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明細書 :二酸化炭素の電気化学的還元

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6615175号 (P6615175)
登録日 令和元年11月15日(2019.11.15)
発行日 令和元年12月4日(2019.12.4)
発明の名称または考案の名称 二酸化炭素の電気化学的還元
国際特許分類 C25B   1/00        (2006.01)
C25B  11/08        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
C25B   3/04        (2006.01)
C25B   9/00        (2006.01)
B01J  31/22        (2006.01)
C01B  32/40        (2017.01)
FI C25B 1/00 Z
C25B 11/08 A
C25B 11/06 A
C25B 3/04
C25B 9/00 Z
B01J 31/22 M
B01J 31/22 Z
C01B 32/40
請求項の数または発明の数 28
全頁数 38
出願番号 特願2017-502030 (P2017-502030)
出願日 平成28年2月5日(2016.2.5)
国際出願番号 PCT/JP2016/053558
国際公開番号 WO2016/136433
国際公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
優先権出願番号 2015037839
2015160768
優先日 平成27年2月27日(2015.2.27)
平成27年8月18日(2015.8.18)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成30年8月13日(2018.8.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】石谷 治
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
審査官 【審査官】▲辻▼ 弘輔
参考文献・文献 特開2014-062038(JP,A)
MORIMOTO Tatsuki 他6名,CO2 Capture by a Rhenium(I) Complex with the Aid of Triethanolamine,J Am Chem Soc,米国,2013年11月13日,Vol.135 No.45,Page.16825-16828
HORI H 他4名,Efficient photocatalytic CO2 reduction using [Re(bpy)(CO)3{P(OEt)3}]+,J Photochem Photobiol A Chem,スイス,1996年 5月31日,Vol.96 No.1/3,Page.171-174
岡本耕平 他3名,リン配位子を有するマンガンビピリジンカルボニル錯体を用いたCO2還元光触媒反応,日本化学会第94春季年会講演予稿集,日本,2014年 3月12日,Vol.94th No.2,Page.434
STOR G J 他3名,The Remarkable Photochemistry of fac-XMn(CO)3(α-diimine)(X=Halide): Formation of Mn2(CO)6(α-diimin,Organometallics,米国,1994年 7月,Vol.13 No.7,Page.2641-2650
調査した分野 C25B 1/00 - 9/20
C25B 11/00 - 11/18
B01J 31/22
C01B 32/40
C07D 213/00 - 213/90
C07F 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次の工程(a)及び(b)を有することを特徴とする二酸化炭素から一酸化炭素の電気化学的還元による製造方法。
(a)二酸化炭素と、一般式(1)
【化1】
JP0006615175B2_000019t.gif
(式中、Xは、OR1、SR1、NR23又はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23又はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR3の1~2個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される金属錯体とを反応させる工程、
(b)二酸化炭素と一般式(1)で表される金属錯体の反応物に電圧を印加する工程。
【請求項2】
前記工程(a)及び(b)が作用極及び対極を有する電気化学的セル内で行われる方法であり、工程(a1)及び(b1)を含むものである請求項1記載の製造方法。
(a1)二酸化炭素を電気化学的セル内の前記金属錯体を含む溶液中に導入する工程、
(b1)電気化学的セルの作用極及び対極に負の電圧及び正の電圧をそれぞれ印加する工程。
【請求項3】
二酸化炭素の導入が、前記金属錯体を含有する溶液中に二酸化炭素含有ガスを導入する請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
反応に用いる二酸化炭素が、二酸化炭素を0.03~100%含有するガスである請求項1~3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環である請求項1~4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
1、R2、R3、X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である請求項1~5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載の製造方法により得られた一酸化炭素を還元剤として使用することを特徴とする二酸化炭素から一酸化炭素の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項記載の製造方法により得られた一酸化炭素を原料とする炭化水素系化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(1)
【化2】
JP0006615175B2_000020t.gif
(式中、Xは、OR1、SR1、NR23又はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23又はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR3の1~2個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される二酸化炭素から一酸化炭素への、電圧印加による電気化学的還元用触媒。
【請求項10】
A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環である請求項9記載の触媒。
【請求項11】
1、R2、R3、X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である請求項9又は10記載の触媒。
【請求項12】
次の工程(a)及び(b)を有することを特徴とする二酸化炭素からギ酸の電気化学的還元による製造方法。
(a)二酸化炭素と、一般式(2)
【化3】
JP0006615175B2_000021t.gif
(式中、M1は、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、
Xは、OR1、SR1又はNR23を示し、
Yは、CO、OR1、SR1又はNR23を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR3の1~2個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示す。)
で表される金属錯体とを反応させる工程、
(b)二酸化炭素と一般式(2)で表される金属錯体の反応物に電圧を印加する工程。
【請求項13】
前記工程(a)及び(b)が作用極及び対極を有する電気化学的セル内で行われる方法であり、工程(a1)及び(b1)を含むものである請求項12記載の製造方法。
(a1)二酸化炭素を電気化学的セル内の前記金属錯体を含む溶液中に導入する工程、
(b1)電気化学的セルの作用極及び対極に負の電圧及び正の電圧をそれぞれ印加する工程。
【請求項14】
二酸化炭素の導入が、前記金属錯体を含有する溶液中に二酸化炭素含有ガスを導入する請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
反応に用いる二酸化炭素が、二酸化炭素を0.03~100%含有するガスである請求項12~14のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項16】
A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環である請求項12~15のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項17】
1、R2及びR3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である請求項12~16のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項18】
一般式(2)
【化4】
JP0006615175B2_000022t.gif
(式中、M1は、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、
Xは、OR1、SR1又はNR23を示し、
Yは、CO、OR1、SR1又はNR23を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR3の1~2個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示す。)
で表される二酸化炭素からギ酸への、電圧印加による電気化学的還元用触媒。
【請求項19】
A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環である請求項18記載の触媒。
【請求項20】
1、R2及びR3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である請求項18又は19記載の触媒。
【請求項21】
一般式(2a)
【化5】
JP0006615175B2_000023t.gif
(式中、M1は、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、
Xは、O(CH2nNR56又はNR56を示し、
Yは、CO、O(CH2nNR56又はNR56を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
5及びR6は、同一又は異なって、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又は水素原子を示し、
nは2~8の数を示す。)
で表される金属錯体。
【請求項22】
A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環である請求項21記載の金属錯体。
【請求項23】
電圧印加による電気化学的還元により二酸化炭素から一酸化炭素を製造するシステムであって、
一般式(1)
【化6】
JP0006615175B2_000024t.gif
(式中、Xは、OR1、SR1、NR23又はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23又はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR3の1~2個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される金属錯体を含む溶液、作用極、及び対極を具備した電気化学セル部と、
前記電気化学セル部内の前記金属錯体を含む溶液に、二酸化炭素を注入する注入部と、
前記電気化学セル部内の前記作用極及び対極の間に、正または負の電圧を印加可能とする電圧源と、
前記金属錯体を含む溶液内で生成した一酸化炭素を排出する排出部と、
を有し、
前記金属錯体を含む溶液と二酸化炭素によって生成される前記金属錯体反応物に、正または負の電圧を印加することによって、一酸化炭素を生成せしめる一酸化炭素製造システム。
【請求項24】
前記二酸化炭素を送出する送出部において、前記二酸化炭素は濃縮することなく送出される請求項23記載の一酸化炭素製造システム。
【請求項25】
前記金属錯体を含む溶液から、排出される一酸化炭素の濃度を検出する一酸化炭素検出部をさらに含む請求項23又は24記載の一酸化炭素製造システム。
【請求項26】
前記一酸化炭素検出部が、ガスクロマトグラフィーである請求項25記載の一酸化炭素製造システム。
【請求項27】
A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環である請求項23~26のいずれか1項記載の一酸化炭素製造システム。
【請求項28】
1、R2又はR3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である請求項23~27のいずれか1項記載の一酸化炭素製造システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素から一酸化炭素又はギ酸への電気化学還元方法及びそれに用いる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、人類は地球温暖化や炭素資源の枯渇といった深刻な問題を抱えている。この解決手段として、光エネルギーを化学エネルギーへと変換する触媒が注目されている。もし、無尽蔵な太陽光エネルギーを活用し、二酸化炭素(CO2)を有用な化合物へと変換することができれば、これらの問題を一挙に解決できると期待されている。しかし、CO2は炭素化合物の最終酸化状態であるため、物理的にも化学的にも非常に安定であり、反応性は極めて低い。
【0003】
近年、このCO2を還元して有用な化合物へと変換する技術が、いくつか報告されている。例えば、特許文献1には、CO2と水素とを触媒の存在下に反応させてギ酸を得る方法が、特許文献2には、CO2に、半導体電極に光照射することにより生じた励起電子を触媒に移動させて還元してギ酸を得る方法が記載されている。また、特許文献3及び非特許文献1には、レニウム錯体にCO2を接触させ、これに光を照射することによりCO2を一酸化炭素に還元する方法が報告されている。また、CO2を金属錯体触媒の存在下電気化学的に還元する試みもなされている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-217632号公報
【特許文献2】特開2011-82144号公報
【特許文献3】特開2013-180943号公報
【特許文献4】特開2013-193056号公報
【0005】

