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明細書 :微生物検出装置及び検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6804063号 (P6804063)
公開番号 特開2019-140955 (P2019-140955A)
登録日 令和2年12月4日(2020.12.4)
発行日 令和2年12月23日(2020.12.23)
公開日 令和元年8月29日(2019.8.29)
発明の名称または考案の名称 微生物検出装置及び検出方法
国際特許分類 C12M   1/34        (2006.01)
C12Q   1/06        (2006.01)
FI C12M 1/34 B
C12Q 1/06
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2018-027313 (P2018-027313)
出願日 平成30年2月19日(2018.2.19)
審査請求日 令和2年6月10日(2020.6.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592029256
【氏名又は名称】福井県
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】中津 美智代
【氏名】坂元 博昭
【氏名】末 信一朗
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110003203、【氏名又は名称】特許業務法人大手門国際特許事務所
【識別番号】100111855、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 好昭
審査官 【審査官】松原 寛子
参考文献・文献 特開昭56-158096(JP,A)
特許第4691968(JP,B2)
特開2016-010403(JP,A)
Electrochemistry,2012年,Vol.80,p.161-167
調査した分野 C12M 1/34
C12Q 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
アノード電極体及びカソード電極体を絶縁体を介して一体形成された電極センサと、微生物を培養可能な培地と、前記電極センサの少なくとも両電極体を前記培地に接触させた状態で両電極体の間に流れるガルバニック電流を測定して前記培地中の微生物の代謝物による電流変化を検出する検出手段とを備えている微生物検出装置。
【請求項2】
前記電極センサは、前記アノード電極体及び前記カソード電極体の少なくとも一方が櫛形形状に形成された樹脂成分を含む導電体からなり、片方又は両方の露出表面を被覆するように金属薄膜が形成されている請求項1に記載の微生物検出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、電流のピーク値及びピーク値に到達するまでの時間を測定して電流変化を検出する請求項1に記載の微生物検出装置。
【請求項4】
アノード電極体及びカソード電極体を絶縁体を介して一体形成された電極センサを用いて、微生物を培養可能な培地に少なくとも両電極体を接触させ、両電極体の間のガルバニック電流を測定することで前記培地中の微生物の代謝物による電流変化を検出する微生物検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電極センサを用いて微生物を簡易に検出できる微生物検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工、医療、介護等の分野では、細菌等の微生物による食中毒や感染症の発生を防止することが求められており、実際の作業環境での微生物の監視を常時行う必要がある。そのため、微生物を検出する技術の開発が進められている。例えば、特許文献1では、菌体を固定化した多孔質膜を電極基体に添着し、電解質溶液中で電極に流れる電流を測定して菌体数を測定する方法が記載されている。また、特許文献2では、液体培地での微生物濃度を微生物の代謝に基づいて変化する特定物質の溶存量を電極により測定することで求める微生物検出方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献3及び非特許文献1では、アノード電極とカソード電極との間に流れる電流を測定して微生物を検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開昭56-158096号公報
【特許文献2】特許第4691968号公報
【特許文献3】特開2016-10403号公報
【0005】

