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明細書 :模型、製作システム、情報処理装置、製作方法、情報処理方法、プログラム、記録媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6741652号 (P6741652)
登録日 令和2年7月29日(2020.7.29)
発行日 令和2年8月19日(2020.8.19)
発明の名称または考案の名称 模型、製作システム、情報処理装置、製作方法、情報処理方法、プログラム、記録媒体
国際特許分類 G09B  23/28        (2006.01)
A61B  90/00        (2016.01)
B29C  64/393       (2017.01)
B33Y  10/00        (2015.01)
B33Y  30/00        (2015.01)
B33Y  50/02        (2015.01)
B33Y  80/00        (2015.01)
FI G09B 23/28
A61B 90/00
B29C 64/393
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
B33Y 80/00
請求項の数または発明の数 17
全頁数 15
出願番号 特願2017-507619 (P2017-507619)
出願日 平成28年2月22日(2016.2.22)
国際出願番号 PCT/JP2016/055049
国際公開番号 WO2016/152356
国際公開日 平成28年9月29日(2016.9.29)
優先権出願番号 2015060937
優先日 平成27年3月24日(2015.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成31年2月4日(2019.2.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
発明者または考案者 【氏名】三谷 純
【氏名】大河内 信弘
【氏名】大城 幸雄
【氏名】江 健太郎
【氏名】林 卓治
個別代理人の代理人 【識別番号】100096091、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 誠一
審査官 【審査官】奈良田 新一
参考文献・文献 国際公開第2012/132463(WO,A1)
特開2014-176425(JP,A)
森健策,医用画像処理と3Dプリンタによる臓器モデル生成と診断治療支援への応用,電子情報通信学会2015年総合大会講演論文集 エレクトロニクス2,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2015年 2月24日,S25-26頁
調査した分野 G09B 9/00,23/28-23/34
A61B 90/00
B29C 64/00-64/40,67/00
B33Y 10/00-99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
生体部位を模した模型であって、
前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームと、
少なくとも一部が前記生体部位の内部にある生体構造部位と、
が造形材料により形成されたことを特徴とする模型。
【請求項2】
前記生体構造部位と、他の前記生体構造部位もしくは前記フレームとを接続する接続部を有することを特徴とする請求項1記載の模型。
【請求項3】
前記模型を把持するための把持部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の模型。
【請求項4】
前記生体部位が肝臓であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の模型。
【請求項5】
前記生体部位の一部分について製作されたものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の模型。
【請求項6】
情報処理装置と3Dプリンタを含む、生体部位を模した模型の製作システムであって、
前記情報処理装置は、
前記生体部位の3次元形状データと、少なくとも一部が前記生体部位の内部にある生体構造部位の3次元形状データを記憶し、
前記生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成し、
前記3Dプリンタは、
前記フレームと前記生体構造部位の3次元形状データに対応する前記フレームと前記生体構造部位の3次元形状を造形材料により形成することを特徴とする製作システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、
前記生体構造部位と、他の前記生体構造部位もしくは前記フレームとを接続する接続部の3次元形状データを生成し、
前記3Dプリンタは、
前記接続部の3次元形状データに対応する前記接続部の3次元形状を造形材料により形成することを特徴とする請求項6に記載の製作システム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、
前記模型を把持するための把持部の3次元形状データを生成し、
前記3Dプリンタは、
前記把持部の3次元形状データに対応する前記把持部の3次元形状を造形材料により形成することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の製作システム。
