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明細書 :機能強化乳酸菌およびその製造法ならびに乳酸菌の機能強化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-162039 (P2019-162039A)
公開日 令和元年9月26日(2019.9.26)
発明の名称または考案の名称 機能強化乳酸菌およびその製造法ならびに乳酸菌の機能強化方法
国際特許分類 C12N   1/21        (2006.01)
C12N  15/31        (2006.01)
FI C12N 1/21 ZNA
C12N 15/31
請求項の数または発明の数 17
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2018-050476 (P2018-050476)
出願日 平成30年3月19日(2018.3.19)
発明者または考案者 【氏名】下里 剛士
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
Fターム 4B065AA30X
4B065AA30Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
要約 【課題】IL-4発生を劇的に抑制する効果のある機能強化乳酸菌を提供する。
【解決手段】機能強化乳酸菌は、配列表1(TPKKPNSALRK)記載の第1のアミノ酸配列と第1のアミノ酸配列よりC末端側に配列表2(RGGRVKDLPGVRY)記載の第2のアミノ酸配列とを含むS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子に変異を有するように改変された野生株由来の機能強化乳酸菌であって、前記変異が第1のアミノ酸配列のN末端側から3位のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する、または第2のアミノ酸配列のN末端側から6位のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する変異であることを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1(Thr-Pro-Lys-Lys-Pro-Asn-Ser-Ala-Leu-Arg-Lys)の第1のアミノ酸配列と第1のアミノ酸配列よりC末端側に配列番号2(Arg-Gly-Gly-Arg-Val-Lys-Asp-Leu-Pro-Gly-Val-Arg-Tyr)の第2のアミノ酸配列とを含むS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子に変異を有するように改変された野生株由来の機能強化乳酸菌であって、
前記変異が第1のアミノ酸配列のN末端側から3位のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する、または第2のアミノ酸配列のN末端側から6位のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する変異であることを特徴とする機能強化乳酸菌。
【請求項2】
配列番号3(Thr-Pro-Lys-Lys-Pro-Asn-Ser-Ala-Leu-Arg-Lys-Xa1-Ala-Arg-Val-Arg-Leu-Ser-Asn-Leu-Xa2-Glu-Val-Thr-Ala-Tyr-Ile-Pro-Gly-Ile-Gly-His-Asn-Leu-Gln-Glu-His-Ser-Val-Val-Leu-Xa3-Arg-Gly-Gly-Arg-Val-Lys-Asp-Leu-Pro-Gly-Val-Arg-Tyr)(Xa1はTyrまたはPhe、Xa2はIleまたはMet、Xa3はIleまたはLeu)のアミノ酸配列を含むS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子に変異を有するように改変された機能強化乳酸菌であって、
前記変異が配列番号3のアミノ酸配列のN末端側から3位または48位のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する変異であることを特徴とする機能強化乳酸菌。
【請求項3】
前記第1のアミノ酸配列のN末端側から3位のアミノ酸残基がリシン残基から他のアミノ酸残基に置換されたことを特徴とする請求項1記載の機能強化乳酸菌。
【請求項4】
前記第2のアミノ酸配列のN末端側から6位のアミノ酸残基がリシン残基から他のアミノ酸残基に置換されたことを特徴とする請求項1記載の機能強化乳酸菌。
【請求項5】
前記他のアミノ酸残基がアスパラギン残基、アルギニン、トレオニン残基、メチオニン残基のいずれかであることを特徴とする請求項3記載の機能強化乳酸菌。
【請求項6】
前記他のアミノ酸残基がアスパラギン残基、グルタミン酸、アルギニンのいずれかであることを特徴とする請求項4記載の機能強化乳酸菌。
【請求項7】
前記野生株はラクトバシラス目であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の機能強化乳酸菌。
【請求項8】
前記変異は生体調節機能を高める変異であることを特徴とする請求項7記載の機能強化乳酸菌。
【請求項9】
前記変異はタンパク質生産機能を高める変異であることを特徴とする請求項7記載の機能強化乳酸菌。
【請求項10】
前記野生株はラクトバチラス・ラムノサスであることを特徴とする請求項8の記載の機能強化乳酸菌。
【請求項11】
前記野生株はラクトコッカス・ラクチスであることを特徴とする請求項9の記載の機能強化乳酸菌。
【請求項12】
抗生物質を含む培地に乳酸菌を培養する工程と、培地上に出現したコロニーに対しS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列または翻訳後のアミノ酸残基の変異を特定する工程と、前記乳酸菌の機能を確認する工程を含む機能強化乳酸菌の製造方法。
【請求項13】
前記乳酸菌の機能を確認する工程は、前記乳酸菌のプロバイオティクス機能を確認する工程であることを特徴とする請求項12に記載の機能強化乳酸菌の製造方法。
【請求項14】
前記乳酸菌の機能を確認する工程は、前記乳酸菌の組換えタンパク質生産機能を確認する工程であることを特徴とする請求項12に記載の機能強化乳酸菌の製造方法。
【請求項15】
抗生物質を含む培地に乳酸菌を培養する工程と、培地上に出現したコロニーに対しS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列もしくはコードされたアミノ酸残基の変異を特定する工程と、前記乳酸菌の機能を確認する工程を含む、乳酸菌の機能強化方法。
【請求項16】
前記乳酸菌の機能を確認する工程は、前記乳酸菌のプロバイオティクス機能を確認する工程であることを特徴とする請求項15に記載の乳酸菌の機能強化方法。
【請求項17】
前記乳酸菌の機能を確認する工程は、前記乳酸菌の組換えタンパク質生産機能を確認する工程であることを特徴とする請求項15に記載の乳酸菌の機能強化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、乳酸菌の有する生体調節機能およびタンパク質生産能を強化した乳酸菌およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年プロバイオティクス乳酸菌が注目されている。プロバイオティクスとは、現在は、国連食糧農業機関と世界保健機関により、「適正量を摂取した際に宿主に有用な作用を示す生菌体」と定義されている。様々なプロバイオティクスの中でも、特に乳酸菌やビフィズス菌に関する研究結果が数多く報告されている。特に腸内環境改善作用は乳酸菌やビフィズス菌がヒトの健康に有用であると考えられ、免疫調節作用は近年アレルギーや癌予防の分野で注目を集めている。
【0003】
一方、アレルギー疾患やアトピー性体質の患者数は年々増加しており、特に先進国において深刻な問題となっている。このアレルギー疾患増加の原因の1つとして「Hygiene hypothesis(衛生仮説)」が知られている。環境が衛生的になり、幼少期に細菌等にさらされる機会が減少したため、免疫応答が生来の2型ヘルパーT(Th2)細胞優位から1型ヘルパーT(Th1)細胞優位に変化せず、Th2優位の免疫応答が持続していることや、制御性T細胞が十分に誘導されていないのがその原因と考えられている。一旦アレルギー反応が生じると、体内で、このTh2はサイトカインであるIL-4を産生し、このIL-4はB細胞を刺激して、免疫グロブリンE(IgE)という抗体の産出を促す。さらにIL-4はT細胞も増加させ、その結果IgEがさらに増加し、アレルギーが加速的に悪化する。
【0004】
そこで、プロバイオティック乳酸菌がTh1/Th2バランスを調節する作用を有することが注目されている。プロバイオティック乳酸菌の免疫調節作用は、動物モデルにおけるサイトカイン産生調節や免疫グロブリンE(IgE)産生抑制効果として知られている。この免疫調節作用のメカニズムの解明はまだ十分ではないが、菌体刺激によりマクロファージなどがインターロイキン(IL)-12を産生し、これによりTh1/Th2バランスがTh1寄りに傾き、IFN-γが産生されるからと考えられている(非特許文献1)。
【0005】
特に、以前よりプロバイオティック乳酸菌として知られているラクトバチラス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG、以降LGG)の野生株によるアトピー性皮膚炎発症予防作用が注目されている。一例として、LGGを妊婦に対して投与すると、乳児のアトピー性皮膚炎の発症率が低下することが報告されている(非特許文献2)。具体的には、妊婦をLGG投与群とプラセボ投与群に分け、生後その子どものアトピー性皮膚炎の有症率、皮疹スコア、血清総IgE、アレルゲン皮膚テストの陽性率を解析し、経時的に調査した。その結果、血清総IgE値および皮膚テストの陽性率では2群間で差異が認められなかったにもかかわらず、2歳時の有病率については、プラセボ投与群におけるが46%であったのに対し、LGG投与群では23%と半減しており、4歳時および7歳時においてもその有病率に有意な差が生じることが確認された。
【0006】
乳酸菌以外では、所望の特性を有する変異株を取得する方法として、抗生物質の存在下で生育可能な変異株をスクリーニングすることにより、S12リボソームタンパク質をコードするrpsL遺伝子に突然変異を生じさせる方法が提案されている(特許文献1)。例えば、抗生物質非生産性の放線菌に抗生物質の一種であるリファンピシン耐性を付与することで、検出可能レベルの抗生物質生産能を引き出し、有用代謝産物として未知の抗生物質が産出されたことが報告されている(非特許文献3)。
【0007】
また、遺伝子組換えの分野では、ウシβラクトグロブリンという乳清に含まれるタンパク質を分泌する乳酸菌の組換体を構築したことが報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2004-173627号公報
【0009】

