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明細書 :コラーゲン様構造を有する重合ペプチド及びゲル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6455862号 (P6455862)
登録日 平成30年12月28日(2018.12.28)
発行日 平成31年1月23日(2019.1.23)
発明の名称または考案の名称 コラーゲン様構造を有する重合ペプチド及びゲル
国際特許分類 C07K  14/78        (2006.01)
C07K   1/02        (2006.01)
A61L  27/24        (2006.01)
A61L  27/38        (2006.01)
A61K  38/19        (2006.01)
A61P  17/02        (2006.01)
FI C07K 14/78 ZNA
C07K 1/02
A61L 27/24
A61L 27/38 100
A61K 38/19
A61P 17/02
請求項の数または発明の数 10
全頁数 46
出願番号 特願2017-524969 (P2017-524969)
出願日 平成28年6月23日(2016.6.23)
国際出願番号 PCT/JP2016/068667
国際公開番号 WO2016/208673
国際公開日 平成28年12月29日(2016.12.29)
優先権出願番号 2015127450
優先日 平成27年6月25日(2015.6.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年7月13日(2018.7.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【識別番号】515174342
【氏名又は名称】コラジェン・ファーマ株式会社
発明者または考案者 【氏名】小出 隆規
【氏名】市瀬 慎一郎
【氏名】竹内 俊吾
【氏名】能勢 博
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
審査官 【審査官】小金井 悟
参考文献・文献 特開平06-080935(JP,A)
特表平08-504463(JP,A)
特開昭58-041559(JP,A)
特開2013-074936(JP,A)
Chem. Eur. J.,2003年,Vol.9,Pages 3703-3714
J. Mol. Biol.,2002年,Vol.317,Pages 459-470
J. Biol. Chem.,2014年,Vol.289, No.8,Pages 4861-4869
調査した分野 C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ゲル化剤であって、
システイン(Cys)残基を含むペプチド鎖を含む3本鎖からなる三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドを重合単位として、前記Cys残基間でのジスルフィド結合による酸化架橋で重合され、
前記3本鎖ペプチドを構成する各ペプチド鎖は、同一であっても又は相互に異なっていてもよく、
各ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の繰り返し構造を有する三重らせん形成用ペプチド基と、アミノ末端及びカルボキシ末端の各々から10残基以内に少なくとも2残基のシステイン(Cys)残基を含む架橋形成用ペプチド基とを有する重合ペプチドの少なくとも1種を含むことを特徴とするゲル化剤。
[Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよい。]
【請求項2】
請求項1に記載のゲル化剤であって、
前記ペプチド鎖は、
(i) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と少なくとも1つの架橋形成用ペプチド基からなるペプチド鎖、
(ii) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と少なくとも1つの架橋形成用ペプチド基、及び生理活性を有するモチーフを有する少なくとも1つのペプチド基を含むペプチド鎖、及び、
(iii) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と架橋形成用ペプチド基、及び、アミノ酸残基の側鎖にリンカーを介して生理活性を有するモチーフを結合させた少なくとも1つのペプチド基を含むペプチド鎖
からなる群から選択される重合ペプチドの少なくとも1種を含むことを特徴とするゲル化剤。
【請求項3】
請求項2に記載のゲル化剤であって、
前記生理活性を有するモチーフの2種類以上を組み合わせて製造される共重合ペプチドを少なくとも1種含むことを特徴とするゲル化剤。
【請求項4】
請求項1に記載のゲル化剤の製造方法であって、
(Xaa-Yaa-Gly)を基本単位として少なくとも5回の繰り返し構造を有し、アミノ末端及びカルボキシ末端の各々から10残基以内に少なくとも2残基のシステイン(Cys)残基を含む相互に異なっていてもよいペプチド鎖を溶媒に溶解する工程、
自己集合により前記ペプチドの3本からなる三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドを形成する工程、
該3本鎖ペプチドを重合単位として前記Cys残基間でのジスルフィド結合による酸化架橋で重合させる工程、
を含むことを特徴とする、製造方法。
[Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよい。]
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のゲル化剤の少なくとも1種を含むことを特徴とする、ゲル。
【請求項6】
システイン残基を含まない3本鎖ペプチドの少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のゲル。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のゲルであって、
ゲルが、ヒドロゲルであり、選択的な細胞を培養するための基材として使用されることを特徴とする、ゲル。
【請求項8】
請求項5~のいずれか1項に記載のゲルを乾燥させて製造されることを特徴とする、重合ペプチド薄膜。
【請求項9】
請求項5~のいずれか1項に記載のゲル又は請求項9に記載の重合ペプチド薄膜を含むことを特徴とする、再生医療材料。
【請求項10】
請求項に記載の再生医療材料であって、
創傷治癒促進用組成物であることを特徴とする、再生医療材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン様ペプチドからなる重合ペプチド、該重合ペプチドを含むゲル及び重合ペプチド薄膜、並びにそれらの製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、-(Xaa-Yaa-Gly)-の基本単位を繰り返してなる一次構造のアミノ酸配列を有するペプチド(Xaa及びYaaは任意のアミノ酸残基を表す)の3本鎖が、三重らせん構造を形成するタンパク質の総称であり、動物組織の細胞間に存在する細胞外マトリックスの主要構成成分である。動物結合組織中に豊富に含まれ、組織の骨格構造を構成している。ヒトのコラーゲンタンパク質は28種あることが報告されている。一方、上記一次構造のアミノ酸配列中に生理活性を有するモチーフが組み込まれており、例えば、創傷等の組織損傷時に組織中のコラーゲンが血液に曝露されることにより、インテグリンα2β1受容体及びglycoprotein VI(GPVI)受容体を有する血中の血小板の創傷部位への結合をトリガーとして血液凝固系の活性化を惹起し、止血及び創傷治癒促進等の活性を有する(非特許文献1)。
【0003】
そこで、コラーゲンが有する強度や生理活性を活用し、家畜や魚類等から採取されたコラーゲンを水で加熱抽出して製造されるゼラチンが、止血や褥瘡潰瘍を適用とする医薬品及び医療材料に、カプセル剤等の原料に、さらに化粧品原料及び食品材料等として広く使用されている。
【0004】
しかし、コラーゲンを採取する家畜にヒトと共通して感染する例えばプリオン病等の発症を認めると、安全性の確保のために家畜からのコラーゲンの供給は規制され、関連する産業分野へのコラーゲンの供給が不安定になる。
【0005】
また、天然のコラーゲンは、上記インテグリンα2β1受容体等を介した血小板に対する作用のみならず、ジスコイジン受容体、シンデカン受容体及びフィブロネクチンを有する細胞を接着する等の多様な活性を有する(非特許文献1)。したがって、天然のコラーゲンでは、所望の生理活性に選択的な活性を有するコラーゲンを取得して利用することは実質的に困難である。
【0006】
そこで、コラーゲンのこれらの特性に着目し、コラーゲン様の構造及び活性を有する非天然のコラーゲン様ペプチドを製造し、研究材料や医療材料等への応用が試みられている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2005-263784号公報
【特許文献2】特開2013-074936号公報
【0008】

