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明細書 :タンパク質のリフォールディング剤、タンパク質のリフォールディング方法及びタンパク質の再生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-210258 (P2019-210258A)
公開日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明の名称または考案の名称 タンパク質のリフォールディング剤、タンパク質のリフォールディング方法及びタンパク質の再生方法
国際特許分類 C07K   1/02        (2006.01)
FI C07K 1/02
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2018-109769 (P2018-109769)
出願日 平成30年6月7日(2018.6.7)
発明者または考案者 【氏名】村岡 貴博
【氏名】岡田 隼輔
【氏名】奥村 正樹
【氏名】稲葉 謙次
【氏名】松▲崎▼ 元紀
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA10
4H045AA30
4H045BA50
4H045EA61
4H045FA30
要約 【課題】高い効率でタンパク質をリフォールディングすることが可能なタンパク質のリフォールディング剤を提供する。
【解決手段】下記式(I):
【化1】
JP2019210258A_000007t.gif
[式中、Xは、置換若しくは非置換の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上10以下の二価炭化水素基、又は置換若しくは非置換の繰り返し数1以上10以下のポリオキシアルキレン基である]で表される化合物、及びその塩及び溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含む、タンパク質のリフォールディング剤。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I):
【化1】
JP2019210258A_000006t.gif
[式中、
Xは、置換若しくは非置換の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上10以下の二価炭化水素基、又は置換若しくは非置換の繰り返し数1以上10以下のポリオキシアルキレン基である]
で表される化合物、及びその塩及び溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含む、タンパク質のリフォールディング剤。
【請求項2】
Xが、置換若しくは非置換の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上5以下の二価炭化水素基である、請求項1に記載のリフォールディング剤。
【請求項3】
Xが、非置換であるか、又はヒドロキシル、カルボキシル及びアミノから選択される1種以上により置換されている、請求項1に記載のリフォールディング剤。
【請求項4】
Xが、非置換であるか、又はヒドロキシル、カルボキシル及びアミノから選択される1種以上により置換されている、請求項2に記載のリフォールディング剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のリフォールディング剤の存在下で、アンフォールディングされたタンパク質を処理する工程を含む、タンパク質のリフォールディング方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のリフォールディング剤の存在下で、アンフォールディングされたタンパク質を処理してリフォールディングする工程を含む、タンパク質の再生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質のリフォールディング剤、タンパク質のリフォールディング方法及びタンパク質の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性タンパク質、とりわけ抗体医薬等への関心が増すにつれ、遺伝子工学的手法による特定タンパク質の大量発現方法と、目的タンパク質の高収率回収方法の重要性が高まっている。中でも、大量発現時に生じるタンパク質の封入体から、目的タンパク質を活性をもつ状態で回収するリフォールディング過程において、回収収率が大きく減少する場合があり、その収率向上を可能にする技術は、産業面において重要である(非特許文献1)。
【0003】
特にジスルフィド結合を有するタンパク質は全タンパク質の約1/3に相当し、免疫システムの根幹を担う免疫グロブリンやインスリン等の生体の恒常性維持に重要かつ膨大な因子をカバーしているが、未だ効率的なジスルフィド結合形成の触媒法は確立されていない現状である。特に問題となるのは、タンパク質製剤等を狙ったリコンビナントタンパク質の多くが、非天然型の分子間及び分子内ジスルフィド結合を形成し、不活性体を形成することである。複数のジスルフィド結合を有するタンパク質の場合、天然型のジスルフィド結合の架橋様式、すなわち酸化的リフォールディング過程の効率が、収率に大きく左右する。
【0004】
その典型的な制御法として、ジスルフィド結合のシャッフリングがある。リフォールディング過程に還元剤と酸化剤を共存させ、ジスルフィド結合の形成と切断を繰り返し起こすことで、最安定な天然構造へと導く方法である。その際用いられる典型的な還元剤と酸化剤は、それぞれ、グルタチオン(GSH)、β-メルカプトエタノール(β-ME)、及びジチオスレイトール(DTT)と、グルタチオン酸化体(GSSG)である。例えばRNase Aの場合、GSH/GSSG存在下、及び非存在下(空気下)での回収収率が比較されており、GSH/GSSG存在下の方が、リフォールディング初期過程における同一時間での酵素活性は約2倍高く、活性回復の速さ(1/2活性回復時間)は約2.8倍速い(非特許文献2)。また、酸化的リフォールディングにおいて用いられる小分子還元剤(及びこれと組み合わせる酸化剤)として、GSH/GSSG(非特許文献2)、GSH+(±)-トランス-1,2-ビス(2-メルカプトアセトアミド)シクロヘキサン(BMC)/GSSG(非特許文献3)、芳香族チオール及びその二硫化物(Aromatic thiols and their disulfides)(非特許文献4)、環状セレノキシド(Cyclic selenoxide)(非特許文献5)、Cys-XX-Cys構造(Xは任意のアミノ酸であり、Cysはシステインである)を有するペプチド(非特許文献6)、セレノグルタチオン(Seleno glutathione)(非特許文献7)が知られる。しかしながら、環状セレノキシド及びセレノグルタチオンについては、重金属セレンを用いることによる毒性の問題があった。またBMCについては、GSHに対する補助剤として用いられるためGSH/GSSG系に比べ多種多量の添加剤を加える必要がある点で問題があった。芳香族チオールについては、ベンゼン環を持つ物質であることから、タンパク質への疎水性相互作用による非特異的吸着が起こり得る点で問題であった。Cys-XX-Cys構造を有するペプチドについては、プロテアーゼのコンタミネーションによる分解等の構造不安定性、またその合成にかかる高いコストが問題であった。
【0005】
したがって、従来技術の問題点を回避しつつ、高い効率でタンパク質をリフォールディングすることが可能なリフォールディング剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】S.Yamaguchi et al.,Biotechno.J.,2013,8,17-31