【非特許文献1】Murosaki S、Yamamoto Y、Ito K、Inokuchi T、Kusaka H、Ikeda H、Yoshikai Y “Heat-killed Lactobacillus plantarum L-137 suppresses naturally fed antigen-specific IgE production by stimulation of IL-12 production in mice”、J Allergy Clin Immunol.102(1)、57-64(1998)
【非特許文献2】Kalliomaki et al. “Probiotics in primary prevention of atopic disease: a randomised placebo-controlled trial”、The Lancet 357、1076-1079(2001)
【非特許文献3】Takeshi Hosaka et al.“Antibacterial discovery in actinomycetes strains with mutations in RNA polymerase or ribosomal protein S12”、Nature Biotechnology 27、462-464 (2009)
【非特許文献4】重盛駿、“生理活性タンパク質を産生する乳酸菌組換え体の構築と応用に関する研究”、信州大学審査学位論文(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、LGG乳酸菌の自然株や組換え体の中からはIL-4発生を劇的に抑制する効果のあるものは未だ発見されておらず、アトピー性皮膚炎発症の予防になるといっても、その効果は十分なものではなかった。
【0011】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、機能強化された乳酸菌の変異株を取得する方法を見出し、この方法によりIL-4の発生を顕著に抑える特性を示す等、新規な菌株を作りだすことに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係る機能強化乳酸菌は、配列番号1(Thr-Pro-Lys-Lys-Pro-Asn-Ser-Ala-Leu-Arg-Lys)の第1のアミノ酸配列と第1のアミノ酸配列よりC末端側に配列番号2(Arg-Gly-Gly-Arg-Val-Lys-Asp-Leu-Pro-Gly-Val-Arg-Tyr)の第2のアミノ酸配列とを含むS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子に変異を有するように改変された野生株由来の機能強化乳酸菌であって、前記変異が第1のアミノ酸配列のN末端側から3位のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する、または第2のアミノ酸配列のN末端側から6位のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する変異であることを特徴とする。
【0013】
本開示の一態様に係る機能強化乳酸菌は、配列番号3(Thr-Pro-Lys-Lys-Pro-Asn-Ser-Ala-Leu-Arg-Lys-Xa1-Ala-Arg-Val-Arg-Leu-Ser-Asn-Leu-Xa2-Glu-Val-Thr-Ala-Tyr-Ile-Pro-Gly-Ile-Gly-His-Asn-Leu-Gln-Glu-His-Ser-Val-Val-Leu-Xa3-Arg-Gly-Gly-Arg-Val-Lys-Asp-Leu-Pro-Gly-Val-Arg-Tyr)(Xa1はTyrまたはPhe、Xa2はIleまたはMet、Xa3はIleまたはLeu)のアミノ酸配列を含むS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子に変異を有するように改変された機能強化乳酸菌であって、前記変異が配列番号3のアミノ酸配列のN末端側から3位または48位のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換する変異であることを特徴とする。
【0014】
前記第1のアミノ酸配列のN末端側から3位のアミノ酸残基がリシン残基から他のアミノ酸残基に置換されてもよい。
【0015】
前記第2のアミノ酸配列のN末端側から6位のアミノ酸残基がリシン残基から他のアミノ酸残基に置換されてもよい。
【0016】
前記他のアミノ酸残基がアスパラギン残基、アルギニン、トレオニン残基、メチオニン残基のいずれかであってもよい。
【0017】
前記他のアミノ酸残基がアスパラギン残基、グルタミン酸、アルギニンのいずれかであってもよい。
【0018】
前記野生株はラクトバシラス目であってもよい。
【0019】
前記変異は生体調節機能を高める変異であってもよい。
【0020】
前記変異は組換えタンパク質生産機能を高める変異であってもよい。
【0021】
前記野生株はラクトバチラス・ラムノサスであってもよい。
【0022】
前記野生株はラクトコッカス・ラクチスであってもよい。
【0023】
本開示の一態様に係る機能強化乳酸菌製造方法は、抗生物質を含む培地に乳酸菌を培養する工程と、培地上に出現したコロニーに対しS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列または翻訳後のアミノ酸残基の変異を特定する工程と、前記乳酸菌の機能を確認する工程を含む。
【0024】
前記乳酸菌の機能を確認する工程は、前記乳酸菌のプロバイオティクス機能を確認する工程であってもよい。
【0025】
前記乳酸菌の機能を確認する工程は、前記乳酸菌の組換えタンパク質生産機能を確認する工程であってもよい。
【0026】
本開示の一態様に係る乳酸菌の機能強化方法は、抗生物質を含む培地に乳酸菌を培養する工程と、培地上に出現したコロニーに対しS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列またはコードされたアミノ酸残基の変異を特定する工程と、前記乳酸菌の機能を確認する工程を含む。
【0027】
前記乳酸菌の機能を確認する工程は、前記乳酸菌のプロバイオティクス機能を確認する工程であってもよい。
【0028】
前記乳酸菌の機能を確認する工程は、前記乳酸菌の組換えタンパク質生産機能を確認する工程であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本開示の一態様によれば、乳酸菌が本来有する機能がさらに強化された乳酸菌変異株を得ることができる。例えば抗アレルギー効果が強化された乳酸菌変異株を高い確率で得ることができる。また遺伝子組み換えによる組換えタンパク質生産機能が高い乳酸菌変異株を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本開示の一態様におけるプロバイオティクス機能を有する乳酸菌の野生株と変異株の電子顕微鏡写真
【図2】本開示の一態様におけるプロバイオティクス機能を有する乳酸菌変異株および野生株の形状的分布を示すグラフ
【図3】実施例1におけるIL-4mRNA発現量を測定したグラフ
【図4】実施例2におけるIL-4mRNA発現量を測定したグラフ
【図5】実施例3におけるLGG経口投与マウス脾臓組織におけるil-4mRNAの発現を示すグラフ
【図6】実施例5における乳酸菌変異株のGFP発現解析結果の写真
【図7】実施例7における増殖と形質転換の確認結果を示す表
【図8】実施例7におけるrIL6scFvの分泌前駆体(34.0kDa)および分泌型rIL6scFvの発現解析結果の写真(CELLおよびSUP)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態(以下、本実施の形態)について図面を参照して詳細に説明する。

