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明細書 :分子計測法およびそれを用いた分子計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-059926 (P2018-059926A)
公開日 平成30年4月12日(2018.4.12)
発明の名称または考案の名称 分子計測法およびそれを用いた分子計測装置
国際特許分類 G01N  33/536       (2006.01)
G01N  33/483       (2006.01)
FI G01N 33/536 Z
G01N 33/483 C
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2017-186611 (P2017-186611)
出願日 平成29年9月27日(2017.9.27)
優先権出願番号 2016192894
優先日 平成28年9月30日(2016.9.30)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】浮田 芳昭
出願人 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
Fターム 2G045FA16
2G045FB03
2G045GC30
要約 【課題】AFMを用いた相互作用測定はカンチレバーを生体分子で修飾することが煩雑でありその測定は困難である。また一度に一つの相互作用(結合力)しか定量できない。生体分子に限らず、より簡便な分子間相互作用を計測する測定方法(分子計測法)が求められている。
【解決手段】第1の分子と、前記第1の分子との相互作用により結合する第2の分子との結合力を測定する分子計測法であって、密度媒体よりも比重の小さい第1の微粒子、前記第1の分子と前記第2の分子の一方、前記第1の分子と前記第2の分子の他方、前記密度媒体よりも比重の大きい第2の微粒子の順にそれぞれ結合させた結合体を作成し、前記結合体と前記密度媒体とを充填したチャンバーを回転数を変化させながら回転させ、隣接する前記第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れた時点の回転数より前記結合力を計測する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の分子と、前記第1の分子との相互作用により結合する第2の分子との結合力を測定する分子計測法であって、
密度媒体よりも比重の小さい第1の微粒子、前記第1の分子と前記第2の分子の一方、前記第1の分子と前記第2の分子の他方、前記密度媒体よりも比重の大きい第2の微粒子の順にそれぞれ結合させた結合体を作成し、
前記結合体と前記密度媒体とを充填したチャンバーを回転数を変化させながら回転させ、
隣接する前記第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れた時点の回転数より前記結合力を計測することを特徴とする分子計測法。
【請求項2】
前記第1の微粒子および前記第2の微粒子のうち、前記第2の分子と結合する微粒子は、第3の分子を備え、
前記第2の分子は前記第3の分子との相互作用により前記微粒子と結合する
請求項1に記載の分子計測法。
【請求項3】
前記第1の分子はプローブ分子である請求項1または2の何れかに記載の分子計測法。
【請求項4】
前記第1の分子は抗体、アプタマー、ビオチンのいずれかである請求項1乃至3の何れか1項に記載の分子計測法。
【請求項5】
前記第1の分子は抗体であり、前記第2の分子は抗原である請求項1乃至3の何れか1項に記載の分子計測法。
【請求項6】
前記第2の微粒子に代えて、前記チャンバーの内壁面に前記第1の分子と前記第2の分子の他方を結合させることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の分子計測法。
【請求項7】
前記チャンバーはディスク上に形成され、前記ディスクを回転させることで前記チャンバーを回転させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の分子計測法。
【請求項8】
前記結合力は、前記結合力をF[N]、前記回転数をN[rpm]、前記第1の微粒子の体積をV[m]、前記第1の微粒子の密度をρs[kg/m]、密度媒体の密度をρf[kg/m]、前記チャンバーの回転半径r[m]、重力加速度[m/s]とするとき、
F=1118・r・N・10-6×(ρf-ρs)・V ×g
により算出することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の分子計測法。
【請求項9】
前記ディスクは前記チャンバーを複数備え、一連の計測シーケンスによって前記結合力の計測を複数行うことを特徴とする請求項7に記載の分子計測法。
【請求項10】
前記一連の計測シーケンスよって得られた複数の前記結合力の計測結果により、前記結合力の測定値の度数分布であるスペクトル測定を行うことを特徴とする請求項9に記載の分子計測法。
【請求項11】
計測制御装置と、
前記計測制御装置により所定シーケンスにより回転数を変化させながらチャンバーを搭載したディスクを回転させるディスク回転装置と、
前記ディスク回転装置のディスクの回転に同期して撮影対象の前記チャンバーをとらえて複数の画像を撮影するカメラとを備え、
前記チャンバーは、密度媒体よりも比重の小さい第1の微粒子、前記第1の分子と前記第2の分子の一方、前記第1の分子と前記第2の分子の他方、前記密度媒体よりも比重の大きい第2の微粒子の順にそれぞれ結合させた結合体と、さらに前記密度媒体とを充填され、
前記計測制御装置は、複数の前記画像の画像データから、隣接する前記第1の微粒子と前記第2の微粒子が互いに離れた時点の画像データを抽出し、
抽出された前記画像データが撮影された時の前記ディスク装置の回転数を、前記シーケンスの情報から算出し、
算出された前記回転数から前記結合力を算出する分子計測装置。
【請求項12】
前記計測制御装置は、機械学習システムをさらに備え、前記機械学習システムが隣接する前記第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れた時点の前記画像データを抽出することを特徴とする請求項11に記載の分子計測装置。
【請求項13】
前記チャンバー内に前記結合体を複数入れて、一連の計測シーケンスによって前記結合力の計測を複数行うことを特徴とする請求項7に記載の分子計測法。