【非特許文献1】J. Am. Chem. Sco. 2013, 135, 16825-16828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の方法は、還元のために水素や半導体と光照射を必要とし、また、特許文献1では還元のために水素が必要であり、エネルギー的に有利とはいえない。さらに、特許文献3や非特許文献1では、還元用触媒に加えて、光触媒反応のためにルテニウム錯体のようなもう一種の触媒を必要とする。また、特許文献4では、CO2を電気化学的処理した結果何が生成したかは不明である。
【0007】
一方、CO2を還元して選択的に一酸化炭素(CO)やギ酸を得ることができれば、このうち、得られた一酸化炭素は、極めて多種の炭化水素原料となる。炭化水素は、石油と同様の化学エネルギー原料である。また、ギ酸は触媒と反応させることで容易に水素を発生させることが可能なため、水素を貯蔵する液体燃料として期待されている。
従って、本発明の課題は、電気エネルギーを利用して、CO2から一酸化炭素又はギ酸に選択的に還元する方法、それに用いる触媒、及び電気化学的還元システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、CO2から一酸化炭素又はギ酸への還元を電気化学的に行うべく種々検討してきたところ、CO2と一般式(1)又は一般式(2)で表される金属錯体を反応させ、その反応物に電圧を印加すれば、CO2を選択的、かつ容易に一酸化炭素又はギ酸に還元できること、さらに導入するCO2濃度が低濃度でもこの還元反応が進行することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔30〕を提供するものである。
【0010】
〔1〕次の工程(a)及び(b)を有することを特徴とする二酸化炭素から一酸化炭素の電気化学的還元による製造方法。
(a)二酸化炭素と、一般式(1)
【0011】
【化1】
JP0006615175B2_000002t.gif

【0012】
(式中、Xは、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR31~個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される金属錯体とを反応させる工程、
(b)二酸化炭素と一般式(1)で表される金属錯体の反応物に電圧を印加する工程。
〔2〕前記工程(a)及び(b)が作用極及び対極を有する電気化学的セル内で行われる方法であり、工程(a1)及び(b1)を含むものである〔1〕記載の製造方法。
(a1)二酸化炭素を電気化学的セル内の前記金属錯体を含む溶液中に導入する工程、
(b1)電気化学的セルの作用極及び対極に負の電圧及び正の電圧をそれぞれ印加する工程。
〔3〕二酸化炭素の導入が、前記金属錯体を含有する溶液中に二酸化炭素含有ガスを導入する〔2〕記載の製造方法。
〔4〕反応に用いる二酸化炭素が、二酸化炭素を0.03~100%含有するガスである〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2'-ビピリジン構造を有する複素環である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕R1、R2、R3、X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の製造方法により得られた一酸化炭素を還元剤として使用することを特徴とする二酸化炭素から一酸化炭素の製造方法。
〔8〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法により得られた一酸化炭素を原料とする炭化水素系化合物の製造方法。
〔9〕一般式(1)

【0013】
【化2】
JP0006615175B2_000003t.gif

【0014】
(式中、Xは、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR31~個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される二酸化炭素から一酸化炭素への電気化学的還元用触媒。
〔10〕A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2'-ビピリジン構造を有する複素環である〔9〕記載の触媒。
〔11〕R1、R2、R3、X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である〔9〕又は〔10〕記載の触媒。

【0015】
〔12〕次の工程(a)及び(b)を有することを特徴とする二酸化炭素からギ酸の電気化学的還元による製造方法。
(a)二酸化炭素と、一般式(2)
【0016】
【化3】
JP0006615175B2_000004t.gif

【0017】
(式中、M1は、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、
Xは、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR31~個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される金属錯体とを反応させる工程、
(b)二酸化炭素と一般式(2)で表される金属錯体の反応物に電圧を印加する工程。
〔13〕前記工程(a)及び(b)が作用極及び対極を有する電気化学的セル内で行われる方法であり、工程(a1)及び(b1)を含むものである〔12〕記載の製造方法。
(a1)二酸化炭素を電気化学的セル内の前記金属錯体を含む溶液中に導入する工程、
(b1)電気化学的セルの作用極及び対極に負の電圧及び正の電圧をそれぞれ印加する工程。
〔14〕二酸化炭素の導入が、前記金属錯体を含有する溶液中に二酸化炭素含有ガスを導入する〔13〕記載の製造方法。
〔15〕反応に用いる二酸化炭素が、二酸化炭素を0.03~100%含有するガスである〔12〕~〔15〕のいずれかに記載の製造方法。
〔16〕A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2'-ビピリジン構造を有する複素環である〔12〕~〔15〕のいずれかに記載の製造方法。
〔17〕R1、R2、R3、X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である〔12〕~〔16〕のいずれかに記載の製造方法。
〔18〕一般式(2)

【0018】
【化4】
JP0006615175B2_000005t.gif

【0019】
(式中、M1は、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、
Xは、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR31~個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される二酸化炭素からギ酸への電気化学的還元用触媒。
〔19〕A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2'-ビピリジン構造を有する複素環である〔18〕記載の触媒。
〔20〕R1、R2、R3、X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である〔18〕又は〔19〕記載の触媒。
〔21〕一般式(2a)

【0020】
【化5】
JP0006615175B2_000006t.gif

【0021】
(式中、M1は、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、
Xは、O(CH2nNR56、NR56又はPX123を示し、
Yは、CO、C(CH2)nNR56、NR56又はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示し、
5及びR6は、同一又は異なって、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又は水素原子を示し、
nは2~8の数を示す。)
で表される金属錯体。
〔22〕A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環である〔21〕記載の金属錯体。
〔23〕X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である〔21〕又は〔22〕記載の金属錯体。
〔24〕電気化学的還元により二酸化炭素から一酸化炭素を製造するシステムであって、
金属錯体を含む溶液、作用極、及び対極を具備した電気化学セル部と、
前記電気化学セル部内の前記金属錯体を含む溶液に、二酸化炭素を注入する注入部と、
前記電気化学セル部内の前記作用極及び対極の間に、正または負の電圧を印加可能とする電圧源と、
前記金属錯体を含む溶液内で生成した一酸化炭素を排出する排出部と、
を有し、
前記金属錯体を含む溶液と二酸化炭素によって生成される前記金属錯体反応物に、正または負の電圧を印加することによって、一酸化炭素を生成せしめる一酸化炭素製造システム。
〔25〕前記金属錯体が一般式(1)
【0022】
【化6】
JP0006615175B2_000007t.gif

【0023】
(式中、Xは、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR31~個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される金属錯体である〔24〕記載の一酸化炭素製造システム。
〔26〕前記二酸化炭素を送出する送出部において、前記二酸化炭素は濃縮することなく送出される〔24〕又は〔25〕記載の一酸化炭素製造システム。
〔27〕前記金属錯体を含む溶液から、排出される一酸化炭素の濃度を検出する一酸化炭素検出部をさらに含む〔24〕~〔26〕のいずれかに記載の一酸化炭素製造システム。
〔28〕前記一酸化炭素検出部が、ガスクロマトグラフィーである〔27〕記載の一酸化炭素製造システム。
〔29〕A環及びB環を含む窒素原子含有複素環が、置換基を有していてもよい2,2'-ビピリジン構造を有する複素環である〔25〕~〔28〕のいずれかに記載の一酸化炭素製造システム。
〔30〕R1、R2、R3、X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基が、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)である〔25〕~〔29〕のいずれかに記載の一酸化炭素製造システム。

