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明細書 :触覚デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-197421 (P2019-197421A)
公開日 令和元年11月14日(2019.11.14)
発明の名称または考案の名称 触覚デバイス
国際特許分類 G06F   3/041       (2006.01)
G06F   3/01        (2006.01)
FI G06F 3/041 480
G06F 3/01 510
G06F 3/01 560
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2018-091525 (P2018-091525)
出願日 平成30年5月10日(2018.5.10)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】鈴木 彩
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 5E555
Fターム 5E555AA08
5E555AA77
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555CA12
5E555CB12
5E555DA24
5E555FA00
要約 【課題】 低電圧で駆動することができ、小型軽量化、微細化を図ることが可能で、操作者に的確に触感覚を感知させることを可能にする触覚デバイスを提供する。
【解決手段】 本発明に係る触覚デバイスは、クリープ作用を備える誘電性材料からなるゲルシートを厚さ方向に挟む配置に、陽極と陰極とが設けられたアクチュエータ素子30を備えるユニット素子20と、前記陽極と陰極との間に電圧を印加する電源と、前記ユニット素子の陽極と陰極との間に印加する電圧をON-OFF制御する制御部とを備える触覚デバイスであって、前記ユニット素子は、平面領域内に複数配置され、前記制御部は前記複数のユニット素子のうちの一または複数を選択して当該ユニット素子の陽極と陰極との間にのみ電圧を作用させることを特徴とする。
【選択図】 図7
特許請求の範囲 【請求項1】
クリープ作用を備える誘電性材料からなるゲルシートを厚さ方向に挟む配置に、陽極と陰極とが設けられたアクチュエータ素子を備えるユニット素子と、
前記陽極と陰極との間に電圧を印加する電源と、
前記ユニット素子の陽極と陰極との間に印加する電圧をON-OFF制御する制御部とを備える触覚デバイスであって、
前記ユニット素子は、平面領域内に複数配置され、前記制御部は前記複数のユニット素子のうちの一または複数を選択して当該ユニット素子の陽極と陰極との間にのみ電圧を作用させることを特徴とする触覚デバイス。
【請求項2】
前記制御部は、前記ユニット素子に外力が作用した際に、当該外力が作用したユニット素子の陽極と陰極との間にのみ電圧を作用させることを特徴とする請求項1記載の触覚デバイス。
【請求項3】
前記制御部は、前記外力が作用したユニット素子に周期的に電圧を印加して、該ユニット素子のアクチュエータ素子を厚さ方向に振動変位させることを特徴とする請求項1または2記載の触覚デバイス。
【請求項4】
前記ユニット素子は、前記アクチュエータ素子の一方の外面上に、凸部を備えた作用部材が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の触覚デバイス。
【請求項5】
前記ユニット素子は、ケース内に前記アクチュエータ素子が収納され、前記ケースの上蓋に前記凸部が突出入する透孔が設けられていることを特徴とする請求項4記載の触覚デバイス。
【請求項6】
前記ケース内における前記アクチュエータ素子の位置を調節し、前記凸部の前記上蓋からの突出量を調節する調節手段が設けられていることを特徴とする請求項5記載の触覚デバイス。
【請求項7】
前記アクチュエータ素子が、ゲルシートとゲルシートを厚さ方向に挟んで配置される陽極と陰極とを単位として複数層に積層して形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の触覚デバイス。
【請求項8】
平面領域内に複数配置された基本ユニットの全体を覆うカバーシートが設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の触覚デバイス。
【請求項9】
平面領域内に複数配置された基本ユニットの全体を覆うカバーシートが設けられ、該カバーシートに、前記作用部材の凸部が突出入する挿入孔が設けられていることを特徴とする請求項4~7のいずれか一項記載の触覚デバイス。
【請求項10】
請求項1記載の触覚デバイスに用いられ、クリープ作用を備える誘電性材料からなるゲルシートを厚さ方向に挟む配置に、陽極と陰極とが設けられたアクチュエータ素子が、平面領域内において、相互に離間して複数個配置されていることを特徴とする触覚デバイスユニット。
【請求項11】
前記ユニット素子は、前記アクチュエータ素子の一方の外面上に、凸部を備えた作用部材が設けられていることを特徴とする請求項10記載の触覚デバイスユニット。
【請求項12】
前記ユニット素子は、ケース内に前記アクチュエータ素子が収納され、前記ケースの上蓋に前記凸部が突出入する透孔が設けられていることを特徴とする請求項11記載の触覚デバイスユニット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は触覚デバイスに関し、より詳細にはゲルアクチュエータを利用した触覚デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔地において触感覚を実体験することを可能にするハプティクス技術が注目されている。このハプティクス技術は、利用者に力、振動、動きなどを与えることで、皮膚感覚のフィードバックを得る技術である。このハプティクス技術を使って、たとえば種々の触感を呈示することができるタッチスクリーンを構築することで、いろいろな触感を呈示させたり、タッチパネルに指先を接触したときに指先に振動を返すことで接触した感覚を感知させるといったことが可能になる。
【0003】
ハプティクス技術を利用して触感を呈示する触覚デバイスとしては、変形可能な触覚テキスチャーを使用してさまざまな触覚を呈示できるようにしたもの(特許文献1)、圧電アクチュエータを使用してタッチセンサへの接触を感知させるもの(特許文献2)、近接センサを用いてタッチパネルに指が接近したことを検知してアクチュエータを駆動することで触覚感覚を生じさせるもの(特許文献3)、ピンを利用して触覚を感知させるもの(特許文献4)等が提案されている。
なお、指等に触感覚を感知させる触覚デバイスとして、従来はソレノイドや圧電素子を用いた触覚デバイスが提案されているが、近年は高分子アクチュエータを用いた触覚ディスプレイが提案されている(特許文献5、6、非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2011-519082号公報
【特許文献2】特開2012-128499号公報
【特許文献3】特開2015-158912号公報
【特許文献4】特開2006-351012号公報
【特許文献5】特開2013-519153号公報
【特許文献6】特開2013-508913号公報
【0005】

