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明細書 :リチウムイオン伝導性材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-052755 (P2018-052755A)
公開日 平成30年4月5日(2018.4.5)
発明の名称または考案の名称 リチウムイオン伝導性材料
国際特許分類 C04B  35/16        (2006.01)
C03C  10/00        (2006.01)
H01M  10/052       (2010.01)
H01M  10/0562      (2010.01)
H01B   1/06        (2006.01)
H01B   1/08        (2006.01)
C03C   4/14        (2006.01)
C03C  10/02        (2006.01)
C03C  10/16        (2006.01)
C03C   3/23        (2006.01)
C03C   3/19        (2006.01)
C03C   3/17        (2006.01)
C03C   3/145       (2006.01)
C03C   3/14        (2006.01)
C03C   3/064       (2006.01)
FI C04B 35/16
C03C 10/00
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01B 1/06 A
H01B 1/08
C03C 4/14
C03C 10/02
C03C 10/16
C03C 3/23
C03C 3/19
C03C 3/17
C03C 3/145
C03C 3/14
C03C 3/064
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2016-187637 (P2016-187637)
出願日 平成28年9月26日(2016.9.26)
発明者または考案者 【氏名】梶原 浩一
【氏名】手塚 直人
【氏名】金村 聖志
出願人 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
個別代理人の代理人 【識別番号】100150876、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 裕一郎
審査請求 未請求
テーマコード 4G062
5G301
5H029
Fターム 4G062AA11
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4G062HH01
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4G062KK05
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4G062KK10
4G062MM23
4G062NN25
4G062NN34
4G062QQ18
4G062QQ20
5G301CA02
5G301CA12
5G301CA16
5G301CA19
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AM12
5H029DJ17
5H029HJ02
要約 【課題】新規で、高いイオン伝導性を有し、簡易且つ簡便に製造することができ、化学的安定性にも優れたリチウムイオン伝導性材料の提供。
【解決手段】式(1)で表されるリチウムイオン伝導性材料。Li4-7(n-3)y(B1-yy12X・・・(1)(Mはn価の価数を有する陽イオンになる、一種又は複数種の原子;Xは1価又は多価の価数を有し、陰イオンになる一種又は複数種の原子又は分子;yは0.03~0.60の数)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表されるリチウム系化合物。
Li4-7(n-3)y(B1-yy12X ・・・(1)

(式中、Mは、n価の価数を有し、陽イオンになる、一種又は複数種の原子を示し、
Xは1価又は多価の価数を有し、陰イオンになる一種又は複数種の原子又は分子を示し、
yは0.03~0.60の数を示す。)
【請求項2】
請求項1記載のリチウム系化合物を用いてなるリチウムイオン伝導性材料。
【請求項3】
結晶質であり、上記yが0.03~0.45である請求項2記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項4】
