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明細書 :結球野菜の外葉処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-123044 (P2019-123044A)
公開日 令和元年7月25日(2019.7.25)
発明の名称または考案の名称 結球野菜の外葉処理装置
国際特許分類 B26D   3/26        (2006.01)
A23N  15/04        (2006.01)
A01D  45/26        (2006.01)
FI B26D 3/26 605D
B26D 3/26 605C
B26D 3/26 605H
A23N 15/04
A01D 45/26
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2018-005428 (P2018-005428)
出願日 平成30年1月17日(2018.1.17)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】千田 有一
【氏名】臼井 拓海
【氏名】中井 貴之
【氏名】伏木 理郎
【氏名】西澤 武司
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2B075
4B061
Fターム 2B075AA10
2B075AB10
2B075GA06
2B075JD30
2B075JJ05
4B061AA02
4B061AB03
4B061BA03
4B061BB07
4B061CB04
要約 【課題】 レタスやキャベツ等の結球野菜から不要な外葉を切除し、出荷状態にまで結球野菜の形を整えることを可能とする結球野菜の外葉処理を提供する。
【解決手段】 圃場から収穫された結球野菜から不要な外葉を取り除き、出荷状態の形態に整える結球野菜の外葉処理装置であって、収穫後の結球野菜を支持する支持機構10と、支持機構10に前記結球野菜を支持し、結球野菜の結球部の高さhを検知する高さ検知機構12と、前記収穫後の結球野菜から、不要な外葉を切除する切断刃18を備える切断機構14と、結球部の高さhに基づいて結球野菜の適切り高さHを推定する推定式にしたがい、高さ検知機構12による高さhの検知結果から切断刃18を適切り高さHに位置制御する制御機構20とを備える。
【選択図】 図13
特許請求の範囲 【請求項1】
圃場から収穫された結球野菜から不要な外葉を取り除き、出荷状態の形態に整える結球野菜の外葉処理装置であって、
収穫後の結球野菜を支持する支持機構と、
前記支持機構に前記結球野菜を支持し、結球野菜の結球部の高さhを検知する高さ検知機構と、
前記収穫後の結球野菜から、不要な外葉を切除する切断刃を備える切断機構と、
結球部の高さhに基づいて結球野菜の適切り高さHを推定する推定式にしたがい、前記高さ検知機構による高さhの検知結果から前記切断刃を適切り高さHに位置制御する制御機構と、
を備えることを特徴とする結球野菜の外葉処理装置。
【請求項2】
前記結球部の高さhに基づいて結球野菜の適切り高さHを推定する推定式は、
結球野菜の品種ごとに、多数個の結球野菜について測定した結球部の高さhと適切り高さHとの相関関係に基づく回帰分析によって求められたものであることを特徴とする請求項1記載の結球野菜の外葉処理装置。
【請求項3】
前記支持機構は、結球野菜の根茎部側に当接する支持板と、前記結球部を挟んで前記支持板と対向する配置に設けられる押さえ板とを備え、
前記高さ検知機構は、前記支持板と押さえ板とにより前記結球部を挟圧した状態で、前記結球部の高さを検知する検知機構を備えることを特徴とする請求項1または2記載の結球野菜の外葉処理装置。
【請求項4】
前記支持板には、前記結球野菜の茎部を支持板に当接させずに逃がすための開口が設けられていることを特徴とする請求項3記載の結球野菜の外葉処理装置。
【請求項5】
前記高さ検知機構は、前記結球部の外面に当接するプローブを備える変位計であることを特徴とする請求項3または4記載の結球野菜の外葉処理装置。
【請求項6】
前記支持機構は、結球野菜を側方から中間に挟むようにして支持するクランプ部を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の結球野菜の外葉処理装置。
【請求項7】
前記制御機構は、ニューラルネットワークを用いて品種を推定する推定手段を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の結球野菜の外葉処理装置。
【請求項8】
前記結球野菜がレタスであることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の結球野菜の外葉処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は結球野菜の外葉処理装置に関し、より詳細には圃場から収穫した結球野菜から不要な外葉を除去して結球野菜を出荷状態の形に整える処理を行う結球野菜の外葉処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レタスやキャベツ等の結球野菜は、圃場でレタス等を収穫した後、不要な外葉を取り除いて出荷状態に形態を整えられている。この外葉を除去して出荷状態にまで野菜の形を整える作業は、従来は圃場でレタス等を収穫する際に、不要な外葉を切除する位置に、手作業で根茎部に包丁を入れ、畝からレタスを取り上げる操作によってなされている。畝には不要となった外葉と切残された根茎部が残される。
このような手作業によっている、レタス等の収穫作業を自動化する装置として、レタス等の結球野菜を圃場から掘り取り、掘り取った結球野菜の根茎部を切除して収穫する自動収穫機が従来提案されている(特許文献1~5等)。たとえば、収穫しようとする結球野菜の根茎部を左右両側から挟持し、機体を進行させながら圃場から引き抜き、引き抜いた結球野菜を機体の後方に搬送しながら、結球部の直下から根茎部を切断して結球野菜を収穫するといった方法である(特許文献1)。
また、結球野菜の自動収穫機には、収穫した結球野菜から不要な外葉を除去する機構として、引き抜いた結球野菜を搬送フレームで挟持しながら機体の後方へ搬送しながら根部を切除して、根部と不要な外葉を切除する機構を備えているものも提案されている(特許文献2、4)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平6-46645号公報
【特許文献2】特開平8-89047号公報
【特許文献3】特公平6-42804号公報
【特許文献4】特開平8-172836号公報
