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明細書 :複合体、複合体の製造方法、アンモニア合成触媒及びアンモニア合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年10月5日(2017.10.5)
発明の名称または考案の名称 複合体、複合体の製造方法、アンモニア合成触媒及びアンモニア合成方法
国際特許分類 B01J  27/24        (2006.01)
C01B  21/092       (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
C01C   1/04        (2006.01)
FI B01J 27/24 M
C01B 21/092
B01J 35/10 301J
B01J 37/04 102
B01J 37/02 101C
B01J 37/08
C01B 3/04 B
C01C 1/04 E
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 31
出願番号 特願2016-562708 (P2016-562708)
国際出願番号 PCT/JP2015/084207
国際公開番号 WO2016/088896
国際出願日 平成27年12月4日(2015.12.4)
国際公開日 平成28年6月9日(2016.6.9)
優先権出願番号 2014246717
優先日 平成26年12月5日(2014.12.5)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】原 亨和
【氏名】北野 政明
【氏名】横山 壽治
【氏名】井上 泰徳
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
Fターム 4G169AA03
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4G169BA01A
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4G169BA41A
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4G169BC02A
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4G169EB18Y
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4G169EC02Y
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4G169EC27
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB04
4G169FB34
4G169FC02
要約 【課題】Ca2N等の、層状結晶構造を有する2次元エレクトライド化合物は、遷移金属を担持させることで、高い活性を有するアンモニア合成触媒となる。しかし、2次元エレクトライドが不安定であるため、触媒としての安定性が低い。さらに2次元エレクトライドを触媒の担体として用いる場合、加工性に乏しく、反応に応じた触媒の成型が困難である。
【解決手段】遷移金属と、担体と、下記一般式(1)で表される金属アミド化合物とを含む複合体であり、前記担体は、金属酸化物、又は炭素質担体であり、前記金属アミド化合物が、下記一般式(1)で表される金属アミド化合物であることを特徴とする複合体。
M(NH2x ・・・(1)
(前記一般式(1)において、Mは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びEuから選ばれる少なくとも1種の金属原子を表わし、xはMの価数を表す。)
特許請求の範囲 【請求項1】
遷移金属と、担体と、下記一般式(1)で表される金属アミド化合物とを含む複合体であり、 前記担体は、金属酸化物又は炭素質担体であり、前記金属アミド化合物が、下記一般式(1)で表される金属アミド化合物であることを
特徴とする複合体。 M(NH2x ・・・(1)(前記一般式(1)において、Mは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びEuから選ばれる少なくとも1種の金属原子を表わし、xはMの価数を表す。)
【請求項2】
前記担体が、塩基性、中性、又は弱酸性の金属酸化物である請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記担体が、ZrO2、TiO2、CeO2、Al23、Nb25、Ta25、又はMgOから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物である請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記複合体のBET比表面積が、10m2/g以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
前記金属原子MがCaである請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
前記遷移金属がRuである請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の複合体を含む担持金属触媒。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の複合体を含むアンモニア合成触媒。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の複合体の製造方法であって、前記金属原子Mを含む金属原子源、前記担体、及び液体アンモニアを混合する工程及び、前記金属原子源と液体アンモニアを反応させ、前記担体に前記金属アミド化合物を生成させ、金属アミド担持担体を得る工程を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項10】
前記金属アミド担持担体に、前記遷移金属の原料化合物(以下、遷移金属原料)を担持させる工程と、前記遷移金属原料を熱分解して前記遷移金属を析出させる工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の複合体の製造方法。
【請求項11】
アンモニアの合成方法であって、窒素を含むガス及び水素を含むガスを、請求項8に記載のアンモニア合成触媒に接触させ、アンモニアを合成することを特徴とするアンモニア合成方法。
【請求項12】
前記アンモニア合成触媒に接触させる際の温度が、100℃以上600℃以下である請求項11に記載のアンモニア合成方法。
【請求項13】
前記アンモニア合成触媒に接触させる際の圧力が、10kPa以上20MPa以下である請求項11又は12に記載のアンモニア合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属、担体及び金属アミドを含む複合体、前記複合体を用いた担持金属触媒並びにアンモニア合成触媒、及びアンモニア合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ca32、Sr32、Ba32等のアルカリ土類金属窒化物は、半導体装置に用いる窒化アルミニウムの原料、金属摺動部材用のセラミック粒子、電池電極構成材料、導電性微粒子等に用いられる化合物である。特許文献1には、アルカリ土類金属窒化物は、対応するアルカリ土類金属アミドを熱分解して製造する方法が開示されている。また、特許文献2には、アルカリ土類金属に、アンモニアを反応させて液相化し、得られた金属アミド化合物を熱分解し、高純度の金属窒化物を製造する方法が開示されている。
【0003】
特許文献3には、金属アミド化合物の製造方法としては、金属水素化物又は金属水素化物にさらに金属単体又は合金を加えて、液体アンモニアと反応させて金属アミド化合物を製造する方法が開示されている。また別の方法として、反応容器にLiやCa等の金属やその化合物を封入し、冷却下、対金属体積比10倍以上のアンモニアを導入して液化した後、撹拌反応させて、LiNH2、Ca(NH22等の金属アミドを製造する方法が開示されている(特許文献4)。
【0004】
代表的なアルカリ土類金属窒化物である窒化カルシウムは、これまでα-Ca32、β-Ca32、γ-Ca32、Ca118、Ca2N等が知られている。また、窒化カルシウムの水素化物(以下、「Ca-N-H系化合物」ということもある)であるCa2NH、CaNH、Ca(NH2)2等も知られている。
【0005】
Ca2Nは、容易に酸化されるなど、非常に化学的に不安定な物質であることが知られており、Ca2Nが安定に存在できる範囲としてはAr中で1000℃以下、又は窒素中で250℃から800℃の間と報告されている(非特許文献1)。
【0006】
一方、本発明者らは、AE2N(AEは、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。)で表わされる窒化物が、高い伝導度を有する「2次元エレクトライド化合物」であることを見出した(特許文献5)。この2次元エレクトライド化合物AE2Nは、[AE2N]+で構成される層間に、電子(e-)が陰イオンとして結びついた層状化合物である。すなわちイオン式ではAE2+:e-と表わすこともできる。
【0007】
例えば、代表的な2次元エレクトライド化合物であるCa2Nは、Ca32と金属Caを真空中で加熱することにより得られる。Ca2Nの伝導電子濃度は1.4×1022/cm3であり、2.6eVの仕事関数を有することが報告されている(非特許文献2)。その後、この2次元のエレクトライドをピナコールカップリングの還元剤として利用した例が報告されている(非特許文献3)。
【0008】
Ca(NH2)2は、塩基触媒として作用し、2-メチル-1-ブテンなどのオレフィンの異性化反応に対して触媒活性を示す例(非特許文献4)や、Al23などの酸化物担体にNa、K、Eu、Ybのアミド化合物を担持した触媒が、2-メチル-1-ブテンなどのオレフィンの異性化反応に対して触媒活性を示す例(非特許文献5)が報告されている。いずれの例も塩基触媒として機能することが報告されている。
【0009】
アンモニア合成には、一般的にFe34に数質量%のAl23とK2Oを含んだ触媒を用いる方法(ハーバー・ボッシュ法)が用いられている。また、ハーバー・ボッシュ法以外の合成方法として、鉄系触媒やRu系触媒(例えば、Ru/MgO、Ru/CaO、Ru-Cs/MgO)が検討されている(非特許文献6,7)。これらの触媒は、担体にアンモニア合成活性を持つ遷移金属を担持した触媒であり、一般に「担持金属触媒」と言われる。
【0010】
アンモニア合成用のその他の担持金属触媒としては、Fe、Ru、Os、Co等の周期表8族又は9族の遷移金属、周期表8族又は6B族遷移金属の窒化物やCo・Mo複合窒化物等が用いられる(特許文献6~9)。また、Al23、SiO2、Mg2O又はマグネシウムアルミニウムスピネルを副担体とし、その上に担持された窒化ケイ素又は窒化ホウ素にRuを担持させたアンモニア合成触媒が知られている(特許文献10)。
【0011】
そして、本発明者らは、前記2次元エレクトライドに遷移金属を担持させることで、高い活性を有するアンモニア合成触媒となることを見出した。具体的には、Mxyz(Mは、Mg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる少なくとも1種、xは1≦x≦11を満たす整数であり、yは1≦y≦8を満たし、zは0≦z≦4を満たす。)で表わされる金属窒化物又はその水素化物に、RuやFeなどの遷移金属を担持した担持金属触媒が、アンモニア合成用の触媒となる(特許文献11)。しかし、担体に金属アミド化合物及び金属を担持した複合体、及び担持金属触媒の報告は一切ない。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2011-178648号公報
【特許文献2】特開2012-66991号公報
【特許文献3】特開2006-8440号公報
【特許文献4】特開2010-222213号公報
【特許文献5】特開2014-24712号公報
【特許文献6】特公昭51-47674号公報
【特許文献7】特公昭54-37592号公報
【特許文献8】特公昭59-16816号公報
【特許文献9】特開2000-264625号公報
【特許文献10】特開2004-35399号公報
【特許文献11】国際公開WO2015/129471号
【0013】