上記Mが、Si、Al、Ga又はPからなる群より選択される一種以上の原子である請求項2又は3記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性材料を用いてなる固体電解質。
【請求項6】
請求項5記載の固体電解質を有するリチウム電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン伝導性材料に関し、さらに詳細には、全固体リチウムイオン電池の固体電解質として利用できるリチウムイオン伝導性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池、センサー及びエレクトロクロミックデバイスに用いることができるリチウムイオン伝導体は、種々開発が行われ、提案がなされている。
例えば、固体のイオン伝導体において、該イオン伝導体がペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなり、このペロブスカイト構造のAサイトの半分以上がリチウム及び3価の金属原子によって占められているリチウムイオン伝導体およびこれを用いた固体電解質電池が提案されており(特許文献1)、また該イオン伝導体がガーネット型の結晶構造を有し、かつ3.4×10-6S・cm-1より大きいイオン伝導度を示すことを特徴とする固体のイオン伝導体が提案されている(特許文献2)。リチウム二次電池の固体電解質材料等として使用可能な程度の緻密度やリチウムイオン伝導度を示すことのできるセラミックス材料として、リチウム(Li)とランタン(La)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)とアルミニウム(Al)とを含有するセラミックス材料とが提案されている(特許文献3)。
容易に製造でき、熱的、化学的に安定で、且つ、室温で高い伝導度を有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスおよびこれを用いた電池、ガスセンサーとして、mol%で、P25=35~45%、SiO2=0~15%、GeO2=0~50%、TiO2=0~50%(但し、GeO2+TiO2=25~50%)、ZrO2=0~8%、M23=0<~12%(但し、MはIn,Fe,Cr,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luの中から選ばれる1種または2種以上),Al23=0~12%,Ga23=0~12%,Li2O=10~25%、の範囲の組成を含有する原ガラスを、熔融成形後、熱処理工程を経て、Li1+X(M,Al,Ga)X(Ge1-YTiY2-X(PO43(0<X≦0.8,0≦Y<1.0)結晶相を析出させた材料を用いたリチウム電池やガスセンサーが提案されている(特許文献4)。電池の充放電電圧をより高めることができ、且つ、電池の充放電特性をより高めることが可能なリチウムイオン伝導性無機物質として、酸化物基準の質量%で、ZrO成分を2.6~52.0%含有するリチウムイオン伝導性無機物質が提案されている。また、この提案においては、このリチウムイオン伝導性無機物質は、正極層及び負極層と、これら正極層及び負極層の間に介在する固体電解質を含んだ固体電解質層と、を備えるリチウムイオン二次電池に用いられることが好ましいことが記載されている(特許文献5)。リチウムボラサイトの結晶構造とイオン伝導に関する研究が報告されており、750℃において、B-LiO-LiX三元系(X=Cl,Br)から、組成式Li4+x12+x/2X(X=Cl,Br)で表されるイオン伝導性結晶が得られると示唆されている(非特許文献1、2)。また、水熱条件下で、組成式Li12Cl、Li(OH)、LiH、およびLiHBOで表されるイオン伝導性結晶が示されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平5-333577号公報
【特許文献2】特表2007-528108号公報
【特許文献3】特開2011-051800号公報
【特許文献4】特開2000-034134号公報
【特許文献5】特開2012-246196号公報
【0004】
<nplcit num="1"> <text>B. Cales, A. Levasseur, C. Fouassier, J. M. Reau, P. Hagenmuller, Conductivite ionique du lithium dans les solutions solides de structure boracite Li4+xB7O12+x/2X (X = Cl, Br) (0<=x<=1), Solid State Commun. 24, 323 (1977)【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の提案にかかるリチウムイオン伝導性材料では、金属リチウムと接触すると劣化するという問題、緻密化するのに比較的高い焼結温度が必要で、リチウムの揮発によるリチウム欠損やそれに伴う試料の分解が起こりやすいという問題、製造が困難であるという問題等があった。