【請求項9】
前記生体部位が肝臓であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の製作システム。
【請求項10】
生体部位を模した模型の3Dプリンタによる製作に用いる3次元形状データを生成する情報処理装置であって、
前記生体部位の3次元形状データを記憶し、
前記生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項11】
少なくとも一部が前記生体部位の内部にある生体構造部位の3次元形状データをさらに記憶し、
前記生体構造部位と、他の前記生体構造部位もしくは前記フレームとを接続する接続部の3次元形状データを生成することを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記模型を把持するための把持部の3次元形状データを生成することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記生体部位が肝臓であることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項14】
情報処理装置と3Dプリンタを用いた、生体部位を模した模型の製作方法であって、
前記生体部位の3次元形状データと、少なくとも一部が前記生体部位の内部にある生体構造部位の3次元形状データを記憶した前記情報処理装置が、
前記生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成し、
前記3Dプリンタが、
前記フレームと前記生体構造部位の3次元形状データに対応する前記フレームと前記生体構造部位の3次元形状を造形材料により形成することを特徴とする製作方法。
【請求項15】
生体部位を模した模型の3Dプリンタによる製作に用いる3次元形状データを生成する情報処理方法であって、
情報処理装置が、
生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成することを特徴とする情報処理方法。
【請求項16】
コンピュータを、
生体部位を模した模型の3Dプリンタによる製作に用いる3次元形状データを生成する情報処理装置であって、
生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成する情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項17】
コンピュータを、
生体部位を模した模型の3Dプリンタによる製作に用いる3次元形状データを生成する情報処理装置であって、
生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成する情報処理装置として機能させるためのプログラムを記録した記録媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、模型並びにその製作システム、情報処理装置、製作方法、情報処理方法、プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dプリンタ等の立体造形手法により様々な物品を製作する試みが行われている。医療分野においても例外でなく、特許文献1には、手術計画やインフォームドコンセント等に用いる肝臓模型の製作方法について記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平5-11689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3Dプリンタで製作する従来の肝臓模型は、肝臓実質を中実の物体とし、その中に門脈や静脈等の血管あるいは腫瘍などの構造部位を表現したものであった。しかしながら、肝臓実質の形状や模型の表面状態によっては、肝臓実質内の血管や腫瘍が歪んで見えたり、見難かったりする問題があった。また、従来方式では肝臓実質の形成に高価なモデル材を多く使用するため、製造コストが高くなる問題点もあった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、内部の構造が見やすい肝臓などの生体部位の模型等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための第1の発明は、生体部位を模した模型であって、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームと、少なくとも一部が前記生体部位の内部にある生体構造部位と、が造形材料により形成されたことを特徴とする模型である。
【0007】
前記生体構造部位と、他の前記生体構造部位もしくは前記フレームとを接続する接続部を有することが望ましい。また前記模型を把持するための把持部を有することが望ましい。前記生体部位は例えば肝臓である。さらに、模型は前記生体部位の一部分について製作されたものであってもよい。
【0008】
本発明では、生体部位を模した模型において、生体部位がフレーム化され中空となるので、生体部位内部にある血管や腫瘍などの生体構造部位が見やすくなる。これにより、手術計画や患者へのインフォームドコンセントの際に参照したり、手術時や教育等に用いたりするのに好適となる。また模型製作用の高価なモデル材の使用量が減るので低コストであり、研究分野だけでなく臨床現場などにも広範囲に普及させることも可能である。なお、生体部位は肝臓等の臓器の他、筋肉など人や動物の体の部分を広く指すものとする。また、生体構造部位は血管や神経など生体部位に付随する構造部位を広く指すものとする。
