOSL1(FOS-like antigen 1)、CTCFL{CCCTC-binding factor (zinc finger protein)-like}、FOSL2(FOS-like antigen 2)、FOXG1(forkhead box G1)、THAP11(THAP domain containing 11)、CUX1(cut-like homeobox 1)、ESRRB(estrogen-related receptor beta)、HNF4A(hepatocyte nuclear factor 4, alpha)、HNF1A(HNF1 homeobox A)NKX2-5(NK2 homeobox 5)、KLF9(Kruppel-like factor 9)、TFAP4{transcription factor AP-4 (activating enhancer binding protein 4)}、ERG(v-ets avian erythroblastosis virus E26 oncogene homolog)、KLF3(Kruppel-like factor 3)、MKRN1(makorin ring finger protein 1)、OLIG2(oligodendrocyte lineage transcription factor 2)、ELF5{E74-like factor 5 (ets domain transcription factor)}、HOXA9(homeobox A9)、NKX2-1(NK2 homeobox 1)、GRHL2{grainyhead-like 2 (Drosophila)}、USF2(upstream transcription factor 2, c-fos interacting)、KLF4{Kruppel-like factor 4 (gut)}、ELF1{E74-like factor 1 (ets domain transcription factor)}、CEBPB{CCAAT/enhancer binding protein (C/EBP), beta}、ETS1(v-ets avian erythroblastosis virus E26 oncogene homolog 1)、ETS2(v-ets avian erythroblastosis virus E26 oncogene homolog 2)、SPI1(Spi-1 proto-oncogene)、IRF1(interferon regulatory factor 1)、IRF2(interferon regulatory factor 2)、DMRT1(doublesex and mab-3 related transcription factor 1)、GLI1(GLI family zinc finger 1)、SPIC{Spi-C transcription factor (Spi-1/PU.1 related)}、RUNX3(runt-related transcription factor 3)、GATA2(GATA binding protein 2)、MEF2C(myocyte enhancer factor 2C)、FOXL2(forkhead box L2)、FBXO15(F-box protein 15)、HHEX(hematopoietically expressed homeobox)、SMAD7(SMAD family member 7)、MEIS2(Meis homeobox 2)、ARID3A{AT rich interactive domain 3A (BRIGHT-like)}、WRNIP1(Werner helicase interacting protein 1)、PPARG(peroxisome proliferator-activated receptor gamma)、PTF1A(pancreas specific transcription factor, 1a)、RFX2{regulatory factor X, 2 (influences HLA class II expression)}、EOMES(eomesodermin)、TFCP2L1(transcription factor CP2-like 1)、ZNF274(zinc finger protein 274)、EGR1(early growth response 1)、LHX2(LIM homeobox 2)、TFAP2A{transcription factor AP-2 alpha (activating enhancer binding protein 2 alpha)}、OTX1(orthodenticle homeobox 1)、OVOL2(ovo-like zinc finger 2)、E2F4(E2F transcription factor 4, p107/p130-binding)、RUVBL2(RuvB-like AAA ATPase 2)、SMARCA4(SWI/SNF related, matrix associated, actin dependent regulator of chromatin, subfamily a, member 4)、GTF2F1(general transcription factor IIF, polypeptide 1, 74kDa)、GBX2(gastrulation brain homeobox 2)、ID1(inhibitor of DNA binding 1, dominant negative helix-loop-helix protein)、PLXNB3(plexin B3)、MYC(v-myc avian myelocytomatosis viral oncogene homolog)、ATF2(activating transcription factor 2)、CDYL2(chromodomain protein, Y-like 2)、ZBTB45(zinc finger and BTB domain containing 45)、RSPO1(R-spondin 1)、STAT5A(signal transducer and activator of transcription 5A)、LMO1{LIM domain only 1 (rhombotin 1)}、SMARCB1(SWI/SNF related, matrix associated, actin dependent regulator of chromatin, subfamily b, member 1)、GADD45A(growth arrest and DNA-damage-inducible, alpha)、SETDB1(SET domain, bifurcated 1)、SRSF6(serine/arginine-rich splicing factor 6)、ZFAND3(zinc finger, AN1-type domain 3)、IRF3(interferon regulatory factor 3)、KAT8{K(lysine) acetyltransferase 8}、ZSCAN4(zinc finger and SCAN domain containing 4)、CRY1{cryptochrome 1 (photolyase-like)}、SIN3A(SIN3 transcription regulator family member A)、LMO2{LIM domain only 2 (rhombotin-like 1)}、NFYB(nuclear transcription factor Y, beta)、L3MBTL2{l(3)mbt-like 2 (Drosophila)}、TP53(tumor protein p53)、RHOXF2(Rhox homeobox family, member 2)、RFX5{regulatory factor X, 5 (influences HLA class II)、EGFLAM(EGF-like, fibronectin type III and laminin G domains)、NELFE(negative elongation factor complex member E)、XRCC4(X-ray repair complementing defective repair in Chinese hamster cells 4)、ZFP57(ZFP57 zinc finger protein)、SAP30(Sin3A-associated protein, 30kDa)、Emerald (A virant form of green fluorescence protein [GFP])、BCL6(B-cell CLL/lymphoma 6)、RXRA(retinoid X receptor, alpha)、STAT3{signal transducer and activator of transcription 3 (acute-phase response factor)}、ELL2(elongation factor, RNA polymerase II, 2)、TRPV2(transient receptor potential cation channel, subfamily V, member 2)、HOXC9(homeobox C9)、RARA(retinoic acid receptor, alpha)、ZNF263(zinc finger protein 263)、SMAD5(SMAD family member 5)、SUB1{SUB1 homolog (S. cerevisiae)}、SUZ12(SUZ12 polycomb repressive complex 2 subunit)、JAG1(jagged 1)、ATF3(activating transcription factor 3)、ATF1(activating transcription factor 1)、FLI1(Fli-1 proto-oncogene, ETS transcription factor)、ETV5(ets variant 5)、KDM5A{lysine (K)-specific demethylase 5A}、NELFA(negative elongation factor complex member A)、TCF23(transcription factor 23)、ZNF646(zinc finger protein 646)、SIX5(SIX homeobox 5)、MYBL2(v-myb avian myeloblastosis viral oncogene homolog-like 2)、PAX6(paired box 6)、SMAD2(SMAD family member 2)、SOX9{SRY (sex determining region Y)-box 9}、STRA13(stimulated by retinoic acid 13)、TBX6(T-box 6)、SMAD1(SMAD family member 1)、FOXH1(forkhead box H1)、OTX2(orthodenticle homeobox 2)、TGIF (TGFB induced factor homeobox 1)、MEIS1(Meis homeobox 1)。

【0019】
(多能性幹細胞)
本発明の方法で使用する多能性幹細胞は、哺乳類由来であり、特に、ヒト由来が好ましい。例えば、ヒトES細胞、ヒトiPS細胞、または、これらの任意の組み合わせであり、特に限定されず、組織や器官由来の組織幹細胞、皮膚の繊維芽細胞、さらには組織や器官に由来するあらゆる種類の細胞を含む。