【非特許文献1】中津 美智代 他3名、「櫛形電極センサの開発研究(第3報)」、平成28年度研究報告書、福井県工業技術センター、平成29年9月29日、No.33、23頁~24頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載されているように、微生物の濃縮処理や培養処理を行って微生物の検出を行う場合、処理に時間がかかり、複雑な処理作業が必要になる。特許文献3及び非特許文献1に記載されているように、電極センサを用いて微生物を検出する方法は、電流を測定することで簡易に検出することができる。しかしながら、非特許文献1に記載されているように、電流の変化から微生物を直接検出することは確認できておらず、実用化の点で課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、電極センサを用いて微生物を簡易に検出することができる微生物検出装置及び検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る微生物検出装置は、アノード電極体及びカソード電極体を絶縁体を介して一体形成された電極センサと、微生物を培養可能な培地と、前記電極センサの少なくとも両電極体を前記培地に接触させた状態で両電極体の間に流れるガルバニック電流を測定して前記培地中の微生物の代謝物による電流変化を検出する検出手段とを備えている。さらに、前記電極センサは、前記アノード電極体及び前記カソード電極体の少なくとも一方が櫛形形状に形成された樹脂成分を含む導電体からなり、片方又は両方の露出表面を被覆するように金属薄膜が形成されている。さらに、前記検出手段は、電流のピーク値及びピーク値に到達するまでの時間を測定して電流変化を検出する。
【0009】
本発明に係る微生物検出方法は、アノード電極体及びカソード電極体を絶縁体を介して一体形成された電極センサを用いて、微生物を培養可能な培地に少なくとも両電極体を接触させ、両電極体の間のガルバニック電流を測定することで前記培地中の微生物の代謝物による電流変化を検出する微生物検出方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培地中の微生物から生じる代謝物による電流変化を検出することで、微生物を簡易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る微生物検出装置に関する構成例を示す説明図である。
【図2】電極センサに関する平面図である。
【図3】電極センサに関するA-A断面図を一部拡大して示している。
【図4】電極センサの別の例に関する断面図である。
【図5】測定結果の時間的推移を示すグラフである。
【図6】微生物の濃度と電気量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一例について具体的に説明する。図1は、本発明に係る微生物検出装置に関する構成例を示す説明図である。微生物検出装置は、アノード電極体及びカソード電極体を絶縁体を介して一体形成された電極センサ1と、微生物を培養可能な培地2と、電極センサ1の少なくとも両電極体を培地2に接触させた状態で両電極体の間に流れるガルバニック電流を測定して培地2中の微生物の代謝物による電流変化を検出する検出手段3とを備えている。この例では、収容容器4の中に電極センサ1がセットされており、電極センサ1の上面に培地2を滴下して両電極体に付着させた状態に設定することで培地2中の微生物を検出するようになっている。

【0013】
図2は、電極センサ1に関する平面図である。電極センサ1は、矩形状のアノード電極体10の上面に絶縁体11が層状に積層されており、絶縁体11の上面に層状にカソード電極体12が積層されている。絶縁体11及びカソード電極体12の中央部分には、細幅の切欠きが櫛状に並行に形成されてアノード電極体10の表面が露出している。そして、切欠きに露出したアノード電極体10とカソード電極体12との間に流れるガルバニック電流を測定することで、微生物の代謝物による電流変化を検出することができる。

【0014】
なお、この例では、アノード電極体及びカソード電極体を絶縁体を介して積層配置しているが、基板上に電極体を並列配置することもできる。また、単純な電極構造で電極センサを構成することができるので、培地中に投入可能なサイズにコンパクト化することも可能である。

【0015】
アノード電極体10は、電極表面において酸化反応が生じて電子発生となる部位であり、カソード電極体12は、電極表面において還元反応が生じて電子消失となる部位である。両電極体の間にガルバニック電流が流れるようにするためには、カソード電極体12の表面は、電気化学反応が発生する環境条件において、アノード電極体10の表面よりも貴な電位となる組み合わせであることが必要となる。絶縁体11は、アノード電極体10とカソード電極体12との間を絶縁するものである。絶縁体11には、非導電性の絶縁性材料が用いられ、例えば、樹脂材料、セラミックス材料といったものが挙げられるが、こうした材料に限定されるものではない。

【0016】
両電極体は、金属材料等の導電材料を含み導電性を備えている。そして、少なくとも一方の電極体は、導電性ペーストを用いた印刷法により形成されていることが好ましい。図2に示すように、基板となるアノード電極体10として金属材料からなる板状体を用いた場合に、カソード電極体12は、導電性ペーストを用いた印刷法により形成する。こうした印刷法により電極体を形成することで、電極体の層厚を0.005mm~0.1mmに厚く形成することができ、電気抵抗値が低下するようになり、検出電流を精度よく安定して得ることが可能となる。また、図2に示す例以外にも、両方の電極体を絶縁性を有する基板上に導電性ペーストにより形成して構成することもできる。導電性ペーストを用いた印刷法としては、凸版式印刷法、平版式印刷法、凹版印刷法、孔版印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法、レーザ印刷法が挙げられる。図2に示すような電極センサでは、孔版印刷法であるスクリーン印刷により作製することができるが、他の印刷法でもよく特に限定されない。

