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明細書 :ロボットハンド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-099755 (P2018-099755A)
公開日 平成30年6月28日(2018.6.28)
発明の名称または考案の名称 ロボットハンド
国際特許分類 B25J  15/08        (2006.01)
FI B25J 15/08 N
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-247067 (P2016-247067)
出願日 平成28年12月20日(2016.12.20)
発明者または考案者 【氏名】ホ アンヴァン
【氏名】平井 慎一
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
個別代理人の代理人 【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
Fターム 3C707DS01
3C707ES04
3C707ES10
3C707EU11
3C707HS27
3C707KS31
3C707KX08
3C707NS26
要約 【課題】弾性部材を有し、流体の圧力を用いずに物品を把持できる指部を備えるロボットハンドを提供する。
【解決手段】このロボットハンド1は、長尺の弾性指本体部材21、及び、弾性指本体部材21よりも大きな剛性であり弾性指本体部材21に残留応力を生じさせて外面2oに接着された長尺の外皮部材22を有し、湾曲する1個又は複数個の指部2と、指部2の基端近傍2pを固定し、かつ、指部2の先端2dの位置を開閉方向に制御する制御部3と、を備えてなる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
長尺の弾性指本体部材、及び、該弾性指本体部材よりも大きな剛性であり前記弾性指本体部材に残留応力を生じさせて外面に接着された長尺の外皮部材を有し、湾曲する1個又は複数個の指部と、
前記指部の基端近傍を固定し、かつ、前記指部の先端の位置を開閉方向に制御する制御部と、
を備えてなることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットハンドにおいて、
前記外皮部材は、前記弾性指本体部材の長さ方向における複数個の領域が延伸比率を異ならせて延伸されて接着されたもの、又は、前記弾性指本体部材の1個の領域が延伸されて接着されたものであることを特徴とするロボットハンド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロボットハンドにおいて、
前記指部の内面には、接触検知センサーの少なくとも1つの電極が設けられていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のロボットハンドにおいて、
前記制御部は、
一端が前記指部に接続され前記指部の前記外面から出る制御ワイヤーと、
該制御ワイヤーを介して前記指部を制御する制御本体部と、
を有することを特徴とするロボットハンド。
【請求項5】
請求項4に記載のロボットハンドにおいて、
前記指部は複数個設けられており、
前記制御ワイヤーは、前記指部のそれぞれに対応して設けられており、
前記制御本体部は、それぞれの前記制御ワイヤーが架け渡されたプーリーと、全ての前記制御ワイヤーを1個で牽引するモーターと、が設けられていることを特徴とするロボットハンド。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、柔らかい物品の把持に好適なロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品など柔らかい物品の把持に好適なロボットハンドが研究開発されている。このようなロボットハンドの中には、指部に曲げが可能な弾性部材を用い、曲げたときに物品に接触して把持するようにしたものが知られている。指部に弾性部材を用いると、接触したときの物品の損傷を防ぐように指部を制御するのが容易になる。
【0003】
例えば、特許文献1には、指部に筒状であって外側を伸縮不可能にした弾性部材を有しており、筒状の弾性部材の中空部に水、空気、油などの流体を流し込んで幅方向に膨らますことで内側に湾曲するように曲げるようにしたロボットハンドが開示されている。また、非特許文献1及び非特許文献2には、指部に筒状であって外周面に糸が螺旋状に巻かれた弾性部材を有しており、糸の巻き方を調整することにより、筒状の弾性部材の中空部に圧縮空気を流し込んで内側に湾曲するように曲げることができるようにしたロボットハンドが開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-194788号公報
【0005】

