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明細書 :金属材料の処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年7月20日(2017.7.20)
発明の名称または考案の名称 金属材料の処理装置
国際特許分類 B22F   3/10        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
H01L  21/288       (2006.01)
FI B22F 3/10 A
B22F 1/00 C
H01L 21/288 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 21
出願番号 特願2016-542586 (P2016-542586)
国際出願番号 PCT/JP2015/072754
国際公開番号 WO2016/024586
国際出願日 平成27年8月11日(2015.8.11)
国際公開日 平成28年2月18日(2016.2.18)
優先権出願番号 2014165032
優先日 平成26年8月13日(2014.8.13)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】白川 直樹
【氏名】村田 和広
出願人 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
【識別番号】506159976
【氏名又は名称】株式会社SIJテクノロジ
個別代理人の代理人 【識別番号】100076439、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 敏三
【識別番号】100161469、【弁理士】、【氏名又は名称】赤羽 修一
審査請求 未請求
テーマコード 4K018
4M104
Fターム 4K018BA01
4K018BA02
4K018BA04
4K018BA13
4K018BA20
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC01
4K018BD04
4K018DA11
4K018DA24
4K018DA28
4K018DA33
4K018DA41
4K018KA33
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB06
4M104BB07
4M104BB08
4M104BB09
4M104BB36
4M104DD51
4M104DD78
4M104DD86
4M104HH16
要約 試料を内部に収容する密閉容器と、該密閉容器より排出される気体から酸素分子を引き抜く酸素ポンプと、該気体を該密閉容器に戻す循環手段と、該密閉容器内にあって、該循環手段から戻された該気体をプラズマ化し、該試料に照射するプラズマ化手段とを有する金属材料の処理装置。
特許請求の範囲 【請求項1】
試料を内部に収容する密閉容器と、
該密閉容器より排出される気体から酸素分子を引き抜く酸素ポンプと、
該気体を該密閉容器に戻す循環手段と、
該密閉容器内にあって、該循環手段から戻された該気体をプラズマ化し、該試料に照射するプラズマ化手段と
を有する金属材料の処理装置。
【請求項2】
試料を内部に収容する密閉容器と、
該密閉容器より排出される気体から酸素分子を引き抜く酸素ポンプと、
該気体を該密閉容器に戻す循環手段と、
該循環手段から戻された該気体を加熱するヒーターと、
該密閉容器内にあって、該循環手段から戻された該気体をプラズマ化し、該試料に照射するプラズマ化手段と
を有する金属材料の処理装置。
【請求項3】
前記密閉容器内に、前記試料を保持するための試料ステージを有する請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記試料ステージが試料を加熱するヒーターを備える請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記循環手段が、前記密閉容器から排出される気体を加圧して該密閉容器に戻す請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記金属材料が、金属または金属化合物の微粒子である請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記金属材料の焼結および還元、または焼結もしくは還元を行うことができる請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記循環手段から戻されプラズマ化される該気体の全圧力が、絶対圧で0.1気圧以上10気圧未満である請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記金属材料を構成する金属が銅である請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記気体が窒素を含む請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記密閉容器内に戻される気体中の酸素分圧が10-25気圧以下である請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記酸素ポンプが酸素イオン伝導性を有する固体電解質体とその内側及び外側に配設された電極を具備する請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記固体電解質体が安定化ジルコニア製である請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記電極が固体電解質体の表面に沿う多孔質の電極である請求項12または13に記載の装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の処理装置、特に金属微粒子の焼結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的に電子回路を形成する一般的な方法では、基板一面に成膜した金属・半導体・絶縁体といった電子材料の膜をフォトリソグラフィで加工する。すなわち、膜上にレジストを塗布し、露光・現像によって回路として必要な部分のレジストを残し、エッチングによって不要な電子材料を除去し、残ったレジストも除去することを繰り返す。これでは多くの電子材料が無駄になるうえ、電子材料・レジストの廃液処理により環境負荷の高いプロセスとならざるを得ない。
そこで近年、印刷を用いた電子回路形成法が、必要な材料を必要な場所に配置できる技術として、省資源・省エネルギーの観点から注目されている。
そこでは、電子回路のうち配線部分を形成するのに、金属微粒子を含むインクまたはペーストが使われ、インクジェットまたはスクリーン印刷法などの種々の印刷手法によって、基板上に配線パターンが形成される。このインクまたはペーストは、液体であるから、金属微粒子以外に溶媒を含み、さらに、金属微粒子同士の凝集を防ぐ分散剤や、基板への密着性を確保するためのバインダや、液体の粘度を調整するための溶剤等の有機物を一般に含む。従って、配線パターン形成後、熱処理によってこれらの有機物を分解し、金属微粒子間に伝導経路を形成する必要がある。印刷を行なう基板としては、可撓性を持つ樹脂が好まれており、その耐熱温度の限界から、熱処理温度を下げる(例えば200℃程度以下)ことが求められている。
例えば、耐熱性の高い樹脂としてポリイミド(260℃以上で使用可能)が存在する。しかし他の樹脂に比べて高価である。そのため比較的低価格な樹脂、例えばポリエチレンナフタレート(PEN、使用温度上限約180℃)、ポリエチレンテレフタレート(PET、使用温度上限約120℃)を使用できるよう、熱処理温度を180℃以下、好ましくは120℃以下に下げることが望ましい。
金属として銀の微粒子を含むインクまたはペーストについては、大気中で低温の熱処理を行なうことで、良好な電導性を発揮するようになる製品が種々開発されている(特許文献1)。一方、銅の場合、大気中で熱処理を行なったのでは、絶縁体である酸化銅が生成してしまい、導電性のある配線を得ることができない。この問題を回避するには、焼成処理中、何らかの手段により、銅粒子の周りが少なくとも局所的に還元性雰囲気となっている必要がある。
その手段として、下記の方法
(1)水素(非特許文献1)、ギ酸蒸気(特許文献2)、極低酸素雰囲気(特許文献3、特許文献4、非特許文献2)など、何らかの還元性気体中での熱処理、
(2)ギ酸銅など、熱分解によりインクの成分から還元性気体が生ずるインクを用い、酸素を遮断した上での熱処理(非特許文献3、特許文献5)、
が知られている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2012-144795公報
【特許文献2】特開2013-80919公報
【特許文献3】特許第3921520号明細書
【特許文献4】特許第4621888号明細書
【特許文献5】国際公開第2013/073349号
【0004】

