TOP > 国内特許検索 > 扁平金属粒子、扁平金属粒子を有する成形体、扁平金属粒子の製造方法、及び金属板の製造方法 > 明細書

明細書 :扁平金属粒子、扁平金属粒子を有する成形体、扁平金属粒子の製造方法、及び金属板の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年2月15日(2018.2.15)
発明の名称または考案の名称 扁平金属粒子、扁平金属粒子を有する成形体、扁平金属粒子の製造方法、及び金属板の製造方法
国際特許分類 B22F   1/00        (2006.01)
B22F   9/04        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
C22C  21/06        (2006.01)
FI B22F 1/00 U
B22F 9/04 C
C22C 38/00 303S
C22C 21/06
国際予備審査の請求
全頁数 63
出願番号 特願2017-512561 (P2017-512561)
国際出願番号 PCT/JP2016/061913
国際公開番号 WO2016/167286
国際出願日 平成28年4月13日(2016.4.13)
国際公開日 平成28年10月20日(2016.10.20)
優先権出願番号 2015081986
優先日 平成27年4月13日(2015.4.13)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】本塚 智
【氏名】森永 正彦
【氏名】多賀谷 基博
出願人 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
審査請求 未請求
テーマコード 4K017
4K018
Fターム 4K017BA01
4K017BA03
4K017BA05
4K017BA06
4K017BA07
4K017BA10
4K017CA03
4K017EA02
4K017EA03
4K017EA04
4K017EA05
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA15
4K018BA16
4K018BA20
4K018BB01
4K018BB04
要約 扁平金属粒子は、メカノケミカル処理による集合組織を有する。扁平金属粒子の製造方法は、平均粒径0.1μm以上1000μm以下の金属粒子を含む金属粉をメカノケミカル処理することを含む。前記メカノケミカル処理では、前記金属粒子を扁平に変形する処理、扁平形状に形成された前記金属粒子を積層させる処理、及び複数の前記金属粒子からなる塊を扁平形状にする処理の少なくとも1つを含む圧延処理により、前記金属粒子から扁平な金属粒子を形成する。
特許請求の範囲 【請求項1】
メカノケミカル処理による集合組織を有する、扁平金属粒子。
【請求項2】
扁平面を有し、結晶の配向に方向性がある、扁平金属粒子。
【請求項3】
前記扁平面に沿う複数の層を有する
請求項2に記載の扁平金属粒子。
【請求項4】
前記扁平金属粒子の厚さが0.05μm以上100μm以下である
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項5】
前記扁平金属粒子の厚さをt、前記扁平金属粒子の厚さ方向と直交する方向における寸法である粒径をdとすると、当該扁平金属粒子のアスペクト比d/tは2以上である
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項6】
粉末X線回折法によって得られる前記扁平金属粒子の結晶面の極点図が、極もしくは帯状の強度分布を示す
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項7】
前記扁平金属粒子は体心立方格子構造を有する金属を含み、
前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて低角側から5つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、前記低角側から5つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高い
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項8】
前記扁平金属粒子は体心立方格子構造を有する金属を含み、
前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて{110}、{002}、{211}、{220}、{310}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{002}の回折ピークの強度比が20%以上である
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項9】
前記体心立方格子構造を有する金属は、Fe、V、Cr、Nb、Ta、及びWの群から選択される金属、または、Fe、V、Cr、Nb、Ta、及びWの少なくとも一つを含む合金である
請求項7または請求項8に記載の扁平金属粒子。
【請求項10】
前記扁平金属粒子は面心立方格子構造を有する金属を含み、
前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて低角側から5つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、前記低角側から5つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高い
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項11】
前記扁平金属粒子は面心立方格子構造を有する金属を含み、
前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて、{111}、{002}、{220}、{311}、{222}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{220}の回折ピークの強度比が10%以上である
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項12】
前記面心立方格子構造を有する金属は、Al、Ni、Cu、Pb、Ag,Pt、Au、及びPdの群から選択される金属、または、Al、Ni、Cu、Pb、Ag,Pt、Au、及びPdの少なくとも一つを含む合金である
請求項10または請求項11に記載の扁平金属粒子。
【請求項13】
前記扁平金属粒子は六方最密充填構造を有する金属を含み、
前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて低角側から3つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、前記低角側から3つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高い
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項14】
前記扁平金属粒子は六方最密充填構造を有する金属を含み、
前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて、{10-01}、{0002}、{10-11}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{0002}の回折ピークの強度比が20%以上である
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の扁平金属粒子。
【請求項15】
前記六方最密充填構造を有する金属は、Ti、Co、Zn及びZrの群から選択される金属、または、Ti、Co、Zn及びZrの少なくとも一つを含む合金である
請求項13または請求項14に記載の扁平金属粒子。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の扁平金属粒子と、前記扁平金属粒子を覆う絶縁被膜とを有する扁平金属粒子。
【請求項17】
請求項16に記載の複数の扁平金属粒子を有し、前記扁平金属粒子の扁平面が同じ方向に揃えられている成形体。
【請求項18】
平均粒径0.1μm以上1000μm以下の金属粒子を含む金属粉をメカノケミカル処理することを含み、
前記メカノケミカル処理では、前記金属粒子を扁平に変形する処理、扁平形状に形成された前記金属粒子を積層させる処理、及び複数の前記金属粒子からなる塊を扁平形状にする処理の少なくとも1つを含む圧延処理により、前記金属粒子から扁平な金属粒子を形成する
扁平金属粒子の製造方法。
【請求項19】
前記扁平金属粒子の厚さをt、前記扁平金属粒子の厚さ方向と直交する方向における寸法である粒径をdとすると、前記メカノケミカル処理において当該扁平金属粒子のアスペクト比d/tを2以上にする
請求項18に記載の扁平金属粒子の製造方法。
【請求項20】
前記メカノケミカル処理では、前記金属粒子の集合組織化を促進させる助剤として潤滑剤が用いられる
請求項18または請求項19に記載の扁平金属粒子の製造方法。
【請求項21】
前記潤滑剤は、固形の炭素化合物または固形の二硫化モリブデンの群から選択される少なくとも1つである
請求項20に記載の扁平金属粒子の製造方法。
【請求項22】
前記メカノケミカル処理は、希ガス以外のガス雰囲気下で行われる
請求項21に記載の扁平金属粒子の製造方法。
【請求項23】
前記メカノケミカル処理は、酸素及び窒素のうち少なくとも一方を有する気体の雰囲気下で行われる
請求項22に記載の扁平金属粒子の製造方法。
【請求項24】
前記潤滑剤は、流動性を有する炭素化合物であり、
前記メカノケミカル処理の後、前記扁平金属粒子に付着する前記助剤を溶剤で溶解して前記扁平金属粒子から前記助剤を除去する
請求項20に記載の扁平金属粒子の製造方法。
【請求項25】
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の扁平金属粒子を含む金属粉を前記扁平金属粒子の扁平面が基準方向に対して所定角度範囲内で配向させてかつ前記扁平金属粒子が重なるように配置する配置工程と、
前記配置工程で配置された前記金属粉の群を基準方向から圧延する圧延工程とを含む金属板の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平金属粒子、扁平金属粒子を有する成形体、扁平金属粒子の製造方法及び金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料においては、その機能の向上のため、集合組織(textureまたはcrystal textureとも呼称される)の制御がなされる。電子部品に用いられる銅合金においては、製品のコンパクト化や高機能化のため、一層の加工性向上が求められるようになってきている。銅合金材を高精度で微小な部材に加工するには、銅合金材を良好な加工性を確保した状態に圧延して圧延合金とすることが望まれる。例えば、板面に平行に(111)面を配向させることが、圧延材のプレス成形性や曲げ加工性を向上させるのに重要であることが知られている(非特許文献1,非特許文献2,特許文献1参照)。また、非特許文献4は、集合組織を有する金属板に関して、曲げ加工をはじめとした塑性加工について開示されている。
【0003】
また、鋼板の電磁気的性能向上のためにも、集合組織の制御が行われる。近年の地球環境問題の高まりから、電気機器においては小型、高出力、高エネルギー効率の向上が課題となっている。その解決手段として、電気機器中に組み込まれている電磁気部品には、電磁鋼板と呼ばれる低鉄損と高磁束密度を兼ね備えた材料が用いられている。この電磁鋼板による電気機器の特性の向上は、再結晶集合組織制御技術によって形成された、集合組織によるものである。再結晶集合組織制御の基本は、板面内に磁化容易軸を含まない{111}面を減じ、板面内に磁化容易軸を含む{110}面や{100}面を増加させることである。例えば、特許文献2および特許文献3には特殊な熱間圧延条件により集積させた{510}<001>方位を活用して{100}<001>方位を発達させる方法が提案されている。
【0004】
さらに、金属材料においては、その形状を粒子状とすることでも機能の向上をはかることができる。近年、航空機内等において、携帯用電子機器による電磁波干渉の問題、具体的には、携帯電話による電磁波干渉が原因と思われる医療機器の誤動作が報告されている。こうした不要な高周波電波を抑制するものとして、電磁波吸収シートなどの電磁波ノイズ抑制体が用いられている。電磁波吸収シートは樹脂と粒子化した金属材料を複合化して製造される。電磁波ノイズ抑制体のノイズ抑制効果は、複素透磁率の虚数部"μ"が大きな値を示すものほど優れている。μは樹脂中の金属粒子の充填率に比例して高くなる。そのため、粒子状金属材料を扁平化し、射出成形により一方向に配向させて充填率を高める手法がとられる(特許文献4参照)。また、特許文献5には、金属粉末を用いて金属板を製造する方法(粉末圧延法)が開示されている。
【0005】
また、電磁気部品の中には、低鉄損を達成するため、粒子を圧縮成型して作られるものもある。変圧器、電動機、発電機等、電磁気を利用した製品は、交番磁界を利用したものが多く、局所的に大きな交番磁界を効率的に得るために、鉄心をその交番磁界中に設けている。電磁気部品である鉄心には、磁界の周波数に応じて鉄心内部に生じる、渦電流損失を小さくすることが求められる。このような鉄心は、絶縁皮膜をコーティングした金属粒子を加圧形成して得られる。これは、渦電流発生領域を粒子界面の絶縁被膜によって細分化することによって、渦電流損失を低減できるためである(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2007/148712号パンフレット
【特許文献2】特開2000-160248号公報
【特許文献3】特開2000-160249号公報
【特許文献4】特開2000-68117号公報
【特許文献5】特開昭50-75506号公報
【0007】

