TOP > 国内特許検索 > 触媒の製造方法及び触媒 > 明細書

明細書 :触媒の製造方法及び触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-171274 (P2019-171274A)
公開日 令和元年10月10日(2019.10.10)
発明の名称または考案の名称 触媒の製造方法及び触媒
国際特許分類 B01J  37/08        (2006.01)
B01J  23/72        (2006.01)
A01G  31/00        (2018.01)
FI B01J 37/08
B01J 23/72 Z
A01G 31/00 601A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2018-061525 (P2018-061525)
出願日 平成30年3月28日(2018.3.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り [掲載年月日] 平成30年1月24日 [掲載アドレス] http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2018/ra/c7ra12470h#!divAbstract
発明者または考案者 【氏名】金 翼水
【氏名】マヤクリシュナン ゴピラマン
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002697、【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
【識別番号】100104709、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 誠剛
審査請求 未請求
テーマコード 2B314
4G169
Fターム 2B314MA14
2B314PA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA29C
4G169BA47C
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169CB07
4G169CB25
4G169CB61
4G169CB62
4G169CB77
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB19
4G169EC04Y
4G169EC27
4G169FA01
4G169FB30
4G169FB34
4G169FB36
4G169FC02
4G169FC03
要約 【課題】銅を蓄積したアブラナ科の植物(触媒材料植物)を原料とし、1次元構造、2次元構造及び3次元構造が組み合わさった炭素骨格にナノスケールの銅が分散された構造を有し、有機合成反応(特に、イミンの合成やアミンの付加)を促進する能力(触媒活性)が高く、生成物の選択性が高く、かつ、反応後の回収や再利用が容易であり、高い有用性を有する触媒及びその製造方法を提供する。
【解決手段】銅を蓄積したアブラナ科の植物である触媒材料植物を準備する植物準備工程と、触媒材料植物を炭化させて触媒材料植物に由来する触媒を製造する触媒製造工程とを含むことを特徴とする触媒の製造方法。また、当該触媒の製造方法により製造された触媒。
【選択図】図9
特許請求の範囲 【請求項1】
銅を蓄積したアブラナ科の植物である触媒材料植物を準備する植物準備工程と、
前記触媒材料植物を炭化させて前記触媒材料植物に由来する触媒を製造する触媒製造工程とを含むことを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項2】
前記触媒材料植物は、銅イオンを含有する栄養溶液を用いた水耕栽培により得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
前記栄養溶液は、ホーグランド溶液に銅イオン源を添加したもの又は希釈ホーグランド溶液に銅イオン源を添加したものであることを特徴とする請求項2に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
前記アブラナ科の植物は、Brassica juncea L.であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
前記触媒製造工程は、
仮焼成により前記触媒材料植物を仮焼成物とする仮焼成工程と、
前記仮焼成の焼成温度よりも高い温度で行う本焼成により前記仮焼成物を本焼成物とする本焼成工程とを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
前記本焼成工程では、前記本焼成を不活性ガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項5に記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
前記本焼成工程では、前記仮焼成物と塩基性物質とを混合して前記本焼成を行うことを特徴とする請求項6に記載の触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の触媒の製造方法により製造されたものであることを特徴とする触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の製造方法及び触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の植物(アブラナ科の植物等)は、生育にあたって土壌や水に含まれる重金属を吸収・蓄積する能力が高いことが知られている。このような植物は、例えば、重金属で汚染された土壌を浄化するための手段として用いることができる(ファイトレメディエーション。例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2000-288529号公報
【特許文献2】特開2004-223393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、銅を蓄積したアブラナ科の植物を炭化させたものが有機合成反応の触媒として高い有用性を有することは知られていない。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、銅を蓄積したアブラナ科の植物(以下、触媒材料植物ということもある。)を原料とする触媒の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の触媒の製造方法により製造した触媒を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の触媒の製造方法は、銅を蓄積したアブラナ科の植物である触媒材料植物を準備する植物準備工程と、前記触媒材料植物を炭化させて前記触媒材料植物に由来する触媒を製造する触媒製造工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
[2]本発明の触媒の製造方法においては、前記触媒材料植物は、銅イオンを含有する栄養溶液を用いた水耕栽培により得られたものであることが好ましい。
【0008】
[3]本発明の触媒の製造方法においては、前記栄養溶液は、ホーグランド溶液に銅イオン源を添加したもの又は希釈ホーグランド溶液に銅イオン源を添加したものであることが好ましい。
【0009】
[4]本発明の触媒の製造方法においては、前記アブラナ科の植物は、Brassica juncea L.であることが好ましい。
【0010】
[5]本発明の触媒の製造方法においては、前記触媒製造工程は、仮焼成により前記触媒材料植物を仮焼成物とする仮焼成工程と、前記仮焼成の焼成温度よりも高い温度で行う本焼成により前記仮焼成物を焼成物とする本焼成工程とを含むことが好ましい。
【0011】
[6]本発明の触媒の製造方法においては、前記本焼成工程では、前記本焼成を不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0012】
[7]本発明の触媒の製造方法においては、前記本焼成工程では、前記仮焼成物と塩基性物質とを混合して前記本焼成を行うことが好ましい。
【0013】
[8]本発明の触媒は、本発明の触媒の製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の触媒の製造方法は、銅を蓄積したアブラナ科の植物である触媒材料植物を原料とし、当該触媒材料植物を炭化することで触媒を製造するため、後述する実施例に示すように、1次元構造、2次元構造及び3次元構造が組み合わさった炭素骨格にナノスケールの銅が分散された構造の触媒を製造することができる。当該触媒は、後述する各実験例に示すように、有機合成反応(特に、イミンの合成やアミンの付加)を促進する能力(触媒活性)が高く、生成物の選択性が高く、かつ、反応後の回収や再利用が容易である。このため、本発明の触媒の製造方法によれば、高い有用性を有する触媒を製造することが可能となる。
【0015】
本発明の触媒は、後述する実施例に示すように、1次元構造、2次元構造及び3次元構造が組み合わさった炭素骨格にナノスケール(ナノ粒子レベル)の銅が分散された構造の触媒であり、後述する各実験例に示すように、有機合成反応(特に、イミンの合成やアミンの付加)を促進する能力(触媒活性)が高く、生成物の選択性が高く、かつ、反応後の回収や再利用が容易であり、高い有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る触媒の製造方法のフローチャートである。
【図2】実施例において栽培した触媒材料植物(後述するCu/HMP)の写真である。
【図3】実施例に係る触媒(後述するCu/HMPC)の高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像である。
【図4】実施例に係る触媒(Cu/HMPC)のHRTEMを用いて測定したエネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトル(HRTEM-EDSスペクトル)を示すグラフである。
【図5】実施例に係る触媒(Cu/HMPC)の透過型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したEDSスペクトル(SEM-EDSスペクトル)を示すグラフである。
【図6】実施例に係る触媒(Cu/HMPC)及び比較例における生成物の吸着等温線を示すグラフである。
【図7】実施例に係る触媒と銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(後述するHMPC)とのラマンスペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例に係る触媒(Cu/HMPC)と銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)とのXPSスペクトルを示すグラフである。
【図9】実験例1の実験結果を示す表である。
【図10】実験例2の実験結果を示す表である。
【図11】実験例3の実験結果を示す表である。
【図12】実験例4の実験結果を示す表である。
【図13】反応後に回収した触媒(Cu/HMPC)のHRTEM画像及びSEM-EDSスペクトルのグラフを示す図である。
【図14】実験例5の実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る触媒の製造方法及び触媒について、実施形態に基づいて説明する。なお、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。

