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明細書 :金属元素の分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6693647号 (P6693647)
公開番号 特開2017-095774 (P2017-095774A)
登録日 令和2年4月20日(2020.4.20)
発行日 令和2年5月13日(2020.5.13)
公開日 平成29年6月1日(2017.6.1)
発明の名称または考案の名称 金属元素の分離方法
国際特許分類 C22B   3/26        (2006.01)
C22B  11/00        (2006.01)
C22B  13/00        (2006.01)
C22B  15/00        (2006.01)
C22B  17/00        (2006.01)
C22B  23/00        (2006.01)
C22B  34/12        (2006.01)
C22B  34/14        (2006.01)
C22B  34/22        (2006.01)
C22B  34/24        (2006.01)
C22B  34/34        (2006.01)
C22B  34/36        (2006.01)
C22B  43/00        (2006.01)
C22B  58/00        (2006.01)
C22B  59/00        (2006.01)
C22B  61/00        (2006.01)
C02F   1/26        (2006.01)
B01D  11/04        (2006.01)
FI C22B 3/26
C22B 11/00 101
C22B 13/00 101
C22B 15/00 105
C22B 17/00 101
C22B 23/00 102
C22B 34/12
C22B 34/14
C22B 34/22
C22B 34/24
C22B 34/34
C22B 34/36
C22B 43/00
C22B 58/00
C22B 59/00
C22B 61/00
C02F 1/26 C
B01D 11/04 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 24
出願番号 特願2015-229968 (P2015-229968)
出願日 平成27年11月25日(2015.11.25)
審査請求日 平成30年10月25日(2018.10.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】下条 晃司郎
【氏名】長縄 弘親
【氏名】岡村 浩之
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100131392、【弁理士】、【氏名又は名称】丹羽 武司
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査官 【審査官】祢屋 健太郎
参考文献・文献 特開2017-095407(JP,A)
特開2014-205900(JP,A)
特開2013-202460(JP,A)
特開2013-189675(JP,A)
特開2013-216967(JP,A)
特開2014-037607(JP,A)
特開2014-181355(JP,A)
国際公開第2005/083131(WO,A1)
特開2010-101641(JP,A)
調査した分野 C22B 23/00
特許請求の範囲 【請求項1】
抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を準備する準備工程、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象の金属元素を抽出し、非抽出対象の金属元素と分離する液液接触工程を含む、金属元素の分離方法。
【化1】
JP0006693647B2_000014t.gif
(式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8~64である。)
【請求項2】
前記準備工程で準備した水溶液のpHが、6.5以下である、請求項1に記載の金属元素の分離方法。
【請求項3】
前記抽出対象の金属元素が、スカンジウム元素(Sc)、ニッケル元素(Ni)、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)、金元素(Au)、鉄元素(Fe)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)、鉛元素(Pb)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、及びレニウム元素(Re)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、請求項1又は2に記載の金属元素の分離方法。
【請求項4】
前記非抽出対象の金属元素が、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、イットリウム元素(Y)、ランタノイド元素、アルミニウム元素(Al)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、鉄元素(Fe)、亜鉛元素(Zn)、及び銀元素(Ag)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、請求項1又は2に記載の金属元素の分離方法。
【請求項5】
前記非抽出対象の金属元素が、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、イットリウム元素(Y)、ランタノイド元素、アルミニウム元素(Al)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、亜鉛元素(Zn)、及び銀元素(Ag)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、請求項1~3の何れか1項に記載の金属元素の分離方法。
【請求項6】
さらに前記液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程、及び前記分液工程で分液した有機溶媒に、前記分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させる逆抽出工程を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の金属元素の分離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属元素の分離方法に関し、より詳しくは複数種類の金属元素を含む溶液から特定の金属元素を効率的に分離することができる金属元素の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レアメタルや貴金属といった有価金属は、幅広い産業分野で利用されており、資源に乏しい我が国にとって、有価金属を安定的に確保することは非常に重要である。
有価金属を分離・回収・精製する方法としては、溶媒抽出法が主に利用されており、溶媒抽出法においてはリン酸系抽出剤、カルボン酸系抽出剤、オキシム系抽出剤といった工業用抽出剤が利用されている。代表的なリン酸系抽出剤としては、ホスホン酸エステルであるジ(2-エチルヘキシル)リン酸やその類似体である2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステルが、カルボン酸系抽出剤としては、ネオデカン酸が、オキシム系抽出剤としては、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシムや5,8-ジエチル-7-ヒドロキシ-6-ドデカオキシムが知られている。
【0003】
ジ(2-エチルヘキシル)リン酸や2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステルは、有価金属に対する抽出分離能が十分とは言い難く、例えばニッケルイオンを中性付近の高pH条件下でしか抽出することができない問題がある。また、リン原子を含んでいるため、工業的に使用する際は排水中に移行する抽出剤やその劣化物が公共用水域を汚染する可能性があるため、廃水処理が必要となる。
2-メチル-2-エチル-1-ヘプタン酸は中性以上のpH条件下でしか抽出が進まないため、リン酸系抽出剤と比べれば抽出能が著しく劣る。
2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシムもまた有価金属に対する抽出分離能が十分ではなく、例えばニッケルイオンを中性付近の高pH条件下でしか抽出することができない。また、抽出速度が遅く、定量的な抽出には時間を要することとなる。
【0004】
さらに本発明者は、以前、ジグリコールアミド酸の骨格を持つ2-(2-(ジオクチルアミノ)-2-オキソエトキシ)酢酸(以下、「DODGAA」と略す場合がある。)を抽出剤として開発した。しかし、この抽出剤はランタノイドの抽出分離能に優れているものの、その他の有価金属に対しては抽出分離能が十分ではないものと言える(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】H. Naganawa et al., Solvent Extr. Res. Dev., Jpn, 2007, 14, 151-159.
