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明細書 :スクレロスチンを用いた悪性骨腫瘍の治療又は予防

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-099512 (P2019-099512A)
公開日 令和元年6月24日(2019.6.24)
発明の名称または考案の名称 スクレロスチンを用いた悪性骨腫瘍の治療又は予防
国際特許分類 A61K  38/16        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/04        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI A61K 38/16
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 35/04
C07K 14/47 ZNA
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2017-232788 (P2017-232788)
出願日 平成29年12月4日(2017.12.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (その1) 発行年月日 2017年6月6日 刊行物名 科学振興会だより No.79 発行者名 一般財団法人長野県科学振興会 (その2) ウェブサイトの掲載日 2017年6月23日 ウェブサイトのアドレス http://w2.avis.ne.jp/▲~▼nkagaku/kg28-3.html (その3) ウェブサイトの掲載日 2017年8月8日 ウェブサイトのアドレス http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-seikei/pdf/20170819_ver2.pdf (その4) 開催日 2017年8月19日 集会名 第120回信州整形外科懇談会 主催者 日本整形外科学会
発明者または考案者 【氏名】岡本 正則
【氏名】吉田 和薫
【氏名】加藤 博之
【氏名】齋藤 直人
【氏名】鬼頭 宗久
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4H045
Fターム 4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA01
4H045EA20
4H045FA74
要約 【課題】骨腫瘍を治療又は予防することを課題とする。
【解決手段】スクレロスチンを含む、骨腫瘍を治療又は予防するための組成物、及びスクレロスチンを使用した骨腫瘍の治療方法を提供することを課題とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
スクレロスチンを含む、骨腫瘍の治療又は予防のための組成物。
【請求項2】
前記骨腫瘍が、悪性骨腫瘍である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記悪性骨腫瘍が、原発性悪性骨腫瘍又は転移性骨腫瘍である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記原発性悪性骨腫瘍が、骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、悪性リンパ腫、Ewing肉腫、骨未分化多型肉腫、又は脊索腫である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記転移性骨腫瘍が、転移がんである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、他の化学療法剤と組み合わせて使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、骨吸収抑制剤と組み合わせて使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、骨腫瘍の浸潤、又は転移を抑制するために使用される、請求項1から7に記載の組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
スクレロスチンを用いた骨腫瘍の治療又は予防に関する技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍のうち、非上皮性悪性腫瘍の肉腫は上皮性悪性腫瘍のがんと比較し頻度が少なく、その種類の多さもあり病態・病因解析が進んでいるとは言えない。
【0003】
そのため有効な治療法の確立していない腫瘍も多い。現在、悪性骨腫瘍に対する治療は、手術と化学療法や放射線治療を組み合わせて行われている。悪性骨腫瘍の中で最も頻度の高い骨肉腫に対しては1990年代に現行の抗がん剤の多剤併用療法が開始され、5年生存率は約10%から70%以上にまで改善した。しかし初診時に肺転移を有し手術適応のない症例(5年生存率約50%)や、治療後の早期再発例(3年生存率約0%)など、予後不良な症例が数多く存在する。近年、他のがん腫に対する化学療法は分子標的薬などの新規薬剤が多数開発されているが、悪性骨腫瘍に対する適応はなく、その効果も限定的である。
【0004】
古典的Wnt経路に対する阻害因子のひとつであるスクレロスチンは、骨細胞から分泌されるタンパク質である。骨組織に特異性が高く、古典的Wnt経路を阻害することにより骨形成を抑制し骨粗鬆症の原因となる(非特許文献1~3)。抗スクレロスチン抗体は、骨形成促進剤として海外ではすでに骨粗鬆症治療に臨床応用されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】van Bezooijen RL, et al. J Exp Med. 2004 Mar 15;199(6):805-14.
【非特許文献2】Moester M, et al. Calcif Tissue Int. 2010 Aug;87(2):99-107.
【非特許文献3】Weivoda MM, Curr Osteoporos Rep. 2014
【非特許文献4】McClung MR, N Engl J Med. 2014 Jan 30;370(5):412-20.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
悪性骨腫瘍をターゲットとする、新規抗がん剤の開発が切望されているにもかかわらず、悪性骨腫瘍に対する有効な治療薬は20年以上新規開発がなされていないのが現状である。
【0007】
本発明は、スクレロスチンの骨腫瘍に対する作用を利用し、骨腫瘍を治療又は予防することを一課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、スクレロスチンに骨腫瘍細胞の増殖を抑制する作用があることを見出した。また、スクレロスチンに骨腫瘍細胞の遊走を抑制する作用があることを見出した。本発明は、当該知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を含む。
【0009】
(1)組成物
項1.スクレロスチンを含む、骨腫瘍の治療又は予防のための組成物。
項2.前記スクレロスチンが、下記(a)のアミノ酸配列を有する、項1に記載の組成物;
(a)配列番号1の28番目から210番目のアミノ酸配列。
項3.前記スクレロスチンが、下記(b)のアミノ酸配列を有し、かつ前記スクレロスチンは骨形成抑制作用を有する、項1に記載の組成物;
(b)配列番号1の28番目から210番目のアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列。
項4.同一性が90%以上である、項3に記載の組成物。
項5.同一性が95%以上である、項3に記載の組成物。
(b)配列番号1の28番目から210番目のアミノ酸配列とのアミノ酸配列。
項6.前記(b)のアミノ酸配列において、配列番号1の117番目のアスパラギンに相当する部位は保存されている、項3から項5のいずれか一項に記載の組成物。
項7.前記(b)のアミノ酸配列において、配列番号1の115番目から127番目の領域に相当する領域は保存されている、項3から項5のいずれか一項に記載の組成物。
項8.前記スクレロスチンが、真核細胞によって合成されたものである、項1から項7のいずれか一項に記載の組成物。
項9.前記スクレロスチンが、リコンビナントタンパク質である、項8に記載の組成物。
項10.前記骨腫瘍が、悪性骨腫瘍である、項1から項9のいずれか一項に記載の組成物。
項11.前記悪性骨腫瘍が、原発性悪性骨腫瘍又は転移性骨腫瘍である、項10に記載の組成物。
項12.前記原発性悪性骨腫瘍が、骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、悪性リンパ腫、Ewing肉腫、骨未分化多型肉腫、又は脊索腫等である項11に記載の組成物。
項13.前記転移性骨腫瘍が、転移がんである、項11に記載の組成物。
項14.前記組成物は、他の化学療法剤と組み合わせて使用される、項1から項13のいずれか一項に記載の組成物。
項15.前記組成物は、骨吸収抑制剤と組み合わせて使用される、項1から項14のいずれか一項に記載の組成物。
項16.前記組成物は、骨腫瘍の浸潤、又は転移を抑制するために使用される、項1から項15に記載の組成物。
【0010】
(2)治療方法
項1.骨腫瘍を有する個体にスクレロスチンを投与する工程を含む、骨腫瘍の治療方法。
項2.前記スクレロスチンが、下記(a)のアミノ酸配列を有する、項1に記載の治療方法;
(a)配列番号1の28番目から210番目のアミノ酸配列。
項3.前記スクレロスチンが、下記(b)のアミノ酸配列を有し、かつ前記スクレロスチンは骨形成抑制作用を有する、項1に記載の治療方法;
(b)配列番号1の28番目から210番目のアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列。
項4.同一性が90%以上である、項3に記載の治療方法。
項5.同一性が95%以上である、項3に記載の治療方法。
項6.前記(b)のアミノ酸配列において、配列番号1の117番目のアスパラギンに相当する部位は保存されている、項3に記載の治療方法。
項7.前記(b)のアミノ酸配列において、配列番号1の115番目から127番目の領域に相当する領域は保存されている、項3に記載の治療方法。
項8.前記スクレロスチンが、真核細胞によって合成されたものである、項1に記載の治療方法。
項9.前記スクレロスチンが、リコンビナントタンパク質である、項8に記載の治療方法。
項10.前記骨腫瘍が、悪性骨腫瘍である、項1から項9のいずれか一項に記載の治療方法。
項11.前記悪性骨腫瘍が、原発性悪性骨腫瘍又は転移性骨腫瘍である、項10に記載の治療方法。
項12.前記原発性悪性骨腫瘍が、骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、悪性リンパ腫、Ewing肉腫、骨未分化多型肉腫、又は脊索腫等である項11に記載の治療方法。
項13.前記転移性骨腫瘍が、転移がんである、項11に記載の治療方法。
項14.他の化学療法剤を投与する工程をさらに含む、項1に記載の治療方法。
項15.骨吸収抑制剤を投与する工程をさらに含む、項1に記載の治療方法。
項16.骨腫瘍を除去した個体にスクレロスチンを投与する工程を含む、骨腫瘍の治療方法。
【発明の効果】
【0011】
骨腫瘍細胞の増殖、及び/又は骨腫瘍細胞の遊走を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】alamarBlue assayで測定した細胞数をグラフで示す。白棒はコントロール群を示し、黒棒はスクレロスチン添加群を示す。**:p<0.01。【図3】Scratch assayで細胞を剥がした間隙部分の面積の変化量をグラフで示す。白棒はコントロール群を示し、黒棒はスクレロスチン添加群を示す。*:p<0.05。3)をグラフで示す。白棒はコントロール群を示し、黒棒はスクレロスチン投与群を示す。*:p<0.05。【0013】
1.組成物
組成物は、スクレロスチンを含むことが好ましい。
スクレロスチンは、様々な動物、鳥類、魚類由来の野生型及びバリアントのスクレロスチンに由来するアミノ酸配列を有するペプチドであり得る。例えば、スクレロスチンは、下記(a-1)、(a-2)、(b-1)、(b-2)、(b-3)、(c-1)、(c-2)又は(c-3)のアミノ酸配列であることが好ましい。

