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明細書 :ナノリンクルシート材の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-203816 (P2018-203816A)
公開日 平成30年12月27日(2018.12.27)
発明の名称または考案の名称 ナノリンクルシート材の製造方法
国際特許分類 C08F   2/00        (2006.01)
C08F   2/48        (2006.01)
G02B   5/02        (2006.01)
FI C08F 2/00 B
C08F 2/48
G02B 5/02 C
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2017-107406 (P2017-107406)
出願日 平成29年5月31日(2017.5.31)
発明者または考案者 【氏名】瀧 健太郎
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査請求 未請求
テーマコード 2H042
4J011
Fターム 2H042BA03
2H042BA11
2H042BA13
2H042BA15
2H042BA20
4J011AC04
4J011CA06
4J011CC10
4J011GB08
4J011QA12
4J011QA23
4J011QB20
4J011QB22
4J011QB24
4J011QB25
4J011SA02
4J011SA16
4J011SA19
4J011TA01
4J011UA01
4J011VA05
4J011VA06
4J011WA07
要約 【課題】簡単なプロセスにて表面に優れたナノリンクルを有するシート材の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】重合阻害剤を含有する溶液表面に紫外線硬化性樹脂のモノマー又はオリゴマーの層を形成するステップと、
紫外線を照射し、前記モノマー又はオリゴマーの層を重合及び硬化させるステップを有することを特徴とするナノリンクルシート材の製造方法。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
重合阻害剤を含有する溶液表面に紫外線硬化性樹脂のモノマー又はオリゴマーの層を形成するステップと、
紫外線を照射し、前記モノマー又はオリゴマーの層を重合及び硬化させるステップを有することを特徴とするナノリンクルシート材の製造方法。
【請求項2】
前記紫外線硬化性樹脂のモノマー又はオリゴマーは、硬化収縮率の異なる二種以上のモノマー又はオリゴマーが混合されていることを特徴とする請求項1記載のナノリンクルシート材の製造方法。
【請求項3】
前記紫外線の照射は複数回に分けて照射するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のナノリンクルシート材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は表面に数百ナノメートルオーダーの微細なしわ(ナノリンクル)を有するシート材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に微細な凹凸構造を形成することで防眩等の光学特性、構造色、超撥水性等の各、優れた特性が得られることは知られている。
これまでに報告されている、表面に微細な凹凸形状を形成する方法としては、特許文献1,2に開示されているように転写成形によるものである。
しかし、このような転写成形による方法では、転写型に形成する凹凸の微細化には限界があり、凹凸形状にも制限があった。
また、樹脂の転写性や離型性も問題になるだけでなく製造装置が大型化する課題があった。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2014-71326号公報
【特許文献2】特許第5515543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡単なプロセスにて表面に優れたナノリンクルを有するシート材の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るナノリンクルシート材の製造方法は、重合阻害剤を含有する溶液表面に紫外線硬化性樹脂のモノマー又はオリゴマーの層を形成するステップと、紫外線を照射し、前記モノマー又はオリゴマーの層を重合及び硬化させるステップを有することを特徴とする。
ここでナノリンクルとは、ピッチ間隔が約1μm以下の微細なしわ模様が形成されることをいう。
【0006】
紫外線硬化性樹脂は、紫外線を照射すると光重合開始剤等により、重合反応が開始及び進行しポリマーになる過程で硬化するが、その際に硬化収縮する特性を有している。
一般的に空気が存在する開放系にて紫外線照射すると、空気が触れている表面は酸素により重合が阻害され、モノマー層等の内部から硬化が進行する。
よって、紫外線の照射条件を工夫することで図1(a)に模式的に示すように表面にナノリンクルを形成することができる。
しかし、これでは基板に接触しているモノマー層等の下面には、ナノリンクルが形成されていないことになり、表面との硬化収縮の差により硬化成形されたシート材が反り返る恐れもあった。
そこで本発明は、水等の溶媒中に重合阻害剤を溶解しておけば、図1(b)に示すようにシート材の両面にナノリンクルが形成されるとともに、硬化過程でのシート材の反り返りを防止できることに着目したものである。
【0007】
本発明において、表面にナノリンクルが形成されるのを促進するには、前記紫外線硬化性樹脂のモノマー又はオリゴマーは、硬化収縮率の異なる二種以上のモノマー又はオリゴマーが混合されているのが好ましい。
紫外線硬化性樹脂には、ラジカル重合型とカチオン重合型とがあるが、空気中の酸素による硬化阻害を受ける点では、ラジカル重合型が好ましい。
ラジカル重合型としては、エポキシ変性アクリレート,ウレタン変性アクリレート,シリコン変性アクリレート樹脂等が例として挙げられる。
本発明にて、モノマー又はオリゴマーの層と表面としたのは、硬化前の未硬化の樹脂組成物であることを意味する。
紫外線硬化性樹脂は、重合反応に寄与する官能基を有し、2~8官能を有する各種モノマーが提案されている。
一般的に官能基の数が多い方が硬化収縮率が高いが、本発明において硬化収縮率の相異するモノマー又はオリゴマーが混合されていると、より微細なナノリンクルが形成される。
【0008】
本発明に用いることができる重合開始剤としては、アセトフェノン類,ベンゾイン類,ベンゾフェノン類,ホスフィンオキシド類,ケタール類,アントラキノン類,チオキサントン類等、特に制限はない。
例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン,1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等が具体例として挙げられる。
【0009】
本発明においてシート材とは、シート状,フィルム状に紫外線照射により硬化成形されるものであれば、形状や厚み等に特に制限はなく、曲面状であってもよい。
【0010】
本発明は、紫外線硬化性樹脂のモノマー又はオリゴマーの層に紫外線を照射する際に開放側表面の硬化を酸素で阻害させ、溶液側の界面となる裏側の硬化を溶液中に含まれる重合阻害剤(重合禁止剤)にて硬化を阻害させつつ、内部をUV硬化させ、次に表面及び裏面の未硬化層をUV硬化させることでシート材の表裏両面にナノリンクルが形成される。
そこで、前記紫外線の照射は複数回に分けて照射するものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るナノリンクルシート材の製造方法にあっては、重合阻害剤が含まれる溶液の表面に紫外線硬化性樹脂のモノマー又はオリゴマ-の層を形成し、開放系の表面を酸素による重合阻害剤作用、溶液との界面の裏面側を溶液中の重合阻害剤による重合阻害作用を利用しつつUV硬化させたので、シート材の成形時に反り返り変形が生じるのを抑えることができ製造が容易になる。
また、シート材の表裏両面にピッチ間隔が約1μm以下のしわ状の凹凸模様がナノリンクルとして形成される。
【0012】
これにより、表面の光反射特性,触感,撥水性等、目的に応じた機能を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ナノリンクルが形成されるメカニズムの説明図を示し、(a)は基板上にてUV硬化する場合、(b)は重合阻害剤を添加した水溶液上にてUV硬化する場合を示す。
【図2】予備実験でのシート材の写真を示し、(a)は図1の(b)に相当し、(b)は図1の(a)に相当する。
【図3】ナノリンクル(表面)のピッチ間隔の測定結果を示す。
【図4】ナノリンクル部のSEM像を示す。
【図5】反射強度測定結果を示す。
【図6】反射強度の測定方法を示す。
【図7】マーブリングによる曲面形状に成形する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、シート材を形成するに当たり、重合阻害剤(重合禁止剤)の有無による差を確認した。
紫外線硬化性樹脂(以下、必要に応じてUV硬化樹脂と称する。)として1,6-Bis(acryloylowy)hexane(純度85%,安定剤MEHQ含む、東京化成製)を用いた。
光重合開始剤として、1-hydroxycyclohexyl-phenyl-ketone(BASF社製)を用いた。
モノマーと光重合開始時の比率は99:1である。
溶媒として水を用い、水溶性の重合阻害剤としてCupferron(和光純薬工業製)を用いた。