【請求項14】
前記一連の計測シーケンスよって得られた複数の前記結合力の計測結果により、前記結合力の測定値の度数分布であるスペクトル測定を行うことを特徴とする請求項13に記載の分子計測法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分子計測法およびそれを用いた分子計測装置に関し、特に分子間相互作用(結合力)の測定方法およびその計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子の優れた分子認識能力を利用したバイオセンサーの研究は世界中で行われている。バイオセンサーの高機能化には生体分子間の相互作用を解析することが必要不可欠である。これまでのところ、特許文献1や非特許文献1、2などのように原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いた生体分子間相互作用測定方法(分子計測法)が実現している。例えば、非特許文献2では、原子間力顕微鏡を用いた生体分子間の相互作用の測定を行う方法と、その測定により生体分子間の結合力が数十~数百ピコニュートンであることが報告されている。
【0003】
このようなAFMを用いた生体分子間相互作用の測定においては、カンチレバーを生体分子で修飾することが必要であり、一つ一つの相互作用を定量している。また、これによって、生体分子間の結合力の測定が可能となっている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-263909号公報
【0005】

【非特許文献1】Biophysical Journal Volume 79 December 2000 3267-3281
【非特許文献2】E.-L. Florin et al. ,Biosensors &Bioelectronics,10(1995),895
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、AFMを用いた相互作用測定はカンチレバーを生体分子で修飾することが煩雑でありその測定は困難である。また一度に一つの相互作用(結合力)しか定量できない。生体分子に限らずより簡便な分子間相互作用を計測する測定方法(分子計測法)が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分子計測法は、第1の分子と、前記第1の分子との相互作用により結合する第2の分子との結合力を測定する分子計測法であって、密度媒体よりも比重の小さい第1の微粒子、前記第1の分子と前記第2の分子の一方、前記第1の分子と前記第2の分子の他方、前記密度媒体よりも比重の大きい第2の微粒子の順にそれぞれ結合させた結合体を作成し、前記結合体と前記密度媒体とを充填したチャンバーを回転数を変化させながら回転させ、隣接する前記第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れた時点の回転数より前記結合力を計測することを特徴とする。
【0008】
また本発明の分子計測装置は、計測制御装置と、前記計測制御装置により所定シーケンスにより回転数を変化させながらチャンバーを搭載したディスクを回転させるディスク回転装置と、前記ディスク回転装置のディスクの回転に同期して撮影対象の前記チャンバーをとらえて複数の画像を撮影するカメラとを備え、前記チャンバーは、密度媒体よりも比重の小さい第1の微粒子、前記第1の分子と前記第2の分子の一方、前記第1の分子と前記第2の分子の他方、前記密度媒体よりも比重の大きい第2の微粒子の順にそれぞれ結合させた結合体と、さらに前記密度媒体とを充填され、前記制御装置は、複数の前記画像の画像データから、隣接する前記第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れた時点の画像データを抽出し、抽出された前記画像データが撮影された時の前記ディスク装置の回転数を、前記シーケンスの情報から算出し、算出された前記回転数から前記結合力を算出する。
【発明の効果】
【0009】
より簡便な分子間相互作用(結合力)の測定方法および測定装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の分子計測法を説明する図である。
【図2】本発明の分子計測法を用いる分子計測装置を示す図である。
【図3】マイクロ流路型チャンバーを備えたディスクを示す図である。
【図4】実験結果を示す図である
【図5】実験結果を示す図である。
【図6】第2の実施例における分子間結合力のスペクトル測定結果の一例を示す図である。
【図7】第3の実施例を示す図である。
【図8】第3の実施例の変形例を示す図である。
【図9】第4の実施例を示す図である。
【図10】実施例4の被測定試料の作成方法を示す図である。
【図11】抗原を加えた場合の結合力分布(結合力スペクトル)を示す図である。
【図12】抗原を加えない場合の結合力分布(結合力スペクトル)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、本発明の分子計測法の原理を説明する。図1は、本発明の分子計測法を説明する図である。ここでは、測定対象として図1(1)に示す抗体1(第1の分子)と抗原5(第2の分子)の結合力の測定を一例に説明する。
【実施例1】
【0013】
(測定原理)
測定対象の一方の抗体1を微粒子(ビーズ)2と結合させた抗体固定化微粒子6、および抗体3を微粒子(ビーズ)4と結合させた抗体固定化微粒子7とをそれぞれ準備する。ここで抗体1および3は共に抗原5と結合できるもの(分子)とする。また、微粒子(ビーズ)2および微粒子(ビーズ)4とは互いに比重の異なっているものを選択する。そして抗体固定化微粒子6と抗体固定化微粒子7とを同じ抗原5に結合させる。つまり微粒子(ビーズ)2-抗体1-抗原5-抗体3-微粒子(ビーズ)4の順に結合させたサンプル(ここでは結合体と称す)101を作成する(図1(1))。
【実施例1】
【0014】
