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明細書 :水生生物用標識剤及び水生生物の標識方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-088875 (P2018-088875A)
公開日 平成30年6月14日(2018.6.14)
発明の名称または考案の名称 水生生物用標識剤及び水生生物の標識方法
国際特許分類 A01K  61/90        (2017.01)
A01K  11/00        (2006.01)
FI A01K 61/00 D
A01K 11/00 Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-235699 (P2016-235699)
出願日 平成28年12月5日(2016.12.5)
発明者または考案者 【氏名】新留 康郎
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
審査請求 未請求
テーマコード 2B104
Fターム 2B104GA02
要約 【課題】標識対象を損傷することなく、食品衛生上安全に標識できる水生生物用標識剤及び水生生物の標識方法を提供する。
【解決手段】水生生物用標識剤は、金属ナノ粒子を含む。金属ナノ粒子は、金ナノ粒子であってもよい。金属ナノ粒子は、金属種の異なる金属を含む、こととしてもよい。この場合、金属ナノ粒子は、コア部及び該コア部を内包するシェル部からなるコアシェル構造であって、コア部は、第1の金属を含み、シェル部は、第1の金属と金属種が異なる第2の金属を含む、こととしてもよい。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
金属ナノ粒子を含む、水生生物用標識剤。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子は、
金ナノ粒子である、
請求項1に記載の水生生物用標識剤。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子は、
金属種の異なる金属を含む、
請求項1に記載の水生生物用標識剤。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子は、
コア部及び該コア部を内包するシェル部からなるコアシェル構造であって、
前記コア部は、
第1の金属を含み、
前記シェル部は、
前記第1の金属と金属種が異なる第2の金属を含む、
請求項3に記載の水生生物用標識剤。
【請求項5】
前記金属は、
金、銀、ニッケル及び銅からなる群から選択される、
請求項3又は4に記載の水生生物用標識剤。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子は、
有機化合物で修飾されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の水生生物用標識剤。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の水生生物用標識剤の溶液を、水生生物に接触させる接触工程を含む、水生生物の標識方法。
【請求項8】
前記水生生物用標識剤の溶液における前記金属ナノ粒子の濃度は、
2μM未満である、
請求項7に記載の水生生物の標識方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物用標識剤及び水生生物の標識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の生態調査及び食材のトレーサビリティの確保等のために、動物個体を標識する場合がある。ウシ、ブタ及びヒツジ等の陸生動物の標識には、例えば、識別情報が記載された耳標等が用いられる。魚等の水生動物の標識には、鰭の切除、焼き入れ、並びにアンカータグ及びリボンタグの使用等の体外標識法に加え、標識剤として色素又は蛍光物質等を体内に注入する体内標識法が実施されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水不溶性で着色性を有する粉末を、寒天溶液に分散させた魚体用の標識剤が開示されている。該標識剤は、標識対象となる魚体の皮下に注入される。また、特許文献2には、いずれも着色料であるコチニール色素、ラック色素、又は漢方薬に用いられるシコン色素からなる魚類の標識剤が開示されている。該標識剤を溶解した標識液に、標識対象の魚の受精卵、ふ化仔魚又は稚魚を浸漬することで、耳石、鱗、棘、下鰓蓋骨及び軟条等の硬組織を染色できる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-209222号公報
【特許文献2】特開2008-067648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の体外標識法における鰭の切除及び焼き入れの場合には、組織が再生してしまい、標識した個体を識別できないことがある。アンカータグ及びリボンタグの場合は、水に長期間曝されることによる退色及び脱落等で、標識した個体を識別できないことがある。
【0006】
一方、体内標識法では、上記特許文献1のように、魚体の皮下に標識剤を注入する場合の魚体の損傷が無視できない。小型魚又は稚魚等のように魚体が小さい場合、あるいは個体が多数の場合には、標識剤を注入するのは煩雑で困難である。これに対し、上記特許文献2に開示された標識剤は、魚体への注入は要しないが、着色料及び漢方薬の魚体又は環境への影響がないとは言い切れない。さらに、上記特許文献2に開示された標識剤は、標識対象を食材として提供される場合に、着色料による不自然な発色が不都合であるうえ、食品衛生上の安全性が懸念される。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、標識対象を損傷することなく、食品衛生上安全に標識できる水生生物用標識剤及び水生生物の標識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る水生生物用標識剤は、
金属ナノ粒子を含む。
【0009】
この場合、前記金属ナノ粒子は、
金ナノ粒子である、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記金属ナノ粒子は、
金属種の異なる金属を含む、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記金属ナノ粒子は、
コア部及び該コア部を内包するシェル部からなるコアシェル構造であって、
前記コア部は、
第1の金属を含み、
前記シェル部は、
前記第1の金属と金属種が異なる第2の金属を含む、
こととしてもよい。
【0012】
また、前記金属は、
金、銀、ニッケル及び銅からなる群から選択される、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記金属ナノ粒子は、
有機化合物で修飾されている、
こととしてもよい。
【0014】
本発明の第2の観点に係る水生生物の標識方法は、
上記本発明の第1の観点に係る水生生物用標識剤の溶液を、水生生物に接触させる接触工程を含む。
【0015】
この場合、前記水生生物用標識剤の溶液における前記金属ナノ粒子の濃度は、
2μM未満である、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、標識対象を損傷することなく、食品衛生上安全に標識できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1を投与したゼブラフィッシュの凍結切片において測定されたマススペクトルを示す図である。
【図2】実施例3に接触させたゼブラフィッシュの鱗から検出された金イオンのシグナル強度を示す図である。
【図3】実施例3に接触させたゼブラフィッシュのエラから検出された金イオンのシグナル強度を示す図である。
【図4】実施例3に接触させたゼブラフィッシュの体表から検出された金イオンのシグナル強度を示す。
【図5】実施例2の吸収スペクトルを示す図である。
【図6】実施例4の吸収スペクトルを示す図である。
【図7】実施例5の吸収スペクトルを示す図である。
【図8】実施例6のマススペクトルを示す図である。
【図9】実施例7のマススペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。

