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明細書 :形状保存可変剛性機構モジュールおよび形状保存可変剛性シート

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-210556 (P2019-210556A)
公開日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明の名称または考案の名称 形状保存可変剛性機構モジュールおよび形状保存可変剛性シート
国際特許分類 A41D  13/00        (2006.01)
FI A41D 13/00 102
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2018-104742 (P2018-104742)
出願日 平成30年5月31日(2018.5.31)
発明者または考案者 【氏名】岩本 憲泰
【氏名】西川 敦
【氏名】永谷 俊成
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 3B011
Fターム 3B011AB01
3B011AB18
3B011AC00
要約 【課題】任意の曲面に適応可能であり、状態の高速な切り替えができ、しかも剛性を維持するためのエネルギー消費を極力抑えることができる形状保存可変剛性機構モジュールおよび形状保存可変剛性シートを提供する。
【解決手段】摩擦面を有する第1のロック部材と、前記第1の摩擦面と接する摩擦面を有す第2のロック部材と、第1の安定状態と第2の安定状態を有する双安定弾性部材と、前記第1の安定状態と第2の安定状態を切り替えるアクチュエータとを備え、前記第1の安定状態のときに前記第1のロック部材と前記第2のロック部材が最大の摩擦力で接する位置に前記双安定弾性部材を設けた、形状保存可変剛性機構モジュール。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
摩擦面を有する第1のロック部材と、
前記第1の摩擦面と接する摩擦面を有す第2のロック部材と、
第1の安定状態と第2の安定状態を有する双安定弾性部材と、
前記第1の安定状態と第2の安定状態を切り替えるアクチュエータとを備え、
前記第1の安定状態のときに前記第1のロック部材と前記第2のロック部材が最大の摩擦力で接する位置に前記双安定弾性部材を設けた、形状保存可変剛性機構モジュール。
【請求項2】
前記双安定弾性部材は湾曲した状態の帯状弾性体とこれを保持するフレームより成ることを特徴とする、請求項1記載の形状保存可変剛性機構モジュール。
【請求項3】
前記第1のロック部材および前記第2のロック部材における摩擦面には鋸歯状の凹凸を設けたことを特徴とする請求項1記載の形状保存可変剛性機構モジュール。
【請求項4】
前記第1の安定状態と前記第2の安定状態を所定の比率で切り替える信号を前記アクチュエータに供給するドライバをさらに備えた請求項1から3の何れかに記載の形状保存可変剛性機構モジュール。
【請求項5】
請求項1記載の形状保存可変剛性機構モジュールを単数または複数、弾性フレームの片面または両面に設け、しかも各形状保存可変剛性機構モジュールの第1のロック部材と第2のロック部材のそれぞれの自由端を前記弾性フレームに固定したことを特徴とする、形状保存可変剛性シート。
【請求項6】
前記弾性フレームは予め波型に形成されていることを特徴とする、請求項5記載の形状保存可変剛性シート。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、形状が自在に変えられ、さらに任意の形状において所定の剛性を保持できる形状保存可変剛性機構モジュールおよび形状保存可変剛性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
長時間の立位姿勢や上体を中途半端にかがませた姿勢は、常に大きな負荷ではないにもかかわらず慢性腰痛を引き起こす原因となることが知られている。これらの姿勢は手術や飲食店業務における食器洗浄や調理作業といったように様々な産業において要求される。
【0003】
一方、近年重要視されている介護や運送、農業のような重労働においては、大型のアクチュエータを用いたアシストロボットが利用されるようになってきている。しかし、このようなアシストロボットは前記のような軽労働においては過剰な装備となるだけでなく、軽労働に必要とされる俊敏な動作が阻害されるため、そのまま利用することはできない。そこで、近年、例えば腰回りにコルセットのように装着でき、しかも人体の動作や姿勢に応じてその剛性が変えられる可変剛性シートが提案されている(特許文献1)。
【0004】
面状可変剛性シートの例としては、例えば静電効果を利用したもの(非特許文献1)、低融点合金とヒーターをゴム素材中にパッキングし、ヒーターの稼働により柔らかい状態と硬い状態を切り替えるもの(非特許文献2)がある。さらに近年特に注目されているものとして、不定形状の可変剛性機構モジュールにジャミング転移現象を応用したデバイス(非特許文献3)がある。このデバイスは粒子間の摩擦またはシート間の摩擦を利用したものであり、空気圧(負圧)により摩擦をコントロールし、広い範囲で疑似的に剛性を変化させることができるものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2014-50490号公報
【0006】

【非特許文献1】Hiroya Imamura,Kevin Kadooka,Minoru Taya,“A Variable Stiffness Dielectric Elastomer Actuator based on Electrostatic Chucking”, Soft Matter, issue13, pp.3440-3448,2017.