次にこのサンプル(結合体)101と、比重が微粒子(ビーズ)2と微粒子(ビーズ)4それぞれの比重の間の値である溶媒(パーコール)102とからなる懸濁液とする。そして、このサンプル(結合体)すなわち測定対象の抗体1と抗原5との結合部分に引っ張り力を加える。溶媒(パーコール)の中では、微粒子(ビーズ)2、微粒子(ビーズ)4と溶媒(パーコール)102の比重の大小関係から一方の微粒子(ビーズ)は浮き、他方の微粒子(ビーズ)が重りとして作用する。ここで、微粒子(ビーズ)2の比重が微粒子(ビーズ)4の比重よりも大きい場合、図1(2)に示すように微粒子(ビーズ)2、4には浮力F1と重力F2とが作用する。そして、この懸濁液をマイクロ流路構造のチャンバー9に入れ、チャンバー9全体を回転させて外力F3(後述するようにこれは例えば遠心力である)を徐々に加える。なお図1では回転軸8を中心にチャンバーをR0の向きに回転させる。
【実施例1】
【0015】
その結果、2つの微粒子(ビーズ)は比重の大きいビーズ(ここでは微粒子(ビーズ)4)によって沈降する。そしてチャンバー9の壁面(チャンバーの内側の壁面、内壁面)9wと接触することで比重の大きいビーズに作用していた遠心力が壁面9wとの反作用力によって打ち消され、引張力は比重が小さいビーズ(ここでは微粒子(ビーズ)2)に作用する浮力と遠心力のみとなる(図1(3))。なお、ここでは結合体にかかる浮力F1が、重力F2よりも小さくなるように、2つの微粒子(ビーズ)および溶媒(パーコール)102を選択した例で説明している(つまり結合体が沈降し、チャンバー壁面に接触する場合)。したがって結合体はチャンバーの下側(遠心力の働く方向)に接触する。しかしながら浮力F1が重力F2より大きい場合は(つまり結合体が浮上し、チャンバー壁面に接触する場合)、ちょうどこの関係を逆転させたようにとらえることができる。つまり結合体はチャンバーの上側(遠心力の起点側の方向)に接触する。
【実施例1】
【0016】
さらに、この状態から回転速度を増加させていくと、サンプル(結合体)に作用する力は大きくなりある回転数に達した時点でサンプル(結合体)の結合が破断して2つのビーズが分離する(図1(4))。したがって分離したときのチャンバーの回転数がわかれば、このときの引張力を求めることができ、サンプル(結合体)の結合力を見積もることができる。
【実施例1】
【0017】
ここでサンプル(結合体)は微粒子(ビーズ)2-抗体1-抗原5-抗体3-微粒子(ビーズ)4の順に結合させたものであるから、測定対象が抗体1と抗原5の結合力である場合は、この結合力が一番弱くなるように抗体、抗原あるいは微粒子(ビーズ)の材料を選定すればよい。なお、抗体1,3は微粒子(ビーズ)2,4とくらべ後述するようにその大きさや質量が極めて小さく、抗体固定化微粒子6、7はそれぞれ実質的に微粒子(ビーズ)2,4の比重(あるいは密度)である。また測定対象に結合を図1(4)に示す結合が取れた部分、すなわち抗体1と抗原5の結合部分とすると、サンプル(結合体)は、微粒子(ビーズ)2(第1の微粒子)-抗体1(第1の分子)-抗原5(第2の分子)-抗体固定化微粒子7(第2の微粒子)のように構成しているとみなすことができる。
【実施例1】
【0018】
(測定の方法)
測定原理に示したように、第1の分子(例えば抗体1)と、この第1の分子との相互作用により結合する第2の分子(例えば抗原5)との結合力を測定する本発明の分子計測法は、次のような手順で分子間の相互作用(結合力)を測定する。
【実施例1】
【0019】
まず、図1(1)に示すように、パーコールよりも比重の小さい第1の微粒子(例えば微粒子2や実験例においてのポリスチレン微粒子)、第1の分子と第2の分子の一方、第1の分子と第2の分子の他方、パーコールよりも比重の大きい第2の微粒子(例えば、抗体固定化微粒子7や実験例においての抗体を結合したシリカ微粒子)の順にそれぞれ結合させた結合体(例えば101)を作成する。(ステップ1)
【実施例1】
【0020】
次に、図1(2)に示すように、結合体とパーコールとを充填したチャンバー9を回転数を変化させながら回転させる。(ステップ2)
【実施例1】
【0021】
そして、図1(3)に示すように、回転数を上昇させて、パーコールよりも比重の大きい第2の微粒子を遠心力が向かう方向のチャンバー9の壁面に押し付け、第2の微粒子にかかる遠心力をチャンバー9の壁面での反作用で打ち消すようにする。(ステップ3)
【実施例1】
【0022】
さらに、図1(4)に示すように、隣接する第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れるまで回転数を上げ、隣接する第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れる時点の回転数を計測、その回転数から結合力を算出する。(ステップ4)なお、後述するようにステップ1での結合体の構成形態により、ステップ3を取り除くことが可能である。
【実施例1】
【0023】
上記した測定原理や測定の方法では、サンプル(結合体)101と、比重が微粒子(ビーズ)2と微粒子(ビーズ)4それぞれの比重の間の値である溶媒(パーコール)102を用いるとして説明した。この溶媒(パーコール)102としては、溶媒やパーコールに限らずショ糖溶液、塩化シシウム、Ficollなどを2つの微粒子(2、4)あるいは結合体101に外力(遠心力)を与える媒体とすることができる。本発明では、2つの微粒子(2、4)の間の比重(あるいは密度)を有し2つの微粒子(2、4)あるいは結合体101に外力(遠心力)を与える媒体であればよい。本発明では、このような媒体を密度媒体(density media)と称する。
【実施例1】
【0024】
なお、本発明の測定原理においては、測定対象として抗体1と抗原5の結合力の測定を例に説明したが、本発明の分子計測法は、結合体の構成を様々な材料に代えることで様々な分子間の結合力の測定が可能である。
【実施例1】
【0025】
(測定の対象)
本発明の分子計測法は、抗体1と抗原5の結合力の測定の他に、ある特定の分子と相互作用を備える(すなわち結合する)プローブ分子とその特定の分子との結合力の測定が代表的な測定対象となる。そうしたものの中では、例えば特定の分子と特異的に結合するアプタマー(核酸分子やペプチドなど)とその特定の分子との結合力の測定等がある。
【実施例1】
【0026】
(微粒子の形態)
上述した抗体の他に、アプタマー、ビオチンなどの分子相互作用能のある分子を微粒子2、4の表面に固定化するようにしてもよい。また微粒子の種類には樹脂粒子、無機材料粒子、ゲルビーズさらにはポリマーソームやリポソームなどの小胞体であってもよい。
【実施例1】
【0027】
さらに微粒子の結合に関与する分子数を制御する目的で微粒子表面に固定化する分子の密度を適当に調整することもできる。また、トポロジー効果による分子結合数制御を目的として粒子表面や固相表面にナノ・マイクロ構造を形成することもできる。