【0017】
片方又は両方の電極体の表面には、金属薄膜の形成による表面処理を行うことが好ましい。導電性ペーストにより形成された電極体でも検出機能を備えているが、金属薄膜を形成することで、検出電流の高出力化、高精度化及び安定化を図ることができる。図3は、電極センサ1に関するA-A断面図を一部拡大して示している。図3では、カソード電極体12の表面に金属薄膜13が形成されている。金属薄膜13は、電極体の表面が露出することがないように表面を被覆する状態で形成することが好ましい。なお、図4に示すように、アノード電極体10’の表面に金属薄膜13’が形成されていてもよい。この例では、アノード電極体11’となる基板表面に金属薄膜13’を形成しており、金属薄膜13’の表面に絶縁体11’及びカソード電極体12’を積層することで、電極センサを構成している。

【0018】
金属薄膜は、金、白金、銀、銅、スズ、ニッケル、クロム、亜鉛、炭素、鉄の単一組成、又は、少なくともそれら1種類を含む組成であることが好ましい。また、金属薄膜を形成する場合、形成する電極体の導電材料と同一組成であることが好ましいが、異なる金属材料を用いることも可能で、カソード電極体及びアノード電極体の表面を電気化学反応が生じるのに適した金属の組み合せとすることもできる。

【0019】
金属薄膜の膜厚は、表面処理による作用効果を奏するために、0.05μm~10μmに設定することが好ましく、より好ましくは0.1μm~5μmである。金属薄膜の膜厚をこの範囲とすることで、検知電流の出力を高めるとともに耐久性が向上してセンサの長寿命化を図ることができる。金属薄膜を表面に形成した電極体の表面抵抗値は、低く設定されていることが好ましく、具体的には0.1Ω以下に設定することが好ましい。表面抵抗値は、電極体の中心線の両端に測定端子を接続して測定することができる。

【0020】
金属薄膜は、湿式成膜処理又は乾式成膜処理により形成することができる。湿式成膜処理としては、電気めっき、無電解めっき及び複合めっきが挙げられる。電気めっきは、めっきとして付与する金属成分を含むめっき浴中に電極センサを入れ、被電極体に外部電源より通電し、電気化学的に金属を析出させて金属薄膜を形成する表面処理方法である。無電解めっきは、めっきとして付与する金属成分を含むめっき浴中に電極体を浸漬し、電極体の表面で反応させ、目的とする金属成分を化学的に還元析出させて金属薄膜を形成する表面処理方法である。複合めっきは、めっきとして付与する金属成分を含むめっき浴中に、樹脂などの微粒子を懸濁させ、微粒子を含む金属薄膜を成膜する表面処理方法である。

【0021】
また、乾式成膜処理としては、蒸着及びスパッタリングが挙げられ、真空中で目的物の表面に金属薄膜を形成する表面処理方法である。蒸着は、金属や酸化物などを蒸発させ、目的物の表面に付着させて金属薄膜を形成する表面処理方法で、物理的反応を利用した物理蒸着又は化学的反応を利用した化学蒸着がある。付与する金属薄膜の組成、密着性を考慮して、物理蒸着または化学蒸着を適宜選択すればよい。スパッタリングは、物理蒸着の一種であり、真空中にアルゴンなどの不活性ガスを導入し、ターゲットと目的物との間に高電圧を印加し、アルゴンイオンがターゲットに衝突して金属原子が放出されて目的物の表面に蒸着が行われ、金属薄膜を形成する表面処理方法である。