【0032】
本実施の形態では、乳酸菌野生株として、まずラクトバチラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus GG、以降、LGG)、例えばATCC(登録商標)53103TM(ATCC、米国)を用いる。LGGを培養する際はMRS培地(Becton Dickinson and company、米国)を使用する。MRS培地は、MRSを11g、微生物培地用寒天粉末を3g、それぞれ蒸留水200mLに混合し、滅菌処理(121°C、15分)後、シャーレに約20mLずつ流し込んで作成する。以下、乳酸菌変異株の製造方法について順次説明する。

【0033】
(前培養と寒天培地に生育する菌数の測定)
先ず、前記MRS培地に終濃度1%になるようLGG野生株(WT)を播種し、37°Cで一晩インキュベートした。次に、前記野生株の培養液10μLを990μLの滅菌超純水と懸濁したのち、MRS寒天培地に1mL塗布し、37°Cで二晩静置培養した。その後、火炎滅菌した先曲がり白金耳を用いて、生育したLGGを全て10mLの滅菌超純水に回収した。回収し懸濁した菌液をボルテックスミキサーで撹拌した後、120μL取り、さらに1080μLの滅菌超純水と混合して10倍希釈を行った。この工程を繰り返し10~1010に段階希釈した菌液をMRS寒天培地に塗布し、37°Cで二晩静置培養した。培養後、各プレートに生育したシングルコロニーをカウントした。

【0034】
(最小発育阻止濃度(MIC)の検討)
その後、培養液10μLを990μLの滅菌超純水と懸濁したのち、抗生物質であるストレプトマイシン(SM)を0.2μg/mL、4μg/mL、8μg/mL、16μg/mL、32μg/mL、64μg/mL、128μg/mL、256μg/mL、512μg/mL、1024μg/mL含むMRS寒天培地にそれぞれ塗布し、37°Cで3日間静置培養した。また、毎日生育状況を目視で観察し、シングルコロニー数をカウントした。

【0035】
(薬剤耐性変異株の選抜)
サテライトコロニーやSM要求株を除去し、MTの選抜を行った。256μg/mLのストレプトマイシン(SM)を含むMRS培地に生育したシングルコロニー(121個)をそれぞれナンバリングし、サテライトコロニーを除去するため、再び同濃度SM含MRS培地に滅菌爪楊枝を用いて播種した。その結果、108個のシングルコロニーの生育を確認した。続いて、生育条件にSMを必要とするSM要求株を除去するため、SMを含まないMRS寒天培地に植え継いだ結果、108個のシングルコロニー全てにおいて生育を確認した。

【0036】
さらに、ストレプトマイシン(SM)抵抗性を調べるため、256μg/mLに生育した108個のコロニーを釣菌し、0μg/mL、128μg/mL、512μg/mL、1024μg/mLのSMを含むMRS寒天培地にそれぞれ植え継いだ。その結果、ほとんどのMTはSM濃度が1024μg/mLの寒天培地においても生育可能であったが、128μg/mLあるいは512μg/mLを生育限界値とする株が一部に存在した。

