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明細書 :骨髄性白血病の治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-065055 (P2016-065055A)
公開日 平成28年4月28日(2016.4.28)
発明の名称または考案の名称 骨髄性白血病の治療剤
国際特許分類 A61K  31/47        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/0789      (2010.01)
FI A61K 31/47
A61P 35/02
C12N 15/00 ZNAA
C12N 5/0789
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2015-185634 (P2015-185634)
出願日 平成27年9月18日(2015.9.18)
優先権出願番号 2014191651
優先日 平成26年9月19日(2014.9.19)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】平尾 敦
【氏名】大田 久美子
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B065
4C086
Fターム 4B024AA01
4B024AA12
4B024CA04
4B024HA14
4B065AA94X
4B065AC20
4B065BD34
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC29
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB27
要約 【課題】骨髄性白血病に対する有効な治療剤を提供する。
【解決手段】5-アミノ-7-(シクロヘキシルアミノ)-1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸を含む特定の構造を有するキノリン化合物を有効成分とする。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式に示すキノリン化合物(X)を有効成分とする骨髄性白血病の治療剤。
【化1】
JP2016065055A_000007t.gif
[式中の記号は、以下の意味を示す。
X:C-R7、又はN。
Y:C-R6、又はN。
R2:それぞれ置換されていてもよい低級アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはへテロ環。
R3:ハロゲン、低級アルキル、又は-O-低級アルキル。
R4:それぞれ置換されていてもよいシクロアルキル若しくは非芳香族へテロ環、又はシクロアルキルで置換されている低級アルキル。ただし、R4が置換されていてもよい非芳香族へテロ環を示す場合、環を構成する炭素原子が隣接するNHと結合するものとする。
R5:-H、ハロゲン、シアノ、ニトロ、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環、-O-低級アルキル、-OH、-NHCO-低級アルキル、-N(低級アルキル)CO-低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、又は置換されていてもよい環状アミノ。
R6:-H、ハロゲン、低級アルキル又はハロゲノ低級アルキル。
R7:-H、ハロゲン、低級アルキル又はハロゲノ低級アルキル。
ただし、YがC-R6を示す場合、R2とR6は一体となって、低級アルキレン、又は低級アルケニレンを形成してもよい。]
【請求項2】
上記キノリン化合物(X)は、X及びYがC-Hであり、R2が低級アルキルであり、R3がハロゲンであり、R4が置換されていてもよいシクロアルキルR5が低級アルキルで置換されていてもよいアミノであることを特徴とする請求項1記載の治療剤。
【請求項3】
上記キノリン化合物(X)は、下記式で示される5-アミノ-7-(シクロヘキシルアミノ)-1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸であることを特徴とする請求項1記載の治療剤。
【化2】
JP2016065055A_000008t.gif

【請求項4】
上記骨髄性白血病は、急性骨髄性白血病であることを特徴とする請求項1記載の治療剤。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物を有効成分とする骨髄性白血病の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨髄性白血病において、自己複製能と腫瘍再構築能を持つ集団である白血病幹細胞の存在が示され(非特許文献3)、治療抵抗性や悪性進展の原因となることが示されている。白血病根治のためには、白血病幹細胞を標的とした新規治療の開発が必要である。
【0003】
慢性骨髄性白血病の治療には、現在、分子標的治療薬としてABL選択的チロシンキナーゼ阻害剤(ST1571、イマニチブなど)が知られている。イマチニブは、慢性骨髄性白血病の原因となるBCR-ABL1タンパク質を標的として作用し、白血病細胞を減少させる。イマチニブは、慢性骨髄性白血病の白血病細胞増殖のシグナル伝達に重要なBCR-ABL1タンパク質のATP結合部位にはまり込み、本来ATPが結合して起こるシグナル伝達を抑制することで白血病細胞の増殖を抑制し、抗腫瘍効果を示す。
【0004】
しかし、イマチニブ臨床試験では、慢性骨髄性白血病における進行期の多くの患者が良好に応答するものの、白血病幹細胞が残存し、その後再発することが報告されている。急性骨髄性白血病においても、白血病幹細胞は、既存の治療に抵抗性を示すことが知られている。このような状況下、骨髄性白血病幹細胞に対する新たな治療薬が望まれていた。
【0005】
ところで、FOXOは、DNA結合ドメインForkhead box(FOX)を持つForkheadファミリーのサブグループ"O"に属する転写因子で、これまでに、多くの遺伝子の発現誘導を介して、ストレス応答、代謝制御、細胞周期、アポトーシス、DNA修復などに関与し、正常造血幹細胞プール維持に重要な分子であることが分かっている。さらに、慢性骨髄性白血病幹細胞のイマチニブ耐性(非特許文献1)や急性骨髄性白血病幹細胞の未分化性維持に必須である(非特許文献2)ことが知られている。
【0006】
以上の知見により、骨髄性白血病幹細胞の治療剤をスクリーニングする方法として、例えば特許文献1に開示された方法が挙げられる。特許文献1に開示されたスクリーニング方法では、フォークヘッド型転写因子(例えば、Foxo3a等)の活性化が慢性骨髄性白血病の白血病幹細胞の生存に必要であるという知見に基づき、フォークヘッド型転写因子のリン酸化を促進する試験化合物又はフォークヘッド型転写因子の発現を阻害する試験化合物を慢性骨髄性白血病の治療剤又は予防剤としてスクリーニングするものである。
【0007】
また、非特許文献2には、フォークヘッド型転写因子が急性骨髄性白血病幹細胞の未分化性維持に必須であることが示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第5555897号
【0009】

【非特許文献1】Nature, 463, p. 676-680, 2010
【非特許文献2】Cell 146, p. 697-708, 2011
【非特許文献3】Nature Medicine, 3, p730 - 737, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に示されているように、フォークヘッド型転写因子を不活性化する薬剤については、骨髄性白血病に対する治療薬効果が期待できるものの、種々の薬剤について効果の程度等が全く不明であり、骨髄性白血病に対する有効な治療剤を見いだせないのが現状であった。そこで、本発明は、このような実情に鑑みて、骨髄性白血病に対する有効な治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、フォークヘッド型転写因子阻害剤のうち特定の構造を有する化合物が、骨髄性白血病に対する極めて優れた治療効果を奏することを見いだし本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は以下を包含する。
(1)下記式に示すキノリン化合物(X)を有効成分とする骨髄性白血病の治療剤。
【化1】
JP2016065055A_000003t.gif
[式中の記号は、以下の意味を示す。
X:C-R7、又はN。
Y:C-R6、又はN。
R2:それぞれ置換されていてもよい低級アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはへテロ環。
R3:ハロゲン、低級アルキル、又は-O-低級アルキル。
R4:それぞれ置換されていてもよいシクロアルキル若しくは非芳香族へテロ環、又はシクロアルキルで置換されている低級アルキル。ただし、R4が置換されていてもよい非芳香族へテロ環を示す場合、環を構成する炭素原子が隣接するNHと結合するものとする。
R5:-H、ハロゲン、シアノ、ニトロ、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環、-O-低級アルキル、-OH、-NHCO-低級アルキル、-N(低級アルキル)CO-低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、又は置換されていてもよい環状アミノ。
R6:-H、ハロゲン、低級アルキル又はハロゲノ低級アルキル。
R7:-H、ハロゲン、低級アルキル又はハロゲノ低級アルキル。
ただし、YがC-R6を示す場合、R2とR6は一体となって、低級アルキレン、又は低級アルケニレンを形成してもよい。]
【0013】
(2)上記キノリン化合物(X)は、X及びYがC-Hであり、R2が低級アルキルであり、R3がハロゲンであり、R4が置換されていてもよいシクロアルキルR5が低級アルキルで置換されていてもよいアミノであることを特徴とする(1)記載の治療剤。
【0014】
(3)上記キノリン化合物(X)は、下記式で示される5-アミノ-7-(シクロヘキシルアミノ)-1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸であることを特徴とする(1)記載の治療剤。
【化2】
JP2016065055A_000004t.gif