【0009】
また本発明では、腫瘍などの生体構造部位と他の生体構造部位あるいはフレームを接続部で接続することで、腫瘍などの生体構造部位が模型から脱落することがなくなる。さらに、模型を把持する把持部を設けておくことで、模型が取扱い易くなる。また必要に応じて生体部位の一部分について模型を製作することも可能であり、模型を小型化できる。
【0010】
第2の発明は、情報処理装置と3Dプリンタを含む、生体部位を模した模型の製作システムであって、前記情報処理装置は、前記生体部位の3次元形状データと、少なくとも一部が前記生体部位の内部にある生体構造部位の3次元形状データを記憶し、前記生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成し、前記3Dプリンタは、前記フレームと前記生体構造部位の3次元形状データに対応する前記フレームと前記生体構造部位の3次元形状を造形材料により形成することを特徴とする製作システムである。
【0011】
前記情報処理装置は、前記生体構造部位と、他の前記生体構造部位もしくは前記フレームとを接続する接続部の3次元形状データを生成し、前記3Dプリンタは、前記接続部の3次元形状データに対応する前記接続部の3次元形状を造形材料により形成することが望ましい。また、前記情報処理装置は、前記模型を把持するための把持部の3次元形状データを生成し、前記3Dプリンタは、前記把持部の3次元形状データに対応する前記把持部の3次元形状を造形材料により形成することも望ましい。前記生体部位は、例えば肝臓である。
【0012】
第3の発明は、生体部位を模した模型の3Dプリンタによる製作に用いる3次元形状データを生成する情報処理装置であって、前記生体部位の3次元形状データを記憶し、前記生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成することを特徴とする情報処理装置である。
【0013】
第3の発明の情報処理装置は、少なくとも一部が前記生体部位の内部にある生体構造部位の3次元形状データをさらに記憶し、前記生体構造部位と、他の前記生体構造部位もしくは前記フレームとを接続する接続部の3次元形状データを生成することが望ましい。また、前記模型を把持するための把持部の3次元形状データを生成することも望ましい。前記生体部位は、例えば肝臓である。
【0014】
第4の発明は、情報処理装置と3Dプリンタを用いた、生体部位を模した模型の製作方法であって、前記生体部位の3次元形状データと、少なくとも一部が前記生体部位の内部にある生体構造部位の3次元形状データを記憶した前記情報処理装置が、前記生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成し、前記3Dプリンタが、前記フレームと前記生体構造部位の3次元形状データに対応する前記フレームと前記生体構造部位の3次元形状を造形材料により形成することを特徴とする製作方法である。
【0015】
第5の発明は、生体部位を模した模型の3Dプリンタによる製作に用いる3次元形状データを生成する情報処理方法であって、情報処理装置が、生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成することを特徴とする情報処理方法である。
【0016】
第6の発明は、コンピュータを、生体部位を模した模型の3Dプリンタによる製作に用いる3次元形状データを生成する情報処理装置であって、生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成する情報処理装置として機能させるためのプログラムである。
【0017】
第7の発明は、コンピュータを、生体部位を模した模型の3Dプリンタによる製作に用いる3次元形状データを生成する情報処理装置であって、生体部位の3次元形状データから、前記生体部位の外面の一部に沿う連続した線状のフレームの3次元形状データを生成する情報処理装置として機能させるためのプログラムを記録した記録媒体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、内部の構造が見やすい肝臓などの生体部位の模型等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】製作システム1を示す図
【図2】情報処理装置5のハードウェア構成を示す図
【図3】肝臓300の3次元形状データの例を示す図
【図4】肝臓模型3を示す図
【図5】肝臓実質31、門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35の3次元形状データを示す図
【図6】肝臓模型3の製作方法の概略について示すフローチャート
【図7】肝臓模型3の3次元形状データを生成する手順を示すフローチャート
【図8】肝臓実質31のフレーム化を示す図
【図9】把持部36の3次元形状データの生成について説明する図
【図10】接続部37の3次元形状データの生成について説明する図
【図11】肝臓模型3の3次元形状データを示す図
【図12】3Dプリンタ7による肝臓模型3の製作について示す図
【図13】肝臓模型3aを示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。