【特許文献5】特開平7ー327464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レタスやキャベツ等の結球野菜の自動収穫機で、不要な外葉を切除する機構を備える収穫機は、結球野菜の収穫・出荷作業の自動化を可能とし、農作業を省力化する上できわめて有効である。しかしながら、圃場で収穫されるレタスやキャベツ等の結球野菜は、結球部の大きさや付いている外葉の数が成長度合いによってまちまちであり、収穫した結球野菜を搬送コンベヤ等で搬送しながら所定の切除高さ位置で根茎部をカットするといった方法では、的確な外葉処理ができないという問題があった。この問題が、取り除く外葉を見分けて、手作業により根茎部のカット位置を見定めながら作業をしている理由の一つである。
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであり、レタスやキャベツ等の結球野菜から不要な外葉を切除し、出荷状態にまで結球野菜の形を整えることを可能とする結球野菜の外葉処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る結球野菜の外葉処理装置は、圃場から収穫された結球野菜から不要な外葉を取り除き、出荷状態の形態に整える結球野菜の外葉処理装置であって、収穫後の結球野菜を支持する支持機構と、前記支持機構に前記結球野菜を支持し、結球野菜の結球部の高さhを検知する高さ検知機構と、前記収穫後の結球野菜から、不要な外葉を切除する切断刃を備える切断機構と、結球部の高さhに基づいて結球野菜の適切り高さHを推定する推定式にしたがい、前記高さ検知機構による高さhの検知結果から前記切断刃を適切り高さHに位置制御する制御機構とを備えることを特徴とする。
本発明に係る結球野菜の外葉処理装置は、レタスやキャベツといった不要な外葉を切除して出荷される野菜の外葉処理に好適に用いられる。外葉処理装置は、収穫後の結球野菜を外葉処理する単独の処理装置として使用することもできるし、結球野菜を圃場から自動的に収穫する自動収穫機に付設し、圃場から結球野菜を収穫する処理に連続して外葉処理することで出荷状態にまで処理するといった利用も可能である。
支持機構は結球野菜を一個ずつ支持して外葉処理する構成とすることもできるし、搬送コンベヤ等の搬送機構により結球野菜を両側からクランプして搬送しながら支持して、結球野菜の高さを検知し、搬送経路中で適切り高さで外葉を切除する、といった構成とすることも可能である。
【0006】
前記結球部の高さhに基づいて結球野菜の適切り高さHを推定する推定式は、結球野菜の品種ごとに、多数個の結球野菜について測定した結球部の高さhと適切り高さHとの相関関係に基づく回帰分析によって求めることができる。品種ごとに適切り高さHを推定する推定式を用意しておくことで、異なる品種に対応してより正確な外葉処理を行うことができる。
【0007】
前記支持機構は、結球野菜の根茎部側に当接する支持板と、前記結球部を挟んで前記支持板と対向する配置に設けられる押さえ板とを備え、前記高さ検知機構は、前記支持板と押さえ板とにより前記結球部を挟圧した状態で、前記結球部の高さを検知する検知機構を備えることを特徴とする。
支持板を押さえ板とで結球部を挟んで挟圧することにより、結球部のまわりの外葉による影響を除いて、結球部の高さをより正確に検知することができる。また、前記支持板に、前記結球野菜の茎部を支持板に当接させずに逃がすための開口を設けることで、根茎部の切り残し長さに影響されることなく、結球部の高さ測定をさらに正確に行うことができる。
また、前記高さ検知機構として前記結球部の外面に当接するプローブを備える変位計を用いると、結球部の外面を軽く押さえるようにして結球部の高さを検知することができ、光学的な検知方法と比較してより正確に結球部の高さを測定することができる。
【0008】
前記支持機構は、結球野菜を側方から中間に挟むようにして支持するクランプ部を備えることにより、クランプ部と切断刃とが交錯しないように配置して外葉処理することができる。また、クランプ部の結球野菜に接触する面にスポンジ等の柔らかな部材を装着することで、レタスのような柔らかい野菜を傷つけずに外葉処理することができる。
前記制御機構は、ニューラルネットワークを用いて品種を推定する推定手段を備えることで、圃場から収穫される結球野菜の品種を自動的に推定し、その品種に適した適切り高さHの推定式を用いて外葉処理を行うことにより、外葉処理を的確に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る結球野菜の外葉処理装置によれば、圃場から収穫される不要な外葉がついたレタスやキャベツ等の結球野菜の外葉処理を確実にかつ効率的に行うことができ、外葉処理が必要な結球野菜を収穫から出荷状態にまで整える作業の効率化、省力化を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】被検体の高さh、横幅l、茎径d、適切り高さHを示す図である。
【図2】被検体の重さwと適切り高さHの測定値を示すグラフである。
【図3】被検体の高さhと適切り高さHの測定値を示すグラフである。
【図4】被検体の横幅lと適切り高さHの測定値を示すグラフである。
【図5】被検体の茎径dと適切り高さHの測定値を示すグラフである。
【図6】シナノホープ、ルシナ66についての測定値と回帰式、回帰直線を示すグラフである。
【図7】スイッチ、エスコートについての測定値と回帰式、回帰直線を示すグラフである。
【図8】シナノリード、サマーガイ(登録商標)についての測定値と回帰式、回帰直線を示すグラフである。
【図9】ハイジについての測定値と回帰式、回帰直線を示すグラフである。
【図10】回帰式から推定される適切り高さの推定値と、適切り高さの測定値との誤差を示すグラフである。
【図11】ニューラルネットワークの構成例を示す図である。
【図12】学習結果の識別曲線を示すグラフである。
【図13】レタスの外葉を処理する処理装置の外観写真である。
【図14】外葉処理装置の支持機構を正面方向から見た写真である。
【図15】外葉処理装置を用いてレタスの外葉を実際に処理した様子を示す写真である。
【図16】レタスを外葉処理した後のレタス本体と切除された外葉を示す写真である。
【図17】レタスの適正な適切り高さとの誤差について示すヒストグラムである。
【図18】レタスに残った外葉の数を表すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(適切り高さに関わる物理量)
本発明に係る結球野菜の外葉処理装置は、レタスやキャベツ等の結球野菜で、収穫後の結球野菜から不要な外葉を取り除いて出荷状態とする外葉処理を行うための処理装置である。
たとえば、レタスでは、商品の見栄えを良くするといった要請から、収穫後の外葉がついたレタスから不要な外葉を取り除き、外葉を2枚残した状態で出荷される。このように、外葉を2枚残した状態で根茎部を切ることを「適切り」という。手作業でレタスを収穫する際には、適切り位置を見定め、根茎部に包丁を入れて根茎部をカットし、レタスを収穫する。適切り位置を外して根茎部をカットすると、外葉を残し過ぎたり、外葉が残らずに結球部のみとなって出荷できなくなる。

