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明細書 :プラズマ殺菌装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年3月15日(2018.3.15)
発明の名称または考案の名称 プラズマ殺菌装置
国際特許分類 A61L   2/14        (2006.01)
A23L   3/26        (2006.01)
H05H   1/24        (2006.01)
A01C   1/00        (2006.01)
FI A61L 2/14
A23L 3/26
H05H 1/24
A01C 1/00 C
国際予備審査の請求
全頁数 25
出願番号 特願2016-536967 (P2016-536967)
国際出願番号 PCT/JP2016/065824
国際公開番号 WO2016/190436
国際出願日 平成28年5月27日(2016.5.27)
国際公開日 平成28年12月1日(2016.12.1)
優先権出願番号 2015109132
優先日 平成27年5月28日(2015.5.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】三沢 達也
【氏名】作道 章一
【氏名】中川 輝美
【氏名】高井 雄一郎
【氏名】三島 朋子
出願人 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
【識別番号】512224729
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査請求 未請求
テーマコード 2B051
2G084
4B021
4C058
Fターム 2B051AB01
2B051BA09
2B051BB11
2G084AA25
2G084BB01
2G084BB02
2G084BB05
2G084BB07
2G084BB11
2G084BB14
2G084BB15
2G084BB21
2G084CC03
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD12
2G084DD15
2G084DD21
2G084DD22
2G084DD67
2G084FF11
2G084FF18
2G084FF20
2G084FF39
4B021LP10
4B021LT03
4B021LT09
4B021LW09
4B021MC01
4B021MP10
4C058AA30
4C058BB06
4C058KK06
4C058KK22
4C058KK45
要約 粒状や粉末状の農産物のように、粒状や粉末状のような小さな対象物に対しても、緩和な条件で品質を劣化させずに連続的かつ安定的にプラズマ殺菌を行えるプラズマ殺菌装置を提供する。
プラズマ殺菌装置は、原料ガス雰囲気下で電極間で電圧印加により生成されるプラズマによって、対象物を殺菌するプラズマ殺菌装置において、上下方向に隙間を隔てて対向する上部電極及び下部電極から成る対向電極と、前記上部又は下部の電極の中心部から前記隙間に向かって、前記対象物を供給する供給手段と、前記下部電極の中心部から外周辺に沿って、前記対象物を外部に排出する排出手段とを備えて構成される。
特許請求の範囲 【請求項1】
原料ガス雰囲気下で電極間で電圧印加により生成されるプラズマによって、対象物を殺菌するプラズマ殺菌装置において、
上下方向に隙間を隔てて対向する上部電極及び下部電極から成る対向電極と、
前記上部又は下部の電極の中心部から前記隙間に向かって、前記対象物を供給する供給手段と、
前記上部及び下部電極間の外周辺近傍に形成される前記隙間からなる開口状の外周開口部を備え、前記下部電極の中心部から外周辺に向かって転動する前記対象物を当該外周開口部から外部に排出する排出手段と、
を備え、
前記対向電極の上部電極が、前記供給手段の供給口から前記外周開口部まで連続して形成されることを特徴とする
プラズマ殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ殺菌装置において、
前記供給手段が、前記対象物と共に前記原料ガスを供給することを特徴とする
プラズマ殺菌装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ殺菌装置において、
前記上下の対向電極が、共に円板状で形成され、少なくとも前記下部電極が、円板中心を回転中心として回転することを特徴とする
プラズマ殺菌装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ殺菌装置において、
前記上部電極が、放射状に複数に延出する線状電極から形成され、
前記下部電極が、円板状で形成されることを特徴とする
プラズマ殺菌装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のプラズマ殺菌装置において、
前記上部及び下部電極の隙間に介装され、前記各電極の円板中心から放射状又は螺旋状に延出する複数のリブ体からなるリブ体部を備えることを特徴とする
プラズマ殺菌装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載のプラズマ殺菌装置において、
前記対向電極間に、液体状の誘電体が封止されて形成される放電位置制御部を備えることを特徴とする
プラズマ殺菌装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のプラズマ殺菌装置において、
前記対向電極の少なくとも一方が、中央部に向かって凸状に湾曲することを特徴とする
プラズマ殺菌装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のプラズマ殺菌装置において、
前記上部又は下部電極の少なくとも一方の、対向する対向面上に、スパイラル状又は放射状の突起を形成することを特徴とする
プラズマ殺菌装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて殺菌を行うプラズマ殺菌装置に関し、特に、粒状や粉末状のような小さな対象物に対しても、確実に殺菌を行えるプラズマ殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを用いて対象物の殺菌を行うプラズマ殺菌は、その用途が多岐にわたっており、その適用分野は拡大の一途を辿っている。その適用分野として期待されているものとして、農業分野における農産物の殺菌がある。
【0003】
農産物は長距離輸送されることが多く、その際に微生物繁殖が問題となっている。これは、農産物に、土壌や生育環境に由来する各種細菌、糸状菌等が付着しているためであり、これらが農産物の劣化に大きく影響している。
【0004】
このような農産物として、特に種子については、細菌、糸状菌、及びウィルス等が表面に付着した状態で播種した場合には、播種後に増殖して生育に悪影響を与え、発育不良や枯れの原因となる。種子の他にも、食品材料として用いる穀物等の粒状(顆粒状)又は粉末状の農産物でも同様に、付着した汚染微生物が、食品加工によって商品に混入することにより、商品の劣化を引き起こしている。
【0005】
このような問題に対処するための技術として、これまでのところでは、種子に付着した微生物を殺菌消毒する目的で、温湯殺菌、乾熱殺菌、及び薬剤による殺菌が主に行われている。
【0006】
例えば、温湯殺菌では、数十分程度、50-60℃程度の温湯内に種子を浸漬させて消毒を行う。また、乾熱殺菌では、70~80℃程度の乾燥空気の雰囲気下に種子を数日間置き、殺菌消毒を行う。薬剤による殺菌では、対象物表面に存在する菌類等に適合する薬剤を添加、噴霧することで殺菌を行う。
