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明細書 :口腔内加工装置及び口腔内治療システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-046946 (P2018-046946A)
公開日 平成30年3月29日(2018.3.29)
発明の名称または考案の名称 口腔内加工装置及び口腔内治療システム
国際特許分類 A61C   1/08        (2006.01)
A61C   3/02        (2006.01)
FI A61C 1/08 Z
A61C 3/02 Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2016-183463 (P2016-183463)
出願日 平成28年9月20日(2016.9.20)
発明者または考案者 【氏名】菊地 聖史
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
審査請求 未請求
テーマコード 4C052
Fターム 4C052AA06
4C052AA13
4C052DD01
4C052GG24
要約 【課題】治療中に顎が動いた場合でも、加工ヘッドを変位させる変位機構が顎に対してずれにくく、しかも顎に固定する部材が従来よりもコンパクト化された口腔内加工装置及びこれを備える口腔内治療システムを提供する。
【解決手段】口腔内加工装置800は、口腔の外部に設置される動力源300と、歯牙及び骨を加工可能な加工ヘッド100を保持した状態で、顎に固定される変位機構200と、変位機構200と動力源300とをつなぐ運動伝達部材400とを備える。動力源300は、運動伝達部材400を運動させる。変位機構200は、運動伝達部材400の運動を、加工ヘッド100の、口腔内における変位を伴う運動に変換する。運動伝達部材400は、変位機構200と動力源300との相対変位を許容しつつ、動力源300から変位機構200に運動を伝達する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
口腔の外部に設置される動力源と、
歯牙及び骨を加工可能な加工ヘッドを保持した状態で、顎に固定される変位機構と、
前記変位機構と前記動力源とをつなぐ運動伝達部材と、を備え、
前記動力源が、前記運動伝達部材を運動させ、
前記変位機構が、前記運動伝達部材の前記運動を、前記加工ヘッドの、前記口腔内における変位を伴う運動に変換し、
前記運動伝達部材が、前記変位機構と前記動力源との相対変位を許容しつつ、前記動力源から前記変位機構に前記運動を伝達する、口腔内加工装置。
【請求項2】
前記運動伝達部材が、一端が前記動力源につながれ、他端が前記変位機構につながれる少なくとも1本のフレキシブルシャフトで構成され、
前記動力源が、前記フレキシブルシャフトを回転させ、
前記変位機構が、前記フレキシブルシャフトの回転運動を、前記加工ヘッドの前記口腔内における変位を伴う運動に変換する、請求項1に記載の口腔内加工装置。
【請求項3】
前記運動伝達部材が、第1~第3の3本の前記フレキシブルシャフトを有し、
前記動力源が、前記第1~第3のフレキシブルシャフトの各々を回転させ、
前記変位機構が、前記第1~第3のフレキシブルシャフトの回転運動を、それぞれ互いに交差する方向の前記加工ヘッドの運動に変換することにより、前記加工ヘッドを3次元的に変位させる、請求項2に記載の口腔内加工装置。
【請求項4】
前記変位機構が、
前記第1のフレキシブルシャフトの回転運動を、円柱座標系における円柱の中心軸に平行な高さ方向の直線運動に変換する第1の運動変換部と、
前記第2のフレキシブルシャフトの回転運動を、前記円柱座標系における円柱の前記中心軸まわりの周方向の旋回運動に変換する第2の運動変換部と、
前記第3のフレキシブルシャフトの回転運動を、前記円柱座標系における円柱の前記中心軸からの半径方向の直線運動に変換する第3の運動変換部と、
を有する、請求項3に記載の口腔内加工装置。
【請求項5】
前記第1の運動変換部が、
前記高さ方向に延在する高さ方向案内部材であって、前記加工ヘッドの荷重を受けつつ、前記加工ヘッドの前記高さ方向の直線運動を案内する高さ方向案内部材を有し、
前記第2の運動変換部が、
前記高さ方向に延在する周方向案内部材であって、前記加工ヘッドの前記周方向の前記旋回運動を案内する周方向案内部材を有し、
前記高さ方向案内部材が、前記周方向案内部材に嵌まった状態で前記周方向案内部材と同軸状に配置されている、請求項4に記載の口腔内加工装置。
【請求項6】
前記運動伝達部材が、一端が前記動力源につながれ、他端が前記変位機構につながれる第4のフレキシブルシャフトをさらに有し、
前記動力源が、前記第4のフレキシブルシャフトを回転させ、
前記変位機構が、前記第4のフレキシブルシャフトの回転運動を、前記高さ方向と前記半径方向とに平行な平面内での前記加工ヘッドの傾斜運動に変換する第4の運動変換部をさらに有する、請求項4又は5に記載の口腔内加工装置。
【請求項7】
前記口腔内の除去すべき領域の形状を表す除去領域形状データを外部から取得し、前記除去すべき領域が前記加工ヘッドによって除去されるように、前記除去領域形状データに基づいて、前記動力源を制御する制御装置、
をさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の口腔内加工装置。
【請求項8】
請求項7に記載の口腔内加工装置と、
前記口腔内の前記加工ヘッドによって除去された部分を補修する修復物の形状を、前記除去領域形状データと、加工前の前記口腔内の形状を表す口腔内形状データとを用いて設計し、設計した前記形状をもつ前記修復物を製造する修復物設計製造装置と、
を備える口腔内治療システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の歯牙及び骨を加工することができる口腔内加工装置と、これを備える口腔内治療システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、口腔内の治療、例えばウ蝕の治療には、歯牙を切削加工する加工ヘッドを備えた歯科用ハンドピースが用いられている。歯科用ハンドピースは、加工ヘッドが患者の口腔内における除去したい部分、例えばウ蝕が生じた部分に沿って変位するように、術者の手によって操作される。
【0003】
しかし、歯科用ハンドピースを用いた治療方法では、術者の熟練度によって切削加工の巧拙に差が生じやすい。そこで、術者の熟練度によらず適切な治療を施すために、口腔内の予め指定された道筋に沿って、加工ヘッドを自動的に変位させることのできる装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2011/030906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工ヘッドを自動的に変位させる場合、その変位の道筋は、加工ヘッドを変位させる変位機構に固定された座標系上で定義される。従って、その座標系上の基準点と、現実の口腔内の加工開始点とを一致させる位置合わせ作業を行った後は、変位機構が患者の顎に対してずれ動かないことが求められる。
【0006】
この点、特許文献1の装置では、変位機構が患者の口腔の外部に設置され、その変位機構と患者の顎とが、剛体で連結される。このため、治療中に患者が顎を動かした場合に、剛体の動きに変位機構が追随できない場合がある。その場合、剛体が顎から外れ、変位機構と顎とが相対変位する。両者が相対変位すると、その度に、上記位置合わせ作業を行う必要があり、治療が煩雑化する。
【0007】
また、特許文献1の装置では、変位機構が、これを駆動するモータ等の動力源と一体化されて1つのユニットを構成している。このユニットは変位機構と動力源とを含むため、コンパクトであるとは言いがたく、これを顎に対して固定した場合、患者によっては、圧迫感を感じる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、治療中に顎が動いた場合でも、加工ヘッドを変位させる変位機構が顎に対してずれにくく、しかも顎に固定する部材が従来よりもコンパクト化された口腔内加工装置及びこれを備える口腔内治療システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る口腔内加工装置は、
口腔の外部に設置される動力源と、
歯牙及び骨を加工可能な加工ヘッドを保持した状態で、顎に固定される変位機構と、
前記変位機構と前記動力源とをつなぐ運動伝達部材と、を備え、
前記動力源が、前記運動伝達部材を運動させ、
前記変位機構が、前記運動伝達部材の前記運動を、前記加工ヘッドの、前記口腔内における変位を伴う運動に変換し、
前記運動伝達部材が、前記変位機構と前記動力源との相対変位を許容しつつ、前記動力源から前記変位機構に前記運動を伝達する。
【0010】
前記運動伝達部材が、一端が前記動力源につながれ、他端が前記変位機構につながれる少なくとも1本のフレキシブルシャフトで構成され、
前記動力源が、前記フレキシブルシャフトを回転させ、
前記変位機構が、前記フレキシブルシャフトの回転運動を、前記加工ヘッドの前記口腔内における変位を伴う運動に変換してもよい。
【0011】
前記運動伝達部材が、第1~第3の3本の前記フレキシブルシャフトを有し、
前記動力源が、前記第1~第3のフレキシブルシャフトの各々を回転させ、
前記変位機構が、前記第1~第3のフレキシブルシャフトの回転運動を、それぞれ互いに交差する方向の前記加工ヘッドの運動に変換することにより、前記加工ヘッドを3次元的に変位させるようにしてもよい。
【0012】
前記変位機構が、
前記第1のフレキシブルシャフトの回転運動を、円柱座標系における円柱の中心軸に平行な高さ方向の直線運動に変換する第1の運動変換部と、
前記第2のフレキシブルシャフトの回転運動を、前記円柱座標系における円柱の前記中心軸まわりの周方向の旋回運動に変換する第2の運動変換部と、
前記第3のフレキシブルシャフトの回転運動を、前記円柱座標系における円柱の前記中心軸からの半径方向の直線運動に変換する第3の運動変換部と、
を有していてもよい。
【0013】
前記第1の運動変換部が、
前記高さ方向に延在する高さ方向案内部材であって、前記加工ヘッドの荷重を受けつつ、前記加工ヘッドの前記高さ方向の直線運動を案内する高さ方向案内部材を有し、
前記第2の運動変換部が、
前記高さ方向に延在する周方向案内部材であって、前記加工ヘッドの前記周方向の前記旋回運動を案内する周方向案内部材を有し、
前記高さ方向案内部材が、前記周方向案内部材に嵌まった状態で前記周方向案内部材と同軸状に配置されていてもよい。
【0014】
前記運動伝達部材が、一端が前記動力源につながれ、他端が前記変位機構につながれる第4のフレキシブルシャフトをさらに有し、
前記動力源が、前記第4のフレキシブルシャフトを回転させ、
前記変位機構が、前記第4のフレキシブルシャフトの回転運動を、前記高さ方向と前記半径方向とに平行な平面内での前記加工ヘッドの傾斜運動に変換する第4の運動変換部をさらに有していてもよい。
【0015】
前記口腔内の除去すべき領域の形状を表す除去領域形状データを外部から取得し、前記除去すべき領域が前記加工ヘッドによって除去されるように、前記除去領域形状データに基づいて、前記動力源を制御する制御装置、
をさらに備えてもよい。
【0016】
本発明に係る口腔内治療システムは、
上記口腔内加工装置と、
前記口腔内の前記加工ヘッドによって除去された部分を補修する修復物の形状を、前記除去領域形状データと、加工前の前記口腔内の形状を表す口腔内形状データとを用いて設計し、設計した前記形状をもつ前記修復物を製造する修復物設計製造装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、変位機構と動力源とが別々の部材として構成されており、これらのうち変位機構のみが顎に固定されるので、両者が一体化されていた従来に比べ、顎に固定する部材のコンパクト化が図られる。また、治療中に顎が動いた場合でも、変位機構と動力源との相対変位が運動伝達部材で許容されるため、変位機構が顎に対してずれにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る口腔内加工装置の全体構成を示す概念図。
【図2】実施形態1に係る加工ヘッド及び変位機構の外観を示す斜視図。
【図3】実施形態1に係る変位機構の構成を示す概念図。
【図4】実施形態1に係る変位機構の主要部を示す分解斜視図。
【図5】実施形態2に係る変位機構の構成を示す概念図。
【図6】実施形態2に係る変位機構の往復運動生成部の構成を示す概念図。
【図7】実施形態2に係るアームの外観を示す概念図。
【図8】実施形態2に係るアームの分解斜視図。
【図9】実施形態3に係る口腔内治療システムの概念図。
【図10】(A)は変形例1に係る運動伝達部材の概念図、(B)は変形例2に係る運動伝達部材の概念図、(C)は変形例3に係る運動伝達部材の概念図。
【図11】(A)~(D)は変形例3に係る運動伝達部材の適用例を示す平面図。
【図12】変形例3に係る運動伝達部材の他の適用例を示す平面図。
【図13】変形例3に係る運動伝達部材のさらに他の適用例を示す平面図。
【図14】(A)及び(B)は変形例3に係る運動伝達部材の部分断面斜視図。
【図15】(A)は変形例4に係る運動伝達部材の概念図、(B)は変形例5に係る運動伝達部材の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、加工対象が人間の歯牙である場合を例に挙げて、本発明の実施形態に係る口腔内加工装置を説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。

