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明細書 :コラーゲン融合タンパク質、及びそれを用いた薬剤のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年1月11日(2018.1.11)
発明の名称または考案の名称 コラーゲン融合タンパク質、及びそれを用いた薬剤のスクリーニング方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C07K  14/78        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
C12N 5/10 ZNA
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C07K 19/00
C12Q 1/02
C07K 14/78
C12P 21/02 C
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 26
出願番号 特願2017-508372 (P2017-508372)
国際出願番号 PCT/JP2016/059066
国際公開番号 WO2016/152882
国際出願日 平成28年3月22日(2016.3.22)
国際公開日 平成28年9月29日(2016.9.29)
優先権出願番号 2015057688
優先日 平成27年3月20日(2015.3.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】田中 利明
【氏名】生駒 俊之
【氏名】田中 順三
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100139594、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 健次郎
【識別番号】100090251、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 憲一
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4B064
4B065
4H045
Fターム 4B063QA01
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4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
要約 本発明の目的は、動物細胞からのプロコラーゲンの分泌を検出できるシステムの構築である。
前記課題は、Gly-Xaa-Yaa(式中、Glyはグリシンであり、そしてXaa及びYaaは任意のアミノ酸である)の繰り返しアミノ酸配列を有するプレプロコラーゲンタンパク質、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体、又はそれらの断片である、コラーゲン関連タンパク質及び蛍光タンパク質又は発光タンパク質との融合タンパク質によって解決することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
Gly-Xaa-Yaa(式中、Glyはグリシンであり、そしてXaa及びYaaは任意のアミノ酸である)の繰り返しアミノ酸配列を有するプレプロコラーゲンタンパク質、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体、又はそれらの断片である、コラーゲン関連タンパク質と、蛍光タンパク質又は発光タンパク質との融合タンパク質。
【請求項2】
前記蛍光タンパク質又は発光タンパク質が、プロコラーゲンタンパク質のN末端のN-プロプロテイン、コラーゲンタンパク質、又はC末端のC-プロプロテインに結合又は挿入されている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記蛍光タンパク質又は発光タンパク質がコラーゲンタンパク質のC末端から30アミノ酸よりN末端側に挿入されており、及び/又は蛍光タンパク質又は発光タンパク質がC-プロプロテインのN末端から30アミノ酸よりC末側に挿入されている、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現したコラーゲン関連疾患細胞と、試験物質とを接触させる工程、及び
融合タンパク質の動態を解析する工程、
を含むコラーゲン関連疾患の治療又は予防物質のスクリーニング方法。
【請求項5】
Gly-Xaa-Yaa(式中、Glyはグリシンであり、そしてXaa及びYaaは任意のアミノ酸である)の繰り返しアミノ酸配列を有するプレプロコラーゲンタンパク質、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体、又はそれらの断片である、コラーゲン関連タンパク質、又は前記コラーゲン関連タンパク質と蛍光タンパク質又は発光タンパク質との融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターを含む、ベクター含有宿主細胞。
【請求項8】
前記宿主細胞が、mcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌である、請求項7に記載のベクター含有宿主細胞。
【請求項9】
前記大腸菌が、DH10B、TOP10F’、MC1061、XL1-Blue MRF’、AG1、BL21(DE3)、DB3.1、DH1、DH5α、DH5α Turbo、DH12S、DM1、E.Cloni(r)5alpha、E.Cloni(r)10G、E.Cloni(r)10GF’、ER2267、HB101、HMS174(DE3)、High-Control(tm) BL21(DE3)、High-Control(tm)10G、IJ1126、JM108、JM109、Mach1、MC1061、MFDpir、OmniMAX2、OverExpress(tm)C41(DE3)、OverExpress(tm)C43(DE3)、Rosetta(DE3)、SOLR、SS320、STBL2、STBL3、STBL4、SURE、SURE2、TG1、TOP10、XL2-Blue、XL2-BlueMRF’、及びXL10-Goldからなる群から選択される、請求項8に記載のベクター含有宿主細胞。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のベクター含有宿主細胞から得られるベクター。
【請求項11】
請求項6に記載のベクターをmcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌に導入することを特徴とする、ベクター含有大腸菌の製造方法。
【請求項12】
請求項6に記載のベクターをmcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌に導入する工程、及び前記ベクターを回収する工程を含むことを特徴とする、ベクターの製造方法。
【請求項13】
(1)請求項6に記載のベクターを、動物細胞に導入する工程、及び
(2)前記ベクターが導入された動物細胞からコラーゲンを分泌させる工程、
を含む、コラーゲンの製造方法。
【請求項14】
(1)請求項6に記載のベクターを、動物細胞に導入する工程、及び
(2)前記ベクターが導入された動物細胞において蛍光又は発光を検出する工程、
を含む、コラーゲンの蛍光又は発光検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン融合タンパク質及びそれを用いた薬剤のスクリーニング方法、並びにコラーゲン融合タンパク質をコードする核酸を含むベクター、ベクターを含む大腸菌、及びそれらの製造方法に関する。本発明によれば、コラーゲン関連疾患の治療用又は予防用薬剤の候補物質をスクリーニングすることができる。また、本発明によれば、コラーゲン融合タンパク質、及びそれをコードする正常な核酸を有するベクターを得ることができる。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、生体内のタンパク質の30%を占め、骨格支持及び細胞接着などの機能を有する重要なタンパク質であり、例えば、ヒトの身体の骨・軟骨、靭帯・腱、角膜実質、皮膚、肝臓、筋肉などの組織の主要構成成分である。コラーゲンには、コラーゲン線維を形成する線維性コラーゲンと、線維を形成しない非線維性コラーゲンが存在する。線維性コラーゲンは、コラーゲンのポリペプチド鎖が3本集まって3重らせん構造(トロポコラーゲン)を形成している。この3重らせん構造のトポコラーゲンは、自己組織化することによって、分子長の1/4ずつずれて整列し、コラーゲン原線維(コラーゲン細線維)を形成する。更に、このコラーゲン原線維が、多数集合して、コラーゲン線維(コラーゲン線維束)を形成している。更に、角膜実質や皮質骨においては、コラーゲン線維は同一方向に整列した二次元の層を形成し、更にこの層が1層ごとに直行して積層したベニヤ板様三次元層板構造を取っている。このベニヤ板様三次元層板構造を有するコラーゲンは、透明で且つ高い強度を有している。
【0003】
このようなコラーゲンの分子異常を起因とする疾患として膠原病(例えば、皮膚筋炎、多発性筋炎)又は角膜の白濁などが挙げられるが、治療法が確立されていないものが多い。これは、コラーゲンの分泌過程および高次構造の形成過程が未解明であることも、1つの原因である。コラーゲンの分泌過程および高次構造の形成過程の解析を行うことが可能であれば、コラーゲンの分子異常を起因とする疾患の原因の解明、及びそれらの治療法の開発にも有効な手段として用いることができる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2000-508544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、動物細胞内でのコラーゲンの動態及び動物細胞から分泌されたコラーゲンの動態を解析するために、コラーゲンを動物細胞で発現させるシステムの構築を試みた。具体的には、プロコラーゲンのC末端に蛍光タンパク質を結合させた融合タンパク質を構築した。この融合タンパク質を動物細胞に導入して、動物細胞からのプロコラーゲンおよびコラーゲンの分泌の検出を試みた。しかしながら、動物細胞からのプロコラーゲンおよびコラーゲンの分泌は検出できなかった。
従って、本発明の目的は、動物細胞からのプロコラーゲンおよびコラーゲンの分泌を検出できるシステムの構築である。