【0007】
しかし、上記の温湯殺菌では、数十分程度、種子を温湯に浸けるため、高温や水分によって種子の劣化及び発芽率の低下を引き起こす虞がある。
【0008】
また、上記の乾熱殺菌では、数日程度、種子が高温の乾燥空気雰囲気に曝されるため、温湯殺菌と同様に、長時間高温環境に曝されることにより、種子の劣化が生じ、発芽率の低下を引き起こす虞がある。
【0009】
また、上記の薬剤を用いる殺菌では、高温による劣化は避けられるが、殺菌対象の菌類に適合した薬剤を選択する必要がある。また、同じ薬剤を長期間にわたって使用することによって薬剤耐性菌が生じ、これが種子を汚染した場合には、種子の消毒において薬剤が効かなくなる虞がある。
【0010】
種子以外の粒状及び粉末状の農産物に対しても、種子と同様に加熱殺菌や蒸気殺菌が主に用いられている。しかし、殺菌によって、温度や水分による色や味、食感等の農産物の劣化が避けられないというデメリットがある。また、農産物は水分を嫌うものが多いことから、利用できる殺菌技術は限られている。また、このような農産物に薬剤を用いて殺菌する場合には、薬剤による色や味、食感等の劣化に加え、農産物内の薬剤の残留問題も生じる。また、利用できる薬剤の種類も、食品添加物に認可されているものに限られている。
【0011】
このような状況の中、粒状及び粉末状の農産物に対しても、安全性及び殺菌性を両立できる殺菌方法として、対象物を水などで直接濡らさず薬剤を必要としないプラズマを用いた殺菌の実現が望まれている。
【0012】
このような粒状及び粉末状の農産物を殺菌対象とできる従来のプラズマ殺菌装置としては、例えば、サイクロン内を周回する水分の少ない粉体又は粒状物を、大気プラズマによって、低温で殺菌又は改質させるものがある(特許文献1参照)。また、農産物を殺菌するという目的とは異なるが、微粒子(微粉末)を表面改質するという目的の微粒子処理方法があり、例えば、ガスをプラズマ処理装置に供給する工程と、前記ガスのプラズマ処理装置への供給経路に粒子を供給し、ガスの流れとともにプラズマ処理装置内へ粒子を供給する工程と、前記供給経路のプラズマ処理装置内出口に対向して配された一対の電極間において、該出口を囲むようにプラズマを生じさせる工程からなる微粒子処理方法もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開2014-68号公報
【特許文献2】特開2006-68589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、従来のプラズマ殺菌装置は、例えば、特許文献1では、対象物である粉体又は粒状物が、サイクロン内でランダムに周回する状況下で、プラズマを照射されることから、確率的に、実際にプラズマが照射される対象物と照射されない対象物とが共存し、プラズマ照射の度合いに偏りが生じ、全ての対象物に対して均一で十分な殺菌が安定して行えないという課題があった。
【0015】
また、例えば、特許文献2では、農産物を殺菌するという目的とは異なるものであるが、前記供給経路のプラズマ処理装置内出口に対向して配された一対の電極間において、該出口を囲むようにプラズマを生じさせて、微粒子(微粉末)を表面改質するものであり、即ち、一対の電極間のうちの該出口の両端のみに局所的にプラズマを生じさせて微粒子(微粉末)を表面改質するものであることから、仮に微粒子として農作物を用いたとしても、この局所的なプラズマによって、農作物によっては殺菌されるものと殺菌されないものが混在し、農作物がまばらに殺菌される結果となり、不均一且つ不十分な殺菌にとどまってしまう(特許文献2参照)。
【0016】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、粒状(顆粒状)や粉末状の農産物のような小さな対象物に対しても、緩和な条件で品質を劣化させずに連続的かつ安定的にプラズマ殺菌を行えるプラズマ殺菌装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願に開示するプラズマ殺菌装置は、原料ガス雰囲気下で電極間で電圧印加により生成されるプラズマによって、対象物を殺菌するプラズマ殺菌装置において、上下方向に隙間を隔てて対向する上部電極及び下部電極から成る対向電極と、前記上部又は下部の電極の中心部から前記隙間に向かって、前記対象物を供給する供給手段と、前記下部電極の中心部から外周辺に沿って、前記対象物を外部に排出する排出手段と、を備えるものである。
【0018】
このように、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、上下方向に隙間を隔てて対向する上部電極及び下部電極から成る対向電極と、前記上部又は下部の電極の中心部から前記隙間に向かって、前記対象物を供給する供給手段と、前記下部電極の中心部から外周辺に沿って、前記対象物を外部に排出する排出手段と、を備えることから、供給手段から供給された対象物が下部電極の中心部に供給され、下部電極の中心部から外周辺に沿って、電極間に生じるプラズマによる殺菌処理を受けながら、外部に排出されることとなり、対象物が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物に対して、均一に殺菌を行うことができる。
【0019】
本願に開示するプラズマ殺菌装置は、原料ガス雰囲気下で電極間で電圧印加により生成されるプラズマによって、対象物を殺菌するプラズマ殺菌装置において、上下方向に隙間を隔てて対向する上部電極及び下部電極から成る対向電極と、前記上部又は下部の電極の中心部から前記隙間に向かって、前記対象物を供給する供給手段と、前記上部及び下部電極間の外周辺近傍に形成される前記隙間からなる開口状の外周開口部を備え、前記下部電極の中心部から外周辺に向かって転動する前記対象物を当該外周開口部から外部に排出する排出手段と、を備え、前記対向電極の上部電極が、前記供給手段の供給口から前記外周開口部まで連続して形成されるものである。
【0020】
このように、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、上下方向に隙間を隔てて対向する上部電極及び下部電極から成る対向電極と、前記上部又は下部の電極の中心部から前記隙間に向かって、前記対象物を供給する供給手段と、前記上部及び下部電極間の外周辺近傍に形成される前記隙間からなる開口状の外周開口部を備え、前記下部電極の中心部から外周辺に向かって転動する前記対象物を当該外周開口部から外部に排出する排出手段と、を備え、前記対向電極の上部電極が、前記供給手段の供給口から前記外周開口部まで連続して形成されることから、供給手段から供給された対象物が下部電極の中心部に供給され、下部電極の中心部から外周辺に沿って、前記供給手段の供給口から前記外周開口部まで連続して形成される上部電極と、下部電極との電極間に生じるプラズマによる殺菌処理を連続的に受け続けながら、外部に排出されることとなり、対象物が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物に対して、均一に殺菌を行うことができる。
【0021】
また、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、必要に応じて、前記供給手段が、前記対象物と共に前記原料ガスを供給するものである。このように、前記供給手段によって供給される前記原料ガスの濃度が、上部及び下部電極の各々の中央部との間で高められることから、全ての対象物が高濃度のプラズマ発生領域を通過することとなり、対象物が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物に対して、確実に殺菌を行うことができる。