【非特許文献1】Koide T., Phil. Trans. R. Soc. B (2007) 362, 1281-1291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
コラーゲンは医療材料として有用であるが、ヒトへの使用はアレルギー及び人畜共通伝染病の危険がある。そこで、人工コラーゲン又は人工ゼラチン等のコラーゲン様ペプチドの医療材料としての利用が検討されている。しかし、従来のコラーゲン様ペプチドは物理的な強度や、加熱すると変性する、シート状に加工できない等の特性の点で必ずしも十分とは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コラーゲンの構造・物性と生理的機能を模倣又は新たに付与可能であり、かつ完全人工品とすることで安全性を担保した医療材料及び研究材料を提供する。複数のシステイン(Cys)残基を含むペプチド鎖の3本鎖からなる三重らせん構造を有するコラーゲン様ペプチドを、酸化架橋させることにより、重合ペプチドとして製造される。本重合ペプチドを含む材料は、ヒドロゲル及びシートに加工して使用でき、かつ、インテグリン結合配列等、生体高分子上に存在する機能性アミノ酸配列を組み込むことによって、細胞接着性などの特定の生理機能を付与できる。さらに、本発明は、前記ヒドロゲル及びシート状加工品の製造方法、並びに、これらを使用した細胞培養、創傷被覆、再生医療材料及び研究用材料等の組成物としての用途を提供する。
【0011】
具体的には、本発明は、重合ペプチドであって、
三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドを繰り返し単位として有し、酸化架橋で重合され、
前記3本鎖ペプチドを構成する各ペプチド鎖は、同一であっても又は相互に異なっていてもよく、
各ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の繰り返し構造を有する三重らせん形成用ペプチド基と、アミノ末端及びカルボキシ末端の各々から10残基以内に少なくとも2残基のシステイン(Cys)残基を含む架橋形成用ペプチド基とを有する重合ペプチドを提供する。
[Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよい。]
【0012】
本発明の前記重合ペプチドにおいて、
前記ペプチド鎖が、
(i) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と少なくとも1つの架橋形成用ペプチド基からなるペプチド鎖、
(ii) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と少なくとも1つの架橋形成用ペプチド基、及び生理活性を有するモチーフを有する少なくとも1つのペプチド基を含むペプチド鎖、及び、
(iii) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と架橋形成用ペプチド基、及び、アミノ酸残基の側鎖にリンカーを介して生理活性を有するモチーフを結合させた少なくとも1つのペプチド基を含むペプチド鎖
からなる群から選択される少なくとも1つであるペプチド鎖である場合がある。
【0013】
本発明の前記重合ペプチドにおいて
下記式(I)で表される3本のペプチド鎖から形成される三量体ペプチドの構造単位を有し、酸化架橋されてなる重合ペプチドの場合がある。
【化1】
JP0006455862B2_000002t.gif
[式(I)中、
A1, A2及び A3は、同一又は相違してもよく、それぞれ独立して下記式(II)で表されるペプチド鎖であり、
A1, A2及び A3は、三重らせん構造を有する三量体を形成し、各々のペプチド鎖に含まれるシステイン(Cys)残基によってジスルフィド結合で架橋されていてもよく、
該三量体は、前記Cysのジスルフィド結合で酸化架橋により重合される。
【化2】
JP0006455862B2_000003t.gif
(式(II)中、
R1及びR4は、各々アミノ末端及びカルボキシ末端を有し、相互に独立して少なくとも2残基のCys残基を含む任意の2~10残基のアミノ酸残基からなるペプチド基であり、
Zは、
(i) -(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し構造のみからなるペプチド基、
(ii) -(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として繰り返す構造及び生理活性を有するモチーフを有するペプチド基、又は、
(iii) -(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として繰り返す構造を有し、かつ、該ペプチド鎖に含まれる少なくとも1残基のアミノ酸残基の側鎖にリンカーを介して生理活性を有するモチーフ配列を結合させてなるペプチド基、
から選択される少なくとも1つであり、
R2及びR3は独立して-(Xaa-Yaa-Gly)-を単位として連続して繰り返す構造を含むペプチド基であり、
-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し構造における繰り返し回数は、R2、Z及びR3の各々は0回以上であり、R2、Z及びR3で合計して3回以上であり、
mは1以上の整数である。)]
【0014】
前記重合ペプチドの発明において、
前記ペプチド鎖は、下記式(III)で表される場合がある。
【化3】
JP0006455862B2_000004t.gif
[式(III)中、
R5及びR6は、各々アミノ末端及びカルボキシ末端であり、相互に独立して少なくとも2残基のCys残基を含む任意の2~10残基のアミノ酸残基からなるペプチド基であり、
p、q及びrは、いずれも0以上の整数であり、p、q及びrの合計は3以上であり、sは1以上の整数である。]
【0015】
前記重合ペプチドの発明において、
前記生理活性は生体高分子に対する特異的な結合活性である場合がある。
【0016】
前記重合ペプチドの発明において、
前記生体高分子に対する特異的な結合活性を有するリガンドの結合モチーフは、インテグリン、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)若しくはヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)から選択されるコラーゲン受容体に対する結合モチーフ、又はフィブロネクチン由来のインテグリンαvβ3に対する結合モチーフの少なくとも1つから選択される重合ペプチドの場合がある。
【0017】
前記重合ペプチドの発明において、
前記インテグリンに対する結合モチーフは-Gly-Phe-Hyp-Gly-Glu-Arg-、ジスコイジンドメイン受容体に対する結合モチーフは-Gly-Val-Met-Gly-Phe-Hyp-、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに対する結合モチーフアミノ酸配列は-Lys-Gly-His-Arg-Gly-Phe-であり、フィブロネクチン由来のインテグリンαvβ3に対する結合モチーフは-Arg-Gly-Asp-である場合がある。
【0018】
前記重合ペプチドの発明において、
前記ペプチド鎖は、配列番号1~7、10~18、23及び24から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドから選択される場合がある。
【0019】
前記重合ペプチドの発明において、
前記ペプチド鎖は、配列番号1~7、10~18、23及び24から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドのアミノ酸配列に対して1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる場合がある。
【0020】
前記重合ペプチドの発明において、
前記ペプチド鎖は、配列番号1、2、5~7、10~18及び23から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドから選択される場合がある。
【0021】
前記重合ペプチドの発明において、
前記ペプチド鎖は、配列番号1、2、5~7、10~18及び23から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドのアミノ酸配列に対して1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる場合がある。
【0022】
前記重合ペプチドの発明において、
前記生理活性を有するモチーフを有するペプチド鎖は、フィブロネクチン由来のインテグリン結合モチーフがBis(NHS)PEG5(bis(succinimidyl)penta(ethylene glycol))をリンカーとして、前記ペプチド基のLys残基の側鎖のアミノ基に結合されてなる場合がある。
【0023】
前記重合ペプチドの発明において、
前記生理活性を有するモチーフの2種類以上を組み合わせて製造される共重合ペプチドの場合がある。
【0024】
また、本発明は、前記重合ペプチドの製造方法であって、
-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の繰り返し構造を有し、アミノ末端及びカルボキシ末端の各々から10残基以内に少なくとも2残基のシステイン(Cys)残基を含む相互に異なっていてもよいペプチド鎖を変性温度以上の温度で溶媒に溶解する工程、
冷却することにより自己集合により前記ペプチドの3本からなる三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドを形成する工程、
該3本鎖ペプチドを構造単位として、酸化架橋で重合させる工程、
を含む製造方法を提供する。
該製造方法において、Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよい。
【0025】
さらに、本発明は、前記製造方法で製造される重合ペプチドを提供する。
【0026】
さらに、本発明は、前記重合ペプチドの少なくとも1種を含むゲル化剤を提供する。
【0027】
さらに、本発明は、前記重合ペプチドの少なくとも1種を含むゲルを提供する。
【0028】
本発明の前記ゲルは、前記重合ペプチドの1種、2種、3種、4種又は5種を含むゲルである場合がある。
【0029】
本発明の前記ゲルは、前記3本鎖ペプチドを重合単位として、少なくとも2種の3本鎖ペプチドを組み合わせた重合ペプチド含むゲルである場合がある。
【0030】
本発明の前記ゲルは、前記3本鎖ペプチドの2種、3種、4種又は5種を組み合わせた重合ペプチド含むゲルである場合がある。
【0031】
本発明の前記ゲルは、システイン残基を含まない3本鎖ペプチドの少なくとも1種をさらに含むゲルである場合がある。
【0032】
本発明の前記ゲルは、3本鎖ペプチドの少なくとも1種を酸化重合させてゲル化して製造されるゲルである場合がある。
【0033】
本発明の前記ゲルは、3本鎖ペプチドの1種、2種、3種、4種、5種を酸化重合させてゲル化して製造されるゲルである場合がある。
【0034】
本発明の前記ゲルは、システイン残基を含むペプチド鎖から構成される3本鎖ペプチド、及び、システイン残基を含まないペプチド鎖から構成される3本鎖ペプチドとを混合し、酸化重合させて製造されるゲルである場合がある。
【0035】
前記ゲルは、前記3本鎖ペプチドを構成する各ペプチド鎖が、前記ゲルの硬さ(stiffness)を制御するためのシステイン残基数が異なるペプチド鎖と、生理活性モチーフを有するペプチド鎖とを含む多機能ゲルである場合がある。
【0036】
前記多機能ゲルにおいて、前記ゲルの硬さを制御するためのペプチド鎖が、ペプチド鎖のN末端及びC末端近傍に含まれるシステイン残基の数が相違するペプチド鎖である場合がある。
【0037】
前記ゲルの硬さを制御するためのペプチド鎖における前記システイン残基の数が、N末端及びC末端の近傍で、それぞれ1、2又は3個から選択され、N末端近傍とC末端近傍とで、同一又は相違する場合がある。
【0038】
前記ゲルの発明において、
ゲルが、ヒドロゲルであり、細胞を細胞選択的に培養するための基材として使用される場合がある。
【0039】
さらに、本発明は、前記ゲルを乾燥させて製造される重合ペプチド薄膜を提供する。
【0040】
また、本発明は、前記重合ペプチド薄膜を含む再生医療材料を提供する。
【0041】
前記再生医療材料の発明において、
再生医療材料は、創傷治癒促進用組成物である場合がある。
【0042】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のコラーゲン様ペプチドの重合ペプチド、及びこれを含むゲル並びに重合ペプチド薄膜の概要図を表す。
【図2A】合成したペプチドの逆相系高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC) 分析でのクロマトグラム:YCC2のクロマトグラムを表す。
【図2B】合成したペプチドの逆相系高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC) 分析でのクロマトグラム:CC1のクロマトグラムを表す。
【図2C】合成したペプチドの逆相系高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC) 分析でのクロマトグラム:CC2のクロマトグラムを表す。
【図2D】合成したペプチドの逆相系高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC) 分析でのクロマトグラム:C2のクロマトグラムを表す。
【図2E】合成したペプチドの逆相系高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC) 分析でのクロマトグラム:CC2-GPOGPR (short)のクロマトグラムを表す。
【図2F】合成したペプチドの逆相系高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC) 分析でのクロマトグラム:C2-GPOGPR (short)のクロマトグラムを表す。
【図2G】合成したペプチドの逆相系高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC) 分析でのクロマトグラム:Soluble GPOGPR (short)のクロマトグラムを表す。
【図3A】合成したペプチド鎖の4、37及び80℃におけるCDスペクトル測定の結果:YCC2のCDスペクトルを表す。
【図3B】合成したペプチド鎖の4、37及び80℃におけるCDスペクトル測定の結果:CC2のCDスペクトルを表す。
【図3C】合成したペプチド鎖の4、37及び80℃におけるCDスペクトル測定の結果:CC1のCDスペクトルを表す。
【図3D】合成したペプチド鎖の4、37及び80℃におけるCDスペクトル測定の結果:CCC2のCDスペクトルを表す。
【図3E】合成したペプチド鎖の4、37及び80℃におけるCDスペクトル測定の結果:CCCC2のCDスペクトルを表す。
【図3F】合成したペプチド鎖の4、37及び80℃におけるCDスペクトル測定の結果:YCC2-ScrのCDスペクトルを表す。
【図3G】合成したペプチド鎖の4、37及び80℃におけるCDスペクトル測定の結果:Y2のCDスペクトルを表す。
【図4A】YCC2のθ225 を温度を変化させて測定した結果を表す。
【図4B】YCC2-Scrのθ225を温度を変化させて測定した結果を表す。
【図5】CCCC2、CCC2、CC2、CC1、YCC2及びYCC2-Scrの重合化反応における、時間経過に伴う各ペプチドのSH量を定量した結果を表す。
【図6】YCC2、CC2、CC1、C2、CCC2、CCCC2、YCC2-Scr及びY2で形成されるヒドロゲルにおける各ペプチドのゲル形成能の比較結果を表す。
【図7】CCCC2、CCC2、CC2及びYCC2で形成されるヒドロゲルにおける、各ヒドロゲルの崩壊性判定結果を表す。
【図8】CCCC2、CCC2、CC2及びYCC2で形成されるヒドロゲルにおける、ヒドロゲルの熱安定性測結果を表す。
【図9】作製した重合ペプチド薄膜を表す。左:内径6 mm、ペプチド量1mg、支持体PVDF膜中:内径10 mm、ペプチド量3 mg、支持体ナイロンメッシュ右:内径6 mm、ペプチド量1 mg、支持体PVDF膜
【図10】重合ペプチド薄膜を再水和した場合の外観図を表す。
【図11A】合成した生理活性モチーフを組み込んだペプチドの4、37及び80℃におけるCDスペクトルの測定結果:YCC2-GFOGERのCDスペクトルを表す。
【図11B】合成した生理活性モチーフを組み込んだペプチドの4、37及び80℃におけるCDスペクトルの測定結果:Soluble-GFOGERのCDスペクトルを表す。
【図11C】合成した生理活性モチーフを組み込んだペプチドの4、37及び80℃におけるCDスペクトルの測定結果:YCC2-GVMGFOの4、37及び80℃におけるCDスペクトルを表す。
【図11D】合成した生理活性モチーフを組み込んだペプチドの4、37及び80℃におけるCDスペクトルの測定結果:Soluble-GVMGFOのCDスペクトルを表す。
【図11E】合成した生理活性モチーフを組み込んだペプチドの4、37及び80℃におけるCDスペクトルの測定結果:YCC2-KGHRGFのCDスペクトルを表す。
【図11F】合成した生理活性モチーフを組み込んだペプチドの4、37及び80℃におけるCDスペクトルの測定結果:Soluble-KGHRGFのCDスペクトルを表す。
【図12A】GFOGER配列モチーフを有するコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドからなるゲルへのヒト線維芽細胞の接着能の評価:コラーゲンI(Collagen I)、変性コラーゲン(Heat denatured collagen)、GFOGER組み込み重合ペプチド(Pol-GFOGER)、GPOGPR組み込み重合ペプチド(Pol-GPOGPR)、可溶性GFOGER(Soluble GFOGER)との比較結果として、顕微鏡での観察図を示す。
【図12B】GFOGER配列モチーフを有するコラーゲン様ペプチドの重合ペプチド(Pol-GFOGER)で形成されたゲルへのヒト線維芽細胞の接着能のI型コラーゲン(Collagen I;陽性対照)と比較した結果を表す。Mgイオン要求性及びEDTA添加による阻害活性の検討結果として、顕微鏡での観察図を表す。
【図13A】GFOGER配列モチーフを有するコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドから形成されたゲル(Pol-GFOGER)を使用した場合の、インテグリンを介したFAKのリン酸化シグナルの、コラーゲンI(Collagen I;陽性対照)及びGPOGPRモチーフ(Pol-GPOGPR)との比較結果として、ウェスタンブロットの結果を表す。
【図13B】GFOGER配列モチーフを有するコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドからなるゲル(Pol-GFOGER)を使用した場合の、インテグリンを介したFAKのリン酸化シグナル伝達の、コラーゲンI(Collagen I)及びGPOGPRモチーフ(Pol-GPOGPR)との比較:FAKのリン酸化に及ぼす影響を比較した結果を表す。
【図14A】GFOGER配列モチーフを有するコラーゲン様ペプチドの重合ペプチド(Pol-GFOGER)の結合モチーフ量の存在割合の変化に伴う接着細胞数の変化をコラーゲンI(Collagen I)及びGPOGPRモチーフ(Pol-GPOGPR)と比較した結果を表す、顕微鏡での観察図を示す。
【図14B】GFOGER配列モチーフを有するコラーゲン様ペプチドの重合ペプチド(Pol-GFOGER)の結合モチーフ量の存在割合の変化に伴う接着細胞数の変化をコラーゲンI(Collagen I)及びGPOGPRモチーフ(Pol-GPOGPR)と比較した結果を表す、接着細胞数の計測結果を示す。
【図14C】GFOGER配列モチーフを有するコラーゲン様ペプチドの重合ペプチド(Pol-GFOGER)の結合モチーフ量の存在割合の変化に伴う接着細胞数の変化を評価した結果を表す。GFOGER配列モチーフ存在割合と接着細胞数との用量作用曲線を表す。
【図15A】GFOGER配列モチーフ、GVMGFO配列モチーフ又はKGHRGF配列モチーフを有する重合ペプチドによるゲル(各、Pol-GFOGER、Pol-GVMGFO及びPol-KGHRGFと記載)に対して、結合モチーフを組み込まない重合ペプチド(Pol-GPOGPR)、I型コラーゲン(Collagen I)、可溶性GFOGER(Soluble GFOGER)、可溶性GVMGFO(Soluble GVMGFO)及び可溶性KGHRGF(Soluble KGHRGF)と比較したヒト線維芽細胞の接着性についての顕微鏡での観察図を表す。
【図15B】GFOGERとKGHRGFを組み込んだ重合ペプチド(各Pol-GFOGER及びPol-KGHRGF)のヒト線維芽細胞接着に対するEDTA及びヘパリンの阻害作用の評価結果を表す、顕微鏡での観察図を示す。
【図15C】図15Bで示されたEDTA及びヘパリンの阻害作用について細胞数を計測した結果を表す。
【図16A】GFOGER配列モチーフ(GFO)及びGVMGFO配列モチーフ(GVM)を組み合わせた複数の結合モチーフの種々の含有割合を有する重合ペプチドによるゲルの細胞接着の検討結果を表す、顕微鏡での観察図を示す。
【図16B】GFOGER配列モチーフ(GFO)及びGVMGFO配列モチーフ(GVM)を組み合わせた複数の結合モチーフを有する重合ペプチドによるゲルの細胞接着の検討結果として、接着細胞数を計測した結果を表す。
【図17】一本鎖ペプチドの側鎖にリンカーを介してRGDモチーフを結合させた重合ペプチドによるゲルにおけるヒト線維芽細胞の接着性の検討結果を表す、顕微鏡での観察図を示す。
【図18A】ゲルの硬さ(stiffness)を制御するためのペプチド鎖CCC2-GPOGPR (short)と、生理活性モチーフを有するペプチド鎖CCC2-GFOGER (short)の2種類の異なる特性のペプチドを混ぜ込んだ多機能ゲルを用いた細胞接着アッセイの結果を表す写真図。陽性対照としてI型コラーゲンを、CCC2-GFOGER (short)を含まない重合ゲルを陰性対照として、ヒト皮膚線維芽細胞のゲルへの接着と凝集性を、蛍光顕微鏡で観察した。
【図18B】ゲルの硬さを制御するためのペプチド鎖と、生理活性モチーフを有するペプチド鎖の2種の異なる特性を有するペプチドを混ぜ込んだ多機能ゲルを用いた細胞接着アッセイの結果を表す写真図。2つの成分の組み合わせでの組成比を9:1、7:3、5:5、3:7及び1:9に変化させたゲルを調製し、本ゲルに接着するヒト皮膚線維芽細胞の細胞凝集性を評価した。
【図19A】コラーゲン様重合ペプチド薄膜のin vivoでの移植後の生分解性を評価した結果を表す。マウスの背部皮下にコラーゲン様重合ペプチド薄膜を移植して10日後の背部皮下組織を、ヘマトキシリン-エオジン染色して顕微鏡で観察した写真図。
【図19B】マウスの背部皮下にコラーゲン様重合ペプチド薄膜を移植して30日後の背部皮下組織を、ヘマトキシリン-エオジン染色して顕微鏡で観察した写真の図。PVDFは、生分解性を示さないため移植部位を確認することを目的に支持体として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0044】
1.コラーゲン様ペプチドの重合ペプチド
本発明に係る3本鎖ペプチドは、一般に、コラーゲン様ペプチドともいわれる。本明細書において、「コラーゲン様ペプチド」とは、非天然のペプチド又はポリペプチドであって、天然のコラーゲンと同様に、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し構造を有するペプチド鎖の3本が、溶媒中で自己集合して、らせん構造を形成することにより、3本鎖ペプチドを形成させたもの、又は、該らせん構造を有する3本鎖ペプチドを、さらに、架橋させたペプチド又はポリペプチドを言う。ただし、前記Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよい。

【0045】
したがって、本発明の態様の一つは、3本鎖ペプチド、すなわち、コラーゲン様ペプチドが重合した重合ペプチドである(図1参照)。本コラーゲン様ペプチドの重合ペプチドは、以下の構成を有する。

【0046】
重合ペプチドであって、
三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドを繰り返し単位として有し、酸化架橋で重合され、
前記3本鎖ペプチドを構成する各ペプチド鎖は、同一であっても又は相互に異なっていてもよく、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の繰り返し構造を有し、アミノ末端及びカルボキシ末端の各々から10残基以内に少なくとも2残基のシステイン(Cys)残基を含むことを特徴とする、重合ペプチド。
[Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよい。]

【0047】
本明細書において、「ペプチド鎖」は3本のペプチド鎖によって三重らせん構造を形成するために必要な一次構造を有するペプチド又はポリペプチドであって、酸化架橋を形成するためのCys残基を含んでいてもよく、「1本鎖ペプチド」と表される場合がある。

【0048】
前記ペプチド鎖のN末端及びC末端から10残基以内に含まれるCys残基の数は、それぞれ独立して、同一であってもよく、又は異なってもよく、2残基以上、3残基以上、4残基以上、5残基以上であってもよい。