【非特許文献1】S. Chiba, S. Stanford, R. Kornbluh and H. Prahlad : “Electroactive Polymer Artificial Muscle,”日本ロボット学会誌,Vol. 24, No. 4, pp. 446-470, 2006
【非特許文献2】昆陽雅司:高分子アクチュエータの基礎と応用~ICPFアクチュエータを用いた触覚ディスプレイ,日本バーチャルリアリティ学会誌,Vol. 13, No. 2, pp. 83-86, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ハプティクス技術を利用して触感覚を呈示する技術は、従来は機械的なボタンを利用するものから、コンピュータやスマートフォン等の操作が触覚ディスプレイを用いる操作に移行しつつあることから、今後、ますます需要が高まることが予想され、それに合わせて、より使い勝手のよい触覚デバイスが求められる。
なお、人の触覚受容器の間隔や空間分解能は1~2mmと言われており、このような微小で密に配置された受容器に対して所要の機械的刺激を与えるためには、ミリ間隔で配置することが小型アクチュエータが必要である。
本発明は、低電圧で駆動することができ、小型軽量化、微細化を図ることが可能で、利用者に的確に触感覚を感知させることを可能にする触覚デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る触覚デバイスは、クリープ作用を備える誘電性材料からなるゲルシートを厚さ方向に挟む配置に、陽極と陰極とが設けられたアクチュエータ素子を備えるユニット素子と、前記陽極と陰極との間に電圧を印加する電源と、前記ユニット素子の陽極と陰極との間に印加する電圧をON-OFF制御する制御部とを備える触覚デバイスであって、前記ユニット素子は、平面領域内に複数配置され、前記制御部は前記複数のユニット素子のうちの一または複数を選択して当該ユニット素子の陽極と陰極との間にのみ電圧を作用させることを特徴とする。
なお、クリープ作用を備える誘電材料からなるゲルシートとは、ゲルシートを電極で挟んで、電圧を印加すると陽極側にゲルシートが乗り上げる(裾を引く)ように作用する(クリープ作用という)シート材であり、クリープ作用が大きく表れるシート材としてはPVC(ポリ塩化ビニル)からなるゲルシートがある。
【0008】
前記制御部は、前記ユニット素子に外力が作用した際に、当該外力が作用したユニット素子の陽極と陰極との間にのみ電圧を作用させる構成とすることができる。
前記制御部は、前記外力が作用したユニット素子に周期的に電圧を印加して、該ユニット素子のアクチュエータ素子を厚さ方向に振動変位させることにより、操作者に確実に接触感覚(振動)をフィードバックして感知させることができる。
また、前記ユニット素子は、前記アクチュエータ素子の一方の外面上に、凸部を備えた作用部材が設けられていることにより、操作者に点的なパターンを呈示することができる。
また、前記ユニット素子は、ケース内に前記アクチュエータ素子が収納され、前記ケースの上蓋に前記凸部が突出入する透孔が設けられた構成とすることができる。
また、前記ケース内における前記アクチュエータ素子の位置を調節し、前記凸部の前記上蓋からの突出量を調節する調節手段が設けられていることにより、凸部の突出量を適宜調節して、振動作用あるいは点的な感知パターンをより的確に呈示することができる。