【0019】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。本実施の形態に係る水生生物用標識剤は、金属ナノ粒子を含む。金属ナノ粒子の粒径は、nmオーダーであれば任意である。金属ナノ粒子の粒径は、例えば、1~1000nm、5~800nm、10~600nm、50~500nm又は100~400nmである。金属ナノ粒子は、公知の方法で製造できる。金属ナノ粒子の製造方法としては、例えば、化学還元法、電解還元法及びレーザーアブレーション法等が挙げられる。なお、市販の金属ナノ粒子を当該水生生物用標識剤に用いてもよい。

【0020】
金属ナノ粒子は、凝集を防ぎ、安定に存在するために、保護剤を含んでもよい。保護剤としては、金属ナノ粒子の表面と配位結合することにより安定化するアルカンチオール及び金属ナノ粒子の表面に吸着して安定化する界面活性剤等が挙げられる。なお、金属ナノ粒子は、裸の状態のものを用いてもよい。

【0021】
金属ナノ粒子としては、例えば、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、ニッケルナノ粒子及び銅ナノ粒子が挙げられる。特に金ナノ粒子は、生体適合性が高く、飲用されるほどに生体毒性が極めて低い点で金属ナノ粒子として好適である。

【0022】
上記の金属ナノ粒子は、有機化合物で修飾されてもよい。有機化合物は、特に限定されないが、例えば、アニオン性分子、カチオン性分子及び中性分子である。アニオン性分子は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)(以下、単に「PSS」とする)である。カチオン性分子は、例えば、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(以下、単に「PDDA」とする)である。中性分子としては、例えば、タンパク質、生分解性ペプチド、及びポリエチレングリコール(PEG)等が挙げられる。

【0023】
例えば、カチオン性界面活性剤で保護された金属ナノ粒子をアニオン性分子で修飾してもよいし、アニオン性分子で修飾した該金属ナノ粒子をカチオン性分子でさらに修飾してもよい。好適には、カチオン性界面活性剤で保護された金属ナノ粒子をPSSで修飾し、さらにPDDAで修飾してもよい。