【非特許文献1】Panagiotis Polygerinos、外6名、“Modeling of Soft Fiber-Reinforced Bending Actuators”、IEEE TRANSACTIONS ON ROBOTICS、VOL. 31、NO. 3、JUNE 2015、p.778-789
【非特許文献2】Raphael Deimel、外1名、“Soft Hands for Reliable Grasping Strategies”、Soft Robotics、14 March 2015、p.211-221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2のように指部を構成する弾性部材の中空部を流体(水、空気、油など)が通り、その圧力により曲がるロボットハンドは、コンプレッサーなどの大規模な設備を必要とする。また、経時的に摩耗などの損傷が少しでも生じると、中空部の一部の壁だけが膨らんで指部の動作が困難になり易い。なお、流体が液体(水、油など)で、物品が食品の場合は、流体の漏れ出しには厳しい注意が必要である。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、弾性部材を有し、流体の圧力を用いずに物品を把持できる指部を備えるロボットハンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のロボットハンドは、長尺の弾性指本体部材、及び、該弾性指本体部材よりも大きな剛性であり前記弾性指本体部材に残留応力を生じさせて外面に接着された長尺の外皮部材を有し、湾曲する1個又は複数個の指部と、前記指部の基端近傍を固定し、かつ、前記指部の先端の位置を開閉方向に制御する制御部と、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のロボットハンドは、請求項1に記載のロボットハンドにおいて、前記外皮部材は、前記弾性指本体部材の長さ方向における複数個の領域が延伸比率を異ならせて延伸されて接着されたもの、又は、前記弾性指本体部材の1個の領域が延伸されて接着されたものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のロボットハンドは、請求項1又は2に記載のロボットハンドにおいて、前記指部の内面には、接触検知センサーの少なくとも1つの電極が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のロボットハンドは、請求項1~3のいずれか1項に記載のロボットハンドにおいて、前記制御部は、一端が前記指部に接続され前記指部の前記外面から出る制御ワイヤーと、該制御ワイヤーを介して前記指部を制御する制御本体部と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のロボットハンドは、請求項4に記載のロボットハンドにおいて、前記指部は複数個設けられており、前記制御ワイヤーは、前記指部のそれぞれに対応して設けられており、前記制御本体部は、それぞれの前記制御ワイヤーが架け渡されたプーリーと、全ての前記制御ワイヤーを1個で牽引するモーターと、が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のロボットハンドによれば、指部が、弾性部材を有し、流体の圧力を用いずに物品を把持できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットハンドを示す斜視図である。
【図2】同上のロボットハンドを示す正面図である。
【図3】同上のロボットハンドを示す平面図である。
【図4】同上のロボットハンドを示すA-A線で切断した断面図である。
【図5】同上のロボットハンドを示す底面図である。
【図6】同上のロボットハンドの指部を示すものであって、(a)が正面図、(b)が(a)の一部の拡大図である。
【図7】同上のロボットハンドの指部を示すものであって、(a)が延伸比率の異なる複数個の領域を示した正面図、(b)が接触検知センサーのタイプ4を設けたものの正面図である。
【図8】同上のロボットハンドが物品を把持する初期状態を示す斜視図である。
【図9】同上のロボットハンドが物品を把持する図8の次の状態を示す斜視図である。
【図10】同上のロボットハンドが物品を把持する図9の次の状態を示す斜視図である。
【図11】同上のロボットハンドが物品を把持した状態を示す斜視図である。
【図12】同上のロボットハンドの指部の製作方法理論の説明図であって、(a)指部の製作方法を模式的に示すもの、(b)が湾曲を円弧と仮定した場合のパタメータを示すもの、(c)が延伸比率を変えて計算により導出した図形を示すものである。
【図13】同上のロボットハンドの指部の接着装置を示す概略正面図である。
【図14】同上のロボットハンドの指部の湾曲の角度を示す正面図である。
【図15】同上のロボットハンドの指部の保持力を示すグラフであって、(a)、(b)は測定箇所が違うものである。
【図16】同上のロボットハンドの接触検知センサーのタイプ1~3の容量値の特性を示すグラフである。
【図17】同上のロボットハンドの接触検知センサーのタイプ4に物品が近接した場合の容量値の変化を示すグラフである。
【図18】同上のロボットハンドの接触検知センサーのタイプ4に物品が接触した場合の容量値の変化を示すグラフである。
【図19】同上のロボットハンドが種々の物品を把持する様子を示す写真である。
【図20】同上のロボットハンドが種々の物品を把持したときの容量値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るロボットハンド1は、図1~図5に示すように、湾曲する3個の指部2と、各々の指部2の基端近傍2pを固定し、かつ、指部2の先端2dの位置を開閉方向に制御する制御部3と、を備えている。ロボットハンド1は、ロボットアームなどの機械に取り付けられ、選別装置、運搬装置等の各種装置に用いることができる。なお、図1~図5は、3個の指部2が各々の後述する制御ワイヤー31により牽引されている状態を示している。
また、図4では、後述するモーター32aの内部は省略されている。

