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明細書 :乳児の社会脳発達促進用栄養組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-150284 (P2018-150284A)
公開日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 乳児の社会脳発達促進用栄養組成物
国際特許分類 A61K  38/11        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
C07K   7/64        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A61K 38/11
A61P 25/00
C07K 7/64 ZNA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2017-049151 (P2017-049151)
出願日 平成29年3月14日(2017.3.14)
発明者または考案者 【氏名】東田 陽博
【氏名】山本 靖彦
【氏名】原島 愛
【氏名】出口 喜三郎
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100139686、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 史朗
【識別番号】100192773、【弁理士】、【氏名又は名称】土屋 亮
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4H045
Fターム 4C084AA02
4C084BA44
4C084DB28
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZC511
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA30
4H045BA32
4H045BA35
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045EA30
要約 【課題】乳児における社会脳の発達を効果的に促進し、精神遅滞又は自閉症の発症を予防可能な栄養組成物を提供する。
【解決手段】乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は、オキシトシンを有効成分として含有し、経口投与されるものである。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
オキシトシン若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩を有効成分として含有し、経口投与されることを特徴とする乳児の社会脳発達促進用栄養組成物。
【請求項2】
腸の分解消化機能を有しない前記乳児に経口投与される請求項1に記載の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物。
【請求項3】
腸管バリア機能を有する前記乳児に経口投与される請求項2に記載の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物。
【請求項4】
生後2ヵ月以上10ヵ月以下の前記乳児に経口投与される請求項3に記載の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物。
【請求項5】
前記栄養組成物が育児用調製乳である請求項1~4のいずれか一項に記載の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、乳児の社会脳発達促進用栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
未熟児は、早産等で身体機能の発育が未熟のまま出生した子である。未熟児は、予定通りに生まれる新生児と比較して、生後の数日及び数週間における死亡率及び重病率が非常に高く、精神遅滞又は自閉症の発症リスクも高いことが知られている。世界保健機関(World Health Organization;WHO)の報告によると、毎年1500万人もの未熟児が産まれており、そのうちの100万人以上が死亡している。
【0003】
未熟児を含む乳児は、母親の血液に含まれるホルモン、栄養、及び微生物群等を得るために、母乳の摂取が推奨されている。母乳に含まれるホルモンであるオキシトシンは、陣痛促進剤として発見された9個のアミノ酸からなる環状ペプチドであり、主として脳視床下部のオキシトシン作動性ニューロンで合成され、下垂体後葉の神経末端から循環中に放出される。オキシトシンの生理的機能としては、分娩時の子宮収縮、乳汁分泌の促進等の生殖関連ホルモンとしての作用と、中枢神経系における神経伝達物質及び神経モジュレーター(変調物質)としての作用とが知られている。近年では、脳内オキシトシンは、社会性行動において重要な作用を有することで注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。
また、近年、自閉症スペクトラム障害及び統合失調症等の精神疾患を有するヒト及び健常なヒトの双方に多量のオキシトシンを鼻内投与した場合に血液脳関門(Blood brain barrier;BBB)を通過したとの報告がされている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0004】
本発明者らは、これまで、オキシトシンと後期糖化反応生成物受容体(Receptor for advanced gylcation end-products;RAGE)とが結合し、複合体を形成することを明らかにした(例えば、特許文献1参照。)。さらに、本発明者らは、RAGEが、BBBを通過させ、オキシトシンの脳内への移行を促進するための「トランスポーター」としての機能、及び血中でのオキシトシンを安定させるための「保護剤」としての機能を有することを明らかにした。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2016-113433号公報
【0006】

【非特許文献1】Insel, T. R., “The Challenge of Translation in Social Neuroscience: A Review of Oxytocin, Vasopressin, and Affiliative Behavior”, Neuron, vol.65, p768-779, 2010.
【非特許文献2】Kanat, M., et al., “Oxytocin and the social brain: Neural mechanisms and perspectives in human research”, Brain Research, 2013, http://dx.doi.org/10.1016/j.brainres.2013.11.003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、鼻内投与及び静脈内投与されたオキシトシンは、BBBを通過して脳内に到達することが明らかとなっていた。しかしながら、通常小腸等の消化管から吸収されるのは、平均分子量500以下の低分子ポリペプチドや遊離アミノ酸であり、オキシトシンの分子量は約1000程度であることから、経口投与しても分解され、吸収されないと考えられていた。そのため、これまで、経口投与により消化管から吸収されるという知見はなかった。
また、これまで、自閉症スペクトラム障害及び統合失調症等の精神疾患を有する成人におけるオキシトシンの作用機序及び治療剤としての効果については検討されてきた。一方、精神遅滞又は自閉症の発症リスクの高い、未熟児を含む乳児に対する検討はなされておらず、精神遅滞又は自閉症の発症リスクを低減できる予防方法、又は効果的な治療方法が求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、乳児における社会脳の発達を効果的に促進し、精神遅滞又は自閉症の発症を予防可能な栄養組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、オキシトシン若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩を経口投与した場合において、乳児の腸管においてRAGEを介してオキシトシンが選択的に吸収されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1態様に係る乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は、オキシトシンを有効成分として含有し、経口投与されるものである。
前記乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は、腸の分解消化機能を有しない前記乳児に経口投与されてもよい。
前記乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は、腸管バリア機能を有する前記乳児に経口投与されてもよい。
前記乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は、生後2ヵ月以上10ヵ月以下の乳児に経口投与されてもよい。
前記栄養組成物が育児用調製乳であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、乳児における社会脳の発達を効果的に促進し、精神遅滞又は自閉症の発症を予防可能な栄養組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】実施例1におけるオキシトシン又はPBSを経口投与した生後1~15日目の野生型仔マウスでの血漿オキシトシン濃度の推移を示すグラフである。
【図1B】実施例1におけるオキシトシンを経口投与した生後6日目の野生型仔マウスでの血漿オキシトシン濃度の経時変化を示すグラフである。
【図1C】実施例1における異なるオキシトシン量を経口投与した生後6日目の野生型仔マウスでの血漿オキシトシン濃度を示すグラフである。
【図2A】比較例1におけるオキシトシン又はPBSを経口投与した生後1~15日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)での血漿オキシトシン濃度の推移を示すグラフである。
【図2B】実施例1及び比較例1におけるオキシトシンを経口投与した生後1~8日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)での血漿オキシトシン濃度の推移を示すグラフである。
【図2C】試験例1におけるオキシトシンを経口投与した生後5日目の同腹の各遺伝子型の仔マウスでの血漿オキシトシン濃度を示すグラフである。
【図2D】生後1~8日目から成体期までの野生型マウス及びAgerノックアウトマウスにおける血漿OT濃度の増加と、腸管バリア機能の形成、分解消化機能の発達、及びRAGE依存的な吸収機構との関係を示す図である。
【図3A】試験例2における生後1及び5日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸上部切片を用いたオキシトシン投与試験のためのインビトロ試験系を示す概略図である。
【図3B】試験例2における生後1日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸上部切片を用いたインビトロ試験系でのオキシトシン投与後の培養液中のオキシトシン濃度の経時変化を示すグラフである。
【図3C】試験例2における生後5日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸上部切片でのオキシトシン投与後の培養液中のオキシトシン濃度の経時変化を示すグラフである。
【図4A】試験例3における生後3日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸上部切片を用いたHEMATOXYLIN-EOSIN(HE)染色、並びにDAPI及び抗RAGE抗体による蛍光染色の結果を示す画像である。なお、左下の画像は、生後3日目の野生型仔マウスの腸上部切片を用いた抗RAGE抗体による蛍光染色の一部を拡大した画像である。
【図4B】試験例3における野生型マウス胚(18.5dpc)の腸上部切片を用いたDAPI及び抗RAGE抗体による蛍光染色の結果を示す画像である。
【図5】実施例2におけるオキシトシンを含有するスキムミルクを経口投与した生後8週齢の雄野生型マウスでの血漿オキシトシン濃度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪乳児の社会脳発達促進用栄養組成物≫
本発明の一実施形態に係る乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は、オキシトシン若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩を有効成分として含有し、経口投与されるものである。