【0020】
[実施形態1]
図1に示すように、本実施形態に係る口腔内加工装置800は、歯牙及び骨を加工可能な加工ヘッド100と、加工ヘッド100を保持した状態で、患者の顎に固定される変位機構200と、患者の口腔の外部に設置される動力源300と、変位機構200と動力源300とをつなぐフレキシブル(flexible)な運動伝達部材400と、患者の口腔の外部に配置され、動力源300を制御する制御装置500とを備える。

【0021】
加工ヘッド100は、工具CTと、工具CTを回転させる図示せぬ駆動源とを備える。工具CTは、少なくともその先端の外面が歯牙より硬い素材で形成されており、回転駆動されることにより、先端部分において歯牙を切削加工する。ここで、切削とは、本明細書においては、切れ刃で削ることのみならず、砥粒で削る研削の意味も含む概念とする。例えば、工具CTには、ダイヤモンド粒子が先端部分に付着しているダイヤモンドポイント、タングステンカーバイドの切れ刃を先端部分に有するカーバイドバー、又は炭素鋼の切れ刃を先端部分に有するスチールバー等を用いることができる。

【0022】
また、図示しないが、加工ヘッド100は、従来の歯科用ハンドピースと同様に、上記工具CT及び駆動源の他、工具CTの着脱機構と、水及び圧縮エアーによる注水冷却機構とを備える。なお、加工ヘッド100は、術野を照らす照明装置を備えてもよい。

【0023】
加工ヘッド100は、工具CTの先端が、治療対象の歯牙(以下、対象歯牙という)THに向けられた姿勢で、変位機構200に保持されている。なお、図1には、対象歯牙THが1本である場合を例示するが、対象歯牙THは複数本であってもよい。対象歯牙THが複数本ある場合、そのうちの最初に加工を施す歯牙に、工具CTの先端が向けられるように加工ヘッド100が位置決めされる。

【0024】
変位機構200は、工具CTの先端が予め指定された道筋に沿って走査されるように、加工ヘッド100を変位させるものであり、座板ITを介して、顎に固定されている。座板ITは、対象歯牙TH以外の歯牙群と、歯茎とに嵌められている。座板ITと対象歯牙TH以外の歯牙群との隙間は、安定材IMによって埋められている。

【0025】
座板ITは、対象歯牙THの位置に応じて、上顎と下顎のいずれかに固定される。図1には、対象歯牙THが下顎右側第一大臼歯である場合を例示し、理解を容易にするために、下顎のモデルに座板ITが固定された様子を示すが、対象歯牙THが上顎の歯牙である場合には、上顎に座板ITを固定することもできる。

【0026】
本実施形態では、座板ITに、歯列の型を取る際に用いられる印象用トレーの、対象歯牙THに面する部分をくり抜いたものを用いており、安定材IMには、歯列の形状を再現するための印象材を用いている。なお、加工中は、安定材IMによる座板ITの位置ずれを防止する効果を補強する等の目的で、必要に応じて術者が座板ITや変位機構200に手を添えるようにしてもよい。

【0027】
座板ITは、平坦部ITaを有する。変位機構200は、平坦部ITaに着脱可能に固定される。具体的には、平坦部ITaへの変位機構200の固定には、例えば、ねじを用いることができる。なお、本実施形態では、平坦部ITaは、座板ITを構成する印象用トレーの柄の部分によって構成されている。なお、平坦部ITaの座板ITに対する位置や角度は、歯列の中での対象歯牙THの位置や、対象歯牙THにおける加工部位の位置に応じて、任意に設定できる。図1には、口腔外に向かって延びた平坦部ITaが例示されている。

