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明細書 :吸着材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-166457 (P2019-166457A)
公開日 令和元年10月3日(2019.10.3)
発明の名称または考案の名称 吸着材
国際特許分類 B01J  20/26        (2006.01)
B01J  20/34        (2006.01)
C08F 222/20        (2006.01)
FI B01J 20/26 G
B01J 20/34 H
C08F 222/20
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2018-055534 (P2018-055534)
出願日 平成30年3月23日(2018.3.23)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 大介
【氏名】呉羽 拓真
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G066
4J100
Fターム 4G066AC17B
4G066CA33
4G066DA07
4G066DA08
4G066GA01
4J100AL08P
4J100BA05P
4J100BA06P
4J100BA08P
4J100CA01
4J100JA15
要約 【課題】
様々な化合物が溶存する溶液中において、ハロゲン化合物、特にヨウ素化合物を選択的に分離回収することを可能にする、吸着材を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る吸着材は、ポリマー微粒子を有効成分として含有する吸着材を提供する。本発明に係る吸着材は、ハロゲン化合物のうち、特にヨウ素を選択的に吸着することが可能であり、かつ、吸着後に当該微粒子を所定の温度に加熱することで、吸着したヨウ素を脱着することが可能で、効率的に溶存するヨウ素を分離・回収することを可能にする。
【選択図】図6
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式[1]で示される構造を有する化合物を有効成分として含有する吸着材
【化1】
JP2019166457A_000010t.gif
(式中、R1はメチル基またはエチル基で置換されていてもよい)
【請求項2】
吸着する対象がハロゲン化合物である請求項1記載の吸着材。
【請求項3】
吸着する対象がヨウ素である請求項1または2記載の吸着材。
【請求項4】
対象物を吸着した後に、加熱により対象を脱着することが可能な、請求項1~3のいずれか1項記載の吸着材。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材に関し、特に、ヨウ素選択的吸着能を有する高分子微粒子を有効成分とする吸着材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ヨウ素化合物は、日常生活において重要な役割を果たす。例えば、機能性ヨウ素化合物は、抗菌剤および抗ウイルス剤、除草剤、ならびに食品や化粧品用の成分としての用途が見出されている。特に、海洋由来の有機ヨウ素化合物は非常に貴重であり、癌や糖尿病に対する阻害作用等の生体活性を持つことから多くの注目を集めている。
【0003】
しかし、海洋ヨウ素化合物の多様性および存在量は、塩素および臭素類似体のものよりもずっと低く、高濃度に濃縮することは困難である。さらに、新規ヨウ素含有薬剤の有機合成は、多くの場合、標的の有機ヨウ素化合物に加えて、ヨウ素を有さない副生成物が生じる。したがって、溶液中のヨウ素化合物の濃度にかかわらず、水溶液中の出発物質、触媒および合成生成物としての標的ヨウ素化合物の回収および再使用は非常に望ましい。
【0004】
また、工業廃水や天然水に含まれる有機ヨウ素化合物は毒性、突然変異誘発性または発癌性を持つため、これら有機ヨウ素化合物の除去は、安全な飲料水の確保に重要である。
【0005】
しかし、このようなヨウ素化合物の選択的分離のための適切な材料は、未だ設計されていない。 これまでに、層状酸化物のような金属材料を主に使用して、水溶液からハロゲン含有化合物を除去する技術が報告されている。(非特許文献1-3) しかし、これらの層状酸化物は、吸着されたハロゲン化物アニオンを放出する際に還元反応を必要とするため、反応工程の数を増加させる等の問題があった。
【0006】
この課題に対して本発明者らは、大きな比表面積と拡散性を有し、回収および取り扱いが容易な、高分子微粒子に着目した。本発明者らは、高分子微粒子がハロゲン化合物を選択的に吸着することを見出し、疎水性ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(pMEA)およびポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)ヒドロゲルマトリックスからなる、複合ヒドロゲル微粒子(ミクロゲル)を報告した。(特許文献1)
【0007】
特許文献1に係る微粒子は、上述した微粒子の機能に加えて、ヒドロゲルマトリックス内部に拡散し、吸着したハロゲン化合物が、外部刺激により放出する作用を有している。また、この微粒子が有するハロゲン結合能の特徴としては、分子間結合距離が非常に短くため、強い原子間相互作用であり、これによりハロゲン化合物を選択的に吸着することが可能であった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特願2016-162554
【0009】