【0009】
前記アクチュエータ素子が、ゲルシートとゲルシートを厚さ方向に挟んで配置される陽極と陰極とを単位として複数層に積層して形成されていることにより、より大きな変位量を得ることができ、また出力が大きくなることからさらに的確に感知パターンを呈示することができる。
また、平面領域内に複数配置された基本ユニットの全体を覆うカバーシートが設けられていることにより、操作者が指等をすべらせるようにして触感覚を感知することができる。
また、平面領域内に複数配置された基本ユニットの全体を覆うカバーシートが設けられ、該カバーシートに、前記作用部材の凸部が突出入する挿入孔が設けられていることにより。前記ユニット素子の位置ずれを防止し、確実に感知パターンを呈示することができる。
【0010】
また、前記触覚デバイスには、クリープ作用を備える誘電性材料からなるゲルシートを厚さ方向に挟む配置に、陽極と陰極とが設けられたアクチュエータ素子が、平面領域内において、相互に離間して複数個配置されている触覚デバイスユニットが有効に用いられる。
また、前記ユニット素子として、前記アクチュエータ素子の一方の外面上に、凸部を備えた作用部材が設けられているもの、前記ユニット素子として、ケース内に前記アクチュエータ素子が収納され、前記ケースの上蓋に前記凸部が突出入する透孔が設けられているものが好適に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る触覚デバイスはゲルシートを用いたアクチュエータ素子を駆動源とすることにより、低電圧で駆動される小型軽量化した触覚デバイスとして提供される。本発明に係る触覚デバイスを構成するゲルシートは透明であり、視覚ディスプレイ等と組み合わせることで振動等の触感覚を呈示するデバイスとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ゲルアクチュエータの構成を示す断面図である。
【図2】触覚デバイスを構成するユニット素子の外観写真である。
【図3】触覚デバイスを構成するユニット素子について、変位量、収縮率、応答性を測定した結果を示すグラフである。
【図4】複数個のユニット素子を用いて構成した触覚デバイスを示す図(a)、ユニット素子を覆うようにカバーシートを設けた触覚デバイスの図(b)である。
【図5】触覚デバイスを構成するすべてのユニット素子に電圧を印加した状態(a)、一部のユニット素子に電圧を印加した状態(b)を示す図である。
【図6】実験で使用した触覚デバイス(触覚ディスプレイ)の外観写真である。
【図7】触覚デバイス(触覚ディスプレイ)の構成を示す平面図と断面図である。
【図8】縦横4列に配置したユニット素子を用いて呈示する触覚パターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ゲルアクチュエータ)
図1は本発明に係る触覚デバイスを構成するユニット素子で用いられるゲルアクチュエータ(アクチュエータ素子)の基本的な構成とその作用を示す。ゲルアクチュエータはメッシュ状に形成した陽極10をゲルシート12a、12bにより厚さ方向に挟み、ゲルシート12a、12bの各々の外面に層状に陰極14a、14bを設けた構成を備える。
図1(a)は陽極10と陰極14a、14bとの間に電圧を印加していない状態、図1(b)は陽極10と陰極14a、14bとの間に電圧を印加した状態である。

