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明細書 :静電レンズ、並びに、該レンズとコリメータを用いた平行ビーム発生装置及び平行ビーム収束装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年4月26日(2018.4.26)
発明の名称または考案の名称 静電レンズ、並びに、該レンズとコリメータを用いた平行ビーム発生装置及び平行ビーム収束装置
国際特許分類 H01J  37/12        (2006.01)
FI H01J 37/12
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 29
出願番号 特願2017-528715 (P2017-528715)
国際出願番号 PCT/JP2016/070744
国際公開番号 WO2017/010529
国際出願日 平成28年7月13日(2016.7.13)
国際公開日 平成29年1月19日(2017.1.19)
優先権出願番号 2015141687
優先日 平成27年7月15日(2015.7.15)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】松井 文彦
【氏名】松田 博之
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000822、【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
審査請求 未請求
テーマコード 5C033
Fターム 5C033CC02
5C033CC04
要約 点源から放出される荷電粒子を広立体角範囲にわたり取り込み、荷電粒子
の軌跡を平行化するコンパクトな装置を提供する。点源に対し凹面状を有す
る軸対称な非球面メッシュ(2)および軸対称な複数の電極(10~14)
から成る静電レンズと、静電レンズと同軸に配置される平面コリメータプレ
ート(3)とから構成される。点源(7)から発生した荷電粒子の取り込み
角が±30°以上で、荷電粒子の軌跡が静電レンズにより略平行化されるよ
うに、非球面メッシュ(2)の形状とアース電極(10)と印加電極(11
~15)の電位及び配置が調整されている。荷電粒子の軌跡が軸に対して略
平行化された後で、荷電粒子が平面コリメータプレート(3)に対して略垂
直に入射するように、静電レンズと平面コリメータプレートが共軸に配置さ
れている。
特許請求の範囲 【請求項1】
点源又は集光点に対し凹面状を有する軸対称または実質的に軸対称な非球面メッシュおよび軸対称または実質的に軸対称な単一乃至は複数の電極から成る静電レンズであって、
前記非球面メッシュは、メッシュ開口部の中心近傍からメッシュ中心の位置までを長軸とする回転楕円体、又は、メッシュ開口部近傍が内側に凸の曲率で拡がる形状の実質的回転楕円体であり、
メッシュに接続されるメッシュ電極の開口部半径と、前記単一乃至は複数の電極の内、前記メッシュ電極に隣接する第一電極の開口部半径の比は、1.2以上1.6以下であり、
前記回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比は、1.0より大きく2.0以下であり、
点源から発生した荷電粒子の取り込み角が±60°で、荷電粒子の軌跡を光軸からのズレ角が±1°以下に平行化することを特徴とする静電レンズ。
【請求項2】
電極数は前記メッシュ電極を除いたものとし、減速比は荷電粒子の発生時の運動エネルギーに対する終端電極での運動エネルギーの比として、下記1)~5)の何れかを満たすことを特徴とする請求項1に記載の静電レンズ:
1)電極数が1で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
前記回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.69以上1.89以下である、
2)電極数が2で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
前記回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.56以上1.76以下である、
3)電極数が3で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
前記回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.52以上1.72以下である、
4)電極数が4で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
前記回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.49以上1.69以下である、
5)電極数が5以上で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
前記回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.39以上1.59以下である。
【請求項3】
前記減速比が0.01以上0.1未満の場合には、
前記回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.0より大きく1.5未満であることを特徴とする請求項2に記載の静電レンズ。
【請求項4】
前記実質的回転楕円体のメッシュ形状は、
同じ長軸半径と短軸半径の回転楕円体の形状と比べ、長軸からの半径方向のズレが半径距離の5%以下であり、
点源とメッシュ形状表面とを結ぶ軸と長軸との成す角度が40°より大きい位置に、上記半径方向のズレを角度について一階微分しプロットしたものの変曲点が存在する、
ことを特徴とする請求項1に記載の静電レンズ。
【請求項5】
前記実質的回転楕円体のメッシュ形状は、多項式関数である下記数式で表されるdmeshにより表されることを特徴とする請求項1又は4に記載の静電レンズ:
【数1】
JP2017010529A1_000006t.gif
(式1中、dmeshは点源からメッシュ表面位置までの距離、距離dは点源から光軸上のメッシュ先端位置までの距離、距離dは点源からメッシュのエッジ位置までの距離、角度θとθmaxはそれぞれメッシュ表面とメッシュのエッジ位置を決めるための光軸からのズレ角、αは角度θの関数、nは関数の次元数で、wはパラメータa~aによって決定される。)。
【請求項6】
請求項1~5の何れかの静電レンズと、前記静電レンズと同軸に配置される平面コリメータプレートとから構成され、
点源から発生した荷電粒子の取り込み角が±60°で、荷電粒子の軌跡を光軸からのズレ角が±1°以下に平行化した後で、荷電粒子が平面コリメータプレートに対して略垂直に入射するように、前記静電レンズと前記平面コリメータプレートが共軸に配置されたことを特徴とする平行ビーム発生装置。
【請求項7】
前記平面コリメータプレートが、特定の運動エネルギーの荷電粒子のみを選別するバンドパスフィルターとして機能することを特徴とする請求項6に記載の平行ビーム発生装置。
【請求項8】
平板に微小な光電子増倍管を束ねた平面マイクロチャネルプレートが更に設けられ、前記平面コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの荷電粒子をアバランシェ電流により増幅することを特徴とする請求項7に記載の平行ビーム発生装置。
【請求項9】
前記平面コリメータプレートは、アスペクト比(孔径と孔長の比)1:5乃至1:20である細孔が開口率50%以上で設けられたことを特徴とする請求項6~8の何れかに記載の平行ビーム発生装置。
【請求項10】
前記電極および前記平面コリメータプレートの電位を掃引する掃引手段が更に設けられたことを特徴とする請求項6~9の何れかに記載の平行ビーム発生装置。