【非特許文献1】Thin Solid Films 520 (2012) 2789.
【非特許文献2】Jpn. J. Appl. Phys. 52 (2013) 05DB19.
【非特許文献3】Mater. Res. Bull. 47 (2012) 4107.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術では、水素・ギ酸蒸気・ギ酸銅を使用するものがあるが、そうした材料に頼らずに、できれば環境負荷を減らすことが好ましい。また、大気中で安定な低抵抗率の材料とするために、低温で、金属材料を粒成長させる、もしくは結晶成長させることが好ましい。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものである。具体的には、(1)必要により、廃棄処理が求められる気体成分を不要化すること、(2)低温において金属材料の粒成長あるいは結晶成長をもたらすこと、(3)低抵抗率の膜乃至配線とすること、ができる装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、以下の手段を採用する。
〔1〕試料を内部に収容する密閉容器と、
該密閉容器より排出される気体から酸素分子を引き抜く酸素ポンプと、
該気体を該密閉容器に戻す循環手段と、
該密閉容器内にあって、該循環手段から戻された該気体をプラズマ化し、該試料に照射するプラズマ化手段と
を有する金属材料の処理装置。
〔2〕試料を内部に収容する密閉容器と、
該密閉容器より排出される気体から酸素分子を引き抜く酸素ポンプと、
該気体を該密閉容器に戻す循環手段と、
該循環手段から戻された該気体を加熱するヒーターと、
該密閉容器内にあって、該循環手段から戻された該気体をプラズマ化し、該試料に照射するプラズマ化手段と
を有する金属材料の処理装置。
〔3〕上記密閉容器内に、上記試料を保持するための試料ステージを有する〔1〕または〔2〕に記載の装置。
〔4〕上記試料ステージが試料を加熱するヒーターを備える〔3〕に記載の装置。
〔5〕上記循環手段が、上記密閉容器から排出される気体を加圧して該密閉容器に戻す〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の装置。
〔6〕上記金属材料が、金属または金属化合物の微粒子である〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の装置。
〔7〕上記金属材料の焼結および還元、または焼結もしくは還元を行うことができる〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の装置。
〔8〕上記循環手段から戻されプラズマ化される該気体の全圧力が、絶対圧で0.1気圧以上10気圧未満である〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の装置。
〔9〕上記金属材料を構成する金属が銅である〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の装置。
〔10〕上記気体が窒素を含む〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の装置。
〔11〕上記密閉容器内に戻される気体中の酸素分圧が10-25気圧以下である〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の装置。
〔12〕上記酸素ポンプが酸素イオン伝導性を有する固体電解質体とその内側及び外側に配設された電極を具備する〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の装置。
〔13〕上記固体電解質体が安定化ジルコニア製である〔12〕に記載の装置。
〔14〕上記電極が固体電解質体の表面に沿う多孔質の電極である〔12〕または〔13〕に記載の装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属材料の処理装置は、金属材料の新たな方法による処理を可能とする。また、本発明の装置によれば、(1)必要に応じて、廃棄処理が求められる気体成分を不要化することができる。(2)低温において原料の金属材料の粒成長あるいは結晶成長をもたらすことができる。(3)低抵抗率の膜とすることができる。
【0008】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係る金属材料の処理装置を説明するための装置構成図である。
【図2】プラズマ発生手段を模式的に示す側面図である。
【図3】気体用ヒーターを模式的に示す断面図である。
【図4】酸素ポンプの要部を模式的に示した断面図である。
【図5】酸素ポンプの酸素除去機構を模式的に示した断面図である。
【図6】超微細流体ジェットの装置構成図である。
【図7】実施例で用いた金属材料の試料(被処理膜)の描画パターンを模式的に示す平面図である。
【図8】実施例1で作製した金属材料の処理済み膜(焼結膜)の走査イオン顕微鏡写真を示す図面代用写真である。
【図9】実施例3で作製した金属材料の処理済み膜(焼結膜)の走査イオン顕微鏡写真を示す図面代用写真である。
【図10】特許文献4に掲載された図1(相図)
【図11】比較例で作製した金属材料の処理済み膜の走査イオン顕微鏡写真を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の金属材料の処理装置について実施例に基づき詳細に説明するが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。

【0011】
[処理装置]
図1は本発明の好ましい実施形態に係る金属材料の処理装置の全体を示す装置説明図である。本実施形態の装置は、密閉容器1を有する。密閉容器を構成する材料や材質は特に問わないが、通常、ステンレス等の金属が採用される。形態としては、箱状の容器で、内部を真空引きできる構造であることが望ましい。密閉容器1と酸素ポンプ2と循環手段3の間は配管8a、8b、8cで結ばれ、気体の循環経路8を形成する。密閉容器1から排出された気体は酸素ポンプ2を通ることで酸素が除去され、例えば10-27気圧以下の酸素分圧を持つ極低酸素状態となる。酸素ポンプおよびそこでの酸素の除去機構については、後述する。本明細書において酸素分圧は、特に断らない限り、600℃に熱されたジルコニア式酸素分圧計で測定されたものとする。ジルコニア式酸素分圧計の動作原理についても後述する。循環される気体としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性気体を用いることができるが、主にコスト的な観点から窒素が望ましい。循環される気体には、本発明の効果を損ねない範囲で他の成分が含有されていてもよい。他の成分としては、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、低分子量有機化合物等が挙げられる。極低酸素化された気体は循環手段3で加圧され密閉容器1内の配管8dを通り、プラズマ化手段4に送られる。密閉容器1内には試料ステージ7が設けられており、プラズマ化されたガスが試料6に吹き付けられる。試料6は基板上に金属材料の膜を付与したものである。なお、このとき密閉容器の室内Rは上記の循環される気体(極低酸素化された気体)で満たされている。

【0012】
[プラズマ化手段]
プラズマ化手段4としては、1気圧に近い気体中でのグロー放電により、気体をプラズマ化する、いわゆる大気圧プラズマ装置が望ましい。プラズマ化手段4の構造は特に限定されないが、例えば、図2のように、内径数ミリメートルの配管42(8d)において、その出口付近に向かい合う電極41a、41bを付しておく。当該電極41a、41bに、数十Hz、数kV~数十kVの電圧を電圧印加手段43により印加することにより、上記配管42(8d)の出口から噴出する形のプラズマ44を発生させることができる。ただし、本発明においてプラズマ化手段4がこの構造に限定して解釈されるものではない。例えば、気体の導入配管42(8d)の排出口とは別の位置に高周波高電圧の印加手段を設け電磁誘導によりプラズマを発生する構成としてもよい。