【0014】
陽極10と陰極14a、14bとの間に電圧を印加すると(図1(b))、ゲルシート12a、12bのクリープ作用により、ゲルシート12a、12bはメッシュ状に形成した陽極10の隙間部分に引き込まれ、ゲルアクチュエータは全体の厚さが薄くなる。また、陽極10と陰極14a、14bとの間に印加した電圧を解除すると、ゲルシート12a、12bの弾性により、ゲルアクチュエータは元の厚さに復帰する。こうして、陽極10と陰極14a、14bとの間に印加する電圧をON-OFFすることにより、ゲルアクチュエータは厚さ方向に往復して変位する動作をなす。
なお、クリープ作用とは電圧が印加された際に負電荷が陽極の近傍に集まり、クーロン力によってゲルシートが陽極に引き込まれる作用である。

【0015】
ゲルアクチュエータは、上記のように、ゲルシートと、陽極と、陰極とからなるアクチュエータ素子と、アクチュエータ素子の陽極と陰極とに電圧を印加する電源と、陽極と陰極とに印加する電圧をON-OFF制御する制御部とから構成される。制御部は陽極と陰極との間に印加する電圧を制御するとともに、印加する電圧の周波数も制御し、アクチュエータ素子は厚さ方向に繰り返し収縮-回復する作用をなす。

【0016】
図1に示したゲルアクチュエータは、陽極10をゲルシート12a、12bで厚さ方向に挟むゲルアクチュエータの基本構成(ユニットを示すもので、ゲルアクチュエータはこのゲルアクチュエータのユニットを厚さ方向に積層した積層構造のゲルアクチュエータとして構成することができる。積層構造とすることで、単一構成の場合と比較して、厚さ方向の変位量を大きくすることができ、出力(駆動力)を大きくすることができる。

【0017】
ゲルアクチュエータを構成するゲルシートはクリープ作用を備える誘電体材料を用いて構成することができる。ゲルシートとしては、たとえば高分子誘電体材料であるポリ塩化ビニル(PVC)を用いて形成したものを好適に使用することができる。PVCゲルシートはクリープ作用が大きいという利点と、大気中で比較的低電圧で駆動でき、長期間にわたって安定して使用することができ、耐久性に優れるという利点がある。

【0018】
図1に示すゲルアクチュエータでは、陽極10をメッシュ状に形成することにより、電圧を印加した際に、クリープ作用によってゲルシートが陽極10に引き込まれる隙間を設けたもので、陽極10としてはメッシュ状としたものに限らず、薄い導電体を波形形状としたもの、凹凸形状にしたもの等の、陽極を挟んで配置されるゲルシート12a、12bの対向面間に隙間(空間)が形成されるものであれば、任意の形態の陽極を使用することができる。また、陽極として柔軟性、可撓性のあるものを用いることももちろん可能である。

【0019】
また、ゲルアクチュエータに用いるゲルシートの他の形態としては、ゲルシートの表面を凹凸面とし、陽極を平坦な電極層とすることで、陽極とゲルシートとの間に隙間(空間)を設ける構成とすることもできる。この場合は、ゲルシート12a、12bに設けた凸部の頂部を平坦な陽極面に接触させたときに、凸部の頂部と基部との間に隙間(空間)が形成される。陽極と陰極との間に電圧を印加すると、クリープ作用によりゲルシートの凸部が陽極の表面に吸い付き(凸部の頂部が陽極面に向けて裾を引く形態となる)、アクチュエータは厚さ方向に収縮する。