【0028】
変位機構200が座板ITに対して着脱可能であるため、まず座板ITのみを安定材IMで顎に固定した後に、座板ITに変位機構200を装着できる。また、必要のないときは、変位機構200を顎から撤去できるため、患者が口を大きく開け続ける必要がない。

【0029】
図2を参照し、変位機構200が加工ヘッド100をどのように変位させうるかについて説明する。変位機構200は、円柱座標系における半径方向(以下、r方向とする)、周方向(以下、θ方向とする)、及び高さ方向(以下、z方向とする)の各方向に、加工ヘッド100を変位させる。

【0030】
z方向は、工具CTの回転軸AX1に平行な方向である。θ方向は、回転軸AX1から離間して回転軸AX1と平行に延びる旋回軸AX2のまわりに、回転軸AX1を旋回させる方向である。r方向は、回転軸AX1と旋回軸AX2とが対向する方向である。

【0031】
回転軸AX1は、加工ヘッド100に対して固定されている。旋回軸AX2は、変位機構200に対して固定されている。回転軸AX1が、旋回軸AX2に対して、θ方向及びr方向に変位可能である。また、円柱座標系の基準点Oは、変位機構200に対して固定されている。変位機構200は、基準点Oが現実の口腔内の加工開始点と一致するように位置合わせされた状態で、座板ITに固定される。

【0032】
変位機構200には、加工ヘッド100を変位させるための運動を変位機構200に伝達する運動伝達部材400がつながれている。運動伝達部材400は、3本のフレキシブルシャフト、具体的には、r方向用フレキシブルシャフト400r、θ方向用フレキシブルシャフト400θ、及びz方向用フレキシブルシャフト400zから構成されている。

【0033】
図1に戻って、説明を続ける。動力源300は、r方向用フレキシブルシャフト400rを回転させるr方向用モータ300r、θ方向用フレキシブルシャフト400θを回転させるθ方向用モータ300θ、z方向用フレキシブルシャフト400zを回転させるz方向用モータ300zを含んで構成される。

【0034】
運動伝達部材400がフレキシブルシャフトで構成されているため、変位機構200と動力源300とが相対変位可能である。即ち、運動伝達部材400は、変位機構200と動力源300との相対変位を許容しつつ、動力源300から変位機構200に回転運動を伝達する。

【0035】
制御装置500は、口腔内の予め指定された道筋に沿って工具CTの先端が変位するように、r方向用モータ300r、θ方向用モータ300θ、及びz方向用モータ300zの各々を制御する。

【0036】
次に、図3と図4を参照し、変位機構200の機能と構成について詳細に説明する。

【0037】
図3に示すように、変位機構200は、r方向用フレキシブルシャフト400rの回転運動を加工ヘッド100のr方向の直線運動に変換するr方向運動変換部200r、z方向用フレキシブルシャフト400zの回転運動を加工ヘッド100のz方向の直線運動に変換するz方向運動変換部200z、及びθ方向用フレキシブルシャフト400θの回転運動を加工ヘッド100のθ方向の旋回運動に変換するθ方向運動変換部200θを有する。

【0038】
図4を参照して、変位機構200の構成を具体的に説明する。なお、図4には、図2に示した外殻としてのカバー230の内部構成を示す。

【0039】
変位機構200は、r方向とθ方向とに平行な平面(以下、rθ平面という)に平行なベース板201上に、以下に述べる各部材が配置されることで構成される。ベース板201が、上記座板IT(図1参照)に固定される。ベース板201には、これを座板ITに取り付けるためのねじ穴202が複数形成されている。

【0040】
ベース板201の表面には、z方向に立ち上がった円柱状の案内柱203が固定されている。案内柱203は、図2にも示した旋回軸AX2上に延在する。また、ベース板201の表面には、z方向に平行な平面視(以下、単に平面視という)で、案内柱203の位置を中心する円環状をなす周壁204が設けられている。

【0041】
ベース板201の上には、案内柱203によって貫かれた状態の、旋回板205が載せられる。旋回板205は、平面視で、旋回軸AX2を中心とする円形をなし、その中心部分が、案内柱203によって貫かれている。旋回板205は、その外周面205aが周壁204の内面と対面するように、周壁204の内側に嵌め込まれる。旋回板205の厚さは、周壁204の高さとほぼ等しい。

【0042】
旋回板205の外周面205aには、ギヤの歯が形成されており、旋回板205は、ウォームホイールとして機能する。旋回板205は、ベース板201、案内柱203、及び周壁204に対して、旋回軸AX2まわりに回転可能である。

【0043】
周壁204には、旋回板205の外周面205aの一部を露出させる切り欠き204aが形成されている。そして、その切り欠き204aの部分に、露出した外周面205aの歯と噛み合うウォームギヤ206が配置されている。ウォームギヤ206は、θ方向用フレキシブルシャフト400θにつながれており、θ方向用フレキシブルシャフト400θと共に回転するように、軸受け207aと207bを介して、ベース板201上に固定されている。軸受け207aと207bは、ウォームギヤ206の長さ方向両端を支持している。

【0044】
旋回板205の上には、案内柱203に嵌った状態の、回転体208が載せられる。回転体208は、案内柱203と同心をなし、案内柱203及び旋回板205に対して、旋回軸AX2まわりに回転可能である。回転体208は、旋回板205に接する円板部209と、円板部209からz方向に立ち上がった雄ねじ部210とを有する。

【0045】
円板部209の外周面209aには、ギヤの歯が形成されており、円板部209はウォームホイールとして機能する。旋回板205には、外周面209aの歯と噛み合うウォームギヤ212が配置されている。ウォームギヤ212は、z方向用フレキシブルシャフト400zにつながれており、z方向用フレキシブルシャフト400zと共に回転するように軸受け211aと211bを介して、旋回板205に固定されている。軸受け211aと211bは、ウォームギヤ212の長さ方向両端を支持している。

【0046】
回転体208の雄ねじ部210は、アーム213を収容するアーム収容体216と螺合する。以下、アーム213及びアーム収容体216について説明する。

【0047】
アーム213は、平面視で、一方向を長手方向とする形状をなす。以下、アーム213の長手方向をx方向とし、平面視でx方向に直交する方向をy方向とする、アーム213に固定されたxy直交座標を定義して説明を続ける。

【0048】
アーム213は、そのx方向一端(以下、先端という)において、加工ヘッド100を保持している。アーム213のx方向他端(以下、後端という)には、アーム213をx方向に貫通するねじ穴214が形成されている。また、平面視において、アーム213の先端と後端との間には、x方向に延在する開口215が形成されている。

【0049】
アーム213は、中空鞘状のアーム収容体216に収められる。アーム213は、その後端から、アーム収容体216に挿入される。アーム収容体216も、アーム213と同様、平面視でx方向を長手方向とする形状をなす。アーム213は、アーム収容体216に対してx方向に進退可能である。

【0050】
但し、アーム収容体216は、アーム213のアーム収容体216に対するy方向及びz方向の変位は規制する。即ち、アーム213のアーム収容体216に収容される部分のy方向の外寸は、アーム収容体216のアーム213を収容する部分のy方向の内寸に略等しい。また、アーム213のアーム収容体216に収容される部分のz方向の外寸は、アーム収容体216のアーム213を収容する部分のz方向の内寸に略等しい。

【0051】
アーム収容体216の、z方向に対面する天板217及び底板218が、アーム213のアーム収容体216に対するz方向の変位を規制する。天板217には、これをz方向に貫通するねじ穴219が形成されており、底板218にも、これをz方向に貫通するねじ穴220が形成されている。ねじ穴219と220は、平面視で互いに重なる位置に配置されている。

【0052】
なお、ねじ穴219と220はz方向に離れているが、両者は共通の雄ねじ、具体的には、雄ねじ部210と螺合するように、ねじ穴219と220とで、ねじ溝の位相が揃えられている。