【非特許文献2】K. Shimojo et al., Anal. Sci., 2014, 30, 513-517.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数種類の金属元素を含む溶液から特定の金属元素を効率的に分離することができる金属元素の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のニトリロ酢酸ジアセトアミド化合物又はその塩の存在下で抽出を行うことにより、特定の金属元素を効率的に分離することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を準備する準備工程、
並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象の金属元素を抽出し、非抽出対象の金属元素と分離する液液接触工程を含む、金属元素の分離方法。
【化1】
JP0006693647B2_000002t.gif
(式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8~64である。)
<2>前記準備工程で準備した水溶液のpHが、6.5以下である、<1>に記載の金属元素の分離方法。
<3> 前記抽出対象の金属元素が、スカンジウム元素(Sc)、ニッケル元素(Ni)
、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)、金元素(Au)、鉄元素(Fe)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)、鉛元素(Pb)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、及びレニウム元素(Re)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、<1>又は<2>に記載の金属元素の分離方法。
<4> 前記非抽出対象の金属元素が、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、イッ
トリウム元素(Y)、ランタノイド元素、アルミニウム元素(Al)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、鉄元素(Fe)、亜鉛元素(Zn)、及び銀元素(Ag)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、<1>又は<2>に記載の金属元素の分離方法。
<5> 前記非抽出対象の金属元素が、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、イッ
トリウム元素(Y)、ランタノイド元素、アルミニウム元素(Al)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、亜鉛元素(Zn)、及び銀元素(Ag)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、<1>~<3>の何れかに記載の金属元素の分離方法。
<6> さらに前記液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程、及
び前記分液工程で分液した有機溶媒に、前記分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させる逆抽出工程をさらに含む、<1>~<5>の何れかに記載の金属元素の分離方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数種類の金属元素を含む溶液から特定の金属元素を効率的に分離することができる金属元素の分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】合成例1で合成されたテトラオクチルニトリロ酢酸ジアセトアミド(TONTADA)のH NMRスペクトルを示した図である。
【図2】TONTADAを用いたSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図3】ジオクチルジグリコールアミド酸(DODGAA)を用いたSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図4】TONTADAを用いたSc、Fe、Zn、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、Kの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図5】DODGAAを用いたSc、Fe、Zn、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、Kの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図6】TONTADAを用いたCu、Ni、Co、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、Kの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図7】DODGAAを用いたCu、Ni、Co、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、Kの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図8】2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル(PC-88A)を用いたCu、Ni、Co、Mn、Crの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図9】ジ(2-エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA)を用いたCu、Ni、Co、Mn、Crの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図10】TONTADAを用いたIn、Ga、Al、Znの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である(硝酸水溶液)。
【図11】TONTADAを用いたInとGaの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である(塩酸水溶液)。
【図12】DODGAAを用いたIn、Ga、Al、Znの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図13】TONTADAを用いたHg、Pb、Cdの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図14】DODGAAを用いたHg、Pb、Cdの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図15】TONTADAを用いたFe、Y、La、Eu、Lu、Co、Niの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図16】TONTADAを用いたRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図17】DODGAAを用いたRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図18】TONTADAを用いたTi、Zr、Hfの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図19】DODGAAを用いたTi、Zr、Hfの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図20】TONTADAを用いたV、Nb、Taの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図21】DODGAAを用いたV、Nb、Taの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図22】TONTADAを用いたMo、W、Reの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図23】DODGAAを用いたMo、W、Reの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。

【0011】
<金属元素の分離方法>