【0022】
また、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、必要に応じて、前記上下の対向電極が、共に円板状で形成され、少なくとも前記下部電極が、円板中心を回転中心として回転するものである。このように、前記上下の対向電極が、共に円板状で形成され、少なくとも前記下部電極が、円板中心を回転中心として回転することから、前記対象物が、ランダムに下部電極上を転がっていくような粒状物であっても、下部電極自体が回転動作することによって、個々の前記対象物の移動経路のばらつきが一様化されることとなり、対象物が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物に対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。
【0023】
また、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、必要に応じて、前記上部電極が、放射状に複数に延出する線状電極から形成され、前記下部電極が、円板状で形成されるものである。このように、前記上部電極が、放射状に複数に延出する線状電極から形成され、前記下部電極が、円板状で形成されることから、上部電極では重量の軽い線状電極が自然発生的に生じるランダムな振動や撓みによって、上部電極と下部電極との電極間に生じる放電の位置及び強度が適度に揺らぎながら経時的に刻一刻と変動することとなり、結果として一箇所のみ生じるような局所的な放電の発生が抑制され、均一で穏やかな放電が持続し、より均一的な殺菌を種子に与えることができる。
【0024】
また、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、必要に応じて、前記上部及び下部電極の隙間に介装され、前記各電極の円板中心から放射状又は螺旋状に延出する複数のリブ体からなるリブ体部を備えるものである。このように、前記対象物が粒状体等の微細なものであっても、前記リブ体部によって、前記対向電極間をばらついて落下する個々の前記対象物の流路が均一に整えられることとなり、前記対象物における当該移動経路のばらつきが抑えられて一様化されることとなり、全ての対象物に対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。
【0025】
また、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、必要に応じて、前記対向電極間に、液体状の誘電体が封止されて形成される放電位置制御部を備えるものである。このように、液体状の誘電体の作用によって、対向電極間にプラズマが発生した位置では、誘電率が低下し、次回のプラズマ発生位置が誘電率の高い他の隣接位置に順次移行していくように放電が制御されることから、アーク放電の発生が抑制され、安定的で穏やかな放電が対向電極間に継続的に発生することとなり、前記対象物に損傷を与えない程度の穏やかな放電状態でプラズマ殺菌を維持することができる。
【0026】
また、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、必要に応じて、前記対向電極の少なくとも一方が、中央部に向かって凸状に湾曲するものである。このように、前記対向電極の中央部間の距離が狭まることによって、前記対向電極の中央部間において、相対的に強い放電が生じることでプラズマ濃度が高められることから、前記対象物が前記対向電極間を落下した際に確実に通過する経路(前記対向電極の中央部間)で相対的に最も高濃度のプラズマによって殺菌されることとなり、対象物が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物に対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。
【0027】
また、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、必要に応じて、前記対向電極の少なくとも一方の内側円板面が、中央部に向かって凸状に湾曲するものである。このように、前記対向電極の中央部間の距離が狭まることによって、前記対向電極の中央部間において、相対的に強い放電が生じることでプラズマ濃度が高められることから、前記対象物が前記対向電極間を落下して通過する経路(前記対向電極の中央部間)で高濃度のプラズマによって殺菌されることとなり、対象物が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物に対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。
【0028】
また、本願に開示するプラズマ殺菌装置は、必要に応じて、前記上部又は下部電極の少なくとも一方の、対向する対向面上に、スパイラル状又は放射状の突起を形成するものである。前記突起が形成されることにより、前記対象物が粒状体等の微細なものであっても、全ての対象物が、前記突起により定められた移動経路の範囲内に収まって前記上部又は下部電極上を移動することから、前記対象物における当該移動経路のばらつきが確実に一様化されることとなり、全ての対象物に対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の構成図を示す。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の構成図を示す。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の構成図を示す。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の構成図を示す。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の構成図を示す。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の構成図を示す。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の側面図(a)、下部電極から上部電極を見た説明図(b)、リブ体部が下部電極と一体化した場合の側面からの説明図(c)、及びリブ体部が上部電極と一体化した場合の構成図(d)及びその上部電極を下部電極から見た説明図(e)を示す。
【図8】本発明の第6の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の構成図を示す。
【図9】本発明の第7の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の対向電極の形状についての説明図を示す。
【図10】本発明の第8の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の対向電極の形状についての説明図を示す。
【図11】本発明の第8の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の構成図を示す。
【図12】本発明の第8の実施形態に係るプラズマ殺菌装置の側面図(a)、リブ体部を電極間に介在させた場合の側面図(b)、下部電極の両端部を傾斜付きとした場合の側面図(c)を示す。
【図13】本発明に係るプラズマ殺菌装置を用いた殺菌試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るプラズマ殺菌装置を、図1に基づいて説明する。

