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明細書 :油圧ロボット、ロボット制御装置、及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-111626 (P2019-111626A)
公開日 令和元年7月11日(2019.7.11)
発明の名称または考案の名称 油圧ロボット、ロボット制御装置、及びプログラム
国際特許分類 B25J  13/08        (2006.01)
FI B25J 13/08 Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2017-247895 (P2017-247895)
出願日 平成29年12月25日(2017.12.25)
発明者または考案者 【氏名】酒井 悟
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100192773、【弁理士】、【氏名又は名称】土屋 亮
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
Fターム 3C707HS13
3C707KS28
3C707KS40
3C707KV15
3C707LT11
3C707LU09
3C707LV22
要約 【課題】力検出部を用いずに、可動部に加えられた外力に基づく動きを可動部に行わせることができる油圧ロボットを提供すること。
【解決手段】油圧ロボットは、油圧式の可動部を備え、可動部に外力が加えられた場合、外力に応じた変位量可動部を動作させる。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
油圧式の可動部を備え、
前記可動部に外力が加えられた場合、前記可動部を前記外力に応じた変位量動かす、
油圧ロボット。
【請求項2】
前記可動部は、スプールの位置に応じた油圧によってピストンを動かすアクチュエーターを備え、
前記アクチュエーターは、前記ピストンの位置を検出する位置検出部と、前記ピストンに加わる油圧を検出する圧力検出部とを備え、
前記位置検出部からの出力値と前記圧力検出部からの出力値とに基づいて前記スプールの位置を変化させることにより、前記可動部を前記変位量動かす、
請求項1に記載の油圧ロボット。
【請求項3】
コンプライアントモーション制御によって前記スプールの位置を変化させる、
請求項2に記載の油圧ロボット。
【請求項4】
前記コンプライアントモーション制御とは、インピーダンス制御である、
請求項3に記載の油圧ロボット。
【請求項5】
前記可動部の構造に応じて決まる機械的パラメーターである第1機械的パラメーターと異なる機械的パラメーターである第2機械的パラメーターに基づいて、前記スプールの位置を変化させる、
請求項2から4のうちいずれか一項に記載の油圧ロボット。
【請求項6】
前記第2機械的パラメーターに基づくカシミア関数に基づいて、前記スプールの位置を変化させる、
請求項5に記載の油圧ロボット。
【請求項7】
前記変位量は、前記外力の変化に応じて変化し、前記外力に応じて一意に決まる、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の油圧ロボット。
【請求項8】
前記可動部は、前記外力を検出する力検出部を備えない、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の油圧ロボット。
【請求項9】
油圧式の可動部を備えた油圧ロボットを制御するロボット制御装置であって、
前記可動部に外力が加えられた場合、前記可動部を前記外力に応じた変位量動かす、
ロボット制御装置。
【請求項10】
コンピューターに、
油圧式の可動部を備えたロボットを制御させるプログラムであって、
前記可動部に外力が加えられた場合、前記可動部を前記外力に応じた変位量動かすステップ、
を実行させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧ロボット、ロボット制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式のアクチュエーターによって動くロボットである油圧ロボットに関する技術の研究や開発が行われている。
【0003】
これに関し、可動部に加えられた外力を検出する力センサーからの出力値に基づくインピーダンス制御によって動く油圧ロボットが知られている(非特許文献1参照)。このような従来の油圧ロボットは、油圧式のアクチュエーターによって動作する。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】「Stability-Guaranteed Impedance Control of Hydraulic Robotic Manipulators.」, Janne Koivuma:ki and Jouni Mattila, IEEE/ASME Transactions on Mechatronics, 22(2): 601-612, 2017.(なお、「a:」は、ドイツ語におけるA-Umlaut(アーウムラウト))を示す)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、非特許文献1には、可動部に力センサーを備えた油圧ロボットのアクチュエーターにおける油圧を検出する圧力センサーを油圧ロボットに備えさせ、力センサーの故障等によって力センサーが使用不可能な場合において、力センサーからの出力値の代わりに圧力センサーからの出力値を用いて油圧ロボットを動かす方法についても記載されている。しかし、圧力センサーからの出力値と力センサーからの出力値との間に必ずしも相関関係があるわけではない。このため、このような方法では、圧力センサーからの出力値に基づいて油圧ロボットを動かした場合、油圧ロボットは、可動部に加えられた外力に応じた動きを可動部に行わせることが困難であった。
【0006】
そこで本発明は、力検出部を用いずに、可動部に加えられた外力に応じた動きを可動部に行わせることができる油圧ロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、油圧式の可動部を備え、前記可動部に外力が加えられた場合、前記可動部を前記外力に応じた変位量動かす、油圧ロボットである。
【0008】
また、本発明の他の態様は、油圧ロボットにおいて、前記可動部は、スプールの位置に応じた油圧によってピストンを動かすアクチュエーターを備え、前記アクチュエーターは、前記ピストンの位置を検出する位置検出部と、前記ピストンに加わる油圧を検出する圧力検出部とを備え、前記位置検出部からの出力値と前記圧力検出部からの出力値とに基づいて前記スプールの位置を変化させることにより、前記可動部を前記変位量動かす、構成が用いられてもよい。
【0009】
また、本発明の他の態様は、油圧ロボットにおいて、コンプライアントモーション制御によって前記スプールの位置を変化させる、構成が用いられてもよい。
【0010】
また、本発明の他の態様は、油圧ロボットにおいて、前記コンプライアントモーション制御とは、インピーダンス制御である、構成が用いられてもよい。
【0011】
また、本発明の他の態様は、油圧ロボットにおいて、前記可動部の構造に応じて決まる機械的パラメーターである第1機械的パラメーターと異なる機械的パラメーターである第2機械的パラメーターに基づいて、前記スプールの位置を変化させる、構成が用いられてもよい。
【0012】
また、本発明の他の態様は、油圧ロボットにおいて、前記第2機械的パラメーターに基づくカシミア関数に基づいて、前記スプールの位置を変化させる、構成が用いられてもよい。
【0013】
また、本発明の他の態様は、油圧ロボットにおいて、前記変位量は、前記外力の変化に応じて変化し、前記外力に応じて一意に決まる、構成が用いられてもよい。
【0014】
また、本発明の他の態様は、油圧ロボットにおいて、前記可動部は、前記外力を検出する力検出部を備えない、構成が用いられてもよい。
【0015】
また、本発明の他の態様は、油圧式の可動部を備えた油圧ロボットを制御するロボット制御装置であって、前記可動部に外力が加えられた場合、前記可動部を前記外力に応じた変位量動かす、ロボット制御装置である。
【0016】
また、本発明の他の態様は、コンピューターに、油圧式の可動部を備えたロボットを制御させるプログラムであって、前記可動部に外力が加えられた場合、前記可動部を前記外力に応じた変位量動かすステップ、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、力検出部を用いずに、可動部に加えられた外力に応じた動きを可動部に行わせることができる油圧ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るロボットシステム1の構成の一例を示す図である。
【図2】アクチュエーターACにおける油圧回路の構成の一例を示す図である。
【図3】ロボット制御装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】ロボット制御装置30の機能構成の一例を示す図である。
【図5】第1マスバネダンパー系の一例を示す図である。
【図6】第2マスバネダンパー系の一例を示す図である。
【図7】可動部Aに外力が加えられた場合、ロボット制御装置30が可動部Aを外力に応じた変位量動かす処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】可動部Aに外力を加えた場合における可動部Aの変位量を測定した測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。