【非特許文献1】Chitrakar, R.; Sonoda, A.; Makita, Y.; Hirotsu, T. Calcined Mg-Al Layered Double Hydroxides for Uptake of Trace Levels of Bromate from Aqueous Solution. Ind. Eng. Chem. Res. 2011, 50, 9280-9285.
【非特許文献2】Chitrakar, R.; Makita, Y.; Sonoda, A.; Hirotsu, T. Fe-Al layered double hydroxides in bromate reduction: Synthesis and reactivity. J. Colloid Interface Sci. 2011, 354, 798-803.
【非特許文献3】Theiss, F. L.; Couperthwaite, S. J.; Ayoko, G. A.; Frost, R. L. A review of the removal of anions and oxyanions of the halogen elements from aqueous solution by layered double hydroxides. J. Colloid Interface Sci. 2014, 417, 356-368.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述の複合ヒドロゲル微粒子は、ヨウ素の他に、それ以外のハロゲン化合物、例えば臭素化合物等を含む溶液において、臭素化合物やハロゲン原子を持たない化合物をも吸着してしまい、ヨウ素化合物のみを分離、回収することは困難であるという課題があった。本発明は、上記課題を解決し、様々な有機化合物が溶存する水溶液中において、ヨウ素化合物を選択的に分離回収することを可能にする、吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち本発明は、下記一般式[1]で示される構造を有する化合物を有効成分として含有する吸着材である。
【0012】
【化1】
JP2019166457A_000003t.gif

【0013】
(式中、R1はメチル基またはエチル基で置換されていてもよい)
【0014】
また請求項2に記載の本発明は、吸着する対象がハロゲン化合物である請求項1記載の吸着材である。
【0015】
また請求項3に記載の本発明は、吸着する対象がヨウ素である請求項1または2記載の吸着材である。
【0016】
また請求項4に記載の本発明は、対象物を吸着した後に、加熱により対象を脱着することが可能な、請求項1~3のいずれか1項記載の吸着材である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】pET2AおよびpME2Aを含む微粒子の原子間力顕微鏡(AFM)写真である。
【図2】本発明の一例に係る粒子製造方法のフローチャートである。
【図3】pET2AおよびpME2Aを含む微粒子の各色素の吸着量のグラフである。
【図4】各微粒子の色素吸着量を解析した結果のグラフである。
【図5】各微粒子分散液を色素存在下で遠心分離した後の写真である。
【図6】色素混合液から各微粒子が吸着した各色素の吸着量のグラフである。
【図7】pME2Aを含む微粒子の各温度における色素放出結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る吸着材の実施の形態について説明する。

【0019】
本発明に係る吸着材は、ポリマー微粒子を有効成分として含有する吸着材を提供する。本発明に係る吸着材は、ハロゲン化合物のうち、特にヨウ素を選択的に吸着することが可能であり、かつ、吸着後に当該微粒子を所定の温度に加熱することで、吸着したヨウ素を脱着することが可能で、効率的に溶存するヨウ素を分離・回収することを可能にする。

【0020】
本発明に係る吸着材は、上記式1に記載の一般式で示すことが可能である。本発明に係る吸着材として、例えば、ポリ(2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート)(pET2A)、ポリ(2-(2-メトキシエトキシ)エチルアクリレート)(pME2A)が例示できる。pET2A、pME2Aの化学構造式をそれぞれ式2、式3に示す。

【0021】
【化2】
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【0022】
【化3】
JP2019166457A_000005t.gif

【0023】
本発明者らは、特許文献1に記載する微粒子を用いて、ヨウ素とそれ以外の化合物が低濃度に水中に共存した溶液から吸着実験を行った場合に、吸着したヨウ素化合物の吸着量が低いままであったことから、ミクロゲルと、ハロゲン化合物との相互作用には、非常に強く、ハロゲン原子の性質とは無関係であることを見出した。一般に、ハロゲン結合(ドナー・アクセプター反応)の強さは、ヨウ素>臭素>塩素の順に減少する。

【0024】
発明者らはハロゲン結合がアクセプターの分極力に依存することを利用して、ポリマー鎖中のハロゲン結合のルイス塩基性アクセプターである酸素原子の数と位置を変えて、微粒子とヨウ素含有化合物との間のハロゲン結合の強さを制御した。

