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明細書 :新規なアミロイド線維生成抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年4月26日(2018.4.26)
発明の名称または考案の名称 新規なアミロイド線維生成抑制剤
国際特許分類 A61K  31/724       (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
A61K  31/16        (2006.01)
FI A61K 31/724
A61K 31/713
A61P 43/00 121
A61P 25/28
A61P 25/00
A61P 43/00 105
A61K 31/16
国際予備審査の請求
全頁数 21
出願番号 特願2017-523714 (P2017-523714)
国際出願番号 PCT/JP2016/067373
国際公開番号 WO2016/199892
国際出願日 平成28年6月10日(2016.6.10)
国際公開日 平成28年12月15日(2016.12.15)
優先権出願番号 2015117150
優先日 平成27年6月10日(2015.6.10)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】城野 博史
【氏名】有馬 英俊
【氏名】安東 由喜雄
【氏名】本山 敬一
【氏名】東 大志
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100102015、【弁理士】、【氏名又は名称】大澤 健一
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
4C206
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086EA18
4C086EA20
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
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4C206ZC41
4C206ZC75
要約 本発明は、難治性アミロイドーシスに対するより有効な治療薬を提供することを目的とする。より具体的には、安全性の高く、TTRタンパク質のアミロイド線維形成の抑制効果が従来の治療薬に比べてより優れたアミロイド線維の形成を抑制できる新規な物質を提供することである。本発明により、グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン(GUG-β-CyD)とアルキレンジアミンをコアとするポリアミドアミンデンドリマーとの結合体(GUG-β-CDE)と、トランスサイレチン(TTR)のmRNAに対してRNA干渉を起こすRNAとからなる複合体を有効成分として含むアミロイド線維生成抑制剤が提供される。本発明によりまた、前記アミロイド線維生成抑制剤を含むアミロイドーシスの予防および/または治療のための医薬組成物が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
シクロデキストリンとポリアミドアミンデンドリマーとの結合体と、トランスサイレチンのmRNAに対してRNA干渉を起こすRNAとからなる複合体を有効成分として含むアミロイド線維生成抑制剤。
【請求項2】
前記シクロデキストリンが、グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン(GUG-β-CyD)である請求項1に記載のアミロイド線維生成抑制剤。
【請求項3】
前記RNAが、shRNAまたはsiRNAである、請求項1又は2に記載のアミロイド線維生成抑制剤。
【請求項4】
前記RNAが、shRNAである請求項3に記載のアミロイド線維生成抑制剤。
【請求項5】
前記結合体が、グルクロニルグリコシル-β-シクロデキストリンとポリアミドアミンデンドリマーとの結合体(GUG-β-CDE)である、GUG-β-CDE(G2, DS 1.2)、GUG-β-CDE(G2, DS 1.8)、GUG-β-CDE(G2, DS 2.5)、又はGUG-β-CDE(G2, DS 4.5)である請求項2~4のいずれか一つに記載のアミロイド線維生成抑制剤。
【請求項6】
前記複合体における、GUG-β-CDE/RNAのチャージ比が、20~100である請求項2~5のいずれか一つに記載のアミロイド線維生成抑制剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載のアミロイド線維生成抑制剤を含むアミロイドーシスの予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【請求項8】
前記アミロイドーシスが、家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)、アルツハイマー病、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、又はAAアミロイドーシスである請求項7に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアミロイド線維生成抑制剤に関する。本発明はまた該抑制剤を含むアミロイドーシスを予防及び/又は治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドーシスとは、β-シート構造を有するタンパク質が重合して不溶性のアミロイド(amyloid)又はアミロイド線維と呼ばれる細線維を形成し、生体内に沈着して組織傷害をもたらす疾患群のことを指す。ドイツの病理学者であるVirchowは、アミロイドーシスの組織標本がヨードで紫色に染まることを発見した。この結果から、Virchowは組織に沈着した物質は多糖体であると考え、これを「デンプン様物質」すなわち「アミロイド」と命名し、アミロイドの沈着により惹起される病態をアミロイドーシスと呼ぶことを提唱した。その後の研究により、アミロイドの主成分はナイロン様に重合して線維を形成するタンパク質であり、アミロイドには血清アミロイドP成分やグリコサミノグリカンなどが含まれていることが分かっている。現在では、アミロイドは「コンゴレッド染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下で観察すると緑色に強く輝く複屈折を起こす幅8-15nmの枝分かれのない細線維の集積からなる」と定義されている。
【0003】
アミロイド線維の沈着によって臓器障害が引き起こされるアミロイドーシスには、家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy;FAP)、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)、細胞内にアミロイド様物質がたまるハンチントン病をはじめとする遺伝性神経変性疾患など様々な疾患が含まれている。その中でもFAPは、末梢神経、自律神経、腎、皮膚などの全身諸臓器にアミロイド沈着をきたし、常染色体優性遺伝形式で遺伝浸透する全身性アミロイドーシスであり、我が国、特に九州地方及び中部地方で多くの症例が確認されている。1952年にポルトガル人のFAP症例が初めて報告されて以来、世界各国から同様の症例報告がなされている。FAPの原因となるアミロイド線維は、主として、血清タンパク質であるトランスサイレチン(TTR)が変異したもので構成されている。
【0004】
正常TTRは、β-シート構造を多く含む立体構造をしており、肝臓、脳脈絡叢、網膜、膵α細胞などで産生されるが、特にその90%以上が肝臓で産生されるといわれている。正常TTRは、四量体を形成してサイロキシン(T4)やレチノール結合タンパク質(RBP)などを介したビタミンAの輸送体としての役割を担っている。正常TTRの変異体は、これまでに100種以上が報告されており、構造安定性が低く、四量体から単量体への構造変化を起こしやすいことが明らかになっている。
【0005】
わが国で多いFAPは、Val30Met型の変異TTRを原因タンパク質とするFAPである。FAPの主要性状は、左右対称性に下肢末端から上行する知覚障害を伴う多発性神経炎と自律神経障害(交代性の下痢と便秘、起立性低血圧、排尿障害等)であり、これらはいずれもアミロイドによる神経障害が原因である。その後、心臓、腎臓、消化管へのアミロイド沈着が著しくなり、これらの臓器の機能不全を引き起こす。一般的には、20代後半から30代で発症し10年で歩行不能となり、10数年の経過で心不全、腎不全などで死亡する予後不良の疾患であり、厚生省特定疾患にも指定されている難病の一つである。
【0006】
FAPをもたらし得る変異TTRタンパク質は、正常TTRタンパク質に比べ構造安定性が低く、分子中のβ-シート構造が互いに会合し不溶性のアミロイド線維を形成して組織に沈着するといわれている。FAPの治療としては、変異TTRの約90%以上が肝臓で産生されることから肝移植治療が行われている。一方で、アミロイド線維形成メカニズムに基づいたFAPの治療方法として、四量体TTR分子の乖離(解離)の阻害などが試みられている(非特許文献1及び2)。
【0007】
また、本発明者らにより、糖、ペプチド又はポリエチレングリコールで修飾されたシクロデキストリン誘導体を有効成分として含むアミロイド線維形成抑制剤が提案されている(特許文献1)。そこでは、修飾されたシクロデキストリン誘導体の例として、6-O-α-(4-O-α-D-グルクロニル)-D-グリコシル-β-シクロデキストリン及び6-O-α-マルトシル-β-シクロデキストリンが開示されている。
また、本発明者らにより、アルキレンジアミンをコアとするポリ(アミドアミン)デンドリマーを有効成分として含むアミロイド線維形成抑制剤が提案されている(特許文献2)。
さらに、本発明者らにより、ポリアミドアミンデンドリマー(G2)と6-O-α-(4-O-α-D-グルクロニル)-D-グリコシル-β-シクロデキストリンとの結合体(GUG-β-CDE)と、TTRに対するsiRNA(siTTR)との複合体による、TTRの発現抑制が報告されており、そこでは、GUG-β-CDEのsiRNA用キャリアとしての利用が提案されている(非特許文献3)。
【0008】
しかしながら、難治性アミロイドーシスに対する治療薬で単独で臨床的に十分有効な治療効果を示す治療薬の開発は未だに成功していない。そのため、併用による効果を期待した薬剤の併用療法が考えられるが、その場合は薬物相互作用により副作用が発生するなどの様々な問題点が発生する可能性がある。そこで、より有効な治療効果を示す薬剤が求められていた。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2010-90054号公報
【特許文献2】国際公開WO2011/002026号公報
【0010】