【0022】
図3に示すように、金属薄膜を電極体の露出表面に形成する場合には、めっき処理の前に金属薄膜を形成しない部位の表面に樹脂膜等のめっき防止膜を形成するマスキングを行い、めっき処理した後にめっき防止膜を除去すれば、電極体の露出表面だけに金属薄膜を形成する表面処理を行うことができる。

【0023】
上述したように、電極体を導電性ペーストを用いた印刷法により形成した場合、導電性ペーストは、一般的に、樹脂中に2~10μmのサイズのフレーク状金属粉末(以下、金属フレークと記す)が約70重量%分散したもので、こうした導電性ペーストが硬化した状態では、電極体の表面における電気化学反応部位となる面積比率は、樹脂部分が絶縁性となるため、金属フレーク部分のみの面積に対応する70%程度と考えられる。そのため、電極体の表面に金属薄膜を形成することにより、電気化学反応に寄与する部位の表面積を増加させ、また、金属薄膜により電極体の金属純度が向上するようになるため、電気化学反応の効率が向上する。そのため、高出力の検出電流が安定して得られるようになり、微量成分を高精度で検知することが可能となる。また、導電性ペーストの硬化した凹凸表面に金属薄膜を形成することで、金属薄膜のアンカー効果が生じるようになり、耐久性の向上を図ることができる。

【0024】
電極体が導電性ペーストで形成されていない場合でも、印刷方法を実施する際に、導電性ペーストを硬化させる熱処理工程、マスキング除去工程、基板研磨工程等において、溶剤、洗浄剤、水溶液に電極体の露出表面が接触するようになり、電気抵抗の高い酸化皮膜が表面に生成される。こうした酸化皮膜は、電極表面で行われる電気化学反応を抑制するように作用するため、検出電流の出力低下及び不安定化を招くようになる。そのため、印刷方法により電極体を形成した後に金属薄膜を形成する表面処理を行うことで、電極体の露出表面に形成された酸化皮膜が金属薄膜で完全に被覆されるようになる。電極体表面に高純度の金属薄膜を表面処理により形成することで、酸化皮膜の影響を受けることなく電極体の電気化学反応効率を向上させ、高出力の検出電流を安定して得られるようになり、電流変化を高精度で検出することが可能となる。

【0025】
図2に示す電極センサ1は、アノード電極体10及びカソード電極体12に接触する培地2中の微生物から生じる代謝物による電気化学反応に伴うガルバニック電流を計測するようになる。例えば、代表的な代謝物であるNH3の場合、以下のような反応が生じて両電極体に流れる電流に変化が生じるようになると考えられる。
培地;NH3+H2O→NH4++OH-
カソード電極体;O2+2H2O+4e-→4OH-
アノード電極体;M→Mn++ne-(M;金属)

【0026】
以上の反応では、NH3の濃度の変化により電流の変化が生じるようになり、電流の変化を検出することで微生物の発生の有無を簡単に検出することが可能となる。

【0027】
培地2は、幅広い微生物を培養可能なものであれば特に限定されることはなく、液体培地、固体培地、ゲル状培地、膜状培地といった公知の培地を用いることができる。そして、微生物の発生の有無を検出する必要がある環境から検体を取り出して培地2に添加することで、微生物の検出を行う。検体は、そのまま用いることが可能で、必要に応じて微生物を濃縮して用いることもできる。また、微生物の存在しない培地に両電極体が接触した状態では、両電極体の間に流れる電流ができるだけ安定して低くなるように培地と電極体に用いる金属材料との組合せを選択することが好ましい。