【非特許文献2】A.K.Ahmed et al.,J.Biol.Chem.,1975,250,8477-8482
【非特許文献3】K.J.Woycechowsky et al.,Chem.Biol.,1999,6,871-879
【非特許文献4】D.J.Madar et al.,J.Biotech.,2009,142,214-219
【非特許文献5】K.Arai,K et al.,Chem.Eur.J.,2011,17,481-485
【非特許文献6】W.J.Lees et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2008,12,740-745
【非特許文献7】J.Beld et al.,Biochemistry.2007 May 8;46(18):5382-90
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、本発明は、高いリフォールディング効率を与えるタンパク質のリフォールディング剤、タンパク質のリフォールディング方法及びタンパク質の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するための手段を種々検討した結果、特定の構造を有する式(I)で表される化合物、及びその塩及び溶媒和物を用いることにより、高いリフォールディング効率を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]下記式(I):
【化1】
JP2019210258A_000003t.gif
[式中、
Xは、置換若しくは非置換の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上10以下の二価炭化水素基、又は置換若しくは非置換の繰り返し数1以上10以下のポリオキシアルキレン基である]
で表される化合物、及びその塩及び溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含む、タンパク質のリフォールディング剤。
[2]Xが、置換若しくは非置換の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上5以下の二価炭化水素基である、上記[1]に記載のリフォールディング剤。
[3]Xが、非置換であるか、又はヒドロキシル、カルボキシル及びアミノから選択される1種以上により置換されている、上記[1]に記載のリフォールディング剤。
[4]Xが、非置換であるか、又はヒドロキシル、カルボキシル及びアミノから選択される1種以上により置換されている、上記[2]に記載のリフォールディング剤。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載のリフォールディング剤の存在下で、アンフォールディングされたタンパク質を処理する工程を含む、タンパク質のリフォールディング方法。
[6]上記[1]~[4]のいずれかに記載のリフォールディング剤の存在下で、アンフォールディングされたタンパク質を処理してリフォールディングする工程を含む、タンパク質の再生方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるリフォールディング剤によれば、高い効率でタンパク質をリフォールディングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、ウシ膵臓トリプシン阻害剤(BPTI)の構造及びそのフォールディング経路における各ジスルフィド結合種のジスルフィド結合架橋位置を示す図である。
【図1B】図1Bは、逆相HPLCを用いてBPTIのジスルフィド結合架橋位置を決定する際のHPLC保持時間と各ジスルフィド結合種との関係を示す図である。
【図2A】図2Aは、実施例1(1mM GdnSH/0.2mM GSSG)を用いてBPTIのリフォールディング反応を行った場合の逆相HPLC分析結果を示す図である。
【図2B】図2Bは、比較例1(1mM GSH/0.2mM GSSG)を用いてBPTIのリフォールディング反応を行った場合の逆相HPLC分析結果を示す図である。
【図2C】図2Cは、比較例2(1mM β-メルカプトエタノール(β-ME)/1mM アルギニン(Arg)/0.2mM GSSG)を用いてBPTIのリフォールディング反応を行った場合の逆相HPLC分析結果を示す図である。
【図2D】図2Dは、比較例3(1mM β-メルカプトエタノール(β-ME)/1mM グアニジン(Gdn)/0.2mM GSSG)を用いてBPTIのリフォールディング反応を行った場合の逆相HPLC分析結果を示す図である。
【図3】図3は、実施例1及び比較例1-3を用いたBPTIのリフォールディング反応時間60分の天然型(N)のBPTI収量を示すグラフである。
【図4A】図4Aは、実施例2(1mM GdnSH/0.2mM GSSG)による還元RNase Aへのジスルフィド結合の導入評価を示す図である。
【図4B】図4Bは、比較例4(1mM GSH/0.2mM GSSG)による還元RNase Aへのジスルフィド結合の導入評価を示す図である。
【図5】図5は、実施例3(1mM GdnSH/0.2mM GSSG)及び比較例5(1mM GSH/0.2mM GSG)による還元変性RNase Aの活性回復評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、タンパク質のリフォールディング剤に関し、下記式(I):
【化2】
JP2019210258A_000004t.gif
[式中、
Xは、置換若しくは非置換の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上10以下の二価炭化水素基、又は置換若しくは非置換の繰り返し数1以上10以下のポリオキシアルキレン基である]で表される化合物、及びその塩及び溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含むことを特徴とする(以下、本発明のリフォールディング剤ともいう)。本発明のリフォールディング剤によれば、高い効率でタンパク質をリフォールディングすることができる。以下、式(I)で表される化合物、及びその塩及び溶媒和物を単に式(I)で表される化合物ともいう。式(I)で表される化合物は、チオール基とグアニジン残基とを置換基Xを介して組み合せた構造を有する。チオール基を有する化合物(例えばβ-メルカプトエタノール)とグアニジンは、それぞれタンパク質内ジスルフィド結合の還元及び水素結合の切断に用いられる物質である。しかしながら、両構造を結合させた構造を有する化合物を用いることにより、それぞれを別々に用いた場合と比較して相乗的にリフォールディング効率を向上させることができることは知られていなかった。理論に拘束されるものではないが、式(I)で表される化合物は、塩基性でありかつ電子吸引性基であるグアニジン残基によりチオール基のpKaが最適化されているため、ジスルフィド結合のシャッフリングが効率的に起こり、特に酸化的リフォールディング過程に用いられる還元剤として良好に機能するものと考えられる。酸化的リフォールディング過程の高効率化は収率の向上にもつながるため、本発明のリフォールディング剤の使用は、機能性タンパク質等の開発にかかる時間短縮と収量向上によるコスト低下につながることも期待できる。また、式(I)で表される化合物は合成が比較的容易であるため低いコストで得られ、また特に酸性条件下及び/又は酸素非存在下で安定に保管することができる。また、式(I)で表される化合物は小分子であり、分子間力が小さいため一連のタンパク質のリフォールディング操作において取扱いが容易であり、特にリフォールディング反応後のタンパク質の単離・精製において、透析法やサイズ排除クロマトグラフィー法により、簡便に除去しやすいという利点を有する。

