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明細書 :非共有結合性ソフトエラストマー及びその製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年3月15日(2018.3.15)
発明の名称または考案の名称 非共有結合性ソフトエラストマー及びその製法
国際特許分類 C08F 293/00        (2006.01)
C08L  53/00        (2006.01)
C08K   3/16        (2006.01)
C08K   3/28        (2006.01)
C08K   3/30        (2006.01)
C08K   3/26        (2006.01)
C08K   5/098       (2006.01)
FI C08F 293/00
C08L 53/00
C08K 3/16
C08K 3/28
C08K 3/30
C08K 3/26
C08K 5/098
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 22
出願番号 特願2017-517876 (P2017-517876)
国際出願番号 PCT/JP2016/063152
国際公開番号 WO2016/181834
国際出願日 平成28年4月27日(2016.4.27)
国際公開日 平成28年11月17日(2016.11.17)
優先権出願番号 2015096442
優先日 平成27年5月11日(2015.5.11)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】野呂 篤史
【氏名】大野 真穂
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査請求
テーマコード 4J002
4J026
Fターム 4J002BP001
4J002BP031
4J002DD076
4J002DE216
4J002DE226
4J002DE236
4J002DE246
4J002DF036
4J002DG046
4J002DG056
4J026HA02
4J026HA03
4J026HA04
4J026HA06
4J026HA11
4J026HB11
4J026HB17
4J026HE01
4J026HE02
要約 本発明の非共有結合性ソフトエラストマーは、A鎖及びB鎖からなる2成分ブロック共重合体と溶媒とを含むエラストマーであって、前記B鎖は、非共有結合可能な官能基を有し、前記溶媒は、前記A鎖を溶解せず、前記B鎖を溶解する性質を持ち、前記B鎖の前記官能基と非共有結合する不揮発性液体である。
特許請求の範囲 【請求項1】
A鎖及びB鎖を含むブロック共重合体と溶媒とを含むエラストマーであって、
前記B鎖は、非共有結合可能な官能基を有し、
前記溶媒は、前記A鎖を溶解せず、前記B鎖を溶解する性質を持ち、前記B鎖の前記官能基と非共有結合する不揮発性液体である、
非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項2】
前記溶媒は、不揮発性プロトン性溶媒である、
請求項1に記載の非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項3】
前記溶媒は、アルコール系溶媒又はイオン液体である、
請求項1又は2に記載の非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項4】
前記ブロック共重合体は、A鎖及びB鎖からなる2成分ブロック共重合体である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項5】
前記ブロック共重合体は、AB及び/又はABAブロック共重合体である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項6】
前記非共有結合は、水素結合、イオン結合又は配位結合である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項7】
前記官能基は、含窒素複素環基、カルボン酸基、アミド基及びヒドロキシ基からなる群より選ばれた1種以上である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項8】
前記A鎖は、ポリスチレン類、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類及びポリオレフィン類からなる群より選ばれた1種以上であり、
前記B鎖は、ポリビニルピリジン類、ポリ(メタ)アクリル酸類及びポリアクリルアミド類からなる群より選ばれた1種以上であり、
前記溶媒は、エチレングリコール系溶媒であって、オキシエチレン基を2~30個含むものである、
請求項1~7のいずれか1項に記載の非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項9】
更に、金属塩を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の非共有結合性ソフトエラストマー。
【請求項10】
(a)A鎖及びB鎖を含み、前記B鎖が非共有結合可能な官能基を有するブロック共重合体を合成するステップと、
(b)溶媒として、前記A鎖を溶解せず、前記B鎖を溶解する性質を持ち、前記B鎖の前記官能基と非共有結合する不揮発性液体を用意し、該溶媒と前記ブロック共重合体とを混合することにより、請求項1~9のいずれか1項に記載の非共有結合性ソフトエラストマーを得るステップと、
を含む非共有結合性ソフトエラストマーの製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非共有結合性ソフトエラストマー及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料は我々の日常生活と深く関わっており、多様な分野において必要不可欠な材料となっている。高分子材料のうち、常温で柔軟性をもつ材料として高分子ゲル(ポリマーゲル)やエラストマーなどがある。ここでポリマーゲルとは、網目形成した高分子鎖が溶媒を含んだソフト材料である。溶媒を大量に含むため、通常伸縮能は示さず、材料としては脆い。一方、エラストマーとは、ポリマーゲルと同様に高分子鎖網目を有するが溶媒を含まず、網目鎖が室温で溶融状態でありゴム弾性を示すソフト材料である。エラストマーの中でも加熱すると流動性を示し、冷却するとエラストマー挙動を示すものは熱可塑性エラストマーと呼ばれる。A鎖が室温でガラス状態、B鎖が室温で溶融状態のABAトリブロック共重合体は典型的な熱可塑性エラストマーである。
【0003】
ABAトリブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマーの力学特性を向上させるために、最近では非共有結合性(水素結合、イオン結合等)擬似架橋を導入する研究が進められている。非共有結合による擬似架橋は超分子架橋、もしくは弱く一時的な架橋ということでソフト架橋とも呼ぶことができ、そのような超分子架橋を組み込んだエラストマーは超分子エラストマー(もしくは単に非共有結合性エラストマー)と呼ぶことができる。
【0004】
本発明者らは、ABAトリブロック共重合体のB中央鎖に着目し、ABAトリブロック共重合体の自己組織化を基盤として、溶融B中央鎖に自己相補的な水素結合性官能基を導入した超分子エラストマーを作製し、その力学特性を報告した(例えば非特許文献1、2参照)。この超分子エラストマーの引張測定により、官能基導入前よりも導入後の方が靱性、破断伸びが大きくなることを確認した。
【0005】
ABAトリブロック共重合体のB中央鎖に着目した研究報告例として、水系ポリマーゲル(ハイドロゲル)調製も挙げられる(例えば非特許文献3参照)。非特許文献3では、水溶性のB中央鎖を有したABAトリブロック共重合体からなるハイドロゲルを金属塩の水溶液に浸漬することで、伸張能を示すハイドロゲルを調製している。調製したハイドロゲルは水中のB中央鎖と2価金属イオン間のイオン性相互作用により超分子架橋を生じるため、低弾性率でありながら伸張能を有していた。エラストマーでは実現できなかった低弾性率を本ハイドロゲルでは実現できており、エラストマーとは異なる新たな力学材料として利用できると考えられる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】第63回高分子学会年次大会 高分子学会予稿集第63巻第1号 3Pa057「ABAトリブロック共重合体と多官能性架橋剤からなる超分子ソフト材料の調製」(公益社団法人高分子学会)平成26年5月9日発行
【非特許文献2】マクロモレキュールズ(Macromolecules),2015年,48巻、421頁-431頁
【非特許文献3】マクロモレキュールズ(Macromolecules),2010年,43巻,6193頁-6201頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献3のハイドロゲルを調製するためには金属塩を用いることが前提とされており、また溶媒は水のみと限定されており、水溶性のポリマーを用いる必要があった。さらに、試料調製においては蒸気相溶媒交換によるハイドロゲルの調製、金属塩水溶液への浸漬を行う必要があり、面倒な手順を踏む必要があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、溶媒蒸発による変性がなく、低弾性率、高伸縮能を有する非共有結合性ソフトエラストマーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、ポリスチレン-b-ポリ(4-ビニルピリジン)-b-ポリスチレンからなる2成分ブロック共重合体(ABAトリブロック共重合体)とテトラエチレングリコールとを両者を可溶な揮発性の希釈剤に溶解したあと、キャストし、真空乾燥したところ、低弾性率、高伸縮能を有する非共有結合性ソフトエラストマーが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の非共有結合性ソフトエラストマーは、
A鎖及びB鎖を含むブロック共重合体と溶媒とを含み、
前記B鎖は、非共有結合可能な官能基を有し、
前記溶媒は、前記A鎖を溶解せず、前記B鎖を溶解する性質を持ち、前記B鎖の前記官能基と非共有結合する不揮発性液体である、
ものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非共有結合性ソフトエラストマーは、A鎖及びB鎖を含むブロック共重合体のうちB鎖の官能基と不揮発性液体とが非共有結合により超分子架橋を形成しつつ溶媒として機能している。そのため、低弾性率を示しながら高伸縮能を有する。また、本発明の非共有結合性ソフトエラストマーは、アルコール系溶媒やイオン液体などの不揮発性液体を含んでいるが、これらは蒸気圧の低い溶媒であり揮発しにくいため、溶媒蒸発による変性はほとんどみられない。なお、図1は本発明の非共有結合性ソフトエラストマーの一例の模式図である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の非共有結合性ソフトエラストマーの一例の模式図。
【図2】実施例1の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図3】実施例2の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図4】実施例3の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図5】実施例4の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図6】実施例5の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図7】実施例6の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図8】実施例7の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図9】実施例8の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図10】実施例9の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【図11】実施例10の伸び率と応力との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の非共有結合性ソフトエラストマーは、
A鎖及びB鎖を含むブロック共重合体と溶媒とを含み、
前記B鎖は、非共有結合可能な官能基を有し、
前記溶媒は、前記A鎖を溶解せず、前記B鎖を溶解する性質を持ち、前記B鎖の前記官能基と非共有結合するアルコール系溶媒やイオン液体などの不揮発性液体である、
ものである。

【0014】
本明細書において、「ソフトエラストマー」とは、通常のエラストマーよりも弾性率が低く、すなわち究極的にはポリマーゲルのような柔らかさを有し、かつエラストマーのような伸縮能の両方を有する材料と定義する。

【0015】