【非特許文献1】Yukio Ando, (2005), Med Mol Morphol, 38: pp. 142-154
【非特許文献2】Sekijima Y. "Recent progress in the understanding and treatment of transthyretin amyloidosis." (2014) J Clin. Pharm. Ther., 39: p225-33
【非特許文献3】「家族性アミロイドポリニューロパチーの治療を企画したsiRNA用キャリアとしてのデンドリマー/グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン結合体の有効利用」、第28回日本DDS学会学術集会講演要旨、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、難治性アミロイドーシスに対するより有効な治療薬を提供することを目的とする。
より具体的には、安全性が高く、TTRタンパク質のアミロイド線維形成の抑制効果が従来の治療薬に比べてより優れたアミロイド線維の形成を抑制できる新規な物質を提供することである。さらには、そのような新規な物質を含む、アミロイドーシスの予防及び/又は治療のための医薬、特に家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)の予防及び/又は治療のための医薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明者らが創製した高機能分子デンドリマー結合体(GUG-β-CDE)と、RNA干渉による原因タンパク質産生の抑制を企図した核酸医薬(shRNAなど)との複合体を形成させることで、GUG-β-CDEの治療効果(線維形成抑制及び線維溶解)が著しく増強されることを見出し、本発明を完成した。
難治性アミロイドーシスは、様々な要因による原因タンパク質の立体構造変化が原因となり進行・発症することが知られているが、その発症過程は、アミロイド原因タンパク質の、(1)産生上昇あるいは変異タンパク質の産生、(2)立体構造変化によるアミロイド線維化、(3)アミロイド線維の組織沈着、の3つの重要なステップを経て進行する。本発明により提供されるGUG-β-CDE/核酸医薬複合体は、これらの3つのステップを同時に抑制することにより、従来よりも高い治療効果を発揮しうる、新規マルチターゲット型アミロイドーシス治療薬でもある。
【0013】
本発明は以下のものを含む。
(1)シクロデキストリンとポリアミドアミンデンドリマーとの結合体と、トランスサイレチンのmRNAに対してRNA干渉を起こすRNAとからなる複合体を有効成分として含むアミロイド線維生成抑制剤。
(2)前記シクロデキストリンが、グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン(GUG-β-CyD)である上記(1)に記載のアミロイド線維生成抑制剤。
(3)前記RNAが、shRNA又はsiRNAである、上記(1)又は(2)に記載のアミロイド線維生成抑制剤。
(4)前記RNAが、shRNAである上記(3)に記載のアミロイド線維生成抑制剤。
(5)前記結合体が、グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリンとポリアミドアミンデンドリマーとの結合体(GUG-β-CDE)である、GUG-β-CDE(G2, DS 1.2)、GUG-β-CDE(G2, DS 1.8)、GUG-β-CDE(G2, DS 2.5)、又はGUG-β-CDE(G2, DS 4.5)である上記(2)~(4)のいずれか一つに記載のアミロイド線維生成抑制剤。
(6)前記複合体における、GUG-β-CDE/RNAのチャージ比が、20~100である上記(2)~(5)のいずれか一つに記載のアミロイド線維生成抑制剤。
(7)前記(1)~(6)のいずれか一つに記載のアミロイド線維生成抑制剤を含むアミロイドーシスの予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、優れたアミロイド線維形成抑制活性に加えて優れたアミロイド線維溶解活性を持つので、アミロイドの線維化ならびにアミロイド線維の組織沈着の両者を有意に抑制することができる。また、本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、これらの作用に加えてアミロイド原因タンパク質の産生も抑制することができる。従って、本発明のアミロイド線維生成抑制剤を含む本発明の医薬組成物は、アミロイドーシスの予防及び/又は治療のための医薬として有用であり、特に、難治性のアミロイドーシス、例えば、家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】GUG-β-CDE/shRNA複合体(100μM)によるアミロイド線維形成抑制の効果を示す図である。図中、*はcontrolと比較してp<0.05を、+はGUG-β-CDEと比較してp<0.05を示す。
【図2】GUG-β-CDE/shRNA複合体の各種濃度(30μM、60μM、100μM)でのアミロイド線維形成抑制の効果を示す図である。図中*はcontrolと比較してp<0.05を示す。
【図3】GUG-β-CDE/shRNA複合体(100μM)によるアミロイド線維溶解作用の効果を示す図である。
【図4】GUG-β-CDE/shRNA複合体によるアルツハイマー病の原因タンパク質であるAβアミロイドの線維形成抑制の効果を示す図である。図中、*はcontrolと比較してp<0.05を、+はGUG-β-CDEと比較してp<0.05を示す。
【図5】GUG-β-CDE/shRNA複合体による、アミロイドーシスマウスモデルを用いたアミロイド線維形成抑制の効果を示す図である。上段がCongo red染色の結果、下段が、アミロイド線維の検出の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として、本発明の実施において使用することができる好ましい方法及び材料とともに説明する。なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等又は同様の任意の材料及び方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。
なお、本明細書においては、アミロイド線維の形成を抑制する作用と、形成されたアミロイド線維を溶解する作用とを合わせ持ったものをアミロイド線維生成抑制剤という。