【0049】
上記の重合ペプチドの構成において、少なくとも2残基のシステイン(Cys)残基を含むアミノ末端及びカルボキシ末端の各々からのペプチド基は、10残基以内以外に、9残基以内、8残基以内、7残基以内、6残基以内、5残基以内、4残基以内又は3残基以内であってもよい。

【0050】
本明細書において、「重合ペプチド」とは、「コラーゲン様ペプチド」が、例えば、該コラーゲンペプチドに含まれるシステイン残基間の酸化的架橋によって形成されるジスルフィド結合を介して重合させたペプチドを言う。

【0051】
本発明の重合ペプチドの重合度は、2以上であり、本発明の重合ペプチドを含むゲル、好ましくはヒドロゲルを形成可能な重合度であれば、特に限定されないが、平均重合度が100未満、100~500、500~1000、1000~5000、5000~10000又は10000以上の場合もある。

【0052】
コラーゲン様ペプチドにおける-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し構造は、構成するアミノ酸残基により最小繰り返し回数は相違する。この基本単位に4-フッ化プロリンを含む場合に、5回以上の繰り返し単位であれば、安定な三重らせん構造を形成できることが知られている(Sakakibara S. (1973) Biochem. Biophys. Acta, 303, 198-202)。

【0053】
-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数が、5回以上の場合に、コラーゲン様ペプチドは、安定な三重らせん構造を形成する。-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数が6回以上の場合に、コラーゲン様ペプチドは、さらに安定な三重らせん構造を形成する。-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数が7回以上の場合に、コラーゲン様ペプチドは、さらに安定な三重らせん構造を形成する。-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数が8回以上の場合に、コラーゲン様ペプチドは、さらに安定な三重らせん構造を形成する。-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数が9回以上の場合に、コラーゲン様ペプチドは、さらに安定な三重らせん構造を形成する。-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数が10回以上の場合に、コラーゲン様ペプチドは、さらに安定な三重らせん構造を形成する。-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数が11回以上の場合に、コラーゲン様ペプチドは、さらに安定な三重らせん構造を形成する。-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数が12回以上の場合に、コラーゲン様ペプチドは、さらに安定な三重らせん構造を形成する。

【0054】
したがって、本発明の重合ペプチドにおいて、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し回数は、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上又は10回以上の場合がある。

【0055】
本明細書と、本明細書に添付される配列表とにおいて、ペプチドの構造は、当業者に周知慣用のアミノ酸の3文字又は1文字による表記法で記述される。本明細書においてアミノ酸はL体である。本明細書のアミノ酸は、分子生物学で一般的なタンパク質の翻訳に用いられることが知られた20種類のL-アミノ酸の他、当該技術分野においてよく知られる修飾アミノ酸残基、例えば、4-ヒドロキシ-L-プロリン、4-フルオロ-L-プロリン及びN-イソブチル基グリシンを含む。本明細書において、ヒドロキシルプロリンは、3-ヒドロキシプロリン又は4-ヒドロキシ-L-プロリンであり、3文字表記で「Hyp」と、一文字表記で「O」と表される。

【0056】
本明細書のコラーゲン様ペプチドにおいて、ホモ三量体とは、同一の1次構造のペプチド3本からなる三量体をいう。またヘテロ三量体とは、同一の1次構造のペプチド2本と、該ペプチドとは異なる1次構造のペプチド1本とからなる三量体、又は、それぞれ異なる1次構造のペプチド3本からなる三量体をいう。

【0057】
本明細書において、変性温度とは、本明細書のコラーゲン様ペプチドが三重らせん構造の半量がランダムコイルに転移する温度をいう。変性温度は、例えば、円二色性スペクトル(CDスペクトル)測定による高次構造解析などの公知の方法により測定されるが(特許文献1及び2)、これに限定されない他の公知の方法によっても測定できる。

【0058】
本発明に係るコラーゲン様ペプチドの製造は、市販のアミノ酸を使用し、これに限定されない、公知のペプチドの化学合成法によって製造できる(特許文献1)。また、所望のアミノ酸配列をコードする核酸配列を製造し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを公知の方法で作製し、大腸菌等の微生物等の適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、遺伝子組み換えペプチド鎖が産生されるので、培養物から産生された遺伝子組み換えペプチド鎖を回収することにより、本発明で用いる遺伝子組み換えペプチド鎖を調製することができる。(特許文献2、EP1014176A2、US6992172、WO2004/85473、WO2008/103041等)。

【0059】
このようなペプチド鎖を、例えば、高速液体クロマトグラフィー等の分離手段を用いて分離精製して取得し、3本鎖ペプチドの製造に使用できる。

【0060】
また、このペプチド鎖は、製造又は精製した時点の水溶媒中で自己集合により三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドを形成する場合がある。あるいは、この化学合成で合成されたペプチド鎖、及び/又は、遺伝子工学的方法で製造されたペプチド鎖又は自己集合で形成された3本鎖ペプチドを、例えば、変性温度以上の温度の水等の溶媒に溶解させた後に冷却することにより、3本のペプチド鎖が自己集合し、らせん構造を有するペプチド三量体を形成する。これにより、コラーゲン様ペプチドを製造できる(特許文献1及び2)。

【0061】
本発明では、前記ペプチド鎖に複数のシステイン残基を組み込んだコラーゲン様ペプチドを製造し、これらに限定されない、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の酸化剤や空気酸化などで酸化架橋させることにより、コラーゲン様ペプチドがジスルフィド結合で架橋された重合ペプチドが提供される。本方法で製造されるコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドは、公知のコラーゲン様ペプチドと比較して、向上した強度を有し、また、水溶液中で加熱しても変性しない特性を付与できる。

【0062】
本発明の重合ペプチドを製造する際の酸化剤としては、上記DMSO以外にも、酸素、ヨウ素、過酸化水素、臭素酸ナトリウム(ブロム酸ナトリウム)、臭素酸カリウム、過ホウ素酸ナトリウム又は過ホウ素酸カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。

【0063】
本発明のジスルフィド結合による架橋形成の確認は、例えば、エルマン試薬で酸化的架橋反応後の残存チオール基を定量することにより可能である。

【0064】
さらに、本発明で水溶媒中で製造される重合ペプチドからなるヒドロゲルを、乾燥させることにより、以下に記載する、より強度が向上した重合ペプチド薄膜が提供される。

【0065】
2.生理活性を付与しない、又は付与したコラーゲン様ペプチドの重合体
前記ペプチド鎖に生理活性を有するモチーフを組み込む、及び/又は、ペプチド鎖の側鎖に生理活性を有するモチーフを有するペプチドを結合させることにより、該生理活性を有する重合ペプチド、該重合ペプチドを含有するゲル及び該重合ペプチドを含有する薄膜を製造することができる。コラーゲン様ペプチドに組み込むモチーフを選択することにより、天然のコラーゲンと相違し、所望の生理活性に選択的な生理活性を有する重合ペプチドを付与できる。また、これらの生理活性を有するペプチドを組み込まないことにより、生理活性を付与しないコラーゲン様ペプチドの重合体を製造できる。

【0066】
本態様の重合ペプチドは、以下の構成として説明される場合がある。
前記「1.コラーゲン様ペプチドの重合ペプチド」に記載の重合ペプチドであって、
前記ペプチド鎖は、
(i) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と少なくとも1つの架橋形成用ペプチド基からなるペプチド鎖、
(ii) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と少なくとも1つの架橋形成用ペプチド基、及び生理活性を有するモチーフを有する少なくとも1つのペプチド基を含むペプチド鎖、及び、
(iii) 少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と架橋形成用ペプチド基、及び、アミノ酸残基の側鎖にリンカーを介して生理活性を有するモチーフを結合させた少なくとも1つのペプチド基を含むペプチド鎖
からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、重合ペプチド。

【0067】
さらに、本態様の重合ペプチドの構成は、以下の構成として説明される場合がある。
前記重合ペプチドであって、
下記式(I)で表される3本のペプチド鎖から形成される三量体ペプチドの構造単位を有し、酸化架橋されてなることを特徴とする、重合ペプチド。
【化4】
JP0006455862B2_000005t.gif
[式(I)中、
A1, A2及び A3は、同一又は相違してもよく、それぞれ独立して下記式(II)で表されるペプチド鎖であり、
A1, A2及び A3は、三重らせん構造を有する三量体を形成し、各々のペプチド鎖に含まれるシステイン(Cys)残基によってジスルフィド結合で架橋されていてもよく、
該三量体は、前記Cysのジスルフィド結合で酸化架橋により重合される。
【化5】
JP0006455862B2_000006t.gif
(式(II)中、
R1及びR4は、各々アミノ末端及びカルボキシ末端であり、相互に独立して少なくとも2残基のCys残基を含む任意の2~10残基のアミノ酸残基からなるペプチド基であり、
Zは、
(i) -(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し構造のみからなるペプチド基、
(ii) -(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として繰り返す構造及び生理活性を有するモチーフを有するペプチド基、及び、
(iii) -(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として繰り返す構造を有し、かつ、該ペプチド鎖に含まれる少なくとも1残基のアミノ酸残基の側鎖にリンカーを介して生理活性を有するモチーフ配列を結合させてなるペプチド基、
からなる群から選択される少なくとも1つであり、
R2及びR3は独立して-(Xaa-Yaa-Gly)-を単位として連続して繰り返す構造を含むペプチド基であり、
-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し構造における繰り返し回数は、R2、Z及びR3の各々は0回以上であり、R2、Z及びR3で合計して3回以上であり、
mは1以上の整数である。)]

【0068】
本明細書において、「モチーフ」とは、種々のタンパク質のアミノ酸配列中に認められる小さい構造部分を指し、天然のタンパク質において局所的に非常に良く保存されているアミノ酸配列のことであり、それらのタンパク質の機能発現に関与するモチーフのアミノ酸配列をいい、「モチーフ配列」又は「配列モチーフ」と言われる場合がある。

【0069】
以下に、特定の生理活性を付与しない重合ペプチド、及び、特定の生理活性を付与した重合ペプチドに分けて説明する。

【0070】
(1)特定の生理活性を付与しないコラーゲン様ペプチドの重合ペプチド
本発明の態様の一つは、前記コラーゲン様ペプチドの重合体であって、特定の生理活性を付与しない重合ペプチドである。該特定の生理活性を付与しない重合ペプチドは、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し配列と、複数のCys残基を含むペプチド基からなるペプチド鎖によって構成され、該ペプチド鎖の3本が三重らせん構造を有するコラーゲン様ペプチドを形成し、該コラーゲン様ペプチドがジスルフィド結合で架橋重合された重合ペプチドであり、より具体的には以下に記載の構成を有する。

【0071】
前記「1.コラーゲン様ペプチドの重合体」に記載の構成を有する重合ペプチドであって、
前記ペプチド鎖は、
少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と少なくとも1つの架橋形成用ペプチド基からなるペプチド鎖であることを特徴とする。

【0072】
本発明の重合ペプチドを構成するコラーゲン様ペプチドは、ホモ三量体であってもよく、また、ヘテロ三量体であってもよい。

【0073】
本発明の重合ペプチドを含むゲル又は、特定の生理活性を付与していない所から、例えば、重合ペプチド薄膜を臓器の癒着防止用の医療材料、及び縫合材として使用できる。

【0074】
本発明の重合ペプチドを含むゲル又は重合ペプチド薄膜を臓器の癒着防止用の医療材料として使用する場合には、例えば、手術時に臓器と皮膚との間に、又は臓器と臓器の間に留置させることにより、臓器と皮膚や他の臓器との癒着を防止できる。留置された本発明の医療材料は、生体中に存在するペプチダーゼやマクロファージ等の貪食細胞により、徐々に可溶化又は分解され、消失するため、該医療材料を除去する再手術を必要としないため、患者の予後への負担が小さく、QOL(Quality of Life)を改善する。

【0075】
また、本発明の医療材料は、人工的に製造されたコラーゲン様ペプチドであるため、天然のコラーゲンと相違し、ウイルス感染や微生物感染の危険性が小さい。さらに、ジスルフィド結合で架橋されており加熱処理しても変性しないため、例えば、滅菌のために加熱することが可能である。

【0076】
(2)生理活性を有するモチーフを組み込んだペプチド鎖からなるコラーゲン様ペプチドの重合ペプチド
生理活性を有するモチーフを、前記ペプチド鎖に組み込む、又は前記一本鎖の側鎖にリンカーを介して結合させることにより、所望の生理活性有する、活性強度を調節した、及び/又は、複数の生理活性を組み合わせたコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドを製造できる。

【0077】
1) ペプチド鎖に生理活性を有するモチーフを組み込んだコラーゲン様ペプチドの重合体
生理活性を有するモチーフを組み込んだコラーゲン様ペプチドの重合体は、以下の構成を有する。
前記「1.コラーゲン様ペプチドの重合体」に記載の構成を有する重合ペプチドであって、
前記ペプチド鎖は、
少なくとも1つの前記三重らせん形成用ペプチド基と少なくとも1つの架橋形成用ペプチド基、及び生理活性を有するモチーフを有する少なくとも1つのペプチド基からなるペプチド鎖であることを特徴とする。

【0078】
前記重合ペプチドにおいて、
前記ペプチド鎖は、下記式(III)で表される場合がある。
【化6】
JP0006455862B2_000007t.gif
[式(III)中、
R5及びR6は、各々アミノ末端及びカルボキシ末端であり、相互に独立して少なくとも2残基のCys残基を含む任意の2~10残基のアミノ酸残基からなるペプチド基であり、
p、q及びrは、いずれも0以上の整数であり、p、q及びrの合計は3以上であり、sは1以上の整数である。]

【0079】
本発明の重合ペプチドを構成するコラーゲン様ペプチドは、ホモ三量体であってもよく、また、ヘテロ三量体であってもよい。

【0080】
前記重合ペプチドの発明において、前記生理活性は生体高分子に対する特異的な結合活性である場合がある。本明細書において、「生体高分子」とは、ヒトをはじめとした哺乳動物が有するタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、及びこれらの断片をいう。生体高分子に対する特異的な結合活性としては、コラーゲン受容体に対する各種細胞の接着又は結合活性、並びに、フィブロネクチンに対する各種細胞の接着又は結合活性などをいうが、これらに限定されない。生体高分子に対する特異的な結合活性は、細胞膜に存在する各種受容体に選択的に結合するリガンドが有する特定のモチーフが知られている。

【0081】
モチーフとしては、例えば、インテグリン、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)又はヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)から選択されるコラーゲン受容体に対する結合モチーフをペプチド鎖の製造時に組み込むことにより、該結合モチーフに選択的な結合活性を有する受容体選択的な細胞接着性が付与され研究材料又は医療材料を提供できる。