【0014】
(a-1)ヒト スクレロスチンのアミノ酸配列である、配列番号1の28番目から210番目のアミノ酸配列、
(a-2)配列番号1の24番目から210番目のアミノ酸配列、
(b-1)配列番号1の28番目から210番目のアミノ酸配列との同一性が、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上であるアミノ酸配列、
(b-2)前記(b-1)のアミノ酸配列において、配列番号1の117番目のアスパラギンに相当する部位は保存されているアミノ酸配列、
(b-3)前記(b-1)のアミノ酸配列において、配列番号1の115番目から127番目の領域に相当する領域は保存されているアミノ酸配列、
(c-1)マウス スクレロスチンのアミノ酸配列である、配列番号2の28番目から211番目のアミノ酸配列、
(c-2)配列番号2の24番目から211番目のアミノ酸配列、
(c-3)チンパンジー、アカゲザル、タイリクオオカミ、ウシ、ニワトリ、ラット、ゼブラフィッシュ等のスクレロスチンのアミノ酸配列(例えば、The National Center for Biotechnology Information (NCBI) Reference Sequence: XP_001153653.1、XP_001113701.1、XP_548071.2、NP_001159986.1、NP_085073.1、XP_004948608.1、XP_001340683.1等)であって、配列番号1の28番目から210番目のアミノ酸配列との同一性が、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上であるアミノ酸配列。

