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明細書 :ノズル摩耗量検出方法、制御方法、ノズル摩耗量検出装置及び制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6618181号 (P6618181)
公開番号 特開2017-129482 (P2017-129482A)
登録日 令和元年11月22日(2019.11.22)
発行日 令和元年12月11日(2019.12.11)
公開日 平成29年7月27日(2017.7.27)
発明の名称または考案の名称 ノズル摩耗量検出方法、制御方法、ノズル摩耗量検出装置及び制御装置
国際特許分類 G01B  21/14        (2006.01)
G01B  13/10        (2006.01)
C23C  24/04        (2006.01)
B05B  15/00        (2018.01)
FI G01B 21/14
G01B 13/10
C23C 24/04
B05B 15/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 19
出願番号 特願2016-009662 (P2016-009662)
出願日 平成28年1月21日(2016.1.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 発行者名:一般社団法人 日本溶射学会、刊行物名:一般社団法人 日本溶射学会第102回(2015年度秋季)全国講演大会講演論文集、発行年月日:平成27年11月12日 主催者名:一般社団法人 日本溶射学会、集会名:一般社団法人 日本溶射学会第102回(2015年度秋季)全国講演大会、開催日:平成27年11月12日
審査請求日 平成30年12月19日(2018.12.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】片野田 洋
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
審査官 【審査官】國田 正久
参考文献・文献 特開2007-245105(JP,A)
米国特許出願公開第2012/0225213(US,A1)
調査した分野 G01B 21/14
G01B 13/10
B05B 15/00
C23C 24/04
特許請求の範囲 【請求項1】
固体微粒子を作動ガスとともに噴射するノズルのスロートの摩耗量を検出する摩耗量検出方法であって、
前記ノズルとスロート及びスロート周辺の形状がほぼ同一で、かつ、スロート径を計測可能な検定ノズルのスロート径と、大気温度で前記検定ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記検定ノズル内の作動ガスの圧力及び流量とを含む前記検定ノズルに関する計測結果に基づいて、前記検定ノズルのスロートを流れる前記作動ガスの境界層の排除厚さを検出する排除厚さ検出ステップと、
大気温度で前記ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記ノズル内の作動ガスの圧力及び流量の計測結果に基づいて、前記排除厚さが形成する円環状の面積である排除厚さ面積を除く前記ノズルのスロート断面積を算出する断面積算出ステップと、
前記排除厚さ検出ステップで検出された前記排除厚さと、前記断面積算出ステップで算出された前記排除厚さ面積を除くスロート断面積とに基づいて、前記ノズルのスロートの摩耗量を検出する摩耗量検出ステップと、
を含むノズル摩耗量検出方法。
【請求項2】
前記排除厚さ検出ステップでは、
前記検定ノズルのスロート径を、接触式または非接触式の計測装置から取得する第1のステップと、
大気温度で前記検定ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記検定ノズル内の前記作動ガスの圧力及び流量を計測する第2のステップと、
前記第2のステップで計測された作動ガスの圧力及び流量に基づいて、前記検定ノズルにおける前記排除厚さ面積を除くスロート断面積を算出する第3のステップと、
前記第1のステップで算出されたスロート径から得られる前記排除厚さ面積を含むスロート断面積と、前記第3のステップで算出された排除厚さ面積を除くスロート断面積とに基づいて、前記排除厚さを算出する第4のステップと、
を含む、
請求項1に記載のノズル摩耗量検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノズル摩耗量検出方法を用いて検出された前記ノズルのスロートの摩耗量に応じて、前記ノズルの出口での前記固体微粒子の粒子速度が一定に保たれるように、前記作動ガスの圧力及び/又は温度を制御する制御ステップを含む、
制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のノズル摩耗量検出方法を用いて検出された前記ノズルのスロートの摩耗量が閾値を超えた場合に、前記ノズルの交換情報を外部出力する出力ステップを含む、
請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
固体微粒子を作動ガスとともに噴射するノズルのスロートの摩耗量を検出する摩耗量検出装置であって、
前記ノズルとスロート及びスロート周辺の形状がほぼ同一で、かつ、スロート径を計測可能な検定ノズルのスロート径と、大気温度で前記検定ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記検定ノズル内における前記作動ガスの圧力及び流量とを含む前記検定ノズルに関する計測結果に基づいて、前記検定ノズルのスロートを流れる前記作動ガスの排除厚さを検出する排除厚さ検出部と、
大気温度で前記ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記ノズル内における作動ガスの圧力及び流量の計測結果に基づいて、前記排除厚さ面積を除く前記ノズルのスロート断面積を算出する断面積算出部と、
前記排除厚さ検出部で検出された前記排除厚さと、前記断面積算出部で算出された前記排除厚さ面積を除くスロート断面積とに基づいて、前記ノズルのスロートの摩耗量を検出する摩耗量検出部と、
を備えるノズル摩耗量検出装置。
【請求項6】
前記排除厚さ検出部は、
前記検定ノズルのスロート径を計測装置から取得する径取得部と、
大気温度で前記検定ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記検定ノズル内の前記作動ガスの圧力及び流量を計測する計測部と、
前記計測部で計測された前記作動ガスの圧力及び流量に基づいて、前記検定ノズルにおける前記排除厚さ面積を除くスロート断面積を算出する検定ノズル断面積算出部と、
前記径取得部で取得されたスロート径から得られる前記排除厚さ面積を含むスロート断面積と、前記検定ノズル断面積算出部で算出された排除厚さ面積を除くスロート断面積とに基づいて、前記排除厚さを検出する排除厚さ検出部と、
を備える、
請求項5に記載のノズル摩耗量検出装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のノズル摩耗量検出装置と、
前記ノズル摩耗量検出装置で検出された前記ノズルのスロートの摩耗量に応じて、前記ノズルの出口での前記固体微粒子の粒子速度が目標値としての一定値に保たれるように、前記作動ガスの圧力及び/又は温度を制御する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項8】
前記ノズル摩耗量検出装置で検出された前記ノズルのスロートの摩耗量が閾値を超えた場合に、前記ノズルの交換指示を外部出力する出力部を備える、
請求項7に記載の制御装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル摩耗量検出方法、制御方法、ノズル摩耗量検出装置及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コールドスプレーとは、固体微粒子を溶融させること無く不活性ガスと共に超音速流で固相状態のまま基材に衝突・塑性変形させて皮膜を形成する方法である。この方法では、最大1000℃程度まで電気加熱した数十気圧のガスと、常温のガス(固体微粒子を巻き込み搬送する常温ガス)とをノズル内に供給し、ガス流によって、固体微粒子をノズルから500m/s程度以上の高速で噴射する。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】米国特許第5302424号明細書