【0014】
本実施形態の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物によれば、乳児における社会脳の発達を効果的に促進し、精神遅滞又は自閉症の発症を予防することができる。

【0015】
一般に、「社会脳」とは、社会性行動に関わる脳の部位を示し、具体的には、扁桃体、眼窩前頭野、側頭葉等が挙げられる。乳幼児期における社会脳の発達障害は、精神遅滞、又は自閉症の発症と関連があると考えられている。特に、未熟児は、精神遅滞又は自閉症の発症リスクの高いことが知られている。
そのため、本実施形態においては、未熟児を含む乳児期での社会脳の発達を促進することで、精神遅滞又は自閉症の発症を効果的に予防することができる。

【0016】
なお、一般に、「乳児」とは、生後から1歳未満の児童を示す。
また、一般に、「未熟児」とは、早産等で身体機能の発育が未熟のまま出生した新生児を示す。医学的には、未熟児は、低出生体重児及び早産児を組み合わせて表現されることが多い。
また、一般に、「低出生体重児」とは、体重が2,500グラム未満の新生児をいい、1,500グラム未満は「極低出生体重児」、1,000グラム未満は「超低出生体重児」と呼ばれる。
また、一般に、「早産児」とは、在胎週数による分類で、通常よりも早く生まれた新生児を示し、早生児とも呼ばれる。通常の在胎週数は37週から42週未満で、この間に生まれた新生児は「正期産児」、22週から36週の間に生まれた子が「早産児」、在胎42週以上で生まれた子は「過期産児」と呼ばれる。早産児は、母胎にいる期間が短い分、低体重や身体機能が未発達であることが多い。

【0017】
なお、一般に、「精神遅滞」とは、知的機能が全般的に平均よりも低く、環境に適応することが困難な状態を示す。学校教育法上では「知的障害」とも呼ばれる。
また、一般に、「自閉症」とは、広汎性発達障害の一つで、「意思伝達等コミュニケーション能力の困難」、「対人関係の困難」、「物事への興味と関心が狭く特定の事にこだわる」等を特性とする先天的な脳機能障害を示す。自閉症は、「高機能自閉症」と「低機能自閉症」とに分類される。「高機能自閉症」は、知能指数(Intelligence Quotient;IQ)が70以上(健常者のIQは約100)で、知的障害を伴わない自閉症を示す。高機能自閉症には、「アスペルガー症候群」、「サヴァン症候群」等の症状が含まれる。一方、「低機能自閉症」は、IQが70以下で、軽度から重度までの知的障害を伴う自閉症を示す。また、低機能自閉症は、癲癇(てんかん)発作の発生や癲癇の脳波を持つ場合が多く見られる。低機能自閉症には、「カナー症候群」等の症状が含まれる。また、低機能自閉症には、「折れ線型自閉症」と呼ばれる自閉症も含まれる。「折れ線型自閉症」は、一度は正常に発達した(又は発達したように見えた)ものの、しばらくして発達して覚えた言葉や動作等が無くなる、又は使えなくなる自閉症を示す。
本明細書における「自閉症」は、上記自閉症を全て包含する。また、「精神障害の診断と統計マニュアル第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)-V)」による自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder)も包含する。

【0018】
<オキシトシン>
一般に、「オキシトシン」は、配列番号1に示すアミノ酸配列からなり、1位及び6位のシステイン残基がジスルフィド結合して環状構造を形成する分子量約1000のペプチドである。オキシトシンは、中枢神経系及び末梢の双方に存在し、神経伝達物質及びホルモンとしての機能を有している。オキシトシンは、脳内での半減期は数時間とされているのに対して、血中での安定性は低く、半減期は数分~数十分とされている。
本発明者らは、これまで、オキシトシンが後期糖化反応生成物受容体(Receptor for advanced gylcation end-products;RAGE)と結合し、複合体を形成することを明らかにした。RAGEには、膜結合型RAGE(membrane-bound full-length RAGE;mRAGE)、内在性分泌型RAGE(endogenous secretory RAGE;esRAGE)、及びmRAGEの細胞外ドメイン切断形態の可溶性RAGE(soluble RAGE;sRAGE)が存在する。いずれのRAGEもオキシトシンと結合し、複合体を形成することができる。オキシトシンはRAGEと複合体を形成することで、BBBを通過して脳内への移行が促進される。また、オキシトシンは、esRAGE又はsRAGEと結合し、血中で安定して存在することができる。

【0019】
さらに、今回、本発明者らは、腸管バリア形成後の腸内において、オキシトシンがRAGEを介して吸収されることを初めて見出した。後述の実施例にも示すとおり、腸の絨毛の上皮細胞において、細胞膜上にmRAGEが多く発現していると推察され、オキシトシンは、このmRAGEを介して、消化管から血液内へ選択的に吸収されると考えられる。
従来では、腸管バリア形成後の腸内において、オキシトシンは経口摂取しても消化され吸収されず、オキシトシンは、鼻内投与又は血管(静脈又は動脈)内投与されなければ、脳内まで到達しないと考えられていた。
これに対し、本実施形態においては、オキシトシンを経口投与することにより、消化管から血液に移行されることが明らかとなった。これにより、非侵襲的にオキシトシンを投与することができ、乳児の体への負担を軽減することができる。

