TOP > 国内特許検索 > 二重管構造部の切断装置及び切断方法 > 明細書

明細書 :二重管構造部の切断装置及び切断方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6802550号 (P6802550)
公開番号 特開2017-148848 (P2017-148848A)
登録日 令和2年12月1日(2020.12.1)
発行日 令和2年12月16日(2020.12.16)
公開日 平成29年8月31日(2017.8.31)
発明の名称または考案の名称 二重管構造部の切断装置及び切断方法
国際特許分類 B23K  26/38        (2014.01)
FI B23K 26/38 B
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願2016-034615 (P2016-034615)
出願日 平成28年2月25日(2016.2.25)
審査請求日 平成30年11月26日(2018.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】中村 保之
【氏名】岩井 紘基
【氏名】佐野 一哉
個別代理人の代理人 【識別番号】110000442、【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
審査官 【審査官】黒石 孝志
参考文献・文献 特開2016-68132(JP,A)
特開2015-208825(JP,A)
特開2000-202672(JP,A)
特開平11-138284(JP,A)
調査した分野 B23K 26/00 - 26/70
特許請求の範囲 【請求項1】
レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備え、かつ二重管構造部を構成する内管の内部に挿入可能であるように形成されたレーザ切断ヘッドと、前記レーザ切断ヘッドを保持し、前記内管に対する前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光の照射位置を自在に調整可能であるように構成されたマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記内管の内部に挿入された前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断でき、かつ前記外管の表面に設定した焦点位置に向けてレーザ光を収束させることによって、前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする二重管構造部の切断装置。
【請求項2】
レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備え、かつ二重管構造部を構成する内管の内部に挿入可能であるように形成されたレーザ切断ヘッドと、前記レーザ切断ヘッドを保持し、前記内管に対する前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光の照射位置を自在に調整可能であるように構成されたマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記内管の内部に挿入された前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断でき、かつ前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなり、かつ前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が最小2mm、最大でも3mm程度となるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする二重管構造部の切断装置。
【請求項3】
レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備え、かつ二重管構造部を構成する内管の内部に挿入可能であるように形成されたレーザ切断ヘッドと、前記レーザ切断ヘッドを保持し、前記内管に対する前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光の照射位置を自在に調整可能であるように構成されたマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記内管の内部に挿入された前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断でき、かつ前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、前記マニピュレータの駆動を制御し、
前記レーザ切断ヘッドは、筒状に形成されたヘッド本体の一端に設けられたレーザ光の入射口から前記ヘッド本体の他端に設けられたレーザ光の出射口に至る直線状の光路を有することを特徴とする二重管構造部の切断装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内管の内面に対する前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光の入射角度が0度以上になるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の二重管構造部の切断装置。
【請求項5】
前記レーザ切断ヘッドは、レーザ光の光路中に反射ミラーを備え、前記レーザ切断ヘッド中を伝播するレーザ光の光路を前記反射ミラーにて反射して変更することを特徴とする請求項1または請求項に記載の二重管構造部の切断装置。
【請求項6】
レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備えたレーザ切断ヘッドを、マニピュレータを用いて二重管構造部を構成する内管の内部に挿入し、前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光を、前記外管の表面に設定した焦点位置に向けて収束させることによって、前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断したとき、前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする二重管構造部の切断方法。
【請求項7】
レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備えたレーザ切断ヘッドを、マニピュレータを用いて二重管構造部を構成する内管の内部に挿入し、前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断したとき、前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなり、かつ前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が最小2mm、最大でも3mm程度となるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする二重管構造部の切断方法。
【請求項8】