【0024】
本実施の形態に係る水生生物用標識剤は、水生生物の標識に用いることができる。水生生物は、特に限定されず、生活史の全部又は一部が、海水、淡水問わず水中である生物である。例えば、水生生物は魚介類である。水生生物用標識剤は、好ましくは、稚魚、小型魚、魚卵等に使用され、好適には、シラスウナギ又はウナギに使用される。

【0025】
水生生物用標識剤を用いた水生生物の標識方法の使用方法の一例について説明する。当該水生生物の標識方法は、上記水生生物用標識剤の溶液を、水生生物に接触させる接触工程を含む。水生生物用標識剤の溶液の溶媒は、特に限定されず、標識対象の水生生物に適したものを用いればよい。水生生物用標識剤の溶液の溶媒は、例えば、水又は海水である。

【0026】
水生生物用標識剤の溶液における金属ナノ粒子の濃度は、任意であるが、例えば0.5nM~1μM、0.5~100nM、0.5~50nM又は1.0~10nMである。好ましくは、水生生物用標識剤の溶液における金属ナノ粒子の濃度は、2μM未満である。水生生物用標識剤の溶液を、水生生物に接触させるには、水生生物用標識剤を水生生物に直接塗布してもよい。好ましくは、接触工程では、水生生物用標識剤の溶液中で所定時間、水生生物が飼育される。飼育時間は任意であるが、例えば1~60分、3~40分又は5~15分である。

【0027】
上述の水生生物の標識方法で標識された水生生物に付与された金属ナノ粒子は、好ましくは質量分析(Mass Spectrometry、以下単に「MS」ともいう)によって検出される。特に、金属ナノ粒子の検出には、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization、以下単に「MALDI」ともいう)-MS又は誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下単に「ICP」ともいう)-MSが好適である。質量分析装置は、特に限定されず、例えば、Bruker社製のAutoflex(商標)である。

【0028】
MALDI-MSで検出する場合、酸化インジウム錫(ITO)等の試料用基板上に、水生生物の一部、例えばうろこ、目の粘膜、エラ又は皮膚等を配置する。試料用基板に所定波長のパルスレーザー光を照射することで、金属ナノ粒子は金属イオンを脱離する。放出された金属イオンは高感度で検出することができる。例えば、金属ナノ粒子として、金ナノ粒子を用いた場合、波長が355nmのパルスレーザー光を吸収した金ナノ粒子は、主としてAu(m/z=197)、Au(m/z=394)、Au(m/z=591)の3種類の金イオンを脱離する。これらのイオンが検出された場合、当該水生生物は、上記の水生生物用標識剤で標識されたものであると識別できる。なお、試料用基板に配置するサンプルは、水生生物の組織切片でもよい。また、試料用基板に水生生物の体表を擦り付けてもよい。

【0029】
本実施の形態に係る水生生物用標識剤によれば、高感度かつ簡便に検出できる金属ナノ粒子を含むため、標識された水生生物を容易に精度よく識別することができる。当該水生生物用標識剤を水生生物に接触させるだけで標識できるので、注入のための針等で標識対象を損傷せずに標識できる。また、金属ナノ粒子は、生体毒性が低いことに加え、微量でも検出可能で金属ナノ粒子の使用量を抑えて標識することができるため、食品衛生上安全性が高く、自然環境にもほとんど影響しない。

【0030】
また、上記金属ナノ粒子は、アニオン性分子、カチオン性分子及び中性分子等の有機化合物で修飾されてもよいこととした。こうすることで、金属ナノ粒子が水生生物の体表粘膜等に浸透しやすくなり、より確実かつ長期間に渡って、標識が維持される。特に、魚の体表面は、マイナスに荷電している傾向があるため、金属ナノ粒子をアニオン性分子で修飾することで、異物としての排除を回避、すなわち金属ナノ粒子のステルス性を高めることができる。一方、金属ナノ粒子の表面をカチオン性分子で修飾することで、金属ナノ粒子が静電相互作用で体表面に滞留しやすくなる。なお、金属ナノ粒子は、生分解性ペプチド、例えばポリリジン等で修飾してもよい。

【0031】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態では、上記実施の形態1と異なる点について主に説明する。