【非特許文献1】P. Hchn, S. Hoffmann, J. Hunger, S. Leoni, F. Nitsche, W. Schnelle, R. Kniep, Chem. Eur. J., 15, 3419 (2009)
【非特許文献2】K.Lee, S. W. Kim, Y. Toda, S. Matsuishi and H. Hosono "Nature",494, 336-341(2013)
【非特許文献3】Y. J. Kim, S. M. Kim, H. Hosono, J. W. Yang and S. W. Kim, Chemical Communications,50, 4791-4794 (2014)
【非特許文献4】I. V. Gostunskaya, N. I. Tyun'kina and B. A. Kazanskii, Doklady Akademii Nauk SSSR,108, 473-6 (1956)
【非特許文献5】Y. Ono and T. Baba, Catalysis Today,38, 321-337 (1997)
【非特許文献6】K. Aika, A. Ohya, A. Ozaki, Y. Inoue, I. Yasumori, Journal ofCatalysis, 92, 305-311 (1985)
【非特許文献7】F. Rosowski, A. Hornung, O. Hinrichsen, D. Herein, M. Muhler, G. Ertl, Applied Catalysis A: General,151, 443-460 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
2次元エレクトライド化合物は、従来、金属窒化物と、金属とを原料として製造する。しかし、この製造方法においては、これらの原料を混合した後、高温かつ長時間の反応を要する。具体的にCa2Nの製造を例に取ると、Ca32と金属カルシウムを混合し、真空条件下、800℃で100時間加熱することによりCa2Nを得ている(非特許文献2)。つまり、2次元エレクトライド化合物の製造には非常に過酷な製造条件を必要とする。そのため、2次元エレクトライド化合物の性能を享受するための、より簡便な製造方法が求められている。
【0015】
一方、ハーバー・ボッシュ法によるアンモニア合成は、通常20MPa以上の高圧を要する。そのため高圧反応用装置が必要となるため、より低圧での反応が可能となるアンモニアの製造方法が求められている。近年、担持金属触媒を用いたアンモニア合成方法が検討されているが、未だ性能は不十分であり、またハーバー・ボッシュ法に比べて低圧で反応が可能な触媒は見出されていない。
【0016】
本発明者らは、2次元エレクトライド化合物に遷移金属を担持させることで、高い活性を有するアンモニア合成触媒となることを見出したが、2次元エレクトライド化合物自体が不安定であるため、触媒としての安定性が低いという課題がある。さらに2次元エレクトライド化合物を触媒の担体として用いる場合、加工性に乏しく、反応に応じた触媒の成型が困難であるという課題があった。さらにはCa2Nを担体に用いた際のBET比表面積を測定したところ、約1m2/gであり、遷移金属を担持すると、担持された遷移金属の粒子が大きくなり、高分散に担持することができないという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、一般式(1)で表される金属アミド化合物(以下「金属アミド」という場合がある)を、特定の担体物質に担持し、さらに触媒金属となる遷移金属を担持した複合体及びその製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち本発明の要旨は、 [1]遷移金属と、担体と、下記一般式(1)で表される金属アミド化合物とを含む複合体であり、 前記担体は、金属酸化物又は炭素質担体であり、前記金属アミド化合物が、下記一般式(1)で表される金属アミド化合物であることを特徴とする複合体、 M(NH2x ・・・(1)(前記一般式(1)において、Mは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びEuから選ばれる少なくとも1種の金属原子を表わし、xはMの価数を表す。)
【0019】
[2]前記担体は、塩基性、中性、又は弱酸性の金属酸化物である上記[1]に記載の複合体、
【0020】
[3]前記担体が、ZrO2、TiO2、CeO2、Al23、Nb25、Ta25、又はMgOから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物である前記[1]又は[2]に記載の複合体、
【0021】
[4]前記複合体のBET比表面積が、10m2/g以上である上記[1]~[3]のいずれか1に記載の複合体、
【0022】
[5]前記金属原子MがCaあることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか1に記載の複合体、
【0023】
[6]前記遷移金属がRuであることを特徴とする[1]~[5]のいずれか1に記載の複合体、
【0024】
[7]上記[1]~[6]のいずれか1に記載の複合体を含む担持金属触媒、
【0025】
[8]上記[1]~[6]のいずれか1に記載の複合体を含むアンモニア合成触媒、
【0026】
[9]上記[1]~[6]のいずれか1に記載の複合体の製造方法であって、前記金属原子Mを含む金属原子源、前記担体、及び液体アンモニアを混合する工程及び、前記金属原子源と液体アンモニアを反応させ、前記担体に前記金属アミド化合物を生成させ、金属アミド担持担体を得る工程を含むことを特徴とする複合体の製造方法、
【0027】
[10]前記金属アミド担持担体に、前記遷移金属の原料化合物(以下、遷移金属原料)を担持させる工程と、前記遷移金属原料を熱分解して前記遷移金属を析出させる工程を含むことを特徴とする上記[9]に記載の複合体の製造方法、
【0028】
[11]アンモニアの合成方法であって、窒素を含むガス及び水素を含むガスを、[8]に記載のアンモニア合成触媒に接触させ、アンモニアを合成することを特徴とするアンモニア合成方法、
【0029】
[12]前記アンモニア合成触媒に接触させる際の温度が、100℃以上600℃以下であることを特徴とする前記[11]に記載のアンモニア合成方法、
【0030】
[13]前記アンモニア合成触媒に接触させる際の圧力が、10kPa以上20MPa以下であることを特徴とする[11]又は[12]に記載のアンモニア合成方法、に存する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の複合体は、高温及び長時間の反応を要さずに製造することができ、より簡便に2次元エレクトライド化合物が有する性質を享受することができる。本発明の複合体は、その製造過程で高温及び長時間の反応を経ずに得ることができるため、遷移金属が高い分散性をもって担持された複合体となっている。そのため、本発明の複合体は、担持金属触媒、特にアンモニア合成触媒として高い性能を有する。
【0032】
本発明の複合体は、アンモニア合成触媒として用いた際、特許文献11記載の担持金属触媒よりもさらに高い触媒活性を示す。すなわち反応効率が高いアンモニアの製造が可能である点で有利である。
【0033】
本発明の複合体は、アンモニア合成触媒として用いた際、長時間継続して反応を行っても安定してアンモニアを生成し、ほとんど反応活性が低下しない。すなわち、触媒の寿命が長いため、高い製造効率でアンモニアを製造することができる点で有利である。
【0034】
本発明の複合体の製造方法は、高温及び長時間の反応を要さずに本発明の複合体を製造することができる。そのため遷移金属が高い分散性をもって担持された複合体を得ることができ、担持金属触媒、特にアンモニア合成触媒の製造において有利である。
【0035】
また、本発明のアンモニア合成方法は、担体として安価な金属酸化物又は炭素質担体と、金属アミドを用いることで比較的安価な触媒でアンモニアの合成が可能である。また本発明の複合体を使うことで低い反応圧力でアンモニアの合成が可能である。すなわち、少ないエネルギー消費をもって、高効率に長期の化学的、熱的な安定性をもってアンモニアを合成できる。
【0036】
また、Ruのような高価な希少金属以外の遷移金属元素、例えば、FeやCoなどを触媒金属として用いても十分な反応活性を得ることも可能であり、資源の有効利用の観点からも有用である。
【0037】
本発明の複合体は、担持金属触媒として用いた場合、種々の反応において触媒として利用できる可能性を有し、例えばアンモニア分解反応を促進することができる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の複合体の一例の概念図、及び前記複合体の一例の製造方法の概略フローである。
【図2】Ca(NH2)2をZrO2担体上に担持したCa(NH2)2/ZrO2の複合体のTEM写真である。
【図3】異なる量のCa(NH2)2をZrO2担体上に担持し、さらにRuを担持した複合体を、アンモニア合成触媒として用いた際の触媒活性を示すグラフである。
【図4】Ca(NH2)2をZrO2担体上に担持し、さらに異なる量のRuを担持した複合体を、アンモニア合成触媒として用いた際の触媒活性を示すグラフである。
【図5】各種担体を用いて製造した本発明の複合体を、アンモニア合成触媒として用いた際の各触媒のアンモニア生成速度を示すグラフである。
【図6】実施例1と比較例1の触媒についての安定性評価試験の結果を示すグラフである。
【図7】実施例14、比較例7及び比較例8に示すアンモニア分解反応の結果を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明について詳細に説明する。 <複合体> 本発明の複合体は、遷移金属、担体及び金属アミド化合物を含有するものである。具体的に本発明の複合体は、後述する担体と、後述する金属アミド化合物と、遷移金属とを含有し、より具体的には、前記担体上に前記金属アミド化合物が担持され、さらに前記金属アミド化合物上に遷移金属が担持されたものであり、好ましくは前記担体上に、前記金属アミド、遷移金属の順に積層された構造を有するものである。