【0031】
図1において、本実施形態に係るプラズマ殺菌装置は、原料ガス雰囲気下で電極間で電圧印加により生成されるプラズマによって、対象物100を殺菌するプラズマ殺菌装置であって、上下方向に隙間Aを隔てて対向する上部電極11及び下部電極12から成る対向電極1と、前記上部電極11の中心部にある中心排出孔11aから前記隙間Aに向かって、対象物100を供給する供給手段2と、下部電極12の中心部12aから外周辺12bに沿って、対象物100を外部に排出する排出手段3と、この対向電極1に交流電圧を印加する交流電源200と、排出手段3から排出された対象物100を回収する回収部300とを備える構成である。

【0032】
原料ガス雰囲気としては、大気中の空気を原料ガスとしてそのまま用いることができる。この他、原料ガスとして酸素ガスやアルゴンガスや窒素ガス等を外部から供給して用いることもできる。

【0033】
対向電極1を構成する上部電極11及び下部電極12の形状は特に限定されず、例えば、平板状や、曲面状とすることができる。対向電極1の材質としては、通常用いられている金属電極であれば特に限定されず、例えば、アルミ電極を用いることができる。

【0034】
この供給手段2は、図1に示すように、この対象物100を収容する収容部21と、対象物100を対向電極1の中央部に集約するように案内する案内部22と、この案内部22からこの対向電極1間に対象物100を供給する供給パイプ23を備えて構成され、上部電極11の中心部から前記隙間Aに向かって、対象物100を落下させて供給する。

【0035】
この収容部21は、この案内部22に対象物100を供給する排出孔21aを配設するが、この排出孔21aの位置は、特に限定されないが、図1に示すように、対向電極1の中央部に対象物100を供給し易いように、この収容部21の中央部に配設することが好ましい。なお、上述したように、この排出孔21aの位置は、この収容部21の中央部に限定されないことから、中央部以外の任意の位置に設置することも当然に可能である。

【0036】
また、この案内部22は、この対向電極1に対象物100を供給する排出孔22aを配設するが、この排出孔22aの位置は、特に限定されないが、図1に示すように、対向電極1の中央部に対象物100を供給し易いように、この収容部21の中央部に配設することが好ましい。この案内部22は、この対象物100を一旦貯留することにより、この対象物100の二次貯留の役割を果たすこととなり、この対象物100が対向電極1に供給される際の目詰まりを防止することができる。

【0037】
この排出手段3は、図1に示すように、下部電極12の上面として示される。この排出手段3は、対象物100の自重によって、対象物100が下部電極12上で転がっていくことを利用して、対象物100を下部電極12の中心部12aから外周辺12bに移動させる。

【0038】
即ち、この排出手段3は、図1に示すように、上部電極11及び下部電極12の電極間の外周辺近傍に形成される前記隙間Aからなる開口状の外周開口部を備えており、この下部電極12の中心部から外周辺に向かって転動する対象物100を、この外周開口部から外部に排出する。この外周開口部については、図1に示すように、この対向電極の上部電極11は、供給手段2の供給口からこの外周開口部まで連続して形成されている。

【0039】
このように、この対向電極の上部電極11が、供給手段2の供給口からこの外周開口部まで連続して形成されていることから、対向電極間の全体に渡って均一な放電が得られることとなり、局所的な放電(例えば、外周開口部近傍のみの放電)が抑制されて、対向電極間の全体に渡って均一なプラズマが安定的に生成され、複数の各対象物100に対しても均等的な(まばらにならない)殺菌を行うことができる。

【0040】
この他にも、この排出手段3としては、下部電極12の中心部12aに高さ(隆起)を持たせる形状とすることにより、対象物100の下部電極12上の転がり易さ(移動し易さ)を高め、対象物100を中心部12aから外周辺12bに移動させることも可能である。

【0041】
プラズマ殺菌の対象となる対象物100は、特に限定されないが、小さく軽くて転がり易いものを対象とすることが好適であり、例えば、粉末状や顆粒状の農産物が挙げられ、例えば、農産物の種子を挙げることができる。また、この交流電源200は、印加電圧が交流であれば特に限定されず、低周波電源や高周波電源(RF)を用いることができる。例えば、周波数帯域:数十Hz~数百MHz及び電圧:1~10kVの交流電源を用いることができる。また、この回収部300としては、樹脂製のプラスチックトレー等の受け皿を利用することができる。

【0042】
このように、この供給手段2から供給された対象物100が下部電極12の中心部12aに供給され、この下部電極12の中心部12aから外周辺12bに沿って、対向電極1間に生じるプラズマによる殺菌処理を受けながら、この排出手段3により外部に排出され、この排出された対象物100が回収部300で一括して回収されることとなり、対象物100が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物100に対して、乾燥条件下で均一に殺菌処理がなされた対象物100を簡易に回収することができる。