【0020】
また、本実施形態におけるオキシトシンとしては、社会脳発達促進能を有するものであれば、オキシトシンの前駆体、代謝誘導体、類縁体、又はオキシトシンアゴニストも包含される。
オキシトシンの類縁体として具体的には、例えば、アネトシン、カルベトシン、メソトシン、イソトシン等が挙げられ、これらに限定されない。
さらに、本実施形態におけるオキシトシンとしては、天然に存在する若しくは人工的に修飾されたオキシトシン、又は上記類似体の変異体、及び誘導体も包含される。
また、本実施形態におけるオキシトシンには、配列番号1に示すアミノ酸配列に対して50%以上、好ましくは少なくとも60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%の同一性を有し、社会脳発達促進能を有するポリペプチドも包含される。

【0021】
なお、本明細書における「社会脳発達促進能」とは、主に、乳児において社会脳の発達を促進できることを意味する。

【0022】
また、本実施形態の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は、オキシトシン又はその類縁体の薬学的に許容される塩を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、「薬学的に許容できる」とは、被検動物に適切に投与された場合に、概して、副作用を起こさない程度を意味する。

【0023】
塩としては、薬学的に許容できる酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。
酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸等の無機酸との塩;一水素オルトリン酸ナトリウム及び水素硫酸カリウム酸等の金属塩等;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、グルタール酸、アスコルビン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、2-フェノキシ安息香酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸等)等の有機酸との塩等が挙げられる。
これら塩は、水和型であってもよく、無水型であってもよい。これら酸付加塩は、一般に水及び様々な親水性有機溶媒に可溶性を示す。

【0024】
塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、アンモニア等の無機塩基との塩;カフェイン、ピペリジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、メチルピリジン(ピコリン)等の有機塩基との塩等が挙げられる。これら塩基付加塩は、一般に水及び様々な親水性有機溶媒に可溶性を示す。

【0025】
(投与方法)
本実施形態の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物に含まれるオキシトシン若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩の投与量は、被検動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)の出生後の経過日数、性別、体重、症状等を勘案して適宜調節される。
例えば、経口投与の場合、1日あたり1ng/kg体重以上10mg/kg体重以下であればよく、10ng/kg体重以上1mg/kg体重以下であることが好ましい。

【0026】
本実施形態の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は出生後の新生児又は乳児に継続的に投与されることが好ましい。
投与の頻度は、毎日(1日1回、2回又は3回)、2日に1回、3日に1回、4日に1回、1週間に1回程度の割合で投与されることが好ましい。
投与形態としては、経口的投与が好ましい。
投与期間としては、出生後であればよく、出生後から腸の分解消化機能を有する前が好ましく、腸管バリア機能形成後から腸の分解消化機能を有する前がより好ましい。
より具体的には、ヒト乳児である場合、生後0日以上10ヵ月以下であればよく、生後2ヵ月以上10ヵ月以下であることが好ましい。非ヒト哺乳動物である場合は、上記期間となるように換算すればよい。
上記期間内に、本実施形態の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物を乳児に投与することにより、乳児の腸内において、RAGEを介して選択的にオキシトシンが吸収され、脳内に移行し、より効果的に社会脳の発達を促進することができる。

【0027】
<オキシトシンの製造方法>
オキシトシンは、公知の合成方法により製造すればよい。例えば、市販されているオキシトシンの製造方法は、例えば米国特許2,938,891及び3,076,797に記載されている。

【0028】
<用途>
本実施形態の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は、医薬品又は医薬部外品等の医薬組成物又は飲食品として用いることができる。

【0029】
(医薬組成物)
本実施形態の医薬組成物を乳児(特に未熟児)に投与することで、社会脳の発達促進、及び精神遅滞又は自閉症の発症を予防することができる。

【0030】
○組成成分
本実施形態の医薬組成物は、治療的に有効量のオキシトシン若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩を含む上述の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物、並びに薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む。薬学的に許容されうる担体又は希釈剤は、賦形剤、稀釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味料、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、添加剤等が挙げられる。
本実施形態の医薬組成物の剤形としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、丸剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等が挙げられる。中でも、乳児に投与されることから、剤形は、シロップ剤等の液剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、丸剤等であることが好ましい。
また、剤形が錠剤又は丸剤である場合、砂糖、シェラック、又は他の腸溶性コーティグンによって、コーティングしてもよい。特に、離乳食が開始される乳児(生後約5ヵ月以降の乳児)においては、腸の分解消化機能が発達し始めることから、オキシトシンが分解されにくく、腸内において高効率で吸収されるようにするために、腸溶性コーティングを施した錠剤を投与すればよい。

【0031】
また、担体としてコロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、オキシトシンの生体内安定性を高める効果や、脳又は神経細胞へ、オキシトシンの移行性を高める効果が期待される。コロイド分散系としては、例えば、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル、リポソームを包含する脂質を挙げることができる。

【0032】
さらには、薬理学上許容される担体又は希釈剤、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化されたものが挙げられる。

【0033】
○治療方法
本発明の一実施形態は、乳児の社会脳発達促進及び精神遅滞又は自閉症の発症の予防のための上述の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一実施形態は、治療的に有効量の上述の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物、並びに薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一実施形態は、医薬組成物を製造するための上述の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物の使用を提供する。
また、本発明の一実施形態は、上述の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物の有効量を、治療を必要とする患者に経口投与することを含む、乳児の社会脳発達促進及び精神遅滞又は自閉症の発症の予防のための治療方法を提供する。

【0034】
(飲食品)
本実施形態の飲食品を乳児(特に未熟児)に投与することで、社会脳の発達促進、及び精神遅滞又は自閉症の発症を予防することができる。
なお、本明細書において、「飲食品」とは、食品と飲料を合わせたものであり、主に加工食品を意味する。また、本実施形態の飲食品は、健康食品(特定保健用食品を含む)、機能性食品、健康飲料、機能性飲料を含む。
また、本実施形態の飲食品には、ペットフード又はペット用サプリメントも包含される。

【0035】
本実施形態の飲食品の形態は、固形状であっても液状であってもよく、上述の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物は食品添加物として添加して用いることができる。
飲食品の種類としては、具体的には、例えば、育児用調製乳(育児用調製粉乳、育児用液体ミルク、フォローアップミルクを含む。)、離乳食等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、本実施形態の飲食品としては、育児用調製乳であることが好ましい。