具体的には、酸化物系高リチウムイオン伝導性セラミックスとして知られる含チタンペロブスカイト型リチウム化合物(特許文献1)においては、金属リチウムと接触すると劣化するという問題があり、同じく酸化物系高リチウムイオン伝導性セラミックスであるガーネット型のリチウム化合物(特許文献2)やAlのドープされたリチウム化合物(特許文献3)においては、緻密化するのに比較的高い焼結温度が必要で、リチウムの揮発によるリチウム欠損やそれに伴う試料の分解が起こりやすいという問題があった。
また、熔融急冷-結晶化法を用いた酸化物系高リチウムイオン伝導性セラミックス(特許文献4、特許文献5)においては金属リチウムと接触すると劣化するという問題があった。
また、従来の提案では、リチウムボラサイト結晶はアンプル中での合成(非特許文献1)や水熱合成(非特許文献2、非特許文献3)などしか報告がなく、簡便に得ることができないとされており、そのため、近年研究はほとんど行われていなかった。
以上のような現状ため、高いイオン伝導性、合成の容易さと化学的安定性を併せ持つ新規リチウムイオン伝導性材料の開発が要望されているのが現状である。
【0006】
したがって本発明の目的は、新規で、高いイオン伝導性を有し、簡易且つ簡便に製造することができ、化学的安定性にも優れたリチウムイオン伝導性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解消するために鋭意検討した結果、ホウ素と共に特定の原子を導入したリチウムボラサイト型結晶により上記目的を達成し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の各発明を提供するものである。
1.下記一般式(1)で表されるリチウム系化合物。
Li4-7(n-3)y(B1-yy12X ・・・(1)

(式中、Mは、n価の価数を有し、陽イオンになる、一種又は複数種の原子を示し、
Xは1価又は多価の価数を有し、陰イオンになる一種又は複数種の原子又は分子を示し、
yは0.03~0.60の数を示す。)
2.1記載のリチウム系化合物を用いてなるリチウムイオン伝導性材料。
3.結晶質であり、上記yが0.03~0.45である2記載のリチウムイオン伝導性材料。
4.上記Mが、Si、Al、Ga又はPからなる群より選択される一種以上の原子である2又は3記載のリチウムイオン伝導性材料。
5.2~4のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性材料を用いてなる固体電解質。
6.5記載の固体電解質を有するリチウム電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、新規なリチウム系化合物からなり、高イオン伝導性と化学的安定性を有し、簡便に合成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1で得られた試料を粉砕して測定したX線回折パターンを表すチャートである。
【図2】図2は、実施例1で得られた試料の格子定数のSi添加量依存性、および比較例1で得られた試料の格子定数を表すグラフである。
【図3】図3は、実施例1、および比較例1で得られた試料の交流伝導度のアレニウスプロットである。
【図4】図4は、比較例1で得られた試料を粉砕して測定したX線回折パターンを表すチャートである。
【図5】図5は、比較例1で得られた試料の交流伝導度のアレニウスプロットである。
【図6】図6は、実施例2で得られた試料を粉砕して測定したX線回折パターンを表すチャートである。
【図7】図7は、実施例2で得られた試料の格子定数のP添加量依存性、および比較例1で得られた試料の格子定数を表すグラフである。
【図8】図8は、比較例2で得られた試料を粉砕して測定したX線回折パターンを表すチャートである。
【図9】図9は、比較例2で得られた試料の格子定数のZn添加量依存性、および比較例1で得られた試料の格子定数を表すグラフである。
【図10】図10は、実施例3で得られた試料を粉砕して測定したX線回折パターンを表すチャートである。
【図11】図11は、実施例3で得られた試料の格子定数のAl添加量依存性、および比較例1で得られた試料の格子定数を表すグラフである。
【図12】図12は、実施例3、および比較例1で得られた試料の交流伝導度のアレニウスプロットである。
【図13】図13は、実施例3で得られた試料のリートベルト解析結果を表すチャートである。
【図14】図14は、実施例4で得られた試料を粉砕して測定したX線回折パターンを表すチャートである。