【0016】
指部2は、図6(a)、(b)に示すように、弾性指本体部材21と外皮部材22を有している。弾性指本体部材21と外皮部材22はともに、長尺である(長さが幅(図6(a),(b)では紙面に対し垂直方向)よりも大きい)。指部2は、弾性指本体部材21と外皮部材22の長さ方向に湾曲している。指部2は、長さ10~20cm程度、幅1~3cm程度、厚さ0.5~1.5cm程度が可能である。なお、図6(a)は、制御部3に取り付けられていない状態(自然状態)の指部2を示しており、図6(b)は図6(a)の指部2の右上部分の厚さ方向を拡大して示すものである。

【0017】
弾性指本体部材21は、弾性の有るものであり、例えば、シリコーンゴム製などが可能である。

【0018】
外皮部材22は、弾性指本体部材21よりも剛性が大きい(ヤング率が大きい)。また、外皮部材22は、弾性指本体部材21よりも極めて薄い層(例えば、0.5mm以下)である。外皮部材22は、例えば、ポリスチレン製などが可能である。

【0019】
指部2は、その一方側の面(外面)2oにおいて、外皮部材22が弾性指本体部材21に接着されている。接着剤は、限定されることはないが、弾性指本体部材21がシリコーンゴム製の場合、例えば、シリコーンゴムの接着に特化した接着剤であるセメダイン株式会社製のPPXセット(難接着物専用瞬間接着剤)を用いることができる。

【0020】
外皮部材22は、以下の製作プロセスで、弾性指本体部材21に接着することができる。すなわち、外皮部材22をまっすぐの弾性指本体部材21に接着する前に、弾性指本体部材21の一領域(例えば、基端側部分2ppの領域)を外力により所定の延伸比率(εpp)で延伸させて所定量の張力を予め与える。そして、弾性指本体部材21のその領域に外皮部材22を接着する。続けて弾性指本体部材21の次の領域(例えば、中央部分2mpの領域)を外力により所定の延伸比率(εmp)で延伸させて所定量の張力を予め与える。そして、弾性指本体部材21のその領域に外皮部材22を接着する。続けて弾性指本体部材21の更に次の領域(例えば、先端側部分2dpの領域)を外力により所定の延伸比率(εdp)で延伸させて所定量の張力を予め与える。そして、弾性指本体部材21のその領域に外皮部材22を接着する。その後、外力を取り除くと、指部2は自然に、図6(a)に示したように(及び図7(a)に示すように)湾曲する(他方側の面(内面)2iが一方側の面(外面)2oよりも短くなる)。従って、指部2の湾曲形状は、弾性指本体部材21と外皮部材22の機械特性及び弾性指本体部材21に予め加えた張力の量(エネルギー)に依存することになる。

【0021】
湾曲する指部2には、弾性指本体部材21に予め加えた張力のエネルギーに応じたエネルギーが残留するため、圧縮方向(更に湾曲しようとする方向)の残留応力が生じる。

【0022】
指部2は、弾性指本体部材21の長さ方向に延伸比率の異なる複数個の領域を作ると、指部2の長さ方向に湾曲の半径(曲率半径)が複数個の領域で異なる種々の形状が可能になる。例えば、上述したように指部2を人の指に模して3個の部分(先端側部分2dp、中央部分2mp、基端側部分2pp)に分け、3個の部分で弾性指本体部材21の延伸比率が互いに異なるようにすることができる。この場合、延伸比率は、先端側部分が一番小さく、基端側部分が一番大きくするのが、残留応力の分布の面から好ましい。なお、指部2は、形状は決まったものになるが、弾性指本体部材21の略全体を1個の領域として延伸させて外皮部材22を接着することも可能である。