【0028】
検出の対象とされる微生物は、検出が所望される任意の種類の微生物であってよく、細菌、放線菌、真菌類等が挙げられる。例えば、食中毒または感染症の原因菌であり得る。具体的には、例えば、ブドウ球菌属菌(例:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の黄色ブドウ球菌等)、カンピロバクター属菌(例:カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フェタス、カンピロバクター・スプトルム等)、サルモネラ属菌(例:サルモネラ・チフィ、サルモネラ・パラチフィA、サルモネラ・エンテリチジス、サルモネラ・チフィムリウム、サルモネラ・コレラスイス、サルモネラ・ダブリン等)、エシェリヒア属菌(例:腸管出血性大腸菌(O111、O157等)等)、ビブリオ属菌(例:コレラ菌、腸炎ビブリオ等)、レジオネラ属菌(例:レジオネラ・ニューモフィラ等)、シゲラ属菌(例:シゲラ・ソンネイ、シゲラ・ディゼンテリエ、シゲラ・フレキシネリー、シゲラ・ボイデイ等)、クロストリジウム属菌(例:ボツリヌス菌等)、リステリア属菌(例:リステリア・モノサイトゲネス等)、マイコバクテリウム属菌(例:マイコバクテリウム・ツベルクロシス等)、クリプトスポリジウム属菌(例:クリプトスポリジウム・パルバム等)、コクシエラ属菌(例:コクシエラ・バーネッティイ等)、フランシセラ属菌(例:フランシセラ・ツラレンシス等)、バチルス属菌(例:セレウス菌(例:バチルス・セレウス)、バシラス・アントラシス等)、エルシニア属菌(例:エルシニア属ペスティス等)等が挙げられる。特に、食品の衛生検査の目的のために好ましい標的微生物として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、カンピロバクター属菌(例:カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フェタス、カンピロバクター・スプトルム等)、サルモネラ属菌(例:サルモネラ・チフィ、サルモネラ・パラチフィA、サルモネラ・エンテリチジス、サルモネラ・チフィムリウム、サルモネラ・コレラスイス、サルモネラ・ダブリン等)、腸管出血性大腸菌(O111、O157等)、ビブリオ属菌(例:コレラ菌、腸炎ビブリオ等)、レジオネラ属菌(例:レジオネラニューモフィラ等)、セレウス菌(例:バチルス・セレウス)等が挙げられる。

【0029】
検出手段3は、アノード電極体10及びカソード電極体12に接続された電流測定装置を用いることができる。電流測定装置には、電流の変化を測定可能な機能を備えており、測定データの保存、測定データの処理及び処理された測定データを表示する機能を備えていることが好ましい。

【0030】
例えば、電流値の推移を保存し、電流値のピーク値、ピーク値に到達するまでの時間、ピーク値に到達するまでの上昇勾配(微分値)、電流ピーク面積(電気量)といった電流の変化量を算出する。そして、電流の変化量と微生物の濃度との相関関係を定量的に分析することで、培地中の微生物の濃度を定量的に推定することができる。

【0031】
両電極体の間に流れる電流の測定では、培地に微生物を添加した後測定を開始し、常温で放置した状態で連続で測定を行う。測定時間は、微生物の種類等に応じて電流変化を生じる時間に設定すればよい。また、培養する際の温度を上昇させることで、測定時間の短縮化を図ることができる。

【0032】
また、上述した微生物検出装置では、生存している微生物から代謝物が生じるため、死滅した微生物に対しては電流変化が検出されることはなく、微生物の生死に関して判断する場合にも検出結果を活用することができる。