【実施例1】
【0028】
(結合体の形態)
上述した例では、抗体固定化微粒子6、7がともに抗原5を介して結合される例を示した。本発明は、抗体に限らず互いに分子相互作用能のある分子に使用可能である。つまり、相互作用(結合)する一方の分子(抗体1,3)をそれぞれ微粒子2、4に結合(固定化)させた分子固定化微粒子(抗体固定化微粒子6、7)を作成し、これらを相互作用(結合)する他方の分子(抗原5)を介して結合させるように結合体を構成した。しかしながら、他方の分子も直接微粒子に結合(固定化)させるように結合体を構成してもよい。
【実施例1】
【0029】
また、上述の例では2つの微粒子2、4を用いて説明したが、後述するように一方の微粒子を単に個体表面に置き換えてもよい。つまり、たとえば微粒子4に代えて壁面9wに抗体3を結合させたチャンバーをあらかじめ用意し、これに抗体1と微粒子2が結合した抗体固定化微粒子6を抗原5を介してチャンバー壁面9wと抗体固定化微粒子6とを結合するようにサンプル(結合体)を構成してもよい。この場合は、チャンバー壁面9w-抗体3-抗原5-抗体1-微粒子2の順に結合された結合体となる。
【実施例1】
【0030】
次に本発明の分子計測法を用いる分子計測装置について説明する。図2は、本発明の分子計測法を用いる分子計測装置を示す図である。
【実施例1】
【0031】
本発明の分子計測装置10は、CCDカメラ11、キセノンランプ12、対物レンズ(Object Lens)16、ハーフミラー17、鏡筒18、固定台20、ディスク回転装置21とを備えている。また、計測制御装置19をさらに備える。計測制御装置19は、信号CS1~CS3によって、CCDカメラ11、キセノンランプ12、対物レンズ(Object Lens)16、ディスク回転装置21の動作制御を行う。また、CCDカメラ11から撮影データを取り込み、撮影データやCCDカメラ11、キセノンランプ12、対物レンズ(Object Lens)16、ディスク回転装置21の動作制御情報などのデータ整理を行う。
【実施例1】
【0032】
固定台20は、鏡筒18、キセノンランプ12、ディスク回転装置21が備え付けられ、鏡筒18にはさらにCCDカメラ11がセットされる。
【実施例1】
【0033】
また鏡筒18は、固定台20に設置されたキセノンランプ12からのランプ光が、ラインL1に沿って鏡筒18内のハーフミラー17で受けるように構成される。ハーフミラー17は、ランプ光(キセノンランプ光)を鏡筒18のラインL1に沿ってハーフミラー17から対物レンズ16の方向にこのランプ光を反射する。そしてランプ光は対物レンズ16を介してターゲットに照射される。ターゲットからのラインL1に沿った反射光を対物レンズ16、鏡筒18を経てCCDカメラ11で受ける。CCDカメラ11はターゲットからの反射光によりターゲット表面の画像を取り込む。
【実施例1】
【0034】
ディスク回転装置は、後述するマイクロ流路型チャンバーを備えたディスク13がセットされる。上記したターゲットはこのディスク上に形成されたチャンバーであり、対物レンズ16ならびにCCDカメラ11は、このチャンバーの位置に焦点が合うよう設定される。
【実施例1】
【0035】
次にディスク13について説明する。図3はマイクロ流路型チャンバーを備えたディスクを示す図である。ディスク13はCD(Compact Disc)とほぼ同じ形状である。したがって中心部にディスク回転装置21の回転軸の軸受用の孔15を備えている。ディスク13を基板として、この基板上にジメチルポリシロキサン(PMDS)を材料としたマイクロ流路型デバイスチップ14を備える。マイクロ流路型デバイスチップ14には例えば、チャンバー(マイクロチャンバー)31が複数パターニングされている。なお、図3においては、1つのマイクロ流路型デバイスチップ14を基板のディスク13に取り付ける構成を示しているが、ディスク13に直接チャンバー31を形成してもよいし、複数のマイクロ流路型デバイスチップ14をディスク13全面に張り付けるようにしてもよい。
【実施例1】
【0036】
このように構成されたディスク13のチャンバー31に上述したサンプル(結合体)を溶媒(パーコール)102とともにセットする。この時キセノンランプ光がディスク13のチャンバー31の表面にあたるようにディスク回転装置21の回転軸を所望の位置にあわせ、CCDカメラの撮影画像の焦点がターゲットのチャンバー31に合うようにセットする。
【実施例1】
【0037】
計測制御装置19は、所定のシーケンスに従ってディスク回転装置21に回転させ、サンプル(結合体)に外力F3(遠心力)を印加する。また、このシーケンスに従い、ディスク13上にある観測対象のチャンバー31をストロボ撮影するようCCDカメラ11、キセノンランプ12のオンオフを制御する。すなわち、ディスク13が1回転(あるいは整数回)するたびに計測が終了するまでディスクの回転に同期して、計測するチャンバーをとらえるようにCCDカメラ11、ディスク回転装置21、キセノンランプ12を制御する。また、ディスクの回転を徐々に上げていき印加する遠心力を強めるようシーケンス制御する。
【実施例1】
【0038】
また計測制御装置19は、キセノンランプ12のオンオフ制御の他、ランプ光の強度の制御、ならびに対物レンズ(Object Lens)16を含めた焦点合わせ制御を行うようにしてもよい。
【実施例1】
【0039】
なお、計測制御装置19は撮影データを取り込むデータを収集する。計測制御装置19にPCなどのデータ処理装置(不図示)およびデータ処理ソフトを搭載して、データ処理装置が撮影データから結合体の切断時点を判断し、その時点のディスク13の回転数や時間などを集計するようにしてもよい。画像のデータの判断は、データ処理装置やデータ処理ソフトにより機械学習可能なニューラルネットワークを組み込むことで、精度のよい実現が可能である。
【実施例1】
【0040】
(実験例)
上記した原理に基づいて、抗マウスIgG抗体とマウスIgGとの抗原抗体反応による結合の結合力の測定の実証例に以下に示す。
【実施例1】
【0041】
まず、測定に用いるマイクロ流路型デバイスチップ14は、5mm角のジメチルポリシロキサン(PDMS)製チップとした。このデバイスチップ14には、直径200μmのマイクロチャンバー31を複数パターニングした。
【実施例1】
【0042】
直径20μmのポリスチレンとシリカの2つの微粒子(ビーズ)を用意し、ともに抗マウスIgG抗体を共有結合によって固定化し抗体固定化微粒子を作成した。この固定化は、カルボキシル基(-COOH)をその表面に備え付けた微粒子に、抗体のアミン(-NH)と脱水縮合反応によりエステル結合させ行った。