【0013】
例えば、式(I)で表される化合物である1-(2-メルカプトエチル)グアニジン(GdnSH)は、β-メルカプトエタノールとグアニジンとが結合した構造を有する。今回、GdnSHが、酸化的リフォールディング過程に用いられる還元剤として、一般的に用いられるGSHよりも高速に、かつ高効率にタンパク質の酸化的リフォールディングを進行させることができることが見出された。具体的には、同一条件下でRNase Aのリフォールディングを、GdnSH/GSSG又はGSH/GSSGの両条件とで比較したところ、GdnSH/GSSGの方がリフォールディング初期過程における同一時間での酵素活性は約2倍高いことが示された。また、同一条件下でBPTIのリフォールディングを行ったところ、β-メルカプトエタノールとグアニジンとを単に混ぜた場合と比べ、同一時間で得られる天然型の収量はGdnSHを用いた場合のほうが約2倍高く、β-メルカプトエタノールとグアニジンとを共有結合させた構造がリフォールディングを促進する上で相乗効果をもたらすことが示唆された。

【0014】
本明細書において、「有効成分」とは、タンパク質をリフォールディングする過程で、その過程のある状態のタンパク質に作用する物質及び当該物質に作用する物質であって、タンパク質のリフォールディングを促進させる機能を有するものをいい、上に説明したような酸化的リフォールディング過程における還元剤には限定されない。本明細書において、「タンパク質のリフォールディング」には、(1)タンパク質をアンフォールディングする工程、(2)アンフォールディングされたタンパク質をリフォールディングする工程、及び(3)リフォールディングされたタンパク質を単離する工程を含むものとする。また、本明細書において、「リフォールディング反応」という場合、上記工程(2)を意味するものとする。

【0015】
式(I)で表される化合物は、ジスルフィド結合を形成させるリフォールディングにおける有効成分として、適宜濃度等の使用条件を調整することにより、タンパク質のアンフォールディング剤(すなわち変性剤)、凝集抑制剤、還元剤、構造修飾剤、機能補助剤、及び機能阻害剤、好ましくは還元剤として機能し得る。式(I)で表される化合物は、適宜濃度等の使用条件を調整することにより、ジスルフィド結合を形成させる必要のないリフォールディングにおける有効成分として、タンパク質のアンフォールディング剤(すなわち変性剤)、凝集抑制剤、構造修飾剤、機能補助剤、及び機能阻害剤として機能し得る。

【0016】
上記式(I)における「直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上10以下の二価炭化水素基」は飽和若しくは不飽和のいずれであってもよく、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上10以下のアルキレン基、及び直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2以上10以下のアルケニレン基及びアルキニレン基が挙げられる。

【0017】
上記アルキレン基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上10以下のアルキル基の炭素骨格の任意の位置における1個の水素原子が1つのさらなる結合部位で置き換えられて二価部分を形成しているものが挙げられる。上記アルキレン基は、チオール基とグアニジン残基との相互作用を最適化する観点から直鎖状であることが好ましい。上記アルキレン基の炭素数は、好ましくは1以上5以下、より好ましくは1以上3以下である。上記直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上5以下のアルキル基の例は、これらに限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル(sec-ブチル)、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル及び1-エチルプロピル等が挙げられる。好ましくは、上記直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1以上5以下のアルキレン基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン及びペンチレンからなる群から選択される。

【0018】
上記アルケニレン基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2以上10以下のアルケニルの炭素骨格の任意の位置における1個の水素原子が1つのさらなる結合部位で置き換えられて二価部分を形成しているものが挙げられ、主鎖は1個以上の二重結合を有していてよい。上記アルケニレン基は、チオール基とグアニジン残基との相互作用を最適化する観点から直鎖状であることが好ましい。上記アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2以上5以下である。上記直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素2以上5以下のアルケニル基の例は、これらに限定されないが、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル及びその位置異性体が挙げられる。好ましくは、上記直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素2以上5以下のアルケニレン基は、エテニレン、1-プロぺニレン、2-プロぺニレン、1-ブテニレン、2-ブテニレン、3-ブテニレン、1-ペンテニレン、2-ペンテニレン、3-ペンテニレン及び4-ペンテニレンからなる群から選択される。

【0019】
上記アルキニレン基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2以上10以下のアルキニル基の炭素骨格の任意の位置における1個の水素原子が1つのさらなる結合部位で置き換えられて二価部分を形成しているものが挙げられ、主鎖は1個以上の三重結合を有していてよい。上記アルキニレン基は、チオール基とグアニジン残基との相互作用を最適化する観点から直鎖状であることが好ましい。上記アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2以上5以下である。上記直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2以上5以下のアルキニル基の例は、これらに限定されないが、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-メチル-2-ブチニル、1-メチル-3-ブチニル、2-メチル-3-ブチニル及び3-メチル-1-ブチニル等が挙げられる。好ましくは、上記直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2以上5以下のアルキニレン基は、エチニレン、1-プロピニレン、2-プロピニレン、1-ブチニレン、2-ブチニレン、3-ブチニレン、1-ペンチニレン、2-ペンチニレン、3-ペンチニレン及び4-ペンチニレンからなる群から選択される。

