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明細書 :フッ素原子含有ポリマーの分解方法、及びフッ素原子含有ポリマーの分解装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-104578 (P2018-104578A)
公開日 平成30年7月5日(2018.7.5)
発明の名称または考案の名称 フッ素原子含有ポリマーの分解方法、及びフッ素原子含有ポリマーの分解装置
国際特許分類 C08J  11/14        (2006.01)
FI C08J 11/14 ZAB
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2016-253254 (P2016-253254)
出願日 平成28年12月27日(2016.12.27)
発明者または考案者 【氏名】堀 久男
出願人 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100151183、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 伸哉
審査請求 未請求
テーマコード 4F401
Fターム 4F401AA14
4F401CA08
4F401CA11
4F401CA12
4F401CB14
4F401EA16
4F401FA01Z
要約 【課題】焼却でも埋め立てでもなく、比較的穏和な条件で実現可能なフッ素原子含有ポリマーの分解方法、及びそのような分解方法に適用可能な分解装置を提供すること。
【解決手段】過マンガン酸塩の存在下、分解対象であるフッ素原子含有ポリマーを200℃以上の亜臨界水に接触させる工程を備えることを特徴とするフッ素原子含有ポリマーの分解方法を用いればよい。なお、亜臨界水の温度は、300℃以上であることがより好ましい。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
過マンガン酸塩の存在下、分解対象であるフッ素原子含有ポリマーを200℃以上の亜臨界水に接触させる工程を備えることを特徴とするフッ素原子含有ポリマーの分解方法。
【請求項2】
前記亜臨界水の温度が300℃以上である請求項1記載のフッ素原子含有ポリマーの分解方法。
【請求項3】
過マンガン酸塩の存在下、分解対象であるフッ素原子含有ポリマーを200℃以上の亜臨界水に接触させるための反応容器を備えることを特徴とするフッ素原子含有ポリマーの分解装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素原子含有ポリマーの分解方法、及びフッ素原子含有ポリマーの分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素原子を含んだポリマーは、その化学的安定性や熱に対する耐久性の高さなどの特性が評価され、理化学医療機器を初めとして諸々の生活用品に至るまで様々な分野に応用されている。その反面、これらのポリマーは、こうした化学的安定性や熱に対する耐久性の高さなどの裏返しとして、廃棄物処理の問題を抱えがちである。すなわち、これらのポリマーを焼却しようとすれば、共有結合の中で最強である炭素・フッ素結合の存在によりその分解には高温での処理が必要になるばかりでなく、焼却により発生するフッ化水素ガスによる焼却炉材の劣化を招くことになる。このため、これらのポリマーを廃棄処分しようとすれば埋め立て処理が必要となるが、廃棄物の最終処分場が逼迫している現状ではそれも問題である。したがって、フッ素原子含有ポリマーについての、焼却でもなく埋め立てでもない、新たな廃棄物処理法が求められている。
【0003】
そのような背景から、例えば非特許文献1には、過酸化水素の存在下、亜臨界水にフッ素原子含有ポリマーを接触させることにより、このポリマーを二酸化炭素とフッ化物イオンまで分解する処理方法が提案されている。このような処理法であれば、比較的穏和な条件でフッ素原子含有ポリマーを無機化することができるばかりか、その処理で生じたフッ化物イオンをカルシウムイオンと反応させることにより、あらゆるフッ素含有化合物の原料になるフッ化カルシウムを得ることができ、資源のリサイクル面からも優れるということができる。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Hisao Hori et al., Ind. Eng. Chem. Res., 2015, 54, pp8650-8658
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、非特許文献1に記載された処理方法によれば、焼却でも埋め立てでもなく、さらには資源リサイクルすら可能なフッ素原子含有ポリマーの分解方法が提供される。しかしながら、上記の分解方法は、フッ素原子含有ポリマーの種類によっては分解効率が十分でなく、酸化剤となる過酸化水素の量が多量に必要になる等の面で、改善の余地があるのも実情であった。
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、焼却でも埋め立てでもなく、比較的穏和な条件で実現可能なフッ素原子含有ポリマーの分解方法、及びそのような分解方法に適用可能な分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、過マンガン酸塩の存在下、分解対象であるフッ素原子含有ポリマーを200℃以上の亜臨界水に接触させることにより、フッ素原子含有ポリマーを分解でき、その分解効率は過酸化水素を用いた上記非特許文献1の手法に比べて著しく向上することを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、以下のようなものを提供する。
【0008】
(1)本発明は、過マンガン酸塩の存在下、分解対象であるフッ素原子含有ポリマーを200℃以上の亜臨界水に接触させる工程を備えることを特徴とするフッ素原子含有ポリマーの分解方法である。
【0009】
(2)上記亜臨界水の温度は、300℃以上であることが好ましい。
【0010】
(3)また本発明は、過マンガン酸塩の存在下、分解対象であるフッ素原子含有ポリマーを200℃以上の亜臨界水に接触させるための反応容器を備えることを特徴とするフッ素原子含有ポリマーの分解装置でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、焼却でも埋め立てでもなく、比較的穏和な条件で実現可能なフッ素原子含有ポリマーの分解方法、及びそのような分解方法に適用可能な分解装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<フッ素原子含有ポリマーの分解方法>
以下、本発明のフッ素原子含有ポリマーの分解方法の一実施態様について説明する。なお本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものでなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することが可能である。