筒状に形成されたヘッド本体の一端に設けられたレーザ光の入射口から前記ヘッド本体の他端に設けられたレーザ光の出射口に至る直線状の光路及びアシストガスの噴射口を備えたレーザ切断ヘッドを、マニピュレータを用いて二重管構造部を構成する内管の内部に挿入し、前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断したとき、前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする二重管構造部の切断方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管構造部の切断装置及び切断方法に係り、特に、二重管構造部を構成する内管と外管を同時に切断可能な切断装置及び切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今後、東京電力福島第一原子力発電所をはじめ、軽水炉の廃止措置が予定されており、解体工期の短縮や二次廃棄物発生量の低減等によるコスト削減が求められている。このような背景の中、コスト削減の方策の一つとして、沸騰水型原子炉に使用されているジェットポンプ等の二重管構造部の切断作業の効率化を図ることが挙げられる。
【0003】
従来、二重管構造部の内管と外管を一度の切断作業で同時に切断する切断装置及び切断方法は知られていない。このため、従来においては、二重管構造部の内管と外管とを個別に切断するという方法が検討されている。
【0004】
然るに、二重管構造部の内管と外管とを個別に切断すると、単管を切断する場合に比べて作業量が単純計算で2倍に増えるので、工期が長期化する。また、この方法によると、内管切断用の切断機と外管切断用の切断機とを用意しなくてはならないため、設備コストが高価になる。さらに、館内に切断機を挿入できない場合、外管の外周に切断機を配置しなくてはならないので、狭隘部に配管された二重管構造部の外管については、切断作業が著しく困難になる。なお、狭隘な切断部に適用可能な小型の切断機を用意すれば切断が可能になるが、小型の切断機は一般に大型の切断機に比べて切断能力が落ちるので、作業効率の低下が懸念される。
【0005】
このようなことから、二重管構造部の内管の内部から内管及び外管を同時に切断可能な二重構造部の切断装置及び切断方法の開発が嘱望されている。なお、二重管構造の設備は、原子力発電所だけでなく、化学プラント等にも使用されている。
【0006】
また、構造物の切断装置としては一般に、レーザ切断機及びプラズマアーク切断機等の熱的切断機と、回転刃を備えた機械的切断機とがあるが、機械的切断機は、回転刃が消耗品になるためにランニングコストが高価になるばかりでなく、劣化した回転刃及び切削粉が二次廃棄物となるために廃棄物の処理コストが高くなる。また、機械的切断機は、熱的切断機に比べて切断速度が遅く、かつ回転刃の交換が繰り返し必要になるので、作業効率が悪いという問題もある。
【0007】
このようなことから、二重管構造部の切断装置としては、機械的切断機よりも熱的切断機を適用する方が望ましい。また、プラズマアーク切断機を用いて構造物を切断すると、レーザ切断機を用いて構造物を切断した場合に比べて、カーフ幅(切断部の切れ目の幅)が大きくなり、二次廃棄物が多くなる。このため、熱的切断機の中でもカーフ幅が狭く、二次廃棄物発生量の少ないレーザ切断機を適用することがより望まれる。
【0008】
なお、配管の内部にレーザ加工機を挿入して配管を加工する装置としては、従来、原子炉の小口径配管内にレーザトーチを挿入し、配管の内部からその継手部にレーザ光を照射して溶接或いは表面の改質を行う装置知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平06-226481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、二重管構造部のみならず、単管の切断に関しても何ら考慮されていないので、このままでは二重管構造部の切断に適用することができない。
【0011】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザ切断機を用いて二重管構造部の内管の内部から内管及び外管を同時に切断可能な二重管構造部の切断方法及び切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態は、上記の課題を解決するため、二重管構造部の切断装置に関しては、レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備え、かつ二重管構造部を構成する内管の内部に挿入可能であるように形成されたレーザ切断ヘッドと、前記レーザ切断ヘッドを保持し、前記内管に対する前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光の照射位置を自在に調整可能であるように構成されたマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記内管の内部に挿入された前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断でき、かつ前記外管の表面に設定した焦点位置に向けてレーザ光を収束させることによって、前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする。
本発明の他の形態は、上記の課題を解決するため、二重管構造部の切断装置に関しては、レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備え、かつ二重管構造部を構成する内管の内部に挿入可能であるように形成されたレーザ切断ヘッドと、前記レーザ切断ヘッドを保持し、前記内管に対する前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光の照射位置を自在に調整可能であるように構成されたマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記内管の内部に挿入された前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断でき、かつ前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなり、かつ前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が最小2mm、最大でも3mm程度となるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする。
本発明の他の形態は、上記の課題を解決するため、二重管構造部の切断装置に関しては、レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備え、かつ二重管構造部を構成する内管の内部に挿入可能であるように形成されたレーザ切断ヘッドと、前記レーザ切断ヘッドを保持し、前記内管に対する前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光の照射位置を自在に調整可能であるように構成されたマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記内管の内部に挿入された前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断でき、かつ前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、前記マニピュレータの駆動を制御し、前記レーザ切断ヘッドは、筒状に形成されたヘッド本体の一端に設けられたレーザ光の入射口から前記ヘッド本体の他端に設けられたレーザ光の出射口に至る直線状の光路を有することを特徴とする。