【0015】
「アミノ酸配列を有する」とは、アミノ酸配列を含むこと、アミノ酸配列からなることが含まれる。また、上述のアミノ酸配列を有する場合には、1ペプチド内で前記(a-1)、(a-2)、(b-1)、(b-2)、(b-3)、(c-1)、(c-2)又は(c-3)のアミノ酸配列が連続していることが好ましい。

【0016】
「同一性」とは、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができ、例えば、NCBIの相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、算出することができる。

【0017】
「配列番号1の117番目のアスパラギンに相当する部位は保存されている」とは、配列番号1のアミノ酸配列と他のスクレロスチンのアミノ酸配列間でアラインメントを解析した際に、他のスクレロスチンのアミノ酸配列において、配列番号1の117番目のアスパラギンに対応する部分が同じアスパラギンであることを意味する。

【0018】
「配列番号1の115番目から127番目の領域に相当する領域は保存されている」とは、配列番号1のアミノ酸配列と他のスクレロスチンのアミノ酸配列間でアラインメントを解析した際に、他のスクレロスチンのアミノ酸配列において、配列番号1の115番目から127番目の領域に対応する部分が、配列番号1の115番目から127番目と同じアミノ酸配列であることを意味する。

【0019】
前記(a-1)、(a-2)、(b-1)、(b-2)、(b-3)、(c-1)、(c-2)又は(c-3)のアミノ酸配列を有するスクレロスチンは、骨肉腫細胞の増殖抑制作用、骨肉腫細胞の遊走抑制作用及び骨形成抑制作用よりなる群から選択される少なくとも一種の作用を有することが好ましい。

【0020】
骨肉腫細胞の増殖抑制作用、及び骨肉腫細胞の遊走抑制作用の有無は、後述する実施例に記載の方法に従って確認することができる。

【0021】
骨形成抑制作用は、前記(a-1)、(a-2)、(b-1)、(b-2)、(b-3)、(c-1)、(c-2)又は(c-3)のアミノ酸配列を有するスクレロスチンを、例えばマウスに投与した際に、骨量が減少するか否かで判定することができる。若しくは、in vitro実験において、前記(a-1)、(a-2)、(b-1)、(b-2)、(b-3)、(c-1)、(c-2)又は(c-3)のアミノ酸配列を有するスクレロスチンが、古典的Wnt経路(Wnt/β-catenin経路)を抑制するか否かを指標として、骨形成抑制作用を確認することができる。例えば、FrizzledとLrp5/6の受容体複合体を発現する細胞に、前記(a-1)、(a-2)、(b-1)、(b-2)、(b-3)、(c-1)、(c-2)又は(c-3)のアミノ酸配列を有するスクレロスチンとWntとを作用させ、β-cateninの細胞質内への蓄積が抑制されることをウエスタンブロッティングや免疫染色等で評価することによって、骨吸収抑制作用があるか否かを判定することができる。または、FrizzledとLrp5/6の受容体複合体を発現する細胞に、前記(a-1)、(a-2)、(b-1)、(b-2)、(b-3)、(c-1)、(c-2)又は(c-3)のアミノ酸配列を有するスクレロスチンとWntとを作用させ、古典的Wnt経路の標的遺伝子であるAxin2やCyclin DなどのmRNAの発現抑制を、例えばリアルタイムPCRで評価することによって、骨吸収抑制作用があるか否かを判定することができる。

【0022】
スクレロスチンは、自然界に存在するものを精製し取得してもよいが、リコンビナントペプチド(遺伝子組換えペプチド)又は化学合成ペプチドとして取得してもよい。リコンビナントペプチドを作製する際の宿主としては、大腸菌又は真核細胞(酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞、鳥類細胞等)を用いることができるが、好ましくは真核細胞、より好ましくは哺乳類細胞を用いることができる。リコンビナントペプチドを作製する際のベクターとしては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等の公知のベクターを使用することができる。