【0040】
前記複合体の構造は、特に限定されるものではなく、平面状の担体に前記金属アミド、遷移金属の順に積層担持されていても、略球状の担体に前記金属アミド、遷移金属の順に積層担持された、いわゆるコア-シェル型構造であってもよい。

【0041】
以下、本発明の複合体を、構成成分毎に詳細に述べる。 <担体> 本発明において用いられる担体は、金属酸化物又は炭素質担体である。金属酸化物としては、特に限定はされないが、金属酸化物に用いられる金属は典型金属でも遷移金属でもよい。

【0042】
本発明で担体として用いられる金属酸化物としては、塩基性、中性、又は弱酸性の金属酸化物が好ましい。塩基性、中性、又は弱酸性の金属酸化物とは、その表面が塩基性、中性又は弱酸性を呈する表面を有する金属酸化物をいい、金属酸化物の表面の、反応基質からプロトン(H+)を引き抜く能力、又は電子対を反応基質に対して与える能力の強弱を表わす。例えば、MgO、CeO2、ZrO2のような塩基性の金属酸化物は、電子対を反応基質に対して与える能力が高い。一方、反応基質にプロトンを提供する能力が高いもの、又は、電子対を受ける能力が高いものが酸性の金属酸化物と呼ばれる。Al23、TiO2等は弱酸性の金属酸化物である。中性の金属酸化物は、この双方の中間に当たるもの、又は、この両方の性質を有するものということができ、例えばSiO2などが挙げられる。

【0043】
本発明の担体は、後述する金属アミド化合物を担持するが、その際、通常、液体アンモニア雰囲気下で処理を行なう。そのため、アンモニアや生成する金属アミド化合物との親和性の面で、塩基性、中性、又は弱酸性の金属酸化物が好ましい。上記規定を満たす金属酸化物であれば、特に限定はされないが、具体的な塩基性、中性、又は弱酸性の金属酸化物としては、ZrO2、TiO2、CeO2、Al23、Nb25、Ta25、MgOから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が、担持金属触媒として用いた際の反応活性が高い、具体的にはアンモニア合成触媒として用いた際のアンモニア生成速度が高い点で好ましく、ZrO2、TiO2、CeO2、Al23、MgOから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が一般的に用いることができ、また加工性にも優れる点でより好ましく、ZrO2、TiO2、Al23が価格の点でも有利である点で更に好ましい。

【0044】
本発明で用いる担体として、炭素質担体も用いることができる。炭素質担体とは、炭素が主成分である担体をいい、具体的にはグラファイト、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられるが、酸素含有官能基を有さないものが金属アミド化合物との親和性の面で好ましく、通常はグラファイトが好ましい。前記担体は、一種類でも二種類以上含んでいてもよい。

【0045】
前記担体としては、金属酸化物が好ましい。後述する担持金属触媒として用いた際の反応活性が高いためであり、炭素質担体に比べ、担体が与える相互作用が大きいためと推測する。また金属酸化物は、本発明の複合体を、担持金属触媒として用いた場合、炭素質担体に比べ、安定性が高いためである。さらに、本発明の複合体をアンモニア合成触媒として用いた際は、炭素質担体は分解によりメタンを発生する可能性がある点で、金属酸化物が好ましい。

【0046】
本発明における担体の形態としては、特に限定されるものではなく、使用の目的や用途に応じて変更することができ、通常粉末状、その成型体、多孔体、固体焼結体、薄膜、固体単結晶などを用いることができる。特に、多孔質の成型体が好ましい。

【0047】
本発明において用いられる担体の粒子径は特に限定されない。また本発明において用いられる担体のBET比表面積は、特に限定はされないが、通常10m2/g以上、1000m2/g以下、好ましくは500m2/g以下である。

【0048】
金属酸化物や炭素質担体は、表面積、細孔構造の異なる粉体や成型体が多種類存在するため、例えば、細孔構造の発達した表面積の大きな担体を用いることで、担体の基本構造を維持しつつ、遷移金属や金属アミド化合物が担体上に高分散されるため、高い活性を得ることができる。

【0049】
また、金属アミド化合物の合成を行なう反応温度が、アンモニア合成を行なう反応温度と比較して、かなり低温であるため、金属アミド化合物に遷移金属を担持した場合、反応中に収縮や凝集が起こる可能性が高い。それにより、金属アミドの上に担持されている遷移金属が凝集してしまい、本発明の複合体を担持金属触媒として用いた場合に、その活性が低下する可能性がある。一方、本発明の複合体とすることで、金属アミド化合物自体の凝集を防ぐことが可能となり、長時間に亘って安定な触媒活性を得られると考えられる。

【0050】
<金属アミド化合物> 本発明において用いられる金属アミド化合物は、下記一般式(1)で表される金属アミド化合物である。 M(NH2x ・・・(1)

【0051】
前記Mは、金属アミド化合物を形成する金属原子を表わし、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びEuから選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、熱的安定性の点でCa、Sr、Baが好ましく、反応性や操作性の点でCaがより好ましい。前記xは、前記金属原子Mの価数を表わす。

【0052】
本発明における金属アミド化合物は、2次元エレクトライド化合物の一つと考えられ、前記担体上に担持することにより、金属アミド化合物も活性種として機能し、複合体に担持された遷移金属粒子と共同して活性種としての機能を増強しているものと推定する。

【0053】
前記金属アミド化合物の担持量は、特に限定はされないが、担体との合計質量に対して、通常1質量%以上であり、10質量%以上が好ましく、通常90質量%以下であり、40質量%以下が好ましい。また担体のBET比表面積1m2あたりの担持量は、特に限定されないが、0.01質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、通常1.0質量%以下であり、0.5質量%以下が好ましい。

【0054】
<遷移金属> 本発明において用いられる遷移金属は特に限定されるものではないが、通常Ti、Zr、Hf等の周期表第4族元素の金属;V、Nb等の周期表第5族元素の金属;Cr、Mo、W等の周期表第6族元素の金属;Mn、Tc、Re等の周期表第7族元素の金属;Fe、Ru、Os等の周期表第8族元素の金属;Co、Rh、Ir等の周期表第9族元素の金属;Ni、Pd、Pt等の周期表第10族元素の金属;等が用いられ、これらの金属は単独でも2種類以上の金属を組み合わせて用いることもできる。

【0055】
本発明の複合体を、後述する担持金属触媒に用いる際は、前記遷移金属は、通常、反応活性成分となるため、担持金属触媒を用いる反応に応じ、適宜金属種を選択することができ、特に限定はされないが、好ましくは、Mo、Mn、Fe、Ru、Rh、Ni、Pt、Pd、Rh等を用いることができる。

【0056】
本発明の複合体を、後述するアンモニア合成触媒に用いる際は、前記遷移金属は、通常窒素と水素を含有するガスを原料として、アンモニアに変換することができる金属を適宜選択することができ、特に限定はされないが、通常、Ru、Co、Feが用いられ、反応活性の高さからRuが好ましい。

【0057】
遷移金属の担持量は、特に限定されないが、複合体全体に対する質量比(遷移金属質量/(担体質量+金属アミド化合物質量+遷移金属質量))で、通常0.01質量%以上、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、通常30質量%以下、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。

【0058】
<その他成分> 本発明の複合体は、その使用目的に応じ、遷移金属、担体及び金属アミド化合物以外の成分を含んでいてもよい。

【0059】
<複合体の物性> 本発明の複合体のBET比表面積は、特に限定はされないが、通常10m2/g以上、好ましくは30m2/g以上、通常200m2/g以下である。また本発明の複合体の表面に担持された遷移金属の粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、CO吸着法で測定して、通常数nm~数十nmである。また前記遷移金属粒子は、通常、分散度が10~50%程度のナノ粒子として担持されている。

【0060】
<複合体の製造方法> 本発明の複合体は、まず、本発明で用いられる担体に、下記一般式(1)で表わされる金属アミド化合物を担持させ、金属アミド担持担体とする。そして、引き続き前記金属アミド担持担体に、遷移金属を担持させることにより得られる。 M(NH2x ・・・(1) 前記一般式(1)において、Mは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びEuから選ばれる少なくとも1種の金属原子を表わす。xはMの価数を表す。

【0061】
以下、本発明の複合体の製造方法について、具体的に述べる。本発明の複合体の製造方法は、本発明において用いられる担体と、前記一般式(1)における金属原子Mを含む金属原子源(以下、単に、金属原子源ということがある。)と、液体アンモニアを混合する工程(以下、混合工程という)と、前記金属原子源と液体アンモニアを反応させ、前記担体に前記金属アミド化合物を生成させ、金属アミド担持担体を得る工程(以下、反応工程という)を含むことを特徴とする。図1に、複合体の一例として担体へのCa(NH2)2の担持工程の概略を示す。

【0062】
前記金属原子Mを含む金属原子源とは、金属アミド化合物における金属原子Mの原料を言い、その原料となるものであれば特に限定はされないが、通常は、金属原子Mの単体(以下、金属M)が用いられる。具体的には金属Li、金属Na、金属K、金属Be、金属Mg、金属Ca、金属Sr、金属Ba及び金属Euから選ばれる少なくとも1種の金属である。またCaH2等の各金属の水素化物を用いることもできる。好ましくは反応性の面で金属Mが用いられる。また金属Mとしては金属Li、金属Na、金属K、金属Caが好ましく、操作性、反応性の面で金属Caがより好ましい。