【0036】
○組成成分
本実施形態の飲食品が育児用調製乳である場合、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン類、及びミネラル類等、通常の育児用調製乳に含まれている主原料を配合すればよい。

【0037】
タンパク質としては、例えば、カゼイン、ホエータンパク質濃縮物(WPC)、ホエータンパク質分離物(WPI)、αS-カゼイン、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン等の乳タンパク質分画物;大豆タンパク質、小麦タンパク質等の植物タンパク質;これらのタンパク質を種々の分解度で酵素的に分解したペプチドやアミノ酸等が挙げられる。

【0038】
脂質としては、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂やカツオ油、マグロ油等を含む魚油等の動物性油脂;大豆油、菜種油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、エゴマ油、アマニ油、月見草油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、綿実油等の植物性油脂;これらの油脂の分別油、水添油、エステル交換油等が挙げられる。

【0039】
糖質としては、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、ショ糖、デキストリン、ガラクトシルラクトース、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース等のオリゴ糖;人工甘味料、可溶性多糖類、澱粉等を用いることができる。

【0040】
ビタミン類及びミネラル類としては、「乳幼児食品を含む特殊用途食品のCODEX規格及び関連衛生作業規則、cac/VOL.IX-第1版及びSupplement 1,2,3,4」(日本国際酪農連盟発行、1983年) 、「2012年版指定品目食品添加物便覧 (改訂第35版) 」 (食品と科学社発行、2012年) 、又は「届け出制食品添加物・食品素材天然物便覧 (第13版) 」 (食品と科学社発行、1995年) に記載のビタミン類及びミネラル類の中で、乳幼児食品に使用が可能なものが挙げられる。
ビタミン類としてより具体的には、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、β-カロチン、ニコチン酸アミド等を挙げられる。
ミネラル類としてより具体的には、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、ヨウ素、マンガン、セレン等を挙げることができる。

【0041】
本実施形態の飲食品が離乳食である場合、卵、牛乳、小麦粉等、通常の離乳食に含まれている主原料を配合すればよい。また、離乳食の使用目的や使用形態によっては、オキシトシンの吸収を妨げない範囲で使用する原料を自由に変更することが可能である。また、離乳食は、必要に応じて、ビタミン類及びカルシウム以外のミネラル類も添加することができる。

【0042】
離乳食の種類としては、例えば、ビスケット、ウエハース、煎餅、タマゴボーロ等のおやつ;フリーズドライやレトルトタイプのポタージュ、クリーム煮、シチュー、レバーペースト、グラタン等に加工食品等が挙げられ、これらに限定されない。
離乳食の製造方法は、通常の製造方法に従い、調理すればよい。

