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明細書 :物体認識装置および物体認識方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-153188 (P2019-153188A)
公開日 令和元年9月12日(2019.9.12)
発明の名称または考案の名称 物体認識装置および物体認識方法
国際特許分類 G06T   7/00        (2017.01)
G01S   7/486       (2006.01)
G01S  17/93        (2006.01)
FI G06T 7/00 350Z
G01S 7/486
G01S 17/93
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2018-039126 (P2018-039126)
出願日 平成30年3月5日(2018.3.5)
発明者または考案者 【氏名】伊東 敏夫
出願人 【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100167553、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 久典
審査請求 未請求
テーマコード 5J084
5L096
Fターム 5J084AA05
5J084AA13
5J084AA14
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA48
5J084CA22
5J084CA32
5J084CA65
5J084CA80
5J084EA01
5J084EA07
5L096AA06
5L096AA09
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA66
5L096GA51
5L096HA09
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
5L096MA07
要約 【課題】光源から遠い位置にある物体について正しく認識することを可能にする、物体認識装置および物体認識方法を提供する。
【解決手段】本発明の物体認識装置は、測距装置によって距離が測定された複数の測距点に基づいて、物体を認識する物体認識装置であって、測距装置によって測定された複数の測距点に対し、予め規定されたノイズを付加するノイズ付加部と、ノイズが付加された測距点に基づいて、物体を表すクラスタを形成するクラスタリング部と、クラスタリング部によって形成されたクラスタの特徴量に基づいて物体を認識する認識部と、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
測距装置によって距離が測定された複数の測距点に基づいて、物体を認識する物体認識装置であって、
前記測距装置によって測定された前記複数の測距点に対し、予め規定されたノイズを付加するノイズ付加部と、
前記ノイズが付加された測距点に基づいて、物体を表すクラスタを形成するクラスタリング部と、
前記クラスタリング部によって形成された前記クラスタの特徴量に基づいて前記物体を認識する認識部と、を備えることを特徴とする物体認識装置。
【請求項2】
前記ノイズ付加部は、前記測距装置によって測定された前記複数の測距点のうち、距離が予め規定された基準距離以上である測距点に対して前記ノイズを付加するものであることを特徴とする請求項1に記載の物体認識装置。
【請求項3】
前記ノイズは、前記測距点から水平方向に30cm以下、鉛直方向に40cm以下の範囲に付加されるものであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の物体認識装置。
【請求項4】
前記ノイズ付加部によって付加される前記ノイズは、ホワイトノイズであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の物体認識装置。
【請求項5】
物体毎に分散が異なるホワイトノイズを格納する格納部を更に備えており、
前記ノイズ付加部が、前記測距装置によって測定された前記複数の測距点に対して、分散が異なるホワイトノイズを順次付加し、
前記クラスタリング部及び前記認識部は、前記ノイズ付加部によってホワイトノイズが付加される度に、前記クラスタの形成及び前記物体の認識を行うものであることを特徴とする請求項4に記載の物体認識装置。
【請求項6】
測距装置によって距離が測定された複数の測距点に基づいて、物体を認識する物体認識方法であって、
前記測距装置によって測定された前記複数の測距点に対し、予め規定されたノイズを付加するノイズ付加ステップと、
前記ノイズが付加された測距点に基づいて、物体を表すクラスタを形成するクラスタリングステップと、
前記クラスタリングステップによって形成された前記クラスタの特徴量に基づいて前記物体を認識する認識ステップと、を有することを特徴とする物体認識方法。