【0013】
また、本発明の一形態は、上記の課題を解決するため、二重管構造部の切断方法に関しては、レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備えたレーザ切断ヘッドを、マニピュレータを用いて二重管構造部を構成する内管の内部に挿入し、前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光を、前記外管の表面に設定した焦点位置に向けて収束させることによって、前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断したとき、前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする。
また、本発明の他の形態は、上記の課題を解決するため、二重管構造部の切断方法に関しては、レーザ光の出射口及びアシストガスの噴射口を備えたレーザ切断ヘッドを、マニピュレータを用いて二重管構造部を構成する内管の内部に挿入し、前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断したとき、前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなり、かつ前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が最小2mm、最大でも3mm程度となるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする。
また、本発明の他の形態は、上記の課題を解決するため、二重管構造部の切断方法に関しては、筒状に形成されたヘッド本体の一端に設けられたレーザ光の入射口から前記ヘッド本体の他端に設けられたレーザ光の出射口に至る直線状の光路及びアシストガスの噴射口を備えたレーザ切断ヘッドを、マニピュレータを用いて二重管構造部を構成する内管の内部に挿入し、前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光で前記内管及び前記内管の外周に配置された外管を同時に切断したとき、前記内管の切断部に形成されるカーフの幅が、前記外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする。

【0014】
内管の切断部に形成されるカーフの幅が外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるようにすると、内管の切断部に形成されたカーフを通して外管のレーザ光照射部に内管内部からアシストガスを確実に噴射できるので、二重管構造部の外管を内管と同時に切断することが可能になる。即ち、二重管構造部を構成する内管及び外管の切断は、レーザ光の熱によって、内管及び外管のレーザ光照射部を局部的に溶解し、生成された溶解物(ドロス)をアシストガスによって吹き飛ばすことにより行われる。従って、二重管構造部の内管と外管を内管内部からのレーザ照射によって切断する場合には、外管のレーザ光照射部に十分な圧力及び風量のアシストガスが噴射される必要がある。上記構成によれば、内管の切断部に形成されるカーフの幅が、外管の切断部に形成されるカーフの幅よりも大きくなるように、マニピュレータの駆動を制御するので、内管に形成されるカーフを通じて外管のレーザ光照射部に十分な圧力及び風量のアシストガスを噴射でき、内管と外管の同時切断が可能になる。
【0016】
本構成によると、内管の切断部に2mm幅以上のカーフを形成するので、内管に形成されるカーフを通じて外管のレーザ光照射部に必要かつ十分な圧力及び風量のアシストガスを噴射することができ、外管の切断を確実に行うことができる。また、内管の切断部に形成されるカーフの幅を3mm程度にするので、切断に伴う廃棄物の発生量を抑制できて、廃棄物の処理コストを抑制できる。
本構成によると、レーザ切断ヘッド内に反射ミラーなどの光路変更部材を備える必要がないので、レーザ切断ヘッドの構成を簡略化できて、レーザ切断ヘッドの低コスト化を図ることができる。

【0017】
また本発明は、前記構成の二重管構造部の切断装置において、前記制御装置は、前記内管の内面に対する前記レーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光の入射角度が0度以上になるように、前記マニピュレータの駆動を制御することを特徴とする。
【0018】
内管の内面に対してレーザ切断ヘッドから出射されるレーザ光を垂直に入射(入射角度が0度)すると、内管の内面で反射された反射レーザ光の多くがレーザ切断ヘッド内に戻るので、レーザ切断ヘッド及びレーザ発振器に故障が生じる原因となる。これに対して、内管の内面に対するレーザ光の入射角度を0度以上にすると、レーザ切断ヘッド内に戻る反射レーザ光の光量を低減できるので、反射レーザ光に起因するレーザ切断ヘッド及びレーザ発振器の故障を回避することができる。
【0019】
また本発明は、前記構成の二重管構造部の切断装置において、前記レーザ切断ヘッドは、レーザ光の光路中に反射ミラーを備え、前記レーザ切断ヘッド中を伝播するレーザ光の光路を前記反射ミラーにて反射して変更することを特徴とする。
【0020】
本構成によると、レーザ切断ヘッドの長さ方向に伝播してきたレーザ光を反射ミラーで反射してレーザ切断ヘッドの径方向に向けることができるので、小口径の内管を有する二重管構造部の切断を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、レーザ切断ヘッドを用いて二重管構造部の内管の内部から内管及び外管を同時に切断可能な二重管構造部の切断装置及び切断方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る二重管構造部の切断装置の構成図である。
【図2】実施形態に係るレーザ切断ヘッドの構成と内管内部への挿入状態とを示す断面図である。
【図3】実施形態に係るレーザ切断ヘッドの内管内部への挿入状態を示すプラントの一部切断した平面図である。
【図4】実施形態に係るレーザ切断ヘッドのレーザ出射口及びアシストガス噴射口の構成を示す要部正面図である。
【図5】実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【図6】実施形態に係る二重管構造部の切断方法を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るレーザ切断ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係る二重管構造部の切断装置及び切断方法について図面を用いて説明する。