【発明の効果】
【0024】
本発明の触媒と電気化学的処理を用いれば、低濃度のCO2であっても簡便な手段でCO2から一酸化炭素(CO)又はギ酸が効率良く製造できる。従って、例えば、火力発電所、製鉄所等の石油を含む有機物の燃焼廃ガスを生じる施設のCO2含有廃ガスから種々の化学原料となり得る一酸化炭素又はギ酸を効率良く製造できる。従って、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料の燃焼廃ガスから、炭化水素や水素などの有用でエネルギーを蓄積した化学物質の原料となる一酸化炭素又はギ酸を製造することができ、エネルギー再利用及びCO2削減の両方に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一酸化炭素製造システムの概念図である。
【図2】本発明の一酸化炭素製造システムの反応側セル室の一例の概念図である。図中の符号は、図1と同じ。
【図3】TEOA添加後から4時間経過した溶液に、CO2を30分間通気したときのIRスペクトル変化(溶媒:DMF-TEOA(5:1v/v))を示す。通気前:グレー線,通気後:黒線
【図4】CO2通気後(0分~120分)の溶液にArを通気したときのIRスペクトル変化(溶媒:DMF-TEOA(5:1v/v))を示す。
【図5】Re-CO2-TEOAを含むDMF-TEOA混合溶液(5:1v/v)のESI-MSスペクトル(溶媒:MeCN)を示す。
【図6】空気を通気した後のIRスペクトル(黒実線)とカーブフィッティング曲線を示す。(向かって右の点線で示されたピークから、DMFが配位した錯体,-O-CO-OCH2CH2NR2(R=CH2CH2OH)が配位した錯体,TEOAが配位した錯体。グレー実線はこれら3つのピークを足しあわせたもの)。4,4’位の置換基:(a)水素,(b)メチル基,(c)メトキシ基,(d)ブロモ基
【図7】Re-CO2-TEOAを触媒とした電気化学的CO2還元実験におけるCO生成量と電流の変化を示す。
【図8】TEOAを追加したときのCO生成量と電流の変化を示す。
【図9】印加電圧設定のために実施したRe錯体のサイクリックボルタメトリー(CV)測定結果を示す。図中のbaselineは錯体無しでCO2雰囲気下の測定結果、under Arは錯体無しと有りでAr雰囲気下の測定結果、under CO2は錯体無しと有りでCO2雰囲気下の測定結果を示す。
【図10】印加電圧設定のために実施したMn錯体のサイクリックボルタメトリー(CV)測定結果を示す。点線はAr雰囲気下。実線はCO2雰囲気下。
【図11】Mn-CO2-TEOAを触媒とした電気化学的CO2還元実験における電流値の変化を示す。
【図12】Mn-CO2-TEOAを触媒とした電気化学的CO2還元実験におけるCO生成量を示す。
【図13】様々なマンガントリエタノールアミン付加錯体の、CO2が10%におけるIRスペクトルを示す。
【図14】Mn錯体のDMF-DEOA中、様々な濃度のCO2雰囲気下におけるIRスペクトル変化を示す。
【図15】印加電圧設定のために実施した、Mn錯体のDMF-DEOA中CO2雰囲気下におけるサイクリックボルタメトリー(CV)測定結果を示す。
【図16】Mn-CO2-DEOAを触媒とした電気化学的CO2還元実験におけるギ酸生成量と電流値の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のCO2からCOの電気化学的還元に用いられる触媒は、一般式(1)

【0027】
【化7】
JP0006615175B2_000008t.gif

【0028】
(式中、Xは、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR31~個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される金属錯体である。


【0029】
一方、本発明のCO2からギ酸の電気化学的還元に用いられる触媒は、一般式(2)

【0030】
【化8】
JP0006615175B2_000009t.gif

【0031】
(式中、M1は、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、
Xは、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
Yは、CO、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、
2及びR31~個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
で表される金属錯体である。


【0032】
一般式(2)中、M1としてはマンガン又はルテニウムがより好ましく、マンガンがさらに好ましい。

【0033】
一般式(1)及び(2)中、Xは、OR1、SR1、NR23はPX123を示し、YはCO、OR1、SR1、NR23はPX123を示す。XとYは同一でも異なっていてもよい。ここで、R1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。R2及びR31~個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、残余は水素原子を示す。
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示す。


【0034】
1、R2、R3、X1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基としては、同一又は異なって、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)が好ましい。


【0035】
前記アルキル基としては、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
前記アルケニル基としては、炭素数2~20の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が挙げられ、炭素数2~12の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が好ましく、炭素数2~6の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基がより好ましい。具体的には、ビニル基、2-プロペニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基等が挙げられる。
前記シクロアルキル基としては、C3-C8シクロアルキル基が挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記シクロアルケニル基としては、C3-C8シクロアルケニル基が挙げられ、具体的には、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基としては、C6-C14芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基等が挙げられる。

【0036】
1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基としては、同一又は異なって、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルケニルオキシ基又は芳香族炭化水素オキシ基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)が挙げられる。

【0037】
前記アルコキシ基としては、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基がより好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
前記アルケニルオキシ基としては、炭素数2~20の直鎖又は分岐鎖のアルケニルオキシ基が挙げられ、炭素数2~12の直鎖又は分岐鎖のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素数2~6の直鎖又は分岐鎖のアルケニルオキシ基がより好ましい。具体的には、ビニルオキシ基、2-プロペニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、1-ブテニルオキシ基等が挙げられる。
前記シクロアルキルオキシ基としては、C3-C8シクロアルキルオキシ基が挙げられ、具体的には、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。前記シクロアルケニルオキシ基としては、C3-C8シクロアルケニルオキシ基が挙げられ、具体的には、シクロブテニルオキシ基、シクロペンテニルオキシ基、シクロヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、C6-C14アリールオキシ基が挙げられ、具体的には、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基等が挙げられる。

【0038】
これらの炭化水素基又は炭化水素オキシ基に置換し得る基としては、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、ジ(ヒドロキシC1-6アルキル)アミノ基、ヒドロキシC1-6アルキルアミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、C1-14アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、C1-6アルカノイル基及びC6-14アリールカルボニル基から選ばれる1~3個がより好ましい。さらには、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、ヒドロキシC1-6アルキルアミノ基、ジ(ヒドロキシC1-6アルキル)アミノ基、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、C1-14アリールオキシ基及びハロゲン原子から選ばれる1~3個がより好ましい。

【0039】
2及びR31~個は、前記の炭化水素基であり、残余は水素原子である。また、X1、X2及びX3の1~3個は、前記の炭化水素基又は炭化水素オキシ基であり、残余は、水素原子又はヒドロキシ基である。


【0040】
より好ましいXは、OR1又はNR23である。
さらに好ましいXは、-OC2-8アルキルNHC2-8アルキルOH、-OC2-8アルキルN(C2-8アルキルOH)2、-NH(C2-8アルキルOH)、又は-N(C2-8アルキルOH)2である。さらに好ましいXは、-OC2-6アルキルNHC2-6アルキルOH、-OC2-6アルキルN(C2-6アルキルOH)2、-NH(C2-6アルキルOH)、又は-N(C2-6アルキルOH)2である。さらに好ましいXは、-OC24NHC24OH、-24N(C24OH)2、-NH(C24OH)、又は-N(C24OH)2である。また、より好ましいYはCO、OR1、又はNR23であり、さらに好ましいYはCOである。

【0041】
A環及びB環を含む窒素原子含有複素環としては、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環が好ましい。当該複素環に置換し得る基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、及びアルカノイル基から選ばれる1~4個が好ましく、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-14アリールオキシ基、ハロゲン原子及びC1-6アルカノイル基から選ばれる1~4個がより好ましい。

【0042】
2,2’-ビピリジン構造を有する複素環としては、例えば次の式(3)又は(4)で表される複素環が好ましい。

【0043】
【化9】
JP0006615175B2_000010t.gif

【0044】
(式中、R7、R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子又はアルカノイル基を示す)
このうち、式(3)の複素環がより好ましい。より具体的には、2,2’-ピリジン、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジブロモ-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジンが好ましい。

【0045】
前記一般式(2)で表される金属錯体のうち、次の一般式(2a)で表される金属錯体は新規であり、より好ましい。

【0046】
【化10】
JP0006615175B2_000011t.gif

【0047】
(式中、M1は、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、
Xは、O(CH2nNR56、NR56又はPX123を示し、
Yは、CO、O(CH2)nNR56、NR56又はPX123を示し、
A環及びB環は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環を示し、
1、X2及びX3の1~3個は、同一又は異なって置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基を示し、残余は水素原子又はヒドロキシ基を示し、
5及びR6は、同一又は異なって、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又は水素原子を示し、
nは2~8の数を示す。)

【0048】
1としては、マンガン、ルテニウムがより好ましく、マンガンがさらに好ましい。

【0049】
A環及びB環を含む窒素原子含有複素環としては、置換基を有していてもよい2,2’-ビピリジン構造を有する複素環が好ましく、前記式(3)又は式(4)の複素環がより好ましく、式(3)の複素環がさらに好ましく、2,2’-ビピリジン、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン、4,4’-ジブロモ-2,2’-ビピリジンが特に好ましい。

【0050】
O(CH2nNR56及びNR56におけるR5及びR6は、同一又は異なって、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。より具体的には、R5及びR6としては、C1-6アルキル基、ヒドロキシC1-6アルキル基又は水素原子が挙げられ、C1-4アルキル基、ヒドロキシC1-6アルキル基又は水素原子が好ましい。

【0051】
1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)が好ましい。

【0052】
1、X2及びX3で示される置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基としては、同一又は異なって、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルケニルオキシ基又はアリールオキシ基(これらの基は、一級、二級若しくは三級アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基及びアリールカルボニル基から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい)が挙げられる。