本発明の一態様である金属元素の分離方法(以下、「本発明の分離方法」と略す場合がある。)は、抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を準備する準備工程(以下、「準備工程」と略す場合がある。)、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象の金属元素を抽出し、非抽出対象の金属元素と分離する液液接触工程(以下、「液液接触工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
【化2】
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(式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8~64である。)
本発明者らは、金属元素の分離方法について鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下で抽出を行うことにより、複数種類の金属元素を含む溶液から特定の金属元素を効率的に分離することができることを見出したのである。
一般式(1)で表される化合物は、ニトリロ三酢酸の2つのカルボキシル基がジアルキルアミンによってアミド化された構造となっているが、構造内に含まれる第三級アミノ基、アミド基、及びカルボキシル基が、金属元素との結合に非常に適しているものと考えられる。そして、水素イオン濃度やアニオン濃度によって、それぞれの金属元素に対する親和性が変化するため、特定の金属元素を選択的に抽出することを可能とし、さらに炭化水素基の炭素数等によって有機溶媒との親和性を制御できるため、溶媒抽出法による分離に利用できるのである。
なお、「その塩」とは、一般式(1)で表される化合物とイオン等によって形成される塩を意味し、塩を形成するためのイオンの種類は特に限定されないものとする。
また、「一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下」とは、通常有機溶媒に一般式(1)で表される化合物又はその塩が存在していることを意味し、予め有機溶媒に含有させていても、或いは水溶液と有機溶媒を接触させるときに別途一般式(1)で表される化合物又はその塩を添加するものであってもよいものとする。
以下、「準備工程」、「液液接触工程」等について、詳細に説明する。

【0012】
準備工程は、抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を準備する工程であるが、準備方法は特に限定されず、抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を入手しても、或いは抽出対象となる金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を自ら調製してもよい。

【0013】
水溶液は、抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含むものであれば、その他については特に限定されないが、通常水溶液は抽出対象となる金属元素の抽出率と非抽出対象となる金属元素の抽出率に差が生じる条件に調製されるものであり、水溶液は酸性水溶液に調製されることが好ましい。
水溶液が酸性水溶液の場合のpHも特に限定されず、抽出対象となる金属元素、目的等に応じて適宜選択されるべきであるが、通常6.5以下、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下である。
例えば、抽出対象の金属元素がスカンジウム元素(Sc)である場合のpHは、通常6.5以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下である。
抽出対象の金属元素がニッケル元素(Ni)である場合のpHは、通常6.5以下、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下である。
また、抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を自ら調製する場合、
その調製方法は特に限定されず、抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液に酸を添加して(pHを調製して)も、或いは抽出対象の金属元素を溶解させるために酸性水溶液としてもよい。
なお、使用する酸の具体的種類は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等の無機酸が挙げられる。塩酸を使用する場合、水溶液は塩化物イオン(Cl)を含み、硫酸を使用する場合、水溶液は硫酸イオン(SO2-)を含み、硝酸を使用する場合、水溶液は硝酸イオン(NO)を含み、リン酸を使用する場合、水溶液はリン酸イオン(PO3-、HPO2-、HPO)を含み、亜リン酸を使用する場合、水溶液は亜リン酸イオン(HPO2-、HPO)を含み、次亜リン酸を使用する場合、水溶液は次亜リン酸イオン(HPO)を含むと表現することができる。

【0014】
液液接触工程は、一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象の金属元素を抽出し、非抽出対象の金属元素と分離する工程であるが、一般式(1)で表される化合物又はその塩の具体的種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【化3】
JP0006693647B2_000004t.gif
(式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8~64である。)
、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表しているが、「炭化水素基」とは、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素-炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。
、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計は、8~64であるが、好ましくは16以上、より好ましくは24以上であり、好ましくは56以下、より好ましくは48以下である。
、R、R、及びRの炭化水素基のそれぞれの炭素数は、通常2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、通常16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
、R、R、Rとしては、エチル基(-C)、n-プロピル基(-)、i-プロピル基(-)、n-ブチル基(-)、t-ブチル基(-)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13)、n-ヘプチル基(-15)、n-オクチル基(-17)、2-エチルヘキシル基(-CHCH(C)C)、n-ノニル基(-19)、n-デシル基(-1021)、n-ウンデシル基(-1123)、n-ドデシル基(-1225)、n-トリデシル基(-1327)、n-テトラデシル基(-1429)、n-ペンタデシル基(-1531)、n-ヘキサデシル基(-1633)、シクロヘキシル基(-11)、フェニル基(-C)、ナフチル基(-C10)等が挙げられる。この中でも、n-ヘキシル基(-13)、n-オクチル基(-17)、2-ジエチルヘキシル基(-CHCH(C)C)、n-デシル基(-1021)、n-ドデシル基(-1225)等が特に好ましい。

【0015】
一般式(1)で表される化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化4】
JP0006693647B2_000005t.gif
また、一般式(1)で表される化合物から形成される塩の種類としては、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。

【0016】
一般式(1)で表される化合物又はその塩の製造方法は、特に限定されず、公知の有機合成法を適宜組み合わせて製造することができるが、下記(i)~(iii)の工程を含む製造方法が挙げられる。
(i)2-ハロゲン化アセチルハライドに対するジアルキルアミンの求核置換反応によって、2-ハロゲノ-N,N-ジアルキルアセトアミドを得る工程。
【化5】
JP0006693647B2_000006t.gif
(ii)2-ハロゲノ-N,N-ジアルキルアセトアミドに対するイミノジ酢酸の求核置換反応によって、ニトリロ三酢酸誘導体を得る工程。
【化6】
JP0006693647B2_000007t.gif