【0020】
<ロボットシステムの構成>
まず、ロボットシステム1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係るロボットシステム1の構成の一例を示す図である。ロボットシステム1は、ロボット20と、ロボット制御装置30を備える。

【0021】
ロボット20は、ロボット20のアームである可動部Aと、可動部Aを支持する支持台Bを備える単腕ロボットである。なお、ロボット20は、単腕ロボットに代えて、双腕ロボット等の他のロボットであってもよい。

【0022】
可動部Aは、油圧式の可動部であり、例えば、エンドエフェクターを取り付け可能な油圧式のマニピュレーターである。なお、可動部Aは、エンドエフェクターを取り付け不可能な油圧式のマニピュレーターであってもよい。また、図1に示した例では、可動部Aは、リンクL1と、リンクL2と、アクチュエーターACを備える。リンクL1は、支持台Bにより支持されている。リンクL2は、リンクL1によって支持されている。また、リンクL2は、リンクL1によって、リンクL1に対して回動軸AX周りに回動可能に支持されている。アクチュエーターACは、伸縮することによってリンクL2をリンクL1に対して回動軸AX周りに回動させる油圧式のアクチュエーターである。すなわち、可動部Aは、アクチュエーターACの動作(すなわち、伸縮)によって1軸の自由度の動作を行う。なお、可動部Aは、3以上のリンクと、2以上の油圧式のアクチュエーターとを備えることにより、2軸以上の自由度で動作する構成であってもよい。

【0023】
アクチュエーターACは、後述するスプールSPの位置に応じた油圧によってピストンPSを動かすことにより伸縮可能な油圧式のアクチュエーターである。アクチュエーターACが伸びた場合、リンクL2は、回動軸AX周りに回動する。その結果、リンクL1とリンクL2の間の角度である回動角θは、大きくなる。一方、アクチュエーターACが縮んだ場合、リンクL2は、回動軸AX周りに回動する。その結果、回動角θは、小さくなる。なお、回動角θは、ロボット20の関節の回動角のことである。ここで、図2を参照し、アクチュエーターACについて説明する。

【0024】
図2は、アクチュエーターACにおける油圧回路の構成の一例を示す図である。アクチュエーターACは、前述のピストンPSと、ピストンシリンダーSD1と、パイプP1~パイプP5のそれぞれと、スプールSPと、スプールシリンダーSD2を備える。

【0025】
ピストンPSは、円盤形状のピストンヘッドと、ピストンヘッドが有する面のうちの一方の面である第2面M2の中心から第2面M2に直交する方向に延伸する円柱形状のロッドを備える。また、ピストンPSは、ピストンシリンダーSD1に摺動可能に収容されている。

【0026】
ピストンシリンダーSD1の内部の領域は、ピストンPSのピストンヘッドによって2つの領域である第1領域R1と第2領域R2に分けられている。第2領域R2は、ピストンシリンダーSD1の内部の領域のうち前述の第2面M2側の領域である。第1領域R1は、ピストンシリンダーSD1の内部の領域のうちピストンヘッドが有する面であって第2面M2と反対側の面である第1面M1側の領域である。

【0027】
また、ピストンシリンダーSD1の内部における端部のうち第1領域R1側の端部には、第11開口部RH11が形成されている。ピストンシリンダーSD1の内部における端部のうち第2領域R2側の端部には、第12開口部RH12が形成されている。

【0028】
スプールシリンダーSD2は、スプールSPを収容するシリンダーである。すなわち、スプールシリンダーSD2の内部には、スプールシリンダーSD2の内部においてスプールSPが摺動可能に収容されている。

【0029】
また、スプールシリンダーSD2の内部には、第21開口部H1と、第22開口部H2と、第23開口部H3と、第24開口部H4と、第25開口部H5の5つの開口部が形成されている。

【0030】
ここで、第21開口部H1は、前述の第11開口部RH11とパイプP1によって繋げられている。また、第22開口部H2は、第12開口部RH12とパイプP2によって繋げられている。また、第23開口部H3は、予め決められた油圧である所定油圧の油を供給する図示しない油供給装置における油の供給口とパイプP3によって繋げられている。所定油圧は、例えば、7MPaである。なお、所定油圧は、7MPaよりも小さい油圧であってもよく、7MPaよりも大きい油圧であってもよい。また、第24開口部H4は、当該油供給装置における油の回収口とパイプP4によって接続されている。また、第25開口部H5は、当該油供給装置における油の回収口とパイプP5によって接続されている。ここで、図2に示した例では、パイプP4は、当該回収口に至るまでの間において、パイプP5と接続され、1本のパイプとしてまとめられている。

【0031】
また、スプールシリンダーSD2の内部は、スプールSPによって少なくとも3つの領域に分けられる。図2に示した例では、当該内部は、5つの領域に分けられている。当該5つの領域のうち、当該内部における両端の領域は、スプールSPを当該内部において摺動させるために必要な空隙であり、当該内部における油の流れと無関係であるため、説明を省略する。また、以下では、説明の便宜上、当該5つの領域のうちの真ん中の領域を第3領域R3と称し、当該5つの領域のうち第3領域R3と隣り合う領域であって第21開口部H1側の領域を第4領域R4と称し、当該5つの領域のうち第3領域R3と隣り合う領域であって第3領域R3よりも第22開口部H2側の領域を第5領域R5と称して説明する。