【0023】
リコンビナントペプチドは、例えばHisタグ、GSTタグ、FLAGタグ、MATタグ、Mycタグ、HAタグ、イムノグロブリンFc部分等のアミノ酸配列を含んでいてもよい。

【0024】
スクレロスチンは、糖質、脂質等の自然界で付加されうる修飾基によって修飾されていてもよい。また、スクレロスチンは、ポリエチレングリコール等の化合物によって修飾されていてもよい。

【0025】
スクレロスチンは、そのまま組成物として用いてもよいが、好ましくは、適当な担体または添加剤を組み合わせて組成物として調製される。前記組成物には、医薬組成物及び飲食品組成物を含む。医薬組成物の調製に用いられる担体や添加剤としては、医薬組成物の剤形に応じて通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤等を例示できる。

【0026】
医薬組成物が経口投与されるものである場合の剤形は、特に制限されないが、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤(硬質カプセル剤及び軟質カプセル剤を含む)、液剤、丸剤、懸濁剤、及び乳剤等を例示できる。また医薬組成物が、非経口投与されるものである場合には、注射剤、点滴剤、坐剤、点鼻剤、及び経肺投与剤等を例示できる。医薬組成物は非経口投与されることが好ましい。

【0027】
医薬組成物が、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤等の経口用固形組成物である場合の調製に際しては、担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、メチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム等の賦形剤;単シロップ、プドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、水、エタノール、リン酸カリウム等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤;白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フイルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。

【0028】
医薬組成物が、丸剤の経口用固形組成物である場合の調製に際しては、担体として、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン等の結合剤;ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。

【0029】
医薬組成物が、カプセル剤の経口用固形組成物である場合の調製に際しては、カプセル剤はスクレロスチンを上記で例示した各種の担体と混合し、硬質カプセル、または軟質カプセル等に充填して調製される。

【0030】
医薬組成物が液剤の場合には、水性又は油性の懸濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤であってもよく、通常の添加剤を用いて常法に従い、調製される。

【0031】
医薬組成物が注射剤の場合の調製に際しては、担体として例えば水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等の希釈剤;クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤;リン酸二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の緩衝剤;ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等の安定化剤;凍結乾燥した際の成形剤として例えばマンニトール、イノシトール、マルトース、シュクロース、ラクトース等の糖類を使用できる。なお、この場合等張性の溶液を調整するに十分な量のブドウ糖或いはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、無痛化剤、局所麻酔剤等を添加しても良い。これらの担体を添加して、常法により皮下、筋肉内、静脈内用注射剤を製造することができる。

【0032】
上記製剤が点滴剤の場合には、投与化合物を生理食塩水、リンゲル液等を基本とした等張電解質輸液製剤に溶解して調製することができる。

【0033】
医薬組成物の投与量としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、剤型、患者の年齢、性別、病状の程度等によって適宜設定され得るが、例えば、スクレロスチンの量に換算して体表面積当たり0.01~100mg程度投与することができる。

【0034】
飲食品組成物には、一般食品、保健機能食品(機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品)が含まれる。保健機能食品の定義および分類は、日本の健康増進法、および食品衛生法に定めるところによる。

【0035】
また、飲食品組成物には、ペット(イヌ、ネコ、ハムスター、ウサギ、トリなど)に対する飲食品(ペットフード)、および家畜(牛、豚、家禽類)に対する飲食品(飼料組成物)も含まれる。

【0036】
飲食品組成物としては、特に制限されることはないが、例えば飲料(例:乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、スポーツ飲料、粉末飲料、茶飲料など)、冷菓(例:ゼリー、ババロア、プリンなど)、氷菓(例:アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット)、菓子類(例:クッキー、ビスケット、おかき、飴類、チョコレート類、ガム類)、パン類、麺類(例:中華麺、パスタ、うどん、蕎麦、素麺)、スープ類(粉末または固形スープを含む)、調味料(例:ドレッシング、ジュレ、ソース、マヨネーズ様ソース、たれ)などを挙げることができる。

【0037】
また、飲食品組成物は、上記形態を有する飲食品の他に、サプリメント形態の飲食品組成物、小児用食品(ベビーフードを含む)および病者用食品(要介護者用食品、および嚥下困難者用食品を含む)を含む。このようなサプリメント形態の飲食品組成物、小児用食品又は病者用食品として調製する場合、継続的な摂取が容易にできるように、例えば、液剤(ドリンク剤)、シロップ剤、ドライシロップ剤、ゼリー製剤(用時調製用のものを含む。以下同じ)、顆粒剤、散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、トローチ剤、チュアブル剤等の製剤形態に調製することが好ましい。好ましくは、液剤(ドリンク剤)、ゼリー製剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)であり、より好ましくは液剤(ドリンク剤)、ゼリー製剤である。これらは、上述の医薬組成物と同様に公知の方法に従って調製することができる。

【0038】
各国の国内法において、飲食品組成物に疾患との関係を表示することが禁じられている場合には、上記疾患との関係を国内法に抵触しない表示形式に変更することができる。