(iii)ニトリロ三酢酸誘導体の1つのカルボキシル基をジアルキルアミンでアミド化することによって、一般式(1)で表される化合物又はその塩を得る工程。
【化7】
JP0006693647B2_000008t.gif
なお、下記式で表される化合物は、市販されており、適宜入手して一般式(1)に該当する幅広い化合物を製造することができる。
【化8】
JP0006693647B2_000009t.gif

【0017】
液液接触工程の操作手順は、特に限定されず、溶媒抽出法に利用される公知の操作手順を適宜選択することができる。例えば、任意の容器に水溶液と有機溶媒を投入し、振とう機等を用いて水溶液と有機溶媒を十分に混合した後、遠心分離によって相分離させて、分液を行うことが挙げられる。また、容器の代わりに向流抽出装置等の抽出装置や分液漏斗等の公知の抽出装置又は抽出器具を用いることもできる。
また、一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下で水溶液と有機溶媒を接触させる方法は、例えば下記(イ)~(ハ)の方法が挙げられる。
(イ)一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む有機溶媒溶液を、容器内等で水溶液と接触させる方法。
(ロ)一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む水溶液を、容器内等で有機溶媒と接触させる方法。
(ハ)一般式(1)で表される化合物又はその塩と水溶液と有機溶媒をそれぞれ容器等に投入し、接触させる方法。
この中でも、(イ)の方法が特に好ましい。

【0018】
一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用量(存在量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒中の濃度として、通常0.01~1.1mol/Lの範囲であり、好ましくは0.1~0.5mol/Lの範囲である。

【0019】
有機溶媒としては、ケロシン等の石油系溶媒;ヘキサン、イソオクタン、ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;ドデシルアルコール、オクタノール等の高級アルコール系溶媒等を挙げることができる。なお、有機溶媒は、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。

【0020】
接触させる水溶液と有機溶媒の容積比(水溶液/有機溶媒)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、通常1以上である。

【0021】
液液接触工程は、抽出対象の金属元素を抽出し、非抽出対象の金属元素と分離する工程であるが、抽出対象の金属元素、非抽出対象の金属元素の具体的種類は、特に限定されず
、目的に応じて適宜選択することができる。
抽出対象の金属元素としては、
マグネシウム元素(Mg)、カルシウム元素(Ca)、ストロンチウム元素(Sr)、バリウム元素(Ba)等の第2族元素(アルカリ土類金属元素);
スカンジウム元素(Sc)、イットリウム元素(Y)等の第3族元素;
チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)等の第4族元素;
バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)等の第5族元素;
クロム元素(Cr)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)等の第6族元素;
マンガン元素(Mn)、テクネチウム元素(Tc)、レニウム元素(Re)等の第7族元素;
鉄元素(Fe)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)等の第8族元素;
コバルト元素(Co)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)等の第9族元素;
ニッケル元素(Ni)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)等の第10族元素;
銅元素(Cu)、銀元素(Ag)、金元素(Au)等の第11族元素;
亜鉛元素(Zn)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)等の第12族元素;
アルミニウム元素(Al)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、タリウム元素(Tl)等の第13族元素;
ゲルマニウム元素(Ge)、スズ元素(Sn)、鉛元素(Pb)等の第14族元素;
ヒ素元素(As)、アンチモン元素(Sb)、ビスマス元素(Bi)等の第15族元素;
ランタン元素(La)、セリウム元素(Ce)、プラセオジム元素(Pr)、ネオジム元素(Nd)、プロメチウム元素(Pm)、サマリウム元素(Sm)、ユウロピウム元素(Eu)、ガドリニウム元素(Gd)、テルビウム元素(Tb)、ジスプロシウム元素(Dy)、ホルミウム元素(Ho)、エルビウム元素(Er)、ツリウム元素(Tm)、イッテルビウム元素(Yb)、ルテチウム元素(Lu)等のランタノイド;
アクチニウム元素(Ac)、トリウム元素(Th)、プロトアクチニウム元素(Pa)、ウラン元素(U)、ネプツニウム元素(Np)、プルトニウム元素(Pu)、アメリシウム元素(Am)、キュリウム元素(Cm)、バークリウム元素(Bk)、カリホルニウム元素(Cf)、アインスタイニウム元素(Es)、フェルミウム元素(Fm)、メンデレビウム元素(Md)、ノーベリウム元素(No)、ローレンシウム元素(Lr)等のアクチノイド
が挙げられる。
この中でも、スカンジウム元素(Sc)、ニッケル元素(Ni)、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)、金元素(Au)、鉄元素(Fe)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)、鉛元素(Pb)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、及びレニウム元素(Re)等が好ましい。

【0022】
非抽出対象の金属元素としては、
リチウム元素(Li)、ナトリウム元素(Na)、カリウム元素(K)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)等の第1族元素(アルカリ金属元素);
マグネシウム元素(Mg)、カルシウム元素(Ca)、ストロンチウム元素(Sr)、バリウム元素(Ba)等の第2族元素(アルカリ土類金属元素);
スカンジウム元素(Sc)、イットリウム元素(Y)等の第3族元素;
チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)等の第4族元素;
バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)等の第5族元素;
クロム元素(Cr)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)等の第6族元素;
マンガン元素(Mn)、テクネチウム元素(Tc)、レニウム元素(Re)等の第7族元素;
鉄元素(Fe)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)等の第8族元素;
コバルト元素(Co)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)等の第9族元素;
ニッケル元素(Ni)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)等の第10族元素;
銅元素(Cu)、銀元素(Ag)、金元素(Au)等の第11族元素;
亜鉛元素(Zn)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)等の第12族元素;
アルミニウム元素(Al)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、タリウム元素(Tl)等の第13族元素;
ゲルマニウム元素(Ge)、スズ元素(Sn)、鉛元素(Pb)等の第14族元素;
ヒ素元素(As)、アンチモン元素(Sb)、ビスマス元素(Bi)等の第15族元素;
ランタン元素(La)、セリウム元素(Ce)、プラセオジム元素(Pr)、ネオジム元素(Nd)、プロメチウム元素(Pm)、サマリウム元素(Sm)、ユウロピウム元素(Eu)、ガドリニウム元素(Gd)、テルビウム元素(Tb)、ジスプロシウム元素(Dy)、ホルミウム元素(Ho)、エルビウム元素(Er)、ツリウム元素(Tm)、イッテルビウム元素(Yb)、ルテチウム元素(Lu)等のランタノイド;