【図15】図15は、実施例4で得られた試料の格子定数のGa添加量依存性、および比較例1で得られた試料の格子定数を表すグラフである。
【図16】図16は、実施例4で得られた試料の交流伝導度のアレニウスプロットである。
【図17】図17は、実施例4で得られた試料のリートベルト解析結果を表すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、下記一般式(1)で表される本発明のリチウム系化合物からなる。
Li4-7(n-3)y(B1-yy12X・・・(1)
Mは、n価の価数を有し、陽イオンになる、一種又は複数種の原子を示す。イオン伝導性材料(固体電解質)には酸化還元耐性が必要なため、上記のn価の価数を有し、陽イオンになる、一種又は複数種の原子としては酸化還元されにくいことが好ましく、具体的にはたとえば、Si、Al、Ga、Pなどの原子が挙げられる。これらから明らかなようにnは平均価数であり、2~5の数であるのが好ましい。
また、Xは、1価又は多価の価数を有し、陰イオンになる一種又は複数種の原子又は分子を示し、具体的にはCl、Br、Iなどのハロゲン原子が好ましい。
yは0.03~0.60の数を示し、好ましくは結晶質構造をとる場合において0.03~0.45、より好ましくは0.10~0.43の数を示す。上記yが上記範囲外であると伝導度向上が認められないので上記範囲内とする必要がある。
発明のリチウムイオン伝導性材料は、上記一般式(1)で表される化合物であるが、この化合物は、結晶質又は非晶質セラミックス化合物であり、具体的にはリチウムボラサイト型結晶を構成しているのが好ましい(上記yが0.03~0.45)。すなわち、本発明のリチウムイオン伝導性材料は、リチウムボラサイト型構造を有するLi4712Xの4配位ホウ素サイトを、4配位をとる陽イオンとなる原子Mで置換してなるものである。具体的には、24fサイトに存在するホウ素を上記Mで置換してなる結晶構造を有する結晶質セラミックス化合物であるのが好ましい。

【0011】
上記一般式(1)で表される化合物としては具体的には以下に示すものとすることができる。
Li4-7y(B1-ySi12Cl、
Li4-14y(B1-y12Cl、
Li(B1-yAl12Cl、
Li(B1-yGa12Cl。

【0012】
また、リチウムイオン伝導性材料は、上記一般式(1)で表される化合物からなるが、例えば製造工程において不可避的に混入する不純物成分などを含むことがあり、微量の第3成分の混入を除外するものではない。

【0013】
<製造方法>
本発明のリチウムイオン伝導性材料の製造方法は、まず、リチウム化合物、ホウ素化合物、および上記の4配位をとる陽イオンとなる原子を含む酸化物およびXを含む化合物を、所望の配合比で混合し、次いで950~1300℃で30~120分間加熱して熔融させる。
次に、熔融して得られた融液を、好ましくは、ステンレス板等の冷却用物品を用いて900~1300℃の融液を100~300℃にて0.1~10分間で冷却することで前駆体ガラスを得る。なお、このように急冷せずとも通常のガラスの製造と同様に1~50時間かけて徐々に冷却して前駆体ガラスを得てもよいし、冷却の過程で結晶化を行ってもよい。
最後に、前駆体ガラスを600℃で3時間熱処理し、結晶化させる。これにより、上記一般式(1)又は(2)で表される結晶化ガラスまたは非晶質ガラスからなるリチウムイオン伝導性材料を製造することができる。
このようにして得られるリチウムイオン伝導性材料はシート状又は板状であり、その厚みは0.01~100mmであるのが好ましく、このような形状とすることにより各種デバイスの材料としての利用性が向上する。
また、上記Mとして何を用いる(導入する)かによって好ましいyの値が異なる。
MがSiのとき、y≦0.2であるのが好ましく、MがAlのとき、y≦0.45であるのが好ましく、またy=0.43の場合には、Li4712Clの4配位BサイトがすべてAlで置換された新規結晶Li44Al312Clを得ることができる。
また、MがGaのとき、y≦0.45であるのが好ましく、y=0.43の場合には、Li4712Clの4配位BサイトがすべてGaで置換された新規結晶Li44Ga312Clを得ることができる。また、MがPのとき、y≦0.1であるのが好ましい。
また、Mは必ずしも一種類の元素とは限らず、二種以上の元素から構成されてもよい。

【0014】
<用途・使用方法>
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、上述の製造方法により得られた新規なリチウム系化合物からなる、シート状又は薄板状の材料である。また、スパッタリング等により成膜して、電極材料や固体電解質として用いることができる。また、この電極材料や固体電解質を用いて、二次電池、センサー及びエレクトロクロミックデバイス等を構成することもできる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【実施例】