【0015】
(4)上記骨髄性白血病は、急性骨髄性白血病であることを特徴とする(1)記載の治療剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、慢性骨髄性白血病を含む骨髄性白血病に対する有効な治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】AS1842856によるFOXO転写活性阻害活性(右)、AS1708727によるFOXO転写活性阻害活性(左)を示す特性図である。
【図2】AS1842856による、イマチニブで発現誘導されるFOXO標的遺伝子(p27遺伝子、BIM遺伝子及びBcl6遺伝子)の発現量変動を示す特性図である。
【図3】AS1708727による、イマチニブで発現誘導されるFOXO標的遺伝子(Bcl6遺伝子)の発現量変動を示す特性図である。
【図4】AS1842856による、白血病由来細胞株に対する細胞増殖抑制効果を示す特性図である。
【図5】コントロール株(scrambled)とshFOXO1/3a機能抑制細胞株におけるFOXOの発現に起因する発光シグナルを検出した結果を示す特性図である。
【図6】コントロール株(scrambled)とshFOXO1/3a機能抑制細胞株におけるAS1842856による細胞増殖抑制効果を示す特性図である。
【図7】AS1842856を処理したときのTHP-1について顕微鏡観察した結果を示す写真である。
【図8】AS1842856を処理したときのU937について顕微鏡観察した結果を示す写真である。
【図9】高濃度(0-25μM)でAS1708727又はAS1842856を使用したときのCD11b陽性細胞に関するヒストグラムを示す特性図である。
【図10】高濃度(0-25μM)又は低濃度(0-10μM)でAS1842856を使用したときのCD11b陽性細胞に関するヒストグラムを示す特性図である。
【図11】ヒト臍帯血由来単核細胞に対してAS1842856を作用させたときのコロニー形成数を計数した結果を示す特性図である。
【図12】AS18投与群とコントロール群について腫瘍体積を測定した結果を示す特性図である。
【図13】AS18投与群とコントロール群の腫瘍塊についてHE染色した結果を示す写真である。
【図14】AS18投与群とコントロール群の腫瘍塊について、抗CD11b抗体を用いたIHC染色の結果を示す写真である。
【図15】AS18投与群とコントロール群の腫瘍塊について、抗CD115抗体を用いたIHC染色の結果を示す写真である。
【図16】AS18投与群とコントロール群の腫瘍塊について、抗Vimentin抗体を用いたIHC染色の結果を示す写真である。
【図17】AS18投与群とコントロール群の腫瘍塊について、抗Lysozyme抗体を用いたIHC染色の結果を示す写真である。
【図18】AS18投与群とコントロール群の腫瘍塊について、抗PCNA抗体を用いたIHC染色の結果を示す写真である。
【図19】AS18投与群とコントロール群の腫瘍塊について、抗Ki67抗体を用いたIHC染色の結果を示す写真である。
【図20】AS18投与群とコントロール群の腫瘍塊について、抗MCM2抗体を用いたIHC染色の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
<有効成分>
本発明に係る骨髄性白血病の治療剤は、下記式に示すキノリン化合物(X)を有効成分としている。

【0019】
【化3】
JP2016065055A_000005t.gif
[式中の記号は、以下の意味を示す。
X:C-R7、又はN。
Y:C-R6、又はN。
R2:それぞれ置換されていてもよい低級アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはへテロ環。
R3:ハロゲン、低級アルキル、又は-O-低級アルキル。
R4:それぞれ置換されていてもよいシクロアルキル若しくは非芳香族へテロ環、又はシクロアルキルで置換されている低級アルキル。ただし、R4が置換されていてもよい非芳香族へテロ環を示す場合、環を構成する炭素原子が隣接するNHと結合するものとする。
R5:-H、ハロゲン、シアノ、ニトロ、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環、-O-低級アルキル、-OH、-NHCO-低級アルキル、-N(低級アルキル)CO-低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、又は置換されていてもよい環状アミノ。
R6:-H、ハロゲン、低級アルキル又はハロゲノ低級アルキル。
R7:-H、ハロゲン、低級アルキル又はハロゲノ低級アルキル。
ただし、YがC-R6を示す場合、R2とR6は一体となって、低級アルキレン、又は低級アルケニレンを形成してもよい。]

【0020】
特に、本発明に係る骨髄性白血病の治療剤の有効成分としては、上記式において、X及びYがC-Hであり、R2が低級アルキルであり、R3がハロゲンであり、R4が置換されていてもよいシクロアルキル、R5が低級アルキルで置換されていてもよいアミノであることが好ましい。

【0021】
さらに、本発明に係る骨髄性白血病の治療剤の有効成分としては、下記式で示される5-アミノ-7-(シクロヘキシルアミノ)-1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボン酸(以下、当該化合物をAS1842856と称する)であることがより好ましい。AS1842856については、参考文献(Mol. Pharmacol. 78:961-970, 2010)に記載されるように、非活性型フォークヘッド型転写因子(FOXO1)タンパク質(リン酸化型)には結合せず、FOXO1特異的阻害作用が示され(IC50=0.033uM)、経口投与にてdb/dbマウスの血糖低下作用を示すことが明らかとなっている。

【0022】
【化4】
JP2016065055A_000006t.gif

【0023】
ここで、「低級」なる語は、特に断らない限り炭素数1乃至6個の直鎖又は分枝状の炭素鎖を意味する。従って、「低級アルキル」とは、C1-6のアルキルを意味し、具体的には例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル若しくはヘキシル、又はイソプロピル若しくはtert-ブチル等のこれらの構造異性体であり、好ましくはC1-5アルキルのメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3-ペンチルである。