【0063】
前記金属原子源の形態は特に限定はされないが、液体アンモニア中への溶解を容易にするため、粉末状又は粒子状が好ましく、その粒子径は特に限定されず、通常1mm以上、2mm以上が好ましく、通常5mm以下、3mm以下が好ましい。

【0064】
本発明において用いられる担体は、前記混合工程に供する前に、特に限定はされないが、担体表面に水の化学吸着によって生じた表面水酸基や、二酸化炭素などの不純物を除去する処理(以下、除去処理ということがある。)を行なうことができる。前記除去処理の方法は特に限定はされず、通常用いられる方法により行なうことができるが、具体的には高温で加熱する方法や、真空排気による方法、又はこれらの併用等の方法が用いられ、高温加熱と真空排気を併用した処理をすることが好ましい。高温加熱の条件は、除去処理の目的が達成されれば特に限定はされず、通常用いられる方法により行なうことができるが、通常500℃以上で加熱する。真空排気の方法及び条件も同様に除去処理の目的が達成されれば特に限定されず、通常用いられる方法により行なうことができる。

【0065】
前記混合工程及び反応工程を行なう反応容器は、特に限定はされないが、通常は耐圧容器を用いて行なう。前記混合工程と前記反応工程は個別に行なっても、一貫で行なってもよいが、通常両工程は一貫の工程として行なわれる。

【0066】
前記混合工程においては、前記担体、前記金属原子源及び液体アンモニアを反応容器中にて混合する。混合順序は特に限定されないが、通常は、前記担体及び前記金属原子源を封入した反応容器中にアンモニアガスを導入し、反応容器を冷却し、アンモニアを液化した後、混合する。混合に際し、用いた前記金属原子源は、通常、均一に液体アンモニアに溶解させる。混合時間は特に限定されず、通常、前記金属原子源が均一に溶解させる目的が達成できる範囲で適宜設定することができる。混合方法は特に限定されないが、攪拌等の通常用いられる方法により行なうことができ、攪拌による混合の場合、その手段も特に限定はされず、通常用いられる方法により行なうことができる。

【0067】
反応溶液中でアンモニアガスを冷却し、アンモニアを液化する場合、その冷却温度は、アンモニアガスが液化されれば特に限定はされないが、常圧下であれば通常、アンモニアの融点(-77℃)以上、-50℃以上が好ましく、通常沸点(-35℃)以下、-40℃以下が好ましい。アンモニアの添加量は、特に限定されないが、通常は前記金属原子源の使用量に対し、質量比で3倍以上、30倍以下のアンモニアを用いる。

【0068】
前記反応工程においては、前記金属原子源と液体アンモニアを反応させ、金属アミド化合物を生成させ、生成した金属アミド化合物を、前記担体に担持させる。金属アミド化合物は下記の反応式で示される反応により生成する。M+xNH3→ M(NH2x+(x/2)H2 (xは、金属Mの価数を表わす。)

【0069】
生成した金属アミド化合物M(NH2xは、混合工程にて混合した担体に担持され、金属アミド担持担体が得られる。反応温度は特に限定はされないが、通常-20℃以上、100℃以下であり、担体への金属アミド化合物の担持のされやすさ等に応じ、適宜設定することができる。反応時間も特に限定されず、反応温度と同様に適宜設定することができる。

【0070】
担体への担持の終了後は特に限定されないが、通常、反応容器の温度を常温に戻した後、反応容器内に残留するアンモニアガス及び水素ガスを反応容器から除去することで金属アミド化合物が担体上に担持された金属アミド担持担体が得られる。得られる金属アミド担持担体は、特に限定はされないが、通常は、用いた担体の形状が維持され、その表面が金属アミド化合物で被覆された状態で得られる。

【0071】
金属MがCaの場合を例に取り、より具体的に説明する。図1に、担体へのCa(NH2)2の担持工程の概略を示す。金属原子源として金属Caを用いると、下記の式の通り、カルシウムアミドが生成する。 Ca+2NH3 → Ca(NH22+H2

【0072】
金属Ca及び担体を封入したステンレス鋼製耐圧容器の外部を液体窒素—エタノールを用いて通常、-40~-50℃の範囲で冷却する。次に、アンモニアガスを容器内に導入し、液化アンモニアとし、液体アンモニアに金属Caを均一に溶解する。撹拌は、マグネチックスターラー等で通常、1時間程度行う。その後、耐圧容器の内部を-20℃~100℃に維持し、通常1~3時間程度撹拌反応させる。この操作によって、Ca(NH22が担体表面に固定された担体が得られる。

【0073】
前記金属アミド担持担体のBET比表面積は、特に限定されないが、通常10m2/g以上、好ましくは30m2/g以上、通常1000m2/g以下、好ましくは500m2/g以下である。

【0074】
本発明の複合体の製造方法は、前記金属アミド担持担体に、前記遷移金属の原料化合物(以下、遷移金属原料ということがある。)を担持させる工程(以下、原料担持工程)を含んでいてもよい。また前記遷移金属原料を熱分解し、前記遷移金属を析出させる工程を含んでいてもよい。前記原料担持工程と、前記遷移金属を析出させる工程とは個別、独立に行なっても、一貫して行なってもよいが、一貫で両工程を行なうことが好ましく、前記原料担持工程に引き続き、前記遷移金属を析出させる工程を行なうことがより好ましい。これらの工程は、前記混合工程と前記反応工程に引き続いて行なうことが好ましい。

【0075】
前記遷移金属の原料化合物は、本発明の複合体に用いる遷移金属を、当該複合体に担持させることができる化合物であれば、特に限定はされないが、通常、前記遷移金属の塩や前記遷移金属の有機金属錯体が用いられる。このうち、引き続いて遷移金属原料を熱分解することにより、前記遷移金属を析出させる工程を経て遷移金属を複合体に担持させることができることから、前記遷移金属原料は加熱により容易に熱分解する化合物が好ましい。その点で、前記遷移金属原料は、遷移金属塩としては遷移金属の塩酸塩、炭酸塩、有機酸塩等が好ましく、有機金属錯体としては、カルボニル錯体、トリフェニルホスフィン錯体、アセチルアセトナト錯体、メタロセン錯体等が挙げられる。

【0076】
遷移金属がRuの場合、例えば、トリルテニウムドデカカルボニル[Ru3(CO)12]、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)[RuCl2(PPh3)4]、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)[RuCl2(PPh3)3]、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)[Ru(acac)3]、ルテノセン[Ru(C55)]、塩化ルテニウム[RuCl3]等が挙げられる。

【0077】
遷移金属がFeの場合、例えばペンタカルボニル鉄[Fe(CO)5]、テトラカルボニル鉄ヨウ化物[Fe(CO)42)]、塩化鉄[FeCl3]、フェロセン[Fe(C55)2]、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)[Fe(acac)3]、ドデカカルボニル三鉄[Fe3(CO)12]等が挙げられる。

【0078】
遷移金属がCoの場合、例えば塩化コバルト[CoCl3]、トリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)[Co(acac)3]、コバルト(II)アセチルアセトナト[Co(acac)2]、コバルトオクタカルボニル[Co2(CO)8]、コバルトセン[Co(C55)2]等が挙げられる。

【0079】
前記遷移金属原料のうち、熱分解が容易で、取り扱いも容易な点で遷移金属のカルボニル錯体がより好ましい。前記金属アミド化合物は、アルコールなどの溶媒に浸漬すると表面が変化する可能性があり、溶媒を用いず、蒸着で遷移金属を担持することができるカルボニル化合物は、表面構造を維持したまま金属源を担持できるためである。上記以外のカルボニル化合物としては、トリオスミウムドデカカルボニル[Os3(CO)12]、モリブデンヘキサカルボニル[Mo(CO)6]などが例示できる。

【0080】
前記原料担持工程において、前記遷移金属原料を前記金属アミド担持担体に担持する方法は、特に限定されないが、含浸法、物理的混合法、蒸着などの気相堆積法等の方法を用いることができる。

【0081】
前記原料担持工程においては、まず通常、前記金属アミド担持担体と、前記遷移金属原料とを混合する。具体的な混合の方法としては、特に限定はされないが、含浸法や物理的混合法が用いられ、金属アミド担持担体と遷移金属原料が双方とも固体である場合は、物理的混合法により混合する方法を取ることができる。また担体として、固体焼結体、薄膜、固体単結晶などを用いる場合は、粉末や多孔体と同様に含浸法で混合させる方法や、前記遷移金属原料をその表面にCVD法(化学蒸着法)、スパッタ法等の気相堆積法で混合させることができる。

【0082】
前記物理的混合法としては、通常行なわれる方法により混合することができ、いわゆる固相混合をすることができ、例えば、乳鉢やボールミル等を用いて混合することができる。前記含浸法での混合方法としては、具体的には、例えば、前記金属アミド担持担体を、前記遷移金属原料を溶媒に溶解させた溶液中に分散し、撹拌する方法が挙げられる。前記遷移金属原料を溶解させる溶媒は、均一に遷移金属原料を溶解することができれば特に限定はされないが、通常、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、THF、エタノール、液体アンモニア、ジメチルホルムアミド等の溶媒が挙げられる。