【0013】
本発明のフッ素原子含有ポリマーの分解方法は、過マンガン酸塩の存在下、分解対象であるフッ素原子含有ポリマーを200℃以上の亜臨界水に接触させる工程を備える。本工程を備えさえすれば本発明の効果を得ることができ、本発明の範囲に含まれることになる。その他の工程としては、分解反応の効率を高めるためにフッ素原子含有ポリマーを細かく裁断する前処理工程を挙げることができるが、このような前処理は必須ではない。前処理を行う場合、フッ素原子含有ポリマーが粉末状になるまで小粒径化させておくことが望ましい。

【0014】
本発明における分解対象のフッ素原子含有ポリマーは、分子中にフッ素原子を含むポリマーであり、分子中に1原子でもフッ素原子を含めば本発明の分解対象となる。フッ素原子含有ポリマーは、その高い耐薬品性や耐熱性等の特性が評価され、産業や医療などを初めとしたあらゆる場面で応用されている。その反面、これらのポリマーは、こうした化学的安定性や熱に対する耐久性の高さなどの裏返しとして、廃棄物処理の問題を抱えがちである。本発明は、廃棄物となったこれらのポリマーを化学的に分解処理する方法を提供するものである。このようなフッ素原子含有ポリマーとしては、ホモポリマーでもコポリマーでもよく、そのようなものの例として、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体等を挙げることができる。

【0015】
亜臨界水は、加圧されることにより、100℃を超え、臨界温度である374℃よりも低い温度範囲にある液体状態の水である。亜臨界水は、100℃以下の水とは物性面で異なる性質を備えており、特に200℃~300℃の範囲にある亜臨界水では、比誘電率が大きく低下して室温におけるメタノールやアセトンとほぼ同等の脂溶性を示したり、室温で10-14mol/Lだったイオン積が10-11mol/Lのオーダーとなって、水素イオン及び水酸化物イオンの濃度が室温の水よりも30倍高くなったりする。このため、特に200℃~300℃の亜臨界水では、室温の水とは異なる反応性を示すことが知られている。本発明では、200℃以上の亜臨界水が用いられ、好ましくは300℃、又はそれ以上の温度の亜臨界水が用いられる。

【0016】
亜臨界水の調製に用いられる水としては特に限定されず、水道水、イオン交換水、蒸留水、井戸水等、どのようなものを用いてもよいが、共存する塩等の影響による副反応を抑制するとの観点からはイオン交換水や蒸留水が好ましく挙げられる。用いる水の量については、処理対象であるフッ素原子含有ポリマーが十分に浸る程度であればよいが、加圧のための密閉容器へ導入する水の量が極端に少ないと加熱後すべて水蒸気になり亜臨界水の状態にならないため注意が必要である。