【0013】
上記密閉容器内での大気圧プラズマの生成条件や金属材料の処理の適性等を考慮し、密閉容器内の圧力は0.1気圧以上10気圧未満とすることが好ましく、0.5気圧以上2気圧未満とすることがより好ましい。同様に、密閉容器内の温度は、0℃以上100℃以下とすることが好ましく、20℃以上50℃以下とすることがより好ましい。

【0014】
[試料ステージ等]
試料ステージ7として、いわゆるホットプレートを用いることで、試料6を加熱しながらプラズマを照射することができる。このときの加熱温度は、金属材料の処理の効率や適性を考慮して、温度は、100℃以上とすることが好ましく、120℃以上とすることがより好ましく、180℃以上とすることが特に好ましい。上限としては、350℃以下とすることが好ましく、300℃以下とすることがより好ましく、250℃以下とすることが特に好ましい。本発明によれば、金属材料の処理を上記のように低温で行うことができるという利点を有する。例えば金属材料として銅の微粒子を用いた場合に、その融点が1000℃を超えるにも関わらず、250℃以下で微粒子の界面ないし微粒子間の空隙を消失させ、粒子成長ないし結晶成長をもたらすことができる。
金属材料の処理時間は材料の種類や膜の厚さなどにより適宜設定すればよい。短時間で処理を完了する場合には、例えば、45分以下で処理することが好ましく、30分以下で処理することがより好ましく、20分以下で処理することが特に好ましい。下限としては、10分以上の処理が実際的である。

【0015】
[気体用ヒーター]
一方、気体をプラズマ化する際に用いられる大気圧プラズマの技術においては、プラズマ化された気体分子の平均的な温度は、典型的には80℃程度であり、ホットプレートの温度に比べて低い。低い温度のプラズマ化された気体分子を試料に照射すると試料表面が冷却されてしまう。すなわち、大気圧プラズマの吹き付けによる温度低下分を補償できるようにホットプレート温度を高く設定することが要請され、使用できる基板が限定される。
この問題を解決するため、プラズマ化手段4の前段に気体用ヒーター12を設ける。気体用ヒーター12で気体を暖めてからプラズマ化する。これにより、プラズマ吹き付けによる試料表面の冷却を防止することができる。
気体用ヒーター12としては、図3に示すような、ヒートテック社等から販売されている熱風ヒーターを便利に使うことができる。熱風ヒーターは、ガス入口13から奥のガス流路の周囲に気体を加熱するヒーターエレメント14が配されている。
なお図1では、気体用ヒーター12は密閉容器1内にあるが、配管8bの途中に設けることもできる。
プラズマには有限の寿命があるので、プラズマ化手段4と試料6の距離を大きく離すことは得策ではない。気体用ヒーター12で気体を暖めてからプラズマ化する方が有利と考えられる。なお、プラズマ化手段4と試料6の距離がプラズマ照射可能な距離であれば、気体用ヒーター12とプラズマ化手段4の配置位置を入れ替えてもよい。

【0016】
[循環手段]
図1では、循環手段3は密閉容器1の外に設けられているが、密閉容器1内に設けることもできる。そのようにすれば、循環手段3の気密性が不十分であっても、極低酸素分圧状態を維持することができる。一方、密閉容器1は循環手段3を内蔵できるだけの大きさを必要とする。このため、密閉容器1の製作コストと循環手段3の気密性にかかるコストを比べて、装置構成を選択することが好ましい。なお、循環手段3から気体を直接反応室内に戻さなくてもよい。例えば、一時所定の箇所に貯留した後に、反応室内に戻すようにしてもよい。もしくは、循環手段3を酸素ポンプ2と一体化してもよい。なお、本発明において循環手段3とは広義には循環経路(配管)を含む意味であり、流体の輸送能力をもたない構成も含む意味である。したがって、例えば酸素ポンプ2が気体の循環機能を担う場合や、密閉容器1がこの機能を兼ねる場合などには、図示されたような気体の輸送力のある循環手段3は省略されてもよい。そして経路(流路)としての循環手段のみが配置された形態でもよい。
系内の気体の循環流量は特に限定されないが、密閉容器1内でのプラズマの発生と良好な処理の観点から、1L/分以上であることが好ましい。そして2L/分以上であることがより好ましく、3L/分以上であることが特に好ましい。上限は、10L/分以下であることが好ましい。そして7L/分以下であることがより好ましく、5L/分以下であることが特に好ましい。プラズマ化手段4を密閉容器1内で複数設ける場合には、上記の流量をその個数に合わせて調整することが好ましい。例えば、上記で規定した流量にプラズマ化手段4(プラズマトーチ)の個数を乗じた範囲で、気体の循環流量を調節することが好ましい。

【0017】
[酸素ポンプ]
本願発明の酸素ポンプ2は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体とその内側及び外側に配設された電極を具備することが好ましい。
図4は、図1の酸素ポンプ(酸素分子排出装置)2を模式化して示す要部断面図である。酸素ポンプ2は、酸素イオン伝導性を有するジルコニア製固体電解質体(固体電解質体)21と、その内面及び外面に配設された金又は白金よりなる多孔質の電極22、23とを備える。ジルコニア製固体電解質体21は、両端部でコパール材からなる金属製管体(図示せず)とロウ付けで固着される。固体電解質体の電極と管体は、内側電極を構成する。酸素分子排出装置の内圧は、ゲージ圧で0.5kg/cm以下とされることが好ましく、0.2kg/cm以下とされることがより好ましい。下限としては、0.1kg/cm以上とされることが好ましい。

【0018】
図5は、酸素ポンプ2の作用を模式的に示す断面図である。多孔質の電極(内面電極)23と多孔質の電極(外面電極)22間に直流電源Eから電流Iを流す。すると、固体電解質体21内の空間Tに存在する酸素分子(O)が、内面電極23によって2つの酸素イオンに電気分解され、固体電解質体21を通過する。その後、再び酸素分子(O)として生成され、固体電解質体21の外部に放出さる。この固体電解質体21の外部に放出された酸素分子を、空気等の補助気体をパージガスとして排気する。上記のプロセスにより、固体電解質体21に供給される不活性ガス(例えば、N)中の酸素分子を除去して、酸素分圧を低減または制御することができる。