【0015】
シャーレにイオン交換水を入れ、重合阻害剤を1wt%添加、溶解した。
次にUV硬化樹脂のモノマーを滴下し、水面上に厚さ約10μmになるように設定した。
紫外線光源として200W高圧水銀ショートアークランプ(OmnicureS2000,EXFO製)を用い、液体ライトガイドで平凸レンズに導入し、平行光にした上で照射した。
紫外線強度は、365nmに感度があるUVメータ(VIT-150,ウシオ電気製)で測定した。
図2は、1回目にUV照度10[mW/cm],30秒照射し、2回目にUV照度30[mW/cm],30秒したものであり、(a)は重合阻害剤を溶液に添加したもの、(b)は添加したかったものである。
これにより、溶液に重合阻害剤を添加した製造方法はシート材の反り返りを防止できる。

【0016】
次に、2官能モノマー:1,6-Bis(acrylog lovy)hexaneにそれより硬化収縮率の高いDipentaerythritol penta-/hexa-acrylate(DPHA)(SIGMA-ALDRICH)を0,1,3,5,7,10,20wt%の割合で添加し、前回と同様にシート材を成形した。
なお、今回は1回目のUV照射を5[mW/cm]、2回目のUV照射を20[mW/cm]とし、それぞれの照度にて30秒照射した。
成形されたナノリンクルのピッチ間隔を画像処理ソフト(image j)にて測定した結果を図3に示す。
DPHA濃度0wt%の2官能モノマーだけでもピッチ約1.5μm程度のしわ状の凹凸形状が発現していたが、DPHAを混合することでピッチ間隔が小さくなり、7wt%が最も微細なナノリンクルになっていた。

【0017】
図4にDPHA 7wat%添加したものと、10wt%添加したもののSEM像を示す。
「表」と表示したものは空気界面のSEM像で、「裏」は水溶液界面のSEM像である。
図5に反射強度測定結果を示す。
なお、反射強度測定は、図6に示したθを-25°~-90°に変化させて測定した。
図5のグラフは、パワーメーターの測定値をPとし、X軸にcos(θ)log10(P)の値,Y軸にsin(θ)log10(P)の値をプロットしたものである。
その結果、DPHA 7wt%のものは、45度付近で正反射が強いのに対して、DPHA 10wt%のものは正反射が低く、比較的に円に近い形となっており、拡散反射が起きていることも分かった。
このことは、DPHA 10wt%添加したものは、図4のSEM像に示すようにシート材の表面と裏面とにそれぞれ微細なナノリンクルが形成されているので、入射した光はシート材の表面と透過した光が裏面にて、それぞれ乱反射したものと推定される。

【0018】
本発明は、溶液の表面にてナノリンクルシート材を成形できるので、例えば図7に示すように、各種曲面形状の表面を有する基材を押し付けることで、曲面形状のシート材を成形することができる(マーブリング)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6