【0018】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る触媒の製造方法のフローチャートである。
実施形態に係る触媒の製造方法は、図1に示すように、植物準備工程S10及び触媒製造工程S20を含む。

【0019】
植物準備工程S10は、銅を蓄積したアブラナ科の植物である触媒材料植物を準備する工程である。植物準備工程S10は、例えば、触媒材料植物を栽培することにより実施してもよいし、触媒材料植物を採取することにより実施してもよいし、触媒材料植物を購入することにより実施してもよい。触媒材料植物の栽培の具体例は、後述する実施例で説明する。

【0020】
アブラナ科の植物は、重金属を吸収・蓄積する能力が高い植物(metal-hyperaccumulating plant)であることが知られている。このため、本発明においては種々のアブラナ科の植物を用いることができる。本発明に用いるアブラナ科の植物としては、後述する実施例及び各実験例に示すように、Brassica juncea L.(セイヨウカラシナ)を特に好適に用いることができる。

【0021】
触媒材料植物は、銅イオンを含有する栄養溶液を用いた水耕栽培により得られたものであることが好ましい。この場合、栄養溶液は、ホーグランド溶液に銅イオン源を添加したもの又は希釈ホーグランド溶液に銅イオン源を添加したものであることが一層好ましい。なお、ホーグランド溶液は、植物の生育に必要な無機栄養素を含有する水耕栽培用の栄養溶液である。

【0022】
銅イオン源とは、栄養溶液(ホーグランド溶液)の効果を損なうことなく銅イオンを提供できる物質、特に銅を含む塩(塩の水和物を含む)のことをいう。銅イオン源としては、後述する実施例に示すように、塩化銅(CuCl。水和物を含む。)を好適に用いることができる。

【0023】
なお、触媒材料植物は、触媒としたときの効果を損なわない限り、銅以外の金属元素を生育上最低限必要な量より多く含有していてもよい。

【0024】
触媒製造工程S20は、触媒材料植物を炭化させて触媒材料植物に由来する触媒を製造する工程である。
触媒製造工程S20は、乾燥工程S22、仮焼成工程S24及び本焼成工程S26を含む。