【0053】
より好ましいXは、O(CH2nNR56又はNR56である。
さらに好ましいXは、-OC2-8アルキルNHC2-8アルキルOH、-OC2-8アルキルN(C2-8アルキルOH)2、-NH(C2-8アルキルOH)、又は-N(C2-8アルキルOH)2である。さらに好ましいXは、-OC2-6アルキルNHC1-6アルキルOH、-OC2-6アルキルN(C2-6アルキルOH)2、-NH(C2-6アルキルOH)、又は-N(C2-6アルキルOH)2である。さらに好ましいXは、-OC24NHC24OH、-OC24N(C24OH)2、-NH(C24OH)、又は-N(C24OH)2である。また、より好ましいYはCO、O(CH2)nNR56、又はNR56であり、さらに好ましいYはCOである。

【0054】
一般式(1)又は(2)で表される金属錯体は、例えば、次の反応式に従って製造することができる。

【0055】
【化11】
JP0006615175B2_000012t.gif

【0056】
(式中、Mはレニウム、マンガン、ルテニウム又は鉄を示し、A、B、X及びYは前記と同じ)
すなわち、式(5)のアセトニトリル(MeCN)配位金属錯体に配位能の比較的低い溶媒、例えばジメチルホルムアミドを反応させて溶媒配位錯体(6)に変換し、これに塩基性下X-H及び/又はY-H(7)を反応させることにより式(1)又は(2)の金属錯体を製造することができる。アセトニトリル配位錯体(5)から溶媒配位錯体への変換は、式(5)の錯体を上記溶媒に溶解させ、Ar雰囲気下で暗所に一晩静置すればよい。次に式(1)又は(2)の錯体を製造するには、式(6)の錯体をX-H(7)に加え、Ar雰囲気下で暗所に数時間程静置すればよい。

【0057】
本発明のCO2からCOの電気化学的還元による製造法は、次の工程(a)及び工程(b)を有することを特徴とする。
(a)二酸化炭素と前記一般式(1)で表される金属錯体とを反応させる工程、
(b)二酸化炭素と一般式(1)で表される金属錯体の反応物に電圧を印加する工程。

【0058】
この工程(a)及び工程(b)の反応は、以下の反応式のように進行すると考えられる。

【0059】
【化12】
JP0006615175B2_000013t.gif

【0060】
(式中、A、B、X及びYは前記と同じ)

【0061】
すなわち、式(1)の金属錯体とCO2の反応により、式(8)のようなCO2付加体が生成し、これに電圧が印加されることによりCOを放出する。なお、式(8)のCO2付加体の生成は、IRスペクトル、MSスペクトル及びNMRスペクトルにより確認できる。

【0062】
反応は、電解質溶液、すなわち極性溶媒中であればよいが、式(8)のCO2付加体からCOが放出されると同時に副生する酸素原子をプロトン化して水に変化させる点からプロトン性極性溶媒が好ましい。プロトン性極性溶媒としては、水、アルコール系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、アミノアルコール系溶媒等が挙げられる。このうち、式(1)中のX及び/又はYに相当する溶媒を用いるのが、特に好ましい。

【0063】
式(1)の金属錯体の使用量は、電解質溶液中に0.01mM~100mMであるのが好ましく、0.05mM~10mMであるのがより好ましい。

【0064】
導入するCO2は、100%CO2である必要がなく、CO2を0.03%~100%含有するガスを用いた場合でもCO生成反応が進行する。CO2ガス0.03%は空気中のCO2濃度である。また、CO2が10%程度含まれる火力発電所からの廃ガス等のCO2を濃縮することなくそのまま使用することもできる。
また、CO2の導入は、CO2含有ガスを電解質溶液中に導入、例えばCO2含有ガスを電解質溶液中にバブリングすればよく容易である。

【0065】
次に、加電圧の設定においては、事前にサイクリックボルタメトリー(CV)測定を行い、印加電圧レベルを把握しておくことが重要である。サイクリックボルタメトリー(CV)測定は、電極電位を直線的に掃引し、応答電流を測定する手法である。本発明においては、(a)電解質中に本発明の金属錯体を加えない状態(ブランク)、金属錯体を加えた状態で(b)Arガス、及び(c)CO2含有ガスを導入し、サイクリックボルタメトリー測定を行う。前記(c)の条件下で得られた電流-電位曲線を得ることにより、応答電流の立上り電位から、印加電圧(還元電位)を求めることができる。なお、電圧の印加は、反応を作用極と対極を有する電気化学的セル内で行い、電圧を印加すればよい。電圧としては、1.0V~2.5V vs.Ag/AgNO3が好ましい。

【0066】
具体的には、前記工程(a)及び(b)が作用極及び対極を有する電気化学的セル内で行い、次の工程(a1)及び(b1)を行うのが好ましい。
(a1)二酸化炭素を電気化学的セル内の前記金属錯体を含む溶液中に導入する工程、
(b1)電気化学的セルの作用極及び対極に負の電圧及び正の電圧をそれぞれ印加する工程。

【0067】
より具体的には、例えば図1のような、
金属錯体を含む溶液(1)、作用極(4)、及び対極(6)を具備した電気化学セル部と、
前記電気化学セル部(1)内の前記金属錯体を含む溶液に、二酸化炭素を注入する注入部(注入口)(2)と、
前記電気化学セル部内の前記作用極(4)及び対極(6)の間に、正または負の電圧を印加可能とする電圧源を有するポテンショスタット(8)と、
前記金属錯体を含む溶液内で生成した一酸化炭素を排出する排出部(排出口)(3)と、
を有し、
前記金属錯体を含む溶液と二酸化炭素によって生成される前記金属錯体反応物に、正または負の電圧を印加することによって、一酸化炭素を生成せしめることを特徴とする電気化学的還元により二酸化炭素から一酸化炭素を製造するシステムを用いるのが好ましい。

【0068】
図1のより具体的な装置を図2に示す。以下、図1及び図2に基づいて説明する。
図1及び図2中、(2)はCO2注入部(注入口)であり、図2中の白丸に含まれるCO2が金属錯体を含む溶液中に導入される。図1及び2中、(1)は、電気化学セル部であり、当該セル部内には、作用極(4)を含む溶液、参照電極(5)及び対極(6)を有する。CO2の付加及びCOへの還元反応は、作用極の金属錯体を介して行なわれる。作用極としては、グラッシーカーボン等が用いられる。対極としては、白金等が用いられる。

【0069】
図1中、(8)は、電気化学セル部内の作用極及び対極に、正または負の電圧を印加するためのポテンショスタットである。

【0070】
図2中、(3)は、金属錯体を含む溶液内で生成したCO(グレーの点)を排出する気体排出部である。このCO排出部には、各種COセンサー(半導体式、気体熱伝式等)やガスクロマトグラフィー(Micro-GC)により一酸化炭素の生成を検出する検出部(検出器)を設けることができる。

【0071】
本発明のシステムは、図1及び2のように、10%濃度程度のCO2含有ガスから連続してCOを製造することができるので、火力発電所、セメント製造施設、ガラス製造施設等のような有機物を燃焼させてCO2が発生する設備に設置することが可能である。また、製鉄所の高炉のようなFe23をCOで還元する設備にも設置可能である。この場合、本発明の方法又はシステムで得られたCOを還元剤として使用し、さらに生成するCO2を原料として用いてCOを再生産することができる。さらに、本発明の方法又はシステムで得られたCOを原料とすれば、広範囲な炭化水素系化合物を製造することができる。

【0072】
本発明のCO2からギ酸の電気化学的還元による製造法は、次の工程(a)及び工程(b)を有することを特徴とする。
(a)二酸化炭素と前記一般式(2)で表される金属錯体とを反応させる工程、
(b)二酸化炭素と一般式(2)で表される金属錯体の反応物に電圧を印加する工程。

【0073】
この工程(a)及び工程(b)の反応は、以下の反応式のように進行すると考えられる。

【0074】
【化13】
JP0006615175B2_000014t.gif

【0075】
(式中、A、B、M1、X及びYは前記と同じ)

【0076】
すなわち、式(2)の金属錯体とCO2の反応により、式(9)のようなCO2付加体が生成し、これに電圧が印加されることによりギ酸を放出する。なお、式(9)のCO2付加体の生成は、IRスペクトル及びMSスペクトルにより確認できる。

【0077】
反応は、電解質溶液、すなわち極性溶媒中であればよいが、式(9)のCO2付加体からギ酸が放出される点からプロトン性極性溶媒が好ましい。プロトン性極性溶媒としては、水、アルコール系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、アミノアルコール系溶媒等が挙げられる。このうち、式(2)中のX及び/又はYに相当する溶媒を用いるのが、特に好ましい。

【0078】
式(2)の金属錯体の使用量は、電解質溶液中に0.01mM~100mMであるのが好ましく、0.05mM~10mMであるのがより好ましい。

【0079】
導入するCO2は、100%CO2である必要がなく、CO2を0.03%~100%含有するガスを用いた場合でもCO生成反応が進行する。CO2ガス0.03%は空気中のCO2濃度である。また、CO2が10%程度含まれる火力発電所からの廃ガス等を濃縮することなくそのまま使用することもできる。
また、CO2の導入は、CO2含有ガスを電解質溶液中に導入、例えばCO2含有ガスを電解質溶液中にバブリングすればよく容易である。