【0024】
「低級アルケニル」とは、C2-6のアルキルで任意の位置に1個以上の二重結合を有することを意味し、具体的には例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル等が挙げられ、好ましくはC2-3アルケニルのエテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、3-プロペニルである。

【0025】
「低級アルキニル」とは、C2-6のアルキルで任意の位置に1個以上の三重結合を有することを意味する。

【0026】
「低級アルキレン」は、「低級アルキル」の任意の位置の水素を1個除去してなる2価基を意味し、具体的にはメチレン、メチルメチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、ブチレン等であり、好ましくはメチレン、エチレン、トリメチレンである。

【0027】
「低級アルケニレン」は、「低級アルケニル」の任意の位置の水素を1個除去してなる2価基を意味し、具体的にはビニレン、1-プロペニレン、2-プロペニレン、1-ブテニレン、2-ブテニレン、3-ブテニレン等であり、好ましくはビニレン、1-プロペニレン、2-プロペニレンである。

【0028】
「低級アルキリデン」は、「低級アルキル」の結合手を有する炭素原子から水素を1個除去してなる遊離原子価が二重結合の一部になる基を意味する。

【0029】
「シクロアルキル」とは、C3-10の非芳香族の炭化水素環の1価基を意味し、架橋環やスピロ環を形成していてもよく、また部分的に不飽和結合を有していてもよい。具体的には例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキセニル、シクロオクタンジエニル、アダマンチル及びノルボルニル等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル若しくはシクロヘキシルである。

【0030】
「アリール」とは、単環乃至3環のC6-14の芳香族の炭化水素環の1価基を意味し、具体的には例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニルである。

【0031】
「非芳香族ヘテロ環」とは、飽和または部分的に不飽和結合を有していてもよく、アリール若しくは芳香族ヘテロ環と縮合していてもよい窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を1乃至4個有する3乃至10員環、好ましくは5乃至7員環の1価基を意味する。ただし、結合手は飽和または部分的に不飽和の環上にある。具体的には例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼピニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラゾリジニル、ジヒドロピロリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、ジオキサニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチエニル等が挙げられ、好ましくはピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼピニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、テトラヒドロチオピラニルである。

【0032】
「ヘテロ環」は前記「非芳香族へテロ環」に「芳香族ヘテロ環」を加えた総称であり、「芳香族ヘテロ環」とは、窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択される同一又は異なるヘテロ原子を1乃至4個含有する、ベンゼン環と縮合されていてもよい芳香族ヘテロ環の1価基を意味し、具体的には例えば、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラニル、チオピラニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサジアゾニル、キノリル、イソキノリル、クロメニル、ベンゾチオピラニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾジオキセピニル、カルバゾリル等が挙げられ、これらの環を構成する窒素原子及び/又は硫黄原子は酸化されていてもよい。また、これらの環は部分的に飽和されていてもよい。ただし、結合手は芳香環上にある。好ましくはピリジル、フリル、チエニル、インドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリルである。

【0033】
「ハロゲン」とは、ハロゲン原子の1価基を意味し、具体的には例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等が挙げられ、好ましくはフルオロ、クロロである。

【0034】
「ハロゲノ低級アルキル基」は、前記「低級アルキル基」の1以上の任意の水素原子が1以上の前記「ハロゲン」で置換された基を意味し、具体的には例えばトリフルオロメチル、トリフルオロエチルなどが挙げられ、好ましくはトリフルオロメチルである。

【0035】
「環状アミノ」は、少なくとも1つの窒素原子を有し、かつ、窒素原子に結合手を持つヘテロ環の1価基であり、さらにヘテロ異種原子として酸素、硫黄を含んでいてもよい。具体的には、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、ホモピペラジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イルなどが挙げられ、好ましくはピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イルである。

【0036】
カルボン酸誘導体とアミン化合物を縮合する製造法におけるカルボン酸誘導体の「反応性誘導体」とは、当該反応における反応性が高くなる誘導体であれば、特に限定されないが、例えば、該カルボン酸誘導体に対応する酸ハライド誘導体若しくは混合酸無水物、または、該カルボン酸誘導体とカルボニルジイミダゾール(CDI)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl)、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルホスフォリルアジド、ジエチルホスフォリルシアニド等の縮合剤より調整される誘導体が挙げられる。

【0037】
本明細書において、「置換されていてもよい」の語の許容される置換基としては、それぞれの基の置換基として、当該技術分野で通常用いられる置換基であればいずれでもよい。また、それぞれの基に同一又は異なった置換基が1乃至5個以上存在していてもよい。

【0038】
R2における「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいアリール」、「置換されていてもよい非芳香族ヘテロ環」、「置換されていてもよい芳香族ヘテロ環」;R4、における「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよい非芳香族ヘテロ環」;及びR5における「置換されていてもよい環状アミノ」において許容される置換基としては、以下の(a)乃至(h)に示される基が挙げられる。また、R2における「置換されていてもよい低級アルキル」、「置換されていてもよい低級アルケニル」において許容される置換基としては、以下の(a)乃至(g)に示される基が挙げられる。また、なお、RZは、-OH、-O-低級アルキル、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、-CO2H、-CO2RZ、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいカルバモイル、アリール(このアリールはハロゲンで置換されていてもよい)、芳香族ヘテロ環及びハロゲンからなる群より選択される1つ以上の基で置換されていてもよい低級アルキルを示す。

【0039】
(a)ハロゲン。
(b)-OH、-O-RZ、-O-アリール、-OCO-RZ、オキソ(=O)、-OSO3H、-OP(O)(O-RZ)2、-P(O)(O-RZ)2、-OP(O)(OH)(O-RZ)、-P(O)(OH)(O-RZ)、-OP(O)(OH)2、-P(O)(OH)2
(c)-SH、-S-RZ、-S-アリール、-SO-RZ、-SO-アリール、-SO2-RZ、-SO3H、-SO2-アリール、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいスルファモイル。
(d)1つ又は2つのRZで置換されていてもよいアミノ、-NHCO-RZ、-NHCO-アリール、-NHSO2-RZ、-NHSO2-アリール、ニトロ、イミノ(=N-RZ)。
(e)-CHO、-CO-RZ、-CO2H、-CO2-RZ、1つ又は2つのRZ若しくはアリールで置換されていてもよいカルバモイル、-CO-非芳香族ヘテロ環(この非芳香族ヘテロ環は-CO2H若しくは-CO2-RZで置換されていてもよい)、シアノ。
(f)アリール若しくはシクロアルキル。なお、これらの基は、-OH、-O-低級アルキル、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、-CO2H、-CO2RZ、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいカルバモイル、アリール、芳香族ヘテロ環、ハロゲン及びRZからなる群より選択される1つ以上の基でそれぞれ置換されていてもよい。
(g)芳香族ヘテロ環若しくは非芳香族ヘテロ環。なお、これらの基は、-OH、-O-低級アルキル、オキソ(=O)、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、-CO2H、-CO2RZ、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいカルバモイル、アリール、芳香族ヘテロ環、ハロゲン及びRZからなる群より選択される1つ以上の基でそれぞれ置換されていてもよい。
(h)上記(a)乃至(g)に示される置換基より選択される1つ以上の基で置換されていてもよい低級アルキル。

