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明細書 :蛍光色素を用いた歯周病の簡易検査

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年4月12日(2018.4.12)
発明の名称または考案の名称 蛍光色素を用いた歯周病の簡易検査
国際特許分類 G01N  33/52        (2006.01)
C07D 487/04        (2006.01)
FI G01N 33/52 C
C07D 487/04 139
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2017-526338 (P2017-526338)
国際出願番号 PCT/JP2016/068991
国際公開番号 WO2017/002754
国際出願日 平成28年6月27日(2016.6.27)
国際公開日 平成29年1月5日(2017.1.5)
優先権出願番号 2015129848
優先日 平成27年6月29日(2015.6.29)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】難波 康祐
【氏名】中山 淳
【氏名】大谷 彬
出願人 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100158、【弁理士】、【氏名又は名称】鮫島 睦
【識別番号】100150500、【弁理士】、【氏名又は名称】森本 靖
【識別番号】100176474、【弁理士】、【氏名又は名称】秋山 信彦
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4C050
Fターム 2G045AA25
2G045CB22
2G045CB30
2G045DA80
2G045FB12
4C050AA01
4C050BB06
4C050CC05
4C050EE03
4C050FF02
4C050GG01
4C050HH01
要約 本発明は、口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患、例えば歯周病を簡易かつ高感度に検出することができる診断薬、該診断薬を含むキット、および該診断薬を用いた診断方法を提供する。具体的には、本発明は、式I:
JP2017002754A1_000024t.gif

[式中、R、R、R、およびRは水素等の置換基であり;Rは置換されていてもよいアルケニルであり;XはOまたはSである]
で示される化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を含む、被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の検査のための診断薬、該診断薬を含むキット、および該診断薬を用いた診断方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
式I:
【化1】
JP2017002754A1_000020t.gif

[式中、
、R、R、およびRは水素、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立して選択され;
は置換されていてもよいアルケニルであり;
XはOまたはSである]
で示される化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を含む、被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の検査のための診断薬。
【請求項2】
XがOである、請求項1に記載の診断薬。
【請求項3】
、R、R、およびRが水素、シアノ、置換されていてもよいC-Cアルキル、置換されていてもよいC-Cアルコキシ、および置換されていてもよい6~10員の単環式または二環式アリールからなる群からそれぞれ独立して選択される、請求項1または2に記載の診断薬。
【請求項4】
、R、R、およびRが水素である、請求項1~3のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項5】
が置換されていてもよいC-C12アルケニルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項6】
が下記式:
【化2】
JP2017002754A1_000021t.gif
[式中、波線は分子の残部との結合点を示す]
の構造によって示される、請求項1~5のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項7】
化合物が下記式:
【化3】
JP2017002754A1_000022t.gif
の構造によって示される、請求項1に記載の診断薬。
【請求項8】
疾患が歯周病、う蝕、口臭、口内炎、口腔癌、血液疾患、心血管疾患、代謝障害、呼吸器疾患、骨粗しょう症、および壊死性軟組織疾患からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項9】
疾患が歯周病および口臭からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項10】
メチルメルカプタンの濃度が20ppb以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の診断薬;
被験試料を吸収するかまたは被験試料と接触することができる媒質;
使用説明書;
適宜塩基;および
適宜医薬的に許容される添加剤
を含むキット。
【請求項12】
被験試料が息または口腔液である、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
媒質が緩衝溶液、大気、活性炭、または固体フィルムである、請求項11または12に記載のキット。
【請求項14】
式:
【化4】
JP2017002754A1_000023t.gif
によって示される化合物を含む診断薬;
水酸化カリウムで処理した活性炭;
使用説明書;
適宜、テトラメチルグアニジン;および
適宜医薬的に許容される添加剤
を含むキット。
【請求項15】
(i) 請求項1~10のいずれか1項に記載の診断薬と被験試料を適宜塩基の存在下で接触させる工程;および
(ii)UV機器を用いて紫外線を照射し、蛍光色の変化の度合いを調べることによって、被験試料中のメチルメルカプタンを検査する工程
を含む、被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の診断方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光色素を用いた歯周病の簡易検査に関する。具体的には、蛍光色素化合物としてトリアザペンタレン誘導体を用いた歯周病等の疾患の検査のための診断薬、該診断薬を含むキット、および該診断薬を用いた歯周病等の疾患の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は口腔内の細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患であり、日本において15歳以上で30%以上、40歳以上になると80%以上が罹患していることが報告されている。歯周病は、初期の歯肉炎、歯根膜炎、または歯槽骨炎の段階であれば、適切なケアをすることで治癒が可能であるが、症状が進行して歯周炎の状態になると、歯を支えている骨が溶け、結果的に歯を失うことになる。従って、歯周病の早期発見のための検査が重要となっている。しかしながら、歯周病は感染していても自覚症状がなく、しばしば患者が気づかないうちに重症化することから、早期発見が困難であることも知られている。このため、歯周病の早期発見のための診断薬および診断方法の開発がなされてきた。
【0003】
歯周病患者の口腔内では歯周病菌の代謝によってメチルメルカプタンが発生することが知られている。このため、歯周病の診断方法として、唾液や呼気等のサンプル内のメチルメルカプタンの存在を呈色反応によって検出する方法が知られている(特許文献1および2)。しかしながら、唾液や呼気内のメチルメルカプタン量は微量であることから、これら従来の呈色反応による検出方法では、その検出感度に問題があった。よって、歯周病等の疾患のより簡易な検査、および検査のための診断薬が求められていた。
【0004】
また、トリアザペンタレン骨格は、従来の蛍光発色団として知られる基、例えばフルオロセインと比較してコンパクトな構造でありながら、強い蛍光を発する優れた蛍光発色団であることが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-309283
【特許文献2】特表2011-524526
【特許文献3】WO2012/121356A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術における課題を解決すべくなされたものであり、歯周病等の口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患を簡易かつ高感度に検出することができる新規診断薬、該診断薬を含むキット、および該診断薬を用いた診断方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記式Iで示されるトリアザペンタレン誘導体がメチルメルカプタン等のチオールのみと選択的に反応し、その蛍光色がオレンジ色から緑色に変化し、また蛍光強度が大幅に増強されることを見出した。また、本発明の式(I)で示される化合物は、極めてコンパクトな構造を有し、簡便かつ効率よく合成することができる。さらに、コンパクトな構造であるため水溶性が高く、また、トリアザペンタレン骨格上の官能基を容易に導入することができるため、様々な分野への応用が可能である。さらに、チオール検出感度も高いことから、該トリアザペンタレン誘導体はメチルメルカプタン等のチオールセンサーとして有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の[1]~[18]に関する。
[1]
式I:
【化1】
JP2017002754A1_000003t.gif