【0083】
前記原料担持工程における遷移金属原料と金属アミド担持担体の比率は、特に限定はされないが、遷移金属原料は、金属アミド担持担体に対して通常、0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、通常40質量%以下、好ましくは30質量%、より好ましくは20質量%以下である。

【0084】
遷移金属原料を担持した、金属アミド担持担体は、熱分解により、前記遷移金属を析出させることができる。熱分解の方法は特に限定されず、通常行なわれる方法を用いることができるが、通常は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス気流中、又は真空下で熱分解を行なう。遷移金属原料を担持した、金属アミド担持担体は、加熱により、まず溶媒を蒸発させ乾固する。そして、引き続き加熱することにより、遷移金属原料が還元され、遷移金属が析出する。これにより、本発明の複合体が得られる。熱分解時の温度は特に限定はされないが、通常50℃以上、200℃以下である。また熱分解の時間は、特に限定はされないが、通常30分以上、5時間以下である。

【0085】
<担持金属触媒/アンモニア合成触媒> 本発明の複合体を含む担持金属触媒は、各種化学反応用の触媒として使用することができる。具体的には、本発明の複合体そのものを担持金属触媒として使用することができ、また複合体を反応活性成分として含み、複合体以外の成分を含む担持金属触媒として使用することもできる。

【0086】
前記担持金属触媒のBET比表面積は、特に限定されないが、通常10m2/g以上、好ましくは30m2/g以上、通常1000m2/g以下、好ましくは500m2/g以下である。前記BET比表面積は、アンモニア合成触媒として用いる場合でも同様である。

【0087】
本発明の複合体を含む担持金属触媒は、通常の成型技術を用い成型体として使用することができる。具体的には、粒状、球状、タブレット、リング、マカロニ、四葉、サイコロ、ハニカム状などの形状が挙げられる。また、本発明の複合体を、通常用いられる支持体にコーティングして担持金属触媒として使用することもできる。

【0088】
本発明の複合体を含む担持金属触媒は、種々の反応における触媒として用いることができる。具体的には、オレフィン、アセチレン類、芳香環、アルデヒド基、α、β不飽和アルデヒド等の不飽和結合の水素化、炭化水素の水素化分解、水素移動反応等に使用できる。この場合に担持される遷移金属としては特に限定されないが、通常Ni、Pd、Pt、Rh等が用いられる。またアンモニア分解反応用の触媒としても用いることができる。この場合に担持される遷移金属としては特に限定されないが、通常、Ru、Fe、Co、Ni、Mo、Mn、Rh等が挙げられ、Ruが好ましい。

【0089】
本発明の複合体を含む担持金属触媒は、アンモニア合成反応に好適である。すなわち、本発明の複合体は、複合体そのものをアンモニア合成触媒として使用することができ、また複合体を反応活性成分として含み、複合体以外の成分を含むアンモニア合成触媒として使用することもできる。具体的には、窒素と水素を含むガスを原料として、本発明の複合体と接触させることにより、アンモニアを製造することができる。

【0090】
本発明の複合体は、複合体中に担持されている金属アミド化合物も活性種として機能し、複合体に担持された遷移金属粒子と共同して活性種としての機能を増強しているものと推定する。また担体が活性成分を増やす働きをすることによって、さらに活性種としての機能を増強しているものと推定され、担持金属触媒として好適である。具体的に本発明の複合体をアンモニア合成触媒として用いた場合、従来の2次元エレクトライド化合物を担体として用いた触媒に比べ高い触媒活性を示し、更に安定した触媒活性が長時間得られると考えられ、アンモニア合成触媒として好適である。

【0091】
また、本発明の複合体を含む担持金属触媒は、アンモニア分解反応に使用することができる。アンモニア分解反応は、アンモニアを窒素と水素に分解する反応であり、反応に際しては通常用いられる方法を適用して反応を行なうことができる。

【0092】
<アンモニアの合成> 本発明のアンモニア合成方法は、窒素を含むガスと水素を含むガスを、本発明の複合体を含むアンモニア合成触媒(以下、単に本発明のアンモニア合成触媒という)に接触させ、アンモニアを合成することに特徴を有する。反応形態は、上記の特徴を満たす限りにおいて、特に限定はされず、通常用いられる方法を採用することができる。以下、反応の代表的一形態として、従来のハーバー・ボッシュ法と同様の方法、すなわち窒素と水素の混合気体を加熱加圧下で直接反応させ、N2+3H2→2NH3の反応によって生成したアンモニアを、冷却又は水で吸収して分離する方法を例として説明する。

【0093】
窒素ガス及び水素ガスは、反応器内に設置した本発明のアンモニア合成触媒に接触するように供給する。アンモニア合成触媒は、特に限定されないが、水素ガス又は水素と窒素の混合ガスで還元処理を行い、アンモニア合成触媒表面に付着している酸化物等を還元除去する前処理をすることが好ましい。アンモニア合成触媒が含む本発明の複合体は、大気中では水の吸着を優先し、また、過剰な水分下では化合物自体の分解が進行してしまう場合があるためである。

【0094】
同様にアンモニア合成反応はできるだけ水分を含有しない雰囲気、すなわち、水分含有量が少ない方が好ましいため、特に限定はされないが、窒素ガス、及び水素ガス中の水分は少ないほうが好ましく、通常100ppm以下、50ppm以下であるものが好ましい。

【0095】
次に、原料の窒素と水素の混合ガス雰囲気下で、本発明のアンモニア合成触媒を加熱することによって、アンモニアを合成する。窒素と水素のモル比は特に限定されないが、体積比で、通常、窒素/水素=1/10以上、好ましくは1/5以上、通常、1/1以下で行うことが好ましい。反応温度は特に限定されないが、通常、100℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上、通常、600℃以下、好ましくは500℃以下で行なう。通常、反応温度が低いほど平衡はアンモニア生成に有利であるが、前記の温度範囲は、十分なアンモニア生成速度を得ると同時に平衡をアンモニア生成に有利にする温度範囲であるため好ましい。

【0096】
窒素と水素の混合ガスの反応圧力は特に限定されないが、通常、10kPa以上、好ましくは100kPa以上であり、通常、20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは1MPa以下である。アンモニア合成反応は、加圧条件下で反応する方が反応効率が高いため、実用的な利用を考えると、反応圧力は高いほうが好ましい。一方反応圧力が高い場合は、専用の高圧反応設備が必要となる。本発明のアンモニア合成触媒は、低圧下でも十分にアンモニア合成が可能である点で有利である。反応に供した窒素及び水素ガスのうち、未反応の窒素及び水素ガスは生成アンモニアを除去後、反応器にリサイクル循環して使用することができる。

【0097】
反応形式は、特に限定されないが、バッチ式反応形式、閉鎖循環系反応形式、流通系反応形式のいずれでもかまわないが、そのうち実用的な観点からは流通系反応形式が最も好ましい。アンモニア合成反応は発熱反応のため、反応熱を除去しながら反応させると有利であり、工業的には収率をあげるため、通常行なう方法を採用することができる。例えば、流通系反応装置を用いる場合、触媒が充填された反応器を直列に複数個連結し、各反応器の出口にインタークーラーを設置して除熱することで、各反応器の入り口温度を下げ、高いアンモニア収率を得る方法や、触媒層複数個を内部に有する反応器を使用し、各反応層の出口温度を精密制御する方法を利用してもよい。

【0098】
本発明のアンモニアの合成方法においては、従来行われている方法と同様に、アンモニア合成触媒を充填した一種類の反応器、又は複数の反応器を用いて、アンモニア合成を行うことができる。使用する触媒は本発明のアンモニア合成触媒単独、又は本発明のアンモニア合成触媒から選ばれる二種類以上の触媒の組み合わせ、若しくは本発明のアンモニア合成触媒と公知触媒との組み合わせ、の何れも使用することができる。また、複数反応器を連結させる方法や、同一反応器内に複数の反応層を有する反応器の何れの方法も使用することができる。

【0099】
本発明において、触媒を組み合わせて使用する場合、本発明のアンモニア合成触媒は低温での活性が高いことから、最後の反応器で使用することが好ましい。すなわち、最終的な反応を平衡的に有利な低温で行うことにより高いアンモニア収率を得ることができる。

【0100】
工業的なアンモニア合成の平衡反応条件下において、平衡制約のため反応器の出口の反応ガス中のアンモニア濃度は20体積%以下であるので、反応ガス中の生成アンモニアを冷却除去後、未反応原料は反応ガスや未反応原料中に含まれる不純物の一部を膜分離などで分離して系外にパージした後、原料としてリサイクル使用される。

【0101】
アンモニア合成法の水素原料は、石炭や石油又は天然ガスを原料に用いて、水蒸気改質、部分酸化改質法や自己熱改質法酸素やシフト反応の組み合わせで製造する方法、バイオマスを原料に用いる方法、水の電気分解による方法、光触媒による水分解の方法など各種の方法で製造される水素原料のいずれの原料も使用することができる。