一方、本発明者らは、前記のシステムの構築に、遺伝子組換えを用いた。コラーゲンタンパク質の遺伝子操作については、例えば特許文献1に報告されている。本発明者らは、コラーゲンをコードする核酸を、ベクターに組み込み、大腸菌を用いて発現ベクターなどの構築を試みた。しかしながら、本発明者らは、通常タンパク質の発現に用いられているベクターを用い、大腸菌で形質転換を行った場合、コラーゲンタンパク質をコードする遺伝子に欠失、挿入、制限酵素での切断の阻害が生じることに気がついた。すなわち、本発明者らは、目的のコラーゲン遺伝子を含む発現ベクターを得ることができなかった。この遺伝子の欠失挿入、制限酵素での切断の阻害は、特定の位置で発生するものではなく、コラーゲン遺伝子のランダムな位置で発生した。例えば、相同組換えにより、遺伝子の特定の位置に欠失が起きることは知られている。しかしながら、ベクターの構築において、不特定の位置で欠失、挿入、制限酵素での切断の阻害が生じることは、本発明者の知る限りにおいて、知られておらず、非常に珍しい現象であると思われる。
従って、本発明のもう1つの目的は、コラーゲンタンパク質をコードする欠失、挿入、制限酵素での切断の阻害のない核酸を有するベクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、動物細胞からのプロコラーゲンの分泌を検出できるシステムについて、鋭意研究した結果、驚くべきことに、プロコラーゲンタンパク質のN末端のNプロプロテイン、コラーゲンタンパク質、又はC末端のC-プロプロテインに蛍光タンパク質を結合又は挿入することにより、動物細胞からのプロコラーゲンおよびコラーゲンタンパク質の分泌を検出できるシステムを構築できることを見出した。そして、コラーゲンタンパク質に蛍光タンパク質又は発光タンパク質が挿入された融合タンパク質を発現したコラーゲン関連疾患の細胞を用いて、コラーゲン関連疾患の治療又は予防用薬剤のスクリーニングが可能であることを見出した。
また、本発明者らは、コラーゲンタンパク質をコードする欠失、挿入、制限酵素での切断の阻害のない核酸を有するベクターについて、鋭意研究した結果、驚くべきことに、特定の遺伝子変異を有する大腸菌を、コラーゲン遺伝子を含むベクターの宿主として用いることにより、コラーゲンタンパク質をコードする遺伝子に欠失、挿入、制限酵素での切断の阻害が生じないことを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]Gly-Xaa-Yaa(式中、Glyはグリシンであり、そしてXaa及びYaaは任意のアミノ酸である)の繰り返しアミノ酸配列を有するプレプロコラーゲンタンパク質、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体、又はそれらの断片である、コラーゲン関連タンパク質と、蛍光タンパク質又は発光タンパク質との融合タンパク質、
[2]前記蛍光タンパク質又は発光タンパク質が、プロコラーゲンタンパク質のN末端のN-プロプロテイン、コラーゲンタンパク質、又はC末端のC-プロプロテインに結合又は挿入されている、[1]に記載の融合タンパク質、
[3]前記蛍光タンパク質又は発光タンパク質がコラーゲンタンパク質のC末端から30アミノ酸よりN末端側に挿入されており、及び/又は蛍光タンパク質又は発光タンパク質がC-プロプロテインのN末端から30アミノ酸よりC末側に挿入されている、[1]又は[2]に記載の融合タンパク質、
[4][1]~[3]のいずれかに記載の融合タンパク質を発現したコラーゲン関連疾患細胞と、試験物質とを接触させる工程、及び融合タンパク質の動態を解析する工程、を含むコラーゲン関連疾患の治療又は予防物質のスクリーニング方法、
[5]Gly-Xaa-Yaa(式中、Glyはグリシンであり、そしてXaa及びYaaは任意のアミノ酸である)の繰り返しアミノ酸配列を有するプレプロコラーゲンタンパク質、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体、又はそれらの断片である、コラーゲン関連タンパク質、又は前記コラーゲン関連タンパク質と蛍光タンパク質又は発光タンパク質との融合タンパク質をコードする核酸、
[6][5]に記載の核酸を含むベクター、
[7][6]に記載のベクターを含む、ベクター含有宿主細胞、
[8]前記宿主細胞が、mcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌である、請求項7に記載のベクター含有宿主細胞、
[9]前記大腸菌が、DH10B、TOP10F’、MC1061、XL1-Blue MRF’、AG1、BL21(DE3)、DB3.1、DH1、DH5α、DH5α Turbo、DH12S、DM1、E.Cloni(r)5alpha、E.Cloni(r)10G、E.Cloni(r)10GF’、ER2267、HB101、HMS174(DE3)、High-Control(tm) BL21(DE3)、High-Control(tm)10G、IJ1126、JM108、JM109、Mach1、MC1061、MFDpir、OmniMAX2、OverExpress(tm)C41(DE3)、OverExpress(tm)C43(DE3)、Rosetta(DE3)、SOLR、SS320、STBL2、STBL3、STBL4、SURE、SURE2、TG1、TOP10、XL2-Blue、XL2-BlueMRF’、及びXL10-Goldからなる群から選択される、[8]に記載のベクター含有宿主細胞、
[10][8]又は[9]に記載のベクター含有宿主細胞から得られるベクター、
[11][6]に記載のベクターをmcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌に導入することを特徴とする、ベクター含有大腸菌の製造方法、
[12][6]に記載のベクターをmcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌に導入する工程、及び前記ベクターを回収する工程を含むことを特徴とする、ベクターの製造方法、
[13](1)請求項6に記載のベクターを、動物細胞に導入する工程、及び(2)前記ベクターが導入された動物細胞からコラーゲンを分泌させる工程、を含む、コラーゲンの製造方法、及び
[14](1)請求項6に記載のベクターを、動物細胞に導入する工程、及び(2)前記ベクターが導入された動物細胞において蛍光又は発光を検出する工程、を含む、コラーゲンの蛍光又は発光検出方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の融合タンパク質は、動物細胞からのプロコラーゲンの分泌を検出することができる。コラーゲン関連タンパク質は三重らせん構造を形成するため、プロコラーゲンタンパク質に蛍光タンパク質を挿入するとタンパク質の構造が変化し、三重らせん構造を形成できなくなると考えられている。しかしながら、コラーゲンタンパク質及び/又はC-プロプロテインの特定の位置に蛍光タンパク質を挿入することにより、三重らせん構造を維持することが可能となり、動物細胞からのプロコラーゲンの分泌を検出できるシステムを構築できた。また、N-プロプロテインの特定の位置に蛍光タンパク質を挿入することにより、三重らせん構造を維持することが可能となり、動物細胞からのプロコラーゲンの分泌を検出できるシステムを構築できた。
更に、本発明の特定の遺伝子変異を有する大腸菌から得られるベクターによれば、コラーゲンタンパク質をコードする、欠失、挿入、制限酵素での切断の阻害が生じていない遺伝子を得ることができる。また、本発明のベクター含有大腸菌によれば、コラーゲンタンパク質をコードする、欠失などの障害が生じていない遺伝子を含むベクターを得ることができる。本発明のベクター含有大腸菌の製造方法及びベクターの製造方法によれば、コラーゲンタンパク質をコードする、欠失などの障害が生じていない遺伝子を含むベクター及びそのベクターを含む大腸菌を製造することができる。
本発明によって得られたベクターを用いて、動物細胞でコラーゲンを製造することができる。また、本発明によって得られたベクターを用いることにより、コラーゲンの高次構造の形成過程を解析することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】コラーゲンタンパク質にEGFPが挿入され、プロコラーゲンタンパク質のC末のCプロプロテインにmCherryが挿入された融合タンパク質をコードするベクターの概略を示した図である。
【図2】TOP10F’で増幅したベクター及びXL-1 blueで増幅したベクターの電気泳動の写真(A)及びDH10B及びXL-1 blueで増幅したベクターの電気泳動の写真(B)である。
【図3】プロコラーゲンタンパク質のN末のNプロプロテインにEGFPが挿入され、プロコラーゲンタンパク質のC末のCプロプロテインにmCherryが挿入された融合タンパク質をコードするベクターの概略を示した図である。
【図4】マウスのNIH3T3細胞において、実施例1の融合タンパク質を発現させた写真である。
【図5】マウスのNIH3T3細胞において、実施例1の融合タンパク質を発現させた写真である。
【図6】マウスのNIH3T3細胞において、実施例2の融合タンパク質を発現させた写真である。
【図7】正常肝星細胞(2G92細胞)(A)及び肝線維症肝星細胞(5H細胞)(C)に本発明のベクターを導入し、発現したコラーゲン線維の動態を示した蛍光顕微鏡写真、並びに正常肝星細胞(2G92細胞)にTGF-βを添加し、コラーゲン分泌を活性化させた写真(B)である。
【図8】本発明のベクターを導入した活性化肝星細胞(活性化2G92細胞)及び定常的活性化肝星細胞(5H細胞)に、肝線維症の治療効果を有するSB431542を接触させて、薬剤のスクリーニング系の構築を行った蛍光顕微鏡写真である。
【図9】本発明のベクターを導入した定常的活性化肝星細胞(5H細胞)に、肝線維症の治療効果を有するSB431542を接触させて、スクリーニング系の構築を行った蛍光顕微鏡写真である。
【図10】肺線維芽細胞(TIG-3-20細胞(A)、A549細胞(C))、及び腎臓尿細管上皮細胞(MDCK細胞(D))に本発明のベクターを導入して、コラーゲンの発現を確認した写真である。TIG-3-20細胞にTGF-βを添加して、細胞活性化した写真である(B)。
【図11】C-プロプロテインのN末端から27アミノ酸の部位にmCherryを挿入したベクターの概略(A)、及びそのベクターから発現したコラーゲンの線維化(3重らせん構造構築)が阻害されたことを示す蛍光顕微鏡写真(B、C)である。
【図12】コラーゲンタンパク質のC末端に、EGFPを結合したベクターの概略(A)、及びそのベクターから発現したコラーゲンの線維化(3重らせん構造構築)が阻害されたことを示す蛍光顕微鏡写真(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]融合タンパク質
本発明の融合タンパク質は、コラーゲン関連タンパク質と蛍光タンパク質又は発光タンパク質とが融合したタンパク質である。以下に、コラーゲン関連タンパク質について、説明する。