【0012】
圃場から収穫される結球野菜は生育状態によって、結球部分の大きさや、外葉の枚数、大きさ、付き方もまちまちである。また、品種によっても結球部の大きさや、外葉の枚数、大きさ、付き方もさまざまである。
このように結球部の大きさや外葉の付き方等がばらついている結球野菜について適切り位置を定める方法として、結球野菜について、重さや高さといった測定しやすい物理量を想定し、それらの物理量に基づいて適切り高さを特定することが可能か否かについて、実際に圃場から収穫したレタスを対象として検討した。

【0013】
収穫したレタスについて測定する物理量として、収穫物の重さw[kg]、高さh[m]、横幅l[m]、 茎径d[m]とした。また、適切り高さ(適切り位置)をH[m]とした。
図1に、測定する物理量である収穫物の高さh、横幅l、茎径d、適切り高さHを示す。図1では測定個所を分かりやすく示すため、外葉については根茎部の近傍のみを示している。レタスの重さ等のパラメータを測定する場合は、圃場から収穫した外葉がすべて残った状態のものについて測定を行う。収穫物の高さhは、収穫後の外葉を含むレタス本体の高さであり、切り残された根茎部の高さは含まない。適切り高さHは収穫後の外葉が付いた状態で、外葉を2枚残しするようにしてレタスの根茎部の近傍をカットするときの高さである。