【0020】
(転写因子遺伝子の導入ES細胞株)
本発明の方法の工程において、転写因子遺伝子を多能性幹細胞に導入する方法は、自体公知の方法を使用することができ、特に限定されないが、好ましくは、導入する遺伝子が積極的にヒトES細胞ゲノムに組み込まれるような仕組みとして、Woltjenらが開発したPiggyBacトランスポゼース認識配列(PB配列)に挟まれた発現カセット(参照文献:Nature 458:766-770, 2009.)を使用することができる。該発現カセットでは、薬剤選別カセットを導入することで、効率良く遺伝子組み換えヒトES細胞株を樹立できる系(参照:図1)である。

【0021】
(所望の細胞型へ誘導する方法)
本発明の方法の工程において、所望の細胞型へ誘導する方法は、自体公知の方法を使用することができ、特に限定されないが、好ましくは、宿主ゲノムへの遺伝子組込みのないフットプリントフリー遺伝子強制発現法として、Warren, Rossiらが開発した合成mRNAを用いた遺伝子発現法(参照文献:Cell Stem Cell 7:618-630, 2010.)を使用し、転写因子遺伝子合成mRNAを効率良くヒト多能性幹細胞に導入し分化誘導する方法(参照:図2)を使用する。

【0022】
(ヒトの遺伝子発現相関マトリックスの利用方法)
本発明者らは、すでにマウスの遺伝子発現相関マトリックスを作成して、転写因子の発現誘導によって起こる細胞分化の方向性をかなりの正確性で予測できることを確認している。しかし、ヒトとマウスの細胞の分化は、同じ哺乳類であるが、大きく異なる点があることが知られている。さらに、本発明者らは、今回、ヒト多能性幹細胞とヒト転写因子の組み合わせを用いて、新たにヒトの遺伝子発現相関マトリックスを作成した。本発明で初めて開示されるこのヒト遺伝子発現相関マトリックスと既報となっているマウス遺伝子発現相関マトリックスを比較することで、マウスとヒトでは、所望の細胞型の分化に必要な転写因子及び転写因子の組み合わせが予想より大きく異なること並びにヒト細胞はマウス細胞より分化速度が速いことを確認している。
加えて、本発明のヒトの遺伝子発現相関マトリックス(参照:図3、4)では、マウスの遺伝子発現相関マトリックスでは記載のない所望の器官・組織・細胞も含まれている。

【0023】
本発明者らが開発して・作成した遺伝子発現相関マトリックスでは、Z値が一定以上の値(カットオフ値、例えば、7以上)を示す転写因子及び/又はZ値が上位3個以上の転写因子を選択して、哺乳動物の多能性幹細胞に導入すれば、所望の細胞型に誘導することができる。例えば、以下を例示する。
所望の細胞型として骨格筋に分化するために、遺伝子発現相関マトリックスのZ値が11以上の転写因子の中から、Myod1、Mef2c及びEsx1を選択して、マウスES細胞にそれぞれ単独で導入したところ、骨格筋に分化したことを確認している。
所望の細胞型として肝細胞に分化するために、遺伝子発現相関マトリックスのZ値が10以上の転写因子の中から、Hnf4a、Foxa1、Gata2及びGata3を選択して、マウスES細胞にそれぞれ単独で導入したところ、肝細胞に分化できたことを確認している。
所望の細胞型として血球細胞に分化するために、遺伝子発現相関マトリックスのZ値が15以上の転写因子の中から、Sfpi1、Elf1、Elf5、Myc、Irf2及びEts1を選択して、マウスES細胞にそれぞれ単独で導入したところ、血球細胞に分化できたことを確認している。
所望の細胞型として神経細胞に分化するために、遺伝子発現相関マトリックスのZ値が12以上の転写因子の中から、Ascl1、Smad7、Nr2f1、Sox11、Dmrt1、Sox9、Foxg1及びSox2を選択して、マウスES細胞にそれぞれ単独で導入したところ、神経細胞に分化できたことを確認している。

【0024】
本実施例では、遺伝子発現相関マトリックスのZ値が8以上の転写因子であるNEUROD1、NEUROD2、NEUROG2及びNEUROG3をヒト胚性幹細胞に導入したところ、神経細胞に分化できたことを確認している。
本実施例では、NEUROD1(塩基配列としては配列番号1、タンパク質配列としては配列番号2)、NEUROD2(塩基配列としては配列番号3、タンパク質配列としては配列番号4)、NEUROG1(塩基配列としては配列番号5、タンパク質配列としては配列番号6)、NEUROG2(塩基配列としては配列番号7、タンパク質配列としては配列番号8)及びNEUROG3(塩基配列としては配列番号9、タンパク質配列としては配列番号10)をヒト胚性幹細胞に導入したところ、運動細胞に分化できたことを確認している。
本実施例では、TGIF(homeobox protein TGIF1 isoform a~eのいずれでもよいが、塩基配列としては配列番号11、タンパク質配列としては配列番号12が挙げられる)、TCF4(transcription factor 4 isoform a~nのいずれでもよいが、塩基配列としては配列番号13、タンパク質配列としては配列番号14が挙げられる)、PITX2(pituitary homeobox 2 isoform a~cのいずれでもよいが、塩基配列としては配列番号15、タンパク質配列としては配列番号16が挙げられる)、SALL4(sal-like protein 4 isoform 1~2のいずれでもよいが、塩基配列としては配列番号17、タンパク質配列としては配列番号18が挙げられる)及びMEIS1(塩基配列としては配列番号19、タンパク質配列としては配列番号20が挙げられる)のいずれか1以上をヒト胚性幹細胞に導入したところ、肝細胞(肝芽細胞)に分化できたことを確認している。なお、マウスES細胞での肝細胞への分化で使用した転写因子(Hnf4a、Foxa1)とはまったく異なる。
本実施例では、CDYL2(塩基配列としては配列番号21、タンパク質配列としては配列番号22が挙げられる)、ETS2(transcriptional regulator ERG isoform 1~7のいずれでもよいが、塩基配列としては配列番号23、タンパク質配列としては配列番号24が挙げられる)、SPI1(transcription factor PU.1 isoform 1~2のいずれでもよいが、塩基配列としては配列番号25、タンパク質配列としては配列番号26が挙げられる)、OVOL2(transcription factor Ovo-like 2 isoform 1~2のいずれでもよいが、塩基配列としては配列番号27、タンパク質配列としては配列番号28が挙げられる)、CDX2(塩基配列としては配列番号29、タンパク質配列としては配列番号30が挙げられる)、CEBPB(CCAAT/enhancer-binding protein beta isoform a~cのいずれでもよいが、塩基配列としては配列番号31、タンパク質配列としては配列番号32が挙げられる)のいずれか1以上をヒト胚性幹細胞に導入したところ、血液細胞(または、造血幹細胞)に分化できたことを確認している。
本実施例では、SOX9(塩基配列としては配列番号33、タンパク質配列としては配列番号34が挙げられる)をヒト胚性幹細胞に導入したところ、軟骨細胞に分化できたことを確認している。

【0025】
以上により、本発明のヒト遺伝子発現相関マトリックスにおいて、Z値が6以上(又は、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上)を示す転写因子及び/又はZ値の高い順に上位3個(又は、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の転写因子を選択して、単独、ないしは、二つ以上の転写因子を組み合わせて、ヒト多能性幹細胞に導入すれば、所望の細胞型に誘導することができる。以下に具体的な本発明の方法を示す。

【0026】
(神経細胞へ分化する方法)
本発明の神経細胞(特に、胎児脳、小脳脚、小脳、全脳、脳視床、視床下部、前頭前野皮質、後頭葉、脳扁桃体、尾状核、帯状皮質、延髄、淡青球、視床下核、頭頂葉、側頭葉、脳橋に存在している細胞)の分化方法は、以下の通りである。
胎児脳:図4-1(Fetal_braine)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
小脳脚:図4-1(Cerebellum_Peduncles)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
小脳:図4-1(Cerebellum)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
全脳:図4-2(Whole_Brain)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
脳視床:図4-2(Brain_Thalamus)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
視床下部:図4-2(Hypothalamus)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
前頭前野皮質:図4-2(Prefrontal_Cortex)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
後頭葉:図4-3(Occipital_Lobe)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
脳扁桃体図4-3(Brain_Amygdala)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
尾状核:図4-3(Cauda_tenucleus)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
帯状皮質:図4-3(Cingulate_Cortex)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
延髄:図4-4(Medulla_Oblongata)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
淡青球:図4-4(Globus_pallidus)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
視床下核:図4-4(Subthalamic_nucleus)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
頭頂葉:図4-4(Parietal_Lobe)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
側頭葉:図4-5(Temporal_Lobe)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
脳橋:図4-5(Pons)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0027】
{脳下垂体(特に脳下垂体に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の脳下垂体の分化方法は、以下の通りである。
図4-1(Pituitary)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0028】