【請求項11】
請求項6~10の何れかに記載の平行ビーム発生装置に、蛍光スクリーンとカメラ手段が更に設けられ、前記平面コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの荷電粒子の角度分布を、前記蛍光スクリーン上で輝点に変換して前記カメラ手段で画像計測することを特徴とする角度分布測定分析装置。
【請求項12】
グリッドに印加する直流電圧を変化させて、グリッドを通過する荷電粒子による電流の変化をロックイン検出する平面阻止電位グリッドが更に設けられ、前記平面コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの荷電粒子を検出することを特徴とする請求項11に記載の角度分布測定分析装置。
【請求項13】
ディレイライン検出器(delay line detector)が更に設けられ、前記コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの個々の荷電粒子の出射角方向と到達時間を、前記ディレイライン検出器で個別に計測して時間分解画像計測することを特徴とする請求項11に記載の角度分布測定分析装置。
【請求項14】
請求項11~13の何れかの荷電粒子エネルギーの角度分布測定分析装置が組み込まれた電子分光装置、電子回折装置、光電子分光装置、光電子回折装置、陽電子分光装置、陽電子回折装置、イオン脱離角度分布測定装置、結晶構造分析装置、材料表面分析装置、及び固体物性分析装置の群から選択される装置。
【請求項15】
請求項6~10の何れかの平行ビーム発生装置が、単一エネルギーの大口径平行イオンビーム源として組み込まれたイオンエッチングもしくはイオンスパッタリングを行う精密イオンエッチング装置。
【請求項16】
請求項11の角度分布測定分析装置において、前記平面コリメータプレートを負電位、前記蛍光スクリーンを正電位とし、前記平面コリメータプレートで発生する電子を増幅することを特徴とする広立体角X線検出器。
【請求項17】
請求項1~5の何れかの静電レンズと、前記静電レンズと同軸に配置される平面コリメータプレートとから構成され、
前記平面コリメータプレートに対して略垂直に入射する特定の運動エネルギー荷電粒子の出射後の軌跡が、前記静電レンズにより前記集光点に集光するように、前記静電レンズと前記平面コリメータプレートが共軸に配置されたことを特徴とする平行ビーム収束装置。
【請求項18】
前記平面コリメータプレートは、アスペクト比(孔径と孔長の比)1:5乃至1:20である細孔が開口率50%以上で設けられたことを特徴とする請求項17に記載の平行ビーム収束装置。
【請求項19】
請求項17又は18の平行ビーム収束装置が複数配置され、前記平面コリメータプレートが、特定の運動エネルギーの荷電粒子のみを選別するバンドパスフィルターとして機能し、前記平面コリメータプレートにより特定方向の荷電粒子流を取り出し、特定のエネルギーの粒子だけを前記静電レンズにより一点に集光させてエネルギー強度を計測する荷電粒子流方位・エネルギー計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、静電レンズとその静電レンズとコリメータを用いた平行ビーム発生装置及び平行ビーム収束装置に関するものであり、具体的には、XPS(光電子分光装置)、AES(オージェ電子分光装置)などの電子分光装置やLEED(電子回折)やPED(光電子回折)などの電子回折装置やイオン脱離角度分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同心球状の複数枚のグリッドと蛍光スクリーンを組み合わせた阻止電位型エネルギー分析器は、低速電子線回折観察やオージェ電子分光測定に広く用いられている。しかし、同心球状のグリッドを用いていることから荷電粒子を球面へ投影するため、平面のマイクロチャンネルプレートを用いて信号増幅することができないといった問題があった。また、阻止電位型エネルギー分析器は、ハイパスフィルター作用のため、シグナル対バックグラウンド比が悪く、光電子回折などの2次元角度分布測定には不向きであるといった問題もあった。そこで、軸対称の電極を用いて、2次元角度分布を平面に投影する阻止電位型エネルギー分析器が開発されている(特許文献1,2を参照)が、点源から発生した荷電粒子の取り込み角は±10°と限られたものであった。
また、阻止電位型エネルギー分析器を、光電子回折測定に利用する際に障害となるのが蛍光X線である。阻止電位ではX線が除去できず、荷電粒子の取り込み角を大きくするほど蛍光X線の量が増え、バックグラウンドとなってしまうといった問題があった。
【0003】
一方で、電子分光装置では、エネルギーアナライザの入射部分に静電レンズが用いられることが多く、この静電レンズは、試料から放出される電子をできるだけ多く取り込み、その電子を減速させてからアナライザに入射させることにより、エネルギー分解能を向上させることができる。電子分光装置に限らず、材料表面分析および固体物性学基礎研究などにおいて、結晶表面から放出される電子による電子分光測定、電子回折、放出イオン角度分布測定などは、どれだけ大きな開き角の荷電粒子を取り込めるかで感度が決まるため、荷電粒子の取り込み角を大きくし、広立体角範囲にわたり測定できる技術が求められている。
また、荷電粒子の取り込み角が±30°未満であると、光電子回折や光電子ホログラフィーといった原子配列構造解析が困難であるが、取り込み角が±30°以上の広立体角の測定ができると原子配列構造解析が可能になる。
【0004】
通常の静電レンズでは、球面収差によって、大きな開き角のビームを一点に集束させることが困難であり、取り込み角は±20°程度が限界であったが、球面メッシュを用いることで感度を上げることが可能であり、取り込み角は±30°程度まで改善された(特許文献3を参照)。
また、非球面メッシュの負の球面収差補正作用を応用し、複数の電極を用いて最適な電場を作り出すことで、球面メッシュを用いるよりも広い取り込み角を実現できる球面収差補正静電型レンズが知られている(特許文献4を参照)。
【0005】
しかし、図21に示すように、特許文献4に開示された球面収差補正静電型レンズ100では、負の球面収差を有する拡大虚像を形成するように配置された、試料プレート110に対して凹面形状を有する光軸対称な回転楕円面とした非球面メッシュ106と、その像面側に光軸に同軸に配置され、拡大虚像の実像を形成し正の球面収差を生じる収束電場を形成する同心面からなる複数の電極(101~105)を備える構成のため、レンズ自体が大掛かりなものとなり、試料プレート110から出射口107までの距離が大きく(L=0.5m程度)、試料プレート110および球面収差補正静電型レンズ100全体を格納する磁場遮蔽超高真空真空槽(図示せず)が大きくなっていた。また、正の球面収差を生じる収束電場によって出射ビームは狭立体角の点源ビームとなり、出射口107から出射するため、例えば、エネルギー分析のために蛍光スクリーンに投射する場合は、出射口107から放出される電子を阻止電位または偏向電場(図示せず)で分析し、蛍光スクリーン(図示せず)に角度分布を投影する際に、一度、出口スリットに収束させる必要があるため、装置全体のコンパクト化が困難であった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】米国特許公報US6492644
【特許文献2】米国特許公報US6198095
【特許文献3】特開平8-111199号公報
【特許文献4】特許公報第4802340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の如く、通常の静電レンズでは、球面収差によって取り込み角は±20°程度が限界であったが、球面メッシュを用いることで感度を上げることが可能であり、さらに、非球面メッシュの負の球面収差補正作用を応用したレンズでは、複数の電極を用いて最適な電場を作り出すことで、より広い取り込み角を実現できている。