【0010】
《コラーゲン関連タンパク質》
コラーゲン関連タンパク質は、Gly-Xaa-Yaa(式中、Glyはグリシンであり、そしてXaa及びYaaは任意のアミノ酸である)の繰り返しアミノ酸配列を有するプレプロコラーゲンタンパク質、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体、又はそれらの断片である。
前記コラーゲン関連タンパク質は、前記Gly-Xaa-Yaaの繰り返しアミノ酸配列を有する限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばヒトのI型~XXVIII型コラーゲンタンパク質、そのプレプロコラーゲンタンパク質又はプロコラーゲンタンパク質、それらの変異体、又はそれらの断片を挙げることができる。プレプロコラーゲンタンパク質はコラーゲンタンパク質のN末側に、シグナルペプチド及びN-プロプロテインを有し、そしてC末側にC-プロプロテインを有している。またプロコラーゲンタンパク質は、コラーゲンタンパク質のN末側に、N-プロプロテインを有し、そしてC末側にC-プロプロテインを有している。前記Gly-Xaa-Yaaの繰り返しアミノ酸配列はコラーゲン様配列と呼ばれ、このGly-Xaa-Yaaのコラーゲン様配列を有することがコラーゲン関連タンパク質の重要な特徴である。
また、前記コラーゲン関連タンパク質の由来する生物種も限定されるものではないが、例えば、哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット、モルモット、又はサル)、鳥類(例えば、ニワトリ、ガチョウ、アヒル、又はダチョウ)、爬虫類(例えば、ワニ)、両生類(例えば、カエル)、魚類(例えば、チョウザメ、テラピア、タイ、ヒラメ、サメ、イワシ、マグロ、フグ、キンギョ、タラ、カレイ、又はコイ)、又は無脊椎動物(例えば、クラゲ)を挙げることができる。
前記コラーゲン関連タンパク質に含まれるGly-Xaa-Yaaの繰り返しアミノ酸配列の数は、2つ以上であれば特に限定されるものではないが、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、更に好ましくは30以上であり、最も好ましくは50以上である。また、コラーゲン関連タンパク質は、前記コラーゲン様配列以外のアミノ酸配列を含むことができ、例えば、N末端又はC末端にシグナルペプチド、プロプロテイン、テロペプチドを含むことができる。