【0053】
また、アーム収容体216の、アーム213の後端と接しうる端板221には、これをx方向に貫通する貫通孔222が形成されている。アーム213の後端が端板221に接したとき、ねじ穴214と貫通孔と222とが連通する。

【0054】
r方向用フレキシブルシャフト400rには、これをx方向に延長するように、x方向に延在する雄ねじ223がつながれる。また、r方向用フレキシブルシャフト400rと雄ねじ223との境界には、雄ねじ223のアーム収容体216に対するx方向の変位を規制する固定部224が設けられる。雄ねじ223と固定部224は、r方向用フレキシブルシャフト400rと共に回転する。

【0055】
固定部224は、r方向用フレキシブルシャフト400rと雄ねじ223との間に介在する中間部227と、x方向に相対向するように中間部227に取り付けられた止め輪225及び226とで構成される。中間部227には、ねじ溝は形成されていない。止め輪225と226の間隔は、端板221の厚さと略等しい。中間部227が貫通孔222に嵌まり、かつ止め輪225と226が、端板221をx方向に両側から挟み込んだ状態で、雄ねじ223がアーム213のねじ穴214と螺合する。

【0056】
上述した回転体208の雄ねじ部210は、アーム収容体216に収められたアーム213の開口215を通して、アーム収容体216のねじ穴219及び220と螺合する。

【0057】
一方、旋回板205には、この旋回板205に対するアーム収容体216のθ方向の変位を規制する規制手段としての規制柱228と229が固定されている。規制柱228と229は、各々旋回板205からz方向に立ち上がっている。

【0058】
規制柱228と229のy方向の間隔は、アーム収容体216のy方向の幅と略等しい。アーム収容体216と螺合した回転体208は、アーム収容体216が規制柱228と229とによってy方向に挟み込まれた状態で、旋回板205上に載置される。

【0059】
以上説明した変位機構200の作用は、次のとおりである。

【0060】
θ方向用フレキシブルシャフト400θの回転と共にウォームギヤ206が回転すると、ウォームギヤ206に噛み合っているウォームホイールとしての旋回板205が旋回軸AX2まわりに回転する。アーム収容体216とアーム213は、旋回板205に対する旋回軸AX2まわりの回転が規制柱228と229とで規制されているため、旋回板205と共に旋回軸AX2まわりに回転する。この結果、加工ヘッド100がθ方向に旋回する。

【0061】
このように、ウォームギヤ206と、ウォームホイールとしての旋回板205と、旋回板205の旋回軸AX2まわりの回転を案内する案内柱203とによって、上述したθ方向運動変換部200θ(図3参照)が構成されている。

【0062】
z方向用フレキシブルシャフト400zの回転と共にウォームギヤ212が回転すると、ウォームホイールとしての円板部209においてウォームギヤ212に噛み合っている回転体208が、旋回板205に対して、旋回軸AX2まわりに回転する。アーム収容体216とアーム213は、旋回板205に対する旋回軸AX2まわりの回転が規制柱228と229とで規制されている。このため、回転体208の雄ねじ部210が、アーム収容体216、アーム213、及び加工ヘッド100の荷重を受けつつ、ねじ穴219及び220に対して、旋回軸AX2まわりに回転する。この結果、アーム収容体216が、回転体208に対して、z方向に変位する。このとき、規制柱228及び229は、アーム収容体216をz方向に案内する役割も果たす。以上の結果、加工ヘッド100がz方向に変位する。

【0063】
このように、ウォームギヤ212と、ウォームホイールとしての円板部209及び雄ねじ部210を有する回転体208と、雄ねじ部210と螺合するねじ穴219及び220とによって、上述したz方向運動変換部200z(図3参照)が構成されている。

【0064】
r方向用フレキシブルシャフト400rが回転すると、それに伴って、雄ねじ223が、ねじ穴214に対して回転する。雄ねじ223は、固定部224によって、アーム収容体216に対するx方向の変位が規制されているため、雄ねじ223の回転によって、アーム213が、アーム収容体216に対してx方向に変位する。このため、加工ヘッド100もx方向に変位する。なお、上述のように、アーム収容体216とアーム213は、旋回板205と共に旋回軸AX2まわりに回転するため、x方向は、常にr方向と一致する。

【0065】
このように、雄ねじ223と、ねじ穴214と、雄ねじ223のr方向の位置を固定する固定部224とによって、上述したr方向運動変換部200r(図3参照)が構成されている。なお、以上説明したθ方向運動変換部200θ、z方向運動変換部200z、及びr方向運動変換部200rの作用は、互いに独立である。

【0066】
治療に際しては、まず、図2に示した円柱座標系の基準点としての原点Oが、現実の患者の口腔内における加工開始点に一致するように、変位機構200を患者の顎に位置決めする。既述のように、変位機構200の顎への固定には、図1に示した座板ITと安定材IMとが用いられる。なお、変位機構200において、工具CTの先端の位置と、原点Oの位置とを一致させる原点出し作業は、予め口腔外で行う。

【0067】
次に、図1に示した制御装置500が、予め指定された道筋に沿って工具CTの先端が変位するように、動力源300を通じて、フレキシブルシャフト400r、400θ、及び400zの回転を制御する。例えば、モータ300r、300θ、及び300zが、ステッピングモータで構成されている場合、制御装置500は、それらモータ300r、300θ、及び300zの各々に出力する電圧パルスの数によって、フレキシブルシャフト400r、400θ、及び400zの各々の回転角度を制御することができる。

【0068】
なお、工具CTの先端の変位の道筋は、上記円柱座標系における原点Oからの座標値群を表すNC(numerical control)データとして、予め制御装置500に与えられる。

【0069】
また、制御装置500は、工具CTの変位の速度を制御することもできる。例えば、モータ300r、300θ、及び300zが、ステッピングモータで構成されている場合、制御装置500は、それらモータ300r、300θ、及び300zの各々に出力する電圧パルスの繰り返し周波数によって、回転速度を制御することができる。

【0070】
なお、工具CTの変位の速度は、NCデータにおいて指定することができる。また、制御装置500が、NCデータによらずに、工具CTによる切削中の切削負荷に応じて、工具CTの変位の速度を自動制御するようにしてもよい。また、術者が、工具CTの変位の速度を手動制御するようにしてもよい。

【0071】
以上説明した実施形態1によれば、次の効果が得られる。

【0072】
(1)変位機構200と動力源300とが、別々の部材として互いに分離して構成されており、これらのうち変位機構200のみが顎に固定される。このため、両者が一体化されていた従来に比べて、顎に固定する部材のコンパクト化が図られる。

【0073】
(2)加工ヘッド100への3自由度の付与を、θ方向運動変換部200θ、z方向運動変換部200z、及びr方向運動変換部200rで実現し、θ方向の変位を案内する案内柱203と、z方向の変位を案内する回転体208とを、回転体208が案内柱203に嵌まった状態で同軸状に配置した。このため、各々加工ヘッドを直線的に案内する3つの直動ステージの組み合わせで3自由度を付与していた従来に比べて、変位機構200そのものをコンパクト化できる。

【0074】
(3)変位機構200と動力源300とが、フレキシブルな運動伝達部材400でつながれているので、治療中に患者の頭部が動いた場合でも、その動きが、運動伝達部材400の撓みによって許容される。このため、変位機構200と顎とが相対変位しにくい。従って、煩雑な位置合わせ作業を何度も行う必要がなく、加工精度を向上できる。

【0075】
(4)ウォームギヤ206からウォームホイールとしての旋回板205への運動の伝達は一方向的である。即ち、旋回板205からウォームギヤ206に対しては運動の伝達が阻止される。このため、アーム収容体216やアーム213や加工ヘッド100に患者の顎や歯牙がぶつかる等して、旋回板205に、これを旋回軸AX2まわりに回転させようとする力が加わっても、加工ヘッド100の位置のずれが生じにくい。このことも、加工精度の向上に寄与する。

【0076】
また、回転体208の雄ねじ部210から、アーム収容体216へのz方向の運動の伝達も一方向的である。このため、アーム収容体216やアーム213や加工ヘッド100に、これらをz方向に移動させようとする力が加わっても、加工ヘッド100の位置のずれが生じにくい。このことも、加工精度の向上に寄与する。

