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明細書 :機械要素部品の表面改善方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2995300号 (P2995300)
登録日 平成11年10月29日(1999.10.29)
発行日 平成11年12月27日(1999.12.27)
発明の名称または考案の名称 機械要素部品の表面改善方法
国際特許分類 B23P  6/00      
B01J 19/00      
C23C 16/04      
C23C 16/34      
H03K  5/13      
FI B23P 6/00 Z
B01J 19/00
C23C 16/04
C23C 16/34
H03K 5/13
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願平11-026143 (P1999-026143)
出願日 平成11年2月3日(1999.2.3)
審査請求日 平成11年2月3日(1999.2.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000001144
【氏名又は名称】工業技術院長
発明者または考案者 【氏名】廣瀬 伸吾
【氏名】森 和男
個別代理人の代理人 、【氏名又は名称】工業技術院機械技術研究所長
審査官 【審査官】▲ぬで▼島 慎二
調査した分野 B23P 6/00
B01J 19/00
C23C 16/04
C23C 16/34
H03K 5/13
要約 【課題】 表面の劣化部や欠損部、並びに表面荒れや表面粗さの等の表面欠陥を、いずれも高精度に改善することのできる表面改善方法を提供することを解決課題とする。
【解決手段】 本発明では、工具(10)を反応室(21)に配置した後、基準表面(13)での結晶の成長が最小となる条件で前記反応室(21)に気相原料を間欠的に供給し、前記工具(10)に原子層成長法を施す。
特許請求の範囲 【請求項1】
機械要素部品の基準表面に存在する表面欠陥を改善するための方法であって、
前記機械要素部品を所定の反応室に配置する工程と、
前記基準表面での結晶の成長が最小となる条件で前記機械要素部品に原子層成長法を施すべく前記反応室に気相原料を間欠的に供給する工程とを含むことを特徴とする機械要素部品の表面改善方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工具やベアリング等の機械要素部品の基準表面に存在する欠損部や劣化部、あるいは表面荒れや表面粗さの等の表面欠陥を改善するための方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術】工具やベアリング等の機械要素部品においては、その構造上、長期の使用に伴って摩耗等の劣化や変形・欠損といった各種表面欠陥を生じる。表面欠陥を生じた機械要素部品は、その機能や性能が著しく低下するようになる。このため、このような機械要素部品を継続的に用いた場合には、所望の機能や性能を期待することができない。

【0003】
従来、こうした機械要素部品の表面欠陥に対しては、新たな部品との交換という方法でこれに対処するようにしている。

【0004】
しかしながら、新たな部品と交換するためには、予め多数の機械要素部品を用意しておかなければならず、この機械要素部品を適用する機械のランニングコストを著しく増加させる。

【0005】
したがって、ランニングコストの低減を図ることのできる対処法の開発が望まれている。

【0006】
一方、昨今の機械要素部品においては、その高機能化および微細化が進んでおり、表面品質に対する要求精度も厳しいものとなっている。このため、機械要素部品の表面粗さや表面荒れ等の表面欠陥に対しては、原子1層、あるいは原子1個のレベルでこれを改善できる技術の開発が望まれている。

【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、機械要素部品の表面処理方法としては、従来よりCVD(chemical vapor deposition)法が利用されている。このCVD法は、反応系分子の気体を加熱した基板上に供給し、分解/還元/置換等の各種反応によって生成物を基板上に析出させる方法であり、例えばTiN等の硬質材料を堆積させて機械要素部品の表面を硬化させる場合に適用される。

【0008】
このCVD法を適用した場合には、表面に堆積した硬質材料によって機械要素部品の硬質化を図ることができると同時に、表面に存在する小さな穴等の欠損部を消滅させることができるため、表面粗さの改善を図ることは可能となる。

【0009】
しかしながら、上記CVD法では、表面に凹凸が存在していた場合、この凹凸が増長される事態を招来する。すなわち、CVD法においては、一般にステップフローモードで結晶が成長していくため、機械要素部品の表面に凹凸がある場合、その凸部に対する結晶の成長が支配的となり、当該凹凸が一層顕著となる結果を招来する。

【0010】
したがって、劣化や比較的大きな欠損、あるいは表面荒れが存在する機械要素部品に対してCVD法を適用した場合には、劣化や欠損、あるいは表面荒れを増長する事態を招来し、これら表面欠陥を改善することが困難となる。

【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて、機械要素部品の使用に伴う表面の劣化部や欠損部、並びに表面荒れや表面粗さの等の表面欠陥を、いずれも高精度に改善することのできる表面改善方法を提供することを解決課題とする。

【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、機械要素部品の基準表面に存在する表面欠陥を改善するための方法であって、前記機械要素部品を所定の反応室に配置する工程と、前記基準表面での結晶の成長が最小となる条件で前記機械要素部品に原子層成長法を施すべく前記反応室に気相原料を間欠的に供給する工程とを含んでいる。すなわち、本発明では、面方位に対する成長選択性に優れ、かつ二次元島状に結晶が成長する原子層成長法(atomic layer epitaxy)を適用して機械要素部品の表面欠陥を改善するようにしている。

【0013】
【発明の実施の形態】以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。

【0014】
図7は、本発明が適用する原子層成長法の原理を説明するための概略図である。以下、この図7を参照して原子層成長法についてまず説明する。

【0015】
図7(a)中の符号1で示す試料は、基準表面となるx面に表面欠陥2を有している。表面欠陥2は、x面に対して傾斜する一対のy面と、これらy面の間に延在するx面とを有して構成されているものとする。

