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明細書 :プラズマ連携切断方法及びその切断装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6815017号 (P6815017)
公開番号 特開2017-144459 (P2017-144459A)
登録日 令和2年12月24日(2020.12.24)
発行日 令和3年1月20日(2021.1.20)
公開日 平成29年8月24日(2017.8.24)
発明の名称または考案の名称 プラズマ連携切断方法及びその切断装置
国際特許分類 B23K  10/00        (2006.01)
H05H   1/44        (2006.01)
G21F   9/30        (2006.01)
FI B23K 10/00 501A
H05H 1/44
G21F 9/30 531J
G21F 9/30 531E
B23K 10/00 502A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 18
出願番号 特願2016-027472 (P2016-027472)
出願日 平成28年2月17日(2016.2.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 日本原子力学会 2015年秋の大会 予稿集(平成27年9月9~11日に静岡大学静岡キャンパスで開催)
審査請求日 平成31年1月11日(2019.1.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】手塚 将志
【氏名】佐野 一哉
【氏名】中村 保之
【氏名】岩井 紘基
個別代理人の代理人 【識別番号】100176164、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 州志
審査官 【審査官】柏原 郁昭
参考文献・文献 特開昭63-002563(JP,A)
特開昭60-012278(JP,A)
特開昭62-174696(JP,A)
特開平08-112674(JP,A)
特開昭61-245970(JP,A)
特開平02-070386(JP,A)
特開2017-035703(JP,A)
調査した分野 B23K 10/00
G21F 9/30
H05H 1/44
特許請求の範囲 【請求項1】
被切断材に向けてプラズマジェット及びプラズマアークをそれぞれ噴射する工程を組み合わせることにより前記被切断材を切断する切断方法であって、
前記被切断材が非導電材と導電材とを有する材料であり、
前記非導電材に前記プラズマジェットを噴射し、前記非導電材の切断しようとする部分の面上切断線に沿って前記切断線の全部又は一部分に溝若しくは孔を形成する工程、及び
前記導電材に対して前記非導電材と接触する側の反対側から前記プラズマアークを噴射する工程、
によって前記導電材の切断とともに、前記プラズマアークの熱を利用して前記非導電材の切断を同時に行うことを特徴とするプラズマ連携切断方法。
【請求項2】
被切断材に向けてプラズマジェット及びプラズマアークをそれぞれ噴射する工程を組み合わせることにより前記被切断材を切断する切断方法であって、
前記被切断材が非導電材と導電材とを有する材料であり、
前記導電材に前記プラズマアークを噴射し、前記導電材の切断とともに、前記導電材の切断部に接する前記非導電材の部分を深さ方向に一部分だけ破砕又は切断を行う工程、及び
前記プラズマアークの噴射によって前記導電材の開口した箇所に対して、前記プラズマアークの噴射に追従するように前記プラズマジェットを噴射し、前記導電材の切断部に接する非導電材の部分において未破砕又は未切断の部分を破砕又は切断する工程、
によって前記被切断材を切断することを特徴とするプラズマ連携切断手法。
【請求項3】
前記導電材の材質が金属又は金属を主成分として含む材料であり、前記非導電材がセラミック又はレンガであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ連携切断方法。
【請求項4】
被切断材に向けてプラズマジェット及びプラズマアークをそれぞれ噴射する工程を組み合わせることにより前記被切断材を切断する切断方法であって、
前記被切断材が導電材であり、
前記プラズマアークの単独噴射で切断可能な切断面と同面で前記切断面の近傍に、又は前記プラズマアークの単独噴射で切断可能な切断面の切断深さ位置の近傍に、前記プラズマジェットの噴射を走行させることにより前記切断面の加熱を先行して行う工程、及び
前記プラズマジェットの噴射の走行に追従するように、前記プラズマアークの噴射を前記被切断材の切断面に沿って走行させることにより前記被切断材を切断する工程、
を有することを特徴とするプラズマ連携切断方法。
【請求項5】
前記被切断材の切断を水中で行う請求項1~4のいずれかに記載のプラズマ連携切断方法。
【請求項6】
被切断材に向けてプラズマジェットの噴射及びプラズマアークの噴射を組合わせることにより前記被切断材を切断する切断装置として、電源装置と、冷却水循環装置と、少なくとも切断時に流動させるプラズマガスの流動調整を行うことができる操作盤と、非導電性の被切断材の破砕若しくは切断を行うため、又は導電性の被接続材に溝若しくは孔の形成を行うためのプラズマジェット用トーチと、導電性の被切断材の切断を行うためのプラズマアーク用トーチと、を備えるプラズマ連携切断装置であって、
前記プラズマ連携切断装置は、前記電源装置及び前記冷却水循環装置をそれぞれ一つだけ備え、前記プラズマジェット用トーチ及び前記プラズマアーク用トーチによるそれぞれの噴射が前記電源装置及び前記冷却水循環装置の切替によって行われることを特徴とするプラズマ連携切断装置。
【請求項7】
前記プラズマジェット用トーチ及び前記プラズマアーク用トーチは、高さ、移動及び回転を制御できる駆動手段をそれぞれ独立して個別に有することを特徴とする請求項6に記載のプラズマ連携切断装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のプラズマ連携切断装置は、さらに被切断材を水中に浸漬するための水槽を備えることを特徴とするプラズマ連携切断装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、導電材と非導電材とが混在する被切断材や厚い導電性の被切断材に対して、プラズマアーク及びプラズマジェットを用いて確実な切断を効率的に行うことができるプラズマ連携切断方法及びその切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマアークを用いるプラズマ切断方法及びその切断装置は広く知られており、切断品質を向上させるために様々なタイプのものが提案されている。例えば、プラズマアーク噴流の指向性あるいは集中性の低下を抑える方法、プラズマアークの被加工材との距離をリアルに制御することによってプラズマアークの安定維持を図る方法、及び切断加工中の最適なときにプラズマアーク電流の停止や遮断を行う方法等である。
【0003】
前記プラズマ切断方法及びその切断装置は、原子力発電設備等の原子力施設で使用していた配管や設備の解体にも適用されている。例えば、特許文献1には、放射線量が大きく水中で切断作業を行う必要がある原子炉の解体において、アーク電圧の変化に基づく被切断部材の板厚の変化を検出し、当該板厚に最適な切断条件となるようにアーク電圧を制御したプラズマアークにより被切断部材を溶断する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、水中に原形のまま貯蔵される使用済制御棒や使用済燃料チェンネルボックスなどの放射化等により高い放射線を出す構造材の解体を行うため、被切断材を入れた水槽の水深を浅くし、水槽内の空間を効率的に使用するための水中切断装置が提案されている。この装置は、高放射性固体廃棄物の切断手段、水平切断手段、又は第1及び第2切断手段として、ウォータージェットを噴射するためのノズル又はプラズマアークを照射するためのトーチを使用するものである。特許文献3にも、同じ高放射性固体廃棄物の解体を行うため、溶極式でプラズマアークを発生し、ウォータージェットを併用して切断時に生成されるドロス等の除去を行う切断装置が提案されている。
【0005】
原子力発電所の炉内には、これらの放射化構造材の他にも、導電材と非導電材とが混在する構造材が多く含まれる場合がある。例えば、導電性のある炉内溶融金属上に非導電性のセラミック状燃料デブリが堆積している場合等である。その場合は、プラズマアークではプラズマ放電が起こせず切断不可となるため、他の切断方法と併用する必要がある。また、放射化構造材にはプラズマアークの切断能力を超えるような厚い導電性鋼材等が含まれる場合もあり、それに対してはプラズマアークだけでは確実な切断を行うことが困難である。