【0020】
(触覚デバイスの構成)
本発明に係る触覚デバイスは、上述したゲルアクチュエータを利用して触覚デバイスとして構成したものである。
図2は触覚デバイスを構成する一つの素子(ユニット素子)の構成例を示す。図2(a)は触覚デバイスを構成するユニット素子の外観写真、図2(b)はユニット素子の断面図である。この触覚デバイスのユニット素子20は、アクチュエータ素子30を収容するケース22と、アクチュエータ素子30との間で相互作用力を及ぼす作用部材24とを備える。

【0021】
アクチュエータ素子30はゲルシート32を、陽極34と陰極36とで交互に厚さ方向に挟む配置としたもので、図2に示す例は、アクチュエータ素子30を3層構成(陽極を3段設けた構成)としたものである。
ケース22は平面形状が四角形の筒状に形成したもので、アクチュエータ素子30はケース22の平面形状と同様の平面形状が四角形状に形成され、ケース22内周側面にその外周側面が摺接して、ケース22内でスライド自在となっている。

【0022】
作用部材24は、ケース22の上蓋22aとアクチュエータ素子30の上面との間に挿入され、ケース22の内周側面と作用部材24の外周側面とが相互に摺接し、ケース22内で上下方向(アクチュエータ素子30の厚さ方向)にスライド自在となる。
作用部材24の中央部には円柱状の凸部24aが設けられ、ケース22に作用部材24を装着した状態で、凸部24aがケース22の上蓋22aの中央に設けた透孔22bから突出するように設けられている。

【0023】
ケース22の下部には下蓋22cが固定され、下蓋22cとアクチュエータ素子30の下面との間にスライド板26を介在させる。下蓋22cに調節用のねじ28を装着し、ねじ28はスライド板26の高さ位置を調節するためのもので、ねじ28を調節することで、作用部材24の上面に起立させて設けた凸部24aがケース22の上蓋22aから突出する突出量を調節することができる。

【0024】
なお、実験用に製作した図2に示すユニット素子20は、ゲルシートとして厚さ200μmのPVCゲルシートを使用し、陽極34にはメッシュ電極(厚さ220μm)を使用し、陰極36には厚さ10μmのSUS箔を使用した。電極の寸法は5mm×5mmである。
ケース22は、外形寸法が7mm×7mm×7mmの立方体形状であり、作用部材24に設けた凸部24aは径2.0mm、凸部の高さは2.5mmである。

【0025】
図3に、触覚デバイスを構成するユニット素子について印加電圧を変えたときの変位量、収縮率と、応答特性について測定した結果を示す。
図3(a)は、印加電圧を変えたときの変位量を測定した結果で、印加電圧を増大させるとともに変位量が増大する。印加電圧が200Vのときの変位量は100μmである。図3(b)は横軸を印加電圧としてアクチュエータ素子の収縮率を示す。印加電圧が200Vのときの収縮率が5%である。
図3(c)は、横軸を印加する電圧の周波数、縦軸がゲインである。周波数特性は、電極に矩形波の電圧を印加して測定した。図3(c)の測定結果から、このユニット素子の応答特性は8Hzであるといえる。

【0026】
図4は上述したユニット素子20を用いて触覚デバイスを構成した例を示す。
ユニット素子20を単独で使用して触覚デバイスとすることも可能であるが、操作者に種々の触感覚を感知させるには、ユニット素子20を複数個組み合わせ、個々のユニット素子20の凸部24aが突出入するパターンを制御することにより触覚デバイスとして構成する方法が有効である。

【0027】
図4は、複数個のユニット素子20を用いて触覚デバイスを構成した例を示す。図2に示した触覚デバイスのユニット素子20は、平面形状が四角形に形成されている。この触覚デバイス40は、相互に外側面を当接させ、ユニット素子20を縦横に整列して配置することにより、複数個のユニット素子20が縦横に整列して、平面的に配置された触覚デバイス40として構成される(図4(a))。
図4では、触覚デバイス40全体の平面形状を四角形としているが、ユニット素子20の配列方法、配列数は適宜設定することが可能であり、触覚デバイスの平面形状は、円形状、六角形等の多角形状等の任意の形態とすることができる。