【請求項7】
前記ノイズ付加ステップにおいて、前記測距点から水平方向に30cm以下、鉛直方向に40cm以下の範囲に、ノイズを付加することを特徴とする請求項6に記載の物体認識方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、物体認識装置および物体認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界中の様々な企業が、車両の自動運転技術の開発に取り組んでいる。運転の自動化による、安全性、快適性等の各段の向上が期待されており、現在は実証実験が行われている段階にある。例えば、愛知県では、自動運転システムにより公道で運転席を監視して無人の車を走らせる実験が行われている。また、国土交通省では、中山間地域で自動運転の実験が行われている。他にも様々な実証実験が行われている。しかしながら、完全自動運転は、実用化に至っていない。
【0003】
完全自動運転を実現するためには、4つの機能が必要となる。具体的には、自車がどの位置にいるのか把握するための自己位置推定、周りの環境を認識するための外界認識、総合的に判断して行動するための行動計画、ブレーキやステアリングなどを操作する車両制御、を行う機能が挙げられる。本発明者は、これらのうち外界認識を行う技術について着目し、研究を進めている。外界認識は、自車の周囲の障害物を検出し、歩行者などとの接触事故を防ぐ上で重要な技術である。
【0004】
外界認識に用いるセンサとしては、点群(ポイントクラウド)データを出力するLiDAR(Light Detection and Ranging)、画像データを出力するカメラなどが挙げられる(非特許文献1参照)。LiDARは、主に、近赤外レーザビームを周囲に照射して走査を行う走査部、反射光を受ける受光部、照射してから受光するまでにかかった時間から距離を測定する信号処理部からなる。照射するレーザ光としては、近赤外光を用いることにより、可視光に起因する外乱を取り除くことができ、さらに、近赤外光に起因する外乱については、照射光をパルス変調してキャンセルすることが可能となる。よって、LiDARは、可視光を撮影するカメラと比べて優れている。LiDARでは、完全な暗闇や、カメラなら飽和してしまう明るい環境においても、反射光をが受けられる範囲であれば認識することができる。カメラの一種であるステレオカメラでは、基線長に対して測定方向の距離が長くなるにつれて測定誤差が大きくなるが、LiDARでは、遠方であっても測定誤差が大きくならない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】鶴原吉郎、“自動運転センサー主役はレーザーへ”、明日のエンジニアへの手紙、(2018)、pp.24-33
【非特許文献2】松元則雄、“メカレスで50ドルを目指す、クルマから家電・ARへ”、日経エレクトロニクス、(2017/02) pp.50-54
【非特許文献3】長谷悠佑、“赤外線レーザレーダを用いた移動物体認識に関する研究”、 関西学院大学院修士論文、(2010/3)、pp.28-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LiDARによる外界認識は、レーザ光をスキャン走査することによって行われる。レーザー光は、照射方向に対して放射状に複数の方向に広がって進む性質を有しており、光源から離れるほどその広がりが大きくなる。そのため、照射されるレーザー光同士の間隔が広がり、遠方にある対象物体をスキャン走査する走査レーザー層の数が少なくなり、その結果として、対象物体に対してLiDARから出力される点の分布率が低下することになる(非特許文献2参照)。したがって、LiDARを用いて外界認識を行おうとしても、遠方にある対象物については、正しく認識できない虞がある。この場合、例えば、自転車、車両などの物体を検出する場合、物体の全体がLiDARの走査範囲に入っていなければ、歩行者などの異なる物体として検出されてしまうことがある。そのため、走査範囲に入る瞬間には、自転車、車両は、高い確率で歩行者として検出されてしまう(非特許文献3参照)。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光源から遠い位置にある物体について正しく認識することを可能にする、物体認識装置および物体認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
【0009】
(1)本発明の一態様に係る物体認識装置は、測距装置によって距離が測定された複数の測距点に基づいて、物体を認識する物体認識装置であって、前記測距装置によって測定された前記複数の測距点に対し、予め規定されたノイズを付加するノイズ付加部と、前記ノイズが付加された測距点に基づいて、物体を表すクラスタを形成するクラスタリング部と、前記クラスタリング部によって形成された前記クラスタの特徴量に基づいて前記物体を認識する認識部と、を備える。