【0020】
上記式(I)における「ポリオキシアルキレン基」は、同一又は異なる炭素数2以上4以下のオキシアルキレン単位が繰り返してなる骨格であり、具体的には、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等が挙げられる。ポリオキシアルキレン基のオキシアルキレン単位の繰り返し数は、チオール基とグアニジン残基との相互作用を最適化する観点から、1以上8以下、好ましくは1以上4以下である。

【0021】
上記式(I)における「置換基」としては、具体的には、アミノ、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、CN、カルボキシル、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル、C-C-アルコキシ、C-C-ハロアルコキシ、C-C-シクロアルキル、C-C-シクロアルケニル、C-C-アルケニルオキシ、C-C-アルキニルオキシ、C-C-アルコキシカルボニル、C-C-アルキルカルボニルオキシ、C-C15-アリール(フェニル、ナフチル及びアントリル等)、C-C18-アリールアルキル(ベンジル、1-フェネチル及び2-フェネチル等)、C-C18-アリールアルケニル(スチリル等)等が挙げられ、タンパク質への吸着を抑制する観点から、親水性基であるヒドロキシル、カルボキシル及びアミノが好ましい。ここで、C-Cは、当該基における可能な炭素数を示す。本明細書において「置換」という用語は、式(I)のXに含まれる1個又は複数の原子を上記置換基と置き換えることをいう。またフェニル等の疎水性基で置換する場合、タンパク質への吸着を抑制するために当該置換基の数は1~2個であることが好ましい。

【0022】
上記式(I)で表される化合物は、公知の方法(J.He et al.,Nano Lett.,2008,8,2530-2534)により合成することができ、例えば、ジスルフィド結合を有する化合物の両末端のアミノ基を、不活性溶媒(例えば塩化メチレン、クロロホルム、DMF又はそれらの混合物)中、塩基(例えばDMAP、DIEA、ピリジン、トリエチルアミン等)の存在下で、N,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンと反応させた後、これを塩酸等の酸性条件に付してグアニジン残基を生成させ、最後にジチオスレイトールを用いてジスルフィド結合をチオール基に還元することにより得られる。

【0023】
上記式(I)で表される化合物は、いずれも塩の形態や溶媒和物の形態であってもよい。上記塩としては、特に制限されず、例えば、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;又は塩酸、燐酸、硝酸、硫酸、亜硫酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸との塩等が挙げられる。また上記溶媒和物としては、水和物、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、DMF、DMSO等の溶媒との溶媒和物が挙げられる。

【0024】
本発明のリフォールディング剤は、式(I)で表される化合物、及びその塩及び溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含み、任意に選択される2種以上を含むこともでき、この場合、組み合わせは特に制限されない。本発明のリフォールディング剤は、当該組み合わせが混合された状態で販売又は流通されるものであっても、キット又はセット等として、それぞれ別個に包装された状態で販売又は流通されるものであってもよい。上記式(I)で表される化合物は、安定性の観点から酸性条件下(例えばpH2から3程度)、酸素非存在下(例えばアンプル等)で包装された状態であることが好ましい。

【0025】
以下、別段の記載がない場合、アンフォールディングされたタンパク質の酸化的リフォールディングにおける還元剤として式(I)で表される化合物を含む本発明のリフォールディング剤の実施形態について述べる。

【0026】
本発明のリフォールディング剤の一実施形態は、上記式(I)で表される化合物の他に、酸化剤をさらに含むことができる。そのような酸化剤としては、酸化的リフォールディングにおいて還元剤としての式(I)で表される化合物とともに用いることができる限り特に制限されず、例えば、グルタチオン酸化体、ジチオスレイトール酸化体、セレノグルタチオン酸化体、グルタレドキシン類(Glutaredoxins)、シスチン、シスタミン酸化体及びセレノシスタミン酸化体を挙げることができ、実際の生体反応で使用される点から、グルタチオン酸化体が好ましい。本実施形態は、式(I)で表される化合物と酸化剤とをそれぞれ別個に包装された形態で含むことが好ましい。また、本発明のリフォールディング剤の別の一実施形態は、式(I)で表される化合物を酸化的リフォールディングにおける還元剤として含み、別途入手した上記の酸化剤とともにタンパク質のリフォールディングに用いることができる。

【0027】
本発明のリフォールディング剤の別の一実施形態は、上記式(I)で表される化合物、及び場合により上記の酸化剤以外に、その他の還元剤を含むことができる。そのような還元剤としては、例えば、グルタチオン、β-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、アスコルビン酸及びシステインが挙げられ、各成分の組み合わせは特に制限されず、混合された状態で販売又は流通されるものであっても、キット又はセット等として、それぞれ別個に包装された状態で販売又は流通されるものであってもよい。本実施形態において、その他の還元剤の含有量は、上記式(I)で表される化合物に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下であることができる。

【0028】
本発明のリフォールディング剤を用いてリフォールディングする対象のタンパク質は、天然又は人造(化学合成法、発酵法、遺伝子組み換え法)等の由来や製造方法の別にかかわらず、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及びこれらの複合体が含まれる。タンパク質の種類は問わず、例えば細胞内タンパク質、細胞外タンパク質、膜タンパク質、及び核内タンパク質がいずれも含まれる。必ずしもジスルフィド結合を有するタンパク質である必要はないが、好適なタンパク質として少なくとも1つのジスルフィド結合を含むタンパク質を挙げることができる。具体的には、以下に示す酵素、組み換えタンパク質及び抗体等が挙げられる。