【0016】
この試料1を反応管(図示せず)に配置し、x面での結晶の成長が最小となる条件で気相原料を間欠的に(パルスシーケンスで)供給する。ここで、この原子層成長法は、表面の化学反応を積極的に利用するものであるため、表面状態に敏感で、成長表面に対する選択性が極めて高い。したがって、試料1の表面温度、気相原料の供給量、気相原料の供給時間等々、気相原料を供給する条件を適宜変更すれば、上述したようにx面での結晶の成長が最小となるものを選択することができる。

【0017】
こうした条件下で反応管に気相原料を供給していくと、面方位に依存した成長速度差に起因して、図7(b)に示すように、y面での結晶の成長が支配的に進行する。また、反応管に供給された気相原料は、それ自身が成長の停止を分子1層で行うため(成長の自己停止機構)、薄膜形成が簡単、かつ正確に達成できる。さらに結晶の成長が二次元の島状である。

【0018】
これらの結果、上記原子層成長法によれば、試料1の表面に存在する凹凸を増長することなく、図7(c)に示すように、原子レベルで平坦なx面を得ることが可能となる。

【0019】
図1は、この原子層成長法を利用した工具の修復方法を示すものである。

【0020】
この工具10は、図4に示すように、円柱状を成す基部11の外周面に一条の突状部12を螺旋状に設けたものである。突状部12は、本来、横断面が一様の三角形状を成し、そのうちの一辺部を介して上述した基部11に固着されたものである。修復対象となる工具10では、長期の使用に伴い、図2(a)に示すように、この突状部12の基準表面13に摩耗部、変形部および欠損部といった各種の表面欠陥を生じているものとする。

【0021】
以下、この工具10の突状部12に生じた表面欠陥の修復方法について説明する。

【0022】
まず、図1に示すように、反応管20の内部に工具10を配置する。この場合、突状部12の全長域が反応管20によって構成される反応室21の内部雰囲気に接することができるように、基部11の軸心が鉛直方向に沿うように配置することが好ましい。

【0023】
次いで、上記反応室21に気相原料をパルスシーケンスで供給する。このとき、修復目標面となる基準表面13での結晶の成長が最小となる条件を選択する。例えば、図3に示すように、基準表面13以外の表面での原料供給1周期あたりの結晶の成長が1分子層であるときに、基準表面13での結晶の成長が1/4分子層程度であるような条件を選択する(図3中の範囲a部分)。この場合、修復すべき表面欠陥が複雑な面で構成されている場合には、複数の条件を組み合わせ、あるいは複数の条件を適宜切り換えながら気相原料を供給するようにしても構わない。

【0024】
また気相原料としては、例えば工具10の突状部12がTiNで成形されている場合、有機チタン金属と窒素の水素化物(アンモニア)とを交互にパルスシーケンスで供給する。また、工具10の突状部12が酸化アルミニウムの場合には、有機アルミニウム金属と酸素の水素化物(過酸化水素)とを交互にパルスシーケンスで供給する。

【0025】
こうした条件下で反応管20に気相原料を供給していくと、上述した原子層成長法の特徴により、突状部12において基準表面13以外での結晶の成長が支配的となる。つまり工具10の突状部12において修復すべき部分にのみ選択的に結晶が成長していくようになる。したがって、図2(b)に示すように、表面に存在する凹凸を増長することなく工具10を修復することができ、その再利用が可能となる。この結果、当該工具10を適用する加工機械のランニングコストを低減することができるようになる。

【0026】
しかも、上記方法によれば、工具10の修復が原子レベルで可能になる。このため、マイクロオーダーやナノオーダーで微細構造化された工具に対しても適用することが可能である。また、原料の使用量も最小限となり、修復の際のコストの点でも有利となる。

【0027】
さらに、上記方法によれば、気相原料自らが自動的に結晶成長の停止を分子1層で行うため、修復の際の制御や作業が煩雑化することもない。

【0028】
なお、上述した実施の形態では、工具10を修復する方法について例示しているが、修復対象は必ずしも工具に限られるものではない。例えば、図5に示すように、ベアリング30を構成する転動体31や内外レース32,33に生じた表面欠陥を修復したり、図6に示すように、構造部品40の外表面41に生じた表面欠陥を修復する場合にももちろん適用することが可能である。また、機械要素部品の修復に限ることなく、製造段階で生じた表面粗さや表面荒れの改善、あるいは硬化処理等の各種表面処理を行う場合にも適用することが可能である。例えば上記方法を適用して機械要素部品の表面にTiN層を形成する処理を施せば、表面の硬化処理と同時に表面欠陥の改善を行うことが可能となる。

【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、基準表面での結晶の成長が最小となる条件で機械要素部品に原子層成長法を施すようにしているため、使用に伴う表面の劣化部や欠損部、並びに表面荒れや表面粗さの等の表面欠陥を、いずれも高精度に改善することが可能となる。

【0030】
しかも、本発明によれば、機械要素部品の表面を原子レベルで改善することができるため、マイクロオーダーやナノオーダーで微細構造化された機械要素部品に対しても適用することが可能である。また、原料使用量も最小限となり、表面改善の際のコストの点でも有利となる。

【0031】
さらに、本発明によれば、気相原料自らが自動的に成長の停止を分子1層で行うため、改善の際の作業が煩雑化することもない。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6