【非特許文献1】Ph. Lequeu and J.J. Jonas : Metallurgical transactions A,19A(1988),105-120.
【非特許文献2】五弓勇雄、鈴木敬二郎、藤倉潮三、日本金属学会誌、32(1968)、742-747
【非特許文献3】徳岡輝和、前田徹、伊志嶺朝之、素形材、52(2011)、11-18
【非特許文献4】H. Takeda, A. Hibino, K. Tanaka : Materials transactions, 51, (2010), 614-619.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように金属材料は、電子部品用の金属板、変圧器、電動機または発電機等の鉄心、電磁波吸収シート、電子部品の導電材料等、様々なものに使用されている。本発明は、新規な金属材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する扁平金属粒子は、メカノケミカル処理による集合組織を有する。
上記課題を解決する扁平金属粒子は、扁平面を有し、結晶の配向に方向性がある。また、前記扁平金属粒子の一例は、前記扁平面に沿う複数の層を有する。
【0010】
前記扁平金属粒子の厚さが0.05μm以上100μm以下であることが好ましい。
前記扁平金属粒子としては、前記扁平金属粒子の厚さをt、前記扁平金属粒子の厚さ方向と直交する方向における寸法である粒径をdとすると、当該扁平金属粒子のアスペクト比d/tは2以上であることが好ましい。
【0011】
また、前記扁平金属粒子としては、粉末X線回折法によって得られる前記扁平金属粒子の結晶面の極点図が、極もしくは帯状の強度分布を示す。
前記扁平金属粒子は、体心立方格子構造を有する金属を含み、前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて低角側から5つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、前記低角側から5つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高いことが好ましい。
【0012】
前記扁平金属粒子は、体心立方格子構造を有する金属を含み、前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて{110}、{002}、{211}、{220}、{310}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{002}の回折ピークの強度比が20%以上であることが好ましい。
【0013】
前記体心立方格子構造を有する金属は、Fe、V、Cr、Nb、Ta、及びWの群から選択される金属、または、Fe、V、Cr、Nb、Ta、及びWの少なくとも一つを含む合金であることが好ましい。
【0014】
前記扁平金属粒子は、面心立方格子構造を有する金属を含み、前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて低角側から5つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、前記低角側から5つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高いことが好ましい。
【0015】
前記扁平金属粒子は、面心立方格子構造を有する金属を含み、前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて、{111}、{002}、{220}、{311}、{222}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{220}の回折ピークの強度比が10%以上であることが好ましい。
【0016】
前記面心立方格子構造を有する金属は、Al、Ni、Cu、Pb、Ag,Pt、Au、及びPdの群から選択される金属、または、Al、Ni、Cu、Pb、Ag,Pt、Au、及びPdの少なくとも一つを含む合金であることが好ましい。
【0017】
前記扁平金属粒子は、六方最密充填構造を有する金属を含み、前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて低角側から3つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、前記低角側から3つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高いことが好ましい。
【0018】
前記扁平金属粒子は、六方最密充填構造を有する金属を含み、前記扁平金属粒子の粉末X線回折チャートにおいて、{10-01}、{0002}、{10-11}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{0002}の回折ピークの強度比が20%以上であることが好ましい。
【0019】
前記六方最密充填構造を有する金属は、Ti、Co、Zn及びZrの群から選択される金属、または、Ti、Co、Zn及びZrの少なくとも一つを含む合金であることが好ましい。
【0020】
扁平金属粒子は、上記構成の扁平金属粒子と、前記扁平金属粒子を覆う絶縁被膜とを有する。
成形体は、複数の扁平金属粒子を有し、前記扁平金属粒子の扁平面が同じ方向に揃えられている。
【0021】
上記課題を解決する扁平金属粒子の製造方法は、平均粒径0.1μm以上1000μm以下の金属粒子を含む金属粉をメカノケミカル処理することを含む。前記メカノケミカル処理では、前記金属粒子を扁平に変形する処理、扁平形状に形成された前記金属粒子を積層させる処理、及び複数の前記金属粒子からなる塊を扁平形状にする処理の少なくとも1つを含む圧延処理により、前記金属粒子から扁平な金属粒子を形成する。
【0022】
上記扁平金属粒子の製造方法において、前記扁平金属粒子の厚さをt、前記扁平金属粒子の厚さ方向と直交する方向における寸法である粒径をdとすると、前記メカノケミカル処理において当該扁平金属粒子のアスペクト比d/tを2以上にすることが好ましい。
【0023】
上記扁平金属粒子の製造方法において、前記メカノケミカル処理では、前記金属粒子の集合組織化を促進させる助剤として潤滑剤が用いられる。
前記潤滑剤は、例えば、固形の炭素化合物または固形の二硫化モリブデンの群から選択される少なくとも1つである。この潤滑剤として固形状のものを用いる場合には、前記メカノケミカル処理は、前記メカノケミカル処理は、希ガス以外のガス雰囲気下で行われることが好ましく、特に、酸素及び窒素のうち少なくとも一方を有する気体の雰囲気下で行われることが好ましい。
【0024】
前記潤滑剤は、流動性を有する炭素化合物であり得る。この場合、前記メカノケミカル処理の後、前記扁平金属粒子に付着する前記助剤を溶剤で溶解して前記扁平金属粒子から前記助剤を除去することが好ましい。
【0025】
また、扁平金属粒子の製造方法は、メカノケミカル処理容器に、前記メカノケミカル処理容器の内容積1に対して、金属粒子を0.001以上0.99以下の体積になるように投入し、メカノケミカル処理をすることにより、集合組織を有する扁平金属粒子が得られるものである。
【0026】
また、前記製造方法は、前記メカノケミカル処理において、助剤を入れて、前記金属粒子と前記助剤を合わせたものの量(体積)がメカノケミカル処理容器の内容積の0.99以下の体積になるように投入して行うようにしてもよい。
【0027】
また、金属板の製造方法は、上記構成の扁平金属粒子を含む金属粉を前記扁平金属粒子の扁平面が基準方向に対して所定角度範囲内で配向させてかつ前記扁平金属粒子が重なるように配置する配置工程と、前記配置工程で配置された前記金属粉の群を基準方向から圧延する圧延工程とを含む。
【発明の効果】
【0028】
集合組織と扁平形状を併せ持つ扁平金属粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】扁平金属粒子の断面の電子顕微鏡写真。
【図2】実施例1について、メカノケミカル処理前の鉄粒子の電子顕微鏡写真。
【図3】実施例1について、メカノケミカル処理後の扁平鉄粒子の電子顕微鏡写真。
【図4】実施例1について、メカノケミカル処理前の純鉄粒子のXRDチャートと、メカノケミカル処理後の扁平鉄粒子のXRDチャート。
【図5】実施例1に係るメカノケミカル処理前の純鉄粒子について、(a)は{110}面の極点図、(b)は{002}面の極点図。
【図6】実施例1に係るメカノケミカル処理後の扁平鉄粒子について、(a)は、{110}面の極点図と、(b)は、{002}面の極点図。
【図7】実施例2に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図8】実施例2に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図9】実施例2に係る扁平金属粒子について、(a){110}面の極点図と、(b){002}面の極点図。
【図10】実施例2について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図11】実施例3に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図12】実施例3に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図13】実施例3に係る扁平金属粒子について、(a){110}面の極点図と、(b){002}面の極点図。
【図14】実施例3について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図15】実施例4に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図16】実施例4に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図17】実施例4に係る扁平金属粒子について、(a){110}面の極点図と、(b){002}面の極点図。
【図18】実施例4について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図19】実施例5について、メカノケミカル処理前の純銅粒子の電子顕微鏡写真。
【図20】実施例5について、メカノケミカル処理後の扁平銅粒子の電子顕微鏡写真。
【図21】実施例5に係るメカノケミカル処理前の純銅粒子について、(a){111}面の極点図、(b){002}面の極点図、(c){220}面の極点図。
【図22】実施例5に係るメカノケミカル処理後の扁平銅粒子について、(a)は{111}面の極点図、(b)は{002}面の極点図、(c)は{220}面の極点図。
【図23】実施例5について、メカノケミカル処理前の純銅粒子のXRDチャートと、メカノケミカル処理後の扁平銅粒子のXRDチャート。
【図24】実施例6に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図25】実施例6に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図26】実施例6に係る扁平金属粒子について、(a){111}面の極点図、(b){002}面の極点図、(c){220}面の極点図。
【図27】実施例6について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図28】実施例7に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図29】実施例7に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図30】実施例7に係る扁平金属粒子について、(a){111}面の極点図、(b){002}面の極点図、(c){220}面の極点図。
【図31】実施例7について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図32】実施例8に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図33】実施例8に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図34】実施例8に係る扁平金属粒子について、(a){111}面の極点図、(b){002}面の極点図、(c){220}面の極点図。
【図35】実施例8について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図36】実施例9について、メカノケミカル処理前の純チタン粒子の電子顕微鏡写真。
【図37】実施例9について、メカノケミカル処理後の扁平チタン粒子の電子顕微鏡写真。
【図38】実施例9について、メカノケミカル処理前の純チタン粒子のXRDチャートと、メカノケミカル処理後の扁平チタン粒子のXRDチャート。
【図39】実施例10に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図40】実施例10に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図41】実施例10に係る扁平金属粒子について、(a){0002}面の極点図、(b){10-11}面の極点図。
【図42】実施例10について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図43】実施例11に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図44】実施例11に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図45】実施例11に係る扁平金属粒子について、(a){0002}面の極点図、(b){10-11}面の極点図。
【図46】実施例11について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図47】実施例12に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図48】実施例12に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図49】実施例12に係る扁平金属粒子について、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図50】実施例12について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図51】実施例13に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図52】実施例13に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図53】実施例13に係る扁平金属粒子について、(a){110}面の極点図と、(b){002}面の極点図。
【図54】実施例13について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図55】実施例14に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図56】実施例14に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図57】実施例14に係る扁平金属粒子について、(a){111}面の極点図、(b){002}面の極点図、(c){220}面の極点図。
【図58】実施例14について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図59】実施例15に係る扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図60】実施例15に係る扁平金属粒子のXRDチャート。
【図61】実施例15に係る扁平金属粒子について、(a){111}面の極点図、(b){002}面の極点図、(c){220}面の極点図。
【図62】実施例15について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図63】実施例16について、黒鉛を添加して純鉄粒子をメカノケミカル処理した場合の処理時間別のXRDチャート。
【図64】実施例16について、黒鉛を添加せずに純鉄粒子をメカノケミカル処理した場合の処理時間別のXRDチャート。
【図65】実施例16に係る扁平鉄粒子について、黒鉛を添加してメカノケミカル処理した場合の、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図66】実施例16に係る扁平鉄粒子について、黒鉛を添加せずにメカノケミカル処理した場合の、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図67】実施例17について、黒鉛を添加せずに形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図68】実施例17について、黒鉛を添加せずに形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図69】実施例17について、黒鉛を添加せずに形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図70】実施例17について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図71】実施例18について、黒鉛2mgを添加して形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図72】実施例18について、黒鉛2mgを添加して形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図73】実施例18について、黒鉛2mgを添加して形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図74】実施例18について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図75】実施例19について、黒鉛140mgを添加して形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図76】実施例19について、黒鉛140mgを添加して形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図77】実施例19について、黒鉛140mgを添加して形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図78】実施例19について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図79】実施例20について、炭素繊維を添加して形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図80】実施例20について、炭素繊維を添加して形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図81】実施例20について、炭素繊維を添加して形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図82】実施例20について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図83】実施例21について、PTFEを添加して形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図84】実施例21について、PTFEを添加して形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図85】実施例21について、PTFEを添加して形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図86】実施例21について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図87】実施例22について、鉱物油を添加して形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図88】実施例22について、鉱物油を添加して形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図89】実施例22について、鉱物油を添加して形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図90】実施例22について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図91】実施例23について、MoSを添加して形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図92】実施例23について、MoSを添加して形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図93】実施例23について、MoSを添加して形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図94】実施例23について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図95】実施例24-1について酸素雰囲気中で形成せれた扁平鉄粒子のXRDチャートと、実施例24-2についてアルゴン雰囲気下で形成された扁平鉄粒子のXRDチャート。
【図96】実施例25について、酸素雰囲気で形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図97】実施例25について、酸素雰囲気で形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図98】実施例25について、酸素雰囲気で形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図99】実施例25について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図100】実施例26について、窒素雰囲気で形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図101】実施例26について、窒素雰囲気で形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図102】実施例26について、窒素雰囲気で形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図103】実施例26について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図104】実施例27について、アルゴン雰囲気で形成された扁平金属粒子の電子顕微鏡写真。
【図105】実施例27について、アルゴン雰囲気で形成された扁平金属粒子のXRDチャート。
【図106】実施例27について、アルゴン雰囲気で形成された扁平金属粒子における、(a){110}面の極点図、(b){002}面の極点図。
【図107】実施例27について、メカノケミカル処理の処理時間に対する扁平金属粒子の平均粒径の推移を示すグラフ。
【図108】扁平金属粒子について粉末X線回折の測定方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態に係る扁平金属粒子について説明する。
本実施形態に係る扁平金属粒子は集合組織を有する。従来から、集合組織を有する金属部材は知られている。例えば、圧延金属板は、集合組織を有する金属材として知れられている。今回、発明者は、更に鋭意研究の結果、圧延処理により集合組織を有する扁平鉄粒子を得ることができることを見出した。更に、金属粒子の圧延処理だけでは、集合組織の配向性が弱いことも見出した。すなわち、金属粒子を圧延する力が、金属粒子内の結晶を再配列させる力として作用していないまたは作用し難いと考えられる。このような状況において、発明者は、更に鋭意研究し、配向性が強い集合組織を有する扁平鉄粒子の製造方法を開発した。更に、その製造方法及び改良された製造方法が、他の金属にも有効であることを見出した。以下に、こうして得られる扁平金属粒子の構造、扁平金属粒子の製造方法、及び扁平金属粒子の応用例としての金属板の製造方法について説明する。