【0082】
上記以外の「モチーフ」としては、VWFモチーフ、SPARC/BM-40/osteonectinモチーフ、aegyptinモチーフ、LAIR-1モチーフ、GPVIモチーフ、PEDFモチーフ、Hsp47モチーフ、HLAモチーフ、HLAスーパーモチーフ、ジンクフィンガーC2H2型モチーフ、チトクロームb(N-末端)/b6/petBモチーフ、免疫グロブリンドメインモチーフ、WDドメインG-βリピートモチーフ、PDZドメインモチーフ、ロイシンリッチリピートモチーフ、プロテインキナーゼドメインモチーフ、PHドメインモチーフ、EGF様ドメインモチーフ、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)モチーフ、Ankリピートモチーフ、NADH-ユビキノン/プラストキノン(複合体I)モチーフ、EFハンドモチーフ、レトロウイルスアスパルチルプロテアーゼモチーフ、7回膜貫通型レセプター(ロドプシンファミリー)モチーフ等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0083】
また、細胞接着モチーフとして具体的には、例えば、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の各配列を挙げることができる。

【0084】
選択的な生理活性として、選択的な細胞接着性を本発明の重合ペプチドに付与する場合、本生理活性の対象となる細胞としては、上記モチーフを結合リガンドとして結合する受容体を有する細胞であり、具体的には、例えば、線維芽細胞、肝細胞、未分化軟骨細胞、筋細胞、血小板、好中球、マクロファージ、シュワン細胞、ケラチノサイト又は上皮細胞などの細胞が挙げられる。

【0085】
さらに、上記以外のモチーフとして、例えば、PROSITE(http://www.expasy.ch/prosite/)及びPRINTS(http://bioinf.man.ac.uk/dbbrowser/PRINTS/PRINTS.html)に収録されているモチーフを使用することができる。

【0086】
前記インテグリンに対する結合モチーフは-Gly-Phe-Hyp-Gly-Glu-Arg-、ジスコイジンドメイン受容体に対する結合モチーフは-Gly-Val-Met-Gly-Phe-Hyp-、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに対する結合モチーフは-Lys-Gly-His-Arg-Gly-Phe-が挙げられるが、これに限定されない。

【0087】
さらに、本発明の重合ペプチドを所望の選択的活性を有する研究用の基材として使用する場合には、該基材に結合する細胞の細胞内情報伝達系のメカニズムの解明などを目的とした研究に使用できる。

【0088】
また、医療材料として使用する場合には、例えば、創傷部位、手術時の術創又は角膜や網膜上に、本発明の重合ペプチドを含むゲル又は重合ペプチド薄膜を留置させて使用することができる。ゲル又は重合ペプチド薄膜は、例えば、線維芽細胞の細胞膜上に存在する受容体が結合活性を有する前記結合モチーフを組み込むことにより、創傷部位又は術創への線維芽細胞の遊走と結合を亢進し創傷又は術創の治癒を促進させる創傷治療促進用に、又は角膜や網膜再生用の医療材料として使用できる。

【0089】
2)ペプチド鎖の側鎖にリンカーを介して生理活性を有するモチーフを結合させたコラーゲン様ペプチドの重合体
ペプチド鎖の側鎖にリンカーを介して生理活性を有するモチーフを結合させたコラーゲン様ペプチドの重合体は、以下の構成を有する。
前記「1.コラーゲン様ペプチドの重合体」に記載の構成を有する重合ペプチドであって、
前記ペプチド鎖は、
-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として繰り返す構造を有し、かつ、該ペプチド鎖に含まれる少なくとも1残基のアミノ酸残基の側鎖にリンカーを介して生理活性を有するモチーフを結合させてなるペプチド基である場合がある。

【0090】
前記重合ペプチドの発明において、
前記ペプチド鎖は、下記式(III)で表される場合がある。
【化7】
JP0006455862B2_000008t.gif
[式(III)中、
R5及びR6は、各々アミノ末端及びカルボキシ末端であり、相互に独立して少なくとも2残基のCys残基を含む任意の2~10残基のアミノ酸残基からなるペプチド基であり、
p、q及びrは、いずれも0以上の整数であり、p、q及びrの合計は3以上であり、sは1以上の整数である。]

【0091】
本発明の重合ペプチドを構成するコラーゲンペプチドは、ホモ三量体であってもよく、また、ヘテロ三量体であってもよい。

【0092】
前記重合ペプチドの発明において、
前記生理活性は生体高分子に対する特異的な結合活性である場合がある。

【0093】
本発明において、前記モチーフとして、例えば、フィブロネクチンのインテグリンに対する結合モチーフを、ペプチド鎖の製造時又は重合ペプチド製造後に組み込む又は結合させることにより、該モチーフに選択的な結合活性を有する受容体選択的な細胞接着性が付与された研究材料又は医療材料を提供できる。

【0094】
フィブロネクチン由来のインテグリンαvβ3に対する結合モチーフとしては、-Arg-Gly-Asp-が挙げられるが、これに限定されない。

【0095】
上記以外の「モチーフ」としては、VWFモチーフ、SPARC/BM-40/osteonectinモチーフ、aegyptinモチーフ、LAIR-1モチーフ、GPVIモチーフ、PEDFモチーフ、Hsp47モチーフ、HLAモチーフ、HLAスーパーモチーフ、ジンクフィンガーC2H2型モチーフ、チトクロームb(N-末端)/b6/petBモチーフ、免疫グロブリンドメインモチーフ、WDドメインG-βリピートモチーフ、PDZドメインモチーフ、ロイシンリッチリピートモチーフ、プロテインキナーゼドメインモチーフ、PHドメインモチーフ、EGF様ドメインモチーフ、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)モチーフ、Ankリピートモチーフ、NADH-ユビキノン/プラストキノン(複合体I)モチーフ、EFハンドモチーフ、レトロウイルスアスパルチルプロテアーゼモチーフ、7回膜貫通型レセプター(ロドプシンファミリー)モチーフ等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0096】
また、細胞接着モチーフとして具体的には、例えば、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の各配列を挙げることができる。

【0097】
選択的な生理活性として、選択的な細胞接着性を本発明の重合ペプチドに付与する場合、本生理活性の対象となる細胞としては、上記モチーフを結合リガンドとして結合する受容体を有する細胞であり、具体的には、例えば、線維芽細胞、肝細胞、未分化軟骨細胞、筋細胞、血小板、好中球、マクロファージ、シュワン細胞、ケラチノサイト、上皮細胞などの細胞が挙げられるがこれらに限定されない。

【0098】
さらに、上記以外のモチーフとして、例えば、PROSITE(http://www.expasy.ch/prosite/)及びPRINTS(http://bioinf.man.ac.uk/dbbrowser/PRINTS/PRINTS.html)に収録されているモチーフを使用することができる。

【0099】
所望の選択的活性を有する研究材料として使用する場合には、該材料に接着する細胞の細胞内情報伝達系のメカニズムの解明などに使用できる。

【0100】
また、医療材料として使用する場合には、例えば、創傷部位又は手術時の術創に、本発明の重合ペプチドを含むゲル又は重合ペプチド薄膜を留置させて使用することができる。ゲル又は重合ペプチド薄膜は、例えば、線維芽細胞の細胞膜上に存在する受容体が結合活性を有する結合モチーフを組み込むことにより、創傷部位又は術創への線維芽細胞の遊走と結合を亢進し、創傷又は術創の治癒を促進させる創傷治癒促進用の医療材料として使用できる。

【0101】
3)複数の種類の生理活性モチーフを組み込んだ、又は結合させた重合ペプチド
本発明の態様として、前記の生理活性モチーフを組み込んだペプチド鎖及び/又は前記の生理活性モチーフを結合させたペプチド鎖を組み合わせて使用することにより、それぞれの生理活性を選択的に組み合わせた活性を有し、各活性の活性強度を所望の割合に調整した重合ペプチドが挙げられる。

【0102】
この組み合わせ活性を有する重合ペプチドは、それぞれの活性を有するコラーゲン様ペプチドを所望の活性となるように、混合比を調整して混合した後、酸化的架橋で重合させることにより所望の活性を有する重合ペプチドを製造できる。この重合ペプチドを用い、上記の製造方法により、この重合ペプチドを含むゲル及び重合ペプチド薄膜を作製することができる。

【0103】
本態様において、組み合わせて使用する生理活性を有するモチーフとしては、インテグリンに対する結合モチーフ、ジスコイジンに対する結合モチーフ、ヘパラン硫酸に対する結合モチーフ及びRGDモチーフなどが挙げられるが、これらに限定されない。

【0104】
これらのモチーフとしては、例えば、インテグリン、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)又はヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)から選択されるコラーゲン受容体に対する結合モチーフ、又はフィブロネクチンのRGDモチーフを、ペプチド鎖の製造時又は重合ペプチド製造後に組み込むことにより、該結合モチーフに選択的な結合活性を有する受容体選択的な細胞接着性が付与された研究材料又は医療材料を提供できる。

【0105】
上記以外の「モチーフ」としては、VWFモチーフ、SPARC/BM-40/osteonectinモチーフ、aegyptinモチーフ、LAIR-1モチーフ、GPVIモチーフ、PEDFモチーフ、Hsp47モチーフ、HLAモチーフ、HLAスーパーモチーフ、ジンクフィンガーC2H2型モチーフ、チトクロームb(N-末端)/b6/petBモチーフ、免疫グロブリンドメインモチーフ、WDドメインG-βリピートモチーフ、PDZドメインモチーフ、ロイシンリッチリピートモチーフ、プロテインキナーゼドメインモチーフ、PHドメインモチーフ、EGF様ドメインモチーフ、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)モチーフ、Ankリピートモチーフ、NADH-ユビキノン/プラストキノン(複合体I)モチーフ、EFハンドモチーフ、レトロウイルスアスパルチルプロテアーゼモチーフ、7回膜貫通型レセプター(ロドプシンファミリー)モチーフ等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0106】
また、細胞接着モチーフとして具体的には、例えば、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の各配列を挙げることができる。

【0107】
選択的な生理活性として、選択的な細胞接着性を本発明の重合ペプチドに付与する場合、本生理活性の対象となる細胞としては、上記モチーフを結合リガンドとして結合する受容体を有する細胞であり、具体的には、例えば、線維芽細胞、肝細胞、未分化軟骨細胞、筋細胞、血小板、好中球、マクロファージ、シュワン細胞、ケラチノサイト、上皮細胞などの細胞が挙げられるがこれらに限定されない。

【0108】
さらに、上記以外のモチーフとして、例えば、PROSITE(http://www.expasy.ch/prosite/)及びPRINTS(http://bioinf.man.ac.uk/dbbrowser/PRINTS/PRINTS.html)に収録されているモチーフを使用することができる。

【0109】
3.本発明のコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドを含むゲル化剤、ゲル、ヒドロゲル及び重合ペプチド薄膜
前記重合ペプチドは、水溶媒中で製造される場合に、本発明の重合ペプチドと水とのヒドロゲルとして製造され、即ち、本発明の重合ペプチドは、ゲル化剤としての用途を有する。

【0110】
また、本発明の前記ヒドロゲルは、手術後の臓器の癒着防止剤、止血剤、創傷治癒促進剤及び角膜や網膜再生用材料等の再生医療材料として使用できる。

【0111】
さらに、前記ヒドロゲルは、乾燥させることにより、シート状のフィルムである重合ペプチド薄膜を製造できる。この重合ペプチド薄膜は、例えば、用時に再水和して、前記の創傷治癒促進用材料、人工角膜や人工心筋膜などの体内に移植可能な細胞シート等の再生医療材料として使用できる。

【0112】
本発明の重合ペプチド薄膜は、乾燥前の重合ペプチドからなるヒドロゲルと比較して、乾燥させることにより、室温下で長期間保存可能であり、かつ、ペプチド分子間の相互作用が変化し、再水和しても、元のヒドロゲルと比較して、より強い強度が付与される。そこで、本発明の重合ペプチド薄膜は、強度がより改良され、加熱滅菌可能な加熱耐性の医療用材料として使用できる。

【0113】
本発明のゲルは、前記3本鎖ペプチドがヘテロ三量体として、三重らせん構造を形成後、酸化剤で酸化重合させてゲル化して製造することにより、又は、前記3本鎖ペプチドがホモ三量体として、三重らせん構造を形成後、複数の種類のホモ三量体を混合後に酸化剤で酸化重合させてゲル化して製造することにより、少なくとも1種以上のペプチド鎖を含むゲルを製造することができる。

【0114】
上記、複数種類のホモ三量体を架橋重合させたゲルの作製を、より詳細に記載すると、前記3本鎖ペプチドを重合単位として、複数種類の3本鎖ペプチドを混合し、酸化剤で架橋重合させてゲル化して製造されるゲルである場合がある。

【0115】
この複数種類の3本鎖ペプチドより構成されるゲルは、例えば、ゲルの硬さを制御するためのペプチド鎖から構成される3本鎖ペプチド、及び、生理活性モチーフを有するペプチド鎖から構成される3本鎖ペプチドを組み合わせて、ゲルの硬さ(stiffness)の制御、及び/又は、生理活性の発現を調整することができる。

【0116】
本明細書において、「ゲルの硬さ(stiffness)」とは、生体内において、例えば、マクロファージ等の貪食細胞による分解に対するゲルの堅牢さを言う。このゲルの硬さは、ゲルの架橋重合の程度や架橋されたペプチド鎖の枝分かれ構造の相違等によって影響を受ける。例えば、ジスルフィド結合による架橋がゲル中に多く含まれると硬いゲルが形成される。

【0117】
前記複数種類の3本鎖ペプチドに使用される1本鎖ペプチドとしては、例えば、ゲルの硬さを制御するために、1本鎖ペプチドに含まれるシステイン残基の数が相違するペプチド鎖が挙げられる。例えば、1本のペプチド鎖のN末端側とC末端、又はその近傍に、それぞれに3個のシステインを含むペプチド鎖、2個のシステインを含むペプチド鎖、1個のシステインを含むペプチド鎖を組み合わせて、各ペプチド鎖毎に加熱後徐冷することによりそれぞれのペプチド鎖から構成される三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドを形成し、これらの3本鎖ペプチドを所定の比率で混合し、その後、酸化剤により架橋重合させ、ゲル化させることにより多機能の重合ペプチドを含有するゲルを製造し、使用することができる。

【0118】
システイン残基を多く含むペプチドを高い割合で配合して作製した重合ペプチドのゲルは、生体内で生分解性が遅くなる傾向を認め、一方、システイン残基が少ないペプチドを高い割合で配合して作製した重合ペプチドを含むゲルは、より速い生分解性を示す。