[式中、
、R、R、およびRは水素、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立して選択され;
は置換されていてもよいアルケニルであり;
XはOまたはSである]
で示される化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を含む、被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の検査のための診断薬;
[2]
XがOである、上記[1]に記載の診断薬;
[3]
、R、R、およびRが水素、シアノ、置換されていてもよいC-Cアルキル、置換されていてもよいC-Cアルコキシ、および置換されていてもよい6~10員の単環式または二環式アリールからなる群からそれぞれ独立して選択される、上記[1]または[2]に記載の診断薬;
[4]
、R、R、およびRが水素である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の診断薬;
[5]
が置換されていてもよいC-C12アルケニルである、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の診断薬;
[6]
が下記式:
【化2】
JP2017002754A1_000004t.gif
[式中、波線は分子の残部との結合点を示す]
の構造によって示される、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の診断薬;
[7]
化合物が下記式:
【化3】
JP2017002754A1_000005t.gif
の構造によって示される、上記[1]に記載の診断薬;
[8]
疾患が歯周病、う蝕、口臭、口内炎、口腔癌、血液疾患、心血管疾患、代謝障害、呼吸器疾患、骨粗しょう症、および壊死性軟組織疾患からなる群から選択される、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の診断薬;
[9]
疾患が歯周病および口臭からなる群から選択される、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の診断薬;
[10]
メチルメルカプタンの濃度が20ppb以下である、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の診断薬;
[11]
上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の診断薬;
被験試料を吸収するかまたは被験試料と接触することができる媒質;
使用説明書;
適宜塩基;および
適宜医薬的に許容される添加剤
を含むキット;
[12]
被験試料が息または口腔液である、上記[11]に記載のキット;
[13]
媒質が緩衝溶液、大気、活性炭、または固体フィルムである、上記[11]または[12]に記載のキット;ならびに
[14]
(i) 上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の診断薬と被験試料を適宜塩基の存在下で接触させる工程;および
(ii)UV機器を用いて紫外線を照射し、蛍光色の変化の度合いを調べることによって、被験試料中のメチルメルカプタンを検査する工程
を含む、被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の診断方法。
【0009】
本発明の別の態様は、
[15]
さらに塩基を含む、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の診断薬;
[16]
塩基がグアニジン型有機塩基である、上記[11]~[13]のいずれか1つに記載のキット、または上記[15]に記載の診断薬
に関する。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、
[17]
被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の検査に使用するための、上記式Iで示される化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物;ならびに
[18]
被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の検査のための診断薬の製造における、上記式Iで示される化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物の使用
に関する。
【0011】
好ましい態様では、上記[1]~[18]における被験者はヒトまたは非ヒト動物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の式(I)で示される化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物はメチルメルカプタン等のチオールのみと選択的に反応することで蛍光強度が大幅に増強され、極めてコンパクトな構造を有し、検出感度も高いことから、メチルメルカプタン等のチオールセンサーとして有用である。従って、該化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物は、被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の検査のための診断薬として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例8に記載の手順で調製した1.60×10-7Mの1,3a,6a-トリアザペンタレン-ビニルケトン体(R=2-メチル-1-プロペニル)(TAP-VK1)溶液にメチルメルカプタン付加体が0%、5%(8.00×10-9M)、10%(1.60×10-8M)、20%(3.20×10-8M)、および30%(4.80×10-8M)含まれる溶液にUVを当て、蛍光を観測したものである。これは、TAP-VK1とメチルメルカプタンとの反応が5%進行した段階で蛍光の変化が肉眼で観測可能であることを示している。なお、反応が5%進行した段階の付加体の濃度(8.00×10-9M)をppb単位に換算すると8.00ppbである。
【図2】図2は、実施例8に記載の手順で調製した1.60×10-7MのTAP-VK1溶液にメチルメルカプタン付加体が0%、5%(8.00×10-9M)、10%(1.60×10-8M)、20%(3.20×10-8M)、および30%(4.80×10-8M)含まれる溶液の蛍光スペクトルを示すものである。図中の各曲線は、それぞれ下から0%、5%、10%、20%、および30%溶液の蛍光スペクトルを示す。
【図3】図3は、実施例9の実験で得られたメチルメルカプタンガスを通気していない活性炭を通過させたDMF溶液(コントロール)と、メチルメルカプタンガスを通気させた活性炭を通過させたDMF溶液(反応後)の蛍光観察結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本明細書で用いられている、歯周病等の疾患の検査のための本発明の診断薬の有効性成分は、下記式I:
【化4】
JP2017002754A1_000006t.gif