【0006】
従来から、異なる種類の部材を切断する方法としては、例えば、水ジェット切断ヘッドとプラズマ切断ヘッドの両方がキャリッジに支持されて移動可能にした熱カッターおよび非熱カッターを備える切断装置が特許文献4に開示されている。この装置は、水ジェット切断ヘッドを操作してシート状絶縁物を切断し、プラズマ切断ヘッドを操作して金属シートを切断することができる。
【0007】
一方、異なる種類の部材を加工する方法としては、切断方法ではないが、別の材料で表面が被覆された被覆鋼材の溶接方法が特許文献5に提案されている。前記特許文献5に記載の溶接方法は、鋼材とは別の非導電性被覆層をプラズマジェットによって除去し、その後、プラズマアーク溶接を行うものであり、使用するプラズマアーク溶接装置には、プラズマジェット用トーチとプラズマアーク溶接用トーチとが備えられている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2002-1543号公報
【特許文献2】特開平8-285996号公報
【特許文献3】特公平3-49080号公報
【特許文献4】特開2002-144296号公報
【特許文献5】特開2003-266179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記で述べたように、原子力発電設備等の原子力施設で使用していた構造材には、導電材と非導電材とが混在する構造材や従来のプラズマアークだけを用いる方法及びその装置では確実な切断ができない厚い鋼材等が含まれている。また、焼却炉は、装置筐体が金属製であり、内面に耐火材としてレンガが設置されている。そのような原子力施設の廃止措置(炉内溶融金属等の取り出し)や焼却炉の解体等の際に利用する切断方法及び切断装置としては、従来技術に代えて、様々な材料又は形態からなる被切断材に対して臨機応変に対応することができ、且つ、効率的で確実な切断ができるものが強く求められている。これらは、原子力施設や焼却炉だけではなく、ビルや工場等の一般的な建造物や構造物の解体や建造を行うときにも使用できるため、適用範囲の拡大が期待される。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明は、プラズマアークを用いるプラズマ切断方法であり、前記のように導電材と非導電材とが混在する廃棄物や厚い鋼材等の切断には適さない。
【0011】
前記特許文献2及び3に記載の発明は、切断方法としてプラズマアーク若しくはウォータージェット、又はそれらの両者を使用して切断を行うものであるが、被切断部材が使用済制御棒や使用済燃料チェンネルボックス等であるため、導電材と非導電材とが混在する廃棄物や厚い鋼材等の切断に適用できるものであるか否かが不明である。加えて、前記特許文献2及び3には、そのような部材の切断を行うための方法及び装置については開示がまったくされていない。
【0012】
また、前記特許文献4に記載の切断方法及び切断装置は、主に平面上で切断加工を行うことを目差しており、例えば、水平方向だけでなく上下方向の切断加工を行う場合には装置が大掛かりになり、操作性や使い勝手が非常に劣る。さらに、導電材と非導電材とが混在する廃棄物や厚い鋼材等の切断を行うための方法及び装置については開示がまったくされていない。
【0013】
一方、前記特許文献5には、プラズマジェット用トーチとプラズマアーク溶接用トーチを有する装置が開示されているが、この装置は溶接に使用するものであり、切断用としては具体的な方法及び装置がまったく開示されていない。また、プラズマジェットによって除去される被覆鋼板の被覆層は、接着剤により接着された植毛層、カラー塗装層、めっき層又は塗膜である。そのため、前記特許文献5に記載の装置構成をそのまま原子力施設の廃止措置や焼却炉の解体等に適用することは一般的に有り得ない。
【0014】
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、従来から良く知られているプラズマアークを利用するとともに、非導電材の切断を可能にし、且つ、プラズマアークによる切断能力を高めることができる手段を有することにより、例えば、原子力施設の廃止措置や焼却炉の解体等の用途において、様々な材料又は形態からなる被切断材に対して臨機応変に対応でき、且つ、効率的で確実な切断を行うことができるプラズマ連携切断方法及びその切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、非導電材の切断を可能にし、且つ、プラズマアークによる切断を加速する手段としてプラズマジェットによる方法を組み合わせて併用し、プラズマアークとプラズマジェットを連携して切断を行う切断方法の確立及び切断装置の構築を行うことにより、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0016】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、被切断材に向けてプラズマジェット及びプラズマアークをそれぞれ噴射する工程を組み合わせることにより前記被切断材を切断する切断方法であって、前記被切断材が非導電材と導電材とを有する材料であり、前記非導電材に前記プラズマジェットを噴射し、前記非導電材の切断しようとする部分の面上切断線に沿って前記切断線の全部又は一部分に溝若しくは孔を形成する工程、及び、前記導電材に対して前記非導電材と接触する側の反対側から前記プラズマアークを噴射する工程、によって前記導電材の切断とともに、前記プラズマアークの熱を利用して前記非導電材の切断を同時に行うことを特徴とするプラズマ連携切断方法を提供する。
[2]本発明は、被切断材に向けてプラズマジェット及びプラズマアークをそれぞれ噴射する工程を組み合わせることにより前記被切断材を切断する切断方法であって、前記被切断材が非導電材と導電材とを有する材料であり、前記導電材にプラズマアークを噴射し、前記導電材の切断とともに、前記導電材の切断部に接する非導電材の部分を深さ方向に一部分だけ破砕又は切断を行う工程、及び、プラズマアークの噴射によって前記導電材の開口した箇所に対して、前記プラズマアークの噴射に追従するようにプラズマジェットを噴射し、前記導電材の切断部に接する非導電材の部分において未破砕又は未切断の部分を破砕又は切断する工程、によって前記被切断材を切断することを特徴とするプラズマ連携切断手法を提供する。
]本発明は、前記導電材の材質が金属又は金属を主成分として含む材料であり、前記非導電材がセラミック又はレンガであることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のプラズマ連携切断方法を提供する。
]本発明は、被切断材に向けてプラズマジェット及びプラズマアークをそれぞれ噴射する工程を組み合わせることにより前記被切断材を切断する切断方法であって、前記被切断材が導電材であり、前記プラズマアークの単独噴射で切断可能な切断面と同面で前記切断面の近傍に、又は前記プラズマアークの単独噴射で切断可能な切断面の切断深さ位置の近傍に、前記プラズマジェットの噴射を走行させることにより前記切断面の加熱を先行して行う工程、及び前記プラズマジェットの噴射の走行に追従するように、前記プラズマアークの噴射を前記被切断材の切断面に沿って走行させることにより前記被切断材を切断する工程、を有することを特徴とするプラズマ連携切断方法を提供する。
]本発明は、前記被切断材の切断を水中で行う前記[1]~[4]のいずれかに記載のプラズマ連携切断方法を提供する。
[6]本発明は、被切断材に向けてプラズマジェットの噴射及びプラズマアークの噴射を組合わせることにより前記被切断材を切断する切断装置として、電源装置と、冷却水循環装置と、少なくとも切断時に流動させるプラズマガスの流動調整を行うことができる操作盤と、非導電性の被切断材の破砕若しくは切断を行うため、又は導電性の被接続材に溝若しくは孔の形成を行うためのプラズマジェット用トーチと、導電性の被切断材の切断を行うためのプラズマアーク用トーチと、を備えるプラズマ連携切断装置であって、前記プラズマ連携切断装置が、前記電源装置及び前記冷却水循環装置をそれぞれ一つだけ備え、前記プラズマジェット用トーチ及び前記プラズマアーク用トーチによるそれぞれの噴射が前記電源装置及び前記冷却水循環装置の切替によって行われることを特徴とするプラズマ連携切断装置を提供する。
[7]本発明は、前記プラズマジェット用トーチ及び前記プラズマアーク用トーチが、高さ、移動及び回転を制御できる駆動手段をそれぞれ独立して個別に有することを特徴とする前記[6]に記載のプラズマ連携切断装置を提供する。
[8]本発明は、前記[6]又は[7]に記載のプラズマ連携切断装置が、さらに被切断材を水中に浸漬するための水槽を備えることを特徴とするプラズマ連携切断装置を提供する。
[発明の効果]