【0017】
本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、シクロデキストリン(CyD)とポリアミドアミンデンドリマーとの結合体(CDE)と、トランスサイレチン(TTR)のmRNAに対してRNA干渉を起こすRNAとからなる複合体(以下、単に「本発明の複合体」という場合がある)を有効成分として含む。
本発明のシクロデキストリン・ポリアミドアミンデンドリマー結合体を構成するシクロデキストリンは、α、β、又はγ-シクロデキストリンのいずれでもよく、またこれらのα、β、又はγシクロデキストリンは、化学修飾型又は非修飾型のシクロデキストリンであることもできる。シクロデキストリンを修飾する一般的な方法としては、例えば、メチル化、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルなどのヒドロキシアルキル化、グルコシル化、マルトシル化、アルキル化、アシル化、アセチル化、硫酸化、スルホブチル化、カルボキシメチル化、カルボキシエチル化、アミノ化、カルボキシル化、トシル化、又はジメチルアセチル化などをあげることができる。シクロデキストリンは、好ましくはβ-シクロデキストリンであり、さらに好ましくはグルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン(GUG-β-CyD)である。よって、好ましい本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン(GUG-β-CyD)とポリアミドアミンデンドリマーとの結合体(GUG-β-CDE)と、トランスサイレチン(TTR)のmRNAに対してRNA干渉を起こすRNAとからなる複合体を有効成分として含む。