【0043】
また、上記で示したように、外気に開放された対向電極1間で生じるプラズマ放電を利用することから、プラズマ放電に要求される圧力については大気圧とすることができる。この他にも、低ガス圧とすることも可能であり、広い圧力範囲において、顆粒や粉末等の対象物100を連続的かつ大量にプラズマ放電により殺菌することが可能となる。

【0044】
なお、上記の構成では、この供給手段2は、上部電極11の中心部にある中心排出孔11aから前記隙間Aに向かって、対象物100をその自重により落下させて供給したが、この供給方法に限定されず、下部電極12の中心部12aから前記隙間Aに向かって、対象物100を供給することも可能である。この他にも、下部電極12の中心部12aから前記隙間Aに向かって、対象物100を噴出して上昇させて供給することも可能である。対象物100を上方に噴出させる方法としては、各種の噴射機やポンプによる加圧等を用いることができる。

【0045】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係るプラズマ殺菌装置を説明する。

【0046】
第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同じく、前記対向電極1と、前記供給手段2と、前記排出手段3とを備え、さらに、図2に示すように、前記供給手段2が、前記原料ガスを供給する原料ガス供給部24を追加で備える構成である。また、前記収容部21の下面が前記案内部22の開放上面を覆うことにより、閉塞領域が形成され、この閉塞領域に、前記収容部21から供給される対象物100と、前記原料ガス供給部24から供給される原料ガスとが、集約される。また、この閉塞領域に対して、前記原料ガス供給部24からの原料ガスを供給するガス管路24aを備える。

【0047】
このように、前記供給手段2によって供給される前記原料ガスの濃度が、上部電極11及び下部電極12の各々の中央部との間で高められることから、全ての対象物100が高濃度のプラズマ発生領域を通過することとなり、この対象物100が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物100に対して、確実に殺菌を行うことができる。

【0048】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態に係るプラズマ殺菌装置を説明する。

【0049】
第3の実施形態では、上述した第2の実施形態と同じく、前記対向電極1と、前記供給手段2と、前記排出手段3とを備え、さらに、図3に示すように、前記上下の対向電極1が、共に円板状で形成され、少なくとも前記下部電極12が、円板中心を回転中心として回転して構成され、この下部電極12の回転を駆動させる駆動部400と、この駆動部400の回転をこの下部電極12に伝播させる下部パイプ401を備える。また、前記案内部22がロート状に形成され、前記案内部22を密閉する密閉容器22bを備える。この駆動部400としては、モーター、歯車伝達装置、及びベルト伝達装置を組み合わせて用いることができる。

【0050】
このように、前記上下の対向電極1が、共に円板状で形成され、少なくとも前記下部電極12が、円板中心を回転中心として回転することから、前記対象物100が、ランダムに下部電極12上を転がっていくような粒状物であっても、下部電極12自体が回転動作することによって、下部電極12上の中心部12aから外周辺12bに沿って対象物100が転がりやすくなり、個々の対象物100の移動経路のばらつきが一様化されることとなり、対象物100が粉末状等の微細なものであっても、個々の対象物100全てに対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。

【0051】
なお、上記では、この駆動部400の駆動対象は、この下部電極12のみを対象としたが、この他にも、図4に示すように、この上部電極11及び下部電極12の両電極を共に回転させることも可能である。この上部電極11も回転することによって、この上部電極11の回転に伴って発生する遠心力により、この上部電極11の中心点から外周に向かう気流が生じることとなり、この対向電極1間でこの対象物100の流動が促進されることによって、均一的な殺菌を行うことができる。

【0052】
また、例えば、この両電極を同じ回転方向で回転させる場合(図4中の実線の矢印の場合)には、この両電極の回転速度が各々異なることが好ましい。この両電極の回転速度が各々異なることから、この両電極が対向する対向面間の対向方向の位置関係が時間の経過と共に回転方向にずれることとなり、放電位置が常に変動し、放電位置が経時的に移動して均一化された殺菌を行うことができる。

【0053】
また、例えば、この上部電極11及び下部電極12を、異なる回転方向で回転させること(対向電極1のいずれかの回転が図4中の点線の矢印方向)も可能である。この場合には、この両電極が対向する対向面間の対向方向の位置関係が時間の経過と共に、相対的にこの両電極の回転速度を合算した回転速度で大きく変化することから、放電位置が常に大きく変動することとなり、放電位置が経時的に移動して均一化された殺菌を行うことができる。

【0054】
また、例えば、この上部電極11及び下部電極12の各回転の方向及び/又は速度について、時間の経過と共に定期的に、方向転換(逆回転)及び/又は速度増減させることもできる。この方向転換(逆回転)については、例えば、常にこの上部電極11及び下部電極12が同じ方向に回転するようにすることができる。また、例えば、この上部電極11及び下部電極12が、ある時点では、同じ方向に回転し、また、ある時点では異なる方向に回転するようにすることもできる。また、この回転速度の速度増減については、例えば、この上部電極11及び下部電極12の回転速度が、常に同じとなるように定期的に速度増減することも可能であり、また、定期的に異なるように速度増減することも可能である。この時間の経過と共に定期的に、方向転換(逆回転)及び/又は速度増減させることによって、両電極が対向する対向面間の対向方向の位置関係が、時間の経過と共に、回転方向の正逆及び/又は回転速度を含めて大きく変動することから、放電位置が常に大きく変動することとなり、放電位置が経時的に移動して均一化された殺菌を行うことができる。