【0023】
ロボットハンド1において、3個の指部2は、内面2iが内側(換言すれば、外面2oが外側)になるようにして配置されている。3個の指部2は、略等角(略120度)で配置されている(図5参照)。3個の指部2は、食品などの物体Mを包み込むことができる内方空間を形成している。

【0024】
制御部3は、制御ワイヤー31と制御本体部32とを有している。

【0025】
制御ワイヤー31は、各指部2に対応して設けられており、一端が指部2(より詳細には弾性指本体部材21)に接続され、指部2の外面2oから出ている。この接続は、指部2の厚さ方向或いは弾性指本体部材21の幅方向に孔をあけて結束するなど様々な方法が可能である。制御ワイヤー31は、例えば、金属ワイヤーや伸縮しない紐(炭素繊維製等)などを用いることができる。

【0026】
制御本体部32は、制御ワイヤー31を介して指部2の先端2dを開閉方向に制御する。制御本体部32は、詳細には、サーボモーターなどのモーター32a(ギアモーターを含む。)が設けられ、それにより制御ワイヤー31を牽引することができる。なお、モーター32aに代えて、他のアクチュエータなどによって牽引することも場合によっては可能である。

【0027】
制御本体部32は、それぞれの制御ワイヤー31について、モーター32a側から順にそれが架け渡された4種のプーリー32b、32c、32d、32eを有している。ここで、プーリー32bは、モーター32aのロータに接続された軸体に3個が形成されている。プーリー32cとプーリー32dは接近して配置されている。これら4種のプーリー32b、32c、32d、32eによって力の方向を変化させることにより、1個のモーター32aがプーリー32b、32c、32d、32eを介して全ての制御ワイヤー31を同時に牽引することができる。なお、プーリーは、4種に限らず、適宜その数を変更することができる。

【0028】
初期状態(制御部3が指部2に力を及ばさず制御していない状態)では、図8に示すように、3個の指部2は、内方に倒れ、互いに重なり合っている。

【0029】
ロボットハンド1が物品Mを把持しようとするときは、モーター32aが回転して3個の制御ワイヤー31で各々の指部2を牽引し、図9に示すように、3個の指部2の先端2dの位置が大きく開いた状態になる。そして、図10に示すように、3個の指部2の先端2dの位置が大きく開いた状態を保持しながら、3個の指部2の先端2dを物品Mに近接させる。その後、モーター32aを逆回転させると、3個の指部2の先端2dの位置が閉じる方向に移動し、図11に示すように、弾性指本体部材21の残留応力により物品Mを把持する状態となる。

【0030】
このようなロボットハンド1の把持力は、弾性指本体部材21の残留応力によるものなので、物品Mが食品のようなものであっても、損傷しにくく、その一方、取り落とすことがない程度にしっかりと把持することができる。

【0031】
また、ロボットハンド1は、モーター32aによる制御ワイヤー31の駆動は、図9に示したように大きく開くとき及び図11に示したように物品Mを把持しようとするときに行われ、把持状態の維持には電気エネルギーの消費はないので、省エネルギーとなる。また、把持しようとするとき、制御ワイヤー31は簡単な制御で足りる。

【0032】
ロボットハンド1が物品Mを開放するときは、モーター32aが回転して3個の制御ワイヤー31で各々の指部2を牽引し、図10に示したのと同様に、3個の指部2の先端2dの位置が大きく開いた状態にする。そして、図9に示したのと同様に、3個の指部2の先端2dを物品Mから離し、それから、3個の指部2を互いに重なり合うように制御しながら内方に倒し、図8で示した初期状態に戻す。

【0033】
なお、ロボットハンド1は、用途に応じて指部2の個数を、3個以外に(例えば、1個又は2個又は4個以上に)変えることが可能である。指部2の個数が2個又は4個以上の複数個であると、3個の場合と同様に、各々の指部2に対応する複数個のプーリー32b、・・・を設けて、1個のモーター32aが複数個のプーリー32b、・・・を介して全ての制御ワイヤー31、・・・を同時に牽引するようにすることができる。