【0040】
「置換されていてもよい低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ」は、前記「置換されていてもよい低級アルキル基」でモノ若しくはジ置換されたアミノを意味し、ジ置換する低級アルキル基は同一でも相互に異なっていてもよい。

【0041】
式(X)で示されるキノロン誘導体は、塩を形成する場合もあり、かかる塩が製薬学的に許容される塩である限りにおいて本発明の製造法による目的化合物に包含される。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機塩や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の金属を含む無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との付加塩、アンモニウム塩等が挙げられる。

【0042】
また、式(X)で示されるキノロン誘導体は、置換基の種類によっては、不斉炭素原子を含む場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明の製造法はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを製造するための製造法をすべて包含する。また、式(X)で示されるキノロン誘導体は互変異性体が存在する場合があるが、本発明の骨髄性白血病の治療剤には、これらの異性体の分離したもの、あるいは混合物も含まれる。また、ラベル体、即ち、式(X)で示されるキノロン誘導体の1つ以上の原子を放射性同位元素若しくは非放射性同位元素で置換した化合物も本発明に包含される。

【0043】
さらに、本発明は式(X)で示されるキノロン誘導体の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形を有する物質も包含される。すなわち、本発明に係る骨髄性白血病の治療剤は、式(X)で示される誘導体及びその製薬学的に許容される塩のすべてを包含するものである。なお、当然のことながら、本発明に係る骨髄性白血病の治療剤は、式(X)で示されるキノロン誘導体の製造方法には何ら限定されず、如何なる製造法で製造されたものでも良い。なお、式(X)で表されるキノロン誘導体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、特許第4858683号に開示された方法を挙げることができる。

【0044】
<骨髄性白血病>
本発明において「骨髄性白血病」とは、慢性骨髄性白血病及び急性骨髄性白血病を含む意味である。

【0045】
慢性骨髄性白血病(以後、「CML」と略称する場合もある)とは、9番染色体と22番染色体の一部が入れ替わる染色体異常、すなわちフィラデルフィア転座の結果形成されるBCR/ABL キメラ遺伝子によって発症する骨髄増殖性疾患である。BCR/ABLキメラタンパク質は、ABLの保有するチロシンキナーゼ活性が著しく亢進しており、RASシグナル、PI-3K/Aktシグナル及びStatシグナルといった細胞増殖シグナル等を恒常的に刺激することにより、増殖刺激効果と抗アポトーシス効果を発揮する。

【0046】
慢性骨髄性白血病の診断は、通常、採血した血液の血算検査と骨髄での造血状態をみるための骨髄検査に基づいてなされる。骨髄検査では、骨髄中で白血球球系細胞の増殖状態を調べ白血病細胞の染色体・遺伝子分析を行い、その結果に基づいて診断する。

【0047】
また、本発明に係る治療剤を慢性骨髄性白血病に適用する場合、慢性骨髄性白血病のステージが慢性期でも良いし、移行期でも良いし、急性転化期でも良い。すなわち、慢性骨髄性白血病の進行度合いに拘わらず、本発明に係る治療剤を適用することができる。

【0048】
急性骨髄性白血病(以後、「AML」と略称する場合もある)とは、血液細胞である白血球が「がん化」して異常に増殖することで起こる腫瘍性疾患である急性白血病であって、異常増殖してくる細胞が骨髄系細胞である骨髄増殖性疾患である。

【0049】
急性骨髄性白血病の診断は、通常、症状の確認、血液検査及び骨髄検査(骨髄生検、骨髄穿刺)の結果を組み合わせて行われる。すなわち、血液検査と骨髄検査では、骨髄もしくは末梢血中で白血病細胞(芽球)が所定の値以上であり、増加している芽球がミエロペルオキシダーゼ(MPO)染色で所定の値以上陽性である場合にAMLと診断する。

【0050】
また、本発明に係る治療剤を急性骨髄性白血病に適用する場合、急性骨髄性白血病のFAB分類(French-American-British Classification)によらず如何なる病型(M0~M7)に適用しても良い。

【0051】
<剤形、投与量>
本発明に係る治療剤の有効成分である上記式(X)で示されるキノロン誘導体は、治療の目的に応じて、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、腸溶剤、液剤、注射剤(液剤、懸濁剤)等の各種の形態に、常法にしたがって調製することができる。本発明に係る治療剤は、通常は1種または複数の医薬用担体を用いて医薬組成物として製造することが好ましい。