【0025】
乾燥工程S22は、準備した触媒材料植物を乾燥させる工程である。乾燥は周知の方法及び装置を用いて実施することができる(例えば、熱風乾燥。)。
なお、準備した触媒材料植物が十分に乾燥している場合には、乾燥工程S22を実施しなくてもよい。また、乾燥工程S22に相当する工程を植物準備工程S10の一環として実施してもよい。他にも、乾燥工程S22に相当する工程を植物準備工程S10や触媒製造工程S20のどちらにも属さない独立した工程として実施してもよい。

【0026】
仮焼成工程S24は、仮焼成により触媒材料植物を仮焼成物とする工程である。仮焼成工程S24は、後述する本焼成工程S26における本焼成よりも低温で仮焼成を実施することから、触媒の微細構造に対する影響が少ない。このため、仮焼成は空気雰囲気中で実施することができる。当然、仮焼成を不活性ガス雰囲気中で実施してもよい。

【0027】
仮焼成は、例えば、200℃~400℃で実施することができる。室温からの昇温率は、上記した仮焼成の実施温度(最終的な温度)に応じて自由に設定することができるが、例えば、0.5℃/min~2℃/minとすることができる。仮焼成を行う時間は、触媒材料植物の量や加熱環境等により適する時間が変化するためにあくまで例示であるが、実施温度となってから10分~6時間とすることができ、30分~2時間とすることが好ましい。空気雰囲気中で仮焼成を実施する場合には、酸化による微細構造の破壊を抑制するために、仮焼成を実施する時間はなるべく短くすることが好ましい。

【0028】
仮焼成を実施した後、本焼成の前に仮焼成物を細分(粉末化)することが好ましい。細分は、例えば、各種ミル(例えば、ボールミル)やミキサーを用いて行うことができる。

【0029】
本焼成工程S26は、仮焼成の焼成温度よりも高い温度で行う本焼成により仮焼成物を焼成物とする工程である。
本焼成工程S26では、本焼成を不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスやアルゴンガスを好適に用いることができる。

【0030】
本焼成工程S26では、仮焼成物と塩基性物質とを混合して本焼成を行うことが好ましい。
本明細書における「塩基性物質」とは、強塩基性の固体のことをいい、水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)を好適に用いることができる。
本焼成工程S26では、仮焼成物と塩基性物質との接触面積を増やすため、双方粉末とし、ほぼ均一な状態になるまで混合することが好ましい。

【0031】
本焼成は、例えば、400℃~700℃で実施することができる。室温からの昇温率は、上記した本焼成の実施温度(最終的な温度)に応じて自由に設定することができるが、例えば、1℃/min~10℃/minとすることができる。本焼成を行う時間は、仮焼成物の量や加熱環境等により適する時間が変化するためにあくまで例示であるが、実施温度となってから30分~8時間とすることができ、1時間~4時間とすることが好ましい。

【0032】
本焼成工程S26で仮焼成物と塩基性物質とを混合して焼成を行う場合には、塩基性物質等を除去するために、本焼成後に焼成物を塩酸(HCl)のような酸性の水溶液や水(蒸留水やイオン交換水)で洗浄する。
また、必要であれば各種有機溶媒(アセトン、ヘキサン、エーテル等)により焼成物の洗浄を行ってもよい。

【0033】
実施形態においては、このようにして得た焼成物が触媒となる。なお、焼成物に対してさらに加工(粉砕、成形、他の足場材への担持等)を行ったものを触媒としてもよい。
主に触媒活性の観点から、一般的には、触媒は粉末状であることが好ましいが、形状や粒径等は、触媒の用途や製造方法の都合等に応じて適宜決定することができる。

【0034】
実施形態に係る触媒は上記の実施形態に係る触媒の製造方法により製造されたものである。実施形態に係る触媒は、後述する実施例に示すように、1次元構造、2次元構造及び3次元構造が組み合わさった炭素の骨格にナノスケールの銅が分散された構造を有する。

【0035】
実施形態に係る触媒は、その効果を損なわない限り、銅以外の金属元素を不可避的に含まれる量よりも多く含有していてもよい。

【0036】
なお、実施形態に係る触媒は高い有用性を有するものであるが、天然物由来であり、後述する実施例に示すように非常に複雑な構造を有するものである。このため、本発明の触媒をその構造で十分に特定することは、不可能であるか、又は、およそ実際的ではない。このため、実施形態に係る触媒(つまり、本発明の触媒)は、その特徴を十分に表現するためには、実施形態に係る触媒の製造方法(つまり、実施形態に係る触媒の製造方法)により規定する必要があるものである。

【0037】
実施形態における触媒は、後述する各実験例に示すように、イミンの合成やアミンの付加において特に高い有用性を有する。もちろん、他の用途に用いてもよい。

【0038】
以下、実勢形態に係る触媒の効果を説明する。なお、実施形態に係る触媒の効果は、実質的に本発明に係る触媒の効果である。

【0039】
実施形態に係る触媒の製造方法によれば、銅を蓄積したアブラナ科の植物である触媒材料植物を原料とし、当該触媒材料植物を炭化することで触媒を製造するため、後述する実施例に示すように、1次元構造、2次元構造及び3次元構造が組み合わさった炭素骨格にナノスケールの銅が分散された構造の触媒を製造することができる。当該触媒は、後述する各実験例に示すように、有機合成反応(特に、イミンの合成やアミンの付加)を促進する能力(触媒活性)が高く、生成物の選択性が高く、かつ、反応後の回収や再利用が容易である。このため、本発明の触媒の製造方法によれば、高い有用性を有する触媒を製造することが可能となる。