【0034】
次に、接触検知センサー4について述べる。ロボットハンド1は、物品Mに接触したことを自動的に検知するよう、接触検知センサー4が設けられているのが好ましい。それにより、制御部3にフィードバックして、指部2が物品Mを接触したとき或いは接触して少し経ってから、モーター32aの逆回転を止めることができる。

【0035】
接触検知センサー4は、特に限定されるものではないが、容量検出方式が可能である。例えば、物品Mの種類などに応じ、以下に述べる幾つかのタイプが可能である。タイプ1は、指部2の外面2oに第1電極が有り、内面2iで物品Mに接触するところに第2電極が有るものである。タイプ2は、タイプ1の第2電極と弾性指本体部材21の間にセンサー用誘電層を設けたものである。タイプ3は、指部2の内面2iで物品Mに接触するところに、センサー用誘電層を挟んだ第1電極及び第2電極が有るものである。タイプ4は、図7(b)に示すように、指部2の内面2iで物品Mに接触するところに、第1電極(図7(b)においては符号4aで示す。)のみが有るものである。接触検知センサー4は、指部2の湾曲に応じて湾曲可能にするために、第1電極及び第2電極が、耐圧性で導電性のある繊維を編んだ柔軟な導電性布帛であり、センサー誘電層が、柔軟な発泡性ゴム製であるのが好ましい。

【0036】
タイプ1は、指部2が誘電層になっている。タイプ2は、指部2とセンサー誘電層が誘電層になっている。タイプ1及びタイプ2では、第2電極を接地し、第1電極から制御本体部22に1本の電気配線を設けることができる。タイプ1の場合は、物体Mの押圧によって弾性指本体部材21が変形するように、弾性指本体部材21は柔らかいほど好ましい。タイプ2の場合は、弾性指本体部材21が多少柔らかくなくても容量値の変化が検出でき、また、タイプ1に比べて容量値の変化が大きく、検出し易い。

【0037】
タイプ3は、弾性指本体部材21の柔らかさや厚さなどに依存せずに、物体Mの押圧による容量値の変化が検出でき、また、タイプ1、タイプ2に比べ容量値の変化が大きく、検出し易い。タイプ3は、第2電極を接地し、第1電極から制御本体部22に1本の電気配線を設けることができる。第1電極に印加される電圧は、センサー誘電層が破壊されないように、余り大きくしないようにする。よって、タイプ1、タイプ2の方が、物体Mの押圧による広範囲の容量値の変化が検出できる。

【0038】
タイプ4は、第1電極と物品Mの間の容量値を直接検出するものである。タイプ4は、第1電極から制御本体部22に1本の電気配線(図示せず。)を設けることができる。タイプ4では、物体Mが近接したとき及び接触したときに容量値の変化が起こる。タイプ4は、物体Mの性質に依存し、特に導電性に強く依存する。例えば、果物などの食品は導電性があり、それらが物体Mであれば、容量値の変化が大きく、検出が容易である。

【0039】
なお、物品Mの実際の把持の仕方によっては、3個の指部2において検出した容量値に相互間のバラツキが生じるので、容量値の最大値と最小値を決め、それにより適正な把持かどうかを判断することも必要である。また、検出した容量値のいずれかが最大値と最小値の間にないと、把持し直すなどの制御が必要な場合も有り得る。

【0040】
次に、湾曲する指部2の製作方法理論について説明する。

【0041】
製作プロセスにおいて弾性指本体部材21の延伸過程で外力により予め与えた初期エネルギーUは、以下の式(1)で計算できる。

【0042】
【数1】
JP2018099755A_000003t.gif

【0043】
ここで、kは、弾性指本体部材21の延伸前の剛性(stiffness)である。Lは、図12(a)に示すように、弾性指本体部材21の延伸前の長さ、Lは弾性指本体部材21の延伸後の長さである。εは、延伸比率である。