【0019】
このように酸素ポンプ2(酸素分子排出装置)は、固体電解質体(以下、固体電解質管ともいう)21内に導入されたガスが固体電解質体21を通過する間にガス中の酸素分子を外気に排出する。その結果、極めて低い酸素分圧のガスを生成して、固体電解質体21から密閉容器1(図1)に向けて供給することができる。なお、図5において、●はキャリアガス(N等)、○○は酸素分子、○は酸素イオンを模式的に示したものである。

【0020】
ガス中の酸素分圧は、例えば10-25気圧に設定することができる。具体的には、設定部によって設定された量に設定するための制御信号が、分圧制御部(図示せず)から酸素ポンプ2に送られる。その制御信号によって酸素ポンプ2の電圧Eが制御される。そして、ガス供給弁およびマスフローコントローラ(図示せず)を通って酸素ポンプ2に供給されたN,Ar,He等の不活性ガス中の酸素分圧が、設定部(図示せず)によって設定された量に制御される。

【0021】
上記のとおり極めて低い酸素分圧に制御された不活性ガスは、センサによってその分圧がモニタされた後、密閉容器のプラズマ化手段に供給されることが好ましい。そのモニタ値が酸素分圧制御部に入力され、酸素分圧設定部で設定値と比較される。このようにして、酸素分圧が10-25気圧以下に制御された不活性ガスが供給される。一方で、密閉容器から排気されるガスの酸素分圧が、センサによってモニタされて、密閉容器内における試料からの酸素脱離速度の指標となる。また、使用済みガスは、装置外に排気してもよいが、再び酸素ポンプに戻すような閉ループを形成することが好ましい。なお、酸素分圧は、酸素イオン伝導体を用いた酸素センサを使い、ネルンストの式から求めることができる。酸素センサの基本構造は、図4に示された、内面及び外面に配設された金又は白金よりなる多孔質の電極22、23を備えた、酸素イオン伝導性を有するジルコニア製固体電解質体21の管(固体電解質管)そのものである。図5は酸素ポンプとしての使用例である。外部から電圧Eを印加する代わりに、電位差計で内面電極23と外面電極22の間の電位差Eを測定する。そうすれば、固体電解質管21内部の気体の酸素分圧p(O)は4FE=RTln[0.21/p(O)]から求められる。特に断らない限りセンサ温度は600℃とする。ここでFはファラデー定数、Rは気体定数、Tは固体電解質管21の絶対温度である。

【0022】
固体電解質体21を構成する固体電解質は、例えば、式(ZrO1-x-y(In(Y(0<x<0.20、0<y<0.20、0.08<x+y<0.20)で表されるジルコニア系の材料が利用できる。

【0023】
固体電解質は、上記に例示したもの以外に、例えば、BaおよびInを含む複合酸化物であって、この複合酸化物のBaの一部をLaで固溶置換したもの、
特に、原子数比{La/(Ba+La)}を0.3以上としたもの、が採用できる。
さらにInの一部をGaで置換したもの、
例えば、式{Ln1-xSrGa1-(y+z)MgCo3-d、ただし、Ln=La,Ndの1種または2種、x=0.05~0.3、y=0~0.29、z=0.01~0.3、y+z=0.025~0.3}で示されるもの、
式{Ln1-xGa1-y-zB1B23-d、ただし、Ln=La,Ce,Pr,Nd,Smの1種または2種以上、A=Sr,Ca,Baの1種または2種以上、B1=Mg,Al,Inの1種または2種以上、B2=Co,Fe,Ni,Cuの1種または2種以上}で示されるもの、
式{Ln2-xGe1-y5-d、ただし、Ln=La,Ce,Pr,Sm,Nd,Gd,Yd,Y,Sc、M=Li,Na,K,Rb,Ca,Sr,Baの1種もしくは2種以上、L=Mg,Al,Ga,In,Mn,Cr,Cu,Znの1種もしくは2種以上}で示されるもの、
式{La1-xSrGa1-y-zMgAl3-d、ただし、0<x≦0.2、0<y≦0.2、0<z<0.4}で示されるもの、
式{La1-xGa1-y-zB1B23-d、ただし、Ln=La,Ce,Pr,Sm,Ndの1種もしくは2種以上、A=Sr,Ca,Baの1種もしくは2種以上、B1=Mg,Al,Inの1種もしくは2種以上、B2=Co,Fe,Ni,Cuの1種もしくは2種以上、x=0.05~0.3、y=0~0.29、z=0.01~0.3、y+z=0.025~0.3}で示されるもの
等が採用できる。

【0024】
固体電解質体21の両端部と管体との接続構造は酸素分圧に影響を与えるため、高い気密性を確保することが好ましい。そのために、管体と固体電解質体21を金属のロウで接合することを採用することが好ましい。イオン伝導性を発揮させるために固体電解質は、600℃~1000℃に加熱されることが好ましい。酸素ポンプの排気速度を上げるためには、固体電解質をより高温に加熱することが好ましい。酸素ポンプは系内に一本でも複数本で適用してもよい。固体電解質体21は通常長いほど分子排出機能が高くなる。一方、コストや取り扱いを考慮すると、15cm~60cmの長さが好適である。接続される各管体の長さは、片側3cm~60cmであることが望ましい。固体電解質体21と管体との接続部には、ロウ付け後、金又は白金で電解メッキを施すことが好ましい。さらに、電解メッキ部分を酸又はアルカリで前処理した後、固体電解質体も同時に無電解白金メッキを施すことが好ましい。これが多孔質電極として機能する。

【0025】
本発明において、流通させるガスの酸素分圧は、10-22気圧以下が好ましく、10-23気圧以下がより好ましく、10-25気圧以下がさらに好ましく、10-27気圧以下が特に好ましい。下限値は特にないが、10-30気圧以上であることが実際的である。

【0026】
上述した酸素ポンプ2と循環手段3の構成については、例えば、前記特許文献3に挙げられているものを好適に用いることができる。

【0027】
[金属材料]
本発明に適用される金属材料は特に限定されないが、金属ないし金属化合物の微粒子であることが好ましい。なかでも導電性の微粒子(粉体)であることが好ましい。金属材料は、遷移金属あるいは遷移金属酸化物の粒子であることが好ましく、導電インクの導体化工程において金属性の遷移金属となるものが好ましい。金属材料は、微粒子(粉体)状態で本発明に係る処理に付されて、この処理を通じて、粒子成長ないし結晶成長し、一体化することが好ましい。例えば、一体化することにより金属材料の緻密層を構成する。この緻密層を、基板と配線層間の接着や電気的導通を得る加工に適用することが考えられる。このように金属粒子を一体化(バルク)とすることで物性が安定化する。例えば、空気中でも微粒子のようには酸化されず、低電気抵抗状態を好適に維持することができる。
金属材料は本発明の効果が得られるものであれば特に制限はない。上述した遷移金属等の金属そのものの他、その酸化物や複合化合物なども用いることができる。