【0032】
スプールシリンダーSD2の内部における第3領域R3、第4領域R4、第5領域R5それぞれの位置は、スプールシリンダーSD2の内部においてスプールSPが摺動可能な方向である摺動方向におけるスプールSPの位置であるスプール位置に応じて変化する。第3領域R3の位置は、例えば、摺動方向における第3領域R3の重心の位置によって表される。なお、第3領域R3の位置は、これに代えて、摺動方向における第3領域に応じた他の位置であってもよい。第4領域R4の位置は、例えば、摺動方向における第4領域R4の重心の位置によって表される。なお、第4領域R4の位置は、これに代えて、摺動方向における第4領域R4に応じた他の位置であってもよい。第5領域R5の位置は、例えば、摺動方向における第5領域R5の重心の位置によって表される。なお、第5領域R5の位置は、これに代えて、摺動方向における第5領域R5に応じた他の位置であってもよい。また、スプール位置は、例えば、スプールSPの重心の摺動方向における位置である。なお、スプール位置は、これに代えて、摺動方向におけるスプールSPに応じた他の位置であってもよい。

【0033】
ここで、以下では、説明の便宜上、スプールシリンダーSD2の内部に予め決められた位置であって摺動方向における基準となる位置である基準位置とスプール位置とが一致している状態を、第1状態と称して説明する。また、以下では、スプールシリンダーSD2の内部に予め決められた位置であって摺動方向において基準位置よりも第21開口部H1側の位置とスプール位置とが一致している状態を、第2状態と称して説明する。また、以下では、スプールシリンダーSD2の内部に予め決められた位置であって摺動方向において基準位置よりも第22開口部H2側の位置とスプール位置とが一致している状態を、第3状態と称して説明する。

【0034】
第1状態では、前述の第21開口部H1は、スプールSPによって閉塞される。また、第1状態では、第22開口部H2は、スプールSPによって閉塞される。また、第1状態では、第23開口部H3は、第3領域において開放される。また、第1状態では、第24開口部H4は、第4領域R4において開放される。また、第1状態では、第25開口部H5は、第5領域R5において開放される。すなわち、アクチュエーターACにおける油圧回路の第1状態における油の流れは、パイプP3を通して第3領域R3に油が流入する流れと、第4領域R4の油がパイプP4を通って当該回収口に排油される流れと、第5領域R5の油がパイプP5を通って当該回収口に排油される流れとの3つの流れである。このため、第1状態では、第3領域R3に所定油圧の油が滞留し、第1領域R1及び第2領域R2において油の流出入が起きず(すなわち、第1領域R1内の油圧及び第2領域R2内の油圧が変化せず)、ピストンPSは、動かない。

【0035】
第2状態では、第21開口部H1は、第3領域R3において開放される。また、第2状態では、第22開口部H2は、第5領域R5において開放される。また、第2状態では、第23開口部H3は、第3領域において開放される。また、第2状態では、第24開口部H4は、第4領域において開放される。また、第2状態では、第25開口部H5は、第5領域において開放される。すなわち、アクチュエーターACにおける油圧回路の第2状態における油の流れは、油供給装置から第3領域R3に流入した油がパイプP1を通って第1領域R1に流入する流れと、第2領域R2の油がパイプP2を通って第5領域R5に流入する流れと、第5領域R5の油がパイプP5を通って油供給装置の回収口に排油される流れと、第4領域R4の油がパイプP4を通って当該回収口に排油される流れとの4つの流れである。このため、第2状態では、第1領域R1内の油の体積が増加するとともに第2領域R2内の油の体積が減少するため、アクチュエーターACが伸びる方向にピストンPSが動く。

【0036】
第3状態では、第21開口部H1は、第4領域R4において開放される。また、第3状態では、第22開口部H2は、第3領域R3において開放される。また、第3状態では、第23開口部H3は、第3領域において開放される。また、第3状態では、第24開口部H4は、第4領域において開放される。また、第3状態では、第25開口部H5は、第5領域において開放される。すなわち、アクチュエーターACにおける油圧回路の第3状態における油の流れは、油供給装置から第3領域R3に流入した油がパイプP2を通って第2領域R2に流入する流れと、第1領域R1の油がパイプP1を通って第4領域R4に流入する流れと、第4領域R4の油がパイプP4を通って油供給装置の回収口に排油される流れと、第5領域R5の油がパイプP5を通って当該回収口に排油される流れとの4つの流れである。このため、第3状態では、第2領域R2内の油の体積が増加するとともに第1領域R1内の油の体積が減少するため、アクチュエーターACが縮む方向にピストンPSが動く。

【0037】
ここで、スプールSPは、スプールシリンダーSD2の内部においてスプールSPを摺動させる図示しないスプール摺動部によって当該内部において摺動させられる。スプール摺動部は、ケーブルによってロボット制御装置30と通信可能に接続されている。これにより、スプール摺動部は、ロボット制御装置30から取得される制御信号に基づいて、スプールSPを当該内部において摺動させる。なお、ケーブルを介した有線通信は、例えば、イーサネット(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)等の規格によって行われる。また、スプール摺動部は、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格により行われる無線通信によってロボット制御装置30と接続される構成であってもよい。

【0038】
また、アクチュエーターACには、位置検出部S1と、第1圧力検出部S2と、第2圧力検出部S3のそれぞれが設けられる。図2に示した例では、第1圧力検出部S2と第2圧力検出部S3は、別体に構成されているが、一体に構成されてもよい。第1圧力検出部S2と第2圧力検出部S3は、圧力検出部の一例である。

【0039】
位置検出部S1は、ピストンシリンダーSD1の内部に予め決められた位置であってピストンPSが当該内部において摺動可能な方向における位置であるピストン位置を検出するセンサーである。位置検出部S1は、当該センサーであれば、如何なる種類のセンサーであってもよい。位置検出部S1は、検出したピストン位置を示す出力値を含む情報を、第1検出情報としてロボット制御装置30に出力する。

【0040】
第1圧力検出部S2は、ピストンシリンダーSD1の内部における油圧のうち、第1領域R1内の油圧である第1油圧を検出するセンサーである。第1圧力検出部S2は、当該センサーであれば、如何なる種類のセンサーであってもよい。第1圧力検出部S2は、検出した第1油圧を示す出力値を含む情報を、第2検出情報としてロボット制御装置30に出力する。

【0041】
第2圧力検出部S3は、ピストンシリンダーSD1の内部における油圧のうち、第2領域R2内の油圧を検出するセンサーである。第2圧力検出部S3は、当該センサーであれば、如何なる種類のセンサーであってもよい。第2圧力検出部S3は、検出した第2油圧を示す出力値を含む情報を、第3検出情報としてロボット制御装置30に出力する。