【0119】
また、異なるシステイン残基数を組み合わせたゲルを使用することにより、ペプチド鎖が有する生理活性モチーフの活性発現強度を調整でき、したがって、ゲル中に含まれる架橋度を調整することにより、本発明のゲルの硬さ及び生理活性の発現強度を制御できるものと考えられる。

【0120】
例えば、本発明のゲルにおいて、N末端とC末端の両方の近傍にシステイン残基を各3個ずつ、2個ずつ又は1個ずつを含むペプチド鎖を使用して、システイン残基を両末端に3個ずつ含むペプチド鎖とシステイン残基を2個ずつ又は1個ずつを含むペプチド鎖と組み合わせて、システイン残基を両末端に各2個ずつを含むペプチド鎖の配合比率が質量比として、10%以下の場合に、また、システイン残基を1個ずつを含むペプチド鎖の配合比率が質量比として、70%未満、好ましくは、50%以下を含有するゲルを製造することにより、医療材料として使用できる。

【0121】
さらに、例えば、N末端とC末端の両方の近傍にシステイン残基を2個ずつ又は1個ずつを含むペプチド鎖を使用して、これらを組み合わせる場合には、ゲル中のシステイン残基をペプチド鎖の各末端に1個ずつ含むペプチド鎖の配合比率が質量比として30%未満、好ましくは10%以下を含有する重合ペプチドを含むゲルを製造して、使用できる。これらのペプチド鎖は、システイン残基を含まないペプチド鎖も、システイン残基を有するペプチド鎖と組み合わせることにより使用できる。

【0122】
前記のN末端とC末端の両方の近傍にシステイン残基を3個、2個又は1個を含むペプチド鎖の例として、CCC2-GPOGPR (short)(配列番号15)、CC2-GPOGPR (short)(配列番号23)、C2-GPOGPR (short)(配列番号24)等が挙げられる。

【0123】
また、システイン残基を含まないペプチド鎖の例として、Soluble GFOGER (配列番号19)、Soluble GVMGFO (配列番号20)、Soluble KGHRGF (配列番号21)、及びSoluble GPOGPR (short)(配列番号25)等が挙げられる。

【0124】
さらに、このゲルの硬さを制御するペプチド鎖から構成される3本鎖ペプチドの組み合わせに、生理活性モチーフを有するペプチド鎖から構成される3本鎖ペプチドを組み合わせて混合し、上記の方法で重合ペプチドを形成することにより、この重合ペプチドが有する生体内でのゲルの硬さの制御と、生理活性の種類とその発現強度とを制御した多機能な重合ペプチドを製造できる。そして、この重合ペプチドの硬さ、及び/又は、生体内での活性発現モチーフの種類と量とを調整することにより、例えば、生体内移植後の生分解速度を調整又は制御することができる。

【0125】
したがって、本発明のゲルを所望とする用途にしたがって、各種のペプチド鎖を使用した重合ペプチドを含有するゲルを製造できる。すなわち、例えば、人工血管等、生分解性を受けない方が良い人工臓器の材料には、システイン残基を多く含む組成のペプチドを多く配合してゲルを作製し、一方、手術後の臓器癒着防止材や創傷治癒促進剤等の所定の期間生体に残留後は生分解を受けた方が良い材料に関しては、システイン残基の配合を少なくして本発明の重合ペプチドを含有するゲルを製造する。

【0126】
4.本発明のコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドを含む再生医療用材料
本発明の重合ペプチドは、前記に説明のとおり、所望の生理活性を有するモチーフを組み込む又はリンカーを介して結合させることにより、選択的な生理活性を有するゲル、ヒドロゲル又は重合ペプチド薄膜を製造することができる。あるいは、生理活性を有するモチーフを組み込まない又は結合させないことにより、特段の生理活性を有さない、換言すれば、生体で刺激性が小さく、安全性の高いゲル、ヒドロゲル又は重合ペプチド薄膜を製造することができる。

【0127】
本発明の重合ペプチドを含むゲル、ヒドロゲル又は重合ペプチド薄膜において、選択的生理活性を付与した重合ペプチドは、例えば、前記のコラーゲン受容体に対する結合モチーフをペプチド鎖に組み込む又は結合させることにより、該ゲル、ヒドロゲル又は重合ペプチド薄膜にコラーゲン受容体を有する細胞に選択的な結合活性を付与できる。

【0128】
これらのヒドロゲル又は重合ペプチド薄膜を足場として、選択的な結合活性を有する細胞が集積し、これらの細胞が放出するサイトカインやケモカインの活性等により、ヒドロゲル又は重合ペプチド薄膜を留置した位置の周囲の組織及び/又は細胞に、例えば、創傷治癒促進効果等の生理活性を付与することができる。

【0129】
そこで、例えば、血小板、線維芽細胞及び/又は角膜細胞に選択性の高い医療材料、好ましくは、再生医療用材料、さらに好ましくは、創傷治癒促進用再生医療材料として、使用できる。血小板及び/又は線維芽細胞の本発明の医療材料に足場として選択的に結合することにより、これらの細胞からサイトカイン及び/又はケモカインが放出され、創傷治癒等の組織再生が促進されることが期待される。

【0130】
結合モチーフとして、例えば、インテグリン、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)若しくはヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)から選択されるコラーゲン受容体に対する結合モチーフ、又はフィブロネクチン由来のインテグリンαvβ3に対する結合モチーフが挙げられる。