【0055】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態に係るプラズマ殺菌装置を説明する。

【0056】
第4の実施形態では、上述した第3の実施形態と同じく、前記対向電極1と、前記供給手段2と、前記排出手段3とを備え、さらに、図5に示すように、前記対向電極1に対する原料ガスを導入する導入口501と排気を行う排気口502とを備える処理容器500を備えて構成される。

【0057】
この処理容器500としては、ステンレス等の金属製容器および誘電体材(例えばガラス、アクリル等)から形成される誘導体ケースを用いることができる。この処理容器500の底部は、前記回収部300として、前記対象物100が蓄積されて回収される。

【0058】
このように、この処理容器500によって、前記対向電極1に対して、原料ガスの導入と排気が集中的に行われ、原料ガスを高濃度に維持できることとなり、より効率的な殺菌処理を行うことができる。また、この処理容器500は、この導入口501で導入される気体よりも排気口502で排出される気体の体積量を高めることによって、容器内が負圧となり、よりプラズマの発生しやすい気体条件が形成されることとなり、より効率的なプラズマ発生による安定的な殺菌を行うことができる。

【0059】
なお、上記では、この駆動部400の駆動対象は、この下部電極12のみを対象としたが、この他にも、図6に示すように、この上部電極11及び下部電極12の両電極ともに対象とすることも可能である。この上部電極11も回転することによって、この上部電極11の回転に伴って発生する遠心力により、この上部電極11の中心点から外周に向かう気流が生じることとなり、この対向電極1間でこの対象物100の流動が促進されることによって、均一的な殺菌を行うことができる。

【0060】
また、例えば、この両電極を同じ回転方向で回転させる場合(図6中の実線の矢印の場合)には、この両電極の回転速度が各々異なることが好ましい。この両電極の回転速度が各々異なることから、この両電極が対向する対向面間の対向方向の位置関係が時間の経過と共に回転方向にずれることとなり、放電位置が常に変動し、放電位置が経時的に移動して均一化された殺菌を行うことができる。

【0061】
また、例えば、この上部電極11及び下部電極12を、異なる回転方向で回転させること(対向電極1のいずれかの回転が図6中の点線の矢印方向)も可能である。この場合には、この両電極が対向する対向面間の対向方向の位置関係が時間の経過と共に、相対的にこの両電極の回転速度を合算した回転速度で大きく変化することから、放電位置が常に大きく変動することとなり、放電位置が経時的に移動して均一化された殺菌を行うことができる。

【0062】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態に係るプラズマ殺菌装置を説明する。

【0063】
第5の実施形態では、上述した第3の実施形態と同じく、前記対向電極1と、前記供給手段2と、前記排出手段3とを備え、さらに、図7(a)の側面図に示すように、前記上部電極11及び下部電極12の隙間Aに介装され、この下部電極12から上部電極11を見た説明図である図7(b)に示すように、この各電極の円板中心から放射状に延出する複数のリブ体41からなるリブ体部4を備えて構成される。

【0064】
このリブ体部4は、回転式スクレイパーを用いることができる。このリブ体部4は、前記上部電極11及び/又は前記下部電極12に対して、一体化して構成されていてもよいし、独立して構成されていてもよい。このリブ体部4は、前記上部電極11及び/又は前記下部電極12に対して、一体化して構成される場合には、この一体化された電極と連動して動作し、独立して構成される場合には、前記上部電極11及び/又は前記下部電極12の動作とは、非連動で動作することとなり、用途に応じて所望とするリブ体部4の動作を容易に得ることができる。なお、このリブ体部4は、螺旋状に延出する複数のリブ体41からなる構造とすることも可能である。

【0065】
このように、この対象物100の流れがリブ体部4により外周辺に押し流され、この対象物100が粒状体等の微細なものであっても、このリブ体部4によって、この対向電極1間をばらついて落下する個々の対象物100の流路が均一に整えられることとなり、この対象物100におけるこの移動経路のばらつきが抑えられて一様化されることとなり、全ての対象物100に対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。

【0066】
また、リブ体部4により、対象物100がこの対向電極1間に滞留する時間を増大させることとなり、この対象物100がより多くの時間にわたって殺菌され、より効率性の高い殺菌処理を行うことができる。

【0067】
なお、上記では、このリブ体部4は、この対向電極1間に独立して介装される構成としたが、この構成に限定されず、この上部電極11または下部電極12と一体化されていてもよい。例えば、このリブ体部4は、図7(c)に示すように、この下部電極12と一体化することも可能である。この場合には、この下部電極12上に落下した対象物100は、殺菌処理を受けながら、この下部電極12の外周辺方向に均一な経路で掃き出されることとなり、十分な時間でかつ均一的に殺菌される。

【0068】
また、このリブ体部4は、図7(d)に示すように、この上部電極11と一体化することも可能である。この場合には、このリブ体部4は、図7(e)に示すように、径方向(円周方向)に沿って形成されるリブ体41と、この対象物100を上部電極11の外周辺方向に押し出すために形成される分割スクレイパーとしての分割リブ体41aとを備えて構成される。この分割リブ体41aを構成する材質は、特に限定されないが、対象物100がこの分割リブ体41aに衝突した際の物理的な損傷を抑制するという点から、比較的柔らかい材質(例えば樹脂製)のものが好ましい。

【0069】
このようなリブ体部4が上部電極11と一体化する構成により、この対象物100を上部電極11の径方向(円周方向)に沿って移動させつつ外周辺方向に移動させることから、対向電極1間におけるこの対象物100の滞留時間を増大させることとなり、この対象物100がより多くの時間にわたって殺菌され、より効率性の高い殺菌処理を行うことができる。