{嗅覚神経(特に嗅覚神経に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の嗅覚神経(特に、嗅球)の分化方法は、以下の通りである。
嗅球:図4-5(Olfactory_Bulb)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0029】
{脊髄神経(特に脊髄神経に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の脊髄神経(特に、脊髄)の分化方法は、以下の通りである。
脊髄:図4-5(Spinal_cord)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0030】
{骨格筋(特に骨格筋に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の骨格筋(特に、腰筋、舌)の分化方法は、以下の通りである。
腰筋:図4-6(Skeletal_Muscle_Psoas)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
舌:図4-6(Tongue)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0031】
{皮膚(特に皮膚に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の皮膚の分化方法は、以下の通りである。
図4-6(Skin)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0032】
{神経節(特に神経節に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の神経節(特に、後根神経節、上頸神経節、房室結節、三さ神経節、毛様体神経節)の分化方法は、以下の通りである。
後根神経節:図4-7(Dorsal_root_ganglion)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
上頸神経節:図4-7(Superior_Cervical_Ganglion)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
房室結節:図4-7(Atrioventricular_node)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
三さ神経節:図4-8(Trigeminal_Ganglion)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
毛様体神経節:図4-8(Ciliary_ganglion)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0033】
{卵巣(特に卵巣に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の卵巣の分化方法は、以下の通りである。
図4-8(Ovary)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0034】
{副腎(特に副腎に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の副腎(特に、副腎皮質、副腎)分化方法は、以下の通りである。
副腎皮質:図4-9(Adrenal_Cortex)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
副腎:図4-9(Adrenal_gland)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0035】
{虫垂(特に虫垂に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の虫垂の分化方法は、以下の通りである。
図4-7(Appendix)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0036】
{腎臓(特に腎臓に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の腎臓の分化方法は、以下の通りである。
図4-10(Kidney)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0037】
{肝臓(特に肝臓に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の肝臓(特に、肝臓、胎児肝臓)の分化方法は、以下の通りである。
肝臓:図4-10(Liver)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
胎児肝臓:図4-12(Fetal_liver)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0038】
{唾液腺(特に唾液腺に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の唾液腺の分化方法は、以下の通りである。
図4-12(salivary_gland)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0039】
{膵島(特に膵島に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の膵島(特に、膵島細胞)へ分化する方法は、以下の通りである。
図4-12(Islet_Cell)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0040】
{膵臓(特に膵臓に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の膵臓へ分化する方法は、以下の通りである。
図4-13(Pancreas)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0041】
{前立腺(特に前立腺に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の前立腺へ分化する方法は、以下の通りである。
図4-11(Prostate)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0042】
{甲状腺(特に甲状腺に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の甲状腺(特に、甲状腺、胎児甲状腺)へ分化する方法は、以下の通りである。
甲状腺:図4-11(Thyroid)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
胎児甲状腺:図4-11(Fetal_Thyroid)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0043】
(脂肪細胞へ分化する方法)
本発明の脂肪細胞(特に、培養脂肪細胞)へ分化する方法は、以下の通りである。
培養脂肪細胞:図4-11(Cultured_adipocyte)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0044】
{子宮(特に子宮に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の子宮(特に、子宮、子宮体部)へ分化する方法は、以下の通りである。
子宮:図4-12(Uterus)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
子宮体部:図4-8(Uterus_Corpus)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0045】
(血液細胞へ分化する方法)
本発明の血液細胞(特に、全血、骨髄、単核球、リンパ節、扁桃、胸腺、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、Bリンパ芽球、T細胞(PB_CD8、PB_CD4)、初期赤血球)へ分化する方法は、以下の通りである。
全血:図4-14(Whole_blood(JJV))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
骨髄:図4-14(Myeloid(BM_CD33))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
単核球:図4-14(Monocytes(PB_CD14))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
リンパ節:図4-15(Lymphnode)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
扁桃:図4-15(Tonsil)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
胸腺:図4-15(Thymus)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
ナチュラルキラー細胞:図4-16(Natural_Killer_Cells (PB_CD56))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
樹状細胞:図4-16(Dendritic_Cells(PB_BDCA4))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
B細胞:図4-16(B_Cells(PB_CD19))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
Bリンパ芽球:図4-17(B_lymphoblasts(721))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
T細胞(PB_CD8):図4-16(T_Cells(PB_CD8))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
T細胞(PB_CD4):図4-17(T_Cells(PB_CD4))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
初期赤血球:図4-17(Early_Erythroid(BM_CD71))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
リンパ腫由来Raji細胞:図4-17(Lymphoma_Raji)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
慢性骨髄性白血病細胞:図4-18(Leukemia_chronic_myelogenous (k562))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
バーキットリンパ腫Daudi細胞株:図4-18(Lymphoma_burkitts_Daudi)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