A鎖は、ガラス転移温度(Tg)が35℃以上のポリマーであることが好ましい。A鎖としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリスチレン類、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリオレフィン類などが好ましい。このうち、ポリスチレン類としては、ポリスチレン、ポリアセチルスチレン、ポリアニソイルスチレン、ポリベンゾイルスチレン、ポリビフェニルスチレン、ポリブロモエトキシスチレン、ポリブロモメトキシスチレン、ポリブロモスチレン、ポリブトキシメチルスチレン、ポリ-tert-ブチルスチレン、ポリブチリルスチレン、ポリクロロフルオロスチレン、ポルクロロメチルスチレン、ポリクロロスチレン、ポリシアノスチレン、ポリジクロロスチレン、ポリジフルオロスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリエトキシメチルスチレン、ポリエトキシスチレン、ポリフルオロメチルスチレン、ポリフルオロスチレン、ポリヨードスチレン、ポリメトキシカルボニルスチレン、ポリメトキシメチルスチレン、ポリメチルスチレン、ポリメトキシスチレン、ポリパーフルオロスチレン、ポリフェノキシスチレン、ポリフェニルアセチルスチレン、ポリフェニルスチレン、ポリプロポキシスチレン、ポリトルオイルスチレン、ポリトリメチルスチレンなどが挙げられる。ポリアクリル酸エステル類としては、例えばポリアクリル酸アダマンチル、ポリアクリル酸-tert-ブチル、ポリアクリル酸-tert-ブチルフェニル、ポリアクリル酸シアノヘプチル、ポリアクリル酸シアノヘキシル、ポリアクリル酸シアノメチル、ポリアクリル酸シアノフェニル、ポリアクリル酸フルオロメチル、ポリアクリル酸メトキシカルボニルフェニル、ポリアクリル酸メトキシフェニル、ポリアクリル酸ナフチル、ポリアクリル酸ペンタクロロフェニル、ポリアクリル酸フェニルなどが挙げられる。ポリメタクリル酸エステル類としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリロニトリル、ポリメタクリル酸アダマンチル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸-tert-ブチル、ポリメタクリル酸-tert-ブチルフェニル、ポリメタクリル酸シクロエチル、ポリメタクリル酸シアノエチル、ポリメタクリル酸シアノメチルフェニル、ポリメタクリル酸シアノフェニル、ポリメタクリル酸シクロブチル、ポリメタクリル酸シクロデシル、ポリメタクリル酸シクロドデシル、ポリメタクリル酸シクロブチル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、ポリメタクリル酸シクロオクチル、ポリメタクリル酸フルオロアルキル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリメタクリル酸イソボルニル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸フェニル、ポリメタクリル酸トリメチルシリル、ポリメタクリル酸キシレニルなどが挙げられる。ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα-オレフィンなどが挙げられる。

【0016】
B鎖は、非共有結合可能な官能基を有する。非共有結合には、水素結合や配位結合、イオン結合などが含まれる。B鎖としては、非共有結合可能な官能基を有するモノマーが重合した部分を含むものが好ましい。B鎖は、特に限定するものではないが、ポリビニルピリジン類(官能基はピリジル基)、ポリ(メタ)アクリル酸類(官能基はCOOH基)、ポリアクリルアミド類(官能基はCONHR基、Rは水素原子又は置換基(例えばアルキル基など))、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類(官能基はOH基)などが好ましい。ポリビニルピリジン類としては、例えば、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(3-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)などが挙げられる。ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類としては、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシメチル)、ポリ(アクリル酸2-ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシメチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル)などが挙げられる。また、B鎖は、ポリスチレン類、ポリジエン類、ポリオレフィン類などに非共有結合可能な官能基を導入することにより不揮発な非共有結合性溶媒に可溶としたもの、すなわち、不揮発性な非共有結合性溶媒に溶解するポリスチレン類誘導体、ポリジエン類誘導体、ポリオレフィン類誘導体などであってもよい。また、B鎖は、非共有結合可能な官能基を有するモノマーとそのような官能基を有さないモノマーとのランダム共重合体であってもよい。

【0017】
溶媒は、A鎖を溶解せず、B鎖を溶解する性質を持ち、B鎖の官能基と非共有結合するアルコール系溶媒やイオン液体などの不揮発性溶媒である。アルコール系溶媒もイオン液体も、蒸気圧が十分に低く(1mmHg以下)、常温(10~50℃のいずれかの温度)、常圧(950~1100hPaのいずれかの圧力)で液体のものを用いる。溶媒がA鎖を溶解するか否かは、例えば、次のようにして判断することができる。すなわち、A鎖と同様のポリマーを用意し、そのポリマーと溶媒とを溶解可能な揮発性の希釈剤中に、ポリマーと溶媒との質量比が所定割合(例えば1:9)となるように秤り入れて溶かし、希釈剤を蒸発させたあとの状態を目視する。そして、その状態が白濁していれば不溶、透明であれば可溶と判断する。B鎖についても同様である。なお、揮発性の希釈剤としては、例えばTHFやTHFとアルコールとの混合液などが挙げられる。

【0018】
不揮発性液体としては、不揮発なプロトン性溶媒が好ましい。特にアルコール系溶媒やイオン液体が好ましい。

【0019】
アルコール系溶媒としては、グリコール系溶媒やモノアルコール系溶媒、ジオール系溶媒、ポリオール系溶媒などが挙げられる。例えばグリコール系溶媒としては、アルキレングリコールの2~30量体が好ましく、2~10量体がより好ましい。アルキレングリコールとしては、エチレングリコールやプロピレングリコールなどが好ましい。具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコールなどが挙げられる。モノアルコール系溶媒としては、例えば、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、4-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、1-ノナノール、2-ノナノール、3-ノナノール、4-ノナノール、5-ノナノール、1-デカノール、2-デカノール、3-デカノール、4-デカノール、5-デカノール、1-ウンデカノール、2-ウンデカノール、3-ウンデカノール、4-ウンデカノール、5-ウンデカノール、6-ウンデカノール、1-ドデカノール、2-ドデカノール、3-ドデカノール、4-ドデカノール、5-ドデカノール、6-ドデカノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。