【0037】
(取得した薬剤耐性変異株の分類)
LGGのS12リボソームタンパク質をコードする遺伝子に特異的に結合するプライマーを用いて、コロニーダイレクトPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によりS12領域を増幅し、DNAシーケンス解析(電気泳動)に供した。塩基配列における変異を確認後、アミノ酸レベルにおける変異で分類した(表1)。その結果、ヌクレオチドの変異では8タイプの変異が生じていた。その変異をアミノ酸レベル(配列番号4)の変異に置き換えると、7タイプの変異が確認できた。特に、S12リボソームタンパク質N末端から56番目のリシン(K=Lys)が他のアミノ酸(N=Asn、T=Thr、M=Met、R=Arg)に、101番目のリシン(K=Lys)が他のアミノ酸(N=Asn、R=Arg、E=Glu)に変化していることが明らかとなった。

【表1】
JP2019162039A_000003t.gif

【0038】
(形状的特徴づけ)
図1に野生株(WT)、K101E変異株(No.6)、K56T変異株(No.10)、K56M変異株(No.27)の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。いずれの写真も×7500の倍率で撮影した。WTと比較して、No.6とNo.27は菌体の表面の様子が異なることが確認された。

【0039】
図2に、それぞれ50サンプルの菌体を観察し(×5000)、デジタルノギス(シンワ測定(株))を用いてこれらの短径を測定し、分布を表示したグラフを示す。図2において、AはSEMを用いて、BはTEMを用いて、それぞれ観測した結果を示す。いずれにおいても、K56M変異株(No.27)は野生株(WT)と比較して有意にその短径が太くなっていることが確認された(p<0.01)。

【0040】
なお、本実施の形態において、アミノ酸の変異位置(56番目、101番目)はLGG野生株の中でも特にATCC(登録商標)53103TMのS12リボソームタンパク質のN末端を基準にしたものである。もちろん他のLGG野生株すべてのアミノ酸(コード遺伝子)の配列が保存されているとは限らず、前記アミノ酸の変異位置に相当する部分が変異を受けておれば、その他の部分については、自然な変異または欠落による誤差があってもよい。

【0041】
また、前記変異位置は、S12リボソームタンパク質(配列番号4)全体の中で特定することに限定されない。例えば、S12リボソームタンパク質において配列番号1(Thr-Pro-Lys-Lys-Pro-Asn-Ser-Ala-Leu-Arg-Lys)で示される第1のアミノ酸配列のN末端側から3位のアミノ酸残基(Lys)を、または配列番号2(Arg-Gly-Gly-Arg-Val-Lys-Asp-Leu-Pro-Gly-Val-Arg-Tyr)で示される第2のアミノ酸配列のN末端側から6位のアミノ酸残基(Lys)を、それぞれ他のアミノ酸残基に置換するとしてもよい。

【0042】
また、S12リボソームタンパク質において配列番号3(Thr-Pro-Lys-Lys-Pro-Asn-Ser-Ala-Leu-Arg-Lys-Xa1-Ala-Arg-Val-Arg-Leu-Ser-Asn-Leu-Xa2-Glu-Val-Thr-Ala-Tyr-Ile-Pro-Gly-Ile-Gly-His-Asn-Leu-Gln-Glu-His-Ser-Val-Val-Leu-Xa3-Arg-Gly-Gly-Arg-Val-Lys-Asp-Leu-Pro-Gly-Val-Arg-Tyr)で示されるアミノ酸配列のN末端側から3位または48位のアミノ酸残基(Lys)を他のアミノ酸残基に置換するとしてもよい。なお配列番号3において、Xa1、Xa2、Xa3はラクトバチラス・ラムノサスGGの場合、それぞれTyr、Ile、Ileを表し、後述のラクトコッカス・ラクチスの場合、Phe、Met、Leuを表す。