【0080】
次に、加電圧の設定においては、事前にサイクリックボルタメトリー(CV)測定を行い、印加電圧レベルを把握しておくことが重要である。サイクリックボルタメトリー(CV)測定は、電極電位を直線的に掃引し、応答電流を測定する手法である。本発明においては、(a)電解質中に本発明の金属錯体を加えない状態(ブランク)、金属錯体を加えた状態で(b)Arガス、及び(c)CO2含有ガスを導入し、サイクリックボルタメトリー測定を行う。前記(c)の条件下で得られた電流-電位曲線を得ることにより、応答電流の立上り電位から、印加電圧(還元電位)を求めることができる。なお、電圧の印加は、反応を作用極と対極を有する電気化学的セル内で行い、電圧を印加すればよい。電圧としては、1.0V~2.5V vs.Ag/AgNO3が好ましい。

【0081】
本発明方法によれば、0.03%程度のCO2含有ガスから連続してギ酸を製造することができるので、火力発電所、セメント製造施設、ガラス製造施設等のような有機物を燃焼させてCO2が発生する設備に設置することが可能である。
【実施例】
【0082】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0083】
合成例1
Re(CO)5Br
Re2(CO)10(4.71g,7.21mmol)を含むジクロロメタン(8mL)に臭素を4mLを滴下し、室温で10分間攪拌した。析出した白色固体をろ別した。
収量:5.47g(13.4mmol)、収率:93.1%
FT-IR in CH2Cl2 ν(CO)/cm-1:2154,2046,1988
【実施例】
【0084】
合成例2
Re(bpy)(CO)3Br(Re-Brと略すことがある)
Re(CO)5Br(3.00g,7.38mmol)と2,2’-ビピリジン(bpy)(1.27g,8.14mmol)を含むトルエン溶液(60mL)を一晩加熱還流した。析出した黄色固体をろ別し、減圧乾燥した。アセトニトリル/ジエチルエーテル/ヘキサンを用いた再結晶によって精製した。
収量:3.63g(7.18mmol)、収率:97.3%
ESI-MS in CH2Cl2 m/z=468[M-PF6-+
FT-IR in CH2Cl2 ν(CO)/cm-1:2024,1923,1901
1H NMR in CDCl3:δ(ppm)=9.09(d,J=7.0Hz,2H,bpy-6,6’),8.21(d,J=7.0Hz,2H,bpy-3,3’),8.07(dd,J=7.0,7.0Hz,2H,bpy-4,4’),7.55(dd,J=7.0,7.0Hz,2H,bpy-5,5’)
Elemental analysis:Calcd.(%) for C131023BrRe:C 30.84;H 1.59;N 5.53
Found:C 30.86;H 1.46;N 5.61.
【実施例】
【0085】
合成例3
Re(dmb)(CO)3Br
Re(CO)5Br(1.10g,2.71mmol)と4,4’-ジメチル-2,2’-ビビリジン(dmb)(0.55g,3.00mmol)を含むトルエン溶液(60mL)を一晩加熱還流した。析出した黄色固体をろ別し、減圧乾燥した。
収量:1.40g(2.62mmol)、収率:96.7%
FT-IR in CH2Cl2 ν(CO)/cm-1:2022,1920,1898
【実施例】
【0086】
合成例4
Re{(MeO)2bpy}(CO)3Br
Re(CO)5Br(499mg,1.23mmol)と4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン(1MeO)2bpy(321mg,1.483mmol)を含むトルエン溶液(60mL)を一晩加熱還流した。析出した黄色固体をろ別し、減圧乾燥した。収量:652mg(1.15mmol)、収率:93.7%
FT-IR in CH2Cl2 ν(CO)/cm-1:2022,1918,1895
【実施例】
【0087】
合成例5
Re(Br2bpy)(CO)3Br
Re(CO)5Br(503mg,1.24mmol)と4,4’-ジブロモ-2,2’-ビピリジン(Br2bpy)(464mg,1.48mmol)を含むトルエン溶液(60mL)を一晩加熱還流した。析出した黄色固体をろ別し、減圧乾燥した。
収量:803mg(1.21mmol)、収率:97.7%
FT-IR in CH2Cl2 ν(CO)/cm-1:2026,1928,1905
【実施例】
【0088】
合成例6
[Re(bpy)(CO)3(MeCN)](PF6)(Re-MeCNと略すことがある)
Re(bpy)(CO)3Br(596mg,1.18mmol)とAgPF6(327mg,1.29mmol)を含むアセトニトリル(60mL)を一晩加熱還流した。析出したAgBrをセライト層で取り除き、溶媒を減圧留去した。NH4PF6が飽和したアセトニトリル/水(1:1v/v)を添加し、ゆっくりとアセトニトリルを減圧留去することで黄白色の固体を得た。これをアセトニトリル/ジエチルエーテル/ヘキサンを用いて再結晶し、得られた黄色固体を減圧乾燥した。
収量:363mg,(5.92×10-1mmol)、収率:50.3%
ESI-MS in MeCN m/z=468[M-PF6-+
FT-IR in MeCN ν(CO)/cm-1:2041,1938
1H-NMR in CD3CN(298MHz):δ(ppm)=9.02(dd,J=5.6,1.5Hz,2H,bpy-6,6’),8.47(dd,J=8.2,1.1Hz,2H,bpy-3,3’),8.28(ddd,J=8.2,8.2,1.5Hz,2H,bpy-4,4’),7.71(ddd,J=8.2,5.6,1.1Hz,2H,bpy-5,5’),2.03(s,3H,CH3CN)
Elemental analysis:Calcd.(%)for C151333RePF6:C 29.40;H 1.81;N 6.86
Found:C 29.35;H 1.65;N 6.91
【実施例】
【0089】
合成例7
[Re(dmb)(CO)3(MeCN)](PF6)(Re(Me)MeCNと略すことがある)
Re(dmb)(CO)3Br(500mg,9.34×10-1mmol)とAgPF6(303mg,1.19mmol)を含むアセトニトリル溶液(60mL)を一晩加熱還流した。析出したAgBrをセライト層で取り除き、溶媒を減圧留去した。NH4PF6が飽和したアセトニトリル/水(1:1v/v)を添加し、ゆっくりとアセトニトリルを減圧留去することで黄白色の固体を得た。これをアセトニトリル/ジエチルエーテル/ヘキサンを用いて再結晶し、得られた黄白色固体を減圧乾燥した。
収量:478.6mg,(7.47×10-1mmol)、収率:79.9%
ESI-MS in MeCN m/z=496[M-PF6-+
FT-IR in MeCN ν(CO)/cm-1:2039,1935
1H-NMR in CD3CN(298MHz):δ(ppm)=8.82(d,J=5.5Hz,2H,bpy-6,6’),8.32(s,2H,bpy-3,3’),7.52(d,J=5.5Hz,2H,bpy-5,5’),2.58(s,6H,bpy-CH3),2.04(s,3H,CH3-CN)
Elemental analysis:Calcd.(%) for C171533RePF6:C 31.88;H 2.36;N 6.56
Found:C 31.85;H 2.19;N 6.59
【実施例】
【0090】
合成例8
[Re{(MeO)2bpy}(CO)3(MeCN)](PF6)(Re(MeO)MeCNと略すことがある)
Re{(MeO)2bpy}(CO)3Br(601mg,1.06mmol)とAgPF6(290mg,1.15mmol)を含むアセトニトリル溶液(60mL)を一晩加熱還流した。析出したAgBrをセライト層で取り除き、溶媒を減圧留去した。NH4PF6が飽和したアセトニトリル/水(1:1v/v)を添加し、ゆっくりとアセトニトリルを減圧留去することで黄白色の固体を得た。これをアセトニトリル/ジエチルエーテル/ヘキサンを用いて再結晶し、得られた黄白色固体を減圧乾燥した。
収量:443mg(6.59×10-1mmol)、収率:62.1%
ESI-MS in MeCN m/z=528[M-PF6-+
FT-IR in MeCN ν(CO)/cm-1:2038,1932
1H-NMR in CD3CN(298MHz):δ(ppm)=8.76(d,J=6.6Hz,2H,bpy-6,6’),7.92(d,2.7Hz,2H,bpy-3,3’),7.19(dd,J=2.7,6.6Hz,2H,bpy-5,5’),4.03(s,6H,CH3O),2.05(s,3H,CH3-CN)
Elemental analysis:Calcd.(%) for C171535RePF6:C 30.36;H 2.25;N 6.25
Found:C 30.85;H 2.24;N 6.43
【実施例】
【0091】
合成例9
[Re(Br2bpy)(CO)3(MeCN)](PF6)(Re(Br)MeCNと略すことがある)
Re(Br2bpy)(CO)3Br(600mg,9.04×10-1mmol)とAgPF6(242.4mg,9.59mmol×10-1mmol)を含むアセトニトリル溶液(60mL)を一晩加熱還流した。析出したAgBrをセライト層で取り除き、溶媒を減圧留去した。NH4PF6が飽和したアセトニトリル/水(1:1v/v)を添加し、ゆっくりとアセトニトリルを減圧留去することで黄白色の固体を得た。これをアセトニトリル/ジエチルエーテル/ヘキサンを用いて再結晶し、得られた赤褐色固体を減圧乾燥した。
収量:435mg(5.65×10-1mmol)、収率:62.5%
ESI-MS in MeCN m/z=626[M-PF6-+
FT-IR in MeCN η(CO)/cm-1:2042,1941
1H-NMR in CD3CN(298MHz):δ(ppm)=8.81(d,J=6.0Hz,2H,bpy-6,6’),8.72(d,2.0Hz,2H,bpy-3,3’),7.92(dd,J=2.0,6.0Hz,2H,bpy-5,5’),2.06(s,3H,CH3-CN)
Elemental analysis:Calcd.(%) for C15933Br2RePF6:C 23.39;H 1.18;N 5.46
Found:C 23.56;H 1.10;N 5.62
【実施例】
【0092】
合成例10
Re(bpy)(CO)3(OCOH)(Re-OCOHと略すことがある)
Re(bpy)(CO)3Br(301mg,5.95×10-1mmol)と過剰量のギ酸ナトリウム(4.05g,59.6mmol)を含むエタノール/水混合溶液(1:1v/v,50mL)を一晩加熱還流した。ゆっくりとエタノールを減圧留去した。ジクロロメタンを添加して水で3回抽出した。有機層の溶媒を減圧留去後、アセトン/ジエチルエーテル/ヘキサンで再結晶し、得られた黄色固体を減圧乾燥した。
収量:70.4mg (1.49×10-1mmol)、収率:25.1%
ESI-MS in MeCN m/z=626[M-PF6-+
FT-IR in CH2Cl2 ν(CO)/cm-1:2022,1918,1896
1H-NMR in CD3CN(298MHz):δ(ppm)=9.02(dd,2H,J=5.6,1.6Hz,bpy-6,6’),8.40(dd,2H,J=8.3,1.1Hz,bpy-3,3’),8.20(ddd,2H,J=8.3,8.3,1.6Hz,bpy-4,4’),7.61(ddd,2H,J=8.3,5.6,1.1Hz,bpy-5,5’),7.81(s,1H,HCOO)
Elemental analysis:Calcd.(%) for C14925Re:C 35.67;H 1.92;N 5.94
Found:C 35.63;H 1.82;N 6.01
【実施例】
【0093】
合成例11
Re(bpy)(CO)3(OTf)
Re(bpy)(CO)3Br(1.00g,1.97mmol)とAgOTf(553mg,2.15mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(60mL)を一晩加熱還流した。析出したAgBrをセライト層で取り除き、溶媒を減圧留去した。析出した固体をジクロロメタン/ジエチルエーテル/ヘキサンを用いて再結晶し、得られた黄褐色固体を減圧乾燥した。
収量:902mg(1.56mmol)、収率:79.0%
FT-IR νCO[cm-1]in CH2Cl2:2036,1935,1915
【実施例】
【0094】
合成例12
[Re{4,4’-(MeO)2bpy}(CO)3{P(OC253}](PF6
Re[4,4’-(MeO)2bpy(CO)3MeCN](501mg,7.44×10-1mmol)とP(OC253(ca.1mL,6mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液を暗所で一晩加熱還流した。遮光しながら、油回転ポンプを用いて溶媒および未反応のP(OC253を減圧留去した。得られた固体をジクロロメタン/ジエチルエーテルで再結晶し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン:メタノール=100:0~100:3v/v)で分離精製した。三番目のフラクションをさらに、ジクロロメタン/ジエチルエーテルで再結晶し、得られた黄白色固体を減圧乾燥した。収量:413mg(5.18×10-1mmol)、収率:69.6%
ESI-MS in MeCN m/z=653[M-PF6-+
FT-IR in CH2Cl2 ν(CO)/cm-1:2044,1958,1925
1H-NMR in CD3CN(298MHz):δ(ppm)=8.59(d,J=6.4Hz,2H,bpy-6,6’),7.94(d,J=2.6Hz,2H,bpy-3,3’),7.09(dd,J=2.6,6.4Hz,2H,bpy-5,5’),4.16(s,6H,CH3O),3.82(quin,J=7.1,7.1,7.1,7.1Hz,6H,OCH2CH3),1.09(t,J=7.1,7.1Hz,9H,OCH2CH3
Elemental analysis:Calcd.(%) for C21272862Re:C 31.62;H 3.41;N 3.51
Found:C 31.67;H 3.25;N 3.57
【実施例】
【0095】
合成例13
Re(bpy)(CO)3(OH)
Re(bpy)(CO)3(OTf)(303mg,5.21×10-1mmol)と水酸化カリウム(1.35g,24.1×10mmol)を含むアセトン/水混合溶液(4:3v/v,70mL)を一晩加熱還流した。ゆっくりアセトンを減圧留去し、析出した黄色固体をろ別し、減圧乾燥した。
収量:120mg(2.71×10-1mmol)、収率:51.5%
【実施例】
【0096】
合成例14
Re(bpy)(CO)3(OCO2H)
Re(bpy)(CO)3(OH)(52.0mg,1.17×10-1mmol)を含むアセトン溶液に、CO2ガスを20分間通気した。析出した黄色固体をろ別して減圧乾燥した。
収量:51.5mg(1.06×10-1mmol)、収率:90.1%
FT-IR in KBr ν(CO)/cm-1:2022,1895,1616,1602
【実施例】
【0097】
合成例15
[Re(bpy)(CO)3(DMF)](PF6
[Re(bpy)(CO)3(MeCN)](PF6)(56.3mg,92.0μmol)をDMF-d7に溶解させ、Ar雰囲気下で暗所に12時間静置することで、MeCN配位子を完全にDMFに置換させた。
1H NMR in DMF-d7(500MHz):δ(ppm)=9.27(ddd,2H,J=0.5,1.0,5.5Hz,bpy-6,6’),8.95(d,2H,J=8.0Hz,bpy-3,3’),8.54(ddd,2H,J=1.0,8.0,8.0Hz,bpy-4,4’),7.97(ddd,2H,J=1.0,5.5,8.0Hz,bpy-5,5’)
13C NMR in DMF-d7(126MHz):δ(ppm)=196.9,193.2,156.5,154.9,142.0,128.9,125.2
FT-IR in DMF ν(CO)/cm-1:2029,1922,1913
【実施例】
【0098】
合成例16
Re(bpy)(CO)3{O-CO-OCH2CH2N(CH2CH2OH)2