ジオール系溶媒としては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-ヘプタンジオール、1,4-ヘプタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘプタンジオール、2,3-ヘプタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,5-ヘプタンジオール、2,6-ヘプタンジオール、3,4-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオールなどが挙げられる。ポリオール系溶媒としては、例えば、1,2,3-プロパントリオール(グリセリン)、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオールなどが挙げられる。

【0020】
イオン液体としては、プロトン性イオン液体が好ましい。プロトン性イオン液体としては、含窒素ヘテロ環の窒素上にプロトンを持つ含窒素ヘテロ環の塩からなるイオン液体や有機アミンの窒素上にプロトンを持つアンモニウム塩のイオン液体などが挙げられる。また、前者のイオン液体としては、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩などが挙げられるが、このうちイミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩、ピリジニウム塩が好ましい。後者のイオン液体としては、アルキルアンモニウム塩などが挙げられる。イミダゾリウム塩としては、イミダゾリウムのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TFSI)塩又はビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(BETI)塩、1-メチルイミダゾリウムの酢酸塩、ヘキサフルオロリン酸(PF6)塩、TFSI塩又はBETI塩、1-エチルイミダゾリウムのトリフルオロメタンスルホン酸(TfO)塩、TFSI塩、BETI塩又は過塩素酸塩、1-ブチルイミダゾリウムのTfO塩、TFSI塩、BETI塩又は過塩素酸塩、1-エチル-2-メチルイミダゾリウムのTfO塩、TFSI塩、BETI塩又は過塩素酸塩、1,2-ジメチルイミダゾリウムのTFSI塩又はBETI塩などが挙げられる。トリアゾリウム塩としては、1,2,4-トリアゾリウムのTFSI塩などが挙げられる。ピリジニウム塩としては、2-メチルピリジニウムのトリフルオロ酢酸(TFA)塩などが挙げられる。ピロリジニウム塩としては、2-ピロリドニウムの硝酸塩又はフェノールカルボン酸塩などが挙げられる。アルキルアンモニウム塩としては、例えば、エチルアンモニウムの硝酸塩、プロピルアンモニウムのTFA塩又は硝酸塩、ブチルアンモニウムのチオシアン酸塩又はTFSI塩、tert-ブチルアンモニウムのTfO塩、エタノールアンモニウムのテトラフルオロボロン酸(BF4)塩、アラニンメチルエステルのTFSI塩又はBF4塩、アラニンエチルエステルの硝酸塩、イソロイシンメチルエステルの硝酸塩、スレオニンメチルエステルの硝酸塩、ポロリンメチルエステルの硝酸塩、ビス(プロリンエチルエステル)の硝酸塩、1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムの酪酸塩、ジプロピルアンモニウムのチオシアン酸塩、ジプロピルアンモニウムの硝酸塩、1-メチルプロピルアンモニウムのチオシアン酸塩、トリエチルアンモニウムのTFSI塩、トリエチルアンモニウムのメタンスルホン酸塩、トリブチルアンモニウムの硝酸塩、ジメチルエチルアンモニウムの硫酸塩などが挙げられる。

【0021】
本実施形態の非共有結合性ソフトエラストマーにおいて、ブロック共重合体は、AB及び/又はABAブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体の全体の平均重合度は、100~100000であることが好ましい。全体の平均重合度が下限値未満の場合には十分な材料強度が得られないため好ましくなく、上限値を超える場合には合成が難しくなる、もしくは分子鎖切断が生じやすくなるため好ましくない。全体の平均重合度は、1000~100000であることがより好ましく、5000~100000であることが特に好ましい。A鎖の平均重合度は、ABAトリブロック共重合体の場合は20~20000、ABジブロック共重合体の場合は40~40000であることが好ましい。A鎖の平均重合度が下限値未満の場合にはガラス状ドメインを形成しにくいため好ましくなく、上限値を超える場合にはソフトエラストマーの特性が得られにくくなるため好ましくない。A鎖の平均重合度は、ABAトリブロック共重合体の場合は200~20000であることがより好ましく、1000~20000であることが特に好ましい。また、ABジブロック共重合体の場合は400~40000であることがより好ましく、2000~40000であることが特に好ましい。B鎖の平均重合度は、60~60000であることが好ましい。B鎖の平均重合度が下限値未満の場合には十分な材料強度が得られないため好ましくなく、上限値を超える場合には合成が難しくなるため好ましくない。B鎖の平均重合度は、600~60000であることがより好ましく、3000~60000であることが特に好ましい。ABAトリブロック共重合体の場合、一端のA鎖の平均重合度と中央のB鎖の平均重合度と他端のA鎖の平均重合度との比は、5~30:90~40:5~30であることが好ましい。この範囲を外れると、全体がガラス化したりソフトエラストマーとはならずに流動したりするおそれがあるため、好ましくない。ABジブロック共重合体の場合、A鎖の平均重合度とB鎖の平均重合度との比は、10~60:90~40であることが好ましい。この範囲を外れると、全体がガラス化したりソフトエラストマーとはならずに流動したりするおそれがあるため、好ましくない。なお、本実施形態の非共有結合性ソフトエラストマーは、A鎖及びB鎖を含むブロック共重合体をブレンドしたものであってもよいし、こうしたブロック共重合体の他にA鎖ホモポリマーやB鎖ホモポリマーを含んでいてもよい。

【0022】
