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明細書 :ヨウ化水素分解触媒及び水素製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-034125 (P2018-034125A)
公開日 平成30年3月8日(2018.3.8)
発明の名称または考案の名称 ヨウ化水素分解触媒及び水素製造方法
国際特許分類 B01J  23/63        (2006.01)
B01J  23/89        (2006.01)
B01J  23/656       (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
C01B   3/02        (2006.01)
C01B   7/14        (2006.01)
C01B   7/13        (2006.01)
FI B01J 23/63 M
B01J 23/89 M
B01J 23/656 M
B01J 35/02 Z
C01B 3/02 D
C01B 7/14 A
C01B 7/13
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-170771 (P2016-170771)
出願日 平成28年9月1日(2016.9.1)
発明者または考案者 【氏名】野口 弘喜
【氏名】石原 達己
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100139114、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 貞嗣
【識別番号】100139103、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 卓志
【識別番号】100119220、【弁理士】、【氏名又は名称】片寄 武彦
【識別番号】100091971、【弁理士】、【氏名又は名称】米澤 明
【識別番号】100094787、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 健二
【識別番号】100095120、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 亘彦
【識別番号】100092495、【弁理士】、【氏名又は名称】蛭川 昌信
【識別番号】100088041、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 龍吉
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
Fターム 4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA11
4G169AA14
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC40A
4G169BC40B
4G169BC41A
4G169BC41B
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB81
4G169CC31
4G169DA05
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB44
要約 【課題】平衡に近い転化率でHI分解を行うことができると共に、失活しにくく、長期的な連続反応を促すことが可能なヨウ化水素分解触媒を提供する。
【解決手段】本発明に係るヨウ化水素分解触媒は、ヨウ化水素をヨウ素と水素に分解する反応を促進するヨウ化水素分解触媒であって、酸化セリウム単体又は金属または金属カチオンMが添加された酸化セリウムと、白金とを担持した多孔質物質と、からなることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ヨウ化水素をヨウ素と水素に分解する反応を促進するヨウ化水素分解触媒であって、
酸化セリウム単体又は金属または金属カチオン(以下、金属Mと略記)が添加された酸化セリウムと、白金とを担持した多孔質物質から構成されることを特徴とするヨウ化水素分解触媒。
【請求項2】
前記金属MがCu、Zr、Tb、Pr、Fe、Y、La、 Ni、Mnからなる群から選択される少なくとも一種の金属又は複数の金属の組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載のヨウ化水素分解触媒。
【請求項3】
前記多孔質物質が活性炭であること特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヨウ化水素分解触媒。
【請求項4】
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応工程と、
前記ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素分解工程を含み、
酸化セリウム単体又は金属Mが添加された酸化セリウムと、白金とを担持した多孔質物質と、からなるヨウ化水素分解触媒により、前記ヨウ化水素分解工程での反応を促進することを特徴とする水素製造方法。
【請求項5】
前記金属MがCu、Zr、Tb、Pr、Fe、Y、La、Ni、Mnからなる群から選択される少なくとも一種の金属又は複数の金属の組み合わせからなることを特徴とする請求項4に記載の水素製造方法。
【請求項6】
前記多孔質物質が活性炭であること特徴とする請求項4又は請求項5に記載の水素製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ化水素の分解反応における反応を促進するヨウ化水素分解触媒、及びこのようなヨウ化水素分解触媒を用いた水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水を熱分解することによって水素を製造する方法として、IS(Iodine Sulfur)法が知られている(特許文献1参照)。IS法は、以下の3つの工程から構成されている。
I ブンゼン反応工程
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成する。
II ヨウ化水素濃縮分解工程
ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後に、ヨウ化水素を分解し、製品としての水素とブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得る。
III 硫酸濃縮分解工程
ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に、硫酸を分解し、酸素とブンゼン反応工程へ供給する二酸化硫黄とを得る。この工程で得られる二酸化硫黄は、硫酸の分解により生成する三酸化硫黄をさらに分解することにより得られる。
【0003】
上記I~IIIの3つの工程はそれぞれが接続され、閉サイクルとされている。
【0004】
ブンゼン反応は発熱反応であるが、ヨウ化水素濃縮分解工程におけるヨウ化水素の分解反応、硫酸濃縮分解工程における硫酸の分解反応および硫酸の分解によって生成した三酸化硫黄の分解反応は吸熱反応とされる。したがって、IS法を実現する場合には、ヨウ化水素濃縮分解工程および硫酸濃縮分解工程に熱エネルギーを投入する。