しかし、非球面メッシュの負の球面収差補正作用を応用し、正の球面収差を生じる収束電場によってビームを集束させるレンズはサイズが大きく、電子分光装置など装置に組み込む際に大きなスペースを必要とするといった不都合がある。
【0008】
かかる状況に鑑みて、本発明は、点源から放出される荷電粒子を広立体角範囲にわたり取り込み、荷電粒子の軌跡を平行化できる静電レンズ並びにコンパクトな平行ビーム発生装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、広い立体角の放射ビームを平行化して、光電子回折角度分布の高感度および高エネルギー分解能を実現する装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の静電レンズを用いて、特定の運動エネルギーの平行荷電粒子流を一点に集光できるコンパクトな平行ビーム収束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明の静電レンズは、点源又は集光点に対し凹面状を有する軸対称または実質的に軸対称な非球面メッシュおよび軸対称または実質的に軸対称な単一乃至は複数の電極から成る静電レンズであって、下記(a)~(d)の特徴を備える。かかる特徴を備えることにより、点源から放出される荷電粒子を広立体角範囲にわたり取り込み、荷電粒子の軌跡を平行化できる。
(a)非球面メッシュは、メッシュ開口部の中心近傍からメッシュ中心の位置までを長軸とする回転楕円体、又は、メッシュ開口部近傍が内側に凸の曲率で拡がる形状の実質的回転楕円体である。
(b)メッシュに接続されるメッシュ電極の開口部半径と、単一乃至は複数の電極の内、メッシュ電極に隣接する第一電極の開口部半径の比は、1.2以上1.6以下である。
(c)回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比は、1.0より大きく2.0以下である。
(d)点源から発生した荷電粒子の取り込み角が±60°で、荷電粒子の軌跡を光軸からのズレ角が±1°以下に平行化する。
【0010】
本発明の静電レンズにおいて、電極数はメッシュ電極を除いたものとし、減速比は荷電粒子の発生時の運動エネルギーに対する終端電極での運動エネルギーの比として、下記1)~5)の何れかを満たす。
1)電極数が1で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.69以上1.89以下である。
2)電極数が2で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.56以上1.76以下である。
3)電極数が3で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.52以上1.72以下である。
4)電極数が4で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.49以上1.69以下である。
5)電極数が5以上で、減速比が0.1以上0.3以下の場合には、
回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.39以上1.59以下である。
【0011】
さらに、本発明の静電レンズは、電極数によらず、上記の減速比が0.01以上0.1未満の場合には、回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比が1.0より大きく1.5未満であることが好ましい。
【0012】
本発明の静電レンズにおいて、実質的回転楕円体のメッシュ形状は、同じ長軸半径と短軸半径の回転楕円体の形状と比べ、長軸からの半径方向のズレが半径距離の5%以下であり、点源とメッシュ形状表面とを結ぶ軸と長軸との成す角度が40°より大きい位置に、上記半径方向のズレを角度について一階微分しプロットしたものの変曲点が存在する。
【0013】
さらに、本発明の静電レンズにおいて、実質的回転楕円体のメッシュ形状は、多項式関数である下記の数式1で表されるdmeshにより表されることが好ましい。ここで、下記数式1中、dmeshは点源からメッシュ表面位置までの距離、距離dは点源から光軸上のメッシュ先端位置までの距離、距離dは点源からメッシュのエッジ位置までの距離、角度θとθmaxはそれぞれメッシュ表面とメッシュのエッジ位置を決めるための光軸からのズレ角、αは角度θの関数、nは関数の次元数で、wはパラメータa~aによって決定されるパラメータである。
【0014】
【数1】
JP2017010529A1_000003t.gif

【0015】
次に、本発明の平行ビーム発生装置について説明する。
本発明の平行ビーム発生装置は、上述の本発明の静電レンズと、該レンズと同軸に配置される平面コリメータプレートとから構成される。そして、点源から発生した荷電粒子の取り込み角が±60°で、荷電粒子の軌跡を光軸からのズレ角が±1°以下に平行化している。そして、荷電粒子の軌跡が軸に対して平行化された後で、荷電粒子が平面コリメータプレートに対して略垂直に入射するように、静電レンズと平面コリメータプレートが共軸に配置されている。
【0016】
上記構成によれば、点源から放出される荷電粒子を広立体角範囲にわたり取り込み、荷電粒子の軌跡を高い平行度で平行化するコンパクトな装置を実現することができる。本発明の平行ビーム発生装置は、小型化が可能であり、装置を取り囲む磁場遮蔽超高真空真空槽も小さくでき、装置コストも抑えることができる。
本発明の静電レンズによって、点源から放出される荷電粒子を広立体角範囲にわたり取り込み、荷電粒子の軌跡を高い平行度で平行化する。平行化された荷電粒子は、平面コリメータプレートに略垂直に入射することにより、さらに平行化の度合いが向上する。
【0017】
ここで、 平面コリメータプレートは、平板に設けられた細いスリットや小さい細孔からビームをとり入れて、平行なビームのみを選別するものである。
本発明の平行ビーム発生装置は、電極に負電位を印加すれば電子の分析を、正電位を印加すれば陽イオンの分析ができる。電極電位は、直流電源1kVに対して50mV以下の精度で安定した制御を行う。
【0018】
上記の平面コリメータプレートは、特定の運動エネルギーの荷電粒子のみを選別するバンドパスフィルターとして機能することが特徴である。
バンドパスフィルターとして機能することで、蛍光スクリーンを用いてスクリーンに投影される強度分布をそのまま特定のエネルギーの角度分布模様のデータとして取り扱うことができる。バンドパスフィルターの分解能としては、ΔE/E=0.5~1%程度である。
平面コリメータプレートが、バンドパスフィルターとして機能するためには、上述の静電レンズによって、特定のエネルギーの荷電粒子の軌跡のみが平行化され、平面コリメータプレートに入射することが必要である。
【0019】
本発明の平行ビーム発生装置において、平板に微小な光電子増倍管を束ねた平面マイクロチャネルプレートが更に設けられ、上述の平面コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの荷電粒子をアバランシェ電流により増幅することでも良い。
アバランシェ電流により増幅することにより、高感度測定が可能である。
【0020】
本発明の平行ビーム発生装置における平面コリメータプレートは、アスペクト比(孔径と孔長の比)1:5乃至1:20である細孔が開口率50%以上で設けられたことが好ましい。
アスペクト比が大きいほど、平面コリメータプレートから出射するビームの平行度が増すことになる。また、開口率が透過率に影響するため、開口率は大きく方が良い。
例えば、アスペクト比が1:10で、開口率50%以上の場合において、コリメータ径50mmに対して、孔径50μmの場合は、角度分解能の上限が、0.1°となる(角度分解能が約0.1°となる)。コリメータの半径25mmが出射角度50°に対応し、角度分解能の上限は50°/(25mm/50μm)=50°/500=0.1°となる。