【発明の効果】
【0017】
本発明のプラズマ連携切断方法は、導電材と非導電材が混在する被切断材、例えば、導電材が非導電材で覆われた状態の被切断材に対して、プラズマアーク及びプラズマジェットを用いて、確実な切断を効率的に行うことができる。本発明の切断装置は、従来のプラズマアーク切断装置の構成を含みながら、プラズマアークでは対応できなかったセラミックやレンガ等の非導電性部材の切断を行うことができるため、切断の技術分野において適用範囲の拡大を図ることができる。
【0018】
また、プラズマアーク切断技術による金属等の導電材を切断する際にも、切断時にプラズマジェットを用いることにより切断対象物である前記導電材を加熱する効果が生まれ、切断能力を向上させることができる。そのため、プラズマアークだけでは切断能力に限界があった被切断材、例えば、厚みのある鋼材等の切断にも適用することができ、適用範囲の拡大を図ることができる。それにより、従来技術よりも高い機能と能力を有する切断方法の確立及び切断装置の構築を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】非導電材によって表面が覆われた導電材を切断するときの本発明の切断方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第1の実施形態で使用する切断装置を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態で使用する切断装置の変形例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態で使用する切断装置の別の変形例を示す図である。
【図5】非導電材と導電材とを有する被切断材を切断するときの本発明の切断方法の別の例を示す工程図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による切断方法の変形例を示す工程図である。
【図7】本発明の第2の実施形態で使用する切断装置を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態で使用する切断装置の変形例を示す図である。
【図9】プラズマアーク切断技術を用いた非導電材の切断方法を参考例として示す工程図である。
【図10】本発明の第3の実施形態による切断方法を示す工程図である。
【図11】本発明の第4の実施形態による切断方法を示す工程図である。
【図12】本発明の第4の実施形態で使用する切断装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
プラズマを利用する切断技術は、プラズマアークとプラズマジェットの2種類があり、プラズマアークは金属等の導電材に対して切断能力が高い反面、原理的に非導電材の切断が不可能である。一方、プラズマジェットは、非導電材の切断が可能であるものの、プラズマアークに比べて切断能力が低い。そこで、本発明の切断方法は、導電材と非導電材が混在する被切断材、例えば、導電材が非導電材で覆われた状態や導電材と非導電材とが貼り合わされた状態の被切断材を容易に切断できるように、被切断材に向けてプラズマジェット及びプラズマアークをそれぞれ噴射する工程を組合わせて被切断材を切断する点に特徴を有する。ここで、プラズマジェットは非導電性被切断材の破砕若しくは切断を行うために使用し、他方、プラズマアークは導電性被切断材の切断を行うために使用する。