【0040】
また、実施形態に係る触媒の製造方法によれば、特殊な物質や方法を使用せずに触媒を製造でき、かつ、製造した触媒は回収や再利用が容易であるため、製造や使用にあたっての環境負荷を低くすることが可能となる。

【0041】
また、実施形態に係る触媒の製造方法によれば、触媒材料植物は、銅イオンを含有する栄養溶液を用いた水耕栽培により得られたものである場合には、触媒材料植物が含有する銅の量を安定させることが可能となり、高い有用性を有する触媒を十分に安定して製造することが可能となる。

【0042】
また、実施形態に係る触媒の製造方法によれば、栄養溶液は、ホーグランド溶液又は希釈ホーグランド溶液に銅イオン源を添加したものである場合には、安定した量の銅を含有する触媒材料植物を安定して栽培することが可能となり、その結果、高い有用性を有する触媒を一層安定して製造することが可能となる。

【0043】
また、実施形態に係る触媒の製造方法によれば、アブラナ科の植物は、Brassica juncea L.である場合には、後述する各実験例に示すように、イミンの合成やアミンの付加において特に高い有用性を有する触媒を製造することができる。

【0044】
また、実施形態に係る触媒の製造方法によれば、触媒製造工程S20は、仮焼成により触媒材料植物を仮焼成物とする仮焼成工程S24と、仮焼成の焼成温度よりも高い温度で行う本焼成により仮焼成物を焼成物とする本焼成工程S26とを含むため、段階的に焼成を行うことで、後述する実施例に示すように、植物由来の構造を十分に残した触媒を製造することが可能となる。

【0045】
また、実施形態に係る触媒の製造方法によれば、本焼成工程S26では、本焼成を不活性ガス雰囲気中で行う場合には、本焼成中に発生する触媒の酸化(焼失)を抑制することが可能となり、その結果、植物由来の構造が破壊されることに起因する触媒活性の低下を十分に抑制することが可能となる。

【0046】
また、実施形態に係る触媒の製造方法によれば、本焼成工程S26では、仮焼成物と塩基性物質とを混合して本焼成を行う場合には、仮焼成物に残留している不純物(例えば、仮焼成後も残存している有機物)を十分に分解及び除去することが可能となる。

【0047】
実施形態に係る触媒は、後述する実施例に示すように、1次元構造、2次元構造及び3次元構造が組み合わさった炭素骨格にナノスケールの銅が分散された構造の触媒であり、後述する各実験例に示すように、有機合成反応(特に、イミンの合成やアミンの付加)を促進する能力(触媒活性)が高く、生成物の選択性が高く、かつ、反応後の回収や再利用が容易であり、高い有用性を有する。

【0048】
[実施例]
実施例においては、実際に本発明に係る触媒を製造し、その構造を確認した。

【0049】
まず、実施例及び後述する各実験例で用いた試薬や装置等について説明する。
触媒材料植物であるBrassica juncea L.の種子は、南インドで採取したものを用いた。また、Brassica juncea L.の全草を、南インドの銅鉱山がある地域(以下、地域Aという。)及び農業が行われている地域(以下、地域Bという。)で採取した。
実験例及び各実験例で用いた全ての試薬は、シグマアルドリッチ又は和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。

【0050】
走査型電子顕微鏡分析(SEM)による画像の取得には、日立製作所の3000H SEMを用いた。
高分解能透過型電子顕微鏡分析(HRTEM)による画像の取得には、日本電子株式会社(JEOL)のJEM-2100Fを用いた。加速電圧は200kVとした。
X線光電子分光スペクトル(XPS)の測定には、クラトス・アナリティカル リミテッドのKratos Axis-Ultra DLDを用いた。

【0051】
ラマンスペクトルの測定には、カイザー・オプティカル・システムズのHololab 5000を用いた。レーザーの波長は514nmとした。
窒素を用いた吸着等温線の測定には、マイクロメリティックスのTriStar 3000を用いた。測定温度は77Kとした。また、得られた吸着等温線からBET法により比表面積を算出した。

【0052】
ガスクロマトグラフィーによる生成物の収率等の測定には、株式会社島津製作所のShimazu GC-2014を用いた。ガスクロマトグラフィーに関しては、5%のジフェニル及び95%のジメチルシロキサンを充填したRestek-5 capillary column(0.32mm dia,60m in length)及びflame ionization detector(FID)を装着し、キャリアーガスとして窒素ガスを用いた。カラム温度は60℃から150℃までは10℃/minのペースで上昇させ、150℃から220℃までは40℃/minのペースで上昇させた。分析の間、FID及びインジェクションポートの温度は、それぞれ150℃及び250℃に保った。