本実施形態の非共有結合性ソフトエラストマーは、金属塩を含み、該金属塩中の金属イオンに対して複数のB鎖中の官能基が配位結合してブロック共重合体を超分子架橋していてもよい。金属塩としては、特に限定するものではないが、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、酪酸塩、チオシアン酸塩、TFSI塩、BETI塩、TfO塩、PF6塩、TFA塩、BF4塩、メタンスルホン酸塩などがあり、例えば、塩化亜鉛、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ニッケル、硝酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸銅、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、酢酸亜鉛、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸銅、酢酸鉄、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、リン酸亜鉛、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸銅、リン酸鉄、リン酸コバルト、リン酸ニッケル、酪酸亜鉛、酪酸リチウム、酪酸ナトリウム、酪酸カリウム、酪酸カルシウム、酪酸マグネシウム、酪酸銅、酪酸鉄、酪酸コバルト、酪酸ニッケル、リチウムTFSI、ナトリウムTFSI、カリウムTFSI、リチウムBETI、ナトリウムBETI、カリウムBETI、リチウムTfO、ナトリウムTfO、カリウムTfO、リチウムPF6、ナトリウムPF6、カリウムPF6、リチウムTFA、ナトリウムTFA,カリウムTFA、リチウムBF4、ナトリウムBF4,カリウムBF4、リチウムTFA、ナトリウムTFA,カリウムTFA、メタンスルホン酸リチウム、メタンスルホン酸ナトリウム,メタンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。

【0023】
本実施形態の非共有結合性ソフトエラストマーは、(a)A鎖及びB鎖を含み、前記B鎖が非共有結合可能な官能基を有するブロック共重合体を合成するステップと、(b)溶媒として、前記A鎖を溶解せず、前記B鎖を溶解する性質を持ち、前記B鎖の前記官能基と非共有結合する不揮発性液体を用意し、該溶媒と前記ブロック共重合体とを混合するステップと、を含む製法により得ることができる。例えば、リビングラジカル重合やリビングアニオン重合などによりブロック共重合体を合成し、そのブロック共重合体と不揮発性液体を揮発性の希釈剤に加えて溶解させ、その後希釈剤を除去することにより得ることができる。リビングラジカル重合としては、例えばRAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer、可逆的付加開裂連鎖移動)重合を利用することができる。その場合、まず、A鎖の原料となるモノマーをRAFT重合により重合させる。RAFT重合に用いるRAFT剤としては、公知のものを使用可能である。RAFT重合は、高圧(例えば30~500MPa、好ましくは100~400MPa)で行ってもよいし、常圧(例えば950~1100hPa)で行ってもよい。加圧する際には、静水圧で加圧することが好ましい。反応時間や反応温度は適宜設定すればよいが、例えば1~24時間、60~100℃の範囲で設定してもよい。必要に応じてAIBN,AAPH,ACVAなどのラジカル開始剤を添加してもよい。また、必要に応じてハロゲン化アルカンや芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、DMF、DMSO、THFなどの溶媒を用いてもよい。こうして得られたA鎖は、RAFT剤が導入されているため、これもRAFT剤として働く。次に、RAFT剤が導入されたA鎖と、B鎖を構成するモノマー(例えば非共有結合可能な官能基を有するモノマー)とを混合してRAFT重合させることにより、本実施形態の非共有結合性ソフトエラストマーの前駆体であるブロック共重合体を得ることができる。このときのRAFT重合の条件(圧力、反応時間、反応温度等)は、A鎖を合成するときと同様にして設定すればよい。また、必要に応じてラジカル開始剤を添加したり溶媒を使用したりしてもよい。リビングアニオン重合を利用した場合は、RAFT重合と比べてRAFT剤を使用しない分、安価なため、コスト的に有利である。

【0024】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
[1]合成
実施例1では、下記式にしたがって、ABAトリブロック共重合体として、ポリスチレン-b-ポリ(4-ビニルピリジン)-b-ポリスチレン(SPSトリブロック共重合体と称することとする)を合成し(第1及び第2工程)、このブロック共重合体をTEGで溶解しかつ超分子架橋させたソフトエラストマーを調製した(第3工程)。なお、SPSの両端のS(A鎖)はポリスチレンの略号であり、中央のP(B鎖)はポリ(4-ビニルピリジン)の略号である。
【実施例】
【0026】
【化1】
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【実施例】
【0027】
[1-1]第1工程(A鎖の合成)
塩基性アルミナを充填したカラムに未精製スチレンモノマーを通すことにより、スチレンモノマーを精製した。この精製スチレンモノマー、RAFT剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、それぞれ15g(0.144mol)、69mg(0.241mmol)、4.5mg(0.0268mmol)ずつ秤り取り、コック付き丸底フラスコ内で混合することで溶液を作製した。RAFT剤としては、S,S’-ビス(α,α’-ジメチル-α”-酢酸)トリチオカーボネートを使用した。なお、スチレンモノマーとRAFT剤とのモル比はおよそ600:1とした。窒素ガスで10分間バブリングを行い、常圧でオイルバスを用いて130℃において、500rpmで攪拌させながら重合した。6時間後にフラスコを液体窒素中に漬けることで重合を完全に停止した。
【実施例】
【0028】
上記溶液にテトラヒドロフラン(THF)を添加し約8wt%のポリマー溶液を調製した。この溶液を大容量のメタノール中に滴下して、固体状のポリスチレンを析出させた。得られたポリマーを吸引濾過して分離し、真空乾燥によって十分に乾燥させたのちに、再びTHF中に溶解させ、メタノール中に滴下してポリマーを析出させた。ポリマーを析出させる作業を計3回行い、未反応のモノマーや低分子オリゴマーを除去した。
【実施例】
【0029】
精製したポリスチレンを重クロロホルムに溶解し、約2wt%の溶液を調製し、核磁気共鳴分光(NMR)法により平均重合度を決定した。平均重合度は315であった。また、ポリマーをTHFに溶解して0.5wt%の溶液を調製し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量分布(Mw/Mn)を決定した。分子量較正用に標準ポリスチレンを用いた。その結果、Mw/Mn=1.12であった。なお、溶出液はTHF、流速は1mL/minとし、東ソー(株)製のTSK-GELカラム4000HHRを3本連結させた状態で測定を行った。
【実施例】
【0030】
[1-2]第2工程(ABAトリブロック共重合体の合成)