前骨髄球性白血病細胞:図4-19(Leukemia_promyelocytic(hl60))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
リンパ芽球性白血病細胞:図4-19(Leukemia_lymphoblastic(molt4))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0046】
{骨髄(骨髄に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の骨髄へ分化する方法は、以下の通りである。
図4-15(Bone_marrow)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0047】
(造血幹細胞へ分化する方法)
本発明の造血幹細胞へ分化する方法は、以下の通りである。
図4-18(Bone_marrow(CD34))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0048】
(血管内皮細胞へ分化する方法)
本発明の血管内皮細胞へ分化する方法は、以下の通りである。
図4-18(Endothelial_cells(BM_CD105))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0049】
{精巣(特に精巣に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の精巣(特に、精巣、精巣ライディッヒ細胞、精巣生殖細胞、精巣細精管、精巣間質細胞)へ分化する方法は、以下の通りである。
精巣:図4-19(Testis)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
精巣ライディッヒ細胞:図4-19(Testis_Leydig_Cell)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
精巣生殖細胞:図4-20(Testis_Germ_Cell)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
精巣細精管:図4-20(Testis_Seminiferous_Tubule)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
精巣間質細胞:図4-20(Testis_Intersitial)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0050】
{心臓(特に心臓に存在する細胞)へ分化する方法}
心臓(特に、心臓、心筋細胞)へ分化する方法は、以下の通りである。
心臓:図4-6(Heart)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
心筋細胞:図4-13(Cardiac_Myocytes)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0051】
{胎盤(特に胎盤に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の胎盤へ分化する方法は、以下の通りである。
図4-9(Placenta)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0052】
{平滑筋(特に平滑筋に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の平滑筋へ分化する方法は、以下の通りである。
図4-13(Smooth_Muscle)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0053】
{肺(特に肺に存在する細胞)へ分化する方法}
本発明の肺(特に、肺、気管支上皮細胞、胎児肺、気管)へ分化する方法は、以下の通りである。
肺:図4-9(Lung)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
気管支上皮細胞:図4-14(Bronchial_epithelial_cells (HBEC))に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
胎児肺:図4-10(Fetal_lung)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。
気管:図4-10(Trachea)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0054】
(結腸直腸腺癌細胞へ分化する方法)
本発明の結腸直腸腺癌細胞へ分化する方法は、以下の通りである。
結腸直腸腺癌細胞:図4-13(Colorectal_Adenocarcinoma)に記載の転写因子から選択される単独、ないしは、2以上の転写因子をヒト多能性幹細胞に導入する。さらに、必要に応じて、これ以外の遺伝子発現相関マトリックスに記載の1以上の転写因子を同時に、ヒト多能性幹細胞に導入する。

【0055】
(多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法に用いる分化誘導剤)
本発明の多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法に用いる分化誘導剤(以後、「本発明の分化誘導剤」と称する場合がある)は、本発明の方法に必要な転写因子を少なくとも含む組成物である。
詳しくは、本発明の分化誘導剤は、核酸、合成mRNAs、タンパク質、及びそれらを担持するウイルスベクター、それらを担持するナノ粒子カプセル、それらを担持するリポソーム、又は、それらを担持するExososome等の形態の転写因子を含む。

【0056】
本発明の分化誘導剤に含まれるタンパク質での転写因子は、以下を例示することができる。
(1)転写因子、該転写因子の保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、又はアセチル化誘導体。
(2)転写因子と90%(又は、92%、94%、96%、98%、99%)以上の相同性を有し、かつ該転写因子と実質的同質の転写因子特有の作用を持つ転写因子。
(3)上記いずれか1に記載の転写因子において、100~10個、50~30個、40~20個、10~5個、5~1個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつ該転写因子と実質的同質の転写因子特有の作用を持つ転写因子。
本発明の分化誘導剤に含まれるmRNA、合成mRNA、核酸での転写因子は、以下を例示することができる。
(4)上記いずれか1以上の転写因子からなるポリペプチドをコードする遺伝子。
(5)上記いずれか1以上の転写因子のアミノ酸配列において、1~20(又は、1~15、1~10、1~7、1~5、1~3)個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつ該転写因子と実質的同質の転写因子特有の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
(6)上記いずれか1以上の転写因子のアミノ酸配列と90%(又は、92%、94%、96%、98%、99%)以上の相同性を有し、かつ該転写因子と実質的同質の転写因子特有の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
(7)上記いすれか1以上の転写因子の塩基配列と90%(又は、92%、94%、96%、98%、99%)以上の相同性を有し、かつ該転写因子と実質的同質の転写因子特有の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
変異を有する転写因子は、天然に存在するものであってよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。変異を導入する手段は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法又はポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する)などを単独で又は適宜組合せて使用できる。
例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(ウルマー(Ulmer, K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666-671)を利用することもできる。ペプチドの場合、変異の導入において、当該ペプチドの基本的な性質(物性、機能、生理活性又は免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸及び芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される。

【0057】
本発明の分化誘導剤を下記に列挙する。
○神経細胞分化誘導剤(特に、胎児脳分化誘導剤、小脳脚分化誘導剤、小脳分化誘導剤、全脳分化誘導剤、脳視床分化誘導剤、視床下部分化誘導剤、前頭前野皮質分化誘導剤、後頭葉分化誘導剤、脳扁桃体分化誘導剤、尾状核分化誘導剤、帯状皮質分化誘導剤、延髄分化誘導剤、淡青球分化誘導剤、視床下核分化誘導剤、頭頂葉分化誘導剤、側頭葉分化誘導剤、脳橋分化誘導剤)
○運動神経分化誘導剤
なお、運動神経とは、Motor Neuronを意味する。Motor Neuronには、中枢性と末梢性の2種類があり、中枢性は脳から脊髄への神経、末梢性は脊髄から筋肉の神経であり、特に、末梢性の運動神経である。
○脳下垂体分化誘導剤
○嗅覚神経分化誘導剤(特に、嗅球分化誘導剤)
○脊髄神経分化誘導剤(特に、脊髄分化誘導剤)
○骨格筋分化誘導剤(特に、腰筋分化誘導剤、舌分化誘導剤)、
○皮膚分化誘導剤
○神経節分化誘導剤(特に、後根神経節分化誘導剤、上頸神経節分化誘導剤、房室結節分化誘導剤、三さ神経節分化誘導剤、毛様体神経節分化誘導剤)
○卵巣分化誘導剤
○副腎分化誘導剤(特に、副腎皮質分化誘導剤、副腎分化誘導剤)
○虫垂分化誘導剤
○腎臓分化誘導剤
○肝臓分化誘導剤(特に、肝臓分化誘導剤、胎児肝臓分化誘導剤)
○唾液腺分化誘導剤
○膵島分化誘導剤(特に、膵島細胞分化誘導剤)、
○膵臓分化誘導剤
○前立腺分化誘導剤
○胸腺分化誘導剤(特に、甲状腺分化誘導剤、胎児甲状腺分化誘導剤)
○脂肪細胞分化誘導剤(特に、培養脂肪細胞分化誘導剤)
○子宮分化誘導剤(特に、子宮分化誘導剤、子宮体部分化誘導剤)
○血液細胞分化誘導剤(特に、全血分化誘導剤、骨髄分化誘導剤、単核球分化誘導剤、リンパ節分化誘導剤、扁桃分化誘導剤、胸腺分化誘導剤、ナチュラルキラー細胞分化誘導剤、樹状細胞分化誘導剤、B細胞分化誘導剤、Bリンパ芽球分化誘導剤、T細胞(PB_CD8、PB_CD4) 分化誘導剤、初期赤血球分化誘導剤)
○骨髄分化誘導剤
○血液細胞(または、造血幹細胞)分化誘導剤
○血管内皮細胞分化誘導剤
○精巣分化誘導剤(特に、精巣分化誘導剤、精巣ライディッヒ細胞分化誘導剤、精巣生殖細胞分化誘導剤、精巣細精管分化誘導剤、精巣間質細胞分化誘導剤)
○心臓分化誘導剤(特に、心臓分化誘導剤、心筋細胞分化誘導剤)、
○胎盤分化誘導剤
○平滑筋分化誘導剤、
○肺分化誘導剤(特に、肺分化誘導剤、気管支上皮細胞分化誘導剤、胎児肺分化誘導剤、気管分化誘導剤)
