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明細書 :構造物の打音検査装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-039787 (P2019-039787A)
公開日 平成31年3月14日(2019.3.14)
発明の名称または考案の名称 構造物の打音検査装置及び方法
国際特許分類 G01N  29/04        (2006.01)
G01N  29/265       (2006.01)
FI G01N 29/04
G01N 29/265
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2017-161617 (P2017-161617)
出願日 平成29年8月24日(2017.8.24)
発明者または考案者 【氏名】鞍谷 文保
【氏名】磯 雅人
【氏名】毛利 茂則
【氏名】南出 重克
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
【識別番号】308015522
【氏名又は名称】ジビル調査設計株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100111855、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 好昭
審査請求 未請求
テーマコード 2G047
Fターム 2G047AA05
2G047AA10
2G047BC02
2G047BC03
2G047BC04
2G047BC07
2G047CA03
2G047DB03
2G047GD02
2G047GF31
2G047GG28
2G047GG30
2G047GJ02
要約 【課題】打撃部に対して適切な押付力を設定して精度よく打音検査を行うことができる構造物の打音検査装置及び方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】打音検査装置は、構造物Mの検査対象表面Sを打撃する打撃部1と、打撃部1の打撃面を検査対象表面Sに押し付ける押付力を調整可能に設定する押付部2と、打撃部1の打撃により発生する打撃音を検出する検出部3と、検出部3からの検出信号に基づいて構造物M内部の状態を判定する処理部5とを備えている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
構造物の検査対象表面を打撃する打撃部と、前記打撃部の打撃面を前記検査対象表面に押し付ける押付力を調整可能に設定する押付部と、前記打撃部の打撃により発生する打撃音を検出する検出部と、前記検出部からの検出信号に基づいて前記構造物内部の状態を判定する処理部とを備えている構造物の打音検査装置。
【請求項2】
前記押付部は、前記押付力を検出するセンサを備えている請求項1に記載の構造物の打音検査装置。
【請求項3】
前記打撃部、前記押付部及び前記検出部を前記検査対象表面に沿って移動させる移動部を備えている請求項1又は2に記載の構造物の打音検査装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記検出信号に基づいてオーバーオール値を算出して判定処理を行う請求項1から3のいずれかに記載の構造物の打音検査装置。
【請求項5】
構造物の検査対象表面を打撃部により打撃して発生する打撃音を検出して構造物内部の状態を判定する構造物の打音検査方法において、前記打撃部の打撃面を前記検査対象表面に押し付ける押付力を調整して打撃動作を行う構造物の打音検査方法。
【請求項6】
前記打撃音を検出した検出信号に基づいてオーバーオール値を算出して判定する請求項5に記載の構造物の打音検査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁、建造物等の構造物に対する打撃音に基づいて検査を行う打音検査装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、戦後に構築された橋梁、建造物等の構造物が耐用年数を迎えており、劣化よる事故を防ぐために定期的な検査行うことが義務付けられている。こうした構造物の検査方法としては、簡易で低コストの打音検査法が広く用いられている。打音検査法は、構造物の検査対象表面を点検ハンマー等で打撃し、打撃した表面から生じる打撃音から内部欠陥(コンクリートの浮きや空隙等)を判定する検査方法である。
【0003】
従来の打撃検査法では、検査員が手動で打撃動作を行い、発生する打撃音を検査員が直接聴くことで打撃音の違いから欠陥の有無を判定していたが、検査員の経験や感覚に依るところが大きく、欠陥の有無や状態を定量的に分析することは困難であった。また、検査員による打撃検査では、打撃動作にばらつきが生じやすく検査に要する時間がかかるといった課題も指摘されている。
【0004】