精製したポリスチレンは、中央部にRAFT剤が導入されているため、これをRAFT剤(分子量の大きなRAFT剤であるのでマクロRAFT剤と呼ぶ)として4-ビニルピリジンモノマーの重合を行った。4-ビニルピリジンモノマーは、塩基性アルミナを通すことで精製した。精製した4-ビニルピリジンモノマー、マクロRAFT剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、それぞれ11.8g(12mL),250mg,3.34mg、0.2mgずつ秤り取り、コック付き丸底フラスコ内で混合することで溶液を調製した。4-ビニルピリジンモノマーとマクロRAFT剤とのモル比はおおよそ15000:1とした。その後窒素ガスで10分間バブリングを行い、常圧でオイルバスを用いて75℃、500rpmにおいて攪拌させながら重合した。190分後にフラスコを液体窒素中に漬けることで重合を完全に停止した。これにより、SPSトリブロック共重合体を得た。
【実施例】
【0031】
上記溶液にクロロホルムを添加し約5wt%のポリマー溶液を調製した。この溶液を大容量のヘキサン中に滴下して、固体状のSPSトリブロック共重合体を析出させた。得られたポリマーを吸引濾過して分離し、真空乾燥によって十分に乾燥させたのちに、再びクロロホルム中に溶解させ、ヘキサン中に滴下してポリマーを析出させた。ポリマーを析出させる作業を計3回行い、未反応のモノマーや低分子オリゴマーを除去し、精製したSPSトリブロック共重合体を得た。
【実施例】
【0032】
精製したSPSトリブロック共重合体を重クロロホルムに溶解し、2wt%溶液を調製し、核磁気共鳴分光(NMR)法により平均重合度を決定した。S鎖の合計の平均重合度は315,P鎖の平均重合度は1830であった。また、SPSトリブロック共重合体をDMFに溶解して0.5wt%の溶液を調製し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量分布(Mw/Mn)を決定した。分子量較正用に標準ポリスチレンを用いた。その結果、Mw/Mn=1.80であった。なお、溶出液はDMF、流速は1mL/minとし、東ソー(株)製のTSK-GELカラム4000HHRを3本連結させた状態で測定を行った。
【実施例】
【0033】
[1-3]第3工程(ソフトエラストマーの調製)
得られたSPSトリブロック共重合体179.8mgをTHF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)1.64gに溶解させた。これに不揮発性の非共有結合性溶媒であるテトラエチレングリコール(TEG)を62mg添加し、この溶液をテフロン製容器(25mm×10mm×20mm、テフロンは登録商標)に注ぎ、室温で18時間静置させることで揮発性溶媒(THF、メタノール)を蒸発させた。その後、真空乾燥機を用いて室温で12時間乾燥させることで揮発性溶媒を完全に除去し、SPSとTEGのみからなる試料を得た(SPSの重量濃度74wt%)。得られた試料の厚さは0.6mmであった。この試料を打抜き刃型を用いて打ち抜き、0.6mm厚で4mm幅の短冊型試験片を調製した。以下でも特に断らない限り、同様の短冊型試験片を調製した。
【実施例】
【0034】
[2]引っ張り試験
引っ張り測定用特殊治具で短冊型試験片を長さ2.2mmの間隔(伸張に関わる試験片の間隔)を空けて両側から掴み、引っ張り試験を行った。測定装置はTAインスツルメンツ製ARES-G2を使用した。引っ張り速度は0.44mm/sとした。引っ張り試験の結果、得られたグラフを図2に示した。このグラフから、300%伸びでの応力(MPa)、最大応力(MPa)、破断伸び(%)を算出し、それらの値を表1に示した。表1及び図2から明らかなように、実施例1は、商用の標準的なエラストマーであるクレイトンD1101A(クレイトンポリマージャパン(株)、300%伸びの応力2.9MPa、最大応力33MPa、破断伸び880%)と同程度の伸び(1040%)を示しつつも、300%伸びでの低い応力(0.155MPa)、低い最大応力(0.46MPa)を示しており、弾性率の低いエラストマー、すなわちソフトエラストマーとしての特性を示すことがわかった。このような特性を示すのは、SPSトリブロック共重合体中のP鎖のピリジル基とTEGの末端水酸基とが水素結合により超分子架橋を形成し、かつTEGがP鎖の溶媒として機能しているからである。なお、TEGとP鎖、TEGとTEG間には水素結合が作用するため、試験片からTEGが浸みだしてくることはなかった。B鎖-溶媒間、溶媒-溶媒間に十分な相互作用がない場合は溶媒浸みだしが見られるものと考えられる。
【実施例】
【0035】
【表1】
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【実施例】
【0036】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の第3工程において、SPSトリブロック共重合体を168.5mg,THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.68g、TEGを76.9mg用いた以外は、実施例1と同様にして短冊型試験片を得た(SPSの重量濃度69wt%)。実施例1の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を3.2mm、引っ張り速度を0.64mm/sとした以外は実施例1と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図3に示す。表1及び図3から明らかなように、実施例2は、実施例1と同様の破断伸び(1320%)を示しつつも、300%伸びでより低い応力(0.083MPa)、より低い最大応力(0.23MPa)を示しており、実施例1より優れたソフトエラストマー特性を示すことがわかった。
【実施例】
【0037】
[実施例3]
実施例3では、実施例1の第3工程において、SPSトリブロック共重合体を118mg、THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.52g、TEGの代わりに不揮発性の非共有結合性溶媒として1-エチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルフォニルイミダイド(EImTFSI,1-エチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルフォニルイミド、もしくは1-エチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルフォニルアミドとも呼ぶ、下記式参照)を122.4mg用いた以外は、実施例1と同様にして短冊型試験片を得た(SPSの重量濃度49wt%)。実施例1の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を2.7mm、引っ張り速度を0.54mm/s、短冊型試験片の幅を2.5mmとした以外は実施例1と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図4に示す。表1及び図4から明らかなように、実施例3は、1300%の破断伸びを示しつつ、300%伸びで低い応力(0.061MPa)、低い最大応力(0.192MPa)を示しており、ソフトエラストマー特性を示すことがわかった。溶媒であるEImTFSIが水素結合性プロトンを有しており、これとSPSのピリジル基間で水素結合、すなわち静電的な双極子-双極子相互作用が働き、さらにEImTFSIがP鎖の溶媒として機能することにより、実施例1や実施例2と同様にソフトエラストマーの特性を示したと考えられる。溶媒分子中の水素結合性プロトンが1つだとしてもソフトエラストマーとなることがわかった。