【0029】
酵素としては、加水分解酵素、異性化酵素、酸化還元酵素、転移酵素、合成酵素及び脱離酵素等が挙げられる。加水分解酵素としては、プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、グルコアミラーゼ等が挙げられる。異性化酵素としては、グルコースイソメラーゼが挙げられる。酸化還元酵素としては、プロテインジスルフィドイソメラーゼ、ペルオキシダーゼ等が挙げられる。転移酵素としては、アシルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ等が挙げられる。合成酵素としては、脂肪酸シンターゼ、リン酸シンターゼ、クエン酸シンターゼ等が挙げられる。脱離酵素としては、ペクチンリアーゼ等が挙げられる。

【0030】
組み換えタンパク質としては、タンパク製剤、ワクチン等が挙げられる。大腸菌等の原核生物や酵母等の真核生物や無細胞抽出系等の異種発現系を用いて遺伝子工学的に生産された組み換えタンパク質は、しばしば不溶性で不活性の凝集体、いわゆる封入体として得られるため、本発明のリフォールディング剤を好適に使用することができる。タンパク製剤としては、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン1~12、成長ホルモン、エリスロポエチン、インスリン、顆粒状コロニー刺激因子(G-CSF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ディフェンシン、ナトリウム利尿ペプチド、血液凝固第2因子、ソマトメジン、グルカゴン、成長ホルモン放出因子、血清アルブミン、カルシトニン等が挙げられる。ワクチンとしては、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、C型肝炎ワクチン等が挙げられる。抗体としては、特に限定はないが、医療用抗体が挙げられる。

【0031】
本明細書において、「アンフォールディングされたタンパク質」とは、任意の方法でアンフォールディングされたタンパク質でよいが、リフォールディング効果の観点から、塩酸グアニジン、尿素、チオ尿素又はこれらの併用でアンフォールディングされたタンパク質が好ましい。尚、タンパク質が、分子内にジスルフィド結合を含むものである場合には、上記アンフォールディング剤以外に、さらにβ-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はチオフェノール等の還元剤を加えてアンフォールディングされたタンパク質であってもよい。

【0032】
上記アンフォールディングされたタンパク質は、その分子量を特に制限するものではないが、通常1,000~10,000,000程度のタンパク質が挙げられる。リフォールディング効果の点から、好ましくは分子量1,000~250,000のタンパク質である。本発明のリフォールディング剤によれば、高効率でリフォールディングを行うことができるので、高分子量のタンパク質に適用することができる。

【0033】
本発明は、本発明のリフォールディング剤の存在下で、アンフォールディングされたタンパク質を処理する工程を含む、タンパク質のリフォールディング方法にも関する(以下、本発明のリフォールディング方法ともいう)。本発明のリフォールディング方法における、本発明のリフォールディング剤の存在下で、アンフォールディングされたタンパク質を処理する工程(以下、単に処理工程ともいう)としては、アンフォールディングされたタンパク質とリフォールディング剤とを接触させる工程が挙げられ、具体的には、アンフォールディングされたタンパク質とリフォールディング剤とをリフォールディング緩衝液中に配合して撹拌等により混合する工程、さらには、当該工程の後、必要によりリフォールディングをより十分に進めるために一定時間静置する工程も含まれる。本発明のリフォールディング方法に用いるリフォールディング剤の好ましい態様は、別段の記載がない限り、上記本発明のリフォールディング剤についての記載を引用するものとする。

【0034】
上記処理工程の処理時間は、リフォールディングが十分に行われる限り特に制限されないが、例えば、5分~24時間、好ましくは10分~3時間である。また温度は、対象とするタンパク質の熱耐性に応じて適宜選択することができ、例えば、0~100℃の範囲、好ましくは4~40℃の範囲である。

【0035】
上記処理工程において使用されるリフォールディング剤における式(I)で表される化合物(合計量)の濃度は特に制限されないが、対象タンパク質を含む溶液(例えばリフォールディング緩衝液)に対して、通常0.01~100mM、好ましくは0.05~10mM、より好ましくは0.1~5mMである。また、上記対象タンパク質を含む溶液(例えばリフォールディング緩衝液)中に含まれるアンフォールディングタンパク質の濃度は、通常0.01~100μM、好ましくは0.1~70μM、より好ましくは1~50μMである。

【0036】
上記処理工程における対象タンパク質を含む溶液(例えばリフォールディング緩衝液)において、式(I)で表される化合物である還元剤(合計量)と酸化剤(合計量)とのモル比は、効率的にリフォールディングが進行する限り特に制限されないが、例えば、1:1~20:1であることが好ましく、2:1~10:1であることがより好ましい。また、酸化剤がリフォールディング剤に含まれている場合には、当該含まれている酸化剤との合計量とする。

【0037】
上記リフォールディング緩衝液は、目的のタンパク質の機能を失わせるような濃度及び組成でなければ特に限定されず、具体的には、トリス緩衝液、MES緩衝液及びトリシン緩衝液等のアミン系緩衝液、リン酸緩衝液、又は各種Good’s buffer等が挙げられる。上記リフォールディング緩衝液のpHは、通常pH4~10、好ましくはpH5~9の範囲、より好ましくはpH7~9の範囲で調整することができる。

【0038】
上記リフォールディング緩衝液には、本発明のリフォールディング剤の他に、種々の添加物を添加することができる。そのような添加物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の塩類;クエン酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩等の緩衝液;水酸化ナトリウム等の塩基類;塩酸や酢酸等の酸類;メタノール、エタノール、プロパノール等の有機溶媒等が挙げられる。また、上記緩衝剤には、本発明のリフォールディング剤及び上記添加物の他に、界面活性剤、pH調整剤、又はタンパク質安定化剤を配合することもできる。当業者であれば適宜その使用量を調節することができる。