こうした従来の打撃検査法の課題に対して、打撃音から欠陥状態を定量的に把握するための検査技術が提案されている。例えば、特許文献1では、コンクリート構造物の方面に多角形のヘッドを当てながら移動させ、その際に発生する転打音を検出し、転打音の周波数分布に対して特定の部分の音圧レベルが高くなっている部分を検出することで異常部分を判定するようにした検査方法が記載されている。また、特許文献2では、路面上に多角形に形成された回動打音器を移動させ、その際に発生する衝撃音をマイクロフォンにより収録し、音響解析装置により解析された音圧レベルにより損傷部を判定する打音装置が記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2013-253947号公報
【特許文献2】特許第5651739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献では、多角形のヘッドを検査対象表面に転動させて発生する打撃音を検出しているが、ヘッドを転動させる際にヘッドを検査対象表面に押し付ける押付力に関して特に条件設定することは行われていない。しかしながら、押付力にバラツキがあるとヘッドによる打撃力にバラツキが生じるようになり、検出される打撃音に影響が及ぶようになることから、検査精度が低下するという課題がある。また、検出された打撃音の時間波形や周波数特性を用いて検査対象物の健全部及び欠陥部を判定するようにしているが、明確に判定することが難しいといった課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、打撃部に対して適切な押付力を設定して精度よく打音検査を行うことができる構造物の打音検査装置及び方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る構造物の打音検査装置は、構造物の検査対象表面を打撃する打撃部と、前記打撃部の打撃面を前記検査対象表面に押し付ける押付力を調整可能に設定する押付部と、前記打撃部の打撃により発生する打撃音を検出する検出部と、前記検出部からの検出信号に基づいて前記構造物内部の状態を判定する処理部とを備えている。さらに、前記押付部は、前記押付力を検出するセンサを備えている。さらに、前記打撃部、前記押付部及び前記検出部を前記検査対象表面に沿って移動させる移動部を備えている。さらに、前記処理部は、前記検出信号に基づいてオーバーオール値を算出して判定処理を行う。
【0009】
本発明に係る構造物の打音検査方法は、構造物の検査対象表面を打撃部により打撃して発生する打撃音を検出して構造物内部の状態を判定する構造物の打音検査方法において、前記打撃部の打撃面を前記検査対象表面に押し付ける押付力を調整して打撃動作を行う。さらに、前記打撃音を検出した検出信号に基づいてオーバーオール値を算出して判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のような構成を有することで、打撃部に対して適切な押付力を設定して精度よく打音検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施形態である打音検査装置に関する側面から見た概略構成図である。
【図2】本発明に係る実施形態である打音検査装置に関する上面から見た概略構成図である。
【図3】供試体に関する説明図である。
【図4】欠陥部の深さが30mmの供試体を用いた打音検査で得られた音圧の時間波形を示すグラフである。
【図5】押付力を15Nに設定した打音検査で得られた音圧の時間波形を示すグラフである。
【図6】打撃ヘッドの打撃毎の時間波形から抽出した音圧の最大値を示すグラフである。
【図7】欠陥部の深さ10mmの供試体の健全部及び欠陥部における代表的な1打撃分の時間波形について周波数分析を行った結果を示す周波数スペクトルである。
【図8】欠陥部の深さ15mmの供試体の健全部及び欠陥部における代表的な1打撃分の時間波形について周波数分析を行った結果を示す周波数スペクトルである。
【図9】欠陥部の深さ20mmの供試体の健全部及び欠陥部における代表的な1打撃分の時間波形について周波数分析を行った結果を示す周波数スペクトルである。
【図10】欠陥部の深さ30mmの供試体の健全部及び欠陥部における代表的な1打撃分の時間波形について周波数分析を行った結果を示す周波数スペクトルである。
【図11】欠陥部の深さ10mmの場合における打撃ヘッドの打撃毎の音圧の最大値及びオーバーオール値を示すグラフである。
【図12】欠陥部の深さ15mmの場合における打撃ヘッドの打撃毎の音圧の最大値及びオーバーオール値を示すグラフである。
【図13】欠陥部の深さ20mmの場合における打撃ヘッドの打撃毎の音圧の最大値及びオーバーオール値を示すグラフである。
【図14】欠陥部の深さ30mmの場合における打撃ヘッドの打撃毎の音圧の最大値及びオーバーオール値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。