【0031】
[扁平金属粒子]
集合組織を有する扁平金属粒子の組成は特に限定されない。例えば、扁平金属粒子を構成する金属は、体心立方格子構造(「bcc構造」という。)、面心立方格子構造(以下、「fcc構造」という。)を有する金属、及び、六方最密充填構造(以下、「hcp構造」という。)を有する金属のいずれでもよい。扁平金属粒子の組成として好適なbcc構造の金属としては、鉄、バナジウム、クロム、ニオブ、タンタル、タングステンが挙げられる。また、扁平金属粒子の組成となり得るbcc構造の合金は、Fe、V、Cr、Nb、Ta、及びWのうち少なくとも一つを含む合金である。例えば、bcc構造を有する合金としては、鉄コバルト合金、鉄コバルトバナジウム合金、鉄バナジウム合金、クロム鉄合金、炭化鉄、ケイ素鉄等が挙げられる。扁平金属粒子の組成として好適なfcc構造の金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉛、銀、白金、金、パラジウムが挙げられる。また、扁平金属粒子の組成となり得るfcc構造の合金は、Al、Ni、Cu、Pb、Ag,Pt、Au、及びPdのうち少なくとも一つを含む合金である。fcc構造を有する合金としては、鉄ニッケル合金、ニッケルコバルト合金、アルミニウム-マグネシウム合金等が挙げられる。扁平金属粒子の組成として好適なhcp構造の金属としては、チタン、コバルト、亜鉛、ジルコニウムが挙げられる。扁平金属粒子の組成となり得るhcp構造の合金は、Ti、Co、Zn及びZrのうち少なくとも一つを含む合金である。

【0032】
集合組織を有する扁平鉄粒子は、変圧器、電動機及び発電機の鉄心、磁気シールド用フィラーに用いられることで、鉄心の損失の低減や磁気シールド性の向上が可能になる。
例えば、{001}面と扁平面とが平行である集合組織を含む扁平鉄粒子は、集合組織を有しない扁平鉄粒子に比べて、扁平面に平行な方向に透磁率が高くなるため、ヒステリシス損を低減される材料として有用である。扁平鉄粒子が、扁平な構造を有するため、鉄心を成形するときに、扁平鉄粒子からなる材料粉の向きを揃えることが容易である。例えば、扁平鉄粒子からなる材料粉を容器に入れて容器を振動させることにより個々の扁平鉄粒子の扁平面が同じ方向に向くように扁平鉄粒子を配列させることができる。そしてこのように配列された扁平鉄粒子から形成される成形品は、磁気方向性を有する部材として有用に使用され得る。また、扁平鉄粒子の1個あたりの容積は、電動機等の鉄心に用いられる電磁鋼板の1枚あたりの容積よりも小さいため、渦電流の低減が可能である。例えば、絶縁被膜を有する扁平鉄粒子からなる鉄粉は、電動機等の鉄心の材料になり得る。このように、集合組織を有する扁平鉄粒子は、従来にない磁性材料として有用である。

【0033】
鉄粒子以外の他の金属においては、次の用途がある。
例えば、集合組織を有する扁平金属粒子は、粉末圧延法と組み合わせることによって、集合組織を有する金属板を得ることが可能である。このような集合組織を有する金属板は、曲げ加工をはじめとした塑性加工が容易となる。従って、加工性に優れた金属板を得ることが可能である。

【0034】
以下、扁平金属粒子の構成について説明する。
扁平金属粒子は、扁平面を有する。扁平面は、扁平化した粒子における厚さ方向に直交する面を示す。扁平面は、平坦であることが好ましい。また、扁平面は、曲面であってもよい。このような扁平面は、金属粒子のメカノケミカル処理により形成される面である。すなわち、扁平面は、金属粒子を圧延すること、またはそのような型で金属粒子を摺動させながら圧延することにより得られる面である。扁平面に垂直な方向からみた扁平金属粒子の平均粒径は、0.2μm以上2000μm以下であることが好ましい。なお粒径とは、扁平面の外縁に内接する円の直径を示す。平均粒径は、粒径におけるメディアン径(D50)である。

【0035】
扁平金属粒子の厚さ(扁平面に直交する方向における扁平金属粒子の幅長)は、0.05μm以上100μm以下であることが好ましく、更には、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。扁平金属粒子の厚さが0.05μmよりも小さいとき、扁平金属粒子の製造に要する時間が長くなるからである。扁平金属粒子の厚さが100μmよりも大きいと、扁平金属粒子の1個あたりの体積が大きくなりすぎ、成形型に扁平金属粒子を充填して成形品を作るときにおいてその成形型への扁平金属粒子の充填率が低下するからである。

【0036】
また、扁平金属粒子としては、アスペクト比d/tは2以上であることが好ましい。dは扁平金属粒子の粒径を示し、tは扁平金属粒子の厚さを示す。扁平金属粒子のアスペクト比d/tの上限は特に限定されないが、例えば、10000以下であり得る。

【0037】
アスペクト比d/tが2以上であると、集合組織を有する扁平金属粒子は、金属材料の機能性の向上に寄与することができるものとなる。例えば、集合組織を有する扁平金属粒子で構成される鉄心は、集合組織と粒子の扁平化とによるヒステリシス損の低減効果を有する。このため、このような鉄心を備える電動機や発電機は、従来の電磁鋼板を使った鉄心や粉末を圧縮成型して製造した鉄心に比して、高い効率を有する電動機や発電機となり得る。

【0038】
図1に示されるように扁平金属粒子は、層構造を有することがある。各層は、扁平金属粒子の扁平面に沿う。各層は、扁平金属粒子の原料であった金属粒子の圧延により構成されたものと考えられる。すなわち、扁平金属粒子は、圧延された金属粒子の積層体である。

【0039】
図1を参照して、層構造を有する扁平鉄粒子について説明する。図1の電子顕微鏡写真は、次にようにして得た。すなわち、当該写真は、埋め込み用軟質金属板(具体的にはインジウム板)の一面に扁平鉄粒子の扁平面が接触するように、埋め込み用軟質金属板上に扁平鉄粒子を配置し、この扁平鉄粒子をイオンビームで切断し、その切断面を、電子顕微鏡で撮影して得られた。この扁平鉄粒子は、実施例1と同様の方法により純鉄粒子をメカニカル処理により得られた粒子である。なお、図1から分かるように、この扁平鉄粒子の厚さは約10μmであり、各層は1μ~3μmの厚さである。

【0040】
扁平金属粒子の結晶配列構造について説明する。
扁平金属粒子は集合組織を有する。すなわち、扁平金属粒子は、金属の結晶がランダムに配向するのではなく、少なくとも一部の結晶の結晶面が同じ方向に向く。

【0041】
したがって、扁平金属粒子の扁平面を測定面(図108参照)としてその測定面にX線を照射するX線回折によって得られる極点図は、極または帯状の強度分布になる。極の強度分布とは、極点図において中心部の配向強度が高く、中心部の周囲の配向強度は低くなっており、円周に沿う方向(以下、「周方向」という。)には配向強度が一様(変化がない)になっている分布である。帯状の強度分布とは、極点図の中心から径方向に所定距離だけ離れた所定範囲において配向強度が高く、かつ周方向に配向強度が一様(変化がない)になっている分布である。すなわち、極または帯状の強度分布とは、極点図の径方向において、配向強度の強弱がある分布である。極または帯状の強度分布は、結晶がランダムに配向する金属粒子により得られる径方向に配向強度が一様である強度分布とは異なる。極または帯状の強度分布は、結晶が所定の方向に配向していることを示す。なお、本実施例で示される極点図におけるND(normal direction)は、扁平金属粒子の扁平面に垂直な方向に対応する。

【0042】
また、集合組織を有する扁平金属粒子は、集合組織を有しない金属粒子とはその形状が異なる粉末X線回折チャート(以下、「XRDチャート」という。)を有する。なお、XRDチャートは、扁平金属粒子の扁平面を測定面(図108参照)として測定したときに得られるチャートである。

【0043】
扁平金属粒子のXRDチャートについて説明する。
以下の説明では、XRDチャートにおいて、所定結晶面の回折ピークの強度とは、チャートのベースラインからのピークの高さとして定義される。また、後述に示す回折ピークの和とは、ピークの高さの和である。そして、所定結晶面の回折ピークの強度比は、XRDチャートにおいて低角側から所定個数の結晶面の回折ピークの強度の総和を100%としたときに対する、その所定結晶面の回折ピークの強度の比として規定される。具体的には、本実施形態では、bcc構造またはfcc構造の扁平金属粒子においては、「所定結晶面の回折ピークの強度比=(所定結晶面に対応する回折ピークの強度)/(低角側から5つの回折ピークの強度の総和)×100」と規定される。hcp構造の扁平金属粒子においては、「所定結晶面の回折ピークの強度比=(所定結晶面に対応する回折ピークの強度)/(低角側から3つの回折ピークの強度の総和)×100」と規定される。

【0044】
集合組織を有しbcc構造(またはfcc構造)の扁平金属粒子について説明する。
集合組織を有するbcc構造(またはfcc構造)の扁平金属粒子のXRDチャートは、低角側から5つの結晶面の回折ピークの強度の総和を100%として、低角側から5つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高い。すなわち、集合組織を有する扁平金属粒子のXRDチャートは、集合組織を有しない金属粒子のXRDチャート(すなわち、メカノケミカル処理されていないもの)とは異なるチャートを有するため、チャートの比較により、粉末X線回折に係る扁平金属粒子が集合組織を有することが分かる。

【0045】
また、結晶構造がbcc構造(またはfcc構造)であって集合組織を有する部分と集合組織を有しない部分を有する扁平金属粒子においては、XRDチャートにおいて次の構成を備えることが好ましい。