[式中、
、R、R、およびRは水素、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立して選択され;
は置換されていてもよいアルケニルであり;
XはOまたはSである]
で示される化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物、である。

【0015】
上記式Iで示される本発明の化合物の構造は、1,3a,6a-トリアザペンタレン(TAP)骨格、該トリアザペンタレン骨格の2位で直結したC(=X)基(例えば、オキソ基もしくはチオキソ基、好ましくはオキソ基)、および該オキソ基もしくはチオキソ基と連結したRとしてのアルケニル基を含む。

【0016】
本発明において、メチルメルカプタン等のチオールは当該Rとしてのアルケニル基上で付加し、付加反応後の生成物に紫外線(UV)等を照射時に蛍光スペクトルが観察される。ここで、本発明の式Iで示される化合物は、アルコール、アミン、カルボン酸、およびスルフィド等の他の官能基を有する分子とは全く反応せず、チオールとのみ選択的に反応する。

【0017】
本発明の式Iで示される化合物のトリアザペンタレン骨格上の置換基R、R、R、およびRは、いずれも水素であってもよく、あるいはそれぞれ独立して水素以外の置換基を有していてもよい。該置換基は、電子供与性基または電子吸引性基のいずれであってもよい。該置換基の例としては、水素、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロアリールからなる群から選択される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。

【0018】
1つの実施態様において、式I中の置換基R、R、R、およびRは、水素、シアノ、置換されていてもよいC-Cアルキル、置換されていてもよいC-Cアルコキシ、および置換されていてもよい6~10員の単環式または二環式アリールからなる群からそれぞれ独立して選択される。

【0019】
また、用語「置換されていてもよいアミノ」、「置換されていてもよいアルキル」、「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいヘテロシクロアルキル」、「置換されていてもよいアルコキシ」、「置換されていてもよいアリール」、および「置換されていてもよいヘテロアリール」は非置換であるか、または1つ以上の置換基によって更に置換されている。そのような置換基としては、限定されるものではないが、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、およびハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素およびヨウ素)等を挙げることができる。

【0020】
本明細書で用いられている用語「シアノ」は、-CNで示される置換基を指す。

【0021】
本明細書で用いられている用語「ヒドロキシ」は、-OHで示される置換基を指す。

【0022】
本明細書で用いられている用語「ニトロ」は、-NOで示される置換基を指す。

【0023】
本明細書で用いられている用語「アミノ」は、-NHで示される置換基を指す。

【0024】
本明細書で用いられている用語「アルキル」は飽和直鎖状または分岐鎖状炭化水素を指し、好ましくは炭素数1~6個のアルキル(C1-アルキル)、さらに好ましくは炭素数1~3個のアルキル(C1-アルキル)を指す。本発明で用いられる「アルキル」としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチル等を挙げることができる。

【0025】
本明細書で用いられている用語「シクロアルキル」は脂環式飽和炭化水素を指し、好ましくは単環式の炭素数3~8個のシクロアルキル(C3-シクロアルキル)、さらに好ましくは単環式の炭素数3~6個のシクロアルキル(C3-シクロアルキル)を指す。本発明で用いられる「シクロアルキル」としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル等を挙げることができる。

【0026】
本明細書で用いられている用語「ヘテロシクロアルキル」は、環構成原子として窒素原子、炭素原子、および硫黄原子からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を有するシクロアルキルを指し、好ましくは単環式の3~8員ヘテロシクロアルキル、さらに好ましくは単環式の3~6員ヘテロシクロアルキルを指す。本発明で用いられる「ヘテロシクロアルキル」としては、限定されるものではないが、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、およびモルホリノ等を挙げることができる。

【0027】
本明細書で用いられている用語「アルコキシ」は、直鎖状または分枝鎖状のアルキルに酸素原子が結合した基を指し、好ましくは炭素数1~6個のアルコキシ(C1-アルコキシ)、さらに好ましくは炭素数1~3個のアルコキシ(C1-アルコキシ)を指す。本発明で用いられる「アルコキシ」としては、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t-ブトキシ、およびイソブトキシ等を挙げることができる。

【0028】
本明細書で用いられている用語「アリール」は芳香族炭化水素を指し、好ましくは6~10員の単環式または二環式アリールを指す。本発明で用いられる「アリール」としては、限定されるものではないが、フェニル、インデニル、ナフチル、およびアズレニル等を挙げることができる。

【0029】
本明細書で用いられている用語「ヘテロアリール」は、環構成原子として窒素原子、炭素原子、および硫黄原子からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を有するアリールを指し、好ましくは単環式または二環式の5~10員ヘテロアリールを指す。本発明で用いられる「ヘテロアリール」としては、限定されるものではないが、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チエニル、インドリル、およびキノリル等を挙げることができる。