【0042】
位置検出部S1、第1圧力検出部S2、第2圧力検出部S3のそれぞれは、ケーブルによってロボット制御装置30と通信可能に接続されている。これにより、位置検出部S1、第1圧力検出部S2、第2圧力検出部S3のそれぞれは、ロボット制御装置30から取得される制御信号に基づいて動作する。なお、ケーブルを介した有線通信は、例えば、イーサネット(登録商標)やUSB等の規格によって行われる。また、位置検出部S1、第1圧力検出部S2、第2圧力検出部S3のうちの一部又は全部は、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格により行われる無線通信によってロボット制御装置30と接続される構成であってもよい。

【0043】
ロボット制御装置30は、この一例において、ロボットを制御する(動作させる)コントローラーである。ロボット制御装置30は、予め入力された動作プログラムに基づいて制御信号を生成する。ロボット制御装置30は、生成した制御信号をロボット20に送信し、ロボット20に所定の作業を行わせる。以下では、説明の便宜上、ロボット制御装置30による当該制御信号の生成及び送信についての説明を省略し、ロボット制御装置30がロボット20に行わせる動作、及びロボット20を動作させる際にロボット制御装置30が行う処理について説明する。なお、所定の作業は、ロボット20により行うことが可能な作業であれば如何なる作業であってもよい。

【0044】
<ロボット制御装置の処理の概要>
以下、本実施形態において詳しく説明するロボット制御装置30の処理の概要について説明する。

【0045】
ロボット制御装置30と異なるロボット制御装置X(例えば、従来のロボット制御装置)は、制御対象となる油圧ロボットの可動部に加えられた外力を検出する力検出部(力センサーやトルクセンサー)を当該油圧ロボットが備えない場合、当該油圧ロボットが備える油圧式のアクチュエーターの油圧を検出する圧力検出部からの出力値を用いて当該油圧ロボットを動かすことがある。しかし、圧力検出部からの出力値と力検出部からの出力値との間には、必ずしも相関関係があるわけではない。このため、ロボット制御装置Xは、圧力検出部からの出力値に基づいて当該油圧ロボットを動かした場合、当該油圧ロボット
の可動部に加えられた外力に応じた動きを当該可動部に行わせることが困難であった。換言すると、ロボット制御装置Xでは、力検出部を備えないロボットに、圧力検出部からの出力値に基づくコンプライアントモーション制御による動作を行わせることが困難であった。

【0046】
そこで、ロボット制御装置30は、ロボット20の可動部Aに外力が加えられた場合、可動部Aを外力に応じた変位量動かす。より具体的には、ロボット制御装置30は、位置検出部S1からの出力値と第1圧力検出部S2からの出力値と第2圧力検出部S3からの出力値とに基づいてアクチュエーターACにおけるスプール位置を変化させることにより、可動部Aを外力に応じた変位量動かす。これにより、ロボット制御装置30は、力検出部を用いずに、可動部Aに加えられた外力に基づく動き、すなわち、第1圧力検出部S2からの出力値と第2圧力検出部S3からの出力値とに基づくコンプライアントモーション制御による動きを可動部Aに行わせることができる。ここで、当該変位量は、この一例において、ロボット20の関節の回動角、すなわち前述の回動角θである。なお、当該変位量は、これに代えて、可動部Aに予め決められた位置の移動量等の可動部Aに応じた他の変位量であってもよい。

【0047】
以下では、ある外力が可動部Aに加えられた場合においてロボット制御装置30が可動部Aを当該外力に応じた変位量動かす処理について詳しく説明する。なお、ロボット制御装置30が行う他の処理についての説明は、省略する。また、以下では、一例として、ロボット制御装置30が、コンプライアントモーション制御のうちのインピーダンス制御によってロボット20を動作させる場合について説明する。

【0048】
<ロボット制御装置のハードウェア構成>
以下、図3を参照し、ロボット制御装置30のハードウェア構成について説明する。図3は、ロボット制御装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。

【0049】
ロボット制御装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)31と、記憶部32と、入力受付部33と、通信部34と、表示部35を備える。これらの構成要素は、バスBSを介して相互に通信可能に接続されている。また、ロボット制御装置30は、通信部34を介してロボット20と通信を行う。

【0050】
CPU31は、記憶部32に格納された各種プログラムを実行する。
記憶部32は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部32は、ロボット制御装置30に内蔵されるものに代えて、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部32は、ロボット制御装置30が処理する各種情報や動作プログラムを含む各種のプログラム等を格納する。

【0051】
入力受付部33は、例えば、キーボードやマウス、タッチパッド、その他の入力装置である。なお、入力受付部33は、表示部35と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。
通信部34は、例えば、USB等のデジタル入出力ポートやイーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
表示部35は、例えば、液晶ディスプレイパネル、あるいは、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネルである。

【0052】
<ロボット制御装置の機能構成>
以下、図4を参照し、ロボット制御装置30の機能構成について説明する。図4は、ロボット制御装置30の機能構成の一例を示す図である。

【0053】
ロボット制御装置30は、制御部36を備える。

【0054】
制御部36は、ロボット制御装置30の全体を制御する。制御部36は、表示制御部361と、検出情報取得部362と、ロボット制御部363を備える。制御部36が備えるこれらの機能部は、例えば、CPU31が、記憶部32に記憶された各種プログラムを実行することにより実現される。また、当該機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。

【0055】
表示制御部361は、ユーザーから受け付けた操作に基づいて、各種の画像を生成する。表示制御部361は、生成した画像を表示部35に表示させる。
検出情報取得部362は、ロボット20が備える各検出部からの出力値を含む検出情報を各検出部から取得する。具体的には、検出情報取得部362は、位置検出部S1からの出力値を含む第1検出情報を位置検出部S1から取得する。また、検出情報取得部362は、第1圧力検出部S2からの出力値を含む第2検出情報を第1圧力検出部S2から取得する。また、検出情報取得部362は、第2圧力検出部S3からの出力値を含む第3検出情報を第2圧力検出部S3から取得する。
ロボット制御部363は、検出情報取得部362が取得した各検出情報に基づいて、ロボット20を動作させる。

【0056】
<ロボット制御部によるロボットのインピーダンス制御に用いられる理論式>
以下、ロボット制御部363によるロボット20のインピーダンス制御に用いられる理論式について説明する。なお、以下の説明において、あるアルファベットの上に付された「・」は、当該アルファベットが示す変数の時間についての1階微分を示す。また、以下の説明において、あるアルファベットの上に付された「・・」は、当該アルファベットが示す変数の時間についての2階微分を示す。