【0043】
以上、本実施の形態において取得された乳酸菌変異株は野生株における特定のS12リボゾームタンパク質の特定の位置のアミノ酸残基が置換されるようにこれをコードする遺伝子が変異を受けたものであり、野生株と比べて形状的な特徴を有する。さらに、形状的特徴だけでなく、乳酸菌が元来有する機能が強化されていることが実証された。これについて以下、実施例で説明する。
【実施例】
【0044】
以下、本開示の一態様に係る実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例ではLGGのK56M変異株の有用代謝産物による抗アレルギー効果の検証実験とその結果について説明する。
【実施例】
【0045】
(死菌調整)
MRS(-)液体培地に終濃度1%になるようLGG野生株(WT)を播種し、37°Cで一晩インキュベートし、一晩培養した菌液を5%の濃度で接種した。次に、OD600が1.0付近になるまでインキュベートし、遠心分離(3,000×g、4°C、20分)により菌体を回収した。その後リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて洗浄(wash)し、さらに80°Cのウォーターバスで30分の熱処理し、死菌を調製した。なお、前記熱処理後の菌液をMRS(-)寒天培地に1mL播種し、その後の経過を観察し、完全に死滅していることを確認した。
【実施例】
【0046】
(アレルギーモデルマウス)
BALB/cマウス(日本エスエルシー(株)、メス、4週齢)を2週間予備飼育の後、6週齢目と7週齢目に50μgの卵白アルブミン(OVA)と水酸化アルミニウムゲル(Alum)2mgを含むPBS200μLを腹腔内投与し、アレルギー感作させた。
【実施例】
【0047】
(抗アレルギー効果の検証)
さらに8週齢目に前記マウスを安楽死させた後、脾臓を摘出し、すりつぶしてから10mLのコンプリートRPMI1640培地で回収した。遠心分離(700×g、20°C、5分)し、滅菌超純水7mLとコンプリートRPMI1640培地3mLに5秒間浸すことで赤血球を溶血させ、上記のコンプリートRPMI1640培地5mLに懸濁した。
【実施例】
【0048】
前記脾細胞を24ウェルプレート(日本ジェネティクス(株))に2×10cells/wellの密度で播き、そこにLGG野生株とLGG変異株(K56M)の死菌を脾臓細胞に対し、それぞれ×0.625、×1.25の二種類の濃度で添加した。その後、37°C、5%のCO条件下で3時間培養した。さらにその後、コントロールとしてのコンプリートRPMI1640培地またはOVA(最終1000μg/mL)で再刺激し、37°C、5%のCO条件下で72時間培養した。
【実施例】
【0049】
(マウス脾臓細胞からのトータルRNA抽出)
NucleoSpin(登録商標) RNA Plant(Macherey-Nagel、独)を用いて、培養したマウス脾臓細胞からトータルRNAを抽出した。細胞培養液を遠心分離(11000×g、1分)し、上清を除去して細胞ペレットを回収した。溶解バッファー(Lysis Buffer)を350μL、2-メルカプトエタノールを3.5μL、それぞれ混合した溶液350μLを細胞培養ウェルに添加した後、細胞入り試料採取用チューブ(1.5mL)に移し、ピペッティングにより完全に溶解した。溶解液をNucleoSpin(登録商標)フィルターに添加し、遠心分離(11000×g、1分)して濾過した。
【実施例】
【0050】
濾液を試料採取用チューブ(2mL)に回収後、70%エタノールを350μL添加した。なお、70%エタノールは99.5%エタノール(ナカライテスク)を滅菌超純水にて希釈し調製した。ピペッティングによりよく混合した後、NucleoSpin(登録商標)RNAカラム(以降、スピンカラム)に移し、遠心分離(11000×g、30秒)を行った。RNAカラムを新しい試料採取用チューブ(2mL)にセットし、MDB350μLを添加して遠心分離(11000×g、1分)を行い、メンブレンの脱塩処理を行った。
【実施例】
【0051】
次に、DNA分解酵素溶液(rDNase)10μLとrDNase反応緩衝液90μLを混合し、DNase反応混合物を調製した。DNase反応混合物95μLをスピンカラムに添加し、室温(18~25°C)で15分インキュベートした。
【実施例】
【0052】
次に、洗浄液(Wash Buffer)を200μL、スピンカラムに添加し、遠心分離(11000×g、30秒)を行った。スピンカラムを新しい試料採取用チューブ(2mL)にセットし、洗浄液(Wash Buffer)を600μL添加し、遠心分離(11000×g、30秒)を行った。さらに、濾液を捨て、洗浄液を250μL、スピンカラムに添加し遠心分離(11000×g、2分)した。再び濾液を捨て、遠心分離(15000×g、1分)を行い、メンブレン乾燥を行った。
【実施例】
【0053】
最後に、スピンカラムを1.5mLチューブ((株)イナ・オプティカ)にセットし、RNaseフリーのHOを40μL添加し、遠心分離(11000×g、1分)し、トータルRNAを抽出した。
【実施例】
【0054】
(cDNA合成)
前記マウス脾臓由来のトータルRNAと逆転写酵素(プライムスクリプト(登録商標)RTreagentKit、タカラバイオ(株))を用い、逆転写反応によりcDNAを合成した。cDNAは、滅菌超純水を用いて、40μLにメスアップした。
【実施例】
【0055】
(リアルタイム定量的PCR)
前記cDNAを鋳型として、マウスβ-actinプライマー(タカラバイオ(株))とマウス免疫関連遺伝子プライマー(タカラバイオ(株))を用いてリアルタイム定量的PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によりIL-4mRNA発現量を測定した。
【実施例】
【0056】
(実験結果)
図3にIL-4mRNA発現量を測定したグラフを示す。図3において、LGG野生株(WT)と比較してK56M変異株(No.27)の有意な現象が見られた(p<0.05)。アレルギー感作マウスから抽出された脾臓細胞(OVA)におけるIL-4mRNA発現量は約170(非感作マウスとの相対比較)に達したのに対し、LGG野生株の死菌を添加した脾臓細胞(WT)ではその約12%減の150程度に抑えられた。一方、LGG変異株(K56M)の死菌を×0.625の濃度で添加した脾臓細胞(No.27)では、IL-4mRNA発現量は約120(対OVAで30%減)に抑えられた。
【実施例】
【0057】
(実施例2)
本実施例ではK101E変異株(No.6)の有用代謝産物による抗アレルギー効果の検証実験の結果について説明する。なお、実験条件については実施例1と同じであるため、ここでは省略し、実験結果のみ示す。
【実施例】
【0058】
(実験結果)
図4にIL-4mRNA発現量を測定したグラフを示す。図4において、LGG野生株(WT)と比較して101E変異株(No.6)の有意な現象が見られた(p<0.05)。図4において、アレルギー感作マウスから抽出された脾臓細胞(OVA)におけるIL-4mRNA相対発現量は約85(非感作マウスとの相対比較)に達したのに対し、LGG野生株の死菌を添加した脾臓細胞(WT)ではその約10%減の77程度に抑えられた。一方、LGG変異株(K101E)の死菌を×0.625の濃度で添加した脾臓細胞(No.6)では、IL-4mRNA相対発現量は約52で、対OVAで約40%減に抑えられた。さらに、LGG変異株(K101E)の死菌を×1.25の濃度で添加した場合、IL-4mRNA相対発現量は約35で、対OVAで約60%減と大幅に抑制されていることが示された。
【実施例】
【0059】
(実施例3)
本実施例では、LGG経口投与による抗アレルギー作用を検証する。まず、実施例1と同様の方法で前培養したLGG野生株と変異株を、あらかじめ温めておいたMRS培地に5%の濃度で播種した。5時間インキュベート後、遠心分離(3000×g、4°C、20分)により回収した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて洗浄(wash)したのち、1×10cells/200μL/mouseとなるように調製した。
【実施例】
【0060】
(経口投与実験スケジュールと実験群)
アレルギーモデルマウスは、6週齢および7週齢のマウスに、OVA50μgおよび水酸化アルミニウムゲル(シグマアルドリッチ)2mgを含むPBS200μLを腹腔内投与して感作させることにより作成した。また、経口ゾンデ法(マウス用経口ゾンデ、φ1.9×L38mm、フチガミ)により、5週齢から8週齢まで、1×10cells/200μL/マウスとなるように、LGGを週3回投与した。実験群は、Non-treated(NT群)、PBS群、LGG野生株(WT群)、LGG変異株(No.6群)、LGG変異株(No.10群)、LGG変異株(No.27群)の6群を設定し、独立して3回の実験を行った。