【0017】
過マンガン酸塩は、酸化数+7のマンガンのオキソ酸の塩であり、フッ素原子含有ポリマーを分解するための酸化力を付与するために用いられる。このような過マンガン酸塩としては、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸バリウム、過マンガン酸カルシウム等が挙げられるが、これらの中でも過マンガン酸カリウムが好ましく挙げられる。昇温して亜臨界水とする前の水中における過マンガン酸塩の濃度としては、10~1000mmol/L(mM)程度が挙げられる。昇温して亜臨界水とする前の水中における過マンガン酸塩の濃度の下限としては、25mMがより好ましく挙げられ、30mMがさらに好ましく挙げられる。過マンガン酸塩の濃度が大きくなればなるほどフッ素原子含有ポリマーの分解速度を高めることができるが、本発明者の調査によれば、200mM程度で十分な分解速度を得られることが判明している。そのため、昇温して亜臨界水とする前の水中における過マンガン酸塩の濃度の上限としては、200mMが好ましく挙げられる。

【0018】
なお、上述の非特許文献1にも示されるように、過酸化水素を含有する亜臨界水中でフッ素原子含有ポリマーを分解する例はあった。しかしながら、その場合、昇温して亜臨界水とする前の水中における過酸化水素の濃度を3000mM以上としても十分に分解を行うことはできず、分解により回収されるフッ化物イオンの収率はあまり高いものではなかった。しかしながら、本発明者が、過マンガン酸塩を酸化剤として亜臨界水中でフッ素原子含有ポリマーの分解を試みたところ、意外にも、数十mM程度の過マンガン酸塩が存在するだけで、分解により回収されるフッ化物イオンの収率が劇的に向上することが見出された。一般に、過酸化水素は過マンガン酸塩よりも高い酸化力を備えているとされていることに鑑みればこのような結果は意外であるが、過酸化水素分子の一部が高温では酸素分子と水分子に分解するためと考えられる。また、過マンガン酸塩を用いた場合にフッ素原子含有ポリマーの分解がこれほど進む理由は明らかではないが、過マンガン酸塩から生じる二酸化マンガンが何らかの促進作用を示している可能性がある。

【0019】
次に、過マンガン酸塩を含んだ亜臨界水にフッ素原子含有ポリマーを接触させて分解を行う方法について説明する。処理対象であるフッ素原子含有ポリマーの量に応じたサイズの圧力容器に水、過マンガン酸塩、及び処理対象であるフッ素原子含有ポリマーを加え、圧力容器内部を加圧して密閉する。圧力容器内部を加圧するには、気体を封入すればよい。このような気体としては、空気、アルゴン、窒素等を挙げることができるが、酸素による酸化作用を期待できる点からは空気を用いることが好ましい。加圧の程度としては0.5MPa程度を挙げることができるが、特に限定されない。

【0020】
上記の過程を経た圧力容器を加熱して分解反応を開始させる。加熱の温度は200℃以上であるが、300℃以上であることが望ましい。圧力容器自体が加熱手段を備える場合には、その加熱手段を用いて加熱すればよく、圧力容器自体が加熱手段を備えない場合には、圧力容器全体をオートクレーブやオーブン中で加熱すればよい。反応時間としては6時間~24時間程度を挙げることができる。反応中は、内容物の撹拌を行うことが好ましい。このような撹拌手段としてはマグネチックスターラー、撹拌羽根等を挙げることができるが、圧力容器の大きさや内容物の量等に鑑みて適切なものを選択すればよい。