【0057】
ロボット制御部363は、前述した通り、インピーダンス制御によってロボット20を動作させる。この際、ロボット制御部363は、位置検出部S1から取得した第1検出情報と、第1圧力検出部S2から取得した第2検出情報と、第2圧力検出部S3から取得した第3検出情報と、以下において説明する理論式とに基づくフィードバック制御を行うことにより、ロボット20のインピーダンス制御を実現する。このフィードバック制御において、ロボット制御部363は、前述のスプール位置を移動(摺動)させる移動量を算出する。ここで、当該移動量は、この一例において、正の値の場合、前述の基準位置よりも第21開口部H1側にスプール位置を移動させる移動量であり、負の値の場合、基準位置よりも第22開口部H2側にスプール位置を移動させる移動量である。なお、スプール位置を移動(摺動)させる移動量は、負の値の場合、基準位置よりも第21開口部H1側にスプール位置を移動させる移動量であり、正の値の場合、基準位置よりも第22開口部H2側にスプール位置を移動させる移動量である構成であってもよい。

【0058】
スプール位置を移動(摺動)させる移動量を算出するために用いられる理論式は、以下に示す式(1)~式(5)に基づいて導出される。

【0059】
【数1】
JP2019111626A_000003t.gif

【0060】
ここで、式(1)は、ピストンPSについての運動方程式である。式(2)は、パイプP1及び第1領域R1における油の流出入と前述の第1圧力の時間的変化とについての連続の式である。式(3)は、パイプP2及び第2領域R2における油の流出入と前述の第2圧力の時間的変化とについての連続の式である。Mは、ピストンPSの質量を示す。tは、時間を示す。sは、ピストンPSの移動量(すなわち、ピストン位置の変位量)を示す。ここで、sは、tの関数である(なお、式(1)~式(3)では、sの微係数における引数tを省略している)。Dは、ピストンシリンダーSD1の内部における油の粘性係数を示す。Aは、第1面M1の面積を示す。pは、第1圧力を示す。Aは、第2面M2の面積を示す。pは、第2圧力を示す。Fは、可動部Aに加えられた外力を示す。bは、ピストンシリンダーSD1の内部における油の圧縮性を示す値である。Lは、ピストンシリンダーSD1の内部の摺動方向における長さを示す(図2参照)。uは、スプールSPの移動量(すなわち、スプール位置の変位量)を示す。式(2)に示したQは、式(2)を簡略化するために便宜的に導入した変数であり、式(4)によって定義されている。式(3)に示したQは、式(3)を簡略化するために便宜的に導入した変数であり、式(5)によって定義されている。式(3)及び式(4)に示した関数Bは、式(3)及び式(4)を簡略化するために便宜的に導入した変数であり、式(6)によって定義されている。式(6)に示したCは、図2に示した油圧回路における油の流量ゲインを示す。式(6)に示したPは、前述の所定油圧であり、この一例において、7MPaである。式(6)に示したr1及びr2は、関数Bの2つの引数のそれぞれを示す。

【0061】
上記の式(1)~式(3)を、ポート・ハミルトン形式に変換した式が以下に示す式(7)~式(14)である。

【0062】
【数2】
JP2019111626A_000004t.gif

【0063】
ここで、式(7)に示したxは、式(8)によって定義されているように、s、p、p、pのそれぞれを成分として有する4元ベクトルである。pは、ピストンPSの運動量、すなわち、式(9)によって定義されているように、前述のMに対してピストンPSの速度(すなわち、sの時間についての1階微分)を乗じた変数である。式(7)に示したJ23は、sの関数であって式(7)を簡略化するために便宜的に導入した関数であり、式(10)によって定義されている。式(7)に示したJ24は、sの関数であって式(7)を簡略化するために便宜的に導入した関数であり、式(11)によって定義されている。式(10)に示したVは、sの関数であって式(9)を簡略化するために便宜的に導入した関数であり、式(12)によって定義されている。式(11)に示したVは、sの関数であって式(11)を簡略化するために便宜的に導入した関数であり、式(13)によって定義されている。式(7)に示したHは、式(14)によって定義されているように、ピストンPSの動作についてのポート・ハミルトン形式におけるハミルトニアンである。

【0064】
式(7)に示した式は、ハミルトニアンHの変化を表す式である。具体的には、式(7)は、ピストンPSの速度(すなわち、sの時間についての1階微分)、ピストンPSに加えられた力(すなわち、pの時間についての1階微分)、第1圧力の変化率(すなわち、pの時間についての1階微分)、第2圧力の変化率(すなわち、pの時間についての1階微分)のそれぞれと、ピストンPSの速度空間(すなわち、ピストンPSの速度を示すベクトル空間)におけるハミルトニアンの勾配、ピストンPSに加えられた力空間(すなわち、ピストンPSに加えられた力を示すベクトル空間)におけるハミルトニアンの勾配、第1圧力空間の変化率を示す空間(すなわち、当該変化率を示すベクトル空間)におけるハミルトニアンの勾配、第2圧力空間の変化率を示す空間(すなわち、当該変化率を示すベクトル空間)におけるハミルトニアンの勾配のそれぞれとの関係を表す式である。

【0065】
上記の式(7)及び式(14)は、カシミア関数を用いることにより、更に以下に示した式(15)~式(21)のように式変形することが可能である。

【0066】
【数3】
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【0067】
ここで、式(15)及び式(16)は、式(17)に示したカシミア関数C、Cを用いることにより式変形した後の式(7)及び式(14)である。ここで、式(15)及び式(16)に示したHsimpleは、式(7)及び式(14)に示したハミルトニアンHに対応するハミルトニアンである。式(16)に示したk(s)は、式(21)によって定義されており、バネ定数に相当するパラメーターであるが、sについての関数であるため、定数ではない。また、式(16)における積分は、sについての2階積分である。なお、当該2階積分は、ルベーグ測度を用いた不定積分であり、積分定数を0に選んでいる。また、式(17)における積分は、sについての1階積分である。なお、当該1階積分は、ルベーグ測度を用いた不定積分であり、積分定数を0に選んでいる。また、式(15)に示したwは、式(18)によって定義されている。また、式(15)に示したGは、式(19)によって定義されている。また、式(15)に示したGは、式(20)によって定義されている。

【0068】
上記の式(15)の関数形は、後述するように、図5に示した質量M’の物体に関するマスバネダンパー系である第1マスバネダンパー系における当該物体の運動を表す式の関数形とほぼ等価である。図5は、第1マスバネダンパー系の一例を示す図である。図5に示したs’は、当該物体の変位を示す。D’は、第1マスバネダンパー系における粘性係数を示す。k’は、第1マスバネダンパー系におけるバネ定数を示す。ここで、第1マスバネダンパー系における当該物体の運動を表す式は、以下に示した式(22)及び式(23)である。なお、以下に示したように、式(15)の関数形は、式(22)の関数形とほぼ等価である。また、式(16)の関数形は、式(23)の関数形と等価である。