【0044】
弾性指本体部材21の剛性は、以下の式(2)で計算できる。

【0045】
【数2】
JP2018099755A_000004t.gif

【0046】
ここで、Eは弾性指本体部材21のヤング率、Sは弾性指本体部材21の初期断面積、Bは弾性指本体部材21の延伸前の幅、Hは弾性指本体部材21の延伸前の厚さ、である。

【0047】
初期エネルギーUはすべて、湾曲後の弾性指本体部材21の湾曲エネルギーUと外皮部材22の湾曲エネルギーUに変換される。すなわち、以下の式(3)が成立する。

【0048】
【数3】
JP2018099755A_000005t.gif

【0049】
ここで、弾性指本体部材21の湾曲エネルギーUは、以下の式(4)で計算される。また、外皮部材22の湾曲エネルギーUは、以下の式(5)で計算される。なお、外皮部材22の延伸性は無視して、外皮部材22の長さ(指部2の外面2oの長さ)Lは変化しないと仮定している。

【0050】
【数4】
JP2018099755A_000006t.gif

【0051】
【数5】
JP2018099755A_000007t.gif

【0052】
ここで、dsは、指部2(弾性指本体部材21及び外皮部材22)の長さ方向の微少距離である。θ(s)は、指部2(弾性指本体部材21及び外皮部材22)の長さ方向の湾曲形状を規定する関数である。kは、弾性指本体部材21の曲げ剛性である。kは、外皮部材22の曲げ剛性である。

【0053】
湾曲エネルギーの計算には、指の湾曲を規定する関数θ(s)を特定する必要がある。このとき、図12(b)に示すように、湾曲が半径Rの円の円弧長さであると仮定する。原点0からsだけ離れた円弧上の任意の点Aにおいて、円弧長さを規定する関数は式(6)で 計算できる。

【0054】
【数6】
JP2018099755A_000008t.gif

【0055】
従って、θ(s)は、以下の式(7)で表現でき、dθ/dsは以下の式(7’)で表現できる。

【0056】
【数7】
JP2018099755A_000009t.gif

【0057】
式(7’)を式(4)と式(5)に代入すると、次の式(8)、式(9)が得られる。

【0058】
【数8】
JP2018099755A_000010t.gif

【0059】
【数9】
JP2018099755A_000011t.gif

【0060】
そして、式(1)、式(8)、式(9)を式(3)に代入すると、以下の式(10)及び式(11)が得られる。

【0061】
【数10】
JP2018099755A_000012t.gif

【0062】
【数11】
JP2018099755A_000013t.gif

【0063】
延伸後の弾性指本体部材21の厚さをH、外皮部材22の厚さをHとし、また、弾性指本体部材21と外皮部材22の幅をともにBとすると(図12(a)参照)、湾曲後の弾性指本体部材21の曲げ剛性と外皮部材22の曲げ剛性は、以下の式(12)及び式(12’)となる。

【0064】
【数12】
JP2018099755A_000014t.gif

【0065】
ここで、γは、指部2の幾何学的形状に依存する定数である(矩形の場合は、γ=1/12)。式(11)に式(2)、式(12)、式(12’)を代入すると、円弧の半径Rを表す以下の式(13)及び式(14)を得ることができる。

【0066】
【数13】
JP2018099755A_000015t.gif

【0067】
【数14】
JP2018099755A_000016t.gif

【0068】
弾性指本体部材21の断面積は変化しないので、BH=Bである。従って、式(14)は、以下の式(15)になる。

【0069】
【数15】
JP2018099755A_000017t.gif

【0070】
≪Hであるため、外皮部材22の剛性が弾性指本体部材21の剛性より極端に大きくはないとき、すなわち αβ 3 ≪1 であるときには、以下の式(16)が成り立つ。なお、式(16)は、式(1’)を代入している。