【0131】
より具体的には、インテグリンに対する結合モチーフは-Gly-Phe-Hyp-Gly-Glu-Arg-、ジスコイジンドメイン受容体に対する結合モチーフは-Gly-Val-Met-Gly-Phe-Hyp-、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに対する結合モチーフアミノ酸配列は-Lys-Gly-His-Arg-Gly-Phe-が使用可能であり、フィブロネクチン由来のインテグリンαvβ3に対する結合モチーフは-Arg-Gly-Asp-が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0132】
以下に、本実施例で使用される略号を記載する。
アミノ酸残基(全てL体)
Arg(R):アルギニン
Asp(D):アルパラギン酸
Cys(C):システイン
Gln(Q):グルタミン
Glu(E):グルタミン酸
Gly(G):グリシン
His(H):ヒスチジン
Hyp(O):4-ヒドロキシプロリン
Lys(K):リジン
Pro(P):プロリン
Tyr(Y):チロシン
Ile(I):イソロイシン
Leu(L):ロイシン
Met(M):メチオニン
Phe(F):フェニルアラニン
Ser(S):セリン
Val(V):バリン
【実施例】
【0133】
保護基
Fmoc: 9-フルオレニルメトキシカルボニル
tBu: tert-ブチル
Trt:トリフェニルメチル(トリチル)
Pbf: 2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル
Boc: tert-ブトキシカルボニル
【実施例】
【0134】
レジン
CTC:塩化2-クロロトリチル
【実施例】
【0135】
試薬
BCA:ビシンコニン酸
BSA:ウシ血清アルブミン
CHCA:α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸
DCM:ジクロロメタン
DIC: N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA: N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP: N,N-ジメチルアミノピリジン
DMF: N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
DTNB: 5,5'-ジチオビス-2-ニトロ安息香酸
DTT:ジチオトレイトール
EDT:エタンジチオール
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FBS:ウシ胎児血清
HOBt: 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
MeCN:アセトニトリル
MeOH:メタノール
MOPS: 3-モルホリノプロパンスルホン酸
NEM: N-エチルマレイミド
PBS:リン酸緩衝液
PMSF:フェニルメチルスルホニルフルオリド
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
TBS:トリス緩衝生理食塩水
TFA:トリフルオロ酢酸
TMSO:テトラメチレンスルホキシド
【実施例】
【0136】
機器
RP-HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー
MALDI-TOF-MS:マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計
【実施例】
【0137】
その他
CD:円偏光二色性
DDR:ジスコイジンドメイン受容体
ECM:細胞外マトリックス
FAK:接着斑キナーゼ (focal adhesion kinase)
HDF:ヒト皮膚線維芽細胞
HRP:ホースラディッシュペルオキシダーゼ
HSPG:ヘパラン硫酸プロテオグリカン
PEDF:色素上皮由来因子
SDS-PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
vWF:フォン・ビルブランド因子
【実施例】
【0138】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例1】
【0139】
<一本鎖ペプチドの製造>
材料及び方法
ペプチド合成
本実施例で下記表1に記載の配列番号1~22のペプチドを固相合成し、使用する。
【実施例1】
【0140】
【表1】
JP0006455862B2_000009t.gif
【実施例1】
【0141】
表1において、アミノ酸配列は、当業者に慣用の1文字表記で表される。ただし、「O」は、4-ヒドロキシプロリン残基を表し、「Ac-」はアセチル化されたN末端を、「-NH2」はアミド化されたカルボキシ末端を、「βA」はβ‐アラニン残基を表す。
【実施例1】
【0142】
ペプチド鎖は、三重らせん構造を形成する-(Xaa-Yaa-Gly)-の基本単位の10~17回の繰り返し配列を有する。この基本配列のNC両末端又はその近傍にCys残基を組み込み、側鎖のチオール基(-SH)の酸化によってジスルフィド架橋(-S-S-)を形成させることで重合化する設計とした。表1中の、配列番号12、16及び19のGFOGER、配列番号13、17及び20のGVMGFO並びに配列番号14、18及び21のKGHRGFはそれぞれインテグリン受容体、ジスコイジン受容体(DDR)、ヘパラン硫酸プロテオグリカン受容体(HSPG)のコラーゲン結合モチーフである。なお、RGQOGVMGFO及びKGHRGFSGLはそれぞれvWFとPEDFの結合モチーフである。また、Cys残基を持たないY2(配列番号8)、及び(Pro-Hyp-Gly)の繰り返し配列をもたないためにランダムコイル構造となると考えられるYCC2-Scrを設計した(配列番号9)。
【実施例1】
【0143】
Fmoc化されたアミノ酸、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Pro-OH及びFmoc-Tyr(tBu)-OHはNovabiochem(Merck Millipore Corporation、米国)より購入した。また、Wang resinもNovabiochemより購入した。他の試薬は、市販の特級品以上のグレードのものを使用した。CTC resinは株式会社ペプチド研究所(大阪)より購入した。Ellman試薬の作製は、DTNBを 50 mMのリン酸緩衝液 (pH8.4) に 9 mg/mlとなるように溶解した。
【実施例1】
【0144】
実験に使用した器具及び装置
固相合成にはPD-10 empty column (GE Healthcare、米国) 又はLibra Tube (株式会社ハイペップ研究所、京都)を用いた。ペプチドの分析にはHPLC C20A シリーズ(株式会社島津製作所、京都)を用い、カラムはCOSMOSIL 5C18 AR-II (ナカライテスク株式会社、京都)を用いた。ペプチドの精製にはLC 2000 Plus シリーズ(日本分光株式会社、東京)を用い、カラムはCOSMOSIL 5C18 AR-II (ナカライテスク株式会社)又はCadenza CD-C18 (インタクト株式会社、京都)を用いた。ペプチドの質量分析にはAutoflex-III (Bruker Corporation、ドイツ)を用いた。ペプチドのCDスペクトル測定には円二色性分散計J-820 (日本分光株式会社)を用いた。Fmoc基のUV吸光度測定には紫外可視分光光度計V-630 (日本分光株式会社)を用いた。ペプチドのリフォールディングの温度制御にはTaKaRa Thermal Cycler (タカラバイオ株式会社、滋賀)を用いた。ゲル形成の判定にはステンレス球(直径1.5 mm、有限会社舟辺精工、兵庫)を用いた。細胞培養皿にはNunc Cell-Culture/Petri Dishes (9 cm ディッシュ)、Nunc MicroWell 96-Well Microplates (96 ウェルプレート)、Nunc Cell-Culture Treated Multidishes (6 ウェルプレート) (Thermo Fisher Scientific, Inc.、米国)を用いた。細胞の観察にはレーザー走査型共焦点顕微鏡FV1000 (オリンパス株式会社、東京)を用いた。ウエスタンブロッティングの可視化にはLAS-3000 (富士フィルム株式会社、東京)を用いた。
【実施例1】
【0145】
固相合成用によるペプチド鎖の調製
ペプチドは、当業者に慣用のFmoc合成法(特開2005-263784号公報)により、合成した。
【実施例1】
【0146】
RP-HPLCによるペプチドの精製
ペプチドの精製にはRP-HPLC (LC 2000 Plusシリーズ、日本分光株式会社)を用いて、0.05% (v/v) TFA-H2Oと0.05% (v/v) TFA-MeCNの直線濃度勾配により溶出させた。カラム径を20 mm、カラム温度を60℃、流速を5 ml/分、検出波長を220 nmとした。カラムはCOSMOSIL 5C18 AR-II (ナカライテスク株式会社)又はCadenza CD-C18 (インタクト株式会社)を用いた。
【実施例1】
【0147】
ペプチドのRP-HPLCによる純度分析及びその結果
合成したペプチドを精製した後、その純度を確かめるためにRP-HPLC により分析した。ペプチドは移動相に0.05% TFA/H2O と0.05% TFA/MeCN を用いた直線濃度勾配により溶出させ、Soluble KGHRGF の分析時の濃度勾配は0.05% TFA/MeCN 0~30%/30分、30~90%/5分とし、その他のペプチドの分析時の濃度勾配は0.05% TFA/MeCN 10~40%/30min、40~90%/5分とした。また、カラム温度は60℃、測定波長は220nm とした。
【実施例1】
【0148】
YCC2、CC2、CC1及びC2の各ペプチドのRP-HPLC分析の結果を図2A~図2Dに示す(他のペプチドのRP-HPLC分析の結果は非提示)。また、各ペプチドの保持時間を表2に示した。
【表2】
JP0006455862B2_000010t.gif
【実施例1】
【0149】
ペプチドの質量分析結果
合成し、精製した上記の各ペプチドの質量分析をMALDI-TOF MSにより行った。各ペプチドの質量の計算値と実測値を表3に示す。測定サンプルを調製するときのマトリックスにはCHCAを用いた。この結果から、すべてのペプチドは目的としたペプチドであることが確認された。
【実施例1】
【0150】
【表3】
JP0006455862B2_000011t.gif
【実施例2】
【0151】
<コラーゲン様ペプチドにおける三重らせん構築の評価>
ペプチドのコンフォメーションの確認による三重らせん構造の確認
ペプチドの構造をCDスペクトル(円二色性分散計J-820、日本分光株式会社)により確認した。ペプチド粉末を、脱気した0.05% TFA/H2Oに溶解し、1 mg/mlの溶液を調製した。80℃で5分間加熱後、4℃にて一晩静置してリフォールディングさせた溶液を測定サンプルとして調製した。CDスペクトルは、温度4、37、80℃、セル長0.05 cm、感度standard (100 mdeg)、測定波長250~190 nm、データ取り込み間隔0.2 nm、走査速度50 nm/分、レスポンス0.5秒、バンド幅1 nm、積算回数4回の条件で測定した。得られたシグナル(θobs)を残基平均モル楕円率(θmrw)として示した。θmrwを以下の式により算出した。
【実施例2】
【0152】
【数1】
JP0006455862B2_000012t.gif
(式中、mrwは残基平均分子量を、cはペプチド濃度(mg/ml)を、lはセル長(cm)を示す。)
【実施例2】
【0153】
三重らせん構造の熱安定性は温度変化に伴うθmrw, 225をモニターすることで確認した。測定条件は、4~75℃又は4~90℃、セル長0.05 cm、測定波長225 nm、データ取り込み間隔0.5℃、温度勾配18℃/時間、感度standard (100 mdeg)、レスポンス2秒、バンド幅1 nmであった。シグナルが線形的に減少している領域では三重らせん構造は完全にランダムコイル化していると判定した。
【実施例2】
【0154】
ペプチドのCDスペクトル測定結果
合成したそれぞれのペプチドについて、4℃、37℃及び80℃におけるCDスペクトルを測定した結果を図3A~図3Gに示す。また、YCC2及びYCC2-Scrについて、225 nmのCDスペクトル強度(θ225)の温度変化測定を行った結果を図4A及び図4Bに示す。これらの測定結果から、YCC2-Scrを除くすべてのペプチドが4℃及び37℃においてのみ225 nm付近で正のコットン効果を示したため、37℃以下で三重らせん構造を形成しており、80℃では変性状態であることが確認された。C2のCDスペクトル測定は未実施であるが、同様の三重らせん骨格を有するすべてのペプチドにおいて三重らせん形成が見られたことから、C2も同様に三重らせんを形成していると考えられた。一方、YCC2-Scrは測定したすべての温度において225 nm付近に正のコットン効果が見られた。225 nmにおけるθ225の温度変化測定の結果より、CC2では75℃付近で熱変性が起こっている様子が観察された一方、YCC2-Scrでは1次関数的な減衰が見られた。これらのことから、YCC2-Scrを除くコラーゲン様ペプチドは末端配列及び内部配列によらず三重らせんを形成しており、YCC2-Scrは三重らせん構造は形成しないものの、ポリプロリンII型の立体構造をとっていると考えられた。
【実施例3】
【0155】
<コラーゲン様ペプチドの重合によるゲル形成とその特性の評価>
上記三重らせん構造を有するペプチドを、酸化剤であるDMSOで酸化架橋させることにより、コラーゲン様ペプチドを重合させた重合ペプチドからなるゲルを作製した。残存チオール基を測定することにより、酸化的架橋による重合反応の進行を確認した。
【実施例3】
【0156】
コラーゲン様ペプチドの酸化的重合反応における残存チオール基の測定
脱気した水を用いて、1.11% (w/v)濃度のペプチド溶液を調製し、PCRチューブに入れた。これを80℃で5分間加熱後、4℃で一晩静置した。この溶液にDMSOを加えて終濃度10% DMSO、ペプチド1% (w/v)のペプチド溶液を調製した。表面を覆うようにミネラルオイルを充填した。ペプチド溶液から測定毎にミネラルオイルを取り除いて酸化モニター用のペプチド溶液を調製した。エルマン試薬は、DTNBを50 mM リン酸緩衝液(pH8.4)に9 mg/mlとなるように調製した。最終濃度が、ペプチド0.167 mg/ml、33 mM リン酸緩衝液(pH8.4)、Ellman試薬1.5 mg/mlの条件で5分間静置した後に吸光度を測定した。DMSOを加えた時間を始点(0時間)として時間経過に伴う吸光度の変化を記録した。Ellman試薬はペプチドのもつチオール基(以下「SH基」と記載)の量に依存して5-メルカプト-2-ニトロ安息香酸(λmax = 412 nm、ε = 1.55×104)を生成するため、412 nmにおける吸光度を測定した。測定後、997 nmと900 nmにおける吸光度を測定して光路長補正を行った。
【実施例3】
【0157】
0時間の各ペプチドのSH量を100%としたとき、時間経過に伴うSH量の割合の変化を図5に示す。CCCC2は12時間で、CCC2は24時間で、CC2及びYCC2は74時間でゲル化した。そのため、それ以降の時間帯の定量データは測定していない。SH量のパーセント減少速度は各ペプチドでほぼ同様であった。また、74時間経過でゲル形成しないCC1及びYCC2-ScrのSH量の割合は約0%であった。以上の結果から、74時間を経過した時点で、多くのペプチドの酸化は、ほぼ100%完了していることが示された。なお、3日経過した時点で、ゲルを形成しないサンプルは、ゲル化しないペプチドであると判定した。
【実施例3】
【0158】
コラーゲン様ペプチドの重合ペプチドヒドロゲルの作製とその安定性の評価
脱気した水を用いて、1.11% (w/v)又は1.66% (w/v)濃度のペプチド溶液を調製し、PCRチューブに入れた。これをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)機(TaKaRa PCR Thermal Cycler、タカラバイオ株式会社)にて80℃で5分間加熱後、4℃で一晩静置した。この溶液にDMSO及び水を加えて10% DMSO、0.1~1.5% (w/v)濃度のペプチド溶液を調製した。液面を覆うようにミネラルオイルを充填し、室温で一定時間静置してゲル化した。その後、ステンレス球をゲルに保持できるかどうかでゲル形成を判定した。
【実施例3】
【0159】
ペプチド鎖の配列変化によるゲル化能の評価結果
各ペプチドの1% (w/v)濃度でのゲル形成能を評価した結果を図6に示す。白色矢印はステンレス球の位置を示す。この結果から、N末端及びC末端の両側近傍にCys残基を2つ以上もつゲルではゲル形成が観察された(CC2と、CC1及びC2とを参照)。また、ランダムコイル構造を有するペプチドではゲルが形成されなかった(YCC2とYCC2-Scrとを参照)。このことから、ゲル形成に三重らせん構造が重要であることが示された。また、1% (w/v)でのゲル形成に要した時間を表4に示す。
【実施例3】
【0160】
【表4】
JP0006455862B2_000013t.gif
【実施例3】
【0161】
以上の結果から、Cys残基を多く含むペプチドほどゲル形成時間が短いことが示された。また、ゲル化可能なペプチドは、CCCC2、CCC2、CC2及びYCC2であることが示された。
【実施例3】
【0162】
ペプチド濃度のゲル化への影響評価結果
1% (w/v)濃度においてゲル化したペプチド(CCCC2、CCC2、CC2及びYCC2)を用いて、室温、3日間の酸化条件下でのゲル化必要濃度を評価した結果を表5に示す。
【実施例3】
【0163】
【表5】
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【実施例3】
【0164】
CCCC2、CCC2、CC2及びYCC2の順番で、ゲル形成能が高いとの結果を示した。また、CCCC2は0.3% (w/v)の濃度でもゲル化した。
【実施例3】
【0165】
ヒドロゲルの安定性測定
ヒドロゲルの還元処理に対する安定性の測定