【実施例】
【0038】
【化2】
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【実施例】
【0039】
[実施例4]
実施例4では、実施例3の第3工程において、SPSトリブロック共重合体を99.0mg、THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.0g、EImTFSIを155.3mg用いた以外は、実施例3と同様にして短冊型試験片を得た(SPSの重量濃度39wt%)。実施例3の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を3.9mm、引っ張り速度を0.78mm/s、短冊型試験片の幅を4mmとした以外は実施例3と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図5に示す。表1及び図5から明らかなように、実施例4は1310%の破断伸びを示し、実施例3と比べて300%伸びでより低い応力(0.044MPa)、より低い最大応力(0.163MPa)を示しており、実施例3より優れたソフトエラストマー特性を示すことがわかった。
【実施例】
【0040】
[実施例5]
実施例5では、実施例1の第3工程において、SPSトリブロック共重合体を170.3mg、THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.29g、TEGの代わりに不揮発性の非共有結合性溶媒として分子量が400のポリエチレングリコール(PEG、第一工業製薬)を72mg用いた以外は、実施例1と同様にして短冊型試験片を得た(SPSの重量濃度70wt%)。実施例1の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を4.8mm、引っ張り速度を0.96mm/s、短冊型試験片の幅を4mmとした以外は実施例1と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図6に示す。表1及び図6から明らかなように、実施例5においても、実施例1~4と同様にソフトエラストマー特性を示し、溶媒には非共有結合性官能基を有する不揮発性の液状ポリマー、オリゴマーを用いることができることが分かった。
【実施例】
【0041】
[実施例6]
実施例6では、実施例1の第1工程、第2工程を経てSPSトリブロック共重合体を合成する代わりに、リビングアニオン重合により合成されたポリスチレン-b-ポリ(2-ビニルピリジン)(SPジブロック共重合体と称することとする)ブロック共重合体試料を調達し、SPSトリブロック共重合体の代わりにこれを用いることとした。GPC、NMRを用いた解析により、ポリスチレンの平均重合度が270、ポリ(2-ビニルピリジン)の平均重合度が860、Mw/Mnは1.1であった。なお、SPジブロック共重合体はマクロモレキュールズ(Macromolecules),2005年,38巻、4371頁-4376頁で報告されているスキームと類似の方法で合成されたものである。実施例1の第3工程において、SPジブロック共重合体を193.4mg、THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.84g、TEGを50.8mg用いた以外は、実施例1と同様にして短冊型試験片を得た(SPの重量濃度79wt%)。実施例1の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を4.4mm、引っ張り速度を0.88mm/s、短冊型試験片の幅を4mm、厚みを0.3mmとした以外は実施例1と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図7に示す。表1及び図7から明らかなように600%以上の破断伸びを示し、実施例6においても、実施例1~5と同様にソフトエラストマー特性を示しており、ジブロック共重合体からでもソフトエラストマーが得られることが分かった。P鎖を超分子架橋する役割をTEGが担うため、SPSトリブロック共重合体のような橋架け型のブロック共重合体を用いなくても、ソフトエラストマーとすることができたと考えられる。
【実施例】
【0042】
[実施例7]
実施例7では、実施例1の第1工程、第2工程を経てSPSトリブロック共重合体を合成する代わりに、リビングアニオン重合により合成されたポリスチレン-b-(ポリメタクリル酸-co-ポリ(メタクリル酸tert-ブチル))-b-ポリスチレン(SMSトリブロック共重合体と称することとする)ブロック共重合体試料を調達し、SPSトリブロック共重合体の代わりにこれを用いることとした。SMSトリブロック共重合体の前駆体であるポリスチレン-b-ポリ(メタクリル酸tert-ブチル)-b-ポリスチレントリブロック共重合体はPolymer Source Incより購入し、これを塩酸で処理することでSMSトリブロック共重合体とした。NMRを用いた解析により、ポリスチレンの平均重合度が1540、ポリ(メタクリル酸tert-ブチル)の平均重合度が50、ポリメタクリル酸の平均重合度は2050であった。実施例1の第3工程において、SMSトリブロック共重合体を167mg、ピリジンを1.35g、TEGを72.3mg用いた以外は、実施例1と同様にして短冊型試験片を得た(SPの重量濃度70wt%)。実施例1の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を5.6mm、引っ張り速度を1.2mm/s、短冊型試験片の幅を4mm、厚みを1.2mmとした以外は実施例1と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図8に示す。表1及び図8から明らかなように300%以上の破断伸びを示し、実施例7においても、実施例1~6と同様にソフトエラストマー特性を示しており、P鎖を含有しないブロック共重合体からもソフトエラストマーが得られることが分かった。TEGの水酸基とM鎖ポリメタクリル酸部のカルボキシル基間で水素結合を生じてTEGが超分子架橋としての役割を担いつつ、溶媒としての役割も担うためで、ポリマーと溶媒間で相互作用を生じて超分子架橋を生成すれば、ソフトエラストマーとすることができると考えられる。