【0025】
オリゴ(エチレングリコール)の双極子モーメントはその分子量に依存する。すなわち、ポリマー鎖の分極力は炭素 - 酸素結合の数が増加することによって減少する。したがって、分極の度合いによって変化するハロゲン結合の強さは、ポリマー側鎖中の炭素 - 酸素結合の数の増加と共に減少する。これを利用すると、側鎖に3つ以上のメトキシ基またはエトキシ基を有するpMEA類似体は、極性が減少するためにハロゲン結合の中でも最も強い相互作用が生じるヨウ素化合物のみと特異的に相互作用することが可能となる。

【0026】
本発明に係る吸着材は、その直径に制限はなく、いわゆる当業者が客観的に粒子と認められる状態であれば良いが、本発明が吸着材として利用されるためには、いわゆるサブミクロンオーダー、具体的には、50nmから500nmの範囲が望ましく、特に100nmから300nmの範囲であると、吸着、担持、回収の際に扱いやすく好適である。

【0027】
本発明に係る吸着材は、ヨウ素を有する物質を選択的に吸着することが可能である。ヨウ素を有する物質の例としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、リオチロニンナトリウム、レボチロキシンナトリウム等が挙げられる。また、本発明に係る吸着材は、吸着後の物質を、温度制御によって脱着することが可能である。これにより、所定の薬剤を吸着させて徐放材料として利用することが可能となる。

【0028】
図2に、本発明の一形態に係る粒子を製造する製造方法のフローチャートを示す。以下フローチャートに従って、本発明の一形態に係る粒子の製造方法について説明する。

【0029】
ステップS100では、本発明の吸着材の材料となるモノマーの水溶液を製造する。使用するモノマーの種類としては、MEA類似体が好ましく、例えば、(2-エチルエトキシ)エチルアクリレート(ET2A、98%)、2-(2-メトキシエトキシ)エチルアクリレート(ME2A、95%)が例示できる。溶媒に使用する水については、特に制限はなく、いわゆる当業者が公知のものから任意に選択可能であるが、反応の精度を確保するためにはイオン交換水であると望ましい。

【0030】
本発明の一形態に係る粒子を製造する際には、重合の前工程として、水溶液中の酸素を除去するステップS110を行うことも可能である。本発明の一形態に係る粒子の製造にあたり、溶液中の酸素が反応を阻害するのを防止するためである。酸素の除去方法は当業者が公知の技術から任意の方法を選択することが可能であるが、例えば、溶液中に多量の窒素をバブリングする方法が望ましい。

【0031】
ステップS120では、ステップS100で作成したモノマー水溶液を重合するため、加熱と攪拌を行う。加熱温度は、使用する熱重合開始剤の10時間半減期温度またはその周辺温度まで加熱する必要があり、例えば開始剤に過硫酸カリウムを使用した場合であれば、摂氏60度から80度の範囲であると望ましい。攪拌速度は、特に制限はなく、重合され、製造されたポリマー粒子の凝集を防止することができる範囲の速度であれば良い。具体的な速度の例としては、100rpmから300rpmの範囲であると望ましい。

【0032】
ステップS130では、ステップS100で作成したモノマー水溶液に重合開始剤を添加し、重合反応を促す。使用する重合開始剤は、水系重合に使用する熱重合開始剤であれば特に制限はなく、いわゆる当業者が公知の開始剤から任意のものを選択することが可能である。使用する開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過酸化水素が好適に適用される。