【0071】
【数16】
JP2018099755A_000018t.gif

【0072】
すなわち、以下の式(17)が成り立つことになる。

【0073】
【数17】
JP2018099755A_000019t.gif

【0074】
式(17)によれば、指部2の湾曲の半径Rは、延伸比率εと弾性指本体部材21の延伸後の厚さHに依存することになる。

【0075】
以上説明した製作方法理論に基づき、延伸比率(ε)を変えて計算により導出した指部2の図形を図12(c)に示す。図形a、b、c、dはそれぞれ、延伸比率が110%、120%、130%、140%の場合のものである。また、図中の破線は、それぞれの図形a~dについて、上記の式(17)を用いて描いた円である。図12(c)より、延伸比率(ε)が増加すると指部2の湾曲の半径が小さくなることが分かる。なお、図12(c)では、1ピクセルが0.07mmとしている。

【0076】
次に、湾曲する指部2の製作方法理論に基づく指部2の具体的な製作方法を述べる。

【0077】
弾性指本体部材21と外皮部材22の接着には、図13に示す接着装置5を用いることができる。この接着装置5は、ベース51、モーター52、軸体53、ステージ54、第1クランプ55、第2クランプ56、ルーラー57を備える。ステージ54は、モーター52の回転が軸体53を介して伝えられ、直線運動に変換され、ベース51に対して水平移動する。第1クランプ55は、ベース51との間に弾性指本体部材21の基端近傍2pを固定することができる。第2クランプ56は、ステージ54との間に弾性指本体部材21の先端2dの近傍を固定することができる。ルーラー57は、ステージ54の移動の距離、すなわち弾性指本体部材21の延伸した長さを測定することができる。

【0078】
第1クランプ55と第2クランプ56で弾性指本体部材21を固定し、ステージ54を移動させ、予め決めていた移動距離、すなわち延伸比率(ε)に到達すると、外皮部材22を弾性指本体部材21の一方側に、均一に塗布した接着剤で接着する。

【0079】
弾性指本体部材21に延伸比率の異なる複数の領域を作る場合は、各領域についてステージ54を予め決めていた移動距離だけ移動させ、そのたびに弾性指本体部材21の一方側に接着剤を均一に塗布し外皮部材22を接着する。

【0080】
最後に、第1クランプ55と第2クランプ56から弾性指本体部材21を開放することで、自然に素早く安定した状態にまで変形することになる。なお、必要に応じ、外皮部材22が接着されていない弾性指本体部材21の部分は、切除する。

【0081】
以上説明した指部2の具体的な製作方法を用いて製作した指部2の把持力の評価について、次に述べる。

【0082】
柔らかさが異なる2個(SMOOTH-ON社製の商品名Dragon Skin 20とDragon Skin 30)の弾性指本体部材21で指部2を製作し、実験を行った。図14に示すように、指部2の基端近傍2pを鉛直に固定し、指部2の内面2iにロードセルの先端部を垂直に当て、指部2の湾曲の角度δを変化させて、反発力である把持力を測定した。なお、Dragon Skin 20は、Dragon Skin 30よりも柔らかい。

【0083】
図15(a)、(b)は、把持力の測定結果を示しており、横軸が湾曲の角度δ、縦軸が把持力である。図15(a)は、指部2の先端側部分2dpでの測定結果、図15(b)は、指部2の中央部分2mpでの測定結果である。図15(a)の曲線eと図15(b)の曲線gは、Dragon Skin 20の弾性指本体部材21の指部2の測定結果、図15(a)の曲線fと図15(b)の曲線hは、はDragon Skin 30の弾性指本体部材21の指部2の測定結果である。

【0084】
図15(a)、(b)より、曲線e~h全て、指部2の湾曲の角度δが10度のとき、把持力は最小になり、指部2の湾曲の角度が増加するにつれて、把持力は増加している。また、図15(a)と図15(b)を比較すると、指部2の中央部分2mpの把持力は先端側部分2dpの把持力よりも大きい。

【0085】
このように、指部2は製作プロセスに起因する残留応力を有し元々把持力を有しているため、把持のためのエネルギー(電力)を新たに必要とするものではない。指部2の把持力は、指部2の最初に出来上がった構造にすべて依存する。また、図15(a)、(b)により、把持力は数ニュートン程度である。これは、損傷し易い食品などの物品Mを把持するのに適している。