【実施例1】
【0043】
抗体を固定化した2種のビーズに抗原であるマウスIgGを加えて抗原抗体反応によって結合させた(サンドイッチ反応)。このようにしてポリスチレン微粒子-抗マウスIgG抗体-マウスIgG-抗マウスIgG抗体-シリカ微粒子の順に結合された結合体を得た。なお、抗マウスIgG抗体はポリクローナル抗体であり、1つの抗原に対し複数の抗体が結合できる。ポリスチレン粒子、シリカ粒子の大きさは直径約20umであり、分子量100000程度の抗マウスIgGはこれらに比べると極めて小さいため、ほぼ粒子同士が結合しているように見える。また、2つの微粒子(ビーズ)と抗マウスIgG抗体とはどちらも極めて強力な結合である共有結合のため、引っ張り力を加えた場合、まずは、マウスIgG-抗マウスIgG抗体が切断される。
【実施例1】
【0044】
この結合体(結合した2つの微粒子(ビーズ))を、ポリスチレン微粒子とシリカ微粒子のそれぞれの比重(あるいは密度)の間となる比重(あるいは密度)に調整したパーコール(Percoll)液(溶媒)と共にマイクロ流路型デバイスチップ14のマイクロチャンバー31に封入した。ポリスチレン微粒子の密度は1052.6[kg/m]、シリカ微粒子の密度はおよそ2000[kg/m]、したがって溶媒(パーコール)はその密度が1094.3[kg/m]のものを選択した。また、本実験ではディスク13上のマイクロチャンバー31は、ディスク13の中心(回転軸の中心)から4.5cm(回転半径が4.5cm)となる位置に配置した。なお、本実験では、パーコールは、10nm程度のシリカのナノ粒子をポリエチレングリコール(PEG)でコーティングしたゾルを利用した。
【実施例1】
【0045】
この結合体とパーコール液とを封入したマイクロチャンバー31を備えたディスク13を図2に示す実験装置(分子計測装置10)に取り付け、遠心力を印加し、結合体の挙動を観測した。実際は上述のように2つの微粒子(ビーズ)が結合しているように見えるため、微粒子(ビーズ)の挙動を観察した。測定は、ディスク13の回転数を実験装置のシーケンス制御により、0rpmから100rpm/sの上昇スピードで徐々に上げていき、結合が切れたところまで観測を行った。
【実施例1】
【0046】
ディスク13を取り付けた回転系が回転することで結合体に遠心力が印加される。回転している結合体の挙動は、系の回転周期と同期したキセノンランプから発するストロボ光によって顕微鏡画像を撮影し、観察を行った。
【実施例1】
【0047】
(結果)
ディスクの回転数が(1)略0rpm、(2)500rpm、(3)900rpm、(4)1000rpmにおけるチャンバー内のポリスチレン微粒子41およびシリカ微粒子42の様子を図4に示す。なお、図4はディスク13の回転数を0rpmから100rpm/sの上昇スピードで徐々に上げて観測した結果であるので、図4(1)は測定開始時、図4(2)は5s(second)後、図4(3)は9s後、図4(4)は10s後の状態である。ポリスチレン微粒子と隣接したシリカ微粒子は、1000rpmに達した瞬間に分離した。また、図5に1000rpmに達した時点でのより詳細な分離の瞬間のポリスチレン微粒子41およびシリカ微粒子42の様子を示す。図5(1)は1000rpmに達した時点、図5(2)はその60ms後、図5(3)はその120ms後、図5(4)はその180ms後、図5(5)はその240ms後の状態を示している。図4、図5とも図の上から下方向に遠心力が印加されている。
【実施例1】
【0048】
隣接したポリスチレンとシリカの両微粒子(ビーズ)を観察した場合、抗体抗原反応によって微粒子(ビーズ)同士が結合しているか、もしくは、結合していないポリスチレンビーズが遠心力を印加する前に天井方向に浮上し天井のカバーガラスと接触しており、顕微鏡で上から見た際に隣接しているように見えているかの2通りが考えられる。カバーガラスと接触しているシリカ微粒子(ビーズ)と隣接しているように見えるポリスチレン微粒子(ビーズ)は、回転系が回転し遠心力を印加し始めた直後、つまり1000rpmに満たない回転数ですべて浮上しシリカ微粒子(ビーズ)と分離していたため1000rpmで分離した微粒子(ビーズ)は,重なって結合しているように見える微粒子(ビーズ)ではなく,確かにシリカ微粒子(ビーズ)と抗原抗体反応によって結合していたと考えられる。
【実施例1】
【0049】
以上からポリスチレンとシリカ同士隣接した微粒子(ビーズ)が分離したことをもって、マウスIgG-抗マウスIgG抗体が切断されたと判断できる。したがってこの時の回転数1000rpmからこの時点でマウスIgG-抗マウスIgG抗体結合に引っ張った力は次の通り求めることができる。
【実施例1】
【0050】
シリカ微粒子42に比べポリスチレン微粒子41の方が密度が小さいため、マウスIgG-抗マウスIgG抗体の結合を引っ張る力は溶媒(パーコール)でポリスチレン微粒子41に作用する力を求めればよい。
【実施例1】
【0051】
流体密度(密度媒体)ρf[kg/m]のとき、体積V[m]の物体に作用する浮力Fb[N]は、重力加速度をg[m/s]とすると、
【実施例1】
【0052】
Fb = ρf・V・g [N] ・・・式1
【実施例1】
【0053】
として求められる。物体の密度がρsの時、浮力と重力の合力Fは上向きを正として、
【実施例1】
【0054】
F = (ρf-ρs)・V・g [N] ・・・ 式2
【実施例1】
【0055】
として求められる。ここで遠心力によってポリスチレン微粒子に作用する引っ張り力は式2のgの代わりに相対遠心加速度RCF(Relative Centrifugal Force)を持ちいればよい(実際RCFは重力加速度gに対する比なのでgをRCF・gとみなす)。したがって
【実施例1】
【0056】
F = (ρf-ρs)・V・RCF[×g] [N] ・・・ 式3
【実施例1】
【0057】
となる。微粒子(ビーズ)にかかる相対遠心加速度RCFは、回転系の加速度をa、重力加速度をgとすると、
【実施例1】
【0058】
RCF=a/g ・・・ 式4
【実施例1】
【0059】
で求められる。ここで、回転系の加速度aならびに回転角速度ωは回転半径をr[m]、回転数N[rpm]とするとそれぞれ式5、6
【実施例1】
【0060】
回転系の加速度 a = rω ・・・式5
【実施例1】
【0061】
回転角速度 ω = 2πN/60 ・・・式6
【実施例1】