[Re(bpy)(CO)3(DMF)]+を含むDMF溶液(2mL)にトリエターノルアミン(TEOA)を(200μL)添加した。12時間静置することで、DMF配位子の一部をTEOAに置換させ、[Re(bpy)(CO)3(DMF)]+およびRe(bpy)(CO)3(TEOA)の平衡混合物へと変化させた。
【実施例】
【0099】
【化14】
JP0006615175B2_000015t.gif
【実施例】
【0100】
この溶液にCO2を30分間通気した。このとき、Re(bpy)(CO)3OCO2Hが沈殿したため、これをろ別し、ろ液をNMRスペクトルの試料溶液とした。
1H NMR in DMF-d7-TEOA(10:1v/v)(500MHz):δ(ppm)=9.19(ddd,2H,J=0.5,1.0,5.5Hz,bpy-6,6’),8.82(d,2H,J=8.0Hz,bpy-3,3’),8.42(ddd,2H,J=1.0,8.0,8.0Hz,bpy-4,4’),7.87(ddd,2H,J=1.0,5.5,8.0Hz,bpy-5,5’)
13C NMR in DMF-d7-TEOA(10:1v/v)(126MHz):δ(ppm)=198.4,194.4,158.4(C=O),156.0,153.8, 140.9,128.0,124.4
FT-IR in DMF-TEOA(5:1v/v) ν(CO)/cm-1:2020,1915,1892
ESI-MS in MeCN m/z=620[M+H+-PF6-+,642[M+Na+-PF6-+
【実施例】
【0101】
合成例17
Mn(bpy)(CO)3Br
2,2’-ビピリジン(bpy)(0.57g,3.65mmol)とMn(CO)3Br(1.0g,3.65mmol)を含むジエチルエーテル溶液(400mL)を3時間加熱還流した。析出したオレンジ色粉末をろ別し、ジエチルエーテルで洗浄後減圧乾燥した。
収量:1.26g(92.6%)
1H NMR(400MHz,aceton-d6,ppm)δ=9.30(d,2H,J=4.8Hz;2H;H6,6’),8.58(d,2H,J=8.2Hz,H3,3’),8.23(td,2H,J=5.9Hz),7.75(t,J=5.9Hz,2H;H5,5’).
FT-IR(CH2Cl2):ν(CO)/cm-1,2028,1938,1922.
【実施例】
【0102】
合成例18
〔Mn(bpy)(CO)3CH3CN〕PF6
AgPF6(0.69g,3.65mmol)とMn(bpy)(CO)3Br(1.00g,2.71mmol)を含むアセトニトリル溶液(350mL)を、1時間40℃に加熱した。得られた混合物をセライトでろ過した。ろ液を減圧下に蒸発乾固し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄し減圧乾固した。
収量:1.23g(96.0%)
1H NMR(400MHz,CD3Cl3,ppm)δ=9.04(d,2H,J=3.6Hz;2H;H6,6’),8.41(d,2H,J=7.6Hz,H3,3’),8.22(td,2H,J=5.9Hz,H4,4’),7.66(t,2H,J=5.9Hz,H5,5’),2.10(s,3H,CH3
FT-IR(CH3CN):ν(CO)/cm-1,2028,1938,1923.
Elemental Anal.Calcd(%)for C138BrMnN23:C,37.44:H,2.30;N,8.73.
Found:C,37.56:H,2.21;N,8.83.
【実施例】
【0103】
合成例19
Mn(MeObpy)(CO)3Br
合成例18 Mn(bpy)(CO)3Brと同様にして、Mn(MeOpby)(CO)3Brを得た。
収量:96.3%
1H NMR(400MHz,aceton-d6,ppm)δ=9.02(d,2H,J=6.4Hz;H6,6’),8.13(d,2H,J=2.0Hz,H3,3’),7.30(dd,2H,J=6.4,2.0Hz,H5,5’),4.12(s,6H,OCH3
FT-IR(CH2Cl2):ν(CO)/cm-1 2026,1930,1918.
【実施例】
【0104】
合成例20
〔Mn(MeObpy)(CO)3CH3CN〕PF6
合成例18〔Mn(bpy)(CO)3CH3CN〕PF6と同様にして、〔Mn(MeObpy)(CO)3CH3CN〕PF6を得た。
収量:75.1%
1H NMR(400MHz,CD3Cl3,ppm)δ=8.72(d,2H,J=6.4Hz;2H;H6,6’),7.81(d,2H,J=2.6Ha,H3,3’),7.82(td,2H,J=2.6,6.4Hz,H4,4’),4.11(s,6H,OCH3),2.16(s,3H,NCCH3
FT-IR(CH3CN):ν(CO)/cm-1,2047,1953.
【実施例】
【0105】
合成例21
Mn(Brbpy)(CO)3Br
合成例17 Mn(bpy)(CO)3Brと同様にして、Mn(Brbpy)(CO)3Brを得た。
収量:0.64g(94.5%)
1H NMR(400MHz,aceton-d6,ppm)δ=9.17(d,2H,J=6.0Hz,2H,H6,6’),8.94(d,2H,J=1.8Hz,H3,3’),8.01(dd,2H,J=5.6,1.8Hz,H5,5’)
FT-IR(CH2Cl2):ν(CO)/cm-1,2030,1938.
【実施例】
【0106】
合成例22
〔Mn(Brbpy)(CO)3CH3CN〕PF6
合成例18 〔Mn(bpy)(CO)3CH3CN〕PF6と同様にして、〔Mn(Brbpy)(CO)3CH3CN〕PF6を得た。
収量:1.23g(96.6%)
1H NMR(400MHz,CDCl3,ppm)δ=8.83(d,2H,J=5.8Hz;2H;H6,6’),8.42(d,2H,J=2.2Hz,H3,3’),7.82(td,2H,J=2.2,5.8Hz,H4,4’),2.16(s,3H,CH3,H)
FT-IR(CH3CN):ν(CO)/cm-1,2051,1963.
Elemental Anal.Calcd(%)for C159Br2MnN33:C,28.20;H,1.42;N,6.58.
Found:C,28.50;H,1.28;N,6.69.
【実施例】
【0107】
合成例23(式(1)の金属錯体へのCO2付加反応)
(1)DMF-TEOA混合溶液中におけるRe-CO2-TEOAの生成
レニウム錯体を含む溶液にCO2を通気し、CO2が付加したレニウム錯体の観測を試みた。
Re-MeCNを5.30mMになるようにDMFへ溶解させ、Ar雰囲気で暗所に静置した。その後、TEOAを添加し、再びAr雰囲気下で暗所に静置した。そして、このDMF-TEOA混合溶液に対してCO2を30分間通気した。溶液のIRスペクトル変化を図3に示す。また、溶液の色の変化も観察した。さらに、CO2通気後の溶液にArを2時間通気し、溶液中の溶存CO2を除去した。このときのIRスペクトル変化を図4に示す。
【実施例】
【0108】
この平衡混合物にCO2を通気することで、これまで観測されていたピークは全て消失し、新たに2020cm-1、1915cm-1および1892cm-1にピークが観測された(図3)。そのIRピークの形状から、新たに生成した錯体はトリカルボニル構造を維持していると判断できる。また、CO2の通気に伴い、溶液の色が赤褐色から黄色に変化しており、Re-DMFまたはRe-TEOAがCO2と何らかの反応を起こしたことが示唆される。しかし、Re-DMFを含むDMF溶液にCO2を通気しても、IRスペクトルは変化しなかった。したがって、Re-TEOAがCO2と反応したと考えられる。また、新たに生成した錯体(Re-CO2-TEOA)のピークは、Re-DMFのピークよりも低波数側に位置しているが、Re-TEOAよりも高波数側にある。この波数関係は、Re-CO2-TEOAのもつ配位子の電子供与性が、DMF配位子より強いが、TEOA配位子よりは弱いことを示している。
【実施例】
【0109】
Arを通気すると、Re-CO2-TEOAのピークは大きく減少し、主にRe-TEOAのピークが回復した。2時間後、Re-CO2-TEOAのピークは完全に消失し(図4)、Re-DMFとRe-TEOAの濃度比はCO2通気前の平衡状態とほぼ同じになった。したがって、Re-CO2-TEOAの生成反応は可逆的であり、その平衡は溶液中のCO2濃度に依存することが分かった。
【実施例】
【0110】
(2)Re-CO2-TEOAの構造決定
Re-CO2-TEOAのMSスペクトルおよびNMRスペクトルから、その構造の特定を試みた。
図5に、Re-CO2-TEOA-を含むDMF-TEOA混合溶液(5:1v/v)のESI-MSスペクトルを示す。主に、Re-MeCN(m/z=468)、Re-DMF(m/z=500)、Re-TEOA(m/z=576)に加え、m/z=620にピークが観測された。
【実施例】
【0111】
m/z=620のピークは、Re(bpy)(CO)3(exact mass=426.42)にCO2(exact mass=44.01)とTEOA(exact mass=149.19)を足し合わせた一価の錯体(m/z=619.62)に対応する。
【実施例】
【0112】