【0026】
実施形態に係る二重管構造部の切断装置は、図1に示すように、レーザ電源1、レーザ発振器2、レーザ電源1に電源を供給する分電盤3、及び、レーザ電源1を冷却する冷却水循環装置(チラー)4を備えている。また、実施形態に係る二重管構造部の切断装置は、これに加えて、レーザ発振器2に接続されたレーザ切断ヘッド5、レーザ切断ヘッド5を自在に駆動するマニピュレータ6、レーザ切断ヘッド5にアシストガスを供給する高圧アシストガス容器7、及び、レーザ電源1及びマニピュレータ6の駆動を制御する制御装置8を備えている。レーザ発振器2とレーザ切断ヘッド5とは、光ファイバ等の導光体9を介して接続される。また、高圧アシストガス容器7とレーザ切断ヘッド5とは、ホース等の配管10を介して接続される。

【0027】
レーザ発振器2としては、波長1070nmのレーザ光を発光するファイバレーザ発振器が好適に用いられるが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、ファイバレーザ発振器以外の固体レーザ発振器又は炭酸ガスレーザ発振器等のガスレーザ発振器を用いることもできる。その他、レーザ電源1、分電盤3及びチラー4については、公知に属する事項であり、かつ本発明の要旨でもないので、説明を省略する。

【0028】
実施形態に係る二重管構造部の切断装置は、二重管構造部を構成する内管の内部に挿入できるように、レーザ切断ヘッド5を小径の筒状に形成すると共に、このレーザ切断ヘッド5をマニピュレータ6を用いて自在に駆動し、二重管構造部Sを構成する内管I及び外管Oに対するスタンドオフ量を調整するようにしたことを特徴とする。

【0029】
即ち、実施形態に係るレーザ切断ヘッド5は、図2に示すように、小径の筒状に形成されており、その断面中央部に略L字状の光路11が開設されている。光路11は、レーザ切断ヘッド5の長さ方向に形成された第1光路11aと、レーザ切断ヘッド5の径方向に形成された第2光路11bとから構成されており、第1光路11aと第2光路11bの間には、反射ミラー12が設置されている。第1光路11aには、図示しないコリメートレンズが設置される。また、第2光路11bには、フォーカスレンズ13(図6参照)が設置される。なお、レーザ切断ヘッド5内に反射ミラー12を設置する構成に代えて、レーザ切断ヘッド5内の所要の位置に反射ミラー面を形成する構成とすることもできる。

【0030】
レーザ発振器2から出射されたレーザ光Lは、導光体9を介してレーザ切断ヘッド5の第1光路11aに入射した後、反射ミラー12にて反射されて第2光路11b側に光路を変更し、第2光路11bの開口端であるレーザ出射口より外部に向けて出射される。実施形態に係るレーザ切断ヘッド5は、図2に示すように、第1光路11aに対する第2光路11bの形成角度θ1が90度以上になっている。反射ミラー12の設定角度は、第1光路11aを伝播してきたレーザ光Lの光路が、第2光路11bの軸心に沿う方向に変更されるように調整される。

【0031】
このようにすると、図2に示すように、被切断物である二重管構造部Sからの反射レーザ光L1がレーザ切断ヘッド5外に反射されるので、レーザ切断ヘッド5内への反射レーザ光L1の入射量を低減でき、反射レーザ光L1の入射に起因する反射ミラー12及びレーザ発振器2等の故障を防止できる。