【特許文献2】欧州特許第0484533号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コールドスプレー装置では、ノズルの中で最も細い箇所、すなわち直径2mm程度のスロートを通過する固体微粒子が、スロートを少しずつ削っていき、スロートが摩耗する。スロートが摩耗すると、スロート径が大きくなって、ガスの噴射速度が低下する。ガスの噴射速度が低下すると、固体微粒子の噴射速度が低下し、皮膜の密着力や緻密さが低下する。したがって、皮膜を良好に生成するためには、使用の都度スロート径を測定するなどスロート径の管理を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、ノズルは非常に細長く、スロートはノズルの軸方向の中ほどにあるため、スロート径を直接計測するのは困難である。ピンゲージを用いて計測することはできるが、ピンケージによってスロートやノズルの内面を傷つけてしまうおそれもある。
【0006】
スロート径を、作動ガスの質量流量(以下、単に流量と記す)、ノズル内の圧力及び温度から流体力学の算出式を用いて算出することは可能である。しかしながら、一般にコールドスプレー装置では、ヒータ出口からノズルまでの熱損失が不明であるため、ノズル内の実際のガスの温度は未知であるので、流体力学の算出式を用いてスロート径を求めるのは困難である。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、スロートの摩耗量を正確に検出することができるノズル摩耗量検出方法、制御方法、ノズル摩耗量検出装置及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るノズル摩耗量検出方法は、
固体微粒子を作動ガスとともに噴射するノズルのスロートの摩耗量を検出する摩耗量検出方法であって、
前記ノズルとスロート及びスロート周辺の形状がほぼ同一で、かつ、スロート径を計測可能な検定ノズルのスロート径と、大気温度で前記検定ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記検定ノズル内の作動ガスの圧力及び流量とを含む前記検定ノズルに関する計測結果に基づいて、前記検定ノズルのスロートを流れる前記作動ガスの境界層の排除厚さを検出する排除厚さ検出ステップと、
大気温度で前記ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記ノズル内の作動ガスの圧力及び流量の計測結果に基づいて、前記排除厚さが形成する円環状の面積である排除厚さ面積を除く前記ノズルのスロート断面積を算出する断面積算出ステップと、
前記排除厚さ検出ステップで検出された前記排除厚さと、前記断面積算出ステップで算出された前記排除厚さ面積を除くスロート断面積とに基づいて、前記ノズルのスロートの摩耗量を検出する摩耗量検出ステップと、
を含む。
【0009】
ここで、「形状がほぼ同一」とは、スロートで検出される排除厚さが同じになる程度に形状が同一であることをいう。
【0010】
この場合、前記排除厚さ検出ステップでは、
前記検定ノズルのスロート径を、接触式または非接触式の計測装置から取得する第1のステップと、
大気温度で前記検定ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記検定ノズル内の前記作動ガスの圧力及び流量を計測する第2のステップと、
前記第2のステップで計測された作動ガスの圧力及び流量に基づいて、前記検定ノズルにおける前記排除厚さ面積を除くスロート断面積を算出する第3のステップと、
前記第1のステップで算出されたスロート径から得られる前記排除厚さ面積を含むスロート断面積と、前記第3のステップで算出された排除厚さ面積を除くスロート断面積とに基づいて、前記排除厚さを算出する第4のステップと、
を含む、
こととしてもよい。
【0011】
ここで、理論的には、排除厚さとは、後述の図4(B)に示すように、以下の(A)と(B)とが等しくなる厚さδ*である。
(A)スロートの壁面からスロート断面の中心までの[作動ガスの流速]×[ガス密度]の分布ρVの面積積分値(質量流量)
(B)[スロート断面の中心での作動ガスの流速(一定値)]×[スロート断面の中心での作動ガスのガス密度(一定値)]に、スロートの壁面の上方δ*の位置からスロート断面中心までの面積を掛けた値(質量流量)
つまり、このとき、図4(B)において、面積B1と面積B2は等しくなり、排除厚さは、ガス流の流量の観点から考えたスロート断面積の幾何的断面積からの減少分に対応する厚さを表す。排除厚さは、実験的には、検定ノズルに任意の圧力、任意の温度の作動ガスを供給したときに流れる流量と、スロート21Aの既知の断面積から、後述の式(4)~(7)を用いて計算することができる。
【0012】
本発明の第2の観点に係る制御方法は、
本発明のノズル摩耗量検出方法を用いて検出された前記ノズルのスロートの摩耗量に応じて、前記ノズルの出口での前記固体微粒子の粒子速度が一定に保たれるように、前記作動ガスの圧力及び/又は温度を制御する制御ステップを含む。
【0013】
この場合、本発明のノズル摩耗量検出方法を用いて検出された前記ノズルのスロートの摩耗量が閾値を超えた場合に、前記ノズルの交換情報を外部出力する出力ステップを含む、
こととしてもよい。
【0014】
本発明の第3の観点に係るノズル摩耗量検出装置は、
固体微粒子を作動ガスとともに噴射するノズルのスロートの摩耗量を検出する摩耗量検出装置であって、
前記ノズルとスロート及びスロート周辺の形状がほぼ同一で、かつ、スロート径を計測可能な検定ノズルのスロート径と、大気温度で前記検定ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記検定ノズル内における前記作動ガスの圧力及び流量とを含む前記検定ノズルに関する計測結果に基づいて、前記検定ノズルのスロートを流れる前記作動ガスの排除厚さを検出する排除厚さ検出部と、
大気温度で前記ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記ノズル内における作動ガスの圧力及び流量の計測結果に基づいて、前記排除厚さ面積を除く前記ノズルのスロート断面積を算出する断面積算出部と、
前記排除厚さ検出部で検出された前記排除厚さと、前記断面積算出部で算出された前記排除厚さ面積を除くスロート断面積とに基づいて、前記ノズルのスロートの摩耗量を検出する摩耗量検出部と、
を備える。
【0015】
この場合、前記排除厚さ検出部は、
前記検定ノズルのスロート径を計測装置から取得する径取得部と、
大気温度で前記検定ノズルから前記作動ガスを噴射したときの前記検定ノズル内の前記作動ガスの圧力及び流量を計測する計測部と、
前記計測部で計測された前記作動ガスの圧力及び流量に基づいて、前記検定ノズルにおける前記排除厚さ面積を除くスロート断面積を算出する検定ノズル断面積算出部と、
前記径取得部で取得されたスロート径から得られる前記排除厚さ面積を含むスロート断面積と、前記検定ノズル断面積算出部で算出された排除厚さ面積を除くスロート断面積とに基づいて、前記排除厚さを検出する排除厚さ検出部と、
を備える、
こととしてもよい。
【0016】
本発明の第4の観点に係る制御装置は、
本発明のノズル摩耗量検出装置と、
前記ノズル摩耗量検出装置で検出された前記ノズルのスロートの摩耗量に応じて、前記ノズルの出口での前記固体微粒子の粒子速度が目標値としての一定値に保たれるように、前記作動ガスの圧力及び/又は温度を制御する制御部と、
を備える。
【0017】
この場合、前記ノズル摩耗量検出装置で検出された前記ノズルのスロートの摩耗量が閾値を超えた場合に、前記ノズルの交換指示を外部出力する出力部を備える、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ノズルのスロートにおける作動ガスの流れを、壁面近傍の排除厚さとそれ以外の領域とに分けて、スロートの大きさ及びスロート周辺の形状がほぼ同一の検定ノズルを用いて排除厚さを正確に求める。そのうえで、大気温度での作動ガスの圧力及び流量に基づいて、排除厚さ面積を除く断面積を求め、排除厚さと、排除厚さ面積を除く断面積とから、排除厚さ面積を含むスロートの断面積(幾何学的なスロート断面積)を求める。このようにすれば、未知数をなくした状態で作動ガスの流量、圧力及び大気温度に基づいて、流体力学の関係式を用いて排除厚さ面積を含むスロート断面積を求めることができる。この結果、ノズルのスロートの摩耗量を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコールドスプレー装置及び制御装置を含む全体構成を示す模式図である。
【図2】図1のコールドスプレー装置を構成するノズルの断面図である。
【図3】図1の制御装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図4】図4(A)は、スロート付近の作動ガスの流速分布を示す模式図である。図4(B)は、スロート付近の作動ガスの[ガス密度]×[ガス速度]の分布を示す模式図である。
【図5】図5(A)は、スロート近傍における境界層及びその他の領域を示す図である。図5(B)は、スロート断面における排除厚さδ1*を示す図である。
【図6】制御装置のソフトウエア構成を示すブロック図である。
【図7】制御装置の動作のフローチャートである。
【図8】排除厚さ検出部の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。