【0021】
本発明の切断方法は、それ以外にも、プラズマジェットを導電性被切断材の切断部分近傍に溝若しくは孔の形成を行うために使用する。プラズマジェットによる孔又は溝の形成は、導電性被切断材の切断を目指したものではなく、前記導電性被切断材の切断部分及びその近傍を加熱することによりプラズマアークの切断能力を向上させるのが主な目的である。もともと、プラズマアークの切断能力は切断装置の能力に依存するため、厚い導電性鋼材等の切断を行う場合は切断回数を複数で行う必要がある。その場合、第1回目の切断で導電性鋼材等が酸化されると第2回目以降ではアークが形成されず切断が出来ないという問題が発生する。また、第1回目の切断時に生成されるドロス等が残っていると次の切断作業の邪魔になり、それを除去するため切断作業が煩雑になるだけでなく、切断に長時間を要していた。そのため、本発明において、プラズマジェットを組合わせることにより、プラズマアーク単独では切断能力を超えるような厚い導電性鋼材等を、短時間で容易に切断することが可能になる。

【0022】
また、本発明の切断方法は、被切断材の切断を通常の空気中だけでなく水中でも行うことができるため、特に、放射線量が大きく水中で切断作業を行う必要がある原子炉の解体等に好適である。例えば、原子炉内の構造物の解体で発生する放射化した廃棄物を、貯蔵スペースの確保のために細かく切断する必要がある場合にも本発明の切断方法を適用することができる。

【0023】
以下、本発明による切断方法及び切断装置の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

【0024】
<第1の実施形態>
図1は、非導電材によって表面が覆われた導電材を切断するときの本発明の切断方法を示す工程図の一例である。図1に示す切断方法は、プラズマジェット1による非導電材の切断とプラズマアーク2による導電材の溶断を、プラズマジェット及びプラズマアークの各トーチの取替えを行うことなく連続的に実施するため両トーチを連結した形で溶断、破砕によって切断を進めていくものである。ここで、プラズマジェットによる切断は、非導電材の破砕による掘削に起因している。図1には、非導電材及び導電材の例として、それぞれセラミック3及び金属4の組合せを示している。

【0025】
図1の(a)に示すように、金属4がセラミック3で覆われた非切断材に対して、プラズマジェット1を用いてセラミック3の表層を破砕する。引き続き、セラミック3の層の厚みに応じて下層の金属4が露出するまでプラズマジェット1による破砕を繰り返して行い、セラミック3の層の掘削を繰り返す(図2の(b))。このとき、プラズマジェット及びプラズマアーク用の両トーチが挿入可能な切断幅を確保するように切削を行う。

【0026】
セラミック3の層の切削削除により金属4の層を露出させた後、図1の(c)に示すように、プラズマアーク2を用いて金属4の層の切断を開始する。そして、プラズマアーク2のトーチを金属層の切断長さ方向に走行させ、金属層の切断を完了する(図1の(d))。このようにして、切断装置を取り替えることなく連続して破砕及び溶断を行うことによってセラミック3及び金属4の切断を完了する。

【0027】
以上のように、図1に示す切断工程は、非導電材であるセラミック3にプラズマジェット1を噴射し、導電材である金属4が露出するまでセラミック3の一部分を破断若しくは切断して除去する工程、及び金属4の露出部分にプラズマアークを噴射し、金属4を切断する工程、を有する。

【0028】
本実施形態においては、非導電材及び導電材の例として、それぞれセラミック及び金属の組合せの例を示したが、本発明の切断方法は、それ以外にも、非導電材としてガラスやレンガを有する被切断材にも適用してもよい。特に、焼却炉等に使用されるレンガに対して適用する場合はセラミックの場合と同等の効果を得ることができる。また、導電材としては、金属以外にも、金属を主成分として含む材料を有するものにも適用することができる。これら以外にも、導電性のセラミック又はガラス等を有する被切断材に適用してもよい。

【0029】
本実施形態の切断方法は、例えば、図2に示す切断装置によって行う。図2に示す切断装置5は、プラズマガス噴射口となるプラズマジェット用トーチ6と、プラズマアーク用トーチ7とを備える。プラズマアーク用トーチ7は、プラズマジェット用トーチ6から所定距離を置いて、共通の駆動部材8に取付けられている。その駆動部材8は、駆動装置9により水平方向に動き、プラズマジェット用トーチ6とプラズマアーク用トーチ7とを同時に移動させる機構になっている。また、図2において、セラミック3と金属4からなる被切断材10は支持台11の上に搭載され、別の駆動装置12により支持台11を上下方向に移動できるようになっている。