【実施例】
【0061】
前記の最終感作から1週間後すなわち8週齢に、マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、脾臓を摘出し電子天秤(GX-2000、A&D株式会社)により脾臓重量を小数点第一位(mg)まで測定した。さらに実施例1と同様の方法を用いて調製しマウス脾臓細胞を2×10cells/mLずつ24穴プレートに播き、37°C、5%CO条件下で3時間培養した。その後、OVA(最終1000μg/mL)で刺激し、72時間培養した。さらに、実施例1と同様の方法によりトータルRNAを回収し、逆転写反応により合成したcDNAを鋳型としてリアルタイム定量的PCRにより発現解析を行った。
【実施例】
【0062】
(採血と血清の調製)
前記の安楽死させたマウスから18Gの注射針を用い心臓穿刺により採血を行った。ブロックインキュベータ(BI-516C、(株)アステック)を用い、24°Cで30分放置し、その後4°Cで一晩静置した。翌日、マイクロ冷却遠心機(3500、久保田商事(株))を用いて、遠心分離(1000×g、4°C、30分)後、マイクロチップを用いて血清を回収し、-80°Cで保存した。
【実施例】
【0063】
(ELISA法による血清トータルIgE量の測定)
前記血清サンプルを50倍に希釈し、マウスIgE ELISA定量化キット(Bethy Laboratories、米国)を用いて、IgEの発現解析を行った。キャプチャー抗体としてアフィニティ精製済みヤギ抗マウスIgE抗体(A90-115A)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1000倍希釈し、96ウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))に100μL/wellで播き、4°Cで一晩静置した。
【実施例】
【0064】
翌日、PBS-T(ナカライテスク(株))で洗浄後、ブロッカー1(PBS-T+5%BSA)を200μL/wellで播き、室温で30分静置した。
【実施例】
【0065】
次に、PBS-Tで洗浄後、希釈した血清サンプルを添加し、濃度既知の抗原タンパク質(マウスIgEキャリブレータ—、RC90-115)を100μL/wellを1/5段階希釈によりスタンダード曲線を作製し、室温で1時間静置した。次に、PBS-Tで洗浄後、HRP標準抗体(ヤギ抗マウスIgE-HRP標識、A90-115P)をブロッカー2(プロッカー1+5%牛胎仔血清;FCS)で75000倍希釈し100μL/wellで播き、室温で1時間静置した。さらに、PBS-Tで洗浄後、基質TMB(ナカライテスク(株))を100μL/wellで播き、遮光して室温で15分程度ほど発色させ、1mol/Lの硫酸(ナカライテスク(株))を100μL/wellで播き、発色反応を止め、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad)で450nmの吸光度を測定した。
【実施例】
【0066】
(ELISA法による血清OVA特異的IgE量の測定)
前記血清サンプルを、アッセイ用バッファーを用いて2倍に希釈し、LEGEND MAXTM (登録商標)マウスOVA特異的IgE-ELISAキット(Biolegend、米国)を用いて、OVA特異的IgEの発現解析を行った。OVAプレコーテッド96ウェルストリップμプレートを洗浄バッファーで洗浄後、スタンダードウェルに50μLのマトリクスサンプルウェルに50μLのアッセイ用バッファーAを加え、スタンダードもしくはサンプルを50μL/wellで播き、室温で2時間静置した。スタンダード曲線は濃度既知の抗原タンパク質を1/2段階希釈により作製した。
【実施例】
【0067】
洗浄バッファーで洗浄後、マウスIgE検出抗体(Mouse IgE Detection Antibody)を100μL/wellで播き、室温で1時間静置した。洗浄バッファーで洗浄後、アビジン-HRPを100μL/wellで播き、室温で30分間静置した。洗浄バッファーで洗浄後、基質溶液を100μL/wellで播き、遮光して室温で15分静置し、発色反応を行った。停止液を100μL/wellで播き、発色反応を止め、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。
【実施例】
【0068】
(実験結果)
経口投与スケジュールにおける最終感作の一週間後において、BALB/c雌マウスから摘出された脾臓のOVAの再感作後のトータルRNAを抽出し、il-4mRNA発現の解析を行った(図5)。K101E変異株(No.6の群)はPBS群と比較し有意にil-4mRNA発現量を抑制した(p<0.05)。
【実施例】
【0069】
(実施例4)
本実施例ではLGG株に代えてラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)の一野生株であるMG1363より耐抗生物質変異株を取得した結果について説明する。なお、MG1363は0.5%グルコース(ナカライ)を含むM17broth(ベクトンディキンソン)(GM17)で培養した。
【実施例】
【0070】
(薬剤耐性変異株の取得)
ストレプトマイシン(SM)512μg/mLを含むGM17寒天培地で生育したシングルコロニーをナンバリングし、滅菌爪楊枝を用いて同濃度のGM17寒天培地に植え継ぎ、30°Cで2日間静置培養し、25コロニーの耐性株を取得した。得られたコロニーをGM17寒天培地に植え継ぎ、マスタープレートとした。マスタープレートで得られたコロニーを、ストレプトマイシン0μg/mL、256μg/mL、512μg/mL、1024μg/mLをそれぞれ含むGM17寒天培地に植え継ぎ、抗生物質耐性能を検討した。
【実施例】
【0071】
次に、コロニーダイレクトPCR法によって、リボソームS12領域を増幅した。このとき、フォワードプライマーとして配列番号5(5’-GGGTTGATAAGACGAGTTACGACGATTG-3’)のオリゴヌクレオチドを、リバースプライマーとして配列番号6(5’-TCTCATCGCTTCGCAGAAATGTCG-3’)のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた。
【実施例】
【0072】
(アガロースゲル電気泳動)
電気泳動は核酸用アガロース寒天粉末0.5gを50mLのTAE(ナカライテスク(株)、pH8.0)で溶解した1.0%濃度のゲルを用いて行った。また、泳動緩衝液には同様にTAEを用いた。DNAラダーマーカーには、100bp DNAラダーおよび1kbp DNAラダー(BioLabs)を用いた。100Vの定電圧を約40分間通電した。DNAフラグメントを可視化するため、エチジウムブロマイド (Invitrogen)(終濃度10μg/mL)をあらかじめゲルに添加した。泳動装置はMupid-2 Plus(コスモ・バイオ(株))を用い、フラグメントの検出はGel Doc(登録商標) EZ Imager(バイオラッドラボラトリーズ(株))を用いて行った。
【実施例】
【0073】
(アガロースゲルからのDNA断片の精製
目的のDNA断片を含むゲルをフルオロハンディーLED(日本ジェネティクス(株))照射下で切り出し、FastGene(登録商標)Gel/PCR抽出キット(日本ジェネティクス(株)) を用いてDNAを抽出した。LED照射下で切断した目的のDNA断片を含むゲルを1.5mLマイクロチューブに移し、ピペットチップでゲルを粉砕した後、500μLのGP1を加えた。その後、ボルテックスで混和し、55°Cで約5分放置した後、再びボルテックスミキサーで混和することでゲルを完全に溶解させた。溶解後、サンプルをスピンカラムに移し、同カラムに500μLのGP2を加えて遠心分離(15,500×g、4°C、30秒)し、流出液を除去した。さらに遠心分離(15,500×g、4°C、2min)して、カラムを乾燥させた。カラムを新しい1.5 mLマイクロチューブに移し、10μLのGP3を慎重に加え、2分放置し、遠心分離(15,500×g、4°C、2分)し、DNA溶液を得た。
【実施例】
【0074】
以上のように調製したDNA溶液のシークエンス解析はユーロフィンジェノミクス(株)に委託した。結果は、遺伝子解析ソフトGENETYX-MAC(登録商標)Ver.15.0.7 (GENETYX社) を用いて解析した。
【実施例】
【0075】
(実験結果)
ストレプトマイシン(SM)が1024μg/mLの濃度において7つのシングルコロニーが目視で観察された。SMが512μg/mLのとき変位は起きなかった。結果を表2に示す。なお、7個のシングルコロニーのうち2個がK56R変異株であり、3個がK101R変異株であった。なお、MG1363MTの遺伝子レベルでの特徴付けを行うため、ゲノム上の30Sリボソームタンパク質12S領域をコロニーダイレクトPCRにて増幅し、DNAシークエンス解析に供した。