【0052】
また、本発明に係る治療剤の投与量または摂取量については、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されるものではなく、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断等に応じて適宜選択される。本発明に係る治療剤は、1日1~数回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
<フォークヘッド型転写因子(FOXO)転写活性阻害実験>
本実施例では、FOXO阻害剤であることが知られている2種類の化合物(AS1842856及びAS1708727)について、FOXO転写活性阻害実験(FOXO1、FOXO3及びFOXO4)を行った。なお、AS1708727は、2-シクロペンチル-N-{2,4-ジクロロ-3-〔(イソキノリン-5-イルオキシ)メチル〕フェニル}-N-メチルアセトアミドであり、European Journal of Pharmacology 645 (2010) 185-191においてFOXO1転写因子阻害活性が確認された化合物である。
【実施例】
【0055】
本実施例では、10%ウシ胎仔血清(FBS)含有DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)にHEK293細胞を2x106 cells/10cm plateとなるように播種し、5% CO2、37℃で24時間培養した。
【実施例】
【0056】
遺伝子導入は10μgのFOXO発現プラスミドをX-tremeGENE HP DNA Transfection Reagent(Roche社製)を用いて、プロトコールに従って行った。プレート1枚当りのFOXO発現プラスミドとして、2.8μg FOXO1(pcDNA3 Flag-FKHR: addgeneより購入、製品番号:#8360)、FOXO3(addgeneより購入したFlag-FOXO3a WT(製品番号:#13507)を制限酵素Xba IとHind IIIで切断し、pcDNA3 FlagのXba IとHind IIIサイトにFOXO3a WT cDNAを挿入して構築したプラスミド:pcDNA3 Flag-FOXO3a)及び5.7μg 6xDBE/pGL basic Luciferase reporter vector(国立長寿医療研究センター本山昇博士より供与。参考論文:Kobayashi Int J Mol Med 2005)を調整した。なお、内部標準として、1.4μg pZeoSVO2/lacZ vector(lifetechnologies社製)をそれぞれに添加した。遺伝子導入5時間後にトリプシン処理にて細胞を回収し、10mLのPBSで一回洗浄した。1% FBS含有DMEMに5,000cells/30μL(1.67x105cells/mL)になるように、細胞懸濁液を調製した。
【実施例】
【0057】
上述した2種類の化合物について、それぞれ終濃度が0.25、0.5、1、5、10、25又は50μMとなるように、1% FBS含有DMEMに濃度の異なる複数の試薬を調整した。試薬量は、10μlとし、プレート(商品番号781182、グライナー社製)の各ウェルに添加した。各ウェルに、細胞懸濁液(5,000cells/30μl)を分注した。反応総量は40μlとした。5% CO2, 37℃で20時間培養した後、40μLのGlo Lysis bufferを加えて10分放置し、細胞を溶解した(全量80μL)。細胞溶解液を2分割し(30μlずつ)、プレート(商品番号781080、グライナー社製)に移し変え、一方にはSteady-Glo(30μl)を加えてルシフェラーゼ活性を測定した。もう一方には、Beta-Glo:Promega (30μl)を加えてb-gal活性を測定した。
【実施例】
【0058】
マイクロプレートリーダー(infinite 200 pro)で活性値を測定した。ルシフェラーゼ活性値/b-gal活性値で内部補正し、各ウェルの活性値とした。0μMの測定値の平均値を100 %として、上述した2種類の化合物についての阻害効果(%)を算出した。IC50については、以下の数式に則って、算出した。
IC50=10^(LOG(A/B)*(50-C)/(D-C)+LOG(B))
A:50%を挟む高い濃度
B:50%を挟む低い濃度
C:Bでの阻害率
D:Aでの阻害率
【実施例】
【0059】
結果を図1に示す。図1中の右グラフはAS1842856によるFOXO転写活性阻害活性を示し、左グラフはAS1708727によるFOXO転写活性阻害活性を示している。図1に示すように、本実施例で評価した2種類の化合物については、既報の通りFoxo1に対する転写阻害活性がみられ、またFoxo3に対しても転写阻害活性を有していることが示された。
【実施例】
【0060】
<FOXO標的遺伝子の発現抑制実験>
次に、化合物AS1842856の存在下において、FOXO転写因子により転写誘導される遺伝子(p27、BIM及びBcl6)の発現量を定量的PCRにより評価した。また、比較のため、化合物AS1708727の存在下においてBcl6の発現量を定量的PCRにより評価した。
【実施例】
【0061】
具体的には、先ず、慢性骨髄性白血病由来の細胞株であるKCL22細胞を1.2x106cells/10cm plateに播種した。そして、終濃度が0、0.1、1又は10μMとなるように化合物を添加し、30分間、前処理した後、Imatinib mesylate (biovision)を1μMを添加し、5% CO2、37℃で48時間培養した。培養後、上清を除去し、PBSにて1回洗浄し、細胞を回収した後、total RNAを調製した。
【実施例】
【0062】
total RNAの調製は、QIAquick PCR Purification Kit(Quagen社製)を用いて添付の実験説明書に従った。波長260nmの吸光度で、RNA濃度を測定した後、Advantage cDNA PCR Kit(Clonetech社製)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを合成した。cDNAを鋳型として、SYBR Premix Ex Taq (Tli RNaseH Plus)(TaKaRa社製)により、下流遺伝子の発現を定量的PCRにより評価した。
【実施例】
【0063】
化合物AS1842856を用いた系では、FOXOの下流遺伝子(p27、BIM及びBcl6)を認識する特異的プライマーを用いて増幅し、mRNA発現量を定量した。GAPDH発現量を内部コントロールとして補正し、発現誘導に対するAS1842856の効果を評価した。また、化合物AS1708727を用いた系では同様にしてBcl6の発現誘導に対するAS1708727の効果を評価した。
【実施例】
【0064】
なお、GAPDH遺伝子を増幅する特異的プライマーとして、フォワードプライマー:5’-GAAGGTGAAGGTCGGAGTC(配列番号1)及びリバースプライマー:5’-GAAGATGGTGATGGGATTTC(配列番号2)を使用した。p27遺伝子を増幅する特異的プライマーとして、フォワードプライマー:5’-GCCCTCCCCAGTCTCTCTTA(配列番号3)及びリバースプライマー:5’-TCAAAACTCCCAAGCACCTC(配列番号4)を使用した。BIM遺伝子を増幅する特異的プライマーとして、フォワードプライマー:5’-TATGAGAAGATCCTCCCTGC(配列番号5)及びリバースプライマー:5’-ATATCTGCAGGTTCAGCCTG(配列番号6)を使用した。Bcl6遺伝子を増幅する特異的プライマーとして、フォワードプライマー:5’-CTCAGATTCTAGCTGTGAGAACG(配列番号7)及びリバースプライマー:5’-GTCACACTTGTAGGGTTTGTCAC(配列番号8)を使用した。