【0030】
図2に示す切断装置において、プラズマジェット用トーチ6及びプラズマアーク用トーチ7の側には、それぞれプラズマ電流発生のための電源装置13a及び13bと、プラズマトーチ6、7を冷却するための冷却水循環装置14a及び14b、装置の操作ボタンや機器状態を表示する操作盤15aと15bとを備える。操作盤15a、15bの操作ボタンにより、ガスを供給するためのエアードライヤ16a、16bからガス流量調整ボックス17a、17bに供給されるエアーの流量に基づいて切断時に流動させるプラズマガスの流動調整を行うことができる。それ以外にも切断作業を制御するために操作ボタンによって切断条件等を決めることができる。また、切断作業中にプラズマガスの供給を遮断する場合を考慮し、電磁弁18a、18bがそれぞれ設けられている。

【0031】
プラズマジェット1を動作させるときは、プラズマジェット用の電源装置13aを用いて、プラズマジェット用トーチ6に内蔵される電極を負、トーチノズルを正とする電圧を印加する。それにより、まず、プラズマジェット用トーチ6からプラズマジェットを噴射させ、被切断材10を構成するセラミック等の非導電材の破砕若しくは切断を行う。プラズマジェット用トーチ6の走行を繰返すことにより導電材が露出した後、プラズマアーク用の電源装置13bを用いて、プラズマアーク用トーチ7に内蔵される電極を負、被切断材に含まれる導電材を正とする電圧を印加してプラズマアークを動作させる。それにより、プラズマアーク用トーチ7から露出した導電材に向けてプラズマアークを噴射させ、被切断材8を構成する金属等の被導電材の破砕若しくは切断を行う。このようにして、図1に示す切断工程に従って被切断材10の切断を行う。

【0032】
以上のように、図2に示す切断装置は、電源装置13a、13bと、冷却水循環装置14a、14bと、少なくとも切断時に流動させるプラズマガスの流動調整を行うことができる操作盤15a、15bと、非導電性の被切断材の破砕若しくは切断を行うため、のプラズマジェット用トーチ6と、導電性の被切断材の切断を行うためのプラズマアーク用トーチ7とを備えることが基本の構成である。

【0033】
図2に示す切断装置は、プラズマジェット用トーチ6とプラズマアーク用トーチ7及び被切断材10を水平方向の駆動装置9及び上下方向の駆動装置12によって移動しており、各トーチ6、7を被切断材の所望の切断部分に位置合せするときに多くの時間と手間を要する。それだけでなく、被切断材が複雑な形状を有する場合、切断を行うことができる箇所に制限を受けることがある。それらの技術課題を解決するために使用できる切断装置の例を図3に示す。

【0034】
図3は、本実施形態で使用する切断装置の変形例を示す図である。図3に示す切断装置19は、プラズマジェット用トーチ6と、該トーチ6から所定距離で据付けたプラズマアーク用トーチ7とを、ロボットアーム20及び不図示のロボット制御装置を有するロボットの操作によって同時に任意のXYZ方向に自由に移動及び回転できる機能を有する。この機能によって、各トーチ6、7を配置するときの高さの調整も可能になる。それにより、被切断材10を水槽21に貯水されている水中に浸漬する場合でも、被切断材の所望の切断部分にトーチ6と7を迅速に移動させ、被切断材の所望の切断部分に位置合せして配置することが容易になる。図3には、被切断材10が水平方向に支持台11の上に搭載した例を示したが、被切断材10が垂直方向に支持された場合でも切断装置19はロボットによりトーチノズルの方向を被切断材に対して垂直方向(図3においては水平方向)に向けることができる。それにより、被切断材10の所望の部分を切断することができるようになる。

【0035】
図3に示す切断装置において、プラズマジェット用トーチ6及びプラズマアーク用トーチ7の側には、それぞれ図2に示す切断装置と同じ電源装置13a及び13bと、冷却水循環装置14a及び14b、操作盤15aと15bとを備える。さらに、それらに付加して、ガスを供給するためのエアードライヤ16a、16bと、ガス流量調整ボックス17a、17bと、電磁弁18a、18bとを有する。

【0036】
図2及び図3に示す切断装置は、プラズマジェット用トーチ6とプラズマアーク用トーチ7とがそれぞれ異なる電源装置13a及び13b、及び冷却水循環装置14a及び14bを有するが、本実施形態においては、電源装置及び冷却水循環装置をそれぞれ一つだけ備え、プラズマジェット用トーチ6及びプラズマアーク用トーチ7によるそれぞれの噴射が電源装置及び冷却水循環装置の切替によって行ってもよい。その機構を有する本実施形態の切断装置の別の変形例を図4に示す。

【0037】
図4に示す切断装置22は、図3に示す切断装置とは異なり、電源装置13及び冷却水循環装置14を一つ備え、さらに操作盤15、エアードライヤ16及びガス流量調整ボックス17も一つである。それ以外の構成は、図3に示す切断装置と同じように、プラズマジェット用トーチ6と、該トーチ6から所定距離で据付けたプラズマアーク用トーチ7とを、ロボットアーム20を使い、ロボットの操作によって任意のXYZ方向に自由に移動及び回転できる機能を利用して水槽21の水中に浸漬した被切断材10の切断を行うことができる。

【0038】
切断装置22において電源装置13及び冷却水循環装置14の切替は、操作盤15によって手動で入力して行うか、あらかじめプログラムによる自動制御で行う。そのとき、電磁弁18a及び18bも同時に切替することにより、プラズマジェット及びプラズマアークのどちらかのプラズマガスの導入を遮断できるため、切断作業の切替が確実になる。

【0039】
本実施形態による切断方法の有効性を確認するため、図1に示す切断工程に従い、金属4がセラミック3で覆われた非切断材に対して実際に切断実験を行った。

【0040】
被切断材として、導電材の金属4がステンレスであり、該ステンレスの上に非導電材のセラミック3を重ねた状態にし、プラズマジェット用トーチ6とプラズマアーク用トーチ7を1対にして水中にて下記の第1表に示す切断パラメータで切断を行った。プラズマジェット1を3往復して上層にある厚さ10mmのセラミックの切断除去を行い下層のステンレスを露出させた後に、連続してプラズマアーク2で厚さ35mmのステンレスの切断を行った結果、被切断材を断面方向に完全に切断することができた。なお、当該試験で使用したステンレスの厚さ35mmは、200Aのプラズマアークで切断可能な厚さを選定したものである。このように、本実施形態の方法により、非導電材によって覆われた導電材からなる被切断材を確実に切断できることが分かり、その有効性が確認された。