【0011】
コラーゲンタンパク質(以下、単に「コラーゲン」と称することがある)は、線維性コラーゲン及び非線維性コラーゲンに分けられ、線維性コラーゲンとしては、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、V型コラーゲン、又はXI型コラーゲン等を挙げることができる。
例えば、I型コラーゲンは、分子量約10万のポリペプチド鎖が3本集まって「3重らせん構造(トロポコラーゲン)」を作っており、分子量は約30万である。この3重らせん構造は、長さ300nmで、直径1.5nmの1本の硬い棒のような形態をしており、トロポコラーゲンと称される。この3重らせん構造のトポコラーゲンは、自己組織化することによって、分子長の1/4ずつずれて整列し、コラーゲン原線維(コラーゲン細線維)を形成する。更に、このコラーゲン原線維が、多数集合して、コラーゲン線維(コラーゲン線維束)を形成している。更に、角膜実質や皮質骨においては、コラーゲン線維は同一方向に整列した二次元の層を形成し、更にこの層が1層ごとに直行して積層したベニヤ板様三次元層板構造を取っている。このベニヤ板様三次元層板構造を有するコラーゲンは、透明で且つ高い強度を有している。また、I型コラーゲンにおいては、Gly-Xaa-YaaのXaaはプロリン又は3-ヒドロキシプロリン、そしてYaaは4-ヒドロキシプロリン、又はヒドロキシリジンであることが多い。ヒドロキシプロリンは、通常のタンパク質に含まれておらず、コラーゲンに特有のアミノ酸であるが、ヒドロキシプロリンの水酸基と水和水との水素結合によって3重らせん構造が安定すると考えられる。