【0010】
(2)上記(1)に記載の物体認識装置において、前記ノイズ付加部は、前記測距装置によって測定された前記複数の測距点のうち、距離が予め規定された基準距離以上である測距点に対して前記ノイズを付加するものであることが好ましい。
【0011】
(3)上記(1)または(2)のいずれかに記載の物体認識装置において、前記ノイズは、前記測距点から水平方向に30cm以下、鉛直方向に40cm以下の範囲に付加されるものであることが好ましい。
【0012】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の物体認識装置において、前記ノイズ付加部によって付加される前記ノイズは、ホワイトノイズであることが好ましい。
【0013】
(5)上記(4)に記載の物体認識装置において、物体毎に分散が異なるホワイトノイズを格納する格納部を更に備えており、前記ノイズ付加部が、前記測距装置によって測定された前記複数の測距点に対して、分散が異なるホワイトノイズを順次付加し、前記クラスタリング部及び前記認識部は、前記ノイズ付加部によってホワイトノイズが付加される度に、前記クラスタの形成及び前記物体の認識を行うものであることが好ましい。
【0014】
(6)本発明の一態様に係る物体認識方法は、測距装置によって距離が測定された複数の測距点に基づいて、物体を認識する物体認識方法であって、前記測距装置によって測定された前記複数の測距点に対し、予め規定されたノイズを付加するノイズ付加ステップと、前記ノイズが付加された測距点に基づいて、物体を表すクラスタを形成するクラスタリングステップと、前記クラスタリングステップによって形成された前記クラスタの特徴量に基づいて前記物体を認識する認識ステップと、を有する。
【0015】
(7)上記(6)に記載の物体認識方法において、前記ノイズ付加ステップにおいて、前記測距点から水平方向に30cm以下、鉛直方向に40cm以下の範囲に、ノイズを付加することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態に係る物体認識装置および物体認識方法では、測距点にノイズを付加することにより、光源から遠い位置にある物体のクラスタリングを正しく行うことができるため、当該物体について正しく認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る物体認識の手順について、模式的に説明する図である。
【図2】定常状態の双安定系ポテンシャルの概形を示す図である。
【図3】系の緩やかな傾動とノイズの印加により、粒子が跳躍する様子を模式的に説明する図である。
【図4】測距点の分布を示す画像である。
【図5】異なる距離にある2つの物体から得られるクラスタの大きさを、模式的に示す図である。
【図6】異なる距離にある2つの物体から得られるクラスタの大きさを、模式的に示す図である。
【図7】本発明の実施例において用いた測定系の構成を模式に示す図である。
【図8】本発明の実施例において、付加するノイズとして検討した正規分布する乱数のグラフである。
【図9】本発明の実施例において、付加するノイズとして検討したカイ二乗分布する乱数のグラフである。
【図10】本発明の実施例において、付加するノイズとして検討したガンマ分布する乱数のグラフである。
【図11】本発明の実施例において、付加するノイズとして検討したベータ分布する乱数のグラフである。
【図12】本発明の実施例において得られた、遠方にある測距点の分布を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例において得られた、遠方にある測距点と付加されたノイズの分布を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例において、ノイズを付加しない状態での測距点の分布を示す画像である。
【図15】図14の測距点の分布について、クラスタリングした結果を示す画像である。
【図16】本発明の実施例において、ノイズを付加した状態での測距点の分布を示す画像である。
【図17】図16の測距点の分布について、クラスタリングした結果を示す画像である。
【図18】(a)近距離にある2つの物体の測距点にノイズを加えた点群の画像である。(b)(a)の点群に対し、クラスタリングを行った結果を示す画像である。
【図19】(a)近距離にある2つの物体の測距点の画像である。(b)(a)の測距点に対し、所定の範囲にノイズを加えた画像である。
【図20】図19の点群に対し、クラスタリングを行った結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した実施形態に係る物体認識装置および物体認識方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。