【0041】
【表1】
JP0006815017B2_000002t.gif

【0042】
<第2の実施形態>
図5は、非導電材と導電材とを有する被切断材を切断するときの本発明の別の切断方法を示す工程図である。図5は、被切断材を断面図でみたときの工程を示しており、非導電材及び導電材の例が、それぞれセラミック3及び金属4の組合せである。図5に示す切断方法の例は、プラズマジェット用トーチ6及びプラズマアーク用トーチ7を、被切断材10を挟んでそれぞれ対向するように配置し、プラズマジェット1によって非導電材であるセラミック3の表層一部を破壊し、孔又は溝23を形成した後、プラズマアーク2を導電材である金属4に噴射して切断を行う点で、前記第1の実施形態とは異なる。

【0043】
図5の(a)~(c)に示すように、まず、金属4がセラミック3で覆われた非切断材10において切断しようとする部分に対してプラズマジェット用トーチ6を向け、該トーチ6からプラズマジェット1を噴射することによりセラミック3の表層の一部を破砕し、孔又は溝23を形成する。

【0044】
引き続き、被切断材10を挟んでプラズマジェット用トーチ6とは反対側から、非切断材10において切断しようとする金属4の部分に対してプラズマアーク用トーチ7を向け、プラズマアーク2を噴射して金属4の溶断によって切断を行う。図5の(d)には、溶断部分24が示されている。プラズマアーク2の噴射に伴い金属4が切断されて切断部分25が形成されるが、それと同時にプラズマアーク2からは大きな熱が発生するため、その熱を利用してセラミック3において完全に切断されていなかった部分の切断が進行し、金属4の切断とともにセラミック3にも切断部分26が形成され、被切断材10の切断が完了する(図5の(e))。

【0045】
図5に示す切断工程は、プラズマジェットの噴射後にプラズマアークの噴射を行う方法を採用しているが、本実施形態においては、図6に示すような切断方法を採用してもよい。図6は、本実施形態の切断方法の変形例を示す図であり、(a)及び(b)はそれぞれ断面図及び斜視図である。

【0046】
図6に示すように、プラズマジェット及びプラズマアーク用の各トーチ6、7は、セラミック3及び金属4からなる被切断材10を挟んでそれぞれ対向するように配置する。まず、プラズマジェット1の噴射を先行させ、孔又は溝23を形成する。引き続き、孔又は溝23を形成した部分に相当する箇所の反対側から、プラズマアーク2の噴射をプラズマジェット1の噴射に追従させる(図6の(a))。このときプラズマアーク2から発生する大きな熱により、金属4の切断と同時に、セラミック3において完全に切断されていなかった部分の切断を進め(図6の(b))、被切断材10の切断を完了する。このようにして、被切断材10の切断を、図5に示す切断方法と比べて迅速に行うことができる。

【0047】
以上のように、本実施形態の切断方法によれば、導電材である金属4の切断とともに、プラズマアーク2の熱を利用して非導電材であるセラミック3の未切断部分の切断を同時に進行させることにより、被切断材10の切断を行うことができる。この切断方法は、セラミック3の表層にプラズマジェット1により孔又は溝23を形成することにより、セラミック3の切断部分の位置を正確に決めることができる。また、プラズマアーク2からの大きな熱を利用してセラミック3の切断を進めるときに、孔又は溝23が破断起点となるため、セラミック3が厚い場合でも切断を確実に行うことができるという効果が得られる。本実施形態においては、プラズマジェット1によって形成する孔又は溝23は、セラミック3の切断断面の表層に近い一部分だけに限定されない。孔又は溝23を、セラミック3のより深くまで形成することができる。また、セラミック3において切断部分となる断面の全部をプラズマジェット1によってあらかじめ切断してもよい。

【0048】
本実施形態の切断方法は、例えば、図7に示す切断装置によって行う。図7に示す切断装置27は、プラズマガス噴射口となるプラズマジェット用トーチ6とプラズマアーク用トーチ7とを、それぞれロボットアーム20a、20bを使い、不図示のロボット制御装置を有するロボットの操作によって任意のXYZ方向にそれぞれ独立して移動及び回転できる機構を有する。この切断装置において、プラズマジェット用トーチ6及びプラズマアーク用トーチ7の側には、それぞれ図3に示す切断装置と同じ電源装置13a及び13bと、冷却水循環装置14a及び14bと、操作盤15aと15bとを備える。さらに、それらに付加して、ガスを供給するためのエアードライヤ16a、16bと、ガス流量調整ボックス17a、17bと、電磁弁18a、18bとを有する。

【0049】
図7に示す切断装置を用いて、図5に示す切断工程を行う。まず、プラズマジェット用トーチ6を水槽21aの水中に浸漬された被切断材10のセラミック層3に向けプラズマジェット噴射によって孔又は溝23を形成する。その後、被切断材10を水槽21aから取り出し、反転させてから別の水槽21bに浸漬させ、支持台11bに搭載する。引き続き、被切断材10の金属4にプラズマアーク用トーチ7を向け、プラズマアーク噴射により金属4の切断とともに、セラミック3の切断を行う。