○軟骨分化誘導剤

【0058】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。すべての本実施例は、慶應義塾大医学部の倫理委員会によって承認されている。
【実施例1】
【0059】
(ヒトの遺伝子発現相関マトリックスの作成)
本実施例では、ヒトの遺伝子発現相関マトリックス(参照:図3、4)を作成した。詳細は、以下の通りである。
【実施例1】
【0060】
文献「Cell Stem Cell 5, 420-433 (2009)」及び「Sci Rep 1, 167 (2011)」の記載を参照として、RNAシークエンス法(RNA-seq)により、175の転写因子を1つずつ、48時間の強制発現下(DOX+)又は非強制発現下(DOX-)におけるヒトES細胞の遺伝子発現プロファイルを得た。さらに、コンピュータ解析により、50-bp長のシークエンスされたRNA断片をヒトゲノム配列とアライメントした。次に、該RNA断片をEnsembl及びRefSeqからのmRNA/ncRNAとマッチングを同定した(転写産物の遺伝子座標は、2014年8月5日にUCSC database、genome version hg19、hgdownload.soe.ucsc.edu/goldenPath/hg19よりダウンロードした)。
Ensemblデータを主に使用し、カバーできなかった転写産物はRefSeqにより補足した。ゲノムへのマッチ数は、ミスマッチの数が2以下であり、かつ、ゲノム中のヒット数が10以下の場合に採用した。断片は、ゲノム中のヒット数をnとして、1/nで加重した。断片は、方向がマッチし、かつ遺伝子の境界とイントロンの境界が5-bp以内の距離でマッチし、かつマッチした合計の長さが、読まれた長さの90%以下の場合には、転写因子として特定した。
各転写因子の強制発現により誘導された遺伝子発現変化は、DOX+サンプルlog変換発現値(各クローン1回複製)を、対応するDOX-サンプルのlog変換発現値を差し引きかつ全てのDOX-サンプルのlog変換発現値の中央値を加えることにより標準化した。
転写因子の過剰発現により誘導された遺伝子発現変化と組織特異的な遺伝子発現の関連は、GNFデータベース(参照:非特許文献22)とRNA-seqの結果との相関に基づいて評価した。
相関は、ヒトGNFデータベースver. 2における様々な組織での、転写因子導入に対する遺伝子発現の応答と中央値-減算log変換遺伝子発現値との間で分析した。相関分析は、両方のデータセットで有意な値を示した9,980遺伝子を用いて行った。GNFデータベースの有意性の基準は、偽陽性率(FDR) 0.05以下であること、かつ、変化が2倍以上であることとした。相関マトリックスは、階層クラスタリングを使用したExAtlas、lgsun.grc.nia.nih.gov/exatlasによるソートで算出した。
【実施例1】
【0061】
ヒトの遺伝子発現相関マトリックスの作成結果を図3及び図4に示す。図3では、「特異的転写因子の強制発現により誘導された遺伝子発現の変化(横軸)」と「GNFデータベースからの組織特異的遺伝子発現(縦軸)」の相関マトリックスを示した。このマトリックスの各セルは、「特異的転写因子の強制発現により誘導された遺伝子発現の変化(log-ratioで計測、横軸)」と「GNFデータベースからの組織特異的遺伝子発現(縦軸)」間の相関の有意性(z-value:Z値)を示す。図4では、図3に記載の細胞、組織及び器官ごとに、実際の数字で表わされたZ値のうち、上位30個を示す。
【実施例2】
【0062】
(所望の細胞型への分化方法)
本実施例1で得られたヒトの遺伝子発現相関マトリックス(図3、4)を使用すれば、多能性幹細胞を、図3に記載の細胞、組織及び器官に分化させることができる。分化方法は、自体公知の分子生物学的手法が利用できる。例えば、合成mRNA、ナノ粒子カプセル化合成mRNAs、又はセンダイウイルスベクターを使用した方法を利用することができる。これらの方法は、フットプリントフリーで、転写因子のmRNAやタンパク質を多能性幹細胞に導入することができる。詳細は、以下の通りである。
【実施例2】
【0063】
(転写因子の遺伝子をコードするmRNAの合成)
文献「Warren et al., Cell Stem Cell, 2010 Nov 5;7(5):618-30」に記載の方法を参照して、修飾mRNAを合成した。より詳しくは、mRNAsは、図3に記載の転写因子の遺伝子をコードするテンプレートDNAsを修飾したdNTPsの混合物{(dNTPs: 3-0-Me-m7G(5′ )ppp(5′ )G ARCA cap analog, 5-methylcytidine triphosphate、及び pseudouridine triphosphate)}を用いて、試験管内での転写により合成した。
哺乳類(特に、ヒト)の転写因子を発現するために、図3に記載のヒト転写因子を発現可能なセンダイベクターを使用した。特に、Fタンパク質欠損等のセンダイウイルスベクターの変異体は、感染性が無く、操作が容易であった(参照:Inoue et al., J Virol. 77: 23238-3246, 2003)。
【実施例2】
【0064】
(多能性幹細胞を所望の細胞型への分化方法)
図4に記載のZ値を参照して、単一又は2以上の転写因子のカクテルを調製した。転写因子の形態は、特に限定されず、合成mRNAs、転写因子(又は複数の転写因子)を組み込んだセンダイウイルスベクター、合成mRNAsを含むナノ粒子カプセルのいずれでも良い。なお、合成mRNAには、同じ遺伝上に、複数の転写因子の遺伝子配列を担持しても良い。
これらの単一又は2以上の転写因子のカクテルを細胞に導入する方法は、特に限定されず、リポフェクタミンによるトランスフェクション、ウイルス感染等を利用することができる。
さらに、導入する細胞(特に、哺乳類細胞、より好ましくはヒト細胞)のタイプは、特に限定されず、胚性幹細胞(ESCs)、人工多能性幹細胞(iPSCs)等の多能性幹細胞、組織や器官由来の組織幹細胞、皮膚の繊維芽細胞、さらには組織や器官に由来するあらゆる種類の細胞を含む。
【実施例2】
【0065】
本実施例の所望の細胞型への分化方法工程の概略を図5に示す。本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子(又は転写因子カクテル)を本実施例2に記載の方法により、細胞に導入することにより、以下で示す所望の細胞型に分化させることができる。
神経細胞(特に、胎児脳、小脳脚、小脳、全脳、脳視床、視床下部、前頭前野皮質、後頭葉、脳扁桃体、尾状核、帯状皮質、延髄、淡青球、視床下核、頭頂葉、側頭葉、脳橋)、脳下垂体、嗅覚神経(特に、嗅球)、脊髄神経(特に、脊髄)、骨格筋(特に、腰筋、舌)、皮膚、神経節(特に、後根神経節、上頸神経節、房室結節、三さ神経節、毛様体神経節)、卵巣、副腎(特に、副腎皮質、副腎)、虫垂、腎臓、肝臓(特に、肝臓、胎児肝臓)、唾液腺、膵島(特に、膵島細胞)、膵臓、前立腺、胸腺(特に、甲状腺、胎児甲状腺)、脂肪細胞(特に、培養脂肪細胞)、子宮(特に、子宮、子宮体部)、血液細胞(特に、全血、骨髄、単核球、リンパ節、扁桃、胸腺、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、Bリンパ芽球、T細胞(PB_CD8、PB_CD4)、初期赤血球)、骨髄、造血幹細胞、血管内皮細胞、精巣(特に、精巣、精巣ライディッヒ細胞、精巣生殖細胞、精巣細精管、精巣間質細胞)、心臓(特に、心臓、心筋細胞)、胎盤、平滑筋、及び肺(特に、肺、気管支上皮細胞、胎児肺、気管)、運動神経、肝芽細胞・肝細胞、軟骨細胞。
【実施例3】
【0066】
(神経細胞への分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、神経細胞に分化させることができることを確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例3】
【0067】
(神経細胞への分化方法)
図3及び図4に記載の転写因子及びそのZ値を参照して、Z値12以上の4つの転写因子のカクテル(NEUROD1、NEUROD2、NEUROG2、NEUROG3)の合成mRNAsを、RNAiMAX transfection reagentを使用して、ヒト胚性幹細胞に導入(トランスフェクション)した。該トランスフェクションは、第1日に2回、第2日に2回行われた(参照:図6A)。第3日に、培地を、標準神経細胞分化培地と交換して、培養7日目の細胞を取得した。
【実施例3】
【0068】
(神経細胞への分化確認)
細胞の分化状態は、成熟した神経細胞のマーカー(beta-3-tubulin, Bill)を用いて確認した(参照:図6B)。NEUROD1は、単独でBillで染色された細胞を増加させたが、神経細胞の形態は明瞭に観察されなかった。
一方、4つの転写因子のカクテルは、Billで染色された細胞の数だけでなく、成熟した神経細胞の形態をした細胞の数も増加させた。
以上により、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した神経細胞への分化に関与する転写因子カクテルを多能性幹細胞に導入することにより、神経細胞に分化できることを確認した。
【実施例4】
【0069】
(運動神経への分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞又はヒト人工多能性幹に添加(導入)することにより、運動神経に分化させることができることを確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例4】
【0070】
図3及び図4に記載の転写因子及びそのZ値を参照して、5つの転写因子のカクテル(NEUROD1、NEUROD2、NEUROG1、NEUROG2及びNEUROG3)の合成mRNAsを、RNAiMAX transfection reagentを使用して、ヒト胚性幹細胞に導入(トランスフェクション)した。該トランスフェクションは、第1日に2回行い、その後、6日間、標準神経細胞分化培地で培養して、培養7日目の細胞を取得した。
【実施例4】
【0071】
取得した細胞を神経細胞のマーカーで免疫染色することにより、神経細胞に分化していることを確認した(参照:図7)。さらに、電気生理学的解析により、これらの神経は choline-acetyl transferase (ChAT), ISL1, HB9のマーカー発現等から、運動神経であることを確認した(参照:図7)。
ヒト胚性幹細胞を神経細胞に分化させる培養条件はすでに知られている。しかしながら、従来の方法では、通常、神経細胞のマーカーを発現するまでに数週間~一ヶ月以上かかる。しかし、本実施例では、5種類の合成mRNAをヒト胚性幹細胞に添加することで、迅速かつ高効率で分化することを確認した。
さらに、トランスフェクションは、1回目は3種類の転写因子のトランスフェクション、2回目は2種類の転写因子のトランスフェクションの方法も可能であることを確認した。
【実施例4】
【0072】
ヒト人工多能性幹細胞では、ヒト胚性幹細胞と同じ条件により行った。ヒト人工多能性幹での結果では、ヒト胚性幹細胞の結果と同様に、迅速かつ高効率で分化することを確認した(参照:図8)。
本実施例では、初めて、多能性幹細胞を運動神経(運動神経細胞、特に、末梢性の運動神経細胞)までに分化できることを確認した。
【実施例5】
【0073】