【0028】
金属材料に用いる金属の種類としては、銅、金、白金、銀、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル、錫、鉛、ビスマス及びそれらの合金が挙げられる。中でも、銅、銀、鉄、ニッケル、ルテニウムを用いることが好ましく、銅を用いることが特に好ましい。この点について補足すると、例えば銀は高価である上、マイグレーション(エレクトロマイグレーション、イオンマイグレーション)を起こしやすい点が挙げられる。これに対し、銅の微粒子は、安価でマイグレーション耐性が高い。このため、銅を含むインクまたはペーストを用いて印刷により配線を形成する技術が好ましい。ただし、この説明により本発明が限定して解釈されるものではない。

【0029】
金属材料は、粒子状にして用いることができる。金属材料の微粒子の一次粒径(平均粒径)は、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが特に好ましい。上限としては、2000nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることがより好ましい。より好ましい上限としては、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。さらに好ましい上限としては、100nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。金属材料の粒子の一次粒子の粒子径を上記の範囲とすることで、比表面積を拡大し粒子同士の接点数を増やすことができ好ましい。もしくは、インクにおける粒子の分散性や膜の均質性を効果的に確保できる点で好ましい。
本明細書において、金属材料の一次粒径は、透過型電子顕微鏡画像の解析による粒度分布測定法を用いて測定した最頻粒径(1つの評価試料で300~1000個を測定する)を指すものとする。測定試料中の金属材料の濃度は、特に断らない限り、60質量%とする。このときの溶媒は常用されているものを用いることができる。

【0030】
[分散剤]
金属材料の微粒子を含むインクとするとき、その中には、分散剤を含有させることが好ましい。分散剤は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの酸性吸着基(またはその塩)を有する分散剤であることが好ましい。市販の分散剤としては、例えば、Disper BYK110、Disper BYK111、Disper BYK180、Disper BYK161、Disper BYK2155(以上、ビックケミー・ジャパン社製、商品名)、ディスパロンDA-550、ディスパロンDA-325、ディスパロンDA-375、ディスパロンDA-234、ディスパロンPW-36、ディスパロン1210、ディスパロン2150、ディスパロンDA-7301、ディスパロンDA-1220、ディスパロンDA-2100、ディスパロンDA-2200(以上、楠本化成社製、商品名)などが挙げられる。

【0031】
インク中の分散剤は、金属材料微粒子100質量部に対して、0.1質量部~1質量部で含まれることが好ましい。この量が過少であれば導電性粒子を均一に分散させるのに十分ではなく、過多であれば金属材料の処理膜の特性を低下させることともなる。

【0032】
[媒体]
金属材料を含有する分散液(インク)の溶媒は特に限定されないが、前記金属材料を十分に分散させることができるものが好ましい。例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素またはブタジエン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素が取扱い性の面から適している。インクジェット法による場合には、流動性がありノズルから吐出することができることが好ましい。方法によっては無溶媒で用いてもよい。
金属材料を媒体に分散させた分散体(インク)とする場合、その濃度は適宜調節されればよい。例えば、後述する超微細流体ジェットによる吐出に適した濃度に設定することが挙げられる。インクにおける金属材料の濃度は50質量%以上80質量%以下であることが好ましく、60質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。

【0033】
[金属材料の処理済膜]
本発明の装置により処理した金属材料は膜として形成されていることが好ましい。この処理済膜(金属材料が処理された後の膜)の厚みは、アプリケーションにより異なる。例えば電子材料としての利用を考慮すると、処理済膜の厚みは、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。上限値は特にないが、20μm以下とすることが実際的であり、10μm以下としてもよい。
金属材料の微粒子を含有するインクを用いる場合、後述する超微細流体ジェット等により、基材に塗布して被処理膜(処理される前の膜)を形成することができる。被処理膜は、塗布したものをそのまま用いてもよいが、余剰の媒体成分を除去するために、加熱による前処理を行うことが好ましい。前処理の加熱温度は金属材料や媒体によって調節すればよい。例えば、その加熱温度を80℃以上250℃以下ですることが挙げられる。

【0034】
金属材料は上述のように微粒子状のものを用いることが好ましい。このとき粒子の表面は処理前には酸化状態であってもよい。すなわち金属材料は金属酸化物でもよい。本発明の処理を通じて金属材料(金属微粒子)全体が還元される。この還元作用により、例えば膜としたときの金属材料の電気抵抗率を、酸化されていないときと同程度まで低減させることができる。
金属材料の処理済膜の内部構造は、特に限定されないが、微粒子の残存や成長した粒子間に空隙のない一体化された構造であることが好ましい。本発明によれば、微粒子を材料とした際にも、粒子成長および結晶成長を効果的に促し、緻密な金属組織をもつ膜とすることが可能である。処理済膜の電気抵抗率は特に限定されないが、処理される金属の固有抵抗率に近い膜とすることが好ましい。例えば処理される金属が銅の場合、その電気抵抗率を100μΩ・cm以下とすることが好ましく、50μΩ・cm以下とすることがより好ましく、20μΩ・cm以下とすることがさらに好ましい。さらにその電気抵抗率は、8μΩ・cm以下とすることがより好ましく、5μΩ・cm以下とすることがさらに好ましく、3μΩ・cm以下とすることが特に好ましい。下限値はバルクの物性値である1.7μΩ・cmである。金属材料がもつ固有抵抗率との関係でいうと、その50倍以下の抵抗率であることが好ましく、30倍以下の抵抗率であることがより好ましく、10倍以下の抵抗率であることがさらに好ましい。さらに金属材料がもつ固有抵抗率との関係でいうと、5倍以下の抵抗率であることがより好ましく、3倍以下の抵抗率であることがさらに好ましく、2倍以下の抵抗率であることが特に好ましい。なお、本明細書において電気抵抗率の値は、特に断らない限り、実施例に提示の方法で、室温(約25℃)で測定した値をいうこととする。