【0014】
表1に測定した物理量の各パラメータを示す。
【表1】
JP2019123044A_000003t.gif

【0015】
実験は、レタスの自動収穫機を用いて自動収穫したレタスについて行った。使用したレタスの自動収穫装置は、畝に植わっているレタスの根茎部を地際で切断して畝から切り離し、切り離したレタスを、順次、機体の後方に搬送して収穫する方式のものである。レタスの根茎部は、根茎部から外側に広がっている外葉を下から持ち上げるようにして機体を前進させ、機体の前方の下部に取り付けた切断刃で根茎部を押し切るようにしてカットされる。地際で根茎部をカットして根茎部から切り離されたレタスは、外葉をすべて残した状態で左右の両側から挟み込むように支持されて後方に搬送され、収納箱に順次取り込まれる。

【0016】
(パラメータの測定方法)
上述したパラメータ、重さw[kg]、高さh[m]、横幅l[m]、茎径d[m]と適切り高さH[m]との間にどのような相関関係があるかを検討するため、収穫後のレタスについてこれらの物理量を測定した。
測定に用いた被検体は、圃場で自動収穫機を用いて収穫したレタスであり、レタスの品種は、シナノホープ、ルシナ66、スイッチ、エスコート、シナノリード、サマーガイ(登録商標)、ハイジの7品種である。
被検体の重さwの測定にはデジタルはかりを使用し、高さh、横幅l、適切り高さHについては上下左右に自由度を持つ測定用の専用の治具を製作して測定した。茎径dはノギスを用いて測定した。適切り高さHについては、重さ、高さ、横幅、茎径を測定した後、外葉が2枚残る位置で手作業により位置決めして茎部をカットし、そのときの高さを適切り高さとした。

【0017】
(物理量と適切り高さとの相関関係)
図2~図5に、被検体の重さw、高さh、横幅l、茎径dと、適切り高さHについての測定結果をグラフに示す。それぞれのグラフはシナノホープ(78玉)とルシナ66(28玉)についての測定結果を示す。
図2~5を見ると、被検体の高さhと適切り高さHとの間に高い相関関係があることがわかる。それぞれの物理量と適切り高さHとの相関係数を表2に示す。
【表2】
JP2019123044A_000004t.gif

【0018】
(適切り高さの推定)
表2から、適切り高さHは被検体の高さhと高い相関関係にあり、その他の重さw、横幅l、茎径dと適切り高さHとの相関関係が低いことが分かる。したがって、適切り高さHと強い相関関係があるhを使用し、最小二乗法を用いて線形回帰を行うことで、適切り高さHを推定する。
図6~9に、7種のレタスの品種(シナノホープ、ルシナ66、スイッチ、エスコート、シナノリード、サマーガイ(登録商標)、ハイジ)についての測定値と回帰式、回帰直線を示す。なお、シナノホープ、ルシナ66以外の測定に用いた被検体数は次の通りである。スイッチ(12玉)、エスコート(12玉)、シナノリード(32玉)、サマーガイ(登録商標)(30玉)、ハイジ(35玉)。
図6~9から、いずれの品種のレタスについても、被検体の高さhと適切り高さHとの間に高い相関関係があること、また品種によって回帰式(回帰直線の傾き)が異なることから、品種ごとに別の回帰式を用いて適切り高さを推定する必要があることが分かる。