【0032】
上記金属ナノ粒子は、金属種の異なる金属を含んでもよい。金属ナノ粒子として、多元金属ナノ粒子を用いてもよい。金属ナノ粒子が金属種の異なる金属を含む場合、好ましくは、金属ナノ粒子は、コア部及び該コア部を内包するシェル部からなるコアシェル構造である。コアシェル構造では、コア部が金属ナノ粒子の中心に配置され、シェル部がコア部の周辺に配置される。

【0033】
好適には、コア部は、第1の金属を含み、シェル部は、第1の金属と金属種が異なる第2の金属を含む。例えば、金属は、金、銀、ニッケル及び銅からなる群から選択される。金属ナノ粒子の構造としてコアシェル構造を採用する場合、好ましくは、第1の金属が銀、ニッケル又は銅で、第2の金属が金である。より好ましくは、第1の金属及び第2の金属は、それぞれ銀及び金である。

【0034】
金属種の異なる金属を含む金属ナノ粒子は、公知の方法で合成できる。例えば、上述のコアシェル構造の場合、逐次還元法又は同時還元法が利用できる。逐次還元法では、コアシェル構造は、第1の金属を還元してコア部となる粒子を合成後、該粒子を第2の金属で封入することで合成される。同時還元法では、例えば、第1の金属の塩化物及び第2の金属の塩化物をポリビニルピロリドン(PVP)等の分散剤存在下で加熱還元することで、コアシェル構造の金属ナノ粒子を合成できる。この他、第1の金属を含む金属ナノ粒子と第2の金属を含む金属ナノ粒子を混合し、自己組織化によってコアシェル化させてもよい。

【0035】
なお、金属ナノ粒子は、上記のコアシェル構造の他に、第1の金属を含む半球と第2の金属を含む半球とが合体して形成される半球合体構造、及び第1の金属を含む粒子と、第2の金属を含む粒子とが集合したクラスター・イン・クラスター構造等でもよい。

【0036】
本実施の形態では、水生生物用標識剤に含まれる金属ナノ粒子が、金属種の異なる金属を含んでもよいこととした。こうすることで、水生生物の多様な標識が可能になる。例えば、単一の金属ナノ粒子を含む水生生物用標識剤に加えて、複数の金属種の金属を含む生生物用標識剤を併用することで、単一の金属イオンが検出された水生生物と、異なる金属種の金属イオンが検出された水生生物とを識別することができる。例えば、金属ナノ粒子が金及び銀を含む場合、上述の金イオンに加えて、金イオンとは質量が相違するAg(m/z=108)、Ag(m/z=216)、Ag(m/z=324)の3種類の銀イオンが検出される。

【0037】
また、上記金属ナノ粒子は、コア部及び該コア部を内包するシェル部からなるコアシェル構造であってもよいこととした。例えば、水生生物の体表面と直接相互作用するシェル部が金を含み、コア部が銀を含むことで、生体親和性が良好な金による体表面への金属ナノ粒子の効率的な浸透を確保しつつ、銀による標識も可能になる。この場合、金と銀との重量比が第1の重量比である金属ナノ粒子と、金と銀との重量比が第1の重量比と異なる第2の重量比である金属ナノ粒子と、を用いることで、金イオンと銀イオンのシグナル強度の比を変化させることができる。これにより、さらに多くの標識が可能になる。