【0013】
図1は、本発明に係る実施形態である打音検査装置に関する側面から見た概略構成図であり、図2は、上面から見た外力構成図である。打音検査装置は、構造物の検査対象表面を打撃する打撃部1と、打撃部1の打撃面を検査対象表面Sに押し付ける押付力を調整可能に設定する押付部2と、打撃部1の打撃により発生する打撃音を検出する検出部3と、打撃部1、押付部2及び検出部3を検査対象表面Sに沿って移動させる移動部4と、検出部3からの検出信号に基づいて構造物M内部の状態を判定する処理部5とを備えている。

【0014】
打撃部1は、公知の多角形状の打撃ヘッド10を備えており、打撃ヘッド10は、支持ロッド11の先端側に回転可能に取り付けられている。支持ロッド11は、取付アーム12に中央部分を回動可能に軸支されており、後端側を押付部2に連結されている。そのため、支持ロッド11の後端側を押付部2により検査対象表面Sから離間する方向に押付力を印加されることで、打撃ヘッド10は、検査対象表面Sに打撃面が所定の押付力で押し付けられるようになる。

【0015】
そして、後述するように、移動部4により打撃部1を移動させることで、打撃ヘッド10は押付力により検査対象表面Sに押し付けられた状態のまま転動するようになり、転動動作中に打撃ヘッド10の角部の1つが検査対象表面Sに当接して一旦打撃ヘッド10が持ち上げられた後次の打撃面が検査対象表面Sに衝突して打撃動作が行われる。そのため、転動動作中に所定間隔おきに打撃動作を行われるようになる。打撃動作では、静的成分として押付力が印加されるとともに動的成分として打撃力が印加されるようになる。

【0016】
押付部2は、支持ロッド11の後端側に連結されて打撃ヘッド10に対して押付力を印加するようになっている。例えば、所定の引張力を印加する引張りバネやアクチュエータ等を用い、支持ロッド11と連結した端部とは反対側の端部の取付位置を調整して引張力の大きさを調整できるようになっている。打撃ヘッド10の打撃面が検査対象表面Sに対して所定の押付力で押し付けるために、押付部2に引張力を検出するセンサを取り付けて、押付力に対応する引張力となるように調整することができる。また、打撃面に直接ロードセル等のセンサを取り付けて検出された押付力に基づいて引張力を調整することもできる。

【0017】
この例では、押付部2を支持ロッド11の後端側に連結して押付力を印加するようにしているが、これ以外の押付力の印加方法を用いることもでき、特に限定されない。例えば、支持ロッド11の取付アーム12に軸支した部分よりも先端側に押付部2を連結して支持ロッド11を検査対象表面Sに接近する方向に押圧することで、打撃ヘッド10に押付力を印加することができる。また、取付アーム12に支持ロッド11を軸支する回転軸を駆動する回転駆動機構を設けることで、打撃ヘッド10を所定の押付力により押し付けるように支持ロッド11を回転駆動させるようにしてもよい。

【0018】
検出部3は、打撃ヘッド10が検査対象表面Sに押し付けられながら衝突して発生する打撃音を検出する検出センサ30を備えており、検出センサ30は、取付アーム31の先端部に固定されて打撃ヘッド10の近傍に配置されている。検出センサ30としては、マイクロフォン等を用いることができ、打撃音による振動を電気信号に変換して検出することができる。

【0019】
検出センサとしては、マイクロフォン以外のセンサを用いることができ、特に限定されない。例えば、支持ロッド11に振動検出センサを取り付けて打撃ヘッド10の打撃動作に伴う振動を検出することで、打撃音と同様に打撃状態を検出することもできる。

【0020】
移動部4は、直方体状の枠体からなる基体フレーム40を備えており、基体フレーム40は、検査対象表面Sに当接する矩形状の枠とは反対側の枠の長手方向に沿った一対のレール体41を備えている。一対のレール体41には、キャリッジ42が長手方向に沿って移動可能に架設されており、キャリッジ42には、駆動部43が取り付けられている。キャリッジ42は、駆動部43により所定の移動速度で長手方向に移動するようになっている。キャリッジ42には、取付アーム12を介して打撃部1及び押付部2が取り付けられており、取付アーム31を介して検出部3が取り付けられている。そのため、キャリッジ42を所定の移動速度で移動させることで、打撃部1、押付部2及び検出部3が所定の移動速度で移動するようになり、打撃ヘッド10を押付力により押し付けた状態で転動させながら移動させて打撃動作を行うことができ、検査対象表面Sにおける打撃ヘッド10の移動位置における打撃音を検出することが可能となる。