【0033】
収容容器4は、微生物が外部から混入しない密閉性を備えており、酸素を通過させるとともに微生物を通過させないフィルタ等の部材を取り付けることで、微生物の検出を正確に行うことができる。
【実施例】
【0034】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
<電極センサの製造>
まず、アノード電極体として鉄からなる市販の基板(厚さ0.8mm)を用い、基板の一方の露出表面に銀の金属薄膜を形成する。金属薄膜は、湿式成膜処理により形成する。湿式成膜処理では、前処理として、基板をアルカリ水溶液に1分間浸漬し、次いで、脱イオン水で洗浄、アセトンで脱脂した後室内乾燥を施した。次に、基板をシアン化銀及びシアン化カリウムを含む市販のめっき液に浸漬し、20℃にて、基板に120C通電した。後処理として、めっき処理した基板をイオン交換水で数回洗浄後室内乾燥した。基板の表面に形成された銀の金属薄膜の厚さは、マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製)で測定したところ、5μmであった。
【実施例】
【0036】
次に、基板に形成された金属薄膜の表面に絶縁体となる樹脂層を形成する。樹脂層は、エポキシ樹脂材料からなる樹脂ペースト(ヘンケルエイブルスティックジャパン社製)を櫛状に印刷した後、窒素雰囲気中で150℃で1時間加熱硬化させて形成した。樹脂層の厚さは20μmであった。
【実施例】
【0037】
次に、樹脂層に積層するようにカソード電極体となる導電層を形成する。導電層は、炭素材料を含む導電材料により形成する。導電材料として導電ペースト(株式会社タムラ製作所製)を樹脂層に重なるように櫛状に印刷した後、窒素雰囲気中で130℃1時間加熱硬化させて形成した。導電層の厚さは20μmであった。
【実施例】
【0038】
得られた電極センサは、図4に示す構造を備えており、銀の金属薄膜が形成されたアノード電極体の表面に樹脂層からなる絶縁体を介して導電層からなるカソード電極体が半径35mmの円形の内側に幅及び隙間1mmで櫛状に形成した構造を備えている。
【実施例】
【0039】
<培地について>
培地として以下の組成を有するものを用いた。
トリプトン 10.0g(BD Biocmedicals)
Yeast Extract 5.0g(BD Biosciences)
Nacl 5.0g(WAKO)
培地は、蒸留水1000ミリリットルを加えて撹拌し、オートクレープを用いて121℃で15分間の高圧蒸気による滅菌処理を行った。
【実施例】
【0040】
<微生物について>
培地に添加する微生物として市販の大腸菌(E.coli DH5α)を用いて調製し、微生物の濃度(OD600;600nmの光による吸光度)を以下のように変化させて4種類のサンプルを準備した。
OD600=1.0
OD600=0.1
OD600=0.01
OD600=0.001
OD600=0(LB medium)
【実施例】
【0041】
<比較例について>
微生物として、上記のOD600=1の濃度のサンプルを市販の超音波装置により細胞壁を破砕させた破砕サンプルを準備した。
【実施例】
【0042】
<測定について>
図1に示すように、収容容器内に電極センサをカソード電極体を上側にして載置し、電流データを記憶できる市販の電流測定装置を電極センサに接続した。次に、電極センサの上面に各サンプルを10ミリリットル分滴下した後、37℃の温度条件下でアノード電極体とカソード電極体との間に流れる電流を2分間隔でサンプリングし500分間連続測定した。各サンプルの測定結果を図5に示す。
【実施例】
【0043】
図5では、縦軸に電流値(μA)をとり、横軸に時間(分)をとっている。微生物の濃度の変化により電流のピーク値及びピーク値に到達するまでの時間が変化しており、濃度が高くなるにしたがいピーク値が高くなるとともに急勾配で上昇している。そして、微生物の濃度と電極センサの電流変化との間に相関関係がみられることから、電流の変化量に基づいて微生物の濃度を定量的に検出できることを示している。
【実施例】
【0044】
また、微生物を添加していない場合には、電流がほとんど検出されおらず、非特許文献1で報告されているように、培地のない微生物のみの場合には検出電流に変化が生じないことから、電流変化は微生物の代謝物に基づくものと考えられる。また、破砕サンプルについても微生物を添加していない場合と同様に電流変化はみられなかった。そのため、生存している微生物の代謝物に基づいて電流変化が発生していることがわかる。
【実施例】
【0045】
図6は、微生物の濃度と電気量との関係を示すグラフである。電気量(mC)は、測定時間における電流値の積分値である。図6では、電気量と微生物の濃度との間に、正の相関関係があることを明確に示しており、電流の変化量である電気量に基づいて微生物の濃度の定量的な分析を行えることを示している。
【符号の説明】
【0046】
1・・・電極センサ、2・・・培地、3・・・検出手段、4・・・密閉容器、10・・・アノード電極体、11・・・絶縁体、12・・・カソード電極体、13・・・金属薄膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5