【0035】
[超微細流体ジェット]
本発明の装置に適用される金属材料は、その処理に際し、基材上にどのような方法で付与されてもよい。例えば、インクジェット法や、スピンコート法、スクリーン塗布法等の各種の方法で付与することが挙げられる。本発明においては、中でも、超微細流体ジェットによる処理が好ましい。
図6は、本発明において一実施形態として用いられる超微細流体ジェット装置(スーパーインクジェット)100を模式化して示した説明図である。本実施形態の超微細流体ジェット装置100において、超微細径のノズル(超微細ノズル体:Super Fine Nozzle Member)200はノズル本体101及び電極102で構成されている。液滴サイズの超微細化を考慮するとき、ノズル本体101を低コンダクタンスのものにすることが好ましい。このためには、ガラス製キャピラリーが好適である。その他、導電性物質に絶縁材でコーティングしたものでも可能である。

【0036】
超微細ノズル200(ノズル本体101)の先端における開口径(円相当直径)φの下限値はノズル作製上の都合から0.01μmが好ましい。上限値としては、ノズル内径φを20μm以下とすることが好ましく、10μm以下とすることがより好ましく、8μm以下とすることがさらに好ましく、6μm以下とすることが特に好ましい。超微細ノズルの先端における外径φ(円相当直径)は特に限定されないが、上記開口径φとの関係及びノズル先端2tにおける良好な集中電界の発生を考慮し、外径φを0.5μm~20μmとすることが好ましく、1μm~8μmとすることがより好ましい。

【0037】
本実施形態の超微細ノズル200(ノズル本体101)はテーパーを有しノズル先端2tに向け先細りになる形態を有する。図示したものにおいてはノズルの内孔の方向に対するノズル外形2oのテーパー角度θとして示している。この角度θが0°~45°であることが好ましく、10°~30°であることがより好ましい。ノズル内形2iは特に限定されないが、本実施形態においては通常のキャピラリーチューブにおいて形成される形態であればよい。上記外形のテーパーに沿って多少テーパーのある先細り形状であってもよい。ただし、超微細ノズル200を構成するノズル本体101は、キャピラリーチューブに限らず、微細加工により形成される形態のものでもかまわない。

【0038】
本実施形態においては、超微細ノズル200を構成するノズル本体101が成形性の良いガラスで形成されている。そのノズル本体101の内側に金属線(タングステン線)102が電極として挿入されている。変形例としては、これに代え、例えばノズル内にメッキで電極を形成してもよい。さらなる変形例として、ノズル本体101自体を導電性物質で形成した場合には、その上に絶縁材をコーティングする。また、超微細ノズル200内には吐出すべき液体103が充填される。この際、本実施形態においては、電極102が液体103に浸されるように配置され、液体103は図示しない液体源から供給される。

【0039】
本実施形態において、超微細ノズル200は、シールドゴム104およびノズルクランプ105によりホルダー106に取り付けられ、圧力が漏れないようになっている。圧力調整器107で調整された圧力は圧力チューブ108を通して超微細ノズル200に伝えられる。本実施形態における圧力調整器107の役割は、高圧を印加することで流体を超微細ノズル200から押し出すために用いることができる。そしてコンダクタンスを調整したり、超微細ノズル200内へ接着剤を含有する液体を充填したり、ノズルつまりの除去などに用いるために特に有効である。また、液面の位置を制御したり、メニスカスを形成したりするためにも有効である。さらに、電圧パルスと位相差を付けることでノズル内の液体103に作用する力を制御して微小吐出量を制御する役割を担うようにしてもよい。

【0040】
(電圧印加の制御)
本実施形態においては、コンピューター109からの吐出信号は、所定の波形をもつ電圧の発生装置(電圧印加手段)110に送られ制御される。所定波形をもつ電圧の発生装置110より発生した電圧は、高電圧アンプ111を通して、電極102へと伝えられる。超微細ノズル200内の液体103は、この電圧により帯電する。本実施形態においては、ノズル先端部における電界の集中効果と、対向基板に誘起される鏡像力の作用を利用する。このため、基材Sを導電性のものにしたり、これとは別に導電性の対向基板を設けたりする必要がない。すなわち、基材Sとして場合によっては絶縁性のものを含め様々な材料を用いることが可能である。電極102への印加電圧は直流でも交流でもよく、プラス・マイナスのどちらでもよい。

【0041】
超微細ノズル200と基材Sとの距離は近いほど鏡像力が働くため着弾精度は向上する。着弾精度および基材Sの振動を考慮すると、超微細ノズル200と基材Sとの距離を1000μm以下とすることが好ましく、500μm以下とすることがより好ましい。さらに、100μm以下とすることがより好ましく、50μm以下とすることがさらに好ましく、30μm以下とすることが特に好ましい。下限値は特にないが、1μm以上ないし10μm以上であることが実際的である。

【0042】
本実施形態の超微細流体ジェット装置100によれば、従来のピエゾ式インクジェットやバブルジェット(登録商標)式インクジェットでは困難であったほど微細化された超微細液滴11を吐出することができる。そのため連続して吐出、打滴し線状の描画パターンを形成することができる。この超微細液滴11は表面張力の作用や、比表面積の高さなどにより、極めて蒸発速度が高い。したがって、液滴の蒸発・乾燥、衝突エネルギー、および電界集中などを適切に制御することにより、良好な薄膜形成を促すことができるものと考えられる。また、電界集中及び基材Sとの間に生成される電気力線の作用により、上記のように乾燥固化により急激に質量を失った液滴であっても散逸されず、所望の位置に正確に着弾させることができることも本実施形態の利点である。

【0043】
吐出を可能とする超微細ノズル200の先端2tに発生する電界の強度は、ノズルに印加する電圧Vとノズルと対向電極間の距離hのみで決まる電界ではない。上記の電界強度は、むしろノズル先端2tにおける局所的な集中電界強度に基づいていると解される。また、本実施形態において重要なことは、局所的な強電界と、流体を供給する流路が非常に小さなコンダクタンスを持つことである。そして、流体自身が微小面積において十分に帯電することである。帯電した微小流体は、基板などの誘電体、または導体を近づけると、鏡像力が働き基板に対し直角に飛翔し、着弾して塗膜ないし微細線をなす。これが微細線描画パターンとなる。上記の超微細流体ジェット装置100により実現される超微細液滴の吐出の原理や好ましい実施態様については、さらに特開2004-165587号公報を参照することができる。