【0019】
図10は、図6~9に示した回帰式に被検体の高さhの測定データを適用して推定される適切り高さHの推定値と、適切り高さの測定値(最適値)との誤差をヒストグラムに示したものである。図10のヒストグラムは図6~9の解析に用いたすべての測定値について示している。
レタスの出荷状態品としては、外葉が2枚残った状態が理想とされるが、外葉が1枚あるいは3枚ものも許容されること、レタスの外葉の厚さが約3mmであることを考慮して、誤差3mmを許容誤差とすると、図10で許容誤差3mm以内におさまる被検体は全体の60.42%となった。

【0020】
図10に示した実験結果は、レタスの被検体の高さhに基づいて適切り高さHを推定する方法が、レタスの適切り高さを設定する方法として有効に利用できる可能性があることを示す。レタスの高さを検出して適切り高さを推定する方法は、たとえば、画像認識方法により被検体の形状を認識して適切り高さを推定するといった方法では、収穫物の外観のみからでは的確に適切り位置を推定することは困難であるのに対して、物理的な測定方法に基づいて適切り高さを検知することができることから、機械的な構成を利用して装置化することができ、装置の構成を簡易化できるという利点がある。

【0021】
(品種の推定方法)
前述したように、レタス(結球野菜)の適切り高さHを推定する回帰式は、レタスの品種ごとに異なるから、適切り高さを推定する際には、あらかじめレタスの品種を特定し、その品種についての回帰式を使って適切り高さを推定する必要がある。
実際に栽培されているレタスの品種を分類する(特定する)方法としてニューラルネットワーク(NN)を用いて推定する方法を利用することができる。ニューラルネットワーク(NN)を用いるために、使用する特徴量を決める。今回分類するレタスを観察した結果、縦横比に差が見られることから、高さhと横幅lを特徴量としてレタスの品種を分類する。

【0022】
以下では、品種ルシナ66とシナノホープを例として分類する方法について説明する。
使用するNNは2値分類でかつ使用する特徴量が2つであるから、図11に示すように、入力層にバイアス項と特徴量を2種、中間層にバイアス項と2ノード、出力層は1出力のNNを構築する。
品種のクラスとして、シナノホープを1、ルシナ66 を0とした。重みの初期値は乱数を用いて学習用のデータをNNに入力し、出力とクラスとの誤差から誤差逆伝播法によって重みの更新を行う。NNの出力が0.5以上をシナノホープ、0.5 より小さい場合をルシナ66 と判定する。
図12に学習結果の識別曲線を示す。このとき判定が失敗したデータは106点中10点であり、9割以上の確率で品種を判定できていることから良好な結果であると言える。

【0023】
レタスの栽培では、圃場で栽培されているレタスの品種が既知である場合は、当該品種についてあらかじめ得られている回帰式を用いて適切り高さHを推定して外葉処理を行えばよい。また、レタスの品種が分かっていない場合は、上述したニューラルネットワークを利用して品種を特定し、当該品種について得られている回帰式を用いて外葉処理を行えばよい。

【0024】
レタス栽培では、きわめて多くのレタス品種が提供されていること、品種を交配して新種のレタス品種が提供される場合が多いことから、すべての品種についてあらかじめ回帰式を得ておくことは実際上、困難である。ニューラルネットワークを利用する方法によれば、このような場合でも、分類しようとしているレタスと最も形態が類似する、回帰式が既知のレタス品種を特定することができるから、その類似するレタス品種の回帰式を利用する方法により的確な外葉処理が可能になる。レタスのように新品種が次々と提供されるような作物の場合には、ニューラルネットワークを利用してレタスの品種を特定する、もしくは回帰式が既知の最も類似するレタスの品種を特定する方法は的確な外葉処理を行う方法として有効である。

【0025】
<結球野菜の外葉処理装置>
図13は結球野菜の外葉処理装置の例として、レタスの外葉の処理を目的として製作した外葉処理装置の外観写真である。
この処理装置は、収穫後の外葉が全部残った状態のレタスを位置決めして支持する支持機構10と、レタスの高さhを検知する高さ検知機構12と、高さ検知機構12により検知したレタスの高さに基づいてレタスの外葉を切除する切断機構14とを備える。

【0026】
図14は、被処理品であるレタスの支持機構10を正面方向から見た写真である。
支持機構10は、レタスを左右から挟んで支持する一対のクランプ部15a、15bと、レタスを下方から支持する支持板15cと、支持板15cとの間でレタスを上方から押さえる押さえ板15dとを備える。