【0012】
コラーゲンタンパク質は、細胞内において、限定されるものではないが、例えばN末端側にN-プロプロテイン及びC末端側にC-プロプロテインを有するプロコラーゲンタンパク質(以下、単にプロコラーゲンと称することがある)として作られる。プロコラーゲンは、特に限定されるものではないが、I型~XXVIII型コラーゲンのプロコラーゲンを挙げることができる。

【0013】
プレプロコラーゲンタンパク質、プロコラーゲンタンパク質又はコラーゲンタンパク質の変異体は、Gly-Xaa-Yaaの繰り返しアミノ酸配列を有する限りにおいて、特に限定されるものではない。変異体としては、例えば天然のコラーゲンタンパク質(例えば、前記I型~XXVIII型コラーゲンタンパク質)のアミノ酸配列において、アミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたものを挙げることができる。前記欠失、置換、挿入、及び/又は付加されるアミノ数は、特に限定されないが、例えば100個以下であり、好ましくは50個以下であり、より好ましくは30個以下であり、更に好ましくは10個以下であり、最も好ましくは1又は数個である。例えば、I型コラーゲンは、約1000個のアミノ酸からなるが、100個を超える欠失、置換、挿入、及び/又は付加を有する場合、コラーゲンとしても機能を示さないことがあるからである。
また、別の変異体としては、天然のコラーゲンタンパク質(例えば、前記I型~XXVIII型コラーゲンタンパク質)のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有する変異コラーゲンタンパク質を挙げることができる。アミノ酸の同一性は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは95%以上であり、最も好ましくは97%以上である。アミノ酸の同一性が80%未満である場合、コラーゲンとしても機能を示さないことがあるからである。

【0014】
プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体の断片は、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体の部分ペプチドである限りにおいて、特に限定されるものではなく、I型~XXVIII型コラーゲン、それらのプロコラーゲン、又はそれらの変異体の部分ペプチドを挙げることができる。前記断片のアミノ酸鎖長、及び切断部位なども特に限定されるものではなく、遺伝子構築の目的に応じて、適宜決定することができる。

【0015】
《蛍光タンパク質又は発光タンパク質》
前記融合タンパク質に用いるタンパク質としては、限定されるものではないが、蛍光を付与する蛍光タンパク質、発光を付与する発光タンパク質を挙げることができる。
蛍光タンパク質又は発光タンパク質としては、GFP、EGFP、mCherry、Sirius、EBFP、SBP2、EBP2、Azurite、mKalama1、TagBFP、mBlueberry、mTurquoise、ECFP、Cerulean、mCerulean、TagCFP、AmCyan、mTP1、MiCy(Midoriishi Cyan)、TurboGFP、CFP、AcGFP、TagGFP、AG(Azami-Green)、mAG1、ZsGreen、EmGFP(Emerald)、GP2、T-Sapphire、HyPer、TagYFP、mAmetrine、EYFP、YFP、Venus、Citrine、PhiYFP、PhiYFP-m、turboYFP、ZsYellow、mBanana、mKO1、KO(Kusabira Orange)、mOrange、mOrange2、mKO2、Keima570、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed、DsRed2、TagRFP、TagRFP-T、DsRed-Monomer、mApple、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRP1、JRed、KillerRed、KeimaRed、HcRed、mRasberry、mKate2、TagFP635、mPlum、egFP650、Neptune、mNeptune、egFP670及びルシフェラーゼからなる群から選択されるすくなくとも1つの蛍光又は発光タンパク質を挙げることができる。

【0016】
コラーゲン関連タンパク質及び融合タンパク質は、後述の発現ベクターを用いて調製することも可能であるが、ペプチド合成によって調製することも可能である。

【0017】
本発明の融合タンパク質の1つの態様として、前記蛍光タンパク質又は発光タンパク質がコラーゲンタンパク質のC末端から30アミノ酸よりN末端側に挿入されている。また、本発明の融合タンパク質の1つの態様として、蛍光タンパク質又は発光タンパク質がC-プロプロテインのN末端から30アミノ酸よりC末側に挿入されている。更に、本発明の融合タンパク質の1つの態様として、蛍光タンパク質又は発光タンパク質がコラーゲンタンパク質のC末端から30アミノ酸よりN末端側に挿入され、そして蛍光タンパク質又は発光タンパク質がC-プロプロテインのN末端から30アミノ酸よりC末側に挿入されている。
前記蛍光タンパク質又は発光タンパク質のコラーゲンタンパク質への挿入部位は、より好ましくはコラーゲンタンパク質のC末端から45アミノ酸よりN末端側であり、更に好ましくは60アミノ酸よりN末端側である。前記蛍光タンパク質又は発光タンパク質のC-プロプロテインへの挿入部位は、より好ましくはC-プロプロテインのN末端から45アミノ酸よりC末端側であり、更に好ましくは60アミノ酸よりC末端側である。
蛍光タンパク質又は発光タンパク質がコラーゲンタンパク質のC末側に挿入された場合、又は蛍光タンパク質又は発光タンパク質がC-プロプロテインのN末側に挿入された場合、発現されるコラーゲンタンパク質が、3重らせん構造を形成することができず、細胞外へ分泌されないことがある。