【0070】
なお、上述した上部電極11または下部電極12と一体化するリブ体部4を代替する構成として、前記上部電極11又は下部電極12の少なくとも一方の、対向する対向面上に、スパイラル状又は放射状の突起を形成する構成とすることもできる。

【0071】
この突起が配設されることにより、この対象物100が粒状体等の微細なものであっても、全ての対象物100が、この突起により定められた移動経路の範囲内に収まってこの上部電極11又は下部電極12上を確実に移動できることから、この対象物100におけるこの移動経路のばらつきが確実に一様化されると共に、この対象物100がこの突起により形成された流路(移動経路)を通過することによって、この対向電極1間におけるこの対象物100の滞留時間が増大することとなり、全ての対象物100に対して十分な殺菌を均一かつ確実に行うことができる。

【0072】
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態に係るプラズマ殺菌装置を説明する。

【0073】
第6の実施形態では、上述した第3の実施形態と同じく、前記対向電極1と、前記供給手段2と、前記排出手段3とを備え、さらに、図8に示すように、この対向電極1間に、液体状の液体誘電体51が、誘電体材(例えばガラス等)から形成される誘導体ケース52により封止されて形成される放電位置制御部5を備える構成である。

【0074】
この液体誘電体51を構成する液体としては、特に限定されないが、溶媒誘電率の温度依存特性が良好であるという点から、水、ニトロベンゼン、メチルアルコール、アセトン等の分極性液体を用いることが好ましく、特に、取扱いが容易であるという点から、水を用いることがより好ましい。

【0075】
このように、液体誘電体51の作用によって、この対向電極1間にプラズマが発生した位置では、誘電率が低下し、次回のプラズマ発生位置が誘電率の高い他の隣接位置に順次移行していくことから、アーク放電の発生が抑制され、安定的で穏やかな放電が対向電極1間に継続的に発生することとなり、この対象物100に損傷を与えない程度の穏やかな放電状態でプラズマ殺菌を維持することができる。なお、この対向電極1間に、上記第5の実施形態で記載した前記リブ体部4を用いることもできる。

【0076】
(第7の実施形態)
以下、第7の実施形態に係るプラズマ殺菌装置を説明する。

【0077】
第7の実施形態では、上述した第6の実施形態と同じく、前記対向電極1と、前記供給手段2と、前記排出手段3と、前記液体誘電体51と、前記誘導体ケース52と、前記放電位置制御部5と、を備え、さらに、図9に示すように、前記対向電極1の少なくとも一方である下部電極12の内側円板面が、中央部に向かって凸状に湾曲する構成である。

【0078】
この下部電極12の内側円板面は、図9(a)に示すように、中央部(中心部12a)に向かって凸状に湾曲すると共に、液体誘電体51も、この中央部に向かって凸状に湾曲し、この中央部(中心部12a)に近付くにつれて、対向電極間方向の液体誘電体51の厚みが薄くなり、対向電極1の中央部間において、相対的に強い放電が生じることで電極間のプラズマ濃度が高められることから、対象物100が上部電極11から落下する下部電極12の中央部(中心部12a)で、高濃度のプラズマによって殺菌されることとなり、対象物100が粉末状等の微細なものであっても、全ての対象物100に対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。

【0079】
このように、液体状の誘電体の作用によって、対向電極1間にプラズマが発生した位置では、誘電率が低下し(放電現象が生じ難くなり)、次回のプラズマ発生位置が誘電率の高い他の隣接位置に順次移行していくように放電が制御されることから、アーク放電の発生が抑制され、安定的で穏やかな放電が対向電極1間に継続的に発生することとなり、対象物100に損傷を与えない程度の穏やかな放電状態で、対象物100に対するプラズマ殺菌を維持することができる。

【0080】
なお、上述した第6の実施形態の前記液体誘電体51、前記誘導体ケース52、及び前記放電位置制御部5を備えない場合でも、この下部電極12の内側円板面は、図9(b)に示すように、中央部(中心部12a)に向かって凸状に湾曲する構成とすることができる。この場合には、傾斜面が形成された下部電極12上を、この中央部12aから外周辺に向かって、この対象物100が転がりやすくなることとなり、より効率的に排出手段3により外部に対象物100が排出される。

【0081】
この他の湾曲形状に関する変形例としては、図9(c)に示すように、上述した第6の実施形態の前記液体誘電体51、前記誘導体ケース52、及び前記放電位置制御部5を備える構成において、この放電位置制御部5が、下部電極12の中央部(中心部12a)に向かって凸状に湾曲する構成とすることができる。

【0082】
この場合には、下部電極12の中央部(中心部12a)に近付くにつれて、この対向電極1の対向方向の液体誘電体51の厚みが増大することから、中心部での単位面積当たりの静電容量が周辺部よりも増加して、放電が最も発生しやすい位置である対向電極1の中央部においてプラズマの密度が増加し、より効率的なプラズマ殺菌ができると同時に、放電位置制御部5の効果により、最も放電しやすい位置における中央部での、高温を伴うアーク放電への移行が抑えられ、局所的な熱量の発生を抑制し、この対象物100の損傷を抑制して穏やかに殺菌することができる。

【0083】
(第8の実施形態)
以下、第8の実施形態に係るプラズマ殺菌装置を説明する。

【0084】
第8の実施形態では、上述した第6の実施形態と同じく、前記対向電極1と、前記供給手段2と、前記排出手段3と、前記液体誘電体51と、前記誘導体ケース52と、前記放電位置制御部5と、を備え、さらに、図10(a)に示すように、前記上部電極11が、放射状に複数に延出する線状電極から形成され、前記下部電極12が、円板状で形成される構成である。