【0077】
また、ウォームギヤ212からウォームホイールとしての円板部209への運動の伝達も一方向的である。このため、アーム収容体216やアーム213や加工ヘッド100に、これらをz方向に移動させようとする力が加わり、その結果として回転体208に、これを旋回軸AX2まわりに回転させようとする力が加わっても、加工ヘッド100の位置のずれが生じにくい。このことも、加工精度の向上に寄与する。

【0078】
また、雄ねじ223からアーム213へのr方向の運動の伝達も一方向的である。このため、アーム213や加工ヘッド100に、これらをr方向に移動させようとする力が加わっても、加工ヘッド100の位置のずれが生じにくい。このことも、加工精度の向上に寄与する。

【0079】
(5)フレキシブルシャフト400r、400θ、及び400zのいずれもが、変位機構200から口腔外に向かって延出しており、変位機構200から口腔の内面に向かって延出する部材がない。仮に、変位機構200から口腔の内面に向かって延出する部材が存在すると、患者はその分、口を大きく開ける必要があるが、フレキシブルシャフト400r、400θ、及び400zは口腔外に向かって延出しているので、そのような問題が生じにくい。また、運動伝達部材400の取り回しが容易である。

【0080】
(6)変位機構200を運動伝達部材400に対して着脱可能な構成とすることで、口腔内の加工後に、変位機構200を取り外して滅菌することができる。このため、変位機構200は、ステンレス鋼、チタン、セラミックス等、耐滅菌処理性を有する素材で作ることが望ましい。但し、変位機構200の一部又は全体をディスポーザブルな材料で形成してもよい。例えば、カバー230(図2参照)については、ディスポーザブルな材料で形成し、使い捨て可能とすることもできる。

【0081】
また、運動伝達部材400を、変位機構200に対してのみでなく、動力源300に対しても着脱可能な構成とすることで、口腔内の加工後に、運動伝達部材400を取り外して滅菌することができる。

【0082】
[実施形態2]
上記実施形態1では、加工ヘッド100に3自由度を付与したが、加工ヘッド100に付与する自由度の数は特に限定されない。例えば、加工ヘッド100に4自由度を付与してもよい。以下、その具体例について説明する。

【0083】
図5に示すように、本実施形態では、変位機構200’が、α方向運動変換部200αをさらに備える。運動伝達部材400’は、α方向用フレキシブルシャフト400αをさらに備える。また、図示しないが、本実施形態では、図1の動力源300が、α方向用フレキシブルシャフト400αを回転させるα方向用モータをさらに備え、制御装置500は、α方向用モータを制御する機能を有する。

【0084】
α方向運動変換部200αは、α方向用フレキシブルシャフト400αの回転運動を、rz平面内での往復運動に変換する往復運動生成部600aと、往復運動生成部600aで生成された往復運動を、加工ヘッド100のrz平面内での傾斜運動に変換する傾斜運動生成部600bとで構成される。

【0085】
往復運動生成部600aは、r方向運動変換部200rによるアーム213のr方向の進退を吸収する機能も有しており、アーム213のr方向の進退とは独立して、上記往復運動を生成することができる。

【0086】
図6を参照し、この往復運動生成部600aの構成について説明する。往復運動生成部600aは、固定部601、入力軸602、中空筒603、出力軸604、スライダ605、リンク606、及び軸受け607によって構成されている。

【0087】
固定部601は、α方向用フレキシブルシャフト400αにつながれ、α方向用フレキシブルシャフト400αと共に回転する形態で、アーム収容体216に固定される。中空筒603は、r方向に延在しており、r方向に平行な軸まわりの回転が許容された状態で、アーム213と共にr方向に変位するよう、アーム213に保持されている。中空筒603には、r方向に垂直な断面が四角形の中空部が形成されている。

【0088】
入力軸602は、r方向に延在しており、そのr方向に垂直な断面は、中空筒603の中空部と嵌合可能な形状、即ち四角形をなす。入力軸602は、一端が固定部601につながれ、他端側が、アーム213に形成された貫通孔608を通して、中空筒603の一端側に挿入されている。

【0089】
出力軸604も、r方向に延在している。出力軸604は、その一端側に、r方向に垂直な断面が中空筒603の中空部と嵌合可能な形状、即ち四角形をなす角柱状部604aを有する。角柱状部604aは、アーム213に形成された貫通孔609を通して、中空筒603の他端側に挿入されている。

【0090】
なお、図6には、中空筒603の中空部、入力軸602、及び角柱状部604aの各々のr方向に垂直な断面形状が四角形である場合を例示したが、これらの断面形状は特に四角形に限られない。中空筒603の中空部のうち入力軸602が嵌まる部分及び入力軸602の断面形状は、入力軸602から中空筒603に回転運動を伝達できるような、円形以外の形状であればよい。同様に、中空筒603の中空部のうち角柱状部604aが嵌まる部分及び角柱状部604aの断面形状は、中空筒603から出力軸604に回転運動を伝達できるような、円形以外の形状であればよい。入力軸602と角柱状部604aとで断面形状が異なっていてもよい。

【0091】
出力軸604は、その他端側に、軸受け607によって回転自在に支持される被支持部604bを有する。軸受け607は、アーム213に固定されている。軸受け607に挿通された被支持部604bの両端には、軸受け607に対する出力軸604のr方向の変位を規制するために、止め輪604d及び604eが取り付けられている。止め輪604d及び604eは、軸受け607をr方向に関して両側から挟み込んでいる。

【0092】
また、出力軸604は、角柱状部604aと被支持部604bとの間に、雄ねじ部604cを有する。雄ねじ部604cに、上記スライダ605のz方向一端部が螺合している。即ち、上記スライダ605のz方向一端部は、雄ねじ部604cによってr方向に貫かれた状態で、雄ねじ部604cと螺合する雌ねじになっている。

【0093】
リンク606は、r方向に延在しており、一端が、スライダ605のz方向他端部にrz平面内で回動可能に連結され、他端が、加工ヘッド100に固定されたブラケット100aにrz平面内で回動可能に連結されている。

【0094】
以上説明した往復運動生成部600aの作用は次のとおりである。

【0095】
r方向運動変換部200r(図5参照)によって、アーム213が、アーム収容体216に対してr方向に変位された場合、そのアーム収容体216に対するアーム213の変位は、入力軸602に対する中空筒603の摺動によって吸収される。

【0096】
α方向用フレキシブルシャフト400αが回転すると、その回転運動は、入力軸602及び中空筒603を介して、出力軸604に伝えられる。即ち、雄ねじ部604cが回転する。雄ねじ部604cのr方向の位置は、軸受け607、被支持部604b、並びに止め輪604d及び604eによって固定されている。このため、スライダ605が、雄ねじ部604cに対して、r方向に進退する。これに伴い、スライダ605に連結されたリンク606も往復運動する。

【0097】
そして、このリンク606の往復運動が、図5に示した傾斜運動生成部600bによって、加工ヘッド100の傾斜運動に変換される。本実施形態では、加工ヘッド100の傾斜運動は、図6中、想像線で示すように、加工ヘッド100の、工具CTの先端を中心としたrz面内での回転運動として実現される。

【0098】
なお、図6中、αは、工具CTの回転軸AX1の、工具CTの先端を中心とした回転角度を表している。α方向とは、回転軸AX1が工具CTの先端を中心として回転する方向を指す。図6には、スライダ605がr方向外方に変位したことで、加工ヘッド100がr方向外方に角度αだけ傾斜した様子を想像線で例示している。

【0099】
次に、図7及び図8を参照し、上述した加工ヘッド100の傾斜運動を実現する傾斜運動生成部600bの構成について説明する。

【0100】
図7に示すように、アーム213は、加工ヘッド100を挟んで、y方向に対面する一対の側板610及び620を有する。傾斜運動生成部600bは、これら側板610及び620間に配置される4節リンク機構630によって構成されている。

【0101】
図8に示すように、4節リンク機構630は、第1~第4のリンク631~634によって構成されている。以下の説明中、“連結”するとは、rz面内で回動可能に連結することを意味するものとする。