【表2】
JP2019162039A_000004t.gif
【実施例】
【0076】
(実施例5)
本実施例では、前記乳酸菌変異株(K56T)が組換えタンパク質高生産株として利用できることを示す。具体的には前記MG1363の野生株と変異株をそれぞれ組換え遺伝子発現宿主として、GFP発現変異株の作出を試みた。GFP遺伝子発現ベクターは、既に構築されているpNZ8148#2から生成されたpNZ8148#3:SEC-GFPを用いた。このpNZ8148#2は、クロラムフェニコール耐性遺伝子を有する広宿主域ベクターpNZ8148(nisA プロモーター(PnisA)の下流にマルチクローニング部位を有す)から構築された組換え遺伝子の分泌型発現ベクターであり(非特許文献4)、誘導剤(ナイシン)添加によりタンパク質生産を開始する性質を有する。pNZ8148#3:SECは、このpNZ8148#2:SECのプロモーターPnisAを恒常的発現プロモーターであるP23に置換したものであり、誘導剤なしの条件下で、タンパク質を常時発現させるプラスミドである。pNZ8148#3:SEC-GFPは、このpNZ8148#3にさらにGFP遺伝子を導入したプラスミドベクターである。
【実施例】
【0077】
(野生株と変異株のコンピテントセル作製)
まず、前記遺伝子発現プラスミドをMG1363MT(変異株)、WT(野生株)に導入するためのコンピテントセルの作製を行った。双方の株をGM17に終濃度1%となるように接種し、30°Cで一晩静置培養した。続いて、30°Cに温めておいたSG-GM17(0.5M sucrose, 2.5% glycine in GM17)にそれぞれ培養した双方の株を終濃度5%となるように接種し、30°Cで24時間静置培養した。さらに、30°Cに温めておいたSG-GM17に培養した双方の株を終濃度1%となるように接種し、30°Cで24時間静置培養した。その後、30°Cに温めておいた40mLのSG-GM17に前培養したMG1363MT、WTをそれぞれ5mL接種し、OD600が0.2-0.3になるまで30°C、約4時間静置培養した。
【実施例】
【0078】
その後、遠心分離(6,000×g、4°C、20min)し上清を除去した。除去後、エレクトロポレーション(電気穿孔法)バッファー(0.5Mサッカロース、10% グリセリン)40mLを添加した後、同様に遠心分離し洗浄した。同様に上清を除去した後、エレクトロポレーションバッファーにEDTA(50mM)20mLを加えて再び懸濁し、氷上で15分静置した後、同様に遠心分離を行った。さらに上清を除去し、エレクトロポレーションバッファー10mLで洗浄、遠心分離して同様に上清を除去した。最後に、エレクトロポレーションバッファー400μLで懸濁し、コンピテントセルとした。
【実施例】
【0079】
(野生株と変異株への形質転換)
MG1363への遺伝子導入は、エレクトロポレーション(電気穿孔法)により行った。前記コンピテントセルに100-500ngのプラスミドDNA(pNZ8148#3:SEC、またはpNZ8148#3:SEC-GFP)を加えて混和した。その後、氷冷した2mmキュベット(バイオラッド)に移し、Gene Pulser Xcell(登録商標) System (バイオラッド) でパルス(2,000V、25μF、200Ω)を印加し、1mLのGM17SOC培地(GM17中、20mM MgCl、2mM CaCl)に素早く懸濁した。その後、1.5mLマイクロチューブに移し、30°Cのブロックインキュベータで2時間培養した。GM17cm寒天培地に適当量を塗り広げ、30°Cで一晩静置培養した。確認したコロニーを5つ選び釣菌し、GM17cm液体培地ですすぎ、30°Cで一晩静置培養した。
【実施例】
【0080】
前培養として、前記MG1363MT(GFP)、WT(GFP) をGM17cmに終濃度1%で接種した後、30°Cで一晩静置培養した。培養終了後、遠心分離(8,000×g、4°C、5分)により菌体と培養液上清に分離した。その後、菌液を30°Cに温めておいたGM17cmに終濃度5%となるように接種し、30°Cで4時間、7時間、12時間、静置培養した。培養終了後、遠心分離(8,000×g、4°C、5分)により菌体と培養液上清に分離した。
【実施例】
【0081】
(培養液上清画分の調製)
前記培養液上清1,500μLに100%(w/v)TCA300μLを加え、ボルテックスを用いて混和し、氷上で3時間放置することでタンパク質を濃縮した。遠心分離(20,000×g,4°C,15分)により沈殿物を回収し、400μLのアセトンを用いてペレットを遠心分離 (20,000×g,4°C,15分)の後、洗浄した。アセトンを用いた洗浄をもう一度行い、ペレットからTCAを完全に除去した。さらに、55°Cのブロックインキュベータにて乾燥したペレットを0.05M水酸化ナトリウム100μLに溶解した。溶解したサンプルと等量の2×Sampleバッファーを添加し、95°Cで5分加熱することでSDS化した。
【実施例】
【0082】
(GFPの発現解析)
前記調製サンプルを、リアルスラブ電気泳動装置BE-S21(バイオクラフト)を用いてSDS-PAGEに供し、30%(w/v)アクリルアミドと1.5Mトリス塩酸等を含む15%の分離ゲル、及び30%(w/v)アクリルアミドと0.5Mトリス塩酸等を含む濃縮ゲルを作製した。分子量マーカーにはAmersham ECL Rainbow Maker-Low Range (GE Healthcare) を用いた。マーカーを5μL/well、培養液上清画分サンプルを10μL/well適用し、SDSランニングバッファーを用いて125Vで約2時間通電し電気泳動を行った。
【実施例】
【0083】
前記電気泳動より得られたゲルからの膜転写には、ミニトランスブロットセル(バイオラッド)を用いた。Amersham Hybond 0.45μm PVDF(GE Healthcare) を100%メタノールにそれぞれ15分浸し、その後転写バッファー(ナカライテスク(株))に浸した。同様に、フィルターペーパー(クロマトグラフィー紙(GE Healthcare) も転写バッファーに浸した。フィルターペーパーでPVDF膜およびSDS-PAGEを行ったゲルを挟み込み、転写バッファーを用いて100Vで1時間通電することで電気泳動により分離し、タンパク質をゲルからPVDF膜へ転写した。
【実施例】
【0084】
(ウェスタンブロッティング)
転写後のPVDF膜を3%のスキムミルク(森永ミルク工業(株))を含むTBS-T(ナカライテスク(株)、pH7.4)で1時間ブロッキングした後、さらに適量のTBS-Tで10分の振盪洗浄を3回行い、一次抗体溶液として、マウス抗His-tag抗体(1/1000)を含むTBS-Tに4°Cで一晩振盪した。適量のTBS-Tで10分の振盪洗浄を3回行い、二次抗体溶液として、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)-複合ヤギ抗マウスIgE抗体(1/5000)(シグマアルドリッチ)を含むTBS-Tに室温で1時間振盪した。その後、同様に適量のTBS-Tで10分の振盪洗浄を3回行った後、ECLプライムウェスタンブロッティング検出試薬(RPN2232、GEヘルスケア)を用い、バンドは ImageQuant LAS500(GEヘルスケア)を用いて検出した。
【実施例】
【0085】
(実験結果)
前記5つのコロニーに由来するMG1363MT(GFP)と1つのMG1363WT(GFP)をそれぞれGM17cmで培養し、組換えタンパク質の発現を誘導した。ここでMTは変異株(K56T)を、WTは野生株をそれぞれ表す。また、(GFP)はGFP遺伝子発現ベクター(前記PNZ8148#3:SEC-GFP)を導入したものであることを意味する。誘導後、培養液上清におけるタンパク質溶液を調製した。調製したタンパク質溶液をウェスタンブロッティングに供し、GFPの発現を解析した(図6)。培養4時間後において5つの変異株(MT)のサンプルを全てウェスタンブロッティングに供したところ、いくつかのMTのバンドの濃さは、コロニーにより異なるが、全体的に濃くなっていた。
【実施例】
【0086】
(実施例6)
本実施例では、さらにラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)の別の野生株であるNZ9000より耐抗生物質変異株を取得した結果について説明する。
【実施例】
【0087】
(薬剤耐性変異株の取得)
ストレプトマイシン(SM)を512μg/mLもしくは1024μg/mLの濃度で含むMRS(SM)寒天培地にNZ9000を1mL播種し、2日間37°Cでインキュベートした。その結果、SMが1024μg/mLの濃度において6つのシングルコロニーが目視で観察された。SMが512μg/mLのとき変位は起きなかった。結果を表3に示す。なお、6個のシングルコロニーのうち5個がK56N変異株であり、1個がK56Q変異株であった。またストレプトマイシンに依存したP104L変異株も得られた。