【0021】
本発明の平行ビーム発生装置において、上記の電極および平面コリメータプレートの電位を掃引する掃引手段が更に設けられたことでも良い。
電極および平面コリメータプレートの電位を掃引することにより、荷電粒子の角度分布のスペクトルを効率的に測定できる。
【0022】
上述の本発明の平行ビーム発生装置において、蛍光スクリーンとカメラ手段が更に設けられ、上述の平面コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの荷電粒子を、蛍光スクリーン上で輝点に変換してカメラ手段で画像計測することでも良い。
特定の運動エネルギーの荷電粒子が蛍光スクリーン上で輝点に変換され、カメラにより2次元分布模様として画像計測できる。また、平面コリメータプレートは、蛍光スクリーンに角度分布を投影する際の出口スリットの役割を担うことになる。小型で簡便な高エネルギー分解能の投影型分析器を実現でき、様々な分析に応用できる。これにより角度分布測定分析装置として用いることができる。
角度分布測定分析装置において、ディレイライン検出器(delay line detector)が更に設けられ、上述の平面コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの個々の荷電粒子の出射角方向と到達時間を、ディレイライン検出器で個別に計測して時間分解画像計測することでも良い。
【0023】
パルス励起源とそれに同期したディレイライン検出器を設けることで、平面コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの個々の荷電粒子の出射角方向と到達時間を、ディレイライン検出器で個別に計測して時間分解画像計測することができる。これにより、荷電粒子の出射角度分布の計測と同時に、各粒子が励起後、いつ放出されたかという時間情報が得られるといった利点がある。
【0024】
上述の角度分布測定分析装置において、グリッドに印加する直流電圧を変化させて、グリッドを通過する荷電粒子による電流の変化をロックイン検出する平面阻止電位グリッドが更に設けられ、平面コリメータプレートから出射する特定の運動エネルギーの荷電粒子を検出することでも良い。
平面阻止電位グリッドと組み合わせ、ロックイン検出することにより、更に高エネルギー分解能(ΔE/E=0.01~0.1%)の測定が実現できる。平面コリメータプレートによるバンドパスフィルターのエネルギー分解能は相対値となり、1%のエネルギー分解能の場合、100eVに対して1eV、1keVに対して10eVの分解能となる。また、ロックイン検出による測定のエネルギー分解能は変調電場で決まる絶対値となり、100mVの変調電場の場合、100eVに対して0.1%、1keVに対して0.01%の分解能となる。従来の阻止電場型の装置では、S/B比(Signal/Background ratio)が悪いのと平面のマイクロチャンネルプレートによる増幅ができないため、ロックイン検出では、変調電場は1Vから10Vを使用する。本発明における平面コリメータプレートによるバンドパス方式では、高S/B比、高増幅が可能となるため、変調電場を100mVまで小さくすることが可能である。
【0025】
上述の角度分布測定分析装置は、上述の本発明の平行ビーム発生装置が、荷電粒子エネルギーの放出角度分布分析装置として組み込まれた電子分光装置、電子回折装置、光電子分光装置、光電子回折装置、陽電子分光装置、陽電子回折装置、イオン脱離角度分布測定装置、結晶構造分析装置、材料表面分析装置、及び固体物性分析装置の何れかである。
【0026】
本発明の精密イオンエッチング装置は、上述の本発明の平行ビーム発生装置が、単一エネルギーの大口径平行イオンビーム源として組み込まれ、イオンエッチングもしくはイオンスパッタリングを行う。
従来、大面積の試料表面をイオンスパッタする際、集束イオンビームを2次元走査するか、或は、非集束させビーム径を大きくしていたが、いずれの場合も、中心から離れた場所ではビームが試料表面に垂直に当らないため、例えば、マスクを用いたパターン加工の際、端部がだれてしまい、高アスペクト比の成型は困難であった。本発明の平行ビーム発生装置では、広立体角範囲でイオンを取り込み、単一の運動エネルギーの大口径平行イオンビームを生成することが可能であり、生成された大口径平行イオンビームによる表面照射によって、マスクを用いたパターン加工の際に、端部がだれることがなく、高アスペクト比の成型ができ、形状の精密制御エッチングを可能とする。
【0027】
本発明の広立体角X線検出器は、蛍光スクリーンとカメラ手段が設けられた本発明の平行ビーム発生装置において、平面コリメータプレートを負電位、蛍光スクリーンを正電位として、平面コリメータプレートで発生する電子を増幅するものである。
かかる構成によれば、広立体角のX線検出器を実現できる。
【0028】
本発明の他の観点によれば平行ビーム収束装置が提供される。平行ビーム収束装置は、上述の本発明の静電レンズと、静電レンズと同軸に配置される平面コリメータプレートとから構成され、平面コリメータプレートに対して略垂直に入射する特定の運動エネルギー荷電粒子の出射後の軌跡が、静電レンズにより集光点に集光するように、静電レンズと平面コリメータプレートが共軸に配置されている。
上述の本発明の平行ビーム発生装置において、入口と出口を逆にすると、コリメータプレートにより特定の方向の荷電粒子流を取り出して、特定のエネルギーの粒子だけを静電レンズで一点に集光し強度を計測する平行ビーム収束装置として利用することができるのである。
【0029】
本発明の他の観点の平行ビーム収束装置における平面コリメータプレートは、アスペクト比(孔径と孔長の比)1:5乃至1:20である細孔が開口率50%以上で設けられたことでも良い。
【0030】
本発明の荷電粒子流方位・エネルギー計測装置は、上述の本発明の他の観点の平行ビーム収束装置が複数配置され、平面コリメータプレートが、特定の運動エネルギーの荷電粒子のみを選別するバンドパスフィルターとして機能し、平面コリメータプレートにより特定方向の荷電粒子流を取り出し、特定のエネルギーの粒子だけを静電レンズにより一点に集光させてエネルギー強度を計測するものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の平行ビーム発生装置によれば、試料から放出される特定の運動エネルギーの荷電粒子の強度角度分布を立体角±60°程度まで平面に投影できるといった効果がある。感度は取り込み立体角に比例するので、大幅な感度と機能の向上を図ることができる。すなわち、広い立体角の放射ビームを平行化できるようになり、光電子回折角度分布の高感度・高エネルギー分解能が達成できるといった効果がある。
【0032】
本発明の平行ビーム発生装置によれば、平面コリメータプレートでのエネルギー分解能は、励起ビームを微小にすることで向上でき、例えば、100μm以下の収束ビームを励起ビームとして用いた場合、エネルギー分解能1.0~0.5%を達成できるという効果がある。
また、本発明の平行ビーム発生装置は、小型化が可能であり、他の分析器に組み込むのが容易であり、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)と組み合わせると特定のエネルギーのみ選別する元素選択的な結晶構造観察を実現できる。
【0033】
また、上記の平行ビーム発生装置において、入口と出口を逆にした本発明の平行ビーム収束装置によれば、コリメータプレートにより特定の方向の荷電粒子流を取り出して、特定のエネルギーの粒子だけを静電レンズで一点に集光し強度を計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1の平行ビーム発生装置の構成図
【図2】点源からの取り込み角と荷電粒子の軌跡の角度の説明図