【0018】
[2]核酸及びベクター
本発明の核酸は、前記コラーゲン関連タンパク質又は前記融合タンパク質をコードする核酸(以下、まとめて「コラーゲン核酸」と称することがある)である。
《コラーゲン核酸》
本発明のコラーゲン核酸は、前記プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体、又はそれらの断片などのコラーゲン関連タンパク質、或いはコラーゲン関連タンパク質と蛍光タンパク質等との融合タンパク質をコードする核酸である限りにおいて、特に限定されるものでない。
プロコラーゲンタンパク質、又はコラーゲンタンパク質をコードする核酸は、限定されるものではないが、例えばコラーゲンを有する生物の組織、又はその生物の分離された細胞から抽出して用いることができる。また、既に分離されたcDNAを含むベクターから得ることもできる。更に、DNA合成によって、調製することも可能である。

【0019】
また、前記変異体をコードする核酸は、例えばプロコラーゲンタンパク質又はコラーゲンタンパク質をコードする核酸に、アミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されるように、核酸の変異を導入することによって得ることができる。核酸の変異(欠失、置換、挿入、及び/又は付加)は、本分野において公知の方法によって、導入することが可能である。また、遺伝子操作を用いずに、自然界に存在する、アミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加される変異を有する核酸を用いることもできる。

【0020】
更に、前記断片をコードする核酸は、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、又はそれらの変異体をコードする核酸の一部を用いることができる。例えば、前記核酸を制限酵素によって切断することによって、プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、又はそれらの変異体の断片をコードする核酸を得ることができる。

【0021】
本発明のベクターに含まれる核酸としては、限定されるものではないが、例えばDNA又はRNAを挙げることができる。

【0022】
《ベクター》
本発明のベクターは、前記コラーゲン核酸を含む限りにおいて、限定されるものではない。また、前記コラーゲン核酸が導入される骨格のベクターは、クローニングベクターでもよく、発現ベクターでもよい。また、RNAベクターとしては、バクテリオファージを挙げることができる。
骨格となるベクターとしては、本分野で通常用いられているベクターを制限なく用いることができるが、例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pKC30、pCFM536、pcDNA3.1、pcDNA3,pME、又はpGEX等の大腸菌プラスミド、を挙げることができる。また、ベクターとしては市販されているものを使用することができ、例えばpQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)、pBluescriptII KS、ptrc99a、pKK223-3、pDR540、pRIT2T(Pharmacia)、pET-11a(Novagen)などを挙げることができる。骨格ベクターは、複製開始点、選択マーカー、プロモーターを含み、必要に応じてエンハンサー、転写終結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル等を含んでいてもよい。

【0023】
前記コラーゲン核酸含有ベクターは、コラーゲン核酸以外の核酸を含むことができる。例えば、コラーゲンタンパク質等に、他のタンパク質を結合させて融合タンパク質を得ることができるが、コラーゲン核酸含有ベクターは、このコラーゲンに結合させるタンパク質(以下、結合タンパク質と称することがある)をコードする核酸を含むことができる。
前記結合タンパク質は、コラーゲンタンパク質等のN末端、又はC末端に結合させることもでき、またコラーゲンタンパク質等の中に挿入することもできる。すなわち、結合タンパク質をコードする核酸は、コラーゲン核酸の5‘側、又は3’側に結合させてもよく、またコラーゲン核酸の中に挿入してもよい。

【0024】
本発明のベクターは、限定されるものではないが、好ましくは後述の特定の遺伝子変異を有する大腸菌から得られるものである。すなわち、特定の遺伝子変異を有する大腸菌に導入され、その大腸菌から回収されたものが好ましい。欠失、挿入、制限酵素での切断の阻害が生じていないコラーゲン核酸を含むベクターを得ることができるからである。

【0025】
[3]ベクター含有宿主細胞
本発明のベクター含有宿主細胞は、本発明のベクターを含むものである。宿主は、特に限定されるものではなく、大腸菌、放線菌、酵母、糸状菌、又は動物細胞を挙げることができるが、好ましくは大腸菌又は動物細胞であり、更に好ましくは特定の遺伝子変異を有する大腸菌又は動物細胞である。特定の遺伝子変異を有する大腸菌を用いることにより、欠失、挿入、制限酵素での切断の阻害が生じていないコラーゲン核酸を含むベクターを得ることができるからである。また、動物細胞を用いることにより、コラーゲンを製造することができる。更に、コラーゲンの高次構造の形成過程を解析することが可能である。

【0026】
《遺伝子変異を有する大腸菌》
本発明のベクターを含む遺伝子変異を有する大腸菌としては、限定されるものではないが、好ましくはmcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌である。遺伝子変異の組み合わせは、限定されるものではないが、好ましくはmcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異であり、より好ましくは、mcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、recA 、hsdS及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異であり、更に好ましくは、mcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、recA及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異であり、最も好ましくはmcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異である。遺伝子変異を有する大腸菌としては、より具体的にはDH10B、TOP10F’、MC1061、XL1-Blue MRF’、AG1、BL21(DE3)、DB3.1、DH1、DH5α、DH5α Turbo、DH12S、DM1、E.Cloni(r)5alpha、E.Cloni(r)10G、E.Cloni(r)10GF’、ER2267、HB101、HMS174(DE3)、High-Control(tm) BL21(DE3)、High-Control(tm)10G、IJ1126、JM108、JM109、Mach1、MC1061、MFDpir、OmniMAX2、OverExpress(tm)C41(DE3)、OverExpress(tm)C43(DE3)、Rosetta(DE3)、SOLR、SS320、STBL2、STBL3、STBL4、SURE、SURE2、TG1、TOP10、XL2-Blue、XL2-BlueMRF’、及びXL10-Goldを挙げることができるが、特にはDH10B、TOP10F’、TOP10、STBL2、及びSTBL4が好ましい。

【0027】
大腸菌へのベクターの導入は、本分野で通常用いられている方法を、制限なく用いることができる。例えば、塩化カルシウム処理したコンピテント細胞の利用、プロトプラスト法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、又はエレクトロポレーション法などを用いることができる。

【0028】
[4]ベクター含有大腸菌の製造方法及びベクターの製造方法
本発明のベクター含有大腸菌の製造方法は、本発明のベクターを、mcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、 galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌に導入することを特徴とする。
また、本発明のベクターの製造方法は、本発明のベクターをmcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌に導入する工程、及び前記ベクターを回収する工程を含むことを特徴とする。

【0029】
本発明のベクター含有大腸菌の製造方法、又はベクターの製造方法における「プロコラーゲンタンパク質、コラーゲンタンパク質、若しくはそれらの変異体、又はそれらの断片をコードする核酸」、「ベクター」、及び「mcrA、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、φ80lacZΔM15、ΔlacX74、deoR、recA1、endA1、araD139、Δ(ara, leu)7697、galU、galK、rpsL(strr)、nupG、galE、hsdS、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される遺伝子変異を有する大腸菌」等は、前記の「[1]融合タンパク質」、「[2]核酸及びベクター」、及び「[3]ベクター含有宿主細胞」の項に記載のものを用いることができる。
また、本発明のベクターの製造方法における、ベクターを回収する方法は、本分野において公知の方法を用いることができるが、例えば前記ベクターが導入されたコラーゲン核酸含有ベクターをLB培地などで培養し、大腸菌を増殖させる。増殖した大腸菌を回収し、例えばアルカリSDS法、煮沸法、エチジウム/塩化セシウム密度勾配遠心法、ガラスビーズ精製法、又はそれらの変法を用いて、ベクターDNAを回収することができる。