【0030】
トリアザペンタレン骨格の具体例としては、例えば特許文献3(例えば、[表4]、[表5]、および[図12])に記載されている化合物を挙げられる。典型的な具体例を以下に挙げる。
【化5】
JP2017002754A1_000007t.gif

【0031】
本発明の式I中のR基は、置換されていてもよいアルケニルである。

【0032】
本明細書で用いられている用語「アルケニル」は、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、または3つ、好ましくは1つ)の炭素-炭素二重結合(該二重結合は、末端であっても、内部であってもよい)を有する直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素鎖を指し、好ましくは炭素数2~12個のアルケニル(C-C12アルケニル)、より好ましくは炭素数2~6個のアルケニルの(C-Cアルケニル)を指す。本発明で用いられる「アルケニル」としては、限定されるものではないが、ビニル、プロペニル、ブテニル(例えば、3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル)、ペンテニル(例えば、3-メチル-1-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル)、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル(例えば、2,2-ジメチル-4-メチル-3-ペンテニル)等を挙げることができる。

【0033】
における用語「置換されていてもよいアルケニル」は非置換であるか、または1つ以上の置換基によって更に置換されている。そのような置換基としては、限定されるものではないが、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、およびアルコキシカルボニル等を挙げることができる。

【0034】
例えば、Rは下記式:
【化6】
JP2017002754A1_000008t.gif
[式中、波線は分子の残部との結合点を示す]
の構造によって示される2-メチル-1-プロペニルの場合をとり得る。

【0035】
置換基Rの典型的な具体例を以下に挙げる。
【化7】
JP2017002754A1_000009t.gif
[式中、波線は分子の残部との結合点を示す]

【0036】
本発明の式Iで示される化合物は、その異性体の形態で存在していてもよい。そのような異性体としては、互変異性体、幾何異性体、光学異性体等の各種立体異性体、およびそれらの混合物が含まれる。また、本発明の式Iで示される化合物のトリアザペンタレン骨格における正電荷と負電荷は非局在化しているため、式Iの代わりに下記式I’のように記載することもできる。いずれの電子状態の化合物も式Iの化合物に包含される。
【化8】
JP2017002754A1_000010t.gif

【0037】
本発明の式Iで示される化合物の「医薬的に許容される塩」は、限定されるものではないが、無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、およびリン酸塩)、ならびに有機酸塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩)などの酸付加塩、金属塩(例えば、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、およびアルミニウム塩)、ならびに無機塩基(例えば、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、エチレンジアミン塩、トリエタノールアミン塩)、ならびに有機塩基(例えば、トリエチルアミン塩)などの塩基付加塩等を挙げることができる。

【0038】
本発明の式Iで示される化合物の「水和物」は、1つ以上の水分子が水和している物質を指す。本発明の式Iで示される化合物の「溶媒和物」は、1つ以上の溶媒分子が溶媒和している物質を指す。そのような溶媒としては、限定されるものではないが、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン)、炭化水素(例えば、シクロヘキサン、トルエン)、エーテル系(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、およびアルコール系(例えば、エタノール)等を挙げることができる。

【0039】
典型的な1つの実施態様において、本発明の式Iで示される化合物は、式:
【化9】
JP2017002754A1_000011t.gif
で示される化合物(1,3a,6a-トリアザペンタレン-ビニルケトン体(R=2-メチル-1-プロペニル))(以下、TAP-VK1と称す)である。

【0040】
本明細書で用いられている用語「被験者」は、本発明の診断薬、キット、または診断方法による診断の対象となる生物であり、限定されるものではないが、哺乳類、例えばヒトまたは非ヒト動物等を挙げることができる。非ヒト動物としては、限定されるものではないが、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、およびブタ等を挙げることができる。1つの実施態様では、本発明における「被験者」はヒトである。別の実施態様では、本発明における「被験者」は非ヒト動物である。

【0041】
本明細書で用いられている用語「口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患」は、限定されるものではないが、歯周病、う蝕、口臭、口内炎、口腔癌、白血病等の血液疾患、心臓病等の心血管疾患、糖尿病等の代謝障害、肺炎等の呼吸器疾患、骨粗しょう症、および壊死性軟組織疾患等を挙げることができる。好ましくは、歯周組織の疾患であって、例えば歯周病(例えば、歯肉炎、歯根膜炎、歯槽骨炎、歯周炎等)および口臭である。

【0042】
本発明の診断薬は、被験者における口腔内のチオール、例えばメチルメルカプタンを検出することによって疾患を検査するものであり、メチルメルカプタン濃度が高い場合、例えば重症の歯周病患者の呼気に相当する500ppb以上の濃度、具体的には600ppb等の場合のみならず、低濃度のメチルメルカプタン、具体的には呼気内に含まれる例えば約1ppm以下、約100ppb以下、約50ppb以下、約20ppb以下(例えば、約10ppb以下、約1ppb以下)の濃度であっても検出することができる。

【0043】
本発明の別の態様は、本発明の診断薬;適宜塩基;被験試料を吸収するかまたは被験試料と接触することができる媒質;使用説明書;および適宜医薬的に許容される添加剤を含むキットを提供する。