【0018】
本発明のシクロデキストリン・ポリアミドアミンデンドリマー結合体を構成するポリアミドアミンデンドリマーは、アルキレンジアミンをコアとするデンドリマーであり、コアとなるアルキレンジアミンは特に制限されず、一般に用いられる種類のものを用いたデンドリマーをあげることができる。

【0019】
以下、本発明の複合体を、グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン(以下、GUG-β-CyDと略す場合がある。)とアルキレンジアミンをコアとするポリアミドアミンデンドリマー(以下、単に「デンドリマー」という場合がある。)との結合体(GUG-β-CDE)を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の複合体を構成するグルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン(GUG-β-CyD)とアルキレンジアミンをコアとするポリアミドアミンデンドリマーとの結合体(GUG-β-CDE)は、任意のGUG-β-CyDと任意のデンドリマーを常法に従い結合させて得ることができる。GUG-β-CyDは、これに限定されないが、6-O-α-(4-O-α-D-グルクロニル)-D-グリコシル-β-シクロデキストリンを例示することができる。また、デンドリマーとしては、これに限定されないが、例えば、第2~第10世代の、好ましくは第2~第6世代の、より好ましくは第2世代のデンドリマーをあげることができる。
本発明の複合体で用いるGUG-β-CDEにおける、シクロデキストリンの置換度(DS)は、例えば、約1.2~約4.5のもの、好ましくは、約1.8のものを用いることができる。

【0020】
本発明の複合体において好ましく用いられるGUG-β-CyDとデンドリマーの結合体は、6-O-α-(4-O-α-D-グルクロニル)-D-グリコシル-β-シクロデキストリンと第2世代のデンドリマーの結合体であり、下記構造で表される。

【0021】
【化1】
JP2016199892A1_000003t.gif
また、これに限定されないが、具体的には、GUG-β-CDE(G2, DS 1.2)、GUG-β-CDE(G2, DS 1.8)、GUG-β-CDE(G2, DS 2.5)、又はGUG-β-CDE(G2, DS 4.5)をあげることができる。

【0022】
本発明の複合体は、上記の結合体(GUG-β-CDE)とトランスサイレチン(TTR)のmRNAに対してRNA干渉を起こすRNAとからなる。
RNAとしては、トランスサイレチン(TTR)のmRNAに対してRNA干渉を起こすものであればいずれでもよいが、例えば、shRNA又はsiRNAをあげることができ、好ましくはshRNAである。用いるRNAの種類や長さは、RNAとの複合体形成によりGUG-β-CDEのアミロイド線維生成抑制効果(アミロイド線維形成抑制効果又はアミロイド線維溶解効果の少なくとも一方)が増強できる限り特に限定されない。

【0023】
本発明においては、トランスサイレチン(TTR)のmRNA配列から本発明に使用可能なsiRNA配列を決定することができる。ヒトTTRのmRNA転写物の配列は、NM_00371で見いだすことができる。本発明に使用するsiRNAのための該mRNA上のターゲットサイトの選択は、公知の知識を用いて行うことができる。例えば、これに限定されないが、Ui-Tei K., et al. Nucleic Acids Research (2004) 32 (3): 936-948などの文献の記載を参考にすることができる。また、これに限定されないが、例えば、(i)GC含量が約30~約70%、好ましくは約50%である、(ii)すべての塩基が均等であり、また、Gが連続していない、(iii)アンチセンス鎖の5'末端の塩基がA又はUである、などの基準を参考にできる。

【0024】
本発明に使用するsiRNAが具備すべき特徴としては、該siRNAを動物細胞(例えば、ヒト細胞)に導入した場合に、RNA干渉を生じ、トランスサイレチン産生を減少させることができる。また、標的であるトランスサイレチンの産生を効率よく抑制すると同時に、無関係の遺伝子の発現に影響(off-target効果)を及ぼすことのない高い選択性を有すること、及び、オリゴ核酸(siRNA)自体が望ましくない毒性、副作用を発現しないことが望ましい。このようなsiRNA配列は、公知知識に基づき、当業者が決定することができ、siRNA自体は、常法に従って作製して検討を行う(例えば、実際のsiRNAを作製し、細胞に導入し、トランスサイレチン産生の抑制活性や細胞に対する毒性を確認することを含む)ことにより、当業者が取得することができる。off-target効果がないことの確認は、これに限定されないが、例えば、候補siRNAについて、予めジーンチップなどを利用して交差反応がないことにより確認できる。