【0030】
[5]コラーゲンの製造方法
本発明のコラーゲンの製造方法は、(1)本発明のベクターを、動物細胞に導入する工程、及び(2)前記ベクターが導入された動物細胞からコラーゲンを分泌させる工程、を含む。
本発明のコラーゲンの製造方法に用いる「ベクター」は、前記「[1]融合タンパク質」、「[2]核酸及びベクター」、及び「[3]ベクター含有宿主細胞」の項に記載の「ベクター」を用いることができる。

【0031】
《動物細胞》
本発明のコラーゲンの製造方法に用いる動物細胞は、コラーゲンを発現することのできる細胞である限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット、モルモット、又はサル)、鳥類(例えば、ニワトリ、ガチョウ、アヒル、又はダチョウ)、爬虫類(例えば、ワニ)、両生類(例えば、カエル)、魚類(例えば、チョウザメ、テラピア、タイ、ヒラメ、サメ、イワシ、マグロ、フグ、キンギョ、タラ、カレイ、又はコイ)、又は無脊椎動物(例えば、クラゲ)由来の細胞を用いることができる。
動物細胞への前記ベクターの導入方法は、特に限定されるものではなく、本分野で公知の方法を用いることができるが、例えばエレクトロポレーション法を用いることができる。

【0032】
《分泌工程》
ベクターが導入された動物細胞から、コラーゲンを分泌させる方法は、特に限定されるものではないが、動物細胞を培地で培養することによってできる。
培養温度も特に限定されるものではないが、例えば30~42で培養することができ、好ましくは35~39℃である。また、動物細胞中のタンパク質濃度を調整することによって、細胞外への分泌を最適にすることができる。また、分泌には、細胞が多層を形成することが、好ましい。

【0033】
[6]コラーゲンの蛍光又は発光検出方法
本発明のコラーゲンの蛍光又は発光検出方法は、(1)本発明のベクターを、動物細胞に導入する工程、及び(2)前記ベクターが導入された動物細胞において蛍光又は発光を検出する工程、を含む。
本発明のコラーゲンの蛍光又は発光検出方法に用いる「ベクター」は、前記「[1]融合タンパク質」、「[2]核酸及びベクター」、及び「[3]ベクター含有宿主細胞」の項に記載の「ベクター」を用いることができる。

【0034】
《動物細胞》
本発明のコラーゲンの製造方法に用いる動物細胞は、コラーゲンを発現することのできる細胞である限りにおいて、特に限定されるものではないが、前記「[5]コラーゲンの製造方法」に記載の動物細胞を挙げることができる。

【0035】
《検出工程》
動物細胞からの蛍光又は発光の検出も、本分野における公知の方法を用いることができるが、例えば蛍光顕微鏡、分光光度計、又は共焦点蛍光顕微鏡などを用いることによって、検出することができる。

【0036】
[7]コラーゲン関連疾患の治療又は予防物質のスクリーニング方法
本発明のコラーゲン関連疾患の治療又は予防物質のスクリーニング方法は、前記融合タンパク質を発現したコラーゲン関連疾患細胞と、試験物質とを接触させる工程、及び融合タンパク質の動態を解析する工程、を含む。

【0037】
《コラーゲン関連疾患》
コラーゲン関連疾患は、コラーゲンがその疾患の原因、又は症状等に関連すると考えられる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば肝線維症、肺線維症、腎線維症などの臓器・組織線維症、膠原病、又は間接リウマチを挙げることができる。
本発明のスクリーニング方法に用いるコラーゲン関連疾患細胞は、前記のコラーゲン関連疾患患者から分離された細胞でもよく、モデル動物から作製された細胞でもよい。コラーゲン関連疾患患者から分離された細胞としては、例えば、コラーゲン分泌を行う細胞を用いることができ、具体的には肝線維症患者から分離された肝星細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、を挙げることができる。また、モデル動物から作製された細胞としては、肝星細胞、又は肺線維芽細胞、を挙げることができる。
更に、正常なコラーゲン分泌細胞を、例えばTGF-βにより活性化し、肝線維症、肺線維症、腎線維症、膠原病、又は間接リウマチのモデル細胞として用い、それぞれの薬剤のスクリーニング用細胞として用いることができる。

【0038】
《試験物質》
試験物質は、コラーゲンの動態に関連する可能性のある物質、又はそのような物質を含むものである限りにおいて限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrett,N.K.ら,Tetrahedron,51,8135-8137,1995)によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法(Felici,F.ら,J.Mol.Biol.,222,301-310,1991)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群、又は低分子化合物を用いることができる。また、微生物の培養上清、細胞の培養上清、生体内の体液、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。

【0039】
(接触工程)
本発明のスクリーニング方法における接触工程は、前記融合タンパク質を発現したコラーゲン関連疾患細胞と、試験物質とを接触させる工程である。
試験物質の濃度も、適宜決定することができるが、試験物質がコラーゲンの動態に影響を与える最適濃度があると考えられるため、何段階かに希釈して試験することが好ましい。

【0040】
(融合タンパク質の動態解析工程)
本発明における動態解析工程は、コラーゲンの融合タンパク質の動態を解析する工程である。コラーゲンの動態の解析としては、例えばコラーゲン融合タンパク質の発現量の解析、コラーゲン融合タンパク質の細胞外の分泌の解析、コラーゲン融合タンパク質の細胞内輸送の解析、又はコラーゲン融合タンパク質のプロセシングの解析を挙げることができる。
動態解析は、基本的に試験物質を接触させない細胞と比較することによって行うことができる。すなわち、試験物質を接触させない細胞と比較して、コラーゲン融合タンパク質の発現が増加又は減少している場合、その試験物質をコラーゲン関連疾患の治療薬物の候補と判断することができる。また、試験物質を接触させない細胞と比較して、コラーゲン融合タンパク質が、細胞外に分泌されている場合、その試験物質をコラーゲン関連疾患に効果があるものと判断することができる。更に、試験物質を接触させない細胞と比較して、コラーゲン融合タンパク質の細胞内輸送が正常に回復した場合、その試験物質をコラーゲン関連疾患に効果があるものと判断することができる。また、試験物質を接触させない細胞と比較して、コラーゲン融合タンパク質のプロセシングが正常に回復した場合、その試験物質をコラーゲン関連疾患に効果があるものと判断することができる。