【0021】
(コールドスプレー装置の全体構成)
図1に示すように、コールドスプレー装置1は、基材2に対して、作動ガスとともに固体微粒子を噴射する装置である。コールドスプレー装置1は、ガス源10と、電動バルブ11と、第1のガス供給路12と、ガス流量計13と、パウダフィーダ14と、第2のガス供給路15と、ガス流量計16と、ヒータ17と、ノズル20と、圧力計22と、温度計23と、を備える。

【0022】
(ガス源)
ガス源10は、作動ガスの供給源である。このような作動ガスとしては、例えば、空気、窒素、ヘリウム、あるいはそれらの混合ガスを用いることができる。また、固体微粒子の酸化防止の観点からすれば、作動ガスとして不活性ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム又はそれらの混合ガス等が挙げられる。

【0023】
(電動バルブ11)
電動バルブ11は、ガス源10と、第1のガス供給路12及び第2のガス供給路15との間に挿入されている。電動バルブ11は、制御信号(開閉指令)により開閉が可能である。電動バルブ11が閉じると、ガス源10から第1のガス供給路12及び第2のガス供給路15への作動ガスの供給が停止し、電動バルブ11が開くと、ガス源10の作動ガスが、第1のガス供給路12及び第2のガス供給路15に供給される。電動バルブ11は、制御信号(開閉指令)に従って、開閉状態を制御して、作動ガスの圧力及び流量を制御可能である。