【0016】
〔実施例1〕
Li2CO3、B23、SiO2、LiClをモル比3:7(1-y):14y:2x(x=1.4または1.2または1.0、y=0.30または0.20または0.10)で混合し、それぞれ、モル比3:4.9:4.2:2(y=0.30、x=1.0)、モル比3:5.6:2.8:2.8(y=0.20、x=1.4)、モル比3:5.6:2.8:2.4(y=0.20、x=1.2)、モル比3:5.6:2.8:2(y=0.20、x=1.0)、モル比3:6.3:1.4:2.8(y=0.10、x=1.4)、モル比3:6.3:1.4:2.4(y=0.10、x=1.2)、モル比3:6.3:1.4:2(y=0.10、x=1.0)である7種の混合物を調製した。得られた混合物をアルミナるつぼで覆った白金るつぼに投入し、投入後の白金るつぼを1000℃にて30分間加熱し、熔融を行った。熔融後、ステンレス板上に融液を流し出し、板上に存在する融液をその上からステンレス板で押えて急冷して前駆体ガラスを得た。得られた前駆体ガラスを600℃で3時間熱処理して結晶化させた。
得られた試料について、以下のようにしてX線回析パターンを測定した。得られたX線回析パターンを表すチャートを図1に示す。あわせて示した計算パターンとの比較から、得られた試料は、y<=0.2でリチウムボラサイト相を主相とする結晶化ガラス(Li4—7y(B1-ySi12Cl)からなることが分かった。
X線回折パターンの測定にはCu管球、CuKα線モノクロメータおよびシンチレーションカウンタを備えた粉末X線回折装置((株)リガク社製RINT Ultima II)を用い、管電圧40kV、管電流40mA、スキャンスピード2°min-1で測定を行った。Li12Clの計算パターンは、非特許文献4で報告されている結晶構造パラメータを用いてRIETAN-FP(非特許文献5)によって作成した。
また、格子定数のy値依存性を以下のようにして測定した。その結果を図2に示す。後述する比較例1で得られたLi12Cl(y=0)の格子定数もあわせて示した。y値の増大に伴い格子定数が増大したことから、B3+イオン(イオン半径0.25Å)がより大きいSi4+(イオン半径0.40Å)に置換されてLi4—7y(B1-ySi12Clが生成すること、y>0.2ではSiが固溶しにくくなることが確認された。これらの結果から得られた結晶化ガラスがLi4—7y(B1-ySi12Clであることがわかった。
格子定数は、解析ソフトとしてRIETAN-FPを用い、Le Bail法によってX線回折パターンのパターン分解を行うことで決定した。
また、x=1.4で得られた試料の交流伝導度のアレニウスプロットを以下のように測定した。その結果を図3に示す。
交流伝導度は後述する比較例1でLi4+z12+z/2Cl(z=0-1)を主相とする試料中で最高の伝導度を示したx=1.4、z=0の試料と同程度であった。
交流伝導度測定は、ポテンショ/ガルバノスタット(Solartron社製1287)および周波数応答アナライザ(Solartron社製1255B)を用いて行った。入力交流振幅は50mV、測定周波数範囲は1Hz~1MHzとした。試料は平行平板状に研磨し、両面に直径6mmの金電極をスパッタした後に集電用のカーボンクロスで挟み、自作のステンレス製高温測定セル中に設置し、温度範囲40℃~200℃で測定を行った。
【実施例】
【0017】
〔比較例1〕
LiCO、B、LiClをモル比3+z:7:2x(x=1.6または1.4または1.2または1.0、z=1または0)で混合し、それぞれ、モル比4:7:2.8(z=1、x=1.4)、モル比4:7:2.4(z=1、x=1.2)、モル比4:7:2(z=1、x=1.0)、モル比3:7:3.2(z=0、x=1.6)、モル比3:7:2.8(z=0、x=1.4)、モル比3:7:2.4(z=0、x=1.2)、モル比3:7:2(z=0、x=1.0)である7種の混合物を調製した。得られた混合物をアルミナるつぼで覆った白金るつぼに投入し、投入後の白金るつぼを950℃にて30分間加熱し、熔融を行った。熔融後、ステンレス板上に融液を流し出し、板上に存在する融液をその上からステンレス板で押えて急冷して前駆体ガラスを得た。得られた前駆体ガラスを600℃で3時間熱処理して結晶化させた。
得られた試料について、X線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンを表すチャートを図4に示す。Li12.5Clの計算パターンの作成には非特許文献6で報告されている結晶構造パラメータを使用した。