(肝細胞への分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子を、本実施例1に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に強制発現させることにより、肝細胞・肝芽細胞に分化させることができることを確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例5】
【0074】
図3及び図4に記載の転写因子及びそのZ値を参照して、各転写因子(TGIF、TCF4、PITX2、SALL4又は MEIS1)を選んだ。これらの転写因子をドキシサイクリンで誘導のかかるTransgeneとして導入したヒト胚性幹細胞で、ドキシサイクリンを添加することで、これらの転写因子をヒト胚性幹細胞で強制発現させた。第1日に強制発現を24時間行い、その後、8日間、既知の肝細胞分化培地で培養して、培養9日目の細胞を取得した。
【実施例5】
【0075】
肝細胞のマーカーであるアルブミンの発現により、肝細胞・肝芽細胞に分化していることを確認した(参照:図9)。なお、図中の「TFIF-, TCF4-, PITX2-, SALL4-, MEIS1-」は、転写因子を入れていないコントロール群を意味する。
ヒト胚性幹細胞を肝細胞に分化させる培養条件はすでに知られている。たとえば、Hay DC, et al. (2008), Stem Cells 26:894-902が挙げられる。また、Kajiwara et al. (2012){Proc Natl Acad Sci U S A. 109:12538-43}らの報告では、様々な細胞増殖・分化因子を培地中に加えていくことで、17日目には、肝臓細胞のマーカーであるアルブミンの発現が始まることを報告している。しかし、本実施例では、同じ培養条件では、培養9日目にはアルブミンの発現を確認することができた。つまり、培養時間を約半分でに短縮することができた。また、文献に記載の方法では、肝細胞特異的な分化因子であるHGFなどの添加が10日目以降で必要であるが、本実施例では不要であった。
以上を考慮すると、本発明の肝細胞への分化は、従来の方法と比較して、迅速分化の顕著な効果及び肝細胞特異的な分化因子であるHGFの添加が不要である異質な効果を有する。
さらに、本実施例では、各5つの転写因子を1個導入することにより分化することができたが、5、4、3又は2の転写因子を同時又は別途にトランスフェクションする方法も可能である。
【実施例6】
【0076】
(造血幹細胞・血液細胞への分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子を、本実施例1に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞で強制発現させることにより、造血幹細胞・血液細胞に分化させることができることを確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例6】
【0077】
図3及び図4に記載の転写因子及びそのZ値を参照して、各転写因子(CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB又はSALL4)を選んだ。これらの転写因子をドキシサイクリンで誘導のかかるTransgeneとして導入したヒト胚性幹細胞で、ドキシサイクリンを添加することで、これらの転写因子をヒト胚性幹細胞に強制発現させた。培養3~5日に強制発現を48時間行い、既知の造血前駆細胞培地で培養して、培養5日目の細胞を取得した。
【実施例6】
【0078】
ヒトES細胞を造血系の前駆細胞に分化させる培養条件はすでに知られている。例えば、文献Wang et al. (2012) Cell Res. 22:194-207に開示されている。該文献では、様々な細胞増殖・分化因子を培地中に加えていくことで、17日目には、造血前駆細胞のマーカーであるCD43の発現が始まることを報告している。
しかしながら、本実施例では、既知の造血前駆細胞条件に、転写因子を強制発現(DOXで誘導)することで、造血前駆細胞への分化のスピード、高率が顕著に上昇することを見いだした。転写因子は単独でも組み合わせでも分化させることができた。より詳しくは、本実施例では、培養5日目には造血前駆細胞のマーカーであるCD43の発現を確認した(参照:図10)。なお、5日目では、転写因子を入れていないコントロール群(従来技術)では、CD43の発現がほとんど認めることができなかった。これにより、本発明の方法は、従来の方法と比較して、約4倍の分化誘導能(分化速度)を有する。
【実施例7】
【0079】
(軟骨細胞への分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子を、本実施例1に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に強制発現させることにより、軟骨細胞に分化させることができることを確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例7】
【0080】
図3及び図4に記載の転写因子及びそのZ値を参照して、SOX9を選んだ。SOX9をドキシサイクリンで誘導のかかるTransgeneとして導入したヒト胚性幹細胞で、ドキシサイクリンを添加することで、SOX9をヒト胚性幹細胞で強制発現させた。第1日に強制発現を24時間行い、その後、2日間、既知のヒト胚性幹細胞培養培地で培養して、培養3日目の細胞を取得した。
【実施例7】
【0081】
ヒト胚性幹細胞を軟骨細胞に分化させる培養条件はすでに知られている。例えば、文献Oldershaw et al. (2010). Nat Biotechnol. 28:1187-94に開示されている。該文献は、様々な細胞増殖・分化因子を段階的に培地中に加えていくという複雑な方法で、分化誘導後14日目にType II Collagen 陽性の軟骨細胞を作成している。
しかしながら、本実施例では、SOX9を強制発現させることで、その2日後(つまり、分化誘導後3日目)には、Type II Collagen 陽性の軟骨細胞を作成できることを確認した(参照:図11の「SOX9+for 1 day」)。本実施例では、該文献で使用している分化促進培地は使用せず、通常の胚性幹細胞培養培地を使用した。SOX9を加えなかったコントロール(参照:図11の「SOX9—」)では、Type II Collagen の発現を確認できなかった。
以上により、本発明の分化方法では、特別な培地を使うことなく、本発明の方法は、従来の方法と比較して、約4倍の分化誘導能(分化速度)を有する。
【実施例8】
【0082】
(神経細胞の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、神経細胞に分化させることができる。
本発明の神経細胞(特に、胎児脳、小脳脚、小脳、全脳、脳視床、視床下部、前頭前野皮質、後頭葉、脳扁桃体、尾状核、帯状皮質、延髄、淡青球、視床下核、頭頂葉、側頭葉、脳橋に存在している細胞)の分化方法は、以下の通りである。
胎児脳:NEUROG2、NEUROG1、NEUROG3、SOX11、MXI1、PDX1、NEUROD2、HOXA2、NEUROD1をヒト多能性幹細胞に導入する。
小脳脚:NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、ASCL1、HOXA2、PITX2、NEUROD2をヒト多能性幹細胞に導入する。
小脳:NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2、ASCL1、PITX2、NEUROD2、PRDM1、NFIBをヒト多能性幹細胞に導入する。
全脳:NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、NEUROD1、NRF1、HOXA2をヒト多能性幹細胞に導入する。
脳視床:NEUROG2、NEUROG3、、HOXA2、NEUROG1、ASCL1をヒト多能性幹細胞に導入する。
視床下部:NEUROG2、SOX2、NEUROG1、NEUROG3、HOXA2、SOX11をヒト多能性幹細胞に導入する。
前頭前野皮質:NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、SOX11、MXI1、SOX2、HOXA2、PDX1、ASCL1、NEUROD1、NEUROD2をヒト多能性幹細胞に導入する。
後頭葉:NEUROG2、NEUROG1、NEUROG3、HOXA2、SOX2、SOX11、PDX1、NEUROD1、ASCL1、MXI1をヒト多能性幹細胞に導入する。
脳扁桃体:NEUROG2、NEUROG1、NEUROG3、HOXA2、SOX2、PDX1、SOX11、MXI1、NEUROD1、ASCL1をヒト多能性幹細胞に導入する。
尾状核:NEUROG2、HOXA2、NEUROG1、NEUROG3、SOX2、NRF1、ASCL1、PDX1をヒト多能性幹細胞に導入する。
帯状皮質:NEUROG2、NEUROG3、NEUROG1、HOXA2、ASCL1、SOX11、PDX1、NRF1、NEUROD1、PRDM1をヒト多能性幹細胞に導入する。
延髄:NEUROG2、HOXA2、NEUROG1、NEUROG3、PDX1、SOX11、SOX2、NRF1、ASCL1、NR2F2、GLIS2をヒト多能性幹細胞に導入する。
淡青球:NEUROG2、HOXA2、NEUROG1、NEUROG3、NRF1、ASCL1、SOX11、PDX1をヒト多能性幹細胞に導入する。
視床下核:NEUROG2、HOXA2、NEUROG1、NEUROG3、NRF1、ASCL1、 SOX11、PDX1をヒト多能性幹細胞に導入する。
頭頂葉:NEUROG2、HOXA2、NEUROG3、NEUROG1、NRF1、SOX11、ASCL1、PDX1、SOX2をヒト多能性幹細胞に導入する。
側頭葉:NEUROG2、HOXA2、NRF1、NEUROG1、NEUROG3をヒト多能性幹細胞に導入する。
脳橋:HOXA2、NRF1、NEUROG2、NEUROG1、NEUROG3、CTCF、NR2F2、HES1、NFIC、PDX1、SOX11、ERGをヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例9】
【0083】
(脳下垂体の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、脳下垂体、特に脳下垂体に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の脳下垂体の分化方法は、以下の通りである。
SOX2、NANOG、ASCL1、DLX4、DLX3、CDX2をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例10】
【0084】
(嗅覚神経の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、嗅覚神経、特に嗅覚神経に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の嗅覚神経(特に、嗅球)の分化方法は、以下の通りである。
嗅球:NFIB、TBX2、TBX3、SOX2、NFIC、HES1、JUNB、FOS、FOXA2をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例11】
【0085】