【表3】
JP2019162039A_000005t.gif
【実施例】
【0088】
(実施例7)
本実施例では、実施例6で生成されたNZ9000変異株に対し、IL6scFv遺伝子の発現ベクターとして用いる乳酸菌用プラスミド(pNZ8148#2:SEC-IL6scFv)を電気穿孔法により導入して生成した組換え株を、グルコース0.5%含むSG寒天培地(SG-GM17)を使って培養した結果について説明する。
【実施例】
【0089】
図7に示されるように、K56N変異株の組換株(No.1)とK56Q変異株の組換え株(No.21)は、野生株に単に遺伝子組換えを施したノーマル株(No.4)と同様に顕著な増殖と形質転換が確認された。ストレプトマイシン依存性を有するP104L変異株(No.8)については顕著な増殖も形質転換も観測されなかった。512μg/mlストレプトマイシンを含む寒天培地で培養された株(ストレプトマイシン敏感感受性株、No.17)については顕著な増殖は確認されなかったが、形質転換は確認された。
【実施例】
【0090】
図8は、ウェスタンブロッティングにおいて、ナイシン添加培地で培養した図7で示された変異株の細胞(CELL)および細胞抽出液(SUP)よりrIL6scFvの分泌前駆体(34.0kDa)および分泌型rIL6scFv(31.2kDa)の分子量に一致するバンドを観察したものである。
【実施例】
【0091】
図8において、細胞におけるrIL6scFv(CELL)は、K56N変異株(#1)、ノーマル(#4)、K56Q変異株の順に、rIL6scFv分泌前駆体のバンドが顕著に検出された。ストレプトマイシン敏感感受性株(#17)は野生株(WT-VC)と同様、バンドは全く確認されなかった。野生株に対してIL6scFv遺伝子を発現させた株(WT-IL6scFv)は弱いながらもバンドが検出された。
【実施例】
【0092】
細胞抽出液におけるrIL6scFv(SUP)については、WT-IL6scFvが最も顕著に、続けてK56N変異株(#1)、ノーマル株(No.4)の順にシングルバンドが確認された。ストレプトマイシン敏感株(#17)とK56Q変異株(#21)は野生株(WT-VC)と同様、バンドは全く検出されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、アトピー性皮膚炎の発症率の低減、花粉症症状の低減、感染症の予防に利用することができる。また、組換えタンパク質高生産株として利用することもできる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7