【実施例】
【0065】
p27遺伝子、BIM遺伝子及びBcl6遺伝子の発現誘導に対する化合物AS1842856の効果を図2に示し、Bcl6遺伝子の発現誘導に対する化合物AS1708727の効果を図3に示した。図2に示すように、KCL22細胞においてイマチニブで発現誘導されるFOXO標的遺伝子は、AS1842856によって発現抑制されることが明らかとなった。一方、AS1842856と同様にFoxo阻害剤であるAS1708727は、図3に示すように、KCL22細胞においてイマチニブで発現誘導される遺伝子の発現を抑制できないことが明らかとなった。
【実施例】
【0066】
なお、Bcl6タンパク質は、慢性骨髄性白血病においてイマチニブ耐性の原因の一つとして考えられており、イマチニブ投与によりBcL6遺伝子の発現が上昇することが知られている。図2に示すように、AS1842856の存在下では、イマチニブによるBcl6遺伝子発現亢進効果が低減あるいは喪失していることが分かる。この結果から、AS1842856は、イマチニブ耐性を示す慢性骨髄性白血病に有効であることが示唆された。
【実施例】
【0067】
<イマチニブ併用による慢性骨髄性白血病細胞株の細胞増殖阻害効果>
次に、AS1842856及びイマチニブの併用による慢性骨髄性白血病細胞株の細胞増殖阻害効果を検証した。具体的に、慢性骨髄性白血病細胞株(K562)を、10,000 cells/75μlになるように細胞懸濁液を調製した。96ウェルU底マルチウェルプレート(FALCON社製)にAS1842856を25μlと細胞懸濁液75μlを加えて反応を開始し、AS1842856とImatinib mesylate (biovision)と共存下で5% CO2、37℃で4日間培養した。培養後、細胞懸濁液(40μl)を分取し、グライナー781080プレートに移し変えた。等量(40μl)のCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega社製)を添加し、10分以上反応させて細胞を溶解した後、発光シグナルをマイクロプレートリーダー(infinite 200 pro)で測定した。AS1842856未処理の細胞の発光値を100%として、細胞増殖率を算出した。イマチニブの単独使用時及びAS1842856とイマチニブの併用時の細胞増殖阻害率を算出した。
【実施例】
【0068】
本実験により、慢性骨髄性白血病株は、AS1842856とイマチニブを併用した場合、イマチニブを単独で使用した場合と比較して、より細胞増殖抑制効果が高いという結果を得ることができる。この結果より、慢性骨髄性白血病株に対するイマチニブによる細胞増殖抑制効果は、AS1842856により亢進することが理解できる。
【実施例】
【0069】
<AS1842856による細胞増殖抑制試験>
次に、AS1842856による細胞増殖抑制効果を検証するため、各種がん細胞株を使用してAS1842856存在下の細胞増殖率を算出した。
【実施例】
【0070】
具体的に本実験例では、急性骨髄性白血病細胞株(AML)としてTHP1及びHL60を使用し、T細胞白血病細胞株としてMolt4及びJurkatを使用し、慢性骨髄性白血病細胞株(CML)としてK562及びKCL22を使用し、B細胞白血病細胞株としてBV-173を使用した。
【実施例】
【0071】
各細胞株を10,000 cells/75μLになるように細胞懸濁液を調製した。白血病由来細胞株では、96ウェルU底マルチウェルプレートに化合物液25μLと細胞懸濁液75μLを加えて反応を開始し、5% CO2、37℃で4日間培養した。培養後、細胞懸濁液に等量のCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega社製)と10分以上反応させて細胞を溶解した後、発光シグナルをマイクロプレートリーダー(infinite 200 pro)で測定した。化合物未処理の細胞の発光値を100%として、細胞増殖率を算出した。
【実施例】
【0072】
図4に示した結果より、AS1842856には、慢性骨髄性白血病由来細胞株及び急性骨髄性白血病由来細胞株に対する細胞増殖抑制効果が認められた。特に、AS1842856は、急性骨髄性白血病由来細胞株に対する細胞増殖抑制効果が極めて優れることが明らかとなった。
【実施例】
【0073】
<細胞増殖阻害のFOXO依存性の検証>
上述のようにAS1842856が骨髄性白血病由来細胞株に対する細胞増殖阻害効果を有することが確認された。本実験では、この細胞増殖阻害効果がFOXO依存的なものか検証した。具体的には、組換えレンチウイルスを用いてFOXO1/3aノックダウン白血病細胞株を作製し、AS1842856による当該細胞株に対する細胞増殖阻害効果の減少を確認した。
【実施例】
【0074】
組換えレンチウイルスは、以下のように作製した。先ず、293T細胞を10% FBS含有DMEMに2x106cells/10cm dishとなるように播種し、5% CO2、37℃で24時間培養した。遺伝子導入はX-tremeGENE HP DNA Transfection Reagent (Roche) を用いてプロトコールに従って行った。パッケージングプラスミドおよび5ugのshFOXO1/3a(pLKO.1 vector : GATCTACGAGTGGATGGTCAA(配列番号1))を細胞に導入した。shRNAのコントロールとしてscrambled DNA plasmidを導入した。遺伝子導入後、16時間後に培養液を交換し、24、48及び72時間後に培地を交換、回収した。回収した培養液を0.45μm PVDF膜(Millipore)で濾過した後、8μg/ml polybrene(Sigma)を添加してウイルス液とした。
【実施例】
【0075】
得られたウイルス液を用いてshFOXO1/3a機能抑制細胞株を以下のように作製した。先ず、THP1細胞を1.2x106cells/10cm dishとなるように播種し、上記で得られたウイルス液と32時間接触させ、ウイルスをTHP1細胞に感染させた。感染後、通常のRPMI1640培地(Wako)で24時間培養を行った。培養液に1.5μg/mlのpuromycin(Invivogen)を添加し、72時間培養することで、ウイルス感染した細胞を選択した。選択した細胞株をshFOXO1/3a機能抑制細胞株とした。
【実施例】
【0076】
得られたshFOXO1/3a機能抑制細胞株を用いて10,000 cells/75μLになるように細胞懸濁液を調製した。96ウェルU底マルチウェルプレートにAS1842856溶液25μLと細胞懸濁液75μLとを加えて反応を開始し、5% CO2、37℃で4日間培養した。培養後、細胞懸濁液に等量のCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega)と10分以上反応させて細胞を溶解した後、発光シグナルをマイクロプレートリーダー(infinite 200 pro)で測定した。化合物未処理の細胞の発光値を100%として、細胞生存率を算出した。
【実施例】
【0077】
発光シグナルの検出結果を図5に示し、細胞生存率を算出した結果を図6に示した。なお、図5及び6に示したグラフにおいて“scrambled”とは、コントロールとしてscrambled DNA plasmidを導入した細胞株であり、“shFOXO1/3”とはshFOXO1/3aを導入した細胞株である。図5から分かるように、shFOXO1/3a機能抑制細胞株では、AS1842856の有無に拘わらずFOXOの発現が抑制されており、図6から分かるように、AS1842856による細胞増殖抑制効果が大幅に低減していることがわかる。この結果から、AS1842856による骨髄性白血病由来細胞株に対する細胞増殖抑制効果は、FOXOが機能していることが条件(FOXO依存的)であることが明らかとなった。
【実施例】
【0078】