【0033】
本発明の一形態に係る粒子を製造する際には、重合の後工程として、重合され、製造された粒子を回収する工程ステップS140を行うことも可能である。回収方法は特に制限はないが、例えば遠心分離してから透析処理が好適である。
【実施例】
【0034】
(微粒子の合成)
以下、本発明に係る吸着材について、実施の形態を詳しく説明する。
【実施例】
【0035】
本実施形態に係る微粒子は、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)を用いた水系沈殿重合によって調製した。重合は、機械的撹拌機、凝縮器、および窒素ガス注入口を備えた三つ口丸底フラスコ(300mL)中で行った。微粒子の各モノマーの初期総濃度を表1に示す。本実施形態に係る微粒子については、初期総モノマー濃度を100mMで一定に固定した。 ET2A(1.88g、100mol%)、ME2A(1.65g、95mol%)およびME3A(2.07g、95mol%)のモノマー溶液を調製した。
【実施例】
【0036】
これらのモノマーを丸底フラスコ中でイオン交換した水(95mL)に溶解した。全てのモノマー溶液を丸底フラスコ中の水(95mL)に溶解し、絶えず撹拌(250rpm)および窒素気流下で70℃に加熱した。溶液を開始前に少なくとも30分間安定化させた。その後、フリーラジカル重合を水(5mL)中のKPS(0.054g)を用いて開始した。溶液を24時間撹拌し、重合の完了後、得られた分散液を室温に冷却した。重合された微粒子の各バッチを、20 000gの相対遠心力(RCF)を用いて水中で2回遠心分離/再分散させ、続いて水を毎日交換しながら1週間透析して精製した。
【実施例】
【0037】
原子間力顕微鏡(AFM)画像および使用した微粒子の化学構造を図1に示す。これらの微粒子の平均サイズ分布も図1に示す。この研究では、微粒子とアニオン性ハロゲン化合物との間の静電引力の影響を無視することができるので、負に帯電した表面をもたらすアニオン性開始剤である過硫酸カリウム(KPS、和光純薬工業製)を重合の開始に使用した。
【実施例】
【0038】
使用した微粒子の電気泳動移動度(EPM)は全てマイナスの値であり、表面が負に帯電していることを確認した(表1)。
【実施例】
【0039】
ハロゲン含有化合物の吸着挙動を比較するために、ポリスチレン(pSt)、ポリ(ブチルアクリレート)(pBA)、およびポリ(4-メトキシスチレン)(pMSt)からなる粒子を作成し、使用した。この時、pMStミクロスフェア中のメトキシ基は共鳴効果によって電子供与性基として作用するので、本実施形態に係る微粒子とpMStミクロスフェアとの間の分極の差異について比較し、議論することができる。
【実施例】
【0040】
【表1】
JP2019166457A_000006t.gif
【実施例】
【0041】
(合成後の評価)
本実施形態に係る微粒子の流体力学的直径(Dh)は、DLS(Malvern Instruments Ltd.、Zetasizer Nano S)によって測定した。散乱強度の時間変化は、散乱角173°で検出された。微粒子のDhはStokes-Einstein式(Zetasizerソフトウェアv6.12)を用いて測定した拡散係数から計算した。 DLS実験は0.001重量%の微粒子濃度で行った。各測定の前に、試料を10分間所望の温度で熱平衡させた。自己相関関数は、平均15回の強度測定から得た。微粒子の電気泳動移動度(EPM)は、Zetasizer Nano ZS装置(Malvern)を用いて0.001重量%の微粒子濃度で測定した。各測定の前に、サンプルを25℃で10分間熱平衡させた。 Smoluchowski方程式(Zetasizerソフトウェアv10.0)を用いて、測定された移動度から微粒子のゼータ電位を計算した。接触モードで動作するSPM-9500J3顕微鏡(島津製作所社製)を用いて、円型雲母基材上に付着した微粒子を視覚化するために、原子間力顕微鏡(AFM)画像を周囲条件下で取得した。試料調製のために、所定濃度の微粒子分散液(0.5μL)を、新たに調製した雲母基材に滴下し、60分間乾燥させた。Si3N4プローブ(Olympus、OMCL-AC240FS;走査速度= 0.2Hz;動作電圧= 0.3V)を用いてAFM画像を記録した。
【実施例】
【0042】
ポリ(2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート)(pET2A)鎖は、比較的低い下限臨界溶液温度(LCST; ~15℃)を有するので、固体状pET2A微粒子は、室温でも架橋剤なしで分解されなかった。逆に、ポリ(2-(2-メトキシエトキシ)エチルアクリレート)(pME2A)およびポリ(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルアクリレート(pME3A)は、比較的高い下限臨界溶液温度(pME2A:~43℃; pME3A:~63℃)を有するため、架橋剤なしでは得られなかった。