z=0のとき、1.0<=x<=1.6でリチウムボラサイト相Li12Clを主相とする結晶化ガラスが得られた。z=1のとき、別のリチウムボラサイト相Li12.5Clが主相となることが、この相に特有の2θ=12.6°の111回折線が生じていることから確認された。Li12.5Cl相はz=0、x=1.6の試料にも少量生成していることが確認された。格子定数はz=0のとき12.16±0.01Å、z=1のとき12.14±0.01Åであり、x値にはほとんど依存しなかった。
また、得られた試料の交流伝導度のアレニウスプロットを測定した。その結果を図5に示す。Li12Clを主相とするz=0の試料の伝導度はLi12.5Clを主相とするz=1の試料の伝導度より格段に大きく、既報の結果と一致した。また、伝導度はz=0、x=1.4で最高となった。不純物であるLi相が低減されたこと、伝導度の小さいLi12.5Cl相が析出しなかったことが原因であると考えられる。
【実施例】
【0018】
〔実施例2〕
LiCO、B、BPO、LiClをモル比3:7(1-2y):14y:2(y=0.30または0.20または0.10または0.05)で混合し、それぞれ、モル比3:2.8:4.2:2(y=0.30)、モル比3:4.2:2.8:2(y=0.20)、モル比3:5.6:1.4:2(y=0.10)、モル比3:6.3:0.7:2(y=0.05)である4種の混合物を調製した。得られた混合物をアルミナるつぼで覆った白金るつぼに投入し、投入後の白金るつぼを1000℃にて30分間加熱し、熔融を行った。熔融後、ステンレス板上に融液を流し出し、板上に存在する融液をその上からステンレス板で押えて急冷して前駆体ガラスを得た。得られた前駆体ガラスを600℃で3時間熱処理して結晶化させた。
得られた試料について、X線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンを表すチャートを図6に示す。その結果、得られた試料は、y<=0.1でリチウムボラサイト相を主相とする結晶化ガラスからなることが分かった。y>=0.2では結晶化が抑制された。
また、格子定数のy値依存性を測定した。その結果を図7に示す。比較例1で得られたLi12Cl(y=0)の格子定数もあわせて示した。y値の増大に伴い格子定数が増大したことから、B3+イオン(イオン半径0.25Å)がより大きいP5+イオン(イオン半径0.31Å)に置換されてLi4-14y(B1-y12Clが生成していることが確認された。
【実施例】
【0019】
〔比較例2〕
LiCO、B、ZnO、LiClをモル比3:7(1-y):14y:2(y=0.20または0.10)で混合し、それぞれ、モル比3:5.6:2.8:2(y=0.20)、モル比3:6.3:1.4:2(y=0.10)である2種の混合物を調製した。得られた混合物をアルミナるつぼで覆った白金るつぼに投入し、投入後の白金るつぼを1000℃にて30分間加熱し、熔融を行った。熔融後、ステンレス板上に融液を流し出し、板上に存在する融液をその上からステンレス板で押えて急冷して前駆体ガラスを得た。得られた前駆体ガラスを600℃で3時間熱処理して結晶化させた。
得られた試料について、粉末X線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンを表すチャートを図8に示す。
また、格子定数のy値依存性を測定した。その結果を図9に示す。比較例1で得られたLi12Cl(y=0)の格子定数もあわせて示した。格子定数はy値が増大してもほとんど変化せず、B3+イオン(イオン半径0.25Å)はZn2+イオン(イオン半径0.74Å)には置換されず、Li4+y(B1-yZn12Clは生成しないことが示唆された。
【実施例】
【0020】
〔実施例3〕
LiCO、B、γ-Al、LiClをモル比3:7(1-y):7y:2.8(y=0.57または0.50または0.43または0.15または0.1または0.05)で混合し、それぞれ、モル比3:3.01:3.99:2.8(y=0.57)、モル比3:3.5:3.5:2.8(y=0.50)、モル比3:3.99:3.01:2.8(y=0.43)、モル比3:5.95:1.05:2.8(y=0.15)、モル比3:6.3:0.7:2.8(y=0.10)、モル比3:6.65:0.35:2.8(y=0.05)である6種の混合物を調製した。得られた混合物をアルミナるつぼで覆った白金るつぼに投入し、投入後の白金るつぼを加熱し、熔融を行った。熔融条件は、y<=0.15の試料では1000℃で60分、y=0.43の試料では1100℃で30分、y=0.50の試料では1150℃で30分、y=0.57の試料では1300℃で30分とした。熔融後、ステンレス板上に融液を流し出し、板上に存在する融液をその上からステンレス板で押えて急冷して前駆体ガラスを得た。得られた前駆体ガラスを600℃で3時間熱処理して結晶化させた。