1H-NMR及び13C-NMRにより、下記式のRe(bpy)(CO)3{O-CO-O-CH2CH2N(CH2CH2OH)2}が生成していることと結論づけられた。
【実施例】
【0113】
【化15】
JP0006615175B2_000016t.gif
【実施例】
【0114】
(3)Re-TEOAによる空気中のCO2取り込み
100%CO2ガスの代わりに一般空気を通気し、空気中のCO2がRe-TEOAに取り込まれるかを調べた。また、bpy配位子の4,4’位に電子求引性もしくは電子供与性の置換基を導入し、中心金属の電子密度とCO2を取り込み能力の関係についても調べた。
4,4’位に水素、メチル基、メトキシ基もしくはブロモ基が置換したbpy配位子を有するRe-MeCN、Re(Me)MeCN、Re(MeO)MeCNもしくはRe(Br)MeCNをそれぞれ合成した。各錯体をDMFに溶解させ、Ar雰囲気下で暗所に一晩静置し、次いで、TEOAを添加してAr雰囲気下で暗所に2時間静置することで、DMFもしくはTEOAが配位した錯体を含むDMF-TEOA混合溶液(5:1v/v)を調製した。ダイヤフラムポンプを用いて、各溶液に空気を1~2時間通気したときのIRスペクトル変化を観察した。また、2060~1980cm-1の範囲でカーブフィッティング解析を行い、各錯体のピークを分離した。図6に、各溶液のIRスペクトルとカーブフィッティング曲線をまとめて示す。
【実施例】
【0115】
その結果、いずれのbpy配位子を有するレニウム錯体の場合も、TEOAが配位した錯体の一部は、通気した空気に含まれるCO2を取り込んでいることが分かった。また、全レニウム錯体のうち、10~30%が空気中のCO2を取り込んでいた。本結果は、レニウム錯体がCO2のよい吸収剤として働くことを示している。また、水蒸気が含まれた気体を通気したため、溶液中に水を供給してしまうことで、Re-OHやRe-OCO2Hの生成が競合すると予想された。しかし、空気を通気しても黄色固体は析出しなかったため、これらの錯体は生成していないか、その存在量は無視できるほど少ないと考えられる。
CO2を取り込む効率は、bpy配位子上の置換基によって大きく異なり、その平衡はHammett則に従うことが分かった。Hammettプロットでは正の相関(ρ=0.8>0)が見られ、レニウムの電荷密度が小さくなるほど、Re-TEOAによるCO2取り込みは起こりやすくなるという傾向を見出した。
【実施例】
【0116】
また、100%CO2ガスの代わりに、1%CO2又は10%CO2を通気し、CO2がRe-TEOAに取り込まれるかを調べた結果、高効率でCO2が取り込まれ、前記と同様の化合物Re(bpy)(CO)3O-CO-O-CH2CH2N(CH2CH2OH)2}が生成していることが判明した。
【実施例】
【0117】
(4)Mn(bpy)(CO)3(MeCN)、Mn(MeObpy)(CO)3(MeCN)又はMn(Brbpy)(CO)3(MeCN)をトリエタノールアミン(TEOA)を含むDMFに溶解し、これにCO2を吹き込み、Re錯体の場合と同様にCO2取り込みが生じるか否かをFT-IRの測定により検討した(図13)。
その結果、次の反応が生じていることが確認された。
【実施例】
【0118】
【化16】
JP0006615175B2_000017t.gif
【実施例】
【0119】
(5)また、低濃度のCO2を用いた場合でもCO2取り込みが生じるか否かを検討した。CO2の代わりに空気を吹き込むことによるCO2の取り込みを検討した。その結果、Mn(bpy)(CO)3{OCH2CH2N(CH2CH2OH)2}では21.7%、Mn(MeObpy)(CO)3{OCH2CH2N(CH2CH2OH)2}では14.7%、及びMn(Brbpy)(CO)3{OCH2CH2N(CH2CH2OH)2}では37.1%のCO2の取り込みが観察された。
【実施例】
【0120】
(6)また、100%CO2ガスの代わりに、1%CO2、2%CO2、5%CO2、10%CO2を通気し、CO2がMn(bpy)(CO)3(OCH2CH2NH(CH2CH2OH)2)、Mn(MeObpy)(CO)3(OCH2CH2N(CH2CH2OH)2)、又はMn(Brbpy)(CO)3(OCH2CH2N(CH2CH2OH)2)に対するCO2の取り込みを検討した。その結果、表1のように効率よくCO2が取り込まれていることが判明した。
【実施例】
【0121】
【表1】
JP0006615175B2_000018t.gif
【実施例】
【0122】
(7)トリエタノールアミンに代えて、他の化合物を配位させたMn錯体のCO2取り込みを検討した。
Mn錯体(Mn(bpy)(CO)3(CH3CN))をDMF-TEA(トリエチルアミン)に溶解し、CO2を吹き込んだ。その結果、Mn(bpy)(CO)3(OEt)が生成し、これにCO2が付加したMn(bpy)(CO)3OC(O)OEtが生成していることが判明した。
【実施例】
【0123】
(8)トリエタノールアミンに代えて、ジエタノールアミン(DEOA)を配位させたMn錯体のCO2取り込みを検討した。
Mn錯体をDMF-DEOA混合溶液に溶解し、この溶液にCO2を吹き込むと溶液中に存在するDEOAと反応してカルバミン酸が生成し、これが錯体に配位することでカルバメート錯体Mn(bpy)(CO)3(OCON(CH2CH2OH)2)が生成することがわかった。図14に、Mn錯体のDMF-DEOA中、様々な濃度のCO2雰囲気下におけるIRスペクトル変化を示す。
【実施例】
【0124】
(9)トリエタノールアミンに代えて、ジエチルアミン(DEA)を配位させたMn錯体のCO2取り込みを検討した。
その結果、Mn(bpy)(CO)3(CH3CN)からMn(bpy)(CO)3(DEA)が生成し、これにCO2が付加したMn(bpy)(CO)3(OCON(Et)2)が生成していることが確認された。
【実施例】
【0125】
(10)トリエタノールアミンに代えて、他の化合物を配位させたRe錯体のCO2取り込みを検討した。
Re錯体(Re(bpy)(CO)3(CH3CN)にDMF中、DEOA(ジエタノールアミン)を作用させ、CO2を吹き込んだ。その結果、Re(bpy)(CO)3(NH(CH2CH2OH)2)が生成し、これにCO2が付加したRe(bpy)(CO)3(OCON(CH2CH2OH)2)が生成していることが判明した。
【実施例】
【0126】
(11)Re錯体(Re(bpy)(CO)3(CH3CN)にジエチルアミン(DEA)を配位させたRe錯体のCO2取り込みを検討した。
その結果、(Re(bpy)(CO)3(CH3CN)からRe(bpy)(CO)3(DEA)が生成し、これにCO2が付加したRe(bpy)(CO)3(OCON(Et)2)が生成していることが確認された。
【実施例】
【0127】
試験例1(Re錯体を用いた電気化学的還元によるCOの生成)
図1および図2に概略図を示す、イオン交換膜(Nafiion-H)を挟んだH型電気化学セルを作製した。作用極側には、0.5mMのRe(4,4’-(Me)2(bpy)(CO)3OCOOCH2CH2N(CH2CH2OH)、0.1M Et4NBF4を含有する84mLのDMF-TEOA(体積比5:1)溶液を加えた。一方、対極側には、0.1M Et4NBF4を含有する84mLのDMF-TEOA(体積比5:1)溶液を加えた。作用極には、網状ガラス質炭素(グラッシーカーボン)、対極には白金十字メッシュ電極、参照電極には銀/硝酸銀電極を用いた。図9には、本試験例1における印加電圧設定のために実施したサイクリックボルタメトリー測定結果を示す。図9より、印加電圧-2.0V近傍で顕著な電流応答が確認され、CO2の触媒的還元反応が発現していると判断される。
作用極側に10%CO2、50%CO2又は100%CO2(CO2以外はAr)をバブリングし、-2.1V(参照電極はAg/AgNO3)の電圧を印加した。その結果、図7に示すように、CO2濃度が10%でもCO2がCOに選択的に還元されることが判明した。CO生成のファラデー効率は、ほぼ100%であった。
【実施例】
【0128】
試験例2
試験例1の作用電極側の溶媒DMF-TEOAをDMFに代えた以外は、同様の電気化学セルを作製した。10%CO2ガスをバブリングしている最中に、作用極側にTEOA7mLを追加して、COの発生電流の変化を観察した。
その結果、図8に示すように、電流値が0.76mAから4.85mAへ約6倍に増加しており、TEOA添加によりCO2付加作用形成をさせた(平衡関係をCO2付加体生成側に変化させた)ほうが、CO2還元能が向上することがわかる。
【実施例】
【0129】
試験例3(Mn錯体とTEOAを用いた電気化学的還元によるギ酸の生成)
イオン交換膜(Nafiion-H)を挟んだH型電気化学セルを作製した。作用極側には、0.5mMのMn(bpy)(CO)3OCOOCH2CH2N(CH2CH2OH)、0.1M TEABF4を含有する84mLのDMF-TEOA(TEOA:1.26M)溶液を加えた。一方、対極側には、0.1M TEABF4を含有する84mLのDMF-TEOA(TEOA:1.26M)溶液を加えた作用極には、網状ガラス質炭素(グラッシーカーボン)、対極には白金十字メッシュ電極、参照電極には銀/硝酸銀電極を用いた。図10には、本試験例3における印加電圧設定のために実施したサイクリックボルタメトリー測定結果を示す。図11より、印加電圧-2.0V近傍で顕著な電流応答が確認され、CO2の触媒的還元反応が発現していると判断される。