【0024】
(第1のガス供給路)
第1のガス供給路12は、電動バルブ11からノズル20まで延びている。第1のガス供給路12は、電動バルブ11を介してガス源10から供給される常温の作動ガスをノズル20へ供給する。ガス流量計13は、第1のガス供給路12を流れる作動ガスの流量を計測する。第1のガス供給路12には、パウダフィーダ14が接続されている。パウダフィーダ14は、固体微粒子を第1のガス供給路12に供給する。固体微粒子は、目的に応じたものとなるが、例えばAl、Cuなどのコーティング用の金属微粒子である。

【0025】
(第2のガス供給路)
第2のガス供給路15は、電動バルブ11からノズル20まで延びている。第2のガス供給路15は、電動バルブ11を介してガス源10から供給される作動ガスをノズル20へ供給する。ガス流量計16は、第2のガス供給路15を流れる作動ガスの流量を計測する。第2のガス供給路15には、ヒータ17が挿入されている。ヒータ17は、数十気圧の作動ガスを最大1000℃程度まで電気加熱する。第2のガス供給路15内の高温高圧の作動ガスは、ノズル20内に供給される。

【0026】
(ノズル)
ノズル20は、図2に示すように、先細部20E、スロート20A、末広部20Dを備えており、粒子噴射管20Cを有する貯気室20Bにねじ等で固定されている。第1のガス供給路12から供給された固体微粒子は、固体微粒子を搬送する常温のガスとともに粒子噴射管20Cを介して貯気室20B内に注入される。第2のガス供給路15から供給される高温高圧の作動ガスは、貯気室20Bに注入される。貯気室20B内の固体微粒子は、高温高圧の作動ガスのガス流によって、先細部20E、スロート20A、末広部20Dを通って、例えば500m/s以上の高速で噴射される。ノズル20から噴射された固体微粒子は基材2に衝突し、塑性変形する。これにより、基材2上に固体微粒子の皮膜が形成され、基材2に対してコーティングが行われる。なお、スロート20Aから先細部20Eの上流端まので長さは例えば50mmであり、末広部20Dの長さLは、例えば100mmである。

【0027】
(固体微粒子の速度)
コーティングの目的は、銅微粒子による高い電気伝導性または高い放熱性の付与や、合金微粒子によるスパッタリングターゲットの肉盛り再生(コーティングというより成形)などである。固体微粒子を固体表面に衝突させたときに固体微粒子と固体表面とに塑性変形を生じさせるために、ノズル20では、固体微粒子をある速度以上で固体表面に吹き付ける必要がある。固体微粒子の速度は、ノズル20の内面形状、ガス温度T、ガス圧力Pに依存する。ガス温度Tを上げるほど又はガス圧力Pを上げるほど、固体微粒子の粒子速度は大きくなる。

【0028】
(スロート)
ノズル20の内面形状のうち最も重要な部分が、ノズル20内で最も細い場所であるスロート20A(図2参照)である。スロート20Aの断面は、一般的に円形状であり、スロート20Aの設計上の直径dは約2mm(例えば1.5mm)程度である。スロート20Aの直径は、固体微粒子の粒子速度を規定する重要な寸法であり、摩耗などによりスロート20Aの直径が大きくなると、固体微粒子の粒子速度は低下する。

【0029】
(スロートの摩耗)
固体微粒子は、スロート20Aを通過するときに、スロート20Aの壁面を少しずつ削っていくため、スロート20Aは次第に摩耗する。本実施の形態に係るノズル摩耗量検出方法では、このスロート20Aの摩耗量を検出する。

【0030】
(圧力計、温度計)
圧力計22は、貯気室20Bにおける作動ガスの圧力Pを計測する。圧力計22は、例えば半導体圧力センサである。作動ガスの圧力Pは、例えば、1MPaである。温度計23は、熱電対であり、ヒータ17の出口温度を計測する。

【0031】
(その他の設備)
コールドスプレー装置1のスロート20Aの摩耗量を検出するために、図1に示すように、温度計(熱電対)3、接触式または非接触式の計測装置4、検定ノズル21及び制御装置50が設けられている。温度計3は、大気温度を計測する。接触式または非接触式の計測装置4は、検定ノズル21のノズル形状、特にスロート21Aの直径d’を計測する。

【0032】
(検定ノズル)
検定ノズル21は、スロート径及びスロート21A周辺の形状が、ノズル20とほぼ同じである。ここで、スロート21Aの周辺とは、スロートでの作動ガスの流速に影響を与える部分である。すなわち、「形状がほぼ同じ」とは、ノズルの先細部の入口からスロートを経て、スロート直径と同程度まで下流までの区間の形状が同じであることをいう。これにより、スロートで検出される排除厚さが同じになる。検定ノズル21は、ノズル20と交換可能となっている。また、検定ノズル21は、接触式または非接触式の計測装置4により、スロート径を直接計測可能となっている。検定ノズル21として、ノズル20と同じ工程で製造され、スロート径を計測可能にするために末広部を短く加工したものを用いることができる。