【0053】
核磁気共鳴分光スペクトルの測定には、Bruker社のAVANCE-400を用いた。測定は100MHz及び400MHzで行った。核磁気共鳴分光法による測定では、テトラメチルシラン(TMS)を標準物質として添加したジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒として用いた。
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定には、Thermo FinniganのFOCUS DSQ (dual stage quadrupole) mass spectrometer及びFinnigan FOCUS gas chromatographを用いた。
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による測定には、アジレント・テクノロジー株式会社のICP-MS 7500CSを用いた。

【0054】
次に、実施例に係る触媒の製造方法について説明する。
なお、以下の説明及び図面においては、銅を蓄積したアブラナ科の植物(Brassica juncea L.)のうち実験室において栽培したものについて、Cu/HMPと記載することもある。なお、「HMP」は「metal-Hyperaccumulating Mustard Plant」の略である。また、銅を蓄積していないアブラナ科の植物のうち実験室において栽培したものについて、Cu/HMPと記載することもある。また、Cu/HMP及びHMPを炭化したものをそれぞれCu/HMPC及びHMPCと記載することもある。また、地域Aで採取したアブラナ科の植物及び地域Bで採取したアブラナ科の植物をそれぞれCu/HMP-1及びHMP-1と記載することもあり、Cu/HMP-1及びHMP-1を炭化させたものをCu/HMPC-1及びHMPC-1と記載することもある。

【0055】
実施例においては、基本的には実施形態に係る触媒の製造方法に沿って実施例に係る触媒(Cu/HMPC)を製造した。

【0056】
(1)植物準備工程
実施例においては、実験室でBrassica juncea L.の栽培を行った。まず、Brassica juncea L.の種子を0.5%過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液に浸し、15分間攪拌した。その後、種子を蒸留水で数回洗浄してから栽培皿に移した。この状態のまま種子を3日間静置し、種子を出芽させた。温度は20℃とした。次に、出芽した種子に白色蛍光灯からの光を断続的に(明暗周期を12時間として)照射しつつ栽培を行った。温度は25℃とした。栽培のための栄養溶液として、4倍希釈ホーグランド溶液を用いた。

【0057】
数日後、栄養溶液を10μMの銅イオン(Cu2+)を含有する4倍希釈ホーグランド溶液に変更し、引き続き栽培を行った。栄養溶液は3日ごとに交換した。30日間栽培を行い、得られたBrassica juncea L.(Cu/HMP)を収穫した(図2参照。)。収穫したBrassica juncea L.は、イオン交換水で洗浄し、60℃で乾燥させた。

【0058】
なお、比較のために、銅を蓄積していないBrassica juncea L.(HMP)の栽培も行った。栽培方法は、銅イオン(Cu2+)を含有する4倍希釈ホーグランド溶液を用いないこと以外は上記した栽培方法と同様のものとした。

【0059】
(2)触媒製造工程
(2-1)乾燥工程
上記のようにして準備したBrassica juncea L.(Cu/HMP)をさらに24時間乾燥させた。温度は60℃とした。

【0060】
(2-2)仮焼成工程
次に、空気雰囲気中で仮焼成を行った。仮焼成の温度は300℃とし、1℃/minの割合で昇温を行った。仮焼成の時間は1時間とした。その後、仮焼成を行って得られた仮焼成物を粉砕し、水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて全体が均一な混合物となるように混合した。混合の割合は、仮焼成物:水酸化ナトリウム=1:2とした。

【0061】
(2-3)本焼成工程
次に、窒素雰囲気中で本焼成を行った。本焼成の温度は600℃とし、5℃/minの割合で昇温を行った。本焼成の時間は2時間とした。その後、本焼成により得られた焼成物を機塩酸で洗浄し、焼成物を得た。実施例においては、当該焼成物が触媒(Cu/HMPC)である。

【0062】
なお、銅を蓄積していないBrassica juncea L.(HMP)、地域Aで採取したBrassica juncea L.(Cu/HMP-1)及び地域Bで採取したBrassica juncea L.(HMP-1)についても、上記触媒製造工程と同様の工程を実施することにより炭化を行った。

【0063】
次に、実施例における触媒について説明する。
図3は、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)の高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像である。図3(a)~図3(f)はそれぞれ倍率及び撮影箇所が異なる画像である。
図4は、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)のHRTEMを用いて測定したエネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトル(HRTEM-EDSスペクトル)を示すグラフである。図4のグラフにおける横軸は特性X線のエネルギー(図4においては単に「エネルギー」と記載。単位:KeV)を表し、縦軸はカウントを表す。後述するEDSスペクトルを示すグラフにおいても、横軸及び縦軸が表すものは図4のグラフと同様である。ただし、カウントの記載の横に「×1.E+3」という記載がある場合には、縦軸に表示されている数値は実際の1000分の1の値となっている。