【0039】
飲食品組成物の接種量としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、剤型、接種対象者の年齢、性別、病状の程度等によって適宜設定され得るが、例えば、上記スクレロスチンの量に換算して体表面積当たり0.01~100mg程度接種することができる。

【0040】
組成物は、骨腫瘍の治療、予防、改善のために使用することができる。ここで、「治療」には、骨腫瘍の増殖を抑制すること、骨腫瘍を消失させること、骨腫瘍の浸潤若しくは転移を抑制すること、及び/又は他の抗腫瘍療法(放射線治療、腫瘍部の切除、化学療法等)を補助することを含む。「予防」には、骨腫瘍を発生させないこと、及び/又は骨腫瘍の再発を抑制することが含まれる。「改善」には、骨腫瘍を縮小させること、及び/又は骨腫瘍の浸潤若しくは転移を減らすことが含まれる。

【0041】
骨腫瘍には、良性骨腫瘍及び悪性骨腫瘍が含まれる。組成物の投与又は摂取対象疾患として好ましくは、悪性骨腫瘍である。前記悪性骨腫瘍には、原発性悪性骨腫瘍及び転移性骨腫瘍が含まれる。前記原発性悪性骨腫瘍には、骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、悪性リンパ腫、Ewing肉腫、骨未分化多型肉腫、又は脊索腫等が含まれる。前記転移性骨腫瘍には、がん(上皮性悪性腫瘍)又は肉腫(非上皮性悪性腫瘍)の転移腫瘍が含まれる。組成物の投与又は接種対象疾患として好ましくは転移がんである。転移がんの原発がんとしては、肺がん、乳がん、前立腺がん、腎臓がん、肝臓がん、胃がん等を挙げることができる。

【0042】
組成物は、他の抗腫瘍療法(放射線治療、腫瘍部の切除、化学療法等)と併用することができる。

【0043】
組成物と、他の抗腫瘍療法との併用方法は、本発明の効果を奏する使用の態様であればよく、特に制限されない。例えば、他の抗腫瘍療法の開始と同時に組成物を並行して使用してもよい。あるいは他の抗腫瘍療法の開始に先立って、または他の抗腫瘍療法の開始後に組成物の使用を開始してもよい。この場合、他の抗腫瘍療法が放射線治療、他の化学療法剤を用いた化学療法の場合には、組成物の使用と他の抗腫瘍療法を交互に行ってもよい。さらに、他の抗腫瘍療法が放射線治療、他の化学療法剤を用いた化学療法の場合には、他の抗腫瘍療法を開始後、腫瘍の組織の縮小度合い等に併せて、他の抗腫瘍療法の途中から、組成物を併用使用してもよく、また逆に組成物使用開始後、その途中から他の抗腫瘍療法を開始してもよい。

【0044】
例えば、化学療法は、抗がん剤、ホルモン剤、免疫賦活剤等の化学療法剤を投与する治療である。スクレロスチン以外の化学療法剤としては、例えばシクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、メルファラン、ベンダムスチン塩酸塩、ニムスチン塩酸塩、ラニムスチン、ダガルバジン、プロカルバジン塩酸塩テモゾロミド等のアルキル化薬;メトトレキサート、ペメトレキセドナトリウム、フルオロウラシル、ドキシフルリジン、カペシタビン、テガフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート水和物、エノシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、メルカプトプリン水和物、フルダラビンリン酸エステル、ネララビン、ペントスタチン、クラドリビン、レボホリナートカルシウム、ホリナートカルシウム、ヒドロキシカルバミド、L-アスパラギナーゼ、アザシチジン等の代謝拮抗薬;ドキソルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩、ピラルビシン、エピルビシン塩酸塩、イダルビシン塩酸塩、アクラルビシン塩酸塩、アムルビシン塩酸塩、ミトキサントロン塩酸塩、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ペプロマイシン硫酸塩、ジノスタチンスチラマー等の抗腫瘍性抗生物質;ビンクリスチン硫酸塩、ビンブラスチン硫酸塩、ビンデシン硫酸塩、ビノレルビン酒石酸塩、パクリタキセル、ドセタキセル水和物、エリブリンメシル酸塩等の微小血管阻害薬;アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、タモキシフェンクエン酸塩、トレミフェンクエン酸塩、フルベストラント、フルタミド、ビカルタミド、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム水和物、ゴセレリン酢酸塩、リュープロレリン酢酸塩等のホルモン剤;シスプラチン、ミリプラチン水和物、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン等の白金製剤;イリノテカン塩酸塩水和物、ノギテカン塩酸塩等のトポイソメラーゼI阻害薬;エトポシド、ソブゾキサン等のトポイソメラーゼII阻害薬;インターフェロンガンマ-1a、テセロイキン、セルモロイキン等のサイトカイン;トラツズマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ベバシズマブ、セツキシマブ等の抗体薬;イブリツモマブ チウキセタン配合剤等の放射免疫療法薬;ゲフィチニブ、イマチニブメシル、ボルテゾミブ、エルロチニブ塩酸塩、ソラフェニブトシル酸塩、スニチニブリンゴ酸塩、サリドマイド、ニロチニブ塩酸塩水和物、ダサチニブ水和物、ラパチニブトシル酸塩水和物、エベロリムス、レナリドミド水和物、デキサメタゾン、テムシロリムス、ボリノスタット、トレチノイン、タミバロテン等の分子標的薬;OK-432、乾燥BCG、かわらたけ多糖体製剤、レンチナン、ウベニメクス等の非特異的免疫賦活薬;アセグラトン、ポルフィマーナトリウム、タラポルフィンナトリウム、エタノール、三酸化ヒ素等を挙げることができる。