【実施例】
【0043】
[比較例1,2]
比較例1では、実施例1の第3工程において、SPSトリブロック共重合体を120.4mg,THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.52g,TEGを132mg用いた以外は、実施例1と同様にしてSPSとTEGのみからなる試料を得た(SPSの重量濃度48wt%)。また比較例2では実施例1の第3工程において、SPSトリブロック共重合体を40.8mg,THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.27g,TEGを198.6mg用いた以外は、実施例1と同様にしてSPSとTEGのみからなる試料を得た(SPSの重量濃度17wt%)。どちらの試料においても柔らかく粘着性のある材料となり、伸縮性はほとんど見られなかった。SPSの濃度が高いときはSPSのピリジル基とTEGの水酸基とが非共有結合してTEGが擬似架橋剤のような役割を果たすため伸縮性を示す材料となると考えられるが、SPSの濃度が低い場合では、相対的にTEGの濃度が高くなり、過剰なTEGは単なる媒体として振る舞うために試料の丈夫さには寄与せず、ゆえに伸縮性を発現しない試料となったと考えられる。
【実施例】
【0044】
[実施例8]
実施例8では、実施例1の第3工程において、SPSトリブロック共重合体を171.5mg、ピリジンを1.68g、TEGを72.5mg、塩化亜鉛(II)を5.6mg用いた以外は、実施例3と同様にして短冊型試験片を得た(SPSの重量濃度70wt%)。実施例1の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を7.3mm、引っ張り速度を1.46mm/s、短冊型試験片の幅を4mm、厚みを0.7mmとした以外は実施例1と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図9に示す。表1及び図9から明らかなように、実施例8は、実施例2と比べて塩化亜鉛(II)を5.6mg含んでいる以外はほぼ同じ調製条件であるにもかかわらず、300%伸びでより高い応力(0.699MPa)、より高い最大応力(0.807MPa)を示すソフトエラストマーとなった。金属塩の金属イオンとP鎖のピリジル基間での配位結合により超分子架橋を生じ、超分子架橋の密度が上昇したためである。TEG、金属塩の量を調節することにより、300%伸びでの応力、最大応力、破断伸びを調節できることが分かった。
【実施例】
【0045】
[実施例9]
実施例9では、実施例6の第3工程において、SPジブロック共重合体を192mg、THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.50g、TEGの代わりにモノアルコール型の不揮発な非共有結合性溶媒としてテトラエチレングリコールモノメチルエーテル(TEGME)を48.8mg用いた以外は、実施例6と同様にして短冊型試験片を得た(SPの重量濃度80wt%)。実施例1の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を5.0mm、引っ張り速度を2.0mm/s、短冊型試験片の幅を4.0mmとした以外は実施例1と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図10に示す。図10から明らかなように、実施例9では橋架け型のブロック共重合体を用いていないにもかかわらず、480%もの破断伸びを示しつつ、300%伸びでは0.35MPaの応力を示し、最大応力は0.47MPaのであり、ソフトエラストマーとしての特性を示すことがわかった。溶媒であるTEGMEは水素結合性プロトンを1分子中に1つ有しており、これとSPのピリジル基間で水素結合、すなわち静電的な双極子-双極子相互作用が働くことで擬似的な架橋を生じ、さらにTEGMEがP鎖の溶媒としても機能することにより、実施例6と同様にソフトエラストマーの特性を示したと考えられる。水素結合性プロトンが1つの非イオン性溶媒からソフトエラストマーを作製できることがわかった。
【実施例】
【0046】
[実施例10]
実施例10では、実施例6のSPジブロック共重合体の代わりに、ポリスチレンの平均重合度が385、ポリ(2-ビニルピリジン)の平均重合度が419のSPジブロック共重合体をPolymer Source Incより購入し、これを用いることとした。実施例6の第3工程において、SPジブロック共重合体を109.4mg、THF/メタノール混合溶媒(混合重量比3:2)を1.68g、TEGの代わりにリチウム(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(リチウムTFSI)0.3Mを含有したTEG溶液を39.4mg、さらにピリジンを0.3g加え、60℃のホットプレート上で24時間静置させてTHF、メタノール、ピリジンを蒸発除去した以外は、実施例6と同様にして短冊型試験片を得た(SPの重量濃度73.5wt%)。実施例1の引っ張り試験において、伸張に関わる試験片の間隔を4.2mm、引っ張り速度を0.84mm/s、短冊型試験片の幅を4.0mm、短冊型試験片の厚みを0.75mmとした以外は実施例1と同様にして引っ張り試験を実施した。その結果を表1及び図11に示す。図11から明らかなように、実施例10では橋掛け型のトリブロック共重合体でなく、また全体分子量が小さいにもかかわらず、380%もの破断伸びを示しつつ、300%伸びでは0.46MPaの応力を示し、最大応力は0.52MPaであり、ソフトエラストマーであると考えられる。溶媒であるリチウムTFSIのTEG溶液は、SPのピリジル基とTEGの水酸基とで水素結合、リチウムTFSIのリチウムイオンとで配位結合を生じることで擬似的な架橋を生じ、さらに過剰なTEGはP鎖の溶媒としても機能することにより、実施例6や実施例9と同様にソフトエラストマーの特性を示したと考えられる。P鎖ピリジル基と配位結合する金属塩を含有したプロトン性溶媒の溶液からソフトエラストマーを作製できることがわかった。
【実施例】
【0047】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
本出願は、2015年5月11日に出願された日本国特許出願第2015-96442号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の非共有結合性ソフトエラストマーは、医療機器や電気製品、自動車、スポーツ用品、家具、文房具などの種々の産業の素材として利用可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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