<AS1842856の白血病分化誘導>
上述のように、AS1842856は、骨髄性白血病由来細胞株に対してFOXO依存的に細胞増殖阻害効果を有することが確認された。本実験では、AS1842856による骨髄性白血病由来細胞株の分化誘導を検証した。
【実施例】
【0079】
具体的には、白血病細胞株(THP1及びU937:急性骨髄性白血病細胞株の1種)と反応させ、AS1842856による分化誘導による細胞形態変化についてMay-Grunwald Giemsa染色により評価した。白血病細胞株とAS1842856(1μM)を5% CO2、37℃で48時間培養した。培養後、細胞をPBSで洗浄し、サイトスピンによって細胞標本を調整した。細胞標本をメイグリュンワルド液(武藤化学)で染色・固定した後、リン酸緩衝液(武藤化学)で洗浄した。その後、ギムザ染色液(武藤化学)で染色し、水で洗浄した後、風乾した。細胞の形態変化について顕微鏡下で観察した。
【実施例】
【0080】
結果を図7及び8に示した。図7は急性骨髄性白血病細胞株であるTHP-1について顕微鏡観察した結果であり、図8は急性単球性白血病細胞株であるU937について顕微鏡観察した結果である。図7から分かるように、急性骨髄性白血病細胞株であるTHP-1は、AS1842856により単球様細胞に分化誘導されており、図8から分かるように、急性単球性白血病細胞株であるU937はAS1842856によりマクロファージ様細胞に分化誘導されていることが明らかとなった。
【実施例】
【0081】
<AS1842856による白血病細胞の分化能>
本実験では、AS1842856及びAS1708727について、急性骨髄性白血病細胞株(THP1及びHL60)のマクロファージへの分化誘導能について解析した。
【実施例】
【0082】
先ず、THP1又はHL60細胞を回収し、50,000 cells/75μLになるように10% FBS含有RPMI培地で細胞懸濁液を調製した。AS1842856及びAS1708727の希釈系統は、終濃度が0、1、10、25μMとなる高濃度系統と、終濃度が0、1、10、100nMとなる低濃度系統を25μlの培地に希釈した。反応総量は、100μLとした。96ウェルU底マルチウェルプレート(FALCON)に化合物液25μLと細胞懸濁液75μLを加えて反応を開始し、5% CO2、37℃で72時間培養した。
【実施例】
【0083】
72時間反応後、細胞に5% FBS/PBSを加えて、3回洗浄した後、20μLの5% FBS/PBS(0.5% NaN3含有)に再懸濁した。5μLのPE mouse Anti-Human CD11b/Mac1(BD biosciences)を加えて、90分、氷上で反応させた。反応後、1mLの5% FBS/PBSを加えて、3回洗浄した。細胞を50μLの5% FBS/PBSに再懸濁した。0.5μLの7-AAD(BD biosciences)を添加し、MACS Quant (Milteny biotech)を用いて、7-AAD陰性CD11b陽性細胞を検出した。各化合物濃度でのCD11b陽性細胞について、ヒストグラムでグラフ化し、マクロファージへの分化能を解析した。また、陽性細胞(>500)の高感度の細胞率を測定した。
【実施例】
【0084】
結果を図9及び10に示した。図9の上段は、高濃度(0-25μM)でAS1708727を使用したときの解析結果であり、下段は高濃度(0-25μM)でAS1842856を使用したときの解析結果である。また、図10の上段は、低濃度(0-10μM)でAS1842856を使用したときの解析結果であり、下段は高濃度(0-25μM)でAS1842856を使用したときの解析結果である。図9及び10に示すように、急性骨髄性白血病細胞株は、AS1842856によってマクロファージへ分化誘導されることが明らかとなった。これに対して、一方、AS1842856と同様にFoxo阻害剤であるAS1708727は、急性骨髄性白血病細胞株をマクロファージへ分化誘導できないことが明らかとなった。
【実施例】
【0085】
<AS1842856の正常幹細胞への影響>
以上のように、骨髄性白血病由来の細胞株に対してFOXO依存的に細胞増殖抑制効果を有し、且つ分化誘導能を有することが示されたAS1842856について、正常細胞に対する影響を検討した。
【実施例】
【0086】
先ず、ヒト臍帯血由来単核細胞(RIKENより購入)を抗CD34抗体で染色した。染色細胞から、フローサイトメトリー(FACSaria, BD)を用いて、分化マーカー(CD4、CD8、B220、TER119、Gr-1、Mac1)陰性(Lin-)、CD34陽性細胞を単離した。単離した細胞の試験管内でのコロニー形成能を評価するため、500細胞を成長因子(EPO、SCF、GM-CSF、IL3、G-CSF)含有メチルセルロース半固形培地(Methocult H4034、Stem cell technology)中で培養し、13日目のコロニー形成数を計数した。また、培地中にAS1842856の添加した際のコロニー形成数を計数し、正常幹細胞への影響について評価した。
【実施例】
【0087】
結果を図11に示した。図11に示すように、AS1842856が0.1μM以下といった濃度では正常細胞に対する影響がないことが分かる。上述のように、AS1842856は、0.1μM以下といった濃度で骨髄性白血病株に対する細胞増殖抑制効果がある。このように、AS1842856は、正常細胞に対する細胞増殖抑制効果を示さない濃度範囲で骨髄性白血病の新規治療薬として利用できることが示された。
【実施例】
【0088】
<AS1842856頻回投与による薬効評価>
本実験では、急性骨髄性白血病細胞株(HL60)を移植したマウスに対してAS1842856を頻回投与したときの腫瘍退縮効果を解析した。
【実施例】
【0089】
先ず、急性骨髄性白血病細胞株HL60をNOD scidマウス(7週齢、雌)の背部皮下に移植(1x107細胞/マウス)し、AS1842856を頻回投与するAS18投与群と、AS1842856に代えて溶媒を投与するコントロール群とに分けた(各群12匹)。AS18投与群に対しては、HL60細胞を移植した後、13及び21日の午前10時、並びに14、15、16、17、18、19及び20日の午前10時と午後3時に、それぞれAS1842856を20 mg/kg body weightで計16回腹腔内投与した。一方、コントロール群に対しては、AS18投与群と同じ投与タイミングで溶媒(0.5% Cremophor(Cremophor EL、Sigma, C5135-500G)及び10% DMSOを含むPBS)を計16回腹腔内投与した。
【実施例】
【0090】
そして、各群のマウスについて、HL60細胞移植から3、7、10、13、17及び21日後に、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積の測定は次の通りに行なった。デジタルノギスを用いて、背部皮下に形成された腫瘍の長径と短径を測定し、(長径mm×短径mm×短径mm)/2の値を腫瘍体積として算出した。腫瘍体積を算出した結果を図12に示した。なお、腫瘍体積の群間比較は、統計プログラムystat2013を用いた。解析の結果、最終測定日(移植後21日)の腫瘍体積の値について、コントロール群とAS18投与群との間で対応の無いt-testを実施し、両側検定にてP<0.01水準で有意差を示した。
【実施例】
【0091】
この実験結果から、AS1842856の腹腔内投与によって、生体内において骨髄性白血病細胞株の腫瘍塊を退縮できることが明らかとなり、骨髄性白血病の新規治療薬として利用できることが示された。
【実施例】
【0092】
<AS1842856頻回投与における免疫組織学的解析>