【0039】
上記界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれも使用することができる。界面活性剤を用いる場合の含有量は、対象タンパク質を含む溶液(例えばリフォールディング緩衝液)に対して、通常20質量%以下、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。

【0040】
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド(以下、「AO」と略記する)付加物(炭素数8~24の高級アルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコール及びオレイルアルコール等)のエチレンオキサイド(以下、「EO」と略記する)1~20モル付加物等)、炭素数6~24のアルキルを有するアルキルフェノールのAO付加物、ポリプロピレングリコールEO付加物及びポリエチレングリコールPO付加物、プルロニック型界面活性剤、及び脂肪酸AO付加物、多価アルコール型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤及びアミン塩型カチオンカチオン性界面活性剤等が挙げられる。上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数8~24の炭化水素基を有する、エーテルカルボン酸又はその塩、硫酸エステルもしくはエーテル硫酸エステル及びそれらの塩、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩、脂肪酸塩、アシル化アミノ酸塩、並びに天然由来のカルボン酸及びその塩(たとえばケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸等)が挙げられる。上記両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型両性界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤が挙げられる。

【0041】
上記pH調整剤としては、例えば、Tris(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノエタンスルホン酸)、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)、及びリン酸緩衝剤(例えば、リン酸1水素2ナトリウム+塩酸水溶液、又はリン酸2水素1ナトリウム+水酸化ナトリウム水溶液)等が挙げられる。pH調整剤を用いる場合の含有量は、pH4~10、好ましくはpH5~9の範囲、より好ましくはpH7~9の範囲となるように調節され、対象タンパク質を含む溶液(例えばリフォールディング緩衝液)に対して、通常0.01~200mM、好ましくは0.05~150mM、より好ましくは0.1~100mMである。

【0042】
上記タンパク質安定化剤としては、例えば、グルタチオン、β-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、TCEP、アスコルビン酸及びシステイン等の還元剤が挙げられる。そのような還元剤を用いる場合の含有量は、対象タンパク質を含む溶液(リフォールディング緩衝液)に対して、通常0.01~100mM、好ましくは0.05~10mM、より好ましくは0.1~5mMである。これらの還元剤がリフォールディング剤に含まれている場合には、当該含まれている還元剤との合計量とする。また上記タンパク質安定化剤としては、例えば、ポリオール類、金属イオン、キレート試薬等も挙げられる。ポリオール類としてはグリセリン、ブドウ糖、ショ糖、エチレングリコール、ソルビトール及びマンニトール等が挙げられる。金属イオンとしてはマグネシウムイオン、マンガンイオン及びカルシウムイオン等の2価金属イオンが挙げられる。キレート試薬としてはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びグリコールエーテルジアミン-N,N,N’,N’-4酢酸(EGTA)等が挙げられる。タンパク質安定化剤を用いる場合の含有量は、対象タンパク質を含む溶液(リフォールディング緩衝液)に対して、通常10質量%以下、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~1質量%である。

【0043】
また、対象タンパク質を含む溶液(リフォールディング緩衝液)中には、タンパク質の凝集とリフォールディングのバランスを向上させる観点から、NDSB、アルギニン、グリシンエチルエステル、グリシンアミド、アルギニンエチルエステル及びアルギニンアミド等の低分子化合物が含まれていてもよい。この場合、その含有量は、通常0.01~100mM、好ましくは0.05~10mM、より好ましくは0.1~5mMである。

【0044】
また、対象タンパク質を含む溶液(リフォールディング緩衝液)中には、アンフォールディング剤、すなわち変性剤(例えば、グアニジン塩酸や尿素)が含まれていてもよい。この場合、アンフォールディング剤の含有量は、通常0.01~100mM、好ましくは0.05~10mM、より好ましくは0.1~5mMである。当該濃度は、アンフォールディングされたタンパク質懸濁液に本発明のリフォールディング剤を添加してアンフォールディング剤濃度を希釈し低下させて調節してもよいし、又はアンフォールディングされたタンパク質懸濁液を透析してアンフォールディング剤濃度を希釈し低下させて調節してもよい。

【0045】
本発明は、本発明のリフォールディング剤の存在下で、アンフォールディングされたタンパク質を処理してリフォールディングする工程を含む、タンパク質の再生方法にも関する(以下、本発明のタンパク質の再生方法ともいう)。本発明のタンパク質の再生方法は、本発明のリフォールディング剤の存在下で、アンフォールディングされたタンパク質を処理してリフォールディングする工程(以下、リフォールディング工程ともいう)、さらには、当該工程の後、必要によりリフォールディングされたタンパク質を単離する工程(以下、単離工程ともいう)も含まれる。本発明のタンパク質の再生方法の好ましい態様は、別段の記載がない限り、上記本発明のリフォールディング剤及び本発明のリフォールディング方法についての記載を引用するものとする。上記リフォールディング工程の好ましい態様は、別段の記載がない限り、上記本発明のリフォールディング方法の処理工程についての記載を引用するものとする。