【0043】
本実施形態の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加剤を適宜配合してもよい。添加剤としては、例えば、砂糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、デキストリン、澱粉等の賦形剤、結合剤、希釈剤、香料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例等により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
[試験材料]
1.Ager-/-(RAGE KO)マウスの樹立
Ager遺伝子は、膜結合型RAGE(membrane-bound full-length RAGE;mRAGE)及び内在性分泌型RAGE(endogenous secretory RAGE;esRAGE)の二種類のスプライシングバリアントをコードする遺伝子である。
Ager-/-(RAGE KO)マウスは、公知の方法(「Yamamoto, Y., et al., “Controlling the receptor for advanced glycation end-products to conquer diabetic vascular complications”, J. Diabetes Investig., vol.3, p107-114, 2012.」、「Harashima, A. et al., “Identification of mouse orthologue of endogenous secretory receptor for advanced glycation end-products: structure, function and expression”, Biochem. J., vol.396, p109-115, 2006.」、「Sakatani, S. et al., “Deletion of RAGE causes hyperactivity and increased sensitivity to auditory stimuli in mice”, PLoS One, vol.4, e8309, 2009.」)を用いて、作製した。
具体的には、まず、ターゲッティングベクターを構築した。ターゲティングベクターは、イントロン2のネオカセットに隣接する2つのloxP部位、及びAger遺伝子のエクソン1の0.6kb程5’上流に挿入されたもう一つのloxP部位を含み、さらに翻訳開始部位を含む。
【実施例】
【0046】
次いで、ターゲッティングベクターをE14-1胚性幹細胞に導入して、Ager遺伝子を標的化後、PCR及びサザンブロッティングにより、6つの標的化クローンを同定した。次いで、そのうちの2つの標的化クローンを、続く試験に使用した。この遺伝子座に3つのloxP部位全て含む2つのクローンから、生殖系列キメラを得た。得られた雄キメラマウスと、Creトランスジェニック雌マウス(CD-1バックグラウンド)とを交配させ、卵内にCreリコンビナーゼを一時的に発現させた。得られた新生仔マウスは、Ager及ネオカセットのエクソン1及び2の両方が欠損した対立遺伝子を保有することが確かめられた。なお、PCRによる遺伝子型判定のために、以下の表1に示す3種類のプライマーを使用した。以下に示す3種類のプライマーは、それぞれGenBankアクセッション番号AF030001のヌクレオチド73915-73936、74523-74544、及び74881-74902である。
【実施例】
【0047】
【表1】
JP2018150284A_000002t.gif
【実施例】
【0048】
得られたAgerノックアウトマウス(Ager-/-)をC57BL/6マウス(Charles River Japan)に8世代以上、戻し交配した。次いで、Ager-/-マウスとAger-/-マウスとを少なくとも10世代以上交配させて、Ager-/-マウスを維持させた。
また、Agerヘテロ接合突然変異体マウス(Ager+/-)は、Agerヘテロ接合突然変異体マウス(Ager+/-)同士を交配することで得られ、同腹の3つの遺伝子型の仔マウスを後述する試験例1において用いた。
【実施例】
【0049】
なお、以下の試験で用いられたAgerノックアウトマウス(Ager-/-)及びAger+/-ヘテロ接合突然変異体マウスは、本発明者らの実験室コロニー内で生まれたものである。21~28日齢で離乳され、ペアリングするまで、3~5匹の同性グループで収容した。
また、野生型マウス及びAger-/-マウスを、標準的なケージ条件下(24℃、12時間明暗サイクル、午前8時45分に点灯)であり、おがくずのベッド及び食物と水とが自由に与えられた環境で維持した。
また、妊娠しているAger-/-マウスは、出産1日前にきれいなケージに移した。子孫は、生物学的又は非生物学的な母マウスと共に成育した。雄マウス及び雌マウスは、45~55日齢にペアリングした。
単一の雄マウス及び単一の雌マウスを、交配期から仔の娩出まで、標準的な妊娠しているマウスケージにて、一緒に収容した。また、試験が始まるまで、各家系は同じケージに収容して成育した。
また、全ての動物実験は、金沢大学動物実験委員会の承認を受け、文部科学省管轄の学術研究機関における動物実験及び関連活動の適切な実施に関する基本ガイドラインに従って実施された。
【実施例】
【0050】
[実施例1]野生型マウスへのオキシトシンの経口投与試験
1.生後1~15日目の野生型仔マウスにおける血漿オキシトシン(oxytocon;OT)濃度の推移
(1)オキシトシンの経口投与
授乳期間中の生後1~15日目の雄及び雌の野生型仔マウス(C57BL/6N系統)に、30分間の飢餓後、10μLの100M合成オキシトシン(oxytocon;OT)(Peptide Institute社製)溶液(オキシトシン1μg/匹)又は10μLのリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline;PBS)を、ニードル(28G)を用いて、経口投与した。なお、オキシトシンを投与した各生後経過日数の野生型仔マウスは3~15匹ずつ用い、PBSを投与した各生後経過日数の野生型仔マウスが3匹ずつ用いた。
【実施例】
【0051】
(2)血漿オキシトシン濃度の測定
経口投与から10分後に、各仔マウスの胸部を切開し、心臓から約30μLの血液を採取した。次いで、OT enzyme immunoassay(EIA) kit(Enzo Life Sciences社製)を用いて、血漿OT濃度を測定した。具体的には、5μLの血液試料とアッセイ緩衝液とを1:20の割合で氷上にて混合して、アッセイに用いた。OTアッセイは5pg/mLの感度を有し、アッセイ間及びアッセイ内の変動係数は15%未満であった。結果を図1Aに示す。図1Aに示すマウスの図は、マウスへのオキシトシン又はPBSの投与方法と、胸を開いた後の心臓からの採血方法とを示すものである。
【実施例】
【0052】
図1Aにおいて、オキシトシンを経口投与した生後1~15日目の野生型仔マウス(以下、「オキシトシン投与生後1~15日目の野生型仔マウス群」と称する場合がある。)、及びPBSを経口投与した生後1~15日目の野生型仔マウス(以下、「PBS投与野生型生後1~15日目の仔マウス群」と称する場合がある。)における二元配置分散分析(two-way analysis of variance;ANOVA)の結果、オキシトシン投与生後1~15日目の野生型仔マウス群とPBS投与生後1~15日目の野生型仔マウス群との間に有意差があることが明らかとなった(F8,90=3.32、P<0.002)。
また、ボンフェローニのポストホックテスト(Bonferroni’s post hoc tests)の結果から、オキシトシンを経口投与した生後、1、2、及び3~5日目の野生型仔マウスとオキシトシンを経口投与した生後8日目の野生型仔マウスとの間に有意差があることが明らかとなった(P<0.001(生後1日目)、P<0.01(生後2日目)、及びP<0.05(生後3~5日目))。
また、ボンフェローニのポストホックテストの結果から、オキシトシンを経口投与した生後1~6日目の野生型仔マウスとPBSを経口投与した生後1~6日目の野生型仔マウスとの間に有意差があることが明らかとなった(P<0.01)。
【実施例】
【0053】
図1Aから、オキシトシンを経口投与した生後1日目の野生型仔マウス及び生後2日目の仔マウスでは、PBSを経口投与した生後1日目の野生型仔マウスと比較して、血漿OT濃度が顕著に高かった。