【0019】
本発明の一実施形態に係る物体認識方法は、測距装置によって測定地点からの距離が測定された複数の測距点に基づいて、物体を認識する物体認識方法である。本実施形態の物体認識方法は、測距装置によって測定された複数の測距点に対し、予め規定されたノイズを付加するノイズ付加ステップと、ノイズが付加された測距点に基づいて、物体を表すクラスタを形成するクラスタリングステップと、クラスタリングステップによって形成されたクラスタの特徴量に基づいて物体を認識する認識ステップと、を有する。

【0020】
上記物体認識方法に用いる物体認識装置は、測距装置によって距離が測定された複数の測距点に基づいて、物体を認識する物体認識装置であって、物体認識装置は、測距装置によって測定された複数の測距点に対し、予め規定されたノイズを付加するノイズ付加部と、ノイズが付加された測距点に基づいて、物体を表すクラスタを形成するクラスタリング部と、クラスタリング部によって形成されたクラスタの特徴量に基づいて物体を認識する認識部と、を備える。

【0021】
ノイズ付加部は、測距装置によって測定された複数の測距点のうち、距離が予め規定された基準距離以上である測距点に対して、ノイズを付加するものであることが好ましい。ノイズは、測距点から水平方向に30cm以下、鉛直方向に40cm以下の範囲に付加されるものであることが好ましい。ノイズ付加部によって付加されるノイズは、ホワイトノイズであることが好ましい。

【0022】
なお、物体認識装置は、物体毎に分散が異なるホワイトノイズを格納する格納部を更に備えていてもよい。ノイズ付加部は、測距装置によって測定された複数の測距点に対して、分散が異なるホワイトノイズを順次付加するものであるクラスタリング部及び認識部は、ノイズ付加部によってホワイトノイズが付加される度に、クラスタの形成及び物体の認識を行うものである。

【0023】
図1は、本実施形態における物体認識の流れについて、模式的に示す図である。測距装置としては、例えば、外界認識用センサとして知られるLiderを用いる。検出する物体の位置が光源(Lider)から遠くなる程、表示部の画面上の物体の位置において、物体として出力される測距点の分布率が低下するが、そこにノイズを付加し、そのノイズの分散の値を物体ごとに変えて、クラスタリングを行う。このようにすることで、識別距離を延ばすことができる。

【0024】
付加するノイズとしては、確率共鳴で用いられているホワイトガウスノイズ(以下では、ホワイトノイズと呼ぶことがある)を用いることが好ましい。初めに、ホワイトノイズを用いる上で基本的概念となる、確率共鳴について説明し、続いて確率共鳴という概念をどのように物体認識に適用させていくかについて説明する。

【0025】
ここでは双安定系でのシンプルな確率共鳴の現象について、簡単なモデルを用いて説明する。1次元の非線形系で確率共鳴を示す減衰調和振動子として、下記(1)式のランジュバン方程式を考える。

【0026】
【数1】
JP2019153188A_000003t.gif

【0027】
この式は質量mの粒子が、γで表される摩擦力を受けて運動する場合を示す。復元力は双安定系のポテンシャルエネルギーU(x)の勾配として記述される。強度がDの確率変動力ξ(t)が付加されるものとする。典型的にこれは以下のホワイトガウス過程に従う。すなわち、平均と自己相関は各々,下記(2)式で示される。ここでの括弧<>は集合平均を意味し、t≠t’でξ(t)とξ(t’)は統計的に独立である。U(x)は双安定ポテンシャルであるから、非線形弾性方程式からレーザ系までを幅広く記述することができる。

【0028】
【数2】
JP2019153188A_000004t.gif

【0029】
双安定系のポテンシャルU(x)を、下記(3)式のように定義する。

【0030】
【数3】
JP2019153188A_000005t.gif

【0031】
図2は、定常状態の双安定系のポテンシャルの井戸を示す。系が激しい減衰を受けるとき、(m/2)(d/dx)(x(t))の項、すなわち(1)式の左辺の第1項は無視することができる。このとき、(1)式は、γでリスケーリングすることにより、下記(4)式で表される確率Duffinng方程式に帰着する。ここでのDは、ノイズの強度に対応する。