【0033】
(制御装置)
制御装置50は、ガス流量計13、16から送られるそれぞれのガス流量(これらのガス流量の和をmとする)、圧力計22から送られるガス圧力P、温度計3から送られる大気温度Ta、接触式または非接触式の計測装置4で計測される検定ノズル21のノズル形状(特にスロート21Aの直径d’)等の情報等を収集し、それらの情報に基づいて、ノズル20のスロート20Aの摩耗量を検出する。

【0034】
(制御装置のハードウエア)
制御装置50のハードウエア構成である図3に示すように、制御装置50は、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び通信部36を備える。主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び通信部36はいずれも内部バス30を介して制御部31に接続されている。

【0035】
(制御部)
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等から構成されている。このCPUが、外部記憶部33に記憶されているプログラム39を実行することにより、図6に示す制御装置50の各構成要素が実現される。

【0036】
(主記憶部)
主記憶部32は、RAM(Random-Access Memory)等から構成されている。主記憶部32には、外部記憶部33に記憶されているプログラム39がロードされる。この他、主記憶部32は、制御部31の作業領域(データの一時記憶領域)として用いられる。

【0037】
(外部記憶部)
外部記憶部33は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成される。外部記憶部33には、制御部31に実行させるためのプログラム39があらかじめ記憶されている。また、外部記憶部33は、制御部31の指示に従って、このプログラム39の実行の際に用いられるデータを制御部31に供給し、制御部31から供給されたデータを記憶する。

【0038】
(操作部)
操作部34は、キーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボード及びポインティングデバイス等を内部バス30に接続するインターフェイス装置から構成されている。操作部34を介して、操作者が操作した内容に関する情報が制御部31に入力される。

【0039】
(表示部)
表示部35は、CRT(Cathode Ray Tube)又はLCD(Liquid Crystal Display)などから構成される。表示部35には、例えばノズル20の交換指示などが表示される。

【0040】
(通信部)
通信部36は、通信線のシリアルインターフェイス又はパラレルインターフェイスから構成されている。この通信部36を介して、温度計3、接触式または非接触式の計測装置4、ガス流量計13、16、圧力計22、温度計23からの情報や、電動バルブ11、ヒータ17への制御信号が出力される。

【0041】
(プログラム)
図1に示す制御装置50の各種構成要素は、図3に示すプログラム39が、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び通信部36などをハードウエア資源として用いて実行されることによってその機能を発揮する。

【0042】
(境界層)
制御装置50において摩耗量を検出するための基本事項である、スロート20Aでの作動ガスの流れについて説明する。図4(A)の流速分布Vに示すように、作動ガスがノズル20を流れると、ノズル20の内壁に沿って速度の遅い領域が発生する。これを境界層という。スロート20Aでは、境界層の厚さδは、例えば10μm以下である。

【0043】
(排除厚さ)
境界層厚さδは、図4(A)に示すようにスロート20Aの壁面(壁面上で作動ガスの速度ゼロ)からスロート20Aの断面中心へ向かったときの作動ガスの流速分布Vが、断面中心の流速Vmaxの99%に達した位置から壁面までの距離である。また、図4(B)に示すように、スロート20Aの壁面からスロート20Aの断面中心へ向かったときの作動ガスの流速Vと作動ガスの密度ρとの積(ρV)の分布を考え、積分値B1と、(ρV)の最大値(ρV)maxと(ρV)との差分の積分値B2とが、等しくなるときの厚さδを、境界層排除厚さ、または排除厚さともいう。すなわち、排除厚さとは、境界層も含めて(ρV)の分布が断面方向に沿って(ρV)maxで一定であるとしたときの、壁面に隣接するガスが流れない部分の厚さのことである。なお、流れのマッハ数(速度÷音速)が0.3以下であるような低速の流れであれば、ガス密度は一定とみなしてよいため、排除厚さの計算にガス密度を考慮する必要はない。しかし、スロート20A及び21Aでは、流れのマッハ数が1であり、スロート20A及び21Aの境界層内の断面方向に沿ってガス密度が変化する。そのため、排除厚さδはガス速度とガス密度の積に基づいて考える必要がある。

【0044】
(スロート断面)
図5(A)及び図5(B)に示すように、スロート20Aの断面が円形状である場合、排除厚さは、スロート20Aの内壁に沿って環状であり、下流方向へ厚くなる。その排除厚さの内側に作動ガスが高速で流れる領域が存在する。この領域を流れる作動ガスが、固体微粒子のコーティングに寄与する。スロート20Aにおいて、この部分の断面積を流体力学的なスロート断面積Aという。

【0045】
実際のスロート20Aの断面積を、幾何学的なスロート断面積Aとすると、以下の関係が成り立つ。
[幾何学的なスロート断面積]=[排除厚さ面積]+[流体力学的なスロート断面積] …(1)
この式は、排除厚さの存在により、コーティングに寄与する作動ガスの断面積が減少したことを示している。なお、言い換えると、幾何学的なスロート断面積Aは、排除厚さ面積を含むスロート断面積であり、流体力学的なスロート断面積Aは、排除厚さ面積を除くスロート断面積である。

【0046】
(断面積の変化)
スロート20Aの摩耗を求めるには、その直径を計測すればよいが、ノズル20は細長いため、スロート20Aの直径を正確に計測するのは困難である。よって、制御装置50では、式(1)を用いて幾何学的なスロート20Aの断面積Aを間接的に求め、その断面積の変化でノズル20のスロート20Aの摩耗量ΔAを検出する。