【0044】
良好な液滴吐出を実現するために、超微細ノズル200と基材Sとの間に十分な電位差が生じるよう、基材S側の電気的な状態を好適化することが好ましい。具体的には、装置の一部に導電性の部材を用い、これを接地させる、または、電源のノズルに接続する電極の反対の極性の電源部に接続すること等により、ノズルと基材間に電位差を生じさせるなどの対応が挙げられる。この電位差により、荷電した液滴を基材とノズルの間の電気力線にそって飛翔させ、確実に基材に着滴させることができる。

【0045】
印加する電流は直流でも交流でもよい。電圧(電位)としては、加工性および省電力の観点から低い方が好ましい。具体的には、5000V以下であることが好ましく、1000V以下であることがより好ましく、700V以下であることがさらに好ましく、500V以下であることが特に好ましい。下限値は、100V以上であることが実際的であり、300V以上であることがより実際的である。パルス幅は使用する電源(アンプ)のスルーレートから計算される時間の等倍以上とすることが好ましく、2倍以上とすることがより好ましい。上限としては、100倍以下の範囲が好ましく、10倍以下の範囲であることがより好ましい。具体的には、1パルスの幅が0.00001秒以上であることが好ましく、0.0001秒以上であることがより好ましく、0.001秒以上であることが特に好ましい。上限としては、1秒以下であることが好ましく、0.1秒以下であることがより好ましく、0.01秒以下であることがさらに好ましい。パルスの波形は特に限定されないが、サイン波であっても、矩形波であってもよい。本発明においては、制御性を考慮し、矩形波とすることが好ましい。交流で吐出する場合の周波数は、上記の吐出制御性を考慮して、100Hz以上が実際的であり、1000Hz以上がより実際的である。上限としては、10000Hz以下とすることが好ましく、100000Hz以下とすることがより好ましい。
これらの設定値は、印加電圧だけで定まるものではなく、採用される液体の物性、ノズル径、ノズル内の体積、ノズル-基材間距離等に応じて適宜設定されればよい。

【0046】
超微細流体ジェット装置100によれば、きわめて微細な形態の金属材料の膜を、オンデマンドで、効率的に形成することができる。金属材料の膜の線幅もしくはドット直径は、微細化する場合には、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。下限は特にないが、500nm以上であることが実際的である。ただし、塗り重ねるなどの処理で、より大きな幅の線やドットとしてもよい。また、上記の超微細流体ジェット装置100によれば、微細な描画物を高さ方向に積み上げた立体構造物とすることができる。構造物の高さは特に限定されない。その高さを出す場合には、1μm以上とすることが好ましく、3μm以上とすることがより好ましく、5μm以上とすることが特に好ましい。上限は特にないが、10μm以下が実際的である。立体構造物のアスペクト比(立体構造物の高さ/底面の最短部分の長さ)は、0.5以上とすることが好ましく、1以上とすることがより好ましく、3以上とすることが特に好ましい。上限は特にないが、5以下が実際的である。

【0047】
以下に、本発明の好ましい実施形態における各利点を公知技術との対比を含めて説明する。しかしながら、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
上記非特許文献3の技術では、ギ酸銅をインク原料としており、分解で生成した銅粒子がネッキングにより連結した形態となっており、粒成長は見られていない。非特許文献1、特許文献2では、水素・ギ酸蒸気の還元雰囲気で熱処理している。ここでは、ある程度の粒成長が見られているが、粒径の増大率は数倍程度で十分ではない。抵抗率も最小で5μΩ・cm程度に留まっている。粒成長が十分でないと、空気中で銅が自然酸化し、時間の経過と共に抵抗率が増大してしまうことになる。
従来の極低酸素雰囲気を用いた還元熱処理(プラズマを用いない)では、低温での処理が可能になったが(特許文献4)、処理済膜においてほとんど粒成長がみられない。