【0044】
本明細書で用いられている用語「塩基」は上記式Iで示される化合物、もしくはその異性体、またはその医薬的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物とメチルメルカプタン等のチオールが反応するために好ましく配合されるものである。塩基は診断薬に含まれていてよく、またはキットに含まれていてもよい。そのような塩基としては、限定されるものではないが、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムアミド、およびリチウムビストリメチルシリルアミド等のアルカリ金属アミド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、および炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属;リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、およびN-メチルモルホリン等のアミン;リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸カリウム、および三塩基性リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属;フッ化セシウムおよびフッ化カリウム等のアルカリ金属フッ化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシドおよびカリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;水素化ナトリウムおよび水素化カリウム等の水素化アルカリ金属;水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化アルカリ土類金属;ジアザビシクロウンデセン(DBU);ジアザビシクロノネン(DBN);ならびにテトラメチルグアニジン(TMG)、メチルトリアザビシクロデセン(MTBD)、およびトリアザビシクロデセン(TBD)、ジシクロヘキシルオクチルグアニジン(DCOG)、トリシクロヘキシルグアニジン(TCG)およびペンタメチルグアニジン(PMG)等のグアニジン型有機塩基等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。典型的な本発明で使用される塩基はグアニジン型有機塩基であり、好ましくはTMGである。

【0045】
本明細書で用いられている用語「被験試料」は、限定されるものではないが、息(呼気)、口腔液(唾液および歯肉溝滲出液等)、ならびにバイオフィルム等を挙げることができ、好ましくは息および口腔液である。

【0046】
本明細書で用いられている用語「被験試料を吸収するかまたは被験試料と接触することができる媒質」は、その中に被験試料を吸収することができる物質またはその表面上で被験試料と接触することができる物質を指す。そのような媒質としては、限定されるものではないが、緩衝溶液、大気、活性炭、および固体フィルム等を挙げることができ、好ましくは活性炭である。活性炭は、好ましくは塩基で処理されている。そのような塩基としては、上記で定義した塩基を挙げることができ、好ましくは水酸化アルカリ金属、より好ましくは水酸化カリウムである。

【0047】
本発明のキットは、該キットに含まれる各構成要素を適切に使用して本発明を実施するための使用説明書を包含する。

【0048】
本発明のキットは、様々な形態に構築することができる。そのような形態は、限定されるものではないが、本発明の診断薬を含む固体または液体を入れたストロー等の筒状の形態、本発明の診断薬を含むかまたは表面にコーティングした固体フィルム等のシート状の形態、ならびに該シートを入れたシリンジ等のサンプル管の形態等を挙げることができる。

【0049】
本発明のキットは、その形態に応じて、医薬的に許容される添加剤を適宜含む。そのような添加剤としては、限定されるものではないが、医薬製剤(例えば、一般的な検査・診断薬、並びにその検査・診断のためのキット)の製造において使用される賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、緩衝化剤、pH調節剤、および香料等を挙げることができる。

【0050】
本発明のキットは、本発明の診断薬と被験試料との反応によって生じた蛍光色または得られた蛍光強度や算出されたメチルメルカプタン濃度等の数値によって、口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患を簡易に診断するための基準を提供する手段を含んでもよい。そのような手段としては、限定されるものではないが、該蛍光色または数値と疾患とを関連付けた図または表等を挙げることができる。

【0051】
本発明のキットの典型的な1つの実施態様としては、以下のキットを挙げることができる。
式:
【化10】
JP2017002754A1_000012t.gif
で示される化合物を含む診断薬;
水酸化カリウムで処理した活性炭;
使用説明書;
適宜、グアニジン型有機塩基(例えば、テトラメチルグアニジン);および
適宜医薬的に許容される添加剤
を含むキット。

【0052】
本発明はさらに、(i)本発明の診断薬と被験試料を適宜塩基の存在下で接触させる工程;および(ii)被験試料中のメチルメルカプタンを検査する工程を含む、被験者における口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患の診断方法も提供する。(i)本発明の診断薬と被験試料を適宜塩基の存在下で接触させる工程において、本発明の診断薬と被験試料は直接接触させてもよく、また、被験試料を上記で定義した適当な媒質に吸収または接触させ、メチルメルカプタンを分離・抽出した後、本発明の診断薬と接触させてもよい。(ii)被験試料中のメチルメルカプタンを検査する工程としては、限定されるものではないが、UV機器を用いて紫外線を照射し、蛍光色の変化の度合いを調べることによって簡易に検査する工程、および蛍光スペクトルを測定することでメチルメルカプタンを定量して精密に検査する工程等を挙げることができる。

【0053】
前記UV機器は例えば、商業的に入手可能なUVライトまたはランプを使用することができる。一般的に安価に市販されているペン型UVライトを使用することもできる。使用可能なUVの波長としては、約10~400nmであり、例えば短波長(例えば、約254nm)、中波長(例えば、約302nm)、長波長(例えば、約365nm)のいずれをも使用することができ、典型的には市販のペン型UVライトに設定されている長波長を使用することができる。

【0054】
蛍光スペクトルの定量測定には、実験室または医療現場で使用されている分光光度計および蛍光光度計等を使用することができる。また、蛍光強度を蛍光量子収率を用いて表すことができる。

【0055】
(製造方法)
本発明で使用される式Iで示されるトリアザペンタレン誘導体は、例えば以下の製造法に従って製造することができるが、これら製造法に限定されるものではない。
【化11】
JP2017002754A1_000013t.gif