【非特許文献2】Wanliang Shan,Carmel Majidi,“Rigidity Tunable Multifunctional Composites for Soft Robotics”, 20th International Conference on Composite Materials, 2015.
【非特許文献3】Eric Brown,Nicholas Rodenberg,John Amend, Annan Mozeika, Erik Steltz, Mitchell R.Zakin, Hod Lipson, Heinrich M.Jaeger, “Universal Robotic Gripper based on the Jamming of Granular Material”, PNAS, vol.107, no.44, pp.18809-18814,2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1の技術は静電気を用いるため保持力が弱く、また、非特許文献2の技術は熱による素性の変化を利用しているため、軟から剛または剛から軟といった状態の切り替えには時間を要し(60秒以上)、さらに剛性(軟性)の維持にヒーターの稼働によるエネルギーの消費が必要となる。非特許文献3の技術は、剛性変化の応答性は速いものの、真空ポンプや真空タンクといった大型の装置を別途必要とするため、全体として軽作業には不向きである。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、任意の曲面に適応可能であり、状態の高速な切り替えができ、しかも剛性を維持するためのエネルギー消費を極力抑えることができる形状保存可変剛性機構モジュールおよび形状保存可変剛性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る形状保存可変剛性機構モジュールは、摩擦面を有する第1のロック部材と、前記第1の摩擦面と接する摩擦面を有す第2のロック部材と、第1の安定状態と第2の安定状態を有する双安定弾性部材と、前記第1の安定状態と第2の安定状態を切り替えるアクチュエータとを備え、前記第1の安定状態のときに前記第1のロック部材と前記第2のロック部材が最大の摩擦力で接する位置に前記双安定弾性部材を設けた。
【0010】
前記双安定弾性部材は湾曲した状態の帯状弾性体とこれを保持するフレームより成るものであってもよい。
【0011】
前記第1のロック部材および前記第2のロック部材における摩擦面には鋸歯状の凹凸を設けてもよい。
【0012】
前記第1の安定状態と前記第2の安定状態を所定の比率で切り替える信号を前記アクチュエータに供給するドライバをさらに備えてもよい。
【0013】
本開示の一態様に係る形状保存可変剛性シートは、前記形状保存可変剛性機構モジュールを単数または複数、弾性フレームの片面または両面に設け、しかも各形状保存可変剛性機構モジュールの第1のロック部材と第2のロック部材のそれぞれの自由端を前記弾性フレームに固定してもよい。
【0014】
前記弾性フレームは予め波型に形成されていてもよい
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、第1のロック部材と第2のロック部材の間の摩擦が前記第1の安定状態で最大となり、前記第2の安定状態で最小となる。すなわち外力に対する負荷を切り替えることができ、この作用により可変剛性を作り出すことができる。これらの2つの状態は双安定弾性部材の安定点に相当するため、状態を維持するのにエネルギーを要しない。
【0016】
さらにドライバによって第1と第2の安定状態を高速に切り替えることにより中間の摩擦(剛性)の状態を実現することが可能となる。このときエネルギーは消費されるが、前記2つの安定状態の切り替え時に限られる。
【0017】
さらに前記形状保存可変剛性機構モジュールを前記第1のロック部材と前記第2のロック部材を介して弾性フレームに固定することにより、剛性が任意に変えられる形状保存可変剛性シートを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本開示の一態様における形状保存可変剛性シートの概略図
【図2】本開示の一態様における状態切替え信号波形図
【図3】本開示の実施例1における形状保存可変剛性機構モジュールの要部構成図
【図4】本開示の実施例1における形状保存可変剛性機構モジュールの外観写真
【図5】本開示の実施例2における形状保存可変剛性シートの概略図