作用極側に10%CO2又は100%CO2(CO2以外はAr)をバブリングし、2.0V(参照電極はAg/AgNO3)の電圧を印加した。その結果、図12及び図13に示すように、CO2濃度が10%でもギ酸が選択的に生成することが判明した。
【実施例】
【0130】
試験例4(Mn錯体とDEOAを用いた電気化学的還元によるギ酸の生成)
イオン交換膜(Nafiion-H)を挟んだH型電気化学セルを作成した。作用極側には、0.5mMのMn(bpy)(CO)3(OCONCH2CH2NR2)(R=CH2CH2OH)、0.1MのEt4NBF4、0.62MのDEOA、0.62Mのトリプロピルアミンを含むDMF溶液95mLを加えた。対極側には、0.1MのEt4NBF4、0.62MのDEOA、0.62Mのトリプロピルアミンを含むDMF溶液95mLを加えた。作用極には網目状ガラス質炭素、対極には白金メッシュ電極、参照極には銀/硝酸銀電極を用いた。図15には、本試験例4における印加電圧設定のために実施したサイクリックボルタメトリー測定結果を示す。図15より、印加電圧-1.85V近傍で顕著な電流応答が確認され、CO2の触媒的還元反応が発現していると判断される。
作用極側にCO2ガスをバブリングしながら、-1.85V(参照電極はAg/AgNO3)の電圧を印可した。その結果、CO2がHCOOHに高い選択性で還元されることがわかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15