アクチニウム元素(Ac)、トリウム元素(Th)、プロトアクチニウム元素(Pa)、ウラン元素(U)、ネプツニウム元素(Np)、プルトニウム元素(Pu)、アメリシウム元素(Am)、キュリウム元素(Cm)、バークリウム元素(Bk)、カリホルニウム元素(Cf)、アインスタイニウム元素(Es)、フェルミウム元素(Fm)、メンデレビウム元素(Md)、ノーベリウム元素(No)、ローレンシウム元素(Lr)等のアクチノイド
が挙げられる。
この中でも、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、イットリウム元素(Y)、ランタノイド元素、アルミニウム元素(Al)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、鉄元素(Fe)、亜鉛元素(Zn)、及び銀元素(Ag)等が好ましい。
抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素の組合せとしては、
スカンジウム元素(Sc)とイットリウム元素(Y)、ランタノイド元素;
スカンジウム元素(Sc)とアルミニウム元素(Al)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、鉄元素(Fe)、亜鉛元素(Zn)、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素;
銅元素(Cu)、ニッケル元素(Ni)、コバルト元素(Co)とアルミニウム元素(Al)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素;
インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)とアルミニウム元素(Al)、亜鉛元素(Zn)
が挙げられる。

【0023】
本発明の抽出方法は、前述の準備工程及び液液接触工程を含むものであれば、その他については特に限定されないが、さらに下記の分液工程及び逆抽出工程を含むことが特に好ましい。
・液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程
・分液工程で分液した有機溶媒に、分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させて逆抽出する逆抽出工程

【0024】
分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液は、逆抽出に利用できるものであれば特に限定されないが、酸性水溶液、又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)若しくはチオ尿素等の錯化剤を含む水溶液が好ましい。なお、酸性水溶液の場合、そのpHは、準備工程で準備した酸性水溶液のpHよりも低く調整されていることが好ましく、その水素イオン濃度は0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上である。なお、使用する酸としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等の無機酸が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0026】
<合成例1:テトラオクチルニトリロ酢酸ジアセトアミド(TONTADA)の合成>
下記反応式で表される反応によって、2-クロロ-N,N-ジオクチルアセトアミド(以下、「ClDOAA」と略す場合がある。)を合成した。
【化9】
JP0006693647B2_000010t.gif
ジオクチルアミン25g(101mmol)を100mLの脱水ジクロロメタンに溶解させ、さらにトリエチルアミン10.32g(101mmol)を加えて氷浴で撹拌した。この溶液に脱水ジクロロメタン10mLに溶解させた塩化クロロアセチル14.1g(121mmol)を、氷浴中アルゴン置換の下、ゆっくり滴下した。滴下後、室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応後、0.1mol/L塩酸100mLで3回、超純水100mLで4回分液を行い、回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ過し、エバポレーターにより溶媒を減圧留去した。さらに、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製を行った。溶媒を完全に減圧留去し、黄色粘性液体28.1g(収率:87.5%)を得た。得られた合成物を核磁気共鳴法(NMR)、元素分析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF/MS)を用いて同定したところ、2-クロロ-N,N-ジオクチルアセトアミド(ClDOAA)であることを確認した。
【実施例】
【0027】
下記反応式で表される反応によって、2,2’-(2-(ジオクチルアミノ)-2-オクソエチルアザンジイル)二酢酸(以下、「DONTAMA」と略す場合がある。)を合成した。
【化10】
JP0006693647B2_000011t.gif
水酸化ナトリウム3.3g(80mmol)を超純水250mLに溶解し、さらにイミノジ酢酸10.65g(80mmol)を溶解させた。溶解後、5mol/L水酸化ナト
リウム水溶液を12mL、pH試験紙が青色になるまで加え、さらにエタノール230mLを加えて撹拌した。ClDOAA 12.7g(40mmol)をエタノール20mL に溶解させ、アルゴン置換後、室温で撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下後、85℃で17.5時間還流した。還流中、pHが11程度になるように随時5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、さらに同体積のエタノールを加えた。反応溶液からエバポレーターによりエタノールのみ留去した。残った水溶液をジエチルエーテル100mLで3回分液を行った。得られた水溶液を撹拌しながら3mol/L塩酸30mLを加え、生じた白色沈殿物をろ過により回収した。得られた沈殿物を超純水100mLで2回洗浄し、真空乾燥後、アセトンとヘキサンを用いて再沈殿により精製を行い、白色粉末12.9g(収率:77.8%)を得た。得られた合成物を核磁気共鳴法(NMR)、元素分析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF/MS)を用いて同定したところ、2,2’-(2-(ジオクチルアミノ)-2-オクソエチルアザンジイル)二酢酸(DONTAMA)であることを確認した。
【実施例】
【0028】
下記反応式で表される反応によって、テトラオクチルニトリロ酢酸ジアセトアミド(以下、「TONTADA」と略す場合がある。)を合成した。
【化11】
JP0006693647B2_000012t.gif
合成したDONTAMA 4.35g(10.5mmol)を120mLの脱水ジクロ
ロメタンに懸濁させた。水溶性カルボジイミド(WSC)2.16g (11.04mm
ol)を脱水ジクロロメタン120mLに溶かし、室温で撹拌しながらアルゴン置換の下、ゆっくり滴下し、1時間撹拌を行った。撹拌後、ジオクチルアミン2.72g(11.04mmol)を脱水ジクロロメタン10mLに溶かし、室温で撹拌しながらアルゴン置換の下、ゆっくり滴下した。滴下後、40℃で24時間還流した。反応後、1mol/L塩酸200mLで3回、超純水200mLで4回分液を行い、回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ過し、エバポレーターにより溶媒を減圧留去した。さらに、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒 酢酸エチル)により精製を行った。溶媒を完全に減圧留去し、無色透明液体4.31g(収率:64.3%)を得た。得られた合成物を核磁気共鳴法(NMR)、元素分析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF/MS)を用いて同定したところ、テトラオクチルニトリロ酢酸ジアセトアミド(TONTADA)であることを確認した。なお、図1にH NMRの結果を示す。
H NMR(400MHz,CDCl,25℃): δ0.88(m,12H,CH
),1.28(s,40H,CH(CH),1.52(m,8H,CHCHN),3.10(t,4H,CHN),3.30(t,4H,CHN),3.48(s,2H,NCHCOOH),3.67(s,4H,NCHC=O).