得られた試料について、X線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンを表すチャートを図10に示す。その結果、得られた試料は、y<=0.57でリチウムボラサイト相を主相とする結晶化ガラスからなることが分かった。
また、格子定数のy値依存性を測定した。その結果を図11に示す。比較例1で得られたLi12Cl(y=0)の格子定数もあわせて示した。y<=0.43ではy値の増大に伴い格子定数がほぼ直線的に増大したことから、B3+イオン(イオン半径0.25Å)がより大きいAl3+イオン(イオン半径0.53Å)に置換されてLi(B1-yAl12Clが生成することが確認された。一方、y>0.43では格子定数がほとんど変化しなかったことから、y=0.43がAlの固溶限界であることが示唆された。
また、得られた試料の交流伝導度のアレニウスプロットを測定した。その結果を図12に示す。交流伝導度はy=0.43の試料で最高となり、比較例1で作製した試料に比べて交流伝導度が増大した。y=0.43の試料は室温で~10-5S・cm-1の交流伝導度を示した。y=0.43からy=0.57までy値を増大させても交流伝導度は大きく低下しなかった。
また、得られたy=0.43の試料のリートベルト解析を行った。その結果を図13に、精密化された結晶構造パラメータを表1に示す。主相はLi12Clの4配位ホウ素がすべてAlで置換されたLiAl12Clとして解析できた。主相以外で解析に含めた相はLi12Clとγ-Alであり、LiAl12Cl相の割合は~91wt%であった。
(リートベルト解析)
リートベルト解析はRIETAN-FPを用いて行った。尺度因子、バックグラウンドパラメータ、ピークパラメータ、格子定数、分率座標、熱振動因子を変数として精密化を行った。分率座標にはサイト対称性に基づく制約条件を課し、熱振動因子は同類の原子では等しいと仮定した。
【表1】
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【実施例】
【0021】
〔実施例4〕
LiCO、B、Ga、LiClをモル比3:7(1-y):7y:2.8または3.2(y=0.50または0.43または0.10)で混合し、それぞれ、モル比3:3.5:3.5:2.8(y=0.50)、3:3.99:3.01:3.2(y=0.43)、モル比3:6.3:0.7:2.8(y=0.10)である3種の混合物を調製した。得られた混合物をアルミナるつぼで覆った白金るつぼに投入し、投入後の白金るつぼを加熱し、熔融を行った。熔融条件は、y=0.10の試料では1000℃で60分、y=0.43の試料では1150℃で30分、y=0.50の試料では1250℃で30分とした。熔融後、ステンレス板上に融液を流し出し、板上に存在する融液をその上からステンレス板で押えて急冷して前駆体ガラスを得た。得られた前駆体ガラスを600℃で3時間熱処理して結晶化させた。
得られた試料について、X線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンを表すチャートを図14に示す。その結果、得られた試料は、y<=0.43でリチウムボラサイト相を主相とする結晶化ガラスからなることが分かった。
また、格子定数のy値依存性を測定した。その結果を図15に示す。比較例1で得られたLi12Cl(y=0)の格子定数もあわせて示した。y<=0.43ではy値の増大に伴い格子定数がほぼ直線的に増大したことから、B3+イオン(イオン半径0.25Å)がより大きいGa3+イオン(イオン半径0.61Å)に置換されてLi(B1-yGa12Clが生成することが確認された。一方、y>0.43では格子定数がほとんど変化しなかったことから、y=0.43がGaの固溶限界であることが示唆された。
また、得られた試料の交流伝導度のアレニウスプロットを測定した。その結果を図12に示す。交流伝導度はy=0.43の試料で、比較例1で作製した試料に比べて交流伝導度が増大した。y=0.43の試料は室温で~10-5-10-6S・cm-1の交流伝導度を示した。y=0.50までy値を増大させると交流伝導度が大きく低下した。
また、得られたy=0.43の試料のリートベルト解析を行った。その結果を図17に、精密化された結晶構造パラメータを表2に示す。主相はLi12Clの4配位ホウ素がすべてGaで置換されたLiGa12Clとして解析できた。主相以外で解析に含めた相はLi12ClとLiGaであり、LiAl12Cl相の割合は~79wt%であった。
【表2】
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図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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