【0032】
即ち、実施形態に係るレーザ切断ヘッド5は、図2及び図3に示すように、二重管構造部Sを構成する内管Iの内部に挿入され、二重管構造部Sを構成する内管I及び外管Oを内管Iの内部から切断する。従って、第1光路11aに対する第2光路11bの形成角度θ1が90度であると、二重管構造部Sの内管I及び外管Oの軸線方向と第1光路11aとが平行になるようにレーザ切断ヘッド5を設定した場合に、内管I及び外管Oからの反射レーザ光L1が直接的にレーザ切断ヘッド5内に戻り、反射ミラー12及びレーザ発振器2等が故障する原因となる。これに対して、第1光路11aに対する第2光路11bの形成角度θ1を90度以上にしておけば、図2に示すように、内管Iのレーザ光照射部に立てられた仮想の垂直線に対して、0度以上の角度θ2でレーザ光を照射できるので、レーザ切断ヘッド5内への反射レーザ光L1の入射量を低減できて、反射ミラー12及びレーザ発振器2等の故障を回避できる。

【0033】
なお、レーザ切断ヘッド5内への反射レーザ光L1の入射量を低減するためには、内管I及び外管Oに対するレーザ光の入射角度を0度以上の角度θ2とすれば良く、必ずしも第1光路11aに対する第2光路11bの形成角度θ1を90度以上とする必要はない。即ち、第1光路11aに対する第2光路11bの形成角度θ1が90度であるレーザ切断ヘッド5を用いた場合にも、マニピュレータ6を用いてレーザ切断ヘッド5を傾斜させることにより、同様の効果が得られる。

【0034】
レーザ切断ヘッド5の先端の第2光路11bの周囲には、図4に示すように、配管10を介して高圧アシストガス容器7から供給されるアシストガスを内管I及び外管Oに向けて噴射するアシストガス噴射口14が形成されており、水中で切断する場合にレーザ光と同軸で噴射されるアシストガスを水の抵抗から護る働きを有する。

【0035】
二重管構造部Sを構成する内管I及び外管Oの切断は、内管I及び外管Oの予定切断箇所にレーザ切断ヘッド5から出射されたレーザ光を照射して、レーザ光の照射部を局部的に溶解し、溶解部に生成されたドロスをアシストガス噴射口14から噴射されるアシストガスによって吹き飛ばすことにより行われる。従って、アシストガス噴射口14は、内管I及び外管Oのレーザ光照射部に、ドロスを除去するに十分な圧力及び風量のアシストガスが噴射されるように設計される。

【0036】
マニピュレータ6は、二重管構造部Sに対するレーザ切断ヘッド5の位置及び姿勢、二重管構造部Sに対するレーザ光の照射方向(回転方向)を自在に変更するもので、多関節のリンクと各リンクを駆動するモータ等のアクチュエータとをもって構成されている。例えば、図2に示すように、二重管構造部Sを構成する内管Iの内部にレーザ切断ヘッド5を挿入し、内管I及び外管Oの予定切断箇所にレーザ光Lを照射し、かつアシストガス噴射口14からアシストガスを噴射しながら、レーザ切断ヘッド5を軸心の周りに360度回転することにより、内管I及び外管Oの切断を行うことができる。

【0037】
制御装置8は、図5に示すように、一般的なサーバやパーソナルコンピュータ等と同様に、CPU21、RAM22、ROM23、HDD24及び外部インタフェースである入力部25及び出力部26を含むハードウェア資源と、ROM23及びHDD24に記憶されたソフトウェア資源とから構成されている。

【0038】
CPU21には、実施形態に係る二重管構造部に切断方法を実施するに必要な各種のデータが格納されている。各種のデータには、切断パラメータと位置情報とがある。切断パラメータとしては、レーザ切断ヘッド5から出射されるレーザ光の強度、内管I及び外管Oの切断速度、レーザ切断ヘッド5に供給されるアシストガスの圧力及び風量、並びに、レーザ切断ヘッド5のレーザ光出射口から被切断物である内管I及び外管Oの表面までの距離であるスタンドオフ量を挙げることができる。

【0039】
また、位置情報としては、二重管構造部Sを構成する内管I及び外管Oの設置位置(中心位置)の座標、内管I及び外管Oの壁面の座標等を挙げることができる。これらの座標は、例えば構造物の設計図や、レーザ測距機等を用いた座標測定で得られたデータを格納できる。

【0040】
入力部25には、キーボード入力装置、タッチパネル入力装置及びマウスなどの入力装置、マニピュレータ6に備えられたロータリエンコーダ等が接続される。

【0041】
出力部26には、レーザ電源1、レーザ発振器2、チラー4、液晶表示装置等の表示装置及びマニピュレータ6に備えられたモータ等のアクチュエータが接続される。