【0046】
当該扁平金属粒子のXRDチャートは、低角側から5つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、集合組織を有しないところを基準として、集合組織を有するところは、低角側から5つの結晶面の回折ピークの強度比のうち、少なくとも1つが10%以上増加、もしくは、10%以上の減少していることが好ましい。このような構成は、扁平金属粒子が集合組織を有していることの証である。なお、低角側から5つの結晶面の回折ピークの強度比のうち、少なくとも1つが10%以上増加または10%以上の減少は集合組織が顕著になっていることを示す。

【0047】
集合組織を有しhcp構造の扁平金属粒子について説明する。
集合組織を有するhcp構造の扁平金属粒子のXRDチャートは、低角側から3つの結晶面の回折ピークの強度の総和を100%として、低角側から3つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高い。

【0048】
また、結晶構造がhcp構造であって集合組織を有する部分と集合組織を有しない部分を有する扁平金属粒子においては、XRDチャートにおいて次の構成を備えることが好ましい。

【0049】
当該扁平金属粒子のXRDチャートは、低角側から3つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、集合組織を有しないところを基準として、集合組織を有するところは、低角側から3つの結晶面の回折ピークの強度比のうち、少なくとも1つが10%以上増加、もしくは、10%以上の減少していることが好ましい。このような構成は、扁平金属粒子が集合組織を有していることの証である。なお、低角側から3つの結晶面の回折ピークの強度比のうち、少なくとも1つが10%以上増加または10%以上の減少は、集合組織が顕著になっていることを示す。

【0050】
扁平金属粒子の作用を説明する。扁平金属粒子は、集合組織を有しかつ扁平形状を有する。そして、個々の扁平金属粒子の結晶配向は、一律に、扁平面に対して所定方向に向く。したがって、個々の扁平金属粒子を、その扁平面が同じ方向に向くように配列することにより、複数の扁平金属粒子により構成されるブロックは、結晶構造的に方向性を有するようになる。

【0051】
扁平金属粒子の効果を説明する。
扁平金属粒子は、メカノケミカル処理による集合組織を有する。すなわち、扁平金属粒子は、扁平面を有し、結晶の配向に方向性がある。粉末X線回折法によって得られる扁平金属粒子の結晶面の極点図は、極もしくは帯状の強度分布を示す。このような、メカノケミカル処理による集合組織を有する扁平金属粒子は、金属材料の機能性の向上に寄与する。

【0052】
このような扁平金属粒子は、扁平面に沿う複数の層を有するものとして構成され得る。また、扁平金属粒子の厚さが0.05μm以上100μm以下であることが好ましい。また、扁平金属粒子としては、アスペクト比d/tは2以上であることが好ましい。扁平金属粒子からなる粉体を材料として用いるとき、個々の扁平金属粒子を配向させ易いからである。扁平金属粒子それぞれが、扁平面が揃うようにして配置されるとき、全体として構造的な方向性を有するようになる。例えば、鉄含有の扁平金属粒子では、扁平面が揃えられた扁平金属粒子のブロックは、磁気方向性を有し、鉄心として好適に用いられ得る。

【0053】
bcc構造を有する扁平金属粒子は、扁平金属粒子のXRDチャートにおいて低角側から5つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、低角側から5つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高いことが好ましい。

【0054】
または、bcc構造を有する扁平金属粒子は、XRDチャートにおいて、{110}、{002}、{211}、{220}、{310}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{002}の回折ピークの強度比が20%以上であることが好ましく、更には、{002}の回折ピークの強度比が40%以上であることがより好ましい。

【0055】
fcc構造を有する扁平金属粒子は、扁平金属粒子のXRDチャートにおいて低角側から5つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、低角側から5つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高いことが好ましい。

【0056】
または、fcc構造を有する扁平金属粒子は、XRDチャートにおいて、{111}、{002}、{220}、{311}、{222}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{220}の回折ピークの強度比が10%以上であることが好ましい。

【0057】
例えば、hcp構造を有する扁平金属粒子は、扁平金属粒子のXRDチャートにおいて低角側から3つの結晶面の回折ピークの全強度を100%としたとき、低角側から3つの結晶面の回折ピークのうち少なくとも1つの回折ピークの強度比は、集合組織を有しない金属粒子における回折ピークの強度比に比べて10%以上高いことが好ましい。

【0058】
hcp構造を有する扁平金属粒子は、XRDチャートにおいて、{10-01}、{0002}、{10-11}の回折ピークの全強度を100%としたとき、{0002}の回折ピークの強度比が20%以上であることが好ましい。

【0059】
[扁平金属粒子の製造方法]
次に、製造方法について説明する。
集合組織を有する扁平金属粒子は、メカノケミカル処理(後述参照)により得られる。

【0060】
メカノケミカル処理される金属粒子は上述したように限定されないが、金属粒子の扁平化が容易であるものが好ましい。メカノケミカル処理される金属粒子の平均粒径は、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、1μm以上500μm以下であることがより好ましい。

【0061】
本実施形態における扁平金属粒子の製造方法は、メカノケミカル処理容器に、メカノケミカル処理容器の内容積1に対して金属粒子の量が体積比で0.001以上0.99以下になるように原料である金属粒子を投入し、メカノケミカル処理をする。なお、メカノケミカル処理容器とともにボール等の球状媒体が用いられる場合には、メカノケミカル処理容器の内容積1に対して、金属粒子と球状媒体とを併せた量が体積比で0.001以上0.99以下になるようされる。このことにより、集合組織を有する扁平金属粒子が得られる。

【0062】
メカノケミカル処理の処理時間は制限されることが好ましい。後述するように、メカノケミカル処理の処理時間が長すぎると、アスペクト比が小さくなり過ぎたり、合金化したりするからである。メカノケミカル処理の処理時間は、メカノケミカル処理の装置(例えば、ボールミル装置)及びその条件(ボールの大きさ及び質量、容器の回転数)により適宜設定され得る。

【0063】
メカノケミカル処理容器内の雰囲気は、希ガス以外のガス雰囲気であることが好ましい。特に、メカノケミカル処理容器内の雰囲気は、酸素雰囲気、窒素雰囲気または酸素及び窒素の混合気体雰囲気(例えば空気雰囲気)であることが好ましい。例えば、所定の金属、例えば、純鉄、純銅等では酸素を含む雰囲気でメカノケミカル処理を行うことで、配向性の強い集合組織を有する扁平金属粒子を得ることが可能である。また、純鉄では、窒素雰囲気で純鉄粒子をメカノケミカル処理することで、配向性の強い集合組織を有する扁平金属粒子を得ることが可能である。一方、アルゴン雰囲気下でかつ助剤を用いて純鉄粒子をメカノケミカル処理しても、強い配向性のある扁平金属粒子を得ることができ難い(第24~第27実施例参照)。要するに、メカノケミカル処理において、金属粒子の集合組織化の促進のためには、助剤を添加するだけでなく、酸素または窒素を含む雰囲気下でメカノケミカル処理することが好ましい。

【0064】
メカノケミカル処理では、扁平金属粒子のアスペクト比d/tは2以上にするように、金属粒子を加工することが好ましい。好ましくはアスペクト比d/tは2以上10000以下であり、更に好ましくは、4以上1000以下である。

【0065】
また、メカノケミカル処理では助剤を用いることが好ましい。
助剤は、メカノケミカル処理による金属粒子の集合組織化を促進させるものである。助剤は、メカノケミカル処理される金属粒子と、メカノケミカル処理を行う物体(例えば、後述の実施例では鋼球)との間の摩擦係数を低下させる物質であることが好ましい。一例として、潤滑剤が助剤として用いられる。助剤として用いられる潤滑剤は、固形のものでも、液状(流動体)のものでもよい。固形の潤滑剤としては、炭素化合物が好適に用いられ得る。例えば、固形の潤滑剤として、黒鉛(図面では「Gp」と示す。)、フッ化黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」)、炭素繊維等が挙げられる。また、非炭素系の固形の潤滑剤としては、二硫化モリデブンが挙げられる。液状の潤滑剤としては、脂肪酸エステル、鉱物油(石油由来の液状物質)等が挙げられる。これら潤滑剤は、複数を組み合わせて助剤として用いられ得る。

【0066】
このような助剤を用いることにより、配向性の強い集合組織を有する扁平金属粒子を得ることができる。特に、bcc構造及びfcc構造の金属粒子については、助剤を用いてメカノケミカル処理を行うと、助剤を用いない場合に比べて、集合組織を有する扁平金属粒子が得られ易い。一方、hcp構造の金属粒子については、助剤の有無に関わらず、メカノケミカル処理により集合組織を有する扁平金属粒子が得られる。すなわち、bcc構造及びfcc構造の金属粒子において金属粒子内の結晶を配向させるためには、助剤を用いてメカノケミカル処理を行うことが好ましい。一方、hcp構造の金属粒子において金属粒子内の結晶を配向させるためには、メカノケミカル処理を行うことで足り、助剤は必要に応じて用いられ得る。

【0067】
なお、助剤を用いてメカノケミカル処理を行う場合は、メカノケミカル処理容器の内容積1に対して金属粒子と助剤とを併せた量が体積比で0.99以下になるように、金属粒子と助剤とをメカノケミカル処理容器に投入される。なお、メカノケミカル処理において球状媒体を用いる場合は、メカノケミカル処理容器の内容積1に対して金属粒子と助剤と球状媒体とを併せた量が体積比で0.99以下になるように、金属粒子と助剤と球状媒体とをメカノケミカル処理容器に投入される。

【0068】
メカノケミカル処理とは、粒子状の材料に圧縮力や摩擦力などの機械的エネルギーを加えることによって、材料同士の力学的及び/または化学的相互作用を誘起すると共に、粒子形状を変形させる処理法である。メカノケミカル処理の具体的手段としては、特に限定されるものではなく、ミル、粉体を対象にした機械的粉砕装置を用いることができる。具体的には、メカノケミカル処理を行う装置としては、例えば、ビーズミル、遊星式、転動式、振動式のボールミルや、ロッキングミル、タワーミル、メカノフュージョン、ジェットミル、ハイブリダイザー、ヘンシェルミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。

【0069】
メカノケミカル処理の際に用いられるミル等のメカノケミカル処理容器(以下、「処理容器」とも記載する)については、その材質は限定されるものではないが、例えば金属または金属酸化物製のものであることが好ましい。これは、メカノケミカル処理を行う際に、上記のような材料でできていると、金属粒子に十分な機械的エネルギーを付与することができるためである。

【0070】
上記したメカノケミカル処理を行う装置として、アトライタ(日本コークス工業、商品名)のような球状媒体を使用しない装置を選択した場合には球状媒体を入れる必要はなく、その球状媒体の導入量を0とすることができる。

【0071】
球状媒体を使用する装置を選択した場合、球状媒体の材質については限定されるものではなく、処理容器の大きさや材質により選択することができる。なお、球状媒体としては金属または金属酸化物のものを用いた場合は、メカノケミカル処理を行う際、粉末材料に十分な機械的エネルギーを付与することができる。

【0072】
そして、球状媒体の導入量としては、メカノケミカル処理容器の内容積1に対して0より大きく0.99以下の体積比になるように処理容器に投入することが好ましく、特に0より大きく0.5以下の体積比になるように処理容器に投入することがより好ましい。