【図3】電極配置の説明図
【図4】非球面メッシュの形状説明図
【図5】異なるエネルギーの電子の軌跡の説明図(1)
【図6】異なるエネルギーの電子の軌跡の説明図(2)
【図7】平面コリメータプレートの透過率を示す図
【図8】異なる出射位置の電子の軌跡の説明図
【図9】静電レンズにおける電極数の違いについての説明図
【図10】実施例4の角度分布測定分析器の構成図
【図11】実施例5の広立体角X線検出器の構成図
【図12】実施例7の静電レンズ(電極数1)の荷電粒子の軌跡と平行度
【図13】実施例7の静電レンズ(電極数2)の荷電粒子の軌跡と平行度
【図14】実施例7の静電レンズ(電極数3)の荷電粒子の軌跡と平行度
【図15】実施例7の静電レンズ(電極数4)の荷電粒子の軌跡と平行度
【図16】実施例7の静電レンズ(電極数5)の荷電粒子の軌跡と平行度(1)
【図17】実施例7の静電レンズ(電極数5)の荷電粒子の軌跡と平行度(2)
【図18】実施例8の静電レンズ(電極数2)の荷電粒子の軌跡と平行度
【図19】実施例8の静電レンズ(電極数2)の非球状メッシュ形状の説明図
【図20】実施例8の静電レンズ(電極数2)の非球状メッシュ形状の特徴説明図
【図21】先行技術の球面収差補正静電型レンズの構成図

【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明の平行ビーム発生装置の一実施形態を示している。本発明の平行ビーム発生装置は、点源7に対し凹面状を有する軸対称な非球面メッシュ2および軸対称な5つの電極(10~14)から成る本発明の静電レンズと、この静電レンズと同軸に配置される平面コリメータプレート3と、蛍光スクリーン4と、それらを格納する磁気遮蔽カバー8から構成されている。
試料プレート20に対して励起ビームを照射すると、照射点となる点源7から一定の開き角をもって、荷電粒子(電子あるいはイオン)が放出される。
本実施例の平行ビーム発生装置では、点源7から発生した荷電粒子の取り込み角は±58°程度まで、荷電粒子の軌跡が静電レンズにより平行化されるように、非球面メッシュ2のメッシュ形状と5つの電極(10~14)の電位及び配置が調整されている。そして、荷電粒子の軌跡が軸に対して平行化された後で、荷電粒子が平面コリメータプレート3に対して垂直に入射するように、静電レンズと平面コリメータプレート3とが共軸に配置される。
【0037】
励起ビームは、励起ビーム誘導管21によって試料プレート20に照射されることで、点源7から発生した荷電粒子との干渉がないようにしている。点源7から発生した荷電粒子の取り込み角は±58°程度の場合、励起ビーム誘導管21は、試料プレート20に対して、励起ビームの入射角が75°以上になるように配置される。
図1に示すように、蛍光スクリーン4を設けて、平面コリメータプレート3から出射する特定の運動エネルギーの荷電粒子を、蛍光スクリーン4によって輝点に変換し、それをカメラで画像化しエネルギー分布を計測することができる。
【0038】
図2を参照して、点源からの取り込み角と荷電粒子の軌跡の角度について説明する。図2(1)(2)の横軸(Initial angle)は、点源から放出される荷電粒子の取り込み角(立体角)を示しており、図2(1)の縦軸はコリメータ中心からの距離(Xf)、図2(2)の縦軸(Final angle)は、平面コリメータプレート3に入射する荷電粒子の軌跡の角度を示している。角度は、共に、試料プレートに対して垂直な軸からの角度である。本実施例の平行ビーム発生装置では、平行化できる取り込み角の範囲が0~±58°であり、点源から放出される荷電粒子に対して、横軸(Initial angle)が0~60°までの荷電粒子の内、平面コリメータプレート3に入射する荷電粒子の軌跡の角度は58°程度までは0°(すなわち軸と平行)であるが、58°より大きくなると角度が0°から外れ、平行でないことが示されている。
【0039】
例えば、試料プレート20として単結晶表面、励起ビームとしてX線を用いて、点源7から電子を放出する場合について説明する。本実施例の平行ビーム発生装置では、点源7から放出される電子のエネルギーが1000eVで、取り込み角の範囲が0~±58°までは電子ビームを平行化できる。
【0040】
電極の配置と電位について一例を説明する。それぞれの電極10~15は、同軸のリング状の電極である。静電レンズを構成する5つの電極(10~14)の内、図3に示すように、電極10は、非球面メッシュ2と接続されており、0Vとなるようにアースに繋がれている。これは、試料プレート20と同電位とするためである。3つの電極11~13は、順番に、点源7から遠ざかるように配置され、かつ、電子ビームの外周の外側に電極の先端部が配置されるように、電極の長さが短くなっている。電極14は、最も離れた位置に配置され、軸方向に長く延びた形状となっている。また、電極15は、平面コリメータプレート3に接続されている。
【0041】
エネルギーがx keVの電子ビームを平行化するケースにおける各々の電極の電位は、電極10が0V,電極11が-520xV,電極12が-780xV,電極13が-888xV,電極14が-914.5xV,電極15が-950xVである。
【0042】
次に、図4を参照して、非球面メッシュの形状について説明する。非球面メッシュ2は、メッシュ開口部の中心付近からメッシュ中心の位置までを長軸とする略回転楕円体(図中のA)で、メッシュ開口部付近(図中のB)は内側に凸の曲率で広がる形状である。
点源から放出する荷電粒子に対して、相対的に中心軸方向の力が増大するように電場を生成すべく、メッシュの形状は球面ではなく、軸方向に長軸をもつ回転楕円面に近い形状としている。
【0043】
図5,図6を参照して、図1に示す平行ビーム発生装置において、電極の配置および電位が同じで、1000eVとは異なるエネルギーの電子の軌跡について説明する。
図5は1030eVのエネルギーの電子の軌跡であり、図6は970eVのエネルギーの電子の軌跡である。
各々の電極の電位は、図1の場合と同じで、電極10が0V,電極11が-520V,電極12が-780V,電極13が-888V,電極14が-914.5V,電極15が-950Vである。
図5(1)及び図6(1)に示す電子の軌跡と、図5(3)及び図6(3)に示すグラフからわかるように、電子のエネルギーが大きくなれば、平行よりも拡がるビームになっており、反対に、電子のエネルギーが小さくなれば、平行よりも収束するビームになっている。
【0044】
図7を参照して、平面コリメータプレートの透過率について説明する。図7(1)は、アスペクト比(孔径と孔長の比)1:5である細孔が設けられた平面コリメータプレートの透過率(点源の場合)を示している。また、図7(2)~(6)は、それぞれアスペクト比(孔径と孔長の比)1:10、1:20、1:30、1:40、1:50である細孔が設けられた平面コリメータプレートの透過率(点源の場合)を示している。特に出射角(極角)が大きくなると特定のエネルギー以外に対する透過率が抑制され、平面コリメータプレートだけで十分なエネルギー分解能を有するバンドパスフィルターの機能が得られることを示している。
【0045】
図8は、図1に示す平行ビーム発生装置において、1000eVの電子のエネルギー、電極の配置および電位が同じで、試料プレートに励起ビームを照射する範囲を拡げて、電子の出射位置を異なられた場合(点源の位置を0として、±0.5mm,±1.0mm)の電子の軌跡を示している。この場合、平面コリメータプレートに入射する電子の回折面は平面でなく曲面となる。軸上の電子ビームの収束角は、±9.7°となり、エネルギーだけでなく位置も選択することがわかる。本実施例の平行ビーム発生装置によれば、100μm以下の収束ビームを励起ビームとして用いた場合、エネルギー分解能1.0~0.5%を達成できる。逆に弾性散乱成分が主となる電子回折では、ビーム径が大きくても100μm以下の領域の電子回折模様を選択的に計測することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、実施例1の平行ビーム発生装置において、静電レンズの電極数が異なる場合について図9を参照して説明する。