【0042】
CPU21は演算手段であり、レーザ切断装置の駆動全体を制御する。

【0043】
RAM22は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU21が情報を処理する際の作業領域として用いられる。

【0044】
ROM23は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムのほか、レーザ切断ヘッド5を用いた二重管構造部Sの切断方法を実施する際に用いる各種の設定値及び計算式等が格納されている。各種の設定値には、レーザ切断ヘッド5の仕様や型式が含まれる。また、各種の計算式には、CPU21から読み出された切断パラメータ及び位置情報とマニピュレータ6に備えられたロータリエンコーダの出力とから、レーザ切断ヘッド5のスタンドオフ値を算出する計算式が含まれる。

【0045】
HDD24は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、基本ソフトウェア(OS)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。

【0046】
このようなハードウェア構成において、ROM23やHDD24に格納されたプログラムがRAM22に読み出され、CPU21がRAM22にロードされたプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部とハードウェアとの組み合わせによって、実施形態に係る二重管構造部Sの切断方法を実現する機能ブロックが構成される。

【0047】
なお、上述した制御装置8は、実施の一例を説明したものに過ぎず、本発明の要旨がこれに限定されるものではない。例えば、制御装置8としては、一般的なパーソナルコンピュータやタブレットコンピュータを用いることもできる。また、各種の設定値及び計算式等を格納するメモリは、制御装置8内に組み込まれたROM23に限定されるものではなく、例えばUSBメモリなどの外付けタイプの記憶装置を用いることもできる。

【0048】
実施形態に係る二重管構造部Sの切断方法は、上記したように、二重管構造部Sを構成する内管Iの内部から、内管I及び外管Oの予定切断箇所にレーザ切断ヘッド5から出射されたレーザ光Lを照射して、レーザ光Lの照射部を局部的に溶解し、溶解部に生成されたドロスをアシストガス噴射口14から噴射されるアシストガスによって吹き飛ばすことにより行われる。従って、外管Oを切断するためには、外管Oの溶解部にドロスを吹き飛ばすに足る圧力と風量とを有するアシストガスを噴射する必要がある。

【0049】
このため、本実施形態においては、図6に示すように、内管Iの切断部に形成されるカーフK1の幅W1が、外管Oの切断部に形成されるカーフK2の幅W2よりも大きくなるように、制御装置8がレーザ切断ヘッド5のレーザ光出射口から被切断物である内管I及び外管Oの表面までの距離であるスタンドオフ量を制御する。図6の例においては、外管Oの表面にレーザ光の焦点位置が合致するようにスタンドオフ量を制御している。このようにすると、レーザ光の焦点位置よりも手前にある内管Iについては、レーザ光のスポット径が外管Oに照射されるレーザ光のスポット径よりも大きくなるので、内管Iの切断部に形成されるカーフK1の幅W1を、外管Oの切断部に形成されるカーフK2の幅W2よりも大きくできる。

【0050】
なお、内管Iの切断部に形成されるカーフK1の幅は、最小2mm、最大でも3mm程度となるようにすることが特に望ましい。実験によると、内管の切断部に2mm以上の幅を有するカーフを形成した場合、内管Iに形成されるカーフK1を通じて外管Oのレーザ光照射部に必要かつ十分な圧力及び風量のアシストガスを噴射することができ、外管Oを確実に切断できることが判った。また、内管Iの切断部に形成されるカーフK2の幅を3mm程度にすると、切断に伴う廃棄物の発生量を抑制できて、廃棄物の処理コストを抑制できる。

【0051】
なお、前記の実施形態においては、レーザ切断ヘッド5にL字状の光路11を形成したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、図7に示すように、筒状に形成されたレーザ切断ヘッド5の一端に設けられたレーザ光入射口から、レーザ切断ヘッド5の他端に設けられたレーザ光出射口に至る直線状の光路を形成することもできる。本構成のレーザ切断ヘッド5は、内部に反射ミラー12等の光路変更部材を備える必要がないので、レーザ切断ヘッド5の構成を簡略化できて、レーザ切断ヘッド5の低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 レーザ電源
2 レーザ発振器
3 分電盤
4 冷却水循環装置(チラー)
5 レーザ切断ヘッド
6 マニピュレータ
7 高圧アシストガス容器
8 制御装置
9 導光体
10 配管
11 光路
11a 第1光路
11b 第2光路
12 反射ミラー
13 フォーカスレンズ
14 アシストガス噴射口
21 CPU
22 RAM
23 ROM
24 HDD
25 入力部
26 出力部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6