【0021】
移動部4は、打撃部1、押付部2及び検出部3を支持して所定の移動速度で移動させることができればよく、上述した例に限定されることはない。例えば、基体フレーム40に駆動部を取り付けるとともにキャリッジ42に取り付けたキャリッジベルトをレール体41に沿って長手方向に張架して駆動部により駆動することで、キャリッジ42を移動させることができる。また、打撃部1、押付部2及び検出部3を支持する車体フレームに車輪を取り付けて移動体として構成するようにしてもよい。

【0022】
処理部5は、押付部2、検出部3及び移動部4とそれぞれ接続されており、押付部2の押付力及び移動部4の移動速度を設定する設定処理部50、押付部2の押付動作及び移動部4の移動動作を制御する動作処理部51、検出部3からの検出信号を処理する検出処理部52、及び、打撃ヘッド10の移動位置及びそれに対応する検出データに基づいて構造物M内部の状態を判定する判定処理部53を備えている。

【0023】
処理部5としては、公知の信号波形処理装置及び情報処理装置を組み合せて構成することができ、検出処理部の機能を信号波形処理装置で実現するとともに、設定処理部、動作処理部及び判定処理部の機能を実現するためのプログラムを情報処理装置に記憶させて構成すればよい。

【0024】
処理部5は、まず複数の押付力で予備検査を行う。設定処理部50は、移動部4の移動速度が所定の速度となるように設定し、予備検査として押付部2の押付力を複数の異なる値に設定する。設定する押付力については、予め予備実験等により押付力の範囲を決めておき、その範囲内で適宜設定すればよい。動作処理部51は、設定されたそれぞれの押付力で打撃ヘッド10を押し付けて移動させる。検出処理部52は、それぞれの押付力での打撃ヘッド10の打撃音に関する検出信号を検出部3から取得し、判定処理部53は、取得した検出信号に基づいて各押付力での音圧比(例えば、検出範囲内での最大音圧と最小音圧との比、最大音圧と平均音圧との比等)を算出して、算出された音圧比に基づいて音圧比が大きい範囲内で押付力の大きい値を判定して検査用押付力を決定すればよい。

【0025】
こうした予備検査では、後述するように、打撃ヘッドに対する押付力の違いにより検出信号が異なることから、構造物内部の状態の影響を受けて検出信号が大きく変動すると考えられる押付力の範囲を具体的に特定することができる。そして、検出結果に明確な違いが生じる押付力を設定することで、精度よく構造物内部の状態を定量的に判定することが可能となる。

【0026】
次に、本検査を行う。本検査では、設定処理部50は、検査用押付力を押付力に設定し、押付部2は、設定された押付力により打撃ヘッド10の押付動作を行う。そして、動作処理部51は、所定の移動速度で移動させて打撃ヘッド10の転動動作を行う。検出処理部52は、打撃ヘッド10の打撃音に基づく検出信号を検出部3から取得し、判定処理部53は、取得した検出信号に基づいて時間波形、周波数特性、打撃毎のオーバーオール値等を解析して構造物内部の状態について判定処理を行う。判定結果は、表示部6に表示するように処理される。

【0027】
なお、処理部5で予備検査により得られた検出信号に基づいて検査に適切な押付力での検出信号を決めて解析処理するようにしてもよい。また、予備実験等の検出結果に基づいて検査用押付力を決めておき、予備検査を行うことなく検査用押付力に基づいて検査処理を行うようにすることもできる。

【0028】
時間波形による解析を行う場合には、検出信号の音圧レベルの時間的な推移を解析対象とすることができる。この場合、打撃ヘッドの移動速度が速くなると音圧レベルが高くなる傾向にあるため、適切な移動速度を設定することが好ましい。構造物内部に欠陥部が存在する場合には、音圧レベルが高くなる傾向があることから、時間波形を解析することで、欠陥部の位置を定量的に判定することができる。また、打撃ヘッドによる打撃毎の時間波形に基づいて音圧の最大値を抽出し、打撃位置に対する最大値の推移を解析することで、欠陥部の深さを定量的に判定することができる。