【0045】
これらの化学療法剤は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。投与量は、薬剤毎に、公知の投与量にしたがって、患者の状態、腫瘍の大きさ、進行度に応じて、適宜設定できる。

【0046】
放射線治療は、患部に、エックス線照射もしくは電子線照射を行うことによって実施することができる。ここでエックス線照射の条件は、腫瘍の進行度や大きさなどによって異なるが、通常1回線量1.5~3Gy,好ましくは2Gy程度の照射を、週に2~5回、好ましくは週4~5回程度、1~5週間にわたって行う方法を挙げることができる。総線量としては20~80Gy,好ましくは40~80Gy程度、より好ましくは50~70Gy程度を挙げることができる。また電子線照射の条件は、やはり腫瘍の進行度や大きさなどによって異なるが、通常1回線量2~5Gy、好ましくは4Gy程度の照射を、週1~5回、好ましくは週2~3回程度、1~5週間にわたって行う方法を挙げることができる。総線量としては30~80Gy、好ましくは40~70Gy程度を挙げることができる。

【0047】
スクレロスチンは、投与によって骨量の減少を引き起こす可能性があるため、骨吸収抑制剤と併用することが好ましい。

【0048】
骨吸収抑制剤としては、デノスマブ等の抗RANKLモノクローナル抗体薬;エストリオール、エストロゲン、エストラジオール等の女性ホルモン薬;ラロキシフェン、バゼドキシフェン等の選択的エストロゲン受容体モジュレーター薬;エルカトニン、サケカルシトニン等のカルシトニン薬;エチドロン酸二ナトリウム、アレンドロン酸ナトリウム、リセドロン酸ナトリウム、ミノドロン酸、イバンドロン酸等のビスホスホネート薬等を挙げることができる。

【0049】
これらの骨吸収抑制剤は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。投与量は、薬剤毎に、公知の投与量にしたがって、患者の骨量等に応じて、適宜設定できる。

【0050】
組成物と、骨吸収抑制剤との併用方法は、本発明の効果を奏する使用の態様であればよく、特に制限されない。例えば、組成物の使用開始と同時に骨吸収抑制剤を並行して使用してもよい。あるいは組成物の使用開始に先立って、または組成物の使用開始後に骨吸収抑制剤の使用を開始してもよい。この場合、他の抗腫瘍療法が放射線治療、他の化学療法剤を用いた化学療法の場合には、組成物の使用と骨吸収抑制剤の使用を交互に行ってもよい。さらに、組成物の使用開始後、骨量変化に併せて、組成物の使用途中から、骨吸収抑制剤を併用使用してもよい。

【0051】
2.治療方法
治療には、スクレロスチンを用いることが好ましい。好ましくは、骨腫瘍を有する個体(好ましくは、ヒト)にスクレロスチンを投与する工程を含む、骨腫瘍の治療方法である。治療方法は、他の化学療法剤を投与する工程をさらに含んでいてもよい。また、治療方法は、骨吸収抑制剤を投与する工程と組み合わせてもよい。さらに、他の抗腫瘍療法により、骨腫瘍が除去された個体に対して、骨腫瘍の転移を防ぐために、又は転移している腫瘍細胞を増殖させないためにスクレロスチンを投与してもよい。

【0052】
スクレロスチンについては、上記組成物の項の説明をここに援用する。

【0053】
またスクレロスチンを用いた治療方法は、スクレロスチンをそのまま用いてもよく、前記組成物を用いて行ってもよい。スクレロスチンの投与量は、上記組成物の項の説明をここに援用する。