【0102】
第1のリンク631と第2のリンク632は、各々一端が側板620に連結され、他端が、加工ヘッド100の側板620と対向する面に連結されている。第1のリンク631と第2のリンク632は、工具CTの回転軸AX1(図2参照)がz方向を向いている状態(以下、中立状態という)では、y方向からみて、各々が一端から他端に向かって加工ヘッド100に近づくように傾斜した逆ハの字状に配置されている。

【0103】
第3のリンク633と第4のリンク634は、各々一端が側板610に連結され、他端が、加工ヘッド100の側板610と対向する面に連結されている。中立状態では、y方向からみて、第3のリンク633は第1のリンク631と重なる位置に配置され、第4のリンク634は第2のリンク632と重なる位置に配置されている。

【0104】
第1~第4のリンク631~634によって、加工ヘッド100が支持されている。第1~4のリンク631~634の他端の位置は、加工ヘッド100の、z方向に関して工具CT側の端部である。

【0105】
リンク606による往復運動が伝えられるブラケット100aのz方向の位置は、第1~第4のリンク631~634の一端のz方向の位置と、中立状態における第1~第4のリンク631~634の他端のz方向の位置との間である。但し、ブラケット100aの取り付け位置は、加工ヘッド100を傾斜運動させることができる位置であれば、特に限定されない。

【0106】
第1~第4のリンク631~634の長さや連結位置、及びブラケット100aの位置等は、ブラケット100aに往復運動が伝達された場合に、図6に示すように、加工ヘッド100が、工具CTの先端を中心として、rz面内で傾斜するように調整されている。αの値が小さいときに、このような4節リンク機構630が実現可能なことは、当業者に理解できるであろう。

【0107】
本実施形態2によれば、工具CTをα方向にも変位させることができるので、より複雑な形状の加工が可能となる。また、雄ねじ部604cからスライダ605へのr方向の運動の伝達は一方向的である。このため、加工ヘッド100に、これらをr方向へ移動させようとする力が加わっても、加工ヘッド100の位置のずれが生じにくい。このことが、加工精度の向上に寄与する。

【0108】
なお、図8には示さなかったが、本実施形態2では、図4に示したアーム収容体216の、図8に示す貫通孔608とr方向(x方向)に対面する位置に、図6に示す固定部601を取り付けるための貫通孔が形成されているものとする。

【0109】
[実施形態3]
上記実施形態1及び2に係る口腔内加工装置800は、それ自体単独で用いることもできるが、加工ヘッド100によって除去した部分を補修する修復物を製造する修復物設計製造装置と組み合わせて用いることもできる。以下、その具体例を説明する。

【0110】
図9に示すように、本実施形態に係る口腔内治療システム900は、既述の口腔内加工装置800の他、形状測定装置710、除去領域指定装置720、及び修復物設計製造装置730を備える。

【0111】
形状測定装置710は、光学印象法等によって口腔内の形状を測定すると共に、その形状を表す口腔内形状データを生成する。形状測定装置710で生成された口腔内形状データは、除去領域指定装置720と、修復物設計製造装置730とに出力される。

【0112】
除去領域指定装置720は、形状測定装置710で生成された口腔内形状データが表す形状を表示するディスプレイと、ディスプレイの画面上で、除去すべき領域を医師その他のユーザが指定するためのポインティングデバイスと、ポインティングデバイスで指定された領域の形状を表す除去領域形状データを生成するプロセッサとを有する。

【0113】
除去領域指定装置720で生成された除去領域形状データは、口腔内加工装置800の制御装置500と、修復物設計製造装置730との双方に出力される。

【0114】
本実施形態では、口腔内加工装置800の制御装置500は、除去領域指定装置720から取得した除去領域形状データを用いて、除去すべき領域を除去するための、工具CTの変位の道筋を表すNCデータを生成する機能を有する。制御装置500は、そのNCデータを用いて、動力源300(図1参照)を制御する。

【0115】
修復物設計製造装置730は、口腔内加工装置800の加工ヘッド100によって除去された部分を補修する修復物を、口腔内形状データ、及び除去領域形状データ等を用いて製造する。

【0116】
具体的には、修復物設計製造装置730では、まず、除去加工前の口腔内の形状を表す口腔内形状データを用いて、ウ蝕等によって欠損した欠損領域が特定されると共に、治療後の口腔内の形状、即ち上記欠損領域を復元した状態の口腔内の形状が特定される。次に、上記欠損領域と、上記除去領域形状データが表す除去すべき領域とから、それら欠損領域及び除去すべき領域に適合する修復物の形状が定められる。

【0117】
そして、修復物設計製造装置730は、上述のようにして設計した修復物の形状に相当する部分を除去するためのNCデータを作成する。次に、修復物設計製造装置730は、その作成したNCデータを用いて、上記修復物の形状に相当する部分を除去する加工を、鋳型に対して施す。その加工された鋳型に、上記修復物の材料を鋳込むことで、上記修復物が得られる。

【0118】
また、修復物設計製造装置730は、上述のようにして設計した修復物の形状に相当する部分を残すことができるNCデータを作成することもできる。この場合、修復物設計製造装置730は、その作成したNCデータを用いて、セラミックス製やハイブリッドレジン製等のブロックを切削加工し、上記修復物と成す。

【0119】
また、修復物設計製造装置730は、上述のようにして設計した修復物の形状に相当する部分を、付加加工によって形成するためのNCデータを作成することもできる。付加加工としては、例えば、樹脂等を積層する積層造形法が挙げられる。

【0120】
なお、上述した鋳型やブロックの除去加工や、樹脂等の付加加工を行えるものとして、歯科用CAD/CAMシステムにおける加工装置が知られている。従って、修復物設計製造装置730をどのように実現するかは当業者に理解できるであろう。

【0121】
以上説明した実施形態3によれば、口腔内の除去加工と、修復物の製造とに同じ除去領域形状データを用いるので、得られる修復物と口腔内の除去した部分との間に不要な隙間が生じにくい。即ち、口腔内の除去した部分にぴったりと適合する精度の良い修復物を得ることができる。

【0122】
なお、従来は、修復物を製作するに際し、除去加工を終えた口腔内の印象を採得する作業が必須であった。これに対し、本実施形態によれば、口腔内形状データ、及び除去領域形状データ等を利用して修復物の設計と製造ができるので、除去加工を終えた口腔内の印象を採得する作業は必須ではなくなる。除去加工後の印象の採得を省略し、上記各形状データを用いて修復物を製造する場合は、修復物設計製造装置730による修復物の製造を、口腔内加工装置800による口腔内の除去加工と同時並行して行えるので、治療の効率を高めることができる。

【0123】
勿論、口腔内加工装置800による口腔内の除去加工を終えた後に、修復物設計製造装置730による修復物の製造を行ってもよい。例えば、一般的な修復物の製作手順と同様、除去加工後に、形状測定装置710で改めて口腔内の印象の採得を行い、修復物設計製造装置730で修復物の設計と製造を行ってもよい。

【0124】
[運動伝達部材400の変形例]
上記実施形態では、運動伝達部材400が、フレキシブルシャフト400r,400θ,400z,及び400αから構成されていたが、運動伝達部材400の構成はこれに限られない。以下、運動伝達部材400の変形例について述べる。

【0125】
図10(A)に示すように、変形例1に係る運動伝達部材410は、フレキシブルシャフト411を被覆する被覆部材412を備える。フレキシブルシャフト411は、例えば、上記フレキシブルシャフト400r,400θ,400z,又は400αである。被覆部材412は、フレキシブルシャフト411と共に柔軟に撓むことができるフレキシビリティを有すると共に、自己に対するフレキシブルシャフト411の回転を許容する。

【0126】
被覆部材412のフレキシブルシャフト411に接する内面と、フレキシブルシャフト411の被覆部材412に接する外面の少なくともいずれか一方は、両者間の摩擦を低減する構造や材質とすることが好ましい。