【0032】
【数4】
JP2019153188A_000006t.gif

【0033】
この双安定系において、さらに周期的な入力Asin(ωt)を付加した場合、(4)式は、下記(5)式に置き換えられる。

【0034】
【数5】
JP2019153188A_000007t.gif

【0035】
この場合の系の有効ポテンシャルは、下記(6)式で表される。上記のにおけるAとωは、それぞれ振幅と振動数である。

【0036】
【数6】
JP2019153188A_000008t.gif

【0037】
確率共鳴の物理的イメージについて、図3を用いて説明する。図3は、系の緩やかな傾動とノイズの印加による粒子の跳躍の状態を示す。2つの安定状態を有するポテンシャル中を、ノイズの影響を受けて運動する粒子が存在すると仮定する。微弱かつ緩やかな周期で、この系全体を傾動させる。粒子が飛び出した時、運動を検知するものとする。系が非線形系の場合には、ノイズと微弱な周期振動が合致して粒子が突出する。ノイズが微弱な周期信号を励起するためである。この時、ノイズ強度Dのある範囲で、周期信号とノイズが共鳴する。これらが確率共鳴と呼ばれる現象で、粒子の飛び出す頻度をもとにして、微弱な周期信号を検知することにより、その情報を得ることができる。

【0038】
図4は、測距点群の分布率が低い場合に表示手段によって表示される画像を示している。この場合、クラスタリング部は、表示されている測距点群に対して、大きさが異なるクラスタを生成してしまったり、クラスタを生成できない、といった問題が発生する。以下に説明する手法を用い、この問題を解決する。

【0039】
まず、図5に示すような分布が存在すると仮定する。この分布に含まれる要素P、平均μ、分散σは、それぞれ下記(7)~(9)式で表される。

【0040】
【数7】
JP2019153188A_000009t.gif

【0041】
【数8】
JP2019153188A_000010t.gif

【0042】
【数9】
JP2019153188A_000011t.gif

【0043】
任意の測定地点Oから遠い位置にある測距点を含めたクラスタの大きさRと、近い位置にある測距点を含めたクラスタの大きさR’とを比較する。クラスタリング部において、例えば、大きさがR’のクラスタを二輪車とすると、RとR’の大きさが大きく隔たっているので、大きさがRのクラスタは二輪車と認識されない。図5に示す状態は、測距点群について誤認識している状態、あるいは測距点群の分布率が低いため、クラスタを生成できない状態であると考えられる。つまり、この隔たりを小さくすることができ、測距点の分布率を上げれば、クラスタを生成することができ、測距点群について正しく認識できるようになる。

【0044】
そこで、Rに対して、下記(10)式で表されるホワイトガウスノイズW(D0.5ξ(t))を付加する。

【0045】
【数10】
JP2019153188A_000012t.gif

【0046】
下記(11)式に示すように、ホワイトガウスノイズWを要素Pに加えた要素をCとする。平均μ、分散σは、それぞれ下記(11)式、(12)式で表される。

【0047】
【数11】
JP2019153188A_000013t.gif

【0048】
【数12】
JP2019153188A_000014t.gif

【0049】
【数13】
JP2019153188A_000015t.gif

【0050】
図6は、図5の2つのクラスタに対し、ホワイトガウスノイズWiを付加した状態を示す図である。R”は、要素Pに対して,ホワイトガウスノイズWを付加した時に生成されるクラスタの大きさである。

【0051】
図5において、ホワイトガウスノイズの分散の値を変化させることにより、徐々にRの範囲が延び、大きさが図6のR”のように変化する。分散が特定の値をとるとき、R’の値とR”の値が等しくなり、R’とR”が同一の物体として検出される。これは、ノイズの分散値を変えていくことにより、認識したい物体領域に引き込まれていくからである。これは、「ノイズと微弱な周期振動が合致して粒子が突出する」現象に似ている。つまり、ノイズとR’の値が合致して正しい認識ができるようになる。このようにして、大きさが異なるクラスタを生成してしまったり、クラスタを生成できないといった問題を解決することができる。