【0027】
クランプ部15a、15bは、内面に柔らかいスポンジ16aを取り付けた複数個の取付け板16bと、取り付け板16bを支持するクランプ板16cとを備える。スポンジ16aが取り付けられた取り付け板16bは、左右のクランプ板16cに、レタスを左右から挟むように押さえた際にレタスの周囲を包囲するように、それぞれ円弧状の平面配置に取り付けられている。クランプ板16cは左右に開閉可能であり、クランプ板16cを開いた状態で前方が開放される。

【0028】
支持板15cは被処理品であるレタスをセットする際に、レタスの茎部側を支持するためのものである。支持板15cの中央部にはレタスの茎部を逃がす(茎部を支持板に当接させない)ための開口として円径の開口孔が設けられている。本実施例では支持板15cを平面形状で八角形状としているが、支持板15cの平面形状は八角形状に限らず、多角形状や円形状等の適宜形状に設定することができる。
支持機構10によりレタスを支持する際には、レタスの茎部を支持板15cの開口孔に位置合わせし、左右のクランプ板16cでレタスを左右から挟むようにすればよい。

【0029】
レタスを上方から押さえる押さえ板15dは、外葉が残った状態のレタスの結球部の高さhを正確に測定するため、レタスを上方から押さえつけるようにしてレタスの高さを測定するために設けたものである。押さえ板15dによりレタスを押圧する力は適宜設定すればよい。実験では押圧力を変えて外葉処理を行う試験を行い、押圧力を600gfに設定して外葉処理を行った。
押さえ板15dは平面形状で円形板状に設けるとともに、押さえ板15dの手前側にU字状の開口部を設けている。本実施例ではレタスの高さ検知機構12として変位計17を使用している。変位計17は押さえ板15dの上方で昇降可能に支持され、高さ測定時に変位計17のプローブが、押さえ板15dの開口部を通過してレタスの結球部に当接することによりレタスの結球部の高さを測定する。変位計17は接触式の高さ検知機構12であるが、レーザ光等を用いる非接触式の検知機構を用いることももちろん可能である。

【0030】
本実施例の外葉処理装置は、被処理品のレタスの結球部の高さhを検知する検知部と、検知結果に基づいて外葉を切除する切除部とを別位置に設けており、レタスの支持機構は、高さhを検知する検知部と外葉の切除部との間で、ガイドレール等のスライド機構により、水平の左右方向にスライド移動可能に支持されている。

【0031】
図13に示すように、外葉を切断する切断機構14は、レタスの外葉を切除する切断刃18と、切断刃18を駆動するモータ19と、切断刃18の高さを制御する制御用モータ20とを備える。
制御用モータ20の駆動制御は、高さ検知機構12によって検知された結球部の高さhの検知結果に基づいて適切り高さHを算出し、この算出結果に基づいて制御用モータ20を制御する制御機構によって制御される。制御機構は算出した適切り高さHにしたがって、制御用モータ20を駆動制御し、切断刃18の位置を適切り高さHに位置制御し、次いで、モータ19を駆動制御し、切断刃18により被処理品のレタスの外葉は切除する操作を行う。

【0032】
本実施形態では、切断刃18は水平に回転して外葉を切断するように設けられており、切断刃18が回転した際に、レタスの根茎部側が横断される切断刃18の長さと回転範囲が設定されている。外葉を切除する際は、レタスの下部を支持していた支持板15cを切断刃18と交錯しない位置に退避させ、クランプ部15a、15bによりレタスをクランプした状態で行う。
切断刃18はモータ駆動により駆動して外葉を切断する構成とするかわりに、切断刃18を固定とし、支持機構10でレタスをクランプ支持した状態で、手動により、支持機構10を切断刃18に向けて移動させて外葉を切除する構成とすることもできる。

【0033】
(処理例)
図15に、上記外葉処理装置を用いてレタスの外葉を実際に処理した様子を示す。
図15(a)は、支持機構0の支持板15cと、クランプ部15a、15bでレタスをセットした状態、図15(b)はクランプ部15a、15bによりレタスの側面を両側からクランプした状態である。図15(c)は、押さえ板15dでレタスの上部を押さえ、レタスの高さを計測している状態である。図15(d)は押さえ板15dでレタスの上部を押さえた状態を示す。
図15(e)は、支持板15cを退避させた状態、図15(f)は支持機構でレタスを支持した状態で支持機構とともにレタスを切断刃へ向けて移動させ、外葉を切断した状態を示している。