【実施例】
【0043】
したがって、架橋剤エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を重合されたモノマー溶液(5モル%)に添加し、安定なpME2AおよびpME3A微粒子を得た(表1および図1)。
【実施例】
【0044】
(ハロゲン色素の吸着挙動)
微粒子のハロゲン結合による吸着挙動を調べるために、エオシンY(EoY)、エリスロシン(Ery)、フロキシンB(PhB)、ローズベンガル(RB)などのアニオン性ハロゲン含有キサンテン色素を有機ハロゲンモデル化合物として選択した (図3)。 特に、ヨウ素含有EryおよびRBは、食品および化粧品においてしばしば使用される。 ハロゲン結合を疎水性相互作用などの他の相互作用と比較するために、オレンジII(OrII)およびタートラジン(Ttz)のようなハロゲン原子を含まないアニオン性染料についても分析を行った。 図3は、25℃で実験を行った微粒子の各色素の吸着等温線を示す。
【実施例】
【0045】
実験手法としては、リン酸ナトリウム緩衝液(80mM、pH = 7.0)を溶媒に選択し、使用した各微粒子分散液を試験管に注いだ。微粒子の最終濃度は、すべての実験で0.1重量%であった。微粒子分散液を、インキュベーター(CN-25C、三菱電機エンジニアリング社製)で絶えず攪拌(300rpm)しながら、所望の温度で1時間熱平衡させた。その後、適切な色素原液を試験管に注入した。最終色素濃度は、必要な条件(0.1~2 mM)に対して適切に調整した。暴露1時間後、混合物を3つの遠心分離管(SC-0200、伊那オプティカ株式会社製)に分割した。混合物を遠心分離して(RCF:20,000g)、微粒子を各チューブの底に沈降させた。上澄み液を遠心分離管から取り出し、UV-可視分光光度計(JASCO社製、V-630iRM)を用いて各上澄み液の吸光度を測定した。Langmuirモデルを適用して、吸着等温線の解析をした。 Langmuirモデルは、吸着質が吸着剤表面上に単層で吸着するという仮定に基づいている。Langmuirモデル式を以下に示す。
【実施例】
【0046】
【数1】
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【実施例】
【0047】
ここで、Ce(mg / L)は溶液中の平衡染料濃度を表し、Qe(mg / g)は微粒子が吸着した色素の量であり、Qm(mg / g)は飽和吸量、 b(L / mg)は色素とマイクロスフェア間の親和性に関係するLangmuir定数である。 さらに、このLangmuir定数を利用し、分離係数として知られる無次元平衡パラメータ(RL)は、以下の式を使用して計算することができる
【実施例】
【0048】
【数2】
JP2019166457A_000008t.gif
【実施例】
【0049】
ここでC0(mg / L)は溶液中の初期色素濃度である。Langmuirモデルを適用した結果を図4に示す。
【実施例】
【0050】
pMEA微粒子とは異なりpMSt微粒子が有するメトキシ基は、共鳴効果のために電子供与基、すなわちルイス酸として作用する。 そのため、pMSt微粒子のハロゲン含有色素の吸着量は、pMEA微粒子よりも少なく、飽和吸着量はpStおよびpBA微粒子の場合に近い(図3および表2)。さらに、pMSt微粒子とは異なり、pMEA微粒子ペーストは、遠心分離後に赤色のEryまたはEoYに容易に染まる(図5)。これは誘起効果により pMEA中のメトキシ基が電子吸引性となり、ハロゲン結合にとって重要な因子であることを示唆する。
【実施例】
【0051】
【表2】
JP2019166457A_000009t.gif
【実施例】
【0052】
側鎖の酸素原子の数がpMEAよりも1つ多い固体状pET2A微粒子(図1)の場合、pET2Aの単位重量あたりのヨウ素含有染料EryおよびRBの吸着量は、 pMEA微粒子の流体力学的直径(Dh = 214 nm)がpET2A微粒子の流体力学的直径(Dh = 453nm, 表1)より小さいにも関わらず、pMEA微粒子の吸着量と近い値を示した。
【実施例】
【0053】
その結果、pET2AのEryおよびRBの単位表面積あたりの吸着量(Nm/s)はpMEAよりも高く、かつEryおよびRBのRL値はpMEAの値に近い(表2)ことから、pET2A微粒子もハロゲン結合能を有することが示唆された。これは、微粒子の表面積あたりの側鎖の数がpMEAおよびpET2A微粒子で同一であると仮定すると、pET2A中のハロゲン結合部位(酸素原子)の数がpMEA微粒子よりも多く、ヨウ素の吸着量を増加させる要因となっている。
【実施例】
【0054】
一方、酸素原子の数がpET2A側鎖と同一であるpME2A微粒子(図1)の場合、EryおよびRBのLangmuir定数は、pMEAおよびpET2Aよりも小さい(表2)。これは、pME2Aとヨウ素色素との間のハロゲン結合の強さは、pMEAやpET2Aよりも低いことを示している。
【実施例】