Cys残基を NC 両末端近傍に2個以上持つペプチドをDMSOで酸化することによってヒドロゲルが形成されることが示された。そこで、還元処理によってジスルフィド架橋を切断することでゲルは崩壊するのかを検証した。作製したヒドロゲル(30 μl)に100 μlの還元溶液(100 mM DTT、50 mM リン酸緩衝液(pH8.4))あるいは水を加えた。最終濃度がペプチド濃度2.3 mg/ml、2.3% DMSO 23 mM DTT、12 mMリン酸緩衝液(pH8.4)あるいは 2.3 mg/ml、2.3% DMSOとなった。その後、それぞれを約90 回/分の頻度で100μl/回の容量を黄色チップ(~200μl)を用いてピペッティングした。図7にその結果を示す。
【実施例3】
【0166】
これより、重合ペプチドであるヒドロゲルは全て還元処理によって完全に崩壊することが示された。一方、水を加えることによってCCCC2、CCC2はゲルの崩壊が見られないが、CC2、YCC2ではゲルの崩壊が見られた。
【実施例3】
【0167】
ヒドロゲルの熱安定性の測定
作製したヒドロゲルにステンレス球を載せた後、恒温装置に移し、35℃~95℃までの間のさまざまな温度で10分間静置した。ステンレス球の沈降によってゲルが崩壊したかを判定した。
【実施例3】
【0168】
熱安定性測定結果
1% (w/v)のペプチドを用いて作製したヒドロゲルの熱安定性を測定した結果を図8に示す。この結果から、CCCC2、CCC2又はYCC2から形成されたヒドロゲルは95℃以下ではステンレス球の沈降はみられなかった。CC2から形成されたヒドロゲルは85~90℃でステンレス球が沈降を開始し、95℃で完全に沈降した。したがって、ジスルフィド結合の数に比例して、三重らせん構造が安定化し、ペプチドの変性温度が高くなったと考えられる。
【実施例4】
【0169】
<重合ペプチド薄膜の作製と強度の評価>
重合ペプチド薄膜の作製にはYCC2を用いた。脱気した水を用いて、1.11% (w/v)濃度のペプチド溶液を調製し、PCRチューブに入れた。これを80℃で5分間加熱後、4℃で一晩静置した。この溶液にDMSOを加えて終濃度10% DMSO、1.0% (w/v)ペプチド溶液を調製した。このペプチド溶液を非吸水基盤(パラフィルム、シリコン加工したホールガラス、テフロン(登録商標)板)上に移した。この時、支持体としてPVDF膜又はナイロンメッシュを非吸水基盤上に設置した。湿潤条件(10% DMSO)の室温で3日間静置することでゲル化させた。その後、乾燥条件に切り換えて、室温で3日間乾燥させた。非吸水基盤と支持体との組み合わせは、テフロン(登録商標)板とナイロンメッシュとの組み合わせが最も優れていた。
【実施例4】
【0170】
重合ペプチド薄膜の作製結果
YCC2ペプチドから形成された重合ペプチド薄膜を作製したコラーゲン様重合ペプチド薄膜は、非常に透明度が高かった(図9)。
【実施例4】
【0171】
重合ペプチド薄膜の再水和
上記方法で作製した重合ペプチド薄膜に非吸水フィルム上で水を添加した。数分間水和させた後、重合ペプチド薄膜が吸収しなかった水を回収除去した。これにより、再水和した重合ペプチドヒドロゲルを得た。
【実施例4】
【0172】
重合ペプチド薄膜の再水和結果
再水和させた重合ペプチドのヒドロゲルを得た結果を図10に示す。再水和で得たヒドロゲルは、乾燥前のヒドロゲルより保水量が少ないため、ペプチド密度が高くなり、強度の高いヒドロゲルを作製することができた。
【実施例5】
【0173】
<積層重合ペプチド薄膜の製造>
CCC2-GFOGER(short)(配列番号11)で製造した重合ペプチドを使用して、積層した重合ペプチド薄膜を以下の方法で製造した。
1) 前記実施例4と同様に、コラーゲン様ペプチドを脱気したH2Oに溶解し (22.2 mg/ml)、加熱後、徐冷することにより三重らせんを形成した。
2) DMSOを添加 (10% DMSO、20 mg/mlペプチド)し、支持体 (直径1 cm円)上、10% DMSOを充填した密閉容器中で約4日静置することで酸化し、ヒドロゲルを形成させた。
3) 大気中で乾燥し脱水した。
4) 2)と同様に調製した10% DMSO、20 mg/mlペプチド溶液を積層し、10% DMSOを充填した密閉容器中で約4日酸化した。
5) 大気中で乾燥し脱水した。
この乾燥させた重合ペプチド積層薄膜を再水和し、支持体から切り離すことにより、又は、支持体から切り離した後に再水和させることにより、強度がより向上した重合ペプチド薄膜を製造した。
【実施例6】
【0174】
<生理活性付与重合ペプチドの作製と評価>
生理活性を有するモチーフを組み込んだペプチド鎖のコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドの製造
YCC2-GFOGER(配列番号12)、YCC2-GVMGFO(配列番号13)及びYCC2-KGHRGF(配列番号14)、並びに、これらの各ペプチドの対照として、各ペプチドのN末端及びC末端の両端近傍にCys残基を含まないSoluble GFOGER(配列番号19)、Soluble GVMGFO(配列番号20)及びSoluble KGHRGF(配列番号21)を、実施例2と同様の方法で合成し、その各ペプチド溶解液のCDスペクトルを測定することにより、三重らせん構造の構築を確認した。
【実施例6】
【0175】
CDスペクトルの測定結果を図11A~図11Fに示す。各ペプチドは全て4℃及び27℃においてのみ225 nm付近で正のコットン効果を示したことから、37℃以下で三重らせん構造を形成しており、80℃では変性可能であることが確認された。また、本結果は、37℃以下での三重らせん構造の形成には、ペプチド鎖の一次構造におけるCys残基の有無に関係しないことを示している。
【実施例6】
【0176】
次に、実施例3と同様の方法で、これらの生理活性モチーフを組み込んだペプチド鎖の重合ペプチドを含むゲルを作製し、以下に記載する培養細胞を用いた選択的な細胞結合活性の評価に使用した。
【実施例6】
【0177】
材料及び方法
細胞培養
D-MEM高グルコース、D-MEM低グルコース及び0.5%トリプシン/EDTAは和光純薬工業株式会社(大阪)から、FBS、ペニシリン・ストレプトマイシン(100 x)はInvitrogen(Thermo Fisher Scientific corporation)から購入した。ヒト乳腺癌(MDA-MB-231)はATCCから、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)はCell Applications から購入した。MDA-MB-231は、DMEM高グルコース(10% FBS、100 Units/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン)で培養し、HDFはDMEM低グルコース(10% FBS、100 Units/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン)で培養し、維持した。細胞接着アッセイ及びウエスタンブロッティングに用いる場合は、細胞を0.05%トリプシン/EDTAで処理し、細胞を15 ml チューブに回収して1200 rpmで4分間遠心した。上清を除去した後、細胞を培養培地で懸濁し、37℃で20~30分間インキュベートすることで回復した。この細胞懸濁液を細胞接着アッセイ及びウエスタンブロッティングに用いた。
【実施例6】
【0178】
ペプチド及びタンパク質の細胞培養皿へのコーティング
I型コラーゲン(株式会社高研、東京)及びBSA (Jackson Immuno Research Laboratories Inc.、米国)を、30 μg/mlの水溶液として50 μl/wellを96ウェルプレート(Nunc MicroWell 96-Well Microplates)に添加して2晩乾燥させた。Cys残基を含まないコラーゲン様ペプチドは1~3 mg/mlの水溶液とし、95℃で5分間加熱した後、4℃で1晩保存することで三重らせんを形成させた。これを30 μg/mlに希釈し、50 μl/wellを96ウェルプレートに添加して2晩乾燥させた。Cys残基を含むコラーゲン様ペプチドは脱気した0.05% (v/v) TFA水溶液に溶解し、300 μg/mlとして80℃で5分間加熱した後、1℃/分で4℃まで徐冷し、4℃で1晩保存することで三重らせんを形成させた。これを30 mM MOPS緩衝液(pH7.8) (Sigma-Aldrich:シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社、東京)、15%メタノールとなるように30 μg/mlに希釈し、50 μl/wellを96ウェルプレートに添加して2晩乾燥させた。異なるリガンドを組み込んだ重合ペプチドをコートするときは、各ペプチドを脱気した0.05% (v/v) TFA水溶液に溶解して(1 mg/ml)、80℃で5分間加熱した後、1℃/分で4℃まで徐冷し、4℃で1晩保存することで三重らせんを形成させた。これらのペプチドを様々な割合で混合するとともに、20% (v/v) DMSO、総ペプチド濃度が0.3 mg/mlとなるように希釈し、ペプチド溶液上にミネラルオイルを重層し、Ellman試験によってチオールが検出されなくなるまで室温で酸化させた。このペプチド溶液をMilliQ水で30 μg/mlに希釈し、50 μl/wellを96ウェルプレートに添加して2晩風乾した。
【実施例6】
【0179】
細胞接着アッセイ
ペプチド又はタンパク質をコートした96ウェルプレートを60~70℃で熱変性させた5 mg/ml BSAでブロッキングし、37℃で1~2時間インキュベートした。BSA溶液を除いてPBS (10 mM リン酸緩衝液 (pH 7.4), 137 mM NaCl, 2.7 mM KCl) (Sigma Aldrich)で洗浄し、MDA-MB-231細胞懸濁液(40-60 x 103 cells/well)又はHDF細胞懸濁液(4-10 x 103 cells/well)を添加して37℃で30~180分間インキュベートした。その後、培地とともに浮遊細胞を除去してPBSで洗浄の後、4% (v/v) p-ホルムアルデヒド/リン酸バッファー(pH7.4) (和光純薬工業株式会社)で接着細胞を固定し、2%クリスタルバイオレット/MeOH (和光純薬工業株式会社)で染色した。染色細胞はレーザー走査型共焦点顕微鏡FV1000 (オリンパス株式会社)を用いて観察した。
【実施例6】
【0180】
ウエスタンブロッティング
ペプチド又はタンパク質をコートした6ウェルプレートを60~70℃で熱変性したBSA(5 mg/ml)でブロッキングし、37℃で1~2時間インキュベートした。BSA溶液を除去し、PBSで洗浄の後、MDA-MB-231細胞懸濁液(50 x 103 cells/well)を添加し、37℃で90分間インキュベートした。培地を除去した細胞にSDS サンプルバッファー(50 mM Tris・HCl (pH 6.7), 2% SDS, 10%グリセロール、 1 μg/ml ペプスタチンA、 1 μg/ml ロイペプチン、 1 mM PMSF、2 mM NEM、1 mM Na3VO4、10 mM NaF)を添加し、細胞を溶解した。これを1.5 mlチューブに回収し、95℃で5分間加熱したものをSDS-PAGEサンプルとした。調製したSDS-PAGEサンプルはBCA法により、タンパク質を定量した。10% (w/v)アクリルアミドゲルに各サンプルを30 μg/well添加し、SDS-PAGEにより分離した。分離したタンパク質をニトロセルロース膜(GE Healthcare)に転写した。その後、スキムミルク(和光純薬工業株式会社)と、TBS (50 mM Tris・HCl (pH 7.4)、150 mM NaCl)とを用いて調製した5% (w/v)ブロッキング溶液に浸漬して1晩ブロッキングした。1次抗体希釈液(1 : 1000)(抗FAKマウス抗体(Merck Millipore Corporation、米国)、抗pFAK (pTyr397)ウサギ抗体(Invitrogen)、又は抗β-アクチンマウス抗体(Sigma Aldrich)を添加して2~3時間静置した。1次抗体を除去して、ニトロセルロース膜をTBST(0.1% Tween-20)に浸して10~20分間振盪した。これを3回繰り返した後、2次抗体希釈液(1 : 1000)(抗マウス抗体ヤギ抗体-HRP複合体(プロメガ株式会社、東京)、抗ウサギ抗体ヤギ抗体-HRP複合体(Santa Cruz Biotechnologies Inc.、米国))を加えて、30分間静置した。2次抗体を除去し、ニトロセルロース膜をTBS-Tに浸して10~20分間振盪した。これを3回繰り返した後、Western blotting KitPlus (Pierce; サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を用いて発色し、LAS-3000 (富士フィルム株式会社)により可視化して定量した。
【実施例6】
【0181】
インテグリン結合配列に対する細胞接着の観察結果
BSA、I型コラーゲン、YCC2重合ペプチド(Pol-GPOGPR)、YCC2-GFOGER重合ペプチド(Pol-GFOGER)及びリガンドを含み、重合ペプチドを形成しないペプチド(Soluble GFOGER)を96ウェルプレートにコートし、MDA-MB-231を培養したときの細胞接着を観察し、比較した(図12A及び図12B)。YCC2及びYCC2-GFOGERは還元状態で三重らせんを形成させた後、塩基性バッファーで希釈することで酸化条件とした。これによって96ウェルプレート上でペプチドを酸化し、ジスルフィド架橋させた。
【実施例6】
【0182】
I型コラーゲン、ゼラチン及びPol-GFOGERで顕著な細胞接着を認めた。一方、BSA、Pol-GPOGPR及びsoluble GFOGERでは、細胞接着を示さなかった(図12A)。
【実施例6】
【0183】
また、I型コラーゲン及びPol-GFOGERでの、EDTAによりインテグリンを介した細胞接着の阻害を観察した。I型コラーゲン及びPol-GFOGERのいずれにおいても、4 mM EDTAの添加により、細胞接着は阻害された。一方、4 mM EDTAと8 mMのMg2+とを添加した実験群では、EDTAによる阻害効果は消失し、顕著な細胞接着を示した(図12B)。
【実施例6】
【0184】
この結果から、MDA-MB-231はPol-GFOGERに対して内部配列に依存的な細胞接着を起こした。さらに、この細胞接着はEDTAによって阻害され、Mg2+によって回復したため、この細胞接着はインテグリンに依存的な細胞接着であることが示された。このことから、YCC2は細胞培養の足場基材として利用可能であると同時に、YCC2の内部配列中に天然のコラーゲンが有する様々な受容体結合モチーフを組み込むことで標的とする受容体特異的な細胞接着を誘導可能であることが示された。
【実施例6】
【0185】
インテグリンを介したシグナル入力結果
BSA、I型コラーゲン、YCC2-GFOGER重合ペプチド(Pol-GFOGER)及びYCC2重合ペプチド(Pol-GPOGPR)を96ウェルプレートにコートし、MDA-MB-231を90分間培養した。このとき、YCC2及びYCC2-GFOGERは還元状態で三重らせんを形成させた後、塩基性バッファーで希釈することで酸化条件とした。これによって96ウェルプレート上でペプチドを酸化し、ジスルフィド架橋することでコートした。培養した細胞のFAK及びpFAK (pTyr397)のウエスタンブロッティングの結果を図13Aに示す。また、FAKのバンド強度に対するpFAK (pTyr397)のバンド強度を画像解析ソフトウェアImage Jにより解析し、数値化した結果を図13Bに示す。Pol-GPOGPR上で培養した細胞ではFAKのリン酸化が見られなかったが、Pol-GFOGER上で培養した細胞ではI型コラーゲン上で培養した細胞と同程度のリン酸化が観察された。この結果から、本ペプチド配列中にインテグリンのリガンドを組み込むことで、インテグリンを介した細胞接着を誘導するだけでなく、細胞内シグナルの入力が可能であることが示された。なお、インテグリンだけでなく、DDRやHSPGのリガンドのモチーフを組み込んだ場合においても受容体特異的なシグナルの入力が可能であると考えられた。
【実施例6】
【0186】
リガンド含有量依存的な細胞接着能の変化の観察結果
BSA、I型コラーゲン、熱変性させたI型コラーゲン(ゼラチン)及び様々な重量比で混合したYCC2とYCC2-GFOGERの重合ペプチドを96ウェルプレートにコートし、このプレート上でMDA-MB-231を37℃で5% CO2条件下で180分間培養した。YCC2とYCC2-GFOGERは還元状態で三重らせんを形成させた後、様々な重量比で混合し、塩基性バッファーで希釈することにより酸化し、共重合させ、96ウェルプレートにコートした。細胞を培養した後、接着細胞を固定し、染色し、観察した結果を図14Aに示す。また、接着細胞数を計数し、比較した結果を図14B及び図14Cに示す。
【実施例6】
【0187】
GFOGERモチーフの存在割合に依存して、細胞接着数は増加し、100% GFOGER群では、I型コラーゲンよりも高値の細胞接着数を示した(図14B)。
【実施例6】
【0188】
これらの結果から、MDA-MB-231はインテグリンのリガンドを敏感に感知し、接着細胞数はインテグリンのリガンド含有量に対して対数関数的に増加する傾向が得られた。
【実施例6】
【0189】
したがって、本重合ペプチド中に含有するリガンドの量を調節することにより、接着細胞数を制御することが可能であり、様々な細胞培養環境の再現が可能になると考えられる。また、約300 kDaの分子量のコラーゲンが1つのインテグリン結合部位を有する一方、YCC2-GFOGERでは約12 kDaの三重らせんペプチド中に1つのインテグリン結合部位を含んでいる。このため、同質量のコラーゲン及びYCC2とYCC2-GFOGERの混合重合ペプチドをコートすると、YCC2-GFOGERの含有量が約4%のときにコラーゲンと同程度のインテグリン結合部位を含むと考えられる。しかしながら、コラーゲン及び本コラーゲン様ペプチドの重合ペプチドに対する細胞接着数を比較すると、YCC2-GFOGERの含有量が30%のときにコラーゲンと同程度の細胞接着能を示している。この違いはコラーゲンと本ペプチドをコートしたときのコーティング効率の違いか、又はコラーゲンがインテグリンだけでなく、いくつもの受容体結合モチーフをもっていることに起因するものと考えられる。本発明の重合ペプチドを用いることによって、1つの細胞が増殖や分化等の挙動を引き起こすのに必要又は十分な単位面積当たりのリガンド数を明らかにすることが可能となる。
【実施例6】
【0190】
異なる受容体のリガンド配列に対する細胞接着