【0064】
図5は、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)の透過型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したEDSスペクトル(SEM-EDSスペクトル)を示すグラフである。なお、図5のグラフにおける楕円形や四角形の枠は、銅に関連するピークの位置を強調するためのものである。
図6は、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)及び比較例における生成物の吸着等温線を示すグラフである。図6のグラフにおける横軸は相対圧力を表し、縦軸は吸着量(単位:cm-1)を表す。

【0065】
図7は、実施例に係る触媒と銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(後述するHMPC)とのラマンスペクトルを示すグラフである。図7(a)は測定した全域のラマンスペクトルを示すグラフであり、図7(b)は図7(a)のうち実施例に係る触媒(Cu/HMPC)についての300cm-1~900cm-1の範囲を拡大して示すグラフである。図7に示すグラフの横軸はラマンシフト(単位:cm-1)を表し、縦軸は強度(任意単位)を表す。
図8は、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)と銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)とのXPSスペクトルを示すグラフである。図8(a)は測定した全域のXPSスペクトルを示すグラフであり、図8(b)~図8(d)はそれぞれ図8(a)の一部を拡大して示す図である。図8に示すグラフの横軸は結合エネルギー(単位:eV)を表し、縦軸は強度(任意単位)を表す。

【0066】
まず、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて、触媒の構造について観察を行った。

【0067】
その結果、触媒は、2次元的な構造(厚さ5nm~20nm程度の平面的な構造。図3(a)及び図3(b)参照。)、3次元的な構造(直径20μm程度の孔を有する構造。図3(c)及び図3(d)参照。)、1次元的な構造(長さ6nm~100nm程度の針状の構造。図3(e)及び図3(f)参照。)を有する複雑な構造からなることが確認できた。

【0068】
これらの構造は、含有する銅や微量成分(金属を含む)の影響や、構造の元となった植物体の部位(葉、茎、根等)や硬さの違いに起因して生成されたと考えられる。このような構造が、本発明に係る触媒の触媒活性の高さや生成物の選択性の高さに影響を与えていると考えられる。

【0069】
次に、HRTEMに関するEDSスペクトルを測定した。その結果、図4に示すように、触媒中に銅が存在していること、及び、銅の割合が1.10wt%であることが確認できた。なお、ICP-MSにより銅の割合を算出したところ、銅の割合が1.03wt%であるという結果が得られた。

【0070】
また、上記結果を別の観点から確認するために、SEM-EDSスペクトルの測定も行った。その結果、図5に示すように、SEM-EDSスペクトルからも触媒中に銅が含まれ、その割合が1.07wt%であることが確認できた。また、このとき銅に関する元素マッピングも測定し、銅が凝集していない(十分に拡散している)ことも確認した。

【0071】
次に、実施例における触媒(Cu/HMPC)及び銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)について、吸着等温線を作成した。
その結果、図6に示すように、実施例における触媒(Cu/HMPC)及び銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)との両方とも吸着等温線がIUPAC分類のIV型に分類され、メソ孔を有することが確認できた。

【0072】
得られた吸着等温線からBET法により比表面積を算出したところ、実施例における触媒(Cu/HMPC)の比表面積は620.8m/gであった。一方、銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)の比表面積は1295.0m/gであった。この差は、主に銅の有無によるものであると考えられる。

【0073】
次に、実施例における触媒(Cu/HMPC)及び銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)についてラマンスペクトルを測定した。その結果、図7に示すように、触媒(Cu/HMPC)のラマンスペクトルには550cm-1に、銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)の方にはないピークがあることが確認できた。これは銅、特に酸化銅(CuO)に起因するピークであり、この測定からも触媒における銅の存在が確認できた。

【0074】
次に、実施例における触媒(Cu/HMPC)及び銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)について、XPSスペクトルを測定した。その結果、図8(a)~図8(c)に示すように、両方のXPSスペクトルともC 1sに関する285eV付近のピークとO 1sに関する533eV付近のピークとが観測できたが、それぞれ強度や位置が異なっている。また、触媒(Cu/HMPC)のXPSスペクトルにおいては、先に挙げた2つのピークとも結合エネルギーが低くなる方に移動している(図8(b)及び図8(c)参照。)。これは銅が存在することによる影響であると考えられる。また、図8(d)に示すように、触媒(Cu/HMPC)のXPSスペクトルには962eV、941eV及び932eVにCu 2pに関連するピークが存在し、この観点からも触媒における銅の存在が確認できた。

【0075】
[実験例1]
実験例1では、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)や銅を蓄積していないBrassica juncea L.を炭化したもの(HMPC)等について、触媒としての有用性を検証した。
図9は、実験例1の実験結果を示す表である。

【0076】
実験例1で行った反応はセルフカップリングによるイミンの合成であり、具体的には以下の化学反応式R1に示すものである。
【化1】
JP2019171274A_000003t.gif