図9(1)~(5)は、同一形状の非球面メッシュを用いた静電レンズにおいて、入射角75°の入射光による点源から出射する電子の軌跡を示している。入射角75°の入射光は、出射電子の通路と干渉しないようにするためである。図9(1)~(5)は、静電レンズの電極数がそれぞれ異なっている。非球面メッシュに接続されるメッシュ電極はアース電位に固定され、マイナス電位の電極が単一あるいは複数配置されている。すなわち、メッシュ電極以外の電極は、マイナス電位になっている。図9(1)は電極数が1、図9(2)は電極数が2、図9(3)は電極数が3、図9(4)は電極数が5、図9(5)は電極数が6である。なお、図9において、アース電位に固定されているメッシュ電極は電極数から除いている。
シミュレーションの結果、点源からの出射角度60°付近までを確実に平行化するためには、図9(4)又は図9(5)の5電極以上が必要である。しかしながら、汎用の用途であれば、図9(1)の単一の電極でも略平行化できており、十分に実用化可能であることを確認した。
【0047】
次に、平行ビーム発生装置において、電極数の異なる実施例に応じて非球面メッシュの形状の最適化を行った。
電極数が多くなるにつれ、長軸対短軸の比が小さくなり、球面に近づく。メッシュ開口部付近の内側に凸の曲率で広がる形状を導入することにより、点源からの出射角度60°付近までを確実に平行化することができる。
【実施例3】
【0048】
図1に示す平行ビーム発生装置を、単一エネルギーの大口径平行イオンビーム源として組み込んだイオンエッチング装置について説明する。
イオンエッチング(Ion Etching)装置は、半導体微細素子製作、切削工具、部品等のコーティング皮膜除去、微細バリ除去、先端形状加工、金属材料表面に付着した汚れ除去、金属材料表面の活性化を行うものであり、イオンビーム源から出射したイオンビームを、エッチング材料表面の原子と化学反応させ、或は、エッチング材料表面を物理化学的に削り、材料表面の形状をエッチングする。
【0049】
上述の如く、実施例1又は実施例2の平行ビーム発生装置を用いることにより、広立体角範囲でイオンを取り込み、単一の運動エネルギーの大口径平行イオンビームを生成することができる。すなわち、実施例1又は実施例2の平行ビーム発生装置を用いることにより、イオンエッチング装置のイオンビーム源を、単一エネルギーの大口径平行イオンビーム源にすることが可能になる。これにより、イオンビームの中心から離れた場所でも、イオンビームが試料表面に垂直に当たるため、マスクを用いたパターン加工の際にも端部がだれることがなく、高アスペクト比の成型ができ、形状の精密制御エッチングが可能である。また単一エネルギーのイオンを用いるとエッチングの速度を制御することが容易になり、エッチングする薄膜の厚さを制御することも可能となる。
【実施例4】
【0050】
図10は角度分布測定分析器の構成図を示している。本実施例の角度分布測定分析器は、実施例1の平行ビーム発生装置において、平面コリメータプレート3と蛍光スクリーン4の間に、阻止電位グリッド32と平面マイクロチャンネルプレート31を設け、グリッド32に印加する直流電圧を変化させて、グリッド32を通過する荷電粒子による電流の変化をロックイン変調電場30によってロックイン検出するものである。ロックイン検出することにより、平面コリメータプレート3から出射する特定の運動エネルギー荷電粒子のエネルギー分解能(ΔE/E)を0.1~0.01%に向上することができる。
【0051】
従来の阻止電場型の装置では、S/B比(Signal/Background ratio)が悪く、平面のマイクロチャンネルプレートによる増幅が困難であり、ロックイン検出では、変調電場は1Vから10Vを使用しているのに対して、図10は角度分布測定分析器では、平面コリメータプレート3によるバンドパスフィルター機能により、高S/B比、高増幅が可能となり、変調電場を100mVまで小さくすることができる。また、平面のマイクロチャンネルプレートを用いて信号増幅することができる。なお、平面コリメータプレート3によるバンドパスフィルターのエネルギー分解能は相対値であり、1%のエネルギー分解能の場合、100eVに対して1eV、1keVに対して10eVの分解能となる。また、ロックイン検出による測定のエネルギー分解能は変調電場で決まる絶対値となるので、100mVの変調電場の場合、100eVに対して0.1%、1keVに対して0.01%の分解能となるのである。
【実施例5】
【0052】
図11は広立体角X線検出器の構成図を示している。本実施例の広立体角X線検出器は、実施例1の平行ビーム発生装置において、平面コリメータプレート3を負電位、蛍光スクリーン4を正電位とし、平面コリメータプレート3で発生する電子を増幅するX線検出器について説明する。
X線や電子線で内殻準位を励起すると、生成された内殻空孔に価電子などが緩和し、その余剰のエネルギーを得てオージェ電子や蛍光X線が放出される。平均自由行程の短いオージェ電子は試料表面付近から、平均自由行程の長い蛍光X線は結晶内部からも放出される。X線吸収分光測定では、X線の吸収強度に比例してオージェ電子と蛍光X線が同時に放出されるが、これまで別の検出器を用いてオージェ電子収量法X線吸収測定と蛍光X線収量法X線吸収測定が行われてきた。蛍光X線は、電場に関わらず直線状に進むので、従来の球面メッシュを用いた阻止電位型電子分析器ではすべて蛍光スクリーンに到達し除去することはできない。
【0053】
上述の実施例4では、平面コリメータプレート3と阻止電位グリッド32を組み合わせることにより、直線状に進む蛍光X線の進路を妨げることで、オージェ電子の分析時に蛍光X線を除去することを可能にする。逆に、本実施例5では、平面コリメータプレート3に負電位を印加してオージェ電子を阻止し、阻止電位グリッド32と蛍光スクリーン4に正電位を印加することにより、蛍光X線の信号強度を平面コリメータプレート3で電子に変換することができ、広い立体角のX線検出器として用いることを可能にする。
このように、本発明では印加する電場を反転させるだけで同じ検出器でオージェ電子と蛍光X線を計測することができ、表面と結晶内部の深さに依存したX線吸収分光の情報が得られる検出器となるのである。
【0054】
ここで、X線検出の際には、X線を平面コリメータプレート3で電子に変換した後に増幅する必要があるため、平面マイクロチャンネルプレート31を設けて電子を増幅している。一方、X線除去の際には、逆にX線から発生した電子を跳ね返すために必要であり、阻止電位グリッド32を設けている。なお、図11の構成では、電極11~14をアースに接続し、電極15を負電位にしているが、電極11~15の全てを負電位にしても構わない。
【実施例6】
【0055】
図1に示す平行ビーム発生装置の出入口を逆にして、平面コリメータプレート3により特定の方向の荷電粒子流を取り出して、特定のエネルギーの粒子だけを静電レンズで一点に集光し強度を計測できる平行ビーム収束装置について説明する。
平行ビーム収束装置は、図1に示す構成と同様に、集光点に対し凹面状を有する軸対称な非球面メッシュ2および軸対称な単一乃至は複数の電極から成る静電レンズと、静電レンズと同軸に配置される平面コリメータプレート3とから構成され、平面コリメータプレート3に対して略垂直に入射する特定の運動エネルギー荷電粒子の出射後の軌跡が、静電レンズにより集光点に集光するように、非球面メッシュ2の形状とアース電極10と印加電極(11~15)の電位及び配置が調整されている。
【0056】
但し、平行ビーム収束装置では、平行ビーム発生装置の場合と比べて出入口が逆になる。また、平行ビーム収束装置では、平行ビーム発生装置の場合と比べて、蛍光スクリーン4及び励起ビーム誘導管21は不要である。