【0054】
また、「骨腫瘍」、「抗腫瘍療法」、「骨吸収抑制剤」の説明についても上記組成物の項の説明をここに援用する。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を用いて、本願発明をより具体的に説明するが、本願発明は実施例に限定して解釈されるものではない。
また、実施例に記載する動物実験は信州大学動物実験等実験規程に従って行った。
【実施例】
【0056】
1.リコンビナント スクレロスチン
本実施例において、ヒト骨肉腫細胞株HOS細胞を用いた実験には、リコンビナント スクレロスチンとして、SOST, Human, Recombinant, Carrier-free 25μg 1406-ST-025/CF(R&D Systems社)を用いた。前記ヒト リコンビナント スクレロスチンは、NCBIの登録番号UniProtKB/Swiss-Prot: Q9BQB4.1(配列番号1)に示されるアミノ酸配列の24番目のグルタミンから213番目のチロシンまでのペプチドであり、N末端側に7つのヒスチジン残基からなるヒスタグを有する。
【実施例】
【0057】
また、骨肉腫マウスモデルを用いた実験には、リコンビナント スクレロスチンとして、SOST, Mouse, Recombinant, Carrier-free 25μg 1589-ST-025/CF(R&D社Systems社)を用いた。前記マウス リコンビナント スクレロスチンは、NCBI Reference Sequence: NP_077769.4(配列番号2)に示されるアミノ酸配列の24番目のグルタミンから211番目のチロシンまでのペプチドであり、N末端側に7つのヒスチジン残基からなるヒスタグを有する。
【実施例】
【0058】
前記ヒト及びマウスのリコンビナント スクレロスチンは、マウスNS0由来ミエローマ細胞株に発現させたものである。
【実施例】
【0059】
前記ヒト リコンビナント スクレロスチンは滅菌したPBSに200μg/mlとなるように溶解し、ストック液とした。前記マウス リコンビナント スクレロスチンも同様にストック液を調製した。
【実施例】
【0060】
2.実施例1:スクレロスチンの腫瘍細胞の増殖抑制効果
HOS細胞を使って、スクレロスチンが腫瘍細胞の増殖に対してどのような作用を示すか検討した。
【実施例】
【0061】
(1)方法
細胞の増殖能は、alamarBlue assay(alamarBlue試薬:invitrogen社 alamaeBlue DAL1100)で評価した。はじめに、HOS細胞を10%FBSと抗生物質を含むαMEM培地で37℃、5%炭酸ガス存在下で培養した。 HOS細胞を4×10^5個/ディッシュとなるように10 cm ディッシュに播種し、スクレロスチンを含まない培地で培養するコントロール群と、スクレロスチン100ng/mlの存在下で培養するスクレロスチン添加群とにわけ、3日間培養した。各群のn数は1とした。
【実施例】
【0062】
培養終了後、各群のそれぞれのディッシュから細胞浮遊液を調製した。細胞濃度は、1×10^4個/mlとし、スクレロスチンを含まない培地で細胞浮遊液を調製した。各細胞浮遊液を96 wellプレートに100μl/wellとなるようにn=8で分注し、細胞を接着させるため、4時間静置した。培地を除去することなく、alamarBlue試薬10μlを各ウェルに添加した。
【実施例】
【0063】
alamarBlue試薬添加時と、alamarBlue試薬を添加してから1時間後に各ウェルの蛍光強度を測定した。各ウェルについて1時間後の蛍光強度から添加時の蛍光強度を引いた減算値を算出した。この各ウェルの減算値を使って各群の平均、標準誤差を算出した。二群間の差はステューデントt検定で検定した。
【実施例】
【0064】
(2)結果
alamarBlue assayの結果を、図1に示す。白棒はコントロール群を示し、黒棒はスクレロスチン添加群を示す。スクレロスチン添加群では有意に(p<0.01)細胞数の増加が抑制されていた。このことから、スクレロスチンには、悪性骨腫瘍細胞株の増殖を抑制する効果があることが示された。【0065】
3.実施例2:スクレロスチンによる腫瘍細胞の遊走抑制効果(1)
HOS細胞を使って、スクレロスチンが腫瘍細胞の遊走に対してどのような作用を示すか検討した。
【実施例】
【0066】
(1)方法
細胞の遊走能は、Scratch assayで評価した。
はじめに、HOS細胞を4×10^4/mlとなるように培地に浮遊させ、500μlずつ24wellプレートに分注した。コントロール群はスクレロスチンを含まない培地で、スクレロスチン添加群はスクレロスチン100ng/mlの存在下で3日間培養した。各群のn数は3とした。
【実施例】
【0067】
培養終了後に、全てのウェルの培地をスクレロスチンを含まない培地に交換した。その後、ピペットチップを使用しウェルの底に付着している細胞の一部を、一定の幅となるように剥離した。剥離後、剥離細胞を含む浮遊細胞を除去するためにスクレロスチンを含まない培地で各ウェルの培地交換を行い、プレートを37℃、5%炭酸ガス存在下に静置した。剥離後培養開始時、前記培養開始から5時間後、及び7時間後に位相差顕微鏡下で剥離された間隙部分を撮像した。間隙部分の面積変化は、Image J softwareで撮像した画像の間隙部分の面積を測定することにより定量化した。各ウェルについて、開始時の面積から5時間後の面積を引いた減算値を算出した。この各ウェルの減算値を使って各群の平均、標準誤差を算出した。二群間の差はステューデントt検定で検定した。
【実施例】
【0068】