【特許文献1】特開2004-107115号公報
【非特許文献1】P. Favuzza, C. Felici, L. Nardi, P. Tarquini, A. Tito, "Kinetics of hydrogen iodide decomposition over activated carbon catalysts in pellets",Applied Catalysis B: Environmental 105 (2011) 30-40
【非特許文献2】Xiangdong Lin, Yanwei Zhang, Zhihua Wang, Rui Wang, Junhu Zhou, Kefa Cen, "Hydrogen production by HI decomposition over nickel-ceria-zirconia catalysts via the sulfur-iodine thermochemical water-splitting cycle", Energy Conversion and Management 84 (2014) 664-670
【非特許文献3】Laijun Wang, Songzhi Hu, Daocai Li, Qi Han, Ping Zhang, Songzhe Chen, Jingming Xu, "Effects of the second metals on the active carbon supported Pt catalysts for HI decomposition in the iodine-sulfur cycle", International J. Hydrogen Energy 39 (2014) 14161 -14165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IS法においては、水素を生成するヨウ化水素の分解反応と、酸素を生成する三酸化硫黄分解反応はいずれも化学平衡により制約を受ける。特に、図7に示すようにヨウ化水素の分解反応では化学平衡の転化率が小さいため、プロセス内のHI、I2の循環量が多く、水素を製造する機器が大型化する。
【0006】
ヨウ化水素の分解反応を促進する目的で使用する触媒には、Ce系酸化物、Ni系触媒及び活性炭が主に提案されてきた(例えば、非特許文献1乃至非特許文献3など)が、Ce系酸化物及びNi系触媒の活性は必ずしも高くないため、これらの触媒のHI転化率が平衡転化率より低く、問題であった。
【0007】
また、ヨウ化水素の分解触媒として活性炭のみを用いた場合、生成したI2が触媒に吸着することで、触媒床の目詰まりが生じ易く、失活しやすいので、長期的な連続反応を行うことができず、定期的に再生しなければならない、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような問題点を解決するために、本発明に係るヨウ化水素分解触媒は、ヨウ化水素をヨウ素と水素に分解する反応を促進するヨウ化水素分解触媒であって、酸化セリウム単体又は金属または金属カチオン(以下、金属Mと略記)が添加された酸化セリウムと、白金とを担持した多孔質物質と、からなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るヨウ化水素分解触媒は、前記金属MがCu、Zr、Tb、Pr、Fe、Y、La、 Ni、Mnからなる群から選択される少なくとも一種の金属又は複数の金属の組み合わせからなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るヨウ化水素分解触媒は、前記多孔質物質が活性炭であること特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る水素製造方法は、ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応工程と、前記ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素分解工程を含み、酸化セリウム単体又は金属Mが添加された酸化セリウムと、白金とを担持した多孔質物質と、からなるヨウ化水素分解触媒により、前記ヨウ化水素分解工程での反応を促進することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る水素製造方法は、前記金属MがCu、Zr、Tb、Pr、Fe、Y、La、 Ni、Mnからなる群から選択される少なくとも一種の金属又は複数の金属の組み合わせからなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る水素製造方法は、前記多孔質物質が活性炭であること特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るヨウ化水素分解触媒によれば、平衡に近い転化率でHI分解を行うことができると共に、失活しにくく、長期的な連続反応を促すことが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る水素製造方法によれば、平衡に近い転化率でHI分解を行うことができると共に、失活しにくく、長期的な連続反応を行うことが可能なヨウ化水素分解触媒により、ヨウ化水素分解工程での反応促進を行うので、水素の製造効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る水素製造方法を実現する水素製造装置の一例を示した概略構成図である。
【図2】ヨウ化水素分解器の縦断面図である。
【図3】本発明に係るヨウ化水素分解触媒と、酸化セリウム(CeO2)単体を多孔質物質に担持させた比較例と、多孔質物質単体の比較例の平衡達成率の温度依存性を示す図である。
【図4】本発明に係るヨウ化水素分解触媒と、酸化セリウム(CeO2)単体を多孔質物質に担持させた比較例と、白金を多孔質物質に担持させた比較例と、多孔質物質単体の比較例の平衡達成率の温度依存性を示す図である。
【図5】Cu添加CeO2を多孔質物質に担持した本発明に係るヨウ化水素分解触媒の特性を示す図である。
【図6】本発明に係るヨウ化水素分解触媒116の経時変化を示す図である。
【図7】ヨウ化水素の分解反応における転化率の温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。 図1は水素製造方法を実現する水素製造装置の一例を示した概略構成図である。