【0021】
反応終了後の水中には、フッ素原子含有ポリマーに含まれていたフッ素原子がフッ化物イオンとなって含まれている。フッ化物イオンは、カルシウムイオンと反応させることにより、あらゆるフッ素化合物の原料となるフッ化カルシウムに転換させることができる。このため、本発明の方法を用いてフッ素原子含有ポリマーの廃棄物処理を行うことにより、資源の有効活用を行うことが可能になる。

【0022】
<フッ素原子含有ポリマーの分解装置>
上記本発明のフッ素原子含有ポリマーの分解方法を実現することのできる装置も本発明の一つである。この装置は、過マンガン酸塩の存在下、分解対象であるフッ素原子含有ポリマーを200℃以上の亜臨界水に接触させるための反応容器を備えることを特徴とする。

【0023】
本発明の装置は、過マンガン酸塩を含む水と、分解対処であるフッ素原子含有ポリマーとを圧力容器の内部に導入することができ、その内部を加圧状態で加熱することが可能である。その際の加熱温度は、200℃以上であり、好ましくは300℃以上である。圧力容器の内部には、その内容物を撹拌するための撹拌装置を備えることが望ましい。その他の事項については、上記フッ素原子含有ポリマーの分解方法で説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
[エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE共重合体)の亜臨界水を用いた分解反応]
ETFE共重合体(フッ素原子含有率54.6wt%、炭素原子含有率41.4wt%;一般式-(CHCH-(CFCF-)の粉末30mgと、酸化剤(過マンガン酸カリウム又は過酸化水素)の水溶液30mLを撹拌機付き熱水リアクターに入れ、アルゴンガスで0.5MPaまで加圧した後、所定の温度で一定時間反応させた(温度及び時間は表1を参照)。その後、内容物を室温まで冷却し、水相に生成したフッ化物イオンをイオンクロマトグラフィーで定量した。その結果を表1に示す。なお、フッ化物イオンの収率(F収率)は、反応に使用したETFE共重合体に含まれるフッ素原子の物質量をもとに計算して求めた。
【実施例】
【0026】
【表1】
JP2018104578A_000002t.gif
【実施例】
【0027】
表1に示すように、過マンガン酸カリウムを酸化剤として用いた実施例1~5では、過酸化水素を酸化剤として用いた比較例2~5に比べて少ない酸化剤の量でフッ素原子含有ポリマーの分解を行えることがわかる。特に、反応温度を300℃とし、酸化剤の量を30mM以上とした実施例2~4では、その他の実施例に比べて高いF収率となり、フッ素原子含有ポリマーの分解が高度に行われたことがわかる。
【実施例】
【0028】
[フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(VDF-HFP-TFE共重合体)の亜臨界水を用いた分解反応]
VDF-HFP-TFE共重合体(フッ素原子含有率67.7wt%、炭素原子含有率29.9wt%;一般式-(CFCH-(CFCF(CF))-(CFCF-)の粉末30mgと、酸化剤(過マンガン酸カリウム又は過酸化水素)の水溶液10mLを熱水リアクターに入れ、アルゴンガスで0.5MPaまで加圧した後、所定の温度で一定時間反応させた(温度及び時間は表2を参照)。その後、内容物を室温まで冷却し、水相に生成したフッ化物イオンをイオンクロマトグラフィーで定量した。その結果を表2に示す。なお、フッ化物イオンの収率(F収率)は、反応に使用したVDF-HFP-TFE共重合体に含まれるフッ素原子の物質量をもとに計算して求めた。
【実施例】
【0029】
【表2】
JP2018104578A_000003t.gif
【実施例】
【0030】
先のETFE共重合体の場合と同様に、VDF-HFP-TFE共重合体の場合も表2に示すように、過マンガン酸カリウムを酸化剤として用いた実施例6~9では、過酸化水素を酸化剤として用いた比較例7~11に比べて少ない酸化剤の量でフッ素原子含有ポリマーの分解を行えることがわかる。特に、反応温度を300℃とし、酸化剤の量を25mM以上とした実施6~8では、実施例9に比べて高いF収率となり、フッ素原子含有ポリマーの分解が高度に行われたことがわかる。