【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、水素やギ酸蒸気といった廃棄処理(排気や回収のための処理)の必要な気体を使用することがない。また、例えば180℃以下という低温で、短時間に、窒素等の不活性気体を用いて効率的に金属材料を処理することが可能となる。
本発明の好ましい実施形態によれば、上述のように、金属材料の還元のみならず、粒子成長ないし結晶成長を促すことができる。これにより、膜の電気抵抗率をきわめて低いものとすることができ、電子素子の電極・配線等の製造に好適に対応することができる。
本発明の好ましい実施形態によれば、還元性気体を発生するギ酸銅のような原料が含まれたインクを使う必要をなくし、インク選択の自由度を広げることができる。
本発明の好ましい実施形態によれば、窒素等の不活性気体に酸素ポンプを通じて還元性を与えるため、原料の熱分解により還元性気体を発生するようなインクを使う必要がない。そのため、インクの調製においては、金属微粒子と分散剤、溶媒、粘度調整剤といった、印刷品質の向上に関わる材料を積極的に使用することができる。
本発明の好ましい実施形態によれば、特に金属微粒子として銅ナノ粒子を用いた場合、バルク銅の2倍以内の低抵抗率試料を、180℃以下の温度での、短時間の処理で得ることができる。そのため、樹脂基板等への適用が可能である。また、μmオーダーまで成長した粒からなる処理済膜とすることができるので、例えば数ヶ月室温・大気中に放置しても、抵抗率の上昇を抑えることができる。
【実施例】
【0049】
本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
ガラス基板上に、銅インクを用い、幅約7μm、長さ10mmの細線を図7のようなパターンで描画した試料を作成した。用いた銅インクは20nm程度の銅微粒子を溶媒中に分散させたもので、このインクを超微細インクジェットプリンター(図6)により吐出させ、数回の重ね描きにより厚み1μm程度まで積み上げたものである。
銅インクは、イオックス社製(銅濃度60質量%)を用いた。
【実施例】
【0051】
描画した試料を酸素気流中250℃で30分間焼成した。この段階で、試料である銅の細線は、光沢を持った黒色になった。銅インクを広い面積で塗布した、いわゆるベタ膜を同条件で処理すると、銅はほとんど酸化銅に変化することがX線回折で確かめられている。したがって、上記の銅の細線も酸化銅に変わっているものと推測される。
【実施例】
【0052】
この試料をガラス基板ごと試料ステージ7に固定し、密閉容器1にふたをして、真空ポンプ10で真空引きした。真空ポンプ10としては、スクロールポンプ・ロータリーポンプ等の低真空ポンプで十分である。真空引きが終われば気体供給経路9から窒素を供給して大気圧に戻した。この例ではいったん真空引きしてから窒素で大気圧に戻しているが、密閉容器1が真空引きに耐える強度を持たない場合には、単に十分な時間窒素を流して空気を追い出すようにしても良い。
【実施例】
【0053】
密閉容器1に窒素を充満させたら、循環経路8を通じて15分程度窒素を循環させた。循環の流量は3L/分である。窒素の酸素分圧は、気体供給経路9からの導入直後、典型的には10-6気圧程度であるが、酸素ポンプ2を通って循環する間に10-25気圧以下まで低下させた。
酸素分圧が十分下がったところでプラズマ化手段4を点灯し、極低酸素状態となった窒素をプラズマ化して、試料6に照射した。この窒素は酸素分圧こそ非常に低いが、全圧はほぼ大気圧である。このようにして、極低酸素化された窒素の大気圧プラズマを試料に照射した。
【実施例】
【0054】
特許文献4の図1(A)にある相図(本願図8に引用した)から分かるように、酸素分圧が10-27気圧以下のとき、プラズマ化された気体5の温度が180℃以上であれば、それを照射することで試料がその温度まで暖められ還元が可能となるはずである。一方、今回用いた低出力の大気圧プラズマでは気体の温度が80℃以下であった。従って、試料ステージ7に備えられたヒーターにより、試料6を加熱した。
ヒーターで試料を250℃まで加熱し、大気圧プラズマを照射しながら45分間保持した。その後室温(約25℃)まで試料6を冷却してから試料6を密閉容器1から取り出した。図7のパターンを持つ試料6の断面積をレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-9500)で測定した。さらに4端子法で測定した電気抵抗を用いて体積抵抗率を算出したところ、2.7μΩ・cmとなった。これは20℃におけるバルク銅の体積抵抗率1.7μΩ・cmの1.6倍程度で、極めて低い値である。また、この試料を収束イオンビーム(FIB)加工装置(日立ハイテクノロジーズ社製FB-2100)で断面を切り出し、走査イオン顕微鏡で観察したところ、図8に示したようであった。FIBで表面から掘り下げて作った断面を観察する場合、手前側に元々の表面が広がっている以上、真正面から観察することは不可能なため、必ず断面を傾けて観察しなければならない。この写真では45度傾けている。よって、横方向と縦方向の長さスケールを合わせるため、元の写真を縦方向に1.41倍に伸ばして掲載している。写真下部の黒く写っている部分がガラス基板である。その上部の、かまぼこ型(半長楕円型)で種々のコントラストを持つ部分が、銅微粒子が処理された部分である。その上に黒っぽく見えている薄層は、試料の帯電防止用に、FIBの直前にスパッタで成膜した白金の層である。その上に白っぽい粒々が見えているのは、上記白金層の表面である。つまりこの部分はもう断面ではなく、断面より遠い側の表面である。これを見ると、250℃という低温にも拘わらず焼結が進み、原料のナノ粒子が数十倍のサイズまで粒成長していることが判る。また、粒子間にボイドがなく、極めて緻密な組織となっている。この試料の電気抵抗率を2ヶ月後に再測定したところ、誤差範囲内で一致した。粒子径が大きく成長し、ボイドもないため、自然酸化による抵抗上昇という問題がないものと考えられる。
【実施例】
【0055】
[実施例2]
実施例1と同様に試料を用意し、酸素気流中での有機物除去処理を同一条件で行なった。ついで実施例1と同様に密閉容器1内を窒素で置換した。その後循環経路8を通じて15分程度窒素を循環させ、酸素分圧を10-27気圧以下まで低下させた。特許文献4の図1(A)にある相図(図10)からわかるように、酸素分圧が10-27気圧以下のとき、試料の温度が180℃以上であれば還元が可能となるはずである。そこで、試料ステージ7の温度を180℃に設定した。この状態で大気圧プラズマを照射しながら45分間保持した。取り出した試料の体積抵抗率を実施例1と同様に測定したところ、5.0μΩ・cmであった。したがって、180℃という低温での焼成でも試料はかなりの程度還元されることがわかった。
【実施例】
【0056】
[実施例3]
実施例1と同様に試料を用意し、酸素気流中での有機物除去処理を350℃、45分間で行なった。ついで実施例1と同様に密閉容器1内を窒素で置換し、その後循環経路8を通じて15分程度窒素を循環させ、酸素分圧を10-27気圧以下まで低下させた。特許文献4の図1(A)にある相図(図10)から分かるように、酸素分圧が10-27気圧以下のとき、試料の温度が180℃以上であれば還元が可能となるはずである。そこで試料ステージ7の温度を180℃に設定した。次いで、気体用ヒーター12に通電し、気体の温度がヒーターの出口において168℃になるようにした。この状態で大気圧プラズマを照射しながら90分間保持した。取り出した試料の体積抵抗率を実施例1と同様に測定したところ、2.6μΩ・cmであった。さらに、この試料の断面を実施例1と同様に観察したところ、図9のようになり、完全に焼結されていることがわかった。つまり、気体用ヒーターを併用することで、180℃という低温での焼成でも試料は完全に焼結される。このことから、本発明の装置を用いたプロセスがPENを含む種々の樹脂基板へ適用可能であることがわかった。
【実施例】
【0057】
[比較例]
プラズマ化手段によるプラズマ照射を行わなかった以外実施例1と同様に銅微粒子の処理を行った。その結果、微粒子の粒子成長はほとんど見られず、微粒子間に多くの空隙が残る状態であった(図11参照)。
【実施例】
【0058】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【実施例】
【0059】
本願は、2014年8月13日に日本国で特許出願された特願2014-165032に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0060】
1 密閉容器
2 酸素ポンプ
3 循環手段
4 プラズマ化手段
5 プラズマ化された気体
6 試料
7 試料ステージ
8 循環経路
9 気体供給経路
10 真空ポンプ
11 液滴
12 気体用ヒーター
13 ガス入口
14 ヒーターエレメント
21 ジルコニア製固体電解質体
22、23多孔質電極
41a、41b 電極
42 導入配管
43 電圧印加手段
44 プラズマ化された気体
100 超微細流体ジェット
200 超微細径のノズル
101 ノズル本体
102 電極(金属線)
103 液体
104 シールドゴム
105 ノズルクランプ
106 ホルダー
107 圧力調整器
108 圧力チューブ
109 コンピューター
110 発生装置(電圧印加手段)
111 高電圧アンプ
S 基材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10