【0029】
検出信号の周波数特性による解析を行う場合には、打撃ヘッドによる各打撃動作での検出信号波形について周波数解析を行い、構造物内部が健全部の場合と欠陥部の場合とで特徴的なピーク周波数を分析することで打撃位置での欠陥部の有無を判定することができ、欠陥部の深さによるピーク周波数の変化に基づいて深さを定量的に解析することができ、欠陥部を定量的に判定することが可能となる。

【0030】
検出信号のオーバーオール値による解析を行う場合には、打撃ヘッドによる各打撃動作での検出信号の周波数分析を行い、打撃毎の分析周波数帯域全体の合成パワーであるオーバーオール値を算出する。そして、打撃位置に対するオーバーオール値の推移を解析することで、欠陥部の位置を明確に判定することができる。

【0031】
以上説明したように、打撃ヘッドの押付力を調整可能として検査に適切な押付力を設定することで、精度よく打音検査を行うことができる。
【実施例】
【0032】
図1に示す装置を用いて、試験用に作成した供試体で打音検査を行った。打撃ヘッドとして、回転式打音点検器(株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング製)に用いられている六角形状の打撃ヘッド部分を取り外して使用した。押付部には、引張バネを用い、バネの張力を調整して打撃ヘッドの押付力を調整可能とした。検出部には、マイクロフォン(ブリュエル・ケアー社製)を用い、供試体の検査対象表面からの高さを60mmに設定した。
【実施例】
【0033】
図3は、供試体に関する説明図である。供試体Mとして、長さ1150mm×幅200mm×高さ150mmの直方体の鉄筋コンクリート体を作成し、内部には、鉄筋Rが配設されるとともに、欠陥部として直方体状のスチレンボードを3箇所の位置(符号I、II、IIIで示す)に埋設した。スチレンボードは、供試体の長手方向に沿って配列し、両端部のスチレンボードは供試体の両端部から200mm離れた位置に設定し、スチレンボードの間の間隔は150mmに設定した。スチレンボードの深さは、10mm、15mm、20mm及び30mmのそれぞれの深さに設定して、4種類の供試体を準備した。
【実施例】
【0034】
移動部の移動速度を200mm/秒に設定して移動動作を行い、打撃ヘッドは1回転あたり6回の打撃(打撃間距離約16.7mm)を行うように設定した。そのため、打撃音の時間波形から打撃位置を特定することができる。検出部では、A/D変換器のサンプリング周波数12800Hz、サンプリング点数65536点とし、6400Hzのローパスフィルタを掛けて検出信号を生成した。また、押付部では、押付力を3N、10N、15N及び20Nの4種類に設定して打音検査を行った。
【実施例】
【0035】
<検出結果の時間波形について>
図4は、欠陥部の深さが30mmの供試体を用いた打音検査で得られた音圧の時間波形を示すグラフである。図4(a)は押付力が3Nの場合、図4(b)は押付力が10Nの場合、図4(c)は押付力が15Nの場合、図4(d)は押付力が20Nの場合をそれぞれ示している。各グラフは、縦軸に音圧をとり、横軸に時間をとっており、欠陥部I~IIIに対応する時間帯を点線で示している。
【実施例】
【0036】
押付力が3Nでは健全部と欠陥部との間で音圧に明確な違いが見られないが、押付力が10N及び15Nでは健全部に比べて欠陥部の音圧が高くなっている。特に、押付力が15Nでは明確な違いとなって表れており、欠陥部の有無を判定することができる。押付力が20Nでは健全部と欠陥部との間で音圧に明確な違いが見られなくなることから、音圧の最大値と最小値の音圧比が大きくなる押付力の範囲で押付力の大きい15Nを検査用押付力として選択すればよい。
【実施例】
【0037】
図5は、押付力を15Nに設定した打音検査で得られた音圧の時間波形を示すグラフである。図5(a)は欠陥部の深さが10mmの供試体の場合、図5(b)は欠陥部の深さが15mmの供試体の場合、図5(c)は欠陥部の深さが20mmの供試体の場合、図5(d)は欠陥部の深さが30mmの供試体の場合をそれぞれ示している。各グラフは、縦軸に音圧をとり、横軸に時間をとっており、欠陥部I~IIIに対応する時間帯を点線で示している。
【実施例】