【0021】
(1.製作システム1)
図1は、本発明の実施形態に係る製作システム1を示す図である。この製作システム1は肝臓模型3を製作するものであり、情報処理装置5、3Dプリンタ7等を有する。

【0022】
情報処理装置5は、肝臓模型3を3Dプリンタ7によって製作するための模型製作用の3次元形状データを生成するものである。

【0023】
図2に情報処理装置5のハードウェア構成を示す。図に示すように、情報処理装置5は、制御部51、記憶部52、入力部53、表示部54、通信部55等がバス56を介して接続されたコンピュータで実現できる。ただし、情報処理装置5の構成がこれに限ることはない。

【0024】
制御部51は、CPU、ROM、RAM等で構成される。CPUは、記憶部52、ROM等の記録媒体に格納された情報処理装置5の後述する処理に係るプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス56を介して接続された各部を駆動制御し処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラムやデータ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部52、ROM等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部51が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。

【0025】
記憶部52は、ハードディスクドライブ等であり、制御部51が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ等が格納される。
入力部53は、コンピュータに対して操作指示、動作指示、データ入力等を行うためのもので、例えば、タッチパネル、キー等の入力装置を有する。

【0026】
表示部54は、液晶パネル等のディスプレイ装置、およびディスプレイ装置と連携して表示機能を実現するための論理回路等を有する。
通信部55は、ネットワーク等を介した通信を媒介する通信インタフェースである。
バス56は、各部間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。

【0027】
3Dプリンタ7は、模型製作用の3次元形状データに基づいて肝臓模型3の製作を行うものである。3Dプリンタ7としては、例えば、模型製作用の3次元形状データを上下複数層に輪切りしたスライスデータに基づいて、モデル材およびサポート材を噴射により塗布しUV(Ultra Violet)光の照射によってモデル材の樹脂を硬化させる工程を下層から上層へと繰り返し、樹脂を積層させるインクジェット方式によるものを用いる。これにより、血管等の細かい形状を高精度に表現することが可能である。

【0028】
モデル材は肝臓模型3の造形材料として用いる樹脂であり、サポート材はモデル材を下方から支えるために用いる樹脂である。肝臓模型3の製作後、サポート材が取り除かれる。サポート材には、洗浄等により容易に除去できるものが用いられる。

【0029】
モデル材としてはUV硬化性を有する各種のアクリル樹脂等を用いることができ、サポート材としては各種の樹脂、例えばウォータージェットにより除去可能なゲル状樹脂や、加熱により除去可能な低融点のワックス材、あるいは水に浸けることで除去できる水溶性樹脂を用いることができる。

【0030】
なお、3Dプリンタ7は上記に限らず、スライスデータに基づいてノズルヘッドから溶融樹脂を塗布する工程を下層から上層へと繰り返し樹脂を積層させるFDM方式(熱溶解積層法)によるもの等も利用可能である。

【0031】
(2.肝臓と肝臓模型3)
肝臓模型3は、人間の肝臓を模した模型である。図3は肝臓300の3次元形状データを模式的に示すものであり、生体部位としての肝臓本体である肝臓実質31と、肝臓に付随する生体構造部位である門脈32、静脈33、下大静脈34及び腫瘍35を含む。図示は省略したが、生体構造部位には動脈なども含まれる。

【0032】
図4は肝臓模型3を示す図である。図に示すように、本実施形態では肝臓実質31がフレーム31aとしてフレーム化され中空となる。フレーム31aは肝臓実質31の外面の少なくとも一部に沿ったものとなっており、肝臓実質31の形状がフレーム31aによって表現されることとなる。肝臓実質31をフレーム化したことにより、内部の門脈32、静脈33、腫瘍35等が見やすくなっている。

【0033】
また、この肝臓模型3は下大静脈34の下端面に設けた把持部36を把持して容易に取り扱うことができ、且つ腫瘍35が接続部37により肝臓模型3に一体化されているので脱落したりすることがない。なお、肝臓模型3の大きさは実物の1/2程度とするが、これに限ることはない。

【0034】
(3.肝臓実質31、門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35の3次元形状データ)
本実施形態では、肝臓模型3の模型製作用の3次元形状データを生成するに際し、肝臓実質31や門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35等の3次元形状データがSTL(Standard Triangulated Language)データなどとして情報処理装置5に予め入力され、記憶部52等に記憶される。