【0018】
水素製造装置1は、原料である水を熱分解によって分解し、製品である水素(さらには酸素)を製造するものである。水素製造装置1は、IS(Iodine Sulfur)法を採用しており、ブンゼン反応装置2と、ヨウ化水素濃縮分解装置3と、硫酸濃縮分解装置4とを備えている。

【0019】
ヨウ化水素濃縮分解装置3および硫酸濃縮分解装置4へ供給される熱源としては、図示しない高温ガス炉の核熱エネルギー、太陽熱などが用いられる。すなわち、中間熱交換器10を介して得られる二次ヘリウムガスの顕熱を利用する。

【0020】
中間熱交換器10は、高温ガス炉の核熱によって高温とされた一次ヘリウムガスと、水素製造装置1側に熱を与える二次ヘリウムガスとの間で熱交換を行わせるものである。中間熱交換器10には、一次ヘリウムガスが流れる一次側配管10aと、二次ヘリウムガスが流れる二次側配管10bとが接続されている。二次側配管10bを流れる二次ヘリウムガスは、中間熱交換器10において約880℃まで加熱され、その圧力は約4MPaとされる。

【0021】
中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスは、後述する三酸化硫黄分解器17、硫酸分解器15及びヨウ化水素分解器11との間で熱交換を行う。

【0022】
ブンゼン反応装置2は、ブンゼン反応器5と、二相分離器7とを備えている。

【0023】
ブンゼン反応器5には、原料である水(H2O)と、ヨウ化水素濃縮分解装置3から供給されるヨウ素(I2)と、硫酸濃縮分解装置4から供給される二酸化硫黄(SO2)が供給される。ブンゼン反応器5では、例えば0.1MPa(ゲージ圧)、100℃の条件下で、下式によるブンゼン反応が行われ、ヨウ化水素水溶液および硫酸水溶液が生成される。なお、ブンゼン反応は発熱反応であるため、外部からエネルギーが投入されることはない。

【0024】
SO2(g)+I2(L)+2H2O→H2SO4(aq)+2HI(aq) ・・・(1)
二相分離器7では、ブンゼン反応器5において得られた硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を分離する。二相分離器7内は、例えば0.1MPa(ゲージ圧)、100℃の条件とされる。二相分離器7において分離されたヨウ化水素水溶液および硫酸水溶液は、それぞれ、ヨウ化水素濃縮分解装置3および硫酸濃縮分解装置4へと導かれる。

【0025】
ヨウ化水素濃縮分解装置3は、ヨウ化水素精製濃縮器9と、ヨウ化水素分解器11とを備えている。

【0026】
ヨウ化水素精製濃縮器9は、例えば1MPa(ゲージ圧)、100~234℃の条件下で、ヨウ化水素水溶液を精製するとともに、ヨウ化水素水溶液を濃縮する。ヨウ化水素は、ヨウ化水素精製濃縮器9において気化され、ヨウ化水素分解器11へと導かれる。ヨウ化水素精製濃縮器9には、精製濃縮過程に必要な熱エネルギーが投入される。

【0027】
ヨウ化水素分解器11は、例えば1MPa(ゲージ圧)、450℃の条件下で、下式によるヨウ化水素の分解を行う。

【0028】
2HI(g)→H2(g)+I2(g) ・・・(2)
上記ヨウ化水素分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管13との熱交換によって(2)式のヨウ化水素分解反応が進行する。

【0029】
ヨウ化水素分解器11において分解された水素は、製品として取り出される。また、ヨウ化水素分解器11において分解されたヨウ素は、ブンゼン反応器5へと導かれる。未反応のヨウ化水素は、ヨウ化水素精製濃縮器9へと返送される。ヨウ化水素分解器11のより詳細な構成について後述する。