【0052】
以上のように、本実施形態に係る物体認識装置および物体認識方法では、測距点にノイズを付加することにより、光源から遠い位置にある物体のクラスタリングを正しく行うことができるため、当該物体について正しく認識することが可能となる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
図7は、物体認識装置を用いた測定系の構成を模式的に示す図である。図7に示すように、バイク10の先頭側に3次元LiDAR(VLP-16)20を設置して計測を行った。計測結果は、3次元LiDAR20に接続したPC30で解析した。
【実施例】
【0055】
まず、正規分布、対数正規分布、カイ二乗分布、ガンマ分布、ベータ分布の乱数のうち、付加するノイズとしてどの乱数が妥当であるかどうか確かめた。それぞれの乱数の分布を、図8~11に示す。
【実施例】
【0056】
実際に、これらの乱数を発生させて識別器で分類を行った。その結果、正規乱数以外の乱数を付加すると二輪車を車両と過検出することが分かった。このようになった原因は、正規乱数と比べて、対数正規分布やガンマ分布などで発生させる乱数は分布の偏りが大きいことにあると考えられる。よって、付加する乱数として正規乱数を選択した。
【実施例】
【0057】
自転車、歩行者、車両の3つの物体ごとに、異なる正規乱数を付加した。付加する正規乱数の設定を、次のようにして行った。サンプルデータとする自転車、歩行者、車両のそれぞれについて、25個ずつのデータを用い、横・縦・高さの分散を求め、それらの分散値の平均をとった。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0058】
【表1】
JP2019153188A_000016t.gif
【実施例】
【0059】
実際に、正規乱数を遠距離にある点群に対して付加した。SVMを用いて付加した点群を分類し、認識距離が延びているかどうかを確認した。また、近距離にある点群(測距点群)に対しても正規乱数を付加させ、正しく認識するかどうかを確認した。
【実施例】
【0060】
遠方にあり、分布率の低い点群に対して正規乱数を付加し、認識距離が延びるかどうかの確認を行った。図13は、遠方にある点群を示すグラフである。図12のような遠距離時の点群に対して雑音を付加したものを、図13に示す。
【実施例】
【0061】
近距離時の物体と遠距離時の物体物が混合しているデータに対して差分をとる。差分をとったデータを図14に示す。このデータに対してクラスタを生成する。その結果を図15に示す。クラスタ1は、計測地点から約80mの地点に存在する車両のクラスタである。クラスタ2、クラスタ3は、それぞれ、計測地点から20m以内に存在する車両、歩行者のクラスタである。これらに対して分類を行った。その結果を表2に示す。
【実施例】
【0062】
【表2】
JP2019153188A_000017t.gif
【実施例】
【0063】
図16は、正しくクラスタリングできていない物体(計測地点から約80mの地点に存在する車両)に対して、正規乱数を発生させたデータを示している。これをクラスタリングしたものを図17に示す。識別器を用いて3つのクラスタを分類する。その結果を表3に示す。
【実施例】
【0064】
【表3】
JP2019153188A_000018t.gif
【実施例】
【0065】
20m以上80m以内の距離にある物体(人、二輪車、車両それぞれ18個)に対して分類を行った。表4は、正規乱数を発生させずに行った結果である。20m超えると二輪車を全く分類することができていないことが分かる。
【実施例】
【0066】
【表4】
JP2019153188A_000019t.gif
【実施例】
【0067】
これら分類できていない物体に対し、表1で設定した分散の値を用いて適切な正規乱数を付加する。その結果を表5に示す。
【実施例】
【0068】
【表5】
JP2019153188A_000020t.gif
【実施例】
【0069】
測距点の分布率が低下したデータに対して正規乱数を付加し、SVMを用いて遠距離に存在する歩行者、二輪車、車両の分類を行った。表4と表5に示した結果を比較すると、遠方にあって認識できていなかったものが、ノイズを付加することによって認識できていることが分かる。
【実施例】
【0070】