【0062】
である。重力加速度(g)≒9.80665[m/s]であるので、式4~6により
【実施例1】
【0063】
RCF≒rω/g=4r・π・N/(3600・g)[×g]≒1118・r・N・10-6[×g]
【実施例1】
【0064】
となる。したがってポリスチレン微粒子に作用する力は、回転半径r=4.5×10-2[m]、切断時の回転数N=1000[rpm]、溶媒の密度ρf=1094.3[kg/m]、ポリスチレン微粒子の密度ρs=1052.6 [kg/m]、ポリスチレン微粒子の直径が20[μm]であるから、式3より、
【実施例1】
【0065】
F=(ρf-ρs)・V・RCF[×g]=(ρf-ρs)・V × 4r・π・N/(3600・g)・[×g]=1118・r・N・10-6×(ρf-ρs)・V [×g]=1118・4.5×10-2・1000・10-6×(1094.3-1052.6)×4/3×π×(10×10-6 ・9.80665=50.31×(1094.3-1052.6)×4.19×10-15×9.80665=8.6・10-11 [N]=86[pN]
【実施例1】
【0066】
となる。
【実施例1】
【0067】
実験を繰り返した結果、微粒子(ビーズ)が分離したときに微粒子(ビーズ)に作用していた力は80-90[pN]となった。このことは上記測定原理の実証であり、遠心マイクロ流体デバイスを用いた生体分子間相互作用測定が可能であることを示している。なお、上記は結合体にかかる浮力が重力より小さい場合(結合体が沈降するし、チャンバー内壁に引っ付く場合)を例に求めた。したがって浮き側の微粒子(ρs)と密度媒体(ρf)との関係で結合力を算出した。結合体にかかる重力が浮力より小さい場合(結合体が浮いてチャンバーの内壁に引っ付く場合)は、重り側の微粒子(ρa)と密度媒体(ρf)との関係で結合力を算出すればよい。つまりρsに代えて重り側の微粒子の密度(ρa)を使って計算すればよい。
【実施例1】
【0068】
今回の実験によって得られた微粒子(ビーズ)の結合力は先述の生体分子間の相互作用に匹敵するほどの結合力であり、生体分子間の相互作用としては非常に高い値となっている。これは、今回使用したビーズが抗体のサイズに対して大きかったためと考えられる。ビーズの曲率が抗体に対して大きいため複数の抗体が複数の抗原分子と反応して結合したために結合力が大きくなったと考えられる。
【実施例1】
【0069】
一方、抗体分子1分子について結合力を測定するには一分子抗原1分子抗体とが反応するように反応系を最適化して1分子結合を形成させる必要がある。
【実施例2】
【0070】
実施例1では、1つのチャンバーにおける分子間の結合力の測定を示した。しかしながら、顕微鏡の視野内に存在する微粒子(ビーズ)を複数観察することが可能であるため、1度の測定で複数の微粒子(ビーズ)に関して結合力を測定することが可能である。
【実施例2】
【0071】
つまり、複数のサンプルを同時並行的に測定ができるため、これらの測定結果を統計的に生体分子間相互作用の解析が可能である。
【実施例2】
【0072】
1つの方法としては、顕微鏡の視野内に存在する微粒子(ビーズ)を複数観察することが可能であるため、撮影データ1枚分に複数のチャンバーでの観測結果を撮影して、これらを計測制御装置19に搭載したPCなどのデータ処理装置で処理する方法である。
【実施例2】
【0073】
また別の方法としては、計測制御装置19のシーケンスを改良して、ディスク13が1回転する間に複数のチャンバーの撮影を行うようにし、得られた画像データを計測制御装置19のデータ処理装置でチャンバーごとに分けて処理するようにしてもよい。あるいは、上記2つを組み合わせてもよい。
【実施例2】
【0074】
さらには、計測制御装置19がディスク回転装置と対物レンズとの位置関係をコントロールしてより広範囲の撮影を行うようにしてもよい。
【実施例2】
【0075】
このように、同一構造の結合体の結合力の複数の同時計測を行うことによって、統計的に生体分子間相互作用(結合力)の測定を行うことが可能となる。その結果を、例えば図6に示すように測定された結合力とそのサンプル頻度との関係(ここではこれを分子間結合力のスペクトル測定と称す)として、容易に出すことができる。また、そもそも生体分子の結合力はばらつきが大きいため、このような統計的解析が非常に有効である。さらに、上記した抗マウスIgG抗体とマウスIgGとの抗原抗体反応で用いる抗マウスIgG抗体のようなポリクローナル抗体はモノクローナル抗体と比べて選択反応性が低いため、複数の抗原と相互作用を持ち結合してしまう傾向が強い。したがってポリクローナル抗体のような選択反応性の低いものの結合状態を解析するには、このスペクトル測定が有効である。複数のサンプルによる結合力分布を統計的に解析すると分布のピークがそれぞれ結合した抗原の種類や結合位置に応じた結合力を示すことになり、分子結合の解析が可能となる。
【実施例2】
【0076】
以上説明したように本発明の分子計測法および分子計測装置は、遠心力を用いることにより複数の結合を一括測定可能となり、統計解析を一括で実施可能なスループットが得られる。これにより生体分子間に生じる相互作用の質を評価する新たな分析が可能となる。
【実施例2】
【0077】
例えば抗原抗体反応によるバイオ分析で得られたシグナルには抗体が間違って補足した分子に由来するシグナルが含まれるが、これを真正なシグナルと切り分ける術はない。しかし、一旦形成した結合が分離する閾値を再評価すれば、生体分子間の微妙な相互作用の違いから誤認識に由来する結合を識別することが可能となる。
【実施例2】
【0078】
この応用として前立腺癌特異的バイオマーカーであるPSAの解析が考えられる。PSAは末梢血液中においてTotal_PSAとFree_PSAの2種の形態を取っているが、これらはもともと同一の物質であったことから抗体が誤認識する可能性が高い。
【実施例2】
【0079】
このような場合、上記した分子間結合力のスペクトル測定を行うことにより本発明の適用によりTotal_PSAとFree_PSAの識別が可能になる。
【実施例3】
【0080】
図7は、実施例1の結合体101を結合体5101に代えて本発明の分子計測法を行う例を示す図である。本実施例では、結合体101の一方の微粒子をチャンバー9の壁面の一部に塗布された薄膜状のシリカ54に置き換えたものである。こうしておけば、実施例1と同じ要領で、薄膜状のシリカ54に抗体3を結合させ、抗体固定化壁面57が構成できる。したがってチャンバー壁面の薄膜状のシリカ54-抗体3-抗原5-抗体1-微粒子2の順に結合された結合体を構成できる。なお、すべての実施例に当てはまるが、材料としてのシリカ54は必須ではなく測定対象に応じて適宜選択可能である。また、図7では、チャンバー9の一部を覆うように薄膜状のシリカ54を形成しているが、チャンバー9の壁面(内壁)の全てを覆うようにしてもよい。