【0035】
これらの3次元形状データは、CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic
Resonance Imaging)などで患者等の肝臓をスキャンして得られたDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)データから得られる。その手法については既知であるので説明を省略する。

【0036】
図5(a)~(e)の実線は、それぞれ肝臓実質31、門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35の3次元形状データの例である。これらの3次元形状データは所定の原点を基準として定められ、相対的な位置関係が維持される。図5(b)~(e)の点線は、門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35に対する肝臓実質31の位置を示す。

【0037】
(4.肝臓模型3の製作方法)
次に肝臓模型3の製作方法について説明する。図6は肝臓模型3の製作方法の概略について示すフローチャートである。図に示すように、本実施形態では、まず前記したようにCT等で患者等の肝臓をスキャンし(S1)、コンピュータがDICOMデータを取り込む(S2)。そして医師等がDICOMデータから得られた3次元データ上の肝臓実質31、門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35を指示し、コンピュータがこれらの3次元形状データを抽出する(S3)。各3次元形状データは情報処理装置5に入力され、記憶部32に記憶される。情報処理装置5はこれらの3次元形状データを用いて肝臓模型3の模型製作用の3次元形状データを生成し(S4)、当該3次元形状データの画像等による可視化を行い医師等によるチェックを経てOKなら(S5;OK)、当該3次元形状データに基づいて、3Dプリンタが肝臓模型3を製作する(S6)。NGなら(S5;NG)、S4に戻って再度模型製作用の3次元形状データを生成する流れとなる。

【0038】
(4-1.肝臓模型3の模型製作用の3次元形状データの生成)
図7は、S4において肝臓模型3の模型製作用の3次元形状データを生成する手順を示すフローチャートである。図の各ステップは、情報処理装置5の制御部51が、ユーザの指示入力等に応じてあるいはデータ演算により自動的に実行する処理である。

【0039】
S4において、情報処理装置5は肝臓実質31のフレーム化処理を行い、フレーム31aの3次元形状データを生成する(S41)。

【0040】
S41では、例えば肝臓実質31の3次元形状データの外面をなぞる等、各種の指定方法により図8(a)の点線に示すようにフレーム位置を指定すると、図8(b)に示すように、一定の断面形状を有する、連続した線状のフレーム31aの3次元形状データが生成されるようになっている。

【0041】
なお、フレーム化の方法はこれに限らず、例えば所定の方向を指定し、その方向から肝臓実質31を見た時の正面の輪郭をフレーム化する、といったことも可能である。また、肝臓実質31の外面を六角形のハニカム構造化してフレーム31aの3次元形状データを生成することなども可能である。また、肝臓実質31は小葉による複数の部位から構成されるので、これらの部位の境界をフレーム化することも可能である(図8(a)は境界をフレームに用いた一例である)。また上記の部位のうち一つの部位のみをフレーム化し、後述の図13で示すように肝臓実質31の一部分のみの模型を製作することも可能である。

【0042】
フレーム31aは肝臓実質31の外面の少なくとも一部に沿ったものとなっており、これにより肝臓実質31の形状を表現できる。さらに、このようなフレーム31aに加えて、フレーム31a間を接続するような線状部分の3次元形状データを生成し、併せてフレームの3次元形状データとしてもよい。これによりフレームの強度が向上する。

【0043】
また、フレーム31aが門脈32や静脈33等の生体構造部位と区別し易いよう、フレーム31aの断面形状を門脈32や静脈33等の生体構造部位と異ならせたり、フレーム31aの外面に溝等の凹凸形状を付与したりすることも可能である。また模型製作時にフレーム31aのモデル材の色を門脈32や静脈33等の生体構造部位と変えてもよい。なお門脈32や静脈33等の生体構造部位同士についても、モデル材の色を互いに変えて区別することが可能である。