【実施例】
【0029】
<合成例2:ジオクチルジグリコールアミド酸(DODGAA)の合成>
比較として、ジオクチルジグリコールアミド酸(以下、「DODGAA」と略す場合がある。)を準備した。DODGAAは、下記反応式で表される反応によって合成した。なお、DODGAAの合成方法については、本発明者らが既に報告している非特許文献1を参照することができる。
【化12】
JP0006693647B2_000013t.gif
無水ジグリコール酸4.17g(0.036mol)を三角フラスコに入れ、40mLのジクロロメタンに懸濁させた。滴下漏斗にジクロロメタン10mLに溶解させたオクチルアミン7g(0.0284mol)を入れ、氷浴の下、撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下後、室温で一晩撹拌し、溶液が透明になっていることを確認し、反応を終了した。超純水で中性になるまで4回分液を行い、水溶性不純物を除去した。分液後の溶液を硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾過により取り除いた。エバポレーターにより溶媒を減圧留去した後、真空ポンプで完全に溶媒を除去した。ヘキサンで溶液が透明になるまで3回再結晶を行い、凍結乾燥機で完全に乾燥させた。白色粉末。収量9.57g、収率94.2%。得られた合成物は元素分析及びH NMRにより、DODGAAである
ことを確認した。
【実施例】
【0030】
<実施例1:TONTADAを用いた希土類金属からのScの抽出分離>
希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)をそれぞれ0.01mM含んだpH-1.0~4.2の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~4.2の水溶液は2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は1M硝酸又は5M硫酸を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。TONTADAを用いた希土類金属の抽出挙動を図2に示す。
【実施例】
【0031】
<比較例1:DODGAAを用いた希土類金属からのScの抽出分離>
水相のpHを0.7~5.1に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1
-オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図3に示す。
【実施例】
【0032】
(結果)
図2に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、Scのみ他の希土類金属より幅広いpH領域で定量的に抽出され、pH0.4~1.0の範囲でScのみを他の希土類金属から効率良く分離することが可能であった。
一方、図3に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)では軽希土間の分離に有効であるが、Scを他の希土類金属から分離することが困難であった。
【実施例】
【0033】
<実施例2:TONTADAを用いた様々な金属からのScの抽出分離>
Sc、Fe、Zn、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、Kをそれぞれ0.01mM含んだpH-1.0~6.5の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~6.5の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化リチウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MS又は誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)を用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は1M硝酸又は5M硫酸を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MS又はICP-AESを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図4に示す。
【実施例】
【0034】
<比較例2:DODGAAを用いた様々な金属からのScの抽出分離>
水相のpHを1.0~6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1
-オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例2と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図5に示す。
【実施例】
【0035】
(結果)
図4に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、幅広いpH領域でScを定量的に抽出することができ、Zn、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、KからScを効率的に分離できることが確認された。例えば、pH0.4~2.0の範囲でScのみをZn、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、Kから効率良く分離することが可能であった。また、ScとFeの分離においては、pHを調整することによって、Scのみを抽出する多段階の工程を組むことで可能である。
一方、図5に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)ではScを分離できるpH領域が限られており、TONTADAに比べて分離能が劣っていた。
【実施例】
【0036】
<実施例3:TONTADAを用いたCu、Ni、Coの抽出分離>
Cu、Ni、Co、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、Kをそれぞれ0.01mM含んだpH0.6~6.5の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~6.5の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化リチウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MS又はICP-AESを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は1M硝酸を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MS又はICP-AESを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図6に示す。
【実施例】
【0037】
<比較例3:DODGAAを用いたCu、Ni、Coの抽出分離>
水相のpHを1.0~6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1
-オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図7に示す。
【実施例】
【0038】
<比較例4:PC-88A又はD2EHPAを用いたCu、Ni、Coの抽出分離>
Cu、Ni、Co、Mn、Crをそれぞれ0.01mM含んだpH0.8~7.0の水溶液を調製し、抽出剤PC-88A又はD2EHPAをイソオクタンに溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で抽出実験を行った。PC-88Aによる抽出結果を図8、D2EHPAによる抽出結果を図9に示す。
【実施例】
【0039】
(結果)
図6に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、Cu>Ni>Co>Al>Mn>Ca>Cr>Mg>>Na、Kの順番で金属イオンが抽出された。TONTADAはCuをpH1.7以上で98%以上、NiをpH2.8以上で97%以上、CoをpH3.3以上で97%以上抽出することができ、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、KからCu、Ni、Coを効率的に分離できることが確認された。例えば、水溶液のpHを3.0程度に調整して抽出を行えば、Cu、Ni、Coを選択的に抽出し、Al、Mn、Cr、Mg、Ca、Na、Kから分離することができる。また、本発明の抽出剤の抽出特性を利用すれば、pHを調整することによって、Cu、Ni、Coを個別に抽出する多段階の工程を組み、それぞれの成分ごとに分離するプロセスを構築できる。