【0073】
これは、球状媒体の投入量が係る範囲であると、メカノケミカル処理を行った際に金属粒子に対して十分な機械的エネルギーを付加することができるためである。なお、ここでいうメカノケミカル処理容器の内容積とは、金属粒子、球状媒体等の試料を投入する部分の体積を意味している。また、メカノケミカル処理で用いられる球状媒体のサイズについては特に限定されるものではなく、処理容器のサイズ等に応じて選択することができる。

【0074】
以下に、扁平金属粒子の製造方法の効果を説明する。
扁平金属粒子の製造方法は、平均粒径0.1μm以上1000μm以下の金属粒子を含む金属粉をメカノケミカル処理する工程を含む。メカノケミカル処理では、(a)金属粒子を扁平に変形する処理、(b)扁平形状に形成された金属粒子を積層させる処理、(c)複数の金属粒子からなる塊を扁平形状にする処理の少なくとも1つを含む。すなわち、上記(a)~(c)のいずれかの処理により金属粒子を圧延することにより、集合組織を有する扁平金属粒子が得られる。集合組織を有するためには、各実施例で示されるように、メカノケミカル処理の処理時間は所定時間に規定されることが好ましい。処理時間が長すぎると扁平金属粒子のアスペクト比が小さくなり過ぎたり、扁平金属粒子内で合金化が進行するからである。メカノケミカル処理の処理時間は、XRDチャートの変化に基づいて規定され得る。

【0075】
また、上記扁平金属粒子の製造方法において、扁平金属粒子のアスペクト比d/tは2以上となるように圧延する。これにより、アスペクト比d/tが2よりも小さい扁平金属粒子のアスペクト比d/tに比べて、扁平金属粒子の扁平面を同じ方向に向け易くなる。

【0076】
また、メカノケミカル処理は、酸素及び窒素のうち少なくとも一方を有する気体の雰囲気下で行うことが好ましい。酸素、窒素、またはその混合気体(例えば空気)により、金属粒子の集合組織化が促進されるからである。また、メカノケミカル処理では助剤が用いられることが好ましい。助剤を用いたメカノケミカル処理により、金属粒子の集合組織化が促進されるからである。助剤としては、各種の炭素化合物及び二硫化モリブデンの群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。助剤として、液状の炭素化合物(例えば、鉱物油)を用いても良い。この場合、メカノケミカル処理の後、扁平金属粒子に付着する助剤を溶剤で溶解して扁平金属粒子から助剤を除去することが好ましい。

【0077】
また、扁平金属粒子の製造方法は、メカノケミカル処理容器に、メカノケミカル処理容器の内容積1に対して、金属粒子を0.001以上0.99以下の体積になるように投入し、メカノケミカル処理をする。これにより、集合組織を有する扁平金属粒子が得られる。

【0078】
また、製造方法は、メカノケミカル処理において、助剤を入れて、金属粒子と助剤を合わせたものの量(体積)がメカノケミカル処理容器の内容積の0.99以下の体積になるように投入して行うようにしてもよい。