【実施例3】
【0081】
(実施例3の変形例)
図8は、図7で示した実施例3の変形例である。実験においてチャンバー9はPDMSを材料として作成する例を示したが、チャンバーそのものの材料を抗体3が結合できる素材に置き換えてしまうことも可能である。すなわち本変形例ではチャンバー64そのものがシリカで構成されている。したがってシリカで出来たチャンバー64-抗体3-抗原5-抗体1-微粒子2の順に結合された結合体を構成できる。こうすれば、薄膜状のシリカ54をチャンバー9の壁面に覆うようにする手間が省けることになる。
【実施例3】
【0082】
以上説明したように、本発明の分子計測方法は、第1の分子(例えば抗体1)と、この第1の分子との相互作用により結合する第2の分子(例えば抗原5)との結合力を測定する分子計測法であって、パーコールよりも比重の小さい第1の微粒子(例えば微粒子2や実験例においてのポリスチレン微粒子)、第1の分子と第2の分子の一方、第1の分子と第2の分子の他方、パーコールよりも比重の大きい第2の微粒子(例えば、抗体固定化微粒子7や実験例においての抗体を結合したシリカ微粒子)の順にそれぞれ結合させた結合体(例えば101)を作成し、結合体とパーコールとを充填したチャンバー(例えば後述する31など)を回転数を変化させながら回転させ、隣接する第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れた時点の回転数により結合力を計測する。
【実施例3】
【0083】
特定の分子と特異的に結合するアプタマー(核酸分子やペプチドなど)のアプタマーと特定分子との結合力を測定する場合は、アプタマー(第1の分子)にパーコールよりも比重の小さい微粒子を結合させ、特定の分子(第2の分子)にパーコールよりも比重の大きい微粒子を結合させ(この逆でもよい)、アプタマーと特定の分子とさらに結合させ、引っ張り力を与えるようにすればよい。
【実施例3】
【0084】
言い換えると、第1の分子(例えば抗体1)と第2の分子(例えば抗原5)との結合を、第1の分子、第2の分子の一方につけた浮きと他方につけた重りにより引っ張り力を与え、その結合が切れる時に加えた引っ張り力を、チャンバーの回転数から求める測定方法である。
【実施例3】
【0085】
なお、上記の例では抗体固定化微粒子7は微粒子4に抗体3(第3の分子)が結合されている。したがって、第1の微粒子および第2の微粒子のうち、第2の分子と結合する微粒子は、第3の分子を備え、第2の分子は第3の分子との相互作用により微粒子と結合するようにしてもよい。
【実施例3】
【0086】
浮きは、パーコールに対して比重(あるいは密度)の小さい微粒子が用いられ、重りはパーコールに対して比重(あるいは密度)の大きい微粒子であればいい。また、第1の分子と第2の分子とが結合した結合分子の一方に浮き、他方に重りがつけばよいので、測定対象の分子の種類によって浮きと重りのつけ方を選択すればよい。
【実施例3】
【0087】
また、第1の分子と第2の分子とが結合した結合分子が重りに結合している部分を、重りに代えてチャンバーの壁面に結合させてもよい。
【実施例3】
【0088】
第1の分子をプローブ分子を、第2の分子をそのプローブ分子が相互作用を備える特定の分子とすることも可能である。プローブ分子としては、抗体の他、アプタマー、ビオチンとすることもできる。
【実施例3】
【0089】
一方、ディスク13はチャンバー31を複数備え、一連の計測シーケンスによって結合力の計測を複数同時に行うことが可能である、またさらに、一連の計測シーケンスよって得られた複数の結合力の計測結果により、結合力の測定値の度数分布であるスペクトル測定を行うこと可能である。
【実施例3】
【0090】
この分子計測法を取り入れた分子計測装置は、例えば、計測制御装置と、計測制御装置により所定シーケンスにより回転数を変化させながらチャンバーを搭載したディスクを回転させるディスク回転装置と、ディスク回転装置のディスクの回転に同期して撮影対象のチャンバーをとらえて複数の画像を撮影するカメラとを備え、チャンバーは、パーコールよりも比重の小さい第1の微粒子、第1の分子と第2の分子の一方、第1の分子と第2の分子の他方、パーコールよりも比重の大きい第2の微粒子の順にそれぞれ結合させた結合体と、さらにパーコールとを充填され、計測制御装置は、複数の画像の画像データから、隣接する第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れた時点の画像データを抽出し、抽出された画像データが撮影された時のディスク装置の回転数を、シーケンスの情報から算出し、算出された回転数から前記結合力を算出するように構成される。
【実施例3】
【0091】
さらに計測制御装置は、機械学習システムを備え、機械学習システムが隣接する第1の微粒子と第2の微粒子が互いに離れた時点の前記画像データを抽出するようにすることもできる。このようにすればほぼすべての測定を精度よく自動に行うことが可能となる。
【実施例4】
【0092】
本実施例は、ポリスチレンビーズを複数個結合させ、同時に結合力測定を行う場合における本発明の一例である。図9は第4の実施例を示す図であり、抗体固定化基板(6401)を用いた生体分子間相互作用の測定方法を示す図である。図9では、実施例3におけるチャンバー64に代えて抗体固定化基板(6401)を用いている。抗体固定化基板(6401)は、あらかじめ抗体3をその基板表面に複数固定化したものである。また抗体1を微粒子(ビーズ)2と結合させた抗体固定化微粒子6を用いた例を示している。抗体3および抗体固定化微粒子6の抗体1はともに抗原5と抗原抗体反応で複数結合させたものを示している。
【実施例4】
【0093】
図9に示すように、本実施例では、基板(6401)の抗体3と抗体固定化微粒子6の抗原1と、抗原5とをそれぞれ抗原抗体反応で複数結合させ(図9(a))、微粒子2(例えばポリスチレンビーズ)よりも比重の大きい溶媒(パーコール)でチャンバー内を満たし微粒子2、抗体固定化微粒子6には浮力F1が加わるようにしたうえで、遠心力F3を印加する(図9(b))。こうすることによって上述の例と同じように、まず、結合力の小さい抗体固定化微粒子6は低回転数で結合が破断する(図9(c)、特に同図の左端の抗体固定化微粒子6’)。さらに回転数を変化させることで抗体固定化微粒子6にかかる遠心力を上げていくことにより順次結合を破断させていく(図9(d))。ここで複数の抗体固定化微粒子6に加えた遠心力の大きさと結合が破断した抗体固定化微粒子6の数との関係をプロットすることによりスペクトル解析が行える。