(脊髄神経の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、脊髄神経、特に脊髄神経に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の脊髄神経(特に、脊髄)の分化方法は、以下の通りである。
脊髄: NFIB、SOX2、HOXA2、TBX3、E2F6をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例12】
【0086】
(骨格筋の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、骨格筋、特に骨格筋に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の骨格筋(特に、腰筋、舌)の分化方法は、以下の通りである。
腰筋:MYOD1、NRF1、SALL4、ZIC1、KLF9、ZNF281、CTCF、HES1、HOXA2、TBX5、TP73、ERG、MAB21L3、PRDM1、NFIC、CTCFL、FOXP1、HEY1、PITX2をヒト多能性幹細胞に導入する。
舌:MYOD1、TP73、HES1、JUNB、KLF4、SALL4、ZIC1、ESX1、ZNF281、TBX5、NRF1、HEY1、TFAP2C、FOS、FOXP1、TFE3、CTCF、FOSL1、GRHL2、TBX2、NFIB、PITX2、KLF9、IRF4をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例13】
【0087】
(皮膚の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、皮膚、特に皮膚に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の皮膚の分化方法は、以下の通りである。
HES1、CTCF、TP73、JUNB、HEY1、ZIC1、TBX5、NFIC、TFAP2C、ESX1、NRF1、HOXA2、ELF1、NR2F2、KLF9、GRHL2、IRF4、ERG、FOS、TBX2、SALL4、KLF4をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例14】
【0088】
(神経節の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、神経節、特に神経節に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の神経節(特に、後根神経節、上頸神経節、房室結節、三さ神経節、毛様体神経節)の分化方法は、以下の通りである。
後根神経節:HES1、HOXA2、CTCF、TBX2、NR2F2、NRF1、HEY1、NFIC、TBX3、JUNB、TBX5、E2F6、GLIS2、ZIC1、ERG、KLF9をヒト多能性幹細胞に導入する。
上頸神経節:HES1、CTCF、NRF1、HOXA2、HEY1、NFIC、NR2F2、TBX5、KLF9、ZIC1、ERG、FLI1、TBX2、JUNB、ELF1、GLIS2、TBX3、TFAP4、IRF4、PDX1をヒト多能性幹細胞に導入する。
房室結節:HES1、CTCF、NRF1、HEY1、HOXA2、NFIC、及びNR2F2、ZIC1、TBX5、KLF9、TBX2、ERG、JUNB、TFAP2C、ELF1、TP73、TFAP4、ESX1、E2F6、IRF4、FLI1、SALL4、TBX3、ARNT2をヒト多能性幹細胞に導入する。
三さ神経節:HES1、CTCF、HOXA2、HEY1、NRF1、NR2F2、NFIC、TBX5、JUNB、 ZIC1、TBX2、KLF9、ERG、ELF1、TBX3、E2F6、ESX1、ARNT2、GLIS2、TP73、IRF4をヒト多能性幹細胞に導入する。
毛様体神経節:HES1、CTCF、HEY1、NFIC、JUNB、HOXA2、NRF1、NR2F2、TBX2、ZIC1、TBX5、NFIB、ARNT2、ESX1、IRF4、ERG、TBX3、TFAP2C、ELF1、FOS、TP73、HSF1、KLF9、GLIS2、E2F6、PITX2、ZNF281、FOSL1、IRF1、FOXP1、GATA3をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例15】
【0089】
(卵巣の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、卵巣、特に卵巣に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の卵巣の分化方法は、以下の通りである。
HES1、HEY1、CTCF、NR2F2、NFIC、TBX2、TBX3、NRF1、ZIC1、HOXA2、TBX5、JUNB、ERGをヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例16】
【0090】
(副腎の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、副腎、特に副腎に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の副腎(特に、副腎皮質、副腎)分化方法は、以下の通りである。
副腎皮質:SALL4、HES1、HEY1、ZIC1、FOXP1、ESX1、PITX2、NRF1、TP73、JUNB、DLX6、TGIF1をヒト多能性幹細胞に導入する。
副腎:TGIF1、SALL4、TFE3、NFIB、ZIC1、DLX6をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例17】
【0091】
(虫垂の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、虫垂、特に虫垂に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の虫垂の分化方法は、以下の通りである。
HES1、CTCF、NR2F2、HEY1、HOXA2、NFIC、TBX2、NRF1、JUNB、TBX5、ZIC1、ERG、GLIS2、KLF9、ELF1、TBX3、IRF4、ARNT2、E2F6、IRF1、HSF1、SOX2、TFAP2C、TFAP4、FLI1、PDX1、RUNX3、MYOD1、HNF1A、NFIB、ESX1、TP73をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例18】
【0092】
(腎臓の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、腎臓、特に腎臓に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の腎臓の分化方法は、以下の通りである。
HNF4A、SALL4、TGIF1、HNF1A、ZIC1、NFIB、TFE3、TP73、TFAP2C、NRF1、SMAD7、MAB21L3をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例19】
【0093】
(肝臓の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、肝臓、特に肝臓に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の肝臓(特に、肝臓、胎児肝臓)の分化方法は、以下の通りである。
肝臓:SALL4、TGIF1、MAB21L3、ZIC1、EGFLAM、PITX2、HNF4A、NRF1、ZNF281、CTCFL、TP73、TFE3、DLX6、TCF4をヒト多能性幹細胞に導入する。
胎児肝臓:SIX5、HNF4A、SIN3A、ID1、HNF1Aをヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例20】
【0094】
(唾液腺の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、唾液腺、特に唾液腺に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の唾液腺の分化方法は、以下の通りである。
HES1、HEY1、ELF1、CTCF、FLI1をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例21】
【0095】
(膵島の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、膵島、特に膵島に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の膵島(特に、膵島細胞)へ分化する方法は、以下の通りである。
ASCL1、CEBPB、HES1、JUNB、TFE3をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例22】
【0096】
(膵臓の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、膵臓、特に膵臓に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の膵臓へ分化する方法は、以下の通りである。
HNF4A、ELF1、ZIC1、SALL4、JUNBをヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例23】
【0097】
(前立腺の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、前立腺、特に前立腺に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の前立腺へ分化する方法は、以下の通りである。
NFIB、TP73、FOS、IRF5、ESRRB、TFAP2C、GRHL2、HHEX、HOXA9、DLX6、ESX1、TGIF1、SALL4、CEBPB、JUNBをヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例24】
【0098】
(甲状腺の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、胸腺、特に胸腺に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の甲状腺胸腺(特に、甲状腺、胎児甲状腺)へ分化する方法は、以下の通りである。
甲状腺: MYOD1、NFIB、HHEX、ASCL2、PPARGをヒト多能性幹細胞に導入する。
胎児甲状腺:NFIB、MYOD1、HHEX、TGIF1、TFAP2Cをヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例25】
【0099】
(脂肪細胞の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、脂肪細胞に分化させることができる。
本発明の脂肪細胞(特に、培養脂肪細胞)へ分化する方法は、以下の通りである。
培養脂肪細胞:JUN、NFIB、FOSL1、FOS、JUNB、SREBF2をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例26】
【0100】