【0079】
[金属板の製造方法]
集合組織を有する金属板の製造方法について説明する。
集合組織を有する金属板は、例えば、鋳塊から熱間圧延、冷間圧延、熱処理を経て得られるところであるが、このような従来製法に代えて、集合組織を有する金属板は、集合組織を有する扁平金属粒子を用いて製造され得る。すなわち、上述の集合組織を有する扁平金属粒子は、集合組織を有する金属板の原料となり得る。例えば、集合組織を有する扁平粒子を上述に示したように扁平面が同じ方向(基準方向に対して所定角度範囲内の方向)に向くように、かつ扁平金属粒子が重なるように配置する(配置工程)。そして、このように配置された扁平粒子を粉末圧延法で処理すること(圧延工程)により、集合組織を有する金属板を得ることができる。この製法は、熱処理を含まない点で優れている。なお、こうして得られる金属板はその用途により適宜熱処理され得る。
【実施例】
【0080】
以下に示す各実施例で使用された装置及び測定条件について説明する。
電子顕微鏡写真を得る電子顕微鏡としては、日本電子製/型式JCM-6000を用いた。そして、加速電圧を15kVに、プローブ電流を標準値に、フィラメント輝度を標準値に、モードを高真空モードに設定して、二次電子像を得た。
【実施例】
【0081】
XRDチャートを得るX線回折装置としては、リガク社製/型式Smartlabを用いた。X線源をCuとし、管電圧を40kVとし、管電流を30mAとして集中法により測定した。X線源側ソーラースリットは5.0degとし、入射スリット(IS)の長手幅を10.0mmとした。検出器側ソーラースリットを5.0deg、入射スリットを1/2degとし、第1の受光側スリット(RS1)の幅長を20.0mmとし、第2の受光側スリット(RS2)の幅長を20.0mmとした。また、アッテネータをオープン(使用せず)にして、スピード計数時間を5deg/minとし、Kβフィルタを挿入して測定した。
【実施例】
【0082】
極点図を得るX線回折装置としては、リガク社製/型式Smartlabを用いた。X線源をCuとし、管電圧を40kVとし、管電流を30mAとしてインプレーン極点測定法により測定した。X線源側ソーラースリットを0.5degとし、入射スリット(IS)の長手幅を10.0mmとした。検出器側ソーラースリットを0.5deg、入射スリット(IS)を1.0mm、第1の受光側スリット(RS1)の幅長を2.0mmとし、第2の受光側スリット(RS2)の幅長を2.0mmとした。アッテネータをオープン(使用せず)にして、スピード計数時間を50deg/minとした。測定範囲については、実施例により異ならせた。測定範囲は、測定面に垂直な軸に対する角度(以下、「α角」)の走査範囲と、測定面に垂直な軸を回転中心軸とする回転方向の角度(以下、「β角」)の走査範囲とにより定義される。実施例1の極点図(図5及び図6)、実施例5の極点図(図21及び図22)、及び実施例16の極点図(図65及び図66)の作成においては、α角を0~90degの範囲で、β角を0~360degの範囲で走査した。
【実施例】
【0083】
その他の実施例の極点図の作成では、α角は、0~90degの範囲で、β角を0~10degの範囲で走査した。その他の実施例の極点図は、α角0~90degの範囲で、β角度0~10degの範囲で測定されたマップデータを、β角方向に360degに展開(すなわちコピー)したものである。このように展開した極点図は、次の理由により、β角において360deg走査して得られた極点図と実質的に変わらないと考えられる。すなわち、測定対象物は、多数の扁平金属粒子の集合体である。個々の扁平金属粒子の扁平面は測定面(図108参照)に沿うように揃えられているが、測定面に垂直な軸(ND方向)を中心軸とする回転方向には扁平粒子の向きは揃えられていないからである。Smartlabによる測定で得られたデータに基づいて極点図を得るための計算ソフトとしては、3D ExploreまたはOriginProを用いた。
【実施例】
【0084】
X線回折装置を用いて行われる測定に用いられる試料は、図108に示されるように、扁平金属粒子100を収容する凹部301を有する容器300に入れられて、この容器300に振動を与えて扁平金属粒子100の扁平面101が揃うようにした。このように揃えられた扁平面101(実際には、扁平面の向く方向はばらつきがある。)を測定面200とした。
【実施例】
【0085】
メカノケミカル処理を行う装置としては、日新技研株式会社製/型式:NEV-MA-8型の遠心ボールミルを用いた。ボールミルの回転速度を6(装置目盛りによる設定、回転数6.4rps)とした。また、メカノケミカル処理の際に使われる球状媒体(鋼球)としては、鋼球素材SUJ-2、鋼球直径9.52mm(呼び直径3/8)を用いて、鋼球投入数を20個とした。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
純鉄粒子(株式会社神戸製鋼製、品番:アトメル300M)と黒鉛粒子(日本黒鉛工業株式会社製、商品名:UCP)を遠心ボールミル(NEV-MA-8)に入れ、大気雰囲気下でメカノケミカル処理した。処理条件として、遠心ボールミルへの純鉄粒子投入量は2.0g、黒鉛粒子添加量は0.017g、球状媒体としてはφ9.52mmの鋼球を20個、回転数6.4rps、処理時間1hとした。この時、遠心ボールミルのメカノケミカル処理容器の内容積1に対する純鉄粒子の投入量(体積比)は0.00363、黒鉛粒子の投入量(体積比)は0.00009、球状媒体である鋼球の投入量(体積比)は0.12786となっている。
【実施例】
【0087】
得られた扁平鉄粒子を電子顕微鏡及び粉末X線回折法で分析した。結果をそれぞれ図2~図6に示す。図2及び図3に示すように、メカノケミカル処理によって粒状の鉄粒子(図2参照)から、扁平形状の鉄粒子(図3参照)が得られた。粒子の長手方向の長さの平均は280μmであった。また厚さの平均は2μmであった。従って、粒子の長手方向の長さと厚さの比で定義されるアスペクト比は140であった。
【実施例】
【0088】
図4には、上記メカノケミカル処理を行った鉄粒子のXRDチャートを示す。また、比較のため、メカノケミカル処理前の鉄粒子のXRDチャートも合わせて示す。
これによれば、鉄粒子の低角側から5つの結晶面の回折ピークの強度の和を100%としたとき、上記メカノケミカル処理前後の鉄粒子の回折ピーク強度比は表1に示すようであった。回折ピーク強度比の変化(表1の処理前後の回折ピーク強度比の変化率)から、メカノケミカル処理後の鉄粒子には、集合組織が形成されていることが確認された。「処理前後の回折ピーク強度比の変化率」は、(処理後の回折ピーク強度比-処理前の回折ピーク強度比)/(処理前の回折ピーク強度比)×100として定義される。なお、実施例の説明において、結晶面を「回折面」ということがある。
【実施例】
【0089】
【表1】
JP2016167286A1_000003t.gif
【実施例】
【0090】
表1に示すように、{110}、{002}、{211}、{220}、{310}のいずれの結晶面(回折面)も、10%以上増加、もしくは、減少していることが確認できた。特に、回折面{002}では、回折ピークが+503.2%増加していることが確認できた。
【実施例】
【0091】
図6には、上記メカノケミカル処理を行った鉄粒子の極点図を示す。また、比較のため、図5には、メカノケミカル処理前の鉄粒子の極点図も合わせて示す。{110}では図5(a)に示すように、また、{002}では図5(b)に示すようにメカノケミカル処理前の鉄粒子の極点図には、ランダムなパターンが認められ、集合組織が存在しないことが分かる。
【実施例】
【0092】
一方、図6(b)に示すように、メカノケミカル処理後の鉄粒子の{002}面の回折ピークによる極点図には、中心にただ一つの極が、図6(a)に示すように、{110}面の回折ピークによる極点図には、45°付近の位置に帯状の強度分布が認められた。{002}面と{001}面とは平行であるから、これにより扁平鉄粒子には、{001}面と扁平面とが平行な集合組織が形成されていることが確認された。
【実施例】
【0093】
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、純鉄の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。実施例2では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0094】
図7に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は133.2である。
図8に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0095】
また、図9(a)及び図9(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図10に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0096】
(実施例3)
実施例1と同様の方法により、純バナジウム(株式会社高純度化学研究所、品番:VVE01PB)の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。助剤として、黒鉛粒子(日本黒鉛工業株式会社製、商品名:UCP)を用いた。実施例3では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0097】
図11に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は492.0である。
図12に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0098】
また、図13(a)及び図13(b)に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図14に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が2時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にある。
【実施例】
【0099】
(実施例4)
実施例1と同様の方法により、純ニオブ(株式会社高純度化学研究所、品番:NBE05PB)の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。助剤として、黒鉛粒子(日本黒鉛工業株式会社製、商品名:UCP)を用いた。実施例4では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0100】
図15に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は213.3である。
図16に示されるように、メカノケミカル処理を0.1時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0101】
また、図17(a)及び図17(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図18に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が2時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にある。
【実施例】
【0102】
実施例1~実施例4及び表4から分かるように(図2~図18参照)、bcc構造の金属は、いずれもメカノケミカル処理により集合組織が得られる。また、メカノケミカル処理の処理時間により扁平粒子の平均粒径が変化することが分かる。また、メカノケミカル処理の初期段階では平均粒径が徐々に大きくなる。また、メカノケミカル処理の時間が長いと平均粒径が小さくなる場合がある。このことは、扁平粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理の処理時間により制御可能であることを示す。また、XRDチャートにおける{002}面の回折ピーク強度比は、メカノケミカル処理の処理時間の初期段階では徐々に増大するが、その後減少する。その理由は、メカノケミカル処理の処理時間が長くなるとアスペクト比が小さくなり、極点図の測定において容器に扁平金属粒子を充填する際その向きが揃わなくなり、各扁平金属粒子の向きが分散してしまうことに起因する。一方、メカノケミカル処理時間とともにアスペクト比が漸次大きくなるにも関わらず、{002}面の回折ピーク強度比が一旦大きくなりその後小さくなる場合もある(実施例4参照)。これらのことから、集合組織を有しかつ適当なアスペクト比である扁平金属粒子を得るためには、メカノケミカル処理の処理時間を適切な時間に設定することが必要である。すなわち、メカノケミカル処理の処理時間により、集合組織化率(扁平金属粒子中の結晶の全個数に対する同じ向きに配向されている個数の割合)及びアスペクト比が制御され得る。
【実施例】
【0103】
(実施例5)
純銅粒子(株式会社高純度化学研究所製、品番:293770)と黒鉛粒子(日本黒鉛工業株式会社製、商品名:UCP)を遠心ボールミル(NEV-MA-8)に入れ、大気雰囲気下でメカノケミカル処理した。処理条件として、遠心ボールミルへの純銅粒子投入量は2.0g、黒鉛粒子添加量は0.017g、球状媒体としてはφ9.52mmの鋼球(SUJ-2製)を20個、回転数6.4rps、処理時間1hとした。この時、遠心ボールミルの処理容器の内容積1に対する純銅粒子の投入量(体積比)は0.00319、黒鉛粒子の投入量(体積比)は0.00009、球状媒体である鋼球の投入量(体積比)は0.12786となっている。
【実施例】
【0104】
得られた扁平銅粒子を電子顕微鏡及び粉末X線回折法で分析した。その結果をそれぞれ図19~図23に示す。
図19に示す粒状の銅粒子から、メカノケミカル処理により図20に示す扁平形状の銅粒子が得られた。実施例5の扁平金属粒子の長手方向の長さの平均は78μmであった。また厚さの平均は1μmであった。従って、扁平金属粒子の長手方向の長さと厚さの比で定義されるアスペクト比は78であった。
【実施例】
【0105】
図23には上記メカノケミカル処理を行った銅粒子のXRDチャートを示す。また、比較のため、メカノケミカル処理前の銅粒子のXRDチャートも合わせて示す。表2には、銅粒子の低角側から5つの結晶面の回折ピークについて、その強度の和を100%としたとき、上記メカノケミカル処理前後の銅粒子の回折ピークの強度比を示す。表2に示すように、{111}、{220}、{311}、{222}の結晶面では、10%以上の回折ピーク強度比の変化(表2の処理前後の回折ピーク強度比の変化率)から、処理後の銅粒子には、集合組織が形成されていることが確認された。
【実施例】
【0106】
【表2】
JP2016167286A1_000004t.gif
【実施例】
【0107】
図22(a)~(c)には、上記メカノケミカル処理を1.0時間にわたって行われた銅粒子の極点図を示す。また、図21(a)~(c)には、比較のため、メカノケミカル処理前の銅粒子の極点図も合わせて示す。
【実施例】
【0108】
図21(a)の{111}の極点図、図21(b)の{002}の極点図、及び図21(c)の{220}の極点図に示すように、処理前の銅粒子の極点図には、ランダムなパターンが認められ、集合組織が存在しないことが確認された。
【実施例】
【0109】
一方、メカノケミカル処理を行った銅粒子について、{220}面の回折ピークは、図22(c)の極点図に示すように、中心に明瞭な一つの極と60°付近の位置に薄い帯状の強度分布が認められた。また、メカノケミカル処理を行った銅粒子について、図22(a)に示される{111}面の極点図、及び図22(b)に示される{002}面の極点図には、45°付近の位置に帯状の強度分布が認められた。このことから、扁平銅粒子には、主に{220}面と扁平面の平行な集合組織が形成されていることが確認された。また、{220}面に含まれる方向はランダムに配向していることが確認された。このことから、本手法はbcc構造をもつ金属(例:鉄)に限定されず、fcc構造をもつ金属(例:銅)にも適用できることが確認された。
【実施例】
【0110】
(実施例6)
実施例5と同様の方法により、純銅の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。実施例6では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0111】
図24に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は277.9である。