【0055】
pET2AとpME2Aの間のLangmuir定数(またはRL値)が異なる要因は主に2つある。その1つはpET2A側鎖の末端エトキシ基が、 pME2A側鎖の末端メトキシ基よりも分極が大きくなり、pET2Aの双極子モーメントのベクトル和が増加することに起因する。既に、オリゴ(エチレングリコール)分子の分極力が、配座異性体およびエチレングリコールの繰り返し単位の数に依存するため、分極の度合いは炭素原子の数にも依存することが知られており、側鎖末端のメトキシ基およびエトキシ基で異なることから、上述した推察ができる。それに加え、固体状pET2A微粒子と色素間の疎水性相互作用は、水に膨潤し、親水的なpME2A微粒子において生じることが難しいと考えられ、疎水性相互作用がpET2A微粒子表面上の色素吸着を支持すると言える。さらに、pME3A微粒子のEryおよびRBのLangmuir定数は、pMEA、pET2A、およびpME2A微粒子よりも小さい(表2)。したがって、ポリマー側鎖全体の分極力は、ハロゲン結合に寄与し、ヨウ素化合物の強い吸着にとって重要な因子であると結論づけた。
【実施例】
【0056】
反対に、pET2A微粒子上の臭素含有色素EoYおよびPhBの吸着量は、pET2A微粒子がハロゲン結合能を示すにも関わらず、ヨウ素含有色素の吸着量(図3)よりも少ない。そのため、EoYおよびPhBのRL値は、pMEA微粒子よりも1に近く、親和性が低いことがわかった(例えば、0.1mM EoY:RL ~0.69(pET2A)、RL ~0.28(pMEA);表2)。したがって、pET2A側鎖のハロゲン結合能がpMEAよりも低下していることが示唆された。実際に、ヨウ素含有色素EryはpET2A微粒子に強く吸着し、透明な上澄み液が得られたが、EoYは上澄み液にも多く存在した(図5)。したがって、pET2A微粒子は、ヨウ素化合物にのみ高いハロゲン結合能を示し、臭素化合物への親和性は低い。この傾向は、pME2AおよびpME3A微粒子(例えば、Eryの場合、pME2A:RL ~0.64、EoYの場合、RL ~0.80, 表2)についても観察された。
【実施例】
【0057】
(ヨウ素化合物の選択的吸着および放出)
本発明に係る微粒子のヨウ素化合物の選択的吸着能を評価するため、pET2A微粒子の色素混合液中での吸着実験を行った。本実験では、アニオン性RBをヨウ素含有色素の標的分子とし、ヨウ素を有さないEoY、OrII、TtzをRBの吸着阻害剤として選択した。図6は、pMEAおよびpET2A微粒子(0.1重量%)に対する各色素の吸着効率を示しており、両微粒子におけるRBの吸着量が、すべての色素の濃度が同等である場合に最も高いことを示している。しかし、低色素濃度(例えば、0.1mM)の場合、pMEA微粒子は、OrIIおよびTtzよりむしろ臭素含有EoYを優先的に吸着した(例えば、0.1mMではEoYを約28%吸着, 図6a)。これはEoYとpMEA微粒子間でもハロゲン結合が起きることを示唆している。この現象は、色素濃度にかかわらずRB吸着率を低下させる。
【実施例】
【0058】
一方、pET2A微粒子の場合では、RB吸着率が0.1mMの低い色素濃度においても、吸着した全ての色素の約70%を占める(図6b)。さらに、RBの最大吸着率は、1mM時で約91%に達した。これはpET2A微粒子の特徴であるヨウ素含有化合物に対して高い親和性を示すが、ヨウ素を含まない化合物に対しては低い親和性を示すという特徴を反映し、ヨウ素含有化合物の吸着の選択性は、pET2A微粒子を使用することによって改善することができる。
【実施例】
【0059】
(放出実験)
pMEA微粒子と同様に、固体状pET2A微粒子に吸着したヨウ素含有色素のRBは、容易に脱着せず、70℃の高温でも、pET2A表面に強く付着したままであることを示した(図7左)。そこで、ここではpME2A微粒子のDhが50℃までの温度上昇により減少するので、RBの放出効率を増大させるために温度応答性のpME2A微粒子を選択した。実際に、温度を50℃に上昇させるとpME2A微粒子はRBを放出し、その量は増加した(図7右)。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上の実験結果は、これらの微粒子が、ヨウ素を含まない化合物の存在下でヨウ素含有化合物の吸着に対して高い選択性を示すことを示した。例えば、ヨウ素含有染料RBは、すべての吸着染料の> 90%を占める。さらに、pME2A微粒子は、優れた温度に応答する膨潤・収縮挙動を示し、ヨウ素含有色素の放出制御を可能にした。これらの知見は、貴重なヨウ素含有薬剤の回収、ヨウ素含有触媒の再使用、有害なヨウ素含有化合物の除去などのために非常に重要であり、ヨウ素含有化合物の高選択的な分離方法の開発に非常に有用である。

図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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