また、オキシトシンを経口投与した生後3~5日目の野生型仔マウスまでは、PBSを経口投与した生後3~5日目の野生型仔マウスと比較して、血漿OT濃度が高いレベルが維持されていた。また、オキシトシンを経口投与した生後6日目の野生型仔マウスでは、血漿OT濃度が急激に低下したが、PBSを経口投与した生後6日目の野生型仔マウスよりも、血漿OT濃度は高いままであった。さらに、オキシトシンを経口投与した生後8及び15日目の野生型仔マウスでは、PBSを経口投与した生後8及び15日目の野生型仔マウスと、同程度の血漿OT濃度であった。
【実施例】
【0054】
2.生後6日目の野生型仔マウスにおける血漿OT濃度の経時変化
(1)オキシトシンの経口投与
生後6日目の野生型仔マウスに、「1.生後1~15日目の野生型仔マウスにおける血漿オキシトシン(oxytocon;OT)濃度の推移」の「(1)オキシトシンの経口投与」と同様の方法を用いて、オキシトシン溶液を経口投与した。
【実施例】
【0055】
(2)血漿オキシトシン濃度の測定
経口投与から0、10、30、60、90、及び120分後に、各仔マウス(N=5~8)の胸部を切開し、心臓から約30μLの血液を採取した。経口投与からの各経過時間の仔マウスを、4~5匹ずつ用いた。次いで、「1.生後1~15日目の野生型仔マウスにおける血漿オキシトシン(oxytocon;OT)濃度の推移」の「(2)血漿オキシトシン濃度の測定」と同様の方法を用いて、血漿OT濃度を測定した。結果を図1Bに示す。
図1Bにおいて、一元配置分散分析の結果、オキシトシンを経口投与し、投与から経過時間の異なる生後6日目の野生型仔マウス間に有意差があることが明らかとなった(F5,37=3.302、P<0.0001)。
また、オキシトシンを経口投与し、経口投与から10分後に血液採取した生後6日目の野生型仔マウスと対象値(PBSを経口投与し、経口投与から10分後に血液採取した生後6日目の野生型仔マウスにおける血漿OT濃度の値)との間に有意差があることが明らかとなった(P<0.02)。
【実施例】
【0056】
図1Bから、経口投与から10分後に血漿OT濃度はピークを示すことが確かめられた。
【実施例】
【0057】
3.生後6日目の野生型仔マウスにおける異なる量のオキシトシン投与試験
(1)オキシトシンの経口投与
生後6日目の野生型仔マウスに、0、200、400、又は1000ng/匹となるようにオキシトシン溶液を、「1.生後1~15日目の野生型仔マウスにおける血漿オキシトシン(oxytocon;OT)濃度の推移」の「(1)オキシトシンの経口投与」と同様の方法を用いて、経口投与した。各オキシトシン量を投与した野生型仔マウスを、3匹ずつ用いた。
【実施例】
【0058】
(2)血漿オキシトシン濃度の測定
経口投与から10分後に、各仔マウスの胸部を切開し、心臓から約30μLの血液を採取した。次いで、「1.生後1~15日目の野生型仔マウスにおける血漿オキシトシン(oxytocon;OT)濃度の推移」の「(2)血漿オキシトシン濃度の測定」と同様の方法を用いて、血漿OT濃度を測定した。結果を図1Cに示す。
図1Cにおいて、一元配置分散分析の結果、異なるオキシトシン量を経口投与した生後6日目の野生型仔マウス間に有意差があることが明らかとなった(F3,24=20.35、P<0.0001)。
また、ボンフェローニのポストホックテスト(Bonferroni’s post hoc tests)の結果、オキシトシンを1000ng/匹となるように経口投与した生後6日目の野生型仔マウスと、オキシトシンを0、200、又は400ng/匹となるように経口投与した生後6日目の野生型仔マウスとの間に有意差があることが明らかとなった(★★★P<0.001)。
【実施例】
【0059】
図1Cから、投与したOT量に依存して血漿OT濃度が上昇していた。
【実施例】
【0060】
[比較例1]
1.生後1~15日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)における血漿オキシトシン(oxytocon;OT)濃度の推移
(1)オキシトシンの経口投与
授乳期間中の生後1~15日目の雄及び雌のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)に、30分間の飢餓後、10μLの100M合成オキシトシン溶液(オキシトシン1μg/匹)又は10μLのPBSを、ニードル(28G)を用いて、経口投与した。なお、オキシトシンを投与した各生後経過日数のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)は3~15匹ずつ用い、PBSを投与した各生後経過日数のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)は3匹ずつ用いた。
【実施例】
【0061】
(2)血漿オキシトシン濃度の測定
経口投与から10分後に、各仔マウスの胸部を切開し、心臓から約30μLの血液を採取した。次いで、「1.生後1~15日目の野生型仔マウスにおける血漿オキシトシン(oxytocon;OT)濃度の推移」の「(2)血漿オキシトシン濃度の測定」と同様の方法を用いて、血漿OT濃度を測定した。結果を図2Aに示す。図2Aに示すマウスの図は、マウスへのオキシトシン又はPBSの投与方法と、胸を開いた後の心臓からの採血方法とを示すものである。
【実施例】
【0062】
図2A中において、オキシトシンを経口投与した生後1~15日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)(以下、「オキシトシン投与生後1~15日目のAger-/-仔マウス群」と称する場合がある。)、及びPBSを経口投与した生後1~15日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)(以下、「PBS投与生後1~15日目のAger-/-仔マウス群」と称する場合がある。)におけるANOVAの結果、オキシトシン投与生後1~15日目のAger-/-仔マウス群とPBS投与生後1~15日目のAger-/-仔マウス群との間に有意差があることが明らかとなった(F8,90=5.16、P<0.001)。
また、ボンフェローニのポストホックテストの結果から、オキシトシンを経口投与した生後1、2、及び3日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)とオキシトシンを経口投与した生後8日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)との間に有意差があることが明らかとなった(P<0.001(生後1日目)、P<0.01(生後2日目)、及びP<0.05(生後3日目))。
また、ボンフェローニのポストホックテストの結果から、オキシトシンを経口投与した生後1~3日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)とPBSを経口投与した生後1~3日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)との間に有意差があることが明らかとなった(P<0.01)。
【実施例】
【0063】
図2Aから、オキシトシンを経口投与した生後1~3日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)では、PBSを経口投与した生後1~3日目のAgerノックアウト仔マウスよりも、血漿OT濃度が有意に増加していた。しかしながら、オキシトシンを経口投与した生後4日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)では、血漿OT濃度が急激に低下した。さらに、オキシトシンを経口投与した生後4日目以降のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)では、PBSを経口投与した生後4日目以降のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)と、同程度の血漿OT濃度であった。
【実施例】
【0064】
[実施例1及び比較例1の考察]
図2Bは、実施例1及び比較例1におけるオキシトシンを経口投与した生後1~8日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)での血漿オキシトシン濃度の推移を比較したグラフである。
【実施例】
【0065】
図2Bにおいて、オキシトシンを経口投与した生後1~8日目の野生型仔マウス(以下、「オキシトシン投与生後1~8日目の野生型仔マウス群」と称する場合がある。)、及びオキシトシンを経口投与した生後1~8日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)(以下、「オキシトシン投与生後1~8日目のAger-/-仔マウス群」と称する場合がある。)におけるANOVAの結果、オキシトシン投与生後1~8日目の野生型仔マウス群とオキシトシン投与生後1~8日目のAger-/-仔マウス群との間に有意差があることが明らかとなった(F1,126=4.73、P<0.05)。