【0030】
硫酸濃縮分解装置4は、硫酸精製濃縮器14と、硫酸分解器15と、三酸化硫黄分解器17とを備えている。

【0031】
硫酸精製濃縮器14は、例えば0.1MPa(ゲージ圧)、100~391℃の条件下で、硫酸を精製するとともに、硫酸水溶液を濃縮する。硫酸精製濃縮器14には、精製濃縮過程に必要な熱エネルギーが投入される。硫酸精製濃縮器14において硫酸水溶液から分離された水は、ブンゼン反応器5へと送られる。硫酸精製濃縮器14において精製濃縮された硫酸(液体)は、硫酸分解器15へと導かれる。

【0032】
硫酸分解器15は、例えば2MPa(ゲージ圧)、391~527℃の条件下で、下式による硫酸の分解を行う。

【0033】
2SO4(L)→H20(g)+SO3(g) ・・・(3)
上記硫酸分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管19との熱交換によって(3)式の硫酸分解反応が進行する。

【0034】
硫酸分解器15において分解された三酸化硫黄と水蒸気は、三酸化硫黄分解器17へと導かれる。

【0035】
三酸化硫黄分解器17は、例えば2MPa(ゲージ圧)、527~850℃の条件下で、下式による三酸化硫黄の分解を行う。

【0036】
SO3(g)→SO2(g)+1/2O2(g) ・・・(4)
上記三酸化硫黄分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管20との熱交換によって(4)式の三酸化硫黄分解反応が進行する。図1に示されているように、三酸化硫黄分解器17には最も高い温度を導くために、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスは最初に三酸化硫黄分解器17に導かれるようになっている。三酸化硫黄分解器17において熱交換を終えた二次ヘリウムガスは、硫酸分解器15及びヨウ化水素分解器11において熱交換を行う。

【0037】
三酸化硫黄分解器17において生成した酸素は、製品として系外に取り出される。また、三酸化硫黄分解器17において生成した二酸化硫黄は、少量の水蒸気とともに、ブンゼン反応器5へと導かれる。

【0038】
このように、本実施形態にかかる水素製造装置1によれば、原料として水をブンゼン反応装置2へ投入することにより、製品としての水素がヨウ化水素濃縮分解装置3から、酸素が硫酸濃縮分解装置4から得ることができる。

【0039】
次に、本発明に係るヨウ化水素分解触媒116が用いられるヨウ化水素分解器のより詳細な構成について説明する。ヨウ化水素分解器11の概略を図2に示す。

【0040】
ヨウ化水素分解器11は、上鏡101、胴102、底板103、伝熱管120から構成された反応容器である。伝熱管120の中に、ヨウ化水素ガスの分解を促進するヨウ化水素分解触媒116を装荷している。ヨウ化水素ガスの分解反応は吸熱反応なので、ヨウ化水素ガスの温度が低下しないよう、加熱用ガスを用いて加熱できるようこれを伝熱管120の外部に流通させる。伝熱管120は、胴102の上部に設けられた上部管板110と、下部に設けられた下部管板111に取り付けられている。胴102には、加熱用ガスの流速を上げるための邪魔板125が設置されている。

【0041】
ヨウ化水素ガスは、胴102の下部に設けられたヨウ化水素ガス入口ノズル108から投入され、伝熱管120の内部を上昇して胴102の上部に設けられた混合ガス出口ノズル105から次工程へ送られる。

【0042】
加熱用ガスは、胴102の上部に設けられた加熱用ガス入口ノズル109から入り、伝熱管120の外部を下降しながら、伝熱管120の内部にあるヨウ化水素ガス又は混合ガスを加熱して、胴102の下部に設けられた加熱用ガス出口ノズル104から系統へ戻る。

【0043】
ヨウ化水素ガス入口ノズル108から入ったヨウ化水素ガスは、ヨウ化水素分解触媒116が充填された伝熱管120の内部を上昇しながら分解して混合ガスとなる。混合ガスは、伝熱管120の上部の上鏡101の混合ガス出口ノズル105から、水素ガス及び未分解のヨウ化水素ガスが取り出される。