図25に示されるように、メカノケミカル処理を0.25時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{220}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0112】
また、図26(a)、図26(b)及び図26(c)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{111}面の極点図、{002}面の極点図及び{220}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図27に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0113】
(実施例7)
実施例5と同様の方法により、純アルミニウム(ヒカリ素材工業株式会社、品番:Al-4N)の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。助剤として、黒鉛粒子(日本黒鉛工業株式会社製、商品名:UCP)を用いた。実施例7では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0114】
図28に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は1108.8である。
図29に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子では、{220}面の回折ピーク強度が{111}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0115】
また、図30(a)、図30(b)、及び図30(c)に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子の{111}面の極点図、{002}面の極点図及び{220}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図31に示されるように、メカノケミカル処理時間の平均粒径は処理時間とともに大きくなっている。
【実施例】
【0116】
(実施例8)
実施例5と同様の方法により、純ニッケル(株式会社高純度化学研究所、品番:304091)の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。助剤として、黒鉛粒子(日本黒鉛工業株式会社製、商品名:UCP)を用いた。実施例7では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0117】
図32に示されるように、メカノケミカル処理を2時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は398.3である。
図33に示されるように、メカノケミカル処理を0.50時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{220}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0118】
また、図34(a)、図34(b)及び図34(c)に示されるように、メカノケミカル処理を2時間行って得られた扁平金属粒子の{111}面の極点図、{002}面の極点図及び{220}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図35に示されるように、メカノケミカル処理時間の平均粒径は処理時間とともに大きくなっている。
【実施例】
【0119】
実施例5~実施例8から分かるように(図19~図35参照)、fcc構造の金属は、いずれもメカノケミカル処理により金属粒子は集合組織化される。fcc構造の扁平金属粒子は、bcc構造の扁平金属粒子と同様の効果を有する。なお、銅含有の扁平金属粒子及びニッケル含有の扁平金属粒子では、bcc構造の扁平金属粒子に比べてXRDチャートにおいて回折ピーク強度比の変化が乏しいものの、いずれの極点図も、極または帯状の強度分布が得られていることから、金属粒子が集合組織化されていることが分かる。一方、アルミニウム含有の扁平金属粒子では、bcc構造の扁平金属粒子と同様にXRDチャートにおいて回折ピーク強度比の変化が顕著である。
【実施例】
【0120】
(実施例9)
純チタン粒子(株式会社高純度化学研究所製、品番:304092)を遠心ボールミル(NEV-MA-8)に入れ、大気雰囲気下でメカノケミカル処理した。この実施例9では、助剤を用いていない。処理条件として、遠心ボールミルへの純チタン粒子投入量は1.0g、球状媒体としてはφ9.52mmの鋼球(SUJ-2製)を20個、回転数6.4rps、処理時間1hとした。この時、遠心ボールミルの処理容器の内容積1に対する純チタン粒子の投入量(体積比)は0.00317、球状媒体である鋼球の投入量(体積比)は0.12786となっている。
【実施例】
【0121】
得られた扁平チタン粒子を電子顕微鏡及び粉末X線回折法で分析した。結果をそれぞれ図36~図38に示す。
図36に示すメカノケミカル処理前の粒状のチタン粒子から、メカノケミカル処理により、図37に示す扁平形状のチタン粒子が得られた。
【実施例】
【0122】
扁平金属粒子の長手方向の長さの平均は58μmであった。また厚さの平均は7μmであった。従って、扁平金属粒子の長手方向の長さと厚さの比で定義されるアスペクト比は8.3であった。
【実施例】
【0123】
図38には上記メカノケミカル処理を行ったチタン粒子のXRDチャートを示す。また、比較のため、メカノケミカル処理前のチタン粒子のXRDチャートも合わせて示す。
表3には、図38に示されているチタン粒子の低角側から5つの結晶面の回折ピークについて、その強度の和を100%としたとき、上記メカノケミカル処理前後のチタン粒子の回折ピークの強度比を示す。表3に示すように、{10-10}、{0002}、{10-11}、{10-12}、{11-20}の結晶面では、10%以上の回折ピーク強度比の変化から、メカノケミカル処理後のチタン粒子には、集合組織が形成されていることが確認された。なお、ミラー指数における「-」は、ミラー指数表示における負側を表わす「オーバーライン」の代用である。
【実施例】
【0124】
このことから、本製造方法はbcc構造をもつ金属(例:鉄)や、fcc構造をもつ金属(例:銅)に限定されず、hcp構造を有する金属(例:チタン)にも適用できることが確認された。
【実施例】
【0125】
また、黒鉛粒子等の固体潤滑剤を使用することなく、メカノケミカル処理を行うことによっても好適な扁平金属粒子を得られることが確認された。
【実施例】
【0126】
【表3】
JP2016167286A1_000005t.gif
【実施例】
【0127】
(実施例10)
実施例9と同様の方法により、純チタンの扁平金属粒子を形成した。助剤は用いられていない。実施例10では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0128】
図39に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は16.6である。
図40に示されるように、メカノケミカル処理を0.25時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{0002}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0129】
また、図41(a)及び図41(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{0002}面の極点図、及び{10-11}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図42に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0130】
(実施例11)
実施例9と同様の方法により、純亜鉛(株式会社高純度化学研究所、品番:ZNE06PB)の扁平金属粒子を形成した。助剤は用いられていない。実施例11では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0131】
図43に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は135.6である。
図44に示されるように、メカノケミカル処理を0.25時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{0002}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0132】
また、図45(a)及び図45(b)に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子の{0002}面の極点図、及び{10-11}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図46に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が0.5時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が0.5時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0133】
実施例9~実施例11(図36~図46参照)から分かるように、hcp構造の金属は、いずれもメカノケミカル処理により集合組織が得られる。hcp構造の扁平金属粒子は、bcc構造の扁平金属粒子と同様の効果を有する。なお、チタン含有の扁平金属粒子及び亜鉛含有の扁平金属粒子では、bcc構造の扁平金属粒子に比べてXRDチャートにおいて回折ピーク強度比の変化が乏しいものの、いずれの極点図も、極または帯状の強度分布が得られていることから、金属粒子が集合組織化されていることが分かる。
【実施例】
【0134】
また、実施例では示していないが、助剤として黒鉛を用いて純チタンをメカノケミカル処理して得られる扁平金属粒子は、黒鉛を用いずに純チタンをメカノケミカル処理して得られる扁平金属粒子と略同様の特性が得られた。また、助剤として黒鉛を用いて純亜鉛をメカノケミカル処理して得られる扁平金属粒子は、黒鉛を用いずに純亜鉛をメカノケミカル処理して得られる扁平金属粒子と略同様の特性が得られた。
【実施例】
【0135】
(実施例12)
実施例1と同様の方法により、鉄コバルト合金(Fe-48Co-2V、パーメンジュール)の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。実施例12では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0136】
図47に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は195.2である。
図48に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0137】
また、図49(a)及び図49(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図50に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が2時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にある。
【実施例】
【0138】
(実施例13)
実施例1と同様の方法により、ケイ素鉄(Fe-3Si、エプソンアトミックス社製、品番:3.5%Si鋼パウダー)の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。実施例13では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0139】
図51に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は134.1である。
図52に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{002}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0140】
また、図53(a)及び図53(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図54に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が2時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にある。
【実施例】
【0141】
(実施例14)
実施例1と同様の方法により、ニッケル鉄合金(Fe-47Ni、パーマロイ、大同特殊鋼株式会社、品番:Fe-47Ni)の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。実施例14では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0142】
図55に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は57.4である。
図56に示されるように、メカノケミカル処理を0.50時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{220}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0143】
また、図57(a)、図57(b)及び図57(c)に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子の{111}面の極点図、{002}面の極点図及び{220}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図58に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が0.25時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が0.25時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0144】
(実施例15)
実施例1と同様の方法により、マグネシウム含有アルミニウム合金(Al-5Mg、ヒカリ素材工業株式会社、品番:Al-5Mg)の扁平金属粒子を形成した。遠心ボールミルへの黒鉛粒子添加量は0.014gとした。実施例15では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0145】
図59に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は488.7である。
図60に示されるように、メカノケミカル処理を1.00時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{220}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0146】
また、図61(a)、図61(b)及び図61(c)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{111}面の極点図、{002}面の極点図及び{220}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図62に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0147】
実施例12~実施例15から分かるように(図47~図62参照)、bcc構造を有する鉄合金、fcc構造を有する鉄合金、fcc構造を有するアルミニウム合金のいずれも、メカノケミカル処理により金属粒子は集合組織化される。なお、ケイ素鉄含有の扁平金属粒子では、bcc構造の扁平金属粒子に比べてXRDチャートにおいて回折ピーク強度比の変化が乏しいものの、いずれの極点図も、極または帯状の強度分布が得られていることから、金属粒子が集合組織化されていることが分かる。
【実施例】
【0148】
【表4】
JP2016167286A1_000006t.gif