【0044】
さらに、フレーム31aの3次元形状データを外面とその内部に分けて、3Dプリンタ7による造形時に外面は光透過性を有するモデル材で形成するが内部はサポート材を用い、このサポート材の色により、モデル材で形成する門脈32や静脈33等の生体構造部位と区別することも可能である。あるいは逆に、門脈32や静脈33等の生体構造部位の3次元形状データを外面と内部に分け、上記と同様、外面と内部をモデル材とサポート材でそれぞれ形成し、モデル材で形成するフレーム31aと区別することも可能である。

【0045】
本実施形態では、図8(c)に示すように、フレーム31aにより囲まれる面310から生体構造部位の所定部分、例えば静脈33等の先端などの細い血管部分が突出しているか判定する。この突出判定では、例えば、生体構造部位がフレーム31aにより囲まれる面310から突出しているかを判定し、突出している場合(S42;YES)には、その突出箇所が細い血管部分等の所定部分であるかを判定する。このような血管部分が上記の面310から突出していると、模型の取扱時に当該血管部分が折れるなどの損傷が起こりやすくなるので、突出箇所が細い血管部分等の所定部分の場合(S52;YES)には情報処理装置5の表示部54などに警告を表示し(S53)、このような所定部分が上記の面310から突出しないよう別のフレーム位置を指定して再度フレーム31aを生成するように促すなどしておく。上記の面310から静脈33等の細い血管部分など、生体構造部位の所定部分が突出しない場合(S42;NOまたはS52;NO)は、そのフレーム31aが適切であるとして記憶部32等のDB(データベース)に登録し(S43)、次回以降のフレーム化処理で使用できるようにする。フレーム31aの3次元形状データを自動生成する場合には、上記の判定処理を組み込むことで、フレーム31aで囲まれる面310から細い血管部分等が突出しないようにフレーム31aの3次元形状データを生成することも可能である。また上記した判定等の手順は一例であり、これに限ることはない。

【0046】
その他、S41では、手術時の切開部などの特定の箇所を指定して、当該箇所を避けるようにフレーム31aの3次元形状データを生成することなども可能である。これにより、指定した箇所の内側にある門脈32や静脈33、腫瘍35等の生体構造部位が見易くなる。

【0047】
フローチャートの説明に戻る。情報処理装置5は、肝臓模型3の把持部36の3次元形状データを生成する(S44)。

【0048】
S44では、例えば、図9に示すように下大静脈34の3次元形状データの下端面から法線方向外側に延伸する柱状の3次元形状データを生成し、これを把持部36とする。しかしながら、把持部36の形状はこれに限らない。例えば、把持部36の3次元形状データに孔を付与し、肝臓模型3の台座の支持棒(不図示)を挿入して配置可能とすることもできる。把持部36を持ちやすいよう、外面に凹凸形状を付与することも可能である。さらに、下大静脈34以外の生体構造部位等の3次元形状データから把持部36を生成することなども可能である。

【0049】
情報処理装置5は、腫瘍35の3次元形状データをその他の生体構造部位やフレーム31aの3次元形状データと比較し、腫瘍35が他の生体構造部位あるいはフレーム31aと連続しているかを判定する(S45)。連続する場合は(S46;YES)そのまま後述するS48の処理に移るが、連続していない場合(S46;NO)、腫瘍35の接続部37の3次元形状データを生成する(S47)。

【0050】
腫瘍35の接続部37の3次元形状データの生成について示すのが図10であり、本実施形態では腫瘍35とその他の生体構造部位もしくはフレーム31aとの間で最も距離が短くなる箇所に、腫瘍35と対象部位(図の例ではフレーム31a)との間を接続する接続部37の3次元形状データを生成する。ただし、接続部37の箇所はこれに限らず、腫瘍35とその他の生体構造部位もしくはフレーム31aを接続していればよい。