【0028】
図4に示す触覚デバイス40では、複数個のユニット素子20を並列配置するとともに、配置されているユニット素子20全体にわたってユニット素子20の上部全面を覆うようにカバーシート42を設けている(図4(b))。カバーシート42にはユニット素子20の作用部材24に設けられている凸部24aが挿入される挿入孔が設けられている。挿入孔にユニット素子20の凸部24aを挿入してユニット素子20を配置することにより、ユニット素子20の配置位置が位置決めされる。アクチュエータ素子30を駆動した際に、挿入孔から凸部24aが突出入するように、凸部24aが突出入するストロークと、カバーシート42の厚さとを設定することにより、個々のユニット素子20の駆動を制御することでさまざまな触感覚を感知させることができる。

【0029】
図5(a)は、触覚デバイス40を構成するすべてのユニット素子20に電圧を印加した状態を示す。ユニット素子20に電圧を印加するとアクチュエータ素子は厚さ方向に収縮し、凸部24aはカバーシート42の挿入孔内に引き込まれた状態にある。図5(b)は触覚デバイス40を構成する一部のユニット素子20に印加する電圧を解除した状態を示している。印加電圧が解除(除去)されたユニット素子20については、凸部24aがカバーシート42の挿入孔から突出する。
このように触覚デバイス40を構成するユニット素子20について、それぞれ印加する電圧をON-OFF制御することにより触覚デバイス40によりさまざまな触感覚パターンを呈示することが可能になる。

【0030】
(検証実験)
触覚デバイスの作用を検証するため、図2に示した触覚デバイスのユニット素子20と同様な構成のユニット素子を作製し、このユニット素子を縦横に4個ずつ、16個配置した触覚ディスプレイ(触覚デバイス)を製作し、その作用を検証する実験を行った。図6に製作した触覚ディスプレイの外観写真を示す。
図7は触覚ディスプレイの構成を示す平面図と断面図である。触覚ディスプレイで使用したユニット素子は、ケースの平面寸法が縦横7mm、凸部の高さ2.5mm、アクチュエータ素子は厚さ1mm、陽極と陰極の平面寸法縦横4mmである。アクチュエータ素子は3層構造で駆動時の振幅が約80μmである。ユニット素子は7.5mm間隔で配置され、触覚ディスプレイの平面寸法は縦横29.5mmである。カバーシートの厚さは2mmである。

【0031】
図8は縦横4列に配置したユニット素子を用いて呈示する触覚パターンの呈示例を示す。この触覚ディスプレイを用いて呈示することができる触覚パターンはこの他にも種々のパターンがあるが、図8に示した例は、製作した触覚ディスプレイが、実際に触感覚のパターンを弁別して感知し得るか否かを試験する例として用いたパターン例である。

【0032】
触覚ディスプレイを用いた触感覚の弁別試験は、健常者6 名(男性3 名,女性3 名:平均年齢26.33 歳)を被験者とし、図8に示した4通りのパターンを呈示し、弁別の正答率、反応時間(接触から口頭での正答まで)を計測した。4パターンのうち3つをランダムに出力し、被験者が利き手人差し指でその呈示パターンを評価した。
弁別試験の結果、4 パターンともに正答率100%であった。被験者によって反応時間に個人差はあるものの、全員が弁別できたことからアクチュエータ素子を用いた触覚デバイスの有用性が確認された。

【0033】
(触覚デバイスの変形例)
上述した実験で使用した触覚ディスプレイ(触覚デバイス)は、ユニット素子20を整列して配置した範囲範囲の全面をカバーシート42により被覆し、カバーシート42にユニット素子20の上蓋22aから突出する凸部24aが挿入される挿入孔を設けたものである。カバーシート42に凸部24aが挿入される挿入孔を設けた場合には、凸部24aを突出入させることで、突起パターンによって点的なパターンを呈示することができる。したがって、この方式を利用する場合は、点字等の点的なパターンを利用して特定の標識(パターン)を表示する呈示方法として有効に利用することができる。