【0102】
アンモニア合成法の原料として天然ガス原料を用いる場合、水素ガスと窒素ガスは天然ガスの水蒸気改質工程及び部分酸化改質工程、COのシフト反応工程、CO2除去工程、引き続くCOメタネーションによるCO除去工程を経て製造される。前記水蒸気改質反応は吸熱であるためオートサーマル反応で発生する反応熱を利用しており、窒素ガス原料として空気を用いる場合のH/N比は、1.7~2.5モル比程度である。水蒸気改質の未反応ガスは水素ガスを含むため改質工程にリサイクルガスとして循環使用することが好ましく、フレッシュガスとリサイクルガスの比をコントロールすることによって効率的に反応を行う方法が開発されており、本発明においても、同様に前述の方法を使用することができる。

【0103】
一方、高いH/N比の原料を得る方法として、酸素富化した空気を用いる方法が開発されており、このような原料を用いるとリサイクルガス量が減るのでエネルギー的に好ましい方法である。更に、空気を圧縮分離後、酸素はオートサーマル法による水素製造に使用し、窒素を反応ガスやプロセス窒素に使用する方法は、エネルギー節約の観点から好ましい方法であり、本発明における原料製造法としていずれも使用できる。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
(BET比表面積分析)
以下の実施例及び比較例のBET比表面積の測定は、対象物の表面に液体窒素温度で窒素ガスを吸着させ、単分子層吸着した窒素の量を測定した。分析条件は以下の通りである。
測定条件
装置:マイクロトラックベル社製 BELSORP-mini II
吸着ガス:窒素(99.99995%)
吸着温度:液体窒素温度(-196℃)
【実施例】
【0105】
(分散度測定) CO分子を対象物表面に吸着させ、吸着したCO分子量から表面に露出している金属原子数を見積もり、全体の金属原子量で除することで金属分散度は求められる。具体的には下記式にて求められる。分析条件は以下の通りである。 (金属分散度)=(表面に露出している金属原子数)/(担持されている全ての金属原子数)×100(%) (CO/Ru = 1として金属原子数を見積もった) 測定条件 装置:マイクロトラックベル社製 BELCAT-A 吸着ガス:CO-He混合ガス(CO : 9.5%) 吸着温度:50℃ キャリアガス:He COの検出:TCD
【実施例】
【0106】
(活性化エネルギー測定) 反応の出発物質の基底状態から遷移状態に励起するのに必要なエネルギーをいう。このエネルギーが小さいほど、その反応が容易であることを示す。反応速度の温度依存性を測定し、温度の逆数に対し、反応速度の自然体数をプロットした時の傾きから計算して求められる。
【実施例】
【0107】
本発明の複合体のアンモニア合成触媒としての評価は、本発明のアンモニア合成触媒を用いて生成したNH3の生成量を、ガスクロマトグラフ又は、硫酸水溶液中に生成したNH3を溶解させ、その溶液をイオンクロマトグラフにより定量してアンモニア生成速度を求め、その生成速度によりアンモニア合成活性の評価を行った。
【実施例】
【0108】
(ガスクロマトグラフ(GC)分析) 以下の実施例及び比較例のアンモニア生成量は、ガスクロマトグラフ(GC)分析により、絶対検量線法を用いて求めた。分析条件は以下の通りである。 測定条件 装置:島津製作所社製 GC-14A カラム:ジーエルサイエンス社製 Porapak Q4 1000mm キャリアガス:Heガス カラム温度:80℃
【実施例】
【0109】
(イオンクロマトグラフ分析) 以下の実施例及び比較例のアンモニア生成量は、生成したアンモニアガスを0.05M 硫酸水溶液に溶解させ、その溶解液をイオンクロマトグラフ分析により、絶対検量線法を用いて求めた。分析条件は以下の通りである。 測定条件 装置:島津製作所社製 HPLCProminence カラム:島津製作所社製 Shim-pack IC-C4 長さ:150mm、内径4.6mm 溶離液:シュウ酸(3mM)、18-クラウン-6-エーテル(2.0mM)混合水溶液 カラム温度:40℃ 流速:1.0mL/分
【実施例】
【0110】
(実施例1) <Ruを担持したCa(NH2)2/ZrO2の合成> 担体として、比表面積100m2/g(SZ31164,Saint-Gobain社製NorPro)のZrO2の粉末0.7gを、石英ガラス容器中、500℃で加熱下、5時間真空排気し、脱水処理をした。Ar雰囲気のグローブボックス中で、30mlのステンレス鋼製耐圧容器に、脱水したZrO2粉末と、金属Ca粉末0.243gを入れた。金属Caの添加量は、生成するCa(NH2)2がZrO2との合計量に対して40質量%となるように設定した。
【実施例】
【0111】
グローブボックスから密封したステンレス鋼製耐圧容器をグローブボックスから取り出した後、-50℃程度に冷却しながら耐圧容器内にアンモニアガスを導入し、液体アンモニアを充填した。マグネチックスターラーで、耐圧容器内の液体を1時間攪拌し、引き続き耐圧容器をオイルバスに漬け、オイルバス温度100℃で2時間加熱して反応させた。その後、耐圧容器を常温まで冷却し、容器内に残留するアンモニアガスを耐圧容器から除去した。耐圧容器内に生成した、カルシウムアミドが担持されたZrO2(以下、Ca(NH2)2/ZrO2と表わす。)の粉末を、Ar雰囲気のグローブボックス中で回収した。
【実施例】
【0112】
得られたCa(NH22/ZrO2の粉末は、約1gで、窒素吸着法(NOVA 4200e, Quantachrome社製)で測定したBET比表面積は、60m2/gであった。
【実施例】
【0113】
次に、Ca(NH2)2/ZrO2との合計量に対してRu担持量が5質量%となるように、Ca(NH2)2/ZrO2粉末と、Ru3(CO)12粉末とを、めのう乳鉢を用いて物理的混合法で混合し、この混合粉末を真空の石英ガラス管に封入した。混合粉末を封入した石英ガラス管を、250℃に加熱し、15時間反応させ、Ca(NH2)2/ZrO2に金属Ruを担持した複合体(以下、Ru/Ca(NH2)2/ZrO2と表わすことがある。)の粉体を得た。
【実施例】
【0114】
図2に、得られたこの複合体の粉体のTEM像を示す。ZrO2の表面は平滑であるが、得られた複合体の粉体はCa(NH2)2が表面に被覆された状態であることが確認できる。窒素吸着法で測定したこの複合体のBET表面積は、64m2/gであった。CO吸着法で測定したRu分散度は27.6%、CO吸着法で測定したRu平均粒子径は4.8nmであった。
【実施例】
【0115】
<アンモニア合成反応> 窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)を反応させてアンモニアガス(NH3)を生成する反応を行った。上記で得られた複合体の粉末0.1gを、アンモニア合成触媒としてガラス管に詰め、固定床流通式反応装置で反応を行った。ガスの流量は、N2:15mL/min,H2:45mL/min,計60mL/minに設定し、圧力:大気圧、反応温度:340℃で反応を行った。
【実施例】
【0116】
流通系の反応器から出てきたガスを0.005M硫酸水溶液中にバブリングさせ、生成したアンモニアを溶液中に溶解させ、生じたアンモニウムイオンをイオンクロマトグラフにより定量した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、図3に示すとおり、7383μmol/g・hであった。TOFは16.7×10-3/sであった。また340℃から250℃における活性化エネルギーは、65kJ/molであった。
【実施例】
【0117】
(実施例2) 実施例1におけるCa(NH2)2担持量を20質量%に設定し、金属Caの添加量を0.118gとした以外は、実施例1と同様に複合体Ru/Ca(NH2)2/ZrO2を合成した。得られた金属アミド担持担体Ca(NH22/ZrO2の比表面積は、105m2/gであった。また得られた複合体Ru/Ca(NH22/ZrO2粉末の比表面積は、81m2/gであった。得られた複合体をアンモニア合成触媒として用い、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、3559μmol/g・hであった。
【実施例】
【0118】
(実施例3) 実施例1のCa(NH2)2担持量を30質量%に設定し、金属Caの添加量を0.177gとした以外は、実施例1と同様にRu/Ca(NH2)2/ZrO2を合成した。得られたCa(NH22/ZrO2の比表面積は、92.2m2/gであった。また得られた複合体Ru/Ca(NH22/ZrO2粉末の比表面積は、72m2/gであった。得られた複合体をアンモニア合成触媒として用い、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、4229μmol/g・hであった。
【実施例】
【0119】
(実施例4) 実施例1のCa(NH2)2担持量を50質量%に設定し、金属Caの添加量を0.295gとした以外は、実施例1と同様に複合体Ru/Ca(NH2)2/ZrO2を合成した。得られたCa(NH22/ZrO2の比表面積は55m2/gであった。また得られた複合体Ru/Ca(NH22/ZrO2の比表面積は42m2/gであった。得られた複合体をアンモニア合成触媒として用い、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、5082μmol/g・hであった。
【実施例】
【0120】
(実施例5) 実施例1のRu担持量を2質量%に変更した以外は、実施例1と同様に複合体Ru/Ca(NH2)2/ZrO2を合成した。得られた複合体をアンモニア合成触媒として用い、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、2930μmol/g・hであった。
【実施例】
【0121】
(実施例6) 実施例1のRu担持量を8質量%に変更した以外は、実施例1と同様に複合体Ru/Ca(NH2)2/ZrO2を合成した。得られた複合体をアンモニア合成触媒として用い、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、7420μmol/g・hであった。
【実施例】
【0122】
【表1】
JP2016088896A1_000003t.gif
【実施例】