【実施例4】
【0094】
(試料の作成)
実施例4の被測定試料の作成方法について説明する。図10は、実施例4の被測定試料の作成方法を示す図である。図10に示すように、まず抗体固定化基板(6401)のベースとなるガラス基板に対し抗体を固定化する(図10(a))。ここでは、EDACを架橋剤として用いることでペプチド結合によってガラス基板に抗体を固定化した。抗体分子中に存在するカルボキシル基をEDACによって活性化させた後に,ガラス基板にコーティングされているアミノ基と反応させることでガラス基板に抗体を固定化した。抗体を固定化するガラス基板には,APS(アミノシラン)コートスライドグラス(松浪硝子)を使用した。また、カップリング剤としてPolyLink Protein Coupling Kit for COOH Microparticles (PolyLink Coupling Buffer, PolyLink Wash/Storage Bunffer, PolyLink EDAC)を、基板の洗浄を行う際にはシカクリーン(関東化学)を0.3%加えた純水を洗剤として使用した。
【実施例4】
【0095】
次に、抗体固定化微粒子6の一例である抗体固定化済ポリスチレンビーズを抗原抗体反応で結合する。まず、図10(a)で抗体3を固定化した基板(6401)に抗原5を加えて反応させ(図10(b))、未反応の抗原(抗原分子)5を洗浄し(図10(c))、抗体固定化済ポリスチレンビーズ6を加えて反応させて(図10(d))、
密度調整した溶媒(パーコール102)を加えカバーガラス6402をかぶせることにより所望の被測定試料を作成した(図10(e))。図9および図10(e)においては、遠心力が働く方向側に抗体固定化基板(6401)を配置する例を示しているが、これに代えて抗体固定化基板(6401)の上下を逆さ(すなわち遠心力が働く方向とは逆の位置に配置)にして遠心することも可能である。この場合は、例えば溶媒の比重が微粒子6の比重よりも小さいものを選択することができる。これに限らず微粒子が溶媒に沈むような関係を確保するよう適宜材料を選択するとよい。
【実施例4】
【0096】
実験においては、抗体分子5を固定化したガラス基板にφ3mmの穴を開けたPDMSを貼り付けることでチャンバー(不図示)を作成した(図10(a))。チャンバー内に1%BSA含有DPBSで100倍に希釈した抗原分子5を加えて30分間室温静置下で反応させ(図10(b))、溶液を取り除き0.05%Tween20含有DPBSを加えることで未反応分子を洗浄した(図10(c))。洗浄は同様の手順で3回を行った。1%BSA含有DPBSで1000個/μl(マイクロリットル)になるように希釈した抗体固定化済ポリスチレンビーズ(6)を加えて室温静置下で30分反応させビーズと基板を結合させ(図10(d))、密度調整したパーコール(Percoll)102を加えてチャンバーを満たし,溶媒の漏れを防ぐためカバーガラス6402をかぶせ被測定試料を作成した(図10(e))。
【実施例4】
【0097】
(実験)
このようにして作成した試料に対し、遠心力は、0~100G(G:重力加速度)まで10G刻みで加わるように回転数を調整し,1分間回転させることで遠心力を印加した。遠心力印加後に基板を取り出し,顕微鏡にて結合が破断せずに残っていたビーズを数えた。ここから試料に加えた遠心力と結合が破断せずに残っていたビーズの数の結果から結合力分布(すなわち結合力スペクトル)を求めた。なお、比較対象試料として抗原5を全く加えない試料についても同様の実験を行った。
【実施例4】
【0098】
(結果)
以上により求められた抗原を加えた場合/抗原を加えない場合についての結合力分布(結合力スペクトル)の結果を図11、図12にそれぞれ示す。図11と図12を見ると抗原を加えた場合の結合力は,22.5~33.8pNの区間でピークを持っており,抗原を加えない場合では,0~11.3pNの区間で殆どの結合が破断していることがわかる。このように結合力のピーク値が異なることから,抗原分子を加えた場合では,殆どのポリスチレンビーズが抗原抗体反応によって結合していると考えることができる。また,結合力の違いによって特異的結合と非特異的結合の区別が可能であると考えられる。また,図11を見ると90~101.3pNの区間で第2のピークを持っているように見える。これは,1つのビーズについて結合に関与する抗体分子が複数個存在するため,結合力が大きくなってしまったものと見られる.この傾向は,AFMを用いた単分子間相互作用のスペクトル解析にも見られ,先行研究の結果と近い波形を取っていることから,整合性のある実験結果を得ることができたと考えられる。以上より,印加する遠心力の区間をより細かく設定し,結合力の分布を作成することで生体分子間相互作用のスペクトル解析が可能であることがこの結果からも確認できた。
【実施例4】
【0099】
本実施例からも明らかなように、1つのチャンバーで複数の試料を測定することも本結果から実証された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
たとえば、生体検査・化学分析に利用が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1、3 抗体
2、4 微粒子(ビーズ)
5 抗原
6、7 抗体固定化微粒子
8 ディスク回転軸
9 チャンバー
9w チャンバー壁面
10 分子計測装置
11 カメラ
12 キセノンランプ
13 ディスク
14 マイクロ流路型チップ
15 ディスク回転軸用孔
16 対物レンズ
17 ハーフミラー
18 鏡筒
19 計測制御装置
20 固定台
21 ディスク回転装置
41 ポリスチレン微粒子
43 シリカ微粒子
54 薄膜状のシリカ
57 抗体固定化壁面
64 シリカ製チャンバー
67 抗体固定化チャンバー
101、5101、6101 結合体
102 溶媒(パーコール)
6401 抗体固定化基板
6402 カバーガラス
R0 回転方向
CS1、CS2、CS3 制御信号
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11