【0025】
さらに、本発明において用いることができるsiRNA配列のセンス鎖配列は、トランスサイレチンのmRNA又はその選択的スプライス型RNAからの連続する18~29ヌクレオチド、好ましくは19~27、さらに好ましくは19~25ヌクレオチド、より好ましくは19~23ヌクレオチドの配列を含む。そのようにして決定した配列を用いて、それらの配列から作製したsiRNAが本発明の目的の効果を生じるか否かを確認することができる。従って、作製したsiRNAが本発明の効果を生じる限り本発明に含まれ、それらを含む医薬組成物及びそれを利用する方法も本発明に含まれる。

【0026】
本発明で用いるsiRNAは末端にオーバーハンギングをもつことが好ましい。siRNAのオーバーハングは、5’又は3’末端、好ましくはRNAの3’末端にある。オーバーハングを構成するヌクレオチド数は、約1~5ヌクレオチドであり、好ましくは約1~4ヌクレオチド、さらに好ましくは約2~3ヌクレオチド、より好ましくは2ヌクレオチドである。オーバーハングは、T又はUもしくはGであるのが好ましい。これに限定されないが、オーバーハンギングとして、TT、UU、UGをもつsiRNAが好ましい。

【0027】
本発明で用いられるsiRNAの例として、現在、治療薬として開発中のもの(例えば、Revusiran)、又は市販されているものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用するsiRNAは、単一のsiRNAであってもよく、また、複数のsiRNAの混合物(いわゆる、カクテル)であってもよい。

【0028】
本発明においては、siRNA前駆体としてのshort hairpin RNA(shRNA)を用いることもできる。siRNA前駆体としてのshort hairpin RNA(shRNA)は、そのアンチセンス鎖の3’末端に2~4個のUからなるオーバーハングを有することが望ましく、オーバーハングの存在によって、センスRNA及びアンチセンスRNAはヌクレアーゼによる分解に対して安定性を増すことができる。
本発明で使用するshRNAは、単一のshRNAであってもよく、また、複数のshRNAの混合物(いわゆる、カクテル)であってもよい。

【0029】
本発明に用いるRNAは、化学的に又は遺伝子組換え的に周知の方法で合成することができるが、ヌクレオチド数を考慮すると、慣用のRNA自動合成装置を使用して化学的に合成するのが容易である。また、siRNA関連の受託合成会社に合成を依頼して作製することも可能である。

【0030】
GUG-β-CDEとRNAのチャージ比は、下記に示すように、RNAとの複合体形成によりGUG-β-CDEのアミロイド線維生成抑制効果(アミロイド線維形成抑制効果又はアミロイド線維溶解効果の少なくとも一方)が増強できる限り特に限定されないが、例えば、チャージ比20~200、好ましくはチャージ比50~150、特に好ましくはチャージ比100をあげることができる。
複合体の形成は、上記のチャージ比の範囲で両者を混合することにより作成できる。

【0031】
本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、アミロイドーシスの発症過程である、アミロイド原因タンパク質の、(1)産生上昇あるいは変異タンパク質の産生、(2)立体構造変化によるアミロイド線維化、(3)アミロイド線維の組織沈着、の3つの重要なステップを同時に抑制することができる、新規マルチターゲット型アミロイドーシス治療薬である。
本発明者らにより、上記の(1)~(3)の3つのステップを同時に抑制しうる目的で創製された、GUG-β-CDEとRNA干渉効果を期待した核酸医薬(shRNAなど)とを複合体形成させた本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、原因タンパク質産生(過程(1))の抑制効果が付加されるのみならず、GUG-β-CDE自身が有している治療効果(線維形成抑制・線維溶解)が著しく増強されるという特徴を有する。
例えば下記の実施例で示されるように、GUG-β-CDEによって得られる線維形成抑制効果は、shRNAと複合体を形成させることで約2倍以上に増強される。また、アミロイド線維形成抑制作用を示すGUG-β-CDEの濃度は、shRNAと複合体を形成させることで約半減させることが可能である。さらに、GUG-β-CDEの線維溶解作用に関しても、shRNAとの複合体形成により有意に増強される。
このように、本発明における、GUG-β-CDEと核酸医薬(shRNAなど)との複合体形成による線維形成抑制・線維溶解の増強効果は、上記の3つのステップを同時に抑制しうる効果に加え、低濃度でも高い治療効果を発揮するマルチターゲット型アミロイドーシス治療薬という特徴を有する。また、より低い濃度で有効な効果を示すことができるので、安全性の向上も図れる。