【0056】
具体的には、まずWO2012/121356A1に記載の方法(例えば、実施例7)に従って、アルキン誘導体と、R置換基(R~Rによって定義される置換基に相当)を有するアジド誘導体とを、触媒量のヨウ化銅・アミノエーテル錯体の存在下で反応させて、トリアザペンタレン誘導体である中間体Iを製造する。あるいは、該トリアザペンタレン誘導体は、他の一般的に知られている有機化学合成法によって合成するか、または商業的に入手することができる。ここで、トリアザペンタレン骨格上の置換基Rは、中間体Iを製造後に、通常の有機化学において知られる芳香族環上の置換反応を用いてトリアザペンタレン骨格上に置換基R~Rを導入してもよい。

【0057】
次に、製造した中間体Iを水酸化リチウムと反応させて脱エステル反応させ、続いてN,O-ジメチルヒドロキシルアミンと反応させて、中間体IIを製造する。次いで、該中間体IIに、グリニャール試薬を反応させて、所望する目的物を得る(製造経路1)。

【0058】
あるいは、上記で製造した中間体Iに、グリニャール試薬を反応させて、所望する目的物を得る(製造経路2)。

【0059】
本発明で使用可能な中間体Iの典型的な具体例を以下に挙げる。
【化12】
JP2017002754A1_000014t.gif

【0060】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を説明する目的で提供されるものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、下記の略語は下記の意味を有するものとする。略語が定義されていない場合、各用語は当該技術分野で通常用いられている意味を有するものとする。
CDCl=重水素化クロロホルム
conv.=変換収率
DMAP =ジメチルアミノピリジン
DMF =ジメチルホルムアミド
EDCI =1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
equiv=当量
Me =メチル
MeOH =メタノール
MeSH =メチルメルカプタン
NMR =核磁気共鳴
rt =室温
TEA =トリエチルアミン
Tf =トリフルオロメチルスルホニル
THF =テトラヒドロフラン
TLC =薄層クロマトグラフィー
TMG =テトラメチルグアニジン
【実施例】
【0061】
本発明の化合物の製造例を示す。
実施例1
1,3a,6a-トリアザペンタレン-ビニルケトン体(R=2-メチル-1-プロペニル)(TAP-VK1)の製造
(1)中間体Iの製造
【化13】
JP2017002754A1_000015t.gif
アジドジトリフラート(10g、26.23mmol)のテトラヒドロフラン(874mL、0.03M)溶液にメチルプロピオレート(3.5mL、39.35mmol)を加え、室温で撹拌した。この溶液に同じ温度でトリエチルアミン(18.3mL、131.16mmol)およびCuI(0.25g、1.31mmol)を添加し、さらに3時間撹拌した。反応の終了をTLCで確認したのち、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:7、1%TEA)で精製することにより、メチルエステル体(中間体I)を褐色結晶として得た(3.9g、23.59mmol、収率:90%)。
【実施例】
【0062】
(2)中間体IIの製造
【化14】
JP2017002754A1_000016t.gif
上記(1)で得られた中間体Iとしてのメチルエステル体(2.53g、15.31mmol)にメタノール(57.4mL)および水(19.1mL)を加え、撹拌した。この溶液に0℃で水酸化リチウム一水和物(674mg、16.08mmol)を加えた。室温に昇温したのち、さらに24時間撹拌した。TLCで原料の消失を確認した後、減圧下で濃縮した。残渣にトルエンを加え、再度濃縮を行い、茶色のアモルファスを得た。これにDMF(76.6mL)を加え、撹拌した。この溶液を0℃に冷却し、EDCI(6.46g、33.69mmol)、DMAP(0.56g、4.59mmol)、およびN,O-ジメチルヒドロキシルアミン(2.99g、30.62mmol)を添加した。反応溶液を室温に昇温した後、12時間撹拌した。この反応溶液に0℃で5%クエン酸水溶液を加えた。この溶液を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に減圧濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1.1、1%TEA)で精製し、茶色結晶を得た(2.83g、13.39mmol、2段階収率:87%)。
【実施例】
【0063】
(3)TAP-VK1の製造
【化15】
JP2017002754A1_000017t.gif
上記(2)で得られた中間体IIとしてのワインレブ(Weinreb)アミド体(10mg、50.97μmol)をテトラヒドロフラン(101.9μL)に溶解し、反応溶液を-78℃に冷却して撹拌した。イソブテニルマグネシウムブロミド(203.9μL、101.93μmol)をゆっくりと加え、同一の温度でさらに2時間撹拌し、TLCで原料の消失を確認した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、0℃に昇温した。この溶液を酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。集めた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行い、その後減圧濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:4、1%TEA)で精製し、所望する目的生成物TAP-VK1を黄色固体として得た(8.1mg、42.81μmol、収率:84%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.64(1H,d,J=1.2Hz),δ7.45(1H,d,J=1.2Hz),7.19(1H,d,J=2.8Hz),δ6.96(1H,t,J=1.2Hz),δ6.74(1H,t,J=2.8Hz),δ2.30(3H,d,J=0.8Hz),δ2.04(3H,d,J=1.2Hz)
LRMS:[M+H]190.3
【実施例】
【0064】
実施例2