【0034】
図16は、上記外葉処理装置を用いてレタスを外葉処理した後のレタス本体と切除された外葉を示す写真である。レタスの高さhを検知し、検知した高さhに基づいて推定した適切り高さHにしたがって外葉をカットしたことにより、レタスの本体に外葉が2枚残り、不要な外葉が結球部から切除されている。この実験結果は、レタスの高さに基づいて適切り高さを設定してレタスの外葉を切断する処理方法が、収穫後のレタスを商品として提供する処理方法として好適に利用できることを示す。

【0035】
(処理結果例)
表3と表4は、上記外葉処理装置を用いてレタスの外葉を処理した実験結果を整理したものである。実験はレタス(品種ルシナ66)を27個用いて行った。
表3は、個々のレタスの適正な適切り高さとの誤差について、±1mm単位で個数の分布を整理したものである。図17に表3のヒストグラムを示す。
【表3】
JP2019123044A_000005t.gif
表3で適正な適切り高さ(外葉2枚残し)との誤差が±3mm以内となったものは15個であり、成功率は63.0%となった。誤差の平均は2.8mm、標準偏差は4.4mmである。

【0036】
表4は、レタスに残った外葉の数について整理したものである。残った外葉の数が2枚のときに誤差枚数を0とし、外葉の数が2枚との誤差が1枚のものを±1、2枚のものを±2・・・と表示している。図18に表4のヒストグラムを示す。
【表4】
JP2019123044A_000006t.gif
表4で残った外葉の枚数が±1枚までを出荷可能品とすると、外葉処理に成功した個数が17個、成功率は63.0%である。また、残った外葉の平均枚数が1。4枚であり、標準偏差2.6枚である。

【0037】
上述した処理結果例をみると、収穫したレタスの高さを自動検出し、その検出結果に基づいて外葉を自動的に処理する方法は、自動処理によって外葉を処理する方法がかなりの程度有効であることを示していると考えられる。
外葉の処理方法の精度をより高めるために、外葉処理に成功しなかった例について、その原因を調べてみた結果、レタスを深く切り過ぎて外葉が残らなくなった例が2個あった。一つは、標準品にくらべて結球部の大きさが極端に小さく、収穫物の外葉の枚数がもともと少なかったために、外葉がすべて切除されたもの、他の一つは結球部の内部が赤く変色して腐食していたものである。これらは手作業による適切り処理でも出荷できないものである。したがって、標準品から極端に外れた品質の被処理品を除いた残りの、商品として出荷し得る収穫物について、より精度の高い外葉処理を可能にする方法を検討する必要がある。

【0038】
レタス等の結球野菜を出荷状態にまで整えるための外葉処理装置には、種々の形態の構成が考えられる。図13に示した外葉処理装置は、支持板と左右のクランプ部でレタスをセットする操作を手動で行っているが、たとえば、レタスの自動収穫機に外葉処理装置を付設し、レタスの収穫操作に続けて出荷状態にレタスを整える処理を行うことで、レタスの収穫操作と外葉処理を一貫して行う構成とすることが可能である。
収穫後のレタスについては、外葉を処理する他に、根茎部のカット部の褐変を抑えるために、カット部を水洗いしてカット部から滲み出る乳液を洗い流すといった処理を行っている。これらの処理を連続的に行うには、根茎部をカットして機体の後方に搬送されてきたレタスを、移送しながら結球部の高さを検知し、その検知結果に基づいて外葉を切除し、その後、乳液を処理して収納箱に納めるようにすればよい。

【0039】
搬送コンベヤに収穫後のレタスをのせて高さを検知する、高さを検知した結果に基づいて切断刃の位置を適切り高さの位置に設定して外葉を切断する処理では、前述した外葉処理装置における考え方をそのまま適用して装置を構成することが可能である。また、レタスの高さを検知する方法や、切断刃の高さを適切り位置に位置調節する方法は、装置構成に合わせて適宜構成とすればよい。
【符号の説明】
【0040】
10 支持機構
12 高さ検知機構
14 切断機構
15a、15b クランプ部
15c 支持板
15d 押さえ板
16a スポンジ
16b 取り付け板
16c クランプ板
17 変位計
18 切断刃
19 モータ
20 制御用モータ


図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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