上述したAS18投与群及びコントロール群において、最終投与から3時間後に背部皮下に形成された腫瘍塊を摘出し、4%パラホルムアルデヒドにて固定し(4℃、over night)、定法に従ってパラフィン包埋した。これらの腫瘍サンプルを用いてヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)及び免疫組織化学染色(IHC染色)により腫瘍組織を解析した。
【実施例】
【0093】
具体的には、先ず、パラフィン包埋した腫瘍サンプルから、4μm厚の薄切標本を作製し、キシレンを用いて脱パラフィンし、その後、エタノールにてキシレンを除去した。その後、水道水を用いた流水洗浄を10分間行い、続けて0.01M PBSを用いて5分間の洗浄を3回行った。そして、標準的なプロトコールに従ってHE染色及びIHC染色を実施した。
【実施例】
【0094】
IHC染色では、先ず、0.01M クエン酸緩衝液(pH6)を用いて賦活処理を10分間行い、蒸留水を用いた5分間の洗浄を2回行った。その後、0.3% H2O2 メタノールを用いた内因性パーオキシダーゼ賦活化処理を10分間行い、流水洗浄及び0.01M PBSを用いた洗浄を行った。その後、20%ヤギ正常血清(DAKO社製)を用いてブロッキング処理を行った後、各種1次抗体を反応させた。本実験では、一次抗体として、CD11b(abcam社製)、CD115(abcam社製)、Vimentin [V9](DAKO社製)、Lysozyme(ニチレイ社製)、PCNA [PC10}(DAKO社製)、Ki67(DAKO社製)及びMCM2 [D7G11](CST社製)を使用した。これらのうちVimentin (Ready-to-use)以外の1次抗体は、10%ヤギ正常血清で100倍に希釈してインキュベート(4℃/ON)した。
【実施例】
【0095】
1次抗体反応後、EnVision+Dual Link System-HRP[マウス・ウサギ一次抗体両用タイプ] (DAKO社製)を切片に滴下し、2次抗体を反応させた。2次抗体反応後に洗浄し、DAB tablet(和光純薬工業社製)を使用して調製した発色液にて発色反応を行った。なお、CD11bの発色反応時間を1分40秒とし、CD115の発色反応時間を2分15秒とし、Vimentinの発色反応時間を4分とし、Lysozymeの発色反応時間を1分40秒とし、PCNAの発色反応時間を1分15秒とし、Ki67の発色反応時間を2分30秒とし、MCM2の発色反応時間を1分15秒とした。発色反応の後に洗浄し、ヘマトキシリン溶液(ミリポア社製のCat. No.109249と武藤化学社製のCat. No.3002との等量混合液)で対比染色し、脱水及び透徹した。その後、マリノール(武藤化学社製)を用いて封入した。
【実施例】
【0096】
HE染色の結果を図13に示す。また、一次抗体としてCD11bを使用したIHC染色の結果を図14に示し、CD115を使用したIHC染色の結果を図15に示し、Vimentinを使用したIHC染色の結果を図16に示し、Lysozymeを使用したIHC染色の結果を図17に示し、PCNAを使用したIHC染色の結果を図18に示し、Ki67を使用したIHC染色の結果を図19に示し、MCM2を使用したIHC染色の結果を図20に示した。
【実施例】
【0097】
図13から解るように、HE染色の結果、AS18投与群では、コントロール群と比較すると、核が小さくなっている細胞の集族が見られる(x400画像内:A)。
【実施例】
【0098】
また、図14に示すように、マクロファージへの分化抗原であるCD11bに対する抗体を用いたIHC染色の結果、AS18投与群で陽性率が上昇しており、AS1842856投与による分化傾向が示された。また、陽性細胞の大部分は、HE染色の結果からAS1842856投与の影響と考えられる、核が小さくなっている細胞領域と一致していた(図中A)。
【実施例】
【0099】
同様に、図15に示すように、単球への分化過程での発現が報告されている、単球/マクロファージ等のマーカーであるCD115に対する抗体を用いたIHC染色の結果から、AS18投与群で陽性率が上昇しており、AS1842856投与による分化傾向が示された。上記CD11bと同様に陽性細胞の大部分は、HE染色の結果からAS1842856投与の影響と考えられる、核が小さくなっている細胞領域と一致していた(図中A)。
【実施例】
【0100】
さらに、図16に示すように、単球への分化時に発現量が増加すると報告されている、単球/マクロファージ等のマーカーであるVimentinに対する抗体を用いたIHC染色の結果から、CD11b及びCD115といった分化マーカー同様に、AS18投与群で陽性率が上昇しており、AS1842856投与による分化傾向が示された。Vimentinに対する抗体に対する陽性細胞の大部分もまた、HE染色の結果からAS1842856投与の影響と考えられる、核が小さくなっている細胞領域と一致していた(図中A)。
【実施例】
【0101】
さらにまた、図17に示すように、単球/マクロファージへの分化時に発現量が増加すると報告されている、Lysozymeに対する抗体を用いたIHC染色の結果から、他の分化マーカー同様、AS18投与群で陽性率が上昇しており、AS1842856投与による分化傾向が示された。Lysozymeに対する抗体に対する陽性細胞の大部分もまた、HE染色の結果からAS1842856投与の影響と考えられる、核が小さくなっている細胞領域と一致していた(図中A)。
【実施例】
【0102】
一方、図18に示すように、細胞増殖マーカーであるPCNAに対する抗体を用いたIHC染色の結果から、AS18投与群で陽性率が低下しており、AS1842856投与による細胞増殖抑制傾向が示された。PCNAに対する抗体に対する陰性細胞の大部分もまた、HE染色の結果からAS1842856投与の影響と考えられる、核が小さくなっている細胞領域と一致していた(図中A)。
【実施例】
【0103】
また、図19に示すように、細胞増殖マーカーであるKi67に対する抗体を用いたIHC染色の結果から、AS18投与群で陽性率が低下しており、AS1842856投与による細胞増殖抑制傾向が示された。Ki67に対する抗体に対する陰性細胞の大部分もまた、PCNAに対する抗体を用いたIHC染色と同様に、HE染色の結果からAS1842856投与の影響と考えられる、核が小さくなっている細胞領域と一致していた(図中A)。
【実施例】
【0104】
また、図20に示すように、細胞増殖マーカーであるMCM2に対する抗体を用いたIHC染色の結果から、AS18投与群で陽性率が低下しており、AS1842856投与による細胞増殖抑制傾向が示された。MCM2に対する抗体に対する陰性細胞の大部分もまた、他の細胞増殖マーカーに対する抗体を用いたIHC染色と同様に、HE染色の結果からAS1842856投与の影響と考えられる、核が小さくなっている細胞領域と一致していた(図中A)。
【実施例】
【0105】
<まとめ>
以上の実験結果から、AS1842856を含む式(X)で示されるキノロン誘導体には、骨髄性白血病由来の細胞株の増殖をFOXO依存的に抑制する作用があることが理解できる。よって、AS1842856を含む式(X)で示されるキノロン誘導体は、骨髄性白血病の新規治療薬となることが示された。
【実施例】
【0106】
なお、AS1842856と同様に、FOXO阻害剤として知られた化合物(例えばAS1708727)については、骨髄性白血病由来の細胞株に対する増殖抑制効果が見られず、骨髄性白血病に対する治療薬として有効でないことが判明した。このように本実施例により、FOXOに対する阻害活性の有無のみでは、骨髄性白血病に対する治療効果を予測できないこと、またAS1842856を含む式(X)で示されるキノロン誘導体には骨髄性白血病由来の細胞株に対する極めて優れた増殖抑制効果があることが明らかとなった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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