BSA、I型コラーゲン、YCC2重合ペプチド(Pol-GPOGPR)、YCC2-GFOGER重合ペプチド(Pol-GFOGER)、YCC2-GVMGFO重合ペプチド(Pol-GVMGFO)、YCC2-KGHRGF重合ペプチド(Pol-KGHRGF)、Soluble GFOGER、Soluble GVMGFO及びSoluble KGHRGFを96ウェルプレートにコートし、このプレート上でHDFを37℃、5% CO2条件下で60分間培養した。このとき、YCC2-GFOGER、YCC2-GVMGFO及びYCC2-KGHRGFは還元状態で三重らせんを形成させた。その後、塩基性バッファーで希釈し、酸化条件で96ウェルプレート上で酸化し、重合化してコートした。細胞培養後、細胞を固定、染色して観察した結果を図15Aに示す。また、Pol-GFOGER及びPol-KGHRGFへの細胞接着がEDTA、又は三重らせん配列中のKGHRGFに対して特異的に結合することが知られているヘパリンによって阻害されるかどうかを検討した。この結果を図15B及び図15Cに示す。
【実施例6】
【0191】
I型コラーゲン、Pol-GFOGER、Pol-GVMGFO及びPol-KGHRGFで細胞接着性を認め、特にI型コラーゲン群及びPol-GFOGERでは、顕著な細胞接着性を認めた。一方、Soluble GFOGER、Soluble GVMGFO及びSoluble KGHRGFでは細胞接着を認めなかった(図15A)。また、Pol-GFOGERの細胞接着に対して、EDTAは阻害作用を示したが、ヘパリンは阻害作用を示さなかった。一方、Pol-KGHRGFの細胞接着に対して、EDTA及びヘパリンのいずれもが、細胞接着阻害作用を示した(図15B)。
【実施例6】
【0192】
以上の結果において、Pol-GPOGPRでは細胞接着が観察されなかったが、Pol-GFOGER、Pol-GVMGFO及びPol-KGHRGFでは細胞接着が観察された。また、Pol-GFOGERへの細胞接着はEDTAによってのみ阻害されたが、Pol-KGHRGFへの細胞接着はEDTAによっても、ヘパリンによっても有意に阻害された(Studentのt検定の両側検定法)。したがって、YCC2の三重らせんを形成する配列中に受容体と結合するリガンド配列を組み込むことで、ある特定の受容体を介した細胞接着を誘導することができ、本発明がコラーゲン結合受容体に対して汎用的に利用可能であることが示された。
【実施例6】
【0193】
複数のリガンドを含有する重合ペプチドに対する細胞接着の観察結果
YCC2-GFOGERとYCC2-GVMGFOとを様々な割合で混合し、共重合させた重合ペプチドをコートした96ウェルプレート上でHDFを培養したときの細胞接着の様子と、接着した細胞数を計数した結果を図16A及び図16Bに示す。
【実施例6】
【0194】
GFOGERとGVMGFOとを混合した場合の接着細胞数は、インテグリンのリガンドであるGFOGERのみを有する又はDDRのリガンドであるGVMGFOのみを有する重合ペプチドに対する接着細胞数と比較して、全体的に増加する傾向が観察された。
【実施例6】
【0195】
ペプチドの両末端にそれぞれ2残基ずつのCysを有する本発明のペプチドを用いることによって、コラーゲンに特徴的な三重らせん構造を基本構造とするヒドロゲルを作製することができる。本発明のペプチドによるヒドロゲル形成能は三重らせん配列中のアミノ酸に依存しないことから、三重らせんを形成する配列中には(Xaa-Yaa-Gly)nを満たす様々なアミノ酸配列を組み込むことが可能である。具体的には、三重らせんを形成する配列中にインテグリンの結合配列であるGFOGER、DDRの結合配列であるGVMGFO、又はHSPGの結合配列であるKGHRGFを組み込むことで配列特異的な細胞接着を誘導することができる。さらに、本発明のペプチド配列中に、特定の受容体のリガンドのモチーフを組み込むことでターゲットの受容体を介したシグナル入力が可能である。本発明のペプチドは、様々な配列を含むペプチドを共重合することでリガンドを定量的に混合することができる点で優れている。本発明のペプチド及びそのゲルは、細胞の伸展、増殖、分化等の挙動を制御するツールとして提供可能である。また、本発明のペプチドを用いて作製したコラーゲン様ペプチドヒドロゲルをシート状に加工することで手術後の臓器の癒着防止材、縫合材及び創傷被覆材としての利用、並びに、このシート上に適切な細胞を培養することで、人工角膜や人工心筋膜などの体内に移植可能な細胞シートの作製も可能となる。
【実施例7】
【0196】
<ペプチド鎖の側鎖にリンカーを介して結合させたRGDモチーフの重合ペプチドの製造と細胞接着性の評価>
次に、生理活性を有するモチーフを、ペプチド鎖の側鎖にリンカーを介して結合させたコラーゲン様ペプチドの重合ペプチドとこれを含むゲルを作製し、ヒト線維芽細胞の接着性を評価した。
【実施例7】
【0197】
(1)ペプチド鎖の側鎖にリンカーを介してRGDモチーフを結合させた重合ペプチド及びそのゲルの作製
CCC2-KGHRGF(配列番号18)を、前記実施例2と同様の方法で合成した。このCCC2-KGHRGFを1.11 mg/mlで三重らせん形成後、10%までDMSOを加えて、上にミネラルオイルを重層し、室温で1週間程度酸化・重合させた。次に、CCC2-KGHRGFを使用した重合ペプチドを30 μg/mlに希釈して96ウェルプレートに1晩コートし、溶液を除去して、5 mg/ml NaHCO3 水溶液に溶解した1 mg/ml BS(PEG)5(Pierce社製、カタログ番号No.21581)を加え、室温で1時間程度反応させることにより、リンカーを結合させた。次に、10 mM エタノールアミン(EA)、又は、5 mg/ml NaHCO3水溶液に溶解した100 μg/ml RGD pep(配列番号22)を加え、室温で1時間程度反応させることにより、CCC2-KGHRGFに結合させたリンカーに結合させた。
【実施例7】
【0198】
(2)ヒト線維芽細胞の接着性の評価
前記RGDモチーフを結合させたゲルに、5 mg/ml BSAを加えて1時間程度ブロッキングした。次にヒト線維芽細胞 (HDF) 懸濁液を加えて37℃で1時間程度培養後、浮遊している細胞を培地とともに除去し、PBSで洗浄した。接着した細胞を4% p-ホルムアルデヒドで固定後、2%クリスタルバイオレット染色、水で洗浄し、風乾後、顕微鏡で観察することにより、この重合ペプチドにリンカーを介して結合させたRGDモチーフへのHDFの結合性を評価した。
【実施例7】
【0199】
(3)RGDモチーフを結合させたゲルへの線維芽細胞の接着性の評価結果
実施例5と同様にKGHRGFにリンカーを結合させていない重合ペプチドのゲル(KGHRGD)は、HDFの接着性を示した。一方、このKGHRGFにリンカーを結合させたペプチドの重合ペプチド(KGHRGF-Linker)は、HDFの接着性を示さなかった。このリンカーにさらに、RGDモチーフを結合させた重合ペプチド(KGHRGF-RGD)では、HDFの接着性を示した。また、対照として使用したRGDモチーフを有する可溶性ペプチド(soluble RGD)を使用した場合には、HDFの結合性を示さなかった(図17)。
【実施例7】
【0200】
以上の結果より、KGHRGFに修飾を加えるとKGHRGFに対するシンデカンのヘパラン硫酸を介した細胞接着性が失われ、Lysの側鎖にRGDを修飾することで、これに対するインテグリンを介した細胞接着活性が付与されたと考えることができる。
【実施例7】
【0201】
以上の結果より、ペプチド鎖の側鎖にリンカーを介してモチーフを結合させた重合ペプチドにおいても、所望の細胞接着性を付与できることが示された。
【実施例8】
【0202】
<複数種の機能を組み合わせた重合ゲルでの細胞接着アッセイ>
ゲルの硬さの制御用ペプチド鎖としてCCC2-GPOGPR (short)、CC2-GPOGPR (short)及びC2-GPOGPR (short)の各ペプチドより構成される3本鎖ペプチドと、生理活性モチーフを有するペプチド鎖であるCCC2-GFOGER(short)で構成される3本鎖ペプチドとを組み合わせて、酸化架橋して製造される重合ペプチドのゲルを作製し、ヒト皮膚線維芽細胞の細胞凝集活性に与える影響を評価した。
【実施例8】
【0203】
1.GFOGERモチーフを含むCCC2-GFOGER(short)を混入させたゲルにおけるヒト皮膚線維芽細胞の接着活性の評価
最初に、ペプチド鎖CCC2-GPOGPR (short)で構成される3本鎖ペプチドにヒト皮膚線維芽細胞接着能を有する少量のCCC2-GFOGER(short)で構成される3本鎖ペプチドを添加して、架橋重合して作製したゲルでのヒト皮膚線維芽細胞の接着性及び細胞間相互作用に基づく細胞凝集性を評価した。
【実施例8】
【0204】
実験方法
CCC2-GPOGPR (short)(配列番号10)、CC2-GPOGPR (short)(配列番号23)又はC2-GPOGPR (short)(配列番号24)をそれぞれ脱気した超純水に溶解し、80oCで5分間加熱した後、4oCで一晩静置することで三重らせんを形成させた。これらを様々な割合で混合し、終濃度10%となるようにDMSOを添加し、96ウェルプレート中に50 μLずつ加えた。このとき、すべてのペプチド混合液に対して重量比1%のCCC2-GFOGER (short)(配列番号16)で構成される3本鎖ペプチドを添加し、添加していないものをLigand-freeとした。このプレートを10% DMSOで満たした容器中で4日間以上静置することでペプチド溶液をゲル化させた。これらのゲルは細胞培養培地に一晩浸すことでDMSOを希釈し、以下の細胞を用いた実験に使用した。なお、I型コラーゲンを陽性対照とした。
【実施例8】
【0205】
ヒト皮膚線維芽細胞 (HDF) は0.05%トリプシン/EDTAで剥離し、15 mLチューブ中で800回転/分で遠心することで回収した。回収した細胞は細胞染色試薬(Cell tracker green CMFDA、ライフテクノロジーズジャパン株式会社、東京)を含む培養培地で再懸濁し、37oCで20~30分間インキュベートした後にアッセイに用いた。96ウェルプレートに調製したゲルにD-MEM (1% FBS, ペニシリン、ストレプトマイシン) で再懸濁したHDF (10 x 103個/ウェル)を播種し、37oCで3時間培養した。これを共焦点顕微鏡で観察した。
【実施例8】
【0206】
実験結果
コラーゲン、CCC2-GPOGPR (short)の3本鎖ペプチドのみを架橋重合して製造されるゲル(ligand free)、及び、CCC2-GPOGPR (short)の3本鎖ペプチドと重量比1%のCCC2-GFOGER (short)の3本鎖ペプチドとを混合後、ゲル化して製造される重合ペプチドを含有するゲルでのヒト皮膚線維芽細胞に対する接着性を比較した結果を図18Aに示した。
【実施例8】
【0207】
コラーゲン、及びCCC2-GFOGER (short)とから構成される3本鎖を含むゲルでは、個々のヒト皮膚線維芽細胞が単体で伸展して接着している観察像を認めた。しかし、CCC2-GPOGPR (short)の3本鎖ペプチドのみを酸化架橋して製造されるゲル(ligand free)では、わずかな細胞接着しか認めなかった(図18A)。
【実施例8】
【0208】
2.システイン残基の数が異なるペプチド鎖より構成される3本鎖を組み合わせて製造した重合ゲルにおけるヒト皮膚線維芽細胞の細胞凝集活性の評価
次に、システイン残基数が異なるペプチド鎖を用い、各ペプチド鎖より構成される3本鎖ペプチドの各種構成比のゲルで、重量比1%のCCC2-GFOGER (short)の3本鎖ペプチドを含むゲルについて、そのゲル化能及び細胞接着能を比較、評価した。
【実施例8】
【0209】
実験方法
CCC2-GPOGPR (short)、CC2-GPOGPR (short)及びC2-GPOGPR (short)のそれぞれより構成される3本鎖ペプチド中の2種の異なる3本鎖ペプチドを9:1、7:3、5:5、3:7又は1:9の配合比率で組み合わせて溶媒中で混合し、さらに、上記実験と同様に重量比1%のCCC2-GFOGER (short)より構成される3本鎖ペプチドを添加した後に、酸化架橋して3本鎖ペプチドを重合させたゲルを作製し、ゲル化能、及びこのゲルに接着するヒト皮膚線維芽細胞の細胞凝集性を上記実験と同様の方法で評価した。
【実施例8】
【0210】
実験結果
CC2-GPOGPR (short):C2-GPOGPR (short)が7:3と5:5、3:7、1:9の構成比率のゲル、及びCCC2 (short):C2-GPOGPR (short)が3:7と1:9の構成比率のゲルでは、酸化架橋剤であるDMSOを添加してもゲル化しなかった。
【実施例8】
【0211】
一方、ゲル化能を認めた各ペプチド鎖の構成比率において、(1) 細胞間の接着が強い凝集体となり、個々の細胞としての進展の様子を認めない観察像(図18Bにおける矢印)、(2) 数個の細胞が凝集しながら接着している観察像(同、*)、(3) 数個の細胞からなる塊がさらに寄り合っている観察像(同、△)、及び、(4) ほとんどの細胞が単体で伸展して接着している観察像(図18B、CCC2-GPOGPR(short):CC2-GPOGPR(short)=9:1、7:3、5:5、およびCCC2-GPOGPR(short):C2-GPOGPR(short)=9:1の観察像)を認めた。
【実施例8】
【0212】
これらの結果より、CCC2-GPOGPR (short)に対してCC2-GPOGPR (short)又はC2-GPOGPR (short)の配合比率が増加するに伴って、細胞間の相互作用が強くなり、細胞が単体で伸展した形態をとらずに、集合し、凝集している凝集型の細胞形態が観察された(図18B、*でマーク)。また、CC2-GPOGPR (short) とC2-GPOGPR (short) を混合したゲルでは細胞の凝集がさらに顕著に見られた。
【実施例8】
【0213】
すなわち、システイン残基数が少ないペプチド鎖を用いた場合、ゲル化能が低下し、細胞凝集能が高くなる。一方、システイン残基数が多いペプチド鎖を使用した場合には、ゲルの形成が容易であり、個々の細胞が強くゲルに接着し伸展する傾向が見られた。
【実施例8】
【0214】
これらの細胞の挙動変化は、システインの数が異なるペプチドを混合してゲルを作成することにより、このようなゲルの硬さ(stiffness)の制御と生理活性発現の制御や生体親和性の向上をもたらすことが可能であることを示した。
【実施例9】
【0215】
<in vivo埋込実験>
ゲル薄膜を再水和したゲルを生体に移植し、生体中における挙動を検討し、評価した。
1.ゲル薄膜の製造と再水和
CCC2-GPOGPR (short)(配列番号10)で構成される3本鎖ペプチドとSoluble GPOGPR (short)(配列番号25)で構成される3本鎖ペプチドとを1:1の割合で混合後、DMSOで酸化架橋することにより重合ペプチドを含むゲルを製造した。このゲルを乾燥し、室温で1週間以上保存し、使用直前に生理食塩水で再水和したゲルを使用した。このとき、生分解を受けないPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜を移植位置のマーカーとして使用するための支持体として製造した後、下記のin vivo埋込実験に使用した。
【実施例9】
【0216】
2.in vivo埋込実験
コラーゲン様重合ペプチド薄膜をC57BL6マウス(雄性、8週齢)の背部皮下に移植した。移植実験では、イソフルランによる吸入麻酔下、マウスの背部を除毛後2cm程度の皮膚切開を加えた。切開部よりモスキート鉗子を挿入して皮下ポケットを作製し、コラーゲン様重合ペプチド薄膜をこの皮下ポケットに挿入して移植操作を完了し、ナイロン糸を用いて縫合閉鎖した。
【実施例9】
【0217】
移植10日後と30日後にマウスを犠牲死させ、組織を摘出し、10%ホルマリン液にて固定後、パラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン-エオジン染色後、光学顕微鏡下で組織学的解析を行った。
【実施例9】
【0218】
その結果、移植10日後で、薄膜表面に線維芽細胞の接着が認められ(図19A)、移植30日後ではコラーゲン様重合ペプチド薄膜が分解吸収され、膜厚の菲薄化が認められた(図19B)。この時点で、皮下組織再生部の炎症性細胞浸潤は軽微であり、異物型巨細胞浸潤は見られず、線維化の程度も天然コラーゲンと同様であった。一方、支持体であるPVDF膜周囲の一部では異物型巨細胞浸潤を伴う異物反応が見られた。以上より、コラーゲン様重合ペプチドの生体適合性が確認された。
【実施例9】
【0219】
本結果より、手術時に臓器と皮膚との間に、又は臓器と臓器の間に留置させることにより、本発明の重合ペプチドを含むゲル又は重合ペプチド薄膜を臓器の癒着防止用、縫合材、創傷部位の被覆材及び創傷治癒促進材等の医療材料として使用できることが示された。留置された本発明の医療材料は、生体中に存在するペプチダーゼやマクロファージ等の貪食細胞により、徐々に可溶化又は分解され、消失するため、該医療材料を除去する再手術を必要としない。そのため、患者の予後への負担が小さく、QOL(Quality of Life)を改善するとのメリットを有する。
【実施例9】
【0220】
また、本発明の医療材料は、人工的に製造されたコラーゲン様ペプチドであるため、天然のコラーゲンと相違し、ウイルス感染や微生物感染の危険性が小さい。さらに、ジスルフィド結合で架橋されており加熱処理しても変性しないため、例えば、滅菌のために加熱することが可能との利点も有する。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図2D】
4
【図2E】
5
【図2F】
6
【図2G】
7
【図3A】
8
【図3B】
9
【図3C】
10
【図3D】
11
【図3E】
12
【図3F】
13
【図3G】
14
【図4A】
15
【図4B】
16
【図5】
17
【図6】
18
【図7】
19
【図8】
20
【図9】
21
【図10】
22
【図11A】
23
【図11B】
24
【図11C】
25
【図11D】
26
【図11E】
27
【図11F】
28
【図12A】
29
【図12B】
30
【図13A】
31
【図13B】
32
【図14A】
33
【図14B】
34
【図14C】
35
【図15A】
36
【図15B】
37
【図15C】
38
【図16A】
39
【図16B】
40
【図17】
41
【図18A】
42
【図18B】
43
【図19A】
44
【図19B】
45