【0127】
被覆部材412を備えたので、フレキシブルシャフト411と、患者の口角や口唇や他の部分とが直接接触することを防止でき、両者間に摩擦が作用することを防止できる。このため、患者がより快適に治療を受けることができる。また、フレキシブルシャフト411の、動力源300側の端部の回転角と、変位機構200側の端部の回転角との間に、上記摩擦に起因する角度差が生じにくくなるため、加工精度のさらなる向上が図られる。

【0128】
なお、被覆部材412は、その一端が変位機構200に、他端が動力源300に、それぞれフレキシブルシャフト411まわりに回転できないように固定される。これにより、被覆部材412の、フレキシブルシャフト411まわりのねじり剛性によって、変位機構200と動力源300とのフレキシブルシャフト411まわりの相対的な回転を抑制できる。変位機構200と動力源300との相対的な回転は、動力源300によるフレキシブルシャフト411の回転駆動とは独立して、フレキシブルシャフト411の回転をもたらしうるので、変位機構200と動力源300との相対的な回転を抑制することで、加工精度を向上できる。この効果を高めるために、被覆部材412には、ねじり剛性の高いものを用いることが好ましい。

【0129】
なお、仮に変位機構200と動力源300との相対的な回転に起因して、フレキシブルシャフト411が回転しても、変位機構200が、フレキシブルシャフト411の回転を減速させて加工ヘッド100の変位をもたらす減速機構を備えるため、加工精度への悪影響を低減できる。例えば、図4に示した旋回板205とウォームギヤ206は、旋回板205の回転角が、θ方向用フレキシブルシャフト400θの回転角、即ちウォームギヤ206の回転角よりも小さくなる減速機構を構成している。

【0130】
以上、フレキシブルシャフト411を用いて構成された運動伝達部材410について説明したが、運動伝達部材410を構成する部材はフレキシブルシャフトに限定されない。以下、その具体例について述べる。

【0131】
図10(B)に示すように、変形例2に係る運動伝達部材420は、剛体であるシャフト421と、シャフト421同士をつなぐユニバーサルジョイント422とを含んで構成される。シャフト421及びユニバーサルジョイント422は、上記フレキシブルシャフト400r,400θ,400z,又は400αの代替として用いられうる。ユニバーサルジョイント422も、フレキシブルシャフト400r,400θ,400z,又は400αと同様、変位機構200と動力源300との相対変位を許容しつつ、動力源300から変位機構200に自己の回転運動を伝達する。

【0132】
図10(C)は、変形例3に係る運動伝達部材430を示す。この運動伝達部材430は、一対の回転輪200p及び300pに掛け渡される無端ベルト431を含んで構成される。一方の回転輪200pは、変位機構200を構成するものであり、他方の回転輪300pは、動力源300を構成するものである。回転輪200pと300pは、例えば、歯付き又は歯無しのプーリや、スプロケットで構成される。

【0133】
回転輪200pと300pが例えば歯付きプーリやスプロケットで構成される場合、無端ベルト431は歯付きベルトやチェーンで構成される。また、回転輪200pと300pが例えば歯無しプーリで構成される場合、無端ベルト431は、糸、ワイヤ、又は歯無しのベルト等で構成される。後者の場合、無端ベルト431と回転輪200p及び300pとのスリップを抑えるために、無端ベルト431の一部を回転輪200p及び300pに固定してもよい。なお、無端ベルト431は、回転輪200p及び300pに複数回巻いてもよい。

【0134】
また、無端ベルト431には、これを被覆する被覆部材432及び433が取り付けられている。被覆部材432及び433は、柔軟に撓むことができるフレキシビリティを有すると共に、自己に対する無端ベルト431の摺動を許容する。

【0135】
回転輪300pが動力源300において回転されると、回転輪300pの回転に伴って、無端ベルト431が送られ、無端ベルト431の送り運動に伴って、回転輪200pが回転する。この無端ベルト431の送り運動中においても、無端ベルト431と被覆部材432及び433は、回転輪200pと300pの相対変位を許容する。

【0136】
具体的には、被覆部材432及び433が無端ベルト431を案内する役割を果たしうるので、例えば、変位機構200と動力源300との間で被覆部材432及び433の一部分が保持されるように構成すれば、その保持された部分を支点として被覆部材432及び433が湾曲するような、回転輪200pと300pの相対変位が許容されうる。この場合、被覆部材432及び433は、任意の方向に湾曲することができる。例えば、被覆部材432及び433は、図10の紙面内で湾曲することもできるし、図10の紙面と交差する方向に湾曲することもできる。また、仮に被覆部材432及び433を備えなくても、無端ベルト431は、回転輪200p又は300pの回転軸に垂直な仮想平面内での、回転輪200pと300pの相対変位を許容できる。

【0137】
以上のように、運動伝達部材430は、変位機構200と動力源300との相対変位を許容しつつ、動力源300から変位機構200に、無端ベルト431の送り運動を伝達できる。また、無端ベルト431に、被覆部材432及び433を取り付けたことで、図10(A)に示した運動伝達部材410の場合と同様、無端ベルト431と、患者の口角や口唇や他の部分との間に、摩擦力が作用することを防止できる。

【0138】
図11(A)に、運動伝達部材430の具体的な適用例を示す。図示のように、回転輪200pは、図4に示した旋回板205の代替として用いることができる。この場合、図4に示したウォームギヤ206は省略できる。

【0139】
図11(B)~(D)に示すように、1つ又は複数の補助回転輪434を用いることで、回転輪200pの回転軸に垂直な仮想平面内、即ちrθ平面内での、無端ベルト431の相対向する部分の間隔を、回転輪200pの直径より小さく調整することもできる。また、補助回転輪434を用いることで、図11(B)に示すように、平面視で無端ベルト431がベース板201の幅方向中央を通るように構成したり、図11(C)と(D)に示すように、無端ベルト431がベース板201の幅方向端部を通るように構成したりすることができる。これにより、無端ベルト431の取り回しが容易になると共に、対象歯牙THの位置に応じて、無端ベルト431を患者の口角や口唇や他の部分に接触しにくくすることができる。

【0140】
図12は、運動伝達部材430の他の適用例を示す。本適用例では、回転輪200pの外周面にギヤが形成されているものとする。変位機構200は、図4に示したウォームホィールとしての旋回板205に代えて、回転輪200pの外周面と噛み合うギヤを有する旋回板205’を備える。無端ベルト431の送り運動に伴って回転輪200pが回転し、回転輪200pの回転に伴って、旋回板205’が逆向きに回転する。

【0141】
図13は、運動伝達部材430のさらに他の適用例を示す。図示のように、回転輪200pの回転軸がrθ平面と平行になるように、回転輪200pを配置してもよい。本適用例では、回転輪200pが、シャフト200sによってウォームギヤ206につながれている。回転輪200pの回転に伴ってウォームギヤ206が回転し、ウォームギヤ206の回転に伴って、ウォームホィールとしての旋回板205が回転する。

【0142】
図14は、運動伝達部材430の部分断面斜視図である。図14(A)に示すように、運動伝達部材430は、一対の被覆部材432及び433を連結する連結部435を備えてもよい。また、図14(B)に示すように、一対の被覆部材432及び433を直接連結させてもよい。図14(A)又は(B)に示すように被覆部材432と433を一体化することで、両者を平行な状態に維持することができる。

【0143】
図15(A)は、変形例4に係る運動伝達部材440を示す。この運動伝達部材440は、一端が変位機構200のベース板201に固定された引きばね441と、一端が引きばね441の他端に接続され、他端が動力源300に接続され、かつ一端と他端の間の途中部分が回転輪200pに掛けられたフレキシブルな線材442とを備える。

【0144】
動力源300が、線材442の他端部を、その長さ方向に往復運動させる。動力源300が線材442を引っ張った際、引きばね441が伸びる。線材442の、引っ張り方向とは逆方向の送りは、引きばね441の復元力によってアシストされる。線材442の往復運動に伴って、回転輪200pが回転する。回転輪200pは、例えば、図11に示した例と同様、旋回板205の代替に用いることもできるし、図12に示した例と同様、旋回板205’を回転させるものとして用いることもできるし、図13に示した例と同様、ウォームギヤ206を回転させるものとして用いることもできる。