【0069】
【数4】
JP2019111626A_000006t.gif

【0070】
上記の式(22)は、第1マスバネダンパー系における質量M’の物体の運動に関するハミルトニアンであってポート・ハミルトン形式におけるハミルトニアンの変化を表す式である。式(22)に示したH’は、当該ハミルトニアンを示す。また、p’は、当該物体の運動量を示す。ここで、より具体的には、式(22)は、当該物体の速度(すなわち、当該物体の変位量s’の時間についての1階微分)、当該物体の運動量p’の変化率(すなわち、運動量p’の時間についての1階微分)、第1マスバネダンパー系におけるカシミア関数C’の変化率(すなわち、カシミア関数C’の時間についての1階微分)のそれぞれと、当該速度を示す速度空間(すなわち、当該速度を示すベクトル空間)における当該ハミルトニアンの勾配、運動量p’の変化率を示す空間(すなわち、当該変化率を示すベクトル空間)における当該ハミルトニアンの勾配、カシミア関数C’の変化率を示す空間(すなわち、当該変化率を示すベクトル空間)における当該ハミルトニアンの勾配のそれぞれとの関係を表す式である。また、式(23)は、当該ハミルトニアンを示す式である。また、式(23)における積分は、s’についての2階積分である。なお、当該2階積分は、ルベーグ測度を用いた不定積分であり、積分定数を0に選んでいる。

【0071】
ここで、上記の式(15)における第1行、第2行、第3行それぞれの関数形は、式(16)がCに依存しないため、式(22)における第1行、第2行、第3行それぞれの関数形と等価である。すなわち、式(15)の関数形と式(22)の関数形とは、前述した通り、ほぼ等価である。また、式(16)の関数形は、式(23)の関数形と等価である。これらの等価性のため、式(15)及び式(16)を用いたフィードバック制御を行うことにより、ロボット制御部363は、仮想的なマスバネダンパー系における第1機械的パラメーターに基づくインピーダンス制御を実現することができる。式(15)及び式(16)における第1機械的パラメーターは、具体的には、質量Mと、バネ定数k(s)と、粘性係数Dとのそれぞれのことである。しかし、当該第1機械的パラメーターは、ロボット20の構造に応じて決まる。このため、式(15)及び式(16)をそのまま用いた場合、ロボット制御部363は、ユーザーが所望する質量、粘性係数、バネ定数を用いたインピーダンス制御によってロボット20を動作させることができない。そこで、ロボット制御部363では、上記の式(15)及び式(16)を、図6に示したマスバネダンパー系を表す式の関数形と等価な関数形の式に書き換える。

【0072】
ここで、図6は、図5に示した第1マスバネダンパー系に、第1マスバネダンパー系と異なるマスバネダンパー系である付加マスバネダンパー系(図6に示した点線CTRに囲まれた部分)を加えた第2マスバネダンパー系の一例を示す図である。ここで、図6に示した変位q’は、付加マスバネダンパー系に接続された質量M’の物体の変位を示す。図6に示したM’は、付加マスバネダンパー系における物体の質量を示す。また、K’は、付加マスバネダンパー系におけるバネのバネ定数を示す。また、D’は、付加マスバネダンパー系におけるダンパーの粘性係数を示す。このような第2マスバネダンパー系を表す式の関数形と等価な関数形の式は、式(15)及び式(16)に基づいて、以下に示した式(24)及び式(25)のように算出することができる。

【0073】
【数5】
JP2019111626A_000007t.gif

【0074】
ここで、式(24)及び式(25)は、式(15)及び式(16)に対して、前述の付加マスバネダンパー系に対応する仮想的なマスバネダンパー系を表す項を付加することによって得られる式である。このため、式(25)に示したMは、図6に示した質量M’の物体に対応する仮想的な物体の質量を示す。pは、当該物体の運動量を示す。式(24)に示したDは、図6に示した粘性係数D’のダンパーに対応する仮想的なダンパーの粘性係数である。また、式(25)における積分は、sについての2階積分である。なお、当該2階積分は、ルベーグ測度を用いた不定積分であり、積分定数を0に選んでいる。また、式(25)に示した通り、以下では、式(25)の最下段における右辺第3項、第4項、第5項のそれぞれの和を、Ucl(s,C)と定義して説明する。

【0075】
また、式(24)に示したHclは、付加マスバネダンパー系に対応する仮想的なマスバネダンパー系を表す項を式(15)及び式(16)に対して付加した場合におけるハミルトニアンであってポート・ハミルトン形式のハミルトニアンを示し、式(25)によって定義されている。ここで、付加マスバネダンパー系のバネ定数Kは、前述のUcl(s,C)に含まれている(例えば、後述する式(30)参照)。また、式(24)では、式(15)におけるCの時間についての1階微分が消え、pの時間についての1階微分が現れている。この理由は、油圧シリンダーの従来の状態空間が4次元(位置、速度、キャップ圧、ロッド圧)であったのに対し、位置、速度、Cの3つの動特性が、Cの動特性に依存しないからである。このため、本明細書において説明している方法における状態空間を3次元に低次元化した制御系設計が可能となっている。例えば、これにより、計算負荷の小さい制御が可能となる。

【0076】
このような式(24)及び式(25)の算出は、付加マスバネダンパー系に対応する仮想的なマスバネダンパー系を表す項を式(15)及び式(16)に対して付加する際、以下に示した式(26)及び式(27)が満たされるような当該マスバネダンパー系を設計することによって達成される。

【0077】
【数6】
JP2019111626A_000008t.gif

【0078】
ここで、上記の式(27)に示したwは、スプールSPの移動量uを含む変数wであり、式(18)に示した変数wのことである。また、上記の式(26)に示したf(C)は、以下に示した式(28)に示した条件を満たす場合、以下に示した式(29)のように展開することができる。

【0079】
【数7】
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【0080】
上記の式(28)は、関数f(C)のカシミア関数Cについての2階微分が有限の値を持ち、当該値が少なくともバネ定数k(s)の逆数よりも大きくなければならないという条件である。この場合、2次の展開係数をa、1次の展開係数をb、0次の展開係数をcとすると、上記の式(26)に示したf(C)は、上記の式(29)のように展開することができる。ここで、式(29)における「H.O.T.」は、高次項を示す。すなわち、高次項を無視する近似を行うことによって、当該f(C)は、式(29)の右辺第1項として扱うことができる。