【0086】
次に、指部2の接触検知センサー4の実験について詳述する。

【0087】
図16は、外力(横軸)を加えたときに接触検知センサー4(タイプ1~3)に生じる容量値(縦軸)を示すものである。タイプ1が曲線i、タイプ2が曲線j、タイプ3が曲線k、である。図16(及び後述する図17、図18、図20)の縦軸に示す容量値は、相対値である。タイプ1、タイプ2、タイプ3になるにつれて、容量値の変化が大きくなっている。

【0088】
図17は、タイプ4の接触検知センサー4に物品Mを近接した場合の容量値(縦軸)の変化を示すものである。図17の横軸は時間であり、時間0のときは十分に物品Mを離しており、時間ta1のときに2cmに近づけ、時間ta2のときに1cmに近づけ、時間ta3のときに0.5cmに近づけ、その後、離した。物品Mを近づけるにつれて、容量値は大きくなっている。

【0089】
図18は、タイプ4の接触検知センサー4に物品Mを接触させた場合の容量値(縦軸)の変化を示すものである。図18の横軸は時間であり、時間0のときは接触しておらず、時間tb1のときに接触させ、一旦離し、時間tb2のときに接触させ、一旦離し、時間tb3のときに接触させ、その後、離した。物品Mを接触させると、容量値が非常に大きくなっている。

【0090】
次に、以上述べた指部2の製作方法と接触検知センサー4の実験に基づいて本願発明者が試作したロボットハンド1について説明する。

【0091】
弾性指本体部材21は、延伸前の長さが15cmで厚さが5mmとした。指部2を3個の領域に分け、基端側部分2ppの領域の延伸比率(εpp)を135%、中央部分2mpの領域の延伸比率(εmp)を125%、先端側部分2dpの領域の延伸比率(εdp)を110%とした。この指部2を、図13に示した上記の接着装置5を用いて、3個製作した。その後、指部2の基端近傍2pを制御本体部32に固定し、制御ワイヤー31を、プーリー32b、32c、32d、32eに架け渡してから、指部2の基端側部分2ppと中央部分2mpの境目近傍に取り付けた。このロボットハンド1は、3個の指部2と制御部3の総重量が、モーター32aを含めても軽量であり、市販のロボットアームの先端部に取り付けることができるものである。

【0092】
また、接触検知センサー4は、タイプ4のものを用いた。

【0093】
こうして試作したロボットハンド1が形状の異なる柔らかい物品Mを把持する実験を行った。

【0094】
図19は、典型的な形状(回転楕円体、扁円、楕円球状、こん棒形状、その他)の物品Mを把持する例として、(a)がレモン、(b)がオレンジ、(c)がトマト、(d)が卵、(e)がバナナ、を把持した状態を示している。このように、ロボットハンド1が様々な形状の柔らかい物品Mを把持できることを確認できた。また、物品Mには、損傷はなかった。なお、図19は、図8~図11で示したようにして把持した後に、物体Mが見え易いようにロボットハンド1を回転して示したものである。

【0095】
図20は、それぞれの物品Mを把持し、その後、開放したときに接触検知センサー4で検出した容量値を示すものである。3個の指部2における容量値及びその相互のバラツキなどは、食品の種類に強く依存していた。例えば、レモンは、3個の指部2の間で容量値の相互のバラツキは少なく、バナナは、1個の指部2の容量値だけが顕著に大きかった。

【0096】
以上、本発明の実施形態に係るロボットハンドについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内での様々な設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 ロボットハンド
2 指部
2p 指部の基端近傍
2d 指部の先端
2pp 指部の基端側部分
2mp 指部の中央部分
2dp 指部の先端側部分
2o 指部の一方側の面(外面)
2i 指部の他方側の面(内面)
21 弾性指本体部材
22 外皮部材
3 制御部
31 制御ワイヤー
32 制御本体部
32a モーター
32b、32c、32d、32e プーリー
4 接触検知センサー
M 物品
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
18
【図20】
19