【0123】
(実施例7)
担体としてCeO2(比表面積81.4m2/g、JRC-CEO-3)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウムアミドが担持されたCeO2(以下、Ca(NH2)2/CeO2と表わす。)を得た。このCa(NH2)2/CeO2の比表面積は109m2/gであった。
【実施例】
【0124】
Ca(NH22/CeO2に、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持し、複合体(以下、Ru/Ca(NH2)2/CeO2と表わす)の粉体を得た。Ru/Ca(NH22/CeO2の比表面積は、76m2/gであった。またRu/Ca(NH22/CeO2のRu分散度は20.5%、Ru平均粒子径は18.3nmであった。
【実施例】
【0125】
アンモニア合成触媒として用いる複合体を、Ru/Ca(NH2)2/CeO2とした以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、5255μmol/g・hであった。TOFは15.2×10-3-1であった。また340℃から250℃における活性化エネルギーは、59kJ/molであった。
【実施例】
【0126】
【表2】
JP2016088896A1_000004t.gif
【実施例】
【0127】
(実施例8) 担体としてTiO2(比表面積50m2/g、Degussa社製 P-25)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウムアミドが担持されたTiO2(以下、Ca(NH22/TiO2と表わす。)を得た。このCa(NH22/TiO2の比表面積は105m2/gであった。Ca(NH22/TiO2に、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持し、複合体(以下、Ru/Ca(NH2)2/TiO2と表わす)の粉体を得た。Ru/Ca(NH22/TiO2の比表面積は71m2/gであった。またこの複合体のRu分散度は21.6%、Ru平均粒子径は6.2nmであった。
【実施例】
【0128】
アンモニア合成触媒として用いる複合体を、Ru/Ca(NH2)2/TiO2とした以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、5557μmol/g・hであった。TOFは14.4×10-3-1)であった。また340℃から250℃における活性化エネルギーは、61kJ/molであった。
【実施例】
【0129】
(実施例9) 担体としてMgO(比表面積30m2/g、宇部興産社製500A)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウムアミドが担持されたMgO(以下、Ca(NH22/MgOと表わす。)を得た。Ca(NH22/MgOの比表面積は、91m2/gであった。Ca(NH22/MgOに、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持し、複合体(以下、Ru/Ca(NH2)2/MgOと表わす)の粉体を得た。Ru/Ca(NH22/MgOの比表面積は44m2/gであった。またこの複合体のRu分散度は28.6%、Ru平均粒子径は4.6nmであった。
【実施例】
【0130】
アンモニア合成触媒として用いる複合体を、Ru/Ca(NH2)2/MgOとした以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、6904μmol/g・hであった。TOFは13.8×10-3-1であった。また340℃から250℃における活性化エネルギーは、67kJ/molであった。
【実施例】
【0131】
(実施例10) 担体としてTa25(比表面積20m2/g)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウムアミドが担持されたTa25(以下、Ca(NH2)2/Ta25と表わす。)を得た。Ca(NH22/Ta25に、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持し、複合体(以下、Ru/Ca(NH2)2/Ta25と表わす)の粉体を得た。Ru/Ca(NH22/Ta25の比表面積は、18m2/gであった。
【実施例】
【0132】
アンモニア合成触媒として用いる複合体を、Ru/Ca(NH2)2/Ta25とした以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、6370μmolg-1-1であった。
【実施例】
【0133】
(実施例11) 担体としてNb25(比表面積50m2/g)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウムアミドが担持されたNb25(以下、Ca(NH2)2/Nb25と表わす。)を得た。Ca(NH22/Nb25に、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持し、複合体(以下、Ru/Ca(NH2)2/Nb25と表わす)の粉体を得た。Ru/Ca(NH22/Nb25の比表面積は、60m2/gであった。
【実施例】
【0134】
アンモニア合成触媒として用いる複合体を、Ru/Ca(NH2)2/Nb25とした以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、4995μmolg-1-1であった。
【実施例】
【0135】
(実施例12) 担体としてAl23(比表面積80 m2/g、Alfa Aesar社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウムアミドが担持されたAl23(以下、Ca(NH22/Al23と表わす。)を得た。Ca(NH22/Al23の比表面積は50m2/gであった。Ca(NH22/Al23に、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持し、複合体(以下、Ru/Ca(NH22/Al23と表わす)の粉体を得た。Ru/Ca(NH22/Al23の比表面積は35m2/gであった。
【実施例】
【0136】
アンモニア合成触媒として用いる複合体を、Ru/Ca(NH22/Al23とした以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、5094μmolg-1-1であった。
【実施例】
【0137】
(実施例13) 担体としてグラファイト(HSAG)(比表面積300m2/g)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウムアミドが担持されたグラファイト(以下、Ca(NH2)2/Graと表わす。)を得た。Ca(NH22/Graに、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持し、複合体(以下、Ru/Ca(NH2)2/Graと表わす)の粉体を得た。Ru/Ca(NH22/Graの比表面積は、250m2/gであった。
【実施例】
【0138】
アンモニア合成触媒として用いる複合体を、Ru/Ca(NH2)2/Graとした以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、2909μmolg-1-1であった。
【実施例】
【0139】
(比較例1) 担体のZrO2に、Ca(NH22を担持しない以外は、実施例1と同様の方法により、金属Ruを担持したZrO2(以下、Ru/ZrO2と表わす。)の粉体を得た。
【実施例】
【0140】
アンモニア合成触媒としてRu/ZrO2を用いた以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、図3に示すとおり、506μmol/g・hであった。
【実施例】
【0141】
(比較例2) 実施例1におけるステンレス鋼製耐圧容器に金属Ca粉末0.236gを入れ、実施例1と同様の操作を行ない、Ca(NH22の粉末を回収した。このCa(NH22に、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持したCa(NH22(以下、Ru/Ca(NH22と表わす。)の粉体を得た。
【実施例】
【0142】
アンモニア合成触媒としてRu/Ca(NH22を用いた以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、図3に示すとおり、2481μmol/g・hであった。Ca(NH2)2で示される金属アミド粉末の比表面積は、127m2/gであった。
【実施例】
【0143】
(比較例3) 担体としてSnO2(比表面積46 m2/g、和光純薬社製)を担体に用いた以外は、実施例1と同様の方法により、カルシウムアミドが担持されたSnO2(以下、Ca(NH22/SnO2と表わす。)を得た。Ca(NH22/SnO2で示される金属アミド担持粉末の比表面積は85m2/gであった。Ca(NH22/SnO2に、実施例1と同様の方法により金属Ruを担持し、複合体(以下、Ru/Ca(NH22/SnO2と表わす。)の粉体を得た。Ru/Ca(NH22/SnO2の比表面積は65m2/gであった。
【実施例】
【0144】
アンモニア合成触媒として用いる複合体を、Ru/Ca(NH22/SnO2とした以外は、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、図5に示すとおり、182μmol/g・hであった。
【実施例】
【0145】
(比較例4)
<マイエナイト型化合物粉末の合成>
CaCO3及びAl23の各粉末をCaとAlの質量比が11:14となるように混合し、この混合物30gをアルミナ坩堝中にて1300℃加熱し、6時間維持した。得られた粉末をシリカガラス管内に挿入し1×10-4Paの真空中で1100℃、15時間加熱し、原料マイエナイト型化合物の粉末を得た。この段階でのマイエナイト型化合物粉末の比表面積は1m2/g以下であった。
【実施例】
【0146】