【0038】
なお、金属ナノ粒子が金属種の異なる金属を含む場合、金属は、金、銀、ニッケル及び銅からなる群から選択されてもよいこととした。特に金は、化学的に安定で、生体親和性が高いため、長期間の標識が可能である。さらに、金は環境中及び生体中にほとんど含まれておらず、バックグラウンドが低いと言える。このため、検出の際のノイズがなく、高精度に検出できる。
【実施例】
【0039】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
(金ナノ粒子の調製)
カチオン性界面活性剤で保護された棒状の金ナノ粒子である金ナノロッド(以下、「AuNR」とする)溶液(Au-W4、大日本塗料社製)1mLをチューブに入れ、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。該チューブに超純水を1mL加え、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。続いて、該チューブに2mg/mLのPSS溶液を1mL加え、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。再度、同様にPSS溶液を加え、遠心分離後、上澄みを除去し、試料1を得た。滅菌済み10倍希釈PBSバッファー溶液を上記チューブの試料1に25μL入れ、撹拌した。得られたPSS修飾したAuNRの溶液を実施例1とした。一方、試料1に超純水を1mL加え、得られたPSS修飾したAuNRの水溶液を実施例2とした。
【実施例】
【0041】
上述の試料1に超純水を500μL加え、試料2を得た。試料2と同量の20mg/mL PDDA溶液をスターラーで撹拌しつつ、ゆっくりと試料2を添加した。得られた溶液1mLをチューブに入れ、5000×Gで4分間遠心分離し、上澄みを除去した。該チューブに超純水を1mL加え、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。さらに、該チューブに超純水を1mL加え、PSS及びPDDAで修飾したAuNRの溶液を実施例3とした。
【実施例】
【0042】
AuNR溶液1mLをチューブに入れ、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。該チューブに超純水を1mL加え、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。次に、該チューブに、1mg/mL Poly-L-Lysine溶液を1mL加え、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。再度、同様にPoly-L-Lysine溶液を加え、遠心分離後、上澄みを除去した。さらに、当該チューブに超純水を1mL加え、得られたPoly-L-Lysine修飾したAuNRの水溶液を実施例4とした。
【実施例】
【0043】
AuNR溶液1mLをチューブに入れ、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。該チューブに超純水を1mL加え、15000×Gで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。次に、該チューブに、超純水1mLと0.05g/mL PEG溶液20μLとを加え、2日間放置した。得られたPEG修飾したAuNRの水溶液を実施例5とした。
【実施例】
【0044】
(ゼブラフィッシュの腹腔に投与した金ナノ粒子の動態)
17℃の水に入れたゼブラフィッシュの動きが鈍くなったことを確認後、該ゼブラフィッシュを7℃の水に移し、低温麻酔をかけた。低温麻酔をかけたゼブラフィッシュをシャーレ上に仰向けに固定し、マイクロシリンジと34Gの注射針とを用いて、ゼブラフィッシュの腹腔に15mMの実施例1を10μL注入した。注射後のゼブラフィッシュを17℃の水に入れ、低温麻酔が解けて動き始めたら25℃の水に移すことで麻酔を完全に解いた。当該ゼブラフィッシュを飼育水中で30日間飼育した。飼育後、ゼブラフィッシュを次の手順で処理し、凍結切片とした。
【実施例】
【0045】
まず、ゼブラフィッシュを0.16g/Lのトリカインに30分浸漬することで麻酔した。次に、魚体を4%パラホルムアルデヒドに24時間浸漬し、固定した。魚体を0.1Mリン酸バッファーに4時間浸漬し、0.5M EDTA-2Naに24時間浸漬することで脱灰した。続いて、切片作製の前処理として20%スクロース溶液に魚体を12時間浸漬した。OCTコンパウンドに魚体を浸漬し、液体窒素で凍結させて包埋した。クライオスタットミクロトームで20μmの厚さにスライスし、ITO基板上にキャストした。質量分析装置(TOF-MS、Autoflex、Bruker社製)を用いて金イオン(Au、Au及びAu)の脱離を調べた。
【実施例】
【0046】
(結果)
凍結切片について測定したマススペクトルを図1に示す。ゼブラフィッシュの凍結切片で、Au、Au及びAuを検出できた。