また、ボンフェローニのポストホックテストの結果から、オキシトシンを経口投与した生後4、5、及び6日目の野生型仔マウスとオキシトシンを経口投与した生後4、5、及び6日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)との間に有意差があることが明らかとなった(P<0.05(生後5日目)、★★P<0.01(生後4日目)、及び★★★P<0.001(生後6日目))。
【実施例】
【0066】
図2Bから、オキシトシンを経口投与した生後1~3日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)において、上昇した血漿オキシトシン濃度は、類似していた。しかしながら、オキシトシンを経口投与した生後4~6日目の野生型仔マウスと比較して、オキシトシンを経口投与した生後4~6日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)では、血漿OT濃度が有意に低かった。
【実施例】
【0067】
[試験例1]
1.オキシトシンを経口投与した生後5日目の同腹の各遺伝子型の仔マウスでの血漿オキシトシン濃度の比較
(1)オキシトシンの経口投与
生後5日目の同腹の野生型仔マウス(Ager+/+)、Agerヘテロ接合突然変異体マウス(Ager+/-)、及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)に、30分間の飢餓後、10μLの100M合成オキシトシン溶液(オキシトシン1μg/匹)を、ニードル(28G)を用いて、経口投与した。なお、野生型仔マウス(Ager+/+)を4匹、Agerヘテロ接合突然変異体マウス(Ager+/-)を8匹、及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)を3匹用いた。
【実施例】
【0068】
(2)血漿オキシトシン濃度の測定
経口投与から10分後に、各仔マウスの胸部を切開し、心臓から約30μLの血液を採取した。次いで、「1.生後1~15日目の野生型仔マウスにおける血漿オキシトシン(oxytocon;OT)濃度の推移」の「(2)血漿オキシトシン濃度の測定」と同様の方法を用いて、血漿OT濃度を測定した。結果を図2Cに示す。図2Cで、「+/+」は野生型仔マウス(Ager+/+)を示し、「+/-」はAgerヘテロ接合突然変異体マウス(Ager+/-)を示し、「-/-」はAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)を示す。
【実施例】
【0069】
図2Cにおいて、一元配置分散分析の結果、各遺伝子型の仔マウス間に有意差があることが明らかとなった(F2,22=20.35、P<0.0001)。
また、ボンフェローニのポストホックテストの結果、野生型仔マウス(Ager+/+)と、Agerノックアウト仔マウス(Ager-/-)との間に有意差があることが明らかとなった(P<0.01)。
【実施例】
【0070】
図2Cから、野生型仔マウス(Ager+/+)での血漿OT濃度は、Agerヘテロ接合突然変異体マウス(Ager+/-)での血漿OT濃度と同程度に高かった。また、野生型仔マウス(Ager+/+)での血漿OT濃度は、Agerノックアウト仔マウス(Ager-/-)での血漿OT濃度と比較して、有意に高かった。
また、詳細は示さないが、生後1~7日目の雄及び雌のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)において、体重の3.0倍の増加が観察され、発生遅延は見られなかった。また、11週齢の雄の成体マウスの平均体重は、野生型マウスとAgerノックアウトマウス(Ager-/-)とで大きな差異がなかった。
従って、Agerノックアウトマウス(Ager-/-)において、一般的な栄養素の吸収の妨害に起因する栄養異常は起きていないことが示唆された。
【実施例】
【0071】
図2Dは、生後1~8日目から成体期までの野生型マウス及びAgerノックアウトマウスにおける血漿OT濃度の増加と、腸管バリア機能の形成、分解消化機能の発達、及びRAGE依存的な吸収機構との関係を示す図である。図2Dにおいて、「0」は消化管におけるオキシトシンの吸収が全くない状態、「+」は消化管におけるオキシトシンの吸収が少ないがある状態、「++」は消化管におけるオキシトシンの吸収がある状態、「+++」は消化管におけるオキシトシンの吸収が最も高くある状態を示す。
【実施例】
【0072】
図2Dから、新生マウスから生後3日目までの野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)において、消化管におけるオキシトシンの吸収が最も多くある状態であった。これは、腸管バリア機能形成前であって、漏出に起因する非選択的な吸収によるものであると推察された。
一方、生後4~6日目の野生型仔マウスでは、消化管においてオキシトシンが吸収されるのに対し、生後4~6日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)では、消化管においてオキシトシンは吸収されなかった。これは、腸管バリア機能の形成に伴い、非選択的な吸収がなくなり、消化管において選択的にオキシトシンが吸収されていると推察された。
また、生後7日目以降の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウスにおいて、消化管におけるオキシトシンの吸収が全くなかった。
さらに、詳細は示さないが、オキシトシンを過剰投与した場合、野生型成体マウスでは、消化管においてオキシトシンが吸収されるのに対し、Agerノックアウト成体マウス(Ager-/-)では、消化管においてオキシトシンは吸収されなかった。
以上のことから、オキシトシンは、消化管においてRAGE依存性受容体機構を介して、吸収されることが推察された。
【実施例】
【0073】
また、マウスの寿命を2年、ヒトの寿命を80年として、マウスの日齢に対するヒト乳児の生後経過日数を換算した結果、及びヒト乳児における離乳食開始時期(目安)を以下の表2に示す。
【実施例】
【0074】
【表2】
JP2018150284A_000003t.gif
【実施例】
【0075】
表2から、生後2日目のマウスは、生後2ヵ月程度のヒト乳児にあたり、生後8日目のマウスは、生後10ヵ月程度のヒト乳児にあたる。
よって、ヒト乳児において、生後2ヵ月後に腸管バリア機能が徐々に形成され、離乳食が開始される生後5~10ヵ月において分解消化機能が徐々に発達されると考えられる。
従って、新生児から生後2ヵ月未満のヒト乳児では、消化管においてオキシトシンが非選択的に吸収されると考えられる。また、生後2ヵ月以上10ヵ月以下のヒト乳児では、消化管においてRAGE依存性受容体機構を介して、吸収されると考えられる。
以上のことから、新生児から生後5ヵ月未満の乳児においては、オキシトシンを含有する飲食品として育児用調製乳等の形態にて、又はオキシトシンを含有する医薬組成物として経口投与に適した剤形にて経口投与されることで、新生児から生後5ヵ月未満の乳児の社会脳の発達を促進することができると推察される。
また、生後5ヵ月以上10ヵ月以下の乳児においては、オキシトシンを含有する飲食品として育児用調製乳、離乳食等の形態にて、又はオキシトシンを含有する医薬組成物として経口投与に適した剤形にて経口投与されることで、生後5ヵ月以上10ヵ月以下の乳児の社会脳の発達を促進することができると推察される。特に、生後9~10ヵ月の離乳食後期にあたる乳児においては、分解消化機能が発達しており、オキシトシンが分解されやすい可能性があることから、腸溶性コーティングが施されたオキシトシンを投与することで、高選択的に消化管において吸収されると推察される。
【実施例】
【0076】
[試験例2]
1.生後1及び5日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸上部の切片を用いたオキシトシン投与試験
(1)腸上部切片の作製
生後1及び5日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)を1時間絶食させた後、断頭により安楽死させた。次いで、腸腔を開けて、胃-食道接合部及び腹膜靭帯を切断した。次いで、小腸の最初の20cmの部分から腸間膜組織を剥ぎ取り、幽門から1~2cmの位置で4cmの腸上部切片を切除した。