【0047】
(流体力学的な断面積について)
まず、流体力学的な断面積Aについて説明する。図5(B)の排除厚さ面積以外の部分のノズル20のスロート20A内の作動ガスの流れには、一般に以下の関係が成り立つ。
【数1】
JP0006618181B2_000002t.gif
ここで、mはスロート20Aを通る作動ガスの流量であり、Pは、前述のようにノズル20の貯気室20B内の作動ガスの圧力(図2参照)である。また、Tは、ノズル20の貯気室20B内の作動ガスの混合温度(図2参照)である。また、Rは作動ガスの気体定数である。σは、臨界流れ係数であり、以下の式で表される。
【数2】
JP0006618181B2_000003t.gif
ここで、γは作動ガスの比熱比である。

【0048】
(流量、圧力、温度)
上記式(2)から、流体力学的なスロート断面積Aは、以下のように表される。
【数3】
JP0006618181B2_000004t.gif
上記式(4)によれば、流体力学的なスロート断面積Aは、作動ガスの流量m、作動ガスの圧力P、作動ガスの温度Tによって定まる。

【0049】
(幾何学的なスロート断面積)
続いて、排除厚さδはスロート20Aの直径の1/100程度以下であるため、スロート20Aでの排除厚さ面積は、近似的に次式で表される。
【数4】
JP0006618181B2_000005t.gif
ここで、dは、排除厚さを除くスロート20Aの流体力学的な断面の直径である(図5(B)参照)。したがって、幾何学的なスロート断面積Aは、上述の式(1)、式(5)に基づいて、近似的に以下の式で表される。
【数5】
JP0006618181B2_000006t.gif

【0050】
(スロートの直径)
流体力学的なスロート径d(図5(B))は、以下の式のように、流体力学的なスロート断面積Aから求めることができる。
【数6】
JP0006618181B2_000007t.gif

【0051】
(流体力学的な断面積の変数)
上述の式(4)に示すように、流体力学的なスロート断面積Aは、ノズル20のスロート20Aを通るガス流量m、ガス圧力P、ガス温度Tで定まる。
また、上記式(6)及び式(7)に示すように、排除厚さ面積は、排除厚さδと、流体力学的なスロート断面積Aで定まる。したがって、幾何学的なスロート断面積Aを求めるには、ガス流量m、ガス圧力P、ガス温度T、排除厚さδが必要になる。

【0052】
(ガス温度)
ここで、ガス流量m、ガス圧力Pは、ガス流量計13、16及び圧力計22を用いて正確に測定することができる。しかしながら、ガス温度Tは、図1に示すヒータ17を経由して貯気室20Bに供給される高温ガスと、第1のガス供給路12を通って粒子噴射管20Cから貯気室20Bに供給される常温のガスとの混合温度である。この混合温度は、図1に示すヒータ17の出口の温度計(熱電対)23で測定した温度と、第1のガス供給路12、第2のガス供給路15のそれぞれのガス流量からある程度の予測はできるものの、ノズル20のスロート20Aに到るまでの熱損失が不明であるため、正確な温度を把握するのは困難である。

【0053】
(ノズル摩耗量検出方法の特徴)
そこで、本実施の形態に係るノズル摩耗量検出方法では、ガス温度T0を直接求めず、まず検定ノズル21を貯気室20Bに取り付け、大気温度Taでの作動ガスの噴射を行って排除厚さδ’を求め、次に検定ノズル21をノズル20に代えて貯気室20Bに取り付け、コーティングに先立って大気温度Taでの作動ガスの噴射を行って、流体力学的なスロート断面積A”を求めたうえで、ノズル20の幾何学的なスロート断面積A”を正確に求め、スロート断面積A”の新品時からの変化でスロート20Aの摩耗量を検出する。

【0054】
(制御装置のSW)
制御装置50は、ある日のノズル20の幾何学的なスロート断面積A”を求めるために、以下の構成要素を有する。図6に示すように、制御装置50は、排除厚さ検出部51と、断面積算出部52と、摩耗量検出部53と、指令生成部54と、記憶部55と、を備える。

【0055】
(排除厚さ検出部)
排除厚さ検出部51は、スロート21A及びスロート21A周辺の形状がノズル20とほぼ同一の検定ノズル21のスロート径d’、大気温度Taでの検定ノズル21のスロート21Aの上流におけるガス圧力P’及びガス流量m’を含む検定ノズル21に関する計測結果に基づいて、検定ノズル21のスロート21Aを流れる作動ガスの排除厚さδ’を算出する。排除厚さ検出部51は、径取得部51A、計測部51B、断面積算出部51C及び排除厚さ算出部51Dを備える。

【0056】
(スロート径計測)
径取得部51Aは、接触式または非接触式の計測装置4で計測される検定ノズル21のスロート21Aの直径d’を、接触式または非接触式の計測装置4から取得する。取得されたスロート21Aの直径d’は、記憶部55に記憶される。

【0057】
(大気温度での検定ノズルの計測)
続いて、検定ノズル21をノズル20に代えてコールドスプレー装置1の貯気室20Bに取り付け、ガス圧力P’、大気温度Taで作動ガスを流し、検定ノズル21から噴射する。計測部51Bは、このときの作動ガスの圧力P’、流量m’を計測する。このとき、パウダフィーダ14による固体微粒子の供給及びヒータ17の加熱は停止している。

【0058】
(断面積の算出)
断面積算出部51Cは、この計測結果に基づいて、検定ノズル21についての流体力学的なスロート断面積A’を、式(4)と同様に次式を用いて算出する。すなわち、ガス温度をTaとして、式(9)でA’を算出する。
【数7】
JP0006618181B2_000008t.gif