(子宮の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、子宮、特に子宮に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の子宮(特に、子宮、子宮体部)へ分化する方法は、以下の通りである。
子宮:NFIB、JUN、FOSL1、SOX2、RUNX3、NFIC、JUNB、IRF5、PTF1A、HSF1、TBX2、TBX3、FOS、MEF2C、ARNT2、GATA2をヒト多能性幹細胞に導入する。
子宮体部:HES1、JUNB、CTCF、HEY1、FOS、ZIC1、HOXA2、NFIC、FOSL1、NRF1、TBX5、ARNT2、NFIB、TFAP2C、ESX1、TBX2、TBX3、NR2F2、TP73、IRF4、THAP11、ELF1、JUN、ERG、HSF1、KLF9をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例27】
【0101】
(血液細胞の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、血液細胞に分化させることができる。
本発明の血液細胞(特に、全血、骨髄、単核球、リンパ節、扁桃、胸腺、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、Bリンパ芽球、T細胞(PB_CD8、PB_CD4)、初期赤血球)へ分化する方法は、以下の通りである。
全血:CEBPB、SPI1、ETS1、ELF1、IRF1、ETS2、IRF2、DMRT1、KLF4をヒト多能性幹細胞に導入する。
骨髄:SALL4、CEBPB、ESX1、ELF1、ZIC1、ZNF281、ETS1、KLF4、FOXP1、NRF1、SPI1をヒト多能性幹細胞に導入する。骨髄:CEBPB、SPI1、ETS1、ELF1、CDYL2、IRF1、GADD45Aをヒト多能性幹細胞に導入する。
単核球:SPI1、CEBPB、ETS1、ELF1、IRF1、CDYL2、GADD45Aをヒト多能性幹細胞に導入する。
リンパ節:IRF1、IRF2、ELF1、ETS1、SPI1、ETS2、IRF4、RUNX3をヒト多能性幹細胞に導入する。
扁桃:ELF1、SPI1、IRF1、IRF2、ESX1、IRF4、KLF4、SALL4、ETS1をヒト多能性幹細胞に導入する。
胸腺:SALL4、ESX1、ETS1、SPI1、ETS2をヒト多能性幹細胞に導入する。
ナチュラルキラー細胞:ETS1、CDYL2、GADD45A、IRF1、IRF2をヒト多能性幹細胞に導入する。
樹状細胞:CDYL2、SPI1、GADD45A、ETS1、MYCをヒト多能性幹細胞に導入する。
B細胞:CDYL2、MYC、ATF2、IRF2、GBX2をヒト多能性幹細胞に導入する。
Bリンパ芽球:MYC、CDYL2、GADD45A、GBX2、ATF2、RUVBL2、 PLXNB3、L3MBTL2、E2F4、SMARCA4、ID1、ZSCAN4をヒト多能性幹細胞に導入する。
T細胞(PB_CD8):CDYL2、MYC、GBX2、ETS1、IRF2をヒト多能性幹細胞に導入する。
T細胞(PB_CD4):CDYL2、MYC、GBX2、ETS1、ATF2をヒト多能性幹細胞に導入する。
初期赤血球:CDYL2、E2F4、GADD45A、ZSCAN4をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例28】
【0102】
(骨髄の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、骨髄、特に骨髄に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の骨髄へ分化する方法は、以下の通りである。
SALL4、CEBPB、ESX1、ELF1、ZIC1、ZNF281、ETS1、KLF4、FOXP1、NRF1、SPI1をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例29】
【0103】
(造血幹細胞の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、造血幹細胞に分化させることができる。
本発明の造血幹細胞へ分化する方法は、以下の通りである。
MYC、GBX2、CDYL2、GADD45A、ATF2、ID1、ZSCAN4、SMARCA4、E2F4、RUVBL2をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例30】
【0104】
(血管内皮細胞の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、血管内皮細胞に分化させることができる。
本発明の血管内皮細胞へ分化する方法は、以下の通りである。
MYC、RUVBL2、GBX2、CDYL2、GADD45A、ATF2、ID1、E2F4をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例31】
【0105】
(精巣の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、精巣、特に精巣に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の精巣(特に、精巣、精巣ライディッヒ細胞、精巣生殖細胞、精巣細精管、精巣間質細胞)へ分化する方法は、以下の通りである。
精巣:SALL4、MYBL2、RFX2、TGIF1、CTCFLをヒト多能性幹細胞に導入する。
精巣ライディッヒ細胞:MYBL2、NR2F2、KLF9、GLIS2、SIX5をヒト多能性幹細胞に導入する。
精巣生殖細胞:MYBL2、L3MBTL2、E2F4、KDM5A、DMRT1をヒト多能性幹細胞に導入する。
精巣細精管:MYBL2、E2F4、KLF9、YY1、NEUROD1をヒト多能性幹細胞に導入する。
精巣間質細胞:MYBL2、E2F4、NR2F2、KLF9、GTF2F1をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例32】
【0106】
(心臓の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、心臓、特に心臓に存在する細胞に分化させることができる。
心臓(特に、心臓、心筋細胞)へ分化する方法は、以下の通りである。
心臓:SALL4、TGIF1、PITX2、ZNF281、NRF1、ZIC1、TP73、FOXP1、CTCFL、NFIB、TFE3、EGFLAM、DLX6、TFAP2C、MYOD1、ESX1、PRDM1、MAB21L3、FOS、TCF4、JUNB、SMAD7、KLF4、ARID3A、TBX5、HOXA9、HES1、FOXG1、FOSL2、USF2、ERG、ARNT2をヒト多能性幹細胞に導入する。
心筋細胞:FOSL1、JUN、FOS、FOSL2、JUNB、HSF1、CUX1、IRF5、ESX1、ETS2をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例33】
【0107】
(胎盤の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、胎盤、特に胎盤に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の胎盤へ分化する方法は、以下の通りである。
TFAP2C、ESX1、FOS、JUNB、TP73、IRF5、GATA3、TFE3、CEBPB、FOSL1、DLX6、JUN、FOXP1、ESRRB、NFIB、ETS2、HES1、ELF1、ZIC1、SALL4、TFAP2A、HSF1、HEY1、HHEX、TGIF1、THAP11、ETS1、ARNT2、IRF4、CUX1、GRHL2、HOXA9、TBX2、TBX5、ELF5をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例34】
【0108】
(平滑筋の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、平滑筋、特に平滑筋に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の平滑筋へ分化する方法は、以下の通りである。
JUN、FOSL1、FOS、GADD45A、FOSL2、HSF1、JUNB、CUX1、IRF5、GATA3、ETS2をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例35】
【0109】
(肺の分化)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、肺、特に肺に存在する細胞に分化させることができる。
本発明の肺(特に、肺、気管支上皮細胞、胎児肺、気管)へ分化する方法は、以下の通りである。
肺:SALL4、TGIF1、FOS、TP73、NFIB、TFAP2C、ESX1、DLX6、PITX2、TFE3、JUNB、FOXP1ZNF281、CEBPB、ZIC1、IRF5、CTCFL、HOXA9、FOSL1、TCF4、GATA3、ETS2、EGFLAM、ARID3A、KLF4、FOSL2、HHEX、ETS1、ELF1、ESRRB、IRF4、NRF1、HES1、GRHL2、FOXG1、ELF5、PRDM1、RFX2、JUN、HNF4A、TFAP2A、ERG、ARNT2、HEY1をヒト多能性幹細胞に導入する。
気管支上皮細胞:GADD45A、JUN、FOSL1、MYC、CUX1、IRF5、ESRRB、FOS、L3MBTL2、TRPV2、FOSL2をヒト多能性幹細胞に導入する。
胎児肺:CEBPB、GATA3、ESX1、NFIB、JUNB、IRF5、JUN、ETS2、HSF1、ESRRB、FOSL1、TGIF1、TBX2、TFAP2C、FOS、HNF4Aをヒト多能性幹細胞に導入する。
気管:JUNB、HES1、TP73、TFAP2C、ESX1、CEBPB、GATA3、ELF1、FOXA2、FOS、IRF5、HEY1、NFIB、IRF4、ZIC1、FOXA1、NFIC、TBX5、CTCF、ESRRB、E2F6、FOSL1、HSF1、IRF1をヒト多能性幹細胞に導入する。
【実施例35】
【0110】
(総論)
本実施例では、本実施例1のヒトの遺伝子発現相関マトリックスから選択した転写因子カクテルを、本実施例2に記載の方法により、ヒト胚性幹細胞に導入することにより、所望の細胞型へ分化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明では、新規な多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法を提供できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3-1】
2
【図3-2】
3
【図3-3】
4
【図3-4】
5
【図4-1】
6
【図4-2】
7
【図4-3】
8
【図4-4】
9
【図4-5】
10
【図4-6】
11
【図4-7】
12
【図4-8】
13
【図4-9】
14
【図4-10】
15
【図4-11】
16
【図4-12】
17
【図4-13】
18
【図4-14】
19
【図4-15】
20
【図4-16】
21
【図4-17】
22
【図4-18】
23
【図4-19】
24
【図4-20】
25
【図5】
26
【図6】
27
【図7】
28
【図8】
29
【図9】
30
【図10】
31
【図11】
32