【0034】
カバーシート42として十分に薄いシートを用いたり、カバーシート42の素材を選択することにより、カバーシート42に凸部24aを進入させる挿入孔を設けることなく、カバーシート42の上から点状のパターンを感知させたり、ユニット素子20による駆動により凸部24aの振動を感知させるように構成することも可能である。凸部24aの振動を感知させるような用途の場合には、点的なパターンを呈示する必要はなく、単に機械的な振動を感知させるのみであるから、ユニット素子の配置も、たとえば指が接触する範囲で適宜個数配置すればよい。

【0035】
カバーシートで被覆した状態で振動状態を感知させる例としては、パソコンのディスプレイのような、いろいろな視認パターン(アイコン)を表示する視覚ディスプレイに応用することが可能である。ディスプレイのカバーシート(保護シート)の下側にアクチュエータ素子を内蔵したユニット素子を埋設し、ディスプレイの表面を指で押した際に、指に振動をフィードバックするといった制御を行うことにより、アイコンを指で押した操作を使用者に確実に感知させることができる。ディスプレイを押した操作を振動のフィードバックによって感知する方法は、視覚ディスプレイの視認パターンが変化したことを見て確認する方法よりも確実で高速な操作が可能である。

【0036】
カバーシートの下側に前述したユニット素子を配列する方法とは別に、カバーシートが設けられる平面内に、ゲルシートを厚さ方向に挟んで陽極と陰極とを交互に積層した構成としたアクチュエータ素子を、縦横に離散的な配置(マトリックス状)として組み込み、複数個のアクチュエータ素子が配置されている範囲を、それぞれ別個の駆動単位(振動を生じさせる単位)とし、駆動単位ごとに印加電圧を作用させるように電気的接続(配線)を設けることで、駆動単位ごとに振動をフィードバックする触覚デバイスを構築することができる。

【0037】
触覚デバイスは、操作者が、カバーシートに触れた際に、もしくはカバーシートを設けない場合には触覚デバイスのユニット素子にに触れた際に、操作者に対し振動がフィードバックする(作用する)ように制御する。触覚デバイスにより特定の触覚パターンを呈示する方法としては、触覚デバイスのユニット素子の振動(突出入)を制御部で制御することにより点字等の特定のパターンを能動的に呈示する方法も可能であるし、カバーシートやユニット素子に触れたことを制御部で検知し、検知結果に基づいてユニット素子を振動させ、接触状態を呈示する(フィードバックする)という方法も可能である。また、場合によってはユニット素子に指等が近づいたことを検知して、ユニット素子を振動させるように制御部で制御することも可能である。

【0038】
指等がユニット素子を接触したことを検知する方法としては、カバーシートに指等が接触したことを検知する導体パターンを形成するといった方法や、ゲルアクチュエータは荷重をセンシングする機能を備えているから、操作者がカバーシートに触れたことをゲルアクチュエータで検知し、操作者に振動をフィードバックするように制御することも可能である。ゲルアクチュエータが荷重をセンシングする機能は、陽極と陰極との間に電圧を作用させるとゲルシートが厚さ方向に収縮する作用の逆作用による(特開2014-032162)。

【0039】
なお、前述した実施例ではカバーシート42でユニット素子20を被覆する配置としているが、用途によってはカバーシートを設けずにユニット素子20のみを所定配列で配置して触覚デバイスとして構成することも可能である。
本発明に係る触覚デバイスは駆動源としてゲルアクチュエータを使用しているから、低電圧での駆動が可能で、小型軽量化ができ、微細構造に形成することができ、駆動音がなく耐久性に優れるという利点がある。また、ゲルシートは透明であることから視覚ディスプレイに組み込んで使用することが可能であるといった利点を備える。
【符号の説明】
【0040】
10 陽極
12a、12b ゲルシート
14a、14b 陰極
20 ユニット素子
22 ケース
22a 上蓋
22b 透孔
22c 下蓋
24 作用部材
24a 凸部
26 スライド板
30 アクチュエータ素子
32 ゲルシート
34 陽極
36 陰極
40 触覚デバイス
42 カバーシート
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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