【0081】
また、上記の式(25)の下段における右辺のUcl(s,C)は、以下に示した式(30)のように更に展開することができる。なお、以下に示した式(30)は、第2マスバネダンパー系の弾性エネルギーとその高次項の和となるように示している。また、式(30)における「H.O.T.」は、3次以上の高次項を示している。また、式(30)に示した通り、以下では、式(30)の最下段における右辺第2項の括弧内の式を、Rと定義して説明する。ここで、第2マスバネダンパー系の弾性エネルギーは、式(30)に示した(s-R)によって表される伸び(又は縮み)に対応する弾性エネルギーと、式(30)に示したRによって表される伸び(又は縮み)に対応する弾性エネルギーとの和である。これにより、ロボットシステム1では、大域的な安定性の補償とともに、局所的なインピーダンス効果が達成されている。

【0082】
【数8】
JP2019111626A_000010t.gif

【0083】
ロボット制御部363は、以上のようにして算出された式(24)、式(25)、式(3)を用いたフィードバック制御によってロボット20を動作させることにより、第2マスバネダンパー系を用いたインピーダンス制御による動作をロボット20に行わせることができる。

【0084】
なお、上記の式(24)、式(25)、式(30)の関数形は、インピーダンス制御において従来から用いられている理論式の関数形と異なるため、当該理論式との対応関係が直感的に分かり難い。このため、以下では、上記の式(24)、式(25)、式(30)とほぼ等価な近似式について説明する。

【0085】
以下に示した式(31)~式(33)は、上記の式(1)~式(3)を、前述のロボット20の関節の回動角θの関数に変数変換した式である。なお、式(31)~式(33)では、当該関節の回動角を、θに代えてs”によって表している。また、式(31)~式(33)における粘性係数Dは、以下の式(34)のように、位置と速度の関数として表記してもよい。以下に示した式(34)は、位置が0であり、且つ、速度が0である場合における当該関数を示している。

【0086】
【数9】
JP2019111626A_000011t.gif

【0087】
上記の式(31)~式(33)を用いると、上記の式(15)~式(21)に対応する式は、以下に示した式(35)~式(41)のように算出される。

【0088】
【数10】
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【0089】
上記の式(35)及び式(36)の関数形は、式(15)及び式(16)の関数形と同様に、図5に示した第1マスバネダンパー系における物体の運動を表す式の関数形と等価である。すなわち、式(35)及び式(36)は、上記の式(31)~式(34)を用いることによって算出された近似式であって式(15)及び式(16)の近似式である。ここで、式(36)における積分は、s”についての2階積分である。なお、当該2階積分は、ルベーグ測度を用いた不定積分であり、積分定数を0に選んでいる。この近似式である式(35)及び式(36)に対して、前述の付加マスバネダンパー系に対応する仮想的なマスバネダンパー系を表す項を付加した場合、上記の式(24)及び式(25)に対応する近似式として、以下に示した式(42)及び式(43)が算出される。

【0090】
【数11】
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【0091】
ロボット制御部363は、上記の式(42)及び式(43)を用いてロボット20を制御することにより、第2マスバネダンパー系を用いた(より具体的には、第2機械的パラメーターを用いた)インピーダンス制御による動作をロボット20に行わせることができる。式(42)及び式(43)の表式は、既知のインピーダンス制御における理論式との対応関係が明確である。このため、ユーザーは、当該理論式との違いを確認しながらロボット制御部363にロボット20を制御させるプログラムを容易に作成することができる。

【0092】
<ロボット制御装置が可動部に外力が加えられた場合、可動部を外力に応じた変位量動かす処理>
以下、図7を参照し、可動部Aに外力が加えられた場合、ロボット制御装置30が可動部Aを外力に応じた変位量動かす処理について説明する。図7は、可動部Aに外力が加えられた場合、ロボット制御装置30が可動部Aを外力に応じた変位量動かす処理の流れの一例を示すフローチャートである。

【0093】
ロボット制御部363は、前述のフィードバック制御における初期値をユーザーから受け付けるまで待機する(ステップS110)。例えば、ステップS110において、表示制御部361は、ユーザーから操作を受け付ける操作画面を生成し、生成した操作画面を表示部35に表示させる。そして、ロボット制御部363は、当該操作画面を介してユーザーから当該初期値を受け付ける。ユーザーから当該初期値を受け付けた場合、ロボット制御部363は、ステップS120に遷移する。

【0094】
次に、ロボット制御部363は、ロボット20のインピーダンス制御を開始させる操作である開始操作をユーザーから受け付けるまで待機する(ステップS120)。例えば、ロボット制御部363は、ステップS110において表示部35に表示された操作画面を介してユーザーから開始操作を受け付ける。ユーザーから開始操作を受け付けた場合、ロボット制御部363は、ステップS130に遷移する。

【0095】
次に、検出情報取得部362は、ロボット20(アクチュエーターAC)が備える各検出部から検出情報を取得する(ステップS130)。具体的には、検出情報取得部362は、位置検出部S1から第1検出情報を取得する。また、検出情報取得部362は、第1圧力検出部S2から第2検出情報を取得する。また、検出情報取得部362は、第2圧力検出部S3から第3検出情報を取得する。

【0096】
次に、ロボット制御部363は、ステップS130において検出情報取得部362が取得した第1検出情報~第3検出情報のそれぞれと、上記の式(24)、式(25)、式(30)の3本の式、又は、上記の式(42)、式(43)の2本の式とに基づいて、スプールSPの移動量uを算出する(ステップS140)。

【0097】
次に、ロボット制御部363は、ステップS140において算出したスプールSPの移動量uに基づいて、スプールSPを移動させる(ステップS150)。なお、1回目のステップS150を実行する際、ロボット制御部363は、ステップS110においてユーザーから受け付けた初期値に基づいて、ステップS150の処理を行う。次に、ロボット制御部363は、ロボット20のインピーダンス制御を終了させる終了操作をユーザーから受け付けたか否かを判定する(ステップS160)。終了操作をユーザーから受け付けたと判定した場合(ステップS160-YES)、ロボット制御部363は、処理を終了する。一方、終了操作をユーザーから受け付けていないとロボット制御部363が判定した場合(ステップS160-NO)、検出情報取得部362は、ステップS130の遷移し、ロボット20(アクチュエーターAC)が備える各検出部から検出情報を再び取得する。