各電極10~15の電位は、実施例1の場合と同じで、電極10が0V(アース電位に固定),電極11が-520V,電極12が-780V,電極13が-888V,電極14が-914.5V,電極15が-950Vである。
【0057】
ここで、平面コリメータプレート3が、特定の運動エネルギーの荷電粒子のみを選別するバンドパスフィルターとして機能し、平面コリメータプレートに入射する特定方向の荷電粒子流を取り出す。平面コリメータプレート3は、アスペクト比(孔径と孔長の比)1:10の細孔が開口率50%以上設けられている。
非球面メッシュの形状は、メッシュ開口部の中心付近からメッシュ中心の位置までを長軸とする略回転楕円体で、メッシュ開口部付近は内側に凸の曲率で広がる形状である。
【実施例7】
【0058】
実施例7,8では、静電レンズの実施態様について説明する。
本発明の静電レンズでは、光学系は複数の電極からなり、そのうち少なくとも1つに、物面に対して凹面形状を有する非球面メッシュが設けられる。この非球面メッシュは、点源から出た荷電粒子を広い立体角度にわたって取り込み、取り込んだ荷電粒子の軌道を高い平行度で平行化する。
【0059】
非球面メッシュの形状は、点源から発生した荷電粒子の取り込み角が±60°で、荷電粒子の軌跡を光軸からのズレ角が±1°以下に平行化する場合であって、それほど高い平行度を必要としない場合は、メッシュ形状を回転楕円面によって設計することができる。
また、アース電位に固定されたメッシュ電極を除く電極数について、平行化する取り込み角が±50°程度以下でよい場合や、あまり高い平行度を必要としない場合は、最少で1つでも構わない。
以下では、非球面メッシュの形状を回転楕円面で設計されるもので、電極数が1~5の静電レンズについて、それらの荷電粒子の軌跡と平行度について説明する。
【0060】
図12は、電極数1の静電レンズの一例である。非球面メッシュの形状は、回転楕円体によって設計され、その回転楕円体における長軸半径と短軸半径との比(以下、長軸短軸比と略する)は、1.79である。各電極の印加電圧は、1keVの電子に対して、メッシュ電極(G)が0V、第一電極(EL1)が-775Vである。
図12(1)は光軸を含む断面図であり、太い実線によって電極および非球面メッシュの内面形状を表している。点線は等電位線、細い実線は荷電粒子の軌道を表している。入射角は5°ステップで-55°~55°まで描いている。
メッシュ電極(G)には、回転楕円面形状のメッシュが接続されている。回転楕円面の長軸短軸比は1.79としている。第一電極(EL1)の終端部は、平面コリメータに対応する。メッシュ電極(G)と第一電極(EL1)に印加される電圧は、1keVの電子に対して、それぞれ、0Vと-775Vである。
図12(2)は、図12(1)に示した荷電粒子の軌道の終点での角度(光軸からの角度)を、非球面メッシュへの入射角(Initial angle)に対してプロットしたものである。入射角-55°~55°の荷電粒子が、光軸とのなす角度が0.8°程度まで平行化されることがわかる。
【0061】
平行化のためには、メッシュの形状とともに、電極をどのように配置するかが重要である。特に、メッシュ電極(G)と第一電極(EL1)の位置関係が重要になる。計算によると、メッシュ電極(G)と第一電極(EL1)の開口部半径をそれぞれR1、R2とすると(図12(1)参照)、R2/R1は、1.2~1.6程度が好ましい態様である。図12に示す静電レンズの場合は、R2/R1=1.42である。後述する図13~18に示す静電レンズは、いずれもR2/R1=1.42である。
【0062】
図13は、電極数2の静電レンズの一例である。非球面メッシュの形状は、回転楕円体によって設計され、その回転楕円体における長軸短軸比は、1.66である。各電極の印加電圧は、1keVの電子に対して、メッシュ電極(G)が0V、第一電極(EL1)が-680V、第二電極(EL2)が-820Vである。
図13(1)に示す電極数2の静電レンズは、図12(1)における第一電極(EL1)をメッシュ電極(G)の側で2つに分割したものである。荷電粒子の軌跡ついて、図13(1)と図12(1)とを比較すると、図12(1)では、平行化の結果、軌道間隔が広角度側でかなり狭くなっているのに対し、図13(1)では、平行化の結果、軌道間隔がほぼ等間隔の軌道になっていることがわかる。
また、図13(2)は、図13(1)に示した軌道の終点での角度(光軸からの角度)を入射角に対してプロットしたものであるが、入射角-55°~55°の荷電粒子が、光軸とのなす角度が0.6°程度まで平行化されることがわかる。
【0063】
図14は、電極数3の静電レンズの一例である。非球面メッシュの形状は、回転楕円体によって設計され、その回転楕円体における長軸短軸比は、1.62である。各電極の印加電圧は、1keVの電子に対して、メッシュ電極(G)が0V、第一電極(EL1)が-625V、第二電極(EL2)-745V、第三電極(EL3)が-832Vである。
図14(1)に示す電極数3の静電レンズは、図12(1)における第一電極(EL1)をメッシュ電極(G)の側で3つに分割したものである。荷電粒子の軌跡ついて、図14(1)と図12(1)とを比較すると、図12(1)では、平行化の結果、軌道間隔が広角度側でかなり狭くなっているのに対し、図14(1)では、平行化の結果、軌道間隔がほぼ等間隔の軌道になっていることがわかる。
また、図14(2)は、図14(1)に示した軌道の終点での角度(光軸からの角度)を入射角に対してプロットしたものであるが、入射角-55°~55°の荷電粒子が、光軸とのなす角度が0.6°程度まで平行化されることがわかる。
【0064】
このように、電極数2の静電レンズ(図13)と電極数3の静電レンズ(図14)の場合では、電極数1の静電レンズ(図12)の場合と比べて、荷電粒子の軌道の平行度について改善が認められる。
非球面メッシュの形状に注目すると、電極数が増えることによって、適切な非球面メッシュの形状が、長軸短軸比のより小さい回転楕円面に変化する。図13(1)と図14(1)の例では、回転楕円面の長軸短軸比は、それぞれ1.66と1.62である。一般に、メッシュへの入射が垂直に近いほど透過率は高くなる。したがって、長軸短軸比のより小さいメッシュの方が高い透過率を実現する上で有利である。また、メッシュ電極を高い精度で作製する上でも長軸短軸比は小さい方が望ましい。
【0065】
図15は、電極数4の静電レンズの一例である。非球面メッシュの形状は、回転楕円体によって設計され、その回転楕円体における長軸短軸比は、1.59である。各電極の印加電圧は、1keVの電子に対して、メッシュ電極(G)が0V、第一電極(EL1)が-620V、第二電極(EL2)が-750V、第三電極(EL3)が-830V、第四電極(EL4)が-850Vである。
図15(1)に示す電極数4の静電レンズは、図14(1)における第三電極(EL3)を円筒部で2つに分割したものである。
【0066】
図16は、電極数5の静電レンズの一例である。非球面メッシュの形状は、回転楕円体によって設計され、その回転楕円体における長軸短軸比は、1.49である。各電極の印加電圧は、1keVの電子に対して、メッシュ電極(G)が0V、第一電極(EL1)が-590V、第二電極(EL2)が-730V、第三電極(EL3)が-860V、第四電極(EL4)が-880V、第五電極(EL5)が-900Vである。
図16(1)に示す電極数5の静電レンズは、図14(1)における第三電極(EL3)を円筒部で2つに分割し、さらに終端部を円筒部から分割し、第五電極(EL5)としたものである。
【0067】
図17は、図16と同様、電極数6の静電レンズの一例である。但し、非球面メッシュの形状は、回転楕円体によって設計され、その回転楕円体における長軸短軸比は、1.37であり、また、各電極の印加電圧は、1keVの電子に対して、メッシュ電極(G)が0V、第一電極(EL1)が-580V、第二電極(EL2)が-730V、第三電極(EL3)が-870V、第四電極(EL4)が-919V、第五電極(EL5)が-950Vである。