1,3a,6a-トリアザペンタレン-ビニルケトン体(R=3-ブテニル)の製造
上記実施例1における(3)の反応と同様に、上記実施例1で得られた中間体I(50mg、0.303mmol)と、ビニルマグネシウムブロミド(363μL、0.363mmol)とを反応させ、同様に反応処理することにより、所望する目的生成物を得た(12.5mg、66.1μmol、収率:22%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.62(1H,d,J=1.2Hz),δ7.45(1H,br-d,J=2.0Hz),7.20(1H,d,J=2.0Hz),δ6.76(1H,t,J=2.8Hz),δ5.90(1H,m),δ5.10(1H,dd,J=17.2,1.6Hz),δ5.01(1H,dd,J=10.0,1.6Hz),δ3.11(2H,t,J=7.2Hz),δ2.51(2H,br-q,J=6.8)
【実施例】
【0065】
実施例3
1,3a,6a-トリアザペンタレン-ビニルケトン体(R=2,2-ジメチル-4-メチル-3-ペンテニル)の製造
上記実施例1における(3)の反応と同様に、上記実施例1で得られた中間体I(20mg、0.121mmol)と、イソブテニルマグネシウムブロミド(291μL、0.145mmol)とを反応させ、同様に反応処理することにより、所望する目的生成物を得た(7.8mg、31.8μmol、収率:27%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.58(1H,d,J=1.2Hz),δ7.40(1H,br-d,J=2.8Hz),7.18(1H,d,J=2.8Hz),δ6.75(1H,t,J=2.8Hz),δ5.31(1H,t,J=1.2Hz),δ3.12(2H,s),δ1.74(1H,d,J=1.2Hz),δ1.65(1H,d,J=1.2Hz),δ1.27(6H,s)
【実施例】
【0066】
実施例4
TAP-VK1の蛍光特性
蛍光特性は以下の機器および方法を用いて測定した。
使用機器
吸光度測定:V-630分光光度計(JAS.CO社製)
蛍光測定:FP-8200蛍光光度計(JAS.CO社製)
測定方法
蛍光測定を行うサンプル(1~2mg)をジクロロメタン(10mL)に溶解させた。この溶液をホールピペットで1mL取り、メスフラスコを用いて10mLまで調整した。この溶液を石英セルに移し、アルゴンを30分間バブリングして脱気した。同様の手法により、基準物質として9,10-ジフェニルアントラセン(9,10-DPA、Φ=0.91(シクロヘキサン中))を調製した。吸光スペクトルはV-630分光光度計を用い、750~250nmの範囲を測定した。蛍光スペクトルは、370nmの光を励起波長として照射し、380~750nmの範囲で測定を行った。
【実施例】
【0067】
TAP-VK1の蛍光特性は、励起波長λabs=409nm、蛍光波長λem=574nm、および量子収率Φ=0.023であり、弱いオレンジ色の蛍光を示した。
【実施例】
【0068】
実施例5
TAP-VK1とメチルメルカプタンとの反応
【化16】
JP2017002754A1_000018t.gif
TAP-VK1(1.6mg、8.314μmol)をジクロロメタン(42.3μL)に溶解させた。この反応溶液を0℃に冷却し、テトラメチルグアニジン(1.04μL、8.314μmol)とメチルメルカプタン(2mL、1μg/μL、41.57μmol)を加えて、同一の温度で3時間撹拌した。TLCで反応の停止を確認したのち、減圧濃縮を行った。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:9、1%TEA)で精製し、メチルメルカプタン付加体を黄色アモルファスとして得た(1.2mg、4.989μmol)。
【実施例】
【0069】
なお、TAP-VK1は、アルコール、アミン、カルボン酸、およびスルフィド等の他の官能基とは全く反応しなかった。このことは、本発明の式Iで示される化合物は歯周病等の発生の指標となるチオール(特に、メチルメルカプタン)に対する優れた検査・診断試薬の有効性成分であることを示唆する。
【実施例】
【0070】
実施例6
TAP-VK1のメチルメルカプタン付加体の蛍光特性
メスフラスコを用いてTAP-VK1のメチルメルカプタン付加体(1.71mg、7.205μmol)をジクロロメタン10mLに溶解した。この溶液をホールピペットで1mL取り、再度メスフラスコを用いて10mLまで調整した。この溶液(7.205×10-5M)に30分間アルゴンバブリングを行った。その他の操作は実施例4と同様にして行い、吸光スペクトルおよび蛍光スペクトル測定に用いた。
【実施例】
【0071】
TAP-VK1のメチルメルカプタン付加体の蛍光特性は、励起波長λabs=388nm、蛍光波長λem=516nm、および量子収率Φ=0.49であり、強い緑色の蛍光を示した。すなわち、TAP-VK1にメチルメルカプタンが付加することで、蛍光色がオレンジ色から緑色へ変化し、蛍光強度が20倍以上に増加した。
【実施例】
【0072】
実施例7
固体状態のTAP-VK1とメチルメルカプタンの反応
TAP-VK1(20mg、105.70μmol)にテトラメチルグアニジン(132.6μL、1.057mmol)を加え、撹拌した。30分後に、減圧濃縮した。得られた固体にメチルメルカプタンガス(20mL)を加えて、室温で24時間静置した。この残渣にCDClを加えてNMRを測定することで、50%conv.にて目的のメチルメルカプタン付加体が生成していることを確認した。この溶液にUV照射すると、メチルメルカプタン付加体の生成を示す緑色の蛍光が観察された。
【実施例】
【0073】
実施例8
TAP-VK1のメチルメルカプタン付加体の希釈条件での蛍光強度
本発明の診断薬が実際に呼気中に含まれる低濃度のメチルメルカプタン(≦20ppb)でも検出可能であることを立証するために、希釈条件でTAP-VK1とそのメチルメルカプタン付加体の混合比率を変え、蛍光観測を行った。
【実施例】
【0074】
サンプル調製法
TAP-VK1溶液(溶液A)の調製
(1)TAP-VK1(分子量:189.21)を3mg(15.9μmol)秤量した。
(2)メスフラスコを使用し、ジクロロメタン10mLに溶解した(終濃度:1.59×10-3M)。
(3)ホールピペットを用いて1mL量り取り、メスフラスコで10mLまで調整した(終濃度:1.59×10-4M)。