【実施例】
【0077】
(2)インビトロ試験系の構築
次いで、(1)で得られた腸上部切片を洗浄し、3mLのPBSを含む24マルチウェルプレート内に移した。腸上部切片の両端の開口部をそれぞれ結紮し、プレートの平坦な表面に取り付けた。腸上部切片の80%が浸漬するように、3mLの新しいPBSに交換し、グリセロールを用いて、腸上部切片のうち浸漬されている部分と、両端部とを遮断した(図3A参照。)。
【実施例】
【0078】
(3)オキシトシンの投与及びOT濃度の測定
次いで、腸上部切片の浸漬されている部分と遮断された片方の先端部から腸管腔粘膜に、31Gシリンジ針を用いて、50μLの10μMオキシトシン溶液(0.5μg/腸)を直接注入した。培養液はピペッティングにより定期的に混合した。オキシトシン投与から10分間(0、1、3、5、8、及び10分後)、15μLの培養液を取り出し、培養液中のOT濃度を測定した。具体的には、15μLの培養液とアッセイ緩衝液とを1:20の割合で氷上にて混合して、OT enzyme immunoassay(EIA) kit(Enzo Life Sciences社製)を用いて、OT濃度を測定した。結果を図3B及び図3Cに示す。
【実施例】
【0079】
図3Cにおいて、ANOVAの結果、遺伝型と経過時間との間に有意差は見られなかった(F5,84=1.39、P=0.2346)。一方、ANOVAの結果、遺伝型の違いによる有意差(F1,84=31.02、P<0.0001)、及び経過時間の違いにより有意差(F5,84=7.41、P<0.0001)があることが明らかとなった。
また、ボンフェローニのポストホックテストの結果、オキシトシン投与から3~10分後の生後5日目の野生型仔マウスと生後5日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)との間で、有意差があることが明らかとなった(P<0.05)。
【実施例】
【0080】
図3Bから、生後1日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸上部切片を用いた試験では、オキシトシン投与直後に、培養液中のOT濃度が上昇した。また、遺伝型による培養液中のOT濃度の差異は見られなかった。
一方、図3Cから、生後5日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸上部切片を用いた試験では、オキシトシン投与直後での培養液中のOT濃度の上昇は、生後1日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸上部切片を用いた試験におけるオキシトシン投与直後での培養液中のOT濃度の上昇と比較して小さく、培養液中のOT濃度が徐々に上昇した。
【実施例】
【0081】
[試験例3]
1.生後3日目の仔マウスの腸内におけるRAGE発現確認試験
これまで、ヒト(成人)及び成体の齧歯類においては、腸内でのRAGEの発現が実証されていたが、ヒト乳児及び仔マウスにおいては、腸内でのRAGEの発現が実証されていなかった。そのため、以下に示すように、抗RAGE抗体を用いて、仔マウスにおける免疫染色を行った。
【実施例】
【0082】
(1)腸上部切片の作製
生後3日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)を用いて、試験例2の(1)と同様の方法を用いて、腸上部切片を切除した。次いで、得られた腸上部切片のうち4μmの切片を切り出し、4%パラホルムアルデヒドで固定化し、パラフィンで包埋した。
【実施例】
【0083】
(2)HEMATOXYLIN-EOSIN(HE)染色
次いで、4μmの切片をヘマトキシリン-エオシン(HEMATOXYLIN-EOSIN)を用いて染色した。結果を図4Aに示す。
【実施例】
【0084】
(3)蛍光染色
次いで、4μmの切片を4’ ,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(4’,6-diamidino-2-phenylindole;DAPI、同仁堂社製)又はウサギ抗RAGEポリクローナル抗体(1000倍希釈、AB5484、Millipore社製)を含む溶液でインキュベートした。次いで、0.3%Triton X-100を含むPBSで洗浄した。次いで、切片をAlexa Fluor(登録商標) 488(200倍希釈、Invitrogen Molecular Probes社製)を含む溶液でインキュベートした。染色後の切片は、EVOS FL Cell Imaging System(ThermoFisher Scientific社製)を用いて、撮影した。結果を図4Aに示す。
【実施例】
【0085】
また、野生型マウス胚(18.5dpc)(GenoStaff社製)の腸上部由来の4μmの切片についても同様に、DAPI又はウサギ抗RAGEポリクローナル抗体を含む溶液でインキュベートした。0.3%Triton X-100を含むPBSで洗浄後、Alexa Fluor(登録商標) 488を含む溶液でインキュベートした。染色後の切片は、EVOS FL Cell Imaging System(ThermoFisher Scientific社製)を用いて、撮影した。結果を図4Bに示す。
【実施例】
【0086】
図4AにおけるHE染色の結果から、生後3日目の野生型仔マウス及びAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)の腸管の絨毛に明らかな構造的異常がないことが確かめられた。
【実施例】
【0087】
図4Aにおける蛍光染色の結果から、生後3日目の野生型仔マウスでは、腸管の絨毛の上皮細胞において、RAGEが発現していることが確かめられた。一方、生後3日目のAgerノックアウト仔マウス(Ager-/-)では、腸管の絨毛の上皮細胞において、RAGEが発現していないことが確かめられた。
また、図4Bから、野生型マウス胚(18.5dpc)の腸の絨毛の上皮細胞においてもRAGEが発現していることが確かめられた。
さらに、生後3日目の野生型仔マウス及び野生型マウス胚(18.5dpc)の腸を徹底的に洗浄しても、同様の蛍光が観察された。このことから、腸の絨毛の上皮細胞の構成成分として、膜結合型RAGEが検出された可能性が高いことが示唆された。
【実施例】
【0088】
[実施例2]
1.オキシトシンを含有するスキムミルクを経口投与した生後8週齢の雄野生型マウスでの血漿オキシトシン濃度の推移
(1)オキシトシンの経口投与
生後8週齢の雄野生型マウス(C57BL/6N系統)に、30分間の飢餓後、50μLの0.1μM合成オキシトシン(oxytocon;OT)(Peptide Institute社製)を含む100μLの3%スキムミルク溶液(オキシトシン5μg/匹)を、ニードル(28G)を用いて、経口投与した。
【実施例】
【0089】
(2)血漿オキシトシン濃度の測定
経口投与から10分後に、雄野生型マウスの尾静脈から約30μLの血液を採取した。次いで、OT enzyme immunoassay(EIA) kit(Enzo Life Sciences社製)を用いて、血漿OT濃度を測定した。具体的には、5μLの血液試料とアッセイ緩衝液とを1:20の割合で氷上にて混合して、アッセイに用いた。結果を図5に示す。図5に示すマウスの図は、マウスへのオキシトシンを含むスキムミルク溶液の投与方法と、尾静脈からの採血方法とを示すものである。
【実施例】
【0090】
図5から、オキシトシンとスキムミルクとの同時投与では、血漿OT濃度が少なかったが、長時間(30分間)、血漿OT濃度が上昇することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本実施形態の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物によれば、乳児における社会脳の発達を効果的に促進し、精神遅滞又は自閉症の発症を予防することができる。前記乳児の社会脳発達促進用栄養組成物に含まれるオキシトシンは、母乳に含まれ、安全性の面からも、乳児がこれまでの食経験があるものであり、毎日摂取することにも問題が少ない。そのため、本実施形態の乳児の社会脳発達促進用栄養組成物を、育児用調製乳や離乳食等の飲食品、乳児向けの経口用医薬組成物等の形態で提供することができる。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図2A】
3
【図2B】
4
【図2C】
5
【図2D】
6
【図3A】
7
【図3B】
8
【図3C】
9
【図4A】
10
【図4B】
11
【図5】
12