【0068】
図16と図17の静電レンズでは、電極数は同じであるが、減速の比率が異なっている。ここで、終端部での運動エネルギー(Ef)と入射時の運動エネルギー(Ei)の比 (Ef/Ei)を減速比とする。
図15~図17における減速比は、それぞれ、0.15, 0.1, 0.05である。低い減速比を達成するには、円筒部は1個の電極ではなく、図15~図17のように複数の電極によって構成されることが好ましい。図15~図17において、回転楕円面の長軸短軸比は、それぞれ、1.59, 1.49, 1.37である。減速比が低くなると、適切なメッシュの形状は、長軸短軸比のより小さい回転楕円面になることがわかる。
図12~17において、得られる荷電粒子の軌道の光軸とのなす角度は0.3~0.8°程度であるが、この平行度は、非球面メッシュ形状を回転楕円面ではなく、適切な多項式関数によって表すことにより大幅に改善できる。これについては、次の実施例8で説明する。
【実施例8】
【0069】
次に、本発明の静電レンズにおいて、点源から発生した荷電粒子の取り込み角が±60°で、荷電粒子の軌跡を光軸からのズレ角が±1°以下に平行化する場合であって、上述の実施例7で示した静電レンズと比べて、より高い平行度を必要とする場合には、メッシュ形状を回転楕円面によって設計するのではなく、回転楕円面とは異なる形状の非球面メッシュを用いる。
より詳しくは、非球面メッシュ形状は、同じ長軸半径と短軸半径の回転楕円体の形状と比べ、長軸からの半径方向のズレが半径距離の5%以下であり、また、点源とメッシュ形状表面とを結ぶ軸と長軸との成す角度が40°より大きい位置に、上記半径方向のズレを角度について一階微分しプロットしたものの変曲点が存在する。
具体的には、非球面メッシュ形状は、下記の多項式関数の数式で表されるdmeshにより表すことができる。
【0070】
【数2】
JP2017010529A1_000004t.gif

【0071】
上記の多項式関数の数式において、図19(1)に示すように、dmeshは点源からメッシュ表面位置までの距離、距離dは点源から光軸上のメッシュ先端位置までの距離、距離dは点源からメッシュのエッジ位置までの距離である。また、角度θとθmaxはそれぞれメッシュ表面とメッシュのエッジ位置を決めるための光軸からのズレ角を示す。また、αは角度θの関数、nは関数の次元数で、wはパラメータa~aによって決定されるパラメータである。
【0072】
図18は、非球面メッシュの形状が上記の多項式関数を用いて設計された静電レンズの一例である。図18(1)に示すように、本実施例の静電レンズにおける電極の構成は、図13に示した電極数2の静電レンズと同じであり、各電極の印加電圧は、1keVの電子に対して、メッシュ電極(G)が0V、第一電極(EL1)が-772V、第二電極(EL2)が-796Vである。
多項式関数の次元nは5とし、各パラメータの値は下記表1の通りである。
【0073】
【表1】
JP2017010529A1_000005t.gif

【0074】
図18(2)は、図18(1)に示した軌道の終点での角度(光軸からの角度)を入射角に対してプロットしたものである。図13(2)に示した電極数3の静電レンズの場合は、荷電粒子の軌道の光軸とのなす角度は0.5°程度の平行度であるに対して、図18(2)では、入射角-45°~45°の取り込み角にわたって、荷電粒子の起動と光軸とのなす角度は±0.01°程度の非常に高い平行度であることがわかる。
【0075】
図19(2)は、図18に示した非球面メッシュ形状と図12に示した非球面メッシュ形状(回転楕円面)の比較である。前者を実線で、後者を点線で表している。両者の形状を光軸からの半径方向の距離xで比較した場合、ズレは5%程度以下である。しかしながら、両者の形状には決定的な違いがある。この違いをさらに分かりやすく示すために、xの角度θについての一階微分を各形状に対して計算した結果を図20に示す。
【0076】
図20は、本実施例の静電レンズの非球状メッシュ形状の特徴を説明する図である。図20(1)は、図12に示した非球面メッシュ形状(図19の点線)に、図20(2)は図18に示した非球面メッシュ形状(図19の実線)にそれぞれ対応している。図12に示した非球面メッシュ形状の回転楕円面の場合は、変曲点が存在せず、図20(1)では単調な減少関数となっている。これに対して、図18に示した非球面メッシュ形状の場合は、変曲点が存在し、図20(2)では、θの増加とともに減少した後、増加に転じる関数となっている。図18に示した非球面メッシュ形状では、変曲点は、θ=54°の辺りの位置に存在している。
【0077】
以上から、実施例7,8の静電レンズでは、電極数、取り込み角、減速比の異なる様々な設計において、より適切なメッシュ形状は、回転楕円面からのズレが5%程度以下で、高角度側に変曲点を有する滑らかな曲線であることが確認できた。但し、変曲点の位置や回転楕円面からのズレ量は、電極数、長軸短軸比、或は、多項式関数のパラメータなどの設計によって変化する。実施例7,8の静電レンズにおける設計の要点を纏めると次のとおりである。
【0078】
(1)取り込み角が±50°程度以下でよい場合、または、あまり高い平行度を必要としない場合、具体的には±0.5°程度の平行度でよい場合、非球面メッシュ形状は、回転楕円面とすることができる。
(2)非球面メッシュに接続されアース電位に固定されたメッシュ電極の開口部半径R1と、メッシュ電極に隣接する第一電極の開口部半径R1との比(R2/R1)は、1.2以上1.6以下が好ましい。
(3)メッシュ電極を除く電極数(以下、同じ)が1で、減速比が0.1以上0.3以下の場合、回転楕円面の長軸短軸比は1.69以上1.89以下が好ましい。
(4)電極数が2で、減速比が0.1以上0.3以下の場合、回転楕円面の長軸短軸比は1.56以上1.76以下が好ましい。
(5)電極数が3で、減速比が0.1以上0.3以下の場合、回転楕円面の長軸短軸比は1.52以上1.72以下が好ましい。
(6)電極数が4で、減速比が0.1以上0.3以下の場合、回転楕円面の長軸短軸比は1.49以上1.69以下が好ましい。
(7)電極数が5以上で、減速比が0.1以上0.3以下の場合、回転楕円面の長軸短軸比は1.39以上1.59以下が好ましい。
(8)電極数によらず、減速比が0.01以上0.1未満の場合、回転楕円面の長軸短軸比は1.0より大きく1.5未満が好ましい。
(9)より高い平行度、具体的には±0.3°程度以下の平行度が必要な場合、非球面メッシュ形状は、回転楕円面ではなく、回転楕円面からのズレが5%程度以下で、高角度側に変曲点をもつ滑らかな曲線によって設計されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の静電レンズ及びそれを用いた平行ビーム発生装置は、角度分解光電子分光による結晶表面のバンド分散測定やフェルミ面マッピング、深さ方向の組成分析、電子回折、光電子回折による原子構造分析、放出イオン角度分布による吸着分子構造の解析に有用である。
また、本発明の平行ビーム収束装置は、特定のエネルギーの粒子だけを静電レンズにより一点に集光させてエネルギー強度を計測する荷電粒子流方位・エネルギー計測に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 平行ビーム装置
2 非球面メッシュ
3 平面コリメータプレート
4 蛍光スクリーン
5 軸
6 軌跡
7 点源
8 磁気遮蔽カバー
10~17 電極
20 試料プレート
21 励起ビーム誘導管
30 ロックイン変調電場
31 平面マイクロチャンネルプレート
32 阻止電位グリッド
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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