【0051】
また接続部37の形状は角柱状とするが、これに限ることはない。ただし、接続部37は、門脈32や静脈33などの生体構造部位等と異なる断面形状とし、区別できるようにしておくことが望ましい。そのため、接続部37を角柱状とするほか、溝等の凹凸形状を外面に付与することも可能である。あるいは、模型製作時に接続部37のモデル材の色を門脈32や静脈33などの生体構造部位と変えてもよい。また前記と同様、接続部37の3次元形状データを外面と内部に分けて、3Dプリンタ7による造形時に外面は光透過性を有するモデル材で形成するが内部はサポート材を用いる、といったことも可能である。

【0052】
また、本実施形態では腫瘍35以外の部分の3次元形状データが連続しており、腫瘍35を接続部37でフレーム31aに接続することで一体の模型が形成されるが、場合によっては、S45の連続判定を腫瘍35以外の生体構造部位、例えば下大静脈34等の太い血管部分や静脈33等の細い血管部分に対し行って他の生体構造部位あるいはフレーム31aと連続しているかを判定したり、フレーム31aや各生体構造部位の3次元形状データが全体として連続しているか判定することも可能である。連続していない場合、上記と同様にして不連続部分を連続させる接続部の3次元形状データを生成するとよい。

【0053】
情報処理装置5は、以上で生成されたフレーム31a、把持部36、接続部37の3次元形状データ、および門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35の各3次元形状データに対し、ブーリアン演算による和集合をとって統合処理を行い(S48)、肝臓模型3の模型製作用の3次元形状データを生成する。

【0054】
図11はこの3次元形状データを模式的に示したものである。この後、本実施形態では、3次元形状データを用いて模型の強度判定を行う(S49)。S49では、強度判定として、例えば3次元形状データの各部分の応力解析などを行い、フレーム31a等の部分が他の部分、例えば腫瘍35等を保持するのに十分な強度を有しているかの判定を行う。

【0055】
強度不足となる部分が無いと判定された場合(S50;YES)、そのまま処理を終了するが、強度不足となる部分が有ると判定された場合(S50;NO)、情報処理装置5は3次元形状データの修正を行う(S51)。例えばフレーム31aが腫瘍35を保持するのに十分な強度を有していないと判定される場合、フレーム31aを太くしたり、フレーム31a間を接続する線状部分の3次元形状データを補強用に付与するなどしてその強度を向上させる。この例では3次元形状データの修正を情報処理装置5が自動で行うが、強度不足の部分を3次元形状データ上で表示するなどして、ユーザ自身で修正を行うか否かの選択を受付けるようにしてもよい。ユーザ自身で修正を行う場合、情報処理装置5はユーザの指示入力に応じて3次元形状データを修正する。

【0056】
こうして生成された3次元形状データを可視化するなどして医師等の確認を得た後、3次元形状データを用いた3Dプリンタ7による肝臓模型3の製作を行う流れとなる。なお、上記したフレーム31aの3次元形状データの生成および突出判定(S41等)、把持部36の3次元形状データの生成(S44)、腫瘍35の連続判定並びに接続部37の3次元形状データの生成(S45およびS47)は、順序を入れ替えて行ってもよい。

【0057】
(4-2.3Dプリンタ7による肝臓模型3の製作)
図12は前記したS6(図6参照)における3Dプリンタ7による肝臓模型3の製作について示す図である。S6では、S4で生成した肝臓模型3の模型製作用の3次元形状データの姿勢を定め、前記したように、当該3次元形状データを輪切りしたスライスデータに従って、ステージ70上でインクジェットヘッド(不図示)からモデル材71およびサポート材72を塗布し、UV光によりモデル材71を硬化させる工程を上下複数層に渡って行う。

【0058】
モデル材71は、前記したフレーム31a、把持部36、接続部37、および門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35の位置で塗布され、サポート材72はモデル材71を下から支える位置に塗布される。最後にサポート材72を除去すると、図4に示す肝臓模型3が製作される。