【0044】
次に、上記のようなヨウ化水素分解器11に用いられる、本発明に係るヨウ化水素分解触媒116について説明する。

【0045】
ヨウ化水素分解器11で用いる本発明に係るヨウ化水素分解触媒は、ヨウ化水素をヨウ素と水素に分解する反応((2)式の反応)を促進するヨウ化水素分解触媒であって、酸化セリウム(CeO2)の単体又は金属または金属カチオン(以下、金属Mと略記)が添加された酸化セリウム(CeO2)と、白金(Pt)とを担持した多孔質物質から構成されることを特徴としている。ここで、多孔質物質としては活性炭やゼオライト、アルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)などを用いることができる。

【0046】
また、ヨウ化水素分解触媒に用いる金属Mとしては、Cu、Zr、Tb、Pr、Fe、Y、La、 Ni、Mnからなる群から選択される少なくとも一種の金属を用いることができる。さらに、金属Mとしては、Cu、Zr、Tb、Pr、Fe、Y、La、 Ni、Mnからなる群から選択される複数の金属の組み合わせを用いるようにしてもよい。

【0047】
以下、酸化セリウム(CeO2)に金属Mを添加したCe1-xMxO2を、単にCeMO2と表記することがある。なお、金属Mを添加する割合(x)は、金属Mの酸化セリウム(CeO2)への固溶量から、0.1≦x≦0.3であることが好ましい。

【0048】
ここで、酸化セリウム(CeO2)に添加する金属Mについては、活性向上に関連する酸素欠陥の導入とその移動に寄与する電子伝導を発現する元素を選定した。この観点で選択した金属Mは、具体的には、Cu, Zr, Tb, Pr, Fe, Y, La, Ni, Mnである。

【0049】
酸化セリウム(CeO2)に金属Mを添加する方法について説明する。本実施形態では、多孔質物質として活性炭を用いた。また、本実施形態で用いた活性炭は、M563(大阪ガスケミカル株式会社製、白鷺活性炭 表面積1500m2/g程度)、又は、MSC30(関西熱化学株式会社製、比表面積:3300m2/g)のいずれかである。

【0050】
以下、本発明に係るヨウ化水素分解触媒の製作手順を以下に示す。
(1)活性炭をイオン交換水に懸濁後、いったん煮沸し冷却する。
(2)硝酸セリウム(Ce(NO3)3)と元素M(の硝酸塩)を所定の混合比で混合した水溶液を作成する。混合比は、例えばCe0.9M0.1O2の酸化物の作製を所望する場合、元素の比で9:1になるように調整する。
(3)(1)の活性炭に(2)の水溶液を混合し、蒸発乾固させる。ここで、(2)の水溶液の量は、活性炭との重量比で(CeMO2の担持量が)10~30wt%になるように調整する。(活性炭との重量比は、元素Mを含んだ二酸化セリアの重量比)
(4)(3)で得た固体を真空乾燥器で、80℃で一晩乾燥、N2中で400℃、2h焼成後に、再びイオン交換水に懸濁する。
(5)塩化白金酸(H2PtCl6,H2PtCl4)を水に溶解させ、活性炭に対してPtが1wt%になるように添加し、蒸発乾固させる。
(6)真空乾燥器で、80℃で一晩乾燥後、500℃で1時間、水素還元(100ml/min)を行い、本発明に係るヨウ化水素分解触媒を得る。

【0051】
次に、本発明に係るヨウ化水素分解触媒と、酸化セリウム(CeO2)単体を多孔質物質に担持させた比較例と、多孔質物質単体の比較例の平衡達成率の温度依存性について図3を参照して説明する。

【0052】
MSC30とM562は表面積が異なる活性炭であり、それぞれ3300m2/g、1500m2/gである。高表面積の活性炭を担体とするほど、担持されたCeO2とPtは高分散化し、露出表面積が増加するので、高いヨウ化水素分解活性が得られるものと考えられる。

【0053】
次に、本発明に係るヨウ化水素分解触媒と、酸化セリウム(CeO2)単体を多孔質物質に担持させた比較例と、白金を多孔質物質に担持させた比較例と、多孔質物質単体の比較例の平衡達成率の温度依存性について図4を参照して説明する。