【0077】
以下、実験の条件を記載する。
反応物の量は5mmolとし、触媒(Cu/HMPC)又は触媒に相当する物質(HMPC等)の量は10mgとした。なお、上記実施例における分析結果から、上記反応においては、銅を基準とする触媒濃度は0.162mol%となる。反応は一端が開放されたガラス管の中で攪拌しながら行った。反応温度や反応時間は、表(図9)に記載した通りである。反応の進行はTLCやガスクロマトグラフィー分析で確認した。反応後、触媒又は触媒に相当する物質(HMPC等)を遠心分離により分離し、生成物や未反応の反応物の量や収率をガスクロマトグラフィー分析により測定した。

【0078】
その後、反応後の混合物を5mL程度の酢酸エチルで希釈し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。ロータリーエバポレーターで酢酸エチルを除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を単離した。溶出溶媒には酢酸エチル及びヘキサンを用いた。生成物は、HNMR及び13CNMRによる測定や、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)による測定により構造を確認した。

【0079】
なお、実験例1で実験に用いた触媒(Cu/HMPC)については、分離後にジエチルエーテルでよく洗浄し、その後60℃で24時間乾燥させ、回収を行った。回収した触媒(Cu/HMPC)は、実験例5における実験で用いた。

【0080】
実験例1における実験結果を図9の表に示す。なお、図9の表には、実験を行った限りで良い結果が得られたものを記載している。触媒や触媒に相当する物質(図9の表においては便宜上区別せず「触媒」と表示)の欄におけるCu/HMP-60は実施例における乾燥工程後の段階のものを表し、Cu/HMP-300は実施例における仮焼成工程後の段階のもの(仮焼成物)を表す。なお、CuClについてのみ、触媒量の欄に触媒濃度(単位:mol%)を記載している。

【0081】
図9の表に示すように、空気雰囲気中かつマイルドな条件で反応を行ったにもかかわらず、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)は非常に高い触媒活性を示した。また、反応条件が高温及び長時間となるものの、銅鉱山付近で採取した植物から製造した触媒(Cu/HMPC-1)も上記触媒(Cu/HMPC)に次ぐ触媒活性を有することが確認できた。

【0082】
[実験例2]
実験例2では、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)について、反応物を変えた場合における触媒としての有用性を検証した。

【0083】
図10は、実験例2の実験結果を示す表である。
実験例2で行った反応は、以下の化学反応式R2に示すものである。
【化2】
JP2019171274A_000004t.gif

【0084】
実験の条件及び収率等の算出方法は、基本的に上記実験例1と同様とした。ただし、反応温度は80℃で統一した。
なお、転換率は100%から反応物の残存量(単位:%)を差し引いたものであり、選択性は100%から転換率と収率との差を引いたものである。

【0085】
以下、実験例2で実験を行って得られた生成物について、図10の表に記載した番号と対応させて説明する。

【0086】
番号2Aにおける生成物は、以下の組成式1に示すものである。
【化3】
JP2019171274A_000005t.gif
番号2Bにおける生成物は、以下の組成式2に示すものである。
【化4】
JP2019171274A_000006t.gif
番号2Cにおける生成物は、以下の組成式3に示すものである。
【化5】
JP2019171274A_000007t.gif
番号2Dにおける生成物は、以下の組成式4に示すものである。
【化6】
JP2019171274A_000008t.gif
番号2Eにおける生成物は、以下の組成式5に示すものである。
【化7】
JP2019171274A_000009t.gif
番号2Fにおける生成物は、以下の組成式6に示すものである。
【化8】
JP2019171274A_000010t.gif
番号2Gにおける生成物は、以下の組成式7に示すものである。
【化9】
JP2019171274A_000011t.gif
番号2Hにおける生成物は、以下の組成式8に示すものである。
【化10】
JP2019171274A_000012t.gif
番号2Iにおける生成物は、以下の組成式9に示すものである。
【化11】
JP2019171274A_000013t.gif
番号2Jにおける生成物は、以下の組成式10に示すものである。
【化12】
JP2019171274A_000014t.gif
番号2Kにおける生成物は、以下の組成式11に示すものである。
【化13】
JP2019171274A_000015t.gif
番号2Lにおける生成物は、以下の組成式12に示すものである。
【化14】
JP2019171274A_000016t.gif
番号2Mにおける生成物は、以下の組成式13に示すものである。
【化15】
JP2019171274A_000017t.gif
番号2Nにおける生成物は、以下の組成式14に示すものである。
【化16】
JP2019171274A_000018t.gif

【0087】
図10の表に示すように、実施例における触媒(Cu/HMPC)は、様々な反応物を用いたセルフカップリングによるイミンの合成反応において高い触媒活性及び良好な選択性を有することが確認できた。

【0088】
[実験例3]
実験例3では、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)について、クロスカップリングによるイミンの合成における触媒としての有用性を検証した。

【0089】
図11は、実験例3の実験結果を示す表である。
実験例3で行った反応は、以下の化学反応式R3に示すものである。
【化17】
JP2019171274A_000019t.gif