【0059】
こうしてフレーム31a、把持部36、接続部37、および門脈32、静脈33、下大静脈34、腫瘍35の3次元形状データに対応する3次元形状がモデル材71により形成され、肝臓模型3の製作が完了する。

【0060】
なお、フレーム31aなど肝臓模型3の一部と、その他の部分を別々に3Dプリンタ7で製作し、その後両者を接着したり機械的に結合したりする、といった製作方法も可能である。これによりサポート材72の使用量を低減することも可能になる。なお機械的な結合を行う場合には、その結合部の3次元形状データも前記のS4で生成しておくとよい。また、把持部36ではその他の部分より硬化時の強度が劣るが安価であるモデル材を用いるなど、肝臓模型3の一部とその他の部分とで使用するモデル材を変えてもよい。

【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、肝臓模型3を既存の3Dプリンタで簡易に製作でき、この際、肝臓本体である肝臓実質31(生体部位)がフレーム化され中空となるので、内部にある門脈32や静脈33及び腫瘍35等の生体構造部位が見やすくなる。これにより、手術計画や患者へのインフォームドコンセントの際に参照したり、手術時や教育等に用いたりするのに好適となる。また模型製作用の高価なモデル材71の使用量が減るので低コストであり、研究分野だけでなく臨床現場などにも広範囲に普及させることも可能である。

【0062】
また、腫瘍35などの生体構造部位と他の生体構造部位あるいはフレーム31aを接続部37で接続することで、腫瘍35などの生体構造部位が模型から脱落することがなくなる。さらに、模型を把持する把持部36を設けておくことで、模型が取扱い易くなる。

【0063】
しかしながら、本発明はこれに限ることはない。例えば、S4において、下大静脈34の3次元形状データの下端面あるいは上記の把持部36の3次元形状データの下端面を板状に拡げ、肝臓模型3を自立可能とすることもできる。また必要に応じて門脈32や静脈33などの生体構造部位の3次元形状データを太らせ、血管を太くするなどの変形を行うことも可能である。

【0064】
また、肝臓模型3は一体でなくともよく、個々の部位が独立して支持されるようなものでもよい。その場合、S45の連続判定を省略することも可能である。また図13に示すように、必要に応じて肝臓実質31の一部分のみフレーム化を行い、当該一部分のみについての肝臓模型3aを製作することも可能である。この場合も、前記と同様にして3次元形状データを作成した後、当該3次元形状データを用いて3Dプリンタ7により肝臓模型3aの製作を行うことが可能であり、模型を小型化できる。

【0065】
なお、本発明において生体部位は肝臓等の臓器の他、筋肉など人や動物の体の部分を広く指すものとし、生体構造部位は、血管や神経など生体部位に付随する構造部位を広く指すものとする。本実施形態では生体部位の例として肝臓の例を挙げ、生体構造部位の例として門脈32や静脈33等の血管や腫瘍35を挙げて説明した。肝臓模型3は手術等で利用機会が多く、また血管や腫瘍の配置は複雑なので本発明を利用するのに特に有効である。しかしながら、生体部位は人や動物の体の部分であればよく、例えば膵臓であってもよい。この場合、膵臓実質を本実施形態と同様にフレーム化することになる。また肝臓や膵臓以外の臓器をはじめ、筋肉、目等の器官にも本発明は適用可能である。また生体構造部位についても、生体部位に付随するものであればよく、本発明では少なくとも一部が生体部位の内部にあるものを含んでいればよい。

【0066】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0067】
1;製作システム
3、3a;肝臓模型
5;情報処理装置
7;3Dプリンタ
31;肝臓実質
32;門脈
33;静脈
34;下大静脈
35;腫瘍
36;把持部
37;接続部
70;ステージ
71;モデル材
72;サポート材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
11
【図13】
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