【0059】
(排除厚さδ’の算出)
排除厚さ算出部51Dは、式(6)と同様に、検定ノズル21のスロート径d’から得られる幾何学的なスロート断面積A’と、式(9)から得られる流体力学的なスロート断面積A’と、A’から求められる流体力学的なスロート径d’を、式(10)に代入して、検定ノズルの排除厚さδ’を算出する。
【数8】
JP0006618181B2_000009t.gif
算出された排除厚さδ’は、記憶部55に記憶される。排除厚さδ’は,スロート径が多少変わっても変化しないので、ノズル20の摩耗量を検出する際に用いることができる。

【0060】
(断面積算出部)
断面積算出部52は、大気温度Taでノズル20から作動ガスを噴射させたときのノズル20内の作動ガスの圧力P”及び流量m”の計測結果に基づいて、排除厚さ面積を除くノズル20のスロート断面積Ag”を算出する。具体的には、検定ノズル21をノズル20に戻し、コーティング作業に先だって、大気温度Taの状態で、ガス圧力P”で、コールドスプレー装置1のノズル20に作動ガスを流す。流れたガス流量をm”とする。このとき、ガス温度をTaとして、上記式(4)から
【数9】
JP0006618181B2_000010t.gif
が得られ、ノズル20の流体力学的なスロート断面積A”(流体力学的なスロート径d”)が求められる。

【0061】
(摩耗量検出部)
摩耗量検出部53は、排除厚さ検出部51で算出された排除厚さδ’と、断面積算出部52で算出された排除厚さ面積を除くスロート断面積A”とに基づいて、ノズル20のスロート20Aの摩耗量ΔAを検出する。排除厚さδ’は、スロート20Aの直径が多少変わっても変わらない。よって、ある日のスロート20Aの幾何学的なスロート断面積A”は、式(10)と同様に
【数10】
JP0006618181B2_000011t.gif
と求められる。摩耗量検出部53は、コーティング作業に入る前に、ノズル20の新品状態からのスロート断面積の拡大量ΔA=A”-Anewを検出する。ただし、Anewは新品状態でのノズル20のスロート断面積である。

【0062】
(指令生成)
指令生成部54は、検出されたノズル20のスロート20Aの摩耗量ΔAに応じて、ノズル20の出口での固体微粒子の粒子速度が一定に保たれるように、作動ガスの圧力P、温度Tを制御する電動バルブ11の制御信号(開閉指令)及びヒータ17の制御信号(温度指令)を生成する。

【0063】
(計測手順)
ノズル20の出口での固体微粒子の粒子速度の計算手順を以下に示す。なお、ノズル20の出口の断面積Aは計測により既知である。さらに、コールドスプレー装置1では、ノズル20の出口から基材2の被コーティング面までの距離が10mm程度と短いため、基材2の被コーティング面に衝突する固体微粒子の粒子速度は、ノズル20の出口の粒子速度に等しいと近似する。

【0064】
(マッハ数)
まず、指令生成部54は、スロート20Aとノズル20の出口での断面積の比から、以下の公知の理論式によりノズル出口でのガスのマッハ数Mg,e(=ノズル出口でのガス速度÷音速)を求める。
【数11】
JP0006618181B2_000012t.gif

【0065】
(ノズル出口のガス温度)
続いて、指令生成部54は、以下の公知の理論式から、ノズル20の出口でのガス温度Teを算出する。
【数12】
JP0006618181B2_000013t.gif

【0066】
(ノズル出口のガス速度)
さらに、指令生成部54は、以下の公知の理論式を用いて、Mg,eとTeを用いてノズル20の出口でのガス速度ug,e[m/s] を求める。
【数13】
JP0006618181B2_000014t.gif

【0067】
さらに、指令生成部54は、例えば以下の公知の実験式を用いて、ノズル20の出口の固体微粒子の粒子速度uP,eを算出する。ただし、Lは、末広部20Dの軸方向長さであり、dは固体微粒子の直径、ρは固体微粒子の密度、Pは、作動ガスの貯気室20Bの圧力、ug,eは、ノズル20の出口のガス速度である。
【数14】
JP0006618181B2_000015t.gif

【0068】
指令生成部54は、ノズル20の出口の固体微粒子の粒子速度uP,eが目標値を維持するように、電動バルブ11への制御信号(開閉指令)及び/又はヒータ17への制御信号(温度指令)を出力する。

【0069】
(動作)
次に、制御装置50の動作について説明する。

【0070】
図7に示すように、まず、排除厚さ検出部51は、上述のようにして、スロート20Aの排除厚さδ’を検出する(ステップS1)。

【0071】
(スロート径計測)
ステップS1において、図8に示すように、排除厚さ検出部51(径取得部51A)は、検定ノズル21のスロート径d’を、接触式または非接触式の計測装置4から取得する(ステップS11)。検定ノズル21のスロート径d’は、記憶部55に記憶される。

【0072】
(排除厚さ算出)
続いて、排除厚さ検出部51(計測部51B)は、大気温度Taで検定ノズル21から作動ガスを噴射させたときの検定ノズル21内の作動ガスの圧力P’、流量m’を計測する(ステップS12)。さらに、排除厚さ検出部51(断面積算出部51C)は、計測された作動ガスの圧力P’及び流量m’に基づいて、式(9)を用いて、検定ノズル21のスロート21Aにおける排除厚さ面積を含まない断面積A’を算出する(ステップS13)。排除厚さ検出部51(排除厚さ算出部51D)は、算出されたスロート径d’から得られる排除厚さ面積を含む断面積A’と、算出された排除厚さ面積を含まない断面積A’とに基づいて、式(10)を用いて、排除厚さδ’を算出する(ステップS14)。