表4のような結果は、遠方ほどビームの間隔が広がって測距点の分布率が低下したため、遠方ほど検出率が低下したことによる。遠方にある物体の検出率を改善するために、確率共鳴という概念を用いることによって、この問題解決した。誤認識や認識できない物体に対して確率共鳴を用いると、ノイズとR’の値が合致して、歩行者、二輪車、車両として検出される。それらのデータに歩行者、二輪車、車両の物体ごとに適切な正規乱数を付加する。具体的には、歩行者であれば横成分に0.00117、縦成分に0.0152、高さ成分に0.124、二輪車であれば横成分に0.0437、縦成分に0.109、高さ成分に0.131、車両であれば横成分に0.203、縦成分に1.21、高さ成分に0.167の分散値の正規乱数を発生させる。これにより、それぞれの横成分、縦成分、高さ成分が、それぞれの認識物体の特徴量に近づき、表5に示すような結果が得られる。表5の結果では、認識率が上がっており、特に二輪車において改善していることが分かる。
【実施例】
【0071】
しかしながら、未だ誤認識しているデータがあった。
図18は、歩行者2人がある一定距離以内の間隔で歩行運動をするというデータを示している。図18(a)の歩行者2人の測距点に対し、ノイズを付加した状態でクラスタリング処理を行うと、図18(b)に示すようなクラスタが形成され、歩行者として検出されなかった。それどころか、過検出してしまい、車両や二輪車として検出してしまった。その理由としては、認識するべき物体間の距離が近すぎて、どこで区切ればいいのか分からなくなり、間違ったクラスタを形成してしまうことにより、歩行者であるのに二輪車や車両として認識されてしまうことが挙げられる。
【実施例】
【0072】
そこで、ノイズを付加する適切な範囲について検証を行った。図19(a)は、歩行者2人の測距点を示す画像である。歩行者2人の距離dは、約90cmとした。図19(b)は、図19(a)のそれぞれの測距点から、所定の範囲(ここでは、水平方向(横方向)に30cm以下、鉛直方向(縦方向)に40cm以下の範囲)に、ノイズを付加した状態の点群を示す画像である。図20は、図19(b)の点群に対し、クラスタリングを行った結果を示す画像である。この結果から、ノイズを付加する範囲を調整することによって、互いに近い距離にある複数の物体に対しても正しいクラスタリングが行われることが分かる。
【実施例】
【0073】
なお、二輪車や車両では、このような誤認識が起こらなかった。それは、二輪車や車両ではある程度車間をあけており、クラスタリング処理に成功し、1つ1つのクラスタに分けることができたからであると考えられる。
【実施例】
【0074】
ノイズを付加する前から過検出してしまったデータに対しては、適切なノイズを付加しても、ノイズ同士がお互いに干渉してしまい、正確なクラスタを生成することができなかった。通常のクラスタよりも大きくクラスタリングしてしまった。
【実施例】
【0075】
本発明は、認識距離を延ばすという課題を解決するものである。従来技術では、遠方ほどレーザビームの間が広がり、走査レーザ層の数が減っていくため、遠距離になるほど、測距点の分布率が低下し、クラスタの生成ができなくなり、認識できなくなってしまうことや誤認識してしまうことが問題とされていた。これらの問題を解決するために、本発明では、次の方法を用いた。歩行者、二輪車、車両のサンプルデータとSVMにより、移動物体を3種類に分類する分類器を製作した。特徴量として縦・横・高さを使用した。3次元点群データに対してクラスタリングを行い、物体を検出した。検出した物体に対してクラスタリングを行い、Euclidean Clusteringを用いてクラスタを生成した。生成したクラスタの特徴量を検出し、検出した特徴点と製作した分類器を用いて分類を行った。誤認識した物体やクラスタを生成できないかった点群に対して、確率共鳴で用いられている正規乱数を発生させて分類を行った。その結果として、データから歩行者、二輪車、車両を認識することができた。
【符号の説明】
【0076】
1~6・・・クラスタ
10・・・バイク
20・・・LiDAR
30・・・PC
d・・・距離
O・・・測定地点
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14
【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
19