【0046】
上記単離工程としては、例えば上記リフォールディング工程で得られたタンパク質懸濁液から、目的とする正常タンパク質(リフォールディングタンパク質)を、カラムクロマトグラフィー等を用いて単離することが挙げられる。カラムクロマトグラフィーに使用される充填剤としてはシリカ、デキストラン、アガロース、セルロース、アクリルアミド、ビニルポリマー等が挙げられる。商業的に入手できる市販品としては、Sephadexシリーズ、Sephacrylシリーズ、Sepharoseシリーズ(以上、Pharmacia社)、Bio-Gelシリーズ(Bio-Rad社)等を挙げることができる。また透析法により目的とする正常タンパク質(リフォールディングタンパク質)を単離してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
(1)1-(2-メルカプトエチル)グアニジン(GdnSH)の合成
以下のスキームにより合成した。
【化3】
JP2019210258A_000005t.gif
【実施例】
【0049】
(1-1)化合物2の合成
窒素下、化合物1(Nacalai、0.340g、1.51mmol)の脱水DMF(関東化学、15mL)溶液に対しN,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン(TCI、0.993g、3.20mmol)とトリエチルアミン(sigma、0.50mL)を加え、室温で2時間撹拌した。塩化メチレン(AGC化学品カンパニー、30mL)を加え、水(80mL、3回)、飽和食塩水(50mL、1回)で洗浄した。回収した塩化メチレン溶液に対し脱水硫酸ナトリウム(キシダ化学)を加え、ろ過、溶媒減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、関東化学、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/4から1/1のグラジエント)により化合物2(0.397g、収率41%)を得た。
1H NMR(CDCl3, 25 ℃): 3.77(4H, td, J = 6.4及び5.5 Hz), 2.88(4H, t, J = 6.4 Hz), 1.54(24 H, s), 1.50(12H, s)ppm。
【実施例】
【0050】
(1-2)化合物3の合成
空気下、化合物2(0.264g、0.415mmol)のメタノール(ゴードー、6mL)溶液に対し塩酸(1mol/L、キシダ化学、20mL)を加え、30℃で3時間撹拌した。溶媒減圧留去し得られた白色固体を水(10mL)に溶かし塩化メチレン(AGC化学品カンパニー、10mL)で3回洗浄した。回収した水溶液を溶媒減圧留去し、化合物3(0.108g、収率95%)を得た。
1H NMR(D2O, 25 ℃): 3.44(4H, t, J = 6.4 Hz), 2.81(4H, t, J = 6.4 Hz)ppm。
13C NMR(D2O, 25 ℃): 156.90, 39.78, 36.03 ppm。
ESI-TOF MS(0.1%ギ酸混合メタノール): 237.0953(化合物3 + H+の理論質量237.0956)。
【実施例】
【0051】
(1-3)GdnSHの合成
窒素下、化合物3(0.105g、0.385mmol)を水(10mL)に溶かし、10分間窒素バブリングを行った。ジチオスレイトール(nacalai、0.118g、0.764mmol)を加え30℃で20時間撹拌した。水(10mL)を加え、クロロホルム(キシダ化学、10mL、4回)、2-プロパノールとクロロホルムとの混合溶媒(10/70、いずれもキシダ化学、4回)で洗浄した。回収した水溶液を溶媒減圧留去し、GdnSH(0.0882g、収率83%)を無色オイルで得た。5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(nacalai)を用いたチオール基定量法から、GdnSHが98mol%含まれることを確認した。
1H NMR(D2O, 25 ℃): 3.27(2H, t, J = 6.4 Hz), 2.6(2H, t, J = 6.4 Hz)ppm。
ESI-TOF MS(メタノール): 120.0594(GdnSH + H+の理論質量120.0595)。
【実施例】
【0052】
(2)還元変性タンパク質の調製
モデル基質としてウシ膵臓トリプシン阻害剤(Bovine Pancreas Trypsin Inhibitor:BPTI)(下記参考文献1及び2を参照した)及びRNase A(下記参考文献3を参照した)を採用した。それぞれ3本及び4本のジスルフィド結合を有すタンパク質であり、当該分野におけるモデル基質として一般である。
BPTI(タカラバイオ社)の還元変性体(3つのジスルフィド結合の還元体)を作製するために、BPTI 10mgを8M尿素、20mM DTT存在下、pH8.0、50℃で3時間インキュベートし、逆相HPLCによって精製した。MALDI-TOF/MSによって精製標品の全てのジスルフィド結合が切断されたことを確認した後、凍結乾燥し、-80℃で保存した(下記参考文献1を参照した)。
RNase A(sigma)の還元変性体(4つのジスルフィド結合の還元体)を作製するために、RNase A 8mgを6Mグアニジン塩酸、100mM DTT存在下、pH8.7、25℃で2時間インキュベートし、10mM HClで透析した。さらに2回透析を行い、DTT等を除いて溶液を10mM HClに交換した(下記参考文献3を参照した)。
参考文献1:M.Okumura et al.J Biol Chem.2014 289(39):27004-27018
参考文献2:J.S.Weissman et al.Science 1991 253(5026):1386-93
参考文献3:M.M.Lyles et al.,Biochemistry.1991 30(3):613-9
【実施例】
【0053】
(3)還元変性BPTIへのジスルフィド結合導入能の評価
緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、300mM NaCl)中で、上記(2)で調製した還元変性BPTI 30μMに対し、以下の還元剤及び酸化剤の組み合わせ:
実施例1:1mM GdnSH/0.2mM GSSG(nakalai)
比較例1:1mM GSH(nakalai)/0.2mM GSSG
比較例2:1mM β-メルカプトエタノール(β-ME)(nakalai)/1mM アルギニン(Arg)(nakalai)/0.2mM GSSG
比較例3:1mM β-メルカプトエタノール(β-ME)(nakalai)/1mM グアニジン(Gdn)(wako)/0.2mM GSSG