【0038】
図5では、すべての供試体において健全部と比較して欠陥部の音圧が高くなっており、欠陥部の深さが深くなるにしたがい音圧が低くなってくることがわかる。これは、欠陥部の深さが深くなると欠陥部の上部のコンクリート部分の厚さが大きくなり、曲げ剛性が高くなって供試体表面の振動振幅が小さくなるためと考えられる。欠陥部に対応する時間帯では、音圧のピークが表れており、欠陥位置を判定することが可能となっている。また、欠陥部の幅に対応して音圧の高くなる幅が表れていることから、欠陥部の大きさについても判定可能であることがわかる。
【実施例】
【0039】
図6は、打撃ヘッドの打撃毎の時間波形から抽出した音圧の最大値を示すグラフである。縦軸に音圧をとり、横軸に打撃番号(打撃位置)をとっており、欠陥部I~IIIに対応する打撃範囲を点線で示している。図6では、欠陥部の有無が明確に表れており、欠陥部の深さが深くなるほど音圧の最大値が低くなっている。そのため、欠陥部の有無及びその深さが判定可能であることがわかる。また、欠陥部の深さが10mm及び15mmでは、欠陥部の幅に対応して音圧の最大値が変動しており、欠陥部の大きさについても判定可能であることがわかる。
【実施例】
【0040】
<検出結果の周波数特性について>
図7から図10は、各供試体の健全部及び欠陥部における代表的な1打撃分の時間波形について周波数分析を行った結果を示す周波数スペクトルである。図7は欠陥部の深さが10mmの供試体の場合、図8は欠陥部の深さが15mmの供試体の場合、図9は欠陥部の深さが20mmの供試体の場合、図10は欠陥部の深さが30mmの供試体の場合をそれぞれ示している。各図において、左側に健全部の周波数スペクトルを示し、右側に欠陥部の周波数スペクトルを示している。各グラフは、縦軸に音圧をとり(健全部と欠陥部とでスケールが異なっていることに留意)、横軸に周波数をとっている。
【実施例】
【0041】
健全部では、すべての供試体で1kHz付近にピークが表れているのに対し、欠陥部では、3kHz~6kHzにピークが表れており、欠陥部の深さが深くなるにしたがいピーク周波数が高周波側に移行するとともにピークの音圧値が低くなっている。そのため、健全部及び欠陥部に特徴的にピークが表れる周波数帯を比較することで欠陥部の有無を判定することが可能で、ピーク周波数の変化に基づいて欠陥部の深さを判定することができる。
【実施例】
【0042】
<検出結果のオーバーオール値について>
図11から図14は、打撃ヘッドの打撃毎の音圧の最大値及びオーバーオール値を示すグラフである。図11は欠陥部の深さが10mmの供試体の場合、図12は欠陥部の深さが15mmの供試体の場合、図13は欠陥部の深さが20mmの供試体の場合、図14は欠陥部の深さが30mmの供試体の場合をそれぞれ示している。各図において上側のグラフが音圧の最大値を示し、下側のグラフがオーバーオール値を示している。各グラフでは、縦軸に音圧の最大値又はオーバーオール値をとり(欠陥の深さによりスケールが異なっている場合があることに留意)、横軸に打撃番号(打撃位置)をとっており、欠陥部I~IIIに対応する打撃範囲を点線で示している。オーバーオール値は、打撃毎の時間波形を周波数分析して周波数帯域全体の合成パワーとして算出した値である。
【実施例】
【0043】
各図において、音圧の最大値及びオーバーオール値では健全部と欠陥部との違いが表れているが、オーバーオール値の方が健全部及び欠陥部における値のノイズが小さくなって両者の違いが明確に表れている。そのため、オーバーオール値の打撃位置での変化に基づいて欠陥部の有無及び欠陥部の大きさを精度よく判定することができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・打撃部、2・・・押付部、3・・・検出部、4・・・移動部、5・・・処理部、6・・・表示部、10・・・打撃ヘッド、11・・・支持ロッド、12・・・取付アーム、30・・・検出センサ、31・・・取付アーム、40・・・基体フレーム、41・・・レール体、42・・・キャリッジ、43・・・駆動部、M・・・構造物、S・・・検査対象表面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13