【0032】
本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、GUG-β-CDEとTRRのmRNAに対してRNA干渉効果を示す核酸(siRNA,shRNAなど)との複合体(GUG-β-CDE/核酸)を有効成分として含むことにより、上記(1)~(3)の全てのステップを抑制することに加えて、核酸との複合体形成によるアミロイド線維形成抑制・線維溶解活性の増強効果により、アミロイド線維の生成を効果的に抑制できる。

【0033】
本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、本発明の複合体(GUG-β-CDE/核酸)を含む限り、それをどのような形態で含んでもよい。本発明のアミロイド線維生成抑制剤に含まれる有効成分の割合(有効成分の質量/アミロイド線維生成抑制剤の質量)は、変異TTRのアミロイド線維生成を抑制できる量であれば特に制限されないが、例えば、80%~100%が好ましい。

【0034】
本発明のアミロイド線維生成抑制剤は、本発明の複合体(GUG-β-CDE/核酸)を含めば、固体又は液体のいずれの形態でも利用することができるが、これに薬学上許容される担体又は添加剤を配合して、固体又は液体状の医薬組成物として調製することもできる。

【0035】
本発明はまた、本発明のアミロイド線維生成抑制剤を有効成分として含む、アミロイドーシスの予防及び/又は治療のための医薬組成物である。

【0036】
本発明の医薬組成物は、家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)や老人性アミロイドーシスなどをはじめとするアミロイドーシスやアミロイドーシスに関連する疾患に対して、広い範囲で適用可能である。また、すでにアミロイドーシスに罹患した患者であっても、本発明の医薬組成物を適用すれば、障害が見られる組織を改善することが期待できる。したがって、本発明の医薬組成物によれば、アミロイドーシスやアミロイドーシスに関連する疾患の予防及びこれらの疾患による病状の進行や悪化の抑制だけでなく、病状の改善、すなわちこれらの疾患に対する治療効果が期待できる。

【0037】
本発明の医薬組成物が対象とする疾患は、全身性アミロイドーシス及び限局性アミロイドーシスの何れも含む。これに限定されないが、具体的な疾患としては、全身性アミロイドーシスとして、免疫グロブリン性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)、AAアミロイドーシス、透析アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)などをあげることができ、限局性アミロイドーシスとして、アルツハイマー病、脳アミロイドアンギオパチー、プリオン病などをあげることができる。本発明が対象として特に好ましくは、家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)、アルツハイマー病、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、AAアミロイドーシスをあげあることができる。

【0038】
例えば、FAPを発病した患者のうち症状が軽度な患者は本発明の医薬組成物を投与することにより症状の進行や悪化を防ぐことが可能であり、症状が重篤な患者に対しても治療効果を期待できる場合がある。また、変異トランスサイレチンを有する個体は加齢とともにFAPを発症する可能性の高い潜在患者であるが、本発明の医薬組成物を投与することによりFAPの発症を予防することができる。

【0039】
本発明の医薬組成物としては、本発明のアミロイド線維生成抑制剤をそのまま用いてもよいが、通常は有効成分である本発明のアミロイド線維生成抑制剤と1又は2種以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態を調製して用いることが望ましい。

【0040】
FAPの予防及び治療の際には、本発明の医薬だけでなく、トランスサイレチン四量体を安定化する非ステロイド性抗炎症薬、例えば、ジフルニサルなどと併用することも望ましい。

【0041】
本発明の医薬組成物は、非経口剤であることが好ましく、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、吸入剤等を挙げることができる。上記の医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物としては、例えば、乳糖やオリゴ糖などの賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、抗酸化剤、矯味剤、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、保存剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、キャリア、薬学的アジュバント及び粘着剤等を挙げることができるが、これらは医薬組成物の形態に応じて当業者が適宜選択することができ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0042】
本発明の医薬組成物のより好ましい形態として、注射剤を挙げることができる。注射剤は、通常、非水溶媒(又は水溶性有機溶媒)を実質的に含まず、媒体が実質的に水である溶媒で溶解又は希釈可能である。注射剤は当該分野において周知の方法により調製することができる。例えば、注射剤は、生理食塩水、PBSなどの緩衝液、滅菌水等の溶剤に溶解した後、フィルター等で濾過滅菌し、次いで無菌容器(例えば、アンプル等)に充填することにより調製することができる。この注射剤には、必要に応じて、慣用の薬学的キャリアを含めてもよい。また、非侵襲的なカテーテルを用いる投与方法を用いてもよい。本発明で用いることができるキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、又は血清アルブミンを含む生理食塩水等が挙げられる。

【0043】
さらに、本発明の医薬組成物の好ましい形態として、凍結乾燥製剤(凍結乾燥した注射剤)もまた挙げることができる。このような凍結乾燥製剤であっても、注射用水(注射用蒸留水)、電解質液(生理食塩水など)などを含む輸液、栄養輸液などから選択された少なくとも1つの液体又は溶媒により溶解可能であり容易に注射液を調製でき、その容器もガラス容器及びプラスチック容器が使用できる。注射剤内容物の100重量部に対して本発明の医薬を0.01重量部以上、好ましくは0.1~10重量部含有することができる。