メチルメルカプタン付加体溶液(溶液B)の調製
(1)付加体(分子量:237.32)を3.8mg(16.0μmol)秤量した。
(2)メスフラスコを使用し、ジクロロメタン10mLに溶解した(終濃度:1.60×10-3M)。
(3)ホールピペットを用いて1mL量り取り、メスフラスコで10mLまで調整した(終濃度:1.60×10-4M)。
【実施例】
【0075】
溶液Aと溶液Bを以下の比率で混合して1.60×10-4Mのメチルメルカプタン付加体の0%、5%、10%、20%、および30%溶液を得た後、各希釈溶液をジクロロメタンで10倍希釈して1.60×10-5Mのメチルメルカプタン付加体の0%、5%、10%、20%、および30%溶液を得た。
【表1】
JP2017002754A1_000019t.gif
【実施例】
【0076】
得られた各希釈溶液をベースに以下の濃度の各希釈溶液を製造した。
1.60×10-6Mの希釈液
上記の希釈溶液をそれぞれ250μLずつ取り、ジクロロメタン2.25mLで希釈し、1.60×10-6Mのメチルメルカプタン付加体の0%、5%、10%、20%、および30%溶液を製造した。
1.60×10-7Mの希釈液
上記の希釈溶液をそれぞれ25μLずつ取り、ジクロロメタン2.475mLで希釈し、1.60×10-7Mのメチルメルカプタン付加体の0%、5%、10%、20%、および30%溶液を製造した。
【実施例】
【0077】
得られた1.60×10-7Mのメチルメルカプタン付加体の0%、5%(8.00×10-9M)、10%(1.60×10-8M)、20%(3.20×10-8M)、および30%(4.80×10-8M)溶液につき、各溶液にUVを当てた結果を図1に、および実施例4と同様の方法で蛍光測定を行った結果を図2に示す。
【実施例】
【0078】
図1および図2から明らかなように、本発明の診断薬は、呼気中の濃度以下のメチルメルカプタン(≦20ppb、例えば8.00ppb)の付加体でも十分に蛍光を観測できることが分かった。
【実施例】
【0079】
従って、本発明の診断薬は呼気中に含まれる微量なメチルメルカプタンを十分に検出できるため、本発明の診断薬に呼気を吹き込み、UVを当てて蛍光を観測することで、呼気中に含まれるメチルメルカプタンを簡易に検出することが可能である。
【実施例】
【0080】
実施例9
媒質による空気中のメチルメルカプタンの捕捉とTAP-VK1による検出
空気中のメチルメルカプタンを媒質によって捕捉し、TAP-VK1と反応させることによって検出可能であることを立証するために、以下の実験を行った。
【実施例】
【0081】
(1)活性炭(和光純薬製)をDMFおよび1M水酸化カリウム水溶液で洗浄したのち真空乾燥し、パスツールピペットの先に高さ3mm充填した。
(2)パーミエーター(ガス発生装置)を用いて、600ppbのメチルメルカプタンガス(重症の歯周病患者の呼気中の濃度に相当)を発生させた。次いで、パーミエーターから発生するガスをホースでパスツールピペットに繋ぎ、10分間通気(2Lの呼気に相当)させた。
(3)パスツールピペットの下側に予めTAP-VK1(1.89μg、0.01μmol)を入れたミクロチューブを置き、パスツールピペットの上側からDMFを100μL流した。ミクロチューブでDMFを回収し、ミクロチューブに蓋をしてから激しく攪拌した。
(4)ミクロチューブにUVランプを当て、蛍光の様子を観察した。なお、反応の進行はHPLC解析によって確認した。
【実施例】
【0082】
メチルメルカプタンガスを通気していない活性炭を通過させたDMF溶液(コントロール)では、TAP-VK1に由来する非常に弱い黄色の蛍光が観測された。一方、メチルメルカプタンガスを通気させた活性炭を通過させたDMF溶液(反応後)では、TAP-VK1のメチルメルカプタン付加体に由来する強い緑色の蛍光が観測された(図3)。
【実施例】
【0083】
以上より、空気中に含まれる歯周病患者の呼気中の濃度に相当する濃度のメチルメルカプタンを適当な媒質によって捕捉し、TAP-VK1によって検出可能であることが立証された。この方法を用いることで、空気中の微量なメチルメルカプタンを効率よく捕捉し、検出することが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の診断薬、該診断薬を含むキット、および該診断薬を用いた診断方法は、口腔内のメチルメルカプタンを選択的かつ高感度に検出することができるため、口腔内のメチルメルカプタン濃度の上昇をもたらす疾患、例えば歯周病を簡易かつ高感度に検出することができ、様々な態様で歯周病罹患センサーとして用いることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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