一方、図7に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)ではCu、Ni、CoをAl、Mn、Cr、Mg、Caから分離することが困難であることが明らかとなった。また、図8、図9に示すように、抽出剤(2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル(PC-88A)、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA))ではCu、Ni、CoをMn、Crから分離することが困難であり、特にNiに対する抽出能が小さいことが分かった。
【実施例】
【0040】
<実施例4:TONTADAを用いたIn、Gaの抽出分離(硝酸系)>
In、Ga、Al、Znをそれぞれ0.01mM含んだpH-0.7~5.8の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~5.8の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は5M硝酸を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図10に示す。
【実施例】
【0041】
<実施例5:TONTADAを用いたIn、Gaの抽出分離(塩酸系)>
InとGaをそれぞれ0.01mM含んだpH-0.7~3.0の水溶液を硝酸の代わりに塩酸を用いて調製し、逆抽出溶液に5M塩酸を用いたこと以外は、実施例4と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図11に示す。
【実施例】
【0042】
<比較例5:DODGAAを用いたIn、Gaの抽出分離>
水相のpHを1.5~6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1
-オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例4と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図12に示す。
【実施例】
【0043】
(結果)
図10に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を硝酸水溶液系で用いることで、In>Ga>Zn>Alの順番で金属イオンが抽出された。TONTADAは幅広いpH領域でIn及びGaを定量的に抽出することができ、Al及びZnからIn及びGaを効率的に分離できることが確認された。また、本発明の抽出剤の抽出特性を利用すれば、pHを調整することによってInとGaの相互分離も可能であるため、In、Ga、Al、Znを含む水溶液からInとGaをそれぞれ個別に分離することも可能である。例
えば、水溶液のpHを0.6程度に調整して抽出を行えば、Inが選択的に抽出される。次にInが抽出された後の水溶液のpHを1.7~2.0程度に調整して抽出を行えば、Gaが選択的に抽出され、抽出されなかったZnとAlが残留し、InとGaがそれぞれ分離できる。同様の考え方から逆抽出の過程でInとGaを分離することも可能である。
また、図11に示すように、水溶液として塩酸を用いてもIn及びGaを定量的に抽出することができ、pHを調整することによってInとGaの相互分離も可能であった。例えば、水溶液のpHを0.4~0.6程度に調整して抽出を行えば、Inが選択的に抽出される。pH-0.3以下ではGaの方がInより抽出されやすくなり、Gaが選択的に抽出される。
一方、図12に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)ではInをAl及びZnから分離することができるが、GaをAl及びZnから分離することが困難であった。また、InとGaの相互分離もTONTADAに比べて劣っていた。
【実施例】
【0044】
<実施例6:TONTADAを用いたHg、Pb、Cdの抽出分離>
Hg、Pb、Cdをそれぞれ0.01mM含んだpH0.0~6.0の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~6.0の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は5M硝酸を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図13に示す。
【実施例】
【0045】
<比較例6:DODGAAを用いたHg、Pb、Cdの抽出分離>
水相のpHを1.0~6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1
-オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例6と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図14に示す。
【実施例】
【0046】
(結果)
図13に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、HgをpH0.0以上で95%以上、PbをpH2.8以上で95%以上、CdをpH3.3以上で97%以上抽出することができ、幅広いpH領域で有害金属であるHg、Pb、Cdを抽出できることが確認された。
一方、図14に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)ではHg、Pb、Cdを抽出できるものの、TONTADAに比べて抽出能が大幅に劣っていた。
【実施例】
【0047】
<実施例7:TONTADAを用いたFeの抽出除去>
Fe、Y、La、Eu、Lu、Co、Niをそれぞれ0.01mM含んだpH-1.0~4.2の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~4.2の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以
上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は5M硝酸を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図15に示す。
【実施例】
【0048】
(結果)
図15に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、FeをpH1.0以上で90%以上抽出することができ、幅広いpH領域でY、La、Eu、Lu、Co、NiからFeを効率的に分離できることが確認された。例えば、水溶液のpHを1.0程度に調整して抽出を行えば、Feを選択的に抽出し、Y、La、Eu、Lu、Co、Niのような有価金属のみを残留させ、分離することができる。
【実施例】
【0049】
<実施例8:TONTADAを用いた貴金属の抽出分離>
Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auをそれぞれ0.01mM含んだpH-0.7~5.5の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~5.5の水溶液は酢酸ナトリウム緩衝液に塩酸を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については塩酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は1M塩酸、1Mチオ尿素水溶液、又は0.2M EDTA水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MSを
用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図16に示す。
【実施例】
【0050】
<比較例7:DODGAAを用いた貴金属の抽出分離>
水相のpHを0.0~6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1
-オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例8と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図17に示す。
【実施例】
【0051】
(結果)
図16に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、Pdの抽出率がpH0.0~5.5の範囲で98%以上、Auの抽出率がpH-0.7~4.6の範囲で95%以上、Osの抽出率がpH-0.7~4.2の範囲で95%以上、Ptの抽出率がpH-0.7~3.7の範囲で95%以上であることが確認された。Irの場合、pH-0.3~2.6の範囲で少なくとも抽出率が40%を超え、特にpH0.5~1.9の範囲で少なくとも抽出率が80%を超えた。Ruの場合、pH0.5~2.1の範囲で少なくとも抽出率が40%を超え、pH0.5~1.5の範囲で少なくとも抽出率が70%を超えた。Rhの場合、pH1.0付近で抽出率が20%に達した。
一方、図17に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)ではRu及びPdの抽出率がpH5.5以上で90%以上であり、また、Auの場合、pH0.0~2.2の範囲で抽出率が40~50%であった。しかし、酸性条件では、どの貴金属も定量的に抽出することが困難であり、TONTADAに比べて著しく抽出能が劣ることが確認された。
【実施例】
【0052】
<実施例9:TONTADAを用いたTi、Zr、Hfの抽出分離>
Ti、Zr、Hfをそれぞれ0.01mM含んだpH0.0~6.0の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~6.0の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は1M硝酸又は0.2M EDTA
水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図18に示す。
【実施例】
【0053】
<比較例8:DODGAAを用いたTi、Zr、Hfの抽出分離>
水相のpHを1.0~6.1に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1
-オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例9と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図19に示す。
【実施例】
【0054】
(結果)
図18に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、Hfの抽出率がpH1.0~5.4の範囲で99%以上であることが確認された。Tiの場合、pH4.1~6.0の範囲で少なくとも抽出率が75%を超え、特にpH4.4~5.2の範囲で少なくとも抽出率が90%を超えた。Zrの場合、pH0.0~2.0の範囲で少なくとも抽出率が30%を超え、pH4.1~6.0の範囲で少なくとも抽出率が90%を超えた。
一方、図19に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)では、Hfの抽出率がpH2.5~5.8の範囲で97%以上、Zrの抽出率がpH5.7で92%に達するが、Tiはほとんど抽出できなかった。また、Ti、Zr、Hfいずれにおいても、TONTADAに比べて抽出能が劣ることが確認された。
【実施例】
【0055】
<実施例10:TONTADAを用いたV、Nb、Taの抽出分離>
V、Nb、Taをそれぞれ0.01mM含んだpH0.0~6.0の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~6.0の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は1M硝酸又は0.2M EDTA
水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図20に示す。
【実施例】
【0056】
<比較例9:DODGAAを用いたV、Nb、Taの抽出分離>
水相のpHを1.0~6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1
-オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例10と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図21に示す。
【実施例】
【0057】
(結果)
図20に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、Vの抽出率がpH0.5~6.0の範囲で40%を超え、特にpH1.6~3.8の範囲で少なくとも抽出率が95%を超えた。Nbの場合、pH0.0~6.0の範囲で少なくとも抽出
率が30%を超え、特にpH4.1~5.2の範囲で少なくとも抽出率が65%を超えた。Taの場合、pH1.0~3.6の範囲で少なくとも抽出率が25%を超え、特にpH1.0~2.9の範囲で少なくとも抽出率が80%を超えた。加えて、pH5.1~6.0の範囲で少なくとも抽出率が50%を超えた。
一方、図21に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)では、Vの抽出率がpH2.5で11%に達するが、Nb及びTaはほとんど抽出できず、V、Nb、Taいずれにおいても、TONTADAに比べて著しく抽出能が劣ることが確認された。
【実施例】
【0058】
<実施例11:TONTADAを用いたMo、W、Reの抽出分離>
Mo、W、Reをそれぞれ0.01mM含んだpH0.0~6.0の水溶液を調製した。このとき、pH1.0~6.0の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM TONTADAを含むイソオクタン溶液
を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP-MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は1M硝酸又は0.2M EDTA
水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP-MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図22に示す。
【実施例】
【0059】
<比較例10:DODGAAを用いたMo、W、Reの抽出分離>
抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1-オクタノール)に溶解した有機相を用
いたこと以外は、実施例11と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図23に示す。
【実施例】
【0060】
(結果)
図22に示すように、合成例1の抽出剤(TONTADA)を用いることで、Moの抽出率がpH1.0~4.9の範囲で94%以上であることが確認された。Wの場合、pH1.0~4.4の範囲で少なくとも抽出率が70%を超え、特にpH2.0~4.1の範囲で少なくとも抽出率が95%を超えた。Reの場合、pH0.0~4.4の範囲で少なくとも抽出率が35%を超え、特にpH1.0~3.0の範囲で少なくとも抽出率が90%を超えた。
一方、図23に示すように、合成例2の抽出剤(DODGAA)では、Mo、W、Reいずれもほとんど抽出できず、TONTADAに比べて著しく抽出能が劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の分離方法は、レアメタルや貴金属等の有価金属や毒性の高い有害金属を抽出分離するための抽出剤として利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14
【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
19
【図21】
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【図22】
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【図23】
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