【0044】
本発明の医薬組成物の投与量及び投与回数などは特に限定されず、患者の年齢、体重、及び性別などの条件、並びに疾患の種類や重篤度、予防又は治療の目的などに応じて適宜選択可能である。通常は、非経口投与による場合には有効成分量として成人一日あたり0.1μg~10gが好ましく、10μg~1000mgがより好ましく、100μg~500mgがより好ましいが、このような投与量を一日数回に分けて投与してもよい。本発明の医薬の投与頻度は、例えば、一日一回~数ヶ月に1回であればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を、以下に記載の実施例をもとに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
実施例1:アミロイド線維形成抑制(1)
(1)実験材料
本実施例で用いたトランスサイレチン(TTR)は、熊本大学大学院生命科学研究部等生命倫理に関する規則に定める倫理委員会のガイドラインに従い、Val30Met型の変異をもつ患者から得た血清より精製した。純度決定は非加熱(非還元)SDS-PAGEを用いて行った。
6-O-α-(4-O-α-D-グルクロニル)-D-グリコシル-β-シクロデキストリン(GUG-β-CyD)は塩水港精糖より入手し、ポリアミドアミンデンドリマー(G2)はSigmaより入手した。GUG-β-CDEは以下のようにして調製した。GUG-β-CyD 67.8mgをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、縮合剤4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチル-ホルモリニウムクロリド(DMT-MM)15.5mgを添加後、ポリアミドアミンデンドリマー(G2)0.5mLとともに室温で12時間反応させ、結合体(GUG-β-CDE)を得た。得られたGUG-β-CDEを48時間透析(透析膜:MWCO=3500)後、エタノールにより沈殿させ、凍結乾燥することで精製した。
【実施例】
【0047】
GUG-β-CDEとTTRのmRNAに対してRNA干渉を起こすRNAとの複合体(GUG-β-CDE/shRNA)は、合成したGUG-β-CDEとshRNA(TG308574、Origeneより入手)を用いて、以下のようにして調製した。1.5mLエッペンドルフチューブにトリス-エチレンジアミン四酢酸(TE)に溶解したshRNA5μgを添加した。さらに、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に溶解したGUG-β-CDEを添加し、10秒間ボルテックスした後、15分間室温でインキュベートすることで複合体(GUG-β-CDE/shRNA)を調製した。
【実施例】
【0048】
(2)アミロイド線維の形成方法
Val30MetTTRを、リン酸緩衝液(PBS)を含む1mMグリシン-塩酸バッファー(pH3.0)で20μMの濃度になるように調製し、37℃でインキュベーションしアミロイド線維を形成させた。
【実施例】
【0049】
(3)アミロイド線維の測定方法
作成したアミロイド線維は、重合したβ-シートに選択的に結合する蛍光プローブであるチオフラビンTを用いて検出した。50mM グリシン溶液に溶解した500μM チオフラビンT溶液600μLに、インキュベーションしたサンプル3μLを添加後混合し、測定用試料とした。日立蛍光分光光度計F-4500を用い、25℃で442nmの励起光で励起される489nmの蛍光強度を測定した。なお、スリット幅は励起側10nm、蛍光側20nmで測定した。
【実施例】
【0050】
(4)GUG-β-CDEによるアミロイド線維形成の抑制結果
上記の方法を用いて、ヒト血清由来のVal30MetTTRを、100μMのGUG-β-CDE/shRNAの共存又は非共存下でアミロイド化させ、TTRのアミロイド線維形成の定量解析を行った。対照として、GUG-β-CDE(100μM)を用いた。結果を図1に示す。GUG-β-CDEによって得られる線維形成抑制効果(約30%)は、shRNAと複合体を形成させることで約2倍以上(約70%)に増強された。
【実施例】
【0051】
実施例2:アミロイド線維形成抑制(2)
実施例1と同様にして、各種濃度(30μM、60μM、90μM)のGUG-β-CDE/shRNAの共存又は非共存下でアミロイド化させ、TTRのアミロイド線維形成の定量解析を行った。対照として、GUG-β-CDE(100μM)を用いた。結果を図2に示す。100μMのGUG-β-CDEによって得られる線維形成抑制効果は、shRNAと複合体を形成させることで、約半分(60 μM)の濃度で確認された。つまり、アミロイド線維形成抑制作用を示すGUG-β-CDEの濃度は、shRNAと複合体を形成させることで約半減させることが可能であった。
【実施例】
【0052】
実施例3:アミロイド線維溶解
GUG-β-CDE/shRNA複合体のアミロイド線維溶解作用を確認した。具体的には以下のようにして行った。