【0098】
以上のように、ロボット制御部363及び検出情報取得部362は、ステップS130~ステップS160の処理を繰り返し行うことにより、ロボット20をインピーダンス制御によって動かすことができる。なお、検出情報取得部362が取得した第1検出情報~第3検出情報のそれぞれと、上記の式(24)、式(25)、式(30)の3本の式、又は、上記の式(42)、式(43)の2本の式とに基づくインピーダンス制御は、上記のフローチャートの説明において、一例として、静止している状態のロボット20(すなわち、可動部A)に対して適用されていた。しかし、検出情報取得部362が取得した第1検出情報~第3検出情報のそれぞれと、上記の式(24)、式(25)、式(30)の3本の式、又は、上記の式(42)、式(43)の2本の式とに基づくインピーダンス制御は、作業中(すなわち、動作中)のロボット20に対して適用されてもよい。

【0099】
<ロボットが行う動作>
ここで、図7に示したフローチャートの処理によってインピーダンス制御された場合においてロボット20が行う動作について説明する。

【0100】
図7に示したフローチャートの処理によってインピーダンス制御された場合において、可動部Aに外力が加えられた場合、ロボット20は、可動部Aを、当該外力に応じた変位量動かす。当該変位量は、当該外力の変化に応じて変化し、当該外力に応じて一意に決まることが測定結果から分かっている。ここで、当該変位量は、この一例において、前述のロボット20の関節の回動角θによって表される。なお、当該変位量は、回動角θに代えて、ロボット20に設定される制御点(例えば、TCP(Tool Center Point)等の移動量であってもよい。図8は、可動部Aに外力を加えた場合における可動部Aの変位量を測定した測定結果の一例を示す図である。図8に示した通り、当該変位量は、当該外力の変化に応じて変化し、当該外力に応じて一意に決まる。

【0101】
図8に示した例では、ロボット20の可動部Aに外力が加えられた場合、当該外力に比例した変位量だけ可動部Aが動いている。すなわち、ステップS130において検出情報取得部362が取得した第1検出情報~第3検出情報のそれぞれと、上記の式(24)、式(25)、式(30)の3本の式、又は、上記の式(42)、式(43)の2本の式とに基づいて、ロボット制御部363がロボット20を動作させた場合、ロボット20は、可動部Aに外力を加えられると、可動部Aを、可動部Aに加えられた外力に応じた変位量動かす。

【0102】
なお、可動部Aに加えられた外力と、当該外力に応じた変位量との関係は、前述の第1機械的パラメーターと、第2機械的パラメーターとに応じて変化する。第1機械的パラメーターは、前述した通り、ロボット20の構造によって決まる。このため、ユーザーは、所望の値の第2機械的パラメーターをロボット制御装置30に予め設定することにより、ロボット20にインピーダンス制御による所望の動作を行わせることができる。

【0103】
また、上記において説明したインピーダンス制御の方法の一部又は全部は、油圧ロボットにおける力センサーを用いないダイレクトティーチング制御に適用することが可能である。
また、上記において説明したインピーダンス制御の方法の一部又は全部は、油圧ロボットにおける力センサーを用いない重力補償制御に適用することが可能である。
また、上記において説明したインピーダンス制御の方法の一部又は全部は、油圧ロボットにおける力センサーを用いない重力補償制御付きのインピーダンス制御に適用することが可能である。
また、上記において説明したインピーダンス制御の方法の一部又は全部は、トルク入力の可能な他の如何なる剛体ロボットの制御に適用することが可能である。

【0104】
以上のように、油圧ロボット(この一例において、ロボット20)は、可動部(この一例において、可動部A)に外力が加えられた場合、可動部を当該外力に応じた変位量動かす。これにより、油圧ロボットは、力検出部を用いずに、可動部に加えられた外力に基づく動きを可動部に行わせることができる。

【0105】
また、油圧ロボットは、位置検出部(この一例において、位置可変部14)からの出力値(この一例において、第1検出情報に含まれる出力値)と圧力検出部(この一例において、第1圧力検出部S2及び第2圧力検出部S3)からの出力値(この一例において、第2検出情報及び第3検出情報に含まれる出力値)とに基づいてスプール(この一例において、スプールSP)の位置(この一例において、スプール位置)を変化させることにより、可動部を、可動部に加えられた外力に応じた変位量動かす。これにより、油圧ロボットは、位置検出部からの出力値と圧力検出部からの出力値とに基づいて、可動部に加えられた外力に基づく動きを可動部に行わせることができる。

【0106】
また、油圧ロボットは、コンプライアントモーション制御によってスプールの位置を変化させる。これにより、油圧ロボットは、コンプライアントモーション制御によって、可動部に加えられた外力に基づく動きを可動部に行わせることができる。

【0107】
また、油圧ロボットは、インピーダンス制御によってスプールの位置を変化させる。これにより、油圧ロボットは、インピーダンス制御によって、可動部に加えられた外力に基づく動きを可動部に行わせることができる。

【0108】
また、油圧ロボットは、可動部の構造に応じて決まる機械的パラメーターである第1機械的パラメーターと異なる機械的パラメーターである第2機械的パラメーターに基づいて、スプールの位置を変化させる。これにより、油圧ロボットは、第1機械的パラメーターと、第2機械的パラメーターとに基づいて、可動部に加えられた外力に基づく動きを可動部に行わせることができる。

【0109】
また、油圧ロボットは、第2機械的パラメーターに基づくカシミア関数に基づいて、スプールの位置を変化させる。これにより、油圧ロボットは、第2機械的パラメーターに基づくカシミア関数に基づいて、可動部に加えられた外力に基づく動きを可動部に行わせることができる。

【0110】
また、油圧ロボットでは、可動部に加えられた外力に応じた変位量は、当該外力の変化に応じて変化し、当該外力に応じて一意に決まる。これにより、油圧ロボットは、当該変位量が、当該外力の変化に応じて変化していない場合と比較して、当該外力に応じた滑らかな動きを行うことができる。

【0111】
また、油圧ロボットでは、可動部は、可動部に加えられた外力を検出する力検出部を備えない。これにより、油圧ロボットは、可動部に加えられた外力に基づく動きを可動部に行わせることができるとともに、油圧ロボットが正常に動作しなくなる可能性を抑制することができる。

【0112】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。

【0113】
また、以上に説明した装置(例えば、ロボット制御装置30)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。

【0114】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…ロボットシステム、20…ロボット、30…ロボット制御装置、31…CPU、32、52…記憶部、33…入力受付部、34…通信部、35…表示部、36…制御部、361…表示制御部、362…検出情報取得部、363…ロボット制御部、AC…アクチュエーター、S1…位置検出部、S2…第1圧力検出部、S3…第2圧力検出部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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