の存在下、30℃でインキュベートし、リフォールディング反応を行った。経時的に反応液を分取し、等量の1N HClを加え、チオール基とジスルフィド結合交換反応をクエンチした。反応液中における分子種(図1A参照)を同定するため、逆相HPLCに供した。逆相HPLCを用いた解析は、図1A及びBで示すように、BPTIがリフォールディングする際の各ジスルフィド結合種を分離、同定でき、経時変化におけるジスルフィド結合架橋位置を追跡できる。尚、図1AのBPTIのリフォールディング経路は上記参考文献2によるものである。
逆相HPLCの測定・分析条件を以下に示す:
カラムはTSKgel Protein C4-300 column(4.6×150mm;Tosoh Bioscience)を使用し、229nmの吸光度で検出した。0.05% トリフルオロ酢酸を含む水溶液(A液)と、0.05% トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル溶液(B液)の混合について、混合液におけるB液の割合の容量増加率が0~15分まで1%/分、15~115分まで0.5%/分となる直線濃度勾配で展開した。
【実施例】
【0054】
図2A~Dより、比較例1(GSH/GSSG)及び、比較例2(β-メルカプトエタノール/アルギニン/GSSG)、及び比較例3(β-メルカプトエタノール/グアニジン/GSSG)を用いた場合、リフォールディング反応時間5分においてもBPTIの還元変性体(全てチオール基)であるR(図1A参照)が残存しているのに対し、実施例1(GdnSH/GSSG)の場合、ほとんど全て消失しておりジスルフィド結合導入能が加速したことがわかる。また、図2A~Dより、天然型(N)(図1A参照)のBPTIは、比較例1(GSH/GSSG)及び、比較例2(β-メルカプトエタノール/アルギニン/GSSG)、及び比較例3(β-メルカプトエタノール/グアニジン/GSSG)を用いた場合、リフォールディング反応時間30分以降でないと形成されないのに対し、実施例1(GdnSH/GSSG)の場合10分以降に形成されたことがわかる。一般的に天然型(N)の形成とは、いったん形成された反応中間体内のチオール基とジスルフィド結合の交換反応(図1Aのリフォールディング経路におけるN’とNとの交換反応)の速度に依存するため、本交換反応が加速されたことを意味する。
【実施例】
【0055】
図3に、逆相HPLCより求めた、リフォールディング反応時間60分の収量の比較を示す。図3より、GdnSHを用いた実施例1の収量は51.3%であり、GSHを用いた比較例1(24.2%)、β-ME/Argを用いた比較例2(25.8%)、β-ME/Gdn用いた比較例3(27.6%)に対しておおよそ2倍の収量であった。
【実施例】
【0056】
以上より、β-メルカプトエタノールとグアニジンを組み合わせた構造を有するGdnSHを用いた実施例1は、それぞれを同濃度で別個に用いた比較例3と比較して、反応速度及び収率のいずれも顕著に高いことが示された。
【実施例】
【0057】
(4)還元変性RNase Aへのジスルフィド結合導入能の評価
次に、汎用例拡大のため、RNase Aを採用した。RNase A分子内にジスルフィド結合が形成される過程を観察するため、遊離チオール基修飾試薬である4-アセトアミド-4’-マレイミジルスチルベン-2,2’-ジスルホン酸(AMS、invitrogen社)を用いて、ジスルフィド結合を形成していないチオール基のみを選択的に修飾し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離した。リフォールディング反応の条件として、緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、300mM NaCl)中で、上記(2)で調製した還元変性RNase A 8μMに対し、以下の還元剤及び酸化剤の組み合わせ:
実施例2:1mM GdnSH/0.2mM GSSG
比較例4:1mM GSH/0.2mM GSSG
の存在下、30℃でインキュベートした。経時的に反応液を分取し、最終濃度5mM AMSを加えることで反応をクエンチした。電気泳動に供することで、RNase A内ジスルフィド結合の導入度を評価した(図4A及びB)。
電気泳動の測定・分析条件を以下に示す:
14%ポリアクリルアミドWIDE RANGEゲル(nakalai)に分取標品をアプライし、200Vで約60分間泳動・分離した。タンパク質を固定液(10%酢酸、50%メタノール)で固定し、Coomassie Brilliant Blueでゲルを染色した。染色された酸化型RNase Aのバンド強度を解析ソフトImage Lab(Bio-Rad)にて定量した。
その結果、比較例4(1mM GSH/0.2mM GSSG)の場合はリフォールディング反応時間60分まで酸化型RNase Aが生じなかったが(図4B)、実施例2(1mM GdnSH/0.2mM GSSG)存在下ではリフォールディング反応時間10分で酸化型が生じており(図4A)、GdnSHによりジスルフィド結合形成が促進されることがわかった。
【実施例】
【0058】
(5)活性評価
リフォールディング反応後の活性値を評価するために、RNase Aを採用した。以下の還元剤及び酸化剤の組み合わせ:
実施例3:1mM GdnSH/0.2mM GSSG
比較例5:1mM GSH/0.2mM GSG
の存在下で8μM RNase Aを含む緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、300mM NaCl)を30℃でインキュベートし、リフォールディング反応を行った。経時的に反応液を分取し、RNase Aの基質となるアデノシン2’,3’-環状一りん酸(cCMP)を含む同緩衝液で希釈し、最終濃度2μM RNase A、0.4mM cCMPとした。分光光度計(装置名HITACHI U—3900)により284nmの吸光度の変化を測定し、リフォールディングされたRNase Aの核酸分解活性を定量した。その結果を図5に示す。図5より、比較例5(1mM GSH/0.2mM GSSG)の場合と比較して、実施例3(1mM GdnSH/0.2mM GSSG)存在下では約2.4倍の速度でRNase Aの活性が回復したことがわかる。
【実施例】
【0059】
以上より、特定の構造を有する式(I)で表される化合物を含む本発明のリフォールディング剤を用いることにより、高いリフォールディング効率でタンパク質をリフォールディングすることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のリフォールディング剤は、組み換え遺伝子から発現される改変型タンパク質のリフォールディング、特に、多数のジスルフィド結合を有する抗体等の巨大タンパク質のリフォールディングに好ましく適用できる。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2A】
2
【図2B】
3
【図2C】
4
【図2D】
5
【図3】
6
【図4A】
7
【図4B】
8
【図5】
9