【0145】
線材442は、回転輪200pの回転軸に垂直な仮想平面内での、回転輪200pと動力源300との相対変位を許容できる。つまり、線材442は、変位機構200と動力源300との相対変位を許容しつつ、動力源300から変位機構200に、自己の往復運動を伝達する。

【0146】
また、線材442に、これを被覆し、かつ自己に対する線材442の往復運動を許容する被覆部材443を取り付けたことで、線材442と、患者の口角や口唇や他の部分との間に、摩擦力が作用することを防止できる。

【0147】
図15(B)は、変形例5に係る運動伝達部材450を示す。この運動伝達部材450は、一端が変位機構200のベース板201に固定された圧縮ばね451と、一端が圧縮ばね451の他端に接続されたラックギヤ452と、一端がラックギヤ452の他端に接続され、他端が動力源300に接続されたフレキシブルなロッド453とを備える。本例では、変位機構200が、ラックギヤ452と噛み合うピニオンギヤ200gを備える。

【0148】
動力源300が、ロッド453の他端部を、その長さ方向に往復運動させる。動力源300がロッド453を押し込んだ際、圧縮ばね451が縮む。ロッド453の、押し込み方向とは逆方向の引き戻しは、圧縮ばね451の復元力によってアシストされる。

【0149】
ロッド453の往復運動に伴って、ラックギヤ452が往復運動し、ラックギヤ452の往復運動に伴って、ピニオンギヤ200gが回転する。ピニオンギヤ200gは、例えば、図11に示す回転輪200pと同様、旋回板205の代替に用いることもできるし、図12に示した例と同様、旋回板205’を回転させるものとして用いることもできるし、図13に示す回転輪200pと同様、ウォームギヤ206を回転させるものとして用いることもできる。

【0150】
ロッド453は、座屈しない程度のフレキシビリティを有しており、ピニオンギヤ200gの回転軸に垂直な仮想平面内での、ピニオンギヤ200gと動力源300との相対変位を許容できる。つまり、ロッド453は、変位機構200と動力源300との相対変位を許容しつつ、動力源300から変位機構200に、自己の往復運動を伝達する。

【0151】
また、ロッド453に、これを被覆し、かつ自己に対するロッド453の往復運動を許容する被覆部材454を取り付けたことで、ロッド453と、患者の口角や口唇や他の部分との間に、摩擦力が作用することを防止できる。

【0152】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限られない。例えば、以下の変形も可能である。

【0153】
図10~図15には、運動伝達部材400の変形例を例示したが、運動伝達部材400はこれらにも限定されない。運動伝達部材400は、変位機構200と動力源300との相対変位を許容できるものであればよく、図10~図13に例示したものの他、例えばフレキシブルカップリングやオルダムジョイント等を用いて構成することもできる。また、以上例示したものの組み合わせによって運動伝達部材400を構成することもできる。

【0154】
上記実施形態1では、加工ヘッド100に3つの自由度を付与したが、加工ヘッド100に付与する自由度の数は1又は2であってもよい。また、加工ヘッド100に付与する全自由度のうち一部の自由度に対応する方向の加工ヘッド100の変位は、動力源300から運動伝達部材400を介して伝達する運動によらずに、変位機構200に装着可能なアクチュエータによって実現してもよい。

【0155】
上記実施形態1では、座板ITへの変位機構200の固定にねじを用いたが、ねじに代えて、工具を用いなくても変位機構200の着脱を行える手段として、磁石や、ガイドピンや、レバー等の操作のみで座板ITへの変位機構200の着脱を行えるクイックリリース機構や、これらの組み合わせを用いてもよい。さらに、座板ITも必須ではない。即ち、例えば、口腔内に既にインプラント等の固定源が植立されていれば、その固定源に変位機構200を固定することもできる。また、口腔インプラントの手術で用いられているサージカルガイドに変位機構200を固定することもできる。

【0156】
上記実施形態1では、加工ヘッド100がアーム213と一体に形成された例を示したが、加工ヘッド100はアーム213に対して着脱可能であってもよい。また、上記実施形態1では、加工ヘッド100が、水及び圧縮エアーによる注水冷却機構や、術野を照らす照明装置を備えると説明したが、注水冷却機構や照明装置は、加工ヘッド100以外の部材、例えば、アーム213に取り付けてもよい。また、加工ヘッド100は、工具CTを回転させるためのマイクロモータ等の駆動源を必ずしも内蔵している必要はない。工具CTを回転させるための動力も、口腔外からフレキシブルシャフトを通じて加工ヘッド100に伝達してもよい。また、口腔外からフレキシブルなホースで圧縮エアーを加工ヘッド100に供給し、加工ヘッド100がエアタービンによって工具CTを回転させる構成としてもよい。

【0157】
上記実施形態3では、口腔内加工装置800を、形状測定装置710、除去領域指定装置720、及び修復物設計製造装置730とは別の構成としたが、口腔内加工装置800が、形状測定装置710、除去領域指定装置720、及び修復物設計製造装置730を備えてもよい。

【0158】
上記実施形態1~3では、加工対象が人間の歯牙である場合を述べたが、加工対象は、歯牙に限られず、口腔内の歯槽骨等の骨であってもよい。また、加工対象は、動物の歯牙や骨であってもよい。

【0159】
本発明は、その広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされる。上記実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0160】
100…加工ヘッド、
100a…ブラケット、
200,200’…変位機構、
200z…z方向運動変換部(第1の運動変換部)、
200θ…θ方向運動変換部(第2の運動変換部)、
200r…r方向運動変換部(第3の運動変換部)、
200α…α方向運動変換部(第4の運動変換部)、
200g…ピニオンギヤ、
200p…回転輪、
200s…シャフト、
201…ベース板、
202…ねじ穴、
203…案内柱(周方向案内部材)、
204…周壁、
204a…切り欠き、
205,205’…旋回板、
205a…外周面、
206…ウォームギヤ、
207a,207b…軸受け、
208…回転体(高さ方向案内部材)、
209…円板部、
209a…外周面、
210…雄ねじ部、
211a,211b…軸受け、
212…ウォームギヤ、
213…アーム、
214…ねじ穴、
215…開口、
216…アーム収容体、
217…天板、
218…底板、
219,220…ねじ穴、
221…端板、
222…貫通孔、
223…雄ねじ、
224…固定部、
225,226…止め輪、
227…中間部、
228,229…規制柱、
230…カバー、
300…動力源、
300r…r方向用モータ、
300θ…θ方向用モータ、
300z…z方向用モータ、
300p…回転輪、
400,400’,410,420,430,440,450…運動伝達部材、
400r…r方向用フレキシブルシャフト(第1のフレキシブルシャフト)、
400θ…θ方向用フレキシブルシャフト(第2のフレキシブルシャフト)、
400z…z方向用フレキシブルシャフト(第3のフレキシブルシャフト)、
400α…α方向用フレキシブルシャフト(第4のフレキシブルシャフト)、
411…フレキシブルシャフト、
412,432,433,443,454…被覆部材、
421…シャフト、
422…ユニバーサルジョイント、
431…無端ベルト、
434…補助回転輪、
435…連結部、
441…引きばね、
442…線材、
451…圧縮ばね、
452…ラックギヤ、
453…ロッド、
500…制御装置、
600a…往復運動生成部、
600b…傾斜運動生成部、
601…固定部、
602…入力軸、
603…中空筒、
604…出力軸、
604a…角柱状部、
604b…被支持部、
604c…雄ねじ部、
604d,604e…止め輪、
605…スライダ、
606…リンク、
607…軸受け、
608,609…貫通孔、
610,620…側板、
630…4節リンク機構、
631~634…第1~第4のリンク、
710…形状測定装置、
720…除去領域指定装置、
730…修復物設計製造装置、
800…口腔内加工装置、
900…口腔内治療システム、
CT…工具、
IT…座板、
ITa…平坦部、
IM…安定材、
TH…対象歯牙、
AX1…回転軸、
AX2…旋回軸。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14