(2)結果
Scratch assayにおける、剥離後培養開始時、前記培養開始から5時間後、及び7時間後の間隙部分の様子を図2に示す。画像の目視による観察において、コントロール群はスクレロスチン添加群と比較して、5時間後及び7時間後に経時的に間隙に細胞が広がっていた。これに対してスクレロスチン添加群は、細胞の広がりがコントロール群よりも遅れていた。この遅れを間隙部分の面積で定量的に評価したグラフを図3に示す。白棒はコントロール群を示し、黒棒はスクレロスチン添加群を示す。スクレロスチン添加群では有意に(p<0.05)間隙面積の減少が抑えられていた。このことから、スクレロスチンには、悪性骨腫瘍細胞株の遊走を抑制する効果があることが示された。【0069】
4.実施例3:スクレロスチンによる腫瘍細胞の遊走抑制効果(2)
さらにスクレロスチンの遊走能に対する効果を評価するため、Migration assayを行って、スクレロスチンの効果を評価した。
【実施例】
【0070】
(1)方法
実施例1と同様に、はじめにHOS細胞をスクレロスチンを含まない培地で培養するコントロール群と、スクレロスチン100ng/mlの存在下で培養するスクレロスチン添加群とにわけ、3日間培養した。各群のn数は1とした。
【実施例】
【0071】
培養終了後、市販のキットCytoSelectTM 96-well Cell Migration Assay (8μm), Fluorometric(CBL社)を使って、Migration assayを行った。Migration assayの概要を図4Aに示す。図4Aに示す2重に重なった2つのウェルの内側のウェルに、キットに添付のプロトコールにしたがって細胞浮遊液 (血清フリー培地で作製したもの)を添加した。各群n数は5とした。外側のウェルには10%BSA混合培地を使用することでBSAの濃度勾配を作成した。キットに添付のプロトコールにしたがい、細胞浮遊液添加から一定時間後に内側のウェルの底に空けられている孔(直径8μm)を通過して、外側のウェルに遊走してくる細胞の数を蛍光強度で測定した。
【実施例】
【0072】
各群のそれぞれの細胞について蛍光強度を求め、前記蛍光強度の各群の平均、標準誤差を算出した。二群間の差はステューデントt検定で検定した。
【実施例】
【0073】
(2)結果
Migration assayの結果を図4Bに示す。白棒はコントロール群を示し、黒棒はスクレロスチン添加群を示す。スクレロスチン添加群では有意に(p<0.05)遊走が抑えられていた。このことから、スクレロスチンには、悪性骨腫瘍細胞株の遊走を抑制する効果があることが、Migration assayにおいても示された。【0074】
5.実施例4:骨肉腫モデルマウスおけるスクレロスチンの効果
骨肉腫モデルマウスを作製し、このモデルマウスにスクレロスチンを投与することで、スクレロスチンのin vivoにおける抗腫瘍効果を評価した。
【実施例】
【0075】
(1)方法
i.骨肉腫モデルマウスの作製
骨肉腫モデルマウスは、C3H/HeSlcマウスに、マウス骨肉腫細胞株LM8細胞を移植して作製した。3週齢で日本エスエルシー社から購入したマウスを1週間訓化し、4週齢となったマウスに、PBSに懸濁したLM8細胞を、マウス一匹あたり1×10^6個となるように、左背部皮下に移植した。
【実施例】
【0076】
ii.スクレロスチンの投与
スクレロスチンを、LM8細胞移植日から、目標血中濃度 1μg/ml (in vitro実験の10倍)となるように、骨肉腫モデルマウスの腹腔内に注射した。具体的には、スクレロスチン投与群には、マウスの体重1 gあたりスクレロスチン80ngを1日1回、連続7日間腹腔内に注射した。またコントロール群には、スクレロスチンに代えてスクレロスチン溶液と同容積のPBSを投与した。
【実施例】
【0077】
コントロール群及びスクレロスチン投与群の各マウスについて平均生存期間(日数)、腫瘍体積(目視、マイクロCT)、及び死亡時肺転移の有無を検討した。
【実施例】
【0078】
安楽死基準は、腫瘍長径17 mm以上、運動障害、摂餌障害、異常な攻撃性、及び腫瘍の潰瘍形成の少なくとも一つが認められた場合とした。
【実施例】
【0079】
生存曲線はカプランマイヤー法により作成し、生存曲線の二群間の差はログランク検定で検定した。また、平均生存期間の二群間の差はステューデントt検定で検定した。
【実施例】
【0080】
(2)結果
LM8細胞の移植後1週間での各群の腫瘍体積を、図5に示す。白棒はコントロール群を示し、黒棒はスクレロスチン投与群を示す。スクレロスチン投与群は、コントロール群と比較して有意に(p<0.05)腫瘍体積の増加が抑制されていた。このことから実施例1においてin vitroで確認された腫瘍増殖の抑制効果が、in vivoでも認められることが示された。【0081】
生存曲線を図6Aに示す。点線はコントロール群、実線はスクレロスチン投与群を示す。平均生存期間のグラフを図6Bに示す。白棒はコントロール群を示し、黒棒はスクレロスチン投与群を示す。生存曲線でも、コントロール群と比較してスクレロスチン投与群では有意に(p=0.001)良好な成績となった。また、平均生存期間も、コントロール群と比較してスクレロスチン投与群では有意に(p<0.05)延長していた。【0082】
本実施例において、骨肉腫モデルマウスにおいて、スクレロスチン投与は、腫瘍体積の増加を抑制するとともに、予後を改善することが示された。さらに、スクレロスチンは、骨腫瘍の治療に効果的であると考えられた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5