<還元処理による電子注入> 原料マイエナイト型化合物の粉末3gを、シリカガラス管内に金属Ca粉末0.18gとともに挿入し、700℃で15時間加熱することにより内部を金属Ca蒸気雰囲気として粉体と反応させた。真空に封管された試料を取り出し、乳鉢ですりつぶした後再びシリカガラス管内に詰めて真空に引きながら封管した。これを1100℃、2時間加熱することで伝導電子濃度が2×1021cm-3、比表面積は1m3-1の導電性マイエナイト型化合物粉末C12A7:e-を得た。C12A7:e-を担体とした以外は実施例1と同じ条件でRuを2質量%担持したRu/C12A7:e-で示される担持金属触媒粉末を作製した。CO吸着法で測定したRu分散度は4.7%、CO吸着法で測定したRu平均粒子径は28.7nmであった。
【実施例】
【0147】
この担持金属触媒粉末を用いて、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、図5に示すとおり、2221μmol/g・hであった。TOFは73.7×10-3-1であった。340℃から250℃における活性化エネルギーは、91kJ/molであった。
【実施例】
【0148】
(比較例5) Ca32を担体として用いた以外は実施例1と同じ条件でRuを2質量%担持したRu/Ca32で示される担持金属触媒粉末を作製した。CO吸着法で測定したRu分散度は3.0%、CO吸着法で測定したRu平均粒子径は44nmであった。
【実施例】
【0149】
この担持金属触媒粉末を用いて、実施例1と同様にアンモニア合成反応を実施した。40℃におけるアンモニアの生成速度は、図5に示すとおり、3164μmol/g・hであった。TOFは167×10-3-1であった。340℃から250℃における活性化エネルギーは、66kJ/molであった。
【実施例】
【0150】
(比較例6) Ru-Cs/MgO(Ru担持量:6質量%)を担持金属触媒粉末として用いた以外は実施例1と同じ条件でアンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、図5に示すとおり、4303μmol/g・hであった。
【実施例】
【0151】
[アンモニア生成速度の比較] 図3に、Ca(NH2)2担持量の異なるRu/Ca(NH2)2/ZrO2触媒によるアンモニア合成の結果を示す。Ca(NH2)2担持量の増加とともに触媒活性は大きく向上し、40質量%担持したときに最も高い活性を示すことが分かった。
【実施例】
【0152】
実施例1の場合、担体であるZrO2のBET比表面積が100m2/gであり、金属アミドの担持量は、担体との合計量に対して40質量%であるから、担体の表面積1m2/gをCa(NH2)2が被覆する量は、0.4質量%となる。表面積1m2/gの担体をCa(NH2)2が被覆するのに必要な最小量は、0.07質量%であり、各実施例での担持量はその量よりも遙かに多い。担体の表面積1m2/gあたり一定以上の量であることで、担体の表面を金属アミドが十分に覆うことができ、触媒活性は向上するものと推定される。一方で、担持量が増加し過ぎると、担体を使用する効果が得られない場合が示唆される。
【実施例】
【0153】
図4に、Ca(NH2)2/ZrO2とRuとの合計量に対するRuの担持量を2質量%、5質量%、8質量%とした場合の、アンモニア合成の結果を示す。図4に記載の通り、5質量%の場合、2質量%の場合よりも相当に高い活性を示すが、8質量%の場合、5質量%と大きな相違はなく、5質量%の担持量で十分な活性を示すことが分かった。
【実施例】
【0154】
図5に、担体の違いによるアンモニア生成速度の比較を示す。アンモニア生成速度からみて、C12A7:e-やCa32にRuを担持した触媒と比較し、ZrO2、CeO2、TiO2、MgO等の金属酸化物担体に、Ca(NH2)2と、Ruを担持した本発明の複合体は、担体、金属アミド化合物、遷移金属Ruの粒子の相乗作用によって、非常に優れた触媒性能を示すことが分かった。
【実施例】
【0155】
一方、比較例2のように、担体に担持していないCa(NH2)2もRuを担持すると、Ru/C12A7:e-やRu/Ca32に匹敵する触媒性能を示した。しかしながら、比較例3のように、SnO2上にCa(NH2)2とRuを担持した触媒は、比較例2の担体に担持していないRu/Ca(NH2)2よりも触媒活性が低くなることが分かった。これより、金属酸化物を担体として用いる場合、担体表面が酸性の金属酸化物よりも、塩基性又は中性の金属酸化物が担体として好適であることが明らかである。
【実施例】
【0156】
また、担体としてグラファイトを用いたものも、高いアンモニア生成速度を示した。通常、グラファイト等の炭素質担体に金属Ruを担持した担持金属触媒を用いて同様の反応を行なっても、アンモニアはほとんど生成せず、触媒活性を示さない。これに対し、本発明の複合体とすることで、炭素質担体を用いてもアンモニア製造に適用することができる。本発明の触媒は、従来、高活性といわれていた比較例6のRu-Cs/MgOよりも高いアンモニア合成活性を示した。
【実施例】
【0157】
反応温度340℃で長時間継続してアンモニア合成反応を行い、触媒の安定性を評価した。図6に、実施例1のRu/Ca(NH2)2/ZrO2で示されるアミド強化担持金属触媒と比較例2 のRu/Ca(NH2)2を触媒として用いて、アンモニア合成を行った結果を示す。担体に担持していない比較例2の Ru/Ca(NH2)2で示される触媒は、反応時間とともに触媒活性が低下していくのに対して、ZrO2に担持した実施例1のアミド強化担持金属触媒は、24時間安定してアンモニアを生成し、ほとんど反応活性が低下しないことが分かった。
【実施例】
【0158】
さらに、本発明のアミド強化担持金属触媒は、本発明者らが先に開発した1018cm-3以上の伝導電子を含むマイエナイト型化合物を担体とする担持金属触媒であるRu/C12A7:e-やRu/Ca2Nを凌駕するアンモニア合成活性を示す。また、高活性を示すとされている、Ru-Cs/MgO触媒よりも高い活性を示す。
【実施例】
【0159】
表2に各触媒の物性評価とアンモニア合成活性の比較した結果を示す。Ru/Ca(NH2)2/ZrO2で示される実施例1のアミド強化担持金属触媒は、比較例4の従来のRu/C12A7:e-や比較例5のRu/Ca32で示される担持金属触媒と比較して比表面積が大きく、担持されたRuの平均粒子径が小さいことが分かる。したがって、Ru担持量を多くしても分散性良くRuが担持され、高い触媒活性を示していることが分かった。さらに、各実施例のアンモニア合成の活性化エネルギーは、比較例5のRu/Ca32で示される担持金属触媒と同等であり、CaアミドがCa窒化物とほぼ同じメカニズムでアンモニアを合成していることが明らかとなった。
【実施例】
【0160】
従来のアンモニア合成触媒では、強固な窒素分子の結合を切断する過程が律速段階とされてきた。しかし、本発明で用いられる金属アミド化合物を用いることで、担体からルテニウムへの強い電子供与が生ずるため、窒素—窒素三重結合を効率よく切断でき、その結果、高いアンモニア合成への活性を得ることが可能である。FeやCoを用いた場合も金属種に関係なく同様の効果が期待できる。
【実施例】
【0161】
(実施例14) (アンモニア分解反応) 実施例1にて製造した複合体、Ru/Ca(NH2)2/ZrO2を担持金属触媒として用いて、アンモニアを分解し、窒素と水素を製造する反応を行なった。上記で得られた複合体の粉末0.1gを、アンモニア分解触媒としてガラス管に詰め、固定床流通式反応装置で反応を行った。ガスの流量は、NH3:5mL/minに設定し、圧力:0.1MPaで反応を行った。結果を図7に示した。流通系の反応器から出てきたガスをガスクロマトグラフにより定量した。400℃におけるアンモニアの分解効率は93%であった。
【実施例】
【0162】
(比較例7) 比較例2にて製造したRu/Ca(NH2)2を触媒として用いて、実施例14と同様の方法により、アンモニア分解反応を行なった。結果を図7に示す。400℃におけるアンモニアの分解効率は38%であった。
【実施例】
【0163】
(比較例8) Al23(比表面積80 m2/g、Alfa Aesar社製)を500℃で6時間真空条件下で加熱し、表面に吸着している水などを除去した。その後、グローブボックス中Ar雰囲気下で脱水処理したAl23を、Ru3(CO)12を溶解させたTHF溶液(60mL)中に入れ、4時間攪拌した。このときRuの担持量が2質量%となるようにRu3(CO)12量を調節した。溶媒を減圧乾燥させ、450℃で1時間真空条件下で加熱処理を8時間行うことで、RuをAl23に担持したRu/Al23を得た。
【実施例】
【0164】
上記で得られたRu/Al23を触媒として用いて、実施例14と同様の方法により、アンモニア分解反応を行なった。結果を図7に示す。400℃におけるアンモニアの分解効率は17%であった。
【実施例】
【0165】
実施例14から、本発明の複合体を、担持金属触媒としてアンモニア分解触媒として用いた場合、Ru/Ca(NH2)2/ZrO2が、高い効率でアンモニアを分解することができることが分かった。比較例8の従来のアンモニア分解触媒に比べ、高い分解活性を有することが明らかである。更に、比較例7との比較から、金属酸化物を担体として用いた複合体を、担持金属触媒として用いたことにより、担体を用いない触媒に対して、より低温でアンモニア分解反応が進行することが分かった。すなわち、アンモニア分解反応においてエネルギー削減が図れる点で、非常に有利である。
【実施例】
【0166】
本発明の複合体は、担体からの金属への強い電子移動が生ずるため、担持金属触媒として本発明の複合体を用いた場合、各種の反応に対し高い触媒活性を示すと考えられる。本発明の複合体にすることで、担持された金属触媒の安定性が向上する効果があり、担持金属触媒として、種々の触媒としての利用が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の複合体は、担持金属触媒として高い反応活性を有する点で、種々の反応触媒として利用できる。特にアンモニア合成用触媒として、触媒寿命が長く、反応圧力が低圧でも製造できる触媒として利用できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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