【図6】本開示の実施例2における形状保存可変剛性シートの動作説明図
【図7】本開示の実施例3における形状保存可変剛性シートの概念図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。

【0020】
図1に本開示の一態様に係る実施の形態(以下、本実施形態)における形状保存可変剛性シートの概念図を示す。図1において、1は弾性フレームであり、図示されるように波型構造を有している。波型構造は図では矩形状で示されているが、シートの曲げに応じて台形状となる。弾性フレーム1の素材は樹脂であってもゴムであってもよい。2は可変剛性機構モジュールであり、21、22はそれぞれロック部である。

【0021】
可変剛性機構モジュール2において、ロック部21、22はそれぞれ摩擦面を有し、双安定弾性部材により両者間の摩擦力が切り替えられる。すなわち、双安定弾性部材が第1の安定状態(状態1)にあるときは最大の摩擦力が発生し、第2の安定状態(状態2)にあるとき、摩擦力は最小となる。このとき摩擦力は無視できる程度であってもよい。摩擦力が無視できる場合、可変剛性シート全体の弾性は弾性フレーム1固有の弾性と等しくなる。なお、双安定弾性部材は後述の実施例1のように湾曲した帯状弾性体を用いて形成されてもよいし、永久磁石の反発力を利用したものであってもよい。

【0022】
3はドライバであり、図2に示されるような状態切替え信号Xを可変剛性機構モジュール2に送信する。可変剛性機構モジュール2に内蔵されたアクチュエータ203は状態切替え信号Xに応じて、図2上段のように、X>0のパルスで双安定弾性部材を状態2から状態1に切り替え、X<0のパルスで状態1から状態2に切り替える。その結果、双安定弾性部材の状態は図2下段のようにPWMパルス状に変化する。このようにしてロック部21、22間の摩擦力、または摩擦力が働く時間をこのPWMパルスのデューティー比に応じて連続的に変化させることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本開示の実施例について図面を用いながら説明する。
(実施例1)
本実施例では可変剛性機構モジュール2の具体的構成と動作について説明する。図3に本実施例における可変剛性機構モジュール2の要部構成図を示す。図3において、双安定弾性部材はフレーム201とその内部に湾曲状態で保持された帯状弾性体202を有する。帯状弾性体202は好ましくは板バネより成る。帯状弾性体202の一端はフレーム201で支持され、他端はアクチュエータ203によって駆動されるアーム204に固定されている。また、ロック部21、22には、両者が接したときに最大の摩擦力が生じるように、鋸歯状の溝より成る摩擦面が設けられている。
【実施例】
【0024】
図3において(a)は状態2の場合を表している。すなわちロック部21、22は互いに接することなく(互いに摩擦を受けることなく)相対的に変位できる状態にある。この状態では、アーム204は紙面右側に倒れており、帯状弾性体202は右側に湾曲している。
【実施例】
【0025】
ここでドライバ3から供給される状態切替え信号Xに応じてアクチュエータ203がアーム204を紙面左側に倒すと、帯状弾性体202の下端に曲げの力が加わり、下の方から紙面左側に湾曲を始め、最終的に帯状弾性体202はすべて紙面左側に湾曲するように弾性変形して安定する(図3(b))。この状態はすなわち状態1に他ならない。なお、フレーム201は、帯状弾性体202の右湾曲から左湾曲あるいは左湾曲から右湾曲への変形に対して自由度を持つように、帯状弾性体202の一端(上端)を支持しているものとする。
【実施例】
【0026】
状態1においては、帯状弾性体202は紙面左側に湾曲して安定するが、同時にロック部21、22が接する摩擦面を弾性力でもって押し当てる。するとロック部21、22の間には最大の摩擦力が発生する。ここで、帯状弾性体202が状態1の状態で一旦安定すると、この安定状態を維持するためにエネルギーは一切不要である。状態1における摩擦力が十分に大きければ、一旦維持された状態は多少の外力によっては変形しない。よって、本実施例における可変剛性機構モジュール2は形状保存機能も有しているといえる。
【実施例】
【0027】
図4に実際に試作した可変剛性機構モジュール2(アクチュエータを除く)の外観写真を示す。鋸歯状の摩擦面が設けられた2つのロック部はそれぞれコの字型のガイドに固定され、変位(伸縮)が一軸方向に制限されている。また、これらのガイドはその外側に設けられた円弧状の弾性体により、緩く弾性保持されている。