【0050】
一方、図6に示す切断工程は、被切断材10を移動させなくても、ロボットアーム20a、20bを用いて一つの水槽21に浸漬した被切断材10を上下2方向からそれぞれプラズマジェット1及びプラズマアーク2を独立に噴射することによって切断を行うことができる。例えば、プラズマアーク用トーチ7の配置方法は変えずに、プラズマジェット用トーチ6だけをロボットアーム20aにより図8に示すような位置に移動させることにより、プラズマジェット1及びプラズマアーク2を被切断材10の両側から噴射させることが可能になる。このようにして、被切断材8を構成するセラミック3の表層にプラズマジェット噴射を先行させ、金属4へのプラズマアーク噴射をそれに追従させて行うことができる。

【0051】
<参考例>
図9は、プラズマアーク切断技術を用いた非導電材の切断方法を参考例として示す工程図である。本参考例は、切断用のプラズマとしてプラズマアーク単体を使用して非導電材の切断を行う方法であるが、切断性能を第2の実施形態による切断方法と対比するために実験を行った。

【0052】
前記で説明したように、プラズマアークは、プラズマトーチと被切断材間で電路を構成させることでプラズマ放電を発生させる技術であり、被切断材が非伝導性の場合にはプラズマ放電が発生しない。図9に示す切断方法は、被切断材側に導電材を配置すれば電路を構成することによりプラズマ放電の発生が成立するという点に着目して本発明者らによって構築したものである。

【0053】
図9の(a)に示すように、被切断材が例えばセラミック3である場合に、その片側を導電材である金属4で被覆する。図9の(b)に示すように、まず、プラズマアーク用トーチ7を金属4に向け、金属側から切断を行いプラズマアーク2を保持することにより、金属4の層を溶断させた部分からセラミック3の層へプラズマ流の衝撃が起こり、それによってセラミック3の破砕切断が可能となる。最終的に、図9の(c)に示すように、プラズマアーク単独で金属3とともにセラミック3の破断切断が完了する。

【0054】
本参考例による切断を確認するため、非導電材としてアルミナセラミック(厚保さ10、20、40mm)を用い、該アルミナセラミックを導電材であるステンレス鋼板(厚保さ50mm)で覆い、水中にて下記の表2に示す切断パラメータでステンレス鋼板面からプラズマアークを用いた切断試験を行った。

【0055】
【表2】
JP0006815017B2_000003t.gif

【0056】
その結果、厚さ10mm及び20mmのセラミックは切断が可能であった。また、厚さ40mmのセラミックは、深さ34mmまで切断されており、残り6mm分については割れることが分かり、最終的にはセラミック全体を切断できる見通しが得られた。

【0057】
<第2の実施形態と参考例との対比>
本発明による第2の実施形態と参考例による切断方法を、切断の機能と性能の点から対比する。参考例による切断方法は、切断用のプラズマがプラズマアーク単体であるため、第2の実施形態と比べて切断工程が簡略化でき、切断装置も簡素化できる点で有効である。しかしながら、第2の実施形態は、参考例と比べて、次の点で切断の機能と能力が優れる。

【0058】
(1)参考例の切断方法は、セラミック3の層が厚い場合にプラズマアーク単独ではセラミック3の確実な切断を行うことができない場合がある。これは、プラズマアーク流のセラミック3への衝撃が、厚いセラミック3の下部には十分に作用しないためである。上記参考例の確認試験から分かるように、プラズマアーク単独では、セラミック3を切断できる深さは40mm未満である。その以上の深さになると、割って切断するという別の方法を用いる必要がある。それに対して、第2の実施形態においては、セラミック3にあらかじめ切断起点となる孔又は溝23をプラズマジェットにより形成するため、セラミックの厚さが40mm以上でもプラズマアーク2の熱を利用した切断が可能になる。加えて、割って切断するという作業も楽に行うことができる。また、孔又は溝23は、セラミック3の切断断面の表層に近い一部分だけでなく、より深くまで形成することができるため、切断速度を速くすることもできる。場合によっては、セラミック3の切断断面をすべてプラズマジェット1によって切断することも可能である。

【0059】
(2)参考例の切断方法は、セラミック3の表層にプラズマアーク流の衝撃を伝える衝撃起点が形成されていないため、切断部分の位置が正確に決まらない場合がある。そのため、セラミック3の切断部分が定まった直線状にはならず、幅広く粉々になった状態で割れるという現象が起きる。さらに、あらかじめ決めた切断箇所とは異なる箇所に割れが進展し、その箇所で切断されることがある。それに対して、第2の実施形態においては、プラズマジェットによって孔又は溝23をあらかじめ直線状に形成することにより、所望の位置に狭い切断幅で切断することができる。場合によっては、被切断材を直線状だけでなく、曲線やL字の形状で切断することも可能である。

【0060】
<第3の実施形態>
前記参考例で説明した切断方法は、非導電材が厚い場合には非導電材の確実な切断が困難になるという技術課題があるため、それを解決するための切断方法として第2の実施形態と異なる切断方法を図10を用いて説明する。図10に示す切断方法は、図6に示す方法とは異なり、導電材にプラズマアーク2を噴射し、それに追従するようにプラズマジェット1を噴射する。そのとき、プラズマジェット用トーチ6は、プラズマアーク用トーチ7と同じ方向から被切断材に向け、プラズマアーク2による切断と同じ方向に時間差を設けて追従して走行させる。それにより、プラズマアーク2の噴射だけでは切断しきれないで残存する未破砕又は未切断の非導電材部分を、追従させるプラズマジェット1により切断することができる方法である。

【0061】
図10に示す工程図のように、まず、導電材である金属4にプラズマアーク用トーチ7を向け、プラズマアーク2を噴射する(図10の(a))。プラズマアーク2の噴射により、まず、金属4が溶断し切断する(図10の(b))。そのとき、プラズマアーク2から発生する熱による衝撃で、金属4の切断部に接するセラミック3の部分が深さ方向に一部分だけ破砕又は切断される(図10の(c))。引き続き、プラズマアーク2の噴射によって金属4の開口した箇所に対して、プラズマアーク2の噴射に追従するようにプラズマジェット用トーチ6を走行させプラズマジェット1を噴射する(図10の(d))。プラズマジェット用トーチ6の走行により、金属4の切断部に接するセラミック3の部分において未破砕又は未切断の部分は破砕又は切断が進行し、セラミック3の切断が完全に行われる(図10の(e))。最終的に、図10の(e)の右図に示すように、被切断材10の切断が完了する。