【0085】
この上部電極11は、放射状に複数に延出する線状電極から形成されるものであれば直線状に限定されず、例えば、図10(b)に示すように、スパイラル状であってもよい。このように、この上部電極11が、放射状に複数に延出する線状電極から形成され、この下部電極12が、円板状で形成されることから、上部電極11では重量の軽い線状電極が自然発生的に生じるランダムな振動や撓みによって、上部電極11と下部電極12との電極間に生じる放電の位置及び強度が適度に揺らぎながら経時的に刻一刻と変動することとなり、結果として一箇所のみ生じるような局所的な放電の発生が抑制され、均一で穏やかな放電が持続し、より均一的な殺菌を対象物100に与えることができる。

【0086】
さらに、図10(c)及び(d)に示すように、この上部電極11の周囲に絶縁体から形成される絶縁被覆部11bで被覆されていてもよい。この絶縁被覆部11bは、絶縁体であれば特に限定されないが、例えば、セラミックスから形成されるものを用いることができ、例えば、セラミックス絶縁管を用いることができる。絶縁被覆部11bで被覆されることによって、局所的な放電がより抑制されて、より穏やかで均質な放電が生じ易くなり、この対象物100の損傷をさらに抑制して穏やかに殺菌することができる。

【0087】
本実施形態では、図11(a)に示すように、この上部電極11を固定して保持する電極保持部11cを備えることができる。また、この電極保持部11cに固定される上部電極11は、上述したように、図11(b)に示すように、絶縁被覆部11bで被覆されていてもよい。勿論、この上部電極11は、絶縁被覆部11bに被覆されることに限定されるものではなく、図11(c)に示すように、絶縁被覆部11b等の被覆を要しない形態とすることも可能である。このような構成によって、対象物100を、前記供給パイプ23を経由して供給することによって、均一で穏やかな放電が電極間で持続し、均一的な殺菌をこの対象物100に与えることができる。

【0088】
この上部電極11は、非回転でも回転させてもよく、この上部電極11を回転させる場合には、この供給パイプ23は、例えば、図12(a)に示すように、回転軸と併用することが可能であり、この上部電極11が回転することで、より対象物100を外部に排出させやすくすると共に、定常的に上部電極11が動き続けることによって、電極間に発生する放電の局在化を抑制し、より均一的な殺菌をこの対象物100に与えることができる。

【0089】
また、例えば、図12(b)に示すように、上述したリブ体部4を、上部電極11と分離独立した状態で、電極間に介在させる構成とすることも可能である。この場合には、この対象物100の流れがリブ体部4により外周辺に押し流され、この対象物100が粒状体等の微細なものであっても、このリブ体部4によって、この対向電極1間をばらついて落下する個々の対象物100の流路が均一に整えられることとなり、この対象物100におけるこの移動経路のばらつきが抑えられて一様化されることとなり、局所的な放電が抑制され、全ての対象物100に対して、確実かつ均一に殺菌を行うことができる。

【0090】
なお、図12(c)に示すように、下部電極12の両端部(開口状の外周開口部)を傾斜付き(即ち、傾斜面を有するもの)としても良い。この場合には、この対象物100の自重によって、より下部電極12上にこの対象物100が転がり易い状況が形成されることとなり、この対向電極1間をばらついて落下する個々の対象物100の流路が均一に整えられ、電極間に発生する放電の局在化が抑制され、より均一的な殺菌をこの対象物100に与えることができる。

【0091】
以下に実施例を示すが、これらの実施例は本発明に係るプラズマ殺菌装置を単に例示するためのものであり、本発明を限定するものではない。

【0092】
(実施例1)
上記第1の実施形態で示した装置を用いて、対象物に対する殺菌を行った。実施条件は、ステンレス製プラズマ生成装置内に放電ガスとしてアルゴンガスを流し、アルミ電極と放電電極の間に周波数10kHzの交流高電圧を印可して放電させる。放電電圧は6~10kV、アルゴン流量を0~2.5L/min、圧力は50~100kPaの間で可変とし、対象物表面に付着させた残存する菌数を評価した。対象物としてはシロナ種子、感染菌としては黒腐病菌を用い、種子に105~106個程度の菌を付着、乾燥させた後、種子をプラズマ処理することによって、生菌の残存数をコロニーカウンティング法を用いて確認した。

【0093】
上記殺菌を行った結果として、図13に、(a):印可電圧依存性、(b)アルゴンガス流量依存性、(c)処理圧力依存性の各々の結果を示す。電圧の上昇、ガス流量の増加、ガス圧の増加のいずれの場合でも、種子表面の残存菌数が著しく減少することが明確に確認された。菌の減少量は、1/100~1/1000ものオーダーに達しており、十分実用的な殺菌技術であることが分かった。
【符号の説明】
【0094】
1 対向電極
11 上部電極
11a 中心排出孔
11b 絶縁被覆部
11c 電極保持部
12 下部電極
12a 中心部
12b 外周辺
2 供給手段
21 収容部
21a 排出孔
22 案内部
22a 排出孔
22b 密閉容器
23 供給パイプ
24 原料ガス供給部
24a ガス管路
3 排出手段
4 リブ体部
41 リブ体
41a 分割リブ体
5 放電位置制御部
51 液体誘電体
52 誘導体ケース
100 対象物
200 交流電源
300 回収部
400 駆動部
401 下部パイプ
500 処理容器
501 導入口
502 排気口
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12