【0073】
(断面積算出)
図7に戻り、コーティングに先立って、断面積算出部52は、大気温度Taでノズル20から作動ガスを噴射させたときのノズル20内の作動ガスの圧力P”及び流量m”の計測結果に基づいて、式(11)を用いて、排除厚さ面積を除くノズル20のスロート断面積Ag”を算出する(ステップS2)。

【0074】
(摩耗量検出)
続いて、摩耗量検出部53は、排除厚さδ’と、算出された排除厚さ面積を除くスロート断面積Ag”とに基づいて、ノズル20のスロート20Aの摩耗量ΔAを検出する(ステップS3)。

【0075】
(交換判定)
続いて、摩耗量検出部53は、摩耗量ΔAが閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。摩耗量ΔAが閾値以上である場合(ステップS4;Yes)、指令生成部54は、ノズル交換指示を、外部出力する(ステップS6)。外部出力としては、例えば、表示部35に表示させたり、音声出力したりする方法がある。この後、ノズル20は、摩耗していない新しいものに交換され、コールドスプレー装置1を用いて、コーティングが開始される。

【0076】
(指令生成)
スロート20Aの摩耗量ΔAが閾値未満である場合(ステップS4;No)、指令生成部54は、ノズル20のスロート20Aの摩耗量ΔAに基づいて、ノズル20の出口の固体微粒子の粒子速度uP,e(式(16))が目標値の一定値に保たれるように、作動ガスの圧力P、温度Tを制御する電動バルブ11への制御信号(開閉指令)又はヒータ17への制御信号(温度指令)を出力する(ステップS5)。その後、電動バルブ11及びヒータ17が指令通りに設定され、目標値に維持された噴射速度で固体微粒子が噴射され、コーティングが行われる。

【0077】
(まとめ)
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、ノズル20のスロート20Aにおける作動ガスの流れを、壁面近傍の排除厚さとそれ以外の領域とに分けて、スロート20Aの大きさ及びスロート20A周辺の形状がほぼ同一の検定ノズル21を用いて作動ガスの温度が大気温度Taでの排除厚さδ’が正確に求められる。そのうえで、大気温度Taでの作動ガスの圧力P”及び流量m”に基づいて、ノズル20の排除厚さ面積を除く断面積A”が求められ、排除厚さδ’と、排除厚さ面積を除く断面積A”とから、排除厚さ面積を含むスロートの断面積(幾何学的なスロート断面積)A”が求められる。このようにすれば、未知数をなくした状態で作動ガスの流量m”、圧力P”及び大気温度Taに基づいて、流体力学の関係式を用いて排除厚さ面積を含むスロート断面積A”を求めることができる。この結果、ノズル20のスロート20Aの摩耗量ΔAを正確に検出することができる。

【0078】
また、本実施の形態に係るノズル摩耗量検出方法によれば、新品のノズル20のスロート径が図面通りに仕上がっているか否かを簡単かつ高精度に点検することができる。また、使用中のノズル20についても、スロート径を簡単かつ高精度に点検することができる。また、最適なガス条件(圧力、温度)でコーティングを行うことができるので、品質が向上する。また、ノズル20を交換すべきか否かを適切に判断することができる。

【0079】
また、本実施の形態に係るノズル摩耗量検出方法は、スロート断面が円形でなくても(例えば摩耗により円形でない形になっても)、スロート断面を等価円に置き換えて、スロート20Aの摩耗量を精度よく検出することが可能である。

【0080】
なお、上記実施の形態では、作動ガスの圧力及び温度を調整したが、本発明はこれには限られず、作動ガスの圧力又は温度の一方を調整するようにしてもよい。

【0081】
その他、制御装置50のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。

【0082】
制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び通信部36、内部バス30などから構成される制御装置50の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する制御装置50を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することでコンピュータを構成してもよい。

【0083】
制御装置50の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。

【0084】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。

【0085】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、コールドスプレー装置のノズルのスロートの摩耗量の検出に適用することができる。コールドスプレー装置は、機械部品や電気・電子部品の特定の面の電気伝導や放熱を促進したい場合に有用である。この用途には、当該の面に銅粒子をコーティングするのが最適であるが、銅粒子は酸化しやすく、酸化するとコーティング面の電気伝導率や熱伝導率が低下する。しかし、コールドスプレー装置は、銅粒子を酸化させずにコーティングすることができる。また、コールドスプレー装置は、スパッタリングターゲット(円筒状)の肉盛り再生にも有用である。加えて、熱に弱いマグネシウム合金の部品の補修に好適である。
【符号の説明】
【0087】
1 コールドスプレー装置、2 基材、3 温度計、4 接触式または非接触式の計測装置、10 ガス源、11 電動バルブ、12 第1のガス供給路、13 ガス流量計、14 パウダフィーダ、15 第2のガス供給路、16 ガス流量計、17 ヒータ、20 ノズル、20A スロート、20B 貯気室、20C 粒子噴射管、20D 末広部、20E 先細部、21 検定ノズル、21A スロート、22 圧力計、23 温度計、30 内部バス、31 制御部、32 主記憶部、33 外部記憶部、34 操作部、35 表示部、36 通信部、39 プログラム、50 制御装置、51 排除厚さ検出部、51A 径取得部、51B 計測部、51C 断面積算出部、51D 排除厚さ算出部、52 断面積算出部、53 摩耗量検出部、54 指令生成部、55 記憶部。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7