【実施例】
【0047】
(ゼブラフィッシュの体表への金ナノ粒子の吸着実験1)
150μMに希釈した実施例3にゼブラフィッシュを入れ、10分間泳がせた。ゼブラフィッシュを飼育水中に移し、一定期間飼育した。実施例3に泳がせた直後、及び一定期間飼育したゼブラフィッシュを安楽死させ、鱗及びエラをITO基板上にキャストし、質量分析装置を用いて金イオンの脱離を調べた。金イオンのシグナル強度は、各経過時間について鱗又はエラの複数個のスポットについて測定した。
【実施例】
【0048】
(結果)
図2は、実施例3に浸漬後、経過時間ごとに鱗から検出されたAuのシグナル強度を示す。実施例3に浸漬から7日経過後でも鱗から金イオンを検出できた。
【実施例】
【0049】
図3は、実施例3に浸漬後、経過時間ごとにエラから検出されたAuのシグナル強度を示す。エラでは、実施例3に浸漬から1日経過後まで金イオンを検出できたが、2日目以降は金イオンを検出できなかった。
【実施例】
【0050】
(ゼブラフィッシュの体表への金ナノ粒子の吸着実験2)
1.5μMに希釈した実施例3にゼブラフィッシュを入れ、10分間泳がせた。ゼブラフィッシュを飼育水中に移し、一定期間飼育した。ゼブラフィッシュを安楽死させ、体表をITO基板上に接触させ、質量分析装置を用いて金イオンの脱離を調べた。金イオンのシグナル強度は、各経過時間についてITO基板の複数個のスポットについて測定した。
【実施例】
【0051】
(結果)
図4は実施例3に浸漬後、経過時間ごとにITO基板から検出されたAuのシグナル強度を示す。実施例3に浸漬から33日経過後でも金イオンを検出できた。
【実施例】
【0052】
(実施例2、4及び5の吸収スペクトルの測定)
分光光度計(V-570、V-500シリーズ制御ドライバ Version 1.43.03、日本分光社製)を用いて、1.5mMの実施例2、4及び5の吸収スペクトルを測定した。測定モード、バンド幅及び操作速度は、それぞれAbs、1.0nm及び1000nm/分とした。
【実施例】
【0053】
(結果)
図5、図6及び図7は、それぞれ実施例2、実施例4及び実施例5の吸収スペクトルを示す。実施例2、実施例4及び実施例5は、それぞれ異なる吸収スペクトルを示した。
【実施例】
【0054】
(コアシェル構造の金ナノ粒子の調製)
80mM ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)溶液10mLに、1mM 硝酸銀溶液を0.5mL及び100mM NaBH溶液を0.03mL加え、10秒間撹拌し、調製した当該溶液を種溶液1とする。80mM セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)溶液10mLに、1mM 硝酸銀溶液を0.5mL、100mM アスコルビン酸溶液を0.5mL及び種溶液1を0.3mL加え、色が変化するまで100mM 水酸化ナトリウム溶液を加え(約0.3mL)、10分間撹拌した。得られた当該溶液を種溶液2(銀ナノ粒子溶液)とする。10mLの種溶液2を100000×Gで10分間遠心分離し、上清を除去し、銀ナノ粒子1を得た。
【実施例】
【0055】
一方、80mM CTAB溶液10mLに、1mM 硝酸銀溶液を0.5mL、100mM アスコルビン酸溶液を0.5mL、種溶液2を0.3mL加え、色が変化するまで100mM 水酸化ナトリウム溶液を加えた(約0.3mL)。当該溶液を20分間撹拌することで種溶液3(銀ナノ粒子溶液)を得た。10mLの種溶液3を10000×Gで10分間遠心分離し、上清を除去し銀ナノ粒子2を得た。80mM CTAB溶液10mLに、100mM 塩化金酸溶液を0.1mL、100mM 塩化ヒドロキシルアンモニウム溶液を0.1mL、及び遠心分離後の銀ナノ粒子1(約500μmol)を加えて1時間撹拌し、銀を含むコア部と金を含むシェル部とを備える金属ナノ粒子(実施例6)を得た。遠心分離後の銀ナノ粒子2(約500μmol)を同様にして、銀を含むコア部と金を含むシェル部とを備える金属ナノ粒子(実施例7)を得た。実施例6及び実施例7のマススペクトルを、実施例1と同様に測定した。
【実施例】
【0056】
(結果)
実施例6のマススペクトルを図8に示す。金イオン(Au)及び3種類の銀イオン(Ag、Ag及びAg)が実施例6から検出された。図9は、実施例7のマススペクトルを示す。2種類の金イオン(Au及びAu)及び銀イオン(Ag、Ag及びAg)が実施例7から検出された。
【実施例】
【0057】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、水生生物、特には小型魚、稚魚、シラスウナギ等の標識に好適である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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