【0090】
実験の条件及び収率等の算出方法は、上記実験例1と同様とした。ただし、反応温度は80℃に統一した。

【0091】
以下、実験例3で実験を行った結果得られた主生成物について、図11の表に記載した番号と対応させて説明する。
番号3Aにおける生成物は、以下の組成式15に示すものである。
【化18】
JP2019171274A_000020t.gif
番号3Bにおける生成物は、以下の組成式16に示すものである。
【化19】
JP2019171274A_000021t.gif
番号3Cにおける生成物は、以下の組成式17に示すものである。
【化20】
JP2019171274A_000022t.gif
番号3Dにおける生成物は、以下の組成式18に示すものである。
【化21】
JP2019171274A_000023t.gif

【0092】
図11の表に示すように、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)は、クロスカップリングによるイミンの合成反応においても高い触媒活性及び良好な選択性を有することが確認できた。

【0093】
[実験例4]
実験例4では、実験例1と同様の反応について、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)と他の触媒との比較を行った。実験の条件及び収率等の算出方法は、上記実験例1と同様とした。

【0094】
図12は、実験例4の実験結果を示す表である。
なお、図12の溶媒の欄における「-」は溶媒を用いなかったことを表し、溶媒名の後の数値は溶媒の量(単位:mL)を表す。また、「触媒量」の後に「/」を介して記載した「触媒濃度」は、触媒が含有する金属を基準とした触媒濃度を示す。

【0095】
図12の表に示すように、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)は、触媒活性、選択性、反応条件(反応時間や反応温度)といった観点から、他の触媒と比較しても高い有用性を有することが確認できた。つまり、実施例に係る触媒は比較的安価かつ容易に製造できるものであるにもかかわらず、高価であったり準備が難しかったりすることが多い他の触媒以上の有用性を有するといえる。

【0096】
[実験例5]
実験例5においては、実験例1における反応の後に回収した触媒(Cu/HMPC)について、その構造の観察及び再利用についての実験を行った。
図13は、反応後に回収した触媒(Cu/HMPC)のHRTEM画像及びSEM-EDSスペクトルのグラフを示す図である。図13(a),図13(b)はそれぞれ倍率及び撮影箇所が異なるHRTEM画像であり、図13(c)はSEM-EDSスペクトルのグラフである。図13(c)のグラフの横軸はKeVを表し、縦軸はカウントを表す。図13(c)のグラフにおける楕円形の枠は、銅に関連するピークの位置を強調するためのものである。
図14は、実験例5の実験結果を示す表である。

【0097】
HRTEM画像による観察により、反応後回収した触媒(Cu/HMPC)においても反応前の立体構造が維持されていることが確認できた(図13(a)及び図13(b)参照。)。
また、反応後回収した触媒(Cu/HMPC)のSEM-EDSスペクトルから、反応後回収した触媒(Cu/HMPC)中にも銅が含まれ、その割合が反応前とほぼ同じ1.03wt%であることが確認できた。さらに、このとき銅に関する元素マッピングも測定し、反応前と同様に銅が凝集していない(十分に拡散している)ことも確認できた。

【0098】
次に、回収した触媒(Cu/HMPC)について、aza-Michael付加反応により触媒としての有用性を検証した。
実験例5で行った反応は、以下に示す化学反応式R4に示すものである。
【化22】
JP2019171274A_000024t.gif

【0099】
実験の条件及び収率等の算出方法は、反応式や表に記載した事項以外は、上記実験例1と同様とした。
以下、実験例5で実験を行って得られた生成物について、図14の表に記載した番号と対応させて説明する。

【0100】
番号5Aにおける生成物は、以下の組成式19に示すものである。
【化23】
JP2019171274A_000025t.gif
番号5Bにおける生成物は、以下の組成式20に示すものである。
【化24】
JP2019171274A_000026t.gif
番号5Cにおける生成物は、以下の組成式21に示すものである。
【化25】
JP2019171274A_000027t.gif
番号5Dにおける生成物は、以下の組成式22に示すものである。
【化26】
JP2019171274A_000028t.gif
番号5Eにおける生成物は、以下の組成式23に示すものである。
【化27】
JP2019171274A_000029t.gif
番号5Fにおける生成物は、以下の組成式24に示すものである。
【化28】
JP2019171274A_000030t.gif
番号5Gにおける生成物は、以下の組成式25に示すものである。
【化29】
JP2019171274A_000031t.gif

【0101】
図14の表に示すように、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)は、回収後であっても高い有用性が得られることが確認できた。
また、実施例に係る触媒(Cu/HMPC)は、アミンの付加反応の触媒としても(つまり、イミンの合成以外の反応の触媒としても)好適に用いることができることが確認できた。

【0102】
以上の実施例及び各実験例により、本発明の触媒の製造方法により触媒を製造することができること、及び、製造した触媒の有用性の高さが確認できた。

【0103】
以上、本発明を上記の実施形態、実施例及び各実験例に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態実施例及び各実験例に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能である。
例えば、上記実施形態及び各実験例において記載した工程や構成等は例示又は具体例であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13