ヒト血清由来のVal30MetTTRのアミロイド線維を形成させた後に、アミロイド線維を100μMのGUG-β-CDE/shRNAの共存又は非共存下で6時間インキュベーションした。その後、アミロイド線維の定量解析を行った。対照として、GUG-β-CDE(100μM)を用いた。結果を図3に示す。GUG-β-CDE(100 μM)は、一度形成したTTRアミロイド線維に対してアミロイド線維溶解効果を示すが、本効果は、shRNAと複合体を形成させることで有意に増強された。
【実施例】
【0053】
なお、shRNAとの複合体の形成により、アミロイド線維形成抑制についてGUG-β-CyDが効果を発揮する濃度(50 mM)の500分の1の低濃度(100 μM)でも著明なアミロイド線維形成抑制効果を得ることができ、また、デンドリマー自身が線維溶解作用を発揮する濃度(500 μM)の5分の1の低濃度(100 μM)で溶解作用について効果を発揮した(データ示さず)。
【実施例】
【0054】
実施例4:Aβ 40アミロイド線維形成抑制
アルツハイマー病の原因タンパク質であるAmyloid β(Aβ 40)を、実施例1に記載の方法により調製したGUG-β-CDE(100μM)又はGUG-β-CDE/shRNA(100μM/0.1μg)複合体の共存下でアミロイド線維化させ、アミロイド線維化により生じたβシートと選択的に結合するチオフラビンTを用いて、Aβ 40のアミロイド線維形成の定量解析を行った。
【実施例】
【0055】
(Aβアミロイド線維の形成方法)
Amyloid β-Protein(Human,1-40、PEPTIDE INSTITUTE, INC.)を、リン酸緩衝液(PBS)に50μMになるように調整し、37℃で72時間インキュベーションしアミロイド線維を形成させた。
(Aβアミロイド線維の測定方法)
Aβアミロイド線維は、チオフラビンTを用いて検出した。50mM グリシン溶液に溶解した500μMのチオフラビン-T溶液 600 μLにサンプル6 μLを添加後、混合し、測定用試料とし、蛍光強度測定(励起445 nm,測定490 nm)を行った。
結果を図4に示す。GUG-β-CDEは、Aβ40のアミロイド線維形成に対して著明な抑制効果を示し、その効果は、shRNA(shRNA-control)と複合体を形成させることで有意に増強された。
【実施例】
【0056】
実施例5:アミロイドーシスマウスモデルを用いたアミロイド線維形成抑制
血清アミロイドA(SAA)の代謝産物アミロイドA(AA)が組織に沈着する「AAアミロイドーシス(二次性又は反応性アミロイドーシスとも呼ばれる)」のマウスモデルを用い、実施例1に記載の方法により調製したGUG-β-CDE又はGUG-β-CDE/shRNA複合体を投与することによる組織沈着アミロイド(脾臓組織)の変化をCongo red染色、及び偏光顕微鏡により解析した。
【実施例】
【0057】
(AAアミロイドーシスモデルの作成方法)
C3H/HeNマウス(6週齢、雄)を用い、2%硝酸銀0.4mlをマウス背部皮下に、Amyloid-enhancing factor(AEF)(J Rheumatol. 33, 2260-70, 2006)3mlを腹腔内にそれぞれ投与し、AAアミロイドーシスモデルを作成した。マウスに、GUG-β-CDE(10 mg/kg)又はGUG-β-CDE/shRNA(10 mg/kg)を尾静注により投与した。
(アミロイド線維組織沈着の測定方法)
投与5日後に、AAアミロイドーシスモデルにおいてアミロイド沈着が認められる脾臓組織を回収し、Congo red染色を用いてアミロイド線維沈着を評価した。
Congo red原末1 gを蒸留水100 mlに溶解し、撹伴しながら45 gのNaClを加えて、さらに十分撹拌し、100 mlのエタノールを加えて10°Cで冷却後、ろ過した。このCongo red原液100 mlに対して、5gのフェノールと1 mlの酢酸を加えたCongo red染色液で、回収した脾臓組織を1時間染色し、水洗後にヘマトキシリン液で核染色した。アミロイドの検出は本法を用い、偏光顕微鏡でアップルグリーンを呈することにより同定した。
結果を図5に示す。脾臓組織においてCongo red染色及び偏光顕微鏡によるアミロイド線維沈着を解析した結果、GUG-β-CDE/shRNA投与群においてアミロイド線維の減少が確認された。
【実施例】
【0058】
上記の詳細な記載は、本発明の目的及び対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更及び置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
アミロイド線維の沈着によって臓器障害が引き起こされる疾患には、FAPをはじめ、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)、ハンチントン病、及びその他の遺伝性の疾患が含まれる。例えば、アルツハイマー病は、65歳以上の高齢者の約10%を占め、今後高齢化がさらに進む日本において社会的な問題となっている。アミロイド線維の沈着はタンパク質の不溶性の線維状凝集体の形成に起因することから、本発明の複合体はこれらの多様なアミロイドーシス疾患への治療にも応用が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
4