【0054】
図4には金属MとしてCu, Zr, Tb, Pr, Fe, Y, La, Ni, Mn,を用いた場合の結果が含まれている。

【0055】
図4は、ヨウ化水素分解のSV=1000h-1における活性を示している。活性を示す指標として平衡達成率を使用した。平衡達成率とは、使用した触媒のヨウ化水素転化率の平衡転化率に対する割合を示すものである。

【0056】
図4中には、比較のため、活性炭のみのものの結果、活性炭に白金を担持させたものの結果も併せて示されている。本発明に係るヨウ化水素分解触媒はすべての温度域において、活性炭に比べて高い活性を示していることがわかる。また、本発明に係るヨウ化水素分解触媒において、酸化セリウム(CeO2)に添加する金属Mについては、Cu, Zr, Tb, Pr, Fe, Y, La, Ni, Mnのいずれも良好な結果を示すことがわかる。

【0057】
また、本発明に係るヨウ化水素分解触媒では、平衡達成率が100%を超えていたが、これは、反応初期における触媒上へのI2の吸着による平衡のシフトによるものであり、吸着が平衡になるとほぼ実験誤差内で、平衡転化率となる。つまり、ほぼ平衡支配条件までヨウ化水素の分解を行うことができる。

【0058】
図5にはM563活性炭で比較的活性の高かったCu添加CeO2を担持したPt-CeCuO2/MSC30, Pt-CeCuO2/M56の活性の温度依存性を示した。なお、図5の凡例中における、例えば「1%Pt-30%CeCuO2/MSC-30」は、Ptの担持量が1wt%であり、Ce0.9Cu0.1O2の担持量が30wt%であることを示している。本発明に係るヨウ化水素分解触媒は300℃から500℃までのすべての温度で、ほぼ平衡転化率を達成できることが分かる。そこで、Cu添加CeO2を担持した触媒が優れた活性を示すことが分かる。

【0059】
図6は本発明に係るヨウ化水素分解触媒の経時変化を示す。図6の結果は、Pt-CeCuO2/MSC30, Pt-CeCuO2/M563に基づいている。

【0060】
図6に示すように100~200時間にわたって、ほぼ平衡転化率の高い活性を維持していることが分かる。このように、本発明に係るヨウ化水素分解触媒は従来の課題であった失活を生じることなく、長期的な安定性を有している。

【0061】
以上のように、本発明に係るヨウ化水素分解触媒によれば、平衡に近い転化率でHI分解を行うことができると共に、失活しにくく、長期的な連続反応を促すことが可能となる。

【0062】
また、本発明に係る水素製造方法によれば、平衡に近い転化率でHI分解を行うことができると共に、失活しにくく、長期的な連続反応を行うことが可能なヨウ化水素分解触媒により、ヨウ化水素分解工程での反応促進を行うので、水素の製造効率が向上する。

【0063】
また、本発明に係るヨウ化水素分解触媒は、300℃の低温域からヨウ化水素分解反応の平衡活性を達成できること、高い空間速度でも活性を維持できること、長期間安定した性能を維持できることを見出した。

【0064】
このことから、本発明に係るヨウ化水素分解触媒を導入することで、比較的低温の300℃でも平衡転化率でのヨウ化水素分解反応が可能となり、熱効率の向上と触媒量低減によるプロセス機器の小型化、触媒の交換頻度の低減が可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1・・・水素製造装置
2・・・ブンゼン反応装置
3・・・ヨウ化水素濃縮分解装置
4・・・硫酸濃縮分解装置
5・・・ブンゼン反応器
6・・・水分膜分離装置
7・・・二相分離器
9・・・ヨウ化水素精製濃縮器
10・・・中間熱交換器
10a・・・一次側配管
10b・・・二次側配管
11・・・ヨウ化水素分解器
14・・・硫酸精製濃縮器
15・・・硫酸分解器
17・・・三酸化硫黄分解器
19・・・ガス配管
20・・・ガス配管
101・・・上鏡
102・・・胴
103・・・底板
104・・・加熱用ガス出口ノズル
105・・・混合ガス出口ノズル
108・・・ヨウ化水素ガス入口ノズル
109・・・加熱用ガス入口ノズル
110・・・上部管板
111・・・下部管板
116・・・ヨウ化水素分解触媒
120・・・伝熱管
125・・・邪魔板
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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