【0041】
例えば、実施例に示すように、コラーゲンタンパク質にEGFPが挿入され、C-プロプロテインにm-Cherryが挿入されたコラーゲン融合タンパク質が導入された肝線維症肝星細胞を用いた場合、候補物質を接触させない場合、プロコラーゲンタンパク質のプロセシング又は分泌が異常なため、細胞内にEGFP及びm-Cherryの蛍光からなる黄色の蛍光が観察される。これに対して治療効果のある候補物質を接触させるとm-Cherryの挿入されたC-プロプロテインが切断され、EGFPの挿入されたコラーゲンタンパク質が正常に細胞外に分泌され、緑の蛍光が観察される。コラーゲンタンパク質の細胞外への分泌は、正常な肝星細胞においても観察されるものであり、このような動態を示す候補物質は、肝線維症に効果があるものと判断することができる。
しかしながら、スクリーニングに用いられる動態解析の判断は、これらに限られるものではなく、試験物質を接触させない細胞と比較して、異なる動態を示す場合、コラーゲン関連疾患に効果があるものと判断することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0043】
《比較例1》
本比較例では、1型コラーゲンの中央にGFPを挿入し、そしてC末端にmCherryを結合した核酸を有するベクターの構築を試みた。GFPはコラーゲンタンパク質のBamH1の部位に挿入され、mCherryはC-プロプロテインのEcoR1の部位に挿入された。
ベクターの概略図を図1に示す。ベクター以外のDNAの塩基配列を配列番号1に示す。
EGFP cDNAの両端に制限酵素BamH1 siteを付加したDNA断片を作成し、これをヒトpreprocollagen1α1cDNA内部のBamH1siteに挿入した。この際、タンパク質翻訳において、コラーゲンタンパク質とEGFPタンパク質がつながるように調節を行った。次に、mCherry cDNAの両端にEcoR1 siteを付加したDNA断片を作成し、これをヒトpreprocollagen1α1-EGFP融合cDNA のEcoR1 siteに挿入した。この際にも、タンパク質翻訳において、コラーゲンタンパク質とmCherryタンパク質がつながるように調節を行い、操作の各ステップにおいて塩基配列の確認を行った。
【実施例】
【0044】
XL-1 blueのコンピテントセル(形質転換受容性細胞)作成法は、「遺伝子ライブラリーの作成法」(編集・野島博、羊土社)に従った。凍結保存されたコンピテントセルを解凍し、すぐに100ngのプラスミドDNAを入れ混合した。氷上で30分間静置した後、42℃で1分30秒温め、すぐに氷冷した。ここに1mLの培地を加え、100μLをアンピシリンを添加したLBプレートに塗り広げた。37℃にて一晩保温し、現れたコロニーを使用した。
得られたベクターに含まれるDNAは、目的の長さより短いもの、目的の長さより長いもの、NotI、又はSmaIで切断できないものであった。図2(A)に、目的の長さより長いもの、NotI、及びSmaIで切断できなかったものを示す
【実施例】
【0045】
《比較例2》
本比較例では、1型コラーゲンのN末にEGFPを結合し、そしてC末端にmCherryを結合した核酸を有するベクターの構築を試みた。EGFPはN-プロプロテインのKpn1の部位に挿入され、mCherryはC-プロプロテインのEcoR1の部位に挿入された。
ベクターの概略図を図3に示す。ベクター以外のDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
<ベクター構築法>EGFP cDNAの両端に制限酵素KpnI siteを付加したDNA断片を作成し、これをヒトpreprocollagen1α1 cDNA内部のKpnI siteに挿入した。この際、タンパク質翻訳において、コラーゲンタンパク質とEGFPタンパク質がつながるように調節を行った。次に、mCherry cDNA の両端にEcoR1 siteを付加したDNA断片を作成し、これをヒトpreprocollagen1α1-EGFP融合cDNAのEcoR1 siteに挿入した。この際にも、タンパク質翻訳において、コラーゲンタンパク質とmCherryタンパク質がつながるように調節を行い、操作の各ステップにおいて塩基配列の確認を行った。
【実施例】
【0046】
XL-1 blueのコンピテントセル(形質転換受容性細胞)作成法は、「遺伝子ライブラリーの作成法」(編集・野島博、羊土社)に従った。凍結保存されたコンピテントセルを解凍し、すぐに100ngのプラスミドDNAを入れ混合した。氷上で30分間静置した後、42℃で1分30秒温め、すぐに氷冷した。ここに1mLの培地を加え、100μLをアンピシリンを添加したLBプレートに塗り広げた。37℃にて一晩保温し、現れたコロニーを使用した。
得られたベクターに含まれるDNAは、目的の長さより短いもの、目的の長さより長いもの、NotI、又はSmaIで切断できないものであった。図2BにEcoRIでの切断した写真を示すが、全てのクローンがEcoRIで切断できなかった。
【実施例】
【0047】
《実施例1》
XL-1 blueに代えて、TOP10F’を用いたことを除いては、比較例1の操作を繰り返し、ベクターを得た。得られたベクターは、塩基配列決定を行い目的の長さの核酸が含まれていることを確認した(図2A)。
【実施例】
【0048】
《実施例2》
XL-1 blueに代えて、DH10Bを用いたことを除いては、比較例2の操作を繰り返し、ベクターを得た。得られたベクターは、目的の長さの核酸を含んでいた。図2Bに、EcoRIでの切断した写真を示すが、全てのクローンがEcoRIで切断することができた。一方、XL-1 blueを宿主として用いた場合は、EcoRIで切断できる正常なクローンを取得することはできなかった。
【実施例】
【0049】
《実施例3》
本実施例では、細胞外に分泌されたコラーゲンの蛍光を観察した。NIH3T3細胞に実施例1で得られたベクターを導入した。2日おきに培地を交換しながら1ヶ月間以上の長期培養を実施し、多層からなる細胞集団を得た。蛍光顕微鏡によりEGFPの蛍光シグナルを観察した。
図4に示すようにEGFPが、コラーゲンタンパク質のN末側に挿入されていることにより、コラーゲンタンパク質が3重らせん構造を形成し、そして細胞外に蓄積していること(EGFPの緑色の蛍光)を確認できた。
【実施例】
【0050】
《実施例4》
本実施例では、細胞内でのコラーゲンの蛍光を観察した。NIH3T3細胞に実施例1で得られたベクターを導入した。蛍光顕微鏡により48時間後にEGFPおよびmCherryの蛍光シグナルを観察した。
図5に示すようにEGFPがコラーゲンタンパク質のN末側に挿入され、mCherryがC-プロプロテインのC末側に挿入されていることにより、プロコラーゲンである黄色およびプロセシング後のコラーゲンである緑色の蛍光シグナルが細胞質に存在することを確認できた。なお、コラーゲンタンパク質は、細胞外にも分泌されているが、実施例3と異なり、培養期間が短いためにコラーゲンタンパク質の蓄積量が少なく、EGFP緑の蛍光が観察されなかった。
【実施例】
【0051】
《実施例5》
本実施例では、実施例2と同様の手順で得られた図3のベクターをマウスのNIH3T3細胞に導入し、共焦点蛍光顕微鏡で、蛍光を検出した。NIH3T3細胞に図3のベクターを導入した。蛍光顕微鏡により48時間後にEGFPおよびmCherryの蛍光シグナルを観察した。
図6に示すようにEGFPがNプロプロテインに挿入され、mCherryがCプロプロテインに挿入していることにより、合成直後のプロコラーゲンは黄色のシグナルによって、また、プロセシングにより切断されたNプロプロテインは緑色の蛍光シグナルによって、細胞質に存在することを確認できた。なお、N-プロプロテインは、細胞外にも分泌されているが、培地に拡散しているため、EGFP緑の蛍光は観察されなかった。
【実施例】
【0052】
《比較例3》
プレプロコラーゲンcDNAのCプロプロテイン内に存在する制限酵素AccIII部位にmCherryを挿入した。AccIII部位はC-プロプロテインのN末端から27アミノ酸に相当する部位に存在する(図12A)。mCherryがC-プロプロテインのN末端から30アミノ酸よりN末端側に挿入されていることによりコラーゲンの線維化(3重らせん構造構築)が阻害される。すなわち、コラーゲンタンパク質は、ER-ゴルジ体に蓄積され、細胞外には分泌されなかった(図12B、C)。
また、コラーゲンタンパク質のC末端に、EGFPを結合した融合タンパク質を作成した(図12A)。この融合タンパク質もコラーゲンの線維化(3重らせん構造構築)が阻害される。すなわち、コラーゲンタンパク質は、細胞質に局在し細胞外には分泌されなかった(図12B)。
【実施例】
【0053】
《実施例6》
本実施例では、肝線維症の薬剤のスクリーニング系の構築を行った。
(1)肝星細胞へのベクターの導入
実施例1で得られたベクターを肝線維症のラットから分離した肝線維症の原因となる定常的活性化した肝星細胞(5H細胞)及び活性化していない肝星細胞(2G92細胞)にトランスフェクトした。具体的には、トランスフェクション試薬(Fugne6)を用いて細胞に導入した。図7に示すように、活性化していない肝星細胞では、コラーゲンタンパク質の正常なプロセシングおよび分泌を示す緑色の蛍光が観察された(図7A)。しかし、定常的活性化肝星細胞(5H細胞)ではコラーゲンのプロセシングおよび分泌の異常を示す黄色のシグナルのみが観察され、コラーゲンの正常な分泌を示す緑色の蛍光は見られなかった(図7C)。
【実施例】
【0054】
(2)TGF-βによる正常肝星細胞の活性化
更に、2G92細胞を用いて肝線維症の薬剤のスクリーニングに用いる細胞を以下のように作製した。活性化していない肝星細胞2G92を2枚のディッシュ上でセミコンフルエントまで増殖させた。一方のディッシュには、1ng/mLの最終濃度にて肝星細胞を活性化するTGF-βを添加した。添加後、8時間以降においてコラーゲンタンパク質のプロセシングおよび分泌を共焦点顕微鏡により検出した結果、TGF-βを添加したディッシュではコラーゲンのプロセシングおよび分泌の異常を示す黄色のシグナルのみが観察されるようになり、肝線維症の原因となる活性化肝星細胞(活性化2G92細胞)に変化したことが確認された(図7B)。
【実施例】
【0055】
《実施例7》
本実施例では、実施例6に記載の活性化肝星細胞(活性化2G92細胞)及び定常的活性化肝星細胞(5H細胞)を用いて、肝線維症の治療薬の候補物質のスクリーニング系を構築した。
セミコンフルエントまで増殖させた2G92細胞に、肝線維症の治療効果を有するSB431542(0.5μM)又は溶媒DMSO添加し、1時間培養した。その後1ng/mLの最終濃度でTGF-βを添加し、8時間培養した。その結果、SB431542を添加した2G92細胞は、コラーゲンタンパク質が正常にプロセンシングされて分泌された(図8)が、DMSOを添加した2G92細胞は、コラーゲンタンパク質のプロセシングおよび分泌の異常を示す黄色のシグナルのみが見られた(図なし)。SB431542を添加した活性化肝星細胞はコラーゲンの分泌が正常に変化しており、従って、本発明のベクターによってコラーゲンタンパク質を発現させた2G92細胞を用いて、肝線維症の治療薬の候補物質をスクリーニングできることが分かった。
また、セミコンフルエントまで増殖させた5H細胞に、肝線維症の治療効果を有するSB431542(0.5μM)又は溶媒DMSOを添加し、1時間以上培養した。その結果、SB431542を添加した5H細胞は、コラーゲンタンパク質が正常にプロセンシングされて分泌された(図9)が、DMSOを添加した5H細胞は、コラーゲンタンパク質のプロセシングおよび分泌の変化(正常化)は見られなかった(図なし)。SB431542を添加した定常的活性化肝星細胞はコラーゲンの分泌が正常に変化しており、従って、本発明のベクターによってコラーゲンタンパク質を発現させた5H細胞を用いて、肝線維症の治療薬の候補物質をスクリーニングできることが分かった。
【実施例】
【0056】
《実施例8》
本実施例では、肺線維芽細胞、及び腎臓尿細管上皮細胞を用いて、肺線維症の治療薬のスクリーニングに用いる細胞、及び腎線維症の治療薬のスクリーニングに用いる細胞を作製した。
肝星細胞に代えて、肺線維芽細胞(TIG-3-20細胞、及びA549細胞)、及び腎臓尿細管上皮細胞(MDCK細胞)を用いたことを除いては、実施例6(1)の操作を繰り返して、本発明のベクターによってコラーゲンタンパク質を発現させたTIG-3-20細胞、A549細胞、及びMDCK細胞を作製した。図10に示すように、TIG-3-20細胞(図10A)、A549細胞(図10C)、及びMDCK細胞(図10D)は、コラーゲンを可視化することができた。
また、TIG-3-20細胞については、TGF-βを用いて、細胞の活性化を行った。肝星細胞に代えて、肺線維芽細胞(TIG-3-20細胞)を用いたことを除いては、実施例6(2)の操作を繰り返して、TIG-3-20細胞を活性化させた。図10Bに示すように、TIG-3-20細胞は、コラーゲンのプロセシングおよび分泌の異常を示す黄色のシグナルのみが観察されるようになり、肺線維症のモデル細胞として用いることができることが確認できた。この細胞を用いて、肺線維症の薬剤のスクリーングができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のベクターは、コラーゲンの形成過程の解析に有効に用いることができる。このコラーゲンの形成過程の解析は、コラーゲンの分子異常を起因とする疾患の原因の解明、及びそれらの治療法の開発にも有効な手段として用いることができる。また、本発明のスクリーニング方法は、コラーゲン関連疾患の治療又は予防用薬剤のスクリーニングに用いることができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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