【実施例】
【0149】
(実施例16)
純鉄粒子(株式会社神戸製鋼製、品番:アトメル300M)を遠心ボールミル(NEV-MA-8)に入れ、大気雰囲気下でメカノケミカル処理した。処理条件として、遠心ボールミルへの純鉄粒子投入量は2.0gとし、黒鉛粒子添加量は0.017gとした。比較のため黒鉛粒子を添加せずにメカノケミカル処理した鉄粒子も作成した。球状媒体としてはφ9.52mmの鋼球(SUJ-2製)を20個使用し、回転数6.4rpsで行うとともに、処理時間(h)は0.10、0.25、0.50、1.00、2.00、4.00、8.00とした。この時、遠心ボールミルのメカノケミカル処理容器の内容積1に対する純鉄粒子の投入量(体積比)は0.00363、黒鉛粒子の投入量(体積比)は0.00009、球状媒体である鋼球の投入量 (体積比)は0.12786となっている。
【実施例】
【0150】
メカノケミカル処理によって実施例1と同様の扁平鉄粒子が得られ、これを粉末X線回折法で分析し、XRDチャートを得た。結果を図63及び図64に示す。
図63に示すように、これによれば黒鉛を添加してメカノケミカル処理した鉄粒子のXRDチャートは、処理時間が長くなるにしたがって、複数の結晶面それぞれの回折ピーク強度比が変化している。このことから、鉄粒子において集合組織が形成されていることがわかる。
【実施例】
【0151】
一方、図64に示すように、黒鉛を添加せずにメカノケミカル処理した鉄粒子のXRDチャートは、処理時間が長くなるにしたがって、複数の結晶面それぞれの回折ピーク強度比が僅かに変化している。このことから、鉄粒子において集合組織が僅かに生じていることが分かる。
【実施例】
【0152】
表5には、鉄粒子の低角側から5つの結晶面の回折ピークの強度の和を100%としたとき、処理時間1hにおける黒鉛を添加してメカノケミカル処理した鉄粒子(実施例16)と、黒鉛を添加せずにメカノケミカル処理した鉄粒子(比較例)の回折ピーク強度比を示す。
【実施例】
【0153】
また、表5には、メカノケミカル処理前の鉄粒子の回折ピーク強度比を基準とした、メカノケミカル処理を施したそれぞれの鉄粒子(実施例16及び比較例)の回折ピーク強度比の変化率を併記した。回折ピーク強度比の変化率を比較すると、黒鉛を添加せずにメカノケミカル処理した鉄粒子(比較例)よりも、黒鉛を添加してメカノケミカル処理した鉄粒子(実施例16)の方が、回折ピーク強度比の変化率が大きい。黒鉛を添加した例では、当該変化率は、{110}、{002}、{211}、{220}、{310}のいずれの結晶面(回折面)も、10%以上増加、もしくは、減少していることが確認できた。
【実施例】
【0154】
なお、黒鉛を添加していない比較例では、{002}の結晶面(回折面)では10%以上の強度比の変化率が見られるとともに、{211}、{220}、{310}の結晶面(回折面)では、-10%以上の強度比の変化率が見られたが、{110}の結晶面では、強度比の変化率は、-1.7%であった。このような強度比の変化がみられた比較例では、集合組織の配向性が弱いことが分かる。
【実施例】
【0155】
図65及び図66には、上記処理を行った2つの例の鉄粒子の極点図を示す。これら極点図は、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の各結晶面の極点図である。図66(a)及び図66(b)に示すように、黒鉛を添加せずに処理した鉄粒子の極点図にはランダムなパターンが認められ、集合組織が形成されていない。しかしながら、極点図を精確に測定すると、後述の実施例17(図69及び図70)で示すように、黒鉛を添加せずに鉄粒子をメカノケミカル処理行った場合でも集合組織化していることが分かった。XRDチャートでは、回折ピーク強度比の変化は乏しい。すなわち、助剤を用いないでメカノケミカル処理を行う場合は、助剤を用いてメカノケミカル処理をする場合に比べて、集合組織化は小さいと考えられる。
【実施例】
【0156】
一方、図65(b)に示すように、黒鉛を添加して処理した鉄粒子の{002}面の回折ピークによる極点図には中心にただ一つの極が、図65(a)に示すように、{110}面の回折ピークによる極点図には45°の位置に帯状の強度分布がそれぞれ認められた。これにより、実施例16の扁平鉄粒子には、{001}面と扁平面の平行な集合組織が形成されていることが確認された。
【実施例】
【0157】
また、{001}面に含まれる方向はランダムに配向していることが確認された。このことから、配向性の高い集合組織を得るための助剤として黒鉛が好適であることが確認された。
【実施例】
【0158】
【表5】
JP2016167286A1_000007t.gif
【実施例】
【0159】
(実施例17)
実施例16と同様の方法により、黒鉛粒子添加量を0mgとして(すなわち黒鉛粒子を添加せずに)、純鉄の扁平金属粒子を形成した。実施例17では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0160】
図67に示されるように、メカノケミカル処理を2時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は194.9である。
図68に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{002}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0161】
また、図69(a)及び図69(b)に示されるように、メカノケミカル処理を2.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図70に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が2時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にある。
【実施例】
【0162】
(実施例18)
実施例16と同様の方法により、黒鉛粒子添加量を2mgとして、純鉄の扁平金属粒子を形成した。実施例18では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0163】
図71に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は543.1である。
図72に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0164】
また、図73(a)及び図73(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図74に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0165】
(実施例19)
実施例16と同様の方法により、黒鉛粒子添加量を140mgとして、純鉄の扁平金属粒子を形成した。実施例19では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0166】
図75に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は49.8である。
図76に示されるように、メカノケミカル処理を0.25時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0167】
また、図77(a)及び図77(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図78に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が0.25時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が0.25時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0168】
実施例16~実施例19から分かるように(図63~図78参照)、助剤として黒鉛を用いることにより集合金属粒子の集合組織化が促進される。
助剤を用いずともメカノケミカル処理により、メカノケミカル処理を行っていない金属粒子に比べて僅かであるが集合組織化するが、助剤として黒鉛を加えてメカノケミカル処理を行うと、集合組織化が大きく促進される。黒鉛の作用は明らかではないが、金属粒子の表面に付着する黒鉛の潤滑効果が金属粒子の表面上の金属結晶の再配列を促すと考えられる。
【実施例】
【0169】
(実施例20)
実施例20では、メカノケミカル処理において実施例1で用いた助剤を変更している。実施例20~実施例23では、黒鉛以外の助剤について集合組織化の促進性を試験した。
【実施例】
【0170】
実施例20では、助剤以外の条件については実施例1と同様の方法により、純鉄の扁平金属粒子を形成した。助剤としては、炭素繊維(メーカー:東レ、型式:MLD300、添加量14mg)を用いた。また、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0171】
図79に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は184.7である。
図80に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{002}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0172】
また、図81(a)及び図81(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図82に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が2時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にある。
【実施例】
【0173】
(実施例21)
実施例21では、メカノケミカル処理において実施例1で用いた助剤を変更している。
助剤以外の条件については実施例1と同様の方法により、純鉄の扁平金属粒子を形成した。助剤としては、PTFE(株式会社セイシン企業、型式:TFW-3000F、添加量14mg)を用いた。実施例21では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0174】
図83に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は273.3である。
図84に示されるように、メカノケミカル処理を0.5時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0175】
また、図85(a)及び図85(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図86に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が0.5時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が0.5時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0176】
(実施例22)
実施例22では、メカノケミカル処理において実施例1で用いた助剤を変更している。
助剤以外の条件については実施例1と同様の方法により、純鉄の扁平金属粒子を形成した。助剤としては、鉱物油(呉工業株式会社、型式:5-56、添加量10ml)を用いた。実施例22では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。なお、鉱物油はアルコールに溶解するため、鉱物油を助剤として用いた場合、扁平金属粒子から鉱物油を簡単に除去できる。
【実施例】
【0177】
図87に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は20.5である。
図88に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0178】
また、図89(a)及び図89(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図90に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が0.5時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が0.5時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0179】
(実施例23)
実施例23では、メカノケミカル処理において実施例1で用いた助剤を変更している。
助剤以外の条件については実施例1と同様の方法により、純鉄の扁平金属粒子を形成した。助剤としては、非炭素系の物質である二硫化モリブデン(STREM CHEMICALS、型式:93-4247、添加量14mg)を用いた。実施例23では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0180】
図91に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は405.6である。
図92に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0181】
また、図93(a)及び図93(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図94に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0182】
実施例20~実施例23から分かるように(図79~図94参照)、助剤として黒鉛だけでなく炭素含有の潤滑剤を用いることができ、これらによっても、助剤を用いない場合に比べて、金属粒子の集合組織化が促進される。また、実施例23から分かるように、助剤として非炭素含系の潤滑剤を用いることができ、この物質によっても、助剤を用いない場合に比べて、金属粒子の集合組織化が促進される。
【実施例】
【0183】
(実施例24)
実施例24では、メカノケミカル処理における雰囲気を実施例1の例(大気雰囲気)から変更している。
【実施例】
【0184】
純鉄粒子(株式会社神戸製鋼製、品番:アトメル300M)と黒鉛粒子(日本黒鉛工業株式会社製、商品名:UCP)を遠心ボールミル(NEV-MA-8)に入れ、酸素雰囲気及びアルゴン雰囲気下でメカノケミカル処理した。
【実施例】
【0185】
以下、酸素雰囲気下でメカノケミカル処理したものを実施例24-1といい、アルゴン雰囲気下でメカノケミカル処理したものを実施例24-2という。
処理条件として、遠心ボールミルへの純鉄粒子投入量は2.0gとし、黒鉛粒子投入量は0.017g、球状媒体としてはφ9.52mmの鋼球(SUJ-2製)を20個、回転数6.4rps、処理時間1hとした。この時、遠心ボールミルの処理容器の内容積1に対する純鉄粒子の投入量(体積比)は0.00363、黒鉛粒子の投入量(体積比)は0.00009、球状媒体である鋼球の投入量(体積比)は0.12786となっている。
【実施例】
【0186】
実施例24-1及び実施例24-2は、メカノケミカル処理によって実施例1と同様の扁平形状の鉄粒子が得られた。これを粉末X線回折法で分析し、XRDチャートを得た。その結果を図95に示す。
【実施例】
【0187】
また、表6には、鉄粒子の低角側から5つの結晶面の回折ピークの強度の和を100%としたとき、アルゴン雰囲気下で処理した鉄粒子(実施例24-2)と、酸素雰囲気下で処理した鉄粒子(実施例24-1)の回折ピーク強度比を示す。
【実施例】
【0188】
表6には、メカノケミカル処理前の鉄粒子の回折ピーク強度比を基準(表1のメカノケミカル処理前の数値)とした、メカノケミカル処理を施したそれぞれの鉄粒子の回折ピーク強度比の変化を併記した。
【実施例】
【0189】
実施例24-1と、実施例24-2間において、回折ピーク強度比の変化を比較すると、アルゴン雰囲気で処理した鉄粒子(実施例24-2)よりも、酸素雰囲気で処理した鉄粒子の方(実施例24-1)が、回折ピーク強度比の変化が大きい。
【実施例】
【0190】
このことから、実施例24-1から分かるように、配向性の特に強い集合組織を得るための処理雰囲気として、酸素が好適であることが確認された。また、実施例24-1では、実施例1に示した、大気中で処理した鉄粒子のXRDチャートとの比較から、酸素による配向性の増強効果は窒素や二酸化炭素、水蒸気等の他のガス分子の混入によって損なわれないことが確認された。
【実施例】
【0191】
しかし、実施例24-2においても、表6から分かるように{002}、{211}、{220}の結晶面では、10%以上の強度変化が見られていることから、配向性のある集合組織を得られていることが分かる。
【実施例】
【0192】
【表6】
JP2016167286A1_000008t.gif
【実施例】
【0193】
(実施例25)
実施例25では、実施例24-1と同様に、メカノケミカル処理を酸素雰囲気で行っている。具体的には、酸素雰囲気(99.9%、充填圧1013hPa)でメカノケミカル処理を行い、純鉄の扁平金属粒子を形成した。メカノケミカル処理の雰囲気以外の条件については実施例1と同様である。実施例25では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0194】
図96に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は283.9である。
図97に示されるように、メカノケミカル処理を0.25時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0195】
また、図98(a)及び図98(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図99に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0196】
(実施例26)
実施例26では、メカノケミカル処理における雰囲気を実施例1の例(大気雰囲気)から変更している。
【実施例】
【0197】
具体的には、窒素雰囲気(99.9%、充填圧1013hPa)でメカノケミカル処理を行い、純鉄の扁平金属粒子を形成した。メカノケミカル処理の雰囲気以外の条件については実施例1と同様である。実施例26では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0198】
図100に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は168.8である。
図101に示されるように、メカノケミカル処理を0.25時間行って得られた扁平金属粒子では、{002}面の回折ピーク強度が{110}面の回折ピーク強度よりも高い。
【実施例】
【0199】
また、図102(a)及び図102(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図101及び図102に示されるように、窒素雰囲気のメカノケミカル処理は、酸素雰囲気のメカノケミカル処理と同等の効果を有することが分かる。すなわち、窒素雰囲気において金属粒子のメカノケミカル処理を行うことにより、金属粒子の酸化を抑制しつつ、金属粒子を集合組織化することができる。
【実施例】
【0200】
図103に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0201】
(実施例27)
実施例27では、メカノケミカル処理における雰囲気を実施例1の例(大気雰囲気)から変更している。アルゴン雰囲気(99.999%、充填圧1013hPa)でメカノケミカル処理を行い、純鉄の扁平金属粒子を形成した。メカノケミカル処理の雰囲気以外の条件については実施例1と同様である。実施例27では、メカノケミカル処理の処理時間を変えて得られた各扁平金属粒子についてその特性を調べた。
【実施例】
【0202】
図104に示されるように、メカノケミカル処理を1時間行って得られた扁平金属粒子は扁平面を有する。扁平金属粒子のアスペクト比は250.0である。
図105に示されるように、メカノケミカル処理を2時間行って得られた扁平金属粒子では、メカノケミカル処理時間が0時間であるものに比べて、{002}面の回折ピーク強度比が高くなっている。
【実施例】
【0203】
また、図106(a)及び図106(b)に示されるように、メカノケミカル処理を1.0時間行って得られた扁平金属粒子の{110}面の極点図及び{002}面の極点図は同心円状である。すなわち、扁平金属粒子には集合組織が形成されている。図107に示されるように、扁平金属粒子の平均粒径は、メカノケミカル処理時間が1時間になるまではその処理時間に応じて大きくなる傾向にあるが、メカノケミカル処理時間が1時間を越えると、処理時間に応じて小さくなる傾向にある。
【実施例】
【0204】
実施例24~実施例27から分かるように(図95~図107参照)、メカノケミカル処理による金属粒子の集合組織化は、酸素または窒素により促進される。集合組織化の促進について、酸素と窒素とは、略同等の効果があることが分かる。一方、アルゴン雰囲気では、助剤として黒鉛を用いているにも関わらず、黒鉛による集合組織化の効果がなく、黒鉛の効果が減殺されている。すなわち、黒鉛の集合組織化する効果は、酸素または窒素の存在により発揮または助長されると考えられる。
【実施例】
【0205】
【表7】
JP2016167286A1_000009t.gif
【実施例】
【0206】
(まとめ)
表4は、実施例1~15について扁平金属粒子の特性をまとめた表である。表の右端欄には、「所定の結晶面における回折ピーク強度の変化」が示されている。この欄において、「処理時間」は、メカノケミカル処理の処理時間を示す。「処理前」の値は、処理前における回折ピーク強度比を示す。「処理後」の値は、当該処理時間における回折ピーク強度比を示す。「変化率」は、上記に定義した「処理前後の回折ピーク強度比の変化率」を示す。同様に、表7は、実施例17~27(実施例24を除く)の扁平金属粒子の特性をまとめた表である。表4に示される項目と表7に示される項目は同じである。
【実施例】
【0207】
表4及び表7から分かるように、いずれの扁平金属粒子でも、「処理前後の回折ピーク強度比の変化率」は10%以上の値を有する。
bcc金属では、{002}面の回折ピーク強度比について、その変化率は、添加金属の存在、助剤の有無、助剤の種類及び雰囲気に関わらず、その変化率は100%以上である。一方、fcc金属では、{220}面の回折ピーク強度比の変化率は、金属種によって大きさが異なる。同様に、一方、hcp金属では、{0002}面の回折ピーク強度比の変化率は、金属種によって大きさが異なる。すなわち、fcc金属とhcp金属とでは集合組織化し易いものと、集合組織化し難いものとがある。
【実施例】
【0208】
また、表4及び表7から分かるように、鉄含有のbcc構造の扁平金属粒子のうち、酸素、窒素または大気雰囲気で助剤を用いてメカノケミカル処理されたものは、{002}面の回折ピーク強度比は20%以上である。鉄含有のbcc構造の金属粒子であって、メカノケミカル処理されていないものは、{002}面の回折ピーク強度比は10%以下であることから、{002}面の回折ピーク強度比は20%以上である鉄含有のbcc構造の扁平金属粒子は、磁性方向性を有する新規な磁性材料であるといえる。
【実施例】
【0209】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、実施形態、実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。例えば、集合組織を有する扁平金属粒子は、集合組織を有しない扁平金属粒子とともに用いられる。すなわち、両者は混合され得る。
【実施例】
【0210】
助剤として黒鉛を用いている場合は、扁平金属粒子を加熱処理するなどで黒鉛を除去してもよい。また、黒鉛を付着させた状態で扁平金属粒子は使用され得る。実施形態では、bcc構造の金属粒子、fcc構造の金属粒子、及びhcp構造の金属粒子を用いて、集合組織を有する扁平金属粒子を形成した。このことからあらゆる金属について、集合組織を有する扁平金属粒子を得ることができると考えられる。したがって、上記に示した製造方法により、各種合金について集合組織を有する扁平金属粒子を得ることができる。
【実施例】
【0211】
また、実施形態に係る扁平金属粒子、特に扁平鉄粒子は、絶縁被膜に覆われ得る。絶縁被膜(例えば、樹脂または酸化膜)をシェルとして有する扁平鉄粒子は、変圧器、電動機及び発電機の鉄心の材料として用いられる。例えば、鉄心としての成形体は、絶縁被膜を有する複数の扁平鉄粒子を備え、その扁平鉄粒子の扁平面が基準方向に対して所定角度範囲内で配向しかつ扁平金属粒子がその基準方向に積層される。このような成形体は、従来の鉄心に比べて、低ヒステリシス損かつ低渦電流であり、変圧器、電動機及び発電機の鉄心として好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0212】
100…扁平金属粒子、101…扁平面、200…測定面、300…容器、301…凹部。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36
【図38】
37
【図39】
38
【図40】
39
【図41】
40
【図42】
41
【図43】
42
【図44】
43
【図45】
44
【図46】
45
【図47】
46
【図48】
47
【図49】
48
【図50】
49
【図51】
50
【図52】
51
【図53】
52
【図54】
53
【図55】
54
【図56】
55
【図57】
56
【図58】
57
【図59】
58
【図60】
59
【図61】
60
【図62】
61
【図63】
62
【図64】
63
【図65】
64
【図66】
65
【図67】
66
【図68】
67
【図69】
68
【図70】
69
【図71】
70
【図72】
71
【図73】
72
【図74】
73
【図75】
74
【図76】
75
【図77】
76
【図78】
77
【図79】
78
【図80】
79
【図81】
80
【図82】
81
【図83】
82
【図84】
83
【図85】
84
【図86】
85
【図87】
86
【図88】
87
【図89】
88
【図90】
89
【図91】
90
【図92】
91
【図93】
92
【図94】
93
【図95】
94
【図96】
95
【図97】
96
【図98】
97
【図99】
98
【図100】
99
【図101】
100
【図102】
101
【図103】
102
【図104】
103
【図105】
104
【図106】
105
【図107】
106
【図108】
107