【0062】
図10に示す切断方法は、セラミック3の切断がプラズマアーク2及びプラズマジェット1のプラズマ噴射で行われるため、割れ等の処理を行わないで切断加工を行うことができる。また、切断時に割れ等の処理を伴わないため、比較的に平滑な切断面を有する状態でセラミック3を切断できるという利点を有する。

【0063】
<第4の実施形態>
図11は、導電性の被切断材を切断するときにプラズマアークの切断能力を超えるような厚い導電性鋼材等の場合でも効率的な切断を行うことができる切断方法を示す図である。図11に示す切断方法は、導電材である金属4に対してプラズマジェット1の噴射を先に走行させることにより、金属4において切断しようとする部分の近傍が先行して加熱されて急激な温度上昇が局所的にみられる。次いで、プラズマアーク2をプラズマジェット1の噴射に追従して切断しようとする部分に噴射すれば、切断近傍の局所的な加熱により金属の融点までに必要となる熱負荷が軽減される等の効果により、金属4の切断を効率的、かつ、より深くまで切断することができる。切断工程において、金属4の切断近傍に対するプラズマジェット1の噴射は、例えば、図11の(a)と(b)に示す方法で行うことができる。

【0064】
図11の(a)は、プラズマアーク2の単独噴射で切断可能な切断面28と同面で切断面28の近傍にプラズマジェットの噴射を走行させる方法である。この方法においては、プラズマジェット1の噴射に追従して行うプラズマアーク2の噴射は、切断面28に対して同じ向きで垂直方向に行われる。

【0065】
他方、図11の(b)は、プラズマアークの単独噴射で切断可能な切断面28の切断深さ位置の近傍にプラズマジェットの噴射を走行させる方法である。この方法においては、プラズマアーク用トーチ7はプラズマジェット用トーチ6に対してトーチノズルの向く方向が垂直であり、プラズマジェット1の噴射に追従して行うプラズマアーク2の噴射は、切断面28に対して水平方向に行われる。

【0066】
本実施形態の切断方法は、基本的には図8に示す切断装置によって行うことができる。図8に示す切断装置は、ロボットアーム20a、20bを用いて一つの水槽23に浸漬した金属4に対してそれぞれプラズマジェット1及びプラズマアーク2を独立に噴射することによって切断を行うことができるため、図11の(a)及び(b)の切断方法に応じて、プラズマジェット用トーチ6の方向を変えるだけで対応することができる。例えば、図11の(a)の切断方法では、プラズマジェット用トーチ6及びプラズマアーク用トーチ7を金属4に対して垂直方向に同じ向きに所定の間隔で離して配置し、それぞれのトーチを切断方向に独立して移動させる。他方、図11の(b)の切断方法においては、図12に示すように、プラズマジェット用トーチ6を金属4に対して平行方向に配置し、プラズマアーク用トーチ7は金属4に対して垂直方向に配置する。

【0067】
次に、本実施形態による切断方法を、プラズマアーク単体の装置を用いて切断を行ったときと対比するため、切断能力を金属の切断可能厚さで予備的に評価した。その結果、本実施形態による切断方法は、プラズマアーク単体による切断方法と比べて、切断可能厚さが1割程度向上することが確認された。例えば、プラズマアーク単体による切断方法は切断できる金属の厚さが98mmで有ったのに対し、本実施形態による切断方法ではその厚さが108mmに増加すること(約10、2%の増加)が分かった。さらに、プラズマジェット及びプラズマアークの切断パラメータを最適化することにより、切断能力の一層の向上が期待できる。また、本実施形態による切断方法は、金属の切断可能厚さの向上という効果の他にも、同じ厚さの金属を切断するときは、プラズマアーク単体による切断方法と比べて、切断時に使用するプラズマアークの出力電流を低減したり、切断速度を高くすることが可能になるため、効率的な切断を実現することができる。

【0068】
以上のように、本発明のプラズマ連携切断方法は、導電材と非導電材が混在する被切断材に対して、プラズマアーク及びプラズマジェットを用いて、確実な切断を効率的に行うことができる。また、プラズマアーク切断技術による金属等の導電材を切断する際にも、切断時にプラズマジェットを用いることにより切断対象物である前記導電材を加熱する効果が生まれるため、切断能力を向上させることができ、プラズマアークだけでは切断能力に限界があった被切断材、例えば、厚みのある鋼材等の切断にも適用することができる。したがって、従来技術よりも高い機能と能力を有する切断方法の確立及び切断装置の構築を行うことが可能になり、切断の技術分野において適用範囲の拡大を図ることができるため、その有用性は極めて高い。
【符号の説明】
【0069】
1・・・プラズマジェット
2・・・プラズマアーク
3・・・セラミック
4・・・金属
5,19,22,27・・・切断装置
6・・・プラズマジェット用トーチ
7・・・プラズマアーク用トーチ
8・・・駆動部材
9,12・・・駆動装置
10・・・被切断材
11,11a,11b・・・支持台
13,13a,13b・・・電源装置
14,14a,14b・・・冷却水循環装置
15,15a,15b・・・操作盤
16,16a,16b・・・エアードライヤ
17,17a,17b・・・ガス流量調整ボックス
18a,18b・・・電磁弁
20,20a,20b・・・ロボットアーム
21・・・水槽
23・・・孔又は溝
24・・・金属の溶断部分
25・・・金属の切断部分
26・・・セラミック部分の切断部分
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11