【実施例】
【0028】
なお、本実施例では、ロック部21、22は一軸方向(X方向)に伸縮変位する構成としたが、2軸方向(X-Y面内)に自由度を持つものであってもよい。このときの双安定弾性部材は、状態1において、Z方向にロック部21、22の摩擦面を押し付けるようなものであってもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本開示の他の実施例について説明する。
(実施例2)
本実施例は、複数の可変剛性機構モジュール2を用いて可変剛性シートを実現するものである。図5において、1は弾性フレームであり、予め台形波型形状に形成されている。素材は樹脂であってもゴムであってもよい。可変剛性機構モジュール2は、それぞれが台形の中に納まるように、弾性フレーム1の(両面)表面と裏面にそれぞれのロック部(図中横線で表示)を介して交互に連結されている。
【実施例】
【0030】
以上のように構成された可変剛性シートに対して、紙面内で曲げ力を加えた場合、可変剛性シートは全体として湾曲するが、その剛性は可変剛性機構モジュール2の状態によって大きく変わる。すなわち、摩擦が最大のとき、各可変剛性機構モジュール2は弾性フレーム1の変形を抑える梁として作用する。逆に摩擦が最小、好ましくはゼロであるとき、弾性フレーム1は自身の弾性に応じて変形する。ドライバ3から可変剛性機構モジュール2に状態切替え信号Xを送り、双安定弾性部材をPWM動作させた場合、その中間の剛性が得られる。
【実施例】
【0031】
全ての可変剛性機構モジュール2の摩擦をゼロと設定したときの可変剛性シートに対し、紙面上左端に1Nの力を加えたときのシミュレーションの結果を図6に示す。このとき可変剛性シートは弾性フレーム1単体とほぼ同等の特性を示す。シミュレーションはAutoCAD専用のFEM解析ソフトAutoFEMを用いて行った。なお弾性フレーム1の材質はポリカーボネートとした。図6より、弾性フレーム1全体が大きく変形していても、可変剛性機構モジュール2の各々が対応する変位量は微小なものであることがわかる。
【実施例】
【0032】
(実施例3)
本実施例では、弾性フレームと可変剛性機構モジュール2を用いて、平面形状の可変剛性シートを実現する例について説明する。図7において、弾性フレーム1は奥行方向に拡がりを有しており、表面と裏面にそれぞれ台形状の溝を有するように成型されている。各溝には複数の可変剛性機構モジュール2が一列に埋め込まれる。それぞれの可変剛性機構モジュール2はロック部(図示せず)を介して弾性フレーム1の表面または裏面と結合している。
【実施例】
【0033】
以上の構成により、本実施例における可変剛性シートは、図中A、B、Cで示される方向の剛性を制御することができるようになる。しかも変形した状態で摩擦が最大になる状態にロックすれば、その形状を維持することができる。すなわち可変剛性のみならず形状保存も実現することができる。
【実施例】
【0034】
以上、本開示の一態様に係る実施の形態について説明した。なお、本実施形態において、弾性フレーム1に埋め込まれた可変剛性機構モジュール2に状態切替え信号Xを供給する手段については特に説明しなかったが、ドライバ3は可変剛性機構モジュール2の中に組み込まれても、可変剛性シートの外部から供給されるものであってもよい。また、通電のためのケーブルは、弾性フレーム1の中に埋め込まれていてもよい。
【実施例】
【0035】
また、本発明においては、状態切替え時以外は給電する必要がないことから、すべての可変剛性機構モジュール2に対し同時に状態切替え信号Xを供給する必要はなく、いわゆるタイムシェアリングの手法を用いて、順番に送電するものであってもよい。
【実施例】
【0036】
さらに、本実施の形態においては、最大摩擦と最小摩擦の間に剛性を設定する場合、状態1と状態2とをPWMで切り替える技術を示したが、時間軸での変調に代えて、または時間軸での変調と合わせて、空間的な変調を行うものであってもよい。例えば、複数の可変剛性機構モジュールを1セットとし、1セット中状態1のモジュールと状態2のモジュールの比を変えることで剛性を調整してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、少ないエネルギー消費で広範囲にかつ迅速に剛性を変化させ、さらにエネルギーを供給し続けることなく形状を保存することができることから、軽作業用の動的サポーターに、あるいはスマートスーツに利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6